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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】建物の基礎構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/00 20060101AFI20241211BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
E02D27/00 Z
E02D27/01 102A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024036804
(22)【出願日】2024-03-11
(62)【分割の表示】P 2020116864の分割
【原出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2024056086
(43)【公開日】2024-04-19
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】益山 勝成
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-057759(JP,A)
【文献】特開2007-177570(JP,A)
【文献】特開平11-324323(JP,A)
【文献】特開昭62-059744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00
E02D 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外周に沿って立上がる外周立上部と、該外周立上部の内側に設けられた平坦なスラブ部とが一体に打設された建物の基礎構造であって、
打設された前記スラブ部の上面に、予め製造されたプレキャストコンクリート製の束部材が載置されており、
該プレキャストコンクリート製の束部材は、前記建物の垂直荷重を支える構造用、および、前記建物に作用される横方向の引張荷重を受けて前記スラブ部に伝えることで、前記建物の横方向の変位に対する防振を行わせる防振用の束とされており、
前記プレキャストコンクリート製の束部材は、上面および側面の少なくとも一方に、防振用の金具を取付けるインサート部材を一体に有しており、
前記プレキャストコンクリート製の束部材は、前記建物の床大梁の中央部で前記建物の垂直荷重を下から支持し、また、前記インサート部材に取付けられた防振用の前記金具で前記床大梁の中央部を挟み込んだ状態で前記建物に連結されると共に、前記スラブ部に対し、後施工アンカーによって締結固定されていることを特徴とする建物の基礎構造。
【請求項2】
請求項に記載の建物の基礎構造であって、
前記プレキャストコンクリート製の束部材は、防振用の前記金具を複数備えていることを特徴とする建物の基礎構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建物の基礎構造であって、
前記プレキャストコンクリート製の束部材の両側には、前記建物の前記床大梁に対して防振部材が宙に浮いた状態で設置され
前記プレキャストコンクリート製の束部材に対する前記各防振部材の設置位置は、前記プレキャストコンクリート製の束部材の中心と、前記外周立上部の外面との間の距離の1/2~1/5の範囲内であることを特徴とする建物の基礎構造。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の建物の基礎構造であって、
前記プレキャストコンクリート製の束部材は、下部における前記床大梁の延設方向と直交する方向の側面を、L型の固定プレートを介して、前記スラブ部に対し、前記後施工アンカーによって固定されていることを特徴とする建物の基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の基礎構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物は、その下部を基礎によって地面に支えられている。このような建物の基礎の構造(基礎構造)には、例えば、ベタ基礎などがある。ベタ基礎は、建物の外周に沿って立上がる外周立上部と、外周立上部の内側に設けられた平坦なスラブ部と、を少なくとも有している。スラブ部の内側には、建物の下部(に設けられた床大梁)を支えるために、外周立上部とは別の立上部分(例えば、内側の立上部)が必要になる。
【0003】
内側の立上部は、外周立上部やスラブ部と同時に打設形成されて、外周立上部とほぼ同じ高さを有してスラブ部の内側を複数に仕切るように延びるものとなっていた。また、例えば、特許文献1のように、別の立上部分として、ベタ基礎と一体の内側の立上部の代わりに、予め製造されたプレキャストコンクリート製の束部材をスラブ部に埋め込むことも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-195877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のベタ基礎では、コンクリートの打設時に、ベタ基礎の内側の立上部を、外周立上部やスラブ部と同時に一体に形成するようにしていた。そのため、スラブ部を一度打ちする場合、ベタ基礎の内側の立上部の位置や高さの調整を行うために、コンクリートの硬化前にベタ基礎の内部へ作業員が立入ることが必要になっていた。よって、スラブ部の一度打ちは容易ではなかった。
【0006】
