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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】液化天然ガスの気化装置、及び気化方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/02 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
F17C9/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023508920
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2022009761
(87)【国際公開番号】W WO2022202250
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/012786
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519355493
【氏名又は名称】日揮グローバル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 信郎
(72)【発明者】
【氏名】神谷 篤志
(72)【発明者】
【氏名】山田 祥徳
(72)【発明者】
【氏名】村上 悟
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 淳司
(72)【発明者】
【氏名】平山 敏弘
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-188785(JP,A)
【文献】特開2010-267707(JP,A)
【文献】特開2011-117486(JP,A)
【文献】特開平4-217789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスの気化装置であって、
上下方向に延在するように配置され、液化天然ガスが供給される伝熱管を管径方向に複数並べて構成された熱交換パネルと、前記伝熱管に供給される液化天然ガスを気化させるため、前記熱交換パネルの両面に沿って流下するように熱媒体を供給するトラフと、を各々備えた第1のオープンラック式気化器、及び第2のオープンラック式気化器と、
前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネル、及び前記第2のオープンラック式気化器の熱交換パネルに対して並列に液化天然ガスを供給する液化天然ガス供給部と、
前記第1のオープンラック式気化器のトラフに前記熱媒体を供給する第1の熱媒体供給部と、
前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネルにて前記液化天然ガスの気化に用いられた後の前記熱媒体の少なくとも一部を回収し、前記第2のオープンラック式気化器のトラフに供給する第2の熱媒体供給部と、を備えたことを特徴とする液化天然ガスの気化装置。
【請求項2】
前記熱媒体は、海水であることを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガスの気化装置。
【請求項3】
前記熱媒体は不凍液であり、
前記不凍液は、前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネル及び前記第2のオープンラック式気化器の熱交換パネルにて前記液化天然ガスの気化に用いられた後の温度以下の凝固点を有することを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガスの気化装置。
【請求項4】
前記第1のオープンラック式気化器は、前記熱交換パネルの下方側に設けられ、当該熱交換パネルに沿って流下した前記熱媒体を受ける受槽部を備え、前記第2の熱媒体供給部は、前記受槽部内の前記熱媒体を、前記第2のオープンラック式気化器のトラフに供給することを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガスの気化装置。
【請求項5】
前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネルの下方側に、前記第2のオープンラック式気化器の熱交換パネルが配置され、前記第2の熱媒体供給部は、前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネルに沿って流下した前記熱媒体を前記第2のオープンラック式気化器のトラフに案内する案内板により構成されることを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガスの気化装置。
【請求項6】
前記第2のオープンラック式気化器の熱交換パネルの上端には、前記複数の伝熱管に接続され、気化した天然ガスを取り出すための共通配管である取り出しヘッダー部が設けられ、前記案内板は、前記取り出しヘッダー部を覆うように設けられていることを特徴とする請求項5に記載の液化天然ガスの気化装置。
【請求項7】
