(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】放電装置および電気機器
(51)【国際特許分類】
H01T 19/00 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
H01T19/00
(21)【出願番号】P 2023135224
(22)【出願日】2023-08-23
(62)【分割の表示】P 2019127817の分割
【原出願日】2019-07-09
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】岡野 哲之
(72)【発明者】
【氏名】大江 信之
(72)【発明者】
【氏名】江崎 哲也
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/055787(WO,A1)
【文献】特開2006-302573(JP,A)
【文献】特開2011-129464(JP,A)
【文献】特開2013-214357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 7/00 - 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスと、
前記トランスの2次側の第1端子に接続される第1導電路と、
前記トランスの前記2次側の第2端子に接続される第2導電路と、
前記第1導電路を介して前記第1端子に電気的に接続される放電電極と、を備え、
前記第1導電路と前記第2導電路との一方は、リード線を含み、
前記第1導電路と前記第2導電路との他方は、基板に設けられた導電パターンを含み、
前記リード線は、一部が前記導電パターンの一部と平行となるように配置され、
前記リード線は、一部が前記導電パターンの一部と前記基板の厚さ方向に重なるように配置されている、
放電装置。
【請求項2】
トランスと、
前記トランスの2次側の第1端子に接続される第1導電路と、
前記トランスの前記2次側の第2端子に接続される第2導電路と、
前記第1導電路を介して前記第1端子に電気的に接続される放電電極と、を備え、
前記第1導電路と前記第2導電路との一方は、リード線を含み、
前記第1導電路と前記第2導電路との他方は、基板に設けられた導電パターンを含み、
前記リード線は、一部が前記導電パターンの一部と平行となるように配置され、
前記リード線の一部と、前記導電パターンの一部との間の最短距離は、0mmを超え、かつ10mm以下の範囲である、
放電装置。
【請求項3】
トランスと、
前記トランスの2次側の第1端子に接続される第1導電路と、
前記トランスの前記2次側の第2端子に接続される第2導電路と、
前記第1導電路を介して前記第1端子に電気的に接続される放電電極と、を備え、
前記第1導電路と前記第2導電路との一方は、リード線を含み、
前記第1導電路と前記第2導電路との他方は、基板に設けられた導電パターンを含み、
前記リード線は、一部が前記導電パターンの一部と平行となるように配置され、
前記リード線の一部と、前記導電パターンの一部との間に介在する電気絶縁部材を更に備える、
放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電に伴うノイズを抑制する放電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電装置は、放電電極と誘導電極との間で高圧放電を生じさせることにより、放電生成物を発生させる。放電装置には、高圧放電に用いられるパルス状の高電圧を発生するために、高電圧発生部が設けられている。高電圧発生部は、放射ノイズや誘導ノイズのような電磁ノイズを発生している。
【0003】
このような電磁ノイズは、放電装置の駆動回路から電源ラインを通じて放電装置を搭載する機器に伝播する。また、当該電磁ノイズは、機器の電源コードを通じて外部に漏出すると、当該機器と同じ電源系統を使用する他の機器に侵入することもある。このため、電磁ノイズの影響を受けた機器は、誤作動するおそれがある。
【0004】
このような不都合を解消するため、一般には、機器にノイズ除去用のラインフィルタなどの部品を設けることが多い。また、その他、特許文献1および2に開示されているような解決手段もある。
【0005】
特許文献1には、パルス電圧を生成可能なパルス生成装置と、パルス電圧が印加される複数の電極と、複数の電極間に生じた放電によりオゾンを生成する放電反応器とを備えるオゾン生成装置が開示されている。当該オゾン生成装置は、電磁ノイズを遮蔽するために、パルス生成装置内の磁気パルス圧縮回路を覆う第1シールドと、放電反応器を覆う、第1シールドとは独立した第2シールドとを備える。
