(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】雌側配管継手、配管継手及び環状カバー
(51)【国際特許分類】
F16L 37/14 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
F16L37/14
(21)【出願番号】P 2023109077
(22)【出願日】2023-07-03
(62)【分割の表示】P 2019057923の分割
【原出願日】2019-03-26
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 光弘
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-292281(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0077917(KR,A)
【文献】特表2008-528899(JP,A)
【文献】国際公開第2014/142226(WO,A1)
【文献】特開2018-109422(JP,A)
【文献】特開昭60-034595(JP,A)
【文献】特開2011-106604(JP,A)
【文献】特開2009-092100(JP,A)
【文献】特開平01-098793(JP,A)
【文献】特開平10-009470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の端部に固定されて、相手側配管の雄側配管継手に結合される雌側配管継手において、
前記雄側配管継手の嵌合管部の外側に嵌合される嵌合筒部と、
前記嵌合筒部に形成されて、前記嵌合筒部が前記嵌合管部の正規嵌合位置まで嵌合されると前記嵌合管部の外周溝に対向する連通孔と、
前記嵌合筒部の外側に装着され、前記連通孔を通して前記外周溝に係合するクリップと、
前記嵌合筒部の外側に嵌合され、前記嵌合筒部の先端側に向かってスライドして前記嵌合筒部に対する正規スライド位置に至ったところで位置決めされると共に前記クリップの外側に嵌合し、前記クリップの外側への変形を規制する環状カバーと、
前記環状カバーに設けられ、前記嵌合筒部が前記正規嵌合位置に配置されていること及び前記環状カバーが前記正規スライド位置に配置されていることを条件に、前記雄側配管継手の外側面に重なった状態で前記雄側配管継手の被係合部に係合する係合アームと、を備える雌側配管継手。
【請求項2】
配管の端部に固定されて、相手側配管の雄側配管継手に結合される雌側配管継手において、
前記雄側配管継手の嵌合管部の外側に嵌合される嵌合筒部と、
前記嵌合筒部に形成されて、前記嵌合筒部が前記嵌合管部の正規嵌合位置まで嵌合されると前記嵌合管部の外周溝に対向する連通孔と、
前記嵌合筒部の外側に装着され、前記連通孔を通して前記外周溝に係合するクリップと、
前記クリップに設けられ、前記嵌合筒部が前記正規嵌合位置に配置されていることを条件に、前記雄側配管継手の外側面に重なった状態で前記雄側配管継手の被係合部に係合する係合アームと、を備え
、
前記クリップは、前記雄側配管継手の周方向で端部同士がオーバーラップする閉環状態と、前記雄側配管継手の周方向で前記端部同士の間に隙間が形成される開環状態とに変化する雌側配管継手。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の雌側配管継手と、その雌側配管継手が結合する前記雄側配管継手と、を備えてなる配管継手。
【請求項4】
雌側配管継手の嵌合筒部が、雄側配管継手の嵌合管部の外側の正規嵌合位置まで嵌合されると、前記嵌合筒部の連通孔が前記嵌合管部の外周溝に対向し、前記嵌合筒部の外側に装着されるクリップが前記連通孔を通して前記外周溝に係合する配管継手用の環状カバーであって、
前記嵌合筒部の外側に嵌合され、前記嵌合筒部の先端側に向かってスライドして前記嵌合筒部に対する正規スライド位置に至ったところで位置決めされて前記クリップの外側に嵌合するように形成されると共に係合アームを一体に備え、
前記嵌合筒部が前記正規嵌合位置に配置されかつ前記環状カバーが前記正規スライド位置に配置されていることを条件に、前記係合アームが前記雄側配管継手の外側面に重なった状態で前記雄側配管継手の被係合部に係合する環状カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の端部に固定されて、相手側配管の雄側配管継手に結合される雌側配管継手と、それら雌側配管継手と雄側配管継手(以下、適宜「雌雄の配管継手」という)を備えてなる配管継手と、配管継手に使用される環状カバーとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配管継手として、雄側配管継手の外側に雌側配管継手が嵌合されると、雄側配管継手の外周溝に雌側配管継手の連通孔が対向し、雌側配管継手の外側に装着されるクリップが連通孔を通して外周溝に係合することで雌雄の配管継手が抜け止めされたロック状態になるものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-106604号公報(段落[0029]、
図3,
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の配管継手では、前記ロック状態と、雌雄の配管継手が抜け止めされずに半嵌合しているアンロック状態との外観が似ているために、配管継手がロック状態か否かの確認作業が困難であり、その対策が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、配管の端部に固定されて、相手側配管の雄側配管継手に結合される雌側配管継手において、前記雄側配管継手の嵌合管部の外側に嵌合される嵌合筒部と、前記嵌合筒部に形成されて、前記嵌合筒部が前記嵌合管部の正規嵌合位置まで嵌合されると前記嵌合管部の外周溝に対向する連通孔と、前記嵌合筒部の外側に装着され、前記連通孔を通して前記外周溝に係合するクリップと、前記嵌合筒部が前記正規嵌合位置に配置されていることを条件に、前記雄側配管継手の外側面に重なった状態で前記雄側配管継手の被係合部に係合する係合アームと、を備える雌側配管継手である。
