(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】超音波センサを操作するための方法、コンピュータプログラム製品、超音波センサシステム、および車両
(51)【国際特許分類】
G01S 7/523 20060101AFI20241211BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20241211BHJP
【FI】
G01S7/523
G01S15/931
(21)【出願番号】P 2023575846
(86)(22)【出願日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2022064545
(87)【国際公開番号】W WO2022258411
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】102021114988.6
(32)【優先日】2021-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、フランソワ、バリアント
(72)【発明者】
【氏名】ラダクリシュナ、チブクラ
(72)【発明者】
【氏名】アント、ジョイズ、イエスアディマイ、ミヒャエル
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102012002979(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102019217709(DE,A1)
【文献】特開昭56-132697(JP,A)
【文献】特開昭62-015476(JP,A)
【文献】特開平04-054800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52-7/64
G01S 15/00-15/96
H04R 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサ(2)を操作するための方法であって、前記超音波センサ(2)は、膜(3)と、前記膜(3)を励起するためおよび/または前記膜(3)の振動を検出するための励起器素子(4)と、を備え、
前記方法は、
校正データを記憶する記憶ユニット(9)から前記校正データを取得するステップ(S1)であって、前記校正データは、異なる膜温度における膜励起周波数に依存する、送信方向(SD)における前記超音波センサ(2)の第1周波数応答(FR1)に関する情報と、異なる膜温度における膜振動周波数に依存する、受信方向(RD)における前記超音波センサ(2)の第2周波数応答(FR2)に関する情報と、を含むステップ(S1)と、
現在膜温度を決定するステップ(S2)と、
前記現在膜温度における前記第1周波数応答(FR1)と前記現在膜温度における前記第2周波数応答(FR2)とを使用して、前記超音波センサ(2)の感度を決定するステップ(S3)と、
前記励起器素子(4)に供給される電流および/または前記超音波センサ(2)のゲインを、決定された前記感度と事前記憶された感度との差に基づいて制御するステップ(S4)と、
を備え
、
決定された前記感度を決定するステップ(S3)は、前記現在膜温度における前記第1周波数応答と前記現在膜温度における前記第2周波数応答との差に周波数依存重み付け係数を乗じた積分を計算するステップを含み、前記積分は、対象周波数帯域幅に亘って実施される、
方法。
【請求項2】
前記励起器素子(4)に供給される前記電流および/または前記超音波センサ(2)の前記ゲインは、決定された前記感度と事前記憶された前記感度との前記差を補償するように制御される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膜励起周波数、および/または、前記超音波センサ(2)が前記膜(3)の前記振動を検出するように設定された検出周波数領域を、取得した前記校正データと決定された前記現在膜温度とに基づいて制御するステップ(S5)をさらに備える、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記超音波センサ(2)の前記第1周波数応答(FR1)は、所定信号経路についての送信方向(SD)における前記超音波センサ(2)の第1周波数応答であり、
前記超音波センサ(2)の前記第2周波数応答(FR2)は、前記所定信号経路についての受信方向(RD)における前記超音波センサ(2)の第2周波数応答であり、
前記超音波センサ(2)の感度を決定するステップ(S3)は、前記所定信号経路の前記感度を決定するステップに対応する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記膜励起周波数を変更しつつ送信方向(SD)における前記超音波センサ(2)の前記第1周波数応答(FR1)を測定するとともに、これらの測定を異なる膜温度において実施することにより、および/または、前記膜振動周波数を変更しつつ受信方向(RD)における前記超音波センサ(2)の前記第2周波数応答(FR2)を測定するとともに、これらの測定を異なる膜温度において実施することにより、前記校正データを実験により決定するステップをさらに備える、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記校正データを実験により決定するステップにおいて、前記膜励起周波数および/または前記膜振動周波数は、40~70kHzの
間で変化される、
請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記校正データは
、-40℃~90℃の間の種々の温度に対する前記第1周波数応答(FR1)および/または第2周波数応答(FR2)に関する情報を含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
現在膜温度を決定する前記ステップ、および、前記励起器素子(4)が出力する前記電流、前記超音波センサの前記ゲイン、前記膜励起周波数、および/または前記検出周波数領域を制御する前記ステップは、前記超音波センサの動作フェーズ中に複数回実施される、
