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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】パワー半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20241211BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 652J
H01L29/78 653A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023558256
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2022057471
(87)【国際公開番号】W WO2022200338
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】21163959.6
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アランゴ,ユリース
(72)【発明者】
【氏名】ロマーノ,ジャンパオロ
(72)【発明者】
【氏名】ミハイラ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ベリーニ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ノール,ラーズ
【審査官】戸川 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-163048(JP,A)
【文献】特許第3329707(JP,B2)
【文献】特開2005-150246(JP,A)
【文献】国際公開第2013/031172(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/135378(WO,A1)
【文献】特開2018-133528(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163286(WO,A1)
【文献】特開2015-173290(JP,A)
【文献】特開2016-225566(JP,A)
【文献】特開平09-260650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/12
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 半導体本体(2)と、
- 前記半導体本体(2)の頂面(20)における、第1の導電型の複数のソース領域(21)と、
- 前記半導体本体(2)における、前記複数のソース領域(21)の下の、第2の導電型の少なくとも1つのチャネル領域(22)と、
- 前記半導体本体(2)における、前記半導体本体(2)の前記頂面(20)の、
第2の導電型の複数のプラグ(25)であって、前記頂面から前記少なくとも1つのチャネル領域(22)への電気的接触経路をもたらす、複数のプラグ(25)と、
- 前記半導体本体(2)における、前記少なくとも1つのチャネル領域(22)の下の、前記第1の導電型のドリフト領域(23)と、
- 前記頂面(20)から、前記複数のソース領域(21)および前記少なくとも1つのチャネル領域(22)を通って延びて、前記ドリフト領域(23)において終わる、少なくとも1つのトレンチ(4)と、
なくとも1つの前記トレンチ(4)の底面(29)の少なくとも一部の下に配置された、前記第2の導電型のシールド領域(27)と
を備えるパワー半導体デバイス(1)であって、
なくとも1つの前記トレンチ(4)がゲート電極(34)を収容し、前記ゲート電極(34)は、ゲート絶縁体(35)によって前記半導体本体から電気的に分離されており、
- 前記頂面(20)の上面図で見ると、少なくとも1つの前記トレンチ(4)が、非直線状に延びる側壁(44)を備え、
- 前記頂面(20)の上面図で見ると、少なくとも1つの前記トレンチ(4)が、複数の分岐(42)を備え、さらに、まっすぐに延びる中央パイプ(41)を備え、前記複数の分岐(42)の各々が、前記中央パイプ(41)から分岐しており、前記シールド領域(27)が、前記分岐(42)のうち少なくとも1つの下に少なくとも部分的に延在しており、
- 前記シールド領域(27)が、前記頂面(20)の上面図で見ると、前記分岐(42)に限定され、そのため、前記中央パイプ(41)の面積の少なくとも90%には前記シールド領域(27)がなく、
- 前記頂面(20)の上面図で見ると、少なくとも1つの前記トレンチ(4)の両隣に直線のストリップ(48)があり、少なくとも1つの前記トレンチ(4)が、2つの隣接した直線のストリップ(48)の間に配置されており、前記直線のストリップ(48)において、少なくとも1つの前記ソース領域(21)のうちの部分と前記第2の導電型のプラグ(25)とが交互に配置されており、
- 前記プラグ(25)と前記少なくとも1つのチャネル領域(22)とは接続されており、
- 前記ソース領域(21)は前記分岐(42)の前記直線のストリップ(48)側の前方端部に配置され、これにより、前記直線のストリップ(48)の近くの前記分岐(42)のコーナーにおいて前記プラグ(25)は少なくとも1つの前記トレンチ(4)に接触しており、あるいは、隣接した分岐(42)の間の前記ソース領域(21)は前記直線のストリップ(48)における前記ソース領域(21)と合併し、これにより、側壁(44)ごとに1つの連続したソース領域(21)が設けられ、
- 隣接した分岐(42)の間の領域は、前記ソース領域(21)から成り、
- 分岐は中央パイプの両側に設けられ、これにより、前記側壁の各々が複数の分岐を備えている、
パワー半導体デバイス(1)。
【請求項2】
前記頂面(20)の上面図で見ると、前記分岐(42)のうち少なくともいくつかが台形状であり、前記台形状の分岐(42)が、前記頂面(20)の上面図で見ると、前記中央パイプ(41)に対して前記中央パイプ(41)から前記直線のストリップ(48)に向かう方向において広がる、請求項1に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項3】
前記頂面(20)の上面図で見ると、前記分岐(42)のうち少なくともいくつかが台形状であり、前記台形状の分岐(42)が、前記頂面(20)の上面図で見ると、前記中央パイプ(41)に対して前記中央パイプ(41)から前記直線のストリップ(48)に向かう方向において狭まる、請求項1に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項4】
前記半導体本体(2)が炭化ケイ素(SiC)からなり、少なくとも1つの前記トレンチ(4)の主要な広がりの方向(L)が、前記SiCの
【数1】
に沿って延び、
前記側壁(44)の各々が、前記SiCの
【数2】
に対して横に延びる少なくとも1つの前記ソース領域(21)の隣に少なくとも1つの部分を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項5】