【0006】
また、特許文献2には、装置全体の制御を司る電力制御部と、電力制御部からの指令に基づき、放電部に印加する高電圧を発生する高圧発生回路とを備えるイオン発生装置が開示されている。当該イオン発生装置において、電力制御部が第1の基板に設けられる一方、高圧発生回路が第1の基板とは異なる位置に配置された第2の基板に設けられることにより、電力制御部が高圧発生部で発生した磁気ノイズの影響を受けにくいようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-37650号公報
【文献】特開2013-4416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている装置は、互いに独立した2つのシールドを備える必要がある。このため、装置の小型化が困難であるという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に開示されている装置によれば、当該装置により発生するノイズのうち、伝導ノイズについては容易に低減できるが、放射ノイズおよび誘導ノイズを低減するためには、第1の基板と第2の基板とを大きく離隔させる必要がある。このため、特許文献2に開示されている装置についても小型化が困難である。
【0010】
本発明の一態様は、ノイズの低減が可能な小型の放電装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る放電装置は、トランスと、前記トランスの2次側の第1端子に接続される第1導電路と、前記トランスの前記2次側の第2端子に接続される第2導電路と、前記第1導電路を介して前記第1端子に電気的に接続される放電電極と、を備え、前記第1導電路と前記第2導電路との間の最短距離である第1距離は、0mmを超え、かつ10mm以下の範囲である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、ノイズの低減が可能な小型の放電装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係るイオン発生装置の構成を示す平面図である。
【
図3】上記イオン発生装置の回路構成を示す回路図である。
【
図4】上記イオン発生装置の他の構成を示す
図1のA-A線矢視断面図である。
【
図5】実施形態1の変形例に係るイオン発生装置における導電体が高圧トランスに接続された状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係るイオン発生装置の構成を示す平面図である。
【
図7】本発明の実施形態3に係るイオン発生装置の構成を示す平面図である。
【
図8】本発明の実施形態4に係るイオン発生装置の構成を示す平面図である。
【
図9】
図8に示すイオン発生装置の長手方向に沿った断面構造を示す縦断面図である。
【
図11】本発明の実施形態5に係る空気清浄機の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
本実施形態を含む全ての実施形態において、放電生成物としてイオンを発生するイオン発生装置に関して説明する。しかしながら、本発明は、イオン発生装置に限定されるものではなく、例えば電子、オゾン、ラジカル、活性種など、エネルギー状態が高い粒子(放電生成物)を、放電により気体から生成する任意の放電装置に適用することができる。
【0015】
本発明の実施の形態1について
図1~
図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0016】
図1は、本実施形態に係るイオン発生装置100の構成を示す平面図である。
図2は、
図1のA-A線矢視断面図である。
図3は、イオン発生装置100の回路構成を示す回路図である。
【0017】
イオン発生装置100(放電装置)は、空気中にて放電を行うことによりイオンを発生させる装置である。
【0018】
図1~
図3に示すように、イオン発生装置100は、筐体1と、高圧トランス2(トランス)と、駆動回路基板3と、高圧回路基板4(基板)と、放電電極5,6と、誘導電極7と、ダイオード8,9と、駆動回路10と、リード線11(配線部材)と、絶縁性封止材12とを備えている。
【0019】
図1および
図2に示すように、筐体1は、絶縁性の樹脂で箱状に形成されている。筐体1は、底部1aと、開口部1bとを有している。底部1aは、筐体1の箱形を規定する3辺のうちの長辺および短辺を含む下端側の面(
図1および
