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特許7602569環境負荷軽減システムおよび環境負荷軽減方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】環境負荷軽減システムおよび環境負荷軽減方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20241211BHJP
【FI】
G06Q50/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023068519
(22)【出願日】2023-04-19
(65)【公開番号】P2024154605
(43)【公開日】2024-10-31
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】524132520
【氏名又は名称】日立ヴァンタラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 尚志
(72)【発明者】
【氏名】須藤 敦之
【審査官】塚田 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-102604(JP,A)
【文献】特開2002-279048(JP,A)
【文献】特許第4561357(JP,B2)
【文献】特許第4922015(JP,B2)
【文献】特開2010-218077(JP,A)
【文献】特開2012-018618(JP,A)
【文献】特開2011-034484(JP,A)
【文献】特開2012-059103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが稼働させている稼働中システムの構成情報と、他のユーザ先の他稼働中システムの構成情報とを比較し、システム構成部品の差異を検出する検出部と、
前記稼働中システムを一定期間稼働させた場合の二酸化炭素排出量の算出結果と、前記他稼働中システムを前記一定期間稼働させた場合の二酸化炭素排出量の算出結果とを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果に基づいて、前記システム構成部品の差異を基に、相違するシステム構成部品を低環境負荷構成部品として提示する提示部と
を備える環境負荷軽減システム。
【請求項2】
前記他稼働中システムは、前記稼働中システムの性能値と同程度の性能値を有するシステムである
請求項1に記載の環境負荷軽減システム。
【請求項3】
前記提示部は、前記他稼働中システムの方が前記稼働中システムよりも二酸化炭素排出量の算出結果が少ないとき、前記稼働中システムと相違する前記他稼働中システムのシステム構成部品を前記低環境負荷構成部品として前記ユーザに提示する
請求項2に記載の環境負荷軽減システム。
【請求項4】
前記提示部は、前記稼働中システムの方が前記他稼働中システムよりも二酸化炭素排出量の算出結果が少ないとき、前記他稼働中システムと相違する前記稼働中システムのシステム構成部品を前記低環境負荷構成部品として前記他のユーザに提示する
請求項2に記載の環境負荷軽減システム。
【請求項5】
ユーザが稼働させている稼働中システムに搭載可能なシステム構成部品を、それぞれの単体性能値を用いてグループ分けするグループ分け部と、
前記稼働中システムに搭載されているシステム構成部品の二酸化炭素排出量と、同一グループ内のシステム構成部品の二酸化炭素排出量とを比較する比較部と、
低環境負荷構成部品を前記ユーザに提示する提示部と
を備え、
前記提示部は、前記同一グループ内のシステム構成部品の中に、前記稼働中システムに搭載されているシステム構成部品よりも二酸化炭素排出量が少ないシステム構成部品が存在するとき、そのシステム構成部品を前記低環境負荷構成部品として前記ユーザに提示する
環境負荷軽減システム。
【請求項6】
ユーザが稼働させている稼働中システムの構成情報と、他のユーザ先の他稼働中システムの構成情報とを比較してシステム構成部品の相違点を検出するステップと、
前記稼働中システムを一定期間稼働させた場合の二酸化炭素排出量の算出結果と、前記他稼働中システムを前記一定期間稼働させた場合の二酸化炭素排出量の算出結果とを比較するステップと、
その比較結果に応じて、前記システム構成部品の相違点を基に、相違するシステム構成部品を低環境負荷構成部品として提示するステップと
の各処理を実行する環境負荷軽減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷軽減システムおよび環境負荷軽減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の環境への配慮の高まりから、カーボンニュートラルの考えが浸透してきており、システム動作時の環境負荷軽減への取り組みが注目されている。その取り組みの一つとして、ユーザが稼働させているシステムの二酸化炭素排出量をユーザに提示する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、「半導体製造に用いられる装置における換算した二酸化炭素発生量に関係する計測項目を計測し、この計測結果とその計測項目に対応する二酸化炭素発生量換算係数とを演算し、演算結果の総和を当該装置1台当たりの二酸化炭素発生量として求め、表示手段に表示してユーザに提示する」技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-332463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術では、ユーザに対して二酸化炭素発生量を表示によって提示するだけである。そのため、ユーザは二酸化炭素排出量を知ることはできるものの、二酸化炭素排出量を知るだけでは、稼働中システムのライフサイクルにおける合計二酸化炭素排出量を把握できなかったり、稼働中システムと性能は大差がないが、より二酸化炭素排出量が少ない構成の有無を把握できなかったりする。その結果、環境負荷軽減により貢献したいユーザにとっては、環境負荷のより低い構成(即ち、二酸化炭素排出量のより少ない構成)への変更を検討することができない。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、環境負荷軽減により貢献したいユーザにとって、環境負荷のより低い構成への変更を検討することができる環境負荷軽減システムおよび環境負荷軽減方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の環境負荷軽減システムは、ユーザが稼働させている稼働中システムの構成情報と、他のユーザ先の他稼働中システムの構成情報とを比較し、システム構成部品の差異を検出する検出部と、稼働中システムを一定期間稼働させた場合の二酸化炭素排出量の算出結果と、他稼働中システムを当該一定期間稼働させた場合の二酸化炭素排出量の算出結果とを比較する比較部と、比較部の比較結果に基づいて、システム構成部品の差異を基に、相違するシステム構成部品を低環境負荷構成部品として提示する提示部とを備える。
