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▶ ウェスト ファーマスーティカル サービシーズ ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】閉塞具
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/06 20060101AFI20241211BHJP
   B65D 51/00 20060101ALI20241211BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B65D43/06 200
B65D51/00 100
A61J1/05 315D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023501141
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 US2021040349
(87)【国際公開番号】W WO2022010799
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】63/049,154
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519293896
【氏名又は名称】ウェスト ファーマスーティカル サービシーズ ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】リヒロウスキ・コーリャ
(72)【発明者】
【氏名】レプリー・カーリントン
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/144067(WO,A1)
【文献】米国特許第08714384(US,B2)
【文献】特表2016-511726(JP,A)
【文献】特表2017-524604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0036839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と環状のカラーとを含む首部を有する容器を密封するための閉塞具であって、
栓と、
前記栓と前記首部との両方を取り囲んで密封するように構成されている複合キャップと
を備え、
前記複合キャップが、
複数のロック用タブを含み、前記栓を収納するリングと、
前記リングの上に伸縮可能に装着されているスカートを含む冠部と
を有し、
前記スカートは、前記冠部が前記容器の首部へ向かって軸方向に変位するとき、前記カラーの下で前記複数のロック用タブを内周方向へ押し曲げることにより、前記カラーを支えるように構成されており、
前記複数のロック用タブのうち第1ロック用タブは軸方向において第1の高さであり、第2ロック用タブは軸方向において第2の高さであり、前記第1の高さが前記第2の高さよりも小さい
ことを特徴とする閉塞具。
【請求項2】
前記第1ロック用タブは第1の幅であり、前記第2ロック用タブは第2の幅であり、前記第1の幅が前記第2の幅よりも小さい、請求項1に記載の閉塞具。
【請求項3】
前記栓がフランジを含み、
前記リングが、
前記容器が密封されていない状態において内周方向に伸びて前記フランジの表面に接触するように構成されている複数の保持アーム
を更に含む、
請求項1または請求項2に記載の閉塞具。
【請求項4】
前記リングは、
前記複数の保持アームの各々に1つずつ隣接している複数の穴
を更に含み、
前記リングが前記首部へ向かって軸方向に変位すると、前記カラーが前記複数の保持アームの各々を隣接する穴の中へ曲げ、前記容器が密封される状態では前記栓が前記開口部の中に挿入される、
請求項3に記載の閉塞具。
【請求項5】
前記栓がフランジを含み、
前記リングが、
前記リングの内周面から内周方向へ、前記フランジの直径以下まで隆起している複数の段
を含む
請求項1または請求項2に記載の閉塞具。
【請求項6】
前記複数の段の存在する範囲が前記リングの内周の50%未満である、請求項5に記載の閉塞具。
【請求項7】
請求項1に記載の閉塞具を備えている容器。
【請求項8】
請求項1に記載の閉塞具を用いて、環状のカラーを含む首部を有する容器を密封する方法であって、
前記容器の首部を前記リングに挿入するステップと、
前記栓が前記容器の首部の開口部の中に挿入され、かつ前記複数のロック用タブが前記カラーの下で径方向に曲げられるまで、軸方向の力を加えるステップと
