(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】音響装置、音響装置の制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
H04R3/00
(21)【出願番号】P 2023516999
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2021017188
(87)【国際公開番号】W WO2022230171
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】315017409
【氏名又は名称】AlphaTheta株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 実
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-204907(JP,A)
【文献】特開2014-178535(JP,A)
【文献】特開2012-129977(JP,A)
【文献】特表2016-519448(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0259326(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくも2の楽曲をミキシングする音響装置であって、
複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出する検出部と、
前記第一の楽曲又は前記第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを徐々に変化させる処理と、
前記ミキシング開始時又は前記ミキシング開始時より所定の時間経過後に、前記第一の楽曲及び前記第二の楽曲に含まれる前記第一のパートのテンポを同期させる処理とを実行する再生制御部と
を備える音響装置。
【請求項2】
少なくも2の楽曲をミキシングする音響装置であって、
複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出する検出部と、
前記第一の楽曲及び前記第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを徐々に変化させる処理と、
前記ミキシング開始時又は前記ミキシング開始時より所定の時間経過後に、前記第一の楽曲及び前記第二の楽曲に含まれる前記第一のパートのテンポを同期させる処理とを実行する再生制御部と
を備える音響装置。
【請求項3】
前記再生制御部は、前記第一の楽曲及び前記第二の楽曲に含まれる前記第一のパートのテンポを同期させた後に、前記第一の楽曲又は前記第二の楽曲の前記第一のパートのテンポを、原曲のテンポに徐々に推移させる処理を実行する、請求項1又は請求項2に記載の音響装置。
【請求項4】
前記再生制御部は、前記第一の楽曲又は前記第二の楽曲の前記第一のパートのテンポを、原曲のテンポに徐々に推移させた後に、前記第一の楽曲又は前記第二の楽曲において、前記第一のパートと前記第一のパートとは異なる第二のパートとの再生位置を整合させる処理を行う、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項5】
クロスフェーダーをさらに備え、
前記再生制御部は、前記クロスフェーダーの一方の端部から、他方の端部方向へ移動を開始した時点を前記ミキシング開始時とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項6】
前記再生制御部は、前記ミキシング開始時又は前記ミキシング開始時より所定の時間経過後を含む所定の区間において、前記第一の楽曲に含まれる第二のパートを前記第一の楽曲の原曲のテンポで再生させ、前記第二の楽曲に含まれる前記第二のパートを前記第二の楽曲の原曲のテンポで再生させるとともに、前記第一の楽曲の前記第二のパートと、前記第二の楽曲の前記第二のパートとを切り替える、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項7】
前記第一のパートは、ドラム音のうち、少なくともバスドラム音に対応するパートである、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の音響装置。
【請求項8】
少なくも2の楽曲をミキシングする音響装置の制御方法であって、
複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出するステップと、
前記第一の楽曲又は前記第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを徐々に変化させるステップと、
前記ミキシング開始時又は前記ミキシング開始時より所定の時間経過後に、前記第一の楽曲及び前記第二の楽曲に含まれる前記第一のパートのテンポを同期させるステップと
を含む音響装置の制御方法。
【請求項9】
少なくも2の楽曲をミキシングする音響装置の制御方法であって、
複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出するステップと、
前記第一の楽曲及び前記第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを徐々に変化させるステップと、
前記ミキシング開始時又は前記ミキシング開始時より所定の時間経過後に、前記第一の楽曲及び前記第二の楽曲に含まれる前記第一のパートのテンポを同期させるステップと
を含む音響装置の制御方法。
【請求項10】
少なくも2の楽曲をミキシングする音響装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出する検出部と、
前記第一の楽曲又は前記第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを徐々に変化させる処理と、
前記ミキシング開始時又は前記ミキシング開始時より所定の時間経過後に、前記第一の楽曲及び前記第二の楽曲に含まれる前記第一のパートのテンポを同期させる処理とを実行する再生制御部とを備える音響装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項11】
少なくも2の楽曲をミキシングする音響装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出する検出部と、
前記第一の楽曲及び前記第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを徐々に変化させる処理と、
前記ミキシング開始時又は前記ミキシング開始時より所定の時間経過後に、前記第一の楽曲及び前記第二の楽曲に含まれる前記第一のパートのテンポを同期させる処理とを実行する再生制御部とを備える音響装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響装置、音響装置の制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DJコントローラー等のDJ機器は複数のデッキを備え、それぞれのデッキで楽曲を再生しつつ、デッキ間の音声出力を切り替えることにより、再生中の楽曲から他の楽曲への切り替えが行われている。DJ機器における楽曲の切り替えに際しては、DJ機器に設けられた複数のデッキの音量を調節するクロスフェーダーが用いられるが、自然な切り替えを行うためには巧みなユーザー操作が必要となる。
