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  • 特許-鞍乗型車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 19/38 20060101AFI20241211BHJP
   B62L 3/02 20060101ALI20241211BHJP
   B60T 11/04 20060101ALN20241211BHJP
【FI】
B62K19/38
B62L3/02 F
B60T11/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023550807
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2021035712
(87)【国際公開番号】W WO2023053224
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】鵜川 源也
(72)【発明者】
【氏名】内田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】石川 隼也
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】岸 裕司
(72)【発明者】
【氏名】堀内 哲
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-186954(JP,A)
【文献】特開2017-081221(JP,A)
【文献】特開2017-132357(JP,A)
【文献】中国実用新案第212354277(CN,U)
【文献】中国実用新案第205769931(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 19/38
B62L 3/02
B60T 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向ハンドル(21)に取り付けられると共に後輪ブレーキ(91)を作動させるブレーキケーブル(77)を有する鞍乗型車両(10)において、
前記ブレーキケーブル(77)が、車幅方向の中央より左右いずれか一方のみに配索され、
前記ブレーキケーブル(77)の中間部が、燃料タンク(29)に設けられた固定部(29a)に支持され、
前記ブレーキケーブル(77)は、車体フレーム(11)より下方で前記固定部(29a)に支持され、
前記燃料タンク(29)の下面に、前記車体フレーム(11)を跨ぐための凹部が形成され、
前記凹部の車幅方向右側の壁面に前記固定部(29a)が設けられていることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
前記ブレーキケーブル(77)の後端部が、ピリオンステップ(50)に支持されることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記ブレーキケーブル(77)が、前記燃料タンク(29)の内側と連続して、シート(17)の裏側を通り、前記後輪ブレーキ(91)を作動させるブレーキペダル(49)につながるように配索されることを特徴とする請求項1または2に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に係り、特に、運転者の操作力をブレーキ装置に伝達するためのブレーキケーブルを有する鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、運転者の操作力をブレーキ装置に伝達するためのブレーキケーブルを有する鞍乗型車両が知られている。
【0003】
特許文献1には、前後連動ブレーキを適用する鞍乗型車両において、車体の前部から後部にかけてブレーキケーブルを配索した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-32733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の鞍乗型車両では、ブレーキケーブルが左右の操向ハンドルを跨ぐように配索されているほか、エンジンの側方を通るように配索されており、工場での組立性や外観性の向上を図るためには依然として工夫の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、ブレーキケーブルの配索構造の工夫により組立性や外観性を向上できる鞍乗型車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、操向ハンドル(21)に取り付けられると共に後輪ブレーキ(91)を作動させるブレーキケーブル(77)を有する鞍乗型車両(10)において、前記ブレーキケーブル(77)が、車幅方向の中央より左右いずれか一方のみに配索される点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記ブレーキケーブル(77)の中間部が、燃料タンク(29)に設けられた固定部(29a)に支持される点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記ブレーキケーブル(77)の後端部が、ピリオンステップ(50)に支持される点に第3の特徴がある。
【0010】
第1の特徴によれば、操向ハンドル(21)に取り付けられると共に後輪ブレーキ(91)を作動させるブレーキケーブル(77)を有する鞍乗型車両(10)において、前記ブレーキケーブル(77)が、車幅方向の中央より左右いずれか一方のみに配索されるので、ブレーキケーブルの配索が容易になることで、工場での組み立て作業が容易になる。また、メンテナンス性を向上させることが可能となる。