前記第1の熱媒体供給部は、前記第1のオープンラック式気化器のトラフと、前記第2のオープンラック式気化器のトラフとの間で、前記熱媒体の供給先を切り替え自在に構成され、前記第1の熱媒体供給部から前記第2のオープンラック式気化器のトラフに前記熱媒体が供給されている期間中は、前記第2の熱媒体供給部からの前記熱媒体の供給を停止することを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガスの気化装置。
【請求項8】
前記液化天然ガス供給部は、前記第1のオープンラック式気化器に対する液化天然ガスの供給流量が、前記第2のオープンラック式気化器に対する液化天然ガスの供給流量の2倍以上となるように、供給流量の調節を行うことを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガスの気化装置。
【請求項9】
前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネルにて前記液化天然ガスの気化に用いられた後の前記熱媒体の一部を回収する分岐流路をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の液化天然ガスの気化装置。
【請求項10】
前記分岐流路は、回収した前記熱媒体の少なくとも一部を前記第1の熱媒体供給部に還流させることを特徴とする請求項9に記載の液化天然ガスの気化装置。
【請求項11】
液化天然ガスの気化方法であって、
上下方向に延在するように配置され、液化天然ガスが供給される伝熱管を管径方向に複数並べて構成された熱交換パネルと、前記伝熱管に供給される液化天然ガスを気化させるため、前記熱交換パネルの両面に沿って流下するように熱媒体を供給するトラフと、を各々備えた第1のオープンラック式気化器、及び第2のオープンラック式気化器を用い、前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネル、及び前記第2のオープンラック式気化器の熱交換パネルに並列に液化天然ガスを供給する工程と、
前記第1のオープンラック式気化器のトラフに前記熱媒体を供給する工程と、
前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネルにて液化天然ガスの気化に用いられた後の前記熱媒体の少なくとも一部を回収し、回収された前記熱媒体を前記第2のオープンラック式気化器のトラフに供給する工程と、を含むことを特徴とする液化天然ガスの気化方法。
【請求項12】
前記熱媒体は、海水であることを特徴とする請求項11に記載の液化天然ガスの気化方法。
【請求項13】
前記熱媒体は不凍液であり、
前記不凍液は、前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネル及び前記第2のオープンラック式気化器の熱交換パネルにて前記液化天然ガスの気化に用いられた後の温度以下の凝固点を有する、
請求項11に記載の液化天然ガスの気化方法。
【請求項14】
回収された前記熱媒体を前記第2のオープンラック式気化器に供給する工程における熱媒体の回収は、前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネルの下方側に設けられ、当該熱交換パネルに沿って流下した熱媒体を受ける受槽部を用いて行うことを特徴とする請求項11に記載の液化天然ガスの気化方法。
【請求項15】
前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネルの下方側に、前記第2のオープンラック式気化器の熱交換パネルが設置されている場合に、回収された前記熱媒体を前記第2のオープンラック式気化器に供給する工程は、前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネルに沿って流下した前記熱媒体を前記第2のオープンラック式気化器のトラフに案内することにより行われることを特徴とする請求項11に記載の液化天然ガスの気化方法。
【請求項16】
前記液化天然ガスを供給する工程にて、前記第1のオープンラック式気化器に対する液化天然ガスの供給流量が、前記第2のオープンラック式気化器に対する液化天然ガスの供給流量の2倍以上となるように、供給流量の調節を行うことを特徴とする請求項11に記載の液化天然ガスの気化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガスを気化する技術に関する。
本願は、2021年3月26日に、出願されたPCT/JP2021/12786に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ガス田の井戸元にて産出した天然ガスは、冷却液化され液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)として貯蔵タンクに貯蔵されている。このため、需要先にガスを供給するにあたっては、LNGを再びガス化する必要がある。
LNGタンクから送り出されたLNGを気化する装置として、海水を利用してLNGを気化させるオープンラック式気化器を備えたLNG気化装置が知られている(例えば特許文献1)。オープンラック式気化器は、LNGが通過する多数の伝熱管をパネル状に配列し、この熱交換パネルの外面に沿って熱媒体を供給する構成となっている。熱交換パネルを介したLNGと熱媒体との熱交換により、LNGを昇温、気化させる。
