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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】内燃機関のベルトカバー構造
(51)【国際特許分類】
   F02F 7/00 20060101AFI20241211BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20241211BHJP
   F16M 1/026 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
F02F7/00 M
F02F7/00 K
F02F11/00 P
F16M1/026 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023517503
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 JP2022018695
(87)【国際公開番号】W WO2022230801
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2021078039
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】浅芽 広一郎
(72)【発明者】
【氏名】依田 順
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-183445(JP,U)
【文献】実開昭57-119160(JP,U)
【文献】実開平02-050050(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 7/00
F02F 11/00
F16M 1/026
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関本体の一側面に配置され、クランク軸とカム軸との間で動力を伝達するタイミングベルトの少なくとも一部を収容する内燃機関のベルトカバー構造であって、
前記タイミングベルトよりも前記内燃機関に近い側において前記タイミングベルトを覆う内側カバー部材と、
前記タイミングベルトよりも前記内燃機関から遠い側において前記タイミングベルトを覆う外側カバー部材と、を有し、
前記外側カバー部材は、少なくとも、前記クランク軸の周囲を覆う下部外側カバー部材を有し、
前記下部外側カバー部材の上方に隣接して、前記内燃機関本体に保持されるサイドマウントブラケットが配置され、
前記下部外側カバー部材と前記サイドマウントブラケットとは、それぞれ、互いに合せられる合せ面が形成され、
前記下部外側カバー部材の合せ面には、前記下部外側カバー部材と前記サイドマウントブラケットをシールする下部シール部材が配置され、
前記サイドマウントブラケットの合せ面は、前記下部外側カバー部材の合せ面を外側から覆うように構成され、
前記下部外側カバー部材及び前記サイドマウントブラケットは、前記サイドマウントブラケットの合せ面が、前記下部シール部材を介して前記下部外側カバー部材の合せ面に押圧された状態で固定されており、
前記内燃機関本体の前記一側面にはウォーターポンプケースが配置され、
前記サイドマウントブラケットは、前記クランク軸の軸方向と直交する方向である幅方向における一方側の端部が前記ウォーターポンプケースを覆うように構成されるとともに、前記幅方向における他方側の端部が前記ウォーターポンプケースの外表面に固定されるように構成され、
前記サイドマウントブラケットを取付ける際には、前記サイドマウントブラケットが前記他方側へ移動させられ、前記サイドマウントブラケットを取外す際には、前記サイドマウントブラケットが前記一方側へ移動させられる構成であることを特徴とする内燃機関のベルトカバー構造。
【請求項2】
内燃機関本体の一側面に配置され、クランク軸とカム軸との間で動力を伝達するタイミングベルトの少なくとも一部を収容する内燃機関のベルトカバー構造であって、
前記タイミングベルトよりも前記内燃機関に近い側において前記タイミングベルトを覆う内側カバー部材と、
前記タイミングベルトよりも前記内燃機関から遠い側において前記タイミングベルトを覆う外側カバー部材と、を有し、
前記内側カバー部材は、少なくとも、前記カム軸の周囲を覆う上部内側カバー部材を有し、
