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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ダクト構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/06 20060101AFI20241211BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241211BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241211BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241211BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20241211BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241211BHJP
   H01M 50/207 20210101ALI20241211BHJP
【FI】
B60K11/06
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M50/204 401H
H01M50/207
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023000836
(22)【出願日】2023-01-06
(65)【公開番号】P2024097406
(43)【公開日】2024-07-19
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 大悟
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第218182315(CN,U)
【文献】特開2014-084044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/06
B60K 1/04
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6563
H01M 50/204
H01M 50/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるバッテリパックの内部に設けられ、該バッテリパックの吸気口とバッテリに冷却風を送風するファンとを接続するダクト構造であって、
不織布により形成されたダクト部材を備え、
前記ダクト部材は、前記ファンの上方に配置されて水平方向に延在する流路を有し、
前記水平方向に延在する前記流路を区画形成する壁部のうち、鉛直方向に延在する第1壁部の厚みは、前記水平方向に延在する第2壁部の厚みよりも圧縮により小さくする
ダクト構造。
【請求項2】
請求項1に記載のダクト構造であって、
前記ダクト部材は、前記第1壁部における前記不織布の密度が前記第2壁部における前記不織布の密度よりも高く構成される、
ダクト構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダクト構造であって、
前記ダクト部材は、上側部材と下側部材とを備え、
前記上側部材及び前記下側部材は、外縁部が互いに当接し、前記上側部材と前記下側部材との間に前記流路が区画形成され、
前記上側部材及び前記下側部材の当接部は、締結手段により他の部材に固定される固定部を有し、
前記固定部の厚みは、前記固定部を除く前記当接部の厚みよりも小さい、
ダクト構造。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のダクト構造であって、
前記流路は、流れ方向に直交する方向に複数に分割されており、
各流路を区画形成する壁部のうち、鉛直方向に延在する前記第1壁部の厚みは、前記水平方向に延在する前記第2壁部の厚みよりも圧縮により小さくする
ダクト構造。
【請求項5】
請求項4に記載のダクト構造であって、
前記ダクト部材は、上側部材と下側部材とを備え、
前記上側部材及び前記下側部材は、外縁部が互いに当接し、前記上側部材と前記下側部材との間に各流路が区画形成され、
前記上側部材には、前記下側部材に向かって凹んだ少なくとも1つの上側凹部が設けられており、
前記下側部材には、前記上側部材に向かって凹み、前記上側凹部に当接する少なくとも1つの下側凹部が設けられており、
前記上側凹部及び前記下側凹部は、各流路を圧縮により区画形成する前記第1壁部を有する、