そこで、楽曲の切り替えを支援するための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1の音響機器では、周波数帯域に着目して出力レベルを調整することにより、楽曲をミキシングする際の違和感の発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した楽曲の切り替えに際しては、切り替え前後の楽曲のテンポが合っていない場合、BPMの連続性が失われ、ユーザーに違和感や不快感を与えるという問題がある。また、切り替え前後の楽曲のテンポを合わせるためにBPMを変更した場合、特にメロディーラインにおいて原曲と再生音との乖離が大きくなり、ユーザーに違和感や不快感を与えるという問題がある。
そこで、本発明は、ユーザーに違和感や不快感を与えることなく、楽曲を切り替えるミキシングにおいて好ましい切り替え動作を行うことが可能な音響装置、音響装置の制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]少なくも2の楽曲をミキシングする音響装置であって、複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出する検出部と、第一の楽曲又は第二の楽曲に含まれる第一のパート のテンポを徐々に変化させる処理と、ミキシング開始時又はミキシング開始時より所定の時間経過後に、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを同期させる処理とを実行する再生制御部とを備える音響装置。
[2]少なくも2の楽曲をミキシングする音響装置であって、複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出する検出部と、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを徐々に変化させる処理と、ミキシング開始時又はミキシング開始時より所定の時間経過後に、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを同期させる処理とを実行する再生制御部とを備える音響装置。
[3]再生制御部は、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを同期させた後に、第一の楽曲又は第二の楽曲の第一のパートのテンポを、原曲のテンポに徐々に推移させる処理を実行する、[1]又は[2]に記載の音響装置。
[4]再生制御部は、第一の楽曲又は第二の楽曲の第一のパートのテンポを、原曲のテンポに徐々に推移させた後に、第一の楽曲又は第二の楽曲において、第一のパートと第一のパートとは異なる第二のパートとの再生位置を整合させる処理を行う、[1]から[3]のいずれかに記載の音響装置。
[5]クロスフェーダーをさらに備え、再生制御部は、クロスフェーダーの一方の端部から、他方の端部方向へ移動を開始した時点をミキシング開始時とする、[1]から[4]のいずれかに記載の音響装置。
[6]再生制御部は、ミキシング開始時又はミキシング開始時より所定の時間経過後を含む所定の区間において、第一の楽曲に含まれる第二のパートを第一の楽曲の原曲のテンポで再生させ、第二の楽曲に含まれる第二のパートを第二の楽曲の原曲のテンポで再生させるとともに、第一の楽曲の第二のパートと、第二の楽曲の第二のパートとを切り替える、[1]から[5]のいずれかに記載の音響装置。
[7]第一のパートは、ドラム音のうち、少なくともバスドラム音に対応するパートである、[1]から[6]に記載の音響装置。
[8]少なくも2の楽曲をミキシングする音響装置の制御方法であって、複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出するステップと、第一の楽曲又は第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを徐々に変化させるステップと、ミキシング開始時又はミキシング開始時より所定の時間経過後に、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを同期させるステップとを含む音響装置の制御方法。
[9]少なくも2の楽曲をミキシングする音響装置の制御方法であって、複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出するステップと、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを徐々に変化させるステップと、ミキシング開始時又はミキシング開始時より所定の時間経過後に、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを同期させるステップとを含む音響装置の制御方法。
[10]少なくも2の楽曲をミキシングする音響装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出する検出部と、第一の楽曲又は第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを徐々に変化させる処理と、ミキシング開始時又はミキシング開始時より所定の時間経過後に、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを同期させる処理とを実行する再生制御部とを備える音響装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
[11]少なくも2の楽曲をミキシングする音響装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出する検出部と、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを徐々に変化させる処理と、ミキシング開始時又はミキシング開始時より所定の時間経過後に、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれる第一のパートのテンポを同期させる処理とを実行する再生制御部とを備える音響装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の第1の実施形態における音響装置を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る音響装置の概略的な機能構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における楽曲の切り替え処理について説明する模式図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態における楽曲の切り替え処理について説明する別の模式図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態における楽曲の切り替え処理について説明する別の模式図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る音響装置の制御方法を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る音響装置の制御方法を示す別のフローチャートである。
【
図8】本発明の第2の実施形態における楽曲の切り替え処理について説明する模式図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る音響装置の制御方法を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第3の実施形態における楽曲の切り替え処理について説明する模式図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態に係る音響装置の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における音響装置を示す模式図である。