【0003】
このようなオープンラック式気化器においては、LNGとの熱交換のため多くの熱媒体が必要となることから、例えば海水供給システムなどの大規模な設備が必要となることがある。そのため、オープンラック式気化器は、設備の初期費用や運転費用の低減が課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2009-52724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、熱媒体との熱交換により液化天然ガスを気化するにあたって、
熱媒体の使用量を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液化天然ガスの気化装置は、
上下方向に延在するように配置され、液化天然ガスが供給される伝熱管を管径方向に複数並べて構成された熱交換パネルと、前記伝熱管に供給される液化天然ガスを気化させるため、前記熱交換パネルの両面に沿って流下するように熱媒体を供給するトラフと、を各々備えた第1のオープンラック式気化器、及び第2のオープンラック式気化器と、
前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネル、及び前記第2のオープンラック式気化器の熱交換パネルに対して並列に液化天然ガスを供給する液化天然ガス供給部と、
前記第1のオープンラック式気化器のトラフに前記熱媒体を供給する第1の熱媒体供給部と、
前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネルにて前記液化天然ガスの気化に用いられた後の前記熱媒体の少なくとも一部を回収し、前記第2のオープンラック式気化器のトラフに供給する第2の熱媒体供給部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
前記気化装置は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記熱媒体は、海水であること。
(b)前記熱媒体は不凍液であり、前記不凍液は、前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネル及び前記第2のオープンラック式気化器の熱交換パネルにて前記液化天然ガスの気化に用いられた後の温度以下の凝固点を有すること。
(c)前記第1のオープンラック式気化器は、前記熱交換パネルの下方側に設けられ、当該熱交換パネルに沿って流下した前記熱媒体を受ける受槽部を備え、前記第2の熱媒体供給部は、前記受槽部内の前記熱媒体を、前記第2のオープンラック式気化器のトラフに供給すること。
(d)前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネルの下方側に、前記第2のオープンラック式気化器の熱交換パネルが配置され、前記第2の熱媒体供給部は、前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネルに沿って流下した熱媒体を前記第2のオープンラック式気化器のトラフに案内する案内板により構成されること。
(e)前記第2のオープンラック式気化器の熱交換パネルの上端には、前記複数の伝熱管に接続され、気化した天然ガスを取り出すための共通配管である取り出しヘッダー部が設けられ、前記案内板は、前記取り出しヘッダー部を覆うように設けられていること。
(f)前記第1の熱媒体供給部は、前記第1のオープンラック式気化器のトラフと、前記第2のオープンラック式気化器のトラフとの間で、前記熱媒体の供給先を切り替え自在に構成され、前記第1の熱媒体供給部から前記第2のオープンラック式気化器のトラフに前記熱媒体が供給されている期間中は、前記第2の熱媒体供給部からの熱媒体の供給を停止すること。
(g)前記液化天然ガス供給部は、前記第1のオープンラック式気化器に対する液化天然ガスの供給流量が、前記第2のオープンラック式気化器に対する液化天然ガスの供給流量の2倍以上となるように、供給流量の調節を行うこと。
(h)前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネルにて前記液化天然ガスの気化に用いられた後の前記熱媒体の一部を回収する分岐流路をさらに備えること。
(i)前記分岐流路は、回収した前記熱媒体の少なくとも一部を前記第1の熱媒体供給部に還流させること。
【0008】
本発明の液化天然ガスの気化方法は、
上下方向に延在するように配置され、液化天然ガスが供給される伝熱管を管径方向に複数並べて構成された熱交換パネルと、前記伝熱管に供給される液化天然ガスを気化させるため、前記熱交換パネルの両面に沿って流下するように熱媒体を供給するトラフと、を各々備えた第1のオープンラック式気化器、及び第2のオープンラック式気化器を用い、前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネル、及び前記第2のオープンラック式気化器の熱交換パネルに並列に液化天然ガスを供給する工程と、