を備えている方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、2020年7月8日に出願されている「CLOSURE DEVICE」と題する米国特許仮出願第63/049,154号の利益及び優先権を主張する。その仮出願の内容は全体が参照により、この明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
容器を閉じるための閉塞具を提案する。この閉塞具は、1つの実施形態では、予め組み込まれた栓を含む。別の実施形態は、そのような閉塞具を具備する容器に関する。
【0003】
薬剤容器の分野ではガラス製又はポリマー製の瓶が、凍結乾燥状態、粉末状態、又は溶液状態の有効成分の保存に利用可能である。そのような瓶は漏れないように閉じられ、その内容物を、それが使用される日まで満足な状態で保存し続けなければならない。瓶を密閉する目的では、エラストマー栓を備えている閉塞具が使用可能である。エラストマー栓には、容器の開口部を密封し、気体、液体、及び細菌の侵入又は漏れを防ぐ機能がある。そのような閉塞具が、圧着用のアルミニウム製シール又はプラスチックス製キャップ等、容器を密封状態に維持する手段を更に備えていてもよい。この手段は、栓の周囲の適所に保持されることによって栓を外部から隔離し、かつ栓の除去を阻止するように設計されている。
【0004】
そのような閉塞具が例えば凍結乾燥状態の医薬物質に使用される場合、凍結乾燥される前の医薬物質で各容器が満たされた後、その容器の首部の上又は中に栓が置かれ、外部の環境とその容器の内部との間の連通を維持したまま固定される。こうして中が満たされて栓が仮止めされた容器は、その後、複数の束(バッチ)にまとめられて凍結乾燥器の棚に載せられる。凍結乾燥器の内部では医薬物質から水分が除去される。容器の内容物が凍結乾燥される間、医薬物質からの水分の確実な除去に役立つように、真空状態で低温乾燥が行われ、水分が昇華/蒸発させられる。
【0005】
凍結乾燥器内における医薬物質からの水分の除去が完了したら、容器の栓の全てに圧力が加えられ、各容器の首部の開口部の上又は中に引っ掛かっている栓でその容器が確実に密閉される。このようなバッチ単位での閉栓は一般に、シール部材を使わず、エラストマー栓のみで行われる。凍結乾燥器から容器が取り出された後に追加処理が行われ、各容器の上の適所にシールが取り付けられる。しかし、そのような追加処理は避けることが望ましい。したがって、凍結乾燥の前に、容器に仮止めされている栓の各々に、対応するシール部材を取り付けることが想定されている。それ故、シール部材は、凍結乾燥器内で栓が所定の位置に押し込まれるのと実質上同時に取り付けられてもよい。
【0006】
シール部材が、対応する容器の首部を取り巻くように設置されるとき、摩擦により、その動きに対する抵抗が生じる。その抵抗の大きさは、第1に、シールを構成する部品の製造公差の関数として変化し、第2に、それらの部品が容器の首部に取り付けられたときの仮の位置の関数として変化する。したがって、凍結乾燥器内で圧搾板を使用してシールが多数の対応する容器にロックされるとき、シールの構成部品の製造公差が考慮され、圧搾板の動作クリアランスが考慮されると、シールの中には、正しくロックされないものがあり得る。また、容器自体、及び使用される栓の寸法のばらつきが、1バッチの容器を完全に閉じることを更に困難にする。
【0007】
それ故、小瓶(バイアル瓶)の栓にシール部材を確実に、かつ安定に位置決めするように、閉塞具を改良することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第8,714,384号明細書
【発明の概要】
【0009】
発明の1つの観点では、開口部と環状のカラーとを含む首部を有する容器を密封するための閉塞具が提案される。この閉塞具は栓と複合キャップとを備えている。複合キャップは、栓と首部との両方を取り囲んで密封するように構成されている。複合キャップはリングと冠部とを有する。リングは、栓を収納する部分であり、複数のロック用タブを含む。冠部は、リングの上に伸縮可能に装着されているスカートを含む。スカートは、冠部が容器の首部へ向かって軸方向に変位するとき、カラーの下で複数のロック用タブを内周方向へ曲げるように構成されている。複数のロック用タブのうち、第1ロック用タブは軸方向において第1の高さであり、第2ロック用タブは軸方向において第2の高さである。第1の高さは第2の高さよりも小さい。
【0010】