前記頂面(20)の上面図で見ると、前記側壁(44)の各々の全長が、少なくとも1つの前記トレンチ(4)の長さを、少なくとも1.2倍上回る、請求項1~4のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項6】
前記側壁(44)が、前記頂面(20)に対して、高々15°の公差で垂直に配向され、トレンチの底面(46)が、前記頂面(20)に対して平行に延びる、請求項1~5のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項7】
前記頂面(20)の上面図で見ると、前記分岐(42)のうち少なくともいくつかが、三角形状、正方形状、または長方形状である、請求項1に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項8】
複数の前記トレンチ(4)を備えるパワー半導体デバイス(1)であって、
前記頂面(20)の上面図で見ると、前記トレンチ(4)と、関連する前記ソース領域(21)とが、前記トレンチ(4)に対して垂直な方向に交互に配置される、請求項1~7のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【請求項9】
前記パワー半導体デバイス(1)が、電界効果トランジスタまたは絶縁ゲートバイポーラトランジスタである、請求項1~8のいずれか1項に記載のパワー半導体デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
パワー半導体デバイスが提供される。
【背景技術】
【0002】
米国特許第10,014,376 B2号、米国特許出願公開第2013/0062629 A1号および米国特許出願公開第2013/0065384 A1号の文献は、SiCパワーデバイスの製造に言及している。
【0003】
米国特許出願公開第2016/0260798 A1号、米国特許第6060747 A号、WO 2005/048352 A1号、特開H09-260650 A号、EP 2750198 A1号およびWO 2020/135378 A1号の文献は、トレンチ構造を有する半導体デバイスに言及している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決するべき問題に、オン状態において改善された電流密度を有するパワー半導体デバイスを提供することがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目標は、とりわけ、独立請求項において定義されるパワー半導体デバイスによって達成される。さらなる例示の発展が、従属請求項の主題を構成する。
【0006】
たとえば、例示的には炭化ケイ素(略してSiC)といった、バンドギャップの広い材料に基づくパワー半導体デバイスは、単にまっすぐ延びるトレンチと比較して、側壁の長さが延長されたトレンチを備える。よって、トレンチとチャネル領域との間の効果的な接触面積が拡大され得て、実効チャネル幅がより大きくなり、パワー半導体デバイスのオン状態の抵抗をより小さくすることができる。
【0007】
少なくとも一実施形態において、パワー半導体デバイスは、半導体本体と、半導体本体の頂面における、第1の導電型の少なくとも1つのソース領域と、半導体本体における、少なくとも1つのソース領域の下の第2の導電型の少なくとも1つのチャネル領域と、半導体本体における、少なくとも1つのチャネル領域の下の第1の導電型のドリフト領域と、頂面から、少なくとも1つのソース領域および少なくとも1つのチャネル領域を通って延びて、ドリフト領域において終わる少なくとも1つのトレンチとを備える。少なくとも1つのトレンチがゲート電極を収容する。頂面の上面図で見ると、少なくとも1つのトレンチは、非直線状に延びる側壁を備える。任意選択で、少なくとも1つのトレンチの底面の少なくとも一部の下に配置された、第2の導電型のシールド領域があって、頂面の上面図で見ると、少なくとも1つのトレンチが複数の分岐を備え、シールド領域は、たとえば分岐のうちの1つ、いくつか、またはすべての下に、全面的に、または部分的に延在する。
【0008】
たとえば、半導体本体はSiCである。しかしながら、半導体本体は、代わりに、SiまたはGaもしくはGaNのようなバンドギャップの大きい別の半導体材料でもあり得る。
【0009】
たとえば、第1の導電型はn型であり、第2の導電型はp型である。以下で、実施形態の説明は、前述の導電型に的を絞るが、第1の導電型をp型として第2の導電型をn型とすることも可能である。
【0010】
半導体本体の頂面は、少なくとも1つのトレンチの領域にあるが、平面状であり得る。
半導体本体には、ソース領域、すなわち同一の導電型であって、同一またはほぼ同一のドーピング濃度の連続した領域が、1つだけ存在し得る。しかしながら、半導体本体の他の部分によって互いに分離された複数のソース領域も存在し得る。同じことが、チャネル領域または複数のチャネル領域にも同様に当てはまる。
【0011】
ここおよび以下では、「ソース領域」という用語は、電界効果トランジスタのソースならびにバイポーラトランジスタのエミッタの両方を指し得る。
【0012】
半導体本体にわたって、半導体本体の成長方向に対して垂直な方向に、ドリフト領域が1つだけ全面的に延在することが可能である。しかしながら、原理的に、複数のドリフト領域が存在し得る。以下の例では、簡素化のために、1つのドリフト領域だけが明示的に言及される。
【0013】
少なくとも1つのチャネル領域および少なくとも1つのドリフト領域の最高のドーピング濃度は、少なくとも1つのソース領域の最高のドーピング濃度よりも低くてよい。
【0014】
成長方向および/または頂面に対して垂直な方向に沿って、少なくとも1つのソース領域、少なくとも1つのチャネル領域およびドリフト領域が、この順序で、互いに直接続き得る。しかしながら、オプションとして、少なくとも1つのソース領域と、少なくとも1つのチャネル領域および/またはドリフト領域との中間に、少なくとも1つのバッファ層および/または移行層が存在してもよい。
【0015】
少なくとも1つのトレンチは、ドリフト領域の内部で終わってよく、そのため、ドリフト領域を完全に縦貫するわけではない。しかしながら、トレンチは、少なくとも1つのソース領域および少なくとも1つのチャネル領域を、(たとえば頂面に対して垂直な方向に)完全に通過し得る。
【0016】
トレンチの底面には、第2の導電型のシールド領域が存在し得る。シールド領域は、頂面の上面図で見ると、少なくとも1つのトレンチと一致し得、少なくとも1つのトレンチとドリフト領域との間に完全に埋め込まれ得る。
【0017】
少なくとも1つの実施形態によれば、シールド領域は、中央パイプの下に部分的または全面的に延在する。たとえばシールド領域は、頂面の上面図で見ると、中央パイプの面積の少なくとも50%または80%に適用される。
【0018】
少なくとも1つの実施形態によれば、シールド領域は中央パイプに限定される。すなわち、頂面の上面図で見ると、少なくとも1つの分岐には、少なくとも1つの分岐の面積の高々10%または高々20%のシールド領域が備わっている。
【0019】