第1の実施形態に係る音響装置1は、楽曲を再生する2つのプレイヤー2Aおよび2Bと、プレイヤー2Aおよび2Bを制御するミキサー3と、表示部4とが一体化したDJシステムである。具体的に、音響装置1は、ユーザーが操作をすることによって音響再生装置および音響再生制御装置として機能し、楽曲を再生するとともに、再生中の楽曲に対して各種エフェクトを適用する。エフェクトには、例えばディレイ、エコー、リバーブ、またはループなどと呼ばれるエフェクトを楽曲に適用してエフェクト音を再生するエフェクト、および原音を加工して再生するエフェクト等が含まれる。
【0009】
音響装置1は、
図1に示すように、プレイヤー2Aおよび2Bにそれぞれ設けられた操作部21Aおよび21Bと、ミキサー3に設けられた操作部31とを備える。
操作部21Aは、プレイヤー2Aに対するユーザー操作を受け付け、操作部21Bは、プレイヤー2Bに対するユーザー操作を受け付ける。また、操作部31は、ミキサー3に対するユーザー操作を受け付ける。
【0010】
操作部21Aは、ジョグダイヤル211A、テンポスライダー212A、キューボタン213A、プレイ/ポーズボタン214A、およびパフォーマンスパッド215Aを含む。
【0011】
より具体的には、ジョグダイヤル211Aは回転操作子であり、プレイヤー2Aで再生中の楽曲の再生方向や再生速度を設定する際に用いられる。テンポスライダー212Aは、プレイヤー2Aで再生中の楽曲の再生速度を調整する際に用いられる。キューボタン213Aは、楽曲の所定の位置をキューポイントとして設定する際に押下される。プレイ/ポーズボタン214Aは、プレイヤー2Aで楽曲の再生を開始、または停止する際に押下される。パフォーマンスパッド215Aは、再生制御に関する各種機能を割り当てることができる汎用性操作子である。
【0012】
操作部21Bは、操作部21Aと同様に、ジョグダイヤル211B、テンポスライダー212B、キューボタン213B、プレイ/ポーズボタン214B、およびパフォーマンスパッド215Bを含む。
音響装置1は、例えば、プレイヤー2Aの操作部21Aに対してユーザーによる操作が行われると、プレイヤー2Aにロードされた楽曲を再生するとともに、必要に応じて再生中の楽曲に対してエフェクトを適用する。プレイヤー2Bについても同様である。
【0013】
ミキサー3は、ユーザー操作に従って、プレイヤー2Aおよび2B間の楽曲再生の切り替え、各チャンネルの音量調整、およびエフェクトを適用した再生を実行する。
ミキサー3の操作部31は、エフェクト選択つまみ311Aおよび311B、エフェクト量調整つまみ312Aおよび312B、チャンネルフェーダー313Aおよび313B、およびクロスフェーダー314を含む。
【0014】
より具体的には、エフェクト選択つまみ311Aおよび311Bは、それぞれプレイヤー2Aおよび2Bで再生中の楽曲に適用するエフェクトを選択する際に用いられる。エフェクト量調整つまみ312Aおよび312Bは、それぞれプレイヤー2Aおよび2Bで再生中の楽曲に適用するエフェクトの深さ、大きさ等のパラメータを調整する際に用いられる。チャンネルフェーダー313Aおよび313Bは、それぞれプレイヤー2Aおよび2Bで再生中の楽曲の出力音量レベルを調整する際に用いられる。
【0015】
クロスフェーダー314は、第1のチャンネルであるプレイヤー2Aで再生される第一の楽曲と、第2のチャンネルであるプレイヤー2Bで再生される第二の楽曲との音量バランスを調節するための操作子である。
【0016】
表示部4は、ディスプレイ41、およびディスプレイの表示領域を覆うように設けられたタッチパネル42を備える。タッチパネル42がユーザーによる接触位置を検出し、接触位置を示す座標等の情報を出力することにより、表示部4は操作部としても機能する。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係る音響装置における処理部の概略的な機能構成を示すブロック図である。
音響装置1は、それぞれ上述した各部の他、
図2に示すように、楽曲データ格納部5と、制御部6と、音声出力部7とを含む。上記の各部の機能は、例えばコンピュータのハードウェア構成を備える音響装置において、プロセッサがプログラムに従って動作することによって実現される。以下、各部の機能についてさらに説明する。
【0018】
楽曲データ格納部5は、HDD(Hard Disk Drive)またはフラッシュメモリー等により、楽曲データを格納可能に構成されている。楽曲データ格納部5には、複数の楽曲の楽曲データがMP3形式等の所定の形式で格納されている。楽曲データは、音声情報に加えて、例えば、楽曲のBPM、アートワーク、タイトル、アーティスト名、アルバム名、キー、DJプレイ回数およびジャンル等の情報をタグ情報として含む。楽曲データ格納部5に格納される楽曲データには、再生位置の情報であるタイムスタンプが対応付けられる。
【0019】
本実施形態において、楽曲データ格納部5に格納され、音響装置1において再生可能な楽曲データは、予め複数のパートへの分離処理が施されている。本実施形態において、楽曲データから分離される複数のパートは、楽曲データによって再生される楽曲のパートごとの音に対応する。ここで、楽曲のパートは、ボーカルまたは各楽器の音に対応し、単純な例ではボーカル、ギター、ベース、ドラムの4つのパートによって楽曲が構成される。さらに、例えばドラムにおけるバスドラム、スネアドラム、ハイハットなどのように楽器の部分ごとにパートを細分化して分離することも有用である。なお、このような複数のパートへの分離処理については、公知の各種の技術を利用可能であるため詳細な説明は省略する。
以下では、一例として、ドラム音のパートと、ドラム以外の楽器音および/またはボーカルのパートとの2つのパートへの分離処理が施された楽曲データが楽曲データ格納部5に格納されているものとして説明を行う。なお、音響装置1は、既に分離処理が施された楽曲データを外部から取得してもよいし、未分離の楽曲データを複数のパートに分離する処理を実行する機能部分をさらに有してもよい。
【0020】
制御部6は、例えば通信インターフェース、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、および、作業領域となるメモリーによって音響装置1に実装され、音響装置1の動作を制御する。制御部6は、プロセッサがメモリーに格納された、又は通信インターフェースを介して受信されたプログラムに従って動作することによって実現される受付部61と、オートミックス設定部62と、テンポ検出部63と、第1再生部64と、第2再生部65とを含む。
【0021】
受付部61は、操作部21A、21B、操作部31、およびタッチパネル42に対するユーザー操作を受け付ける。
オートミックス設定部62は、自動で楽曲を切り替えるミキシングを行うオートミックス処理について、操作部21A、21B、操作部31、およびタッチパネル42に対するユーザー操作に応じた設定を行う。
オートミックス処理に関する設定は、楽曲の切り替え結果を指定する形で行われる。楽曲の切り替え結果は、例えばフェードアウトおよびフェードインで切り替え後の楽曲が聴取され始めてから切り替え前の楽曲が聴取されなくなるまでの時間、フェードアウトおよびフェードインの中間点で均等になったときのそれぞれの楽曲の音量、および切り替え後の楽曲のカットインから切り替え前の楽曲のカットアウトまでの時間等を含む。
【0022】
オートミックス処理に関する設定においては、楽曲の切り替えの対象となる楽曲データについて、キューポイント等と関連付けて、上述した楽曲の切り替え結果を指定することにより、対象の楽曲データの特徴に応じた楽曲の切り替えが可能となる。このような詳細な設定は、例えば音響装置1のディスプレイ41およびタッチパネル42や、音響装置1に接続されたコンピュータを利用して演奏前に実施される。オートミックス設定部62における設定の詳細は、後述するオートミックス処理とあわせて説明する。
【0023】