前記外側カバー部材は、少なくとも、前記カム軸の周囲を覆う上部外側カバー部材を有し、
前記内燃機関本体の前記一側面には、前記上部内側カバー部材の下方に隣接するようにウォーターポンプケースが配置され、
前記ウォーターポンプケースよりも前記内燃機関から遠い側において前記ウォーターポンプケースを覆うサイドマウントブラケットが配置され、
前記上部外側カバー部材は、前記サイドマウントブラケットに設けられた第一シール部材を介して前記サイドマウントブラケットの上方に固定され、
前記上部内側カバー部材は、前記サイドマウントブラケットに設けられた第二シール部材を介して前記サイドマウントブラケットの上方及び前記ウォーターポンプケースの上方に固定され、
前記第一シール部材の端部と前記第二シール部材の端部とは、互いに圧接されるように配置されることを特徴とする内燃機関のベルトカバー構造。
【請求項3】
前記サイドマウントブラケット及び前記ウォーターポンプケースには、締結ボルトを挿通するためのボルトボス部が連通するように形成され、
前記サイドマウントブラケットは、前記ボルトボス部の近傍において、前記上部内側カバー部材及び前記上部外側カバー部材にわたって合わせられる合せ面を有し、
前記合せ面は、前記締結ボルトの締結力により、前記第一シール部材の端部と前記第二シール部材の端部とが互いに圧接されるように段差形状が形成されることを特徴とする請求項に記載の内燃機関のベルトカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に付帯されるタイミングベルトを保護するための内燃機関のベルトカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される内燃機関において、クランク軸の回転動力をカム軸に連動するように伝達するために、タイミングベルト(またはタイミングチェーン等の伝達帯)を利用するものがある。ここで、タイミングベルトを水や塵から保護するため、内燃機関のシリンダブロックに、タイミングベルトを覆うベルトカバーを配置するものがある。ベルトカバーは、タイミングベルト等の点検・交換のために、適宜、シリンダブロックから脱着する必要がある。
【0003】
特許文献1では、タイミングベルトカバーを、アッパーカバーと2つのロアカバーの3つの部材で構成し、これらの部材を、内燃機関本体に装着している。2つのロアカバーは、互いの接合面に構成されるラビリンス構造により、互いに係合する。この構成により、アッパーカバーの取り外し後、ロアカバーの一方を取り外すことができ、他方のロアカバーを装着したままで、シリンダブロックに付帯される補機のメンテナンスを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭61-179351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、2つのロアカバーをラビリンス構造にて組み付けている。ここで、ラビリンス構造での組み付けをする場合、一方向に組み付ける場合には着脱容易性の問題は少ないが、部材点数が多い場合や、ベルトカバーが立体的に構成される場合など、部材の着脱の際に、複数方向に部材を動かす必要が生じる場合がある。このとき、着脱容易性が問題となりうる。また、ベルトカバーには、着脱容易性に加え、防水・防塵のためのシール性が求められる。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、着脱容易性とシール性を備える内燃機関のベルトカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、内燃機関のベルトカバー構造であって、内燃機関本体(実施形態における(以下、本項において同じ)シリンダブロックCB)の一側面に配置され、クランク軸(10)とカム軸(11,12,13,14)との間で動力を伝達するタイミングベルト(TB)の少なくとも一部を収容する内燃機関(1)のベルトカバー構造であって、前記タイミングベルトよりも前記内燃機関に近い側において前記タイミングベルトを覆う内側カバー部材(オイルポンプケースOP)と、前記タイミングベルトよりも前記内燃機関から遠い側において前記タイミングベルトを覆う外側カバー部材(下側カバー9)と、を有し、前記外側カバー部材は、少なくとも、前記クランク軸の周囲を覆う下部外側カバー部材(下側カバー9)を有し、前記下部外側カバー部材の上方に隣接して、前記内燃機関本体に保持されるサイドマウントブラケット(8)が配置され、前記下部外側カバー部材と前記サイドマウントブラケットとは、それぞれ、互いに合せられる合せ面(96c、86c)が形成され、前記下部外側カバー部材の合せ面(96c)には、前記下部外側カバー部材と前記サイドマウントブラケットをシールする下部シール部材(41)が配置され、前記サイドマウントブラケットの合せ面(86c)は、前記下部外側カバー部材の合せ面を外側から覆うように構成され、前記下部外側カバー部材及び前記サイドマウントブラケットは、前記サイドマウントブラケットの合せ面が、前記下部シール部材を介して前記下部外側カバー部材の合せ面に押圧された状態で固定されており、前記内燃機関本体の前記一側面にはウォーターポンプケース(WP)が配置され、前記サイドマウントブラケットは、前記クランク軸の軸方向と直交する方向である幅方向における一方側の端部(8a)が前記ウォーターポンプケースを覆うように構成されるとともに、前記幅方向における他方側の端部(8b)が前記ウォーターポンプケースの外表面(37)に固定されるように構成され、前記サイドマウントブラケットを取付ける際には、前記サイドマウントブラケットが前記他方側へ移動させられ、前記サイドマウントブラケットを取外す際には、前記サイドマウントブラケットが前記一方側へ移動させられる構成であることを特徴とする。
【0008】
このように、サイドマウントブラケットの合せ面が、下部外側カバー部材の合せ面を外側から覆うように構成されることで、上下方向に隣接するサイドマウントブラケットと下部外側カバー部材とが、上下方向と交差する方向に固定されることになる。これにより、サイドマウントブラケットを下部外側カバー部材から取り外す際に、上下方向と交差する方向に取り外すことができる。この場合、例えば、サイドマウントブラケットの上方に他のカバーが配置されることで、サイドマウントブラケットを上方向に取り外すことが困難な場合であっても、サイドマウントブラケットを容易に取り外すことができる。また、下部外側カバー部材及びサイドマウントブラケットは、下部シール部材を介して、互いに押圧された状態で固定される。よって、着脱容易性とシール性を備える内燃機関のベルトカバーを提供することができる。
【0010】
また、取外し時にサイドマウントブラケットを一方側へ移動し、取付け時にサイドマウントブラケットを他方側へ移動する構成である場合に、サイドマウントブラケットの他方側の端部がウォーターポンプケースの外表面に固定される。これにより、サイドマウントブラケットの着脱の際、サイドマウントブラケットの他方側の端部は、一方側の端部のようにウォーターポンプケースを覆う場合と比較して、軸方向への移動量が少なくなる。よって、サイドマウントブラケットの着脱容易性を高くすることができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、内燃機関本体(シリンダブロックCB)の一側面に配置され、クランク軸とカム軸との間で動力を伝達するタイミングベルト(TB)の少なくとも一部を収容する内燃機関(1)のベルトカバー構造であって、前記タイミングベルトよりも前記内燃機関に近い側において前記タイミングベルトを覆う内側カバー部材(フロント内側カバー2)と、前記タイミングベルトよりも前記内燃機関から遠い側において前記タイミングベルトを覆う外側カバー部材(フロント外側カバー6)と、を有し、前記内側カバー部材は、少なくとも、前記カム軸の周囲を覆う上部内側カバー部材(フロント内側カバー2)を有し、前記外側カバー部材は、少なくとも、前記カム軸の周囲を覆う上部外側カバー部材(フロント外側カバー6)を有し、前記内燃機関本体の前記一側面には、前記上部内側カバー部材の下方に隣接するようにウォーターポンプケース(WP)が配置され、前記ウォーターポンプケースよりも前記内燃機関から遠い側において前記ウォーターポンプケースを覆うサイドマウントブラケット(8)が配置され、前記上部外側カバー部材は、前記サイドマウントブラケットに設けられた第一シール部材(第一上部シール部材51)を介して前記サイドマウントブラケットの上方に固定され、前記上部内側カバー部材は、前記サイドマウントブラケットに設けられた第二シール部材(第二上部シール部材52)を介して前記サイドマウントブラケットの上方及び前記ウォーターポンプケースの上方に固定され、前記第一シール部材の端部(51a)と前記第二シール部材の端部(52a)とは、互いに圧接されるように配置されることを特徴とする。
