(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】機械学習装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241211BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241211BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G06T7/00 350B
(21)【出願番号】P 2023532939
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2021025580
(87)【国際公開番号】W WO2023281647
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 淑実
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-125116(JP,A)
【文献】特開2018-026021(JP,A)
【文献】特開2019-114149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオ画像である第1の撮像画像に含まれる左画像および右画像のうちの、前記左画像におけるエッジ強度が所定強度以上である画像部分と、前記右画像におけるエッジ強度が所定強度以上である画像部分とのマッチングにより得られた複数の距離値を含む第1の距離画像を生成し、前記左画像、前記右画像、および前記第1の距離画像に基づいて、3次元空間における距離が互いに所定距離以下である複数の点をグルーピングすることにより第2の距離画像を生成する処理部と、
前記第1の撮像画
像および前
記第2の距離画像
に含まれる複数の距離値に基づいて、前記第1の撮像画像に含まれる路面を検出する路面検出処理部と、
前記第1の撮像画
像および前記第2の距離画像
に含まれる複数の距離値に基づいて、前記第1の撮像画像に含まれる前記路面よりも上に位置する立体物を検出する立体物検出処理部と、
前記第2の距離画像に含まれる複数の距離値のうち、前記路面検出処理部
における検出処理および前記立体物検出処理部
における検出処理のうちの少なくとも一方において採用された1以上の距離値を選択する距離値選択部と、
前記第1の撮像画像に含まれる前記左画像および前記右画像のうちの明瞭な画像である入力画像、および前記距離値選択部により選択された前記1以上の距離値
を使用して機械学習処理を行うことにより、第2の撮像画像が入力され前記第2の撮像画像に応じた
第3の距離画像が出力される学習モデルを生成する学習処理部と
を備え
た機械学習装置。
【請求項2】
前記1以上の距離値は、前記第1の撮像画像に含まれる前記路面までの距離値を含む
請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
前記1以上の距離値は、前記第1の撮像画像に含まれる前記路面よりも上に位置する立体物までの距離値を含む
請求項
1に記載の機械学習装置。
【請求項4】
前記学習処理部は、前記1以上の距離値に基づいて、
前記入力画像の全体画像領域のうちの前記1以上の距離に対応する画像領域について前記機械学習処理を行う
請求項1に記載の機械学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像画像および距離画像に基づいて学習処理を行う機械学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、しばしば、車外環境が検出され、その検出結果に基づいて車両の制御が行われる。車外環境の認識では、しばしば、車両から周囲の立体物までの距離が検出される。特許文献1には、撮像画像および距離画像に基づいてニューラルネットワークの演算処理を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ところで、撮像画像に基づいて距離画像を生成する学習モデルがある。生成された距離画像は、精度が高いことが望まれており、さらなる精度の向上が期待されている。
【0005】
高精度の距離画像を生成する学習モデルを生成することができる機械学習装置を提供することが望ましい。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る機械学習装置は、処理部と、路面検出処理部と、立体物検出部と、距離値選択部と、学習処理部とを備えている。処理部は、ステレオ画像である第1の撮像画像に含まれる左画像および右画像のうちの、左画像におけるエッジ強度が所定強度以上である画像部分と、右画像におけるエッジ強度が所定強度以上である画像部分とのマッチングにより得られた複数の距離値を含む第1の距離画像を生成し、左画像、右画像、および第1の距離画像に基づいて、3次元空間における距離が互いに所定距離以下である複数の点をグルーピングすることにより第2の距離画像を生成するように構成される。路面検出処理部は、第1の撮像画像および第2の距離画像に含まれる複数の距離値に基づいて、第1の撮像画像に含まれる路面を検出するように構成される。立体物検出部は、第1の撮像画像および第2の距離画像に含まれる複数の距離値に基づいて、第1の撮像画像に含まれる路面よりも上に位置する立体物を検出するように構成される。距離値選択部は、第2の距離画像に含まれる複数の距離値のうち、路面検出処理部における検出処理および立体物検出処理部における検出処理のうちの少なくとも一方において採用された1以上の距離値を選択するように構成される。学習処理部は、第1の撮像画像に含まれる左画像および右画像のうちの明瞭な画像である入力画像、および距離値選択部により選択された1以上の距離値を使用して機械学習処理を行うことにより、第2の撮像画像が入力され第2の撮像画像に応じた第3の距離画像が出力される学習モデルを生成するように構成される。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る機械学習装置によれば、高精度の距離画像を生成する学習モデルを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る機械学習装置が生成した学習データが用いられる車外環境認識システムの一構成例を表すブロック図である。
【
図2】本開示の一実施の形態に係る機械学習装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図3】
図2に示した路面検出処理部の一動作例を表す説明図である。
【
図4】
図2に示した路面検出処理部の一動作例を表す他の説明図である。
【
図5】
図2に示した路面検出処理部の一動作例を表す他の説明図である。
【
図6】
図2に示した学習モデルに係るニューラルネットワークの一構成例を表す説明図である。
【
図7】
図2に示した機械学習装置の一動作例を表す画像図である。
【
図8】
図2に示した機械学習装置の一動作例を表す他の画像図である。
【
図9】
図2に示した機械学習装置の一動作例を表す他の画像図である。
【
