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特許7602617電力変換装置及び電力変換装置の制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/493 20070101AFI20241211BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241211BHJP
【FI】
H02M7/493
H02M7/48 J
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023508231
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2021012063
(87)【国際公開番号】W WO2022201328
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 和正
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 考弘
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/025734(WO,A2)
【文献】特開2015-130746(JP,A)
【文献】特許第6755436(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/493
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に対し電力を受給する複数の電力変換部毎の状態量に関する状態量情報に基づいて前記複数の電力変換部が行う電力変換を制御するための目標値である制御指令を生成して出力するメインコントローラと、
前記電力変換部毎に配置されて前記制御指令に基づいて前記電力変換部を制御するとともに前記状態量を取得して出力する複数のサブコントローラと、
前記複数のサブコントローラが出力した前記状態量を情報圧縮して前記状態量情報を生成し、前記メインコントローラの側へ前記状態量情報を伝達する中継部と
を備え
前記中継部は、複数の中継コントローラを有し、
前記中継コントローラは、複数の段にツリー接続されること
を特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記メインコントローラは、
前記複数の電力変換部の状態量の総和に基づいて前記制御指令を生成し、
前記状態量情報は、
2台以上の前記サブコントローラが出力する状態量の和であること
を特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記サブコントローラにおける状態量の取得はアナログ量で検出された前記状態量をデジタル量に変換して取得することを含むこと
を特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記中継コントローラは、
前記メインコントローラの側に接続される通信路である上位通信路に接続される上位通信ポートと前記サブコントローラの側に接続される通信路である下位通信路に接続される複数の下位通信ポートとを有すること
を特徴とする請求項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
複数の前記サブコントローラは、
前記中継コントローラと直列に接続されること
を特徴とする請求項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
複数の前記中継コントローラは、
j段にツリー接続されて各々1個の上位通信ポートとi個の下位通信ポートとを有し、
前記複数のサブコントローラは、
n個のグループに分けてまとめられ、
前記グループの個数nが
j-1<n≦i
を満たすこと
を特徴とする請求項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記メインコントローラは、
前記i個の下位通信ポートを有して前記複数の中継コントローラとともに前記j段にツリー接続されること
を特徴とする請求項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記中継部は、
前記メインコントローラ及び前記サブコントローラとシリアル通信接続されること
を特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記メインコントローラは、
一つの制御指令を生成し出力すること
を特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記複数のサブコントローラは、
自身の情報であるステータスを更に出力し、
前記中継部は、
前記複数のサブコントローラが出力したステータスを集約したステータスの前記メインコントローラの側への伝達を更に行うこと
を特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項11】
負荷に対し電力を受給する複数の電力変換部毎の状態量に関する状態量情報を使用して前記複数の電力変換部が行う電力変換を制御するための目標値である制御指令を生成して出力することと、
前記電力変換部毎の前記制御指令に基づいて前記電力変換部を制御するとともに前記状態量を取得して出力することと、
前記出力された複数の前記状態量を情報圧縮して前記状態量情報を生成し、前記制御指令の生成に使用させることと
を含
前記状態量情報の生成は、複数の前記状態量を情報圧縮して前記状態量情報を生成する段階及び前記生成された複数の前記状態量情報を情報圧縮して新たな状態量情報を生成する段階を含む複数段階により行われること
を特徴とする電力変換装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電力変換装置及び電力変換装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ等を複数のインバータで駆動するシステムが知られている。
【0003】