前記第1のオープンラック式気化器のトラフに前記熱媒体を供給する工程と、前記第1のオープンラック式気化器の熱交換パネルにて液化天然ガスの気化に用いられた後の前記熱媒体の少なくとも一部を回収し、回収された前記熱媒体を前記第2のオープンラック式気化器のトラフに供給する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液化天然ガスの気化装置は、第1のオープンラック式気化器にて液化天然ガスの気化に用いられた後の前記熱媒体を回収し、第2のオープンラック式気化器のトラフに供給するので、熱媒体の供給量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】オープンラック式気化器の斜視図である。
図2】オープンラック式気化器の側面図である。
図3】オープンラック式気化器を用いたLNGの気化を説明する模式図である。
図4】第1の実施の形態に係る気化装置を示す構成図である。
図5】第2の実施の形態に係る気化装置を示す構成図である。
図6】第2の実施の形態に係る気化装置における熱媒体の流れを示す模式図である。
図7】第2の実施の形態に係る気化装置の他の例を示す構成図である。
図8】第3の実施の形態に係る気化装置の他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
初めに後述する各実施の形態に係るオープンラック式気化器の構成について説明する。本例のオープンラック式気化器は、例えば海洋からくみ上げられる海水を熱媒体として用い、海水とLNGとの熱交換によりLNGを昇温して気化する。図1図2に示すようにオープンラック式気化器1は、LNGが供給されると共に、上下方向に延在するように配置された伝熱管11を管径方向に複数並べて構成された熱交換パネル10を備えている。図示の便宜上、図1において、各熱交換パネル10は、個別の伝熱管11の記載を省略し、板状に簡略表記してある。
【0012】
オープンラック式気化器1には、複数の熱交換パネル10が設けられている。これらの熱交換パネル10は、その厚さ方向に沿って並べられ、互いに隙間を空けて配置されている。各熱交換パネル10の伝熱管11の下端には、LNGを供給するための供給ヘッダー部2が設けられている。供給ヘッダー部2は、各熱交換パネル10の下端部に沿って設けられた配管により構成され、その管壁に対して各伝熱管11の下端部が接続された複数の分岐管12と、これらの分岐管12の上流側の端部に接続された共通のマニホールド13とを備える。マニホールド13には、LNG供給管14が接続され、このLNG供給管14より供給されたLNGが、マニホールド13及び分岐管12を介して各熱交換パネル10の伝熱管11に分配される。
【0013】
また各熱交換パネル10の伝熱管11の上端には、気化したNGを取り出すためのアルミ製の取り出しヘッダー部3が設けられている。取り出しヘッダー部3は、各熱交換パネル10の上端部に沿って設けられた配管により構成され、その管壁に対して各伝熱管11の上端部が接続された複数の分岐管15と、これらの分岐管15の下流側の端部に接続された共通のマニホールド16とを備える。マニホールド16には、LNG取り出し管17が接続され、各熱交換パネル10の伝熱管11から流出したNGは、取り出しヘッダー部3を介してLNG取り出し管17へと合流する。
【0014】
また熱交換パネル10の上部側には、熱媒体である海水を一時的に貯めるトラフ18が設けられている。トラフ18は、上面が開放され、伝熱管11の配列方向に伸びる樋状に形成されている。複数の熱交換パネル10の並び方向に沿って見たとき、各トラフ18はこれらの熱交換パネル10と交互に配置されている。即ち各熱交換パネル10からみると、その上部側の両面にトラフ18が設置されていることになる。
【0015】
上述の構成によれば、熱交換パネル10の側面と、トラフ18の側壁面とは、互いに対向して配置された状態となっている。これら互いに対向して配置された熱交換パネル10の側面とトラフ18の側壁面との間には、トラフ18から流出した海水を流下させるための隙間が形成されている。なお熱交換パネル10の並び方向に沿って見て、両端に配置されたトラフ18は、熱交換パネル10が配置されていない面に向けて海水がこぼれないように、熱交換パネル10の側面と対向していない側壁の上端位置が高くなっている。
【0016】
各トラフ18には、各々海水を供給するための海水供給ヘッダー部4(以下、熱媒体供給ヘッダー部ともいう)が接続されている。海水供給ヘッダー部4は、下流側の端部が各トラフ18の底部に接続された複数の分配配管19と、これら分配配管19の上流側の端部に接続された共通のマニホールド20とを備える。マニホールド20には、供給配管22が接続され、この供給配管22より供給された海水が、マニホールド20及び分配配管19を介して各トラフ18に分配される。一方、熱交換パネル10の下方側には、複数の熱交換パネル10の並び方向に亘って設けられた共通の受槽部であるプール21が設けられている。プール21には、プール21に溜まった海水を排水するための排水管26が接続されている。
【0017】