発明の別の観点では、開口部と環状のカラーとを含む首部を有する容器を密封するための閉塞具が提案される。この閉塞具は、フランジを有する栓と複合キャップとを備えている。複合キャップは、栓と首部との両方を取り囲んで密封するように構成されており、リングと冠部とを有する。リングは、栓を収納する部分であり、複数のロック用タブを含む。冠部は、リングの上に伸縮可能に装着されているスカートを含む。スカートは、カラーの下で複数のロック用タブを内周方向へ曲げるように構成されている。リングはまた、その内周面から内周方向へ、栓のフランジの直径以下まで隆起している複数の段を含む。
【0011】
この明細書に開示されている発明の様々な実施形態における上記の観点、及び他の観点は、以下の説明を考慮すれば、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
この出願の発明の様々な観点及び実施形態は、以下の図面を参照しながら説明される。図面は必ずしも縮尺通りには描かれていないことが理解されるべきである。図面は、発明の概念に沿って1以上の実施形態を例としてのみ描写するものであり、それらに限定するものではない。図面では、同様な参照番号が同じ又は類似の要素を指す場合もある。
図1】開示対象の発明による閉塞具で密封されている容器の中に医薬品を充填する段階を示す、軸方向に沿った断面の模式図である。
図2】開示対象の発明による閉塞具で密封されている容器の中に医薬品を充填する段階を示す、軸方向に沿った断面の模式図である。
図3】開示対象の発明による閉塞具で密封されている容器の中の医薬品を乾燥させる段階を示す、軸方向に沿った断面の模式図である。
図4】開示対象の発明による閉塞具で密封されている容器を密封する段階を示す、軸方向に沿った断面の模式図である。
図5】開示対象の発明による閉塞具で密封されている容器を密封する段階を示す、軸方向に沿った断面の模式図である。
図6A】この明細書に開示されている実施形態の1つによる閉塞具の上面斜視図である。
図6B図6Aの閉塞具の分解図である。
図7A】この明細書に開示されている閉塞具に含まれる、取り外し可能な蓋の上面斜視図である。
図7B図7Aの取り外し可能な蓋の上面図である。
図7C図7Aの取り外し可能な蓋の底面図である。
図7D図7Aの取り外し可能な蓋の正面図である。
図7E図7Aの取り外し可能な蓋の断面図である。
図8A】この明細書に開示されている閉塞具に含まれる冠部の上面斜視図である。
図8B図8Aの冠部の上面図である。
図8C図8Aの冠部の底面図である。
図8D図8Aの冠部の正面図である。
図8E図8Aの冠部の断面図である。
図9】この明細書に開示されている閉塞具における蓋及び冠部の組み合わせの断面図である。
図10A】この明細書に開示されている閉塞具に含まれるリングの上面斜視図である。
図10B図10Aのリングの上面図である。
図10C図10Aのリングの底面図である。
図10D図10Aのリングの正面図である。
図10E図10Aのリングの底面斜視図である。
図10F図10Aのリングの、前後方向に垂直な断面図である。
図10G図10Aのリングの、左右方向に垂直な断面図である。
図10H】別の実施形態によるリングの底面図である。
図11図6A図6Bとの閉塞具の断面図である。
図12A図3の細部VIの拡大図である。
図12B図4の細部Xの拡大図である。
図12C図12Bの直線XI-XIに沿った断面図である。
図12D図4の構成と図5の構成との間の中間段階における、図12Cと同様な断面図である。
図12E図5の細部XIIIの拡大図である。
図12F図12Eの直線XIV-XIVに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明で使用される特定の用語は、便宜上でのみ使用されているに過ぎず、発明を限定するものではない。「下方」、「下部」、「上方」、及び「上部」という語は、参照される図面における方向を示す。「内向き」、「外向き」、「上向き」、及び「下向き」という語はそれぞれ、この明細書の開示内容に応じて、移液装置及びその指定されている部分の幾何学的中心へ向かう方向、及びそこから離れる方向を指す。この明細書に具体的に記載されない限り、“a”、“an”、及び“the”という冠詞は単一の要素には限定されず、代わりに「少なくとも1つ」を意味するものとして読まれるべきである。用語は、上記の語、及びそれらの派生語と類義語を含む。
【0014】
