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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】信号プリコーディング
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0456 20170101AFI20241211BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20241211BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H04B7/0456 110
H04B7/06 958
H04L27/26 114
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023539264
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2021082194
(87)【国際公開番号】W WO2022144128
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】63/131,888
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100150670
【弁理士】
【氏名又は名称】小梶 晴美
(74)【代理人】
【識別番号】100194294
【弁理士】
【氏名又は名称】石岡 利康
(72)【発明者】
【氏名】アスリー, フレードリク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, シンリン
(72)【発明者】
【氏名】フレンヌ, マティアス
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-511271(JP,A)
【文献】ZTE,CSI enhancements for Multi-TRP and FR1 FDD reciprocity[online],3GPP TSG RAN WG1 #103-e R1-2007769,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_103-e/Docs/R1-2007769.zip>,2020年11月01日
【文献】Spreadtrum Communications,CSI-RS design for CSI acquisition[online],3GPP TSG RAN WG1 NR Ad-Hoc#2 R1-1710365,Internet<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_AH/NR_AH_1706/Docs/R1-1710365.zip>,2017年06月16日
【文献】NTT DOCOMO, INC,Discussion on CSI enhancements[online],3GPP TSG RAN WG1 #103-e R1-2009180,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_103-e/Docs/R1-2009180.zip>,2020年11月01日
【文献】CATT,CSI enhancements for MTRP and FR1 FDD with partial reciprocity[online],3GPP TSG RAN WG1 Meeting #102-e R1-2005689,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_102-e/Docs/R1-2005689.zip>,2020年08月08日
【文献】Fraunhofer IIS, Fraunhofer HHI,CSI enhancements on Type II PS codebook and multi-TRP[online],3GPP TSG RAN WG1 #103-e R1-2008901,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_103-e/Docs/R1-2008901.zip>,2020年11月01日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/02 - 1/06
H04B 7/02 - 7/12
H04L 27/26
3GPP TSG RAN WG1-4
3GPP TSG SA WG1-2
3GPP TSG CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号をプリコーディングするための方法(700)であって、前記方法は、
アップリンク(UL)測定に基づいて、前記信号のダウンリンク(DL)送信のための空間領域(SD)プリコーディングベクトルおよび周波数領域(FD)プリコーディングベクトルを決定すること(s702)と、
前記信号を搬送するためのサブキャリア上で前記信号に前記FDプリコーディングベクトルを適用し、したがって修正された信号を作り出すこと(s704)と、
プリコーディングされた信号を作り出すために、前記修正された信号に前記SDプリコーディングベクトルを適用すること(s706)であって、前記SDプリコーディングベクトルが1つのシンボル中ですべての前記サブキャリアについて共通である、前記SDプリコーディングベクトルを適用すること(s706)と
を含み、
前記信号に前記FDプリコーディングベクトルを適用することは、
前記FDプリコーディングベクトルの共役を生成することと、
を計算することとを含み、ここで、f が前記FDプリコーディングベクトルの前記共役であり、
がエレメントごとの乗算を示し、rが前記信号であり、
が前記修正された信号である、方法。
【請求項2】
信号をプリコーディングするための方法(700)であって、前記方法は、
アップリンク(UL)測定に基づいて、前記信号のダウンリンク(DL)送信のための空間領域(SD)プリコーディングベクトルおよび周波数領域(FD)プリコーディングベクトルを決定すること(s702)と、
前記信号を搬送するためのサブキャリア上で前記信号に前記FDプリコーディングベクトルを適用し、したがって修正された信号を作り出すこと(s704)と、
プリコーディングされた信号を作り出すために、前記修正された信号に前記SDプリコーディングベクトルを適用すること(s706)であって、前記SDプリコーディングベクトルが1つのシンボル中ですべての前記サブキャリアについて共通である、前記SDプリコーディングベクトルを適用すること(s706)と
を含み、
前記修正された信号に前記SDプリコーディングベクトルを適用することは、
を計算することを含み、ここで、
が前記修正された信号の転置であり、bが前記SDプリコーディングベクトルである、方法。
【請求項3】
前記信号がチャネル状態情報参照信号(CSI-RS)である、
前記信号が復調用参照信号(DMRS)である、または
前記信号が物理ダウンリンク共有チャネル(PDSCH)信号である、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記UL測定が、ユーザ機器(UE)(402)によって送信された参照信号(RS)に基づく、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記RSがサウンディング参照信号(SRS)である、または
前記RSが復調用参照信号(DMRS)である、
請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記FDプリコーディングベクトルが離散フーリエ変換(DFT)ベクトルである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
基地局(404)の処理回路(802)によって実行されたとき、前記基地局(404)に、請求項1からのいずれか一項に記載の方法を実施させる命令(844)を含む、コンピュータプログラム(843)。
【請求項8】
請求項に記載のコンピュータプログラムを含んでいるコンピュータ可読記憶媒体(842)
【請求項9】
信号をプリコーディングするための基地局(404)であって、前記基地局(404)は、処理回路(802)を備え、
前記処理回路(802)が、
アップリンク(UL)測定に基づいて、前記信号のダウンリンク(DL)送信のための空間領域(SD)プリコーディングベクトルおよび周波数領域(FD)プリコーディングベクトルを決定すること(s702)と、
前記信号を搬送するためのサブキャリア上で前記信号に前記FDプリコーディングベクトルを適用し、したがって修正された信号を作り出すこと(s704)と、
プリコーディングされた信号を作り出すために、前記修正された信号に前記SDプリコーディングベクトルを適用すること(s706)であって、前記SDプリコーディングベクトルが1つのシンボル中ですべての前記サブキャリアについて共通である、前記SDプリコーディングベクトルを適用すること(s706)と
を行うように構成され
前記信号に前記FDプリコーディングベクトルを適用することは、
前記FDプリコーディングベクトルの共役を生成することと、
を計算することとを含み、ここで、f が前記FDプリコーディングベクトルの前記共役であり、
がエレメントごとの乗算を示し、rが前記信号であり、
が前記修正された信号である、基地局(404)。
【請求項10】
信号をプリコーディングするための基地局(404)であって、前記基地局(404)は、処理回路(802)を備え、
前記処理回路(802)が、
アップリンク(UL)測定に基づいて、前記信号のダウンリンク(DL)送信のための空間領域(SD)プリコーディングベクトルおよび周波数領域(FD)プリコーディングベクトルを決定すること(s702)と、
前記信号を搬送するためのサブキャリア上で前記信号に前記FDプリコーディングベクトルを適用し、したがって修正された信号を作り出すこと(s704)と、
プリコーディングされた信号を作り出すために、前記修正された信号に前記SDプリコーディングベクトルを適用すること(s706)であって、前記SDプリコーディングベクトルが1つのシンボル中ですべての前記サブキャリアについて共通である、前記SDプリコーディングベクトルを適用すること(s706)と
を行うように構成され、
前記修正された信号に前記SDプリコーディングベクトルを適用することは、
を計算することを含み、ここで、
が前記修正された信号の転置であり、bが前記SDプリコーディングベクトルである、基地局(404)。
【請求項11】
前記信号がチャネル状態情報参照信号(CSI-RS)である、
前記信号が復調用参照信号(DMRS)である、または
前記信号が物理ダウンリンク共有チャネル(PDSCH)信号である、
請求項9または10に記載の基地局。
【請求項12】
前記UL測定が、ユーザ機器(UE)(402)によって送信された参照信号(RS)に基づく、請求項9から11のいずれか一項に記載の基地局。
【請求項13】
前記RSがサウンディング参照信号(SRS)である、または
前記RSが復調用参照信号(DMRS)である、
請求項12に記載の基地局。
【請求項14】
前記FDプリコーディングベクトルが離散フーリエ変換(DFT)ベクトルである、請求項9から13のいずれか一項に記載の基地局。
【請求項15】
基地局(404)であって、前記基地局(404)が、
処理回路(802)と、
メモリ(842)と
を備え、
前記メモリが、前記処理回路によって実行可能な命令(844)を含んでおり、
前記処理回路(802)が、請求項1からのいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された、基地局(404)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、たとえば、チャネル状態情報参照信号(CSI-RS)など、信号のプリコーディングに関する。
【背景技術】
【0002】
1. コードブックベースプリコーディング
【0003】
マルチアンテナ技法は、無線通信システムのデータレートおよび信頼性を著しく増加させることができる。送信機と受信機の両方が複数のアンテナを装備する場合、性能が特に改善され、これは、多入力多出力(MIMO)通信チャネルをもたらす。そのようなシステムおよび/または関係する技法は、通常、MIMOと呼ばれる。
【0004】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)新無線(New Radio:NR)規格は、現在、拡張MIMOサポートを伴って発展している。NRにおけるコア構成要素は、MIMOアンテナ展開、および、たとえば空間多重化のような、MIMO関係技法のサポートである。空間多重化モードは、好都合なチャネル条件における高データレートを目的とする。空間多重化動作の例示が図1Aにおいて提供される。
【0005】
図1Aに見られるように、情報搬送シンボルベクトルsはN×r行列W(以下で「プリコーダ行列」と呼ばれる)を乗算され、これは、(N個のアンテナポートに対応する)N次元ベクトル空間の部分空間中で送信エネルギーを分配するように働く。プリコーダ行列は、一般に、可能なプリコーダ行列のコードブックから選択され、一般に、プリコーダ行列インジケータ(PMI)によって示され、PMIは、所与の数のシンボルストリームについてコードブック中の一意のプリコーダ行列を指定する。s中のr個のシンボルは各々レイヤに対応し、rは送信ランクと呼ばれる。このようにして、複数のシンボルが同じ時間/周波数リソースエレメント(TFRE:time/frequency resource element)上で同時に送信され得るので、空間多重化が達成される。シンボルの数rは、一般に、現在のチャネル性質に適するように適応される。
【0006】
NRは、ダウンリンクにおいて直交周波数分割多重(OFDM)を使用し(および、ランク1送信のためにアップリンクにおいて、DFTプリコーディングされたOFDMを使用し)、したがって、サブキャリアn(または代替的に、データTFRE数n)上のあるTFREについての受信されたN×1ベクトルyが、したがって、
=HWs+e
によってモデル化され、ここで、eは、ランダムプロセスの実現として取得される雑音/干渉ベクトルである。プリコーダ行列Wは広帯域プリコーダであり得、広帯域プリコーダは、周波数にわたって一定であるか、または周波数選択性である。