【0008】
また、上記課題を解決するための本発明の他の環境負荷軽減システムは、ユーザが稼働させている稼働中システムに搭載可能なシステム構成部品を、それぞれの単体性能値を用いてグループ分けするグループ分け部と、稼働中システムに搭載されているシステム構成部品の二酸化炭素排出量と、同一グループ内のシステム構成部品の二酸化炭素排出量とを比較する比較部と、低環境負荷構成部品をユーザに提示する提示部とを備え、提示部は、同一グループ内のシステム構成部品の中に、稼働中システムに搭載されているシステム構成部品よりも二酸化炭素排出量が少ないシステム構成部品が存在するとき、そのシステム構成部品を低環境負荷構成部品としてユーザに提示する。
【0009】
また、上記課題を解決するための本発明の環境負荷軽減方法は、ユーザが稼働させている稼働中システムの構成情報と、他のユーザ先の他稼働中システムの構成情報とを比較してシステム構成部品の相違点を検出するステップと、稼働中システムを一定期間稼働させた場合の二酸化炭素排出量の算出結果と、他稼働中システムを当該一定期間稼働させた場合の二酸化炭素排出量の算出結果とを比較するステップと、その比較結果に応じて、当該システム構成部品の相違点を基に、相違するシステム構成部品を低環境負荷構成部品として提示するステップとの各処理を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環境負荷軽減により貢献したいユーザにとって、環境負荷のより低い構成への変更を検討することができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成、および、効果は、以下の発明を実施するための形態(以下、実施形態と記述する)の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の環境負荷軽減システムの概要を模式的に示す概要図である。
図2】稼働情報およびシステム搭載可能部品別CO2排出量情報についての説明図である。
図3】稼働中システムに搭載可能なシステム構成部品のグループ分けについての説明図である。
図4】本発明の実施形態に係る環境負荷軽減システムのシステム構成の一例を模式的に示すシステム構成図である。
図5】顧客システム稼働情報管理部における管理サーバの構成の一例を示すブロック図である。
図6】顧客システム稼働情報管理部の管理サーバにおいて実行される低環境負荷構成部品への変更提示を行うための処理手順の流れについて模式的に示す図である。
図7】顧客システム稼働情報管理部の管理サーバにおいて実行される低環境負荷構成部品への変更提示の一例を模式的に示す図である。
図8】デバイス情報管理部における管理サーバの構成の一例を示すブロック図である。
図9】デバイス情報管理部の管理サーバにおいて実行される低環境負荷構成部品への変更提示を行うための処理手順の流れについて模式的に示す図である。
図10】デバイス情報管理部の管理サーバにおいて実行される低環境負荷構成部品への変更提示の一例を模式的に示す図である。
図11】顧客稼働システムの構成の一例を示すブロック図である。
図12】顧客サイトにおける操作端末の構成の一例を示すブロック図である。
図13】本発明の実施形態に係る環境負荷軽減方法の処理手順の一例を示すフローチャート(その1)である。
図14】本発明の実施形態に係る環境負荷軽減方法の処理手順の一例を示すフローチャート(その2)である。
図15】本発明の変形例に係る環境負荷軽減システムのシステム構成を模式的に示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について、添付図面を参照して説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0014】
<本発明の環境負荷軽減システムの概要>
図1は、本発明の環境負荷軽減システムの概要を模式的に示す概要図である。本発明の環境負荷軽減システムは、環境負荷軽減により貢献したいユーザにとって、環境負荷のより低い構成(即ち、二酸化炭素(CO2)排出量のより少ない構成)への変更を検討することができるようにするために、2つの手法をとる構成となっている。
【0015】
(第1の手法)
本発明の環境負荷軽減システム1は、先ず、ユーザ2が稼働させている稼働中システム3の構成情報と、他のユーザ先の他稼働中システム(図示せず)の構成情報とを比較し、両システムのシステム構成部品の差異を検出する。比較対象となる他のユーザ先の他稼働中システムの構成情報については、稼働中システムの性能値と同程度の性能値を有する他稼働中システムの構成情報を予め稼働情報として、経路4を通してデータベース5に採取・格納しておくことで、当該データベース5から取得することができる。性能値について、「同程度」とは、例えば、稼働中システム3の性能値の±10%を想定している。
【0016】
ここで、「構成情報」とは、システム(稼働中システム/他稼働中システム)を構成するシステム構成部品等についての情報である。また、「稼働情報」とは、消費電力や性能値等についての情報である。稼働情報には、システムを構成する部品等についての情報(構成情報)も含まれる。稼働情報の一例を図2Aに示す。この例の稼働情報は、システムID毎に、合計CO2排出量(kg/年)、平均性能値[IOPS/h]、最大性能値[IOPS]、搭載ドライブ、ドライブ性能[IOPS/h]、ドライブ性能グループ、搭載メモリ、メモリ性能GB/s]、メモリ性能グループ、搭載CPU、CPU性能[MIPS]、および、CPU性能グループ等の各情報を含んでいる。
【0017】
システム構成部品の差異を検出した後、稼働中システム3を一定期間稼働させた場合のCO2排出量の算出結果と、他稼働中システムを同じ一定期間稼働させた場合の他稼働中システムのCO2排出量の算出結果とを比較する。システムに搭載可能な部品(例えば、ドライブ)別のCO2排出量の情報を図2Bに示す。この搭載可能部品別CO2排出量情報は、搭載可能部品毎に、稼働時CO2排出量/日、製造時CO2排出量、1年稼働した場合のCO2排出量、廃棄時のCO2排出量、および、ライフサイクルにおけるCO2排出量の各情報を含んでいる。
【0018】
稼働中システム3を一定期間稼働させた場合のCO2排出量の算出結果と、他稼働中システムを同じ一定期間稼働させた場合のCO2排出量の算出結果との比較処理では、稼働中システム3および他稼働中システムのいずれのシステムのCO2排出量が少ないかを判定することができる。
【0019】
上述の比較処理において、他稼働中システムの方が稼働中システム3よりもCO2排出量の算出結果が少ない場合には、稼働中システム3と他稼働中システムとのシステム構成部品の差異を基に、稼働中システム3と相違する他稼働中システムのシステム構成部品を、低環境負荷構成部品6としてユーザ2に提示する(経路7)。