この明細書の開示の構成要素の寸法又は特性を指すときにこの明細書で使用される、「約」、「およそ」、「概して」、「実質的に」などの用語は、説明されている寸法/特性が厳密な境界又はパラメータではなく、機能的に同様である、それらからの軽微な変動を除外しないことを示すことも理解されるべきである。少なくとも、数値パラメータを含むそのような参照は、当該技術分野で受け入れられている数学的な原理、及び工業的な原理(例えば、丸め、測定誤差若しくはその他の系統誤差、又は製造公差等)を使用して、最下位を変化させない変動を含む。
【0015】
また、当業者であれば、発明から逸脱することなく、この明細書に説明されている例示的な実施形態に修正が行われ得ることを理解するであろう。この明細書で説明されるシステム及び装置の構造的特徴は、機能的に等価な部分で置き換えられ得る。更に、この明細書の開示内容から逸脱することなく、複数の実施形態から特徴を抜き出して組み合わせることが可能であることは理解されるであろう。
【0016】
一般に、この明細書に開示されている様々な実施形態による閉塞具は栓とシール部材とを備えている。シール部材は複合キャップの形態をしている。栓は複合キャッの中に詰められている。閉塞具は小瓶等の容器の開口部に取り付けられ、その容器の首部を取り巻く環状のカラーを捕らえて、栓を密封状態に維持することが可能である。
【0017】
この明細書に開示されている様々な実施形態による閉塞具は、特許文献1(その内容は参照により、その全体がこの明細書に組み込まれる。)に説明されているもの等、典型的な充填処理及び凍結乾燥処理に使用可能である。例えば図1図5を参照すると、容器を構成するガラス瓶の中に製品Pを梱包する異なる段階が示されている。瓶1は、ガラスの他に、セラミックス又はポリマー、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレート共重合体(PETG)、高密度ポリエチレン(PEHD)で作製されていてもよい。
【0018】
図1では瓶1が、製品P、例えば薬剤の充填処理を受けている。外側にカラー13がある首部12によって形作られている口部11を通して瓶1の中に、ピペット2が導入される。X1は瓶1の対称軸を示す。所定量の製品Pが瓶1の中に導入され終えるとピペット2が引き抜かれ、図2に示されているように、閉塞具50が首部12に載せられる。閉塞具50はエラストマー栓51を備えている。エラストマー栓51は、一部が口部11の中に導入されるも、瓶1の底14とは反対側にあるカラー13の側部131に留まるように構成されている。充填工程のラインが複数のピペットを含み、複数の容器に製品を同時に充填してもよい。同様に、自動化されている充填工程のラインが、複数の容器に製品を充填した後、それらの容器に複数の栓と複合キャップとを同時に取り付け可能であってもよい。
【0019】
閉塞具50はキャップ52も備えている。キャップ52は、栓51と首部12とを覆って、それらを閉じている状態に維持するためのものである。好ましくは、栓51が予めキャップ52の中に詰められており、瓶1の首部12にキャップが取り付けられる前に軸方向の所定位置に保持される。これについては、後で更に詳細に説明する。充填工程の後、閉塞具50が各容器1の首部12に、栓51が口部11を完全には塞がないように取り付けられる。栓51には、好ましくは、容器1の外の空気を通す通気口512が開けられている。充填工程を終えて閉塞具50が載せられた複数の容器1は、その後、図3図5に示されているように、1ロットずつにまとめられて凍結乾燥器300の中に投入されてもよい。図3図5では3個の瓶が1ロットを表すが、1ロットは、凍結乾燥器300の中で使用される数百個の瓶であってもよく、数百万個の瓶である場合もあり得る。さらに、瓶は凍結乾燥器内に投入された際、積み重ねられている数枚の棚に載せられてもよい。容器1が凍結乾燥器内に投入された後、凍結乾燥器内の温度及び圧力が下げられる。これにより、各瓶1の中に存在する水分が蒸発し、図3の矢印F1によって表されるように、栓51の通気口512及びキャップ52とカラー13との隙間を通って容器から出る。
【0020】
所定量の水分が排出されて製品Pが十分に乾燥した後、図4図5とに表されているように、圧搾機301が凍結乾燥器内の閉塞具50の全てに力E2を加えてもよい。力E2は閉塞具50に対して均等に、瓶1と首部12との長軸X1に沿って加えられる。凍結乾燥器内の圧搾機301によって加えられるこの軸方向の力E2は、例えば、空気圧又は機械式ジャッキ302によって制御されてもよい。圧搾機301によって加えられる力E2が閉塞具50を各容器1へ向かって軸方向に変位させる結果、まず、エラストマー栓51が各容器1の開口部11の中に所定の深さまで挿入される。これにより、通気口512がもはや露出しないので、容器1の内容物Pが容器1の外部から隔離される。次に、閉塞具50が圧搾機301によって更に押し下げられると、キャップ52が各容器1の首部12を捕える。これにより、栓51が容器1の首部12の上面131に押し付けられ、容器1を密封する。