請求項3に記載の方法。
【請求項9】
膜温度を決定する前記ステップ、および、前記励起器素子(4)が出力する前記電流、前記超音波の前記ゲイン、前記膜励起周波数、および/または前記検出周波数領域を制御する前記ステップは、前記超音波センサの前記動作フェーズ中に、一定の時間間隔
で実施される、
請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記校正データは、表として前記記憶ユニット(9)に記憶される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記第1周波数応答(FR1)は、異なる前記膜温度の各々について、所定の膜温度での前記送信方向(SD)における前記超音波センサ(2)の周波数応答(FR)と室温での前記送信方向(SD)における前記超音波センサ(2)の周波数応答(FR)との比を含む、および/または、
前記第2周波数応答(FR2)は、異なる前記膜温度の各々について、所定の膜温度での前記受信方向(RD)における前記超音波センサ(2)の周波数応答(FR)と前記室温での前記受信方向(RD)における前記超音波センサ(2)の周波数応答(FR)との比を含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータプログラム製品であって、前記プログラムがコンピュータにより実行された場合に、前記コンピュータに請求項1または2のうちの一項に記載の前記方法を実施させる命令を備える、コンピュータプログラム製品。
【請求項13】
膜(3)と、前記膜(3)を励起するためおよび/または前記膜(3)の振動を検出するための励起器素子(4)と、を備える超音波センサ(2)と、
校正データを記憶するための記憶ユニット(9)であって、前記校正データは、異なる膜温度における膜励起周波数に依存する、送信方向(SD)における前記超音波センサ(2)の第1周波数応答(FR1)に関する情報と、異なる膜温度における膜振動周波数に依存する、受信方向(RD)における前記超音波センサ(2)の第2周波数応答(FR2)に関する情報と、を含む、記憶ユニット(9)と、
現在膜温度を決定するための温度決定ユニット(11)と、
前記現在膜温度における前記第1周波数応答(FR1)と、前記現在膜温度における前記第2周波数応答(FR2)とを使用して前記超音波センサの感度を決定するための感度決定ユニット(18)と、
前記励起器素子(4)に供給される電流および/または前記超音波センサ(2)のゲインを、決定された前記感度と事前記憶された感度との差に基づいて制御するための制御ユニット(8)と、
を備え
、
前記感度決定ユニット(18)は、前記現在膜温度における前記第1周波数応答と前記現在膜温度における前記第2周波数応答との差に周波数依存重み付け係数を乗じた積分を計算し、前記積分は、対象周波数帯域幅に亘って実施される、
超音波センサシステム(1)。
【請求項14】
障害物までの距離を決定するための請求項
13に記載の超音波センサシステム(1)を備える車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサを操作するための方法、コンピュータプログラム製品、超音波センサシステム、およびこのような超音波センサシステムを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波センサを車両において使用して、車両と車両の周囲に位置する物体との間の距離を決定することができる。このような超音波センサは、ハウジングと、ハウジングの開口に配置された超音波膜と、を備え得る。超音波センサは、パルス‐エコー法に従って車両の周囲の物体までの距離を測定するために使用され得る。このプロセスにおいて、超音波膜は、これに取り付けられた励起器素子により励起され、エネルギーを超音波信号の形態で発する。そして、励起器素子が、車両の環境から戻るエコー信号によって生じる超音波膜の振動を検出する。物体までの距離は、信号伝搬時間に基づいて決定される。このような測定は、例えば、自動車の駐車支援システムで利用される。温度が超音波センサの感度に影響を及ぼすことが知られている。
【0003】
DE 10 2012 002979 A1は、上述の超音波センサを示す。超音波センサの周囲温度に依存する信号伝搬時間を補償するため、励起器素子として温度依存性発振器が使用されている。
【0004】
DE 10 2009 039 083 A1において、超音波センサの周囲温度は、膜の超音波振動を観察し、これを基準値と比較することにより決定される。
【0005】
DE 10 2012 215 493 A1に記載の超音波センサは、温度センサを含んでいる。エコー信号が認識される閾値の異なる値が、温度センサが測定する異なる温度値に対して設定される。
【0006】
US 2007/0157728 A1において、温度補正は、周囲温度に基づいている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の1つの目的は、超音波センサを操作するための方法を改善することである。
【0008】
第1態様によれば、超音波センサ、特に車両の超音波センサを操作するための方法が提供される。前記超音波センサは、膜と、前記膜を励起するためおよび/または前記膜の振動を検出するための励起器素子と、を備える。前記方法は、
校正データを記憶する記憶ユニットから前記校正データを取得するステップであって、前記校正データは、異なる膜温度における膜励起周波数に依存する、送信方向における前記超音波センサの第1周波数応答に関する情報と、異なる膜温度における膜振動周波数に依存する、受信方向における前記超音波センサの第2周波数応答に関する情報と、を含むステップと、
現在膜温度を決定するステップと、
前記現在膜温度における前記第1周波数応答と前記現在膜温度における前記第2周波数応答とを使用して、前記超音波センサの感度(決定感度)を決定するステップと、
前記励起器素子に供給される電流および/または前記超音波センサのゲインを、決定された前記感度と事前記憶された感度との差に基づいて制御するステップと、