【0020】
この低環境負荷構成部品6の提示によって、環境負荷軽減対象のユーザ2に対してシステム構成部品の低環境負荷構成部品6への変更を促すことができる。これにより、環境負荷軽減により貢献したいユーザにとって、環境負荷のより低い構成への変更を検討することができる。具体的には、低環境負荷構成部品6への変更の提示を受けたユーザ2は、提示された低環境負荷構成部品6を購入し、システム構成部品を交換することで、稼働中システム3をCO2排出量のより少ない構成に変更することができる。これにより、CO2排出量の削減および消費電力の低減に貢献することができる。
【0021】
ここで、比較対象となる他のユーザ先の他稼働中システムの性能値について、稼働中システムの性能値と同程度の性能値としていることにより、稼働中システム3により近い性能値の他稼働中システムのシステム構成部品を、低環境負荷構成部品6としてユーザ2に提示することができる。
【0022】
また、上述の比較処理において、その比較結果が稼働中システム3の方が他稼働中システムよりもCO2排出量の算出結果が少ない場合には、稼働中システム3について、環境負荷のより低い構成への変更を検討する必要がないことになる。ただし、この場合は、他のユーザに対して、他稼働中システムのシステム構成部品の変更を促すようにすることができる。
【0023】
具体的には、稼働中システム3の方が他稼働中システムよりもCO2排出量の算出結果が少ない場合には、他稼働中システムと相違する稼働中システムのシステム構成部品を低環境負荷構成部品6として他のユーザに提示するようにすればよい。この低環境負荷構成部品6の提示によって、他のユーザに対して、他稼働中システムのシステム構成部品の変更を促すことができる。その結果、環境負荷軽減対象のユーザ2のみならず、環境負荷軽減対象以外の他のユーザ側においても、CO2排出量の削減および消費電力の低減に貢献することができる。
【0024】
(第2の手法)
上述の第1の手法では、環境負荷軽減対象以外の他のユーザ先で稼働中の他稼働中システムの構成情報との比較結果に基づいて、低環境負荷構成部品6をユーザに提示するようにしている。これに対して、第2の手法では、稼働中システムに搭載可能なシステム構成部品を、それぞれの単体性能値を用いてグループ分けし、同一グループに属しているシステム構成部品のCO2排出量の比較に基づいて、稼働中システム3に搭載されているシステム構成部品よりもCO2排出量が少ないシステム構成部品を低環境負荷構成部品6としてユーザに提示するようにする。
【0025】
具体的には、部品製造元から与えられるカーボンフットプリント8から、システム構成部品情報を取り込み、稼働中システムに搭載可能なシステム構成部品をそれぞれの単体性能値を用いてグループ分けしてデータベース9に格納する。そして、稼働中システム3に搭載されているシステム構成部品のCO2排出量と、同一グループ内のシステム構成部品のCO2排出量とを比較し、稼働中システム3に搭載されているシステム構成部品よりもCO2排出量が少ないシステム構成部品を低環境負荷構成部品6として抽出するようにする。
【0026】
図3は、稼働中システムに搭載可能なシステム構成部品のグループ分けについての説明図である。図3Aには、稼働中システムに搭載可能な部品(例えば、ドライブ)別グループ一覧を示している。また、図3Bには、Drive-Aグループに属するドライブ一覧 (単体性能:~1000[IOPS/h])を示し、図3Cには、Drive-Bグループに属するドライブ一覧 (単体性能:1000~1500[IOPS/h])を示している。
【0027】
稼働中システム3に搭載されているシステム構成部品のCO2排出量と、同一グループ内のシステム構成部品のCO2排出量との比較処理では、同一グループ内のシステム構成部品の中に、稼働中システム3に搭載されているシステム構成部品よりもCO2排出量が少ないシステム構成部品が存在するか否かを判定することができる。稼働中システム3に搭載されているシステム構成部品よりもCO2排出量が少ないシステム構成部品が存在しない場合には、環境負荷のより低い構成への変更を検討する必要がないことになる。
【0028】
同一グループ内のシステム構成部品の中に、稼働中システム3に搭載されているシステム構成部品よりもCO2排出量が少ないシステム構成部品が存在する場合は、そのシステム構成部品を、低環境負荷構成部品6としてユーザ2に提示する。この低環境負荷構成部品6の提示によって、ユーザ2に対してシステム構成部品の変更を促すことができる。これにより、環境負荷軽減により貢献したいユーザにとって、環境負荷のより低い構成への変更を検討することができる。
【0029】
低環境負荷構成部品6の提示を受けたユーザ2は、低環境負荷構成部品6として提示されたシステム構成部品を購入し、CO2排出量が多いと判定されたシステム構成部品と交換することで、CO2排出量のより少ない構成に変更することができる。これにより、CO2排出量の削減および消費電力の低減に貢献することができる。
【0030】
第2の手法において、稼働中システムに搭載可能なシステム構成部品を、それぞれの単体性能値を用いてグループ分けするのは次の理由による。一般的に、単体性能値が相対的に優れたシステム構成部品は、単体性能値が相対的に劣るシステム構成部品に比べて価格が高い部品である。従って、単体性能値を用いてグループ分けを行わないと、低環境負荷構成部品6として高価なシステム構成部品を提示するケースが生じ得る。換言すれば、単体性能値を用いてグループ分けを行うことで、稼働中システム3と同程度の性能値で、かつ、同程度の価格帯のシステム構成部品を、低環境負荷構成部品6としてユーザに提示することができる。
【0031】
<本発明の実施形態に係る環境負荷軽減システム>
[システム構成例]
図4は、本発明の実施形態に係る環境負荷軽減システムのシステム構成の一例を模式的に示すシステム構成図である。
【0032】
本発明の実施形態に係る環境負荷軽減システム10は、オンプレミス(データセンタ)に設置された顧客サイト20とネットワーク30を介して接続されている。ネットワーク30には、顧客サイト20の他に、他のユーザ先の顧客サイト40_1~40_nが接続されている。他のユーザ先の顧客サイト40_1~40_nは、他稼働中システム41_1~41_nを有している。以下では、他稼働中システム41_1~41_nを他稼働中システム41と総称する場合がある。
【0033】
環境負荷軽減システム10は、拠点として、顧客システム稼働情報管理部50およびデバイス情報管理部60を有する構成となっている。顧客サイト20は、操作端末21、稼働中システム22、および、LAN(Local Area Network)23を備えている。顧客サイト20を環境負荷軽減対象サイトとするとき、稼働中システム22は、ユーザが稼働させている稼働中システムということになる。稼働中システム22としては、ストレージ、サーバ等を例示することができる。