ダクト構造。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のダクト構造であって、
前記第2壁部の厚みは、前記第1壁部の厚みよりも2~4倍大きい、
ダクト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布により形成されたダクト部材を備えるダクト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池(バッテリとも称する)に関する研究開発が行われている。
【0003】
車両の駆動源の電動化に伴って、車両にはモータ等に電力を供給するバッテリが搭載される。バッテリは電力供給時や充電時に発熱するので、バッテリを冷却する必要がある。例えば、特許文献1には、自動車に搭載された電池に対して冷却風を送風して電池を冷却する構成が記載されている。
【0004】
また、特許文献1には、電池ケースや送風ファンに接続され、冷却風を電池に送風するための通気ダクトが記載されている。特許文献1の通気ダクトは、プレス加工によって不織布が賦形された一対の半割れ体を組み合わせて一体化された部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-99367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
不織布は吸音性能に優れており、特許文献1のように通気ダクトを不織布により形成することで、ファン等の駆動音の吸音を期待できる。一方で、不織布は樹脂や金属等と比較すると剛性が低い。不織布により形成されたダクト部材に関して、剛性の観点から改善の余地があった。
【0007】
本発明は、不織布で形成されたダクト部材の剛性を向上させることができるダクト構造を提供する。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
車両に搭載されるバッテリパックの内部に設けられ、該バッテリパックの吸気口とバッテリに冷却風を送風するファンとを接続するダクト構造であって、
不織布により形成されたダクト部材を備え、
前記ダクト部材は、前記ファンの上方に配置されて水平方向に延在する流路を有し、
前記水平方向に延在する前記流路を区画形成する壁部のうち、鉛直方向に延在する第1壁部の厚みは、前記水平方向に延在する第2壁部の厚みよりも圧縮により小さくする
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、不織布で形成されたダクト部材の剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のダクト構造の一実施形態である吸気ダクト13が搭載されるバッテリパック1の斜視図である。
図2】バッテリパック1の分解斜視図である。
図3】ファン12に接続された吸気ダクト13の斜視図である。
図4】下流側ダクト部材40の斜視図である。
図5図4におけるA-A線断面図であり、水平流路410の断面の一部を示す図である。
図6】不織布で形成された部材の厚みと圧縮・引張剛性との関係を示したグラフである。
図7】不織布で形成された部材の厚みと曲げ剛性との関係を示したグラフである。
図8図4におけるB部分の設けられた固定部13aを水平方向から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のダクト構造の一実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0012】
[バッテリパック]
先ず、本発明のダクト構造の一実施形態である吸気ダクト13が搭載されるバッテリパック1について説明する。図1に示すように、バッテリパック1は、車両Vに搭載されている。車両Vは、ハイブリッド車や電気自動車等の電動車両であって、バッテリパック1に蓄電された電力によってモータを駆動することで走行可能に構成される。バッテリパック1は、前後方向に沿って延びる左右一対の骨格フレーム部材3の間において、フロアパネル2に載置され、フロアパネル2に固定される。フロアパネル2は車室及び荷室の床部を構成し、バッテリパック1の上方には、後部座席(不図示)が配置される。
【0013】
図2に示すように、バッテリパック1は、バッテリモジュール11と、ファン12と、吸気ダクト13と、送風ダクト14と、バッテリECU(Electronic Control Unit)15と、ジャンクションボード16と、これらの部材を収容するバッテリケース17と、を備える。