テンポ検出部63は、第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出する。
第1再生部64は、操作部21Aおよび操作部31に対するユーザー操作に応じて、プレイヤー2Aにおける楽曲の再生を行い、音声信号を音声出力部7に出力する。同様に、第2再生部65は、操作部21B、および操作部31に対するユーザー操作に応じて、プレイヤー2Bにおける楽曲の再生を行い、音声信号を音声出力部7に出力する。なお、オートミックス設定部62によってオートミックス処理に関する設定が行われ、操作部21A、21B、および操作部31に対するユーザー操作によってオートミックス処理を実行する指示がされた場合、第1再生部64および第2再生部65は、オートミックス設定部62における設定に応じて、第一の楽曲と第二の楽曲との音量バランス等を複数のパートごとに調節することにより、プレイヤー2Aおよびプレイヤー2Bにおける楽曲の切り替え処理を行う。
【0024】
なお、音響装置1は、通信インターフェースを備え、外部記憶装置およびコンピュータ等に記憶された楽曲データを、図示しない通信インターフェースを介して取得し、楽曲データ格納部5に格納する構成としてもよい。この場合、音響装置1には楽曲データ格納部5が含まれず、外部記憶装置が楽曲データ格納部5として機能する。
音声出力部7は、例えばスピーカー端子またはヘッドフォン端子等の音声出力端子を備え、第1再生部64および第2再生部65により再生された楽曲の音声信号を音声情報として出力する。
【0025】
以上説明した音響装置1においてオートミックス処理による楽曲の切り替え処理を行う際の制御部6の動作について説明する。
図3は、第1の実施形態に係る音響装置による楽曲の切り替え部分における1曲目(第一の楽曲)の楽曲データ、および2曲目(第二の楽曲)の楽曲データの例を示す。
図3の例では、第一の楽曲および第二の楽曲の楽曲データは、テンポが異なる。ここで、テンポとはBPMまたは拍位置等より導かれる拍子のことである。
従来、楽曲の切り替えに際しては、楽曲全体に対して一様な楽曲の切り替え処理が行われていた。そのため、例えば楽曲の切り替え時に第一の楽曲と第二の楽曲とのテンポ(BPM)が異なる場合、第一の楽曲および第二の楽曲をそれぞれ原曲のテンポでミックスするとBPMの連続性が失われ、ユーザーに違和感や不快感を与えるという問題がある。特にドラム音については、楽曲の切り替え時にこの問題が顕著になる。
また、テンポ(BPM)を合わせるために一方又は両方の楽曲のテンポ(BPM)を変更した場合、特にメロディーラインにおいては、原曲と再生音との乖離が大きくなり、ユーザーに違和感や不快感を与えるという問題がある。
【0026】
そこで、第1の実施形態の音響装置1は、楽曲を構成する複数のパートのそれぞれについて、各パートの特性に応じたミキシングを行うための楽曲の切り替え処理を行う。
図4および
図5は、第1の実施形態に係る音響装置による楽曲の切り替え処理について説明する模式図である。以下では、一例として、プレイヤー2Aからプレイヤー2Bへの楽曲の切り替えを例に挙げて説明する。また、以下では第一の楽曲および第二の楽曲の原曲のテンポをそれぞれテンポT1およびテンポT2と称する。
まず、ドラム音のパートについて
図4を参照して説明する。音響装置1は、
図4に示すように、ドラム音のパートについて以下の(1)から(3)の各処理を実行してミキシングを行う。
(1)第1の時点P1で、第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを変更することにより第一の楽曲および第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを同期させ、第一の楽曲をカットアウトするとともに第二の楽曲をカットインすることにより切り替える。
(2)第1の時点P1から第2の時点P2の間で、第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを、徐々に変化させる。
(3)第2の時点P2で、第二の楽曲のドラム音のパートとドラム以外の音のパートとの再生位置を整合させる。
【0027】
(1)から(3)で示した処理は、ドラム音のパートの特性に応じて楽曲の切り替えを行うとともに、ミキシング時に発生する違和感や不快感を抑えるための処理である。ドラム音のパートは、音量のレベルが大きく、また楽曲ごとにパターンが異なり、さらには特にバスドラムにおけるアタック音からピーク音までのディレイが楽曲ごとに大きく異なる。そのため、ドラム音のパートについてテンポを合わせずに楽曲の切り替えを行うと、上述したように、ユーザーに違和感および不快感を与える場合がある。
そこで、ドラム音のパートについては、(1)に示したように、第一の楽曲および第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを同期させて切り替える。なお、ドラム音のパートにはメロディーや歌詞がないため、聴取者に連続性をもって捉えられることは少ない。そこで、ドラム音のパートについては、カットアウトおよびカットインによる楽曲の切り替えを行うことにより、楽曲の切り替え時の違和感をより抑えることができる。
次に、(2)に示したように、第1の時点P1から第2の時点P2の間でテンポT2まで徐々に変化させる。そして、(3)に示したように、第2の時点P2で第二の楽曲のドラム音のパートとドラム音以外の音のパートとの再生位置を整合させる。
このような処理を行うことにより、第1の時点P1において、第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを第一の楽曲のドラム音のパートの原曲のテンポであるテンポT1に同期させることにより違和感なく楽曲の切り替えを行う。その後、第1の時点P1から第2の時点P2の間で、第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを、テンポT1から第2の楽曲の原曲のテンポであるテンポT2まで徐々に変化させ、第2の時点P2において第二の楽曲のドラム音のパートとドラム以外の音のパートとの再生位置を整合させる。そして、第2の時点P2から第二の楽曲のドラム音のパートおよびドラム以外の音のパートをテンポT2に合わせて再生する。つまり、第2の時点以降、第二の楽曲は、テンポの変更等のない通常の再生音と同等になる。
【0028】
(1)から(3)の各処理を実行するために、オートミックス設定部62は、ドラム音のパートについて例えば下記の設定を行う。
第一の楽曲:カットアウト位置(P1)
第二の楽曲:カットイン位置(P1)、ドラム音のパートとドラム以外の音のパートとの再生位置を整合させる位置(P2)
なお、第一の楽曲におけるドラム音のパートのカットアウト位置(P1)および第二の楽曲におけるドラム音のパートのカットイン位置(P1)を、自動で設定する構成としてもよい。例えば、拍位置検出技術、小節位置検出技術、ボーカル検出技術、およびリリック表示技術など公知の楽曲解析処理を行い、第一の楽曲および第二の楽曲におけるドラム音のパートカットアウトおよびカットインにふさわしいタイミングを設定する構成としてもよい。
【0029】
第1再生部64および第2再生部65は、オートミックス設定部62における設定に応じて、第一の楽曲および第二の楽曲のドラム音のパートを下記のように再生する。
第1の時点P1まで:第一の楽曲をテンポT1で再生する。
第1の時点P1:第一の楽曲をカットアウトするとともに第二の楽曲をテンポT1で再生する。
第1の時点P1から第2の時点P2までの間:第二の楽曲のテンポをテンポT1からテンポT2まで徐々に変化させる。
第2の時点P2以降:第二の楽曲をテンポT2で再生する。
【0030】
次に、ドラム以外の音のパートについて
