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特許7602555眼科観察装置、その制御方法、プログラム、及び記録媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】眼科観察装置、その制御方法、プログラム、及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/13 20060101AFI20241211BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A61B3/13
A61B3/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022558830
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2021003639
(87)【国際公開番号】W WO2022091435
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】63/106,087
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】山田 和広
(72)【発明者】
【氏名】大森 和宏
(72)【発明者】
【氏名】福間 康文
【審査官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-534011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0049840(US,A1)
【文献】国際公開第2018/207466(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を観察するための眼科観察装置であって、
前記被検眼を撮影して動画像を生成する動画像生成部と、
前記動画像に含まれる静止画像を解析して、前記被検眼の所定部位の像を検出する解析部と、
前記解析部により検出された前記所定部位の前記像と、予め取得された前記被検眼の測定データとに少なくとも基づいて、所定の処置の目標位置を決定する目標位置決定部と、
前記動画像と前記目標位置を示す目標位置情報とを表示装置に表示させる表示制御部と
を含む、眼科観察装置。
【請求項2】
被検眼を観察するための眼科観察装置であって、
前記被検眼を撮影して動画像を生成する動画像生成部と、
前記動画像に含まれる静止画像を解析して、前記被検眼の所定部位の像を検出する解析部と、
前記被検眼の測定データを取得する測定部と、
前記解析部により検出された前記所定部位の前記像と、前記測定部により取得された前記測定データとに少なくとも基づいて、所定の処置の目標位置を決定する目標位置決定部と、
前記動画像と前記目標位置を示す目標位置情報とを表示装置に表示させる表示制御部と
を含む、眼科観察装置。
【請求項3】
前記目標位置決定部は、
前記測定部により取得された前記測定データに基づいて、前記所定の処置が前記被検眼に与える影響を評価する評価部を含み、
前記解析部により検出された前記所定部位の前記像と、前記評価部により得られた結果とに少なくとも基づいて、前記目標位置を決定する、
請求項の眼科観察装置。
【請求項4】
前記目標位置決定部は、前記解析部により検出された前記所定部位の前記像から所定の距離だけ離れた位置を前記目標位置として決定する、
請求項1~のいずれかの眼科観察装置。
【請求項5】
前記被検眼に第1の処置及び第2の処置が適用される場合において、
前記解析部は、
前記第1の処置の前に前記動画像生成部により生成された第1の静止画像を解析して前記被検眼の第1の部位の像を検出する第1の検出と、
前記第2の処置の前に前記動画像生成部により生成された第2の静止画像を解析して前記被検眼の第2の部位の像を検出する第2の検出と
を実行し、
前記目標位置決定部は、
前記第1の部位の前記像に少なくとも基づいて前記第1の処置の目標位置である第1の目標位置を決定する第1の決定と、
前記第2の部位の前記像に少なくとも基づいて前記第2の処置の目標位置である第2の目標位置を決定する第2の決定と
を実行し、
前記表示制御部は、
前記第1の処置のために前記動画像と前記第1の目標位置を示す第1の目標位置情報とを表示させる第1の表示制御と、
前記第2の処置のために前記動画像と前記第2の目標位置を示す第2の目標位置情報とを表示させる第2の表示制御と
を実行する、
請求項1~のいずれかの眼科観察装置。
【請求項6】
前記第1の処置から前記第2の処置への移行を検知する処置移行検知部を更に含む、
請求項の眼科観察装置。
【請求項7】
プロセッサを含み、被検眼の動画像を生成する眼科観察装置を制御する方法であって、
前記プロセッサに、
前記動画像に含まれる静止画像を解析させて、前記被検眼の所定部位の像を検出させ、
検出された前記所定部位の前記像と、予め取得された前記被検眼の測定データとに少なくとも基づいて、所定の処置の目標位置を決定させ、
前記動画像と前記目標位置を示す目標位置情報とを表示装置に表示させる、
方法。
【請求項8】
プロセッサを含み、被検眼の動画像を生成し且つ前記被検眼の測定データを取得する眼科観察装置を制御する方法であって、
前記プロセッサに、
前記動画像に含まれる静止画像を解析させて、前記被検眼の所定部位の像を検出させ、
検出された前記所定部位の前記像と、前記眼科観察装置により取得された前記測定データとに少なくとも基づいて、所定の処置の目標位置を決定させ、
前記動画像と前記目標位置を示す目標位置情報とを表示装置に表示させる、
方法。
【請求項9】
請求項7又は8の方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項10】
請求項9のプログラムが記録されたコンピュータ可読な非一時的記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年10月27日に出願された「APPARATUS AND METHOD FOR OPHTHALMIC OBSERVATION(眼科観察のための装置及び方法)」と題する米国仮特許出願第63/106,087号に基づく優先権を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、眼科観察装置、その制御方法、プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
眼科観察装置は、患者の眼(被検眼と呼ぶ)を観察するための装置である。眼科観察は、検査、手術、治療などの様々な場面において被検眼の状態を把握するために行われる。
【0004】
旧来の眼科観察装置は、対物レンズや変倍光学系により得られた拡大像を接眼レンズを介してユーザーに提供するものであったが、近年の眼科観察装置には、対物レンズや変倍光学系により得られた拡大像を撮像素子で撮影し、得られた撮影像を表示するように構成されたものがある(デジタル眼科観察装置と呼ぶ)。デジタル眼科観察装置の種類としては、手術用顕微鏡、スリットランプ顕微鏡、眼底カメラなどがある。また、レフラクトメーター、ケラトメーター、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザー、マイクロペリメーターといった各種の眼科検査装置にも、デジタル眼科観察装置としての機能が設けられている。
【0005】
更に、近年の眼科観察装置には、光走査を利用したものもある(走査型眼科観察装置)。そのような眼科装置として、走査型レーザー検眼鏡(SLO)、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)装置などがある。
【0006】
一般に、眼科観察装置は、被検眼の動画像をユーザー(例えば、医師などの医療従事者)に提供する。デジタル眼科観察装置は、典型的には、赤外光及び/又は可視光を照明光とした動画撮影と、それにより得られた画像のリアルタイム動画表示とを実行するように構成されている。一方、走査型眼科観察装置は、典型的には、反復的な光走査によるデータ収集と、逐次に収集されるデータセットに基づくリアルタイム画像再構成と、逐次に再構成された画像のリアルタイム動画表示とを実行するように構成されている。このようにして提供されるリアルタイム動画像を観察画像又はライブ画像と呼ぶ。
【0007】
リアルタイム動画像を提供可能な眼科観察装置は手術においても使用される。眼科手術には様々な種類があるが、多くの眼科手術は眼内に器具を挿入して行われる。器具を挿入する際には眼組織が切開される。例えば、水晶体を眼内レンズ(IOL)に置換する白内障手術では、一般に、角膜切開(強角膜切開)、水晶体前嚢切開(CCC)などが行われる。また、眼内コンタクトレンズ(ICL;フェイキックIOLなどとも呼ばれる)を前房に留置する屈折矯正手術では、一般に、角膜切開などが行われる。また、低侵襲緑内障手術(MIGS)では、線維柱帯の切開、線維柱帯へのステントの挿入などが行われる。また、ライトガイド(照明)や各種器具が用いられる網膜硝子体手術では、一般に、結膜切開や強膜切開が行われる。
【0008】
このような眼組織の切開は適切な位置において行われる必要がある。しかし、眼には目印になる箇所が少なく、眼にマーキングを施すことは難しく、また、手術中に眼球が動くことがあるため、適切な切開目標位置を把握することが難しい。切開以外の処置についても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2019-162336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の1つの目的は、眼科手術を容易化するための新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
幾つかの例示的な態様は、被検眼を観察するための眼科観察装置であって、前記被検眼を撮影して動画像を生成する動画像生成部と、前記動画像に含まれる静止画像を解析して、前記被検眼の所定部位の像を検出する解析部と、前記解析部により検出された前記所定部位の前記像に少なくとも基づいて、所定の処置の目標位置を決定する目標位置決定部と、前記動画像と前記目標位置を示す目標位置情報とを表示装置に表示させる表示制御部とを含んでいてもよい。