【0014】
バッテリケース17は、ベースプレート171と、ベースプレート171を上方から覆うカバー172と、を有する。ベースプレート171には、バッテリモジュール11、ファン12、及び送風ダクト14が載置される。カバー172は、ベースプレート171を覆い、フロアパネル2に固定される。カバー172の前面には吸気口17aが形成されており、吸気口17aは通気可能なグリル18により覆われている。
【0015】
バッテリモジュール11は、車幅方向に長い略直方体形状を有し、ベースプレート171に固定されている。バッテリモジュール11は、車幅方向に積層された複数のバッテリセルを有する。隣り合うバッテリセルの間には、セル間流路(不図示)が形成されており、送風ダクト14から送出された冷却風がセル間流路を流れることで、バッテリモジュール11が冷却される。
【0016】
ファン12は、ベースプレート171に固定されている。ファン12は、例えばシロッコファンである。ファン12は、回転軸方向(本実施形態では上下方向)に設けられた吸込口12aから冷却風を吸い込んで、遠心方向に設けられた吹出口12bから冷却風を送風ダクト14へ吹き出す。
【0017】
吸気ダクト13は、図2及び図3に示すように、カバー172に設けられた吸気口17aとファン12の吸込口12aとを接続する。吸気ダクト13は、車室の空気を冷却風として、吸気口17aからファン12まで案内する。
【0018】
吸気ダクト13は、上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40とを備える。上流側ダクト部材30は、吸気口17aに接続され、バッテリモジュール11の上方に配置される。下流側ダクト部材40は、ファン12の吸込口12aに接続され、バッテリモジュール11の右側に配置される。吸気ダクト13の詳細については、後述する。
【0019】
送風ダクト14は、バッテリモジュール11とファン12の間に設けられ、ファン12の吹出口12bと連結している。送風ダクト14は、吹出口12bから吹き出された冷却風をバッテリモジュール11の下面に沿うように送出する。バッテリモジュール11の下方に送出された冷却風は、セル間流路を下方から上方に流れてバッテリモジュール11を冷却し、バッテリモジュール11の上面から排出される。その後、冷却風は、バッテリケース17内を流れ、図1の矢印が示すように、バッテリケース17の外部に排出される。
【0020】
バッテリECU15は、バッテリモジュール11の充電及び放電を制御する。バッテリECU15は、バッテリモジュール11に取り付けられたブラケット19に載置されており、上流側ダクト部材30とバッテリモジュール11との間に配置されている。バッテリECU15は、プロセッサ、メモリ、インターフェース等を備える。
【0021】
ジャンクションボード16は、バッテリモジュール11と外部機器(不図示)とを電気的に接続し、バッテリモジュール11の充電電力及び放電電力が流れる配線部品を含む。ジャンクションボード16は、下流側ダクト部材40の上方、且つ上流側ダクト部材30の右側に配置される。ジャンクションボード16は、下流側ダクト部材40の上方に設けられたブラケット60に載置される。
【0022】
[吸気ダクト]
次に、吸気ダクト13の詳細について、図3図8を参照して説明する。
【0023】
吸気ダクト13は、前述のとおり、車両Vに搭載されるバッテリパック1の内部に設けられている。吸気ダクト13は、バッテリパック1の吸気口17aとファン12とを接続する。
【0024】
図3に示すように、吸気ダクト13は上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40とを備える。上流側ダクト部材30と下流側ダクト部材40とは、上流側ダクト部材30の端部を下流側ダクト部材40の端部内に上方から挿入することで接続される。
【0025】
上流側ダクト部材30は、正面視で略L字形状のダクトである。上流側ダクト部材30は、例えば樹脂により形成される。上流側ダクト部材30には、前方に開口した吸気口接続部30aが設けられており、吸気口接続部30aは、カバー172の内側から吸気口17aに接続する。
【0026】
上流側ダクト部材30は、水平部31と、鉛直部32と、屈曲部33と、を有する。水平部31は、バッテリモジュール11の上面に沿って水平方向に延在する。鉛直部32は、バッテリモジュール11の右面に沿って鉛直方向に延在する。鉛直部32の下端は、下方に開口しており、下流側ダクト部材40に接続する。屈曲部33は、水平部31と鉛直部32とを接続する。屈曲部33は、水平部31内を流れる冷却風の進行方向を水平方向から鉛直方向に変更させて、冷却風を鉛直部32に案内する。