【0034】
環境負荷軽減システム10において、顧客システム稼働情報管理部50は、操作端末51、管理サーバ52、および、LAN53を備えている。この顧客システム稼働情報管理部50は、前述の第1の手法の処理、即ち、顧客サイト20の稼働中システムと他の顧客サイト40_1~40_nの他稼働中システム41とのシステム構成部品の差異を基に、相違するシステム構成部品を低環境負荷構成部品としてユーザに提示する処理を実行する。
【0035】
デバイス情報管理部60は、操作端末61、管理サーバ62、および、LAN63を備えている。このデバイス情報管理部60は、前述の第2の手法の処理、即ち、稼働中システムに搭載可能なシステム構成部品についてグループ分けし、同一グループ内のシステム構成部品の中に、稼働中システムに搭載されているシステム構成部品よりもCO2排出量が少ないシステム構成部品が存在する場合に、当該システム構成部品を低環境負荷構成部品としてユーザに提示する処理を実行する。
【0036】
[顧客システム稼働情報管理部における管理サーバについて]
(管理サーバの構成例)
図5は、顧客システム稼働情報管理部50における管理サーバ52の構成の一例を示すブロック図である。
【0037】
顧客システム稼働情報管理部50における管理サーバ52は、制御部521、メモリ部522、情報格納部523、および、通信部524によって構成されている。
【0038】
制御部521は、図示を省略するが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、および、RAM(Random Access Memory)等を有する構成となっている。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、この展開したプログラムと協働して管理サーバ52の動作について集中制御を行う。
【0039】
メモリ部522は、構成情報処理プログラム5221、システム性能情報処理プログラム5222、および、使用電力量・CO2排出量処理プログラム5223を有する構成となっている。情報格納部523は、構成情報データベース(DB)5231、システム性能情報データベース5232、使用電力量情報データベース5233、CO2排出量データベース5234、および、ロケーション情報データベース5235を有する構成となっている。
【0040】
メモリ部522において、構成情報処理プログラム5221は、顧客稼働システム(ユーザが稼働させている稼働中システム22)や他のユーザ先の他稼働中システム41を構成している部品(システム構成部品)の情報を取り込むためのプログラムである。構成情報処理プログラム5221は、顧客稼働システムから取り込んだシステム構成部品の情報を、情報格納部523の構成情報データベース5231に格納する。
【0041】
システム性能情報処理プログラム5222は、顧客稼働システムからその性能値の情報を取り込むためのプログラムである。システム性能情報処理プログラム5222は、顧客稼働システムから取り込んだ性能値の情報を、情報格納部523のシステム性能情報データベース5232に格納する。
【0042】
使用電力量・CO2排出量処理プログラム5223は、顧客稼働システムからその使用電力量およびCO2排出量の情報を取得するためのプログラムである。使用電力量・CO2排出量処理プログラム5223は、顧客稼働システムから取得した使用電力量を使用電力量情報データベース5233に、CO2排出量の情報をCO2排出量データベース5234にそれぞれ格納する。
【0043】
情報格納部523において、ロケーション情報データベース5235には、顧客サイトのロケーション情報、図2の例では、環境負荷軽減対象の顧客サイト20の設置場所の情報や、環境負荷軽減対象以外の他の顧客サイト40_1~40_nの設置場所の情報が予め格納されている。
【0044】
上述した構成の顧客システム稼働情報管理部50の管理サーバ52において、制御部521は、特許請求の範囲に記載の検出部、比較部、および、提示部に相当する各機能、即ち、検出部5211、比較部5212、および、提示部5213を有している。
【0045】
制御部521において、検出部5211は、構成情報データベース5231に格納されている稼働中システムの構成情報と、構成情報データベース5231に格納されている他稼働中システムの構成情報とを比較し、両システムのシステム構成部品の差異を検出する処理を行う。比較対象となる他稼働中システム41の構成情報については、稼働中システムの性能値と同程度(例えば、±10%)の性能値を有する他稼働中システム41の構成情報を構成情報データベース5231から取得することができる。
【0046】
比較部5212は、CO2排出量データベース5234に格納されているCO2排出量等の情報を基に、稼働中システムを一定期間稼働させた場合のCO2排出量の算出結果と、他稼働中システム41を当該一定期間稼働させた場合のCO2排出量の算出結果とを比較する処理を行う。この比較部5212による比較処理では、稼働中システム22および他稼働中システム41のいずれのシステムのCO2排出量が少ないかの判定を行うことができる。
【0047】
提示部5213は、比較部5212による比較結果に基づいて、検出部5211で検出したシステム構成部品の差異を基に、相違するシステム構成部品を低環境負荷構成部品として提示する処理を行う。具体的には、他稼働中システム41の方が稼働中システム22よりもCO2排出量の算出結果が少ない場合、制御部521は、稼働中システムと相違する他稼働中システム41のシステム構成部品を低環境負荷構成部品として、通信部524からLAN53を経由して顧客サイト20(図4参照)に伝送し、ユーザに提示する。
【0048】
この低環境負荷構成部品の提示によって、環境負荷軽減対象のユーザに対してシステム構成部品の変更を促すことができる。これにより、環境負荷軽減により貢献したいユーザにとって、環境負荷のより低い構成への変更を検討することができる。具体的には、低環境負荷構成部品の提示を受けて、ユーザが低環境負荷構成のシステム構成を採用することで、CO2排出量の削減および消費電力の低減に貢献することができる。
【0049】
(低環境負荷構成部品への変更提示を行うための処理例)
続いて、顧客システム稼働情報管理部50の管理サーバ52において、低環境負荷構成部品への変更提示を行うための処理手順の一例について説明する。
【0050】
ここで例示する低環境負荷構成部品への変更提示を行うための処理は、前述の第1の手法の処理、即ち、稼働情報から他稼働中システム41(41_1~41_n)における稼働中システム22と類似のシステムとの性能比較を行い、システム構成部品の変更を提示する処理であり、管理サーバ52における制御部521による制御の下に実行される。図6は、顧客システム稼働情報管理部50の管理サーバ52において実行される低環境負荷構成部品への変更提示を行うための処理手順の流れについて模式的に示す図である。