これに対し、上記特許文献1に記載された建物の基礎構造では、予め製造されたプレキャストコンクリート製の束部材を、ベタ基礎のコンクリートの打設時に、スラブ部に埋設してスラブ部と一体化するようにしていたため、コンクリートの打設時において、プレキャストコンクリート製の束部材の位置や高さの調整に手間がかかるなどの問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に対して、本発明は、
建物の外周に沿って立上がる外周立上部と、該外周立上部の内側に設けられた平坦なスラブ部とが一体に打設された建物の基礎構造であって、
打設された前記スラブ部の上面に、予め製造されたプレキャストコンクリート製の束部材が載置されており、
該プレキャストコンクリート製の束部材は、前記建物の垂直荷重を支える構造用、および、前記建物に作用される横方向の引張荷重を受けて前記スラブ部に伝えることで、前記建物の横方向の変位に対する防振を行わせる防振用の束とされており、
前記プレキャストコンクリート製の束部材は、上面および側面の少なくとも一方に、防振用の金具を取付けるインサート部材を一体に有しており、
前記プレキャストコンクリート製の束部材は、前記建物の床大梁の中央部で前記建物の垂直荷重を下から支持し、また、前記インサート部材に取付けられた防振用の前記金具で前記床大梁の中央部を挟み込んだ状態で前記建物に連結されると共に、前記スラブ部に対し、後施工アンカーによって締結固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成によって、予め製造されたプレキャストコンクリート製の束部材をスラブ部の上に載置してベタ基礎の別の立上部分にすることでベタ基礎のスラブ部の一度打ちが容易になる。そして、プレキャストコンクリート製の束部材は、構造用の束として建物の床大梁の中央部で建物の垂直荷重を下から支持する。同時に、プレキャストコンクリート製の束部材は、防振用の束として、建物の床大梁の中央部を防振用の金具で挟み込んだ状態で建物に連結され、建物に作用される横方向の引張荷重を受けてスラブ部に伝えることで、建物の横方向の変位に対する防振を行わせる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態にかかる基礎構造を備えた建物の斜視図である。
図2】建物(ユニット建物)を構成する建物ユニットの斜視図である。
図3】(a)は実施例1における、図1のベタ基礎の平面図、(b)は(a)のベタ基礎の縦断面図である。
図4】(a)は図3(b)のプレキャストコンクリート製の束部材の側面図、(b)は図3(b)の鋼製束の側面図である。
図5】(a)はスペーサを備えたプレキャストコンクリート製の束部材の側面図、(b)は(a)の上面図である。
図6】(a)は別のスペーサを備えたプレキャストコンクリート製の束部材の側面図、(b)は(a)の上面図である。
図7】(a)は他のスペーサを備えたプレキャストコンクリート製の束部材の側面図、(b)は(a)の上面図である。
図8】実施例2における、ベタ基礎の縦断面図である。
図9】(a)は図8のプレキャストコンクリート製の束部材の側面図、(b)は図8の防振部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1図9は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例1】
【0012】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、住宅などの建物1を地面2に支えるために、地面2に基礎3を設ける。この建物1の基礎3の構造(基礎構造)を、ベタ基礎4とする。ベタ基礎4は、建物1の外周に沿って立上がる外周立上部5と、外周立上部5の内側に設けられた平坦なスラブ部6(図3)とを少なくとも有している。
【0014】
ここで、建物1は、どのようなものであっても良いが、この実施例では、ユニット建物としている。ユニット建物は、予め工場で製造した建物ユニット7を建築現場へ搬送して、建築現場で、予め形成された基礎3の上に建物ユニット7を組み立てることにより、短期間のうちに構築できるようにした建物1である。この実施例では、ユニット建物は、下階部分に4つの建物ユニット7を短辺方向に並べて設置した大きさの建物1となっている。ただし、ユニット建物の構成は、これに限るものではない。
【0015】
建物ユニット7は、ほぼ直方体状のものとされる。建物ユニット7には、鉄骨系のものと木質系のものとが存在している。鉄骨系の建物ユニット7は、図2に示すように、その骨格部分に、4本の柱11の上端部間を4本の天井梁12で矩形状に連結すると共に、4本の柱11の下端部間を4本の床大梁13で矩形状に連結してなるボックスラーメン構造のユニットフレーム14を有している。
【0016】
柱11には、例えば、金属製の角筒状部材が用いられる。床大梁13には、例えば、縦向きのウェブ部15の上下端部に平行な一対の横向きのフランジ部16,17を一体に有する、内向きC字断面の形鋼が用いられる。上下のフランジ部16,17は、ほぼ同じものとされる。天井梁12にも、床大梁13とほぼ同様の内向きC字断面の形鋼が用いられる。柱11と、天井梁12および床大梁13との間は、ジョイントピースを介して溶接によって接合される。
【0017】
地面2は、建物1を構築する敷地である。基礎3は、建物1の下部を地面2に支持するために、地面2に設けられる。ベタ基礎4は、基礎3の一種である。基礎3には、ベタ基礎4の他にも、スラブ部6のないほぼ立上部だけの布基礎などがある。
【0018】