【0027】
下流側ダクト部材40は、正面視で略L字形状のダクトである。下流側ダクト部材40には、下方に開口したファン接続部40a(図4参照)が設けられており、ファン接続部40aは、上方からファン12の吸込口12aに接続する。
【0028】
下流側ダクト部材40は、上側部材40Aと下側部材40Bとにより構成される。下側部材40Bは、前述したファン接続部40aを有し、ファン12に接続される。上側部材40Aは、下側部材40Bに上方から取り付けられる。上側部材40Aと下側部材40Bとは、水平方向に延在する外縁部において当接し、接着剤等により接合され、ファン12に連通する吸気流路を区画形成する。
【0029】
下流側ダクト部材40は、図3及び図4に示すように、水平部41と、鉛直部42と、屈曲部43と、を有する。水平部41は、ファン12の上方で水平方向に延在する。鉛直部42は、バッテリモジュール11の右面に沿って鉛直方向に延在する。鉛直部42の上端は、上方に開口しており、上流側ダクト部材30に接続する。屈曲部43は、水平部41と鉛直部42とを接続する。屈曲部43は、鉛直部42内を流れる冷却風の進行方向を鉛直方向から水平方向に変更させて、冷却風を水平部41に案内する。
【0030】
ここで、下流側ダクト部材40の内部に形成される流路のうち水平部41の内部に形成される水平流路410について、図5を用いて説明する。図5図4のA-A線断面図である。
【0031】
水平流路410は、ファン12の上方で水平方向に延在する。水平流路410は、鉛直方向に延在する立壁部411と、水平方向に延在する水平壁部412と、により区画形成される。水平壁部412は、立壁部411の上端及び下端に接続し、水平方向に延在する。
【0032】
また、水平流路410は、流れ方向に直交する方向(本実施形態では前後方向)に複数に分割されている。本実施形態では、水平流路410は3つに分割されており、各水平流路410も、立壁部411と水平壁部412とにより区画形成されている。換言すると、隣り合う水平流路410の間に立壁部411が設けられており、鉛直方向から入力される荷重に対して下流側ダクト部材40の剛性が向上されている。3つの水平流路410は、左右方向に延在し、ファン接続部40a近傍で合流する。
【0033】
各水平流路410を区画形成する立壁部411について詳しく説明する。上側部材40Aには、下側部材40Bに向かって凹んだ2つの上側凹部41Aが設けられており、下側部材40Bには、上側部材40Aに向かって凹み、上側凹部41Aに当接する2つの下側凹部41Bが設けられている。上側凹部41A及び下側凹部41Bは、各水平流路410を区画形成する立壁部411を有する。なお、上側凹部41Aの数及び下側凹部41Bの数は、分割された水平流路410の数に応じて決まり、例えば、水平流路410が2つに分割される場合には上側凹部41Aの数及び下側凹部41Bの数はそれぞれ1つである。
【0034】
下流側ダクト部材40は、不織布により形成される。具体的には、シート状の不織布をプレス加工して上側部材40A及び下側部材40Bを成形し、上側部材40A及び下側部材40Bを接合して下流側ダクト部材40が形成される。不織布は、吸音性能に優れており、ファン12が駆動する時に発生する駆動音や、冷却風が流れる時に発生する流体音の音響エネルギーを吸収する。ファン12に連通する下流側ダクト部材40を不織布により形成することで、ファン12の駆動音を吸音し、吸気ダクト13を伝って吸気口17aから車室に漏れる駆動音を低減できる。
【0035】
一方、不織布は、樹脂や金属等と比較すると剛性が低く、変形しやすい。本実施形態では、鉛直方向において、下流側ダクト部材40は、ジャンクションボード16及びベースプレート171に挟まれて配置されている。下流側ダクト部材40にジャンクションボード16及びベースプレート171から鉛直方向の荷重が入力されると、下流側ダクト部材40は変形し得る。よって、下流側ダクト部材40は、鉛直方向から入力される荷重に対して変形しにくい構成、すなわち剛性が高い構成であることが好ましい。
【0036】
図6は、不織布で形成された部材(以下、不織布部材とも称する)の厚みと圧縮・引張剛性との関係を示したグラフである。ここで、不織布部材の厚みは、不織布部材がプレス加工等により圧縮されることで変化する。不織布部材の厚みが小さいとき、不織布部材が圧縮されて高密度の状態となっており、圧縮・引張剛性は高い値をとる。一方で、不織布部材の厚みが大きいとき、不織布部材が圧縮されず(若しくは圧縮の程度が小さく)低密度の状態となっており、圧縮・引張剛性は低い値をとる。