図10】
図2に示した機械学習装置の一動作例を表す他の画像図である。
【
図11】
図1に示した車外環境認識システムにおける撮像画像の一例を表す画像図である。
【
図12】
図1に示した車外環境認識システムにおいて生成された、参考例に係る距離画像の一例を表す画像図である。
【
図13】
図1に示した車外環境認識システムにおいて生成された距離画像の一例を表す画像図である。
【
図14】変形例に係る機械学習装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図15】他の変形例に係る機械学習装置の一構成例を表すブロック図である。
【
図16】他の変形例に係る機械学習装置の一構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
<実施の形態>
[構成例]
図1は、一実施の形態に係る機械学習装置(機械学習装置20)により生成された学習モデルを用いて処理が行われる車外環境認識システム10の一構成例を表すものである。車外環境認識システム10は、自動車等の車両100に搭載される。車外環境認識システム10は、ステレオカメラ11と、処理部12とを備えている。
【0011】
ステレオカメラ11は、車両100の前方を撮像することにより、互いに視差を有する一組の画像(左画像PL1および右画像PR1)を生成するように構成される。ステレオカメラ11は、左カメラ11Lと、右カメラ11Rとを有する。左カメラ11Lおよび右カメラ11Rのそれぞれは、レンズとイメージセンサとを含んでいる。左カメラ11Lおよび右カメラ11Rは、この例では、車両100の車両内において、車両100のフロントガラスの上部近傍に、車両100の幅方向に所定距離だけ離間して配置される。左カメラ11Lは左画像PL1を生成し、右カメラ11Rは右画像PR1を生成する。左画像PL1および右画像PR1は、ステレオ画像PIC1を構成する。ステレオカメラ11は、所定のフレームレート(例えば60[fps])で撮像動作を行うことにより、一連のステレオ画像PIC1を生成し、生成したステレオ画像PIC1を処理部12に供給するようになっている。
【0012】
処理部12は、例えば、プログラムを実行する1または複数のプロセッサ、処理データを一時的に記憶する1または複数のRAM(Random Access Memory)、プログラムを記憶する1または複数のROM(Read Only Memory)などにより構成される。処理部12は、距離画像生成部13,14と、車外環境認識部15とを有している。
【0013】
距離画像生成部13は、左画像PL1および右画像PR1に基づいて、ステレオマッチング処理やフィルタリング処理などを含む所定の画像処理を行うことにより、距離画像PZ13を生成するように構成される。具体的には、距離画像生成部13は、左画像PL1および右画像PR1に基づいて、互いに対応する2つの画像点(左画像点および右画像点)を含む対応点を特定する。左画像点は、例えば、左画像PL1における、例えば4行4列に配置された16個の画素を含み、右画像点は、例えば、右画像PR1における、例えば4行4列に配置された16個の画素を含む。左画像PL1における左画像点の横座標値と右画像PR1における右画像点の横座標値との差は、3次元の実空間における距離値に対応する。距離画像生成部13は、特定された複数の対応点に基づいて、距離画像PZ13を生成するようになっている。距離画像PZ13は、複数の距離値を含む。複数の距離値のそれぞれは、3次元の実空間における実際の距離値であってもよいし、左画像PL1における左画像点の横座標値と右画像PR1における右画像点の横座標値との差である視差値であってもよい。
【0014】
距離画像生成部14は、この例では左画像PL1および右画像PR1のうちの一方である撮像画像に基づいて、学習モデルMを用いて、距離画像PZ14を生成するように構成される。学習モデルMは、撮像画像が入力され、距離画像PZ14が出力される、ニューラルネットワークのモデルである。この学習モデルMは、予め、後述する機械学習装置20により生成され、車両100の距離画像生成部14に記憶される。距離画像PZ14は、距離画像PZ13と同様に、複数の距離値を含む。
【0015】
車外環境認識部15は、左画像PL1、右画像PR1、および距離画像PZ13,PZ14に基づいて、車両100の車外環境を認識するように構成される。車両100では、例えば、車外環境認識部15が認識した車外の立体物についての情報に基づいて、例えば、車両100の走行制御を行い、あるいは、認識した立体物についての情報をコンソールモニタに表示することができるようになっている。
【0016】
図2は、学習モデルMを生成する機械学習装置20の一構成例を表すものである。機械学習装置20は、例えばサーバ装置である。機械学習装置20は、記憶部21と、処理部22とを備えている。
【0017】
記憶部21は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶装置である。記憶部21は、画像データDTと、学習モデルMとを記憶している。
【0018】
画像データDTは、複数のステレオ画像PIC2の画像データである。複数のステレオ画像PIC2のそれぞれは、
図1に示したステレオ画像PIC1と同様に、ステレオカメラにより生成され、この記憶部21に記憶される。複数のステレオ画像PIC2のそれぞれは、
図1に示したステレオ画像PIC1と同様に、左画像PL2および右画像PR2を含む。
【0019】
学習モデルMは、車両100の距離画像生成部14(
図1)において使用されるモデルである。この学習モデルMは、処理部22により生成され、この記憶部21に記憶される。そして、記憶部21に記憶された学習モデルMは、車両100の距離画像生成部14に設定されるようになっている。
【0020】
処理部22は、例えば、プログラムを実行する1または複数のプロセッサ、処理データを一時的に記憶する1または複数のRAMなどにより構成される。処理部22は、画像データ取得部23と、距離画像生成部24と、画像処理部25とを有している。
【0021】
画像データ取得部23は、記憶部21から、複数のステレオ画像PIC2を取得し、複数のステレオ画像PIC2のそれぞれに含まれる左画像PL2および右画像PR2を、距離画像生成部24に順次供給するように構成される。
【0022】
距離画像生成部24は、車両100における距離画像生成部13(
図1)と同様に、左画像PL2および右画像PR2に基づいて、ステレオマッチング処理やフィルタリング処理などを含む所定の画像処理を行うことにより、距離画像PZ24を生成するように構成される。
【0023】
画像処理部25は、左画像PL2、右画像PR2、および距離画像PZ24に基づいて、所定の画像処理を行うことにより、学習モデルMを生成するように構成される。画像処理部25は、画像エッジ検出部31と、グルーピング処理部32と、路面検出処理部33と、立体物検出処理部34と、距離値選択部35と、画像選択部36と、学習処理部37とを有している。
【0024】