【0007】
プリコーダ行列Wは、しばしば、N×N MIMOチャネル行列Hの特性にマッチするように選定され、いわゆるチャネル依存プリコーディングが生じる。これは、一般に閉ループプリコーディングとも呼ばれ、本質的に、送信エネルギーを部分空間に集中させるように努力し、これは、送信されたエネルギーの大部分をUEに伝達するという意味で強い。
【0008】
NRダウンリンクのための閉ループプリコーディングでは、UEは、ダウンリンクにおけるチャネル測定に基づいて、使用すべき好適なプリコーダ行列の(gNBと示される)NR基地局への推奨を送信する。gNBは、UEを、CSI-ReportConfigに従ってフィードバックを提供するように設定し、CSI-RSを送信し、UEを、UEがコードブックから選択した推奨プリコーディング行列をフィードバックするためにCSI-RSの測定を使用するように設定し得る。大きい帯域幅(広帯域プリコーディング)をカバーすると考えられる単一のプリコーダ行列がフィードバックされ得る。また、チャネルの周波数変動にマッチし、代わりに、サブバンドごとに1つ、周波数選択性プリコーディング報告、たとえばいくつかのプリコーダ行列をフィードバックすることが有益であり得る。これは、チャネル状態情報(CSI)フィードバックのより一般的な事例の一例であり、これはまた、UEへの後続の送信においてgノードBを支援するために推奨プリコーダ行列以外に他の情報をフィードバックすることを包含する。そのような他の情報は、チャネル品質インジケータ(CQI)ならびに送信ランクインジケータ(RI)を含み得る。NRでは、CSIフィードバックは、チャネル帯域幅全体について1つのCSIが報告される広帯域、または各サブバンドについて1つのCSIが報告される周波数選択性のいずれかであり得、これは、帯域幅パート(BWP)のサイズに応じて、4つのPRBから32個のPRBの間にわたる隣接リソースブロックの数として規定される。
【0009】
UEからCSIフィードバックを与えられると、gNBは、プリコーディング行列と、送信ランクと、変調符号化方式(MCS)とを含む、gNBがUEにデータを送信するために使用することを望む送信パラメータを決定する。これらの送信パラメータは、UEが行う推奨とは異なり得る。送信ランク、したがって、空間的に多重化されたレイヤの数が、プリコーダ行列Wの列の数において反映される。効率的な性能のために、チャネル性質にマッチする送信ランクが選択されることが重要である。
【0010】
2. 2Dアンテナアレイ
【0011】
2次元アンテナアレイは、水平次元に対応するアンテナ列の数Nと、垂直次元に対応するアンテナ行の数Nと、異なる偏波に対応する次元の数Nとによって(部分的に)表され得る。したがって、アンテナの総数はN=N×N×Nである。アンテナの概念は、その概念が物理アンテナエレメントの任意の仮想化(たとえば、線形マッピング)を指すことができるという意味で、非限定的であるということが指摘されるべきである。たとえば、物理サブエレメントのペアが、同じ信号をフィードされ、したがって、同じ仮想化されたアンテナポートを共有することがある。二重偏波アンテナエレメントをもつ4×4アレイの一例が図1Bに示されている。
【0012】
信号をプリコーディングすることは、送信より前に、各アンテナについて、異なるプリコーディング(別名、「ビームフォーミング」)重みを信号に乗算することとして解釈され得る。一般的な手法は、アンテナフォームファクタに合わせてプリコーダ行列を調整することであり、すなわち、プリコーダ行列コードブックを設計するときにN、N、およびNを考慮に入れることである。
【0013】
コードブックは、特定のアンテナ番号付けを念頭に置いて設計された(または、むしろポート番号付け方式、ここで、物理アンテナへのアンテナポートのマッピングは各展開次第である)。所与のP個のアンテナポートについて、プリコーディングコードブックは、P/2個の第1のアンテナポートが共同偏波アンテナのセットにマッピングするべきであり、P/2個の最後のアンテナポートが、第1のセットに対する直交偏波をもつ、共同偏波アンテナの別のセットにマッピングされるように設計される。したがって、これは、二重偏波アンテナアレイをターゲットにしている。図1Cは、8つのアンテナポートをもつ一例を示す。
【0014】
3. チャネル状態情報参照信号(CSI-RS)
【0015】
NRでは、CSI-RSは、チャネル状態情報を推定するという意図のために導入された参照シンボルシーケンスであるCSI-RSに関して測定することによって、UEは、無線伝搬チャネルおよびアンテナ利得を含めて、CSI-RSが横断している有効チャネルを推定することができる。より数学的に厳密には、これは、既知のCSI-RS信号xが送信された場合、UEが、送信信号と受信信号との間の結合(すなわち、有効チャネル)を推定することができることを暗示する。したがって、送信において仮想化が実施されない場合、受信信号yは、y=Hx+eとして表され得、UEは、有効チャネルHを推定することができる。最高32個のCSI-RSポートが、NR UEのために設定され得る。すなわち、UEは、最高32個の送信アンテナポートからチャネルを推定することができる。
【0016】
アンテナポートは、UEがチャネルを測定するために使用するものとする参照信号リソースと等価である。したがって、2つのアンテナをもつgNBは、2つのCSI-RSポートを規定することができ、ここで、各ポートは、サブフレームまたはスロット内の時間周波数グリッドにおけるリソースエレメントのセットである。基地局は、UEが、2つの無線チャネルを測定し、これらの測定に基づいて基地局にチャネル状態情報を報告することができるように、2つアンテナの各々から、これらの2つの参照信号の各々を送信する。NRでは、1、2、4、8、12、16、24および32個のポートをもつCSI-RSリソースが、サポートされる。
【0017】
CSI-RSのために使用されるシーケンスは、r(m)であり、
によって規定され、ここで、擬似ランダムシーケンスc(i)は、3GPP TS38.211の節5.2.1において規定されている。擬似ランダムシーケンス生成器は、各OFDMシンボルの開始時に、
で初期化されるものとし、ここで、
無線フレーム内のスロット番号であり、lは、スロット内のOFDMシンボル番号であり、nIDは、上位レイヤパラメータscramblingIDまたはsequenceGenerationConfigに等しい。
【0018】
3.1 CSI-RSポートマッピング
【0019】
NRにおける18個の異なるCSI-RSリソース設定があり、ここで、各々は特定の数のポートXを有する。3GPP技術仕様(TS)38.211からとられた以下の表1を参照されたい。CDMが適用されるとき、インデックスkは、CSI-RSシーケンスをリソースエレメントにマッピングするために使用される、PRB中の第1のサブキャリアを示し、ここで、第2のサブキャリアは、k+1である。2つのサブキャリアのこのセット(ki,+1)は、CDMグループjに関連し、ここで、CDMグループは、1つ、2つまたは4つのOFDMシンボルをカバーする。インデックスli’またはli’+1は、CDMグループに関連するスロット内の第1のOFDMシンボルを示す。パラメータkおよびli’は、CSI-RSリソースを設定するとき、RRCシグナリングによってgNBからUEにシグナリングされる。