【0051】
制御部521は、先ず、現在稼働中の稼働中システム22に搭載されているシステム構成部品の発熱量からそのシステム構成部品が使用されているときの時間単位のCO2排出量をCO2排出量データベース5234に取り込む。制御部521は、さらに、システム構成部品に対するカーボンフットプリント8から、稼働中システム22に搭載可能な部品のライフサイクルにおけるCO2排出量をCO2排出量データベース5234に取り込む。
【0052】
次に、制御部521は、稼働中システム22を構成しているシステム構成部品のCO2排出量を合算し、今後一定期間(例えば、1年間)に亘ってシステムが稼働した場合のCO2排出量の合計値を求める。また、制御部521は、他のユーザ先で稼働している他稼働中システム41から採取した稼働情報(他装置稼働情報)のうち、稼働中システム22と性能値が同程度(例えば、スループットが±10%)の構成を選択し、この選択した他稼働中システム41の構成と稼働中システム22の構成とを比較する。
【0053】
次に、制御部521は、稼働中システム22を一定期間稼働させた場合のCO2排出量の算出結果と、他稼働中システム41を同じ一定期間稼働させた場合のCO2排出量の算出結果とを比較する。そして、制御部521は、CO2排出量算出結果の比較結果から、稼働中システム22と他稼働中システム41とのシステム構成部品の差異を検出し、その違うシステム構成部品を低環境負荷構成部品としてユーザに提示し、システム構成部品の変更(交換)を促す。
【0054】
図6において、(a)は、稼働中システム22の稼働情報(I/O量平均:28000[IOPS/h]、最大I/O量:35000[IOPS/日])であり、(b)は、他稼働中システム41の稼働情報(I/O量平均:29500[IOPS/h]、最大I/O量:38500[IOPS/日])である。
【0055】
稼働中システム22において、システムの構成変更を行わないで、1年間稼働した場合のCO2排出量は3562.67kgである。他稼働中システム41において、システムの構成変更を行わないで、1年間稼働した場合のCO2排出量は2938.50kgである。
【0056】
このように、顧客システム稼働情報管理部50の管理サーバ52における低環境負荷構成部品への変更提示を行うための処理では、稼働中システム22のCO2排出量と他稼働中システム41のCO2排出量との比較結果を基にシステム構成部品の相違点を提示し、その相違するシステム構成部品を低環境負荷構成部品としてユーザに提示する。本例の場合、稼働中システム22のシステム構成部品Cを、他稼働中システム41のシステム構成部品Dに変更することをユーザに提示することになる。このシステム構成部品の変更(交換)により、稼働中システム22において、CO2排出量の削減および消費電力の低減に貢献することができる。
【0057】
(低環境負荷構成部品への変更提示例)
続いて、顧客システム稼働情報管理部50の管理サーバ52において実行される、前述の第1の手法をとる場合の低環境負荷構成部品への変更提示の一例について説明する。図7は、顧客システム稼働情報管理部50の管理サーバ52において実行される低環境負荷構成部品への変更提示の一例を模式的に示す図である。
【0058】
第1の手法は、稼働情報から他稼働中システム41(41_1~41_n)における稼働中システム22と類似のシステムと稼働中システム22との性能比較を行い、その性能比較の結果に基づいてシステム構成部品の変更を提示する処理である。
【0059】
この第1の手法を用いる顧客システム稼働情報管理部50の管理サーバ52では、稼働情報から性能比較を行い、システム構成部品毎の現在稼働中の構成と今後のCO2排出量予測、および、システム構成部品毎のCO2排出量削減構成の提案を、メッセージと共に提示する処理が行われる。
【0060】
ここでは、稼働中システム22に搭載されているシステム構成部品として、ドライブ、DIMM(Dual Inline Memory Module)、CPUを例示している。このとき、継続稼働した際のCO2排出量が、部品名SSD-abcのドライブの場合は7475(g/年)、部品名DIMM-12のDIMMの場合は420(g/年)、部品名C-xyzのCPUの場合は225(g/年)であるとする。
【0061】
これに対して、比較対象の他稼働中システムにおいて、継続稼働した際のCO2排出量が、部品名SSD-ghiのドライブの場合は6650(g/年)、部品名DIMM-12のDIMMの場合は420(g/年)、部品名C-185のCPUの場合は129(g/年)であるとする。
【0062】
このような性能比較の結果を基に、ユーザに対しご提案として、『現在使用しているドライブを「SSD-ghi」に、CPUを「C-185」に変更頂くことにより、システム全体のCO2排出量を「年間921(g)」削減し、さらに平均性能を「1500(IOPS/h)」、最大性能を「3500(IOPS/日)することが可能です。』というメッセージを提示する。
【0063】
このような提案を受けたユーザは、稼働中システム22に搭載されているシステム構成部品のうち、SSD-abcのドライブをSSD-ghiのドライブに、C-xyzのCPUをC-185のCPUに交換することで、稼働中システム22において、CO2排出量の削減および消費電力の低減に貢献することができる。
【0064】
[顧客システム稼働情報管理部における管理サーバについて]
(管理サーバの構成例)
図8は、デバイス情報管理部60における管理サーバ62の構成の一例を示すブロック図である。
【0065】
デバイス情報管理部60における管理サーバ62は、制御部621、メモリ部622、情報格納部623、および、通信部624によって構成されている。
【0066】
制御部621は、図示を省略するが、CPU、ROM、および、RAM等を有する構成となっている。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、この展開したプログラムと協働して管理サーバ62の動作について集中制御を行う。
【0067】
メモリ部622は、構成デバイス情報処理プログラム6221、デバイス性能情報処理プログラム6222、および、デバイスCO2排出量処理プログラム6223を有する構成となっている。情報格納部623は、構成デバイス情報データベース6231、デバイス性能情報データベース6232、および、CO2排出量データベース6233を有する構成となっている。
【0068】
メモリ部622において、構成デバイス情報処理プログラム6221は、稼働中システムに搭載されているシステム構成部品の情報を、部品製造元から与えられるカーボンフットプリントから取得するためのプログラムである。構成デバイス情報処理プログラム6221は、カーボンフットプリントから取得したシステム構成部品の情報を、情報格納部623の構成デバイス情報データベース6231に格納する。
【0069】