少なくとも1つの実施形態によれば、中央パイプならびに少なくとも1つの分岐の下に、シールド領域が部分的または全面的に延在する。たとえば、シールド領域は、頂面の上面図で見ると、中央パイプならびに少なくとも1つの分岐の面積の少なくとも90%または95%に適用される。
【0020】
少なくとも1つの実施形態によれば、シールド領域は少なくとも1つの分岐に限定される。すなわち、中央パイプには、中央パイプの面積の高々10%または高々20%のシールド領域が備わっており、頂面の上面図で見ると、少なくとも1つの分岐には、少なくとも1つの分岐の面積の少なくとも80%または少なくとも90%のシールド領域が備わっている。
【0021】
複数の分岐が存在する少なくとも1つの実施形態によれば、シールド領域は、分岐と、中央パイプの両側に配置されたそれぞれの分岐の間の中央パイプの少なくとも1つの領域とに限定される。言い換えれば、上面図で見ると、シールド領域は、中央パイプに対して垂直に配向された複数のバーによって形成され、バーが相対する2つの分岐を接続する。
【0022】
複数の分岐が存在する少なくとも1つの実施形態によれば、シールド領域は、分岐と中央パイプとの少なくとも1つの交差領域に限定される。すなわち、交差領域は、中央パイプの分岐の内側のコーナーの下にあるが、分岐の側壁および中央パイプの側壁は、交差領域から実質的に離れている。たとえば、シールド領域は、頂面の上面図で見ると、分岐の側壁および/または中央パイプの側壁の、高々20%または高々10%の下にある。
【0023】
少なくとも1つの実施形態によれば、シールド領域は、分岐のうち少なくともいくらかの下にのみ、部分的に延在する。よって、頂面の上面図で見ると、少なくとも1つのトレンチが、シールド領域から、適所または全周において突出する。たとえば、頂面の上面図で見ると、シールド領域には、分岐の各々の面積の少なくとも50%および/または高々90%が備わっている。
【0024】
ゲート電極は、少なくとも1つのトレンチの中に全面的に収容され得る。そうでなければ、ゲート電極は、少なくとも1つのトレンチから突出してよく、たとえば、ゲート電極との外部の電気的接触を可能にする。トレンチごとに、正確に1つのゲート電極があってよい。複数のトレンチがある場合には、トレンチごとに個別のゲート電極が1つあってよく、すべてのトレンチに対して共通のゲート電極があってもよく、または1つのゲート電極を共有するトレンチのグループがあってもよい。
【0025】
たとえば、ゲート電極はゲート絶縁体によって半導体本体から分離される。たとえば、ゲート絶縁体は、SiO、Si、Al、Y、ZrO、HfO、La、Ta、TiOといった材料のうち少なくとも1つである。
【0026】
少なくとも1つのトレンチの側壁が非直線状に延びるということは、頂面の上面図で見ると、たとえば、側壁は、頂面が画定する平面において、ステップ状の方形波、鋸歯状波または正弦波の輪郭を有することを意味し得る。トレンチまたはトレンチの各々が、非直線状に延びる2つの側壁を有し得る。頂面の上面図で見ると、側壁は、それぞれのトレンチの、前方端または前面とも称される前側側面によって接続され得る。
【0027】
本明細書で説明されたパワー半導体デバイスでは、たとえば、炭化ケイ素(SiC)のトレンチMOSFETデバイスにおける、実効チャネル領域サイズの拡張が提案される。この設計は、たとえば、トレンチ深さの方向であり得る[0001]方向に対して垂直な面内のあたりで、行きつ戻りつして変化する、矩形またはジグザグ式のステップのフィーチャを導入し、そのため、側壁は、
【0028】
【数1】
【0029】
ばかりでなく
【0030】
【数2】
【0031】
にも沿って形成され、ここにおいて、半導体本体は4H-SiCでよい。この設計は、ストライプ状でしかないトレンチと比較して、所与のピッチ寸法のデバイスにおけるチャネル領域の全幅を最大化することができる。トレンチにおける特別な側壁部分の追加の平行な導通により、高電流性能が可能になり、したがって、RONとも称されるオン抵抗がより低くなる。
【0032】
トレンチゲートパワーMOSFETデバイスは、パワーエレクトロニクスにおけるエネルギー効率要求および性能要件を満たす、最も有望な技術のうち1つを表す。トレンチMOSFETデバイスの開発手法の1つには、いわゆるV溝MOSFET(略してVMOSFET)がある。十分にエッチングされた鋭いV構造の先端における高電界の生成は、高度な集積化能力の低下という犠牲を払って、平坦な溝底部を生成するようにエッチングステップを未完熟のまま終了することにより、部分的に軽減され得る。この設計は、トレンチ側壁が典型的には非極性結晶面に沿ってエッチングされたMOS反転チャネルを画定する矩形の溝を開くことにより、さらに改善され得る。UMOSFETタイプと称されるこの構造は、接合型電界効果トランジスタ(JFET)の領域がないのでセルピッチがより小さくなり、しかもSiCデバイスの非極性面における電荷担体の移動度が高いので、単位面積当たりのオン抵抗が大幅に低下する。
【0033】
他のいくつかの有望な設計は、特定のオン抵抗と降伏電圧との間のトレードオフを改善するように意図された、いわゆるpnスーパージャンクション(略してSJ)を含む。これは、ドリフト領域に挿入されたp型ドープ薄層とn型ドープ薄層との平行配列を形成することによって実現され得る。これらの層の最高のドーピング濃度および厚さを適切に制御することにより、オン抵抗を低下させ、降伏電圧を高くすることもできる。
【0034】
SJ構造に基づく垂直なトレンチゲートのMOSFETデバイスは、平坦なデバイスと比較して製作の難易度ははるかに高いが、従来のトレンチゲート構造に対して、RONの約30%またはさらにそれ以上の低下を示した。SJトレンチ設計は有望であるが、デバイス処理中の、より高度な複雑さを包含している。
【0035】
横方向のスケーリングまたはピッチの縮小は、恐らく、より簡単なプロセス実現によってRONを低下させるための最も採用されている手法のうちの1つではあるが、集積化の制約条件により、強く限定され、ゲート電荷を増加させる。しかしながら、垂直なトレンチMOSFETは、はるかに高い融通性を与え、より大きな実効チャネル面積と、非平坦なトレンチ側壁に沿ったより高い移動度との組合せは、従来の平坦なMOSFETと比較して、より低いオン抵抗を可能にする。
【0036】
本明細書で説明された半導体デバイスでは、たとえば、デバイスが備えるトレンチは、半導体本体の内部の[0001]方向の内側に深くエッチングされ、
【0037】
【数3】
【0038】
および
【0039】
【数4】
【0040】
に対して平行なトレンチ側壁の短い区域を有する。したがって、側壁の配向は、1つの方向から他の方向へ交互に変化し、少なくとも1つのトレンチの主軸が、従来のトレンチMOSFET設計と同様に、
【0041】
【数5】
【0042】
に沿って伝わる。本明細書で提案された設計の利点には、たとえば、所与のピッチ寸法について、もたらされるチャネル領域幅が、従来のUMOSFETトレンチの推定された幅と比較して増大することがある。
【0043】
したがって、この提案された設計では、
【0044】
【数6】
【0045】
に沿った少なくとも1つのトレンチ側壁面積が、標準的なストライプ状のトレンチ設計の合計のトレンチ側壁面積に等しい。したがって、
【0046】
【数7】
【0047】