画像エッジ検出部31は、左画像PL2におけるエッジ強度が強い画像部分を検出するとともに、右画像PR2におけるエッジ強度が強い画像部分を検出するように構成される。そして、画像エッジ検出部31は、距離画像PZ24に含まれる、検出された画像部分に基づいて得られた距離値を特定する。すなわち、距離画像生成部24は、左画像PL2および右画像PR2に基づいてステレオマッチング処理を行うので、左画像PL2および右画像PR2におけるエッジ強度が強い画像部分に基づいて得られた距離値は、精度が高いことが期待される。よって、画像エッジ検出部31は、距離画像PZ24に含まれる複数の距離値のうちの、このような精度が高いことが期待される複数の距離値を特定する。そして、画像エッジ検出部31は、特定された複数の距離値を含む距離画像PZ31を生成するようになっている。
【0025】
グルーピング処理部32は、左画像PL2、右画像PR2、および距離画像PZ31に基づいて、3次元空間における距離が互いに近い複数の点をグルーピングすることにより、距離画像PZ32を生成するように構成される。すなわち、距離画像生成部24がステレオマッチング処理を行う際、画像によっては、ミスマッチにより誤った対応点を特定してしまう場合がある。例えば、距離画像PZ31における、そのミスマッチに係る距離値は、その周囲の距離値と乖離し得る。グルーピング処理部32は、グルーピング処理を行うことにより、そのようなミスマッチに係る距離値をある程度除去することができるようになっている。
【0026】
路面検出処理部33は、左画像PL2、右画像PR2、および距離画像PZ32に基づいて、路面を検出するように構成される。
【0027】
図3~5は、路面検出処理部33の一動作例を表すものである。路面検出処理部33は、まず、
図3に示したように、例えば左画像PL2および右画像PR2の一方に基づいて、演算対象領域RAを設定する。この例では、演算対象領域RAは、車線を区画する2つの区画線90L,90Rに挟まれた領域である。そして、路面検出処理部33は、
図3に示したように、距離画像PZ32において、水平ラインHLを順次選択し、各水平ラインHLにおける演算対象領域RAの領域内の距離値に基づいて、距離についてのヒストグラムを生成する。
図4に示したヒストグラムH
jは、下からj番目の水平ラインHL
jに係るヒストグラムである。横軸は、車両の車長方向の座標zの値を示し、縦軸は頻度を示す。この例では、座標値z
jにおいて、頻度が一番高くなっている。路面検出処理部33は、この頻度が一番高い座標値z
jを、j番目の水平ラインHL
jにおける代表距離として求める。路面検出処理部33は、このようにして、複数の水平ラインHLにおける代表距離を得る。そして、路面検出処理部33は、
図5に示したように、これらの代表距離を、z-j平面に、距離点Dとしてプロットする。この例では、z-j平面には、0番目の水平ラインHL
0の代表距離を示す距離点D
0(z
0,0)、1番目の水平ラインHL
1の代表距離を示す距離点D
1(z
1,1)、2番目の水平ラインHL
2の代表距離を示す距離点D
2(z
2,2)を含む複数の距離点Dがプロットされている。これらの距離点Dは、この例では、ほぼ一直線上に配置されている。路面検出処理部33は、例えばこれらの距離点Dに基づいて、フィッティング処理を行うことにより、路面を示す関数を得る。このようにして、路面検出処理部33は、路面を検出するようになっている。
【0028】
また、路面検出処理部33は、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうち、この路面検出処理において採用された複数の距離値についての情報を、距離値選択部35に供給する。すなわち、路面検出処理部33は、上述したように、複数の水平ラインHLのそれぞれにおける代表距離に基づいて、路面を検出する。よって、複数の水平ラインHLのそれぞれにおいて、代表距離を構成する複数の距離値が、路面検出処理において採用され、代表距離を構成しない複数の距離値は、路面検出処理において採用されない。路面検出処理部33は、この路面検出処理において採用された複数の距離値についての情報を、距離値選択部35に供給するようになっている。
【0029】
立体物検出処理部34は、左画像PL2、右画像PR2、および距離画像PZ32に基づいて、立体物を検出するように構成される。立体物検出処理部34は、路面検出処理部33により得られた路面よりも上において、3次元空間における距離が互いに近い複数の点をグルーピングすることにより、立体物を検出する。具体的には、立体物検出処理部34は、3次元空間における距離が例えば0.1m以内である複数の点をグルーピングすることにより、立体物を検出することができる。
【0030】
また、立体物検出処理部34は、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうち、この立体物検出処理において採用された複数の距離値についての情報を、距離値選択部35に供給する。上述したように、立体物検出処理部34は、路面よりも上において、3次元空間における距離が互いに近い複数の点をグルーピングすることにより、立体物を検出する。よって、立体物付近における所望の距離値が、立体物検出処理において採用され、例えば、後述するように、立体物付近におけるミスマッチに係る距離値や、路面がぬれている場合における鏡面反射に係る距離値は、立体物検出処理において採用されない。立体物検出処理部34は、この立体物検出処理において採用された複数の距離値についての情報を、距離値選択部35に供給するようになっている。
【0031】
距離値選択部35は、グルーピング処理部32から供給された距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、学習処理部37に供給する複数の距離値を選択するように構成される。距離値選択部35は、例えば、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、路面検出処理において使用された複数の距離値を、学習処理部37に供給する複数の距離値として選択することができる。また、距離値選択部35は、例えば、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、立体物検出処理において使用された複数の距離値を、学習処理部37に供給する複数の距離値として選択することができる。また、距離値選択部35は、例えば、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、立体物検出処理および路面検出処理において使用された複数の距離値を、学習処理部37に供給する複数の距離値として選択することができる。そして、距離値選択部35は、選択された複数の距離値を含む距離画像PZ35を学習処理部37に供給するようになっている。
【0032】
画像選択部36は、左画像PL2および右画像PR2の一方である撮像画像P2を、学習処理部37に供給するように構成される。画像選択部36は、例えば左画像PL2および右画像PR2のうちの明瞭な画像を、撮像画像P2として選択することができるようになっている。
【0033】
