(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】システム、プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20241211BHJP
【FI】
A61B34/20
(21)【出願番号】P 2023535112
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2022009694
(87)【国際公開番号】W WO2023286337
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-08-24
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】内田 健央
(72)【発明者】
【氏名】笠原 秀元
(72)【発明者】
【氏名】本田 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 一恵
(72)【発明者】
【氏名】新井 豪
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/095389(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/090165(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0371474(US,A1)
【文献】特開2021-188883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 - 17/28
34/00 - 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー供給を受けてエネルギー出力を行う少なくとも1つのエネルギーデバイス及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用デバイス組織画像
、又は
、前記学習用デバイス組織画像及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用組織画像と、前記エネルギーデバイスのエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する学習用情報と、
が入力され、前記エネルギーデバイスにエネルギー供給された後に前記エネルギーデバイスに残る熱量あるいは温度に関する情報である残熱情報を出力するように学習した学習済みモデルを記憶する記憶部と、
制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記少なくとも1つのエネルギーデバイス及び前記少なくとも1つの生体組織が撮像された画像を含んだ、少なくとも一つの処置画像を取得し、
前記エネルギーデバイスのエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する情報を取得し、
前記処置画像と、前記エネルギー供給量に関する情報と、
を前記学習済みモデル
に入力して、前記学習済みモデルに前記残熱情報を推定残熱情報
として出力させ、
前記推定残熱情報に基づく報知を報知部に行わせることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載されたシステムにおいて、
前記学習済みモデルは、
前記学習用デバイス組織画像、又は前記学習用デバイス組織画像及び前記学習用組織画像が入力され、入力された画像上に撮像される生体組織に関する情報である組織情報を抽出するように学習した第2学習済みモデルと、
前記組織情報と前記エネルギー供給量に関する情報と、が入力され、前記残熱情報を出力するように学習した第3学習済みモデルと、
を含み、
前記制御部は、
前記処置画像
を前記第2学習済みモデルに入力して、
前記第2学習済みモデルに前記組織情報を抽出
させ、
前記組織情報と前記エネルギー供給量に関する情報と、
を前記第3学習済みモデルに入力して、
前記第3学習済みモデルに前記推定残熱情報を
出力させることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載されたシステムにおいて、
前記学習済みモデルは、
前記学習用デバイス組織画像、又は前記学習用デバイス組織画像及び前記学習用組織画像が入力され、入力された画像上に撮像される前記エネルギーデバイスに関する情報であるデバイス情報を抽出するように学習した第1学習済みモデルを含み、
前記第3学習済みモデルは、
前記デバイス情報と前記組織情報と前記エネルギー供給量に関する情報と、が入力され、前記残熱情報を出力するように学習されており、
前記制御部は、
前記処置画像
を前記第1学習済みモデルに入力して、
前記第1学習済みモデルに前記デバイス情報を抽出
させ、
前記デバイス情報と、前記組織情報と、
前記エネルギー供給量に関する情報と、を前記第3学習済みモデルに入力して、
前記第3学習済みモデルに前記推定残熱情報を
出力させることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載されたシステムにおいて、
前記制御部は、前記推定残熱情報として、前記エネルギーデバイスによるエネルギー出力が完了した後における熱量又は温度の推移を推定することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4に記載されたシステムにおいて、
前記学習済みモデルは、前記学習用デバイス組織画像又は前記学習用組織画像及び前記学習用情報と、エネルギー出力後の残熱推移との関係を学習し、エネルギー出力が完了した後における熱量又は温度の推移を推定するように学習した学習済みモデルであることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項5に記載されたシステムにおいて、
前記制御部は、前記推定残熱情報として、前記エネルギーデバイスによるエネルギー出力が完了した後、前記エネルギーデバイスの熱量又は温度が所望の規定値に到達するまでの時間を推定することを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載されたシステムにおいて、
前記制御部は、前記推定残熱情報として推定した前記エネルギーデバイスの熱量又は温度が所定の閾値より高い場合に、アラートの報知を
前記報知部に行わせることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載されたシステムにおいて、
前記報知部は表示部であり、
前記制御部は、前記推定残熱情報を前記表示部に表示させることを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載されたシステムにおいて、
前記制御部は、前記推定残熱情報として推定した前記エネルギーデバイスの熱量又は温度が所定の閾値より高い場合に、前記推定残熱情報として推定した前記エネルギーデバイスの熱量又は温度を示す表示を前記表示部に表示させることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項8に記載されたシステムにおいて、
前記制御部は、前記推定残熱情報として推定した前記エネルギーデバイスの熱量又は温度を示す色を、前記表示部に表示されたエネルギーデバイスに重畳表示させることを特徴とするシステム。
【請求項11】
少なくとも1つのエネルギーデバイス及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像を含んだ、少なくとも一つの処置画像を取得することと、
前記エネルギーデバイスのエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する情報を取得することと、
エネルギー供給を受けてエネルギー出力を行う少なくとも1つのエネルギーデバイス及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用デバイス組織画像
、又は
、前記学習用デバイス組織画像及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用組織画像
と、前記エネルギーデバイスのエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する学習用情報と、が入力され、前記エネルギーデバイスにエネルギー供給された後に前記エネルギーデバイスに残る熱量あるいは温度に関する情報である残熱情報を出力するように学習した学習済みモデルに
、前記処置画像と、前記エネルギー供給量に関する情報と、
を入力して、前記学習済みモデルに
前記残熱情報を推定残熱情報
として出力させることと、
前記推定残熱情報
に基づく報知を報知部に行わせることと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載されたプログラムにおいて、
前記学習済みモデルは、
前記学習用デバイス組織画像、又は前記学習用デバイス組織画像及び前記学習用組織画像が入力され、入力された画像上に撮像される生体組織に関する情報である組織情報を抽出するように学習した第2学習済みモデルと、
前記組織情報と前記エネルギー供給量に関する情報と、が入力され、前記残熱情報を出力するように学習した第3学習済みモデルと、
を含み、
前記処置画像
を前記第2学習済みモデルに入力して、
前記第2学習済みモデルに前記組織情報を抽出
させることと、
前記組織情報と前記エネルギー供給量に関する情報と、
を前記第3学習済みモデルに入力して、
前記第3学習済みモデルに前記推定残熱情報を