に沿ってエッチングされた側壁部分のすべてが、さらなる寄与を導入し、たとえば、同一のセルピッチについて、チャネル面積がおよそ40%増加する。
【0048】
【数8】
【0049】
に沿った最適な側壁ステップ長さは、チャネル幅を増加させることと、ピッチ寸法が過大になるのを防止することとの間のトレードオフによって選択され得る。
【0050】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体本体はSiCからなり、少なくとも1つのトレンチの主要な広がりの方向は、SiCの
【0051】
【数9】
【0052】
に沿って延びる。主要な広がりの方向は、少なくとも1つのトレンチが最大の幾何学的寸法を有する領域の方向、および/またはそれぞれのトレンチの最長の対称軸の方向でよい。
【0053】
少なくとも1つの実施形態によれば、側壁のうち、少なくとも1つもしくはいくつか、または各々が、SiCの
【0054】
【数10】
【0055】
に対して横に延びる少なくとも1つのソース領域の隣に少なくとも1つの部分を備える。たとえば、前記部分は、
【0056】
【数11】
【0057】
に対して垂直に、たとえば
【0058】
【数12】
【0059】
に沿って延びる。そうでなければ、
【0060】
【数13】
【0061】
と前記側壁部分との間の角度は、少なくとも45°、少なくとも60°、または少なくとも70°、ならびに/あるいは高々85°、または高々75°である。横に延びる別々の側壁部分は、
【0062】
【数14】
【0063】
に対して別々の角度を有し得る。
少なくとも1つの実施形態によれば、頂面の上面図で見ると、側壁のいくつかまたは各々のうち、少なくとも1つの全長が、少なくとも1つのトレンチの長さを、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、または少なくとも1.4倍上回る。少なくとも1つのトレンチの長さは、それぞれのトレンチの、主要な広がりの方向に沿った広がりを指し得る。少なくとも1つのトレンチの長さは、有効な広がりまたは有効長さと称されることもある。例示的に、非直線状に延びる側壁は、たとえば、トレンチの全体の深さ方向にわたって、側壁の全長がゲートの有効長さと比較して増加する。したがって、側壁の非直線性により、頂面の上面図で見ると、側壁の長さが大幅に増加し、よってチャネル領域の長さが大幅に増加し得る。
【0064】
少なくとも1つの実施形態によれば、側壁は、頂面に対して、高々15°または高々5°の公差で垂直に配向される。任意選択で、トレンチの底面も、頂面に対して、たとえば高々15°または高々5°の公差で平行に延びる。底面は、それぞれのトレンチの2つの側壁を接続し得る。したがって、それぞれのトレンチが、頂面を通って主要な広がりの方向に対して垂直な断面を見ると、U字形または
【0065】
【数15】
【0066】
であり得る。もちろん、この段落における特徴は、たとえば以前の段落における特徴のいくつかまたはすべてと組み合わされ得る。
【0067】
少なくとも1つの実施形態によれば、頂面の上面図で見ると、少なくとも1つのトレンチが、たとえば主要な広がりの方向に沿ってまっすぐに延びる中央パイプを備える。たとえば、頂面の上面図で見ると、中央パイプの幅は一定である。さらに、中央パイプは、頂面に対して垂直な方向において一定の厚さでよい。すなわち、中央パイプは直線状のバーとして形成され得る。
【0068】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つのトレンチが、中央パイプからの複数の分岐を備える。分岐は、中央パイプの横方向の広がりと見なされ得る。分岐は、中央パイプにおいて規則的かつ/または等距離に配置され得る。分岐と中央パイプとは、一体でよいが、そうでなければ複数の部品で構成されてもよい。
【0069】
トレンチが、相対する側壁に複数の分岐を備える場合には、分岐は、両方の側壁において、対称に、すなわち互いに向かい合って配置されてよく、またはオフセットして、すなわち変位して配置されてもよい。
【0070】
少なくとも1つの実施形態によれば、分岐のうち1つもしくはいくつかまたはすべてが、頂面の上面図で見ると正方形状または長方形状である。すなわち、少なくとも1つの、それぞれの側壁のそれぞれの隣接した部分が、互いに対して垂直に配置されている。
【0071】
少なくとも1つの実施形態によれば、分岐のうち1つもしくはいくつかまたはすべてが、頂面の上面図で見ると台形状である。それぞれの台形が、たとえば対称な台形であって、対称軸は、それぞれのトレンチの主要な広がりの方向に対して垂直である。
【0072】
代わりに、またはそれに加えて、頂面の上面図で見ると、分岐のうち1つもしくはいくつかまたはすべてが多角形状であってもよい。
【0073】
少なくとも1つの実施形態によれば、分岐のうち1つもしくはいくつかまたはすべてが、頂面の上面図で見ると、中央パイプに対して垂直な方向に広がる台形状である。よって、それぞれの分岐の最も広い部分は中央パイプから離れている。
【0074】
少なくとも1つの実施形態によれば、分岐のうち1つもしくはいくつかまたはすべてが、頂面の上面図で見ると、中央パイプに対して垂直な方向に狭まる台形状である。よって、それぞれの分岐の最も広い部分は中央パイプの隣にある。
【0075】
少なくとも1つの実施形態によれば、分岐のうち1つもしくはいくつかまたはすべてが、頂面の上面図で見ると三角形状である。すなわち、それぞれのトレンチが、上面図で見ると、片刃または両刃の鋸歯状に見える可能性がある。三角形状の分岐のうち少なくとも1つもしくはいくつかまたはすべてが、それぞれのトレンチの主要な広がりの方向に対して垂直な対称軸に対して対称に成形されてよい。それぞれの分岐を形成する三角形の、中央パイプから離れた先端における開角度は、たとえば少なくとも45°、少なくとも90°または少なくとも120°である。代わりに、またはそれに加えて、前記開角度は、高々150°、高々125°または高々100°である。たとえば、開角度は、90°~150°(両端を含む)、または45°~125°(両端を含む)である。
【0076】
少なくとも1つの実施形態によれば、側壁の各々が複数の分岐を備える。それぞれの側壁の分岐のすべて、またはそれぞれのチャネルの分岐のすべてが、同一の形状でよい。そうでなければ、それぞれのトレンチにおいて、異なる形状の分岐が組み合わされてもよい。
【0077】
少なくとも1つの実施形態によれば、頂面の上面図で見ると、少なくとも1つのトレンチが蛇行形状である。これは、たとえば、前記少なくとも1つのトレンチの相対する終端の間には、この少なくとも1つのトレンチの最上部において全面的に延びている直線の接続ラインはないことを意味する。言い換えれば、トレンチが空であっても、それぞれのトレンチを通して剛体の直線的な棒を引き抜くことはできないはずである。
【0078】
少なくとも1つの実施形態によれば、頂面の上面図で見ると、この少なくとも1つのトレンチは、ジクザグ状、正弦波状および矩形波状のうち少なくとも1つである。このことは、上記で定義された直線の接続ラインを有するトレンチ、またはそのような直線の接続ラインを有しないトレンチにも当てはまり得る。