例えば、インバータ及びインバータに単機給電を行う補助電源を複数台並列に接続し、それぞれのインバータの電流の総和に基づいて各インバータの電流を帰還制御するシステムが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-130599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術では、インバータの電流を表す出力電流ベクトルの総和及び平均値が伝達制御中央装置により算出されて各インバータに帰還される。この際、インバータの台数が増えると、出力電流ベクトルの伝達に時間が掛かるという問題がある。
【0006】
実施形態の一態様は、複数のインバータの状態量の伝達を高速に行う電力変換装置及び電力変換装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様の電力変換装置は、メインコントローラと、複数のサブコントローラと、中継部とを備える。メインコントローラは、負荷に対し電力を受給する複数の電力変換部毎の状態量に関する状態量情報に基づいて上記複数の電力変換部が行う電力変換を制御するための目標値である制御指令を生成して出力する。サブコントローラは、上記電力変換部毎に配置されて上記制御指令に基づいて上記電力変換部を制御するとともに上記状態量を取得して出力する。中継部は、上記複数のサブコントローラが出力した上記状態量を情報圧縮して上記状態量情報を生成し、上記メインコントローラの側へ上記状態量情報を伝達する。
【0008】
また、実施形態の一態様の電力変換装置の制御方法は、負荷に対し電力を受給する複数の電力変換部毎の状態量に関する状態量情報を使用して上記複数の電力変換部が行う電力変換を制御するための目標値である制御指令を生成して出力することと、上記電力変換部毎の上記制御指令に基づいて上記電力変換部を制御するとともに上記状態量を取得して出力することと、上記出力された複数の上記状態量を情報圧縮して上記状態量情報を生成し、上記制御指令の生成に使用させることとを含む。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、複数のインバータの電流値の伝達を高速に行うことができる電力変換装置および電力変換装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態の電力変換装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態のサブコントローラの構成例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態のメインコントローラの構成例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態の中継コントローラの構成例を示す図である。
図5A図5Aは、第1の実施形態の通信データの構成例を示す図である。
図5B図5Bは、ステータスの一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態の通信データの伝達の一例を示す図である。
図7A図7Aは、第1の実施形態のメインコントローラの制御方法の一例を示す図である。
図7B図7Bは、第1の実施形態の中継コントローラの制御方法の一例を示す図である。
図7C図7Cは、第1の実施形態のサブコントローラの制御方法の一例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態の電力変換装置の構成例を示す図である。
図9図9は、第2の実施形態のサブコントローラの構成例を示す図である。
図10図10は、第2の実施形態の電力変換装置の他の構成例を示す図である。
図11A図11Aは、第3の実施形態の中継コントローラの構成例を示す図である。
図11B図11Bは、第3の実施形態のメインコントローラの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、以下の各実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
[電力変換装置の構成]
図1は、第1の実施形態の電力変換装置の構成例を示す図である。同図は、電力変換装置1の構成例を表すブロック図である。この電力変換装置1は、モータ等の負荷に電力を供給する複数の電力変換部(後述する電力変換部4)を制御するものである。また、電力変換装置1は、上位の制御装置に制御されて上述の制御を行う。この上位の制御装置には、例えば、システム全体を制御する制御装置が該当する。
【0013】
電力変換装置1は、メインコントローラ10と、中継部20と、複数のサブコントローラ40とを備える。なお、同図の電力変換装置1は、8個のサブコントローラ(サブコントローラ40a-サブコントローラ40h)を備える例を表したものである。
【0014】
メインコントローラ10は、通信路51により上位の制御装置と接続される。また、メインコントローラ10は、通信路52により中継部20に接続される。同図の例では、メインコントローラ10は、通信路52a及び52bにより中継部20に接続される。
【0015】
中継部20は、サブコントローラ40と通信路54により接続される。同図の例では、中継部20は、複数の通信路54a及び54bにより、サブコントローラ40a-サブコントローラ40hと接続される。
【0016】
同図に表したように、中継部20は、中継コントローラ30を有する。同図の中継部20は、ツリー接続される複数の中継コントローラ30を有する場合の例を表したものである。同図の中継部20は、2段にツリー接続される6個の中継コントローラ30を有する。
【0017】
中継コントローラ30は、メインコントローラ10の側の装置と1つの通信路により接続され、サブコントローラ40側の複数の装置にそれぞれ通信路を介して接続することができる。これにより、中継コントローラ30をツリー接続することができる。同図の中継コントローラ30は、サブコントローラ40側の2つの装置に接続される例を表したものである。
【0018】