【0011】
第2の特徴によれば、前記ブレーキケーブル(77)の中間部が、燃料タンク(29)に設けられた固定部(29a)に支持されるので、燃料タンク付近のデッドスペースを有効活用でき、レイアウトの自由度を向上させることができる。また、ブレーキケーブルを燃料タンクの内側に隠れるように配索することで、鞍乗型車両の外観性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
第1の特徴によれば、操向ハンドル(21)に取り付けられると共に後輪ブレーキ(91)を作動させるブレーキケーブル(77)を有する鞍乗型車両(10)において、前記ブレーキケーブル(77)が、車幅方向の中央より左右いずれか一方のみに配策されるので、ブレーキケーブルの配策が容易になることで、工場での組み立て作業が容易になる。また、メンテナンス性を向上させることが可能となる。
【0013】
第2の特徴によれば、前記ブレーキケーブル(77)の中間部が、燃料タンク(29)に設けられた固定部(29a)に支持されるので、燃料タンク付近のデッドスペースを有効活用でき、レイアウトの自由度を向上させることができる。また、ブレーキケーブルを燃料タンクの内側に隠れるように配策することで、鞍乗型車両の外観性を向上させることができる。
【0014】
第3の特徴によれば、前記ブレーキケーブル(77)の後端部が、ピリオンステップ(50)に支持されるので、ピリオンステップ下のスペースを有効活用することができる。また、ブレーキケーブルの後端部を、既存の部品を用いて適切な位置に支持することが可能となる。
【0015】
第4の特徴によれば、前記ブレーキケーブル(77)が、前記燃料タンク(29)の内側と連続して、シート(17)の裏側を通り、前記後輪ブレーキ(91)を作動させるブレーキペダル(49)につながるように配索されるので、ブレーキケーブルの露出を低減することができる。
【0016】
第5の特徴によれば、前記燃料タンク(29)は、車体フレーム(11)を跨ぐように配置され、前記ブレーキケーブル(77)は、前記車体フレーム(11)より下方で前記固定部(29a)に支持されるので、燃料タンクの容量に影響なく、車両片側にブレーキケーブルを配策できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
図2】自動二輪車を車幅方向右側上方から見た斜視図である。
図3図2の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動二輪車10の右側面図である。自動二輪車10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニットPと、前輪WFを操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪WRを支持するスイングアーム16と、前後に長尺なシート17とを備え、運転者および同乗者がシート17に跨って着座する鞍乗型車両である。車体フレーム11は、ヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18の後方に連結されるフロントフレーム19と、フロントフレーム19の後方に連結されるリヤフレーム20とを備える。シート17はリヤフレーム20に支持される。
【0019】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪WFは、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13に支持される。乗員が把持する操向ハンドル21は、フロントフォーク14を操舵可能に取り付けられる。スイングアーム16は、フロントフレーム19の後端下部に位置して車幅方向に延びるピボット軸22に支持される。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、リヤクッション36によってリヤフレーム20に吊り下げられて、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。後輪WRは、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15に支持される。
【0020】
内燃機関としてのパワーユニットPは、前輪WFと後輪WRとの間に位置し、車体フレーム11に支持されている。パワーユニットPは、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダ部24とを備える。シリンダ部24の排気ポートには、排気装置25が接続される。パワーユニットPの駆動力は、パワーユニットPと後輪WRとの間に架け渡されるドライブチェーン35によって後輪WRに伝達される。
【0021】
ブレーキレバー73には、作動液を圧送するマスタシリンダ74が接続される。マスタシリンダ74に固定される保持部材には、ブレーキケーブル77が接続される。ブレーキホース75およびブレーキケーブル77は、フロントカバー45の内側に配索された後、自動二輪車10の車幅方向右側にまとめられる。ブレーキホース75は、前輪ブレーキ50に接続される。ブレーキケーブル77は、後方に向かって配索されて、後輪ブレーキ91を作動させるブレーキペダル49に接続される。
【0022】
操舵系30は、ヘッドパイプ18に軸支されるステアリングシャフト(不図示)と、ステアリングシャフトの上端に固定されるトップブリッジ31と、ステアリングシャフトの下端に固定されるボトムブリッジ32と、トップブリッジ31およびボトムブリッジ32に支持される左右一対のフロントフォーク14と、トップブリッジ31に固定される操向ハンドル21とを備える。
【0023】