図2の例では下面)に設けられている。開口部1bは、上記の長辺および短辺を含む上端側の面(
図1および
図2の例では上面)に設けられている。
【0020】
筐体1内には、底部1aから開口部1bに向かって順番に、高圧トランス2、駆動回路基板3および高圧回路基板4が収納されている。また、筐体1の内部には、絶縁性封止材12が充填されている。絶縁性封止材12としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の絶縁材料が用いられる。
【0021】
絶縁性封止材12により、高圧トランス2、駆動回路基板3および高圧回路基板4の間の電気絶縁性が維持される。また、開口部1bは、絶縁性封止材12により封止されるので、開口部1bに蓋を設けなくても、高圧トランス2、駆動回路基板3および高圧回路基板4に埃等が付着することを防止できる。
【0022】
駆動回路基板3は細長かつ略矩形の回路基板である。駆動回路基板3には駆動回路10が配置されている。駆動回路10は、イオン発生装置100が搭載される機器において使用される直流電圧を所定の周波数の交流電圧に変換し、変換した交流電圧を高圧トランス2の1次コイルに印加することにより、高圧トランス2を駆動する。高圧トランス2は、駆動回路10により印加される交流電圧を昇圧するトランスである。
【0023】
高圧回路基板4は、細長かつ略矩形を成す単一の回路基板である。高圧回路基板4には、放電電極5,6および誘導電極7が設けられている。高圧回路基板4は、その表面(上面)にのみ放電電極5,6、誘導電極7、配線パターン等の導電パターンが形成されている片面基板である。
【0024】
放電電極5は、高圧回路基板4の一端部に取り付けられる一方、放電電極6は、高圧回路基板4の他端部に取り付けられている。放電電極5,6は、高圧回路基板4の表面から垂直に立ち上がり、絶縁性封止材12の表面から突出するように配置されている。放電電極5,6は、一部が筐体1の開口部1bから外部に露出している。放電電極5,6は、先鋭に形成された針状の電極である。放電電極5,6は、針状電極に限らず、先端がブラシ状に形成された電極などであってもよい。
【0025】
誘導電極7は、高圧回路基板4の表面に設けられている。誘導電極7は、放電電極5,6が対向する側を除いた、放電電極5の周囲および放電電極6の周囲に形成されるとともに、これらの部分をつなぐように直線状に形成される部分を有している。
【0026】
誘導電極7は、放電電極5,6との間に電界を形成するための電極である。放電電極5は、誘導電極7との間で、正イオンを発生するための電極である。放電電極6は、誘導電極7との間で、負イオンを発生するための電極である。
【0027】
ダイオード8,9は、高圧トランス2の2次側の一方の端子2a(第1端子)と放電電極5,6との間に、それぞれに介在される。ダイオード8は、高圧トランス2から出力される交流電圧を半波整流することにより、交流電圧の正の半周期を出力する。また、ダイオード9は、高圧トランス2から出力される交流電圧を半波整流することにより、交流電圧の負の半周期を出力する。ダイオード8のアノードおよびダイオード9のカソードは、端子2aに接続される。ダイオード8のカソードは、放電電極5に接続されている。ダイオード9のアノードは、放電電極6に接続されている。
【0028】
また、高圧トランス2の2次側の他方の端子2b(第2端子)は、誘導電極7に接続されている。このように、イオン発生装置100においては、高圧トランス2の2次側は接地されていない。
【0029】
駆動回路10から高圧トランス2へ電力が供給されることで、放電電極5,6と誘導電極7との間で放電が生じ、イオンが発生する。イオン発生装置100の回路を構成する各部品については特に制限されず、公知の部品を用いることができる。
【0030】
図1および
図2に示すように、高圧トランス2は、上面に端子2a,2bが設けられている。端子2aは、高圧トランス2の上面における放電電極5側の隅部に配置されており、短く形成されている。端子2bは、高圧トランス2の上面における端子2aが設けられる隅部と対角に位置する隅部の付近に配置されており、高圧回路基板4を貫通するように長く形成されている。また、端子2bは、先端部分で誘導電極7に接続されている。
【0031】
なお、端子2a,2bは、高圧トランス2における2次側の巻線の必要な巻数を確保するために、ある程度の間隔をおいて配置される必要がある。このため、端子2a,2bを近づけて配置することは難しい。
【0032】