出力させることと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
請求項11に記載されたプログラムにおいて、
前記推定残熱情報として、前記エネルギーデバイスによるエネルギー出力が完了した後における熱量又は温度の推移を推定することを特徴とするプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載されたプログラムにおいて、
前記学習済みモデルは、前記学習用デバイス組織画像又は前記学習用組織画像及び前記学習用情報と、エネルギー出力後の残熱推移との関係を学習し、エネルギー出力が完了した後における熱量又は温度の推移を推定するように学習した学習済みモデルであることを特徴とするプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載されたプログラムにおいて、
前記推定残熱情報として、前記エネルギーデバイスによるエネルギー出力が完了した後、前記エネルギーデバイスの熱量又は温度が所望の規定値に到達するまでの時間を推定することを特徴とするプログラム。
【請求項16】
少なくとも1つのエネルギーデバイス及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像を含んだ、少なくとも一つの処置画像を取得することと、
前記エネルギーデバイスのエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する情報を取得することと、
エネルギー供給を受けてエネルギー出力を行う少なくとも1つのエネルギーデバイス及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用デバイス組織画像
、又は
、前記学習用デバイス組織画像及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用組織画像
と、前記エネルギーデバイスのエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する学習用情報と、が入力され、前記エネルギーデバイスにエネルギー供給された後に前記エネルギーデバイスに残る熱量あるいは温度に関する情報である残熱情報を出力するように学習した学習済みモデルに
、前記処置画像と、前記エネルギー供給量に関する情報と、
を入力して、前記学習済みモデルに
前記残熱情報を推定残熱情報
として出力させることと、
前記推定残熱情報
に基づく報知を報知部に行わせることと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項17】
請求項16に記載された情報処理方法において、
前記学習済みモデルは、
前記学習用デバイス組織画像、又は前記学習用デバイス組織画像及び前記学習用組織画像が入力され、入力された画像上に撮像される生体組織に関する情報である組織情報を抽出するように学習した第2学習済みモデルと、
前記組織情報と前記エネルギー供給量に関する情報と、が入力され、前記残熱情報を出力するように学習した第3学習済みモデルと、
を含み、
前記処置画像
を前記第2学習済みモデルに入力して、
前記第2学習済みモデルに前記組織情報を抽出
させることと、
前記組織情報と前記エネルギー供給量に関する情報と、
を前記第3学習済みモデルに入力して、
前記第3学習済みモデルに前記推定残熱情報を
出力させること
と、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項18】
請求項16に記載された情報処理方法において、
前記推定残熱情報として、前記エネルギーデバイスによるエネルギー出力が完了した後における熱量又は温度の推移を推定することを含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項19】
請求項18に記載された情報処理方法において、
前記学習済みモデルは、前記学習用デバイス組織画像又は前記学習用組織画像及び前記学習用情報と、エネルギー出力後の残熱推移との関係を学習し、エネルギー出力が完了した後における熱量又は温度の推移を推定するように学習した学習済みモデルであることを含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項20】
請求項19に記載された情報処理方法において、
前記推定残熱情報として、前記エネルギーデバイスによるエネルギー出力が完了した後、前記エネルギーデバイスの熱量又は温度が所望の規定値に到達するまでの時間を推定することを含むことを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム、プログラム及び情報処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される医療装置は、エネルギー処置具の使用後、高温状態のエネルギー処置具が内視鏡画像内に存在する場合、内視鏡画像に高温デバイスの有無及び警告画像を表示する。また、内視鏡画像に高温状態のエネルギー処置具が存在しない場合、処置具の方向を示す画像を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0160910号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される医療装置では、内視鏡画像に具体的な残熱温度が提示されないため、処置具の温度が下がった否かの判断を医師が個々行うことになる。しかし、当該判断は、処置具の種類、出力エネルギー或いは処置対象組織により変わるため、医師の経験に依存してしまう。従って、医師の経験によらず、効率的な手術を実現することが難しい。また、特許文献1に開示される医療装置では温度測定にサーモカメラ等を使用しているが、温度測定にサーモカメラ等を使用することは、腹腔鏡手術におけるポート数の増加やセンサー搭載デバイスの太さの増大に繋がるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、エネルギー供給を受けてエネルギー出力を行う少なくとも1つのエネルギーデバイス及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用デバイス組織画像又は少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用組織画像と、前記エネルギーデバイスのエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する学習用情報と、から、前記エネルギーデバイスにエネルギー供給された後に前記エネルギーデバイスに残る熱量あるいは温度に関する情報である残熱情報を出力するように学習した学習済みモデルを記憶する記憶部と、制御部と、を含み、前記制御部は、前記少なくとも1つのエネルギーデバイス及び前記少なくとも1つの生体組織が撮像された画像を含んだ、少なくとも一つの処置画像を取得し、前記エネルギーデバイスのエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する情報を取得し、前記処置画像と、前記エネルギー供給量に関する情報と、前記学習済みモデルとに基づいて、前記エネルギーデバイスの熱量又は温度に関する情報である推定残熱情報を推定し、前記推定残熱情報に基づく報知を報知部に行わせるシステムに関係する。
【0006】
また本開示の他の態様は、少なくとも1つのエネルギーデバイス及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像を含んだ、少なくとも一つの処置画像を取得することと、前記エネルギーデバイスのエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する情報を取得することと、エネルギー供給を受けてエネルギー出力を行う少なくとも1つのエネルギーデバイス及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用デバイス組織画像又は少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用組織画像から、前記エネルギーデバイスにエネルギー供給された後に前記エネルギーデバイスに残る熱量あるいは温度に関する情報である残熱情報を出力するように学習した学習済みモデルに基づく処理により、前記処置画像と、前記エネルギー供給量に関する情報と、前記学習済みモデルとに基づいて、前記エネルギーデバイスの熱量又は温度に関する情報である推定残熱情報を推定することと、前記推定残熱情報をモニタに表示することと、をコンピュータに実行させるプログラムに関係する。
【0007】
また本開示の他の態様は、少なくとも1つのエネルギーデバイス及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像を含んだ、少なくとも一つの処置画像を取得することと、前記エネルギーデバイスのエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する情報を取得することと、エネルギー供給を受けてエネルギー出力を行う少なくとも1つのエネルギーデバイス及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用デバイス組織画像又は少なくとも1つの生体組織が撮像画像である学習用組織画像から、前記エネルギーデバイスにエネルギー供給された後に前記エネルギーデバイスに残る熱量あるいは温度に関する情報である残熱情報を出力するように学習した学習済みモデルに基づく処理により、前記処置画像と、前記エネルギー供給量に関する情報と、前記学習済みモデルとに基づいて、前記エネルギーデバイスの熱量又は温度に関する情報である推定残熱情報を推定することと、前記推定残熱情報をモニタに表示することと、を含む情報処理方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】システムが行う処理を説明するフローチャート。