【0020】
CDMが適用されるとき、CDMグループのサイズ(L)は、2、4または8のいずれかであり、CDMグループの総数は、設定によって与えられる(k,li’)、(k,li’+1)ペアの数によって与えられる。したがって、CDMグループは、2つ、4つまたは8つのアンテナポートのセットを指すことができ、ここで、2つのアンテナポートのセットは、2つの隣接するサブキャリア上の周波数領域(FD)中のCDMのみが考慮されるとき、発生する(FD-CDM2)。
【0021】
TS38.211のセクション7.4.1.5.3によれば、CSI-RSポートは、最初にCDMグループ内で番号付けされ、次いでCDMグループにわたって番号付けされる。UEは、以下に従って番号付けされたアンテナポートpを使用して、CSI-RSが送信されると仮定するものとする。
p=3000+s+jL、
j=0、1、...、N/L-1、
s=0、1、,...、L-1、
ここで、sはシーケンスインデックスであり、L∈{1,2,4,8}はCDMグループサイズであり、NはCSI-RSポートの数である。38.211における表7.4.1.5.3-1中で与えられたCDMグループインデックスjは、表の所与の行についての時間/周波数ロケーション
に対応する。この表は、便宜のために表1中に複写される。たとえば、表1中の行4によって与えられたCSI-RSリソース設定は、サイズL=2の2つのCDMグループ(j=0、1)を有し、ここで、ポート3000および3001は、kによって示されたCDMグループにマッピングし、ポート3002および3003は、k+2によって示されたCDMグループにマッピングする。
【0022】
4. NRにおけるCSIフレームワーク
【0023】
NRでは、UEに、複数のCSI報告セッティングおよび複数のCSI-RSリソースセッティングが設定され得る。各リソースセッティングは、複数のリソースセットを含んでいることがあり、各リソースセットは、最高8つのCSI-RSリソースを含んでいることがある。各CSI報告セッティングについて、UEは、CSI報告をフィードバックする。各CSI報告セッティングは、少なくとも以下の情報、すなわち、チャネル測定のためのCSI-RSリソースセットと、干渉測定のためのIMRリソースセットと、干渉測定のためのCSI-RSリソースセットと、時間領域挙動、すなわち周期的、半永続、または非周期的報告と、周波数グラニュラリティ、すなわち広帯域またはサブバンドと、リソースセット中の複数のCSI-RSリソースの場合の、RI、PMI、CQI、およびCSI-RSリソースインジケータ(CRI)など、報告されるべきCSIパラメータと、コードブックタイプ、すなわちタイプIまたはタイプII、およびコードブックサブセット制限と、測定制限と、サブバンドサイズ(2つの可能なサブバンドサイズの中から1つが示され、値範囲は、BWPの帯域幅に依存し、(サブバンド報告のために設定された場合)1つのCQI/PMIがサブバンドごとにフィードバックされる)とを含んでいることがある。
【0024】
CSI報告セッティングにおけるCSI-RSリソースセットが複数のCSI-RSリソースを含んでいるとき、CSI-RSリソースのうちの1つがUEによって選択され、また、選択されたCSI-RSリソースに関連するRI、PMI、およびCQIとともに、リソースセットにおける選択されたCSI-RSリソースに関してgNBに示すために、UEによってCSI-RSリソースインジケータ(CRI)が報告される。
【0025】
NRにおける非周期的CSI報告では、各々が、チャネル測定のための異なるCSI-RSリソースセットおよび/または干渉測定のための異なるリソースセットをもつ、2つ以上のCSI報告セッティングが、同時に設定され、トリガされ得る。この場合、複数のCSI報告がアグリゲートされ、単一の物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)送信においてUEからgNBに送られる。
【0026】
5. NRリリース16(Rel-16)拡張タイプIIポート選択コードブック
【0027】
拡張タイプII(eType II)ポート選択(PS)コードブックが、Rel-16において導入され、これは、ビームフォーミングされたCSI-RSのために使用されることが意図され、ここで、各CSI-RSポートは、(ビームフォーミングされていないCSI-RSと比較して)高利得を用いてセルカバレッジエリアの小さい部分をカバーする。gNB実装形態次第であるが、通常、各CSI-RSポートが、方位角指向角度(pointing angle)および仰角指向角度をもつメインローブを有する2D空間ビームにおいて送信されると仮定される。CSI-RSのために使用される実際のプリコーダ行列は、UEに対して透過的である。測定に基づいて、UEは、最良のCSI-RSポートを選択し、DL送信のために使用するためにgNBに推奨する。eType II PSコードブックは、選択されたCSI-RSポートとそれらを組み合わせるための方法とをフィードバックするために、UEによって使用され得る。
【0028】
5.1 eType II PSコードブックの構造、設定および報告
【0029】
所与の送信レイヤlについて、l∈{1,...,v}であり、vが、ランクインジケータ(RI)であり、すべてのFD-ユニットについてのプリコーダ行列は、サイズPCSI-RS×N行列Wによって与えられ、ここで、P_CSI-RSは、CSI-RSポートの数であり、N_3=N_SB×Rは、PMIサブバンドの数であり、ここで、値R={1,2}(PMIサブバンドサイズインジケータ)は、RRC設定され、N_SBは、CQIバンドの数であり、これもRRC設定され、RI値vは、設定された上位レイヤパラメータtypeII-RI-Restriction-r16に従ってセットされる。UEは、v>4を報告しないものとする。
【0030】
プリコーダ行列Wは、
として因数分解され得、Wは、
、l=1,...,vであるように正規化される。Wは、次のように書かれ得る、サイズPCSI-RS×2Lのポート選択行列である。
ここで、
PSは、0および1からなる、サイズ
ポート選択行列である。選択されたポートは、両方の偏波について共通である1によって示される。
Lは、偏波ごとの選択されたCSI-RSポートの数である。サポートされるL値が、表2において見つけられ得る。
は、すべてのレイヤについて共通である。
【0031】
f,lは、レイヤlについてのサイズN×M周波数領域(FD)圧縮行列であり、ここで、
は、選択されたFDプリコーディングベクトルの数であり、これは、ランクインジケータvと、RRC設定済みパラメータpとに依存し(pのサポートされる値が表1において見つけられ得る)、
であり、ここで、
は、サイズN×1をもつ、N個の直交DFT基底ベクトル
から選択される、MサイズN×1FDプリコーディングベクトルであり、Wf,lはレイヤ固有である。
【0032】
は、選択された2L個のCSI-RSポートについての選択されたM個のFDプリコーディングベクトルを線形結合するための2LM個の係数を含んでいる、サイズ2L×M線形結合係数行列である。レイヤlについて、
個の係数のサブセットのみが、非0であり、報告される。残りの
個の報告されない係数は、0と見なされる。