デバイス性能情報処理プログラム6222は、稼働中システムに搭載されているシステム構成部品の性能値の情報を取得するためのプログラムである。デバイス性能情報処理プログラム6222は、稼働中システムから取得したシステム構成部品の性能値の情報を、情報格納部623のデバイス性能情報データベース6232に格納する。
【0070】
デバイスCO2排出量処理プログラム6223は、稼働中システムに搭載されているシステム構成部品のCO2排出量がどの程度であるかを示す情報を取得するためのプログラムである。デバイスCO2排出量処理プログラム6223は、稼働中システムから取得したシステム構成部品のCO2排出量の情報を、情報格納部623のCO2排出量データベース6233に格納する。
【0071】
上述した構成のデバイス情報管理部60における管理サーバ62において、制御部621は、特許請求の範囲に記載のグループ分け部、比較部、および、提示部に相当する各機能、即ち、グループ分け部6211、比較部6212、および、提示部6213を有している。
【0072】
制御部621において、グループ分け部6211は、部品製造元から与えられるカーボンフットプリントからシステム構成部品の情報を取り込んで、情報格納部623のデバイス性能情報データベース6232に格納する。そして、グループ分け部6211は、稼働中システムに搭載可能なシステム構成部品をそれぞれの単体性能値を用いてグループ分けする。
【0073】
比較部6212は、CO2排出量データベース6233に格納に格納されている情報を基に、稼働中システムに搭載されているシステム構成部品のCO2排出量と、同一グループ内のシステム構成部品のCO2排出量とを比較する。この比較部6212による比較処理では、同一グループ内のシステム構成部品の中に、稼働中システムに搭載されているシステム構成部品よりもCO2排出量が少ないシステム構成部品が存在するか否かの判定を行うことができる。
【0074】
比較部6212による比較処理において、同一グループ内のシステム構成部品の中に、稼働中システムに搭載されているシステム構成部品よりもCO2排出量が少ないシステム構成部品が存在する場合、提示部6213は、そのシステム構成部品を低環境負荷構成部品として通信部624からLAN63を経由して顧客サイト20(図4参照)に伝送し、ユーザに提示する。
【0075】
この低環境負荷構成部品の提示によって、環境負荷軽減対象のユーザに対してシステム構成部品の変更を促すことができる。これにより、環境負荷軽減により貢献したいユーザにとって、環境負荷のより低い構成への変更を検討することができる。具体的には、低環境負荷構成部品の提示を受けて、ユーザが低環境負荷構成のシステム構成を採用することで、CO2排出量の削減および消費電力の低減に貢献することができる。
【0076】
(低環境負荷構成部品への変更提示を行うための処理例)
続いて、デバイス情報管理部60の管理サーバ62において、低環境負荷構成部品への変更提示を行うための処理手順の一例について説明する。
【0077】
ここで例示する低環境負荷構成部品への変更提示を行うための処理は、前述の第2の手法の処理、即ち、稼働中システムに搭載可能なシステム構成部品を、それぞれの単体性能値を用いてグループ分けし、同一グループに属しているシステム構成部品のCO2排出量の比較に基づいて、低環境負荷構成部品6をユーザに提示する処理である。図9は、デバイス情報管理部60の管理サーバ62において実行される低環境負荷構成部品への変更提示を行うための処理手順の流れについて模式的に示す図である。
【0078】
制御部621は、先ず、現在稼働中の稼働中システム22に搭載されているシステム構成部品の発熱量から、そのシステム構成部品が使用されているときの時間単位のCO2排出量をCO2排出量データベース6233に取り込む。
【0079】
次に、制御部621は、稼働中システム22に搭載可能なシステム構成部品(例えば、ドライブ)それぞれの単体性能値を用いてグループ分けをしておき、各々のシステム構成部品を今後一定期間(例えば、1年間)稼働した場合のCO2排出量の合計値をCO2排出量データベース6233に取り込む。
【0080】
次に、制御部621は、一定期間稼働した場合の稼働中システム22のシステム構成部品のCO2排出量の算出結果と、当該システム構成部品と同一グループ内のシステム構成部品のCO2排出量の算出結果とを比較する。そして、同一グループ内のシステム構成部品の中に、稼働中システム22に搭載されているシステム構成部品よりもCO2排出量が少ないシステム構成部品が存在する場合に、当該システム構成部品を低環境負荷構成部品としてユーザに提示し、システム構成部品の変更(交換)を促す。
【0081】
図9において、(a)は、第1グループ、例えば、単体性能値が1000[IOPS]未満であるグループのドライブ一覧表を示し、(b)は、単体性能値が1000~1500[IOPS]であるグループのドライブ一覧表を示している。ここでは、一例として、稼働中システム22の性能値から、例えば、単体性能値が1000[IOPS]未満であるグループのドライブ一覧表(a)を選択する。そして、ユーザが使用しているシステム構成部品のCO2排出量を比較して、ユーザに相違点を提示し、低環境負荷構成部品への変更を提示する。
【0082】
このように、デバイス情報管理部60の管理サーバ62における低環境負荷構成部品への変更提示を行うための処理では、稼働中システム22のシステム構成部品の性能の差異から比較を行い、CO2排出量が少ないシステム構成部品を低環境負荷構成部品としてユーザに提示することになる。このシステム構成部品の変更(交換)により、稼働中システム22において、CO2排出量の削減および消費電力の低減に貢献することができる。
【0083】
(低環境負荷構成部品への変更提示例)
続いて、デバイス情報管理部60の管理サーバ62において実行される、前述の第2の手法をとる場合の低環境負荷構成部品への変更提示の一例について説明する。図10は、デバイス情報管理部60の管理サーバ62において実行される低環境負荷構成部品への変更提示の一例を模式的に示す図である。
【0084】
第2の手法は、稼働中システム22に搭載可能なシステム構成部品を、それぞれの単体性能値を用いてグループ分けする。そして、同一グループに属しているシステム構成部品のCO2排出量の比較に基づいて、稼働中システムに搭載されているシステム構成部品よりもCO2排出量が少ないシステム構成部品を低環境負荷構成部品としてユーザにレコメンドする処理である。
【0085】
この第2の手法を用いるデバイス情報管理部60の管理サーバ62では、稼働中システム22に搭載されているシステム構成部品のそれぞれの性能値を取得し、システム構成部品の性能情報を用いてシステム構成部品のCO2排出量を算出し、稼働中の構成とCO2排出量、レコメンド構成と構成変更後のCO2排出量と削減量を、ご提案のメッセージと共に提示する処理が行われる。
【0086】