を備える。
【0009】
励起器素子に供給される電流および/または超音波センサのゲインを制御するステップにより、所定信号経路に対する超音波センサの感度を調整することができる。特に、感度を、目標感度であり得る事前記憶された感度に近づける、または到達するように修正することができる。有利には、感度を温度に依存する態様において調整することで、感度調整の精度を高めることができる。送信方向における伝達関数の温度依存性および/または受信方向における伝達関数の温度依存性を、それぞれ補償することができる。堅牢な温度補償が、膜温度スペクトル全体に亘って達成される。
【0010】
超音波センサは、車両において、車両と車両の周囲に位置する物体との間の距離を決定するように使用され得る。車両は、車、トラック、バス、電車、飛行機等の乗客用車両として具体化され得る。超音波センサは、自動車の駐車支援システムの一部であり得る。
【0011】
超音波センサは、ハウジングと、ハウジングの開口に配置された超音波膜(「膜」とも称する)と、を備え得る。超音波センサは、パルス‐エコー法に従って車両の環境における物体までの距離を測定するために使用され得る。このプロセスにおいて、超音波膜は、これに取り付けられた励起器素子により励起され、エネルギーを超音波信号の形態で発する。そして、励起器素子が、車両の環境における物体から戻るエコー信号からの超音波膜の振動を検出する。物体までの距離は、信号伝搬時間に基づいて決定される。
【0012】
膜の温度(「膜温度」とも称する)は、膜の特性を変化させるため、超音波センサの感度に影響を及ぼし得る。別の表現をすれば、周波数に対するゲインとして表される超音波センサの伝達関数は、温度に応じて変化する。
【0013】
超音波センサを校正するために、膜の温度が決定される。膜の温度は、膜に直接的に取り付けられた温度センサを使用することなく、計算により決定され得る。膜の温度は、膜に固有の温度であり、特に周囲温度、室温、超音波センサの周囲の温度等には対応しない。膜の正確な温度を決定することにより、膜の特性の温度依存性をより良好に補償することができる。有利には、感度の温度依存性が補償され得る。
【0014】
「現在温度」という表現は、特定の時点における膜の真の温度または実際の温度を指す。現在温度は、連続的に決定する必要はなく、所定の時間間隔で、例えば1分毎、数分毎等に決定すればよい。
【0015】
校正データを取得するステップ、現在温度を決定するステップ、決定感度を決定するステップ、および/または励起器素子に供給される電流および/または超音波センサのゲインを制御するステップは、好適には、超音波センサの校正プロセス(校正フェーズ)の一部である。校正プロセスは、超音波センサをその動作プロセス(動作フェーズ)で使用する前に実施される。
【0016】
校正データは、記憶ユニットに事前記憶されたデータであり得る。第1周波数に関する情報は、各温度についての異なる曲線または表として記憶され得る。第2周波数に関する情報は、各温度についての異なる曲線または表として記憶され得る。好適には、校正データは、各超音波センサに対して個別に決定される。校正データは、対応する超音波センサに固有のものであり得る、および/または信号経路(以下でさらに説明する)に固有のものであり得る。これにより、感度を決定し調整できる精度が向上する。
【0017】
膜励起周波数の関数としての(膜励起周波数に依存する)、送信方向における超音波センサの第1周波数応答は、超音波センサの伝達関数が送信方向において周波数および温度に応じてどのように変化するかを示し得る。送信方向において、伝達関数は、膜の出力が励起器素子からの励起周波数に応じてどのように変化するかを示し得る。第1周波数応答は、後述するように、室温における基準周波数応答で除算される場合、デシベル(dB)または無次元で表され得る。周波数は、ヘルツまたはキロヘルツ(HzまたはkHz)で表され得る。温度は、摂氏(℃)で表され得る。送信方向は、超音波センサが超音波信号を送信する方向である。
【0018】
膜励起周波数の関数としての(膜励起周波数に依存する)、受信方向における超音波センサの第2周波数応答は、超音波センサの伝達関数が受信方向において周波数および温度に応じてどのように変化するかを示し得る。受信方向において、伝達関数は、励起器素子で受信する信号が膜振動周波数に応じてどのように変化するかを示し得る。第2周波数応答は、後述するように、室温における基準周波数応答で除算される場合、デシベル(dB)または無次元で表され得る。周波数は、ヘルツまたはキロヘルツ(HzまたはkHz)で表され得る。温度は、摂氏(℃)で表され得る。受信方向は、超音波センサが超音波信号、特に膜により事前に送信されて物体で反射して戻る超音波信号からのエコーを受信する方向である。
【0019】
現在膜温度における第1周波数応答は、好適には、決定された現在膜温度に対応する周波数依存第1周波数応答(校正データに、曲線または表として、または曲線または表に記憶されている)を含む。現在膜温度における第2周波数応答は、好適には、決定された現在膜温度に対応する周波数依存第2周波数応答(校正データに、曲線または表として、または曲線または表に記憶されている)を含む。
【0020】
超音波センサの感度は、特に、送信方向における伝達関数(第1周波数応答により表される)と受信方向における伝達関数(第2周波数応答により表される)との差に所定の重み付け係数を乗じた積分を指す。積分は、感度について、(周波数)帯域幅全体に亘って、または対象(周波数)帯域幅に亘って実施される。
【0021】
決定感度は、超音波センサの現在感度であり得る。換言すれば、決定感度は、任意の時点および任意の(例えば現在の)膜温度における超音波センサの感度であり得る。
【0022】
事前記憶された感度は、例えば記憶ユニットまたは異なる記憶装置に事前設定または事前記憶された超音波センサの感度であり得る。事前記憶された感度は、目標感度であり得る。目標感度は、好適には、複数またはすべての信号経路について、特に同一タイプの複数またはすべての超音波センサについて、同一である。複数の信号経路および/または超音波センサについて同一の目標感度を有することは、これらのセンサすべてが、同一距離における同一物体を検出する際に同一の信号を出力するため、有利である。複数の超音波センサが出力した信号の分析が容易になる。