【0079】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、半導体本体のたとえば頂面に、第2の導電型の複数のプラグをさらに備える。これらのプラグは、頂面から少なくとも1つのチャネル領域への電気的接触経路をもたらすように構成され得る。よって、これらのプラグは、少なくとも1つのソース領域を横断して、少なくとも1つのチャネル領域ならびに頂面と直接接触し得る。これらのプラグと少なくとも1つのソース領域とは同電位になり得、結果的に少なくとも1つのチャネル領域も同電位になり得る。
【0080】
少なくとも1つの実施形態によれば、これらのプラグは、頂面の上面図で見ると、少なくとも1つのトレンチから離れて配置される。この場合、これらのプラグは少なくとも1つのトレンチと接触しなくてよい。これらのプラグと少なくとも1つのトレンチとの間に少なくとも1つのソース領域が配置され得る。そうでなければ、これらのプラグは、少なくとも1つのトレンチと、たとえばポイント状に接触可能であり、すなわち、少なくとも1つのトレンチとそれぞれのプラグとの間には接触面は存在せず、接触線のみが存在し得る。
【0081】
少なくとも1つの実施形態によれば、頂面の上面図で見ると、少なくとも1つのトレンチの両隣に直線のストリップがある。直線のストリップは、少なくとも1つの割り当てられたトレンチと、たとえば、ポイント状に接触してよく、または少なくとも1つの割り当てられたトレンチから離れている。直線のストリップにおいて、少なくとも1つのソース領域のうちの部分とプラグとが交互に配置され得る。
【0082】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、複数のトレンチと、オプションとしての複数のソース領域または唯一のソース領域とを備える。頂面の上面図で見ると、トレンチと、少なくとも1つの関連するソース領域とが、トレンチに対して横方向に交互に配置され得る。トレンチは、互いに平行に、すなわち主要な広がりと平行な方向に、または平行な対称軸を伴って、配置され得る。
【0083】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、電界効果トランジスタまたは絶縁ゲートバイポーラトランジスタである。たとえば、本明細書で説明されたパワー半導体デバイスは、たとえばMOSFETおよびIGBTなどのMOSベースのSiCトレンチデバイスあるか、またはこれに含まれる。よって、パワー半導体デバイスは、たとえば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、金属絶縁体半導体電界効果トランジスタ(MISFET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)、および接合ゲート電界効果トランジスタ(JFET)を含むかまたはこれらから成るグループから選択されたデバイスであり得、またはその中に存在し得る。本明細書で説明されたパワー半導体デバイスは、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)またはゲート転流型サイリスタ(GCT)のようなサイリスタの一部でもよい。
【0084】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体本体はコレクタ領域をさらに備える。コレクタ領域はチャネル領域と同一の導電型である。コレクタ領域は、半導体本体の、頂面の反対側の底面にあってよい。複数のソース領域がある場合には、すべてのソース領域について1つのコレクタ領域があり得る。コレクタ領域に対して、コレクタ電極が、直接与えられ得る。コレクタ領域がある場合には、パワー半導体デバイスはIGBTになり得る。
【0085】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体は少なくとも1つのドレイン領域をさらに備える。ドレイン領域は、少なくとも1つのソース領域と同一の導電型である。たとえば、ドレイン領域は底面における層である。たとえば、少なくとも1つのソース領域とドレイン領域との間にドリフト領域が配置される。複数のソース領域がある場合には、すべてのソース領域について1つの共通ドレイン領域があり得る。ドレイン電極は、少なくとも1つのドレイン領域と直接接触してよい。ドレイン領域がある場合には、パワー半導体デバイスはMOSFETまたはMISFETになり得る。
【0086】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスは、少なくとも2つのソース領域とソース電極とを備える。ソース電極は、ソース領域のうち少なくとも2つまたはすべてと、たとえば電気的に直接接触する。よって、前記少なくとも2つのソース領域は同一電位になり得る。オプションとして、ソース電極は、少なくとも1つのプラグと直接接触してもよい。
【0087】
少なくとも1つの実施形態によれば、頂面に対して垂直な断面で見ると、少なくとも2つのソース領域の間にゲート電極が配置される。よって、1つのゲート電極に2つのソース領域が割り当てられ得る。ソース領域は、それぞれのゲート電極の隣に、対称に配置され得る。
【0088】
少なくとも1つの実施形態によれば、パワー半導体デバイスはパワーデバイスである。たとえば、パワー半導体デバイスは、少なくとも1つのチャネル領域を流れる少なくとも1Aまたは少なくとも20Aの最大電流用に構成される。代わりに、またはそれに加えて、パワー半導体デバイスは、少なくとも0.2kV、少なくとも0.6kV、または少なくとも1.2kVの最大電圧用に構成される。
【0089】
パワー半導体デバイスは、バッテリーからの直流を、たとえばハイブリッド車またはプラグイン電気自動車内の電動機用の交流電流に変換するための、たとえば車両内のパワーモジュール用である。なおまた、パワー半導体デバイスは、たとえば自動車のような車両の中のヒューズになり得る。
【0090】
パワー半導体デバイスは、例示的な実施形態として、図を参照しながら以下でより詳細に説明される。個別の図における同一の要素は、同一の参照数字を用いて示される。しかしながら、要素間の関係は原寸に比例して示されているわけではなく、理解を助けるために個別の要素が誇大に示されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略斜視図である。
図2図1のパワー半導体デバイスの概略上面図である。
図3図1のパワー半導体デバイスの概略断面図である。
図4図1のパワー半導体デバイスの概略断面図である。
図5】SiCの結晶方位の概略図である。
図6】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略上面図である。
図7】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略上面図である。
図8】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略上面図である。
図9】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略上面図である。