における係数の振幅および位相は、報告のために量子化されるものとする。
はレイヤ固有である。
【発明の概要】
【0033】
現在、いくつかの課題が存在する。たとえば、gNBが、同じ時間において、たとえば同じOFDMシンボル中で、多くの異なるビームフォーマ(たとえば異なるリソースブロック中の異なるW)で送信するときに、gNBにおける実装複雑さ問題がある。複雑さ観点から、広帯域様式で送信される、1つのまたは多くとも2つ、偏波ごとに1つ、のポートで単一のビーム(単一のW)を送信することが、理想的である。すなわち、1つのOFDMシンボル中で、全送信帯域幅にわたっておよび両方の偏波について、同じプリコーダ行列W(別名、「ビームフォーマ」)が使用される。NRにおけるCSI-RSポートとリソースエレメントおよびOFDMシンボルとのマッピングの現在の構造が、高い実装複雑さを引き起こすことが問題である。
【0034】
本開示は、実装複雑さを低減するための手段を提供する。一態様では、信号(たとえば、CSI-RS、PDSCH信号など)をプリコーディングするための方法が提供される。本方法は、基地局(gNB)によって実施される。本方法は、アップリンク測定に基づいて、信号のダウンリンク(DL)送信のための空間領域(SD)プリコーディングベクトルおよび周波数領域(FD)プリコーディングベクトルを決定することを含む。本方法は、信号を搬送するためのサブキャリア上で信号にFDプリコーディングベクトルを適用し、したがって修正された信号を作り出すことをも含む。本方法は、プリコーディングされた信号(Y)を作り出すために、修正された信号にSDプリコーディングベクトルを適用することであって、SDプリコーディングベクトルが1つのシンボル(たとえば、OFDMシンボル)中ですべての前記サブキャリアについて共通である、SDプリコーディングベクトルを適用することをさらに含む。
【0035】
別の態様では、基地局によって実施される別の方法が提供される。本方法は、共通のビームに属するが、異なる遅延事前補償を有するポートをグループ化することを含む。本方法は、グループ化されたポートを1つのOFDMシンボル中で送信することをさらに含む。
【0036】
別の態様では、基地局によって実施されるさらなる方法が提供される。本方法は、CSI-RSリソースにUEのためのN個のアンテナポートを設定することであって、CSI-RSリソースが、L個のOFDMシンボルにわたって分散され、各OFDMシンボルが、P個のCSI-RSポート、P<N、を送信する、UEのためのN個のアンテナポートを設定することを含む。本方法は、L個のOFDMシンボルの各々について、すべてのP個のCSI-RSポートのために単一の広帯域プリコーディングベクトルを使用することであって、P個のCSI-RSポートの各々が、CSI-RSシーケンスを修正することによってもたらされた遅延に関連する、単一の広帯域プリコーディングベクトルを使用することをさらに含む。
【0037】
別の態様では、基地局の処理回路によって実行されたとき、基地局に、本明細書で開示される方法を実施させる命令を含むコンピュータプログラムが提供される。別の態様では、コンピュータプログラムを含んでいるキャリアが提供され、キャリアは、電子信号、光信号、無線信号、およびコンピュータ可読記憶媒体のうちの1つである。
【0038】
別の態様では、基地局が提供され、基地局は、本明細書で開示される任意の実施形態の方法を実施するように適応される。いくつかの実施形態では、基地局は、処理回路とメモリとを含み、メモリは、処理回路によって実行可能な命令を含んでおり、それにより、基地局は、本明細書で開示される方法を実施するように動作可能である。
【0039】
実施形態の利点は、実施形態が遅延補償を生成するためにプリコーダ行列(すなわち、2次元行列)を使用しないので、実装複雑さが著しく低減されることである。代わりに、共通のビームフォーミング重みベクトル(別名、空間領域(SD)プリコーディングベクトル)が、OFDMシンボル内の帯域幅全体上で適用され得、これが、ビームフォーミングされた信号の実装の複雑さを低減するものである。解放された処理リソースは、たとえば、性能を増加させるために、PDDCHおよび/またはPDSCHのプリコーディングのために使用され得る。
【0040】
本明細書に組み込まれ、明細書の一部をなす添付の図面は、様々な実施形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1A】空間多重化を示す図である。
図1B】二重偏波アンテナエレメントをもつアンテナアレイを示す図である。
図1C】8つのアンテナポートのポート番号付けの一例を示す図である。
図2】ULチャネルと対応するDLチャネルとの角度/遅延電力スペクトルを比較する図である。
図3】2つのCSI-RSポートがプリコーディングされる一例を示す図である。
図4】相反性(reciprocity)ベースFDD送信のための例示的なプロシージャを示す図である。
図5】8つのCSI-RSポートが同じシンボルにマッピングされた場合について、遅延事前補償が実施されるとき、遅延事前補償の位相がサブキャリア上でどのように変動することがあるかの一例を示す図である。
図6】一実施形態による、プリコーディングプロセスを示す図である。
図7A】一実施形態による、プロセスを示すフローチャートである。
図7B】一実施形態による、プロセスを示すフローチャートである。
図7C】一実施形態による、プロセスを示すフローチャートである。
図8】一実施形態による、基地局のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
周波数分割複信(FDD)では、小規模フェージング(small-scale fading)が2つの異なる周波数において異なるので、ULチャネルとDLチャネルとの間で完全な相反性は成り立たない。しかしながら、クラスタに対する角度および遅延など、いくつかの大規模チャネルパラメータは、物理伝搬環境が両方の周波数において同じであるので、依然として相反であり得る。図2は、ULチャネルと対応するDLチャネルとの角度/遅延電力スペクトルを比較しており、これらは、200MHzデュプレックス距離をもつ2GHzにおける3GPP38.901チャネルモデルに従って描かれている。ULにおける電力スペクトルとDLにおける電力スペクトルとが極めて同様であることが観測される。また、ULにおいて見られる優勢クラスタが、DLにおいて同様の角度および遅延において現れる。しかしながら、依然として、独立した小規模フェージング実現形態によって生じる、いくつかの差異がある。
【0043】
上記のことに照らして、UE側において見られるプリコーディングされたチャネルの周波数選択性を低減するために、CSI-RSプリコーディングにおいて、角度相反性に加えて、遅延相反性が利用され得る。より具体的に言えば、各CSI-RSポートは、空間領域(SD)プリコーディングベクトルと周波数領域(FD)プリコーディングベクトルとからなるベクトルのペアを使用して、プリコーディングされ得、ここで、SDプリコーディングベクトルは、選択されたクラスタに向かってビームフォームするために使用され、FDプリコーディングベクトルは、そのクラスタに対する遅延を事前補償する。図3は、2つのCSI-RSポートがプリコーディングされる一例を示す。遅延事前補償の後に、2つのクラスタにおける優勢タップが、第1のタップに整合される。次いで、UEは、より少数のFDプリコーディングベクトルでFDチャネルを圧縮することができる。また、同じ角度における複数の遅延が、遅延ごとに1つのCSI-RSポートをプリコーディングすることによって事前補償され得る。UEは、次いで、各遅延についての振幅および位相を取得するために、各ポートについて0番目の遅延成分をフィルタで除去することができる。