外周立上部5は、図3に示すように、建物1を地面2よりも高い位置に支持するために、地面2やスラブ部6よりも高く形成された基礎3の外枠部分である。外周立上部5は、所要の幅を有して、建物1の周縁部にほぼ沿うように、連続した状態で設けられる。外周立上部5は、上端部にて建物1の外周部分(外壁部の位置)を支持する。外周立上部5の上端部には、建物1を固定するためのアンカーボルトや、建物1を位置決めするための位置決めピンなどが上方へ向けて突設される。また、外周立上部5の外側や内側には、必要に応じて、玄関や勝手口のアプローチや玄関土間となる土間コンクリート18a~18cが、外周立上部5やスラブ部6と一体に設けられる。
【0019】
スラブ部6は、外周立上部5の内側に、外周立上部5で囲まれた地面2全体を覆うように設けられる平面部分である。スラブ部6は、建物1の本体をほぼ平面投影した形状に形成される。そして、スラブ部6と、外周立上部5の上に設置した建物1の下部(下階の床部)との間には、床下空間19が形成される。
【0020】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えることができる。
【0021】
(1a)この実施例では、打設されたスラブ部6の上面6aに、予め製造されたプレキャストコンクリート製の束部材21が載置されている。
【0022】
ここで、「打設されたスラブ部6」は、プレキャストコンクリート製の束部材21を設置する前の段階で、スラブ部6が既に完成した状態になっていることを意味している。この実施例では、スラブ部6は、外周立上部5によって囲まれた面になっている。
【0023】
「スラブ部6の上面6a」は、基本的に、その内側に、ベタ基礎4と一体の内側の立上部のような、外周立上部5とほぼ同じ高さを有して床下空間19を複数に仕切るようなもののない、ほぼ全体が連続した一つの水平な面とされる。これにより、床下点検がし易くなると共に、床下機器を内側の立上部と干渉することなく設置することが可能になる。なお、上記したように、外周立上部5の内側に、上記した土間コンクリート18cなどのような構成が部分的に設けられている場合には、スラブ部6の上面6aは、土間コンクリート18cを除いた部分が、ほぼ同じ高さで連続したほぼ水平な面になる。
【0024】
プレキャストコンクリート製の束部材21は、ベタ基礎4(のスラブ部6や外周立上部5)とは別の部材として、敷地以外の場所でコンクリートを使って製造された束(コンクリート束)である。プレキャストコンクリート製の束部材21は、中実のものとされる。プレキャストコンクリート製の束部材21は、内部に鉄筋などの補強材を入れても良い。プレキャストコンクリート製の束部材21は、基本的に、上端面および下端面がほぼ水平な平坦面とされる。プレキャストコンクリート製の束部材21は、敷地以外の場所で製造されることによって、精度良く仕上げられている。
【0025】
プレキャストコンクリート製の束部材21は、外周立上部5(およびスラブ部6)の内側に対し、ベタ基礎4と一体の内側の立上部の代わりに別の立上部分として設置される。内側の立上部は、外周立上部5とほぼ同じ高さを有して床下空間19を複数の空間に仕切るような連続したものとなるのに対し、プレキャストコンクリート製の束部材21は、スラブ部6の上面6aに部分的に点在されて床下空間19を仕切ることのないものとなる。そして、別の立上部分として、内側の立上部の代わりに設置されるコンクリート製の部材は、プレキャストコンクリート製の束部材21のみとされ、プレキャストコンクリート製の束部材21は、ベタ基礎4のスラブ部6の内側に、(数量や位置を)限定された状態で、最小限の数だけ設けられる。
【0026】
束部材(または束)とは、スラブ部6の上面6aと建物1の下部との間に、内側の立上部の代わりに部分的に設置されて、建物1の下部(の床大梁13)をスラブ部6に支えさせる短い柱のことである。束部材は、基本的に、床下空間19(を構成する床大梁13の下側のフランジ部16までの高さ)とほぼ同じ高さに形成される。プレキャストコンクリート製の束部材21は、上下部で断面形状が等しい角柱状、または、上狭まりの角錐状とするのが好ましい。
【0027】
スラブ部6の上面6aに、予め製造されたプレキャストコンクリート製の束部材21が載置されているとは、プレキャストコンクリート製の束部材21が、スラブ部6の平坦な上面6aの上に載せられていることである。プレキャストコンクリート製の束部材21は、下部がスラブ部6に埋め込まれていない状態で設置される。そして、プレキャストコンクリート製の束部材21は、平坦な下端面が、スラブ部6の平坦な上面6aの上に直接または間接的に当接される。これにより、プレキャストコンクリート製の束部材21は、その下端部が、スラブ部6の上面6aと同じかそれよりも高い位置に位置されることになる。
【0028】
(1b)図4に示すように、プレキャストコンクリート製の束部材21は、構造用の束(A)とされても良い。
そして、スラブ部6の上面6aには、防振用の束として別に鋼製束31が載置されても良い。
【0029】
ここで、構造用の束(A)は、建物1の構造(または垂直荷重)を支えるための束のことである。また、防振用の束は、建物1に作用される横方向の引張荷重を受けて、スラブ部6に伝えることで、防振を行わせるための束のことである。
【0030】