【0023】
電流は、制御ユニットにより修正され得る。制御ユニットは、決定された感度と事前記憶された感度との差の関数として、励起器素子への電流を変更する。励起器素子に供給される電流は、励起器素子がどのように膜を励起するかを示し得る。超音波センサが出力する超音波信号は、電流が変化するのに応じて変化し得る。電流を変化させることにより、超音波センサの出力、ひいてはその感度が修正され得る。好適には、電流は、決定された感度と事前記憶された感度との差を補償するように調整される。特に、決定された感度と事前記憶された感度との差が、電流を制御するステップにおいて低減される。「電流を制御する」ステップは、好適には、電流の修正(調整)を含む。
【0024】
例えば、決定された感度と事前記憶された感度との差が大きいほど、「制御」ステップにおける電流の修正は大きくなる。好適には、電流が調整される量は、決定された感度と事前記憶された感度との差に比例する。電流が調整される量は、表やグラフ等として記憶されたモデルにより提供され得る。特に、モデルは、Xデシベルのゲイン(感度における任意の変化に対応する)がYアンペアの変化により達成できることを示し得る。
【0025】
複数の超音波センサが配置されている場合、第1超音波センサの励起器素子に供給される電流を修正することは、任意の超音波センサが第1超音波センサから受信する信号を修正する。したがって、電流を修正することは、個々の信号経路の感度を調整することはできず、複数の信号経路の感度を調整するだけである(1つの信号経路は、送信機から受信器までの経路に対応する)。通常、電流を修正することにより、感度を大まかに調整することができる。
【0026】
ゲインは、特にデジタルゲインである。ゲインを修正することは、超音波センサの出力信号、すなわち受信信号の振幅に所定の定数を乗算することに対応し得る。超音波センサ、特に個々の信号経路の(デジタル)ゲインは、制御ユニット(ASICであり得る)のゲイン調整部により直接的に調整され得る。超音波センサが出力した超音波信号は、ゲインの変化に応じて変化し得る。ゲインを変化させることにより、超音波センサの出力、ひいてはその感度が修正され得る。好適には、ゲインは、決定された感度と事前記憶された感度との差を補償するように調整される。特に、決定された感度と事前記憶された感度との差が、ゲインを制御するステップにおいて低減される。「ゲインを制御する」ステップは、好適には、ゲインの修正(調整)を含む。
【0027】
例えば、決定された感度と事前記憶された感度との差が大きいほど、「制御」ステップにおけるゲインの修正は大きくなる。好適には、ゲインが調整される量は、決定された感度と事前記憶された感度との差に比例する。ゲインが調整される量は、表やグラフ等として記憶されたモデルにより提供され得る。特に、モデルは、Mヘルツの感度変化がNデシベルの変更により達成できることを示し得る。
【0028】
ゲインは、各信号経路について個別に修正され得る。この結果、ゲイン調整により、各超音波センサについて、特に各信号経路について、感度の微調整が可能となる。
【0029】
ゲイン調整のみで、超音波センサの任意の感度が達成され得る。ただし、大きく(例えば、3dBよりも大きく)ゲインを修正すると、逆にノイズが増加する。電流およびゲインの両方を利用して決定された感度と事前記憶された感度との差を補償することにより、ノイズを低く抑えつつ、感度を(電流調整により)十分な量および(ゲイン調整を利用して)十分な精度で調整することができる。制御するステップが、電流の制御およびゲインの制御の両方を含む場合、好適には、電流の制御はゲインの制御の前に実施される。
【0030】
一実施形態によれば、前記励起器素子に供給される前記電流および/または前記超音波センサの前記ゲインは、決定された前記感度と事前記憶された前記感度との前記差を補償するように制御される。
【0031】
特に、励起器素子に供給される電流および/または超音波センサのゲインは、第1周波数応答および第2周波数応答を励起器素子に供給される電流および/または超音波センサのゲインの調整後に再び測定した場合、第1周波数応答および第2周波数応答の新たな測定値に基づいて決定された新たな決定感度が、励起器素子に供給される電流および/または超音波センサのゲインの調整前に決定された決定感度よりも事前記憶された感度に近くなるように制御される。
【0032】
別の実施形態によれば、前記方法は、前記膜励起周波数、および/または、前記超音波センサが前記膜の前記振動を検出するように設定された検出周波数領域を、取得した前記校正データと決定された前記現在膜温度とに基づいて制御するステップをさらに含む。
【0033】
これにより、送信方向における伝達関数の温度依存性および/または受信方向における伝達関数の温度依存性が、周波数に依存した態様においてそれぞれ補償され得る。有利には、膜励起周波数の温度依存性および/または検出周波数領域の温度依存性が、それぞれ補償され得る。
【0034】
膜励起周波数および/または検出周波数を制御するステップは、好適には、超音波センサをその動作プロセスで使用する前に実施される、超音波センサの校正プロセスの一部である。
【0035】
膜励起周波数は、励起器素子が膜を励起させて超音波信号を送信する周波数であり得る。
【0036】
膜励起周波数の制御は、励起器素子が膜を励起する励起周波数を制御および/または変更することに対応する。膜励起周波数は、好適には、現在膜温度について超音波センサの感度が送信方向において最大化されるように制御される。特に、膜励起周波数は、現在温度について第1周波数応答が最高となる励起周波数に一致するように修正される。これにより、送信方向における超音波センサの動作が改善される、特に最適化される。
【0037】
検出周波数領域は、超音波センサが受信エコー信号を検出するように現在設定されている領域であり得る。特に、励起器素子は、膜で受信した信号を電気信号に変換し得る。励起器素子は、特定の検出周波数領域における信号のみを選択するフィルタを含み得る。
【0038】
