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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】沈降シリカ及びその製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/193 20060101AFI20241211BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241211BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241211BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C01B33/193
C08L101/00
C08K3/36
B26D3/00 601F
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023058073
(22)【出願日】2023-03-31
(62)【分割の表示】P 2020535132の分割
【原出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2023093502
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】17306937.8
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18305450.1
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アラン ナジマン, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ガルベイ, パスカリン
(72)【発明者】
【氏名】フェラル-マルタン, セドリック
(72)【発明者】
【氏名】バートリー, ローラ
(72)【発明者】
【氏名】ギュイ, ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ショセ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クロイ, ステファニー
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-514819(JP,A)
【文献】特開2007-051152(JP,A)
【文献】特表平11-508561(JP,A)
【文献】米国特許第02945817(US,A)
【文献】米国特許第02441422(US,A)
【文献】英国特許出願公開第06007427(GB,A)
【文献】特表2017-533163(JP,A)
【文献】特表2007-519793(JP,A)
【文献】特表2017-511788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
C08L 101/00
C08K 3/36
B26D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ構造におけるSi原子の少なくとも一部に化学的に結合したアルキル部位を含む沈降シリカであって、前記アルキル部位のメチル基に割り当てられた、前記沈降シリカの13C NMRスペクトルの共鳴は、-2.5~-4.5ppmであることを特徴とする、沈降シリカ。
【請求項2】
前記化学的に結合したアルキル部位は、メチル、エチル及びプロピル基からなる群から選択される、請求項1に記載の沈降シリカ。
【請求項3】
前記化学的に結合したアルキル部位は、メチル基である、請求項2に記載の沈降シリカ。
【請求項4】
シリカに対して0.2重量%~15.0重量%の炭素含有量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の沈降シリカ。
【請求項5】
40~600m/gの範囲のCTAB表面積を特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の沈降シリカ。
【請求項6】
沈降反応により反応媒体中でケイ酸塩と酸を反応させて沈降シリカの懸濁液を生成することを含み、前記沈降反応は、該沈降反応の50%が行われる前に、少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートの総量が反応媒体に提供される少なくとも1つの工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の沈降シリカを調製するプロセス。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の沈降シリカと、少なくとも1つのエラストマーとを含む組成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の沈降シリカ又は請求項に記載の組成物を含む物品。
【請求項9】
タイヤの形態の、請求項に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月27日に提出された欧州特許出願公開第17306937.8号及び2018年4月12日に提出された欧州特許出願公開第18305450.1号に対する優先権を主張し、これらの出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、化学修飾された沈降シリカ、及びその製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマー組成物における補強充填剤としての沈降シリカの使用が知られている。ポリマー組成物、特にエラストマー組成物における沈降シリカの使用に関連する問題は、ポリマーマトリックスにおける分散度がかなり低いことである。沈降シリカのポリマーマトリックスとの適合性を改善するために有機ケイ素化合物による沈降シリカ表面の化学修飾が知られている。有機ケイ素化合物は、典型的には、トリアルキルシラン、ジアルキルシラン、トリアルキルアルコキシシラン、トリアルキルハロシラン、ジアルキルアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアルキルアルコキシハロシラン、トリアルキルシラノール、アルキルトリアルコキシシラン、アルキルジアルコキシシラン、アルキルジアルコキシハロシラン、及びモノアルキルシランから選択され、この場合に、アルキル基は、任意選択で硫黄原子及び/又は官能基を含む、1~18の炭素原子を有する直鎖、環状又は分岐炭化水素である。一般的に、化学修飾は、シリカ沈降プロセスの最後に、多くの場合乾燥後の更なる工程として、沈降シリカに対して行われる。