鋼製束31は、金属製の束のことである。鋼製束31は、プレキャストコンクリート製の束部材21とは、別部材として設けられる。鋼製束31は、ほぼ上下に延びる棒状体または筒状体とされる。鋼製束31は、基本的に、床下空間19とほぼ同じ高さに形成される。鋼製束31は、棒状または筒状の鋼製束本体32で主に構成される。鋼製束31は、プレキャストコンクリート製の束部材21と比べて軽量でしかも高剛性であるため、防振用として設けるのには最適な束となる。また、鋼製束31は、比較的低コストで、取扱性が良く、施工精度の高いものとすることができる。鋼製束31は、ベタ基礎4のスラブ部6の内側に、(数量や位置を)限定された状態で、最小限の数だけ設けられる。
【0031】
そして、プレキャストコンクリート製の束部材21と鋼製束31は、構造用と防振用とに機能を分けて別々に設けられると共に、両方の機能がバランス良く得られるように、適宜組み合わせて用いられる。
【0032】
(2)図3に示すように、プレキャストコンクリート製の束部材21は、建物1と接続されていない状態で、建物1の床大梁13の中央部41に配置されても良い。
【0033】
ここで、建物1と接続されていない状態とは、プレキャストコンクリート製の束部材21の上に建物1が単純に乗っている、または、束部材21の上に建物1の下部が接しているだけの状態(縁が切れている状態)のことである。よって、建物1は、プレキャストコンクリート製の束部材21に対して横方向に変位することが可能になっている。
【0034】
床大梁13は、建物1の下部(に設けられる下階の床部)を構成する構造材のうち、最も大きなものである。建物ユニット7の場合、下階のユニットフレーム14の床大梁13が、そのまま下階の床部の構造材として使われる。
【0035】
床大梁13の中央部41は、床大梁13の延設方向42(または長手方向)のほぼ真中またはその周辺の部分のことである。プレキャストコンクリート製の束部材21は、床大梁13の真中の位置に設置するのが好ましいが、建物1(や建物ユニット7)の構成によっては、床大梁13の真中の位置から若干ズラせたほうが良い場合があるので、この実施例では、床大梁13の中央部41を、ほぼ真中またはその周辺としている。
【0036】
直方体状をした建物ユニット7の場合、床大梁13は、建物ユニット7の長辺と短辺に沿って長さの異なるものが二種類存在しているが、プレキャストコンクリート製の束部材21を設ける床大梁13は、中央部41がスラブ部6の内側に位置していれば、そのどちらでも良い。この実施例では、建物ユニット7の長辺側の床大梁13の延設方向42の中央部41に対し、プレキャストコンクリート製の束部材21を1箇所のみ設けて、スラブ部6の内側に位置する各床大梁13の中央部41を下から支持させるようにしている。
【0037】
そして、この実施例では、プレキャストコンクリート製の束部材21は、下階の4つの建物ユニット7が隣接する3箇所の合わせ部分の位置にそれぞれ設けられて、隣接する建物ユニット7の隣接する床大梁13の中央部41間を同時に下から支えるものとなっている。
【0038】
そのために、図4(a)に示すように、プレキャストコンクリート製の束部材21の横寸法43(この実施例では、床大梁13の延設方向42と直交する方向の幅寸法のこと)は、少なくとも隣接する床大梁13の間に形成される隙間44よりも大きくなっている。そして、この横寸法43は、隣接する床大梁13の下側の2つのフランジ部17の幅45と、上記隙間44とを足した寸法とほぼ同じか、それよりも狭くするのが好ましい。この実施例では、横寸法43は、床大梁13の下側のフランジ部17の1つ分の幅45とほぼ同じか、それよりも若干大きくして、隣接する床大梁13の下側の2つのフランジ部17をほぼ均等に支持させるようにしている。
【0039】
また、図3(b)に示すように、プレキャストコンクリート製の束部材21の縦寸法46(この実施例では、床大梁13の延設方向42の幅寸法のこと)は、上記した横寸法43とほぼ同じになっている。
【0040】
よって、プレキャストコンクリート製の束部材21の横断面形状は、ほぼ正方形状、または、正方形状の各コーナー部を角取りした(正方形に近い)ほぼ八角形状などとなっている(図5)。このような大きさにすることにより、プレキャストコンクリート製の束部材21の軽量化を図ることができ、プレキャストコンクリート製の束部材21のコストを下げると共に、取扱性を向上し、精度良く設置することができる。
【0041】
また、プレキャストコンクリート製の束部材21は、その高さを、床下空間19の高さよりも若干低くして、間に単数または複数枚のスペーサ47を入れて高さ調節できるようにしても良い。スペーサ47には、金属板や、樹脂板や、ゴム板などを使用することができる。スペーサ47に金属板を用いる場合、金属板には、耐食性を有する素材が使われる。スペーサ47は、予めプレキャストコンクリート製の束部材21に取付けておいても良いし、プレキャストコンクリート製の束部材21をスラブ部6に設置した後で、プレキャストコンクリート製の束部材21に取付けても良い。
【0042】
スペーサ47は、図5図6に示すように、プレキャストコンクリート製の束部材21の上端面の上側に取付けることもできるし、図7に示すように、プレキャストコンクリート製の束部材21の下端面の下側に取付けることもできる。スペーサ47は、接着剤48(図5図7)やアクリルテープなどの接着テープ49(図6)でプレキャストコンクリート製の束部材21に固定される。
【0043】