【0012】
このように、上部外側カバー部材とサイドマウントブラケットとの間をシールする第一シール部材と、上部内側カバー部材とサイドマウントブラケットとの間をシールする第二シール部材とが、互いの端部にて圧接されるように配置される。これにより、第一シール部材と第二シール部材との間のシール性を確保することができる。また、ウォーターポンプケースをサイドマウントブラケットが覆う構成としているため、ウォーターポンプのメンテナンスの際に、サイドマウントブラケットを取り外すことでメンテナンスが可能となるため、着脱が容易である。よって、着脱容易性とシール性を備える内燃機関のベルトカバーを提供することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の内燃機関のベルトカバー構造であって、前記サイドマウントブラケット及び前記ウォーターポンプケースには、締結ボルト(61)を挿通するためのボルトボス部(62)が連通するように形成され、前記サイドマウントブラケットは、前記ボルトボス部の近傍において、前記上部内側カバー部材及び前記上部外側カバー部材にわたって合わせられる合せ面(81)を有し、前記合せ面には、前記締結ボルトの締結力により、前記第一シール部材の端部と前記第二シール部材の端部とが互いに圧接されるように段差形状(81a)が形成されることを特徴とする。
【0014】
このように、サイドマウントブラケットの合せ面に、締結ボルトの締結力により、第一シール部材の端部と第二シール部材の端部とが互いに圧接されるような段差形状が形成される。これにより、締結ボルトをボルトボス部に挿通して締結することで、第一シール部材と第二シール部材とが互いに圧接され、シール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】内燃機関におけるタイミングベルトとタイミングベルトの内側に配置されるベルトカバーを示す図である。
図2】内燃機関におけるタイミングベルトの外側に配置されるベルトカバーを示す図である。
図3】ベルトカバーが組み付いた状態を示す内燃機関の側面図である。
図4】下側カバーを外側から見た斜視図である。
図5】サイドマウントブラケットを下側カバーに組み付ける状態を示す斜視図である。
図6】サイドマウントブラケットをウォーターポンプケースから取り外した状態を下方から見た図である。
図7】サイドマウントブラケットが上方の部材に対する組み付き構成を説明する斜視図である。
図8】サイドマウントブラケットの上方におけるシール部材の配置を説明する斜視図である。
図9】サイドマウントブラケット8の上方におけるシール構成及び締結構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の内燃機関1のベルトカバー構造について好ましい実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態では、内燃機関1が縦置きの場合を例示して説明する。また、内燃機関1のクランク軸10やカム軸11、12、13、14の延びる方向を軸方向、鉛直上方及び鉛直下方を上下方向、車両に内燃機関1を縦置きした場合の当該車両の前後方向を前後方向、として説明する。
【0017】
図1及び図2を用いて、内燃機関1のタイミングベルトTBの構造及び内燃機関1のベルトカバー構造の概略を説明する。図1は、内燃機関1におけるタイミングベルトTBとタイミングベルトTBの内側に配置されるベルトカバーを示す図である。図2は、内燃機関1におけるタイミングベルトTBの外側に配置されるベルトカバーを示す図である。なお、ここでの内側及び外側とは、タイミングベルトTBに対して内燃機関1のシリンダヘッドCH、CHまたはシリンダブロックCBに近い側を内側、その反対側を外側とする。
【0018】
図1に示すように、内燃機関1の一側面のシリンダヘッドCH、CH及びシリンダブロックCBには、クランク軸10とカム軸11、12、13、14が突出して配置される。クランク軸10とカム軸11、12、13、14は、それぞれ、駆動プーリ15、16、17、18、19と連結される。駆動プーリ15、16、17、18、19及びその他のプーリには、タイミングベルトTBが掛け渡される。これにより、クランク軸10と、カム軸11、12、13、14とは連動して回転する。
【0019】