図5を参照して説明する。ドラム以外の音のパートは、メロディーや歌詞があることによって聴取者に連続性をもって捉えられることが多いパートである。そのため、楽曲の切り替え時にテンポを変更すると、原曲と再生音との乖離が大きくなり、ユーザーに違和感や不快感を与える場合がある。そこで、音響装置1は、
図5に示すように、ドラム以外の音のパートについては第1の時点P1を含むミックス区間Sで、テンポを変更せずに第一の楽曲および第二の楽曲を切り替える。
このような楽曲の切り替えを行うことにより、ドラム以外の音のパートについて、テンポを調整することによってメロディーや歌詞が早送りになる、または、間延びし、ユーザーに違和感および不快感を与えるという問題を避けることができる。
【0031】
オートミックス設定部62は、ドラム以外の音のパートについて、例えば、第一の楽曲のフェードアウト開始位置および終了位置と、第二の楽曲のフェードイン開始位置および終了位置とを設定する。この時、ミックス区間Sは、上述したドラム音のパートのカットイン位置およびカットアウト位置を含むことが好ましい。このようにミックス区間Sを設定することにより、ドラム音のパートのカットアウトおよびカットインによる楽曲の切り替え処理のバックグラウンドで、ドラム以外の音のパートを自然に切り替えることができる。
なお、第一の楽曲および第二の楽曲におけるドラム以外の音のパートのフェードアウトまたはフェードイン開始位置および終了位置を、自動で設定する構成としてもよい。例えば、キー検出技術、楽曲展開検出技術、ボーカル検出技術およびリリック表示技術など公知の楽曲解析処理を行い、第一の楽曲および第二の楽曲におけるドラム以外の音のパートのフェードアウトまたはフェードイン開始位置および終了位置にふさわしいタイミングを設定する構成としてもよい。
【0032】
第1再生部64および第2再生部65は、オートミックス設定部62における設定に応じて、第一の楽曲および第二の楽曲のドラム以外の音のパートを下記のように再生する。
第1の楽曲のフェードアウト開始位置(ミキシング開始時)まで:第一の楽曲を原曲のテンポであるテンポT1で再生する。
第一の楽曲のフェードアウト開始位置から終了位置:第一の楽曲をフェードアウトする。
第二の楽曲のフェードイン開始位置から終了位置(ミキシング開始時より所定の時間経過後):第二の楽曲を原曲のテンポであるテンポT2で再生するとともにフェードインする。
第二の楽曲のフェードイン終了位置以降:第二の楽曲を原曲のテンポであるテンポT2で再生する。
【0033】
ここまで説明したように、オートミックス処理が開始されると、時刻t1で、第1再生部64は、第一の楽曲のドラム以外の音のパートの音量を徐々に下げてフェードアウトを開始する。時刻t2で、第1再生部64は、第一の楽曲のドラム音のパートをカットアウトし、第2再生部65は、第二の楽曲のドラム以外の音のパートの音量を徐々に上げてフェードインを開始し、第二の楽曲のドラム音のパートを、第一の楽曲の原曲のテンポであるテンポT1でカットインし、第二の楽曲のドラム音のパートのテンポをテンポT2まで徐々に変化させる。
時刻t3において、第1再生部64は、第一の楽曲のドラム以外の音のパートのフェードアウトを終了し、時刻t4において、第2再生部65は、第二の楽曲のドラム以外の音のパートのフェードインを終了する。そして、時刻t5で、第二の楽曲におけるドラム音のパートおよびドラム以外の音のパートの再生位置が整合する。
つまり、ドラム音のパートについては、第1の時点P1で楽曲のテンポの調整を伴うカットアウトおよびカットインで楽曲の切り替えが行われ、ドラム以外の音のパートについては、楽曲のテンポを変化させずに、フェードアウトおよびフェードインで楽曲の切り替えが行われる。そして、第2の時点P2で第二の楽曲におけるドラム音のパートおよびドラム以外の音のパートの再生位置が整合する。したがって、楽曲を構成する複数のパートのそれぞれについて、各パートの特性に応じた楽曲の切り替え処理を行うことにより、好ましい切り替え動作を実現することができる。
【0034】
なお、時刻t2から時刻t5までの間、第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを徐々に変化させるが、ドラム以外の音のパートのテンポは変化させない。そのため、時刻t2から時刻t5までの間、第二の楽曲のドラム音のパートとドラム以外の音のパートとの間で、テンポおよび再生位置のギャップが発生する。このギャップは時刻t2で最大となり、時刻t5で略0となる。しかし、ドラム以外の音のパートは、ドラム音のパートと比較して音量が小さく、また、リズムを刻む主要なパートであるドラム音のパートが安定的に再生している限りドラム以外の音のパートのリズムは目立ちにくいため、上述したギャップの影響は小さい。
また、上述したミックス区間S(時刻t1から時刻t5)についてのみ、分離処理が施された楽曲データを利用し、それ以外の区間については、未分離の楽曲データを利用する構成としてもよい。この場合、第1再生部64は、時刻t1まで未分離の第一の楽曲データを再生し、時刻t1から分離処理が施された第一の楽曲データを再生する。また、第2再生部65は、時刻t2から分離処理が施された第二の楽曲データを再生し、時刻t5から未分離の第二の楽曲データを再生する。
【0035】
また、
図5の例で示した楽曲の切り替え処理は、一例であり、この例に限定されない。例えば、
図5の例では、ドラム以外の音のパートについてフェードアウトおよびフェードインで楽曲の切り替えを行う例を示したが、カットアウトおよびカットインで楽曲の切り替えを行ってもよいし、フェードアウトおよびフェードインとカットアウトおよびカットインとを組み合わせて楽曲の切り替えを行ってもよい。また、
図5の例では、ドラム音のパートについて、カットアウトおよびカットインで楽曲の切り替えを行う例を示したが、フェードアウトおよびフェードインで楽曲の切り替えを行ってもよいし、フェードアウトおよびフェードインとカットアウトおよびカットインとを組み合わせて楽曲の切り替えを行ってもよい。さらに、何れのパートにおいても、カットアウトおよびカットインを同時に行ってもよいし、異なるタイミングで行ってもよい。
【0036】
次に、
図6のフローチャートを参照して、本発明の第1の実施形態におけるオートミックス処理に関する設定時の音響装置の制御方法について説明する。
図6には、受付部61がオートミックス処理に関する設定を指示する操作を受け付けた時に開始される処理のフローチャートが示されている。
オートミックス設定部62は、第一の楽曲および第二の楽曲を構成する複数のパートごとに、設定を受け付ける(ステップS101)。
そして、オートミックス設定部62は、テンポの調整が必要か否かを判定する(ステップS102)。テンポの調整が必要か否かは、第一の楽曲および第二の楽曲のテンポ(BPM)が一致しているか否かに応じて判定することができる。例えば、
図5で説明した例のように、第一の楽曲および第二の楽曲のテンポ(BPM)が異なる場合、オートミックス設定部62は、テンポの調整が必要と判定する。
そして、テンポの調整が必要と判定されると(ステップS102YES)、オートミックス設定部62は、複数のパートの再生位置を整合させる時点を算出する(ステップS103)。複数のパートの再生位置を整合させる時点(第2の時点P2)は、例えば、第二の楽曲のドラム音のパートのカットインの時点(第1の時点P1)から所定の時間が経過した時点でもよいし、第二の楽曲のドラム以外の音のパートのフェードイン終了の時点から所定の時間が経過した時点でもよい。また、キー検出技術、楽曲展開検出技術、ボーカル検出技術、およびリリック表示技術など公知の楽曲解析処理に基づいて複数のパートの再生位置を整合させる時点を算出してもよい。
【0037】
次に、オートミックス設定部62は、ステップS103で算出した複数のパートの再生位置を整合させる時点に基づいて、テンポの変更内容を決定する(ステップS104)。テンポの変更内容は、第一の楽曲および第二の楽曲のテンポと、複数のパートの再生位置を整合させる時点とに基づいて決定することができる。例えば、