具体的には、中継部20の1段目の中継コントローラ30aは、メインコントローラ10と通信路52aを介して接続され、中継コントローラ30c及び中継コントローラ30dと通信路53a及び通信路53bを介してそれぞれ接続される。中継部20の1段目の中継コントローラ30bも同様に接続される。
【0019】
また、中継部20の2段目の中継コントローラ30cは、上述の中継コントローラ30aと上述の通信路53aを介して接続されるとともにサブコントローラ40a及びサブコントローラ40bと通信路54a及び通信路54bを介してそれぞれ接続される。中継部20の2段目の中継コントローラ30dも同様に接続される。
【0020】
また、中継部20の2段目の中継コントローラ30eは、上述の中継コントローラ30bと上述の通信路53aを介して接続されるとともにサブコントローラ40e及びサブコントローラ40fと通信路54a及び通信路54bを介してそれぞれ接続される。中継部20の2段目の中継コントローラ30fも同様に接続される。
【0021】
通信路51、52、53及び54には、シリアル通信を行う通信路を使用することができる。この際、通信路52等は、全二重通信路及び半二重通信路により構成することができる。
【0022】
[サブコントローラの構成]
図2は、第1の実施形態のサブコントローラの構成例を示す図である。同図は、サブコントローラ40の構成例を表すブロック図である。なお、同図には、サブコントローラ40の他にモータ2、電力変換部4及びセンサ部3を記載した。同図の電力変換部4は、モータ2に電力を供給するものである。サブコントローラ40は、この電力変換部4を制御する。
【0023】
なお、同図は、図1と同様に並列に接続された複数の電力変換部4a-4hがモータ2に接続される例を表したものである。同図においては、複数の電力変換部4a-4hにより1台のモータ2が駆動される。サブコントローラ40a-40h及びセンサ部3a-3hは、電力変換部4a-4h毎に配置される。
【0024】
モータ2には、例えば、3相誘導電動機を適用することができる。また、電力変換部4は、複数のスイッチ素子が3相ブリッジ接続された回路を使用することができる。電力変換部4は、モータ2とU相線、V相線及びW相線により接続され、不図示の電源部より供給される直流電力を交流電力に変換してモータ2に供給する。このモータ2に供給される交流は、PWM(Pulse Width Modulation)制御されて電力が調整される。これにより、モータ2の回転速度やトルクが制御される。なお、PWM制御はサブコントローラ40により行われ、電力変換部4は、サブコントローラ40からのPWM制御に基づくPWM制御信号によりモータ2に交流電力を供給する。
【0025】
サブコントローラ40は、モータ2の状態量を検出する。この状態量として、モータ2に流れる電流値を想定する。この場合、制御指令には、電圧指令が該当する。サブコントローラ40は、通信路54を介して電圧指令を受信し、電圧指令に応じたPWM制御信号を生成して電力変換部4に出力する。サブコントローラ40は検出したモータ2に流れる電流値に基づき、電圧指令を補正し、補正された電圧指令に応じたPWM制御信号を生成してもよい。たとえばサブコントローラ40は、電圧指令を生成するのに使用された電流指令を電圧指令とともに通信路54を介して受信し、電流指令と検出したモータ2を流れる電流値に基づき、電圧指令を補正してもよい。このPWM制御信号は、電力変換部4のスイッチ素子、例えば、IGBTのゲート端子に入力される。このように、サブコントローラ40は、電圧指令に応じたPWM信号により電力変換部4のスイッチ素子を駆動して電力変換部4に電圧指令に相当する出力電圧を生成させる。これにより、サブコントローラ40は、モータ2に所要の電力が供給されるよう電力変換部4における電力変換を制御する。なお、電圧指令は、メインコントローラ10により生成される。
【0026】
電力変換部4のU相線、V相線及びW相線の線電流はセンサ部3により検出することができる。このセンサ部3は、電力変換部4毎に配置され、U相線、V相線及びW相線にそれぞれ対応する3つの電流センサにより構成することができる。この電流センサには、電流トランスやホール素子を使用したセンサを使用することができる。これらの電流センサは、線電流に応じたアナログの信号を出力する。センサ部3により検出された電流は、U相線、V相線及びW相線のそれぞれに対応する信号線Iu、信号線Iv及び信号線Iwによりサブコントローラ40に伝達される。尚電流センサU相線、V相線、W相線の3相全てに対して設けなくてもよい。3相の電流の総和がゼロになることを前提にどれか2相に対してのみ設け、残りの相の電流は電流センサが検出する二つの線電流から演算で求めてもよい。
【0027】
同図のサブコントローラ40は、上位通信ポート41と、制御部42と、駆動部43と、電流検出部44とを備える。
【0028】
上位通信ポート41は、上位の装置である中継コントローラ30と通信するものである。この上位通信ポート41は、通信路54を介して中継コントローラ30に接続される。上位通信ポート41は、中継コントローラ30が送信した制御指令等を受信し、状態量やステータスを中継コントローラ30に送信する。
【0029】
制御部42は、少なくともサブコントローラ40におけるデータ送受信の制御を行う。具体的には、制御部42は、上位通信ポート41から通信路54を介して受信した制御指令を駆動部43に出力し、電流検出部44が検出した電流値を状態量として上位通信ポート41から通信路54を介して送信する。また、制御部42は、ステータスを生成し、同じく上位通信ポート41から通信路54を介して送信する。
【0030】
駆動部43は、電力変換部4を駆動するものである。この駆動部43は、制御部42から出力された制御指令に基づいて電力変換部4に対する制御信号を生成する。例えば、駆動部43は、制御指令と三角波とを比較してPWM制御信号を生成し、電力変換部4に出力する。あるいは、制御部42は、空間ベクトル制御法によりPWM制御信号を生成してもよい。更に、制御部42は、電流検出部44が検出した電流値を状態量とし、この状態量に基づいて制御指令を補正し、補正した制御指令に基づいてPWM制御信号を生成してもよい。
【0031】