【
図14】エネルギーデバイスの推定についての学習段階の説明図。
【
図15】生体組織の種類の推定についての学習段階の説明図。
【
図16】残熱情報の推定についての学習段階の説明図。
【
図17】エネルギーデバイスの温度の時間依存性を示す図。
【
図20】アラートを報知する場合の処理についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本開示の必須構成要件であるとは限らない。
【0010】
1.システム
図1は、本実施形態におけるシステム10の構成例である。
図1には、内視鏡により術野を撮影する場合のシステム構成例が示されている。
図1に示すシステム10は、コントローラ100と内視鏡システム200とジェネレータ300とエネルギーデバイス310とを含む。システム10は、内視鏡下において少なくとも1つのエネルギーデバイスを用いて手術を行うための手術システムである。ここではシステム10が1つのエネルギーデバイス310を含む例を示すが、システム10が複数のエネルギーデバイスを含んでもよい。
【0011】
内視鏡システム200は、内視鏡による撮影、内視鏡画像の画像処理、及び内視鏡画像のモニタ表示を行うシステムである。内視鏡システム200は、内視鏡210と本体装置220と報知部230とを含む。ここでは、外科手術用の硬性鏡を例に説明する。
【0012】
内視鏡210は、体腔に挿入される挿入部と、挿入部の基端に接続される操作部と、操作部の基端に接続されるユニバーサルコードと、ユニバーサルコードの基端に接続されるコネクタ部とを含む。挿入部は、硬性管と対物光学系と撮像素子と照明光学系と伝送ケーブルとライトガイドとを含む。体腔内を撮影するための対物光学系及び撮像素子と、体腔内を照明するための照明光学系は、細長い円筒形状の硬性管の先端部に設けられる。硬性管の先端部は、湾曲可能に構成されてもよい。撮像素子により取得された画像信号を伝送する伝送ケーブル、及び照明光を照明光学系へ導光するライトガイドは、硬性管の内部に設けられる。操作部は、ユーザにより把持され、ユーザからの操作を受け付ける。操作部には、様々な機能が割り当てられたボタンが設けられる。挿入部先端が湾曲可能である場合には、操作部に、アングル操作レバーが設けられる。コネクタ部は、伝送ケーブルを本体装置220に着脱可能に接続するビデオコネクタと、ライトガイドを本体装置220に着脱可能に接続するライトガイドコネクタとを含む。
【0013】
本体装置220は、内視鏡の制御、内視鏡画像の画像処理及び内視鏡画像の表示処理を行う処理装置と、照明光の生成及び照明光の制御を行う光源装置とを含む。本体装置220はビデオシステムセンターとも呼ばれる。処理装置は、CPU等のプロセッサにより構成され、内視鏡210から送信される画像信号を画像処理して内視鏡画像を生成し、その内視鏡画像を報知部230とコントローラ100に出力する。光源装置が出射した照明光は、ライトガイドにより照明光学系へ導光され、照明光学系から体腔内へ出射される。
【0014】
エネルギーデバイス310は、その先端部から高周波電力又は超音波等によりエネルギーを出力することで、その先端部が接する組織に対して凝固、封止、止血、切開、切離又は剥離等の処置を行うデバイスである。エネルギーデバイス310は、エネルギー処置具とも呼ばれる。エネルギーデバイス310は、デバイス先端の電極と体外の電極の間に高周波電力を通電させるモノポーラデバイス、2つのジョウの間に高周波電力を通電させるバイポーラデバイス、プローブとジョウが設けられると共にプローブから超音波を出射する超音波デバイス、又はプローブとジョウの間に高周波電力を通電させると共にプローブから超音波を出射する併用デバイス等である。
【0015】
ジェネレータ300は、エネルギーデバイス310へのエネルギー供給、エネルギー供給の制御、及びエネルギーデバイス310からの電気的情報の取得を行う。エネルギーデバイス310が高周波エネルギーを出力する場合、ジェネレータ300は高周波電力を供給し、エネルギーデバイス310は、その高周波電力を電極又はジョウから出力する。エネルギーデバイス310が超音波エネルギーを出力する場合、ジェネレータ300は電力を供給し、エネルギーデバイス310のプローブは、その電力を超音波に変換して出力する。
【0016】
電気的情報は、エネルギーデバイス310の電極又はジョウが接する組織の電気的情報であり、具体的には、エネルギーデバイス310が組織に高周波電力を出力した応答として得られる情報である。電気的情報は、例えば、エネルギーデバイス310により処置される組織のインピーダンス情報である。但し、後述のように電気的情報はインピーダンス情報に限らない。
【0017】
ジェネレータ300は、出力シーケンスに従って、エネルギーデバイス310からのエネルギー出力を時間的に変化させる制御を行う。ジェネレータ300は、インピーダンス情報の時間的変化に応じてエネルギー出力を変化させてもよい。この場合、出力シーケンスは、インピーダンス情報の変化に対してどのようにエネルギー出力を変化させるかを、規定してもよい。また、ジェネレータ300は、インピーダンス情報の時間的変化に応じてエネルギー出力を自動オフしてもよい。例えば、ジェネレータ300は、インピーダンスが一定以上に上昇したとき、処置終了と判断してエネルギー出力をオフしてもよい。
【0018】
コントローラ100は、内視鏡システム200とジェネレータ300から画像とエネルギー情報を取得する。そして、残熱推定を行い、推定結果を術者に報知するためにモニタに出力する。
【0019】
生体組織に関する情報は、特定の臓器だけでなく、臓器間を繋ぐ組織等の臓器に付随する部分も含まれる。エネルギーデバイス310は、後述の
図4~
図6で説明するように、モノポーラデバイス320、バイポーラデバイス330、超音波デバイス340等のエネルギーデバイスであるが、これら以外であってよい。
【0020】
ジェネレータ300は、エネルギー出力調整指示に従って、エネルギーデバイス310のエネルギー出力を調整する。即ち、本実施形態のシステム10は、内視鏡画像に基づいてエネルギーデバイス310からのエネルギー出力を自動調整するシステムである。ジェネレータ300は、エネルギー出力調整指示により指示されるエネルギー供給量でエネルギーデバイス310にエネルギーを供給し、エネルギーデバイス310が、そのエネルギー供給を受けてエネルギー出力することで、エネルギー出力がエネルギー出力調整指示により調整される。
【0021】
エネルギー出力調整指示は、出力シーケンスの波形全体としての出力を増減する指示、或いは、選択可能な複数の出力シーケンスのうち、いずれかの出力シーケンスに設定する指示等である。例えば、エネルギーデバイス310からのエネルギー出力が段階的な倍率により調整可能であるとき、エネルギー出力調整指示は、そのエネルギー出力の段階的な倍率を示す指示である。ジェネレータ300は、その指示された倍率に応じて高周波出力又は超音波出力を増減させる。倍率は連続的に調整可能であってもよい。或いは、複数の出力シーケンスが設けられているとき、エネルギー出力調整指示は、その複数の出力シーケンスのいずれかを示す指示である。ジェネレータ300は、その指示された出力シーケンスに従ってエネルギーデバイス310からのエネルギー出力を行う。なお、エネルギー出力調整指示は、エネルギー出力の増減と出力シーケンスの変更の両方の指示を含んでもよい。
【0022】
2.コントローラ
図2は、コントローラ100の構成例である。コントローラ100は、システム10全体の制御を担う。コントローラ100は、制御部110と記憶部120とI/Oデバイス170、180、190とを含む。
図1と
図2には、コントローラ100がジェネレータ300と別体の装置で構成される例を示す。その場合、コントローラ100は、PC又はサーバ装置等の情報処理装置により構成される。或いは、コントローラ100は、ネットワークを介して接続された1又は複数の情報処理装置によって処理を実行するクラウドシステムで実現されてもよい。
【0023】
I/Oデバイス180は、内視鏡システム200の本体装置220から内視鏡画像の画像データを受信する。I/Oデバイス180は、画像伝送用のケーブルが接続されるコネクタ、又は、そのコネクタに接続され、本体装置220との通信を行うインターフェース回路である。
【0024】
I/Oデバイス190は、報知部230への出力に用いられるインターフェース回路である。I/Oデバイス190は、信号伝送用のケーブルが接続されるコネクタ、又はそのコネクタに接続され、報知部230との通信を行う。またI/Oデバイス170は、電源供給に用いられるインターフェース回路である。
【0025】
制御部110は、学習済みモデル121を用いた画像認識処理により内視鏡画像から、エネルギーデバイス310の熱量又は温度に関する情報である推定残熱情報を推定し、当該情報に基づく報知を報知部230に行わせる。制御部110は、ハードウェアとして1又は複数のプロセッサを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)等の汎用プロセッサである。或いは、プロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等の専用プロセッサであってもよい。
【0026】
記憶部120は、画像認識処理に用いられる学習済みモデル121を記憶する。汎用プロセッサにより画像認識処理が行われる場合には、記憶部120は、推論アルゴリズムが記述されたプログラムと、その推論アルゴリズムに用いられるパラメータと、を学習済みモデル121として記憶する。学習済みモデル121は、第1学習済みモデル122と第2学習済みモデル123と第3学習済みモデル124と、を含む。第1学習済みモデル122は、後述の