図10】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略上面図である。
図11】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略上面図である。
図12】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略上面図である。
図13】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略上面図である。
図14】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略斜視図である。
図15】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスのシミュレートされた電流密度データの概略図である。
図16】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスのシミュレートされた電流-電圧特性の概略図である。
図17】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略上面図である。
図18】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略上面図である。
図19】本明細書で説明されたパワー半導体デバイスの例示的な実施形態の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
図1図4に、パワー半導体デバイス1の例示的な実施形態が示されている。パワー半導体デバイス1は半導体本体2を備える。半導体本体2は、頂面20に複数のソース領域21を備える。オプションとして、頂面20には複数のプラグ25もある。プラグ25は、ソース領域21とプラグ25との下に配置されるチャネル領域22と電気的に接触するように構成される。プラグ25およびソース領域21は、半導体本体2の成長方向Gに沿って同一の厚さまたは異なる厚さを有し得る。
【0093】
さらに、半導体本体2において、チャネル領域22の下にドリフト領域23がある。チャネル領域22は、ドリフト領域23からソース領域21を分離する。
【0094】
パワー半導体デバイス1がMISFETまたはMOSFETである場合には、半導体本体2の頂面20の反対側の底面29において、ドリフト領域23の下に任意選択のドレイン領域24が存在し得る。ドレイン領域24には、ドレイン電極32が電気的に接触する。たとえば、図3および図4に見られるように、頂面にはソース電極31があって、すべてのソース領域21ならびにプラグ25に電気的に接触する。
【0095】
前述の領域21、22、23、24は、半導体本体2の成長方向Gに沿って、上からこの順に直接続き得る。したがって、半導体本体2は、少なくとも部分的にエピタキシャルに成長し得る。さらに、半導体本体2は、ここに示された基板を備えてよく、この基板の上に、たとえば領域22、21、25といった他の領域が成長する。
【0096】
なおまた、半導体本体2内のトレンチ4が、頂面20から、ソース領域21およびチャネル領域22を通って延びて、ドリフト領域23において終わる。トレンチ4は、中央パイプ41を備え、これが、主要な広がりの方向Lにまっすぐに延びる。実効チャネル幅を増加するために、トレンチ4は、中央パイプ41から離れて延びる複数の分岐42を備える。よって、分岐42のためにトレンチ4の側壁44の長さが増大する。断面で見ると、トレンチ4はほぼ
【0097】
【数16】
【0098】
であり、そのため、トレンチの底面46は、頂面20に対して平行またはほぼ平行に延びる。結果的に、側壁44は、頂面20に対して垂直またはほぼ垂直に延びる。
【0099】
トレンチ4の中にゲート電極34がある。ゲート電極34は、ゲート絶縁体35によって半導体本体2から電気的に分離される。ゲート電極34からソース電極31を電気的に分離するさらなる絶縁体は、図には明示的に示されていない。簡単さのために、以下の図にゲート絶縁体35は示されていない。
【0100】
オプションとして、トレンチ4の下に、トレンチの底面46においてドリフト領域23に埋め込まれたシールド領域27がある。シールド領域27は、中央パイプ41および分岐42の下にあってよく、または中央パイプ41のみの下にあってもよい。
【0101】
トレンチの底面46の下のシールド領域27は、イオン注入によって生成され得、ブロッキング状態においてゲート絶縁体35を高電界からシールドするために使用され得る。シールド領域27は、フローティングされ得、または同一のソース領域電位に接触され得る。断面で見ると、シールド領域27は正方形状または長方形状であり得る。
【0102】
上面図で見ると、分岐42は、長方形状であって規則的に配置されている。2つの側壁44における分岐42は、相対しており、そのため、トレンチ4の長い対称軸が、主要な広がりの方向Lに沿って延びる。中央パイプ41から離れる方向における分岐42の広がりを、分岐42なしの中央パイプ41の幅よりも大きくすることができる。なおまた、隣接した分岐42の間の距離は、中央パイプ41に対して垂直な方向において、分岐42の長さよりも大きくなり得、また中央パイプ41の幅よりも大きくなり得る。
【0103】
オプションとして、ストリップ48が、主要な広がりの方向Lに対して平行に延びる。ストリップ48は直線状でよい。ストリップ48において、ソース領域41とプラグ25が交互に配置される。この点で、ソース領域41は分岐42の前方端部にのみ存在し得、そのため、ストリップ48の近くの分岐42のコーナーにおいて、プラグ25は、たとえば、上面図に見られるようにポイント状にトレンチ4と接触し得、図2と比較されたい。よって、ストリップ48は、分岐42の前方端部においてのみトレンチ4に接触する。隣接した分岐42の間の領域は、全面的にソース領域21から成り得る。
【0104】
図1および図2では、半導体本体2はトレンチ4を1つだけ備える。しかしながら、図1および図2に示される構成は、たとえば互いに隣接して何回も繰り返し配置され得る基本単位と見なされ得る。よって、基本単位は、主要な広がりの方向Lに対して垂直な方向に、互いに隣接し得、前記基本単位の対が次々と続き得る。したがって、基本単位のピッチ、したがってトレンチのピッチは、分岐42におけるそれぞれのトレンチ4の幅に、ストリップ48の幅を1回または2回加えたものに相当し得る。
【0105】
たとえば、ソース領域21および任意選択のドレイン領域24は、高度にnドープされ、ドリフト領域23は、低度にnドープまたはnドープされ、チャネル領域22はpドープされて、任意選択のプラグ25ならびに任意選択のシールド領域27は高度にpドープされる。そうでなければ、ドープタイプはすべて逆にされ得る。
【0106】