図1及び図2に示すように、タイミングベルトTBは、ベルトカバーにより保護される。ベルトカバーは、内燃機関本体の一側面に組み付けられ、タイミングベルトTBを収容する。本実施形態のベルトカバーは、フロント内側カバー2と、リア内側カバー3と、上部外側カバー4と、下部外側カバー5と、リア外側カバー7と、サイドマウントブラケット8と、下側カバー9とを有する。各カバーの間は、シール部材等が配置されることにより、シールされる。各カバーの間がシール部材の配置等によりシールされることで、ベルトカバーは、全体として、タイミングベルトTBを液密状態で収容する。
【0020】
図1及び図2を用いて、本実施形態のベルトカバーの組み付け手順を説明する。まず、前提として、図1に示すように、内燃機関1にタイミングベルトTBが組み付けられる以前に、フロント内側カバー2及びリア内側カバー3が、シリンダヘッドCH、CHに対して組み付けられている。また、オイルポンプケースOPやウォーターポンプケースWPがシリンダブロックCBの一側面に組み付けられている。
【0021】
図2に示すように、下側カバー9が、クランク軸10の周囲を覆うように取り付けられ、サイドマウントブラケット8が下側カバー9の上方に隣接するように取り付けられる。その後、リア外側カバー7が、カム軸13、14の駆動プーリ18、19の外側を覆い、サイドマウントブラケット8の上方に隣接するように取り付けられる。また、下部外側カバー5が、サイドマウントブラケット8の上方に隣接するように取り付けられ、上部外側カバー4が、下部外側カバー5の上方に隣接するように取り付けられる。ここで、上部外側カバー4及び下部外側カバー5は、一体となって、カム軸11、12の駆動プーリ16、17の外側を覆うフロント外側カバー6を構成する。フロント外側カバー6は、リア外側カバー7よりも前方に配置される。
【0022】
図3は、ベルトカバーが組み付いた状態を示す内燃機関1の側面図である。図3に示すように、ベルトカバーが組み付いた状態においては、クランク軸10にはクランクプーリ20が接続され、フロント外側カバー6、リア外側カバー7の外側には、配管21が配置され、サイドマウントブラケット8の外側には、配管22が配置される。
【0023】
次に、本実施形態の内燃機関1のベルトカバー構造のうち、サイドマウントブラケット8と下側カバー9の組み付けについて説明する。図4は、下側カバー9を外側から見た斜視図である。図5は、サイドマウントブラケット8を下側カバー9に組み付ける状態を示す斜視図である。
【0024】
図4に示すように、下側カバー9の上端の外周面には、オイルポンプケースOPを囲うように、サイドマウントブラケット8の合せ面96cが形成される。合せ面96cには、下側カバー9とサイドマウントブラケット8をシールする下部シール部材41が配置される。また、下側カバー9の側壁の上端部は、内燃機関1の方向に突設された突設部94bを有する。
【0025】
下側カバー9の外表面には、下側カバー9の剛性を高めて下側カバー9の振動を抑制するため、複数の振動抑制リブが配置される。下側カバー9の外表面には、クランク軸10の開口99aを中心として、放射状に複数の扇形状の第一凸状リブ99bが4つ形成される。また、下側カバー9の外表面には、第一凸状リブ99bと周方向に隣接するように、I字状の第二凸状リブ99cが5つ配置される。第二凸状リブ99cの突出高さは、第一凸状リブ99bよりも突出高さが低く形成される。これらの第一凸状リブ99b間に設けられた第二凸状リブ99cにより、下側カバー9の剛性が高まり、クランク軸10やタイミングベルトTBの駆動による下側カバー9の膜面振動が抑えられ、合せ面96cの振動が抑えられる。このため、別途締結ボルト等で締結しなくても合せ面96cのシール性が維持でき、また、下部シール部材41の振動による劣化も低減することができる。なお、各リブの数は、本実施形態のリブの数に限るものではない。
【0026】
図5に示すように、下側カバー9の上端の外周面には、上下方向と交差する方向(軸方向で内燃機関1から遠い方向及び前後方向)において、オイルポンプケースOPを囲うように、下側カバー9の合せ面96cが形成される。下側カバー9の合せ面96cは、サイドマウントブラケット8に対して合わせられる。合せ面96cには、下側カバー9とサイドマウントブラケット8をシールする下部シール部材41が配置される。下部シール部材41は、下側カバー9の合せ面96cに形成される凹溝に嵌装される。
【0027】