【0021】
図6A図11を参照すると、発明のある実施形態による閉塞具50が示されている。前述のとおり、閉塞具は、エラストマー栓51、リング53、冠部54、及び蓋56を備えている。蓋56は冠部54に取り付けられており、好ましくは、ユーザが例えば片手で容易に取り外せるように構成されている。閉塞具50、特に、この明細書で詳細に説明されるような閉塞具50の各構成要素は、好ましくはプラスチックス材、更に好ましくは、PE、PET、PETG、PEHD、ポリプロピレン(PP)、又はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等の熱可塑性材料から作製される。ただし、これらには限定されない。より好ましくは、閉塞具50は、医薬品グレードのポリプロピレン材、特に、汚染物又は危険物(例えばビスフェノールA又はホルムアルデヒド)を含まない医薬品グレードのポリプロピレン材から作製される。
【0022】
図7A図7Eで最もよく見えるように、蓋56は、必要に応じ、上部の上面の周囲に複数のノッチ561を含んでいてもよい。ノッチ561は、蓋56を冠部54に取り付ける自動製造ラインがセンタリングを行い、かつ力を加えるのに便利であり得る。蓋のスカート562が蓋56の上部から下向きに伸びていてもよい。スカート562には、軸方向に伸びている複数の切れ目563が設けられ、ユーザが栓51に触れようとするときに蓋56を変形させて冠部54から分離させることを、より容易にしてもよい。蓋56は更に複数の変形可能なタブ564を備えていてもよい。タブ564は蓋56の上部の下側から軸方向に伸びており、蓋56を冠部54に取り付けるためのものである。
【0023】
図8A図8Eで最もよく見えるように、冠部54は、その上部の中央に位置する穴541と、その上部から下向きに広がっているスカート542とを含む。スカート542は閉塞具50の外周の膜を構成するためのものである。スカート542の周壁は複数の棚部543を含む。棚部543は弓状であって内周方向へ突出しており、閉塞具が容器を密封している状態ではリング53に、捕えることのできる表面を提供する。これについては、後でより詳細に説明する。各棚部543の上方には1つずつ開口部544がある。棚部543及び開口部544は、好ましくは、共通であるスカート542の周に沿って等間隔に離れている。図9は、蓋56と冠部54とが組み合わされている状態を示す。複数のタブ564が冠部54の穴541の中に挿入されて変形することにより、各タブ564に、冠部54の上部の下側を捕えるリップ565が形成される。
【0024】
図10A図10Fを参照すると、冠部54と同様にリング53も、その上部の中央に位置する穴530と、その上部から下向きに伸びているスカート532とを含む。リング53の円形の内部は、小瓶1のカラー13を取り囲むことが十分に可能であるほどの内径を持つ。リング53の上部には更にカラー531が設けられている。カラー531は、閉塞具50が容器を密封している状態にあるときに冠部54の棚部543を捕らえるように構成されている。これについては、後でより詳細に説明する。リング53の上部に対して反対側にあるリング53の端部に位置するリング53の底部533は複数のロック用タブ534を含む。ロック用タブ534は可撓性を持ち、軸方向に伸びている。ロック用タブ534の遠位端(すなわち、ロック用タブ534の端部のうち底部533に近い方)は、好ましくは、ヒンジで底部533に取り付けられている。ロック用タブ534の各々は、リングのスカート532の周壁にある窓535の中に位置する。図10F及び図10Gで最もよく見えるように、リング53は、好ましくは、2対のロック用タブ534a及び534bを備えている。第1ロック用タブの対534aはスカート532の周上に互いに対向するように位置し、第2ロック用タブの対534bはスカート532の周上に互いに対向するように位置する。第1ロック用タブ534aの軸方向における高さXは第2ロック用タブ534bの軸方向における高さYよりも小さく、第1ロック用タブ534aの周方向における幅Aは第2ロック用タブ534bの周方向における幅Bよりも小さい。
【0025】