たとえば、ソース領域21、任意選択のドレイン領域24およびプラグ25の最高のドーピング濃度は、少なくとも1×1018cm-3、少なくとも5×1018cm-3、もしくは少なくとも1×1019cm-3および/または高々5×1020cm-3、高々2×1020cm-3もしくは高々1×1020cm-3である。さらに、チャネル領域22の最高のドーピング濃度は、少なくとも5×1016cm-3もしくは少なくとも1×1017cm-3および/または高々5×1019cm-3もしくは高々5×1018cm-3であり得る。ドリフト領域23の最高のドーピング濃度は、パワー半導体デバイス1の電圧クラスに応じて、少なくとも1×1014cm-3、少なくとも5×1014cm-3、もしくは少なくとも1×1015cm-3および/または高々1×1017cm-3、高々5×1016cm-3、もしくは高々1×1016cm-3であり得る。
【0107】
さらなる理解のために、本明細書で説明されたパワー半導体デバイス1はSiCに基づき得るので、図5にはSiCの基本結晶面が示されている。本明細書で説明されたトレンチ4は、[0001]方向に沿って半導体本体の中に延びてよく、また、主要な広がりの方向Lは
【0108】
【数17】
【0109】
に沿っており、そのため中央パイプ41は
【0110】
【数18】
【0111】
と平行であることが注目される。したがって、図1および図2に示される分岐42は、たとえば
【0112】
【数19】
【0113】
の中へと延在し得る。図1図4の例示的な実施形態におけるすべての側壁44は、もっぱら
【0114】
【数20】
【0115】
および
【0116】
【数21】
【0117】
に沿って延び得る。
図6において、パワー半導体デバイス1の別の例示的な実施形態が、頂面20の上面図に示されている。基本セルが1つだけ示されている。複数のそのような基本セルが、主要な広がりの方向Lに沿って次々と続き得、そのため、上記で説明された基本単位は、複数のそのような基本セルから成り得て、複数のそのような基本単位が、互いに隣接し、並んで配置され得る。
【0118】
図6によれば、中央パイプ41から離れる分岐42の広がりは、構造ユニットの最小サイズUに対応する。したがって、Uはチャネル幅の最小のステップサイズを記述し得る。たとえば、Uは、少なくとも0.2μmもしくは少なくとも0.5μmおよび/または高々5μmもしくは高々2μmである。ストリップ48において、プラグ25は、ピッチ寸法の増加を防止するために
【0119】
【数22】
【0120】
に沿って再びセグメント化される。上面図で見ると、プラグ25は、接触ポイント51においてトレンチ4に接触し得る。
【0121】
そうでなければ、図1図5と同じことが図6にも当てはまり得る。
図7に関して、横方向に配置されたストリップ48におけるソース領域21は、主要な広がりの方向Lに沿ってプラグ25の方へ延在し得、その結果、オーバラップ領域52が生じる。これは、コーナーのあたりの拡張空乏領域の形成を低減するための助けになり、結局は、それらのポイントにおける実効チャネル幅を縮小することになる。たとえば、方向Lに沿ったオーバラップ領域52の広がりは、少なくとも0.1Uおよび/または高々0.5Uである。たとえば、ストライプ48の幅は、少なくとも0.2Uおよび/または高々0.8Uである。
【0122】
したがって、オーバラップ領域52のために、隣接した分岐42の間のソース領域21がストリップ48におけるソース領域21と合併して、側壁44ごとに1つの連続したソース領域21が生じ得る。
【0123】
そうでなければ、図1図6と同じことが図7にも当てはまり得る。
図8によれば、中央パイプ41から離れて延びる分岐42は、中央パイプ41に対して垂直な方向において狭まる台形状である。分岐42の対称軸は、方向Lに対して垂直に配向される。たとえば、方向Lと横に延びる側壁44との間の角度Aは、少なくとも45°および/または高々80°、あるいは少なくとも55°および/または高々70°である。分岐42のそのような設計は、同一のセルピッチを維持しながらトレンチ性能を最適化するために使用され得る。
【0124】
図6では、接触ポイント51において、プラグ25ならびにソース領域21が分岐42の前方端部に接触する。繰り返しになるが、側壁44の前記前方端部は方向Lと平行に延びる。
【0125】
したがって、少なくとも1つのトレンチ4の各側壁44は、
【0126】
【数23】
【0127】
【0128】
【数24】
【0129】
から離れる別々の方向に沿って達成され得る。同様に、交番するトレンチ側壁44の間の角度Aは、たとえば4H-SiCの非極性面によって与えられる移動度の改善といった、頂面20に対して垂直な別々の結晶面からの利益を探求するように選択され得る。
【0130】
そうでなければ、図6と同じことが図8にも当てはまり得る。
図9には、図7に類似して、ストリップ48にオーバラップ領域52があることが示されている。
【0131】
そうでなければ、図8と同じことが図9にも当てはまり得る。
図10によれば、分岐42は、これも台形状であるが、中央パイプ41に対して垂直な方向において広がる。結果的に、角度Aは、90°よりも大きく、たとえば少なくとも100°および/または高々135°、あるいは少なくとも110°および/または高々125°である。
【0132】
図10の構成は接触領域52を有して示されているが、もちろん、代わりに、接触ポイント51を用いて実現され得、たとえば図8と比較されたい。
【0133】
そうでなければ、図1図9と同じことが図10にも当てはまり得る。
図11によれば、分岐42は、上面図で見ると三角形状である。したがって、トレンチ4には、
【0134】
【数25】
【0135】
方向および
【0136】
【数26】
【0137】
方向に沿って延びる側壁44がなくてよい。たとえば、角度Aは、少なくとも30°および/または高々80°、あるいは少なくとも45°および/または高々70°である。
【0138】
図11において、上面図で見ると、トレンチ4のそれぞれの側に、方向Lに沿って、プラグ25の連続したストリップがある。したがって、分岐42の先端において、プラグ25が側壁44に接触し得る。そうでなければ、図12を見ると、ストリップ48には、ソース領域21とプラグ25とが交番し、そのため、上面図で見ると、トレンチ4のそれぞれの側に、合併して連続したソース領域21がもたらされる。
【0139】
そうでなければ、図1図10と同じことが図11および図12にも当てはまり得る。
図1図4および図6図12の実施形態では、連続した直線の中央パイプ41が常に存在しており、そのため、トレンチ4の終端は、トレンチ4の内部でのみ延びる直線によって接続され得る。それと対照的に、図13を見ると、トレンチ4は、上面図で見ると矩形信号状である。たとえば、上面図で見ると、方向Lと平行に延びる領域におけるトレンチ4の幅は、Uまたは
【0140】
【数27】
【0141】
の内脚の長さBよりも小さい。
したがって、上面図で見ると、トレンチ4の区域は、Uまたは
【0142】
【数28】
【0143】
の交番する配向を伴って形成される。任意選択のプラグ25は、Uまたは
【0144】
【数29】
【0145】
の範囲に収まり得、あるいは図13に示されるものとは違って、Uまたは
【0146】
【数30】
【0147】
の内側部分から離れていてもよい。
そうでなければ、図1図12と同じことが図13にも当てはまり得る。
【0148】
図1図4および図6図13のパワー半導体デバイス1は、トレンチMISFETまたはMOSFETとして構成される。それと対照的に、図14のパワー半導体デバイス1はIGBTである。そうでなければ、図1図4および図6図13のパワー半導体デバイス1のすべてが、またIGBTであり得、図14のパワー半導体デバイス1はトレンチMISFETまたはMOSFETであり得る。