検出周波数領域を制御することは、励起器素子が現在信号を検出している検出周波数領域を制御および/または変更することに対応し得る。検出周波数領域は、好適には、超音波センサの感度が、現在膜温度について受信方向において最大化されるように制御される。特に、検出周波数領域は、決定された現在温度について第2周波数応答が最高となる励起周波数を含むおよび/またはこれに一致するように修正される。これにより、受信方向における超音波センサの動作が改善される、特に最適化される。
【0039】
別の実施形態によれば、決定前記決定感度を決定するステップは、前記現在膜温度における前記第1周波数応答と前記現在膜温度における前記第2周波数応答との差に周波数依存重み付け係数を乗じた積分を計算するステップを含み、前記積分は、対象周波数帯域幅に亘って実施される。
【0040】
換言すれば、感度は、以下の積分を実施することにより計算される:∫[FR1(f)-FR2(f)]*h(f)df。ここで、fは周波数であり、FR1(f)は周波数依存第1周波数応答であり、FR2(f)は周波数依存第2周波数応答であり、h(f)は周波数依存重み付け係数である。重み付け係数は、対象帯域幅に対して事前に計算される。例えば、対象帯域幅は、超音波センサの低チャープ(44~50kHz)または高チャープ(52~58kHz)に対応する。重み付け係数は、異なる対象帯域幅に応じて異なり得る。
【0041】
別の実施形態によれば、
前記超音波センサの前記第1周波数応答は、所定信号経路についての送信方向における前記超音波センサの第1周波数応答であり、
前記超音波センサの前記第2周波数応答は、前記所定信号経路についての受信方向における前記超音波センサの第2周波数応答であり、
前記超音波センサの感度を決定するステップは、前記所定信号経路の前記感度を決定するステップに対応する。
【0042】
特に1つの信号経路は、送信機から受信器までの経路(同一の超音波センサ内、または異なる超音波センサからの送信機と受信機との間)に対応する。超音波信号を送信する膜は、送信機を形成し得る。超音波信号を受信する膜は、受信機を形成し得る。
【0043】
別の実施形態によれば、前記方法は、
前記膜励起周波数を変更しつつ送信方向における前記超音波センサの前記第1周波数応答を測定するとともに、これらの測定を異なる膜温度において実施することにより、および/または、前記膜振動周波数を変更しつつ受信方向における前記超音波センサの前記第2周波数応答を測定するとともに、これらの測定を異なる膜温度において実施することにより、前記校正データを実験により決定するステップをさらに備える。
【0044】
送信方向における周波数応答を決定するために、超音波センサから所定の距離を置いて配置された測定マイクロホンを使用することができる。マイクロホンは、送信方向において膜が発した超音波信号の強度を検出し得る。マイクロホンは、超音波信号強度を検出する。この間、膜の励起周波数を、所定の周波数範囲に亘って特に連続的または段階的に変更する。このような周波数の掃引または変更は、例えば気候チャンバを使用して異なる温度で繰り返すことができる。異なる周波数および温度において検出された超音波信号強度は、第1周波数応答に対応し得る、または第1周波数応答を決定するように使用され得る。
【0045】
受信方向における周波数応答を決定するために、超音波センサから所定の距離を置いて配置された拡声器を使用することができる。拡声器は、エコーをシミュレーションする基準超音波信号であって、受信方向において膜に受信される基準超音波信号を発し得る。励起器素子は、膜で検出された超音波信号強度を検出する。この間、拡声器が発した基準超音波信号の周波数を、所定の周波数範囲に亘って特に連続的または段階的に変更する。このような周波数の掃引は、例えば気候チャンバを使用して異なる温度で繰り返すことができる。異なる周波数および温度において検出された超音波強度は、第2周波数応答に対応し得る、または第2周波数応答を決定するように使用され得る。
【0046】
さらなる実施形態によれば、膜励起周波数および/または膜振動周波数を、校正データを実験により決定するステップにおいて、10kHz~100kHzの間、特に40~70kHzの間、特に42~62kHzの間で変更する。
【0047】
膜励起周波数および/または膜振動周波数は、特に周波数掃引を実施することにより、連続的な態様で変更され得る。代替的に、周波数応答は、膜励起周波数および/または膜振動周波数の離散的な値、例えば1、2、または5kHzずつ増分する値についてのみ測定してもよい。校正データは、特に40~70kHz、より具体的には42~62kHzの間の種々の膜励起周波数および/または膜振動周波数についての第1周波数応答および/または第2周波数応答に関する情報を含み得る。
【0048】
さらなる実施形態によれば、校正データは、特に5℃または10℃ずつ増分する-40℃から90℃の間または-30°から80℃の間の種々の温度に対する第1の周波数応答および/または第2の周波数応答に関する情報を含む。
【0049】
校正データを実験により決定するステップにおいて、上述の周波数応答測定が、上述の範囲において上述のように増分する異なる温度に対して実施され得る。
【0050】
さらなる実施形態によれば、膜の現在温度を決定するステップ、および、励起器素子に供給される電流、超音波センサのゲイン、膜励起周波数、および/または検出周波数領域を制御するステップは、超音波センサ、特に同一の超音波センサの動作フェーズ中に複数回実施される。
【0051】
動作フェーズは、超音波センサが特に遮断されることなく物体までの距離を決定するために使用される期間であり得る。詳細には、超音波センサを、膜温度の変化に応じて再校正することで、良好なセンサ感度が維持され得る。同一の校正データが、校正の各々に使用できることで、校正の手間が省かれる。
【0052】
さらなる実施形態によれば、膜の現在温度を決定するステップ、および、励起器素子に供給される電流、超音波センサのゲイン、膜励起周波数、および/または検出周波数領域を制御するステップは、超音波センサの動作フェーズ中に一定の時間間隔で、特に、1分毎、2分毎、5分毎、または10分毎に実施される。