図14で説明する生体組織の推定に関する学習済みモデル121である。また第2学習済みモデル123は、エネルギーデバイス310の推定に関する学習済みモデル121であり、第3学習済みモデル124は、残熱の推定に関する学習済みモデル121である。推論アルゴリズムがハードウェア化された専用プロセッサにより画像認識処理が行われる場合には、記憶部120は、推論アルゴリズムに用いられるパラメータを学習済みモデル121として記憶する。
【0027】
記憶部120は、半導体メモリ、ハードディスクドライブ、又は光学ディスクドライブ等の記憶装置である。半導体メモリは、RAM、ROM又は不揮発性メモリ等である。
【0028】
画像認識処理の推論アルゴリズムとしては、例えばニューラルネットワークを採用できる。ニューラルネットワークにおけるノード間接続の重み係数とバイアスがパラメータである。ニューラルネットワークは、画像データが入力される入力層と、入力層を通じて入力されたデータに対し演算処理を行う中間層と、中間層から出力される演算結果に基づいて認識結果を出力する出力層と、を含む。画像認識処理に用いられるニューラルネットワークとして、例えばCNN(Convolutional Neural Network)を採用できる。
【0029】
また制御部110は、第1認識部111と、第2認識部112と、推定部113と、出力情報判断部114と、提示部115と、を含む。記憶部120は、第1認識部111、第2認識部112、推定部113、出力情報判断部114及び提示部115の各部の機能が記述されたプログラムを記憶する。制御部110の1又は複数のプロセッサが、記憶部120からプログラムを読み出し、そのプログラムを実行することで、第1認識部111、第2認識部112、推定部113、出力情報判断部114及び提示部115の各部の機能を実現する。この各部の機能が記述されたプログラムは、コンピュータにより読み取り可能な媒体である非一時的な情報記憶媒体に格納できる。情報記憶媒体は、例えば光ディスク、メモリカード、HDD、或いは半導体メモリなどにより実現できる。半導体メモリは例えばROM又は不揮発性メモリである。
【0030】
図3は、コントローラ100がエネルギーデバイス310の残熱情報を分析し、医師に情報提示を行う際の処理をフローチャートで示した図である。まず、ステップS1において、制御部110は、内視鏡システム200の本体装置220からI/Oデバイス180を介して、内視鏡画像及びエネルギー情報を取得する。内視鏡画像は例えば、エネルギーデバイス310若しくは生体組織又はこれら両方が撮像された画像であり、処理画像ともいう。またエネルギー情報は、例えばエネルギーの出力設定や出力履歴等の情報である。
【0031】
次に、制御部110はステップS2Aa、ステップS2Ab及びステップS2Bを実行する。ステップS2Aaでは、第1認識部111は、第1学習済みモデル122を用いた画像認識処理を内視鏡画像に対して行うことで、当該画像からエネルギーデバイス310を推定する。ステップS2Abでは、第2認識部112は、第2学習済みモデル123を用いた画像認識処理を内視鏡画像に対して行うことで、当該画像から生体組織を推定する。一方、ステップS2Bでは、推定部113は、第3学習済みモデル124を用いた画像認識処理を内視鏡画像に対して行うことで、エネルギーデバイス310の先端部分の残熱温度を推定する。先端部分とは、エネルギーデバイス310からエネルギーが出力される部位の周辺を指している。例えばエネルギーデバイス310が後述の
図5に示すバイポーラデバイス330の場合、先端部分は後述する
図12に示すブレード、パッド、シャフトを指す。なお、ステップS2Aaで推定されたエネルギーデバイス310に関する情報や、ステップS2Abで推定された生体組織に関する情報は、エネルギーデバイス310の残熱情報や生体組織への熱拡散等に影響を与える情報になる。
【0032】
次に、ステップS3において、出力情報判断部114は、ステップS2AaとステップS2Bでの推定結果に基づいて、医師に提示する情報の構築を行う。例えば、内視鏡画像上における、エネルギーデバイス310や生体組織、温度等を示す表示やその表示場所についての情報の構築を行う。
【0033】
次に、ステップS4において、提示部115は、出力情報判断部114の構築した表示場所等の内容についての情報に基づいて、報知部に表示する画像の作成を行う。例えば、内視鏡画像に表示する温度域表示等の表示を重畳して1つの画像を作成する。そして、ステップ5において、報知部230は制御部110の指示で提示部115の作成した画像の表示を行う。
【0034】
3.エネルギーデバイス
以下、エネルギーデバイス310の一例として、モノポーラデバイス320、バイポーラデバイス330、超音波デバイス340及び併用デバイスについて説明する。
【0035】
図4は、モノポーラデバイス320の構成例である。モノポーラデバイス320は、細長い円筒形状の挿入部322と、挿入部322の先端に設けられる電極321と、挿入部322の基端に接続される操作部323と、操作部323と不図示のコネクタとを接続するケーブル325とを含む。コネクタはジェネレータ300に着脱可能に接続される。
【0036】
ジェネレータ300が出力した高周波電力はケーブル325により伝送され、電極321から出力される。患者の体外に対極板が設けられており、電極321と対極板の間で通電する。これにより、電極321が接する組織に高周波エネルギーが印加され、その組織にジュール熱が発生する。電極321は、処置の内容に応じて様々な形状の電極が採用される。モノポーラデバイス320は、通電パターンの変更により、凝固と切開の程度を調整可能である。
【0037】
図5は、バイポーラデバイス330の構成例である。バイポーラデバイス330は、細長い円筒形状の挿入部332と、挿入部332の先端部331に設けられる2つのジョウ337、338と、挿入部332の基端に接続される操作部333と、操作部333と不図示のコネクタとを接続するケーブル335とを含む。コネクタはジェネレータ300に着脱可能に接続される。ジョウ337、338は、組織を把持すると共に把持された組織にエネルギーを印加するための可動部のことであり、基端336に設けられた軸を中心として開閉可能に構成されている。操作部333は、ジョウ337、338の開閉を操作するための把持部が設けられている。医師が把持部を握り込むことで、ジョウ337、338が閉まり組織を把持する。
【0038】
ジェネレータ300が出力した高周波電力はケーブル335により伝送され、ジョウ337、338が組織を把持したとき2つのジョウ337、338の間に通電する。これにより、2つのジョウ337、338に挟まれた組織に高周波エネルギーが印加され、その組織にジュール熱が発生し、その組織が凝固する。ジェネレータ300は、ジョウ337、338に把持された組織のインピーダンス情報を計測し、そのインピーダンス情報に基づいて処置完了を検知し、エネルギー出力を自動停止してもよい。また、ジェネレータ300は、インピーダンス情報に基づいて、組織への印加エネルギーを自動調整してもよい。なお、例えばバイポーラデバイス330のデバイス温度は摂氏100度程度まで上昇する。
【0039】
なお、バイポーラデバイスの派生デバイスとしてベッセルシーリングデバイスがある。ベッセルシーリングデバイスは、バイポーラデバイスのジョウにカッターが設けられたデバイスであり、通電により組織を凝固した後にカッターを走らせることで組織を切離する。
【0040】
図6は、超音波デバイス340の構成例である。超音波デバイス340は、細長い円筒形状の挿入部342と、挿入部342の先端部341に設けられるジョウ347及びプローブ348と、挿入部342の基端に接続される操作部343と、操作部343と不図示のコネクタとを接続するケーブル345とを含む。コネクタはジェネレータ300に着脱可能に接続される。ジョウ347は、基端346に設けられた軸を中心として可動であり、非可動のプローブ348に対して開閉可能に構成されている。操作部343は、ジョウ347の開閉を操作するための把持部が設けられている。医師が把持部を握り込むことで、ジョウ347が閉まり、ジョウ347とプローブ348が組織を把持する。操作部343には、第1出力モードが割り当てられた操作ボタン344aと、第2出力モードが割り当てられた操作ボタン344bとが設けられる。出力モードは処置内容に応じて選択されるものであり、各出力モードの操作ボタンが押されると、そのモードの出力シーケンスで超音波エネルギーが出力される。
【0041】
ジェネレータ300が出力した電力はケーブル335により伝送され、操作ボタン344a又は344bが押されたときにプローブ348が電力を超音波に変換して出力する。これにより、ジョウ347とプローブ348に挟まれた組織に摩擦熱が発生し、その組織が凝固する又は組織が切開される。なお、超音波デバイスの熱拡散に関しては、例えば、高周波デバイスの熱拡散に比べて、超音波デバイス340の熱拡散は少ないが、超音波デバイス340のデバイス温度は摂氏200度近くまで上昇する。
【0042】
高周波電力と超音波を併用する併用デバイスは、例えば
図6の超音波デバイスと同様の構成である。但し、併用デバイスは、ジョウとプローブの間に高周波電力を通電することで、ジョウとプローブに把持された組織にジュール熱を発生させ、その組織を凝固させることができる。また併用デバイスは、超音波デバイスと同様に、プローブから超音波を出力することで、ジョウとプローブに把持された組織を切開できる。操作部に設けられた2つの操作ボタンの一方には、高周波モードが割り当てられ、他方にはシール&カットモードが割り当てられる。高周波モードは、高周波エネルギー出力のみで凝固等の処置を行うモードである。シール&カットモードは、高周波エネルギーと超音波エネルギーを併用するモードであり、高周波エネルギー出力により組織を凝固させると共に組織を切離するモードである。