電流検出部44は、センサ部3から出力された電流値を状態量として駆動部43及び制御部42に出力するものである。この電流検出部44は、アナログデジタル変換器を備えてセンサ部3が出力されたアナログ量の電流値をデジタル量の電流値に変換して駆動部43及び制御部42に出力する。
【0032】
なお、制御部42、駆動部43及び電流検出部44は、状態量を検出し、検出した状態量を上位通信ポート41から送出すること及び上位通信ポート41から受信することを実行できるものであれば、これらの構成や各部の処理内容はサブコントローラ40a-40hにより異なっていてもよい。
【0033】
[メインコントローラの構成]
図3は、第1の実施形態のメインコントローラの構成例を示す図である。同図は、メインコントローラ10の構成例を表すブロック図である。同図のメインコントローラ10は、上位通信ポート11と、制御部12と、下位通信ポート13及び14とを備える。
【0034】
上位通信ポート11は、上位の制御装置と通信するものである。この上位通信ポート11は、通信路51に接続される。
【0035】
下位通信ポート13及び14は、下位の装置であるサブコントローラ40側の装置と通信するものである。この下位通信ポート13及び14は、それぞれ異なる通信路52を介して中継コントローラ30に接続される。下位通信ポート13及び14は、制御指令を送信し、中継コントローラ30からの状態量やステータスを受信する。
【0036】
制御部12は、少なくとも制御指令の生成及びメインコントローラ10におけるデータ送受信の制御を行う。具体的には、制御部12は、サブコントローラ40により駆動される電力変換部4毎の状態量に基づいて電力変換部4に対する制御指令を生成する。例えば、制御部12は、上位の制御装置から通信路51を介して受信するか又はメインコントローラ10に付属するIO装置(不図示)から入力される制御目標を取得する。制御目標には、例えば、モータ2に対する速度指令やトルク指令が該当する。制御部12は、この制御目標から状態量の目標値を生成する。この状態量の目標値には、電流指令を想定する。
【0037】
複数のサブコントローラ40が検出した複数の状態量である複数の電流値の総和と電流指令とに基づいて電力変換部4が行う電力変換を制御するための目標値である制御指令を生成する。制御指令には、例えば、電圧指令が該当する。制御指令の生成には、例えば、交流モータのベクトル制御に従った電流指令に基づく電圧目標の生成と、電流指令と複数の電流値の総和との差分値に基づく電圧目標の補正による電圧指令の生成とを含む。制御部12は、サブコントローラ40の側にこの制御指令である電圧指令を出力することにより、帰還制御を行う。メインコントローラ10が生成して中継コントローラ30を介して伝達された制御指令により駆動部43の制御指令が更新される。
【0038】
また、下位通信ポート13及び14には、それぞれの中継コントローラ30から状態量が入力される。制御部12は、これらの状態量を加算して上述の状態量の総和を生成する。
【0039】
なお、メインコントローラ10及びサブコントローラ40の間には、中継コントローラ30が配置される。サブコントローラ40からの状態量は中継コントローラ30を経由してメインコントローラ10に伝達される。この際、中継コントローラ30は、複数の状態量を情報圧縮した状態量情報を生成し、メインコントローラ10の側に伝達することができる。後述するように、この情報圧縮は、状態量の加算により行うことができる。また、中継コントローラ30は、下位の中継コントローラ30から状態量情報が伝達される際には、状態量情報の情報圧縮を更に行う。これは、状態量情報の加算により行うことができる。これら状態量及び状態量情報の加算は、中継コントローラ30における情報圧縮の一例である。
【0040】
この場合、メインコントローラ10は、状態量に関する状態量情報に基づいて制御指令を生成する。具体的には、メインコントローラ10は、複数の中継コントローラ30からの状態量情報の加算を行い状態量の総和を生成することができる。状態量情報の詳細については後述する。
【0041】
[中継コントローラの構成]
図4は、第1の実施形態の中継コントローラの構成例を示す図である。同図は、中継コントローラ30の構成例を表すブロック図である。同図の中継コントローラ30は、上位通信ポート31と、制御部32と、下位通信ポート33及び34とを備える。
【0042】
上位通信ポート31は、上位の装置であるメインコントローラ10及びメインコントローラ10の側の中継コントローラ30の何れかと通信するものである。同図の中継コントローラ30は、メインコントローラ10の側の中継コントローラ30に接続される例を表したものである。同図の上位通信ポート31は、通信路53に接続される。上位通信ポート31は、状態量情報やステータスを送信し、制御指令を受信する。
【0043】
下位通信ポート33及び34は、下位の装置であるサブコントローラ40及びサブコントローラ40の側の中継コントローラ30の何れかと通信するものである。同図の下位通信ポート33及び34は、それぞれ異なる通信路54を介してサブコントローラ40に接続される。下位通信ポート33及び34は、制御指令を送信し、状態量及び状態量情報の何れかとステータスとを受信する。
【0044】
制御部32は、少なくとも状態量情報の生成及び中継コントローラ30におけるデータ送受信の制御を行う。具体的には、制御部32は、上位通信ポート31が受信したメインコントローラ10の側からの制御指令を下位通信ポート33及び34を介してサブコントローラ40の側に伝達する。また、制御部32は、情報圧縮を行う。下位通信ポート33及び34がサブコントローラ40に接続される場合には、制御部32は、受信した状態量を情報圧縮して状態量情報を生成する。下位通信ポート33及び34が中継コントローラ30に接続される場合には、制御部12は、受信した状態量情報を更に情報圧縮して新たな状態量情報を生成する。
【0045】
制御部32は、自身に入力される複数の状態量を加算することにより情報圧縮を行うことができる。この場合、情報圧縮により生成された状態量情報は、自身に入力される複数の状態量の和に相当する。また、制御部32は、自身に入力される複数の状態量情報を加算して新たな状態量情報を生成することにより状態量情報の情報圧縮を行うことができる。