【0012】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記目標位置決定部は、前記解析部により検出された前記所定部位の前記像と、予め取得された前記被検眼の測定データとに少なくとも基づいて、前記目標位置を決定するように構成されていてもよい。
【0013】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記被検眼の測定データを取得する測定部を更に含んでいてもよく、且つ、前記目標位置決定部は、前記解析部により検出された前記所定部位の前記像と、前記測定部により取得された前記測定データとに少なくとも基づいて、前記目標位置を決定するように構成されていてもよい。
【0014】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記目標位置決定部は、前記測定部により取得された前記測定データに基づいて、前記所定の処置が前記被検眼に与える影響を評価する評価部を含んでいてもよく、更に、前記目標位置決定部は、前記解析部により検出された前記所定部位の前記像と、前記評価部により得られた結果とに少なくとも基づいて、前記目標位置を決定するように構成されていてもよい。
【0015】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記目標位置決定部は、前記解析部により検出された前記所定部位の前記像から所定の距離だけ離れた位置を前記目標位置として決定するように構成されていてもよい。
【0016】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置において、前記被検眼に第1の処置及び第2の処置が適用される場合において、前記解析部は、前記第1の処置の前に前記動画像生成部により生成された第1の静止画像を解析して前記被検眼の第1の部位の像を検出する第1の検出と、前記第2の処置の前に前記動画像生成部により生成された第2の静止画像を解析して前記被検眼の第2の部位の像を検出する第2の検出とを実行するように構成されていてもよい。更に、前記目標位置決定部は、前記第1の部位の前記像に少なくとも基づいて前記第1の処置の目標位置である第1の目標位置を決定する第1の決定と、前記第2の部位の前記像に少なくとも基づいて前記第2の処置の目標位置である第2の目標位置を決定する第2の決定とを実行するように構成されていてもよい。加えて、前記表示制御部は、前記第1の処置のために前記動画像と前記第1の目標位置を示す第1の目標位置情報とを表示させる第1の表示制御と、前記第2の処置のために前記動画像と前記第2の目標位置を示す第2の目標位置情報とを表示させる第2の表示制御とを実行するように構成されていてもよい。
【0017】
幾つかの例示的な態様に係る眼科観察装置は、前記第1の処置から前記第2の処置への移行を検知する処置移行検知部を更に含んでいてもよい。
【0018】
幾つかの例示的な態様は、プロセッサを含み被検眼の動画像を生成する眼科観察装置を制御する方法であって、前記プロセッサに、前記動画像に含まれる静止画像を解析させて、前記被検眼の所定部位の像を検出させ、検出された前記所定部位の前記像に少なくとも基づいて、所定の処置の目標位置を決定させ、前記動画像と前記目標位置を示す目標位置情報とを表示装置に表示させるように構成されていてもよい。
【0019】
幾つかの例示的な態様は、いずれかの例示的な態様に係る方法をコンピュータに実行させるプログラムであってよい。
【0020】
幾つかの例示的な態様は、いずれかの例示的な態様に係るプログラムが記録されたコンピュータ可読な非一時的記録媒体であってよい。
【発明の効果】
【0021】
例示的な態様によれば、眼科手術の容易化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】例示的な実施形態に係る眼科観察装置(眼科手術用顕微鏡)の構成の一例を示す概略図である。
図2】例示的な実施形態に係る眼科観察装置の構成の一例を示す概略図である。
図3】例示的な実施形態に係る眼科観察装置の構成の一例を示す概略図である。
図4】例示的な実施形態に係る眼科観察装置の構成の一例を示す概略図である。
図5】例示的な実施形態に係る眼科観察装置の構成の一例を示す概略図である。
図6】例示的な実施形態に係る眼科観察装置の構成の一例を示す概略図である。
図7】例示的な実施形態に係る眼科観察装置の構成の一例を示す概略図である。
図8A】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図8B】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図9A】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
図9B】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
図9C】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
図9D】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
図9E】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
図10A】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
図10B】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
図10C】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
図11】例示的な実施形態に係る眼科観察装置が実行する処理の一例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実施形態に係る眼科観察装置、それを制御する方法、プログラム、及び記録媒体の幾つかの例示的な態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献に記載された事項や任意の公知技術を例示的な態様に組み合わせることが可能である。
【0024】
例示的な態様に係る眼科観察装置は、手術、検査、治療などの医療行為において被検眼の状態を把握するために使用される。以下に説明される例示的な態様の眼科観察装置は手術用顕微鏡システムであるが、眼科観察装置は手術用顕微鏡システムに限定されない。例えば、眼科観察装置は、スリットランプ顕微鏡、眼底カメラ、レフラクトメーター、ケラトメーター、眼圧計、スペキュラーマイクロスコープ、ウェーブフロントアナライザー、マイクロペリメーター、SLO、及びOCT装置のうちのいずれかであってよく、また、これらのうちのいずれか1つ以上を含むシステムであってよい。より一般に、眼科観察装置は、観察機能を有する任意の眼科装置であってよい。
【0025】
眼科観察装置を用いた観察の対象部位は、被検眼の任意の部位であってよく、前眼部の任意の部位及び/又は後眼部の任意の部位であってよい。前眼部の観察対象部位としては、例えば、角膜、虹彩、前房、隅角、水晶体、毛様体、チン小帯などがある。後眼部の観察対象部位としては、例えば、網膜、脈絡膜、強膜、硝子体などがある。観察対象部位は、眼球組織に限定されるものではなく、瞼、マイボーム腺、眼窩など、眼科(及び/又は他科)において観察対象となる任意の部位であってもよい。
【0026】
眼科観察装置は、例えば、眼内に人工物を挿入するための手術において使用される。人工物は、例えば、眼内レンズ、眼内コンタクトレンズ、MIGSデバイス(ステント)のように眼内に留置される任意の器具であってよい。また、人工物は、ライトガイド、手術器具、検査器具、治療器具などの任意の医療器具であってもよい。
【0027】
本明細書に開示された要素の機能の少なくとも一部は、回路構成(circuitry)又は処理回路構成(processing circuitry)を用いて実装される。回路構成又は処理回路構成は、開示された機能の少なくとも一部を実行するように構成及び/又はプログラムされた、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、従来の回路構成、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含む。プロセッサは、トランジスタ及び/又は他の回路構成を含む、処理回路構成又は回路構成とみなされる。本開示において、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、開示された機能の少なくとも一部を実行するハードウェア、又は、開示された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されたハードウェアであってよく、或いは、記載された機能の少なくとも一部を実行するようにプログラム及び/又は構成された既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが或るタイプの回路構成とみなされ得るプロセッサである場合、回路構成、ユニット、手段、又はこれらに類する用語は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、このソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサを構成するために使用される。
【0028】
<眼科観察装置>
例示的な態様の眼科観察装置の構成を図1に示す。
【0029】
実施形態に係る眼科観察装置1(手術用顕微鏡システム)は、操作装置2と、表示装置3と、手術用顕微鏡10とを含む。幾つかの態様では、手術用顕微鏡10が操作装置2及び表示装置3の少なくとも1つを含んでいてよい。また、幾つかの態様では、表示装置3は眼科観察装置1に含まれていなくてもよい。つまり、表示装置3は眼科観察装置1の周辺機器であってよい。
【0030】
<操作装置2>
操作装置2は、操作デバイス及び/又は入力デバイスを含む。例えば、操作装置2は、ボタン、スイッチ、マウス、キーボード、トラックボール、操作パネル、ダイアルなどを含んでいてよい。典型的には、操作装置2は、一般的な眼科手術用顕微鏡と同様に、フットスイッチを含んでいる。また、音声認識や視線入力などを用いて操作を行うように構成されてもよい。
【0031】
<表示装置3>