ダイオード8は、高圧回路基板4の裏面(下面)側に実装されている。ダイオード8のアノード端子およびカソード端子は、高圧回路基板4を貫通している。高圧トランス2の端子2aとダイオード8のアノード端子とは、リード線11と、高圧回路基板4の表面に形成された配線パターン41とを介して接続されている。また、ダイオード8のカソード端子と放電電極5とは、高圧回路基板4の表面に形成された配線パターン42とを介して接続されている。
【0033】
また、
図1および
図2において図示しないが、ダイオード9も、高圧回路基板4の裏面側に実装されており、ダイオード9のアノード端子およびカソード端子が、高圧回路基板4を貫通している。高圧トランス2の端子2aとダイオード9のカソード端子とは、リード線11と、高圧回路基板4の表面に形成された図示しない配線パターンとを介して接続されている。また、ダイオード9のアノード端子と放電電極6とは、高圧回路基板4の表面に形成された図示しない他の配線パターンとを介して接続されている。
【0034】
リード線11の一端は端子2aと接続され、リード線11の他端は高圧回路基板4を貫通して配線パターン41に接続されている。
図1に示すように、リード線11と誘導電極7とは、一部で
図1における平面視において重なっており、当該一部で対向している。また、
図2に示すように、リード線11は、端子2aとの接続位置から高圧回路基板4に向けて急傾斜で伸び、かつ放電電極6の下端部付近から高圧回路基板4の貫通位置に至るまで、高圧回路基板4の裏面(下面)と略平行になるように配置されている。これにより、リード線11の一部は、誘導電極7の一部と略平行になる。
【0035】
続いて、リード線11の配置によるノイズ低減効果について説明する。
【0036】
図4は、イオン発生装置100の他の構成を示す
図1のA-A線矢視断面図である。
【0037】
まず、ノイズ対策が施されていない基準となるイオン発生装置について説明する。当該イオン発生装置は、図示はしないが、リード線11を備えず、端子2bと同様に高圧回路基板4にまで達する長さに形成された端子2aが、高圧回路基板4に設けられた配線パターンを介してダイオード8,9に接続される。このように構成されるイオン発生装置では、最も多くのノイズを発生する。
【0038】
これに対し、
図1および
図2に示すイオン発生装置100では、リード線11と誘導電極7とが、一部で平行に配置されている。これにより、上記の基準のイオン発生装置で生じたノイズと比べて、20dB程度のノイズ低減が確認された。
【0039】
また、
図4に示すイオン発生装置100は、リード線11と誘導電極7とが平行に配置される部分を有さないが、リード線11が、誘導電極7と対向しており、高圧回路基板4に対して傾斜して配置されている。このようなイオン発生装置100では、
図1および
図2に示すイオン発生装置100のノイズ低減効果には及ばないが、上記の基準のイオン発生装置で生じたノイズと比べて、13dB程度のノイズ低減が確認された。
【0040】
リード線11と誘導電極7とが対向する距離は、長い方ほどノイズ低減効果を向上させることができる。また、対向するリード線11と誘導電極7との間の距離Dは、0mmを超え、かつ5mm以下の範囲(0mm<D≦5mm)の値が好ましく、この範囲の値で実用的に十分なノイズ低減効果が認められる。距離Dが5mmを超え、かつ10mm以下の範囲(5mm<D≦10mm)では、5mmの付近で0mm<D≦5mmの範囲の上限値(D=5mm)によるノイズ低減効果に近い良好なノイズ低減効果が得られる。また、5mm<D≦10mmの範囲では、10mmの付近で、0mm<D≦5mmの範囲の値によるノイズ低減効果より劣るものの、実用に足りるノイズ低減効果が認められる。
【0041】
また、リード線11は、絶縁が確保されていれば、高圧回路基板4に接触してもよい。この場合、リード線11は、高圧回路基板4の厚み(0.8mm程度)の間隔をおいて誘導電極7と近接することになる。この程度にリード線11と誘導電極7とが近接しても、ノイズ低減効果が得られる。
【0042】
なお、
図3では、高圧回路基板4の上側に誘導電極7が配置されているが、高圧回路基板4の下側に誘導電極7が配置されている場合も、上述した距離Dの範囲と同じ範囲において同等のノイズ低減効果が認められる。
【0043】
ここで、リード線11と誘導電極7とは、駆動回路基板3と高圧回路基板4とが重なる方向である上下方向に近接している。また、リード線11と誘導電極7とは、連続的に近接していてもよいし、断続的(非連続的)に近接していてもよい。
【0044】
このように、本実施形態のイオン発生装置100は、
図3に示すように、高圧トランス2の端子2aから放電電極5,6に至る第1導電路と、高圧トランス2の端子2bおよび誘導電極7を含む第2導電路とが一部で近接かつ対向している。ここでの第1導電路は、
図1および