【0046】
また、制御部32は、下位通信ポート33及び34が受信したステータスの集約を行って新たなステータスを生成し、上位通信ポート31から送信させることもできる。ステータスの集約の詳細については後述する。
【0047】
[データの構成]
図5Aは、第1の実施形態の通信データの一例を示す図である。同図は、通信路52-54において伝達される通信データ100の一例を表した図である。この通信データ100は、シリアル通信に対応する例を表したものである。通信データ100は、フラグ101と、データ110と、CRC102と、フラグ103とを備える。
【0048】
フラグ101は、通信データの始まりを示すデータである。また、フラグ103は、通信データの終わりを示すデータである。データ110は、通信データ100により伝達されるデータ本体である。CRC102は、巡回冗長検査(CRC:Cyclic Redundancy Check)によるデータの誤りを検出するための符号である。
【0049】
メインコントローラ10の側から送信される際の通信データ100におけるデータ110は、制御指令111を有する。また、サブコントローラ40等への指示を表すコマンドやサブコントローラ40のアドレス等を更に有する構成にすることもできる。
【0050】
サブコントローラ40から送信される際の通信データ100におけるデータ110は、状態量121及びステータス130を有する。状態量121は、サブコントローラ40毎の電力変換部4の電流値に該当する。なお、中継コントローラ30から送信される通信データ100におけるデータ110の場合には、状態量情報が状態量121の代わりに配置される。
【0051】
図5Bは、ステータスの一例を示す図である。同図は、ステータス130の一例を表したものである。同図のステータス130は、複数のステータスビットにより構成される例を表したものである。同図のステータス130は、エラーステータス131及び動作可能ステータス132のステータスビットを備える。エラーステータス131は、サブコントローラ40等においてエラーを生じた状態を表すステータスビットである。エラーステータス131は、例えば、エラーを生じた場合に値「1」にすることができる。エラーステータス131は複数のエラー項目各々について、エラーを生じた状態を表す複数のステータスビットであってもよい。動作可能ステータス132は、サブコントローラ40において動作可能な状態を表すステータスビットである。動作可能ステータス132は、例えば、動作可能状態の時に値「1」にすることができる。
【0052】
前述のように、中継コントローラ30は、下位通信ポート33及び34が受信した2つのステータスを集約して新たなステータスを生成する。この集約は、次のように行うことができる。エラーステータス131においては、2つのステータス130のそれぞれのエラーステータス131の論理和演算を行って新たに1ビットのエラーステータス131を生成する。これにより、2つのステータス130の少なくとも1つのエラーステータス131がエラーを生じた状態(値「1」)の場合に当該エラーの状態をメインコントローラ10の側に伝達することができる。
【0053】
一方、動作可能ステータス132においては、2つのステータス130のそれぞれの動作可能ステータス132の論理積演算を行って新たに1ビットの動作可能ステータス132を生成する。これにより、2つのステータス130の動作可能ステータス132が共に動作可能の状態(値「1」)の場合に、当該動作可能の状態をメインコントローラ10の側に伝達することができる。このように、ステータスビットに応じた集約方法を適用することができる。
【0054】
[通信データの伝達]
図6は、第1の実施形態の通信データの伝達の一例を示す図である。同図は、図1に表したサブコントローラ40からメインコントローラ10への状態量の伝達とメインコントローラ10からサブコントローラ40への状態量指令の伝達とを表した図である。さらに、同図は、中継コントローラ30同士の間での状態量等の伝達の様子を表している。なお、同図には、図1のうちのメインコントローラ10、中継コントローラ30a、30c及び30d並びにサブコントローラ40a-40dを抜粋して記載したものである。
【0055】
同図の「サブコントローラ40a」、「サブコントローラ40b」及び「中継コントローラ30c」は、それぞれサブコントローラ40a、サブコントローラ40b及び中継コントローラ30cが送受信する通信データを表す。また、「サブコントローラ40c」、「サブコントローラ40d」及び「中継コントローラ30d」は、それぞれサブコントローラ40c、サブコントローラ40d及び中継コントローラ30dが送受信する通信データを表す。また、「中継コントローラ30a」は、中継コントローラ30aが送受信する通信データを表す。
【0056】
また、T1、T2、T3、T4、T5及びT6は、通信期間を表す。T1、T2及びT3がサブコントローラ40からメインコントローラ10への状態量の伝達を行う通信期間であり、T4、T5及びT6がメインコントローラ10からサブコントローラ40への状態量指令等の伝達を行う通信期間である。なお、同図は、電流値を状態量と想定し、電圧指令を状態量指令と想定する。
【0057】
まず、サブコントローラ40a-40dが電力変換部4の状態量に相当する電流値を検出する。同図のIa、Ib、Ic及びIdは、それぞれサブコントローラ40a、40b、40c及び40dの検出電流値を表す。
【0058】
次に、通信期間T1において、サブコントローラ40a-40dが通信路54を介して電流値を伝達する。サブコントローラ40a及び40bは、中継コントローラ30cに電流値を伝達する。サブコントローラ40c及び40dは、中継コントローラ30dに電流値を伝達する。
【0059】
次に、通信期間T2において、中継コントローラ30cが伝達された電流値Ia及びIbを加算して(加算1)、電流和Im1を生成する。また、中継コントローラ30dが伝達された電流値Ic及びIdを加算して(加算1)、電流和Im2を生成する。次に、中継コントローラ30c及び中継コントローラ30dが通信路53を介して電流和Im1及びIm2を中継コントローラ30aにそれぞれ伝達する。