【0004】
アルカリ金属アルキルシリコネートを使用することにより、シリカ沈降反応中に修飾することにより、良好な補強及び良好な機械的特性を有する化学修飾された沈降シリカを得ることができることがここで見出された。シリカ形成プロセスの初期段階以来、反応媒体中のアルカリ金属アルキルシリコネートの存在により、アルキル基で化学修飾されたシリカの形成が可能になる。シリカの化学修飾は、その後の修飾工程は必要なく、沈降プロセス中に行われる。
【0005】
シリカエアロゲルの表面修飾のためのアルカリ金属アルキルシリコネートの使用が開示されている。例えば、米国特許第2945817号明細書は、ケイ酸ナトリウム及びアルカリ金属アルキルシリコネートを含む溶液を調製する工程と、酸を添加して水性ゾルを得る工程と、適切なアルコールを用いて共沸混合物中で水を蒸留することにより水性ゾルから水を除去する工程とを含むエアロゲルの調製プロセスを開示している。又、英国特許第607427号明細書及び国際公開第16050474A1号パンフレットは、アルカリ金属アルキルシリコネートを使用して調製された撥水性エアロゲルを開示している。しかしながら、これらの文献のいずれも、アルカリ金属アルキルシリコネートによる沈降シリカの化学修飾を開示していない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の目的は、例えば、ポリマー組成物中の補強充填剤として使用することができる新規の化学修飾された沈降シリカを提供することである。本発明の第2の目的は、修飾がシリカ沈降プロセス中に行われるという利点を有する化学修飾された沈降シリカの製造プロセスを提供することである。
【0007】
本発明の沈降シリカは、とりわけ、シリカに共有結合したアルキル基の存在を特徴とする。本発明のシリカは、以下の記載並びに特許請求の範囲及び実施例において詳細に定義される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の沈降シリカは、化学的に結合したアルキル部位を含み、前述のアルキル部位のメチル基に割り当てられた沈降シリカの13C NMRスペクトルの共鳴が-2.5~-4.5ppmであることを特徴とする。
【0009】
本発明のシリカは、シリカ構造におけるSi原子の少なくとも一部に化学的に結合したアルキル部位を含む。前述のアルキル部位のメチル基に割り当てられた沈降シリカの13C NMRスペクトルの共鳴は、-2.5~-4.5ppmである。
【0010】
本明細書では、表現「アルキル部位」は、一般式(C2m+1)-のアルキルラジカルを指す従来の意味で使用される。本発明のシリカの構造は、式[SiO4/2]の単位と式[(C2m+1)SiO3/2]の単位とを含むこととして記載される。
【0011】
本明細書では、用語「シリカ」及び「沈降シリカ」は同義語として用いられる。表現「沈降シリカ」は、ケイ酸ナトリウムの溶液の酸性化、それに続く、沈降物の濾過、及び例えば、アルコール、又は超臨界流体などの、有機溶媒を使用して沈降物から水を抽出するいかなる工程もない乾燥によって生成される非晶質シリカを定義する。
【0012】
アルキル部位は、少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートに由来する。適切なアルカリ金属アルキルシリコネートは、一般式(I):
HO-[Si(R)(OM)-O-]H(I)
(式中、nは、1~6、特に1~3の整数であり、好ましくはnは1であり、Rは、式(C2m+1)-の直鎖又は分岐アルキルラジカルであり、mは、1~5、特に1~3の整数であり、特に好ましくは、メチルは1であり、Mは、アルカリ金属、好ましくはナトリウム又はカリウムである)のものである。
【0013】
本発明のシリカにおける化学的に結合したアルキル部位は、好ましくは、メチル、エチル及びプロピルからなる群から選択され、直鎖又は分岐である。好ましい実施形態では、化学的に結合したアルキル部位はメチルである。このような実施形態では、アルカリ金属アルキルシリコネートは、ナトリウム又はカリウムメチルシリコネートから選択される。
【0014】
本発明の沈降シリカの13C NMRスペクトルは、化学的に結合したメチル基の共鳴が-2.5~-4.5ppmであることを特徴とする。表現「-2.5~-4.5ppmの共鳴」は、化学シフトスケールがアダマンタンの共鳴(38.5ppm及び29.4ppm)で校正されている場合、メチル基に割り当てられた共鳴ピークの最大値が-2.5~-4.5ppmの13C NMRスペクトルの領域に存在することを示すために、本明細書で使用される。
【0015】
本発明のシリカにおける化学的に結合したアルキル部位のメチル基に割り当てられた共鳴は、沈降シリカの調製に使用されるアルカリ金属アルキルシリコネートの同じメチル基の共鳴に対してシフトしていることが観察される。例えば、アルカリ金属アルキルシリコネートがカリウムメチルシリコネートである場合、メチルの共鳴は-1.1ppmから-2.5~-4.5ppmの範囲にシフトする。
【0016】
本発明の沈降シリカは、少なくとも0.2重量%、典型的には0.2重量%~15.0重量%の炭素含有量を有する。本文全体を通して、炭素含有量は、シリカの重量に対する炭素の重量として定義される。炭素含有量は、沈降シリカに化学的に結合したアルキル部位の量を表す。炭素含有量は、典型的には10.0重量%未満であり、更には5.0重量%未満であり得る。