リングのスカート532の周壁には複数のリブ520と複数の穴536とが設けられている。リブ520は周方向に伸びている。穴536は軸方向においてカラー531とロック用タブ534との中間の高さに位置する。各穴536の下側の縁には保持アーム537が取り付けられており、内周方向へ伸びている。
【0026】
図10C及び図10Eで最もよく見えるように、リング53が更に、その上部の底面に円形の突出部538を備えていてもよい。突出部538は、リング53の上部の中央に位置する穴530を囲んでいる。閉塞具が容器を密封している状態にあるときに栓51の上面に対して加えられる力を、突出部538が確実に均等に分配する。図10Eに示されているように、突出部538は1つの連続した円を描いている。図10Hに示されているリング等、他の実施形態では円形の突出部が複数の断片538a、538b、538c、538d、538eに分かれていてもよい。好ましくは、これらの断片が等サイズであり、等間隔で離れている。これにより、閉塞具が容器を密封している状態にあるときに前述の力が確実に均等に分配される。断片の間隔が増すと、閉塞具を圧縮して、容器を密封している状態を閉塞具に実現させるのに必要な力が弱まる。
【0027】
閉塞具50が容器に取り付けられる前に予め栓51がリング53内に詰められている。栓51をリング53内に確実に留めることを目的として、前述の保持アーム537が内周方向へ、栓51のフランジ510の直径よりも小さい直径まで伸びている。これにより、栓51がリング53内の空洞の上部に保持される。栓51をリング53の空洞の上部内に更に確実に保持することを目的として、リング53の上部に隣接するスカート532の内周面には複数の段539が隆起している。段539は内周方向へ、栓51のフランジ510の直径以下の直径まで広がっている。これにより、栓51とリング53内の空洞との間に締まり嵌めが実現する。ただし、段539は、リング53の上部に隣接する空洞の上部の内周の一部のみに沿って設けられていることが好ましい。容器を密封している状態に閉塞具50をロックするのに必要な、フランジ510を圧縮する段539の力が最小限に抑えられるからである。段539がリングのスカート532の内周に占める割合は、約50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、又は5%以下であり、順序が後である範囲ほど好ましい。
【0028】
蓋56が冠部54に取り付けられ、栓51がリング53内に詰められた後、冠部54がリング53の上に伸縮可能に装着される。リング53の周方向に広がっている複数のリブ520が冠部54の内周面の溝545に嵌まる。これにより、閉塞具50が組み立てられた状態になる。これは、図11で最もよく見える。
【0029】
実際には、冠部54の最大外径が13.5mm未満、より好ましくは12.8mm~13.2mm、最も好ましくは12.8mm以下であるように、リング53、冠部54、及び蓋56の形状が選択される。これらの条件の下では、使用される小瓶1の本体16の直径が13mmに等しい場合、小瓶1に装着されている閉塞具50の外径が小瓶1の直径を超えていないか、又はわずかに超えている。これにより、閉塞具50が取り付けられるときに、又は凍結乾燥の間に、些細な原因で瓶がバランスを崩して転倒する可能性が低減する。
【0030】
この明細書に開示される別の実施形態による閉塞具を使用して小瓶を密封する方法を、図12A図12Fを参照しながら説明する。図12A図12Bとの構成では、冠部54がリング53を保持している状態にある。この状態では、リング53の外側のリブ535が冠部54の内周面の溝5461に挿入されたままであり、冠部54がリング53のロック用タブ537とは干渉しない。
【0031】
力E2が加えられると、図3図12Aとの状態から図4図12Bとの状態への移行として表されているように、冠部54が各小瓶1の底部14へ向かって移動する。溝5461とリブ535とが協働する、それらの間の締まり嵌めにより、力E2が冠部54からリング53に伝わる。すなわち、リブ535及び溝5461が、冠部54からリング53への力E2の伝達手段を構成している。各閉塞具50に加えられる力E2がリング53のタブ534を小瓶のカラー13の外面に沿って摺動させ、最終的にはカラー13の下に到達させる。保持アーム537もまた小瓶13の外面に衝突し、それに沿って摺動する。これにより、保持アーム537が外周方向へ曲がって各穴536の中に入る。その結果、保持アーム537がもはや栓のフランジ510の底面には接触も干渉もしないので、栓が小瓶1の開口部内に挿入可能になる。
【0032】