【0043】
なお、以下の実施形態においては、主にバイポーラデバイス330をエネルギーデバイス310として用いる場合を例に説明する。但し、本実施形態は、熱拡散が生じる可能性がある上記の様々なエネルギーデバイスを用いる場合に適用可能である。
【0044】
4.第1実施形態
図7は、第1実施形態の処理例である。まず、S21Aに示すように制御部110の処理により、制御部110に内視鏡画像が入力される。具体的には、内視鏡により撮像された動画像の各フレーム画像が順次に制御部110に入力される。内視鏡画像には、1又は複数のエネルギーデバイス310及び1又は複数の生体組織が撮像されている。なお、以下の説明においては、内視鏡画像のことを、適宜、処置画像と記載する。
図8は、
図7のS21Aにおける入力情報である処置画像の例である。このように、第1認識部111と第2認識部112に入力される処置画像には、エネルギーデバイス310と生体組織が写っている。
【0045】
次に、S22Aで、制御部110の第1認識部111は、後述の
図14で説明する機械学習によって調整された推定プログラムを実行することで、処置画像からエネルギーデバイス310を検出する。当該推定プログラムは、後述の
図14~
図16で説明するように、エネルギー出力情報に応じた蓄熱量、組織の種類に応じた放熱量、処置具による組織把持時間などの関係性を学習した学習済みモデル121を実行するプログラムである。S22Aでは、第1認識部111は、推定プログラムを有するネットワークに、制御部110が処置画像をインプットすることでエネルギーデバイス310を検出する。具体的には、第1認識部111は、処置画像からデバイス情報を抽出する。ここで、デバイス情報とは、エネルギーデバイス310の種類、存在範囲、或いはその先端部分の状態等である。先端部分の状態とは、例えばジョウ337、338の開閉状態である。なお、デバイスの種類の入力は、医師によるマニュアル入力でもよい。また処置画像とジェネレータ300等から入手したデバイスの種類とを本機能の推定プログラムにインプットし、処置画像内のエネルギーデバイス310を検出する。
【0046】
そして、制御部110は、推定プログラムに基づいて、処置画像に写された被写体の中から、エネルギーデバイス310を示す領域を推定し、当該領域に色を付してラベリングをする。このようにして、制御部110の第1認識部111は、処置画像からエネルギーデバイス310に関する情報であるデバイス情報を抽出する。またS22Aでは、複数の内視鏡画像からエネルギーデバイス310が生体組織を把持していた時間を検出する。そして、制御部110は当該ラベリングのされた処置画像及び当該把持時間を第2認識部112に出力する。
【0047】
そして、
図7のS22Bに示すように、制御部110の第2認識部112は、前述した推定プログラムを実行することで、処置画像から生体組織の種類を検出する。ここで、検出する生体組織の種類は、エネルギーデバイス310が生体組織を把持しているか否かに関わらず、当該手術の処置対象になっている生体組織を指す。また生体組織以外に、その把持量或いは、把持時間を検出することもできる。この場合、把持時間は、把持してからの経過時間であり、処置画像から認識することができる。生体組織の種類は、例えば大血管、膵臓、十二指腸等であるが、これらに限られない。制御部110は生体組織の種類をアノテーションして学習させた推定プログラムを有するネットワークに、第1認識部111における前述のラベリングのされた処置画像をインプットすることで、処置画像に写った生体組織の種類を検出する。なお、生体組織の種類の入力は、医師によるマニュアル入力でもよい。また、生体組織の種類の他、生体組織の状態、例えばウェット、ドライ等の状態も検出できる。そして、上記で推定した生体組織の種類のラベリングを行う。例えば、ある生体組織の領域である部分に色を付すことにより行う。このようにして、第2認識部112は、処置画像から生体組織に関する情報である組織情報を抽出する。なお、上記で内視鏡画像ではなく、CT(Computed Tomography)或いはMRI(Magnetic Resonance Imaging)との3Dマッチングにより、生体組織の検出を行うこともできる。
【0048】
次に、
図7のS23に示すように、制御部110の推定部113は、第1認識部111及び第2認識部112の推定結果を受けて、当該推定結果に基づいて残熱情報の推定を行う。ここで、推定部113は、S24に示すように第1認識部111及び第2認識部112の推定結果以外に、エネルギー供給量に関する情報を用いて上記の推定を行うこともできる。エネルギー供給量に関する情報は、エネルギーデバイスの主にエネルギー出力設定に関する情報であり、例えばエネルギーの出力量或いは出力時間であり、当該情報は例えば、エネルギーデバイス310から取得できる。そして、エネルギー供給量に関する情報は、ジェネレータ300等から取得することもできる。即ち、推定部113は、デバイス情報と、組織情報と、エネルギー供給量に関する情報がある場合には当該情報とを後述の
図13で説明する推定プログラムにインプットすることで、エネルギーデバイス310の残熱情報を推定する。残熱情報とは、エネルギーデバイス310の先端部分の例えば温度、熱量等の情報である。そして、推定部113の推定した残熱情報のことを推定残熱情報という。このようにして制御部110の推定部113は、推定残熱情報の推定を行う。推定残熱情報の推定は、例えば推定部113が組織情報、デバイス情報から、エネルギーデバイス310に処置される処置対象組織を推定する。そして、推定部113は、推定された処置対象組織からエネルギーデバイス310周辺の組織についての情報も得ることができ、これに基づいて伝熱経路の熱容量を推定する。当該伝熱経路の熱容量に基づいて、推定部113はエネルギーデバイス310の推定残熱情報を推定することができる。また、推定部113はエネルギー供給後だけでなく、エネルギー供給中の推定残熱情報を推定してもよい。例えば、推定部113はデバイス情報と組織情報とに基づいて、エネルギーデバイス310に処置対象組織を推定することができる。そして、推定された処置対象組織から伝熱経路の熱容量を推定でき、これに基づいてエネルギーデバイス310の先端部分の残熱情報を推定できる。
【0049】
図7のS25で、出力情報判断部114は、これまでのA22A、S22B及びS23のそれぞれの出力結果に基づいて、出力情報についての判断を行う。具体的には、出力情報判断部114は、第1認識部111、第2認識部112及び推定部113で推定した情報を集計し、医師に提示する情報の判断を行う。
【0050】
そして、
図7のS26において、制御部110の提示部115は、S25で推定部113が推定した情報である推定残熱情報に基づく報知を、報知部230に行わせる。報知の方法は、報知部230にアイコンを表示したり、又は音、振動等による報知がある。なお、コントローラ100はエネルギー出力調整指示をジェネレータ300に出力する機能を備えていてもよい。例えば、術者の入力が可能なインターフェースを介して、術者の入力に従ってエネルギー出力調整指示をジェネレータ300に出力しても良い。あるいは、上述したような機械学習等を用いた画像認識処理により内視鏡画像から生体組織と、エネルギーデバイス310とを認識し、その認識した情報に基づいて、ジェネレータ300にエネルギー出力調整指示を出力してもよい。
【0051】
図9~
図12は、提示部が重畳表示した画像の例である。
図9~
図12に示す画像では、エネルギーデバイス310の先端部分の部位ごとの現在の残熱温度を色で区別して表示している。そして、
図9に示す画像は、画像の左上に棒フラフで色と温度の関係を示した場合の例である。
図10に示す画像は、色と温度の関係を画像の左上に数値で示した場合の例である。
図11に示す画像は、色と温度の関係がわかるようにエネルギーデバイス310の先端部分の部位に直接、温度を数値で示している。また、エネルギーデバイス310の先端部分の部位の表示は、
図12に示す画像にように、シャフト、ブレード、パッドがわかるように画像の中に表示してもよい。例えば、ブレードの部分が摂氏200度になると、金属で繋がっているシャフト分も摂氏100度程度まで熱くなる場合があるが、特にシャフト部分には注意が回らない場合が多く、熱損傷を与えてしまうリスクが高い。従って、
図9~
図12に示すように、エネルギーデバイス310の先端部分の部位ごとに温度を表示することで、熱損傷リスクする効果が大きくなる。このように、部位ごとの現在の残熱温度は、例えば棒フラフ又は数値による表示により行うことができる。そして、部位ごとの温度状態は、例えば色を付すことで識別できるようになる。なお、色の重畳表示により、エネルギーデバイス310の先端部分の視認性の悪化が問題になる場合もある。このような場合には、医師の選択により色の重畳表示をしないように表示設定を変更できるようにしてもよい。例えば、
図12のエネルギーデバイス310の先端部分のブレードとパッド部分には、色を重畳表示しないように設定することが考えられる。
【0052】
図13は、エネルギーデバイス310及び生体組織、並びに残熱情報の推定処理の機械学習を行う学習装置500の構成例である。学習装置500は、処理部510と記憶部520とを含む。学習装置500は、例えばPC又はサーバ装置等の情報処理装置によって実現される。或いは、学習装置500は、ネットワークを介して接続された1又は複数の情報処理装置によって処理を実行するクラウドシステムで実現されてもよい。
【0053】