【0149】
したがって、図14によれば、パワー半導体デバイス1は、半導体本体2の底面29にコレクタ領域26を備え、コレクタ領域26にはコレクタ電極33がある。ドリフト領域23がnドープされるならコレクタ領域26はpドープされ、逆の場合も同じである。たとえば、コレクタ領域26の最高のドーピング濃度については、少なくとも1つのチャネル領域22にも同じことが当てはまり得る。オプションとして、コレクタ領域26とドリフト領域23との間に、第1の導電型のバッファ領域28が存在し得る。たとえば、そのようなバッファの最高のドーピング濃度は、ドリフト領域23のものよりも高い。
【0150】
さらに、図14において、トレンチ4は、上面図で見ると鋸歯状であることが示されている。トレンチ4の内部には、図13のように方向Lに沿って単に延びてトレンチ4の相対する終端を接続する直線はない。
【0151】
図14によれば、上面図で見ると、トレンチ4は、トレンチ4の方向Lに沿った中心軸から離れたところに、先の尖った先端を有する。示されたもの以外に、これらの先端は丸められてよく、または方向Lと平行に延びる区域で置換されてもよい。これらの変更は、他のすべての例示的な実施形態でも同様に可能である。
【0152】
図14において、任意選択のプラグ25は、図6図13の実施形態のようにトレンチ4から離れてよく、またはトレンチ4に接触していてもよい。
【0153】
そうでなければ、図1図13と同じことが図14にも当てはまり得る。
図15は、シミュレーションデータが、頂面20の上面図したがってxy面における、提案されたトレンチ設計の利点を証明することを示す。図15に表されるように、基本単位の1スライスのみがシミュレートされた。シミュレーションは、トレンチのコーナーにおける、より厚い酸化物またはより薄い酸化物による、電流電導における別々の影響を示すが、図15の出力特性は、全体的な効果がRONを低下させることを示している。実際には、トレンチのコーナーは、通常は、尖ったポイントにおける電界の力線の集中を最小化するために丸められ、側壁44も様々な角度を有し得、たとえば図8図12図14と比較されたい。
【0154】
図16には、本明細書で説明されたパワー半導体デバイス1と、ストライプ状のトレンチ構造しかないデバイスとの間の、15Vのゲート-ソース間電圧における出力電流-電圧特性の比較が示されている。15Vのゲート-ソース間電圧における、ドレイン電流対ソース-ドレイン電圧グラフにより、示されるように、本明細書で説明された、たとえば図6のステップ状の設計に関する、オン抵抗RONにおける約36%の低下を評価することができる。
【0155】
図17図19の例では、トレンチ4の一部の下にシールド領域27がある。図17図19において、分岐42は、上面図で見ると長方形状であり、中央パイプ41に沿って対になり、正確に相対するが、同様に、分岐42は図8図10のような台形状であり得る。さらに、ソース領域21およびプラグ25も、図7または図9のように成形され得る。相対する分岐42は、任意選択で、中央パイプ41に沿って、たとえば中央パイプ41に沿って、互いに対して、それぞれの分岐42の広がりの高々20%または高々40%変位され得る。
【0156】
シールド領域27の機能は、ブロッキング状態の間、トレンチ4の底部エッジおよびコーナーを高電界から保護することである。ブロッキング中にソースとドレインとの間に高電圧が印加されると、トレンチ4の底部において、特に鋭いコーナーやエッジには、誘電体/半導体の界面に高い電界値が形成される傾向がある。それらのポイントに電界が集中すると、絶縁破壊およびデバイス障害をもたらす可能性がある。
【0157】
トレンチ4に最高の保護を与えるレイアウトは、中央パイプ41ならびに分岐42の全体の底部を対象として含むシールド領域27(図示せず)を有することになるが、導通中に、垂直チャネルのまわりに、すなわちトレンチ壁44に沿って、大きな空乏領域が生じるので、場合によっては、高いJFET効果をもたらして電流の流れを抑制する、すなわち全体のオン抵抗を増加させる、という不都合がある。
【0158】
この影響を最小化するために、トレンチ4の下のシールド領域27の面積を縮小する他のレイアウトが可能である。可能性の1つには、シールド領域27の広がりを、中央パイプ41と分岐42との間の交差領域のみに限定することがあり、図17を参照されたい。この場合、たとえば、別個のアイランドのように形成された別々の隣接したシールド領域27によって生成された空乏領域の効果により、ドーピング、寸法などのパラメータを適切に選択すれば、トレンチ壁44におけるオン抵抗に対する影響が最小化され、トレンチ4の残りの部分は引き続き保護され得る。
【0159】
図18によれば、一対の相対する分岐42と前記分岐42の間の中央パイプ41の一部との下のバーとして、シールド領域27が形成される。すなわち、複数の前記バーが、中央パイプ41に沿って次々と続き得る。
【0160】
図19において、シールド領域27は、アイランド状でもあり、分岐42に限定されている。
【0161】
図には示されていないが、他の設計では、トレンチ4には全体的にシールド領域27が備わっていてよく、または、シールド領域27は、頂面20の上面図に見られるように中央パイプ41に限定され得る。
【0162】
シールド領域27は、適切なマスキングおよび注入ならびに/あるいはepi注入-epi処理によって実現され得る。
【0163】
ここで説明されたデバイスは、例示的な実施形態を参照しながら示された説明によって制限されることはない。むしろ、このデバイスは、あらゆる斬新な特徴およびこれらの特徴のあらゆる組合せを、この特徴またはこの組合せが特許請求の範囲または例示的な実施形態の中にそれ自体が明示的に示されていなくても、特許請求の範囲における特徴のあらゆる組合せを特に含めて、包含するものである。
【0164】
この特許出願は、欧州特許出願第21163959.6号の優先権を特許請求するものであり、その開示の内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0165】
参照符号の一覧
1 パワー半導体デバイス
2 半導体本体
20 頂面
21 ソース領域
22 チャネル領域
23 ドリフト領域
24 ドレイン領域
25 プラグ
26 コレクタ領域
27 シールド領域
28 バッファ領域
29 底面
31 ソース領域ならびにチャネル領域の電極
32 ドレイン電極
33 コレクタ電極
34 ゲート電極
35 ゲート絶縁体
4 トレンチ
41 中央パイプ
42 分岐
44 トレンチの側壁
46 トレンチの底面
48 ストリップ
51 接触ポイント
52 オーバラップ領域
A 角度
B 内脚の長さ
G 成長方向
L トレンチの最長の広がりの方向
U 構造ユニットの最小サイズ
x、y 軸
図1
図2
図3
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図5
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