図2に示すように、端子2aと、リード線11と、配線パターン41と、ダイオード8と、配線パターン42とから構成される導電路である。また、第1導電路は、端子2aと、リード線11と、リード線11およびダイオード9を接続する配線パターン(図示せず)と、ダイオード9と、ダイオード9および放電電極6を接続する配線パターン(図示せず)とから構成される導電路である。また、ここでの第2導電路は、端子2bおよび誘導電極7である。そして、第1導電路の一部となるリード線11と、第2導電路の一部となる誘導電極7の一部とが近接かつ対向し、しかも略平行となるように配置されている。
【0045】
高圧トランス2の2次側が接地されていないので、高圧トランス2の端子2a,2bにそれぞれ現れる電圧の波形は、逆の位相となる。このため、第1導電路に生じる電磁ノイズと第2導電路に生じる電磁ノイズも逆の位相となる。そこで、第1導電路と第2導電路とが一部で対向していることにより、それらで生じる電磁ノイズの少なくとも一部が互いに打ち消し合う。しかも、第1導電路および第2導電路が平行となる部分では、電磁ノイズを打ち消し合う効果がより高まる。
【0046】
したがって、電磁ノイズを遮断するためのシールドなどを用いる必要がなくなる。よって、ノイズの低減が可能な小型のイオン発生装置100を実現することができる。
【0047】
また、第1導電路は、リード線11で第2導電路と対向するので、リード線11の配置や形状を適宜調整することにより、容易に第1導電路と第2導電路とを対向させることができる。
【0048】
ここで、リード線11は、柔軟性を有していてもよいが、柔軟であることにより、誘導電極7と略平行となる形状を保持することが難しくなることがある。これに対し、リード線11は、外力によって変形可能であり、変形された形状を維持する程度の硬質な導電性材料で形成されていてもよい。これにより、誘導電極7と略平行となる形状を容易に保持することができる。また、リード線11は、所定の熱を加えることによって規定の形状に変形する形状記憶合金であってもよい。
【0049】
ところで、高圧回路基板4は、片面基板であり、高圧トランス2側の裏面には配線パターンが形成されていない。このため、リード線11は、外側が絶縁されていなくても、高圧回路基板4の裏面と接触したときに、配線パターンとの短絡故障を生じさせることはない。ただし、高圧回路基板4が裏面にも配線パターンを有する両面基板である場合、リード線11は、外側が絶縁されていないと、高圧回路基板4の裏面と接触したときに、配線パターンとの短絡故障を生じさせてしまう。したがって、このような場合、短絡故障を回避するために、リード線11は、フッ素樹脂チューブのように絶縁性被覆部材によって被覆されていることが好ましい。
【0050】
また、高圧回路基板4は、放電電極5,6および誘導電極7が設けられている単一の基板である。これにより、放電電極5,6および誘導電極7がそれぞれ個別の基板に形成されるよりも、部品点数を削減することができる。したがって、イオン発生装置100のコストを低減することができる。
【0051】
また、本実施形態では、高圧回路基板4、駆動回路基板3および高圧トランス2が上下に配置される縦型のイオン発生装置100について説明した。本発明は、このような構成に限らず、例えば、高圧回路基板4および駆動回路基板3の側方に高圧トランス2とは異なる構造の高圧トランスが配置される構成のイオン発生装置にも適用することができる。このような構成では、高圧トランスがその側面に2次側の端子を有しており、当該端子から側方の高圧回路基板4の下側または上側に伸びるようにリード線を配置することができる。
【0052】
引き続き、本実施形態の変形例について説明する。
【0053】
図5は、本実施形態の変形例に係るイオン発生装置100における導電体14が高圧トランス2に接続された状態を示す斜視図である。
【0054】
図5に示すように、イオン発生装置100において、リード線11に代えて、導電体14を用いてもよい。導電体14は、板状の導電性材料によって構成され、本体14aと、立ち下げ部14bと、立ち上げ部14cと、接続部14d,14eとを有している。
【0055】
本体14aは、細長い平板状の長方形に形成されている。導電体14は、本体14aが誘導電極7と略平行となるように配置される。また、導電体14は、金属箔のような薄い材料で形成されてもよいし、金属箔よりも厚い薄板状の金属材料で形成されてもよい。
【0056】
立ち下げ部14bは、本体14aの一端側に下方(高圧トランス2側)に向くように本体14aと同じ幅で形成されている。立ち上げ部14cは、本体14aの他端側に上方(高圧回路基板4側)に向くように本体14aと同じ幅で形成されている。