【0006】
第2の発明は、前記嵌合筒部の外側に嵌合され、前記嵌合筒部の先端側に向かってスライドして正規スライド位置に至ったところで位置決めされると共に前記クリップの外側に嵌合し、前記クリップの外側への変形を規制する環状カバーを備え、前記係合アームは、前記環状カバーに設けられて、前記環状カバーが前記正規スライド位置に配置されていることを条件に前記被係合部に係合する第1の発明に記載の雌側配管継手である。
【0007】
第3の発明は、前記環状カバーには、前記正規スライド位置に配置されたときに前記クリップの一部に重なる目視確認用孔を備える第2の発明に記載の雌側配管継手である。
【0008】
第4の発明は、前記環状カバーを前記正規スライド位置に位置決めするストッパが前記クリップに設けられている第2の発明又は第3の発明に記載の雌側配管継手である。
【0009】
第5の発明は、前記係合アームは、前記クリップに設けられている第1の発明に記載の雌側配管継手である。
【0010】
第6の発明は、前記係合アームを回動可能に支持し、前記被係合部に係合していない前記係合アームを前記雄側配管継手の外側面から離れた姿勢に保持する弾性ヒンジ部を備える第1の発明乃至第5の発明の何れか1の発明に記載の雌側配管継手である。
【0011】
第7の発明は、前記雌側配管継手から側方に延びる帯状板部と、前記帯状板部の長手方向の途中位置を横切る溝部とが備えられ、前記溝部より前記帯状板部の先端側が前記係合アームをなし、前記帯状板部のうち前記溝部の底の薄肉部が前記弾性ヒンジ部をなしている第6の発明に記載の雌側配管継手である。
【0012】
第8の発明は、第1の発明乃至第7の発明の何れか1の発明に記載の雌側配管継手と、その雌側配管継手が結合する前記雄側配管継手と、を備えてなる配管継手である。
【0013】
第9の発明は、前記雄側配管継手には、外側を断熱材で被覆された前記相手側配管としてのドレンホースの内側に挿入される挿入管部と、前記ドレンホースの外側に嵌合されるフード部とが備えられ、前記係合アームは、前記フード部の先端部の全周任意の位置に係合される第8の発明に記載の配管継手である。
【0014】
第10の発明は、前記係合アームには、前記フード部の先端部の内側に入り込んで係合するフック部が備えられている第9の発明に記載の配管継手である。
【0015】
第11の発明は、前記係合アームの色と前記雄側配管継手の外側面の色とが異なる第8の発明乃至第10の発明の何れか1の発明に記載の配管継手である。
【0016】
第12の発明は、雌側配管継手の嵌合筒部が、雄側配管継手の嵌合管部の外側の正規嵌合位置まで嵌合されると、前記嵌合筒部の連通孔が前記嵌合管部の外周溝に対向し、前記嵌合筒部の外側に装着されるクリップが前記連通孔を通して前記外周溝に係合する配管継手用の環状カバーであって、前記嵌合筒部の外側に嵌合され、前記嵌合筒部の先端側に向かってスライドして正規スライド位置に至ったところで位置決めされて前記クリップの外側に嵌合するように形成されると共に係合アームを一体に備え、前記嵌合筒部が前記正規嵌合位置に配置されかつ前記環状カバーが前記正規スライド位置に配置されていることを条件に、前記係合アームが前記雄側配管継手の外側面に重なった状態で前記雄側配管継手の被係合部に係合する環状カバーである。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明及び第8の発明の構造によれば、雌側配管継手の嵌合筒部が雄側配管継手の嵌合管部の正規嵌合位置まで嵌合されると嵌合管部の外周溝に嵌合筒部の連通孔が対向し、嵌合筒部の外側のクリップが連通孔を通して外周溝に係合して、雌雄の配管継手が抜け止めされたロック状態になる。また、雌側配管継手には、嵌合筒部が正規嵌合位置に配置されていることを条件に、雄側配管継手の被係合部に係合する係合アームが備えられている。これにより、係合アームが被係合部に係合しているか否かの確認を以て、雌雄の配管継手がロック状態か否かを確認することができる。また、係合アームは、雄側配管継手の外側面に重なった状態で被係合部に係合するので、係合アームが被係合部に係合しているか否かの相違は、係合アームが雄側配管継手の外側面に重なっているか否かの相違又は、それらの重なり量の相違として明確にあらわれ、雌雄の配管継手がロック状態か否かを従来より容易に確認することができる。
【0018】
第2の発明の構成では、雌側配管継手の嵌合筒部に嵌合された環状カバーが、嵌合筒部の先端側に向かってスライドして正規スライド位置に至ったところで位置決めされると共にクリップの外側に嵌合して前述のロック状態が強化される。そして、係合アームは、環状カバーが正規スライド位置に配置されていることを条件に被係合部に係合するので、係合アームが被係合部に係合しているか否かの確認を以て、ロック状態であるか否かの確認と、そのロック状態が強化されているか否かの確認との両方を一度に容易に行うことができる。
【0019】
なお、第12の発明の環状カバーを、環状カバーを有しない雌側配管継手に装着するか、係合アームを有しない環状カバーと交換して第12の発明の環状カバーを雌側配管継手に装着すれば、第2の発明の構成と同様の効果を奏する。
【0020】
第3の発明の構成では、環状カバーの目視確認用孔の内部又はその奥側に、クリップの一部が視認されるか否かを以て、環状カバーの内側にクリップがあるか否かを容易に確認することができる。
【0021】
第4の発明の構成は、環状カバーを正規スライド位置に位置決めするストッパがクリップに設けられているので、クリップが嵌合筒部から離脱していると、環状カバーが正規スライド位置に位置決めされず、クリップの離脱を気付かせることができる。
【0022】