表示装置3は、手術用顕微鏡10により取得された被検眼の画像を表示させる。表示装置3は、フラットパネルディスプレイなどの表示デバイスを含む。また、表示装置3は、タッチパネルなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。典型的な表示装置3は、大画面の表示デバイスを含む。表示装置3は、1つ以上の表示デバイスを含む。表示装置3が2つ以上の表示デバイスを含む場合、例えば、1つは比較的大画面の表示デバイスであり、他の1つは比較的小画面の表示デバイスであってよい。また、1つの表示デバイスに複数の表示領域を設けて複数の情報を表示させる構成を採用してもよい。
【0032】
操作装置2と表示装置3は、それぞれ個別のデバイスである必要はない。例えば、タッチパネルのように操作機能と表示機能とが一体化されたデバイスを表示装置3として用いてもよい。その場合、操作装置2は、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含む。操作装置2に対する操作内容は、電気信号としてプロセッサ(不図示)に入力される。また、表示装置3に表示されたグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)と、操作装置2とを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。幾つかの態様では、操作装置2及び表示装置3の機能はタッチスクリーンによって実現されてよい。
【0033】
<手術用顕微鏡10>
手術用顕微鏡10は、仰臥位の患者の眼(被検眼)を観察するために用いられる。手術用顕微鏡10は、被検眼を撮影してデジタル画像データを生成する。特に、手術用顕微鏡10は、被検眼の動画像を生成する。手術用顕微鏡10により生成された動画像(映像)は、有線及び/又は無線の信号路を通じて表示装置3に送信されて表示される。ユーザー(術者)は、表示される映像によって被検眼を観察しつつ手術を行うことができる。幾つかの態様の手術用顕微鏡10は、このような表示映像の観察に加えて、旧来のような接眼レンズを介した観察が可能であってもよい。
【0034】
幾つかの態様では、手術用顕微鏡10は、操作装置2との間で電気信号を送受信するための通信デバイスを含む。操作装置2は、ユーザーによる操作を受け付け、それに対応する電気信号(操作信号)を生成する。操作信号は、有線及び/又は無線の信号路を通じて手術用顕微鏡10に送信される。手術用顕微鏡10は、受信した操作信号に対応した処理を実行する。
【0035】
<手術用顕微鏡10の光学系>
手術用顕微鏡10の光学系の構成の例を説明する。以下では、説明の便宜上、対物レンズの光軸方向をz方向(例えば、手術時には鉛直方向、上下方向)とし、z方向に直交する所定方向をx方向(例えば、手術時には水平方向、術者及び患者にとって左右方向)とし、z方向及びx方向の双方に直交する方向をy方向(例えば、手術時には水平方向、術者にとって前後方向、患者にとって体軸方向)とする。
【0036】
また、以下では、主として、観察光学系が左右一対の光学系(双眼観察が可能な光学系)を有している場合について説明する。しかしながら、他の態様の観察光学系は単眼観察用の光学系を有していてもよく、そのような態様に以下に説明する構成を援用できることは当業者であれば理解できるであろう。
【0037】
手術用顕微鏡10の光学系の構成例を図2に示す。図2は、光学系を上から見た模式的な上面図(top view)と光学系を側方から見た模式的な側面図(side view)とを対応付けて図示したものである。図示を簡略化するため、上面図においては、対物レンズ20の上方に配置される照明光学系30の図示が省略されている。
【0038】
手術用顕微鏡10は、対物レンズ20と、ダイクロイックミラーDM1と、照明光学系30と、観察光学系40とを含む。観察光学系40は、ズームエキスパンダ50と、撮像カメラ60とを含む。幾つかの態様では、照明光学系30又は観察光学系40は、ダイクロイックミラーDM1を含む。
【0039】
対物レンズ20は、被検眼に対向するように配置される。対物レンズ20は、その光軸がz方向に沿うように配置されている。対物レンズ20は、2枚以上のレンズを含んでいてもよい。
【0040】
ダイクロイックミラーDM1は、照明光学系30の光路と観察光学系40の光路とを結合する。ダイクロイックミラーDM1は、照明光学系30と対物レンズ20との間に配置される。ダイクロイックミラーDM1は、照明光学系30からの照明光を透過して対物レンズ20を介して被検眼に導くとともに、対物レンズ20を介して入射する被検眼からの戻り光を反射して観察光学系40の撮像カメラ60に導く。
【0041】
ダイクロイックミラーDM1は、照明光学系30の光路と観察光学系40の光路とを同軸に結合する。つまり、照明光学系30の光軸と観察光学系40の光軸とがダイクロイックミラーDM1において交差している。照明光学系30が左眼用照明光学系(31L)及び右眼用照明光学系(31R)を含み、且つ、観察光学系40が左眼用観察光学系40L及び右眼用観察光学系40Rを含む場合において、ダイクロイックミラーDM1は、左眼用照明光学系(第1照明光学系31L)の光路と左眼用観察光学系40Lの光路とを同軸に結合し、且つ、右眼用照明光学系(第1照明光学系31R)の光路と右眼用観察光学系40Rの光路とを同軸に結合する。
【0042】
照明光学系30は、対物レンズ20を介して被検眼を照明するための光学系である。照明光学系30は、色温度が異なる2以上の照明光のいずれかによって被検眼を照明するように構成されていてよい。照明光学系30は、後述の制御部(200)の制御の下に、指定された色温度の照明光を被検眼に投射する。
【0043】
照明光学系30は、第1照明光学系31L及び31Rと、第2照明光学系32とを含んでいる。
【0044】
第1照明光学系31Lの光軸OL及び第1照明光学系31Rの光軸ORのそれぞれは、対物レンズ20の光軸と略同軸に配置されている。これにより、同軸照明を実現することができ、眼底での拡散反射を利用した徹照像を得ることが可能となる。本態様では、被検眼の徹照像を双眼で観察することが可能である。
【0045】
第2照明光学系32は、その光軸OSが対物レンズ20の光軸から偏心するように配置されている。第1照明光学系31L及び31R並びに第2照明光学系32は、対物レンズ20の光軸に対する光軸OSの偏位が対物レンズ20の光軸に対する光軸OL及びORの偏位よりも大きくなるように配置されている。これにより、いわゆる「角度付き照明(斜め照明)」を実現することができ、角膜反射などに起因するゴーストの混入を防止しつつ被検眼を双眼で観察することが可能になる。更に、被検眼の部位や組織の凹凸を詳細に観察することも可能になる。
【0046】
第1照明光学系31Lは、光源31LAと、コンデンサーレンズ31LBとを含む。光源31LAは、例えば、3000K(ケルビン)の色温度に相当する可視領域の波長の照明光を出力する。光源31LAから出力された照明光は、コンデンサーレンズ31LBを通過し、ダイクロイックミラーDM1を透過し、対物レンズ20を通過して被検眼に入射する。
【0047】
第1照明光学系31Rは、光源31RAと、コンデンサーレンズ31RBとを含む。光源31RAもまた、例えば、3000Kの色温度に相当する可視領域の波長の照明光を出力する。光源31RAから出力された照明光は、コンデンサーレンズ31RBを通過し、ダイクロイックミラーDM1を透過し、対物レンズ20を通過して被検眼に入射する。
【0048】
第2照明光学系32は、光源32Aと、コンデンサーレンズ32Bとを含む。光源32Aは、例えば、4000K~6000Kの色温度に相当する可視領域の波長の照明光を出力する。光源32Aから出力された照明光は、コンデンサーレンズ32Bを通過し、ダイクロイックミラーDM1を経由することなく対物レンズ20を通過して被検眼に入射する。
【0049】
すなわち、第1照明光学系31L及び31Rからの照明光の色温度は、第2照明光学系32からの照明光の色温度よりも低い。このような構成とすることで、第1照明光学系31L及び31Rを用いて暖色系の色で被検眼を観察することが可能になり、被検眼の構造や形態を詳細に観察することが可能となる。
【0050】
幾つかの態様では、光軸OL及びORのそれぞれが対物レンズ20の光軸に対して相対的に移動可能とされる。この相対移動の方向は対物レンズ20の光軸に交差する方向であり、この相対移動はx成分及びy成分の少なくとも一方がゼロでない変位ベクトルで表現される。幾つかの態様では、光軸OL及びORのそれぞれが独立に移動可能であってよい。一方、幾つかの態様では、光軸OL及びORが一体的に移動可能であってよい。例えば、手術用顕微鏡10は、第1照明光学系31L及び31Rを独立に又は一体的に移動する移動機構(31d)を備えており、この移動機構によって第1照明光学系31L及び31Rを独立に又は一体的に対物レンズ20の光軸に交差する方向に移動する。それにより、被検眼の見え具合を調整することが可能になる。幾つかの態様では、後述の制御部(200)の制御の下に移動機構が動作する。
【0051】
幾つかの態様では、光軸OSが対物レンズ20の光軸に対して相対的に移動可能とされる。この相対移動の方向は、対物レンズ20の光軸に交差する方向であり、この相対移動はx成分及びy成分の少なくとも一方がゼロでない変位ベクトルで表現される。例えば、手術用顕微鏡10は、第2照明光学系32を移動する移動機構(32d)を備えており、この移動機構によって第2照明光学系32を対物レンズ20の光軸に交差する方向に移動する。それにより、被検眼の部位や組織における凹凸の見え具合を調整することが可能になる。幾つかの態様では、後述の制御部(200)の制御の下に移動機構が動作する。
【0052】
以上のように、本態様では、対物レンズ20の直上の位置(ダイクロイックミラーDM1の透過方向の位置)に照明光学系30が配置され、且つ、ダイクロイックミラーDM1の反射方向の位置に観察光学系40が配置されている。例えば、観察光学系40の光軸と対物レンズ20の光軸に直交する平面(xy平面)とのなす角が±20度以下になるように、観察光学系40が配置されていてよい。
【0053】
本態様の構成によれば、一般的に照明光学系30よりも光路長が長い観察光学系40がxy平面に対して略平行に配置されるため、術者の眼前に観察光学系が鉛直方向に配置される従来の手術用顕微鏡のように術者の視野を邪魔することがない。したがって、術者は、正面に設置された表示装置3の画面を容易に見ることができる。つまり、手術中などにおける表示情報(被検眼の画像や映像、その他の各種参照情報)の視認性が向上する。また、術者の眼前に筐体が配置されることがないため、術者に圧迫感を与えることがなく、術者の負担が軽減される。