学習処理部37は、撮像画像P2および距離画像PZ35に基づいて、ニューラルネットワークを用いて機械学習処理を行うことにより、学習モデルMを生成するように構成される。学習処理部37には、撮像画像P2が供給されるとともに、距離画像PZ35が、期待値として供給される。学習処理部37は、これらの画像に基づいて機械学習処理を行うことにより、撮像画像が入力され距離画像が出力される学習モデルMを生成するようになっている。
【0034】
図6は、ニューラルネットワークの一構成例を表すものである。この例では、
図6の左から撮像画像が入力され、
図6の右から距離画像が出力される。このニューラルネットワークでは、例えば、撮像画像に基づいて圧縮処理A1が行われ、圧縮されたデータに基づいて畳み込み処理A2が行われる。ニューラルネットワークでは、この圧縮処理A1および畳み込み処理A2が複数回繰り返される。そして、その後に、生成されたデータに基づいてアップサンプリング処理B1が行われ、アップサンプリング処理B1が行われたデータに基づいて畳み込み処理B2が行われる。ニューラルネットワークでは、このアップサンプリング処理B1および畳み込み処理B2が複数回繰り返される。畳み込み処理A2,B2では、所定の大きさ(例えば3画素×3画素)のフィルタが用いられる。
【0035】
学習処理部37は、ニューラルネットワークに撮像画像P2を入力し、出力された距離画像における複数の距離値と、期待値である距離画像PZ35における複数の距離値との差分値をそれぞれ算出する。そして、学習処理部37は、例えば、これらの差分値が十分に小さくなるように、畳み込み処理A2,B2において使用するフィルタの値を調節する。学習処理部37は、このようにして、機械学習処理を行う。
【0036】
学習処理部37は、例えば、画像領域ごとに、学習処理を行うかどうかを設定することができる。具体的には、学習処理部37は、距離値選択部35から距離値が供給された画像領域について、機械学習処理を行い、距離値選択部35から距離値が供給されなかった画像領域について、機械学習処理を行わないようにすることができる。例えば、学習処理部37は、距離値選択部35から距離値が供給されなかった画像領域における、距離値の差分値を強制的に“0”にすることにより、この画像領域について、機械学習処理を行わないようにすることができる。
【0037】
例えば、
図6に示したニューラルネットワークにおいて、層の数がより多い場合には、大局的な視野を有する学習モデルになり得る。このようなニューラルネットワークに対して、ぼかした撮像画像を入力して機械学習処理を行うことにより、例えば、テクスチャの少ない撮像画像に基づいて、より多くの距離値を得ることができる学習モデルMを生成することができる。
【0038】
ここで、画像エッジ検出部31およびグルーピング処理部32は、本開示における「処理部」の一具体例に対応する。路面検出処理部33は、本開示における「路面検出処理部」の一具体例に対応する。立体物検出処理部34は、本開示における「立体物検出処理部」の一具体例に対応する。距離値選択部35は、本開示における「距離値選択部」の一具体例に対応する。学習処理部37は、本開示における「学習処理部」の一具体例に対応する。ステレオ画像PIC2は、本開示における「第1の撮像画像」の一具体例に対応する。距離画像PZ31は、本開示における「第1の距離画像」の一具体例に対応する。距離画像PZ32は、本開示における「第2の距離画像」の一具体例に対応する。
【0039】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の機械学習装置20および車外環境認識システム10の動作および作用について説明する。
【0040】
(全体動作概要)
まず、
図2を参照して、機械学習装置20の動作を説明する。機械学習装置20は、例えばステレオカメラにより生成された複数のステレオ画像PIC2を含む画像データDTを記憶部21に記憶させる。処理部22の画像データ取得部23は、記憶部21から、複数のステレオ画像PIC2を取得し、複数のステレオ画像PIC2のそれぞれに含まれる左画像PL2および右画像PR2を、距離画像生成部24に順次供給する。距離画像生成部24は、左画像PL2および右画像PR2に基づいて、ステレオマッチング処理やフィルタリング処理などを含む所定の画像処理を行うことにより、距離画像PZ24を生成する。画像処理部25の画像エッジ検出部31は、左画像PL2におけるエッジ強度が強い画像部分を検出するとともに、右画像PR2におけるエッジ強度が強い画像部分を検出する。そして、画像エッジ検出部31は、距離画像PZ24に含まれる、検出された画像部分に基づいて得られた距離値を特定し、特定された複数の距離値を含む距離画像PZ31を生成する。グルーピング処理部32は、左画像PL2、右画像PR2、および距離画像PZ31に基づいて、3次元空間における距離が互いに近い点をグルーピングすることにより、距離画像PZ32を生成する。路面検出処理部33は、左画像PL2、右画像PR2、および距離画像PZ32に基づいて、路面を検出する。また、路面検出処理部33は、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうち、この路面検出処理において採用された複数の距離値についての情報を、距離値選択部35に供給する。立体物検出処理部34は、左画像PL2、右画像PR2、および距離画像PZ32に基づいて、立体物を検出する。また、立体物検出処理部34は、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうち、この立体物検出処理において採用された複数の距離値についての情報を、距離値選択部35に供給する。距離値選択部35は、グルーピング処理部32から供給された距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、学習処理部37に供給する複数の距離値を選択する。画像選択部36は、左画像PL2および右画像PR2の一方である撮像画像P2を、学習処理部37に供給する。学習処理部37は、撮像画像P2および距離画像PZ35に基づいて、ニューラルネットワークを用いて機械学習処理を行うことにより、学習モデルMを生成する。そして、処理部22は、この学習モデルMを記憶部21に記憶させる。そして、このようにして生成された学習モデルMは、車外環境認識システム10の距離画像生成部14に設定される。
【0041】
次に、
図1を参照して、車外環境認識システム10の動作を説明する。ステレオカメラ11は、車両100の前方を撮像することにより、互いに視差を有する左画像PL1および右画像PR1を生成する。処理部12の距離画像生成部13は、左画像PL1および右画像PR1に基づいて、ステレオマッチング処理やフィルタリング処理などを含む所定の画像処理を行うことにより、距離画像PZ13を生成する。距離画像生成部14は、この例では左画像PL1および右画像PR1のうちの一方である撮像画像に基づいて、機械学習装置20が生成した学習モデルMを用いて、距離画像PZ14を生成する。車外環境認識部15は、左画像PL1、右画像PR1、および距離画像PZ13,PZ14に基づいて、車両100の車外環境を認識する。
【0042】
(詳細動作)
次に、機械学習装置20における画像処理部25(