有利には、炭素含有量は、0.2重量%~5.0重量%、更には0.3~2.0重量%である。炭素含有量は、0.2重量%~1.0重量%、更には0.3~1.0重量%であり得る。
【0017】
表現、重量%(wt%)及び重量%(%by weight)は、同義語として使用される。
【0018】
一般的に、本発明による沈降シリカは、40~600m/gのCTAB表面積を有する。CTAB表面積は、少なくとも50m/g、少なくとも60m/g、少なくとも80m/g、更には少なくとも120m/g、少なくとも160m/g、少なくとも205m/g、少なくとも210m/gであり得る。BET比表面積は、多くとも450m/g、多くとも380m/g、更には多くとも300m/gであり得る。CTAB表面積は、特に50~450m/g、とりわけ60~380m/g、例えば80~300m/gであり得る。
【0019】
第1の実施形態では、本発明の沈降シリカは、
-40m/g~600m/g、好ましくは40m/g~380m/g、より好ましくは40m/g~300m/gのCTAB表面積、及び
-0.2重量%~1.0重量%、好ましくは0.3重量%~1.0重量%の炭素含有量を特徴とする。
【0020】
第2の実施形態では、本発明の沈降シリカは、
-205m/g~600m/g、好ましくは210m/g~450m/gのCTAB表面積、及び
-0.2重量%~5.0重量%、好ましくは0.3重量%~5.0重量%の炭素含有量を特徴とする。
【0021】
本発明による沈降シリカは、典型的には、45m/g~650m/g、特に70m2/g~500m/g、更には90~400m/g、例えば、90~370m/gのBET表面積を有する。BET表面積は、標準NF ISO 5794-1、付録E(2010年6月)に詳述されているブルナウアー-エメット-テラー法に従って決定できる。
【0022】
本発明による沈降シリカは、標準ISO 787/11に従って測定して、多くとも0.50g/cm、好ましくは0.15~0.50g/cm、特に0.15~0.40g/cmの充填密度を有する。
【0023】
本発明の沈降シリカは、ケイ酸塩と酸を反応させて沈降シリカの懸濁液を生成することを含むプロセスによって有利に得ることができ、前述の反応は、沈降反応の50%が行われる前に少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートが反応媒体に提供される少なくとも1つの工程を含む。
【0024】
従って、本発明の第2の目的は、本発明の沈降シリカの調製プロセスである。
【0025】
このプロセスは、ケイ酸塩と酸を反応させて沈降シリカの懸濁液を生成することを含み、前述の反応は、沈降反応の50%が行われる前に少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートが反応媒体に提供される少なくとも1つの工程を含む。
【0026】
用語「ケイ酸塩」は、本発明のプロセスの過程で添加され得る1つ以上のケイ酸塩を指すために本明細書で使用される。用語「ケイ酸塩」は、アルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される化合物を指すために本明細書で使用される。有利には、ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムからなる群から選択される。ケイ酸塩は、メタケイ酸塩又は二ケイ酸塩などの任意の公知の形態であり得る。
【0027】
ケイ酸ナトリウムが使用される場合、後者は、一般的に、2.0~4.0、特に2.4~3.9、例えば3.1~3.8のSiO/NaO重量比を有する。
【0028】
一般的に、ケイ酸塩は、典型的には3.9重量%~25.0重量%、例えば5.6重量%~23.0重量%、特に5.6重量%~20.7重量%の濃度を有する溶液として提供される。本文全体を通して、溶液中のケイ酸塩濃度は、SiOの重量で表される。
【0029】
用語「酸」は、本発明のプロセスの過程で添加され得る1つ以上の酸を指すために本明細書で使用される。任意の酸がプロセス中で使用されることができる。一般的に、硫酸、硝酸、又は塩酸などの鉱酸、或いは酢酸、ギ酸、又は炭酸などの有機酸が使用される。硫酸が好ましい。
【0030】
酸は希釈又は濃縮形態で反応媒体に計量投入され得る。プロセスの異なる段階で、異なる濃度の同じ酸を用いることができる。
【0031】
プロセスの好ましい実施形態では、プロセスの全ての段階で硫酸及びケイ酸ナトリウムが用いられる。
【0032】
本発明のプロセスは、沈降反応の50%が行われる前に、少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートが反応媒体に添加されるということを特徴とする。
【0033】
沈降反応の50%が行われる前に、少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートの総量が反応媒体に添加されることができる。
【0034】
表現「沈降反応の50%が行われる前」は、前述の所定の段階までに生成されたSiOの量が、プロセスで生成されたSiOの最終量の50重量%未満であるプロセスの任意の段階を指すために本明細書で使用される。
【0035】
プロセスに応じて、シリカ沈降の割合は様々な方法で監視できる。プロセスの一変形形態では、シリカの総量の50重量%の形成は、プロセス中に添加されるケイ酸塩の総量の50%の反応媒体への添加に対応する。
【0036】
別の変形形態では、反応媒体の中和率が50%に達したときに、シリカの総量の50重量%の形成が達成される。用語「中和比」は、反応媒体に添加された酸によって生成されたHのモル数と、反応媒体中のケイ酸塩に由来するアルカリ金属のモル数との比として定義される。
【0037】
理論に拘束されることを望まないが、沈降反応の50%が行われる前に少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートを添加すると、アルカリ金属アルキルシリコネートのアルキル部位を沈降シリカの構造に組み込むことができると考えられている。