【0054】
観察光学系40は、対物レンズ20を介して被検眼から入射した照明光の戻り光に基づき形成される像を観察するための光学系である。本態様では、観察光学系40は、撮像カメラ60の撮像素子に像を提供する。
【0055】
上記したように、観察光学系40は、左眼用観察光学系40Lと、右眼用観察光学系40Rとを含んでいる。左眼用観察光学系40Lの構成は、右眼用観察光学系40Rの構成と同様である。幾つかの態様では、左眼用観察光学系40L及び右眼用観察光学系40Rは、互いに独立に光学配置の変更が可能であってよい。
【0056】
ズームエキスパンダ50は、ビームエキスパンダ、可変ビームエキスパンダなどとも呼ばれる。ズームエキスパンダ50は、左眼用ズームエキスパンダ50Lと、右眼用ズームエキスパンダ50Rとを含んでいる。左眼用ズームエキスパンダ50Lの構成は、右眼用ズームエキスパンダ50Rの構成と同様である。幾つかの態様では、左眼用ズームエキスパンダ50L及び右眼用ズームエキスパンダ50Rは、互いに独立に光学配置の変更が可能であってよい。
【0057】
左眼用ズームエキスパンダ50Lは、複数のズームレンズ51L、52L及び53Lを含む。複数のズームレンズ51L、52L及び53Lの少なくとも1つは、変倍機構(不図示)によって光軸方向に移動可能である。
【0058】
同様に、右眼用ズームエキスパンダ50Rは、複数のズームレンズ51R、52R及び53Rを含んでおり、複数のズームレンズ51R、52R、53Rの少なくとも1つは、変倍機構(不図示)によって光軸方向に移動可能である。
【0059】
変倍機構は、左眼用ズームエキスパンダ50Lの各ズームレンズ及び右眼用ズームエキスパンダ50Rの各ズームレンズを独立に又は一体的に光軸方向に移動するように構成されてよい。それにより、被検眼を撮影する際の拡大倍率が変更される。幾つかの態様では、後述の制御部(200)の制御の下に変倍機構が動作する。
【0060】
撮像カメラ60は、観察光学系40により形成される像を撮影してデジタル画像データを生成するデバイスであり、典型的にはデジタルカメラ(デジタルビデオカメラ)である。撮像カメラ60は、左眼用撮像カメラ60Lと、右眼用撮像カメラ60Rとを含んでいる。左眼用撮像カメラ60Lの構成は、右眼用撮像カメラ60Rの構成と同様である。幾つかの態様では、左眼用撮像カメラ60L及び右眼用撮像カメラ60Rは、互いに独立に光学配置の変更が可能である。
【0061】
左眼用撮像カメラ60Lは、結像レンズ61Lと、撮像素子62Lとを含んでいる。結像レンズ61Lは、左眼用ズームエキスパンダ50Lを通過した戻り光に基づく像を撮像素子62Lの撮像面に形成する。撮像素子62Lは、エリアセンサであり、典型的には電荷結合素子(CCD)イメージセンサ又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)イメージセンサであってよい。撮像素子62Lは、後述の制御部(200)の制御の下に動作する。
【0062】
右眼用撮像カメラ60Rは、結像レンズ61Rと、撮像素子62Rとを含んでいる。結像レンズ61Rは、右眼用ズームエキスパンダ50Rを通過した戻り光に基づく像を撮像素子62Lの撮像面に形成する。撮像素子62Rは、エリアセンサであり、典型的にはCCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサであってよい。撮像素子62Rは、後述の制御部(200)の制御の下に動作する。
【0063】
<処理系>
眼科観察装置1の処理系について説明する。処理系の基本的な構成の例を図3及び図4に示すとともに、具体的な構成の幾つかの例を図5図6及び図7に示す。以下に説明される各種の構成例のうちの任意の2つ以上を少なくとも部分的に組み合わせることができる。なお、処理系の構成はこれらの例に限定されない。
【0064】
制御部200は、眼科観察装置1の各部の制御を行う。制御部200は、主制御部201と記憶部202とを含む。主制御部201は、プロセッサを含み、眼科観察装置1の各部を制御する。例えば、プロセッサは、本態様に係る機能を実現するために、記憶部202又は他の記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することができ、また、記憶部202又は他の記憶装置に格納されているデータや情報を利用(参照、加工、演算など)することができる。
【0065】
主制御部201は、照明光学系30の光源31LA、31RA及び32A、観察光学系40の撮像素子62L及び62R、移動機構31d及び32d、変倍機構50Ld及び50Rd、操作装置2、表示装置3などの制御を行うことができる。
【0066】
光源31LAの制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞りの調整などがある。光源31RAの制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞りの調整などがある。主制御部201は、光源31LA及び31RAに対して互いに排他的に制御を行うことができる。光源32Aの制御には、光源の点灯、消灯、光量調整、絞りの調整などがある。
【0067】
照明光学系30が色温度を変更可能な光源を含む場合、主制御部201は、この光源を制御することによって、出力される照明光の色温度を変更することができる。
【0068】
撮像素子62Lの制御には、露光調整、ゲイン調整、撮影レート調整などがある。撮像素子62Rの制御には、露光調整、ゲイン調整、撮影レート調整などがある。また、主制御部201は、撮像素子62L、62Rの撮影タイミングが一致するように、又は両者の撮影タイミングの差が所定時間以内になるように、撮像素子62L及び62Rを制御することができる。更に、主制御部201は、撮像素子62L及び62Rにより得られたデジタルデータの読み出し制御を行うことができる。
【0069】
移動機構31dは、対物レンズ20の光軸に交差する方向に光源31LA及び31RAを独立に又は一体的に移動する。主制御部201は、移動機構31dを制御することにより、対物レンズ20の光軸に対して光軸OL及びORを独立に又は一体的に移動することができる。
【0070】
移動機構32dは、対物レンズ20の光軸に交差する方向に光源32Aを移動する。主制御部201は、移動機構32dを制御することにより、対物レンズ20の光軸に対して光軸OSを移動することができる。
【0071】
移動機構70は、手術用顕微鏡10を移動する。例えば、移動機構70は、照明光学系30の少なくとも一部と観察光学系40とを一体的にするように構成されている。これにより、照明光学系30の少なくとも一部と観察光学系40との間の相対位置関係を保ちつつ、照明光学系30の少なくとも一部及び観察光学系40の被検眼に対する相対位置を変更することができる。幾つかの態様では、移動機構70は、第1照明光学系31L及び31Rと観察光学系40とを一体的に移動するように構成されている。これにより、同軸照明の状態を保ちつつ、第1照明光学系31L及び31R並びに観察光学系40の被検眼に対する相対位置を変更することが可能になる。幾つかの態様では、移動機構70は、第2照明光学系32と観察光学系40とを一体的に移動するように構成されている。これにより、斜め照明の照明角度を保ちつつ、第2照明光学系32及び観察光学系40の被検眼に対する相対位置を変更することが可能になる。幾つかの態様では、移動機構70は、第1照明光学系31L及び31R並びに第2照明光学系32と観察光学系40とを一体的に移動するように構成されている。これにより、同軸照明の状態及び斜め照明の照明角度の双方を保ちつつ、照明光学系30及び観察光学系40の被検眼に対する相対位置を変更することが可能になる。移動機構70は、制御部200の制御の下に動作する。
【0072】
幾つかの態様では、主制御部201は、移動機構31d、32d及び70のうちの少なくとも2つを連係的に制御することができる。
【0073】
変倍機構50Ldは、左眼用ズームエキスパンダ50Lの複数のズームレンズ51L~53Lの少なくとも1つを光軸方向に移動する。主制御部201は、変倍機構50Ldを制御することによって左眼用観察光学系40Lの拡大倍率を変更することができる。
【0074】
同様に、変倍機構50Rdは、右眼用ズームエキスパンダ50Rの複数のズームレンズ51R~53Rの少なくとも1つを光軸方向に移動する。主制御部201は、変倍機構50Rdを制御することによって右眼用観察光学系40Rの拡大倍率を変更することができる。
【0075】
操作装置2に対する制御には、操作許可制御、操作禁止制御、操作装置2からの操作信号の送信制御及び/又は受信制御などがある。主制御部201は、操作装置2により生成された操作信号を受信し、この受信信号に対応する制御を実行する。
【0076】
表示装置3に対する制御には、情報表示制御などがある。主制御部201は、表示制御部として、各種情報を表示装置3に表示させる。例えば、主制御部201は、撮像素子62L及び62Rにより生成されたデジタル画像データに基づく画像を表示装置3に表示させることができる。典型的には、撮像素子62L及び62Rにより生成されたデジタル画像データ(映像信号)に基づく動画像(映像)を表示装置3に表示させることができ、また、この動画像に含まれる静止画像(フレーム)を表示装置3に表示させることができる。更に、主制御部201は、撮像素子62L及び62Rにより生成されたデジタル画像データを加工して得られた画像(動画像、静止画像など)を表示装置3に表示させることができる。また、主制御部201は、眼科観察装置1により生成された任意の情報や、眼科観察装置1が外部から取得した任意の情報を表示装置3に表示させることができる。
【0077】
また、主制御部201は、撮像素子62Lによって生成されたデジタル画像データから左眼用画像を作成するとともに撮像素子62Rによって生成されたデジタル画像データから右眼用画像を作成し、作成された左眼用画像及び右眼用画像を立体視可能な態様で表示装置3に表示させることができる。例えば、主制御部201は、左眼用画像及び右眼用画像から左右一対の視差画像を作成し、この一対の視差画像を表示装置3に表示させることができる。ユーザー(術者など)は、公知の立体視手法を利用して一対の視差画像を立体画像として認識することができる。本態様に適用可能な立体視手法は任意であってよく、例えば、裸眼での立体視手法、補助器具(偏光眼鏡など)を用いた立体視手法、左眼用画像及び右眼用画像に対する画像処理(画像合成、レンダリングなど)を利用した立体視手法、一対の視差画像を同時に表示させる立体視手法、一対の視差画像を切り換え表示させる立体視手法、及び、これらのうちの2つ以上を組み合わせた立体視手法のうちのいずれかであってよい。