図5で説明した例では、第二の楽曲のドラム音のパートのカットインの時点(第1の時点P1)から複数のパートの再生位置を整合させる時点(第2の時点P2)までの間に、第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを、第一の楽曲の原曲のテンポであるテンポT1から第二の楽曲の原曲のテンポであるテンポT2に変化させるための変更内容を決定する。
そして、オートミックス設定部62は、オートミックス設定部62が受け付けた設定の内容に応じて、複数のパートごとにオートミックス処理に関する制御値を算出する(ステップS105)。なお、オートミックス設定部62は、ステップS102でテンポの調整が必要と判定した場合には、ステップS103およびS104における処理を加味して制御値を算出し、ステップS102でテンポの調整が不要と判定した場合には、オートミックス設定部62が受け付けた設定の内容に基づいて制御値を算出する。制御値の算出については、公知の各種の技術を利用可能であるため詳細な説明は省略する。
【0038】
次に、
図7のフローチャートを参照して、本発明の第1の実施形態におけるオートミックス処理実行時の音響装置の制御方法について説明する。
図7には、受付部61がオートミックス処理の実行を指示する操作を受け付けた時に開始される処理のフローチャートが示されている。
第1再生部64は、オートミックス設定部62により算出された制御値に従って、第一の楽曲のドラム以外の音のパートのフェードアウトを開始する(ステップS201)。
第一の楽曲および第二の楽曲のドラム音のパートをカットアウトおよびカットインする第1の時点P1になると(ステップS202YES)、第1再生部64は、オートミックス設定部62により算出された制御値に従って、第一の楽曲のドラム音のパートをカットアウトし、第2再生部65は、オートミックス設定部62により算出された制御値に従って、第二の楽曲のドラム音のパートを第一の楽曲の原曲のテンポであるテンポT1でカットインするとともに、第二の楽曲のドラム以外の音のパートのフェードインを開始する(ステップS203)。続けて、第2再生部65は、オートミックス設定部62により算出された制御値に従って、第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを第二の楽曲の原曲のテンポであるテンポT2まで徐々に変化させる(ステップS204)。
そして、第2再生部65は、第二の楽曲におけるドラム音のパートおよびドラム以外の音のパートの再生位置が整合する位置である時点P2になるまで(ステップS205YES)、ステップS204の処理を継続する。
なお、
図3から
図7では、プレイヤー2Aからプレイヤー2Bへの楽曲の切り替えを例に挙げて説明したが、プレイヤー2Bからプレイヤー2Aへの楽曲の切り替えについても同様の処理が行われる。また、
図3から
図5では、第一の楽曲のテンポT1が第二の楽曲のテンポT2よりも遅い例を挙げて説明したが、第一の楽曲のテンポT1が第二の楽曲のテンポT2よりも速い場合にも同様の処理を行うことができる。
【0039】
以上で説明したような本発明の第1の実施形態によれば、複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出し、第二の楽曲に含まれるドラム音のパート(第一のパート)のテンポを徐々に変化させる処理と、ミキシング開始時又はミキシング開始時より所定の時間経過後に、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれるドラム音のパートのテンポを同期させる処理とを実行する。したがって、楽曲を構成する複数のパートのそれぞれについて、特性に応じた楽曲の切り替えを行うことができる。そのため、ユーザーに違和感や不快感を与えることなく、楽曲を切り替えるミキシングにおいて好ましい切り替え動作を行うことができる。
また、本発明の第1の実施形態によれば、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれるドラム音のパートのテンポを同期させた後に、第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを、原曲のテンポに徐々に推移させる処理を実行する。したがって、同期させるために変更した第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを、元に戻すことができる。
【0040】
また、本発明の第1の実施形態によれば、第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを、第二の楽曲の原曲のテンポに徐々に推移させた後に、第二の楽曲において、ドラム音のパート(第一のパート)とドラム以外の音のパート(第二のパート)との再生位置を整合させる処理を行う。したがって、ドラム音のパートのテンポを変更することにより発生するギャップを解消することができる。
また、本発明の第1の実施形態によれば、ミキシング開始時又はミキシング開始時より所定の時間経過後を含む所定の区間において、第一の楽曲に含まれるドラム以外の音のパートを第一の楽曲の原曲のテンポで再生させ、第二の楽曲に含まれるドラム以外の音のパートを第二の楽曲の原曲のテンポで再生させるとともに、第一の楽曲のドラム以外の音のパートと、第二の楽曲のドラム以外の音のパートとを切り替える。したがって、原曲と再生音との乖離が大きくなるとユーザーに違和感や不快感を与えるパートについては、その特性に応じて、テンポを変更することなく好ましい切り替え動作を行うことができる。
また、本発明の第1の実施形態によれば、第一のパートは、ドラム音のうち、少なくともバスドラム音に対応するパートである。したがって、ユーザーに違和感および不快感を与える可能性があるドラム音のパート(特にバスドラム)について、その特性に適した楽曲の切り替えを行うことができる。
【0041】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と同様の部分については説明を省略する。
第2の実施形態における音響装置は、第1の実施形態と同様の構成を備える。そして、第2の実施形態の音響装置においては、第一の楽曲および第二の楽曲のドラム音のパートの切り替え処理が第1の実施形態の音響装置と異なる。
【0042】
図8は、第1の実施形態の
図4に対応し、第2の実施形態の音響装置による楽曲の切り替え処理、特に、ドラム音のパートの切り替え処理について説明する模式図である。
第2の実施形態の音響装置は、
図8に示すように、ドラム音のパートについて以下の(1)および(2)の各処理を実行してミキシングを行う。
(1)第1の時点P3から第2の時点P4までの間で、第一の楽曲のドラム音のパートのテンポを、第一の楽曲の原曲のテンポであるテンポT1からテンポT2まで徐々に変化させる。
(2)第2の時点P4で、第一の楽曲をカットアウトするとともに第二の楽曲をカットインする。
【0043】
(1)および(2)で示した処理は、第1の実施形態と同様に、ドラム音のパートの特性に応じて楽曲の切り替えを行うとともに、ミキシング時に発生する違和感や不快感を抑えるための処理である。ただし、第2の実施形態においては、上述したように、第二の楽曲のテンポを調整する代わりに第一の楽曲のテンポを調整する。つまり、第1の時点P3から第2の時点P4までの間に第一の楽曲のドラム音のパートのテンポを調整することにより、カットアウトおよびカットインを行う第2の時点P4において、第一の楽曲および第二の楽曲のドラム音のパートのテンポは一致する。そのため、第1の実施形態のように第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを調整する必要はない。