スペーサ47は、基本的に、プレキャストコンクリート製の束部材21の上端面とほぼ同じか、それよりも一回り小さい大きさおよび形状とされるが(図5)、スペーサ47をプレキャストコンクリート製の束部材21の下端面の下側に取付ける場合には、プレキャストコンクリート製の束部材21が安定するように、スペーサ47は、プレキャストコンクリート製の束部材21の下端面よりも一回り大きなものとするのが好ましい(図7)。また、スペーサ47を接着テープ49で取付ける場合、スペーサ47は、接着テープ49とほぼ同じ幅に形成して、接着テープ49の幅寸法内に収まるようにするのが好ましい(図6)。この場合、接着テープ49は、隣接する床大梁13間の隙間44よりも大きい幅のものを使用する。接着テープ49を貼る向きはどちらでも良いが、この実施例では、床大梁13の延設方向42に向けて貼付けるようにしている。
【0044】
そして、プレキャストコンクリート製の束部材21の下端面は、スラブ部6の上面に接着剤48で直接または間接的に固定される。これにより、プレキャストコンクリート製の束部材21は、スラブ部6に固定されて、床大梁13には固定されないものとなる。
【0045】
(3)図4(b)に示すように、鋼製束31は、建物1の床大梁13に対し、防振用の金具51によって床大梁13を挟み込んだ状態で連結されると共に、スラブ部6に対し、後施工アンカー52によって締結固定されても良い。
【0046】
ここで、防振用の金具51は、建物1に作用される横方向の引張荷重を受けるための金属製の部材のことである。防振用の金具51は、床大梁13を上下に挟み込んで固定するものとされる。防振用の金具51は、鋼製束31の上端部分に設けられる。
【0047】
そのために、鋼製束31の上端部分には、上方へ向けてボルト部材53が突設されており、ボルト部材53には、受板54と押板55とが貫通状態で上下に配置されている。
【0048】
ボルト部材53は、床大梁13の上側のフランジ部16よりも上側に突出する長さを有して鋼製束31(の鋼製束本体32)の上端部から上方へ延ばされる。受板54は、床大梁13の下側のフランジ部17の下部に下から当接される。押板55は、床大梁13の上側のフランジ部16の上部に上から当接される。
【0049】
受板54は、鋼製束31(の鋼製束本体32)の上端側の部分にほぼ固定状態で設置され、押板55は、受板54の上側に、ボルト部材53に遊嵌された状態で上下に変位可能に設置される。そして、押板55の上からボルト部材53にナット部材56を螺着することにより、押板55を受板54に近接させて、押板55と受板54との間で床大梁13を上下に挟着固定し、床大梁13を鋼製束31に連結固定する。
【0050】
後施工アンカー52には、例えば、ボルトスクリュウなどを用いることができる。鋼製束31は、下端部に設置されたほぼ水平な取付プレート57を、スラブ部6の上面6aに上から当接させた状態にして、取付プレート57とスラブ部6との間に、後施工アンカー52を上側から下方向へ取付けることで、スラブ部6に固定される。これにより、鋼製束31は、スラブ部6および床大梁13の両方に対して固定されるものとなる。
【0051】
鋼製束31は、取付プレート57から受板54までの高さが、床下空間19の高さとほぼ同じとなっている。ただし、鋼製束31は、高さ調整可能なものとしても良い。高さ調整可能な鋼製束31は、例えば、筒状とした鋼製束本体32の上端部と下端部(に設けたネジ穴やナット状部材など)に対し、互いに逆ネジとなる逆ネジ部材(ボルト部材53および下ネジ58)を螺着してターンバックル状部材とすることで得ることができる。
【0052】
この場合、鋼製束本体32は、高さを床下空間19よりも若干低くし、受板54は、ボルト部材53の下端部に取付け、取付プレート57は、下ネジ58の下端部に取付けることで、鋼製束本体32に対し、受板54や取付プレート57の高さを変更できるようになる。なお、ボルト部材53の下端部に対する受板54の取付けや、下ネジ58の下端部に対する取付プレート57の取付けは、例えば、溶接固定、螺着、カシメ止めなどのいずれかとすることができる。
【0053】
そして、この実施例では、鋼製束31は、隣接する建物ユニット7の隣接する2つの床大梁13を同時に受けるものとなっている。そのために、ボルト部材53は、隣接する床大梁13の間の隙間44に通されると共に、床大梁13の上側のフランジ部16よりも上側に突出する長さとされる。
【0054】
受板54は、隣接する床大梁13の下側の2つのフランジ部17に跨る大きさを有して、2つのフランジ部17の下部にほぼ均等な状態で同時に当接される。この実施例では、受板54は、隣接する床大梁13の下側の2つのフランジ部17の幅45と、隣接する床大梁13の下側の2つのフランジ部17の間に形成される隙間44とを足した寸法とほぼ同じかそれよりも若干小さくなっている。ただし、受板54の大きさは、上記に限るものではない。
【0055】
押板55は、隣接する床大梁13の上側の2つのフランジ部16に跨る大きさを有して、2つのフランジ部16の上部にほぼ均等な状態で同時に当接される。この実施例では、押板55は、床大梁13の上側のフランジ部16の1つ分の幅45とほぼ同じ大きさになっている。ただし、押板55の大きさは、上記に限るものではない。
【0056】
そして、押板55の上からボルト部材53にナット部材56を螺着することにより、押板55を受板54に近接させて、隣接する床大梁13間を同時に上下に挟着固定する。
【0057】
更に、この鋼製束31は、図3に示すように、プレキャストコンクリート製の束部材21の(床大梁13の延設方向42の)両側の、プレキャストコンクリート製の束部材21に比較的近い位置に対して、合わせて2本設置される。
【0058】
プレキャストコンクリート製の束部材21に対する各鋼製束31の設置位置は、プレキャストコンクリート製の束部材21の中心(例えば、中央部41の位置)と、外周立上部5の外面との間の距離59のほぼ1/2~1/5程度の範囲内にするのが好ましい。このように、鋼製束31を、プレキャストコンクリート製の束部材21の近傍に配置することで、床下空間19を広く使うことができるようになる。