処理部510はCPU等のプロセッサであり、記憶部520は半導体メモリ又はハードディスクドライブ等の記憶装置である。記憶部520は学習モデル522と教師データ521とを記憶している。ここで、教師データ521は第1教師データ521A、第2教師データ521B及び第3教師データ521Cとを含む。また学習モデル522は、第1学習モデル522A、第2学習モデル522B及び第3学習モデル522Cとを含む。そして、処理部510が教師データ521を用いて学習モデル522を学習させることで、学習済みモデル121を生成する。教師データ521は、複数の学習用画像の画像データとエネルギーデバイス310のエネルギー出力設定に関する情報である学習用情報とを含む。そして、当該学習用画像と学習用情報には、それぞれ正解データが付されている。ここで第1教師データ521Aはエネルギーデバイス310についての教師データである。また第2教師データ521Bは生体組織についての教師データ、第3教師データ521Cは残熱情報についての教師データである。そして、第1学習モデル522Aはエネルギーデバイス310についての学習モデル、第2学習モデル522Bは生体組織についての学習モデル、第3学習モデル522Cは残熱情報の学習モデルある。上記の学習用画像は、1又は複数の生体組織及び1又は複数のエネルギーデバイス310が写る処置画像を含む。この処置画像を学習用デバイス組織画像とも呼ぶ。また学習用画像は、1又は複数の生体組織が写り、且つエネルギーデバイス310が写らない処置画像を含んでもよい。この処置画像を学習用組織画像とも呼ぶ。正解データは、セグメンテーション(領域検出)におけるアノテーション、ディテクション(位置検出)におけるアノテーション、クラシフィケーション(分類)における正解ラベル、又はリグレッション(回帰分析)における正解ラベルである。処理部510は、学習モデル522による推論処理に学習用画像を入力し、その推論処理の結果と正解データの誤差に基づいて学習モデル522にフィードバックを行い、それを多数の教師データで繰り返すことで、学習済みモデル121を生成する。そして、生成された学習済みモデル121は、コントローラ100の記憶部120に転送される。
【0054】
図14~
図16は、上述した学習段階の詳細を説明する図である。
図14は、第1認識部111におけるエネルギーデバイス310、生体組織の把持時間の推定に用いられる第1学習済みモデル122についての説明図である。
図14に示すように、不図示の学習装置500は、エネルギーデバイス310、生体組織の写った処置画像に対応するアノテーションがラベリングされた第1教師データ521Aを、第1学習モデル522Aにフィードバックすることで、既存の第1学習済みモデル122を修正し、新たな第1学習済みモデル122として、コントローラ100に送信する。アノテーションの内容は、エネルギーデバイス310の種類及び位置、エネルギーデバイス310の先端部分の構成及び状態、処置対象である生体組織の種類等の正解データにあたる情報である。
【0055】
図15は、第2認識部112における生体組織の種類の推定に用いられる第2学習済みモデル123についての説明図である。
図15に示すように、不図示の学習装置500は、処置画像に対応するアノテーションがラベリングされた第2教師データ521Bを、第2学習モデル522Bにフィードバックすることで、既存の第2学習済みモデル123を修正し、新たな第2学習済みモデル123として、コントローラ100に送信する。アノテーションの内容は、エネルギーデバイス310の位置、処置対象である生体組織の種類等の正解データにあたる情報である。
【0056】
図16は、推定部113における残熱情報の推定に用いられる第3学習済みモデル124についての説明図である。
図16に示すように、不図示の学習装置500は、処置画像に対応するアノテーションがラベリングされた第3教師データ521Cを、第3学習モデル522Cにフィードバックすることで、既存の第3学習済みモデル124を修正し、新たな第3学習済みモデル124として、コントローラ100に送信する。なお、学習段階において、推定部113はエネルギー供給中の温度を推定するように学習させてもよい。
【0057】
学習用画像に付された正解データはエネルギーデバイス310の種類、エネルギーデバイス310の先端部分の残熱温度、処置対象である生体組織の種類、生体組織を把持している時間等である。学習用画像に付される正解データには、サーモカメラまたは処置具先端に搭載した温度センサーにより取得した残熱温度を用いることができる。例えば、サーモカメラにより撮像された画像に写ったエネルギーデバイス310の各部位に温度を示す色が付される。そして、当該画像が第3教師データ521Cの学習用画像になり、当該画像に色で示された残熱情報が正解データになる。なお、正解データは、例えば医師が付してもよい。
【0058】
エネルギー出力設定に関する情報である学習用情報に付された正解ラベルは、例えばエネルギーの出力量、出力時間等又はこれらの履歴についての情報である。学習用情報に付される正解データは、ジェネレータ300等の機器から取得することができる。またジェネレータ300等の機器から出力エネルギーの履歴情報を取得してもよい。当該履歴情報を第3学習モデル522Cにフィードバックし、第3学習済みモデル124を生成することで、残熱情報の推定精度の向上が図られる。このように学習装置500において、多数の学習用デバイス組織画像又は学習用組織画像を教師データ521として、学習モデル522にフィードバックすることで、制御部110の推定精度の向上が図られる。
【0059】
さて、外科手術においてエネルギー処置を行う際、エネルギーデバイスの熱から生体組織を保護し、安全を保ちながら効率的に手術を行うことが重要になる。外科手術においてエネルギーデバイスを使用する際に、非エキスパートはエネルギーデバイスの先端部分、例えばアクティブブレード、パッド、シャフトの残熱状態を予測することは難しい場合が多い。例えば、連続で処置を続けていると、エネルギーデバイスの温度は次第に熱くなるが、今どのくらいの温度であるかを予測することは困難である。また、特に前述した
図6の超音波デバイス340では、短時間で摂氏200度程度まで上昇するため、非エキスパートの医師が安全を保ちながら効率的に手術を行うことは難しく、熟練を要するものである。
【0060】
特許文献1に開示される医療装置は、エネルギー処置具の使用後、高温状態のエネルギーデバイスが処置画像内に存在する場合、処置画像に高温デバイスの有無を表示し、画像内のエネルギーデバイスに警告画像を重畳表示する。しかし、当該医療装置では、処置画像に具体的な残熱温度が提示されないため、エネルギーデバイスの冷却のタイミングが医師ごとに異なる場合に対応できない。また温度測定にサーモカメラ等を使用することは、腹腔鏡手術におけるポート数の増加やセンサー搭載デバイスの太さの増大に繋がるという課題がある。例えば、医師はエネルギーデバイスを空冷により降温させたり、エネルギーデバイスの先端部分を濡れたガーゼに当てて温度を冷ましたりするが、その加減の調整が難しい。
【0061】
この点、本実施形態によれば、電源からエネルギーデバイス310への通電時間、通電量及び処置対象組織の種類・状態に応じたエネルギーデバイス310先端部分の残熱温度の推移を教師データとした機械学習により、制御部110は温度等の残熱情報を推定し、医師に提示する。例えば、ある生体組織に与えたエネルギーに基づいて、現在のエネルギーデバイスの温度を推定するように機械学習をさせる。このようにすれば、エネルギーデバイス310先端部分の残熱情報を推定してリアルタイムで表示できるようになる。このため、医師の経験、能力に依存せずにエネルギーデバイス310の冷却のタイミングが判断できる。従って、非エキスパートの医師であっても、温存組織への熱損傷を回避することが容易になり、より安全かつ効率的に手術を実施することができる。
【0062】
5.第2実施形態
第2実施形態では、制御部110は、エネルギーデバイス310によるエネルギー出力が完了した後における熱量又は温度の推移を推定残熱情報として、これに基づく報知を報知部230に行わせる。即ち、第2実施形態では、エネルギーデバイス310によるエネルギー供給が完了したあと、エネルギーデバイス310先端部の熱量又は温度がどのように推移するかについて前述した推定プログラムによる推定が行われる。
【0063】
第2実施形態では、学習済みモデル121は、学習用画像及び学習用情報と、エネルギー出力後の残熱推移との関係を学習し、エネルギー出力が完了した後における熱量又は温度の推移を推定するように学習している。即ち、学習装置500では、エネルギー出力の完了後におけるエネルギーデバイス310の温度の推移を推定する第3学習済みモデル121Cを作成するため、エネルギー供給中の残熱履歴情報を第3教師データ521Cとして、第3学習済みモデル124を修正し、新たな第3学習済みモデル124を作成する。そして、推定部113は、前述した通り、第3学習済みモデル124に基づいて、残熱情報の推定を行う。この場合に、推定部113は、第3教師データ521Cである生体組織の種類、生体組織の把持時間、エネルギーデバイス310のエネルギーの出力量、出力時間等の情報に基づいて、エネルギー出力の完了した後におけるエネルギーデバイス310先端の熱量又は温度の推移を推定する。
【0064】
図17は、エネルギーデバイス310の先端部分の温度の推移の推定について説明する図である。横軸は時間(s)、縦軸は温度(℃)である。また各時刻は、t3<t2<t1<t0の関係にあり、現在の時刻はt0である。この場合に、時刻t0に、時刻t3、t2、t1における温度を取得していた場合、グラフに丸印でプロットすると、例えば
図17のようになる。そして、これらのデータから残熱温度の時間依存性を示す近似曲線を求めることができる。近似曲線は、例えばコンピュータの解析機能を用いて求めることができる。さらに、