なお、係合アームは、クリップに設けられていてもよい(第5の発明)。その場合、環状カバーを備えていてもいなくてもよい。また、雌側配管継手のうちクリップ及び環状カバー以外の部位に係合アームを備えてもよい。さらには、係合アームを雄側配管継手に設けて、「嵌合筒部が正規嵌合位置に配置されていることを条件に、雌側配管継手の外側面に重なった状態で雌側配管継手の被係合部に係合する」構成とすることも考えられる。
【0023】
第6の発明の構成では、係合アームが被係合部に係合していないと雄側配管継手の外側面から離れた姿勢になるので、係合アームの姿勢に基づいて、雌雄の配管継手がロック状態か否かを容易かつ明確に判別することができる。
【0024】
第7の発明の構成によれば、係合アームを備えた雌側配管継手を容易に製造することができる。
【0025】
第9の発明の配管継手を使用すれば、暗所や狭い場所に配置されることが多いドレンホースの配管継手の結合確認作業を容易に行うことができる。
【0026】
第10の発明の構成では、係合アームのフック部が、フード部の先端部の内側に入り込んで係合するので係合状態が安定する。
【0027】
第11の発明の構成では、係合アームの色と雄側配管継手の外側面の色とが異なるので、係合アームが被係合部に係合しているか否かが明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図7】雌側配管継手のクリップを有する部分の平断面図
【
図9】(A)環状カバーが正規スライド位置の手前に位置する配管継手の正面図、(B)環状カバーが正規スライド位置に位置する配管継手の正面図
【
図11】環状カバーが正規スライド位置に配置されている配管継手の側断面図
【
図12】(A)環状カバーが正規スライド位置に位置する配管継手の部分側断面図,(B)環状カバーが正規スライド位置の手前に位置する配管継手の部分側断面図
【
図21】クリップが閉環状態のときの雌側配管継手の平断面図
【
図22】クリップが開環状態のときの雌側配管継手の(A)平断面図、(B)正面図
【
図25】変形例に係る係合アームの先端部分の側断面図
【
図26】変形例に係る係合アームの先端部分の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
以下、
図1~
図12を参照して第1実施形態の配管継手100について説明する。
図1には、例えば、天井裏に配置される空調機110のドレン管110Aが、建造物のドレン設備管111にドレンホース120を介して接続されている状態が示されている。
【0030】
図2に示すように、ドレンホース120は、ホース部121の外側が断熱材122で被覆された2層構造になっている。そのドレンホース120の両端部に、本実施形態の配管継手100を構成する雌側配管継手10及び雄側配管継手50のうちの例えば雄側配管継手50が固定されている。そして、
図1に示すように、ドレン管110Aとドレン設備管111とにそれぞれ固定された雌側配管継手10にドレンホース120の両端部の雄側配管継手50が結合されることで、前述の如くドレン管110Aがドレン設備管111に接続される。
【0031】
先ずは、雄側配管継手50の具体的な構造について以下説明する。
図3に示すように、雄側配管継手50は、連結管51の一部をフード部50Fで覆った構造をなしている。フード部50Fは、連結管51の中間部から側方に張り出す円形のホース当接部55の外縁部から円筒壁56を一方に延ばしてなる。また、フード部50Fの円筒壁56は、ドレンホース120の外側に丁度嵌合する大きさになっている。
【0032】
連結管51のうちホース当接部55より一端側でフード部50Fに包囲されている部分は、ドレンホース120の内側に挿入される挿入管部51Xになっている。また、挿入管部51Xの先端部はテーパー形状をなすと共にフード部50Fより外側に突出している。そして、例えば、挿入管部51Xの外周面と、ホース部121の内周面と、断熱材122の先端面とに予め接着剤が塗布された状態で、ホース当接部55にドレンホース120の端面が当接する位置まで挿入管部51Xがホース部121に挿入される。
【0033】
なお、雄側配管継手50は、例えば、熱可塑性樹脂で形成され、軟質ポリ塩化ビニル樹脂や硬質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂等で形成されている。雄側配管継手50を形成する熱可塑性樹脂は、透明樹脂と不透明樹脂の何れであってもよい。また、ドレンホース120のホース部121は、例えば、熱可塑性樹脂で形成され、ポリオレフィン系樹脂や塩化ビニル樹脂等で形成されることが好ましい。断熱材122は、ポリオレフィン系樹脂等(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂)の熱可塑性樹脂の発泡体や発泡ゴム等で形成されることが好ましい。
【0034】
連結管51のうちホース当接部55を挟んで挿入管部51Xの反対側は雌側配管継手10と嵌合する嵌合管部51Yになっている。
図3に示すように、嵌合管部51Yの外周面には、小径部52と大径部53が先端側から順に備えられ、小径部52と大径部53との段差部分にはテーパー部53Tが形成されている。また、小径部52の外周面には、1対のOリング溝52Mが形成され、そこに図示しないOリングが装着される。さらに、大径部53の外周面には、後述するクリップ30が係合する外周溝53Mが形成されている。その外周溝53Mは、断面四角形の角溝構造になっている。
【0035】
次に、雌側配管継手10の具体的な構造について以下説明する。
図2に示すように雌側配管継手10は、管構造の継手本体部11にクリップ30と環状カバー40とを組み付けてなる。それら継手本体部11、クリップ30及び環状カバー40は、熱可塑性樹脂で形成されている。また、継手本体部11とクリップ30と環状カバー40の色(無色透明も含む)は、互いに相違し、環状カバー40の色は、雄側配管継手50の色に対しても相違している。
【0036】