【0059】
なお、床大梁13の延設方向42に沿ったプレキャストコンクリート製の束部材21および鋼製束31の配置や使用個数は、上記のようにするのが最適であるが、必ずしも上記に限るものではなく、建物1の具体的な状況に応じて変更したり、増やしたりすることができる。
【0060】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0061】
住宅などの建物1は、その下部を基礎3によって地面2に支えられる。地面2にコンクリートを打設して、建物1の外周に沿って立上がる外周立上部5、および、外周立上部5の内側に平坦なスラブ部6を設けることで、建物1を設置するためのベタ基礎4が形成される。建物1は、ベタ基礎4の打設後に、外周立上部5の上に設置される。
【0062】
基礎3がベタ基礎4の場合、建物1は、外周立上部5によって外壁部に沿った位置が支えられる。そして、ベタ基礎4のスラブ部6を、突出部分や仕切るもののない連続した平坦な一つの面とした場合、外周立上部5の内側には、建物1の内側に設けられる床大梁13を支えるための(外周立上部5とは)別の立上部分が必要になる。ユニット建物の場合、別の立上部分は、隣接する建物ユニット7の合わせ部となる位置(床大梁13どうしが隣接する位置)に設置される。
【0063】
そして、この実施例では、別の立上部分として、ベタ基礎4と一体の内側の立上部の代わりに、スラブ部6の上に、少なくとも、プレキャストコンクリート製の束部材21を設置する。この際、別の立上部分を、プレキャストコンクリート製の束部材21、および、鋼製束31としている。
【0064】
そして、ベタ基礎4の内部にプレキャストコンクリート製の束部材21および鋼製束31を設置した状態で、ベタ基礎4の上に建物1を構成する建物ユニット7を設置する。
【0065】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0066】
(効果 1a)この実施例の建物1の基礎構造では、打設されたスラブ部6の上面6aに、予め別に製造されたプレキャストコンクリート製の束部材21を載置するようにしている。これにより、スラブ部6の打設後に、スラブ部6の上面6aにプレキャストコンクリート製の束部材21を載置するだけで、外周立上部5やスラブ部6の内側に、建物1の床大梁13を支えるための別の立上部分(中束)を簡単に設けることができる。また、別の立上部分の構成を簡単にして、別の立上部分の設置に要する手間やコストや工期を最小限に抑えることが可能になる。
【0067】
これに対し、従来のベタ基礎4では、コンクリートの打設時に、ベタ基礎4の内側の立上部も、外周立上部5やスラブ部6と同時に形成するようにしていたので、スラブ部6を一度打ちする場合、ベタ基礎4の内側の立上部の位置や高さの調整を行うために、コンクリートの硬化前にベタ基礎4の内部へ作業員が立入ることが必要になっていた。
【0068】
そこで、この実施例では、別の立上部分として、プレキャストコンクリート製の束部材21を、完成された平坦なスラブ部6の上面6aに後から設置する構成にした。これにより、ベタ基礎4の内側の立上部を全て無くした状態でコンクリートを打設して、スラブ部6を形成できるようになる。そのため、内側の立上部の打設がなくなることで、ベタ基礎4の内部への作業員の立入りが不要となり、スラブ部6の一度打ちが容易になる。また、プレキャストコンクリート製の束部材21は、スラブ部6に埋設されないので、コンクリート打設時の束部材21の位置や高さの調整を不要化でき、しかも、プレキャストコンクリート製の束部材21は、スラブ部6に埋設されないことで、後から微調整ができるので、施工精度を向上できる。
【0069】
(効果 1b)建物1の基礎構造では、プレキャストコンクリート製の束部材21は、構造用の束(A)とされ、スラブ部6の上面6aには、防振用の束として(プレキャストコンクリート製の束部材21とは)別に鋼製束31が載置されても良い。これにより、別の立上部分を、プレキャストコンクリート製の束部材21による構造用の束(A)と、鋼製束31による防振用の束とにそれぞれ機能を分けて別々に設けることができる。そして、プレキャストコンクリート製の束部材21と鋼製束31とを適宜組み合わせることで、別の立上部分に必要な性能を容易に確保することができる。
【0070】
(効果 2)建物1の基礎構造では、プレキャストコンクリート製の束部材21は、建物1と接続されていない状態で、建物1の床大梁13のほぼ中央部41に配置されても良い。これにより、プレキャストコンクリート製の束部材21を、建物1の構造を支えるのみで、防振を行わないものに特化できる。
【0071】
(効果 3)建物1の基礎構造では、鋼製束31は、建物1の床大梁13に対し、防振用の金具51によって床大梁13を挟み込んだ状態で連結されると共に、スラブ部6に対し、後施工アンカー52によって締結固定されるようにしても良い。なお、防振用の金具51は、ベタ基礎4の上に建物1(建物ユニット7)を設置した後で、床大梁13に連結される。これにより、鋼製束31は、建物1に作用される横方向の引張荷重を、防振用の金具51を介して受けて、後施工アンカー52による固定部分からスラブ部6に伝えることで、建物1の防振を行わせることができる。
【実施例2】
【0072】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0073】