図2)の動作について、詳細に説明する。
【0043】
まず、画像エッジ検出部31は、左画像PL2におけるエッジ強度が強い画像部分を検出するとともに、右画像PR2におけるエッジ強度が強い画像部分を検出する。そして、画像エッジ検出部31は、距離画像PZ24に含まれる、検出された画像部分に基づいて得られた距離値を特定する。すなわち、距離画像生成部24は、左画像PL2および右画像PR2に基づいてステレオマッチング処理を行うので、左画像PL2および右画像PR2におけるエッジ強度が強い画像部分に基づいて得られた距離値は、精度が高いことが期待される。よって、画像エッジ検出部31は、距離画像PZ24に含まれる複数の距離値のうちの、このような精度が高いことが期待される複数の距離値を特定する。そして、画像エッジ検出部31は、特定された複数の距離値を含む距離画像PZ31を生成する。
【0044】
図7は、距離画像PZ31の一例を表すものである。この
図7において、網掛けは、距離値を有する部分を示す。網掛けの濃淡は、距離値の密度を示す。すなわち、薄い網掛けの部分では、得られた距離値の密度が低く、濃い網掛けの部分では、得られた距離値の密度が高い。例えば、路面では、テクスチャが少なく、ステレオマッチングにおいて対応点を検出しにくいので、距離値の密度は低い。一方、例えば、路面における区画線や、車両などの立体物では、ステレオマッチングにおいて対応点を検出しやすいので、距離値の密度は高い。
【0045】
次に、グルーピング処理部32は、左画像PL2、右画像PR2、および距離画像PZ31に基づいて、3次元空間における距離が互いに近い複数の点をグルーピングすることにより、距離画像PZ32を生成する。
【0046】
図8は、距離画像PZ32の一例を表すものである。この距離画像PZ32では、
図7に示した距離画像PZ31に比べて、例えば、得られた距離値の密度が低い部分において、距離値が除去されている。距離画像生成部24がステレオマッチング処理を行う際、画像によっては、ミスマッチにより誤った対応点を特定してしまう可能性がある。例えば、路面のように、テクスチャが少ない部分では、対応点が少なく、また、このようなミスマッチに係る対応点も多い。ミスマッチに係る距離値は、その周囲の距離値と乖離し得る。グルーピング処理部32は、グルーピング処理を行うことにより、そのようなミスマッチに係る距離値をある程度除去することができる。
【0047】
この
図8では、例えば雨により路面がぬれており、路面による鏡面反射が生じている。部分W1は、路面により反射された先行車両9のテールランプの像を示す。この部分W1における距離値は、自車両から先行車両9までの距離に対応し得る。しかしながら、この像自体は、路面に生じている。距離画像PZ32では、このような虚像が含まれ得る。
【0048】
次に、路面検出処理部33は、左画像PL2、右画像PR2、および距離画像PZ32に基づいて、路面を検出する。また、路面検出処理部33は、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうち、この路面検出処理において採用された複数の距離値についての情報を、距離値選択部35に供給する。
【0049】
図9は、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、この路面検出処理において採用された複数の距離値を示す距離画像を表すものである。この
図9に示したように、路面検出処理において採用された複数の距離値のそれぞれは、路面に対応する部分に位置する。すなわち、これらの複数の距離値のそれぞれは、自車両から路面までの距離を示す。
【0050】
この距離画像では、部分W2に示したように、鏡面反射の虚像に起因する距離値が除去される。すなわち、上述したように、
図8の部分W1における距離値は、自車両から先行車両9までの距離に対応し得る。しかしながら、路面検出処理における、複数の水平ラインHLのそれぞれに係るヒストグラムにおいて、この距離値における頻度は低いので、この距離値は代表距離になりにくい。その結果、この距離値は、路面検出処理において採用されないので、
図9に示した距離画像において除去される。
【0051】
このように、路面検出処理において採用された複数の距離値を示す距離画像(
図9)では、
図8に示した距離画像PZ32に比べて、距離値のノイズが低減される。
【0052】
次に、立体物検出処理部34は、左画像PL2、右画像PR2、および距離画像PZ32に基づいて、立体物を検出する。また、立体物検出処理部34は、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうち、この立体物検出処理において採用された複数の距離値についての情報を、距離値選択部35に供給する。
【0053】
図10は、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、この立体物検出処理において採用された複数の距離値を示す距離画像を表すものである。この
図10に示したように、立体物検出処理において採用された複数の距離値のそれぞれは、これらの立体物に対応する部分に位置する。すなわち、これらの複数の距離値のそれぞれは、自車両から、路面より上に位置する立体物までの距離を示す。
【0054】
立体物検出処理部34は、路面よりも上において、3次元空間における距離が互いに近い複数の点をグルーピングすることにより、立体物を検出する。立体物付近におけるミスマッチに係る距離値は、その周囲の距離値と乖離し得る。よって、立体物検出処理部34は、車両の側面や壁などにおけるミスマッチに係る距離値を除去することができる。
【0055】
この距離画像でも、部分W3に示したように、鏡面反射の虚像に起因する距離値が除去される。すなわち、上述したように、
図8の部分W1における距離値は、自車両から先行車両9までの距離に対応し得る。しかしながら、この像自体は、路面に生じている。よって、この像に基づいて得られる3次元空間における位置は、路面の下である。立体物検出処理部34は、路面よりも上の像に基づいて立体物を検出する。その結果、この距離値は、立体物検出処理において採用されないので、
図10に示した距離画像において除去される。
【0056】
このように、立体物検出処理において採用された複数の距離値を示す距離画像(
図10)では、
図8に示した距離画像PZ32に比べて、距離値のノイズが低減される。
【0057】
距離値選択部35は、グルーピング処理部32から供給された距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、学習処理部37に供給する複数の距離値を選択する。距離値選択部35は、例えば、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、路面検出処理において使用された複数の距離値を、学習処理部37に供給する複数の距離値として選択することができる。また、距離値選択部35は、例えば、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、立体物検出処理において使用された複数の距離値を、学習処理部37に供給する複数の距離値として選択することができる。また、距離値選択部35は、例えば、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、立体物検出処理および路面検出処理において使用された複数の距離値を、学習処理部37に供給する複数の距離値として選択することができる。そして、距離値選択部35は、選択された複数の距離値を含む距離画像PZ35を学習処理部37に供給する。このようにして、学習処理部37には、距離値のノイズが低減された距離画像PZ35が供給される。