図17の破線で示すように当該近似曲線を、t>t0の範囲に外挿することで、エネルギーデバイス310によるエネルギー出力が完了した後における熱量又は温度の推移を推定することができる。
【0065】
このようにすれば、医師は現時点での残熱情報のみでなく、今後の温度の推移についての情報も得ることができる。従って、医師は手術を円滑に行うことができる。
【0066】
また、上記で推定した温度の推移に基づいて、エネルギーデバイス310先端部の温度が、所望の規定値に到達するまでの時間の推定を行い、推定された時間を報知部230に報知させることもできる。即ち、例えば生体組織に熱損傷を与えるおそれのある温度Txを閾値としたとき、現時刻t0からどのくらいの時間が経過すれば、温度が閾値Txを下回り、処置を再開できるのかの目安となる時間の提示をすることができる。熱損傷の有無の判断基準は、例えば蛋白質の変性、細胞内酵素の失活等が発生するか否かを基準として行う。なお、このような温度の閾値Txは、処置対象とする生体組織の種類によって異なるが、例えば摂氏50度~摂氏60度である。そして、処置対象である生体組織の種類に応じて、所望の規定値を変える場合、例えば、膵臓、十二指腸等の熱損傷リスクの高い生体組織の場合には、規定値を低めに設定することで、特に重要な生体組織の熱損傷の発生を回避することができる。
図17に示すグラフにおいて、所望の規定値である温度を閾値Txとすると、推定された温度の推移の曲線がT=Txと交わる時刻txにおいて、エネルギーデバイス310先端部の温度は閾値Txに到達する。従って、制御部110が、tx-t0により定まる時間を求め、当該時間を報知部230に報知させることで、あとどのくらいの時間が経過すれば、医師が安全に処置を再開できるのかの目安を提示できる。このようにすれば、医師は処置を再開できるまでに要する時間を具体的に知ることができる。
【0067】
6.第3実施形態
第3実施形態では、制御部110は、推定残熱情報として推定したエネルギーデバイス310の熱量又は温度が所定の閾値より大きい場合に、アラートの報知を報知部230に行わせる。即ち、本実施形態では、制御部110は、例えばエネルギーデバイス310の先端部分の温度を推定し、推定した温度が所定の閾値より大きい場合に、医師にアラートの報知を行う。所定の閾値は、例えば「5.第2実施形態」で説明したような生体組織に熱損傷を与えるおそれのある温度である閾値Txである。また、閾値は、エネルギーデバイス310先端部分の熱量の値として定めてもよい。エネルギーデバイス310先端部分の温度自体は低温であっても、熱量が大きい場合には長時間に渡る熱により、生体組織に熱損傷を与えるリスクが大きくなる場合もある。従って、医師は状況に応じて、閾値を熱量により規定するか、温度により規定するかの選択ができる。
【0068】
報知部230のアラートには、例えば、報知部230の表示部232に警告表示を行う方法がある。ここで、表示部232は例えばパソコンのディスプレイである。即ち、ディスプレイ上にエネルギーデバイス310の先端部分の温度が閾値を超えている旨の表示を行うことで、医師に警告を行う。また警告を行う場合、例えば表示部232に表示されたエネルギーデバイス310に処置画像へ閾値を超えた領域がわかるように色などを付して重畳表示を行ってもよい。また制御部110は、表示部232への表示態様として、推定残熱情報である熱量又は温度が、所定の閾値より高い場合に、推定結果を表示させてもよい。
【0069】
警告表示は、前述した
図9~
図11に示す推定結果の表示画面に、例えばテロップを付すことにより表示することができる。具体的には、
図18、
図19に示すような表示例が考えられる。
図18に示す例では、画像の左上に「警告!残熱100℃超」というテロップを表示し、医師にエネルギーデバイス310の先端部分の温度が生体組織に熱損傷を与えるおそれがあることを警告している。
図19に示す例は、「警告!残熱100℃まで〇秒」というテロップを表示した場合を示す。
図19に示す表示方法は、
図18に示す表示方法と異なり、例えば前述した閾値となる温度を下回るまでにかかる所要時間が表示される。従って、医師が手術を進める上で、より有用な情報を提供でき、手術を円滑に進めることができる。上記の所要時間は、例えば
図17において説明したエネルギーデバイス310の先端部分の温度の推移の推定方法により求めることができる。また
図18、
図19に示す表示において、例えば、上記のテロップの表示を点滅させる等の表示を行うことで、医師に対して、より効果的に注意を促すことができる。なお、警告は表示部232への表示に限られず、例えばアラーム音や、エネルギーデバイス310の振動による警告であってもよい。
【0070】
図20は、第3実施形態においてコントローラ100等が行う処理について説明した図である。本実施形態において、制御部110の推定部113は、エネルギーデバイス310の先端部分の温度又は熱量が、閾値より大きいと推定した場合、報知部230は、アラートを報知する。一方、エネルギーデバイス310の先端部分の熱量又は温度が、閾値以下であると推定した場合、報知部230は、アラートを報知しない。即ち、エネルギーデバイス310によるエネルギー供給の完了後、例えばエネルギーデバイス310をオフした後、エネルギーデバイス310の先端部分の熱量又は温度が閾値を超えていた場合、アラートを報知することになる。ここで、熱量又は温度の推移を推定している場合は、当該熱量又は温度が閾値以下になった後に、アラートの報知を停止する。上記の処理は、例えば記憶部120が残熱情報についてのテーブルデータを記憶し、制御部110が、そのテーブルデータを参照することで、推定結果に対応した報知部230の処理をI/Oデバイス190を介して、報知部230に出力する。そして、報知部230は、制御部110の出力結果に従って動作する。なお、アラートの報知を行うアルゴリズムは、上記に限られない。第3実施形態によれば、医師はエネルギーデバイス310の先端部分の残熱温度を把握できるようになり、より安全かつ効率的に手術を実施することができる。
【0071】
また、本実施形態のシステムは、プログラムとしても実現できる。即ち、本実施形態のプログラムは、少なくとも1つのエネルギーデバイス310及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像を含んだ、少なくとも一つの処置画像を取得する。そしてエネルギー供給を受けてエネルギー出力を行う少なくとも1つのエネルギーデバイス310及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用デバイス組織画像又は少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用組織画像から、エネルギーデバイス310にエネルギー供給された後にエネルギーデバイス310に残る熱量あるいは温度に関する情報である残熱情報を出力するように学習した学習済みモデル121に基づく処理により、エネルギーデバイス310のエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する情報を取得する。そして処置画像と、エネルギー供給量に関する情報と、学習済みモデル121とに基づいて、エネルギーデバイス310の熱量又は温度に関する情報である推定残熱情報を推定し、推定残熱情報を表示部232に表示することと、をコンピュータに実行させる。ここで、コンピュータは、パソコン等のネットワーク端末等が想定される。但し、コンピュータは、スマートフォンやタブレット端末、スマートウォッチ等のウェアラブル端末であってもよい。このようにすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0072】
また、本実施形態のシステムは、情報処理方法としても実現できる。即ち、情報処理方法は、少なくとも1つのエネルギーデバイス及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像を含んだ、少なくとも一つの処置画像を取得する。そしてエネルギー供給を受けてエネルギー出力を行う少なくとも1つのエネルギーデバイス310及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用デバイス組織画像又は少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である学習用組織画像から、エネルギーデバイス310にエネルギー供給された後にエネルギーデバイス310に残る熱量あるいは温度に関する情報である残熱情報を出力するように学習した学習済みモデル121に基づく処理により、エネルギーデバイス310のエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する情報を取得する。そして処置画像と、エネルギー供給量に関する情報と、学習済みモデル121とに基づいて、エネルギーデバイス310の熱量又は温度に関する情報である推定残熱情報を推定する。このようにすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
【0073】