【0044】
FDDについての角度/遅延相反性は、現在、タイプIIポート選択コードブックを拡張するための3GPP Rel-17において研究されている。相反性ベースFDD送信方式についての1つの例示的なプロシージャが、図4に示されている。
【0045】
ステップ1において、ユーザ機器(UE)402は、gNB404によって、gNBが、異なる伝搬経路に関連する異なるクラスタの角度および遅延を推定することを可能にするために、サウンディング参照信号(SRS)を送信するように設定される。本明細書で使用されるUEは、基地局(たとえば、gNB)と無線で通信することが可能なデバイスである。
【0046】
ステップ2において、gNBは、推定された角度-遅延電力スペクトルプロファイルに従って優勢クラスタを選択し、推定された角度-遅延電力スペクトルプロファイルに基づいて、空間領域および周波数領域(SD-FD)プリコーディングベクトルペアのセットが、CSI-RSビームフォーミングのためにgNBによって算出される。各CSI-RSポートは、1つまたは複数のSD-FDプリコーディングベクトルペアを含んでいることがある。gNBは、UEへの設定されたCSI-RSリソース中のすべてのCSI-RSポートをプリコーディングする。
【0047】
ステップ3において、gNBは、CSI-RSを測定するようにUEを設定し、UEは、受信されたCSI-RSポートを測定し、次いで、RIと、各レイヤについてのPMIと、CQIとを含むタイプII CSIを決定する。PMIによって示されたプリコーディング行列は、選択されたSD-FDプリコーディングベクトルペア/プリコーディングされたCSI-RSポートと、選択されたペア/ポートをコフェージングするための対応する最良の位相および振幅とを含む。各ペア/ポートについての位相および振幅は、量子化され、gNBにフィードバックされる。
【0048】
ステップ4において、gNB実装アルゴリズムは、選択されたビームと、対応する振幅および位相フィードバックとに基づいて、レイヤごとのDLプリコーディング行列を算出し、PDSCH送信を実施する。
【0049】
そのような相反性ベース送信は、たとえば、NRタイプIIポート選択コードブックが使用されるとき、ULにおけるフィードバックオーバーヘッドを低減するために、FDDのためのコードブックベースDL送信において潜在的に利用され得る。別の潜在的利益は、UEにおけるCSI計算の低減された複雑さである。
【0050】
無線伝搬環境では、同様の方向だが異なる遅延における、複数のチャネルクラスタが存在し得る。したがって、Rel.17について考慮されている拡張タイプIIポート選択コードブックにおいて、gNBは、同じビーム中の複数のチャネルタップについて遅延事前補償を適用し得る。これを達成するための1つのやり方は、チャネルタップごとに(および、偏波ごとに)1つのCSI-RSポートを割り振り、各そのようなポートについて遅延事前補償を適用することである。したがって、同じビームだが異なるタップに対応する複数のCSI-RSポートがあり得る。
【0051】
周波数領域における動作によって遅延事前補償を実施することは、ビームフォーミングベクトルに関する周波数上に線形位相傾斜を適用することに相当し、ここで、傾斜は遅延に比例する。これは、
として表され得、ここで、
は、遅延事前補償されたビームフォーミングベクトルであり、fは周波数であり、τは補償されるべき遅延であり、b(Φ)は、方向Φにおける周波数非依存(すなわち広帯域)ビームフォーマである。ビームごとにP個のタップがある場合、ポートは、タップpが、ビームフォーミングベクトル
、p=1、...、Pに関連するように、各タップについて割り振られ得、ここで、τおよびΦは、p番目のタップに対する、それぞれ、遅延および角度である。
【0052】
図5は、8つのCSI-RSポートが同じシンボルにマッピングされた場合について、遅延事前補償が実施されるとき、遅延事前補償の位相2πfτがサブキャリア上でどのように変動することがあるかの一例を示す。ここでは、1つのペア内のポートが、同じタップだが異なる偏波に対応する、ポートの4つのペアがあり、異なるペアが、異なる遅延をもつタップに対応すると仮定される。このCSI-RS設定は、表1中の行6の修正されたバージョンに対応し、修正は、同じビームおよび異なる偏波に対応するポートを、同じCDMグループに属させるために行われる。
【0053】
シンボル中のすべてのポートが同じビームに対応する場合でも、複数の異なる位相傾斜が各リソースブロック中に存在することが図に見られ得る。これは、すべてのポートが同じ方向におけるビームに対応するにもかかわらず、同じビームフォーミングベクトルが帯域幅上で使用され得ないことを意味する。したがって、1つのシンボル中に複数の遅延事前補償されたCSI-RSポートがあるとき、高い実装複雑さがある。
【0054】
より一般論として、N個のアンテナおよびM個のサブキャリア上のSDおよびFDにおいてプリコーディングされたCSI-RSシーケンスr(m)は、
Y=WR (1)
のように書かれ得、ここで、Yは、すべてのアンテナおよびサブキャリア上のプリコーディングされたCSI-RS信号サンプルを含んでいる、N×M行列であり、
W=bf (2)
は、N×M SD/FDプリコーディング行列であり、ここで、bはN×1 SDプリコーディングベクトルであり、fはM×1FDプリコーディングベクトルである。たとえば、SDおよびFDプリコーディングベクトルは、DFTベクトルであり得る。物理的に、これは、チャネル遅延を事前補償するために、CSI-RSポートが特定の方向においてビームフォーミングされ、遅延においてシフトされることを意味する。方向および遅延は、ULにおいて送信されたSRSまたはDMRSに関する測定から決定される。
【0055】
SDおよびFDプリコーディングベクトルはまた、たとえば、ULチャネル行列に関する測定のSVDに基づく、DFT構造を有するよりも一般的であり得る。さらに、
R=diag(r), r=[r(1)...r(M)]
は、たとえば、対角線に沿ったCSI-RSシーケンスr(m)(m=1~M)を含んでいる、M×M対角行列である。別の例として、Rは、サブキャリアごとにPDSCHサンプルを含んでいる、M×M対角行列である。
【0056】
式(1)は、
のように書き直され得、ここで、
は、エレメントごとの乗算を示し、
は、f(FDプリコーディングベクトル)の共役を乗算される信号r(たとえば、CSI-RSシーケンス)である。式(3)から、式(2)中の周波数依存プリコーダ行列Wは、FDプリコーディングベクトルfが、プリコーディング行列W中に含まれる代わりに、信号rに対して適用される場合、広帯域SDプリコーディングベクトルbによって置き換えられ得ることが結論付けられ得る。これは、修正された信号を生成するために信号rに対してfを適用し、次いで、Y、プリコーディングされた信号を作り出すために、修正された信号にSDプリコーディングベクトル(b)を適用することを示す、図6に示されている。