【0037】
図7は、不織布部材の厚みと曲げ剛性との関係を示したグラフである。不織布部材の厚みが小さいとき、不織布部材の曲げ剛性は低いものの、厚みが大きくなるに連れて、不織布部材の曲げ剛性は高くなる。
【0038】
図5に戻り、本実施形態では、水平流路410を区画形成する壁部のうち、鉛直方向に延在する立壁部411の厚みt1は、水平方向に延在する水平壁部412の厚みt2よりも小さい。なお、図5では、下側部材40Bの最も後側の立壁部411の厚みに符号t1を付し、下側部材40Bの水平壁部412の厚みに符号t2を付しているが、各水平流路410を区画形成する他の立壁部411の厚みに符号t1を付し、上側部材40Aの水平壁部412の厚みに符号t2を付した場合も同様に、立壁部411の厚みt1は水平壁部412の厚みt2よりも小さい。例えば、水平壁部412の厚みt2は、立壁部411の厚みt1の2~4倍程度である。
【0039】
具体的には、下流側ダクト部材40を不織布により成形するとき、立壁部411に対応する部分に対して局所的に圧縮率が高くなるようにプレス加工等を行う。立壁部411の厚みt1が水平壁部412の厚みt2よりも小さいことにより、水平壁部412と比較して立壁部411の圧縮・引張剛性は高くなる。よって、立壁部411は、鉛直方向から荷重が入力されても圧縮されにくくなり、吸気ダクト13が潰れにくくなる。
【0040】
逆に、水平壁部412の厚みt2は立壁部411の厚みt1よりも大きいので、立壁部411と比較して水平壁部412の曲げ剛性は高くなる。よって、水平壁部412は、鉛直方向から荷重が入力されても曲がりにくくなり、吸気ダクト13は曲がりにくくなる。
【0041】
前述のとおり、成形時、不織布材料の立壁部411に対応する部分を圧縮して厚みを小さくするので、下流側ダクト部材40は、立壁部411における不織布の密度が水平壁部412における不織布の密度よりも高く構成される。このように、圧縮により立壁部411における不織布の密度を高くすることで、立壁部411の厚みを水平壁部412の厚みよりも小さくできる。
【0042】
図3及び図4に戻り、下流側ダクト部材40の上側部材40A及び下側部材40Bの外縁部における当接部44には、3つの固定部13aが設けられている。固定部13aは、例えば、不図示のピン状のクリップのような締結手段が挿通可能な挿通孔を有する。下流側ダクト部材40は、固定部13aとベースプレート171に設けられた固定部(不図示)とにクリップを差し込んで、ベースプレート171に固定される。なお、締結手段はボルト等でもよい。また、ベースプレート171に対する下流側ダクト部材40の固定は、これらに限られず、任意の固定方法を採用できる。
【0043】
図8は、図4中のB部分の設けられた固定部13aを水平方向から見た概略図である。図8に示すように、固定部13aの厚みは、固定部13aを除く当接部44の厚みよりも小さい。上側部材40A及び下側部材40Bの当接部44は、固定部13aの厚みを局所的に小さくしているので、クリップ等により下流側ダクト部材40をベースプレート171に固定しやすくなる。また、固定部13aを除く当接部44は、厚みが大きいので、当接部44の曲げ剛性は高くなり、鉛直方向から入力される荷重に対して曲がりにくい構成とすることができる。
【0044】
ところで、下流側ダクト部材40の水平壁部412の厚みは大きく形成されているので、水平壁部412での吸音性能は高くなる。特に、ファン12の駆動音は先ず下流側ダクト部材40の下方から上方に向かって進行するので、下流側ダクト部材40の上側部材40Aの水平壁部412の厚みを大きくすることで、下流側ダクト部材40での吸音性能を高めることができる。
【0045】
以上のように、本実施形態の下流側ダクト部材40によれば、吸音性能を高くでき、且つ、外部から入力される荷重に対して高剛性な構造とすることができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0047】
例えば、前述した実施形態では、水平流路410を複数に分割したが、分割しなくてもよい。すなわち、上側凹部41A及び下側凹部41Bを設けなくてもよい。
【0048】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0049】
(1) 車両(車両V)に搭載されるバッテリパック(バッテリパック1)の内部に設けられ、該バッテリパックの吸気口(吸気口17a)とバッテリ(バッテリモジュール11)に冷却風を送風するファン(ファン12)とを接続するダクト構造(吸気ダクト13)であって、