以上に説明した本実施形態のシステム10は、学習済みモデル121を記憶する記憶部120と、制御部110と、を含む。学習済みモデル121は、学習用デバイス組織画像と、学習用組織画像と、学習用情報と、から、エネルギーデバイス310にエネルギー供給された後にエネルギーデバイス310に残る熱量あるいは温度に関する情報である残熱情報を出力するように学習する。学習用デバイス組織画像はエネルギー供給を受けてエネルギー出力を行う少なくとも1つのエネルギーデバイス310及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である。学習用組織画像は少なくとも1つの生体組織が撮像された画像である。学習用情報はエネルギーデバイスのエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する情報である。制御部110は、少なくとも1つのエネルギーデバイス310及び少なくとも1つの生体組織が撮像された画像を含んだ、少なくとも一つの処置画像を取得する。制御部110は、エネルギーデバイス310のエネルギー出力設定に関する情報であるエネルギー供給量に関する情報を取得する。制御部110は、処置画像と、エネルギー供給量に関する情報と、学習済みモデル121とに基づいて、エネルギーデバイス310の熱量又は温度に関する情報である推定残熱情報を推定する。制御部110は、推定残熱情報に基づく報知を報知部に行わせる。
【0074】
本実施形態によれば、電源からエネルギーデバイス310への通電時間、通電量及び処置対象組織の種類・状態に応じたエネルギーデバイス310先端部分の残熱温度の推移を教師データ521とした機械学習により、温度等の残熱情報を推定し、医師に提示できる。このようにすれば、エネルギーデバイス310先端部分の残熱情報を推定してリアルタイムで表示できるようになる。このため、医師の経験、能力に依存せずにエネルギーデバイス310の冷却のタイミングが判断できる。従って、非エキスパートの医師であっても、温存組織への熱損傷を回避でき、より安全かつ効率的に手術を実施することができる。なお、学習用デバイス組織画像、学習用組織画像、学習用情報については、「4.第1実施形態」で説明されている。
【0075】
また本実施形態では、制御部110は、処置画像から、処置画像上に撮像される生体組織に関する情報である組織情報を抽出し、組織情報とエネルギー供給量に関する情報と、に基づいて、推定残熱情報を推定してもよい。
【0076】
本実施形態によれば、制御部110は、内視鏡システム200の取得した処置画像から、生体組織の種類を推定することができる。なお、処置画像については
図8で説明されている。また生体組織の推定についての学習段階については「4.第1実施形態」で説明されている。
【0077】
また本実施形態では、制御部110は、処置画像から、処置画像上に撮像されるエネルギーデバイスに関する情報であるデバイス情報を抽出し、デバイス情報と、組織情報と、に基づいて、エネルギーデバイスに処置される処置対象組織を推定し、処置対象組織に基づいて推定残熱情報を推定してもよい。
【0078】
本実施形態によれば、制御部110は、内視鏡システム200の取得した処置画像から、エネルギーデバイス310に関するデバイス情報を推定することができ、デバイス情報と推定された組織情報に基づいて、エネルギーデバイス310の残熱情報を推定できるようになる。なお、処置画像については
図8で説明されている。また生体組織の推定についての学習段階については「4.第1実施形態」で説明されている。
【0079】
また本実施形態では、制御部110は、推定残熱情報として、エネルギーデバイス310によるエネルギー出力が完了した後における熱量又は温度の推移を推定してもよい。
【0080】
本実施形態によれば、医師は現時点での残熱情報だけでなく、今後の温度の推移についての情報も得ることができる。なお、熱量又は温度の推移を推定手法については、「5.第2実施形態」の
図17で説明されている。
【0081】
また本実施形態では、学習済みモデル121は、学習用デバイス組織画像又は学習用組織画像及び学習用情報と、エネルギー出力後の残熱推移との関係を学習し、エネルギー出力が完了した後における熱量又は温度の推移を推定するように学習した学習済みモデル121であってもよい。
【0082】
本実施形態によれば、学習用画像及び学習用情報と、エネルギー出力後の残熱推移との関係を学習した学習済みモデル121により、制御部110はエネルギー出力の完了した後におけるエネルギーデバイス310先端の熱量又は温度の推移を推定することができる。詳細については、「5.第2実施形態」で説明されている。
【0083】
また本実施形態では、制御部110は、推定残熱情報として、エネルギーデバイス310によるエネルギー出力が完了した後、エネルギーデバイス310の熱量又は温度が所望の規定値に到達するまでの時間を推定してもよい。
【0084】
本実施形態によれば、医師は所望の熱量等を設でき、エネルギーデバイス310が当該熱量等になるまでに要する時間を具体的に知ることができる。従って、手術を円滑に行うことができる。詳細については、「5.第2実施形態」で説明されている。
【0085】
また本実施形態では、制御部110は、推定残熱情報として推定したエネルギーデバイス310の熱量又は温度が所定の閾値より大きい場合に、アラートの報知を報知部に行わせてもよい。
【0086】
本実施形態によれば、生体組織に熱損傷を与えるおそれのある温度である閾値を設定することで、医師はエネルギーデバイス310の先端部分の残熱による生体組織の熱損傷リスクを把握できるようになる。従って、より安全かつ効率的に手術を実施することができる。アラートの報知手法については、「6.第3実施形態」の
図20で説明されている。
【0087】
また本実施形態では、報知部230は表示部232であり、制御部110は、推定残熱情報を表示部232に表示させてもよい。
【0088】
本実施形態によれば、表示部232に熱量、温度或いはエネルギーデバイス310の熱量又は温度が所望の規定値に到達するまでの時間が表示され、医師はエネルギーデバイス310の温度が下がるまで待機する必要があるか否かの判断が可能になる。詳細については、「4.第1実施形態」の
図9~
図12で説明されている。
【0089】
また本実施形態では、制御部110は、推定残熱情報として推定したエネルギーデバイス310の熱量又は温度が所定の閾値より高い場合に、推定残熱情報として推定したエネルギーデバイスの熱量又は温度を示す表示を表示部に表示させてもよい。
【0090】
本実施形態によれば、医師はエネルギーデバイス310の先端部分の残熱により、生体組織に熱損傷が発生するおそれがあるか否かを表示部232の表示により把握できるようになる。従って、医師がより安全かつ効率的に手術を実施できるようになる。詳細については「6.第3実施形態」で説明されている。
【0091】
また本実施形態では、制御部110は、推定残熱情報として推定したエネルギーデバイス310の熱量又は温度を示す色を、表示部232に表示されたエネルギーデバイス310に重畳表示させてもよい。
【0092】
本実施形態によれば、エネルギーデバイス310は、バイポーラデバイス330であってもよい。詳細については「4.第1実施形態」の
図9~
図12で説明されている。
【0093】
また以上の処理はプログラムとして記述されてもよい。即ち、本実施形態のプログラムは、処置画像を取得することと、学習済みモデル121に基づく処理により、エネルギー供給量に関する情報を取得することと、処置画像と、エネルギー供給量に関する情報と、学習済みモデル121とに基づいて、推定残熱情報を推定することと、推定残熱情報を表示部232に表示することと、をコントローラ100に実行させる。
【0094】
また以上の処理は方法として記述されてもよい。即ち、本実施形態の方法は、処置画像を取得し、学習済みモデル121に基づく処理により、エネルギー供給量に関する情報を取得し、処置画像と、エネルギー供給量に関する情報と、学習済みモデル121とに基づいて、推定残熱情報を推定する。
【0095】
以上、本実施形態およびその変形例について説明したが、本開示は、各実施形態やその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階では、要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記した各実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることができる。例えば、各実施形態や変形例に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態や変形例で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、本開示の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0096】
10 システム、100 コントローラ、110 制御部、111 第1認識部、112 第2認識部、113 推定部、114 出力情報判断部、115 提示部、120 記憶部、121 学習済みモデル、122 第1学習済みモデル、123 第2学習済みモデル、124 第3学習済みモデル、170 I/Oデバイス、180 I/Oデバイス、190 I/Oデバイス、200 内視鏡システム、210 内視鏡、220 本体装置、230 報知部、232 表示部、300 ジェネレータ、310 エネルギーデバイス、320 モノポーラデバイス、321 電極、322 挿入部、323 操作部、325 ケーブル、330 バイポーラデバイス、331 先端部、332 挿入部、333 操作部、335 ケーブル、336 基端、337 ジョウ、338 ジョウ、340 超音波デバイス、341 先端部、342 挿入部、343 操作部、344a 操作ボタン、344b 操作ボタン、345 ケーブル、346 基端、347 ジョウ、348 プローブ、500 学習装置、510 処理部、520 記憶部、521 教師データ、521A 第1教師データ、521B 第2教師データ、521C 第3教師データ、522 学習モデル、522A 第1学習モデル、522B 第2学習モデル、522C 第3学習モデル、S1 ステップ、S2Aa ステップ、S2Ab ステップ、S2B ステップ、S3 ステップ、T 温度、Tx 閾値、t0 現時刻、t1 時刻、t2 時刻、t3 時刻