【0060】
次に、通信期間T3において、中継コントローラ30aが伝達された電流和Im1及びIm2を加算して(加算2)、電流和Im3を生成する。次に、中継コントローラ30aが通信路52を介して電流和Im3をメインコントローラ10に伝達する。
【0061】
なお、同図の加算1は、電流和Im1の送信時間と比較して短い時間に行うことができる。このため、通信期間T2には、通信期間T1と同じ長さの期間とすることができる。これは、通信期間T3においても同様である。尚、メインコントローラ10、中継コントローラ30b、30e及び30f並びにサブコントローラ40e-40hについても、同様に通信期間T1、T2及びT3において状態量の伝達が行われる。
【0062】
このように、中継コントローラ30が複数の状態量を加算し、全ての状態量の総和に対する状態量の部分和に相当する状態量情報を生成しながら伝達することにより、通信路52及び53により伝達されるデータ量を削減することができる。これにより、状態量の伝達に要する各通信期間(通信期間T1、T2、T3)に要する時間を短縮し、全ての状態量の送信に必要な通信時間を短縮することができる。
【0063】
次に、メインコントローラ10が状態量指令に相当する電圧指令を生成する。同図のVCは、メインコントローラ10が生成した電圧指令を表す。
【0064】
次に、通信期間T4において、メインコントローラ10が通信路52を介して電圧指令VCを中継コントローラ30aに伝達する。
【0065】
次に、通信期間T5において、中継コントローラ30aが通信路53を介して電圧指令VCを中継コントローラ30c及び30dに伝達する。
【0066】
次に、通信期間T6において、中継コントローラ30c及び30dが通信路54を介して電圧指令VCをサブコントローラ40a-40dに伝達する。中継コントローラ30cは、サブコントローラ40a及び40bに電圧指令VCを伝達する。中継コントローラ30dは、サブコントローラ40c及び40dに電圧指令VCを伝達する。尚、メインコントローラ10、中継コントローラ30b、30e及び30f並びにサブコントローラ40e-40hについても、同様に通信期間T4、T5及びT6において制御指令の伝達が行われる。
【0067】
状態量指令の伝達においては、メインコントローラ10が生成した状態量指令(電圧指令)が中継コントローラ30を経由してサブコントローラ40に伝達(分配)される。
【0068】
[電流変換装置の制御方法]
図7Aは、第1の実施形態のメインコントローラの制御方法の一例を示す図である。同図は、図3に示すメインコントローラ10を例に挙げ、その制御方法の一例を表すフローチャートである。まず、メインコントローラ10が制御目標を取得する(ステップS101)。次に、メインコントローラ10が状態量情報を取得する(ステップS102)。これは、下位通信ポート13及び14が受信した状態量情報を取得することにより行うことができる。次に、メインコントローラ10が制御指令を生成する(ステップS103)。次に、メインコントローラ10が生成した制御指令を送出する(ステップS104)。次に、メインコントローラ10は、制御周期の開始まで待機し(ステップS106,No)、制御周期が開始されると(ステップS106,Yes)、ステップS101の処理に移行する。なお、制御周期の開始には、後述するサブコントローラ40の状態量入力開始指令を適用することができる。
【0069】
図7Bは、第1の実施形態の中継コントローラの制御方法の一例を示す図である。同図は、図4における中継コントローラ30を例に挙げ、その制御方法の一例を表すフローチャートである。まず、中継コントローラ30は、制御指令取得を判断する(ステップS111)。これは、ツリー接続におけるメインコントローラ10側の装置からの制御指令を受信したか否かに基づいて行うことができる。制御指令を取得した場合には(ステップS111,Yes)、取得した制御指令を送出する(ステップS112)。これは、制御指令をツリー接続におけるサブコントローラ40側の装置に送出することにより行うことができる。その後、ステップS111の処理に戻る。一方、ステップS111において、制御指令を取得していない場合には(ステップS111,No)、ステップS113の処理に移行する。
【0070】
ステップS113において、中継コントローラ30は、状態情報又は状態量情報の取得を判断する(ステップS113)。これは、ツリー接続におけるサブコントローラ40側の装置からの状態情報又は状態量情報を受信したかに基づいて行うことができる。状態情報又は状態量情報を取得した場合には(ステップS113,Yes)、状態情報又は状態量情報に基づいて状態情報を生成する(ステップS114)。次に、生成した状態情報を送出する(ステップS115)。これは、生成した状態情報をツリー接続におけるメインコントローラ10側の装置に送出することにより行うことができる。その後、ステップS111の処理に戻る。一方、ステップS113において、状態情報又は状態量情報を取得していない場合には(ステップS113,No)、ステップS111の処理に戻る。
【0071】
図7Cは、第1の実施形態のサブコントローラの制御方法の一例を示す図である。同図は、図2に示すサブコントローラ40を例に挙げ、その制御方法の一例を表すフローチャートである。まず、サブコントローラ40が状態量入力開始指令を出力する(ステップS121)。これは、例えば、図2において説明した電流検出部44に対する状態量(電流値)のAD変換開始指令の出力が該当する。次に、サブコントローラ40が制御指令を取得する(ステップS122)。これは、上位通信ポート41が受信した制御指令を取得することにより行うことができる。次に、サブコントローラ40が状態量を取得する(ステップS123)。これは、制御部42が、電流検出部44が検出した状態量(電流値)を取得することにより行うことができる。
【0072】