【0038】
適切なアルカリ金属アルキルシリコネートの注目すべき例は、上記の一般式(I):
HO-[Si(R)(OM)-O-]H(I)
(式中、nは、1~6、特に1~3、好ましくは1の整数であり、Rは、式(C2m+1)-の直鎖又は分岐アルキルラジカルであり、mは、1~5、特に1~3の整数であり、特に好ましくはmは1であり、Mは、アルカリ金属、好ましくはナトリウム又はカリウムである)のものである。
【0039】
式(I)において、好ましくは、n=1であり、Rは、メチル、エチル及びプロピルからなる群から選択され、直鎖又は分岐である。好ましい実施形態では、n=1であり、Rはメチルである。このような実施形態では、アルカリ金属アルキルシリコネートは、ナトリウム又はカリウムメチルシリコネートから選択される。
【0040】
又、上記で提供された定義及び選好は、本明細書の下記に記載するプロセスの特定の実施形態に適用される。
【0041】
第1の実施形態では、プロセスは、
(i)アルカリ金属アルキルシリコネートの総量の少なくとも一部と、反応に関与するケイ酸塩の総量の少なくとも一部と、任意選択で電解質とを含む出発溶液を準備する工程であって、出発溶液に存在するケイ酸塩の濃度(SiOで表される)は100g/L未満である工程と、
(ii)前述の出発溶液にある量の酸を添加して、少なくとも7.0、特に7.0~8.5の反応媒体のpH値を得る工程と、
(iii)酸、及び適切な場合に、同時にケイ酸塩の残りの量を反応媒体に更に添加して、シリカ懸濁液を得る工程と、を含む。
【0042】
プロセスのこの第1の実施形態では、少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートの総量の少なくとも一部は、出発溶液に存在する。少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートの残りの部分は、シリカ沈降反応の間、特に工程(ii)又は(iii)の間、反応媒体に添加され得るが、但し、全てのアルカリ金属アルキルシリコネートは、沈降反応の50%が行われる前に添加される。
【0043】
或いは、少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートの総量が、出発溶液に提供されることができる。
【0044】
プロセスの第1の実施形態では、沈降反応の50%が行われる点は、上で定義された中和比に対応する。
【0045】
工程(i)の出発溶液は、1つ以上の電解質を含み得る。好ましくは、出発溶液は電解質を含み、有利には、前述の電解質の濃度は19g/L未満である。用語「電解質」は、その一般的に認められている意味にて本明細書で使用され、即ち溶液中にある場合、分解又は解離してイオン又は荷電粒子を形成する任意のイオン性又は分子性物質を特定する。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩からなる群から選択される塩を挙げることができる。有利には、出発溶液で使用する電解質は、プロセスで使用される出発ケイ酸塩の金属と酸の塩である。注目すべき例は、ケイ酸ナトリウムと塩酸との反応の場合の塩化ナトリウム、又は好ましくは、ケイ酸ナトリウムと硫酸との反応の場合の硫酸ナトリウムである。
【0046】
第2の実施形態では、プロセスは、以下の工程:
(i)2.0~5.0、好ましくは2.5~5.0のpHを有する出発溶液を準備する工程と、
(ii)ケイ酸塩と酸を前述の出発溶液に同時に添加し、得られた反応媒体のpHを2.0~5.0に維持する工程と、
(iii)7.0~10.0の反応媒体のpH値が得られるまで反応媒体へのケイ酸塩の添加を継続しながら、酸の添加を停止する工程と、
(iv)(iii)で得られた反応媒体にケイ酸塩と酸を同時に添加し、pHを7.0~10.0に維持する工程と、
(v)反応媒体のpH値が6.0未満に達し、シリカ懸濁液が得られるまで、反応媒体への酸の添加を継続しながら、ケイ酸塩の添加を停止する工程と、を含む。
【0047】
プロセスのこの第2の実施形態では、少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートは、工程(i)又は(ii)の少なくとも1つで反応媒体に計量投入され、但し、前述の添加は、ケイ酸塩の総量の50%を反応媒体に添加する前に行われる。所与の最終量のシリカを得るためのケイ酸塩の総量は、一般共通の知識に従いプロセスの最初に当業者によって決定され得る。
【0048】
この第2の実施形態のプロセスは、更なる工程、特に、反応媒体へのケイ酸塩及び/又は酸の添加によってpHが更に変動する工程を含み得る。
【0049】
第3の実施形態では、プロセスは、以下の工程:
(i)反応に関与するケイ酸塩の総量の一部を含む出発溶液を準備する工程であって、前述の出発溶液のケイ酸塩の濃度(SiOで表される)は20g/L未満、好ましくは15g/L以下である工程と、
(ii)前述の出発溶液に存在するケイ酸塩の量の少なくとも50%が中和されるまで、前述の出発溶液に酸を添加する工程と、
(iii)ケイ酸塩と酸を反応媒体に同時に添加する工程であって、比(添加されたケイ酸塩の量)/(出発溶液に存在するケイ酸塩の量)が4より大きく100以下、好ましくは12~100、特に12~50である工程と、
(iv)反応媒体のpHの値が2.5~5.3、好ましくは2.8~5.2に達し、沈降シリカの懸濁液が得られるまで、反応媒体への酸の添加を継続しながら、ケイ酸塩の添加を停止する工程と、を含む。
【0050】
この実施形態では、少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートは、工程(i)、(ii)、及び(iii)のうち少なくとも1つで反応媒体に計量投入され、但し、前述の添加は、ケイ酸塩の総量の50%が反応媒体に添加される前に行われる。
【0051】