【0053】
これらを、1時間に2回、1時間毎等に実施してもよい。膜の現在温度を決定するステップ、および、励起器素子に供給される電流、超音波センサのゲイン、膜励起周波数、および/または検出周波数領域を制御するステップを一定の時間間隔で実施することは、超音波センサの校正を現在温度が変化するのに応じて調整できる点で有利である。これにより、超音波センサの感度を高く維持することができる。
【0054】
さらなる実施形態によれば、前記校正データは、表として前記記憶ユニットに記憶される。
【0055】
校正データを表として記憶することは、記憶スペースがほとんど必要ないため便利である。
【0056】
さらなる実施形態によれば、
前記第1周波数応答は、異なる前記膜温度の各々について、所定の膜温度での前記送信方向における前記超音波センサの周波数応答と室温での前記送信方向における前記超音波センサの周波数応答との比を含む、および/または、
前記第2周波数応答は、異なる前記膜温度の各々について、所定の膜温度での前記受信方向における前記超音波センサの周波数応答と前記室温での前記受信方向における前記超音波センサの周波数応答との比を含む。
【0057】
室温とは、20℃の膜温度を示し得る。
【0058】
第2態様によれば、コンピュータプログラム製品であって、前記プログラムがコンピュータにより実行された場合に、前記コンピュータに第1態様による前記方法、または第1態様の実施形態による前記方法を実施させる命令を備える、コンピュータプログラム製品が提供される。
【0059】
コンピュータプログラム手段等のコンピュータプログラム製品は、メモリカード、USBスティック、CD-ROM、DVDとして、またはネットワーク内のサーバからダウンロードされるファイルとして具現化され得る。例えば、このようなファイルは、コンピュータプログラム製品を構成するファイルを無線通信ネットワークから転送することによって提供され得る。
【0060】
第3態様によれば、超音波センサシステムが提供される。超音波センサシステムは、
膜と、前記膜を励起するためおよび/または前記膜の振動を検出するための励起器素子と、を備える超音波センサと、
校正データを記憶するための記憶ユニットであって、前記校正データは、異なる膜温度における膜励起周波数に依存する、送信方向における前記超音波センサの第1周波数応答に関する情報と、異なる膜温度における膜振動周波数に依存する、受信方向における前記超音波センサの第2周波数応答に関する情報と、を含む、記憶ユニットと、
前記膜の現在温度を決定するための温度決定ユニットと、
前記現在膜温度における前記第1周波数応答と、前記現在膜温度における前記第2周波数応答とを使用して前記超音波センサの感度(決定感度)を決定するための感度決定ユニットと、
前記励起器素子に供給される電流および/または前記超音波センサのゲインを、決定された前記感度と事前記憶された感度との差に基づいて制御するための制御ユニットと、
を備える。
【0061】
記憶ユニット、温度決定ユニット、感度決定ユニット、および/または制御ユニットは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアとして実現され得る。温度決定ユニット、感度決定ユニット、および/または制御ユニットは、単一のASIC(特定用途向け集積チップ)で提供され得る。超音波センサシステムは、第1態様による前記方法、または第1態様の実施形態による前記方法を実施するように構成され得る。第1態様の方法を参照して説明した実施形態および特徴は、第3態様による超音波システムに準用される。
【0062】
第4態様によれば、障害物(または物体)までの距離を決定するための第3態様による超音波センサシステムを備える車両が提供される。
【0063】
第3態様の超音波センサシステムを参照して説明した実施形態および特徴は、第4態様による超音波システムに準用される。
【0064】
本発明のさらに可能な実施例または代替解決策は、実施態様に関して上述した、または後述する特徴の組み合わせ(本明細書では明示的に言及しない)も包含する。また、当業者は、本発明の最も基本的な形態に、個別または個々の態様および特徴を追加することもできる。
【0065】
本発明のさらなる実施形態、特徴および利点は、添付の図面と併せて参照される以下の説明および従属請求項から明瞭になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図3】
図3は、送信方向における周波数応答の実験による決定を示す。
【
図4】
図4は、-40℃における第1周波数応答と室温における第1周波数応答との比の関係を周波数に応じて示す。
【
図5】
図5は、第1周波数応答に関する情報を含む校正データの一例を示す。
【
図6】
図6は、受信方向における周波数応答の実験による決定を示す。
【
図7】
図7は、第2周波数応答に関する情報を含む校正データの一例を示す。
【
図8】
図8は、第1実施形態による超音波センサを操作するための方法を示す。
【
図9】
図9は、励起器素子に供給される電流および/または超音波センサのゲインを調整するための表の一例を示す。
【
図10】
図10は、第2実施形態による超音波センサを操作するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図面において、特に断りのない限り、同様の参照符号は、同様または機能的に等価な要素を指す。
【0068】
図1は、超音波センサシステム1を含む車両100を示す。車両100は、車である。
図1の配向において、超音波センサシステム1は、車両100の右側に配置されている。超音波センサシステム1は、車両100の右側の障害物または物体までの距離を決定するように構成されている。このような障害物または物体までの距離を把握することは、駐車時および/または車両100が部分的または全体的に自律運転している場合に、ドライバーを支援するために特に有用である。
【0069】
超音波センサシステム1を、
図2においてより詳細に示す。超音波センサシステム1は、プラスチック材料から構成されるハウジング15を含んでいる。超音波センサシステム1の一側に(