【0078】
データ処理部210は、各種のデータ処理を実行する。データ処理部210が実行可能な処理については、幾つかの例を以下に説明する。データ処理部210(その各要素)は、所定のソフトウェア(プログラム)にしたがって動作するプロセッサを含んでおり、ハードウェアとソフトウェアとの協働によって実現される。
【0079】
データ処理部210が実行可能な処理の幾つかの例について、関連する要素とともに説明する。図4は、データ処理部210の基本的な構成の例を示している。本例のデータ処理部210は、解析部211と、目標位置決定部212とを含む。
【0080】
手術用顕微鏡10は、被検眼を撮影して動画像(ライブ画像)を生成する。制御部200は、動画像のフレーム(静止画像)をキャプチャして解析部211に入力する。例えば、制御部200は、手動又は自動のトリガーに対応して動画像からフレームをキャプチャする。
【0081】
解析部211は、動画像からキャプチャされたフレームを解析して、被検眼の所定部位の像(つまり、被検眼の所定部位に相当する画像領域)を検出する。解析部211によってフレームから検出される画像領域は、例えば、当該部位の像として特定された画像領域でもよいし、当該部位の像(及びその近傍)を処理して得られた画像領域(例えば、近似楕円、近似円などの近似図形)でもよい。
【0082】
解析部211によって検出される被検眼の所定部位は任意の部位であってよい。眼科観察装置1による観察対象が前眼部である場合、解析部211は、例えば、瞳孔(全体、又は、瞳孔縁、瞳孔中心、瞳孔重心などの特徴部位)、角膜(全体、又は、角膜輪、角膜縁、角膜中心、角膜頂点などの特徴部位)、虹彩(全体、又は、虹彩内縁、虹彩外縁、虹彩パターンなどの特徴部位)、前房(全体、又は、前側境界、後側境界などの特徴部位)、隅角(全体、周辺部位など)、水晶体(全体、又は、水晶体嚢、前嚢、後嚢、水晶体核などの特徴部位)、毛様体、チン小帯、血管、及び病変部のうちのいずれかを検出するように構成されてよい。眼科観察装置1による観察対象が後眼部である場合、解析部211は、例えば、視神経乳頭、黄斑、血管、網膜(全体、表面、又は、1つ以上のサブ組織)、脈絡膜(全体、前面、後面、又は、1つ以上のサブ組織)、強膜(全体、前面、後面、又は、1つ以上のサブ組織)、硝子体(全体、混濁、浮遊物、剥離組織など)、及び病変部のうちのいずれかを検出するように構成されてよい。眼科観察装置1による観察対象が眼球組織ではない場合、解析部211は、例えば、瞼、マイボーム腺、眼窩などの任意の部位(組織)を検出するように構成されていてよい。解析部211によって検出される部位は、照明法、手術部位、手術法などに応じて決定されてよい。
【0083】
解析部211は、任意の領域抽出法を用いて静止画像から被検眼の所定部位の像を検出することができる。例えば、輝度に特徴のある部位の像を検出する場合、解析部211は、二値化などの輝度閾値処理を用いて静止画像から被検眼の所定部位の像を検出するように構成されてよい。形状に特徴のある部位の像を検出する場合、解析部211は、パターンマッチングなどの形状解析処理を用いて静止画像から被検眼の所定部位の像を検出するように構成されてよい。色調に特徴のある部位の像を検出する場合、解析部211は、特徴色抽出などの色解析処理を用いて静止画像から被検眼の所定部位の像を検出するように構成されてよい。また、解析部211は、被検眼の所定部位の像を特定するためのセグメンテーションを静止画像に適用することによって被検眼の所定部位の像を検出するように構成されてよい。一般に、セグメンテーションは、画像中の部分領域を特定する処理である。セグメンテーションは、任意の公知の画像処理技術を含んでいてよく、例えば、エッジ検出などの画像処理を利用したセグメンテーション、及び/又は、機械学習(例えば、深層学習)を利用したセグメンテーションを含んでいてよい。
【0084】
解析部211によって検出された被検眼の所定部位の像(その位置、範囲などを示す情報)は、目標位置決定部212に入力される。目標位置決定部212は、解析部211により検出された所定部位の像に少なくとも基づいて、所定の処置の目標位置を決定する。
【0085】
所定の処置は、手術における処置や治療における処置など、任意の医療行為であってよい。幾つかの例において、所定の処置は、白内障手術における、創口作成(角膜切開、強角膜切開)、眼粘弾剤注入、水晶体前嚢切開(CCC)、水晶体乳化吸引、IOL挿入、眼粘弾剤除去、及び創口閉鎖のいずれか1つ以上であってよい。幾つかの例において、所定の処置は、屈折矯正手術における任意の処置、低侵襲緑内障手術(MIGS)における任意の処置、網膜硝子体手術における任意の処置、及び、他の眼科手術における任意の処置のいずれかであってよい。
【0086】
目標位置決定処理の幾つかの例を説明する。第1の例では、被検眼の予備的な測定が行われる。予備的な測定により被検眼から得られた測定データは、眼科観察装置1の記憶部202に格納され、又は、眼科観察装置1によりアクセス可能な記憶装置に格納される。第1の例には図5に示す構成例が適用されてよい。データ処理部210Aは図4のデータ処理部210の例であり、目標位置決定部212Aは目標位置決定部212の例である。
【0087】
所定の処置が眼球切開(角膜切開、強角膜切開、結膜切開、強膜切開など)である場合の幾つかの態様において、予備的な測定は、例えば、波面センサを用いた被検眼の収差測定、角膜トポグラファを用いた被検眼の角膜形状測定、及び、前眼部OCT装置を用いた被検眼の角膜形状測定のいずれかであってよい。波面センサ及び角膜トポグラファは、例えば国際公開第2003/022138号に記載されている。前眼部OCTは、例えば国際公開第2017/154348号に記載されている。
【0088】
図5に示す測定データ203は、予備的な測定で被検眼から得られたデータの例である。測定データ203は、例えば、波面センサを用いて得られた被検眼の収差データ(角膜収差データ)、角膜トポグラファを用いて得られた被検眼の角膜形状データ、前眼部OCT装置を用いて得られた被検眼の角膜形状データなどを含む。
【0089】
第1の例の目標位置決定部212Aは、解析部211により検出された被検眼の所定部位の像と測定データ203とに少なくとも基づいて、所定の処置の目標位置の決定を行うように構成されている。所定の処置が眼球切開(角膜切開、強角膜切開など)である場合、目標位置決定部212Aは、切開により生じ得る角膜乱視を最も低減できる位置を求めることができる。
【0090】
例えば、目標位置決定部212Aは、測定データ203(角膜形状データ、角膜収差データなど)に基づいて、切開が角膜乱視に与える影響が小さい箇所を決定することができる。典型的には、切開による惹起乱視によって切開前の角膜乱視を矯正するために角膜の強主経線位置を切開することが行われている(強主経線切開)。この場合、測定データ203は、被検眼の角膜の強主経線位置を示すデータ(強主経線の角度方向を示すデータ)を含んでいてもよい。より一般に、測定データ203は、被検眼における具体的な目標位置の決定に用いられる概略的な目標位置を示すデータを含んでいてもよい。
【0091】
例えば、目標位置決定部212Aは、測定データ203に含まれる強主経線データ又は測定データ203から求めた強主経線データと、解析部211により検出された角膜輪部の像とに基づいて、被検眼の角膜輪部(又は、角膜輪部から所定距離だけ外側の閉曲線など)において強主経線方向に相当する位置を特定し、この位置を被検眼の目標切開位置に設定することができる。
【0092】
より一般に、目標位置決定部212Aは、測定データ203に含まれる概略的目標位置又は測定データ203から求めた概略的目標位置と、解析部211により検出された所定部位の像とに基づいて、被検眼の所定部位(又は、所定部位に対して所定の条件を満足する箇所)において概略的目標位置に相当する位置を特定し、この位置を被検眼に対する所定の処置の目標適用位置に設定することができる。
【0093】
決定される目標位置の個数は任意である。所定の処置が眼球切開である場合、例えば、メインポート(メイン創口、メイン切開創)の位置と、1つ以上のサイドポート(サイド創口、サイド切開創)の位置とを決定してもよい。目標位置の個数や位置は、所定の処置の種類、疾患の種類・程度、使用される器具の種類、医師の好みなど、各種の条件に基づいて設定することができる。
【0094】
目標位置決定処理の第2の例では、被検眼の測定を眼科観察装置1(又はそれを含むシステム)によって実行する。つまり、第2の例では、第1の例のような予備的な測定を行わなくてよい。よって、第2の例は、測定データが準備されていない場合にも適用可能である。
【0095】
なお、第2の例は、任意的に、予備的な測定で得られた測定データを参照してもよい。例えば、幾つかの態様は、予備的な測定で得られた第1の測定データと眼科観察装置1により得られた第2の測定データとの双方から第3の測定データを求め、この第3の測定データを参照して目標位置決定処理を行うように構成されてよい。第1及び第2の測定データから第3の測定データを求める処理は、任意の統計処理を含んでいてよい。また、幾つかの態様は、予備的な測定で得られた第1の測定データと眼科観察装置1により得られた第2の測定データとの一方を選択し、選択された測定データを参照して目標位置決定処理を行うように構成されてよい。
【0096】
眼科観察装置1により被検眼から得られた測定データは、眼科観察装置1の記憶部202に格納され、又は、眼科観察装置1によりアクセス可能な記憶装置に格納される。第2の例には図6に示す構成例が適用されてよい。データ処理部210Bは図4のデータ処理部210の例であり、目標位置決定部212Bは目標位置決定部212の例である。
【0097】
図6に示す態様の眼科観察装置1は、測定部220を更に含んでいる。測定部220は、被検眼の測定データを取得するための任意の眼科測定機能を有する。第1の例の予備的な測定も適用される眼科測定装置と同様に、所定の処置が眼球切開である場合、測定部220は、波面センサ、角膜トポグラファ、及び前眼部OCT装置のいずれかを含んでいてよい。
【0098】