不織布により形成されたダクト部材(下流側ダクト部材40)を備え、
前記ダクト部材は、前記ファンの上方に配置されて水平方向に延在する流路(水平流路410)を有し、
前記水平方向に延在する前記流路を区画形成する壁部のうち、鉛直方向に延在する第1壁部(立壁部411)の厚みは、前記水平方向に延在する第2壁部(水平壁部412)の厚みよりも小さい、
ダクト構造。
【0050】
不織布により形成された部材の圧縮・引張剛性は厚みが小さいほど高くなり、曲げ剛性は厚みが大きいほど低くなる。(1)によれば、鉛直方向に延在する第1壁部の厚みは水平方向に延在する第2壁部の厚みよりも小さいので、第1壁部の圧縮・引張剛性は高くなり、鉛直方向から入力される荷重に対して圧縮されにくいダクト構造とすることができる。さらに、第2壁部の厚みは第1壁部の厚みよりも大きいので、第2壁部の曲げ剛性は高くなり、鉛直方向から入力される荷重に対して曲がりにくいダクト構造とすることができる。
【0051】
(2) (1)に記載のダクト構造であって、
前記ダクト部材は、前記第1壁部における前記不織布の密度が前記第2壁部における前記不織布の密度よりも高く構成される、
ダクト構造。
【0052】
(2)によれば、圧縮により第1壁部における不織布の密度を第2壁部の密度よりも高くすることで、第1壁部の厚みを第2壁部の厚みよりも小さくできる。
【0053】
(3) (1)又は(2)に記載のダクト構造であって、
前記ダクト部材は、上側部材(上側部材40A)と下側部材(下側部材40B)とを備え、
前記上側部材及び前記下側部材は、外縁部が互いに当接し、前記上側部材と前記下側部材との間に前記流路が区画形成され、
前記上側部材及び前記下側部材の当接部(当接部44)は、締結手段により他の部材(ベースプレート171)に固定される固定部(固定部13a)を有し、
前記固定部の厚みは、前記固定部を除く前記当接部の厚みよりも小さい、
ダクト構造。
【0054】
(3)によれば、固定部では他の部分よりも厚みが小さいので、締結手段による固定が行いやすい。一方で、固定部を除く当接部の厚みは固定部の厚みよりも大きいので、当接部の曲げ剛性が高くなり、鉛直方向から入力される荷重に対して曲がりにくい構成とすることができる。
【0055】
(4) (1)又は(2)に記載のダクト構造であって、
前記流路は、流れ方向に直交する方向に複数に分割されており、
各流路を区画形成する壁部のうち、鉛直方向に延在する前記第1壁部の厚みは、前記水平方向に延在する前記第2壁部の厚みよりも小さい、
ダクト構造。
【0056】
(4)によれば、流路が複数に分割されて設けられているので、各流路を区画形成する第1壁部も複数設けられる。各第1壁部の厚みを第2壁部よりも小さくすることで各第1壁部の圧縮・引張剛性を高くすることができ、鉛直方向から入力される荷重に対して圧縮されにくいダクト構造とすることができる。
【0057】
(5) (4)に記載のダクト構造であって、
前記ダクト部材は、上側部材(上側部材40A)と下側部材(下側部材40B)とを備え、
前記上側部材及び前記下側部材は、外縁部が互いに当接し、前記上側部材と前記下側部材との間に各流路が区画形成され、
前記上側部材には、前記下側部材に向かって凹んだ少なくとも1つの上側凹部(上側凹部41A)が設けられており、
前記下側部材には、前記上側部材に向かって凹み、前記上側凹部に当接する少なくとも1つの下側凹部(下側凹部41B)が設けられており、
前記上側凹部及び前記下側凹部は、各流路を区画形成する前記第1壁部を有する、
ダクト構造。
【0058】
(5)によれば、ダクト部材の各流路は、上側部材と下側部材にそれぞれ設けられた上側凹部と下側凹部を当接させて形成することができる。そして、上側凹部及び下側凹部は、水平方向に延在する第2壁部よりも厚みの小さい第1壁部を有するので、鉛直方向から入力される荷重に対して圧縮されにくいダクト構造とすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 バッテリパック
11 バッテリモジュール(バッテリ)
12 ファン
13 吸気ダクト(ダクト構造)
13a 固定部
17a 吸気口
171 ベースプレート(他の部材)
40 下流側ダクト部材(ダクト部材)
40A 上側部材
40B 下側部材
41A 上側凹部
41B 下側凹部
44 当接部
410 水平流路(流路)
411 立壁部(第1壁部)
412 水平壁部(第2壁部)
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8