【0058】
画像選択部36は、左画像PL2および右画像PR2の一方である撮像画像P2を、学習処理部37に供給する。そして、学習処理部37は、撮像画像P2および距離画像PZ35に基づいて、ニューラルネットワークを用いて機械学習処理を行うことにより、学習モデルMを生成する。学習処理部37には、撮像画像P2が供給されるとともに、距離画像PZ35が、期待値として供給される。学習処理部37には、距離値のノイズが低減された距離画像PZ35が供給されるので、精度のよい学習モデルMを生成することができる。
【0059】
次に、このようにして生成された学習モデルMを用いて、車外環境認識システム10の距離画像生成部14が生成した距離画像PZ14について説明する。
【0060】
図11は、車外環境認識システム10におけるステレオカメラ11が生成した撮像画像の一例を表すものである。この
図11では、例えば雨により路面がぬれており、路面による鏡面反射が生じている。部分W4は、路面により反射された電柱の像を示す。
【0061】
図12,13は、距離画像生成部14が、
図11に示した撮像画像に基づいて学習モデルMを用いて生成した距離画像PZ14の一例を表すものである。
図12は、機械学習装置20において、学習モデルMが、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値の全てに基づいて生成された場合を示す。
図13は、機械学習装置20において、学習モデルMが、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、立体物検出処理および路面検出処理において使用された複数の距離値に基づいて生成された場合を示す。
図12,13において、網掛けの濃淡は、距離値を示している。薄い網掛けは、距離値が小さいことを示し、濃い網掛けは、距離値が大きいことを示す。
【0062】
図12の例では、部分W5に示したように、鏡面反射による虚像の影響により、距離値に乱れが生じている。電柱が写っている路面までの距離は近いが、実際の電柱までの距離は遠いので、
図12に示したように部分W5における距離値は大きい。このように、距離画像生成部14は、入力された撮像画像に基づいて、そのままの距離値を出力する。
【0063】
この
図12の例では、学習モデルMは、機械学習装置20において、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値の全てに基づいて生成されている。つまり、学習モデルMは、例えば、鏡面反射の画像部分を含む撮像画像と、鏡面反射による誤った距離値を含む距離画像(例えば
図8)とを用いて学習されている。よって、距離画像生成部14は、
図11に示したように、入力された撮像画像が部分W4のように鏡面反射の画像部分を含む場合には、
図12に示したように、その画像部分に応じた距離値を出力する。
【0064】
一方、
図13の例では、
図12に見られたような距離値の乱れは生じていない。この
図13の例では、学習モデルMは、機械学習装置20において、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、立体物検出処理および路面検出処理において使用された複数の距離値に基づいて生成されている。つまり、学習モデルMは、例えば、鏡面反射を含む画像と、鏡面反射による誤った距離値を含まない距離画像(例えば
図9,10)とを用いて学習されている。つまり、鏡面反射による誤った距離値は機械学習処理に用いられていない。機械学習処理は、様々な天気、様々な時間帯など、様々な状況におけるステレオ画像PIC2を用いて行われる。これらの複数のステレオ画像PIC2は、例えば、鏡面反射が生じていない画像も含む。よって、距離画像生成部14は、入力された撮像画像(
図11)が部分W4のように鏡面反射の画像部分を含む場合であっても、このような様々な条件での学習を反映し、
図13に示したように、鏡面反射がない場合における距離値を出力することができる。
【0065】
このように、機械学習装置20では、第1の撮像画像(ステレオ画像PIC2)、および第1の撮像画像(ステレオ画像PIC2)に応じた第1の距離画像(距離画像PZ32)に基づいて、第1の撮像画像(ステレオ画像PIC2)に含まれる路面を検出する路面検出処理部33と、この路面検出処理部33の処理結果に基づいて、第1の距離画像(距離画像PZ32)に含まれる複数の距離値のうちの処理対象となる1以上の距離値を選択する距離値選択部35と、第1の撮像画像(ステレオ画像PIC2)および1以上の距離値に基づいて機械学習処理を行うことにより、第2の撮像画像が入力され第2の撮像画像に応じた第2の距離画像が出力される学習モデルMを生成する学習処理部37とを備えるようにした。これにより、機械学習装置20は、距離画像PZ32に含まれる複数の距離値のうちの、路面検出処理部33の処理結果に基づいて選択された、1以上の距離値に基づいて機械学習処理を行うことができる。距離値選択部35は、例えば、機械学習装置20は、路面検出処理において採用された距離値(
図9)を1以上の距離値として選択することができ、路面上の立体物を検出する立体物検出処理において採用された距離値(
図10)を、1以上の距離値として選択することができる。これにより、機械学習装置20では、精度が高い距離画像を生成する学習モデルMを生成することができる。
【0066】
このような学習モデルMを生成する際、例えばLidar(Light detection and ranging)装置を用いて得られた距離画像と、撮像画像とを用いて、機械学習を行うこともあり得る。しかしながら、撮像画像を生成するイメージセンサと、距離画像を生成するLidar装置とは、互いに特性が異なるため、例えば、撮像画像には写っていないが、距離画像では距離値が得られているようなことが起こり得る。このような矛盾が生じる場合には、機械学習処理を行うことが難しい。
【0067】
一方、機械学習装置20では、
図2に示した例では、ステレオ画像PIC2に基づいて距離画像PZ24,PZ31,PZ32を生成するようにしたので、上述したような矛盾が生じにくいので、機械学習処理を行いやすくすることができる。その結果、機械学習装置20では、学習モデルの精度を高めることができる。
【0068】
また、ステレオカメラが生成したステレオ画像PIC2に基づいて生成された距離画像PZ24を用いて機械学習処理を行う場合でも、上述したように、ミスマッチが生じ、あるいは鏡面反射などの虚像が生じるので、距離画像PZ24は、不正確な距離値を含んでしまう。よって、学習モデルの精度を高めるのが難しい。また、距離画像PZ24から、正確な距離値と不正確な距離値を選別することが考えられるが、例えば、人がこれらの選別を行うことは非現実的である。