上述の構成を備えるオープンラック式気化器1に対しては、供給ヘッダー部2の分岐管12を介して、各熱交換パネル10を構成する伝熱管11の下端側から、例えば-160℃のLNGが供給される(図3)。伝熱管11に供給されたLNGは、伝熱管11内の下部側に進入する。一方トラフ18には、例えば20℃の海水が供給される。トラフ18に供給された海水は、開放されたトラフ18の上面から越流し、トラフ18と熱交換パネル10との隙間に流れ込む。そして隙間に流れ込んだ海水は、熱交換パネル10に沿って流下し、熱交換パネル10の下方に設けられたプール21に流れ込む。既述のようにトラフ18は、熱交換パネル10の上部の両面側に設けられていることから熱交換パネル10の両面に沿って海水が流れる。
【0018】
この熱交換パネル10においては、その両面を流下する海水(20℃)と、熱交換パネル10の下部側に供給されたLNG(-160℃)との間で熱交換が行われる。これにより、LNGが海水により温められて気化し、NGとなって各伝熱管11内を上昇する。一方、海水はLNGにより冷却されて温度が低下すると共に、プール21へと落下する。気化したNGは、伝熱管11の上端側から取り出しヘッダー部3を介して取り出される。また熱交換後の温度低下した海水は、プール21にて回収され外部へ排出される。
【0019】
ここで一般に、オープンラック式気化器1は、熱媒体である海水の顕熱を用いて-160℃のLNGを気化させるところ、多量の海水を消費する。そこで、オープンラック式気化器1を利用するLNGの気化装置においては、海水を取水し、オープンラック式気化器1に供給する設備や、海水の殺菌を行う付帯設備が大型化する傾向がある。このため、設備の初期費用や運転費用の増大が問題となり、これらの費用の低減が課題となっている。
【0020】
一方、熱媒体として用いた後の海水は温度が低下しているため、オープンラック式気化器1にて使用した後の海水を再び海に排出する場合には、その下限温度に制限がある場合もある。このため、海水の顕熱を十分に利用し、さらに海水の排出温度を下げる場合と比較すると、LNGの気化に必要な熱量を確保するためのオープンラック式気化器1への海水の供給流量は多くなる。他方で、LNGの冷却液化時には大きなエネルギーが費やされているので、このLNGを気化の前段で各種の冷却用に用いたり、気化装置から排出される低温の海水を有効に利用するさまざまな方法が検討されている。
【0021】
以上に説明した課題を踏まえ、以下に説明する実施の形態に係るLNGの気化装置100、101、102、103においては、従来よりも海水の排水温度を低下させる。温度の低下した海水は、後述するように冷熱利用設備にて利用してもよいし、一旦、海水タンクに貯留し、環境と同程度の温度になってから海に排出してもよい。この結果、海水の顕熱を十分に利用することが可能となり、海水の使用量を削減することが可能な構成となっている。
以下、図4図8を参照しながら各実施の形態に係るLNGの気化装置100、101、102、103について説明する。
【0022】
図4に第1の実施の形態に係る気化装置100を示す。この気化装置100は、既述のオープンラック式気化器1を2基備えている。以下2基のオープンラック式気化器1を夫々第1のオープンラック式気化器(第1の気化器)1A、第2のオープンラック式気化器(第2の気化器)1Bと示す。また第1の気化器1A、第2の気化器1Bの各部に追加の識別符号A、Bを付し区別している。
【0023】
第1の実施の形態に係る気化装置100においては、例えばLNGタンクに貯蔵されていたLNGが、LNG供給管14を介して第1の気化器1A、第2の気化器1Bの熱交換パネル10A、10Bに対して並列に供給される。LNG供給管14には、流量調節部(不図示)が設けられ、熱交換パネル10A、10Bに供給するLNGの流量を調節できるように構成されている。LNG供給管14及び各気化器1A、1Bの供給ヘッダー部2A、2Bは、本例の液化天然ガス供給部に相当する。
【0024】
さらに第1の気化器1Aのトラフ18Aに接続される海水供給ヘッダー部4Aには、熱媒体としての海水を供給するための供給配管22Aが設けられている。本実施形態では、熱媒体として海水を用いている。熱媒体は、海水に限らず他のものが用いられてもよい。海水は、例えば不図示の取水設備にて海洋から取水され、海水殺菌設備にて殺菌が行われる。そして殺菌処理が行われた海水がポンプ23Aにより海水供給ヘッダー部4Aへと供給される。図4中の符号23Aは、第1の気化器1Aのトラフ18Aが配置されている高さ位置まで、海水殺菌設備にて殺菌処理された海水を供給するためのポンプを指している。
【0025】
一方、本例の気化装置100においては、第2の気化器1Bのトラフ18Bに対しては、取水設備にて取水された直後の海水ではなく、第1の気化器1Aにて、LNGの気化に用いられた後の海水が供給される構成となっている。
即ち、第1の気化器1Aにて使用された海水はプール21Aにより回収され、排水管26Aを介して、第2の気化器1B側の供給配管22Bに送られる。この供給配管22Bは、第2の気化器1Bのトラフ18Bに海水を供給する海水供給ヘッダー部4Bに接続されている。ここで符号23Bは、第2の気化器1Bのトラフ18Bが配置されている高さ位置まで、排水管26Aを介して排出される海水を供給するためのポンプを指している。そして第2の気化器1Bのプール21Bにて回収される海水は、排水管26Bを介して温度が低下した海水を利用する、冷熱利用設備に供給される。供給配管22A、ポンプ23A、海水供給ヘッダー部4Aは、本例の第1の熱媒体供給部に相当する。また供給配管22B、ポンプ23B、海水供給ヘッダー部4Bは、本例の第2の熱媒体供給部に相当する。