図6に示す測定データ203は、測定部220により被検眼から得られたデータの例であり、例えば、波面センサを用いて得られた被検眼の収差データ(角膜収差データ)、角膜トポグラファを用いて得られた被検眼の角膜形状データ、及び、前眼部OCT装置を用いて得られた被検眼の角膜形状データのいずれかを含んでいてよい。
【0099】
第2の例の目標位置決定部212Bは、解析部211により検出された被検眼の所定部位の像と測定部220により取得された測定データ203とに少なくとも基づいて、所定の処置の目標位置の決定を行うように構成されている。
【0100】
第1の例の目標位置決定部212Aと同様に、所定の処置が眼球切開である場合、目標位置決定部212Bは、切開により生じ得る角膜乱視を最も低減できる位置を求めることができる。第2の例における目標位置の属性や目標位置決定処理の内容は、第1の例と同様であってよい。
【0101】
眼球切開により生じ得る角膜乱視を考慮する場合のように、所定の処置が被検眼に与える影響を考慮して目標位置を決定する場合には、図7に示す構成例が適用されてよい。データ処理部210Cは図6のデータ処理部210Bの例であり、目標位置決定部212Cは目標位置決定部212Bの例である。
【0102】
目標位置決定部212Cは、評価部213を含んでいる。評価部213は、測定部220により取得された被検眼の測定データに基づいて、所定の処置が被検眼に与える影響を評価するように構成されている。例えば、評価部213は、眼球切開(角膜切開、強角膜切開など)が被検眼の角膜乱視に与える影響を評価する。幾つかの態様において、評価処理は、例えば、角膜形状データや角膜収差データから強主経線方向を求める処理、強主経線方向の屈折力を求める処理、弱主経線方向を求める処理、弱主経線方向の屈折力を求める処理、屈折力の分布を求める処理などを含んでいてよい。
【0103】
更に、幾つかの態様の評価処理は、眼球切開前の角膜の状態(角膜形状データ、角膜収差データ、強主経線方向、強主経線方向の屈折力、弱主経線方向、弱主経線方向の屈折力、屈折力の分布など)に少なくとも基づいて、眼球切開後の角膜の状態をシミュレーションすることができる。幾つかの例のシミュレーションは、所定のシミュレーションプログラムにしたがうルールベース処理であってもよい。また、幾つかの例のシミュレーションは、眼球切開前の角膜の状態と、眼球切開の属性(切開位置、切開形状、切開寸法など)と、眼球切開後の角膜の状態とを含む訓練データによる教師あり学習によって構築された機械学習システム(ニューラルネットワーク、推論モデル)を用いて行ってもよい。評価部213により実行可能なシミュレーションはこれらに限定されず、例えば教師なし学習などの他の手法を利用したシミュレーションを含んでいてもよいし、2以上の手法を少なくとも部分的に組み合わせたシミュレーションを含んでいてもよい。
【0104】
図7の目標位置決定部212Cは、解析部211により検出された所定部位の像と、評価部213により得られた結果とに少なくとも基づいて、被検眼に対する所定の処理の目標位置を決定するように構成されている。例えば、目標位置決定部212Cは、被検眼に対する所定の処理の目標位置として、眼球切開により生じ得る角膜乱視が最も小さくなると推測される位置を求めることができる。
【0105】
目標位置決定処理の第3の例では、第1の例や第2の例のような被検眼の測定データを参照することなく、被検眼に対する所定の処置の目標位置を決定する。第3の例には図4(又は図5図7のいずれか)に示す構成例が適用されてよい。第3の例の目標位置決定部212は、解析部211により検出された被検眼の所定部位の像から所定の距離だけ離れた位置を、被検眼に対する所定の処置の目標位置として決定するように構成されている。所定の距離は、例えば、実距離(ミリメートル、マイクロメートルなど)として、又は画像距離(画素の個数など)として、定義されている。
【0106】
例えば、白内障手術の水晶体前嚢切開(CCC)において、解析部211は、被検眼の前眼部の特徴(角膜輪部の像、その寸法、瞳孔縁の像、その寸法など)を求めることができる。目標位置決定部212は、解析部211により求められた前眼部の特徴に基づいて、所定の形状及び所定の寸法の図形を求めることができる。この図形は、例えば、直径6ミリメートルの円である。この円は、例えば、角膜輪部の近似円(近似楕円)の中心を基準とした半径3ミリメートルの円、瞳孔縁の近似円(近似楕円)の中心を基準とした半径3ミリメートルの円、角膜輪部の近似円を等方的に拡大(縮小)した直径6ミリメートルの円、及び、角膜縁の近似円を等方的に拡大(縮小)した直径6ミリメートルの円のいずれかであってよい。なお、図形の形状や寸法は、ユーザーによって任意に変更可能であってよい。
【0107】
また、網膜硝子体手術において、解析部211は、被検眼の角膜輪部の像を検出することができる。目標位置決定部212は、検出された角膜輪部の像から外側に所定の距離(例えば、3~4ミリメートル)だけ離れた位置に、手術器具を挿入するための目標位置を設定することができる。なお、図形の形状や寸法は、ユーザーによって任意に変更可能であってよい。
【0108】
第3の例(又は他の例)に適用可能な目標位置決定処理(距離算出処理を含む)の例を説明する。以下、解析部211により検出される被検眼の所定部位が角膜輪部(虹彩外縁)である場合について説明するが、他の部位(例えば、瞳孔縁)を対象とした場合にも同様の処理を実行することができる。
【0109】
事前の準備として、術前に、被検眼の前眼部を撮影し、撮影時における被検眼と撮影装置との間の距離(ワーキングディスタンス(WD)を記録し、上記撮影で得られた撮影画像から角膜輪部を検出し、検出された角膜輪部の寸法(例えば、径)を計測し、得られた寸法の計測値を記録する。なお、事前に角膜輪部の寸法を求める手法は任意であってよく、例えば、前眼部のOCT画像(例えば、断面像又は3次元画像)から寸法を計測してもよいし、画像を利用することなく角膜輪部の寸法を直接に測定してもよい。
【0110】
以上の準備の下、術中に、眼科観察装置1を用いて、被検眼を撮影して観察画像を取得し(手術用顕微鏡10)、当該撮影時におけるワーキングディスタンスを記録し(制御部200)、上記撮影で得られた観察画像から角膜輪部を検出し(解析部211)、検出された角膜輪部の寸法を計測し(データ処理部210)、得られた寸法の計測値を記録する(制御部200)。
【0111】
更に、目標位置決定部212は、術前撮影でのワーキングディスタンスと術中撮影でのワーキングディスタンスとの関係(例えば、2つのワーキングディスタンスの比)に基づいて、術前の上記撮影画像のスケール(例えば、1画素あたりの実距離)と、術中の上記観察画像のスケールとの関係(例えば、2つの画像のスケールの比)を求める。更に、目標位置決定部212は、求められた術前画像のスケールと術中画像のスケールとの関係に基づいて、術中画像から検出された角膜輪部の像から外側に所定距離(例えば、3~4ミリメートル)だけ離れた箇所を特定する。本例では、制御部200(主制御部201)は、被検眼の観察画像(ライブ画像)を表示装置3に表示させるとともに、特定された箇所(目標位置)を示す目標位置情報を観察画像上に表示させることができる。目標位置情報の態様は任意であり、例えば、円形、楕円形、又は弧状の指標であってよい。
【0112】
幾つかの変形例を説明する。術前撮影において、被検眼(前眼部)に定規(ルーラー)を当てた状態で撮影を行い、得られた撮影画像に写った定規に基づき実距離を求めてもよい。同様に、術中撮影において、被検眼(前眼部)に定規を当てた状態で撮影を行い、得られた撮影画像に写った定規に基づき実距離を求めてもよい。角膜輪部から目標位置までの距離は、上記の例では3~4ミリメートルであるが、任意であってよい。例えば、術者の好み、角膜形状(例えば、角膜曲率又は角膜曲率分布)などに基づいて、角膜輪部から目標位置までの距離を設定することができる。
【0113】
図4図7のいずれかの構成例が適用される場合において、又は、他の構成例が適用される場合において、制御部200は、被検眼のライブ画像を手術用顕微鏡10から受けて表示装置3に表示させつつ、解析部211及び目標位置決定部212により求められた目標位置を示す目標位置情報を表示装置3に表示させる。
【0114】
このように構成された眼科観察装置1によれば、被検眼に対して適用される所定の処置の目標位置をライブ画像とともに提供することができるので、ユーザーは所定の処置を適用するべき位置をリアルタイムで把握することが可能である。これにより、手術(又は、治療など)の容易化、手術(又は、治療など)短時間化、処置のミスの低減や防止、患者の負担軽減などを図ることが可能になる。
【0115】
眼科観察装置1は、手術用顕微鏡10により生成されるライブ画像とともに表示される目標位置情報をリアルタイムで更新することができる。そのために、解析部211は、手術用顕微鏡10による動画像の生成と並行して、手術用顕微鏡10により逐次に生成されるフレーム(静止画像)から被検眼の所定部位の像を逐次に検出する。動画像生成及び像検出に並行して、目標位置決定部212は、解析部211により逐次に検出される所定部位の像に少なくとも基づいて、所定の処置の目標位置を逐次に決定する。動画像生成、像検出、及び目標位置決定に並行して、制御部200は、ライブ画像の表示(フレームの逐次更新)と、目標位置決定部212により逐次に決定される目標位置に基づく目標位置情報の更新(逐次切り替え)とを実行する。この構成によれば、ユーザーは、被検眼のライブ画像を観察しつつ、所定の処置の目標位置の変化をリアルタイムで把握することが可能となる。なお、目標位置の変化は、被検眼の動きなどに起因する。
【0116】
2以上の処置が順次に又は並行して行われる場合、眼科観察装置1は、処置ごとに別の処理内容を実行することができる。例えば、白内障手術では創口作成(角膜切開、強角膜切開)、眼粘弾剤注入、水晶体前嚢切開(CCC)、水晶体乳化吸引、IOL挿入、眼粘弾剤除去、創口閉鎖などの処置が実行される。
【0117】
一般に、被検眼に第1~第Nの処置が適用される場合において、解析部211は、第nの処置の前に手術用顕微鏡10により生成された第nの静止画像を解析して被検眼の第nの部位の像を検出することができる。
【0118】
ここで、Nは2以上の整数であり、nは1以上且つN以下の任意の整数である。1以上且つN以下の任意の2つの整数n、nについて(n≠n)、第nの処置と第nの処置とは同種の処置でも異種の処置でもよいし、第nの部位と第nの部位とは同じ部位でも異なる部位でもよい。
【0119】