実施例1の(1a)欄の構成に加えて、この実施例では、以下のような構成としている。なお、実施例1の(1b)~(3)欄の各記載と同様の構成については、実施例1の記載を以てこの実施例の記載とする。
【0074】
(4)この実施例では、図8図9に示すように、プレキャストコンクリート製の束部材21は、構造用および防振用の束(B)とされている。
【0075】
ここで、構造用の束は、建物1の構造(または垂直荷重)を支えるための束のことである。防振用の束は、建物1に作用される横方向の引張荷重を受けて、スラブ部6に伝えることで、防振を行わせるための束のことである。
【0076】
この実施例では、プレキャストコンクリート製の束部材21に構造用の束と防振用の束との両方の機能を同時に持たせるようにしている。これによって、基本的に実施例1の鋼製束31を不要化し得るようにしている。ただし、必要な場合には、鋼製束31を設けても良い。
【0077】
(5)プレキャストコンクリート製の束部材21は、上面および側面の少なくとも一方に、防振用の金具51を取付けるインサート部材61を一体に有しても良い。
そして、プレキャストコンクリート製の束部材21は、建物1の床大梁13に対し、インサート部材61に取付けられた防振用の金具51によって床大梁13を挟み込んだ状態で連結されると共に、スラブ部6に対し、後施工アンカー52によって締結固定されても良い。
【0078】
この実施例では、プレキャストコンクリート製の束部材21は、建物ユニット7の長辺側の床大梁13(の延設方向42)の中央部41に対し1個のみ設けて、スラブ部6の内側に位置する各床大梁13の中央部41を下から支持させるようにしている。
【0079】
更に、プレキャストコンクリート製の束部材21は、隣接する建物ユニット7の隣接する床大梁13の中央部41を同時に下から支えるものとしている。
【0080】
また、プレキャストコンクリート製の束部材21は、防振用の金具51を、床大梁13の延設方向42に対し、単数または複数備えられるようにしている。この実施例では、プレキャストコンクリート製の束部材21には、防振用の金具51が2個設けられている。
【0081】
そして、この実施例のプレキャストコンクリート製の束部材21の横寸法43(この実施例では、床大梁13の延設方向42と直交する方向の幅寸法のこと)は、隣接する床大梁13の下側の2つのフランジ部17の幅45と、隣接する床大梁13の下側の2つのフランジ部17の間に形成される隙間44とを足した寸法とほぼ同じかそれよりも若干広くなっている。
【0082】
また、プレキャストコンクリート製の束部材21の縦寸法46(この実施例では、床大梁13の延設方向42の幅寸法のこと、図9(a))は、単数または複数の防振用の金具51を設置できる大きさとなるように、上記した横寸法43よりも、少なくとも設置する防振用の金具51の分だけ大きくなっている。
【0083】
よって、プレキャストコンクリート製の束部材21の横断面形状は、床大梁13の延設方向42に長いほぼ長方形状、または、長方形状の各コーナー部を角取りした(長方形に近い)ほぼ八角形状などとなっている。このような形状にすることにより、プレキャストコンクリート製の束部材21に単数または複数の防振用の金具51を設置することができるようになる。
【0084】
そして、プレキャストコンクリート製の束部材21は、その高さを、床下空間19の高さとほぼ同じにしている。ただし、プレキャストコンクリート製の束部材21は、床下空間19の高さよりも若干低くして、実施例1と同様に、スペーサ47を設けて高さ調整ができるようにしても良い。
【0085】
インサート部材61は、防振用の金具51を取付けるための部材であり、プレキャストコンクリート製の束部材21に製造時に埋め込まれる。インサート部材61には、実施例1のボルト部材53とほぼ同様のボルトが使われる。この実施例では、インサート部材61は、プレキャストコンクリート製の束部材21の上端面に対して、その下端部が埋設されることで、上端部がプレキャストコンクリート製の束部材21の上端面から上へ向けて突出されている。
【0086】
インサート部材61は、プレキャストコンクリート製の束部材21に設置する防振用の金具51の数だけ設置される。複数のインサート部材61は、プレキャストコンクリート製の束部材21の上端面などに、床大梁13の延設方向42に沿い、複数の防振用の金具51どうしが互いに干渉しないようにするための所要の間隔を有して設置される。
【0087】
なお、少なくとも一つのインサート部材61は、プレキャストコンクリート製の束部材21の側面の上側に、上方へ突出するように埋設しても良い。この場合、例えば、インサート部材61は、下側の部分が、上側の部分に対し、ほぼ90度に屈曲されて横へ延ばされると共に、横へ延びた部分をプレキャストコンクリート製の束部材21の側面に埋設させるようにしても良い。
【0088】
防振用の金具51は、実施例1とほぼ同様の押板55およびナット部材56で構成される。この実施例では、プレキャストコンクリート製の束部材21の上端面が床大梁13の下側のフランジ部17の下部に接して受板54と同様の機能を果たすことで、受板54を不要化できるようにしている。ただし、状況によっては、プレキャストコンクリート製の束部材21の上端面の上に受板54を設けるようにしても良い。これにより、プレキャストコンクリート製の束部材21の横寸法43を小さくすることが可能になる。防振用の金具51は、各インサート部材61に対してそれぞれ取付けられる。
【0089】