【0057】
接続部14dは、立ち下げ部14bの下端から突出しており、立ち下げ部14bよりも狭い幅で形成されている。接続部14dは、高圧トランス2の端子2aとハンダ15によって接続される。接続部14eは、立ち上げ部14cの上端から突出しており、立ち上げ部14cよりも狭い幅で形成されている。接続部14eは、
図5には示さない高圧回路基板4上の配線パターン41とハンダによって接続される。
【0058】
上記のような導電体14を用いることにより、リード線11よりも広い幅を確保することができる。これにより、第1導電路と第2導電路とが対向する範囲を広げることができる。
【0059】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、
図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0060】
図6は、本実施形態に係るイオン発生装置100Aの構成を示す平面図である。
【0061】
本実施形態においては、主に、上述した実施形態1のイオン発生装置100と異なる部分について説明する。
【0062】
図6に示すように、イオン発生装置100Aは、イオン発生装置100と異なり、高圧回路基板4において、配線パターン41(
図1参照)に代えて、配線パターン41よりも長い配線パターン43が設けられている。また、イオン発生装置100Aは、リード線11(
図1参照)に代えてリード線13を有している。
【0063】
配線パターン43は、配線パターン41と同じく、一端がダイオード8のアノード端子と接続されるが、高圧トランス2側の他端が、高圧トランス2の上面を高圧回路基板4に投影した領域に達する長さを有している。これに応じて、誘導電極7は、イオン発生装置100の誘導電極7と比べて、高圧トランス2側の端部が、放電電極6により近い位置にあるように短く形成されている。
【0064】
高圧トランス2における端子2a,2bは、イオン発生装置100の高圧トランス2における端子2a,2bと異なる。
【0065】
具体的には、端子2aは、高圧トランス2の上面において、配線パターン43の他端の下方に配置され、その端部が高圧回路基板4を貫通する長さを有するように形成されている。これにより、端子2aと、配線パターン43と、ダイオード8と、配線パターン42とが第1導電路を形成している。また、端子2aと、端子2aおよびダイオード9を接続する配線パターン(図示せず)と、ダイオード9と、ダイオード9および放電電極を接続する配線パターン(図示せず)とが第1導電路を形成している。
【0066】
端子2bは、高圧トランス2の上面における端子2aが設けられる隅部と対角に位置する隅部に配置されており、イオン発生装置100における端子2aと同様に短く形成されている。このため、端子2bと誘導電極7とは、リード線13によって接続されている。
【0067】
リード線13は、高圧回路基板4の下方において、端子2bから端子2a付近まで伸び、そこから配線パターン43と対向するように、より好ましくは配線パターン43と略平行になり、ダイオード8の付近で誘導電極7の直線部分まで伸びるように配置されている。そして、リード線13の端部は、誘導電極7の直線部分に接続されている。これにより、端子2bと、リード線13と、誘導電極7とが第2導電路を形成している。
【0068】
上記のように構成されるイオン発生装置100Aにおいては、第1導電路の一部を構成する配線パターン43と第2導電路を構成するリード線13とが対向する(好ましくは略平行となる)ので、イオン発生装置100と同様、ノイズを低減することができる。
【0069】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、
図7に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0070】
図7は、本実施形態に係るイオン発生装置100Bの構成を示す平面図である。
【0071】
本実施形態においては、主に、上述した実施形態1のイオン発生装置100と異なる部分について説明する。
【0072】
図7に示すように、本実施形態のイオン発生装置100Bは、イオン発生装置100と異なり、高圧トランス2の端子2a,2bの位置が入れ替わっている。これに伴い、誘導電極7は、高圧回路基板4の表面に突出した端子2bと接続されるように、放電電極6側の一部から端子2bまで伸びる接続部7aを有している。また、イオン発生装置100Bは、リード線11(
図1参照)に代えてリード線16を有している。
【0073】