【0026】
この気化装置100における熱バランスの一例を説明する。例えば温度-160℃のLNGを40トン/時の流量で気化するにあたって、第1の気化器1Aに対しては28トン/時の流量でLNGを供給する。第1の気化器1Aでは、前記28トン/時のLNGが20℃の海水により昇温され、例えば0℃のNGとして取り出される。また熱交換を行った海水は、例えば8℃まで温度が低下した後、プール21Aに流れ落ちる。
【0027】
また第2の気化器1Bに対しては、12トン/時の流量でLNGを供給する。第2の気化器1Bでは、前記12トン/時のLNGが8℃の海水により昇温され、例えば0℃のNGとして取り出される。
【0028】
このように第1の気化器1AにてLNGの加熱に用いた海水を、第2の気化器1BにおけるLNGの加熱を再利用すると、第2の気化器1B側のプール21Bに流れ落ちる海水の温度は、2℃まで低下する。そして第2の気化器1Bにて熱交換を行った海水は、プール21Bに集められた後、海水の冷熱利用設備へと供給される。
【0029】
このとき後述の実施例に計算結果を示すように、本例の第1の気化器1Aは、供給温度が20℃の海水を用い、排出温度が8℃となるように熱交換を行って28トン/時のNG(0℃)を気化させるためには、480トン/時の海水を消費する。次いで第2の気化器1Bでは、供給温度が8℃、供給流量が480トン/時の海水を用い、排出温度が2℃となるように熱交換を行うと、12トン/時のNG(0℃)を気化させることができる。従って480トン/時の海水により、第1の気化器1Aと、第2の気化器1Bとの合計で40トン/時のNGを気化させることができる。
【0030】
上述のように、第2の気化器1Bは、第1の気化器1AにてLNGの気化に用いられた後の海水を熱媒体とするので、第1の気化器1Aと比較してLNGの気化に利用可能な熱量が少ない。このため、第2の気化器1Bにて気化させることが可能なLNGの流量は、第1の気化器1Aにて気化させることが可能なLNGの流量よりも少なくなる。
【0031】
そこで、液化天然ガス供給部を構成するLNG供給管14からは、第1の気化器1Aの供給ヘッダー部2AへのLNGの供給流量が、第2の気化器1Bの供給ヘッダー部2BへのLNGの供給流量の1.5倍以上、好適には2~4倍の範囲内の値となるように、供給流量の調節が行われる。供給流量の調節は、各供給ヘッダー部2A、2Bの入口側に設けられた不図示の流量調節弁を用いて実施する場合を例示することができる。
【0032】
一方で後述の比較例に計算結果を示すように1基のオープンラック式気化器を用いた場合には、40トン/時のNG(0℃)を気化させるためには、720トン/時の海水が必要となる。このように、1基のオープンラック式気化器を用いる場合と比較して、本実施に形態に係る気化装置100では、海水の消費量を大幅に抑制すると共に、低温の海水を得ることができる。
【0033】
そして海水の使用量を減らすことで、海水取水設備、海水殺菌設備に加え、ポンプ23A、23Bの本体やその動力を供給する電源・配電設備、送水関連の管理監視用計器、送排水用の配管やバルブ等の設備の小型化、運転費用の削減を図ることができる。
【0034】
また本発明に係る気化装置100では、LNGの気化に用いて温度が低下した冷海水を冷熱利用設備へと供給する。冷熱利用の構成例としては、温度差発電におけるタービンの駆動流体の冷却、フラッシュ法を利用した海水淡水化における蒸気の冷却、地域冷房、植物工場内の空気や土壌の冷却、魚介の養殖水の冷却における冷熱源として、気化装置100にて得られた冷海水を用いる場合を例示することができる。例えば温度差発電設備において用いる冷熱源は、温度が低ければ低いほどよい。この点、本実施の形態に係る気化装置100は、従来よりも温度の低い海水を取得することができるため有効である。
【0035】
またここで、LNGを気化させるために用いられる熱媒体は、海水に限定されるものではない。例えば第1の気化器1A、第2の気化器1Bに対し、熱媒体として工業用水を供給してもよい。
【0036】
さらに第1の実施の形態に係る気化装置100において、第1の気化器1Aが配置される高さ位置が、第2の気化器1Bが配置される高さ位置よりも高くなるように機器の設置を行ってもよい。この構成によれば、第1の気化器1A側のプール21Aと、第2の気化器1B側の第2のトラフ18Bとの高低差が小さくなり、ポンプ23Bの負荷を小さくすることができる。
【0037】
さらには、第1の気化器1Aのプール21Aが、第2の気化器1Bのトラフ18Bよりも高い位置に配置されるように機器の設置を行ってもよい。このように構成することで、第1の気化器1Aのプール21A内の海水を重力により第2の気化器1Bのトラフ18Bに供給することができる。この場合には、第1の気化器1Aのプール21Aと第2の気化器1Bのトラフ18Bとの間のポンプ23Bの設置を省略することができる。
【0038】
[第2の実施の形態]
続いて第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態に係る気化装置101は、図5図6に示すように第1の気化器1Aの熱交換パネル10Aの下方側に、第2の気化器1Bの熱交換パネル10Bが配置されている。