なお、継手本体部11は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂や硬質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂等によって形成されることが好ましい。クリップ30は、ポリアセタール樹脂やナイロン66等のポリアミド樹脂によって形成されることが好ましい。環状カバー40は、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂等で形成されることが好ましい。また、継手本体部11、クリップ30、環状カバー40を形成する熱可塑性樹脂は、透明樹脂と不透明樹脂の何れであってもよい。少なくとも継手本体部11を透明な熱可塑性樹脂で形成すれば、継手本体部11の内部を外側から目視確認でき、管内を流れるドレン水の状況を認識できる。継手本体部11に加えて、雄側配管継手50、クリップ30、環状カバー40を透明な熱可塑性樹脂で形成すれば、管内を流れるドレン水の状況を広範囲に亘って認識できる。
【0037】
図2に示されるように、継手本体部11は、L字状に湾曲したエルボ部12の一端に配管固定部13、他端に嵌合筒部14を備えてなる。そして、配管固定部13にドレン管110A又はドレン設備管111(
図1参照)が嵌合した状態に固定され、嵌合筒部14が雄側配管継手50の嵌合管部51Yに外側から嵌合する。
【0038】
嵌合筒部14は、軸方向の途中位置より先端側に大径部14Kを備える一方、基端側に小径部14Lを備え、大径部14Kの内外径が共に小径部14Lの内外径より段付き状に大きくなっている。また、嵌合筒部14の内面における大径部14Kと小径部14Lとの間には、テーパー部14Tが形成されている。そして、雄側配管継手50の嵌合管部51Yの外側に雌側配管継手10の嵌合筒部14が嵌合されると、嵌合管部51Yのテーパー部53Tと、嵌合筒部14のテーパー部14Tとが当接して、嵌合筒部14が嵌合管部51Yに対する正規嵌合位置に位置決めされる。
【0039】
図5に示すように、大径部14Kの外周面には、平面視がC字状で角溝構造のクリップ収容溝15が形成されている。また、クリップ収容溝15の溝底壁15Hには、嵌合筒部14の内外に貫通する連通孔16が形成されている。連通孔16は、嵌合筒部14の周方向に延び、前述した雄側配管継手50の外周溝53Mと略同一の溝幅を有する。また、連通孔16は、クリップ収容溝15の溝幅方向の一方側(嵌合筒部14の先端側)に寄せて配置されている。そして、
図11に示すように、嵌合筒部14が嵌合管部51Yに対して前述した正規嵌合位置に配置されると、連通孔16が雄側配管継手50の外周溝53Mに丁度対向する。なお、本実施形態では、連通孔16は、嵌合筒部14の径方向で対向するように1対備えられているが、径方向で対向する位置からずらして1対を備えられてもよいし、径方向で対向するように2対以上備えられてもよい。また、連通孔16は、1つのみ又は3つ以上備えられてもよい。
【0040】
図6(A)及び
図6(B)に示されるように、クリップ30は、C字状をなし、その両端部から側方に1対の突起35が突出している。また、クリップ30は、
図6(A)及び
図6(B)に示される状態からクリップ30の両端部間の開口31Aを広げるように弾性変形可能となっている。そして、クリップ30は、
図6(A)及び
図6(B)に示される閉状態と、該閉状態よりも開口31Aが広くなった開状態と、に変化する。閉状態のクリップ30は、内径が嵌合筒部14におけるクリップ収容溝15の溝底壁15Hの外径と略同じ大きさになる(
図7参照)。
【0041】
図7に示されるように、1対の突起35は、クリップ30の径方向外側へ向かうにつれてクリップ30の周方向で幅狭となる先細り形状に形成されている。詳細には、1対の突起35のうちクリップ30の周方向で対向する面35M1は、クリップ30の周方向に対して略垂直に形成され、1対の突起35のうちクリップ30の周方向で反対側を向く面35M2は、クリップ30の径方向内側(即ち、突起35の基端側)へ向かうにつれてクリップ30の開口31Aから離れるように湾曲したR形状に形成されている。なお、面35M2は、面35M1と同様に、クリップ30の周方向に対して略垂直に形成されてもよい。
【0042】
クリップ30の内周面には、180度離れた2位置に1対の連結突部32が突設されている。1対の連結突部32は、クリップ30の周方向に延びる円弧状をなしている。そして、クリップ30がクリップ収容溝15に嵌着された状態で、1対の連結突部32が1対の連通孔16に入り込み、嵌合筒部14の内側に突出する。また、その状態で、クリップ30の外周面は嵌合筒部14の大径部14Kの外周面より内側に位置し、1対の突起35は大径部14Kの外周面より外側に突出する。
【0043】
図6(A)及び
図6(B)に示されるように、1対の連結突部32は、クリップ30の中心軸方向の一方側に寄せて配置され、クリップ30の表裏が逆になった場合に1対の連通孔16に入らないようになっている。また、連結突部32の先端部のうち嵌合筒部14の先端側を向く面の縁部には、テーパー状に先端傾斜面32Kが形成されている。なお、連結突部32が先端傾斜面32Kを備えない構成としてもよい。
【0044】
図7に示されるように、連結突部32は、その内周部からクリップ30の開口31Aへ向かって突出する突起32Tを備えている。これにより、連通孔16に挿入された連結突部32が連通孔16から外れ難くなっている。また、連結突部32の内周面のうち突起32Tの反対側の部分は、R面取りされている。これにより、連結突部32の連通孔16への挿入が容易となっている。なお、連結突部32は、突起32Tを有さない構成であってもよい。
【0045】
図4に示されるように、環状カバー40は、円環状をなし、係合アーム71を一体に備えている。また、環状カバー40の内径は、嵌合筒部14の大径部14Kの外径と略同じになっている。そして、環状カバー40は、クリップ30が大径部14Kのクリップ収容溝15に収容される前に、嵌合筒部14の先端側から小径部14Lへと嵌合される。その後にクリップ30がクリップ収容溝15に収容され、大径部14Kの外周面から1対の突起35をストッパにして環状カバー40が嵌合筒部14に抜け止めされる。以下、環状カバー40において、嵌合筒部14の先端面に近い側を適宜「前側」といい、その反対側を適宜「後側」という。