次に、電力変換部4に対する制御信号を生成する(ステップS124)。これは、制御部42の制御に基づいて駆動部43が制御信号を生成することにより行うことができる。次に、サブコントローラ40が制御信号を送出する(ステップS125)。これにより、生成した制御信号が電力変換部4に送出される。次に、サブコントローラ40が状態量を送出する(ステップS126)。これは、生成した状態量をツリー接続におけるメインコントローラ10側の装置に送出することにより行うことができる。次に、サブコントローラ40は、制御周期の終了まで待機し(ステップS127,No)、制御周期が終了すると(ステップS127,Yes)、ステップS121の処理に移行する。
【0073】
なお、ここでいう制御周期は、サブコントローラ40が状態量入力開始指令を出力し、サブコントローラ40が取得(検出)した状態量が中継コントローラ30を経由してメインコントローラ10に伝達され、メインコントローラ10が受け取った状態量に基づき制御指令を生成し、制御指令が中継コントローラ30を経由してサブコントローラ40に伝達され、サブコントローラ40が受け取った制御指令に基づき制御信号を生成して電力変換部4に送出するまでに要する時間より長い時間長の制御周期とすればよい。
【0074】
また、制御周期は、サブコントローラ40、中継コントローラ30、メインコントローラ10のうち、最も処理時間の長いコントローラの処理時間より長い時間長の制御周期としてもよい。この場合、サブコントローラ40、中継コントローラ30及びメインコントローラ10は、各制御周期で一斉に、それぞれ図7C図7B及び図7Aのフローシャートに示す処理を実施する。またこの場合、サブコントローラ40が状態量を検出し、この状態量に基づく制御指令が生成され、この制御指令に基づく制御信号が電力変換部4に送出するまで、中継コントローラ30の段数をjとすると、制御周期の(2j+2)倍の時間で処理が行われることになる。しかしながらこの場合、状態量、制御指令及び制御信号の更新は制御周期毎に行われる。
【0075】
このように、中継コントローラ30が複数の状態量を情報圧縮し、状態量情報を生成しながら伝達することにより、メインコントローラ10に伝達されるデータ量を削減することができ、状態量の伝達を高速に行うことができる。
【0076】
(第2の実施形態)
[電力変換装置の構成]
図8は、第2の実施形態の電力変換装置の構成例を示す図である。同図は、電力変換装置1のうちの中継部20の最も下の段の中継コントローラ30及びサブコントローラ40の構成例を表す図である。同図の中継コントローラ30は、複数のサブコントローラ40が接続される点で、図1の電力変換装置1と異なる。
【0077】
同図の中継コントローラ30は、下位通信ポート33及び34にそれぞれ接続される通信路54a及び54bに3つのサブコントローラ40が直列に接続される例を表したものである。通信路54aの側にはサブコントローラ40i、40j及び40kが接続され、通信路54bの側にはサブコントローラ40l、40m及び40nが接続される。サブコントローラ40i及び40jの間は通信路55aにより接続され、サブコントローラ40j及び40kの間は通信路55cにより接続される。また、サブコントローラ40l及び40mの間は通信路55bにより接続され、サブコントローラ40m及び40nの間は通信路55dにより接続される。通信路55a、55b、55c及び55dには、通信路54aと同様にシリアル通信を行う通信路を適用することができる。
【0078】
[サブコントローラの構成]
図9は、第2の実施形態のサブコントローラの構成例を示す図である。同図は、サブコントローラ40の構成例を表すブロック図である。同図のサブコントローラ40は、下位通信ポート45を更に備える点で図2のサブコントローラ40と異なる。
【0079】
下位通信ポート45は、下位の装置であるサブコントローラ40と通信するものである。この下位通信ポート45は、通信路55を介して他のサブコントローラ40に接続される。
【0080】
同図の制御部42は、上位通信ポート41を介して制御指令を受信し、下位通信ポート45を介して制御指令を他のサブコントローラ40に送信する。また、制御部42は、下位通信ポート45を介して状態量を受信し、上位通信ポート41を介して状態量を中継コントローラ30又は他のサブコントローラ40に送信する。
【0081】
直列に接続された複数のサブコントローラ40は、自身が検出した状態量を上位の装置(中継コントローラ30又は他のサブコントローラ40)に送信するとともに下位のサブコントローラ40の状態量の中継を行う。
【0082】
本実施形態においては、各々のサブコントローラ40は下位のサブコントローラ40から受信した状態量又は状態量情報と、自身が検出した状態量とを加算して新たな状態量情報を作成し、上位のサブコントローラ40又は中継コントローラ30に送信することを行ってもよい。
【0083】
[電力変換装置の他の構成]
図10は、第2の実施形態の電力変換装置の他の構成例を示す図である。同図の電力変換装置1は、複数のサブコントローラ40がバス接続される点で、図8の電力変換装置1と異なる。
【0084】
同図のサブコントローラ40i、40j及び40kはバス56aにより共通に接続され、サブコントローラ40l、40m及び40nはバス56bにより共通に接続される。また、バス56a及び56bは、中継コントローラ30の下位通信ポート33及び34にそれぞれ接続される。
【0085】
本構成では、各サブコントローラが時分割でバスを占有し、中継コントローラ30に状態量を送信する。例えばバス56aにおいては、最初の通信期間にてサブコントローラ40iが中継コントローラ30に状態量を送信し、次の通信期間でサブコントローラ40jが中継コントローラ30に状態量を送信し、さらに次の通信期間でサブコントローラ40kが中継コントローラ30に状態量を送信する。
【0086】
このように、サブコントローラ40を直列に接続することにより、中継部20の最後段の中継コントローラ30に複数のサブコントローラ40を接続することができる。電力変換装置1に接続するサブコントローラ40の配置に自由度をもたせることができる。また、サブコントローラ40の拡張を容易に行うことができる。
【0087】
(第3の実施形態)
[中継コントローラの構成]