サイドマウントブラケット8は、下側カバー9の上方に隣接して、シリンダブロックCBに保持される。サイドマウントブラケット8には、下側カバー9の合せ面96cに合わせられる、サイドマウントブラケット8の合せ面86cが形成される。サイドマウントブラケット8の合せ面86cは、サイドマウントブラケット8の下端の内面に形成される。サイドマウントブラケット8の合せ面86cは、下側カバー9の合せ面96cを、外部から覆うように構成される。なお、サイドマウントブラケット8の上端には、第一上部シール部材51と、第二上部シール部材52の一部とが配置される溝が形成される。第一上部シール部材51と第二上部シール部材52については後述する。
【0028】
この構成により、サイドマウントブラケット8を下側カバー9に組み付ける際には、サイドマウントブラケット8の合せ面86cが、下部シール部材41を介して下側カバー9の合せ面96cに押圧された状態で固定される。この固定は、不図示の締結ボルト等の締結部材にて行われる。下部シール部材41は、弾性部材により構成される。このように、サイドマウントブラケット8は、下側カバー9に対して、軸方向に押圧されて固定され、軸方向及びこれと交差する図における左右方向(前後方向)から下側カバー9を覆うことになる。
【0029】
図6を用いて、サイドマウントブラケット8とウォーターポンプケースWPとの関係を示す。図6は、サイドマウントブラケットをウォーターポンプケースから取り外した状態を下方から見た図である。ウォーターポンプケースWPは、ウォーターポンプを駆動する駆動プーリ31を具備する。
【0030】
サイドマウントブラケット8は、クランク軸10の軸方向と直交する方向であるサイドマウントブラケット8の幅方向(前後方向)における一方側(前方)の端部8aがウォーターポンプケースWPを覆うように構成される。また、サイドマウントブラケット8は、幅方向における他方側(後方)の端部8bが、ウォーターポンプケースWPの外表面37に固定されるように構成される。本実施形態においては、サイドマウントブラケット8からウォーターポンプケースWPを貫通してシリンダブロックCBに至るボルトボス部に、締結ボルト38が挿通されることで、サイドマウントブラケット8とウォーターポンプケースWPとが締結固定される。ただし、固定方法はこれに限るものではない。
【0031】
サイドマウントブラケット8は、ウォーターポンプケースWPに対する着脱の際、前後方向に移動させる。具体的には、サイドマウントブラケット8をウォーターポンプケースWPに取付ける際には、サイドマウントブラケット8を前方から後方に向かって移動した後、ウォーターポンプケースWPに固定される。一方、サイドマウントブラケット8をウォーターポンプケースWPから取外す際には、サイドマウントブラケット8の固定を解除した後、サイドマウントブラケット8を後方から前方に向かって移動する。
【0032】
サイドマウントブラケット8の軸方向の高さ(端部8aの内側端部を基準とした長さ)の違いについて説明する。サイドマウントブラケット8の前方の端部8aの高さH1は、ウォーターポンプケースWPの前方の端部36の前方及び外側を覆う高さに構成される。一方、サイドマウントブラケット8の後方の端部8bの高さH2は、ウォーターポンプケースWPの後方の外表面37の高さH3と同じ高さに構成される。
【0033】
上述のように、サイドマウントブラケット8の後方の端部8bは、ウォーターポンプケースWPの後方の外表面37に締結固定される。このため、ウォーターポンプケースWPの後方の外表面37の高さH3を高く構成することで、サイドマウントブラケット8の後方の端部8bの軸方向長さL1を短く構成することができる。ここで、サイドマウントブラケット8の外側には、サイドマウントブラケット8の上方から後方にかけて配管22が配置される(図3参照)。このため、軸方向長さL1を短く構成することで、サイドマウントブラケット8の着脱時における軸方向の移動量を少なくすることができ、サイドマウントブラケット8の着脱容易性をさらに向上させることができる。
【0034】
図7を用いて、サイドマウントブラケット8の上方における組み付き構成について説明する。図7は、サイドマウントブラケット8が上方の部材に対する組み付き構成を説明する斜視図である。以下では、サイドマウントブラケット8とフロント外側カバー6等の前方の組み付き構成のみを詳細に説明する。ただし、サイドマウントブラケット8とリア外側カバー7及びリア内側カバー3等の後方の組み付き構成も、サイドマウントブラケット8、ウォーターポンプケースWP、シリンダブロックCBと関連する点で、同様である。