【0069】
一方、機械学習装置20では、路面検出処理部33の処理結果に基づいて、第1の距離画像(距離画像PZ32)に含まれる複数の距離値のうちの処理対象となる1以上の距離値を選択し、第1の撮像画像(ステレオ画像PIC2)および1以上の距離値に基づいて機械学習処理を行うようにした。これにより、機械学習装置20では、ミスマッチや鏡面反射などの影響を低減することができ、人のアノテーション作業を必要とすることなく、正確な距離値を選別することができる。その結果、機械学習装置20では、学習モデルの精度を高めることができる。
【0070】
機械学習装置20では、
図2に示した例では、ステレオマッチングにより距離画像PZ24,PZ31,PZ32を生成するようにした。このようにステレオマッチングを行う場合には、高精度の距離値を得ることができる。しかしながら、マッチングが局所的に生じるので、距離値の密度が低い場合もあり得る。このような場合でも、機械学習装置20により生成された学習モデルMを使用することにより、全領域において、高精度で密度の高い距離値を得ることが出来る。
【0071】
また、機械学習装置20では、学習処理部37は、1以上の距離値に基づいて、第1の撮像画像(ステレオ画像PIC2)の全体画像領域のうちの1以上の距離値に対応する画像領域について機械学習処理を行うようにした。これにより、学習処理部37は、距離値選択部35から距離値が供給された画像領域について、機械学習処理を行い、距離値選択部35から距離値が供給されなかった画像領域について、機械学習処理を行わないようにすることができる。その結果、例えば、鏡面反射による誤った距離値に基づいて機械学習処理を行わないようにすることができるので、学習モデルの精度を高めることができる。
【0072】
[効果]
以上のように本実施の形態では、第1の撮像画像、および第1の撮像画像に応じた第1の距離画像に基づいて、第1の撮像画像に含まれる路面を検出する路面検出処理部と、この路面検出処理部の処理結果に基づいて、第1の距離画像に含まれる複数の距離値のうちの処理対象となる1以上の距離値を選択する距離値選択部と、第1の撮像画像および1以上の距離値に基づいて機械学習処理を行うことにより、第2の撮像画像が入力され第2の撮像画像に応じた第2の距離画像が出力される学習モデルを生成する学習処理部とをもうけるようにしたので、精度が高い距離画像を生成する学習モデルを生成することができる。
【0073】
本実施の形態では、1以上の距離値に基づいて、第1の撮像画像の全体画像領域のうちの1以上の距離値に対応する画像領域について機械学習処理を行うようにしたので、学習モデルの精度を高めることができる。
【0074】
[変形例1]
上記実施の形態では、機械学習装置20は、ステレオ画像PIC2に基づいて生成された距離画像PZ24に基づいて機械学習処理を行ったが、これに限定されるものではない。以下に、いくつか例を挙げて、本変形例について詳細に説明する。
【0075】
図14は、本変形例に係る機械学習装置40の一構成例を表すものである。機械学習装置40は、Lidar装置により得られた距離画像に基づいて機械学習処理を行うように構成される。機械学習装置40は、記憶部41と、処理部42とを備えている。
【0076】
記憶部41は、画像データDT3と、距離画像データDT4を記憶している。画像データDT3は、この例では、複数の撮像画像PIC3の画像データである。複数の撮像画像PIC3のそれぞれは、単眼画像であり、単眼カメラにより生成され、この記憶部41に記憶される。距離画像データDT4は、複数の距離画像PZ4の画像データである。複数の距離画像PZ4は、複数の撮像画像PIC3とそれぞれ対応している。この距離画像PZ4は、この例では、Lidar装置により生成され、この記憶部41に記憶される。
【0077】
処理部42は、データ取得部43と、画像処理部45とを有している。
【0078】
データ取得部43は、記憶部41から、複数の撮像画像PIC3および複数の距離画像PZ4を取得し、互いに対応する撮像画像PIC3および距離画像PZ4を、画像処理部45に順次供給するように構成される。
【0079】
画像処理部45は、撮像画像PIC3および距離画像PZ4に基づいて、所定の画像処理を行うことにより、学習モデルMを生成するように構成される。画像処理部45は、画像エッジ検出部51と、グルーピング処理部52と、路面検出処理部53と、立体物検出処理部54と、距離値選択部55と、学習処理部57とを有している。画像エッジ検出部51、グルーピング処理部52、路面検出処理部53と、立体物検出処理部54、距離値選択部55、および学習処理部57は、上記実施の形態に係る画像エッジ検出部31、グルーピング処理部32、路面検出処理部33と、立体物検出処理部34、距離値選択部35、および学習処理部37にそれぞれ対応している。
【0080】
学習処理部57は、撮像画像PIC3および距離画像PZ35に基づいて、ニューラルネットワークを用いて機械学習処理を行うことにより、学習モデルMを生成するように構成される。学習処理部57には、撮像画像PIC3が供給されるとともに、距離画像PZ35が、期待値として供給される。学習処理部57は、これらの画像に基づいて機械学習処理を行うことにより、撮像画像が入力され距離画像が出力される学習モデルMを生成するようになっている。ここで、撮像画像PIC3は、本開示における「第1の撮像画像」の一具体例に対応する。
【0081】
例えば、
図1に示した車外環境認識システム10の距離画像生成部14は、このような機械学習装置40により生成された学習モデルMを用いて、左画像PL1および右画像PR1のうちの一方である撮像画像に基づいて、距離画像PZ14を生成することができる。
【0082】
図15は、本変形例に係る他の機械学習装置60の一構成例を表すものである。機械学習装置60は、モーションステレオの手法により得られた距離画像に基づいて機械学習処理を行うように構成される。機械学習装置60は、記憶部61と、処理部62とを備えている。
【0083】
記憶部61は、画像データDT3を記憶している。画像データDT3は、この例では、一連の複数の撮像画像PIC3の画像データである。複数の撮像画像PIC3のそれぞれは、単眼画像であり、単眼カメラにより生成され、この記憶部61に記憶される。
【0084】
処理部62は、画像データ取得部63と、距離画像生成部64と、画像処理部65とを有している。
【0085】
画像データ取得部63は、記憶部61から、一連の複数の撮像画像PIC3を取得し、撮像画像PIC3を、距離画像生成部64に順次供給するように構成される。
【0086】
距離画像生成部64は、一連の複数の撮像画像PIC3のうちの、時間軸上でとなりあう2枚の撮像画像PIC3に基づいて、モーションステレオの手法により、距離画像PZ24を生成するように構成される。
【0087】