リード線16は、端子2bと配線パターン41とを接続するのはリード線11と同じであるが、配置される経路がことなる。リード線16は、誘導電極7に沿うように対向して誘導電極7の下方に配置されている。
【0074】
これにより、リード線16は、リード線11よりも長くなるので、より誘導電極7に近づけることができる。それゆえ、リード線16と誘導電極7とが略平行となる区間をより長くすることができる。したがって、よりノイズ低減効果を向上させることができる。
【0075】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4について、
図8~
図10に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0076】
図8は、本実施形態に係るイオン発生装置100Cの構成を示す平面図である。
図9は、イオン発生装置100Cの長手方向に沿った断面構造を示す縦断面図である。
図10は、
図9のB-B線矢視断面図である。なお、
図8においては、説明の便宜上、高圧回路基板4および駆動回路基板3の記載が省略されている。
【0077】
本実施形態においては、主に、上述した実施形態1のイオン発生装置100と異なる部分について説明する。
【0078】
図8~
図10に示すように、本実施形態のイオン発生装置100Cは、イオン発生装置100と異なり、筐体1が配線保持部1cを有している。
【0079】
配線保持部1cは、筐体1の内壁におけるリード線11の配置経路の任意の位置に設けられている。配線保持部1cは、望ましくは、端子2aから高圧回路基板4側に伸びるリード線11が高圧回路基板4の裏面と略平行となる位置の手前でリード線11を保持することができる位置に設けられている。配線保持部1cは、リード線11を下方から受けるように凹状に形成されている。また、配線保持部1cの上端は、高圧回路基板4の裏面と接している。これにより、配線保持部1cは、リード線11を、配線保持部1cから抜け出さないように、高圧回路基板4とともに保持する。
【0080】
上記のように構成されるイオン発生装置100Cによれば、リード線11が配線保持部1cによって筐体1に保持されるので、上述した柔軟性を有するリード線11であっても、その姿勢を一定に保つことができる。また、上述した硬質なリード線11であっても、姿勢を一定に保つことが容易になる。これにより、リード線11と誘導電極7とを容易に対向させることができる。
【0081】
なお、配線保持部1cは、実施形態1の変形例における導電体14と、実施形態2および3のイオン発生装置100A,Bのリード線13,16とをそれぞれ保持できるように適用させることができる。このために、配線保持部1cは、導電体14およびリード線13,16のそれぞれの配置位置と形状とに応じた位置および形状に形成される。
【0082】
〔実施形態5〕
本発明のさらに実施形態5について、
図11に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施形態1~4にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0083】
図11は、本実施形態に係る空気清浄機200(電気機器)の概略構成を示す平面図である。
【0084】
図11に示すように、空気清浄機200は、イオン発生装置101と、送風装置201とを備えている。イオン発生装置101は、実施形態1~3における100A~100Cのうちのいずれか1つである。
【0085】
送風装置201は、イオン発生装置101によって生成されたイオンを送出するために、
図11に矢印で示す方向に空気の流れを発生する。
【0086】
このように構成される空気清浄機200において、放電電極5,6と誘導電極7との間の放電によって生じたイオンが、送風装置201によって生じた空気の流れに乗って、送出される。
【0087】
空気清浄機200は、イオン発生装置101を備えることで、従来のイオン発生装置を備える空気清浄機と比較して、小型かつ低コストに構成できる。また、空気清浄機200が、サイズの都合で従来のイオン発生装置を搭載することができなかった場合でも、イオン発生装置101を搭載することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、イオン発生装置101が空気清浄機200に搭載される例について説明したが、空気清浄機200以外にも、空気調和機、掃除機、冷蔵庫、洗濯機、ドライヤー等の電気機器にイオン発生装置101が搭載されてもよい。このような電気機器についても、空気清浄機200と同じく、従来のイオン発生装置を備える電気機器と比較して、小型かつ低コストに構成できる。