【0035】
サイドマウントブラケット8の上方には、タイミングベルトTBよりも内燃機関1に近い側においてタイミングベルトTBを覆うフロント内側カバー2と、タイミングベルトTBより内燃機関1から遠い側においてタイミングベルトTBを覆うフロント外側カバー6と、が配置される。本実施形態では、サイドマウントブラケット8は、フロント外側カバー6のうちの下部外側カバー5に対して固定される。
【0036】
フロント内側カバー2は、カム軸11、12及び駆動プーリ16、17の内側を覆う。フロント外側カバー6は、カム軸11、12及び駆動プーリ16、17の周囲を覆う。シリンダブロックCBの軸方向の一側面には、フロント内側カバー2の下方に隣接するようにウォーターポンプケースWPが配置される。サイドマウントブラケット8は、ウォーターポンプケースWPよりも内燃機関1から遠い側(外側)において、ウォーターポンプケースWPを覆うように配置される。
【0037】
図8及び図9を用いて、サイドマウントブラケット8の上方におけるシール構成について説明する。図8は、サイドマウントブラケット8の上方におけるシール部材51、52の配置を説明する斜視図である。図9は、サイドマウントブラケット8の上方におけるシール構成及び締結構成を説明する断面図である。上述と同様、フロント側上方の構成のみを説明するが、リア側上方の構成も同様である。
【0038】
図8及び図9に示すように、サイドマウントブラケット8には、その上端部の合せ面81に、第一上部シール部材51と、第二上部シール部材52の一部とが配置される。合せ面81には、第一上部シール部材51と第二上部シール部材52の一部とを嵌装するための凹溝が形成されている。第一上部シール部材51は、フロント外側カバー6とサイドマウントブラケット8との間をシールする部材であり、第二上部シール部材52は、フロント内側カバー2とウォーターポンプケースWP及びサイドマウントブラケット8の内側端部との間をシールする部材である。第一上部シール部材51及び第二上部シール部材52は、弾性部材により構成される。
【0039】
第一上部シール部材51の端部51aと第二上部シール部材52の端部52aとは、互いに圧接されるように配置される。具体的には、第二上部シール部材52は、サイドマウントブラケット8の上方の合せ面81に形成される段差形状81aに沿って、第一上部シール部材51の高さよりも下方の位置から、上方に向かって立ち上がるように構成される。段差形状81aは、段差が形成される部分において、第一上部シール部材51が配置される位置が、第二上部シール部材52が配置される位置よりも高くなるように構成される。これにより、第一上部シール部材51の端部51aが、第二上部シール部材52の端部52aに当接するようになる。また、第一上部シール部材51の端部51aと第二上部シール部材52の端部52aとが当接する方向(前後方向)において、締結ボルト61によって締結固定される。締結ボルト61の締結力により、第一上部シール部材51の端部51aが第二上部シール部材52の端部52aに対して押圧され、第一上部シール部材51の端部51aと第二上部シール部材52の端部52aとは、互いに圧接される。
【0040】
図9に示すように、サイドマウントブラケット8、ウォーターポンプケースWP、シリンダブロックCBには、締結ボルト61を挿通するためのボルトボス部62が連通するように形成される。サイドマウントブラケット8の合せ面81は、ボルトボス部62の近傍の上端部に形成され、フロント内側カバー2及びフロント外側カバー6にわたって形成される。これにより、フロント外側カバー6のシールをする第一上部シール部材51の端部51aと、フロント内側カバー2のシールをする第二上部シール部材52の端部52aとが隣接する。
【0041】
また、合せ面81がボルトボス部62の近傍に形成されるため、合せ面81に形成される段差形状81aは、第二上部シール部材52が配置される位置よりも第一上部シール部材51が配置される位置の方が上方にある。ここで、締結ボルト61が挿通するボルトボス部62は、段差形状81aの位置よりも下方に形成されるため、ボルトボス部62からサイドマウントブラケット8の上端までの長さL2を、ボルトボス部62からウォーターポンプケースWPまでの長さと比較して長く構成することができる。締結ボルト61はサイドマウントブラケット8から挿入されるため、締結部におけるサイドマウントブラケット8の剛性を確保することができる。