また、第2の実施形態においては、第1の時点P3から第2の時点P4までの間、第一の楽曲のドラム音のパートとドラム以外の音のパートとの間で、テンポおよび再生位置のギャップが発生する。しかし、ドラム以外の音のパートは、フェードアウト中であり、また、ドラム音のパートと比較して音量が小さく、さらに、リズムを刻む主要なパートであるドラム音のパートが安定的に再生している限りドラム以外の音のパートのリズムは目立ちにくいため、上述したギャップの影響は小さい。
また、第2の実施形態においては、第二の楽曲のドラム音のパートおよびドラム以外の音のパートのいずれもテンポは調整されない。そのため、第2の時点P4において第二の楽曲のドラム音のパートとドラム以外の音のパートとの再生位置の整合性は保たれているので、第1の実施形態のように、第二の楽曲のドラム音のパートとドラム以外の音のパートとの再生位置を整合させるための計算及び処理は必要ない。なお、第1の実施形態における第二の楽曲のドラム音のパートと同様に、テンポを変更した第一の楽曲のドラム音のパートについて、テンポを第一の楽曲の原曲のテンポであるテンポT1に戻す処理を行ってもよい。
【0044】
ここまで説明したように、オートミックス処理が開始されると、ドラム音のパートについては、第1の時点P3から第一の楽曲のドラム音のパートのテンポを変化させ、第2の時点P4で第一の楽曲のテンポを第二の楽曲の原曲のテンポであるテンポT2と一致させるとともに、カットアウトおよびカットインで楽曲の切り替えが行われる。一方、ドラム以外の音のパートについては、第1の実施形態と同様に、テンポを変化させずにフェードアウトおよびフェードインで楽曲の切り替えが行われる。
【0045】
(1)および(2)の各処理を実行するために、第2の実施形態においては、第1の実施形態の
図6に示したフローチャートと同様に、オートミックス処理に関する設定が行われる。ただし、第2の実施形態では、ステップS103において複数のパートの再生位置を整合させる時点を算出する必要はないため、ステップS103の処理は不用である。また、第2の実施形態では、ステップS104の処理におけるテンポの変更内容として、第一の楽曲のドラム音のパートのテンポを、第一の楽曲の原曲のテンポであるテンポT1から第二の楽曲の原曲のテンポであるテンポT2に変化させるための変更内容を決定する。
【0046】
次に、
図9のフローチャートを参照して、本発明の第2の実施形態におけるオートミックス処理実行時の音響装置の制御方法について説明する。なお、
図9の例では、ドラム音のパートの楽曲の切り替え処理についてのみ説明し、ドラム以外の音のパートの楽曲の切り替え処理については、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
第一の楽曲のドラム音のパートのテンポの変化を開始する第1の時点P3になると(ステップS301YES)、第1再生部64は、オートミックス設定部62により算出された制御値に従って、第一の楽曲のドラム音のパートのテンポをテンポT1からテンポT2まで徐々に変化させる(ステップS302)。
第一の楽曲および第二の楽曲のドラム音のパートをカットアウトする第2の時点P4になると(ステップS303YES)、第1再生部64は、オートミックス設定部62により算出された制御値に従って、第一の楽曲のドラム音のパートをカットアウトし、第2再生部65は、オートミックス設定部62により算出された制御値に従って、第二の楽曲のドラム音のパートを、テンポを変化させずにカットインする(ステップS304)。
【0047】
以上で説明したような本発明の第2の実施形態によれば、複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出し、第一の楽曲に含まれるドラム音のパート(第一のパート)のテンポを徐々に変化させる処理と、ミキシング開始時又はミキシング開始時より所定の時間経過後に、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれるドラム音のパートのテンポを同期させる処理とを実行する。したがって、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。特に、第2の実施形態によれば、第二の楽曲のドラム音のパートとドラム以外の音のパートとの再生位置を整合させる処理が不要であるため、処理負荷を低減することが期待できる。
【0048】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態および第2の実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態および第2の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
第3の実施形態における音響装置は、第1の実施形態および第2の実施形態と同様の構成を備える。そして、第3の実施形態の音響装置においては、第一の楽曲および第二の楽曲のドラム音のパートの切り替え処理が第1の実施形態および第2の実施形態の音響装置と異なる。
【0049】
図10は、第1の実施形態の
図4に対応し、第3の実施形態の音響装置による楽曲の切り替え処理、特に、ドラム音のパートの切り替え処理について説明する模式図である。
第3の実施形態の音響装置は、
図10に示すように、ドラム音のパートについて以下の(1)から(4)の処理を実行してミキシングを行う。
(1)第1の時点P5から第2の時点P6までの間で、第一の楽曲のドラム音のパートのテンポを、第一の楽曲の原曲のテンポであるテンポT1からテンポT3まで徐々に変化させる。
(2)第2の時点P6で、第一の楽曲をカットアウトするとともに第二の楽曲をカットインする。
(3)第2の時点P6から第3の時点P7までの間で、第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを、テンポT3から第二の楽曲の原曲のテンポであるテンポT2まで徐々に変化させる。
(4)第3の時点P7で、第二の楽曲のドラム音のパートとドラム以外の音のパートとの再生位置を整合させる。
なお、(1)および(3)の処理におけるテンポT3は、例えば、第一の楽曲のテンポT1と第二の楽曲のテンポT2との中間的なテンポである。テンポT3は、第一の楽曲のテンポT1と第二の楽曲のテンポT2との差異に基づいて算出されてもよいし、所定のテンポ(例えば、常にBPM120)であってもよい。
【0050】
(1)から(4)で示した処理は、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、ドラム音のパートの特性に応じて楽曲の切り替えを行うとともに、ミキシング時に発生する違和感や不快感を抑えるための処理である。ただし、第3の実施形態においては、上述したように、第二の楽曲のテンポの調整に加えて、第一の楽曲のテンポも調整する。つまり、第3の実施形態においては、第1の実施形態と同様に第二の楽曲のテンポを第一の楽曲の原曲のテンポであるテンポT1に近づけるように変化させるとともに、第2の実施形態と同様に第一の楽曲のテンポを第二の楽曲の原曲のテンポであるテンポT2に近づけるように変化させる。そのため、第一の楽曲および第二の楽曲のドラム音のパートとドラム以外の音のパートとのテンポおよび再生位置に発生するギャップを第1の実施形態よりも低減することが期待できる。
【0051】
ここまで説明したように、オートミックス処理が開始されると、ドラム音のパートについては、第1の時点P5から第一の楽曲のドラム音のパートのテンポを変化させ、第2の時点P6で第一の楽曲および第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを同期させてカットアウトおよびカットインで楽曲の切り替えが行われ、第2の時点P6から第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを変化させる。一方、ドラム以外の音のパートについては、第1の実施形態および第2の実施形態と同様に、テンポを変化させずにフェードアウトおよびフェードインで楽曲の切り替えが行われる。そして、第3の時点P7で第二の楽曲におけるドラム音のパートおよびドラム以外の音のパートの再生位置が整合する。