【0046】
図8(A)に示されるように、環状カバー40には、クリップ30の1対の突起35に対応した1対の突起受容部41が形成されている。それら1対の突起受容部41は、
図9(A)に示すように環状カバー40の前面に開口を有する矩形状のスリットになっている。また、
図8(B)に示されるように、環状カバー40の外面のうち突起受容部41の後側には、環状カバー40の後縁部に沿って周方向に延びる補強リブ42が備えられている。そして、1対の突起受容部41の開口を1対の突起35に対向させて、環状カバー40を、小径部14Lから大径部14Kへとスライドすると、
図9(B)に示すように、1対の突起35が1対の突起受容部41に受容されて環状カバー40がクリップ30の外側に嵌合される。このとき、突起35がストッパとして突起受容部41の奥面41Aに当接することで、環状カバー40が嵌合筒部14に対する後述の正規スライド位置に位置決めされる。
【0047】
図10に示されるように、環状カバー40の軸方向から見た突起受容部41の断面形状は、クリップ30の軸方向から見た突起35の形状と略同じになっている。具体的には、突起受容部41は、環状カバー40の径方向外側へ向かうにつれて環状カバー40の周方向で幅狭となる先細り形状に形成されていて、突起受容部41の内面のうち突起35の面35M1と対向する面41M1が環状カバー40の周方向に対して略垂直に形成され、突起35の面35M2と対向する面41M2が環状カバー40の径方向内側へ向かうにつれて面41M1から離れるように湾曲したR形状に形成されている。
【0048】
図8(A)及び
図8(B)に示されるように、環状カバー40の内周面には、周方向に延びる係合突部45が形成されている。係合突部45は、環状カバー40の後端寄りに配置され、環状カバー40のうち1対の突起受容部41が形成された部位を除く領域に円弧状に形成されている。係合突部45の内径は、嵌合筒部14の大径部14Kの外径より若干小さく、クリップ30の連結突部32が雄側配管継手50の外周溝53Mに係合したときのクリップ30の外径よりも大きくなっている(
図12(B)参照)。そして、環状カバー40が後述の正規スライド位置に移動すると、
図12(A)に示すように、係合突部45がクリップ収容溝15内に入り込み、環状カバー40が正規スライド位置に係止される。
【0049】
また、係合突部45を周方向の任意の位置での断面の三角形は、環状カバー40の軸方向に対して傾斜する斜辺を前側と後側とに有する三角形になっている。これにより、大径部14Kを環状カバー40の内側に容易に挿通させることができる。なお、係合突部45の断面の三角形は、前側のみが前記斜辺で、後側が、環状カバー40の軸方向に対して垂直な垂直辺としてもよい。そうすれば、環状カバー40を正規スライド位置に係止する係止力を高めることができる。
【0050】
環状カバー40には、突起受容部41とは別に、環状カバー40の先端で開放した矩形状の第2切欠部43が形成されている。第2切欠部43は、環状カバー40の先端部に形成され、環状カバー40の軸方向における長さが突起受容部41よりも短くなっている。第2切欠部43は、複数(本実施形態では、2つ)備えられていて、環状カバー40の周方向で隣り合う第2切欠部43同士の間には、仕切り壁44が形成されている。
【0051】
図4に示すように、仕切り壁44の外側面からは、突片状のアーム支持部75が側方に張り出している。そして、アーム支持部75の先端部から係合アーム71が直角曲げされて、嵌合筒部14より先方に延びている。また、係合アーム71の先端部は、環状カバー40の本体部40Hの中心側に直角曲げされかつその先端から本体部40H側に向かって係止突起72が突出したフック部73になっている。そして、
図2に示すように、嵌合筒部14が嵌合管部51Yに対する正規嵌合位置に配置されかつ、環状カバー40が嵌合筒部14に対する正規スライド位置に配置されると、係合アーム71が雄側配管継手50におけるフード部50Fの外側面に重なった状態で、フック部73の係止突起72をフード部50Fの内側に係止させて、フック部73をフード部50Fの先端部に係合することができる。
【0052】
つまり、雌側配管継手10は、嵌合筒部14が雄側配管継手50に対して正規嵌合位置に配置されかつ環状カバー40が正規スライド位置に配置されていることを条件にして、係合アーム71を雄側配管継手50の外側面に重ねて雄側配管継手50の被係合部(フード部50Fの先端部)に係合させることができ、その条件を満たさなければ、係合アーム71を被係合部に係合させることができないようになっている。また、フード部50Fは円筒形をなし、環状カバー40の本体部40Hからフード部50Fの先端までの距離は、フード部50Fの周方向の全体で同じであるので、上記した条件を満たしていれば、係合アーム71はフード部50Fの周方向の任意の位置に係合する。
【0053】
本実施形態の配管継手100の構成に関する説明は以上である。次に、本実施形態の作用について説明する。
図1に示すように、ドレンホース120の両端部の雄側配管継手50を、ドレン管110A及びドレン設備管111の各雌側配管継手10に結合するには、
図9(A)に示すように、雌側配管継手10のクリップ30をクリップ収容溝15に収容し、環状カバー40を嵌合筒部14の小径部14Lに配置した状態にしておく。そして、
図11に示すように、雄側配管継手50の嵌合管部51Yを、雌側配管継手10の嵌合筒部14内に押し込む。すると、嵌合管部51Yのテーパー部53Tが連結突部32の先端傾斜面32K(
図6(A)参照)に摺接して、クリップ30が拡径変形される。そして、嵌合管部51Yのテーパー部53Tが嵌合筒部14内のテーパー部14Tに当接した正規嵌合位置に至ったところで、外周溝53Mに連結突部32が入り込み、クリップ30が弾性復帰してクリップ収容溝15に収容された状態に戻る。これにより、雌雄の配管継手10,50が嵌合して抜け止めされたロック状態になる。このとき、雄側配管継手50のOリング溝52Mに備えた図示しないOリングによって、雌雄の配管継手10,50の嵌合部分は密閉される。