【0039】
そして、第1の気化器1Aに供給され熱交換パネル10Aの両面に沿って流下した熱媒体としての海水が、熱交換パネル10Aの下方に流下した後、第2の気化器1Bのトラフ18Bに流れ込むように構成されている。本実施形態では、熱媒体として海水を用いている。熱媒体は、海水に限らず他のものが用いられてもよい。さらに本例では、トラフ18Bに向けて海水を案内する案内板25が設けられている。この案内板25は、熱交換パネル10Aから流下する海水が取り出しヘッダー部3に接触することを避ける機能を持たせてもよい、この場合には案内板25は、熱交換パネル10Bごとに設けられ、分岐管12Bに沿って延在する屋根状に構成され、取り出しヘッダー部3の分岐管12Bを覆うように設けられている。
熱交換パネル10Aを流れた海水は、案内板25を流れて、第2の気化器1Bのトラフ18Bに流れ込む。従って第2の実施の形態では、案内板25が第2の熱媒体供給部に相当する。
【0040】
上述の構成の気化装置101においては、第1の気化器1Aの熱交換パネル10Aに沿って流れた海水が、第2の気化器1Bのトラフ18に流れ込む。そのため図4を用いて説明した第1の実施形態に係る気化装置100と比較して、第1の気化器1Aの熱交換パネル10Aを流下した海水を受けるプール21A内の海水を第2の気化器1Bのトラフ18Bに供給する供給配管22B、海水供給ヘッダー部4B、及びポンプ23Bの設置を省略することができる。また第2の実施の形態において案内板25を設けることで、熱交換パネル10Aを流下した海水が、取り出しヘッダー部3Bに降りかかることを避け、取り出しヘッダー部3Bの劣化を抑制することができる。
【0041】
また、図7に示す気化装置102は、図5図6を用いて説明した第2の実施の形態に係る気化装置101についての他の構成例を示している。この気化装置102においては、第2の気化器1Bの各トラフ18Bに海水を供給する海水供給ヘッダー部4Cを設け、海水を供給するための供給配管22Aを分岐させて当該海水供給ヘッダー部4Cにも接続した構成となっている。また、供給配管22Aからの海水の供給先は、不図示の開閉弁により、第1の気化器1A側の海水供給ヘッダー部4Aと、第2の気化器1B側の海水供給ヘッダー部4Cとの間で自在に切り替えることができる。
【0042】
上述の構成の気化装置102によれば、必要に応じて海水の供給先を第1の気化器1Aのトラフ18Aと、第2の気化器1Bのトラフ18Bとの間で切り替えることができる。当該構成によれば、通常時には、第1の気化器1Aのトラフ18Aに海水を供給し、図5図6を用いて説明した例と同様の作用により、2基の気化器1A、1Bを用いてLNGを気化させる。一方、LNGの供給流量が少ない場合には、上段側の第1の気化器1AへのLNGの供給を停止すると共に、第2の気化器1B側のトラフ18Bに海水を供給し、下方側の第2の気化器1Bのみを用いてLNGの気化を行う。
【0043】
なお、供給配管22Aからの海水の供給先を第1の気化器1Aと第2の気化器1Bとの間で切り替え自在とする構成は、図7に示す両気化器1A、1Bを上下に配置した構成の気化装置102に適用する場合に限定されない。図4に示す気化装置100においても、第1の気化器1Aの海水供給ヘッダー部4Aと、第2の気化器1Bの海水供給ヘッダー部4Bとの間で供給配管22Aからの海水の供給先を切り替え自在とする構成としてもよい。この場合にも、第1の気化器1AへのLNGの供給を停止すると共に、第2の気化器1B側のトラフ18Bに海水を供給し、下方側の第2の気化器1Bのみを用いてLNGの気化を行うことができる。
【0044】
以上、図5図7を用いて説明した各実施の形態の気化装置101、102においても、図4を用いて説明した第1の実施の形態に係る気化装置100と同様に、海水の使用量を低減し、海水取水設備などの併設設備の小型化、運転費用の削減を図ることができる。また、従来のLNGの気化装置よりも低温の海水を得ることができるので、各種の冷熱利用設備への冷熱の供給にも有利である。また、海水に替えて工業用水を用いてLNGの気化を行ってもよい点についても第1の実施の形態に係る気化装置100と同様である。
【0045】
本発明の実施の形態に係る気化装置の効果を検証するため、図4に示した気化装置100を用いてLNGの気化を行ったときに必要な海水の供給流量、及び排水として排出される海水の温度をシミュレーションにより求めた。また第1の気化器1Aのみを用いてLNGの気化を行った例を比較例とし、同様に気化を行ったときに必要な海水の量及び排水として排出される海水の温度をシミュレーションにより求めた。
【0046】
なお実施例及び比較例において、-160℃、40トン/時の供給流量でLNGの処理を行い、0℃のNGを得る前提とした。実施例では、第1の気化器1Aにて28トン/時、第2の気化器1Bにて12トン/時のLNGの処理を行った。なお熱交換前の海水は20℃である。
【0047】
実施例のシミュレーション結果によると、排出される海水の温度を2℃とすると、LNGの気化に海水の消費量は、約480トン/時となった。一方、比較例のシミュレーション結果によると、上述の供給流量のLNGを気化させるためには、約720トン/時の海水が必要であった。従って本実施の形態に係る気化装置100によれば、LNGの液化に要する海水の消費量を抑制し、かつ冷熱利用設備への供給に適した低温の海水を得ることができる。