自動二輪車10は、ヘッドパイプ18の前方を覆うフロントカバー45と、車体フレーム11の前部を側方から覆うフロントサイドカバー46と 、燃料タンク29およびシート17の前部の下方を覆うサイドカバー47と、シート17の後部の下方を覆うリヤサイドカバー48とを備える。
【0024】
自動二輪車10は、前後連動ブレーキシステム(Combined Brake System:CBS)を採用している。このブレーキシステムは、車幅方向右側の操向ハンドル21に取り付けられるブレーキレバー73と、ブレーキレバー73に接続されて前輪ブレーキ50を作動させるブレーキホース75と、ブレーキレバー73に接続されて後輪ブレーキ91を作動させるブレーキケーブル77とを備える。
【0025】
ブレーキホース75およびブレーキケーブル77は、不図示の結束バンドで束ねられて、トップブリッジ31とフロントカバー45との隙間からフロントカバー45の内側に配索される。ブレーキホース75およびブレーキケーブル77は、フロントカバー45の内側に配索された後、自動二輪車1の車幅方向右側にまとめて配置される。
【0026】
図2は、自動二輪車1を車幅方向右側上方から見た斜視図である。また、図3図2の一部拡大図である。図2では、燃料タンク29を取り外した状態を示している。本実施形態では、ブレーキケーブル77が車幅方向の中央より右側のみ、換言すれば、車体の中心線より車幅方向右側のみに配索される点に特徴がある。
【0027】
ブレーキケーブル77は、トップブリッジ31とフロントカバー45との隙間からフロントカバー45の内側を通った後、燃料タンク29やシート17に隠された状態でフロントフレーム19の車幅方向右側を通って後方に伸び、サイドカバー47の後方で下方に湾曲してから、車幅方向右側のリヤブレーキペダル49に向かって伸びる。この構成において、ブレーキケーブル77は、常に車体の車幅方向右側にのみ存在する。これにより、ブレーキケーブル77の配索作業が容易になると共に、メンテナンス性が向上する。また、車体外方からブレーキケーブル77が視認される部分が少なく、自動二輪車10の外観性も向上する。
【0028】
後輪ブレーキ91は機械式のドラムブレーキである。後輪ブレーキ91は、ブレーキシューがドラムの内周面に押し付けられて生じる摩擦で後輪WRを制動する。本実施形態に係る前後連動ブレーキシステムは、ブレーキレバー73の操作に応じて前輪ブレーキ50および後輪ブレーキ91の両方が作動すると共に、ブレーキペダル49の操作に応じて後輪ブレーキ91が作動するように構成されている。
【0029】
ブレーキホース75およびブレーキケーブル77は、不図示の結束バンドで束ねられて、トップブリッジ31とフロントカバー45との隙間からフロントカバー45の内側に配策される。ブレーキホース75およびブレーキケーブル77は、フロントカバー45の内側に配策された後、自動二輪車1の車幅方向右側にまとめて配置される。
【0030】
図2は、自動二輪車1を車幅方向右側上方から見た斜視図である。また、図3図2の一部拡大図である。図2では、燃料タンク29を取り外した状態を示している。本実施形態では、ブレーキケーブル77が車幅方向の中央より右側のみ、換言すれば、車体の中心線より車幅方向右側のみに配策される点に特徴がある。
【0031】
なお、自動二輪車の形態、前後連動ブレーキの構成、ピリオンステップの形状や構造、ブレーキケーブルの長さや取り回し経路等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、ブレーキケーブルは、車体の中心に対して車幅方向左側にのみ配索してもよい。本発明に係るブレーキケーブルの配索方法は、自動二輪車に限られず、鞍乗型の三輪車や四輪車等に適用することが可能である。
【0032】
左右一対のリヤフレーム20には、同乗者が足を載せるピリオンステップ50が取り付けられている。ピリオンステップ50は、リヤフレーム20に固定されるステー51と、ステー51の下端部に揺動可能に軸支される足載せ部52とを有する。車幅方向右側のピリオンステップ50のステー51には、ブレーキケーブル77の後端部を支持するための支持板53が固定されている。支持板53に固定されるブレーキケーブル77の端部からは、ワイヤ77aが前方に伸びている。
【0033】
ブレーキペダル49の後部には、後方延出部49aが設けられており、後方延出部49の上端部は、揺動自在のイコライザ49bを介してワイヤ77aに連結されている。支持板53とイコライザ49bとの間には、リターンスプリング54が係合されている。
【0034】
この構成により、ブレーキレバー73の操作に伴ってブレーキケーブル77のワイヤ77aが牽引されると、ブレーキペダル49が時計方向に揺動して後輪ブレーキ91が作動する。本実施形態では、ブレーキワイヤ77の後端部がピリオンステップ50に支持されることで、ピリオンステップ下のスペースを有効活用することを可能としている。また、ブレーキケーブル77の後端部を、既存の部品を用いて適切な位置に支持することが可能となる。
【0035】
なお、自動二輪車の形態、前後連動ブレーキの構成、ピリオンステップの形状や構造、ブレーキケーブルの長さや取り回し経路等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、ブレーキケーブルは、車体の中心に対して車幅方向左側にのみ配策してもよい。本発明に係るブレーキケーブルの配策方法は、自動二輪車に限られず、鞍乗型の三輪車や四輪車等に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…自動二輪車(鞍乗型車両)、11…車体フレーム、17…シート、21…操向ハンドル、29…燃料タンク、29a…固定部、49…ブレーキペダル、50…ピリオンステップ、77…ブレーキケーブル、91…後輪ブレーキ
図1
図2
図3