【0057】
上式は、所与のCSI-RSポートについて、CSI-RSプリコーダ行列(別名、ビームフォーマ)が、遅延事前補償(または、より一般的には、FDプリコーディング)機能をビームフォーマからCSI-RSシーケンス生成に移すことによって、広帯域にされ得ることを示す。したがって、広帯域ビームフォーミングベクトル(非周波数依存)bが、帯域幅全体上で使用され得る。
【0058】
周波数選択性プリコーダ行列の代わりに、広帯域ビームフォーミングベクトルを使用することは、複雑さのかなりの低減を伴う送信機実装形態を可能にする。また、計算は、任意のFDプリコーディングベクトル、たとえばSVDプリコーディングベクトルが、SDプリコーディングベクトルとFDプリコーディングベクトルとが(2)に従って分離可能である限り、プリコーダ行列からCSI-RSシーケンス生成に移され得ること、すなわち、同じFDプリコーディングベクトルがすべてのアンテナに対して適用されることを示す。
【0059】
(4)に従うCSI-RSシーケンスの修正は、UEに対して透過的であり、遅延事前補償の目的は、UEが、遅延が削除された有効チャネルを経験するものとすることであるので、UEは、依然として、UEのチャネル推定を元のシーケンスr(m)に基づかせるものとすることに留意されたい。したがって、これは、gNB実装形態の特許である。
【0060】
一実施形態では、N個のポートをもつCSI-RSリソースが、ネットワークからUEに設定される。CSI-RSリソースは、L個のOFDMシンボルにわたって分散され、各OFDMシンボルは、P個のCSI-RSポート、P<N、を送信する。UEはまた、タイプIIポート選択コードブックを使用して、CSIを報告するように設定される。gNB実装形態は、各シンボルが、すべてのP個のCSI-RSポートのために単一の広帯域プリコーディングベクトルを使用することを保証し、ただし、場合によっては、そのシンボル中のP個のポートについて異なる遅延を伴う。これらのP個のポートについての遅延は、本発明で説明されるようにCSI-RSシーケンス修正設計によってもたらされる。したがって、gNBポートスケジューラは、同じビームに属するが、異なる遅延事前補償をもつポートをグループ化し、そのようなグループを1つのOFDMシンボル中で送信する。上記の技法は、他のダウンリンク信号、たとえば、物理ダウンリンク共有チャネル(PDSCH)上の送信、復調用参照信号(DM-RS)に対して適用され得る。
【0061】
図7Aは、信号をプリコーディングするためのプロセス700を示すフローチャートである。プロセス700は、gNB404によって実施され得、ステップs702において始まり得る。ステップs702は、アップリンク測定に基づいて(たとえば、UEによって送信されたSRSの測定に基づいて)、信号のダウンリンク(DL)送信のための空間領域(SD)プリコーディングベクトルおよび周波数領域(FD)プリコーディングベクトルを決定することを含む。ステップs704は、信号を搬送するためのサブキャリア上で信号にFDプリコーディングベクトルを適用し、したがって修正された信号を作り出すことを含む。ステップs706は、プリコーディングされた信号を作り出すために、修正された信号にSDプリコーディングベクトルを適用することであって、SDプリコーディングベクトルが1つのシンボル(たとえば、OFDMシンボル)中ですべての前記サブキャリアについて共通である、SDプリコーディングベクトルを適用することを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、信号はCSI-RSである、信号はDM-RSである、または信号はPDSCH信号(すなわち、PDSCH上の送信)である。
【0063】
いくつかの実施形態では、UL測定は、UEによって送信された参照信号(RS)に基づく。いくつかの実施形態では、RSはサウンディング参照信号(SRS)である、またはRSは復調用参照信号(DMRS)である。
【0064】
いくつかの実施形態では、FDプリコーディングベクトルはDFTベクトルであり、それにより、CSI-RSシーケンスに関する周波数上に位相傾斜を適用することによって遅延事前補償を達成する。
【0065】
いくつかの実施形態では、信号にFDプリコーディングベクトルを適用することは、FDプリコーディングベクトルの共役を生成することと、
を計算することとを含み、ここで、fがFDプリコーディングベクトルの共役であり、
がエレメントごとの乗算を示し、rが信号であり、
が修正された信号である。
【0066】
いくつかの実施形態では、修正された信号にSDプリコーディングベクトルを適用することは、
を計算することを含み、ここで、
が修正された信号の転置であり、bがSDプリコーディングベクトルである。
【0067】
図7Bは、信号をプリコーディングするためのプロセス710を示すフローチャートである。プロセス710は、gNB404によって実施され得、ステップs712において始まり得る。ステップs712は、共通のビームに属するが、異なる遅延事前補償を有するポートをグループ化することを含む。ステップs714は、グループ化されたポートを1つのOFDMシンボル中で送信することを含む。
【0068】
図7Cは、信号をプリコーディングするためのプロセス720を示すフローチャートである。プロセス720は、gNB404によって実施され得、ステップs722において始まり得る。ステップs722は、CSI-RSリソースにUEのためのN個のアンテナポートを設定することであって、CSI-RSリソースが、L個のOFDMシンボルにわたって分散され、各OFDMシンボルが、P個のCSI-RSポート、P<N、を送信する、UEのためのN個のアンテナポートを設定することを含む。ステップs724は、L個のOFDMシンボルの各々について、すべてのP個のCSI-RSポートのために単一の広帯域プリコーディングベクトルを使用することであって、P個のCSI-RSポートの各々が、CSI-RSシーケンスを修正することによってもたらされた遅延に関連する、単一の広帯域プリコーディングベクトルを使用することを含む。
【0069】
図8は、いくつかの実施形態による、基地局404のブロック図である。図8に示されているように、基地局404は、1つまたは複数のプロセッサ(P)855(たとえば、1つまたは複数の汎用マイクロプロセッサ、および/または、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)など、1つまたは複数の他のプロセッサ)を含み得る処理回路(PC)802であって、そのプロセッサが、単一のハウジングにおいてまたは単一のデータセンタにおいて共同サイト式であり得るかあるいは地理的に分散され得る(すなわち、基地局404が分散コンピューティング装置であり得る)、処理回路(PC)802と、ネットワークインターフェース868であって、基地局404が、ネットワークインターフェース868が接続されるネットワーク110(たとえば、インターネットプロトコル(IP)ネットワーク)に接続された他のノードにデータを送信し、他のノードからデータを受信することを可能にするための送信機(Tx)865および受信機(Rx)867を備える、ネットワークインターフェース868と、1つまたは複数のアンテナを備えるアンテナ構成849に結合され、基地局404がデータを送信し、データを受信する(たとえば、無線でデータを送信/受信する)ことを可能にするための送信機(Tx)845および受信機(Rx)847を備える、通信回路848と、1つまたは複数の不揮発性記憶デバイスおよび/または1つまたは複数の揮発性記憶デバイスを含み得るローカル記憶ユニット(別名「データ記憶システム」)808とを備え得る。