ここでは、稼働中システム22に搭載されているシステム構成部品として、ドライブ、DIMM、CPUを例示している。このとき、継続稼働した際のCO2排出量が、搭載台数24台のSSD-mnoのドライブの場合は3750(g/年)、搭載台数12台のDIMM-12のDIMMの場合は420(g/年)、搭載台数8台のC-390のCPUの場合は460(g/年)であるとする。
【0087】
これに対して、CO2排出量削減構成の提案を継続稼働した際のCO2排出量が、搭載台数22台のSSD-ghiのドライブの場合は6650(g/年)、搭載台数12台のDIMM-12のDIMMの場合は420(g/年)、搭載台数8台のC-790のCPUの場合は398(g/年)であるとする。
【0088】
このような性能比較の結果を基に、ユーザに対して提案として、『現在使用しているドライブを「SSD-ghi」に、CPUを「C-780」に変更頂くことにより、システム全体のCO2排出量を「年間921(g)」削減することが可能です。さらに、ドライブの搭載台数を「2台」削減することが可能です。』というメッセージを提示する。
【0089】
このような提案を受けたユーザは、稼働中システム22に搭載されているシステム構成部品のうち、SSD-mnoのドライブをSSD-ghiのドライブに交換し、その搭載台数を22台に削減するとともに、C-390のCPUをC-790のCPUに交換することで、稼働中システム22において、CO2排出量の削減および消費電力の低減に貢献することができる。
【0090】
[顧客稼働システムの構成例]
図11は、稼働中システム22の構成の一例を示すブロック図である。稼働中システム22は、ストレージ71、および、例えば2つのサーバ(ホスト)72,73によって構成されている。
【0091】
ストレージ71は、制御部711、メモリ部712、情報格納部713、および、通信部714によって構成されている。
【0092】
制御部711は、図示を省略するが、CPU、ROM、および、RAM等を有する構成となっている。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、この展開したプログラムと協働してストレージ71の動作について集中制御を行う。
【0093】
メモリ部712は、電力計測プログラム7121および性能情報監視プログラム7122を有する構成となっている。情報格納部713は、使用電力量情報データベース7131、性能情報データベース7132、および、構成情報データベース7133を有する構成となっている。
【0094】
メモリ部712において、電力計測プログラム7121は、ストレージ71が使用する電力量を計測するためのプログラムである。電力計測プログラム7121は、計測したストレージ71の使用電力量を、情報格納部713の使用電力量情報データベース7131に格納する。
【0095】
性能情報監視プログラム7122は、ストレージ71を構成するシステム構成部品の性能情報を監視するためのプログラムであり、当該性能情報を性能情報データベース7132に格納する。構成情報データベース7133には、ストレージ71を構成するシステム構成部品の構成情報が格納されている。
【0096】
サーバ72は、制御部721、メモリ部722、情報格納部723、および、通信部724によって構成されている。サーバ72と同様に、サーバ73は、制御部731、メモリ部732、情報格納部733、および、通信部734によって構成されている。
【0097】
上述したように、ストレージ71、および、例えば2つのサーバ72,73を有する稼働中システム22を稼働するユーザは、顧客システム稼働情報管理部50およびデバイス情報管理部60を含む環境負荷軽減システム10から低環境負荷構成部品への変更提示を受けることで、低環境負荷構成部品へのシステム構成部品の交換を行うことになる。このときの交換対象デバイスには、ストレージ71を構成するシステム構成部品のみならず、2つのサーバ72,73も含まれる。
【0098】
[操作端末の構成例]
次に、顧客サイト20における操作端末21、顧客システム稼働情報管理部50における操作端末51、および、デバイス情報管理部60における操作端末61の構成例について説明する。ここでは、顧客サイト20における操作端末21の構成について例に挙げて説明することとする。
【0099】
図12は、顧客サイト20における操作端末21の構成の一例を示すブロック図である。顧客サイト20における操作端末21は、制御部211、情報格納部212、操作部213、表示部214、および、通信部215によって構成されている。この操作端末21の構成については、顧客システム稼働情報管理部50における操作端末51、および、デバイス情報管理部60における操作端末61についても、基本的に同一の構成である。
【0100】
ただし、顧客サイト20における操作端末21の場合、環境負荷軽減システム10から低環境負荷構成部品への変更提示が、表示部214による表示出力によって行われることになる。一例として、低環境負荷構成部品への変更の提示は、前述の第1の手法をとる場合には、図7に示すような提案内容およびメッセージが表示部214による表示出力によって行われ、前述の第2の手法をとる場合には、図10に示すような提案内容およびメッセージが表示部214による表示出力によって行われることになる。
【0101】
なお、ここでは、環境負荷軽減システム10から低環境負荷構成部品への変更提示を、表示部214による表示出力によって行うとしたが、環境負荷軽減システム10から低環境負荷構成部品への変更提示は、表示部214による表示出力に限られるものではない。例えば、環境負荷軽減システム10から低環境負荷構成部品への変更提示を、プリンタ等の印刷装置による印刷出力によって行うようにすることもできる。
【0102】
<本発明の実施形態に係る環境負荷軽減方法>
次に、本発明の実施形態に係る環境負荷軽減方法の処理手順について、図13および図14を用いて説明する。図13は、本発明の実施形態に係る環境負荷軽減方法の処理手順の一例を示すフローチャート(その1)であり、図14は、本発明の実施形態に係る環境負荷軽減方法の処理手順の一例を示すフローチャート(その2)である。
【0103】
本発明の実施形態に係る環境負荷軽減方法の一連の処理は、顧客システム稼働情報管理部50における管理サーバ52の制御部521、および、デバイス情報管理部60における管理サーバ62の制御部621による制御の下に実行される。
【0104】
顧客システム稼働情報管理部50における管理サーバ52の制御部521は、稼働中システム22からシステムの構成情報を採取して、データベース(DB)に格納し(ステップS101)、次いで、他のユーザ先の他稼働中システム41からシステムの構成情報を採取して、データベースに格納する(ステップS102)。
【0105】
次に、制御部521は、システム構成部品の性能カタログ値を取得してデータベースに格納し(ステップS103)、次いで、構成部品の性能カタログ値に応じて、システム構成部品のグループ分けを行う(ステップS104)。なお、図13および図14では、便宜上、「システム構成部品」を「構成部品」と略記する。