【0089】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る放電装置は、トランスと、前記トランスの2次側の第1端子に接続される放電電極と、前記放電電極との間に放電生成物を発生し、前記トランスの2次側の第2端子に接続される誘導電極と、を備え、前記第1端子を含み、前記第1端子から前記放電電極に至る第1導電路と、前記第2端子および前記誘導電極を含む第2導電路とが一部で近接かつ対向している。
【0090】
上記の構成によれば、トランスの2次側が接地されていないので、トランスの第1端子および第2端子にそれぞれ現れる電圧の波形は、逆の位相となる。このため、第1導電路に生じるノイズおよび第2導電路に生じるノイズも逆の位相となる。そこで、第1導電路と第2導電路とが一部で対向していることにより、それらで生じるノイズの少なくとも一部が互いに打ち消し合う。したがって、ノイズを遮断するためのシールドなどを用いる必要がなくなる。ノイズの低減が可能な小型の放電装置を実現することができる。
【0091】
本発明の態様2に係る放電装置は、上記態様1において、前記第1導電路および前記第2導電路が、近接かつ対向している部分において一部で略平行となるように配置されていてもよい。
【0092】
上記の構成によれば、第1導電路および前記第2導電路が平行となる部分では、ノイズを打ち消し合う効果がより高まる。
【0093】
本発明の態様3に係る放電装置は、上記態様2において、前記第1導電路または前記第2導電路が、配線部材を含んでいてもよい。
【0094】
上記の構成によれば、配線部材の配置や形状を適宜調整することにより、容易に第1導電路と第2導電路とを対向させることができる。
【0095】
本発明の態様4に係る放電装置は、上記態様3において、前記配線部材が、絶縁性被覆部材によって被覆されたリード線であってもよい。
【0096】
上記の構成によれば、リード線が絶縁されているので、リード線が周囲の配線パターンなどと接触することによる短絡故障を回避することができる。
【0097】
本発明の態様5に係る放電装置は、上記態様3において、前記配線部材が板状の導電体であってもよい。
【0098】
上記の構成によれば、板状の導電体により、第1導電路と第2導電路とが対向する範囲を広げることができる。
【0099】
本発明の態様6に係る放電装置は、上記態様3から5のいずれかにおいて、前記トランス、前記放電電極、前記誘導電極、前記第1導電路および前記第2導電路を収納する筐体をさらに備え、前記筐体が、前記配線部材を保持する配線保持部を有していてもよい。
【0100】
上記の構成によれば、配線部材が筐体に保持されるので、配線部材の姿勢を一定に保つことができる。これにより、第1導電路と第2導電路とを容易に対向させることができる。
【0101】
本発明の態様7に係る放電装置は、上記態様3から5のいずれかにおいて、前記トランスから出力される交流電圧を半波整流するダイオードをさらに備え、前記放電電極が、前記ダイオードを介して前記第1端子に接続され、前記配線部材が、前記第1端子と前記ダイオードとを接続し、前記配線部材と前記第2導電路とが一部で近接かつ対向していてもよい。
【0102】
第1導電路のうちダイオードから放電電極に至る部分では、ダイオードの配置によっては第2導電路と対向しないことがある。これに対し、上記の構成によれば、配線部材によって、第1導電路と第2導電路とを一部で近接かつ対向させることができる。
【0103】
本発明の態様8に係る放電装置は、上記態様1から7のいずれかにおいて、前記放電電極および前記誘導電極が設けられる単一の基板をさらに備えていてもよい。
【0104】
上記の構成によれば、放電電極および誘導電極が単一の基板に設けられることから、放電電極および誘導電極がそれぞれ個別の基板に形成されるよりも、部品点数を削減することができる。これにより、放電装置のコストを低減することができる。
【0105】
本発明の態様9に係る電気機器は、上記態様1から8のいずれかの放電装置を備えている。
【0106】
上記の構成によれば、電気機器の小型化および低ノイズ化を図ることができる。
【0107】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 筐体
1c 配線保持部
2 高圧トランス(トランス)
2a 端子(第1端子,第1導電路)
2b 端子(第2端子,第2導電路)
4 高圧回路基板(基板)
5,6 放電電極
7 誘導電極(第2導電路)
8,9 ダイオード(第1導電路)
11 リード線(配線部材,第1導電路)
41~43 配線パターン(第1導電路)
100,100A~100C,101 イオン発生装置(放電装置)
200 空気清浄機(電気機器)