PC802がプログラマブルプロセッサを含む実施形態では、コンピュータプログラム製品(CPP)841が提供され得る。CPP841はコンピュータ可読媒体(CRM)842を含み、CRM842は、コンピュータ可読命令(CRI)844を備えるコンピュータプログラム(CP)843を記憶する。CRM842は、磁気媒体(たとえば、ハードディスク)、光媒体、メモリデバイス(たとえば、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)など、非一時的コンピュータ可読媒体であり得る。いくつかの実施形態では、コンピュータプログラム843のCRI844は、PC802によって実行されたとき、CRIが、基地局404に、本明細書で説明されるステップ(たとえば、フローチャートを参照しながら本明細書で説明されるステップ)を実施させるように設定される。他の実施形態では、基地局404は、コードの必要なしに本明細書で説明されるステップを実施するように設定され得る。すなわち、たとえば、PC802は、単に1つまたは複数のASICからなり得る。したがって、本明細書で説明される実施形態の特徴は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで実装され得る。
【0070】
様々な実施形態の概要
【0071】
A1.信号(たとえば、CSI-RS、PDSCH信号など)をプリコーディングするための方法であって、方法は、アップリンク測定に基づいて(たとえば、UEによって送信されたSRSの測定に基づいて)、信号のダウンリンク(DL)送信のための空間領域(SD)プリコーディングベクトルおよび周波数領域(FD)プリコーディングベクトルを決定することと、信号を搬送するためのサブキャリア上で信号にFDプリコーディングベクトルを適用し、したがって修正された信号を作り出すことと、プリコーディングされた信号を作り出すために、修正された信号にSDプリコーディングベクトルを適用することであって、SDプリコーディングベクトルが1つのシンボル(たとえば、OFDMシンボル)中ですべての前記サブキャリアについて共通である、SDプリコーディングベクトルを適用することとを含む、方法。
【0072】
A2.信号がCSI-RSである、信号がDM-RSである、または信号がPDSCH信号である、実施形態A1に記載の方法。
【0073】
A3.UL測定が、UEによって送信された参照信号(RS)に基づく、実施形態A1またはA2に記載の方法。
【0074】
A4.RSがサウンディング参照信号(SRS)である、またはRSが復調用参照信号(DMRS)である、実施形態A3に記載の方法。
【0075】
A5.FDプリコーディングベクトルがDFTベクトルであり、それにより、CSI-RSシーケンスに関する周波数上に位相傾斜を適用することによって遅延事前補償を達成する、実施形態A1からA4のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
A6.信号にFDプリコーディングベクトルを適用することは、FDプリコーディングベクトルの共役を生成することと、
を計算することとを含み、ここで、fがFDプリコーディングベクトルの共役であり、
がエレメントごとの乗算を示し、rが信号であり、
が修正された信号である、
実施形態A1からA5のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
A7.修正された信号にSDプリコーディングベクトルを適用することは、
を計算することを含み、ここで、
が修正された信号の転置であり、bがSDプリコーディングベクトルである、実施形態A1からA6のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
A8.基地局によって実施される方法であって、方法は、共通のビームに属するが、異なる遅延事前補償を有するポートをグループ化することと、グループ化されたポートを1つのOFDMシンボル中で送信することとを含む、方法。
【0079】
A9.基地局によって実施される方法であって、方法は、CSI-RSリソースにユーザ機器(UE)(402)のためのN個のアンテナポートを設定することであって、CSI-RSリソースが、L個のOFDMシンボルにわたって分散され、各OFDMシンボルが、P個のCSI-RSポート、P<N、を送信する、ユーザ機器(UE)(402)のためのN個のアンテナポートを設定することと、L個のOFDMシンボルの各々について、すべてのP個のCSI-RSポートのために単一の広帯域プリコーディングベクトルを使用することであって、P個のCSI-RSポートの各々が、CSI-RSシーケンスを修正することによってもたらされた遅延に関連する、単一の広帯域プリコーディングベクトルを使用することとを含む、方法。
【0080】
B1.基地局(404)の処理回路(802)によって実行されたとき、基地局(404)に、上記の実施形態のいずれか1つに記載の方法を実施させる命令(844)を含む、コンピュータプログラム(843)。
【0081】
B2.実施形態B1に記載のコンピュータプログラムを含んでいるキャリアであって、キャリアが、電子信号、光信号、無線信号、およびコンピュータ可読記憶媒体(842)のうちの1つである、キャリア。
【0082】
C1.基地局(404)であって、基地局(404)が、実施形態A1からA9のいずれか1つに記載の方法を実施するように適応された、基地局(404)。
【0083】
D1.基地局(404)であって、基地局(404)が、処理回路(802)と、メモリ(842)とを備え、メモリが、処理回路によって実行可能な命令(844)を含んでおり、それにより、基地局(404)が、実施形態A1からA9のいずれか1つに記載の方法を実施するように動作可能である、基地局(404)。
【0084】
様々な実施形態が本明細書で説明されたが、それらの実施形態は、限定ではなく、例として提示されたにすぎないことを理解されたい。したがって、本開示の広さおよび範囲は、上記で説明された例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきでない。その上、本明細書で別段に示されていない限り、またはコンテキストによって明確に否定されていない限り、上記で説明されたエレメントのそれらのすべての考えられる変形形態における任意の組合せが、本開示によって包含される。
【0085】
さらに、上記で説明され、図面に示されたプロセスは、ステップのシーケンスとして示されたが、これは、説明のためにのみ行われた。したがって、いくつかのステップが追加され得、いくつかのステップが省略され得、ステップの順序が並べ替えられ得、いくつかのステップが並行して実施され得ることが企図される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8