そして、プレキャストコンクリート製の束部材21の下部は、スラブ部6に対し、縦面部分と横面部分とを有するL型をした金属製の固定プレート62を介して、例えば、ボルトスクリュウなどの後施工アンカー52によって固定される。この際、L型をした金属製の固定プレート62は、縦面部分がプレキャストコンクリート製の束部材21の下部の側面に外側から接し、横面部分がスラブ部6の上面6aに上側から接するように設置され、プレキャストコンクリート製の束部材21と固定プレート62の縦面部分との間は、後施工アンカー52によって外側から横方向に固定され、固定プレート62の横面部分とスラブ部6との間は、後施工アンカー52によって上側から下方向に固定される。これにより、プレキャストコンクリート製の束部材21は、スラブ部6および床大梁13の両方に対して固定されるものとなる。
【0090】
更に、プレキャストコンクリート製の束部材21の(床大梁13の延設方向42の)側部の、プレキャストコンクリート製の束部材21に比較的近い位置には、必要に応じて、防振用の金具51と同様の構成を有する防振部材63を設置しても良い(図9(b))。この防振部材63は、鋼製束31の鋼製束本体32以下をなくして、ほぼ防振用の金具51だけの状態にしたものとなっており、スラブ部6から切り離されることで、防振部材63は、宙に浮いた状態で床大梁13に設置されるものとなっている。即ち、防振部材63は、ボルト部材53、受板54、押板55、ナット部材56で構成されて、隣接する床大梁13を同時に上下に挟着固定する。この実施例では、防振部材63は、プレキャストコンクリート製の束部材21の両側に2個設置されている。ボルト部材53は、受板54の下側へほとんど突出しない長さにするのが好ましい。
【0091】
プレキャストコンクリート製の束部材21に対する各防振部材63の設置位置は、プレキャストコンクリート製の束部材21の中心と、外周立上部5の外面との間の距離59のほぼ1/2~1/5程度の範囲内にするのが好ましい。この実施例では、防振部材63は、実施例1の鋼製束31よりもプレキャストコンクリート製の束部材21から離れた位置に設けられている。
【0092】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0093】
住宅などの建物1は、その下部を基礎3によって地面2に支えられる。地面2にコンクリートを打設して、建物1の外周に沿って立上がる外周立上部5、および、外周立上部5の内側に平坦なスラブ部6を設けることで、建物1を設置するためのベタ基礎4が形成される。建物1は、ベタ基礎4の打設後に、外周立上部5の上に設置される。
【0094】
基礎3がベタ基礎4の場合、建物1は、外周立上部5によって外壁部に沿った位置が支えられる。そして、ベタ基礎4のスラブ部6を、突出部分や仕切るもののない連続した平坦な一つの面とした場合、外周立上部5の内側には、建物1の内側に設けられる床大梁13を支えるための(外周立上部5とは)別の立上部分が必要になる。ユニット建物の場合、別の立上部分は、隣接する建物ユニット7の合わせ部となる位置(床大梁13どうしが隣接する位置)に設置される。
【0095】
そして、この実施例では、別の立上部分として、ベタ基礎4と一体の内側の立上部の代わりに、スラブ部6の上に、少なくとも、プレキャストコンクリート製の束部材21を設置する。この際、別の立上部分を、プレキャストコンクリート製の束部材21のみとしている。
【0096】
そして、ベタ基礎4の内部にプレキャストコンクリート製の束部材21を設置した状態で、ベタ基礎4の上に建物1を構成する建物ユニット7を設置する。
【0097】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0098】
(効果 4)この実施例の建物1の基礎構造では、実施例1の(効果1a)に加えて、プレキャストコンクリート製の束部材21は、構造用および防振用の束(B)とされても良い。これにより、ベタ基礎4の別の立上部分として用いるプレキャストコンクリート製の束部材21を、構造用および防振用の束(B)として一つにまとめて設置することができる。そして、プレキャストコンクリート製の束部材21だけで、別の立上部分に必要な支持性能をほぼ確保することができる。
【0099】
(効果 5)建物1の基礎構造では、プレキャストコンクリート製の束部材21は、上面および側面の少なくとも一方に、防振用の金具51を取付けるインサート部材61を一体に有しており、プレキャストコンクリート製の束部材21は、(ベタ基礎4の上に建物1を構成する建物ユニット7を設置した後で、)建物1の床大梁13に対し、インサート部材61に取付けられた防振用の金具51によって床大梁13を挟み込んだ状態で連結されると共に、スラブ部6に対し、後施工アンカー52によって締結固定されるようにしても良い。これにより、プレキャストコンクリート製の束部材21は、単体で、建物1の構造を支えることができると共に、建物1に作用される横方向の引張荷重を、(プレキャストコンクリート製の束部材21に備えられた)防振用の金具51を介して受けて、後施工アンカー52による固定部分からスラブ部6に伝えることで、防振を行わせることができる。
【0100】
なお、実施例1と同様の作用効果については、実施例1の記載を以てこの実施例の記載とすることができる。
【符号の説明】
【0101】
1 建物
3 基礎
5 外周立上部
6 スラブ部
6a 上面
13 床大梁
21 プレキャストコンクリート製の束部材
31 鋼製束
41 中央部
51 防振用の金具
52 後施工アンカー
61 インサート部材
62 固定プレート
63 防振部材
(A) 構造用の束
(B) 構造用および防振用の束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9