上記で概説した全てのプロセスの実施形態では、少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートの添加の段階に関係なく、反応媒体に計量投入される前述の化合物の累積量は、少なくとも0.5重量%、典型的には少なくとも1.0重量%、更には少なくとも5.0重量%である。少なくとも1つのアルカリ金属アルキルシリコネートの総量は、典型的には30.0重量%を超えず、好ましくは25.0重量%を超えない。適切な範囲は、一般的に、1.0~20.0重量%、5.0~15.0重量%、更には5.0~12.0重量%である。メチルシリコネートの量は、出発溶液のケイ酸濃度に対して計算される(ケイ酸塩の初期量とアルカリ金属アルキルシリコネートの初期量の合計として計算される)。
【0052】
反応媒体に計量投入される前述の化合物の累積量は、沈降シリカの炭素含有量が少なくとも0.2重量%、典型的には0.2~15.0重量%であるものである。アルカリ金属アルキルシリコネートの添加速度は、当業者に既知の手段により、沈降シリカのアルキル部位の所望の含有量を得るために適合させることができる。
【0053】
ケイ酸塩と酸の反応全体が実施される反応槽は、通常、適切な攪拌装置及び加熱装置を備えている。
【0054】
ケイ酸塩と酸の反応全体は、一般的に40~96℃、特に80~95℃の温度で行われる。本発明の1つの変形形態によれば、ケイ酸塩と酸の反応全体は、通常40~96℃、特に80~95℃の一定温度で行われる。
【0055】
本発明の別の変形形態によれば、反応終了時の温度は反応開始時の温度よりも高く、従って、反応の開始時の温度は、好ましくは40~80℃に維持され、次いで、温度が、好ましくは80~96℃の値まで上昇し、その値で反応の最後まで維持される。
【0056】
プロセスの実施形態のそれぞれについて説明したばかりの工程の終わりに、沈降シリカの懸濁液が得られ、続いてこれを分離工程(液体/固体分離)にかける。従って、その実施形態の全てにおけるプロセスは、典型的には、沈降シリカの懸濁液を濾過し、沈降シリカを乾燥させる更なる工程を含む。このプロセスは、有機溶媒、例えば、アルコール、又は超臨界流体などを使用して沈降物から水を抽出する工程を含まない。
【0057】
この分離は、通常、濾過、及びそれに続いて必要であれば洗浄を含む。この濾過は、任意の好適な方法に従い、例えばベルトフィルター、回転フィルター(例えば真空フィルター)、又は好ましくはフィルタープレスによって実施される。
【0058】
続いて、濾過ケークが液状化操作に供される。用語「液状化」は、本明細書では、固体、即ち、濾過ケークが流体様の塊に転化するプロセスを示すことが意図される。液状化工程後、濾過ケークは流動性を有する流体様形態であり、沈降シリカは懸濁状態である。
【0059】
液状化工程は、懸濁状態のシリカの粒度分布の低下をもたらす機械的処理を含み得る。前述の機械的処理は、濾過ケークを、高剪断ミキサー、コロイドタイプミル、又はボールミルに通すことによって実施され得る。任意選択的に、液状化工程は、例えば水又は酸を添加することによって濾過ケークを化学作用に供することによって実施され得る。機械的及び化学的処理の両方が実施され得る。液状化工程の後で得られる沈降シリカの懸濁液は、その後乾燥される。
【0060】
乾燥は当該技術分野で既知の手法に従って実施され得る。好ましくは、乾燥は、噴霧によって行われる。この目的のために、任意の種類の適切な噴霧器、特にタービン、ノズル、液体圧力又は二流体噴霧器を使用できる。一般的に、濾過がフィルタープレスを使用して行われる場合、ノズル式噴霧器が使用され、濾過が真空フィルターを使用して行われる場合、タービン式噴霧器が使用される。
【0061】
乾燥操作がノズル式噴霧器を使用して行われる場合、得ることができる沈降シリカは、通常、実質的に球形のビーズの形態である。この乾燥操作後、任意選択で、回収された生成物に対して粉砕又は微粉化の工程を行うことが可能であり、得ることができる沈降シリカは、一般的に粉末の形態である。
【0062】
乾燥操作がタービン式噴霧器を用いて行われる場合、得ることができる沈降シリカは、粉末の形態であり得る。
【0063】
最後に、前述で示されたように乾燥、粉砕又は微粉化された生成物は、集塊化工程に任意選択でかけられ、これは、例えば、直接圧縮、湿式造粒(即ち水、シリカ懸濁液などの結合剤の使用による)、押出し又は好ましくは乾式圧密からなる。
【0064】
この集塊化工程によって得ることができる沈降シリカは、一般的に顆粒の形態である。
【0065】
本発明の沈降シリカは、断熱材料の製造などの多くの用途で使用することができる。又、本発明の沈降シリカは、レゾルシノール-ホルムアルデヒド/シリカ複合材の調製において、コンクリート又は紙における吸収剤として又は添加剤として使用することができる。
【0066】
本発明の沈降シリカは、ポリマー組成物の充填剤として特に有利な用途を見出し得る。
【0067】
従って、本発明の更なる目的は、本発明の沈降シリカを含む組成物である。組成物は、有利には、本発明の沈降シリカと少なくとも1つのポリマーとを含む。少なくとも1つのポリマーは、熱硬化性ポリマー及び熱可塑性ポリマーから選択することができる。熱硬化性ポリマーの注目すべき非限定的な例としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂及びシアネート樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0068】
好適な熱可塑性ポリマーの注目すべき非限定的な例としては、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステル/スチレンコポリマー、アクリロニトリル/スチレンコポリマー、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ABS、ASA、及びAESなどのスチレン系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリルポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマーなどのポリオレフィン、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、エチレン/アクリル酸コポリマーなどのα-オレフィンと様々なモノマーとのコポリマー、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、及び脂肪族グリコール/脂肪族ジカルボン酸コポリマーなどの脂肪族ポリエステルが挙げられる。