【0106】
次に、制御部521は、部品製造元から与えられるカーボンフットプリントの情報を入手してデータベースに格納し(ステップS105)、次いで、稼働情報からシステムスループットが例えば±10%以内の他稼働中システムを抽出する(ステップS106)。
【0107】
次に、制御部521は、稼働中システム22と、ステップS106で抽出した他稼働中システム41(41_1~41_n)との構成比較を実施する(ステップS107)。この構成比較処理において、稼働中システム22の構成と、ステップS106で抽出した他稼働中システム41の構成とが一致の場合(S107のYes)、制御部521は、稼働中システム22のシステム構成部品のCO2排出量を合算する(ステップS108)。ここでのCO2排出量の合算値をAとする。
【0108】
次に、制御部521は、他稼働中システム41のシステム構成部品のCO2排出量を合算する(ステップS109)。ここでのCO2排出量の合算値をBとする。そして、制御部521は、稼働中システム22と他稼働中システム41との構成差異、および、稼働中システム22のシステム構成部品のCO2排出量の合算値Aと、他稼働中システム41のシステム構成部品のCO2排出量の合算値Bとの比較を行う(ステップS110)。
【0109】
次に、制御部521は、稼働中システム22のシステム構成部品のCO2排出量の合算値Aが、他稼働中システム41のシステム構成部品のCO2排出量の合算値Bよりも大きいか否かの判断を行う(ステップS111)。
【0110】
ステップS111の比較処理において、合算値Aが合算値Bよりも大きければ(S111のYes)、制御部521は、構成の差異とCO2排出量を稼働中システム22のユーザに提示し(ステップS112)、次いで、稼働中システム22のユーザに対してシステムの構成変更をレコメンドし(ステップS113)、しかる後、一連の処理を終了する。
【0111】
ステップS111の比較処理において、合算値Aが合算値B以下であれば(S111のNo)、制御部521は、稼働中システム22のユーザに対するシステムの構成変更のレコメンドなしの処理を行い(ステップS114)、しかる後、一連の処理を終了する。
【0112】
なお、ここでは、合算値Aが合算値B以下のとき(S111のNo)、ステップS114において、稼働中システム22のユーザに対してシステムの構成変更のレコメンドを行わないようにしたが、構成の差異とCO2排出量を他稼働中システム41のユーザに提示し、当該ユーザに対してシステムの構成変更をレコメンドするようにしてもよい。これにより、他のユーザ側においても、CO2排出量の削減および消費電力の低減に貢献することができる。
【0113】
ステップS107の比較処理において、稼働中システム22の構成と、ステップS106で抽出した他稼働中システム41の構成とが不一致の場合(S107のNo)、以降の処理は、デバイス情報管理部60における管理サーバ62の制御部621による制御の下に実行される。
【0114】
稼働中システム22の構成と、ステップS106で抽出した他稼働中システム41の構成とが不一致の場合(S107のNo)、制御部621は、ステップS104でグループ分けした各システム構成部品のCO2排出量を比較し(ステップS115)、次いで、各システム構成部品に対する比較実施のループに入る。
【0115】
各システム構成部品に対する比較実施のループにおいて、制御部621は、稼働中システム22のシステム構成部品のCO2排出量を確認する(ステップS116)。このときの稼働中システム22のシステム構成部品のCO2排出量をCとする。次に、制御部621は、データベースに登録されたグループ内のシステム構成部品のCO2排出量を確認する(ステップS117)。このときのグループ内のシステム構成部品のCO2排出量をDとする。
【0116】
次に、制御部621は、稼働中システム22のシステム構成部品のCO2排出量Cと、グループ内のシステム構成部品のCO2排出量Dとの比較を行い(ステップS118)、次いで、CO2排出量CがCO2排出量Dよりも大きいか否かの判断を行う(ステップS119)。
【0117】
この判断処理において、CO2排出量CがCO2排出量Dよりも大きければ(S119のYes)、制御部621は、構成の差異とCO2排出量を稼働中システム22のユーザに提示し(ステップS120)、次いで、稼働中システム22のユーザに対してシステムの構成変更をレコメンドし(ステップS121)、各システム構成部品に対する比較実施のループを終了する。
【0118】
そして、制御部621は、全システム構成部品に対してレコメンドを終了し(ステップS122)、しかる後、一連の処理を終了する。また、制御部621は、ステップS119の判断処理において、CO2排出量CがCO2排出量D以下であれば(S119のNo)、稼働中システム22のユーザに対するシステムの構成変更のレコメンドなしの処理を行い(ステップS123)、しかる後、一連の処理を終了する。
【0119】
上述した本発明の実施形態に係る環境負荷軽減方法の一連の処理によれば、稼働中システム22のユーザに対して、低環境負荷構成部品へのシステム構成部品の変更を促すことができる。これにより、環境負荷軽減により貢献したいユーザにとって、環境負荷のより低い構成への変更を検討することができる。具体的には、システム構成部品の変更の提示を受けたユーザが、低環境負荷構成部品へシステム構成部品を交換することで、CO2排出量の削減および消費電力の低減に貢献することができる。
【0120】
<変形例>
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0121】
例えば、上述した実施形態では、環境負荷軽減システム10として、稼働中システム22を含む顧客サイト20をオンプレミスに設置するシステム構成を例示したが、オンプレミスへの顧客サイト20の設置に限られるものではない。例えば、図15に示すように、稼働中システム22を含む顧客サイト20をクラウド100に設置するシステム構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0122】
1…環境負荷軽減システム、2…ユーザ、3,22…稼働中システム、5,9…データベース、6…低環境負荷構成部品、10…本発明の実施形態に係る環境負荷軽減システム、20…顧客サイト、21,51,61…操作端末、52,62…管理サーバ、23,53,63…LAN、30…ネットワーク、40_1~40_n…他の顧客サイト、41(41_1~41_n)…他稼働中システム、50…顧客システム稼働情報管理部、60…デバイス情報,管理サーバ部、100…クラウド、5211…検出部、5212,6212…比較部、5213,6213…提示部、6211…グループ分け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15