リング53の上部が栓51の上面511に接触するので、ベース14へ向かうリング53の進行が止まる。各閉塞具50の冠部54に対して力E2が加えられ続けると、スカート533の弾性変形によってリングの外側のリブ535が溝5461から外れる。これによって冠部54が、図12E図12Fとの示す位置への到達に成功する。したがって、図12C及び図12Dに表されているように、冠部54の縁541が異なるロック用タブ537の表面5372に接触する。この移動が更に継続されると、表面5372が縁541に逆らって摺動する。これにより、図12Fに表されているように、タブ537の自由端側5371がカラー13の外周面の下側132に逆らって移動するので、タブ537が軸X1へ向かって径方向に撓る。こうして、縁541はロック用タブ537に、キャップ52を首部12に固定するという機能を発揮させることができる。
【0033】
この移動によってはまた、冠部54の開口部543の下側の棚部5431がリング53のカラー5311の下面5313を捕らえる。D541はカラー5311の最大直径を示す。D543は、軸X52へ向かう径方向における各棚部5431の最も内側の点によって共有される最小直径を示す。閉塞具50が図12Dの状態から図12E図12Fとの状態へ移行する間、棚部5431の弓形の下側領域5443がカラー5311の表面5314に逆らって摺動するので、弾性変形する。棚部5431がカラー5311の下に到達した後、下側領域5443がその弾性によって元の形状に戻る。その結果、カラー5311が受け具又は留め具となり、冠部54がリング53に対して軸方向へ縦変位することに起因する冠部54とリング53との分離を防ぐ。それ故、図12Fに表されているように閉塞具に対して冠部54を引き抜く力E3、E4が加えられても、両方の棚部5431がカラー5311によって移動を妨げられ、ロック用タブ537がカラー13によって移動を妨げられる。
【0034】
その結果、図12E図12Fとの状態では冠部54がリング53の周囲に、特に効果的にロックされる。一旦、閉塞具50が小瓶1の首部12に装着された後では、栓51に触れ、それを通して小瓶1の内容物に触れる唯一の方法が、冠部54から蓋56を分離して蓋56を取り外すことしかない。
【0035】
当業者であれば、その広範な発明概念から逸脱することなく、上で説明される実施形態に変更が行われ得ることを理解するであろう。したがって、本発明は、開示されている特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内の修正を収納することが意図されることが理解される。
【0036】
本発明による閉塞具は、次のようにも特徴付けられる。
開口部と環状のカラーとを含む首部を有する容器を密封するための閉塞具であって、
フランジを有する栓と、
前記栓と前記首部との両方を取り囲んで密封するように構成されている複合キャップと
を備えている。
前記複合キャップは、
複数のロック用タブを含み、前記栓を収納するリングと、
前記リングの上に伸縮可能に装着されているスカートを含む冠部と
を有する。
前記リングは、
前記リングの内周面から内周方向へ、前記フランジの直径以下まで隆起している複数の段
を含む。
前記スカートは、前記冠部が前記容器の首部へ向かって軸方向に変位するとき、前記カラーの下で前記複数のロック用タブを内周方向へ押し曲げることにより、前記カラーを支え、かつ、前記リングを押し下げて前記複数の段の内周側に前記栓のフランジを締まり嵌めするように構成されている。
【0037】
前記複数の段の存在する範囲が前記リングの内周の50%未満であってもよい。
前記リングが、
前記容器が密封されていない状態において内周方向に伸びて前記フランジの表面に接触するように構成されている複数の保持アーム
を更に含んでいてもよい。前記リングは、
前記複数の保持アームの各々に1つずつ隣接している複数の穴
を更に含み、前記リングが前記首部へ向かって軸方向に変位すると、前記カラーが前記複数の保持アームの各々を隣接する穴の中へ曲げ、前記容器が密封される状態では前記栓が前記開口部の中に挿入されるようになっていてもよい。
【0038】
本発明による閉塞具を用いる方法は、上記の閉塞具を用いて、環状のカラーを含む首部を有する容器を密封する方法であって、
前記容器の首部を前記リングに挿入するステップと、
前記栓が前記容器の首部の開口部の中に挿入され、かつ前記複数のロック用タブが前記カラーの下で径方向に曲げられるまで、軸方向の力を加えるステップと
を備えている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F