図2の配向において下側に)、ハウジング15は、超音波膜3が配置される開口17を含んでいる。膜3は、超音波信号を送信および受信するように構成されている。
【0070】
膜3は、これに接続するピエゾ素子である励起器素子4を有している。励起器素子4は、特定の電流を有する電気信号を受信し、これに応じて膜3を機械的に励起するように構成されている。さらに、励起器素子4は、膜3から振動を受け、これを電気信号に変換するように構成されている。膜3と励起器素子4とが、超音波センサ2を形成している。
【0071】
超音波センサ2は、デュアルチャープ広帯域信号を使用する。信号振幅が膜3の温度に対して一定であることを保証するために、温度に対する伝達関数の挙動を適切にモデル化する必要がある。これについては、以下で説明する。
【0072】
超音波センサシステム1の内部5において、超音波センサシステム1は、印刷回路基板(PCB)7をさらに含んでいる。PCB7上に、制御ユニット8、記憶ユニット9、温度決定ユニット11、および感度決定ユニット18が配置されている。ユニット8、9、11、18は、ASICに埋設され得る。これらのユニット8、9、11、18の機能については、以下で説明する。PCB7は、接続要素6を介して励起器素子4に接続し、これに電気信号を送信する、および/またはこれから電気信号を受信する。接続要素6は、
図2の例においてワイヤである。
【0073】
記憶ユニット9は、校正データを記憶するように構成されている。校正データは、超音波センサ2が、送信方向SDにおける異なる温度での異なる膜励起周波数に対してどのように応答するか、また超音波センサ2が、受信方向RDにおける異なる温度での異なる膜励起周波数に対してどのように応答するかを示す。校正データの内容およびその実験による決定について、
図3~
図7を参照して説明する。
【0074】
図3は、送信方向SDにおける超音波センサの周波数応答を実験により決定するための機構を示す。この実験による決定は、以下に説明するように、校正データに含まれる第1周波数応答FR1を決定するために使用される。第1周波数応答FR1は、周波数に依存する。
【0075】
図3に示すように、マイクロホン16が、超音波センサシステム1の前方に距離dを置いて配置されている。マイクロホン16は、送信方向SDに沿って膜3が発する超音波信号10の伝搬経路にあるように配向されている。
図3の機構は、膜3の温度を変化させるための気候チャンバ(図示せず)内に配置される。
【0076】
マイクロホン16は、マイクロホン16に到達する超音波信号10の強度(例えば、デシベルの単位)を決定するために使用される。膜3の励起周波数は、励起器素子4への電気信号を変化させることにより変化する。換言すれば、送信方向SDにおける超音波センサ2の周波数応答FRは、温度および周波数の関数として測定される。この測定は、各超音波センサ2に対して異なる温度(本例において-40℃~80℃の間で20℃ずつ増分)で個別に繰り返される。
図3の例において、周波数は、42~62kHzの間で連続的に変化させている。
【0077】
この結果、各離散温度値について
図4に示すような曲線が得られる。
図4は、-40℃の場合の曲線である。詳細には、
図4は、-40℃における第1周波数応答FR1(FR1(-40℃))と室温RTにおける膜3の第1周波数応答FR1(FR1(RT))との比(縦軸に示され、無次元である)が、膜3の励起周波数(横軸に示され、kHzで表される)が変化するにつれてどのように変化するかを示している。ここでの「室温」RTは、20℃の膜温度を指す。
【0078】
図4において、異なる曲線が、膜励起周波数の関数としてのFR1(-40℃)/FR1(RT)の4つの異なる測定値を表している。破線は、曲線の中央値14を示す。
【0079】
図5は、測定が実施された離散温度の各々について、FR1(T)/FR1(RT)のこのような中央値14を示す。
図5に示すグラフは、送信方向SDにおける超音波センサ2の第1周波数応答FR1を示すものであり、校正データの一部として記憶ユニット9に記憶される。
【0080】
同様の実験による決定が、受信方向RDにおける第2周波数応答FR2を決定するために実施され得る。このために、
図6の実験的機構が使用される。
図6に示すように、拡声器12が、超音波センサシステム1の前方に距離d(距離dは、
図3の距離dと等しくても異なっていてもよい)を置いて配置されている。拡声器12は、受信方向RDに沿って拡声器12が発する超音波基準信号13が、超音波センサシステム1の膜3に到達するように配向されている。
図3の機構は、膜3の温度を変化させるための気候チャンバ(図示せず)内に配置される。
【0081】
基準信号13の受信時の膜3の振動に応答して励起器素子4が発する電気信号が分析されて励起器素子4に到達する超音波信号13の強度(例えば、デシベルの単位)が決定される一方で、基準信号13の周波数を拡声器12により変化させることで膜振動周波数が変化している。換言すれば、受信方向RDにおける超音波センサ2の第2周波数応答FR2は、温度および周波数の関数として測定される。この測定は、各個々の超音波センサに対して異なる温度(本例において-40℃~80℃の間で20℃ずつ増分)で繰り返される。
図6の例において、周波数は、42~62kHzの間で連続的に変化させている。
【0082】
図4および
図5と同様に、
図6の実験結果は、
図7に示す第2周波数応答FR2であり、これは、校正データの一部として記憶ユニット9に記憶される。詳細には、
図7は、受信方向における離散温度のうちの1つでのセンサ2の第2周波数応答FR2(FR2(T))と受信方向における室温(20℃)での第2周波数応答FR2(FR2(RT))との比の中央値14を、周波数の関数として示す。
【0083】
第1周波数応答FR1および第2周波数応答FR2の実験による決定は、それ自身の校正データを決定するために、各超音波センサ2に対して1回だけ実施される。記憶された校正データは、常に超音波センサ2の感度を向上させるべく、直接的に利用することができる。超音波センサシステム1を用いた超音波センサ2の校正について、
図8を参照して以下に説明する。
【0084】
詳細には、