更に、目標位置決定部212は、第nの静止画像から検出された第nの部位の像に少なくとも基づいて、第nの処置の目標位置である第nの目標位置を決定することができる。
【0120】
加えて、制御部200は、第nの処置のために、手術用顕微鏡10により取得されるライブ画像と、第nの目標位置を示す第nの目標位置情報とを表示させることができる(第nの表示制御)。
【0121】
2以上の処置が順次に行われる場合、眼科観察装置1は、処置の移行を自動検知するように構成されていてもよい。例えば、データ処理部210は、第1の処置から第2の処置への移行を検知するように構成される(処置移行検知部)。なお、ユーザーの指示(操作入力、音声入力など)によって眼科観察装置1が処置の移行を検知するように構成してもよい。
【0122】
白内障手術において創口作成、眼粘弾剤注入、水晶体前嚢切開、水晶体乳化吸引、IOL挿入、眼粘弾剤除去、創口閉鎖などが順次に行われるように、手術や治療の多くは、既定の手順にしたがって実行される。よって、或る手術(又は、或る治療)に対応した動作モードとして、その手術の各手順における処理内容(像検出、目標位置決定、目標位置情報表示など)をプリセットすることができる。
【0123】
眼科観察装置1は、このようにプリセットされた情報を参照することによって、新たな手順(新たな処置)に移行したことを自動で検知することができ、更に、この新たな手順に対して予め関連付けられた動作モードを実行することができる。
【0124】
処置の移行の自動検知は、例えば、ライブ画像を解析して被検眼の特定部位の状態を検出することにより実現されてよく、及び/又は、ライブ画像を解析して器具の像や眼内留置デバイスの像を検出することにより実現されてよい。
【0125】
例えば、白内障手術において水晶体前嚢切開(CCC)に移行したことの自動検知は、角膜切開創が既に形成されていることの検出と、水晶体前嚢への処置が未だなされていないことの検出との組み合わせによって実現することができる。或いは、水晶体前嚢切開(CCC)に移行したことの自動検知は、角膜切開創が既に形成されていることの検出と、CCC用器具の像の検出との組み合わせによって実現することもできる。
【0126】
なお、自動検知の対象となる処置は、水晶体前嚢切開(CCC)に限定されず、白内障手術における他の手順(他の処置)であってもよいし、他の任意の手術における任意の手順であってもよいし、任意の医療行為(治療、診断など)における任意の手順であってもよい。水晶体前嚢切開(CCC)以外の処置への移行の自動検出の具体的な手法については、水晶体前嚢切開(CCC)に関する上記例示と同じ要領で実行することができる。
【0127】
<動作・使用形態>
眼科観察装置1の動作及び使用形態について説明する。眼科観察装置1の動作及び使用形態の例を図8A及び8Bに示す。本例では白内障手術における角膜切開フェーズ及び水晶体前嚢切開(CCC)フェーズへの応用について説明するが、白内障手術の他のフェーズへの応用又は他の医療行為(手術、治療、診断など)への応用においても、実質的に本例と同様の動作及び使用形態を実施することが可能である。
【0128】
(S1:ライブ画像の生成及び表示を開始する)
まず、ユーザーは、操作装置2を用いて所定の操作を行うことで、眼科観察装置1による被検眼(前眼部)のライブ画像の生成及び表示を開始させる。具体的には、手術用顕微鏡10は、照明光学系30によって被検眼を照明しつつ撮像素子62L及び62Rによって被検眼のデジタル画像データ(映像)を生成する。生成された映像(ライブ画像301)は、表示装置3にリアルタイムで表示される(図9Aを参照)。つまり、手術用顕微鏡10により取得される動画像が表示装置3にライブ画像(観察画像)として表示される。ユーザーは、このライブ画像を観察しながら手術を行うことができる。
【0129】
(S2:白内障手術モードを選択する)
眼科観察装置1は、例えばユーザーの指示に対応して、動作モードを選択するための画面を表示装置3に表示させる。動作モードの選択肢には、例えば、白内障手術モード、網膜硝子体手術モードなどが含まれていてよい。ユーザーは、操作装置2を用いて所定の動作モードを選択する。本例では白内障手術モードが選択される。
【0130】
(S3:角膜切開フェーズに移行する)
白内障手術が開始され、処置フェーズが角膜切開に移る。
【0131】
(S4:ライブ画像から所定部位の像を検出する)
次に、解析部211は、ステップS1で生成が開始されたライブ画像(そのフレーム)から被検眼の所定部位の像を検出する。角膜切開のための検出対象となる部位は、例えば、瞳孔縁又は角膜輪部であってよい。
【0132】
幾つかの態様では、所定部位の像を検出するために、解析部211は、まず、二値化やエッジ検出やセグメンテーションをライブ画像301のフレームに適用する。図9Bに示す例では、ライブ画像301から瞳孔縁の像302を検出している。
【0133】
(S5:角膜切開の目標位置を決定する)
次に、目標位置決定部212は、ステップS4で検出された所定部位(瞳孔縁)の像に少なくとも基づいて、ライブ画像における角膜切開目標位置を決定する。目標位置決定部212は、例えば、前述したいずれかの処理例を実行する。
【0134】
図9Cに示す例では、目標位置決定部212は、まず、ステップS4で検出された瞳孔縁の像302から外側に所定距離だけ離れた箇所303を特定する。次に、目標位置決定部212は、事前に取得された測定データ203(角膜形状データ、角膜収差データなど)から被検眼の角膜の強主経線304を求める(図9Dを参照)。目標位置決定部212は、瞳孔縁の像302から外側に所定距離だけ離れた箇所303と、強主経線304とが交差する位置を角膜切開目標位置として決定する。図9Dに示す例では、2つの角膜切開目標位置305a及び305bが設定されている。
【0135】
(S6:角膜切開の目標位置情報をライブ画像上に表示する)
次に、制御部200は、ステップS5で決定された角膜切開目標位置を示す目標位置情報を被検眼のライブ画像上に表示させる。
【0136】
図9Eに示す例では、図9Dに示す例で決定された2つの角膜切開目標位置305a及び305bをそれぞれ示す2つの目標位置情報306a及び306bがライブ画像301上に表示されている。目標位置情報306a及び306bは、角膜切開において切開されるべき箇所を示しており、それぞれが弧状の指標像である。弧状の指標像の態様(長さ、曲率半径、太さなど)は予め設定されてよく、また、ユーザーにより任意に調整可能であってよい。これにより、ユーザーは、切開すべき角膜の箇所を容易に把握することができる。また、本例では、術後の角膜乱視を小さくすることを目的とした強主経線切開の容易化を図ることが可能である。
【0137】
(S7:水晶体前嚢切開に移行するか?)
ステップS4~S6は、少なくとも角膜切開が完了するまで繰り返し行われる。典型的には、眼粘弾剤注入が開始されるまで、又は、水晶体前嚢切開(CCC)が開始されるまで、ステップS4~S6が繰り返し実行される。ステップS4~S6は、ライブ画像301として逐次に取得されるフレームに対して逐次に適用される。例えば、ライブ画像301(時系列画像)として取得される全てのフレームに対してステップS4~S6を適用することができ、或いは、ライブ画像301として取得される全てのフレームから選択されたフレームに対してステップS4~S6を適用することができる。フレームの選択は、例えば、所定枚数間隔で選択を行う間引き処理であってよい。このような繰り返し処理により、被検眼が動いたことにより角膜切開目標位置が変化しても、ユーザーは、切開すべき角膜の箇所を容易に且つリアルタイムで把握することができる。
【0138】
角膜切開後の任意の段階においても角膜切開目標位置情報(例えば、弧状の指標像)を表示することができる。例えば、ユーザーの操作に対応して角膜切開目標位置情報を表示させることができる。これにより、ユーザーは、角膜切開における目標位置を所望のタイミングで確認することができる。例えば、サイドポートは小さいため術中に見失うおそれがあるが、本例によればサイドポートの位置をいつでも確認することが可能である。なお、角膜切開目標位置情報が示す箇所が実際に切開された場合、制御部200は、この角膜切開目標位置情報が示す箇所の座標情報を記憶部202等に記憶することができる。これに対し、角膜切開目標位置情報が示す箇所とは異なる箇所が実際に切開された場合には、制御部200は、実際に切開された箇所の座標情報を記憶部202等に記憶することができる。このとき、更に角膜切開目標位置情報が示す箇所の座標情報を記憶部202等に記憶してもよい。
【0139】
(S8:ライブ画像から所定部位の像を検出する)
水晶体前嚢切開(CCC)フェーズに移行すると、解析部211は、ステップS1で生成が開始されたライブ画像(そのフレーム)から被検眼の所定部位の像を検出する。水晶体前嚢切開のための検出対象となる部位は、例えば、瞳孔縁又は角膜輪部であってよい。
【0140】
幾つかの態様では、所定部位の像を検出するために、解析部211は、まず、二値化やエッジ検出やセグメンテーションをライブ画像301のフレームに適用する。図10Aに示す例では、角膜切開フェーズと同様に、ライブ画像301から瞳孔縁の像311を検出している。
【0141】
(S9:水晶体前嚢切開の目標位置を決定する)
次に、目標位置決定部212は、ステップS8で検出された所定部位(瞳孔縁)の像に少なくとも基づいて、ライブ画像における水晶体前嚢切開目標位置を決定する。目標位置決定部212は、例えば、前述したいずれかの処理例を実行する。
【0142】
図10Bに示す例では、目標位置決定部212は、ステップS8で検出された瞳孔縁の像311から内側に所定距離だけ離れた箇所を特定し、特定された箇所を水晶体前嚢切開目標位置312に設定する。
【0143】
(S10:水晶体前嚢切開の目標位置情報をライブ画像上に表示する)
次に、制御部200は、ステップS9で決定された角膜切開目標位置を示す目標位置情報を被検眼のライブ画像上に表示させる。図10Cに示す例では、図10Bに示す例で決定された水晶体前嚢切開目標位置312を示す目標位置情報313がライブ画像301上に表示されている。目標位置情報313は、円形状の指標像(又は、弧状の指標像でもよい)であり、この指標像の一部に沿って水晶体前嚢切開を行うよう促すものである。円形状の指標像の態様は予め設定されてよく、また、ユーザーにより任意に調整可能であってよい。これにより、ユーザーは、切開すべき水晶体前嚢の箇所を容易に把握することができる。
【0144】
(S11:次の処置に移行するか?)