図11Aは、第3の実施形態の中継コントローラの構成例を示す図である。同図は、中継コントローラ30の構成例を表すブロック図である。第3の実施の形態の中継コントローラ30は、3個以上の下位通信ポート33等を備える点で、図4の中継コントローラ30と異なる。同図の中継コントローラ30は、下位通信ポート33、34、35及び36の4つの下位通信ポートを備える。下位通信ポート33、34、35及び36は、通信路54を介して他の中継コントローラ30又はサブコントローラ40に接続される。
【0088】
制御部32は、上位通信ポート31が受信したメインコントローラ10の側からの制御指令を下位通信ポート33、34、35及び36を介してサブコントローラ40の側に伝達する。また、制御部32は、下位通信ポート33、34、35及び36が受信した状態量及び状態量情報の情報圧縮を行い、圧縮後の状態量情報を上位通信ポート31に送信させる。
【0089】
このように、中継コントローラ30が3以上の下位通信ポート33等を備えることにより、より多くの下位の装置を接続することができる。
【0090】
また、本実施形態においても図8に表したように、中継部20の最も下の段の中継コントローラ30のそれぞれの下位通信ポート33等に複数のサブコントローラ40を接続することも可能である。この場合、これら下位通信ポート33等に接続されるサブコントローラ40が1つのグループを構成すると捉えることもできる。ここで、メインコントローラ10も中継コントローラ30と同じ数の通信ポート13等を備えるものとし、中継コントローラ30の下位通信ポート33等の個数をi、中継部20における中継コントローラ30の段数をjとすると、サブコントローラ40は、次式のn個のグループに分けてまとめることができる。
j-1<n≦i (1)
これは、中継コントローラ30のみがツリー接続される場合を想定したものであり、メインコントローラ10には下位通信ポート13等の何れかに中継部20の最上段の中継コントローラ30が接続されることとなる。この場合、メインコントローラ10は、1つの下位通信ポート13を備える構成にすることもできる。この場合、例えば下位通信ポート13に接続された1つの中継コントローラ30で状態量の総和を生成し、メインコントローラ10に対して中継コントローラ30の上位通信ポート31から送出する。
【0091】
式(1)を満たすn及びiを電力変換部4及びサブコントローラ40の実配置等に応じて適宜決定することにより、ツリー接続される中継コントローラ30の段数を最適化することができ、通信時間を最適な長さに短縮することができる。また、状態量の情報圧縮を中継コントローラ30のみが行う構成となるため、メインコントローラ10の処理を簡略化することができる。
【0092】
[メインコントローラの構成]
図11Bは、第3の実施形態のメインコントローラの構成例を示す図である。同図は、メインコントローラ10の構成例を表すブロック図である。第3の実施の形態のメインコントローラ10は、3以上の下位通信ポート13等を備える点で、図3の中継コントローラ30と異なる。同図のメインコントローラ10は、図11Aの中継コントローラ30と同様に、下位通信ポート13、14、15及び16の4つの下位通信ポートを備える。これらの下位通信ポート13等は、通信路52を介して中継コントローラ30に接続される。
【0093】
前述のように、同図のメインコントローラ10は、制御指令を生成する際、下位通信ポート13、14、15及び16が受信した状態量情報を加算する。これは、メインコントローラ10が状態量情報の最後の情報圧縮を行うことに相当する。この場合、メインコントローラ10及び複数の中継コントローラ30がツリー接続されると捉えることができる。この場合においても、式(1)を満たすn及びiを適宜決定することができる。例えば、図1においては、i及びnをそれぞれ2及び8にすることによりjを3(3段)にすることができる。中継コントローラ30のみで情報圧縮を行う場合と比較してツリー接続される中継コントローラ30の段数を削減することができる。
【0094】
このように、中継コントローラ30または中継コントローラ30及びメインコントローラ10の下位通信ポートの個数とサブコントローラ40のグループの個数nを適宜選択することにより、状態量の通信時間を最適化することができる。
【0095】
なお、電力変換装置1は複数の電力変換部4の出力が並列に接続された構成としたが、この例に限定されない。例えば、電力変換装置1は複数の電力変換部4の出力が直列に接続された構成であってもよい。この場合、サブコントローラ40は電力変換部4が出力する電圧値を状態量として検出し、中継コントローラ30はこれら電圧値の部分和である状態量情報を生成しながら伝達する。メインコントローラ10は制御目標である電力変換装置1の出力電圧の目標値と各電力変換部4の出力電圧の総和との差分に基づいて、制御指令である、電力変換装置1の出力電圧指令を生成する。
【0096】
また、電力変換装置1は、モータを駆動する制御装置としたが、この例に限定されない。例えば、モータ2以外の負荷に電力を供給する各種の電源装置とすることができる。さらには、太陽光発電装置や風力発電装置といった自然エネルギーを利用した発電装置と系統との間において電力のやり取りを行うパワーコンディショナとすることもできる。
【0097】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【符号の説明】
【0098】
1 電力変換装置
2 モータ
3 センサ部
4 電力変換部
10 メインコントローラ
11、31、41 上位通信ポート
12、32、42 制御部
13、14、33、34、45 下位通信ポート
20 中継部
30、30a、30b、30c、30d、30e、30f 中継コントローラ
40、40a、40b、40c、40d、40e、40f、40g、40h、40i、40j、40k、40l、40m、40n サブコントローラ
43 駆動部
44 電流検出部
51、52、52a、52b、53a、53b、54a、54b、55a、55b、55c、55d 通信路
56a、56b バス
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11A
図11B