図8のステップS1において、記憶ユニット9から校正データを取得する。具体的には、制御ユニット8が、
図5および
図7のグラフを含む校正データを受信する。
【0085】
ステップS1の後、ステップ1の間、またはステップS1の前に実施され得る
図8のステップS2において、温度決定ユニット11が、膜3の現在温度を決定する。これは、数学的に、および/または温度センサを使用してなされ得る。次いで、膜3の決定温度は、制御ユニット8に送信される。
【0086】
ステップ3において、感度決定ユニット18が、現在膜温度における第1周波数応答FR1と現在膜温度における第2周波数応答FR2とを使用して、超音波センサ2の決定感度を計算する。詳細には、感度決定ユニット18は、現在膜温度における第1周波数応答FR1と現在膜温度における第2周波数応答FR2との差に重み付け係数を乗じた積分を計算する。積分は、例えば44~50kHz(低チャネルチャープ)の間の対象周波数帯域幅に亘って実施される。
【0087】
換言すれば、感度決定ユニット18は、ステップS2で決定された現在膜温度における
図5および
図7に記憶された校正データを使用して、決定感度を、∫(FR1(f)-FR2(f))*h(f)dfであるとして計算する。ここで、fは周波数であり、FR1(f)およびFR2(f)は第1周波数応答FR1および第2周波数応答FR2に対応するとともにその周波数依存性を明確に示し、h(f)は重み付け係数である。重み付け係数は、対象帯域幅に対して事前に計算される。
【0088】
ステップS4において、制御ユニット8は、感度が900Hzであると計算する。次いで、制御ユニット8は、励起器素子4に供給される電流および/または超音波センサ2のゲインを調整して、ステップS3から決定された感度と事前記憶された感度との差を補償する。換言すれば、制御ユニット8は、励起器素子4に供給される電流および/または超音波センサ2のゲインを調整して、超音波センサ2の感度と事前記憶された感度との差を小さくする。
【0089】
ステップS3から決定された感度が事前記憶された感度よりも低い場合、制御ユニット8は、励起器素子4への電流を増加させるため、感度の増加がもたらされる。同様に、ステップS3から決定された感度が事前記憶された感度よりも高い場合、制御ユニット8は、励起器素子4への電流を減少させるため、感度の減少がもたらされる。
【0090】
感度をより正確に同調させるために、制御ユニット8は、制御ユニット8に設けられたゲイン調整ユニットの設定を直接的に変更することにより、超音波センサ2の各信号経路のゲインを個別に調整する(増加させる、または減少させる)。
【0091】
このように、超音波センサ2の感度は、超音波センサ2の感度と事前記憶された感度との差が減少するように、好適には、超音波センサ2の感度と事前記憶された感度とが互いに等しくなるまで調整される。
【0092】
電流および/またはゲインを調整するために、制御ユニット8は、
図9に示す、記憶ユニット9に記憶された表を参照し得る。
図9の表は、ステップS3から決定された感度に応じて制御ユニット8が実施すべき電流および/またはゲインに対する修正の量を示す。
図9の例において、目標感度(事前記憶された感度)は、1000Hz(1kHz)である。
【0093】
図9の表は、ステップS3から決定された各決定感度について(
図9の左欄)、目標感度を達成するために制御ユニット8が実施すべき電流修正量および/またはゲイン修正量を示す。
【0094】
図9の表は、励起器素子4に供給される電流の修正および/またはゲインの修正により、どのように第1周波数応答FR1および第2周波数応答FR2、ひいては超音波センサ2の感度が修正されるかを観察することにより、事前に決定されている。
【0095】
制御ユニット8がステップS3において感度が900Hzであると決定した上記例においては、1000Hzの目標感度を達成するように、電流を0(ゼロ)mAまで増加させることにより調整し、ゲインを1dBまで追加することにより調整する。
【0096】
図10は、超音波センサ2で実施可能な超音波センサ2を操作するための方法のさらなる実施形態を示す。ステップS1~ステップS4は、
図8を参照して説明したステップS1~ステップS4と同一である。
【0097】
ステップS5において、制御ユニット8は、温度決定ユニット11から取得した膜温度と記憶ユニット9から受信した校正データとを使用して、超音波センサ2を制御する。詳細には、制御ユニット8は、膜3の励起周波数が膜3の決定温度において第1周波数応答FR1(
図5)が最も高くなる周波数に一致するように、膜3の励起周波数を制御する。これにより、超音波センサ2の高い感度が、送信方向SDにおいて達成される。
【0098】
さらに、制御ユニット8は、超音波装置2の検出周波数領域が膜3の決定温度において第2周波数応答FR2(
図5)が最も高くなる周波数に一致する、またはこの周波数を含むように、超音波装置2の検出周波数領域を制御する。これにより、超音波センサ2の高い感度が、受信方向RDにおいて達成される。
【0099】
本発明を好適な実施形態に従って説明したが、すべての実施形態において変更が可能であることが当業者に明瞭である。例えば、第1周波数応答FR1および第2周波数応答FR2をグラフとして記憶することに代えて、これらを、例えば各温度に対する最も高い周波数応答のみを含む表として校正データに記憶してもよい。第1周波数応答FR1および第2周波数応答FR2の実験による決定は、異なる周波数および/または温度範囲にわたって、および/または異なる周波数および/または温度増分において、多少異なる超音波センサ2を使用して実施することができる。
【0100】
1 超音波センサシステム
2 超音波センサ
3 膜
4 励起器素子
5 内部
6 接続要素
7 印刷回路基板
8 制御ユニット
9 記憶ユニット
10 超音波信号
11 温度決定ユニット
12 拡声器
13 基準信号
14 中央値
15 ハウジング
16 マイクロホン
17 開口
18 感度決定ユニット
100 車両
d 距離
FR1 第1周波数応答
FR2 第2周波数応答
RD 受信方向
RT 室温
SD 受信方向
S1~S5 方法ステップ