【0054】
次いで、
図9(A)に示すように、環状カバー40の1対の突起受容部41をクリップ30の1対の突起35に対向させて環状カバー40を雄側配管継手50側にスライドさせる。すると、
図9(B)に示すように、1対の突起35が1対の突起受容部41に受容され、突起受容部41の奥面41Aに突起35が当接することで、環状カバー40が正規スライド位置に位置決めされる。また、環状カバー40は、
図11及び
図12(A)に示すように、係合突部45とクリップ収容溝15との係止によって正規スライド位置に係止される。そして、環状カバー40がクリップ30と共にクリップ収容溝15全体を外側が覆った状態になる。これにより、クリップ30の拡径変形が規制されて、前述のロック状態が強化される。また、環状カバー40によって1対の突起35同士の相対移動が規制されることによっても、クリップ30の拡径変形が規制されてロック状態が強化される。
【0055】
この状態、つまり、嵌合筒部14が嵌合管部51Yに対する正規嵌合位置に配置されかつ、環状カバー40が嵌合筒部14に対する正規スライド位置に配置された状態になると、係合アーム71が雄側配管継手50のフード部50Fの外側面に重なり、係止突起72の外面がフード部50Fの先端縁に側方から当接する。そこで、フック部73をフード部50F側に向けて押圧すると、係止突起72の外面とフード部50Fとが摺接して係止突起72がフード部50Fの先端面を乗り越えてフード部50Fの内側に係止し、係合アーム71がフード部50Fの先端部に係合した状態になる。ここで、係合アーム71は、フード部50Fの周方向の任意の位置で係合するので、雌側配管継手10に対する雄側配管継手50の位相を気にすることなく、係合アーム71をフード部50Fに係合することができる。そして、係合アーム71の係合によっても前述のロック状態が強化される。なお、係合アーム71のフック部73は、フード部50Fの内側に入り込んで係合するので異物の当接等の外乱の影響を受け難く、係合状態が安定する。
【0056】
以上の操作により雌側配管継手10と雄側配管継手50との結合が完了する。そして、
図1に示すように、ドレンホース120を介して空調機110のドレン管110Aと、建造物のドレン設備管111とを接続することができる。
【0057】
ところで、雌雄の配管継手10,50が正しく結合されていないと(以下、これを「誤結合」という)、天井裏で水漏れが発生することになる。誤結合の第1の例としては、
図2に示した雄側配管継手50の嵌合管部51Yのうち先端側の一方のOリング溝52Mを有する部分のみが嵌合筒部14の小径部14Lに嵌合され、他方のOリング溝52Mが嵌合筒部14の大径部14K内に位置した半嵌合状態で、先端側のOリング溝52MのOリング(図示せず)の摩擦により、雌雄の配管継手10,50が仮止めされることが考えられる。また、これを作業者が嵌合状態と勘違いして環状カバー40を正規スライド位置に移動することも考えられる。この場合、係合アーム71を、フード部50Fの先端部に係合させることができないので、作業者は雌雄の配管継手10,50が正しく結合されていないこと(つまり、誤結合)に気付く。仮に作業時に誤結合に気付かなくても、後で目視確認した際に、係合アーム71の先端がフード部50Fの先端より雌側配管継手10側にずれた位置に重なり、しかも、フック部73の先端がフード部50Fの外側面に付き上がって係合アーム71がフード部50Fの外側面から浮いた状態になるので誤結合に容易に気付く。また、係合アーム71と雄側配管継手50とは色が異なるので、暗所でも薄明かりで誤結合に気付くことができる。さらには、環状カバー40が正規スライド位置に配置されていないと、環状カバー40とは色が異なるクリップ30の全体が露出するので、そのことによっても誤結合に気付く。また、
図12(B)に示すように、環状カバー40が途中までスライドされて、クリップ30の外側に半嵌合している場合には、環状カバー40の第2切欠部43を通してクリップ30が視認されるので、そのことによって誤結合に気付く。
【0058】
なお、誤結合ではないが、雌雄の配管継手10,50が正規嵌合位置まで嵌合した後、環状カバー40を正規スライド位置にスライドする操作を忘れることが考えられる。この場合も上記誤結合の第1の例と同様の状態になり、環状カバー40のスライド操作が行われていないことに容易に気付く。
【0059】
誤結合の第2の例としては、クリップ30が外れた状態で雌雄の配管継手10,50が嵌合され、環状カバー40が正規スライド位置までスライドされて、係合アーム71がフード部50Fに係合されることが考えられる。しかしながら、この場合、環状カバー40の突起受容部41内のクリップ30の突起35を視認することができないので、それを以て誤結合に気付く。しかも、環状カバー40とクリップ30と継手本体部11とは、それぞれ色が異なるので誤結合に容易に気付く。
【0060】
なお、本実施形態では、環状カバー40が正規スライド位置でフード部50Fのホース当接部55に当接又は隣接するので、クリップ30が外れた状態でもホース当接部55が環状カバー40を正規スライド位置に位置決めするストッパになり得る。これに対し、クリップ30が外れると、環状カバー40が正規スライド位置に位置決めされず、正規スライド位置を超えて移動する構成としてもよい。そうすれば、クリップ30が外れると、環状カバー40が正規スライド位置よりフード部50F側に接近し、係合アーム71のフック部73がフード部50Fの先端部に係合することができないか係合し難くなり、そのことを以て作業者が誤結合に気付くようになる。
【0061】
このように本実施形態の配管継手100では、係合アーム71がフード部50Fの先端部に係合しているか否かの確認を以て、雌雄の配管継手10,50がロック状態であるか否かの確認と、そのロック状態が強化されているか否かの確認との両方を一度に容易に行うことができる。これにより、天井裏のような暗所や狭い場所に配置されることが多いドレンホースの結合確認作業を容易に行うことができる。また、本実施形態の配管継手100では、フード部50Fの先端部に係合アーム71を係合させた状態を維持して雌雄の配管継手10,50を互いに回転させることができる。つまり、本実施形態の配管継手100は回転継手として利用することができ、例えば、ドレンホースを結合後に容易に姿勢変更することが可能になる。