【0052】
(1)から(4)の各処理を実行するために、第3の実施形態においては、第1の実施形態の
図6に示したフローチャートと同様に、オートミックス処理に関する設定が行われる。なお、ステップS104においては、テンポの変更内容として、第一の楽曲のドラム音のパートのテンポを、第一の楽曲の原曲のテンポであるテンポT1からテンポT3に変化させるための変更内容と、第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを、テンポT3から第二の楽曲の原曲のテンポであるテンポT2に変化させるための変更内容とを決定する。
なお、第二の楽曲のドラム音のパートと同様に、テンポを変更した第一の楽曲のドラム音のパートについて、テンポを第一の楽曲の原曲のテンポであるテンポT1に戻す処理を行ってもよい。
【0053】
次に、
図11のフローチャートを参照して、本発明の第3の実施形態におけるオートミックス処理実行時の音響装置の制御方法について説明する。なお、
図11の例では、第2の実施形態と同様に、ドラム音のパートの楽曲の切り替え処理についてのみ説明し、ドラム以外の音のパートの楽曲の切り替え処理については、第1の実施形態および第2の実施形態と同様であるため説明を省略する。
第一の楽曲のドラム音のパートのテンポの変化を開始する第1の時点P5になると(ステップS401YES)、第1再生部64は、オートミックス設定部62により算出された制御値に従って、第一の楽曲のドラム音のパートのテンポをテンポT1からテンポT3まで徐々に変化させる(ステップS402)。
第一の楽曲および第二の楽曲のドラム音のパートをカットアウトおよびカットインする第2の時点P6になると(ステップS403YES)、第1再生部64は、オートミックス設定部62により算出された制御値に従って、第一の楽曲のドラム音のパートをカットアウトし、第2再生部65は、オートミックス設定部62により算出された制御値に従って、第二の楽曲のドラム音のパートを第一の楽曲のドラム音のパートにおけるテンポT3に同期させてカットインする(ステップS404)。続けて、第2再生部65は、オートミックス設定部62により算出された制御値に従って、第二の楽曲のドラム音のパートのテンポをテンポT3からテンポT2まで徐々に変化させる(ステップS405)。
そして、第2再生部65は、第二の楽曲におけるドラム音のパートおよびドラム以外の音のパートの再生位置が整合する位置である第3の時点P7になるまで(ステップS406YES)、ステップS405の処理を継続する。
【0054】
以上で説明したような本発明の第3の実施形態によれば、複数のパートから構成される第一の楽曲及び第二の楽曲のテンポを検出し、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれるドラム音のパート(第一のパート)のテンポを徐々に変化させる処理と、ミキシング開始時又はミキシング開始時より所定の時間経過後に、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれるドラム音のパートのテンポを同期させる処理とを実行する。したがって、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
なお、上記の各実施形態において説明した処理の一部を省略してもよい。例えば、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれるドラム音のパートのテンポを同期させる処理のみを実行し、その後、第一の楽曲又は第二の楽曲のドラム音のパートのテンポを原曲のテンポに徐々に推移させる処理、および第一の楽曲又は第二の楽曲において、ドラム音のパートとドラム以外の音のパートとの再生位置を整合させる処理の一方または両方を省略してもよい。
【0056】
また、上記の各実施形態において、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれるドラム音のパートのテンポを同期させる際には、必ずしも完全に同期させなくてもよい。例えば、グルーブ感やアクセント付けなどを目的として、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれるドラム音のパートのBPMおよび拍位置をあえて少しずらして同期させてもよい。
また、上記の各実施形態において、第一の楽曲及び第二の楽曲に含まれるドラム音のパートのテンポを同期させる際には、ミキシング開始時点より前にテンポを同期させる処理を完了させてもよい。
【0057】
また、上記の各実施形態では、第一の楽曲および第二の楽曲を構成する複数のパートとして、ドラム音のパート、およびドラム以外の音のパートの2つのパートを例示したが、この例に限定されない。第一の楽曲および第二の楽曲の演奏に対応するパートであれば、例えば、ボーカルのパート、ギター音のパート、ベース音のパート、ピアノ音のパートなど、上述した2つのパート以外のパートについても同様の処理を行うことが可能である。
【0058】
また、上記の各実施形態では、オートミックス処理において、楽曲全体の切り替え処理を行う例を示したが、この例に限定されない。例えば、クロスフェーダー314等の操作子を用いて楽曲の切り替え処理を行ってもよい。この場合、クロスフェーダー314の一方の端部から、他方の端部方向へ移動を開始した時点をミキシング開始時としてもよい。また、第一の楽曲および第二の楽曲を構成する複数のパートのうち一部のパート、例えばドラム音のパートのみについて上記の各実施形態で説明したオートミックス処理を行い、ドラム以外の音のパートについてはクロスフェーダー314等の操作子を用いて楽曲の切り替え処理を行ってもよい。
さらに、クロスフェーダー314等の操作子に限定されず、GUI(Graphical User Interface)等によりソフトウェア的に構成される操作子についても同様に本発明を適用することができる。
【0059】
また、上記のような機能をもった音響装置は上記の各実施形態として説明されたようなDJシステムには限られず、例えばミキサー、ミキサー機能を備えたDJコントローラー等であってもよい。また、コンピュータ、スマートフォン、およびタブレット端末で実行されるDJアプリケーションおよび音楽アプリケーションに本発明を適用してもよいし、インターネットを利用したストリーミングサービス等に本発明を適用してもよい。
また、上記の例では2つのプレイヤー2Aおよび2Bを有する2チャンネルの音響装置が説明されたが、例えば4チャンネルの音響装置でも同様の機能が実現可能である。また、本発明はDJ機器に限られず、一般的なミキサーや電子楽器、さらにはDAW(Digital Audio Workstation)やDTM(Desk Top Music)といった音響装置にも適用可能である。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0061】
1…音響装置、2A,2B…プレイヤー、3…ミキサー、4…表示部、5…楽曲データ格納部、6…制御部、7…音声出力部、21A,21B,31…操作部、41…タッチパネル、61…受付部、62…オートミックス設定部、63…テンポ検出部、64…第1再生部、65…第2再生部、211A,211B…ジョグダイヤル、212A,212B…テンポスライダー、213A,213B…キューボタン、214A,214B…プレイ/ポーズボタン、215A,215B…パフォーマンスパッド、311A,311B…エフェクト選択つまみ、312A,312B…エフェクト量調整つまみ、313A,313B…チャンネルフェーダー、314…クロスフェーダー。