【0048】
熱媒体は、海水だけでなく、不凍液が用いられてもよい。不凍液は、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、メチルアルコール、イソプロパノール等の水溶液であってもよい。不凍液は、例えば、プロピレングリコールの場合、濃度が30%から90%程度の範囲において調整される。プロピレングリコールの凝固点は、この濃度の範囲において-7℃から-50℃であり、海水の凝固点(-1.8℃)に比して低い。そのため、熱媒体として海水に比して低い凝固点である不凍液を用いると、第1の気化器1A及び第2の気化器1Bに流通させた後の不凍液の温度を海水に比して低い温度に設定可能である。従って、熱媒体として不凍液を用いると、LNGの気化に必要な不凍液の流通量を熱媒体に海水を用いた場合に比して抑制することができ、かつ熱媒体に海水を用いた場合に比して更に低温の冷熱利用設備へ冷熱を供給することができる。
【0049】
[第3実施形態]
図8に示されるように、気化装置103は、LNGを気化させた際に生じた熱を冷熱利用設備において利用するために熱媒体を循環させてもよい。気化装置103は、第1のオープンラック式気化器(第1の気化器1A)の熱媒体の流路の下流側と第2のオープンラック式気化器(第2の気化器1B)の熱媒体の流路の上流側とを接続する流路(排水管26A)から分岐された分岐流路27を備えている。
熱媒体は、例えば、海水に比して凝固点が低い不凍液が用いられる。不凍液は、第1のオープンラック式気化器及び第2のオープンラック式気化器の熱交換パネルにてLNGの気化に用いられた後の温度以下の凝固点を有する。熱媒体は、第1の気化器1A及び第2の気化器1Bに流通するLNGの流量に応じて第1の気化器1A及び第2の気化器1Bの表面において凍結しないように流量が調整される。これにより、第1の気化器1A及び第2の気化器1Bにおいて熱交換した後の熱媒体の温度を熱媒体に海水を用いた場合に比して低くすることができ、第1の気化器1A及び第2の気化器1Bに流通させる熱媒体の流量を熱媒体に海水を用いた場合に比して少なくすることができる。
【0050】
分岐流路27は、例えば、プール21Aにおいて回収した熱媒体の少なくとも一部を分流した熱媒体Qを回収する。分岐流路27は、例えば、後述するように冷熱利用設備として氷スラリーを冷却する畜冷熱槽(不図示)に接続されていてもよい。
【0051】
分岐流路27は、プール21Aにおいて回収した熱媒体の少なくとも一部を分流した熱媒体Qを第1の熱媒体供給部(供給配管22A、ポンプ23A、熱媒体供給ヘッダー部4A)に還流させてもよい。この場合、分岐流路27と第1の熱媒体供給部との間には、例えば、熱媒体を加熱する熱交換器(不図示)が設けられていてもよい。熱交換器は、例えば、発電機等や空調装置等の熱源から排出される熱を利用するものであってもよい。熱交換器により加熱された熱媒体は、第1の熱媒体供給部に還流され、再びLNGの気化に用いられる。この場合、分岐流路27と熱交換器との間には、畜冷熱槽が設けられていてもよい。
【0052】
排水管26Bは、例えば、上記の畜冷熱槽(不図示)に接続されていてもよく、プール21Bにおいて回収された熱媒体Pと熱交換し、氷スラリーを冷却してもよい。また、排水管26Bは、熱媒体Pを第1の熱媒体供給部(供給配管22A、ポンプ23A、熱媒体供給ヘッダー部4A)に還流させてもよい。この場合、排水管26Bと第2の熱媒体供給部との間には、上記の畜冷熱槽が設けられていてもよい。
【0053】
第3実施形態の気化装置103によれば、熱媒体に不凍液を用いることで、LNGを気化させた後の不凍液の温度を熱媒体に海水を用いた場合に比して低く設定することができ、第1の気化器1A及び第2の気化器1Bに流通させる熱媒体の流量を熱媒体に海水を用いた場合に比して少なくすることができる。気化装置103によれば、熱媒体に海水を用いた場合に比して更に低温の冷熱利用設備へ冷熱を供給することができる。気化装置103によれば、プール21Aに接続された排水管26Aから分岐流路27を通じて回収した熱媒体Qや、プール21Bにおいて回収された熱媒体Pを用いて氷スラリーが貯留された畜冷熱槽と熱交換し、氷スラリーを冷却することができる。
【0054】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。例えば、第1の気化器1A及び第2の気化器1Bにおいて、LNG供給管14とマニホールド13及び分岐管12を熱交換パネル10の上部に設置し、取り出しヘッダー部3及びマニホールド16、LNG取り出し管17を下部に配置することで、LNGが熱交換パネル10内部を流下するように供給されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1A、1B 第1、第2の気化器
2 供給ヘッダー部
4 海水供給ヘッダー部(熱媒体供給ヘッダー部)
10 熱交換パネル
11 伝熱管
18 トラフ
27 分岐流路
100、101、102、103 気化装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8