【0062】
なお、係合アーム71とフード部50Fの外側面との間にマイナスドライバー等の道具を差し込んで係合アーム71とフード部50Fとの係合を解除し、環状カバー40を雄側配管継手50から離れる側に移動し、さらに、クリップ30の1対の突起35を摘まんで拡径変形させれば、雌雄の配管継手10,50を分離することができる。
【0063】
[第2実施形態]
図13に示された本実施形態の雌側配管継手10Aは、係合アーム71が弾性ヒンジ部74を介してアーム支持部75に回動可能に支持されている点が第1実施形態と異なる。具体的には、本実施形態の環状カバー40Aには、本体部40Hから側方に延びる帯状板部71Xが備えられ、その先端部が前述のフック部73になっている。また、帯状板部71Xの長手方向の基端寄り位置を溝部74Mが横切り、その溝部74Mは、断面三角形をなしてフード部50F側を向いて開口している。そして、溝部74Mより帯状板部71Xの先端側が係合アーム71をなす一方、溝部74Mより帯状板部71Xの基端側がアーム支持部75をなし、さらに、帯状板部71Xのうち溝部74Mの底の薄肉部が弾性ヒンジ部74になっている。その他の構成に関しては、第1実施形態と同じになっている。
【0064】
本実施形態の雌側配管継手10Aでは、環状カバー40Aが上記構造をなすことで、環状カバー40Aを樹脂成形にて容易に製造することができる。また、係合アーム71は、弾性ヒンジ部74を弾性変形させてフード部50Fの先端部に係合することができ、フード部50Fの先端部に係合していないときは、係合アーム71がフード部50Fの外側面から離れて雌側配管継手10A(詳細には、環状カバー40A)の側方に延びた状態になる。即ち、係合アーム71の姿勢に基づいて、雌雄の配管継手10,50がロック状態か否かを容易かつ明確に判別することができる。
【0065】
[第3実施形態]
図14及び
図15に示された本実施形態の雌側配管継手10Bは、第1実施形態で説明した係合アーム71が、環状カバー40Bの180度離れた2箇所に配置されている。その他構造に関しては,第1実施形態と同じになっている。
【0066】
[第4実施形態]
図16に示された本実施形態の雌側配管継手10Cが有する環状カバー40Cは、第3実施形態で説明した環状カバー40Bの1対の係合アーム71が、第2実施形態の係合アーム71と同様に、弾性ヒンジ部74を介してアーム支持部75に支持されている。その他構造に関しては,第1及び第2と実施形態と同じになっている。
【0067】
[第5実施形態]
本実施形態は
図17~
図23に示されており、雌側配管継手10Dが、環状カバー40を有さず、1対の係合アーム71がクリップ30Dに備えられている点が第3実施形態と大きく相違する。以下、第3実施形態と相違する点に関してのみ説明する。
【0068】
図17及び
図18に示すように、本実施形態の雌側配管継手10Dの大径部14Kは、クリップ収容溝15に挟まれた堰部15Sの反対側部分から側方に張り出す張出突部17を備える。張出突部17は、クリップ収容溝15より小径部14L側に配置され、その先端部から脱落規制爪21が直立してクリップ収容溝15に対向している。また、
図20に示すように、脱落規制爪21の先端部からは大径部14Kに向かって三角形の係止突起23が突出している。また、その係止突起23と張出突部17との対向面は、クリップ収容溝15内の1対の内側面と略面一に配置されている。
【0069】
図19(A)及び
図19(B)に示されるように、本実施形態のクリップ30Dには、1対の突起35から互いに近づくように延びる1対の連結アーム76が備えられている。それら1対の連結アーム76は、円弧状に湾曲し、堰部15Sに外側から重ねられる(
図21参照)。そして、クリップ30Dは、1対の連結アーム76が雄側配管継手50の周方向でオーバーラップする閉環状態(
図21参照)と、1対の連結アーム76の間に隙間が形成される開環状態(
図22(A)参照)とに変化する。
【0070】
図19(A)及び
図19(B)に示されるように、連結アーム76の先端部には、突片36が備えられ、突片36の先端部には、係止突起37が形成されている。一方の連結アーム76では、突片36は雄側配管継手50の中心側に寄せて配置され、係止突起37が雄側配管継手50の外側に向かって突出している。これに対し、他方の連結アーム76では、突片36が雄側配管継手50の外側に寄せて配置され、係止突起37が雄側配管継手50の中心側に向かって突出している。そして、クリップ30Dが閉環状態のときには、1対の係止突起37同士が互いに係止する(
図21参照)。
【0071】
図22(B)に示されるように、クリップ30Dが開環状態になると、嵌合筒部14の堰部15Sが1対の連結アーム76の間から露出する。ここで、堰部15Sには、1対の連結アーム76とは異なる色が付されている(
図22(B)では、堰部15Sに灰色を付すことで、色彩の相違を表している。)。これにより、1対の連結アーム76の間に隙間が形成されているか否か、即ち、クリップ30Dが閉環状態と開環状態の何れの状態であるかを作業者に認識させ易くなる。
【0072】
図19(A)及び
図19(B)に示されるように、クリップ30Dの外周面には、1対の連結突部32の裏側位置から側方に1対の張出部33が張り出し、それら張出部33から雄側配管継手50側に突出する突片が側方に直角曲げされて1対のアーム支持部75が形成されている。そして、第1実施形態で説明した1対の係合アーム71が、1対のアーム支持部75の先端部から雄側配管継手50側に直角曲げされて延びている。
【0073】
本実施形態の配管継手100の構成に関する説明は以上である。本実施形態の配管継手100も前記第1~第4の実施形態と同様に、雌側配管継手10Dの嵌合筒部14が雄側配管継手50の嵌合管部51Yの正規嵌合位置まで嵌合されると、