ステップS8~S10は、少なくとも水晶体前嚢切開が完了するまで繰り返し行われる。典型的には、水晶体乳化吸引が開始されるまでステップS8~S10が繰り返し実行される。ステップS8~S10は、ライブ画像301として逐次に取得されるフレームに対して逐次に適用される。例えば、ライブ画像301(時系列画像)として取得される全てのフレームに対してステップS8~S10を適用することができ、或いは、ライブ画像301として取得される全てのフレームから選択されたフレームに対してステップS8~S10を適用することができる。フレームの選択は、例えば、所定枚数間隔で選択を行う間引き処理であってよい。このような繰り返し処理により、被検眼が動いたことにより角膜切開目標位置が変化しても、ユーザーは、切開すべき角膜の箇所を容易に且つリアルタイムで把握することができる。
【0145】
水晶体前嚢切開後の任意の段階においても水晶体前嚢切開目標位置情報(例えば、円形状の指標像)を表示することができる。例えば、ユーザーの操作に対応して水晶体前嚢切開目標位置情報を表示させることができる。これにより、ユーザーは、水晶体前嚢切開における目標位置を所望のタイミングで確認することができる。水晶体前嚢切開目標位置情報が示す箇所が実際に切開された場合、制御部200は、この水晶体前嚢切開目標位置情報が示す箇所の座標情報を記憶部202等に記憶することができる。これに対し、水晶体前嚢切開目標位置情報が示す箇所とは異なる箇所が実際に切開された場合には、制御部200は、実際に切開された箇所の座標情報を記憶部202等に記憶することができる。このとき、更に水晶体前嚢切開目標位置情報が示す箇所の座標情報を記憶部202等に記憶してもよい。
【0146】
(S12:他の処置を行う)
水晶体前嚢切開が完了したら、ユーザーは、それ以降の処置(水晶体乳化吸引、IOL挿入、眼粘弾剤除去、創口閉鎖など)を順次に行う。これにより白内障手術は完了となる(エンド)。
【0147】
他の態様を簡単に説明する。網膜硝子体手術では、例えば、解析部211が観察画像に画像処理(二値化など)を適用して角膜輪部の像を検出し、目標位置決定部212がこの角膜輪部の像から外側に所定距離(例えば、3~4ミリメートル)だけ離れた箇所を目標位置として特定し、制御部200がこの目標位置に(例えば円形状の)指標を表示する。
【0148】
網膜硝子体手術のために表示される情報の例を図11に示す。本例では、手術用顕微鏡10により取得されるライブ画像401とともに、角膜輪部の像402から外側に所定距離(例えば、3~4ミリメートル)だけ離れた箇所を示す円形状の指標像403が表示されている。ユーザーは、指標像403を参照しつつ、網膜硝子体手術における強膜切開(結膜切開)を行ってポートを作成することができる。ポートは、ライトガイド(照明)や各種器具を眼内に挿入するための経路を提供する。図11には、指標像403上に形成された3つのポート404a、404b及び404cが提示されている。眼科観察装置1は、形成された各ポートの座標情報を記録することができ、更に、例えばユーザーの要求に対応してポートの位置を示す指標像をライブ画像上に表示させることができる。
【0149】
以上に説明したように、一般的に眼科手術は眼内に器具を挿入して行われる。本開示は、例えば、最適な処置箇所(例えば、器具挿入箇所、切開箇所、穿孔箇所など)をライブ画像上に表示することができる。例えば、手術中に処置目標位置を示す指標(例えば、画像)を表示することによって、ユーザーの視野内において処置目標位置のマーキングを行い、手術の円滑化を図るものである。
【0150】
更に、本開示は、ライブ画像として逐次に取得された複数のフレームに対して逐次に処理を施すことによって、処置目標位置のトラッキングを行うことが可能である。また、実際に処置が行われた後に、当該処置箇所をライブ画像上に提示することが可能である。
【0151】
本開示では、白内障手術(角膜切開時、水晶体前嚢切開時など)や網膜硝子体手術への応用を説明したが、本開示の応用がこれらに限定されないことは当業者であれば理解できるであろう。
【0152】
なお、幾つかの態様において、白内障手術の角膜切開時には、前眼部の特徴(角膜輪部、瞳孔、それらの寸法など)や、被検眼の測定データなどに基づいて、切開目標となる図形(例えば、弧状の線)を表示することができる。この図形の寸法や形状は可変であってよい。なお、術前又は術中に、波面センサや角膜トポグラファや前眼部OCTで角膜データを取得し、角膜乱視への影響が小さい箇所を特定し、ライブ画像から特徴位置(例えば、瞳孔縁、瞳孔中心)を求めることによって、角膜切開のためのマーキングを行うことができる。
【0153】
幾つかの態様において、白内障手術の水晶体前嚢切開時には、前眼部の特徴(角膜輪部、瞳孔、それらの寸法など)から決定された図形(例えば、直径6ミリメートルの円)を切開目標として表示することができる。この図形の寸法や形状は可変であってよい。なお、術前又は術中に、所定のデータ(例えば、角膜輪部径、瞳孔径)を取得し、表示される指標像(図形)の寸法を決定し、ライブ画像から特徴部(例えば、角膜輪部、瞳孔縁)を検出し、決定された寸法の指標像を表示することによって、水晶体前嚢切開のためのマーキングを行うことができる。
【0154】
幾つかの態様において、網膜硝子体手術時には、角膜輪部から外側に所定距離(例えば、3~4ミリメートル)だけ離れた位置に器具挿入目標(穿孔目標、ポート形成目標)となる図形(例えば、円形状の画像)を表示することができる。この図形の寸法や形状は可変であってよい。
【0155】
これらの以外の手術、治療、検査などにおいても、所定の処置が適用されるべき位置を示す目標位置情報をライブ画像とともに表示させることが可能である。
【0156】
これにより、手術時、治療時、検査時などにおける処置の容易化、短時間化、ミス低減、患者の負担軽減などを達成することが可能になる。
【0157】
<眼科観察装置を制御する方法>
例示的な実施形態(例えば、上記した眼科観察装置1)は、眼科観察装置を制御する方法を提供する。以下に説明する例示的な方法に対し、上記実施形態の眼科観察装置1に関する任意の事項を組み合わせることが可能である。
【0158】
例示的な態様の方法によって制御される眼科観察装置は、プロセッサ(例えば、制御部200及びデータ処理部210)を含み、被検眼の動画像を生成する(手術用顕微鏡10)。例示的な態様の方法は、まず、プロセッサに、動画像に含まれる静止画像を解析させて、被検眼の所定部位の像を検出させる。更に、例示的な態様の方法は、プロセッサに、静止画像から検出された所定部位の像に少なくとも基づいて、所定の処置の目標位置を決定させる。加えて、例示的な態様の方法は、プロセッサに、動画像を表示装置に表示させるとともに、決定された目標位置を示す目標位置情報を表示装置に表示させる。
【0159】
このような例示的な態様の方法によれば、上記実施形態の眼科観察装置1と同様の作用及び効果を奏することができる。また、上記実施形態の眼科観察装置1に関する事項を例示的な態様の方法に組み合わせることで、その結果として得られる方法は、組み合わされた事項に対応する作用及び効果を奏することができる。
【0160】
<プログラム>
例示的な実施形態は、上記した例示的な態様の方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供する。このようなプログラムに対して、上記実施形態の眼科観察装置1に関する事項を組み合わせることが可能である。
【0161】
このようなプログラムによれば、上記実施形態の眼科観察装置1と同様の作用及び効果を奏することができる。また、上記実施形態の眼科観察装置1に関する事項をプログラムに組み合わせることで、その結果として得られるプログラムは、組み合わされた事項に対応する作用及び効果を奏することができる。
【0162】
<記録媒体>
例示的な実施形態は、上記したプログラムを記録したコンピュータ可読な非一時的記録媒体を提供する。このような記録媒体に対して、上記実施形態の眼科観察装置1に関する事項を組み合わせることが可能である。非一時的記録媒体の形態は、任意であってよく、その例として、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがある。
【0163】
このような記録媒体によれば、上記実施形態の眼科観察装置1と同様の作用及び効果を奏することができる。また、上記実施形態の眼科観察装置1に関する事項を記録媒体に組み合わせることで、その結果として得られる記録媒体は、組み合わされた事項に対応する作用及び効果を奏することができる。
【0164】
本開示は、実施態様を例示したものに過ぎず、本開示及びその均等の範囲内において任意の変形、省略、追加、置換などを施すことが可能である。
【符号の説明】
【0165】
1 眼科観察装置
2 操作装置
3 表示装置
10 手術用顕微鏡
30 照明光学系
40 観察光学系
200 制御部
203 測定データ
210、210A、210B、210C データ処理部
211 解析部
212、212A、212B、212C 目標位置決定部
213 評価部
220 測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C
図11