【0069】
本発明のシリカは、エラストマー組成物の補強充填剤として有利に用いられ得る。従って、本発明の好ましい目的は、本発明のシリカと1つ以上のエラストマーとを含む組成物である。エラストマーは、好ましくは、-150℃~+300℃、例えば-150℃~+20℃の少なくとも1つのガラス転移温度を示す。
【0070】
例えば、特に、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、イソブチレン又は酢酸ビニル、ポリブチルアクリレート或いはこれらの混合物などの少なくとも1つの不飽和を含む脂肪族又は芳香族モノマー由来のエラストマーを使用することができる。又、ポリマー鎖に沿って及び/又はその1つ以上の末端に位置する化学基によって官能化されたエラストマー(例えば、シリカの表面と反応することができる官能基によって)である官能化エラストマー及びハロゲン化ポリマーを挙げることができる。
【0071】
好適なエラストマーの注目すべき非限定的な例はジエンエラストマーである。ジエンエラストマーの中では、例えば、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、又はこれらの混合物、特にスチレン/ブタジエンコポリマー(SBR、特にESBR(エマルジョン)又はSSBR(溶液))、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)、及び更に関連する官能化ポリマー(例えば、シリカと相互作用することができる、ペンダント極性基又は鎖末端における極性基を示す)を挙げることができる。
【0072】
又、天然ゴム(NR)及びエポキシ化天然ゴム(ENR)を挙げることもできる。
【0073】
ポリマー組成物は、硫黄で加硫されることができる、或いは特に過酸化物又は他の架橋系(例えば、ジアミン又はフェノール樹脂)で架橋されることができる。
【0074】
一般的に、ポリマー組成物は、少なくとも1つの(シリカ/ポリマー)カップリング剤及び/又は少なくとも1つの被覆剤を更に含み、これらは更に、とりわけ、酸化防止剤を含み得る。
【0075】
カップリング剤の注目すべき非限定的な例は、例えば、「対称」又は「非対称」シランポリスルフィドであり、より具体的には、ビス((C1~C4)アルコキシル(C1~C4)アルキルシリル(C1~C4)アルキル)ポリスルフィド(具体的にはジスルフィド、トリスルフィド、又はテトラスルフィド)、例えば、ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ポリスルフィド、又はトリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドなどのビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ポリスルフィドなどを挙げることができる。又、モノエトキシジメチルシリルプロピルテトラスルフィドを挙げることができる。又、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランなどの、マスクされた又は遊離のチオール官能基又はチオエステル基を含むシランを挙げることができる。
【0076】
カップリング剤は、適切な「カップリング活性化剤」、即ち、このカップリング剤と混合されて後者の有効性を増加させる化合物と任意選択的に組み合わせることができる。
【0077】
ポリマー組成物中の本発明のシリカの重量比率は、かなり広い範囲で変わることができる。重量比率は、通常、ポリマーの重量の10%~200%、特に20%~150%を表す。一実施形態では、本発明の沈降シリカは、ポリマーの重量の20%~80%、例えば30%~70%を表し得る。代替の実施形態では、ポリマーの重量の80%~120%、例えば90%~110%を表し得る。
【0078】
本発明の特定の目的は、典型的には、ポリマーの重量の20%~150%の量の本発明の沈降シリカと、上で詳述されたジエンエラストマー、天然ゴム及びエポキシ化天然ゴムからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーとを含む組成物である。
【0079】
本発明のシリカは、有利には、補強無機充填剤の全て及び更にはポリマー組成物の補強充填剤の全てを構成し得る。
【0080】
本発明の沈降シリカを含む組成物は、多くの物品の製造のために使用されることができる。本発明の沈降シリカと上記の組成物とを含む完成品の非限定的な例は、例えば、靴底、床材、ガスバリア、難燃性材料、並びに又エンジニアリング部品、例えば、ケーブルウェイ用ローラー、家庭用電化製品用シール、液体又はガスパイプ用シール、ブレーキシステムシール、パイプ(フレキシブル)、被覆(特にケーブル被覆)、ケーブル、エンジンサポート、バッテリーセパレーター、コンベヤーベルト、或いはトランスミッションベルトなどである。本発明の組成物は、タイヤ及びタイヤ部品の製造において有利に使用することができる。
【0081】
本発明の更なる目的は、本発明の沈降シリカを含むタイヤ又はタイヤ部品である。
【0082】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0083】
ここで、本発明が以下の実施例に関連して説明され、その目的は、単に例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0084】
分析方法
本発明の沈降シリカの物理化学的特性を、以下に記載する方法を用いて決定した。
【0085】
CTAB表面積
標準NF ISO5794-1、付録G(2010年6月)に従いCTAB表面積を決定した。
【0086】
全炭素含有量の決定