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、サイドマウントブラケット8の合せ面86cが、下側カバー9の合せ面96cを外側から覆うように構成され、上下方向に隣接するサイドマウントブラケット8と下側カバー9とが、上下方向と交差する方向に固定される。これにより、サイドマウントブラケット8を下側カバー9から取り外す際に、上下方向と交差する方向に取り外すことができる。この場合、サイドマウントブラケット8の上方に他のカバー(フロント外側カバー6やリア外側カバー7)が配置されることで、サイドマウントブラケット8を上方向に取り外すことが困難な場合であっても、サイドマウントブラケット8を容易に取り外すことができる。また、下側カバー9及びサイドマウントブラケット8は、下部シール部材41を介して、互いに押圧された状態で固定される。よって、着脱容易性とシール性を備える内燃機関1のベルトカバーを提供することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、取付け時にサイドマウントブラケット8を後方側へ移動し、取外し時にサイドマウントブラケット8を前方側へ移動する構成である場合に、サイドマウントブラケット8の後方側の端部8bがウォーターポンプケースWPの外表面37に固定される。これにより、サイドマウントブラケット8の着脱の際、サイドマウントブラケット8の後方側の端部8bは、前方側の端部8aのようにウォーターポンプケースWPを覆う場合と比較して、軸方向への移動量が少なくなる。よって、サイドマウントブラケット8の着脱容易性を高くすることができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、フロント外側カバー6とサイドマウントブラケット8との間をシールする第一上部シール部材51と、フロント内側カバー2とサイドマウントブラケット8との間をシールする第二上部シール部材52とが、互いの端部51a、52aにて圧接されるように配置される。これにより、第一上部シール部材51と第二上部シール部材52との間のシール性を確保することができる。また、ウォーターポンプケースWPをサイドマウントブラケット8が覆う構成としている。このため、ウォーターポンプのメンテナンスの際に、下側カバー9を取り外さなくとも、サイドマウントブラケット8を取り外すことでメンテナンスが可能となるため、着脱が容易である。よって、着脱容易性とシール性を備える内燃機関1のベルトカバーを提供することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、サイドマウントブラケット8の合せ面81に、締結ボルト61の締結力により、第一上部シール部材51の端部51aと第二上部シール部材52の端部52aとが互いに圧接されるような段差形状81aが形成される。これにより、締結ボルト61をボルトボス部62に挿通して締結することで、第一上部シール部材51と第二上部シール部材52とが互いに圧接され、シール性を確保することができる。
【0046】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。前述の実施形態では、クランク軸10からカム軸11、12、13、14へ駆動伝達する伝動帯としてタイミングベルトTBを用いたが、これに限るものではない。例えば、内燃機関1の伝動構造の一例として、タイミングチェーンから成る伝動帯を、スプロケットから成るクランク軸駆動輪とカム軸被動輪に掛け渡すことで構成されるチェーン伝達機構としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…内燃機関
2…フロント内側カバー(上部内側カバー部材)
6…フロント外側カバー(外側カバー部材、上部外側カバー部材)
8…サイドマウントブラケット
8a、8b…端部
9…下側カバー(外側カバー部材、下部外側カバー部材)
41…下部シール部材
51…第一上部シール部材(第一シール部材)
52…第二上部シール部材(第二シール部材)
51a、52a…端部
61…締結ボルト
62…ボルトボス部
81…合せ面
81a…段差形状
86c…合せ面
96c…合せ面
CB…シリンダブロック(内燃機関本体)
OP…オイルポンプケース(内側カバー部材)
TB…タイミングベルト
WP…ウォーターポンプケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9