画像処理部65は、撮像画像PIC3および距離画像PZ24に基づいて、所定の画像処理を行うことにより、学習モデルMを生成するように構成される。画像処理部65は、画像エッジ検出部71と、グルーピング処理部72と、路面検出処理部73と、立体物検出処理部74と、距離値選択部75と、学習処理部77とを有している。画像エッジ検出部71、グルーピング処理部72、路面検出処理部73と、立体物検出処理部74、距離値選択部75、および学習処理部77は、上記実施の形態に係る画像エッジ検出部31、グルーピング処理部32、路面検出処理部33と、立体物検出処理部34、距離値選択部35、および学習処理部37にそれぞれ対応している。
【0088】
学習処理部77は、撮像画像PIC3および距離画像PZ35に基づいて、ニューラルネットワークを用いて機械学習処理を行うことにより、学習モデルMを生成するように構成される。学習処理部77には、撮像画像PIC3が供給されるとともに、距離画像PZ35が、期待値として供給される。学習処理部77は、これらの画像に基づいて機械学習処理を行うことにより、撮像画像が入力され距離画像が出力される学習モデルMを生成するようになっている。
【0089】
例えば、
図1に示した車外環境認識システム10の距離画像生成部14は、このような機械学習装置60により生成された学習モデルMを用いて、左画像PL1および右画像PR1のうちの一方である撮像画像に基づいて、距離画像PZ14を生成することができる。
【0090】
[変形例2]
上記実施の形態では、学習モデルMは、撮像画像が入力され距離画像が出力されるようにしたが、入力画像は、これに限定されるものではなく、例えば、ステレオ画像が入力されるようにしてもよい。また、モーションステレオの場合には、時間軸上で隣り合う2つの撮像画像が入力されるようにしてもよい。ステレオ画像が入力される場合について、以下に詳細に説明する。
【0091】
図16は、本変形例に係る機械学習装置20Bの一構成例を表すものである。機械学習装置20Bは、処理部22Bを備えている。処理部22Bは、画像処理部25Bを有している。画像処理部25Bは、画像エッジ検出部31と、グルーピング処理部32と、路面検出処理部33と、立体物検出処理部34と、距離値選択部35と、学習処理部37Bとを有している。
【0092】
学習処理部37Bは、ステレオ画像PIC2および距離画像PZ35に基づいて、ニューラルネットワークを用いて機械学習処理を行うことにより、学習モデルMを生成するように構成される。学習処理部37Bには、ステレオ画像PIC2が供給されるとともに、距離画像PZ35が、期待値として供給される。学習処理部37Bは、これらの画像に基づいて機械学習処理を行うことにより、ステレオ画像が入力され距離画像が出力される学習モデルMを生成するようになっている。
【0093】
例えば、車外環境認識システム10の距離画像生成部14は、このような機械学習装置20Bにより生成された学習モデルMを用いて、ステレオ画像PICに基づいて、距離画像PZ14を生成することができる。
【0094】
以上、実施の形態およびいくつかの変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0095】
例えば、上記実施の形態等では、画像処理部25に、画像エッジ検出部31、グルーピング処理部32、路面検出処理部33、および立体物検出処理部34を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、これらの一部が省かれていてもよいし、他のブロックが追加されてもよい。
【0096】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0097】
なお、本技術は以下のような構成とすることができる。
【0098】
(1)
第1の撮像画像、および前記第1の撮像画像に応じた第1の距離画像に基づいて、前記第1の撮像画像に含まれる路面を検出する路面検出処理部と、
前記路面検出処理部の処理結果に基づいて、前記第1の距離画像に含まれる複数の距離値のうちの、処理対象となる1以上の距離値を選択する距離値選択部と、
前記第1の撮像画像および前記1以上の距離値に基づいて機械学習処理を行うことにより、第2の撮像画像が入力され前記第2の撮像画像に応じた第2の距離画像が出力される学習モデルを生成する学習処理部と
を備えた機械学習装置。
(2)
前記距離値選択部は、前記第1の距離画像に含まれる複数の距離値のうちの、前記路面検出処理部における検出処理において採用された距離値を、前記1以上の距離値として選択する
請求項1に記載の機械学習装置。
(3)
前記1以上の距離値は、前記第1の撮像画像に含まれる前記路面までの距離値を含む
請求項2に記載の機械学習装置。
(4)
前記第1の撮像画像に含まれる前記路面よりも上に位置する立体物を検出する立体物検出処理部をさらに備え、
前記距離値選択部は、前記第1の距離画像に含まれる複数の距離値のうちの、前記立体物検出処理部における検出処理において採用された距離値を、前記1以上の距離値として選択する
請求項1から請求項3のいずれか一項記載の機械学習装置。
(5)
前記1以上の距離値は、前記第1の撮像画像に含まれる前記路面よりも上に位置する立体物までの距離値を含む
請求項4に記載の機械学習装置。
(6)
前記学習処理部は、前記1以上の距離値に基づいて、前記第1の撮像画像の全体画像領域のうちの前記1以上の距離に対応する画像領域について前記機械学習処理を行う
請求項1に記載の機械学習装置。
(7)
1または複数のプロセッサと
前記1または複数のプロセッサに通信可能に接続される1または複数のメモリと
を備え、
前記1または複数のプロセッサは、
第1の撮像画像、および前記第1の撮像画像に応じた第1の距離画像に基づいて、前記第1の撮像画像に含まれる路面を検出する路面検出処理を行うことと、
前記路面検出処理の処理結果に基づいて、前記第1の距離画像に含まれる複数の距離値のうちの、処理対象となる1以上の距離値を選択することと、
前記第1の撮像画像および前記1以上の距離値に基づいて機械学習処理を行うことにより、第2の撮像画像が入力され前記第2の撮像画像に応じた第2の距離画像が出力される学習モデルを生成することと
を行う
機械学習装置。
【符号の説明】
【0099】
10…車外環境認識システム、11…ステレオカメラ、11L…左カメラ、11R…右カメラ、12…処理部、13,14…距離画像生成部、15…車外環境認識部、20,20B,40,60…機械学習装置、21,41,61…記憶部、22,22B,42,62…処理部、23,63…画像データ取得部、24,64…距離画像生成部、25,25B,45,65…画像処理部、31,51,71…画像エッジ検出部、32,52,72…グルーピング処理部、33,53,73…路面検出処理部、34,54,74…立体物検出処理部、35,55,75…距離値選択部、36…画像選択部、37,37B,57,77…学習処理部、43…データ取得部、100…車両、A1…圧縮処理、A2…畳み込み処理、B1…アップサンプリング処理、B2…畳み込み処理、DT,DT3…画像データ、DT4…距離画像データ、M…学習モデル、P2…撮像画像、PIC,PIC1,PIC2…ステレオ画像、PIC3…撮像画像、PL1,PL2…左画像、PR1,PR2…右画像、PZ4,PZ13,PZ14,PZ24,PZ31,PZ32,PZ35…距離画像、RA…演算対象領域。