全炭素含有量は、Horiba EMIA 320 V2などの炭素/硫黄分析装置を使用して測定した。炭素/硫黄分析計の原理は、誘導炉(約170mAに調整)内の酸素流中で、燃焼促進剤(約2gのタングステン(特にLecocel 763-266)、約1gの鉄、及び約0.25gのスズ)の存在下での固体試料の燃焼に基づく。分析される試料(約0.2グラムの重量)に存在する炭素は、酸素と化合してCO、COを形成する。その後、これらのガスは、赤外線検出器によって分析される。試料からの水分及びこれらの酸化反応中に生じた水は、赤外線測定に干渉しないように、脱水剤(過塩素酸マグネシウム)を含むカートリッジ上を通すことによって除去される。
【0087】
結果は、シリカ試料の重量に対する元素炭素の重量パーセントとして表される。
【0088】
13C NMR分光法
生成物は、7.04Tで動作するBruker Avance固体300分光計での1D13MAS NMR分光法によって特性評価された。10KHzの回転周波数を備えた市販の4mm高速プローブ(DVT4)が、90°パルス、3msの接触時間、及び5秒のリサイクル時間での交差分極、並びに10000~20000のトランジェント(transient)で使用された。メチルの共鳴の同定のために分析されたスペクトルの領域は、-15~10ppmであった。
【0089】
校正は、38.5ppmと29.4ppmでの2つの化学シフトを特徴とするアダマンタンに対して行った。
【0090】
実施例
実施例1
25Lステンレス鋼反応器に、8.6Lの精製水、169gのNaSO(固体)、5.38kgのケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO比=3.42、SiO濃度=18.9重量%、プロセスの全ての工程で使用)及び132gのケイ酸メチルカリウム溶液(SILRES(登録商標)BS 16、Wacker Chemie AG、SiO濃度:8.12重量%)を導入した。
【0091】
得られた溶液を攪拌し加熱して79℃に達した。次いで、109g/分の流量で7.7重量%の硫酸溶液を20分の時間に渡り反応器に導入した。この最初の工程の後、反応媒体が8.0のpH値に達するまで、7.7重量%の硫酸溶液を177g/分の流量で添加した。硫酸の添加の最初の20分間、反応媒体の温度は79℃であった。次いで、反応媒体を約7分92℃に加熱した。沈降反応の残りはこの温度で行われた。
【0092】
同時に、20分の時間に渡り、64.4g/分の流量で、ケイ酸ナトリウム、及び7.7重量%の硫酸溶液を導入した。反応媒体のpHが8.0の値に維持されるように、7.7重量%の硫酸溶液の流量が調整された。
【0093】
同時添加の最後に、反応媒体のpHを、120g/分の流量で7.7重量%の硫酸を用いて4.8の値にした。反応混合物を5分間放置した。沈降シリカの懸濁液が得られた。
【0094】
懸濁液を濾過し、フィルタープレスで洗浄した。こうして得られた濾過ケークは、アルミン酸ナトリウム溶液(Al濃度:12重量%)を添加して、3000ppmのAl/SiO濃度を得ながら、機械的に分解した。得られたシリカ懸濁液のpHは、7.7重量%の硫酸溶液の添加により6.2にした。
【0095】
得られた懸濁液をノズル式噴霧乾燥器によって乾燥させ、沈降シリカS1を得た。沈降シリカS1の特性を表1に報告する。
【0096】
実施例2
25Lステンレス鋼反応器に、12.6Lの精製水、129.5gのNaSO(固体)、4.07kgのケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO比=3.42、SiO濃度=18.9重量%、プロセス全体で使用)、149gのメチルシリコン酸カリウム溶液(SILRES(登録商標)BS16、Wacker Chemie AG、SiO濃度:8.12重量%)を導入した。
【0097】
得られた溶液を攪拌し加熱して95℃に達した。この温度で全ての反応を実施した。
【0098】
6.9g/分の流量で、95重量%の硫酸溶液を25分の時間に渡り反応器に導入した。この最初の工程の後、反応媒体のpH値が8.0に達するまで、219g/分の流量で95重量%の硫酸溶液を添加した。
【0099】
同時に、64.9g/分の流量で、ケイ酸ナトリウム、及び96重量%の硫酸溶液を10分の時間に渡り導入した。反応媒体のpHが8.0の値に維持されるように、96重量%の硫酸溶液の流量が調整された。
【0100】
この同時添加の最後に、反応媒体のpHを、123g/分の流量で96重量%の硫酸を用いて4.7の値にした。反応混合物を5分間放置した。沈降シリカの懸濁液が得られた。
【0101】
懸濁液を濾過し、フィルタープレスで洗浄した。こうして得られた濾過ケークは、アルミン酸ナトリウム溶液(Al濃度:12重量%)を添加して、3000ppmのAl/SiO濃度を得ながら、機械的に分解した。得られたシリカ懸濁液のpHは、7.7重量%の硫酸溶液の添加により6.2にした。
【0102】
得られた懸濁液をノズル式噴霧乾燥器によって乾燥させ、沈降シリカS2を得た。沈降シリカS2の特性を表1に報告する。
【0103】
実施例3
25Lのステンレス鋼反応器に、13.4Lの精製水及び209gのNaSO(固形)を導入した。得られた溶液を攪拌し加熱して92℃に達した。この温度で全ての反応を実施した。媒体のpHが3.8の値に達するまで、7.7重量%の硫酸溶液を反応器に計量投入した。
【0104】
165gのケイ酸メチルカリウム溶液(SILRES(登録商標)BS 16、Wacker Chemie AG、SiO濃度:8.12重量%)を1分の時間に渡り反応媒体に計量投入した。
【0105】
反応器に25分の時間に渡り同時に92.2g/分の流量で、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO比=3.4、SiO濃度=19.4重量%)及び7.7重量%の硫酸溶液を導入した。反応媒体のpHが4.2の値に維持されるように、硫酸溶液の流量を調整した。
【0106】
反応媒体が8.0の値に達するまで、ケイ酸塩の添加を同じ流量に維持しながら、酸の導入を停止した。
【0107】