図23に示すように、クリップ30Dの連結突部32が雄側配管継手50の外周溝53Mに係合して雌雄の配管継手10,50がロック状態になる。そして、そのロック状態になっていることを条件に、クリップ30Dの1対の係合アーム71が、雄側配管継手50のフード部50Fの先端部に係合する。これにより、係合アーム71がフード部50Fの先端部に係合しているか否かの確認を以て、雌雄の配管継手10,50がロック状態か否かを確認することができる。また、前記第1~第4の実施形態と同様に、係合アーム71は、雄側配管継手50の外側面に重なった状態でフード部50Fの先端部に係合するので係合しているか否かの相違が明確になり、雌雄の配管継手10,50がロック状態か否かを容易に確認することができる。
【0074】
なお、本実施形態の配管継手100では、雌雄の配管継手10,50を分離するためにクリップ30Dを開環状態にした場合には、脱落規制爪21によってクリップ30Dが継手本体部11Dから脱落することが防がれる。
【0075】
[第6実施形態]
本実施形態は、
図24に示されており、本実施形態の雌側配管継手10Eは、環状カバー40Vの1対の突起受容部41Vの形状が第3実施形態と異なり、それ以外は第3実施形態と同じになっている。具体的には、
図24(A)に示されるように突起受容部41Vは、L字状をなし、環状カバー40Vの先端縁から基端側へ直線状に延びた誘導部41VAと、誘導部41VAから環状カバー40Vの周方向の一方側に延びた収容部41VBとを備える。そして、環状カバー40Vをスライド操作して、
図24(B)に示されるように、1対の突起受容部41Vの1対の誘導部41VAにクリップ30Dの1対の突起35を受容してから、環状カバー40Vを回転操作して、
図24(C)に示されるように、1対の突起35を1対の収容部41VBに収容することができる。これにより、環状カバー40Vが正規スライド位置に安定して保持される。
【0076】
[他の実施形態]
(1)
図25(A)に示すように、上記第1~第6の実施形態の係合アーム71の係止突起72の外側にガイド面72Gを設けてもよい。そうすれば、ガイド面72Gをフード部50Fの先端外縁部に摺接させてフック部73をフード部50Fの先端部に係合させる作業が容易になる。
【0077】
(2)また、
図25(B)に示すように、上記第1~第6の実施形態の係合アーム71の係止突起72の内側にガイド面72Jを設けて、係止突起72がフード部50Fの先端面を乗り越えたら容易にフード部50Fの内側に入り込むようにしてもよい。
【0078】
(3)また、
図26(A)に示すように、係合アーム71Vの先端部から外側に突出する三角形の係止突起77を設け、フード部50Fの先端部から外側に張り出すフランジ78の貫通孔78Aに係合アーム71Vの先端部を通して係止突起77を係合させる構成としてもよい。この場合、係合アーム71Vとフード部50Fの側面との間に、係合アーム71Vを変形させるためのスペースを設けておけばよい。また、フランジ78を設けず、係止突起77を係合アーム71Vの先端部から内側に突出させてフード部50Fの先端面に係合するようにしてもよい。
【0079】
(4)さらに、
図26(B)に示すように、係合アーム71Wの先端部に貫通孔73Aを形成し、フード部50Fの外側面から突出する突起79が貫通孔73Aに係合する構成としてもよい。
【0080】
(5)また、係合アーム71が係合する対象は、フード部50Fに限定されるものではない。それの一例として、例えば、フード部50Fの円筒壁56を設けず、ホース当接部55のみを備えてドレンホース120の側方に張り出させ、その先端部に係合アーム71が係合する構成等が考えられる。
【0081】
(6)前記実施形態では、前記第1~第6の実施形態で、係合アーム71が1つ又は2つ備えられた例を示したが、係合アームは3つ以上であってもよい。また、第5及び第6の実施形態の係合アーム71を、前記第2及び第4実施形態の係合アーム71のように回動可能に支持してもよい。
【0082】
(7)前記第1~第6の実施形態のクリップ30に代えて、例えば嵌合筒部14に側方から嵌合されて連通孔16を通して外周溝53Mに係合するU形又はC形のクリップを設け、そのクリップに回動式の係合アームを設けてもよい。
【0083】
(8)また、係合アームをクリップと環状カバーの両方に備えてもよい。また、雌側配管継手の継手本体部に係合アームを設けて、クリップ及び環状カバーに係合アームを備えない構成としてもよい。さらには、係合アームを雄側配管継手に設けて、「嵌合筒部が正規嵌合位置に配置されていることを条件に、雌側配管継手の外側面に重なった状態で雌側配管継手の被係合部分に係合する」構成とすることも考えられる。
【0084】
(9)前記第1~第6の実施形態では、環状カバー40の正規スライド位置でクリップ30の一部が環状カバー40の突起受容部41等を通して視認可能であったが、視認不能としてもよい。その場合、クリップ30に突起35を設けず、環状カバー40に突起受容部41を設けない構成としてもよいし、
図27に示した雌側配管継手10Fのように、突起受容部41に受容された突起35を覆うカバー壁46を環状カバー40Fに備えた構成としてもよい。また、環状カバー40にてクリップ30の全体を覆うが、環状カバー40を透明にしてその内側にクリップ30が有るか否かを視認可能としてもよい。
【0085】
(10)本実施形態の継手本体部11はL形になっていたが、直線状に延びたI形であってもよい。
【符号の説明】
【0086】
10,10A~10F 雌側配管継手
14 嵌合筒部
15 クリップ収容溝
16 連通孔
30,30D クリップ
35 突起
40,40A~40C,40F,40V 環状カバー
41,41V 突起受容部
50 雄側配管継手
50F フード部
51Y 嵌合管部
53M 外周溝
71,70V,71W 係合アーム
71X 帯状板部
72 係止突起
73 フック部
74 弾性ヒンジ部
74M 溝部
120 ドレンホース