同時に18分の時間に渡って、150g/分の流量でケイ酸ナトリウム及び7.7重量%の硫酸溶液を計量投入した。
硫酸溶液の流量を、反応媒体のpHが8.0の値に維持されるように調整した。
【0108】
同時添加の最後に、反応媒体のpHを硫酸7.7重量%で4.8にした。反応混合物を5分間放置した。
【0109】
こうして得られたシリカ懸濁液を濾過し、フィルタープレスで洗浄した。こうして得られた濾過ケークをアルミン酸ナトリウム溶液(Al濃度:12重量%)を添加して、3000ppmのAl/SiO濃度を得ながら、機械的に分解した。得られたシリカ懸濁液のpHは、7.7重量%の硫酸溶液の添加により6.2にした。沈降シリカS3の特性を表Iに報告する。
【0110】
実施例4
25Lステンレス鋼反応器に、6.98Lの精製水、149.5gのNaSO(固体)、5.59kgのケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO比=3.43、SiO濃度=19.4重量%、プロセスの全ての工程で使用)及び471gのケイ酸メチルカリウム溶液(SILRES(登録商標)BS 16、Wacker Chemie AG、SiO濃度:10重量%)を導入した。
【0111】
得られた溶液を攪拌し加熱して80℃に達した。次いで、110g/分の流量で7.7重量%の硫酸溶液を20分の時間に渡り反応器に導入した。この最初の工程の後、反応媒体が8.0のpH値に達するまで、110g/分の流量で7.7量%の硫酸溶液を添加した。硫酸溶液の添加の最初の20分間、反応媒体の温度は80℃であった。次いで、反応媒体を約7分で92℃に加熱した。沈降反応の残りはこの温度で行われた。
【0112】
同時に、20分の時間に渡り58g/分の流量でケイ酸ナトリウム及び7.7重量%の硫酸溶液を導入した。7.7重量%の硫酸溶液の流量を、反応媒体のpHが8.0の値に維持されるように調整した。
【0113】
同時添加の最後に、反応媒体のpHを、73g/分の流量で7.7重量%の硫酸溶液を用いて5.5の値にした。反応混合物を5分間放置した。沈降シリカの懸濁液が得られた。懸濁液を濾過し、フィルタープレートで洗浄した。得られた濾過ケークを機械的に分解し、水を添加して、15%のシリカS4でSiO懸濁液を得た。
【0114】
シリカS4の充填密度は0.32g/cmである。シリカS4の特性を表1に示す。
【0115】
【0116】
比較シリカCS1:粉末の形態で提供されたZeosil(登録商標)1165MP(Solvay SAから入手可能)の試料。
【0117】
比較シリカCS2:粉末の形態で提供されたZeosil(登録商標)Premium 200MP(Solvay SAから入手可能)の試料。
【0118】
ゴム組成物の調製のための一般手順
ゴム組成物は、2つの連続する調製段階を含むプロセスを使用して調製した:高温熱機械加工の第1の段階、これに続く加硫システムを導入するための110℃未満の温度での機械加工の第2の段階。
【0119】
第1の段階は、ブラベンダーブランド(Brabender brand)の内部ミキサータイプの混合装置を使用して実施した(実施例4:容量70mL、実施例5:容量380mL)。初期温度とローターの速度は、混合物の滴下温度が約140~160℃になるように設定した。
【0120】
第1の段階の第1のパスでは、エラストマーとシリカ(分けて導入)をカップリング剤とステアリン酸と混合した。継続時間は4~10分であった。
【0121】
混合物を冷却した後(100℃未満の温度)、第2のパスの間に酸化亜鉛と安定剤/酸化防止剤を導入した。このパスの継続時間は、2~5分であった。
【0122】
混合物を冷却した後(100℃未満の温度)、第2の段階の間に混合物に加硫系(硫黄及び促進剤、例えば、CBS)を添加した。これを50℃に予熱されたオープンミルで実施した。この段階の継続時間は、2~6分であった。
【0123】
その後、それぞれの最終混合物を、機械的及び動的特性の評価のために2~3mmの厚さのプラークの形態にカレンダー加工した。
【0124】
加硫物の機械的及び動的特性の決定
測定は、以下の温度で最適に加硫された組成物(T98)について行った:実施例4:150℃、実施例5:160℃。
【0125】
加硫物のショアA硬度測定は、標準ASTM D 2240に従って行った。所与の値を3秒で測定した。
【0126】
一軸引張り試験は、Instron 5564装置で500mm/分の速度にてH2型の試験片で標準NF ISO 37に従って行った。300%の弾性率は、300%の引張り歪みで測定された応力に対応する。
【0127】
引き裂き強度試験は、Instron 5564装置で500mm/分の速度で試験片Bを使用し、標準NF ISO 34に従って実施した。
【0128】
損失係数(tanδ)と動的引張り弾性率(E’)の値を、加硫した試料(円筒状試料、セクション95mm2及び高さ14mm)について記録した。試料を、10%の正弦波変形での事前歪み(pre-strain)、及び4%の動的誘導(dynamic solicitation)に供した。測定は、Metravib VA 3000装置で60℃及び10Hzの周波数で実行した。
【0129】
実施例5
表2に記載されるゴム組成物は、上記の一般手順に従って調製した。それぞれの成分の量は、エラストマーの総量の100部当たりの重量部として表される(phr)。又、機械的及び動的試験の結果を表2に報告する。
【0130】
【0131】
アルキル部位で修飾されていない沈降シリカ(CS1)と比較して、本発明によるシリカ(S1)は、剛性が高く(E’60℃)、破断伸びが良好で、引張り強度が高いポリマー組成物を提供する。
【0132】
実施例6
表3に記載されるゴム組成物は、上記の一般手順に従って調製した。それぞれの成分の量は、エラストマーの総量の100部当たりの重量部として表される(phr)。又、機械的及び動的試験の結果を表3に報告する。
【0133】
【0134】
アルキル部位(CS2)で修飾されていない沈降シリカと比較して、本発明によるシリカ(S2)は、60℃(tanδ(60℃)でのエネルギー散逸の増加なしに、高い剛性、良好な引張り強度、破断伸び及び引き裂き強度を示す。