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特許7602681浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造、製造及び施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造、製造及び施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20241211BHJP
   E02D 27/52 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D27/52 A
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024061670
(22)【出願日】2024-04-05
(65)【公開番号】P2024149470
(43)【公開日】2024-10-18
【審査請求日】2024-09-05
(31)【優先権主張番号】202310367601.5
(32)【優先日】2023-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524132896
【氏名又は名称】上海勘▲測▼▲設▼▲計▼研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100160299
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 立
(72)【発明者】
【氏名】田 会元
(72)【発明者】
【氏名】徐 明▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】魏 宇墨
(72)【発明者】
【氏名】宋 ▲礎▼
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第114032845(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114182764(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0002872(US,A1)
【文献】特許第7283827(JP,B1)
【文献】特許第7254040(JP,B2)
【文献】特開平7-127037(JP,A)
【文献】特表2012-518728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
E02B 1/00- 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造であって、
フックで接続される複数の空洞体構造(10)を含み、前記空洞体構造(10)は、
ゴムインナー(100)と、
ゴムインナー(100)の外側を覆うとともに、ゴムインナー(100)に固定的に接続されるコンクリートケーシング(200)と、
ゴムインナー(100)の外側に位置するとともに、コンクリートケーシング(200)内に予め埋め込まれ、且つ、横方向鉄筋(310)、縦方向鉄筋(320)及び垂直鉄筋(330)を含み、前記横方向鉄筋(310)の横方向の両端が横方向にコンクリートケーシング(200)を貫通し、且つ、前記横方向鉄筋(310)は、一端に水平フック(340)が予め作製されており、他端に垂直フック(350)が予め作製されており、前記縦方向鉄筋(320)の縦方向の両端が縦方向にコンクリートケーシング(200)を貫通し、且つ、前記縦方向鉄筋(320)は、一端に水平フック(340)が予め作製されており、他端に垂直フック(350)が予め作製されており、前記垂直鉄筋(330)の上端が垂直方向にコンクリートケーシング(200)を貫通する鉄骨(300)と、
コンクリートケーシング(200)の天井部に設けられるとともに、鉄骨(300)に予め作製されて接続される吊り輪(400)と、
コンクリートケーシング(200)の天井部に設けられるとともに、ゴムインナー(100)の内部空間と連通する排気孔(500)と、
コンクリートケーシング(200)の底部に設けられるとともに、ゴムインナー(100)の内部空間と連通する給水孔(600)、を含み、
前記水平フック(340)及び垂直フック(350)は、大きさが等しく、且つ方向が垂直であり、
複数の前記空洞体構造(10)は縦方向及び横方向に線形に分布し、且つ、隣り合う2つの前記空洞体構造(10)は水平フック(340)及び垂直フック(350)で掛合することにより接続されることを特徴とする浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造。
【請求項2】
前記ゴムインナー(100)の外表面には、ゴムインナー(100)とコンクリートケーシング(200)との接続強度を向上可能とする凹凸部が設けられており、
前記コンクリートケーシング(200)の底部には、ジオテキスタイル及びバイオニックグラスが予め埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造。
【請求項3】
隣り合う2つの前記空洞体構造(10)の水平フック(340)と垂直フック(350)は、単層で掛合され、又は、2層で掛合され、
前記空洞体構造(10)と杭基礎(20)の間にはゴムパッド(30)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造を製造するための浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の製造方法であって、
金型内に鉄骨(300)を架設して結束するステップS10と、
ゴムインナー(100)を鉄骨(300)の内部空間に配置し、給気して密封するステップS20と、
ゴムインナー(100)と前記金型との隙間にコンクリートを流し込んで満たすステップS30と、
養生により、コンクリートケーシング(200)を硬化させてゴムインナー(100)の外側に成形し、且つ、コンクリートケーシング(200)には、ゴムインナー(100)の内部空間と連通する排気孔(500)及び給水孔(600)が成形されるステップS40と、
排気孔(500)内の封止栓を抜いてゴムインナー(100)から排気させ、且つ、前記コンクリートケーシング(200)はゴムインナー(100)に固定的に接続されるステップS50と、を含み、
鉄骨(300)は、結束されて固定的に接続される横方向鉄筋(310)、縦方向鉄筋(320)及び垂直鉄筋(330)を含み、横方向鉄筋(310)の横方向の両端には、それぞれ対応して、水平フック(340)及び垂直フック(350)が予め作製されており、前記縦方向鉄筋(320)の縦方向の両端には、それぞれ対応して、水平フック(340)及び垂直フック(350)が予め作製されており、且つ、前記水平フック(340)及び垂直フック(350)は、大きさが等しく、且つ方向が垂直であり、垂直鉄筋(30)の上端には吊り輪(400)が予め作製されていることを特徴とする浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の施工に用いられる浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の施工方法であって、
複数の空洞体構造(10)をフックで接続して所望の形状の洗掘防止構造とするステップS100と、
前記洗掘防止構造を水中に吊るし、浮揚輸送方式で前記洗掘防止構造を沈下位置まで牽引輸送してから、ロープを引いて給水孔(600)内の封止栓を抜き取ることで、洗掘防止構造全体を杭基礎(20)の一方の側の海底面まで沈下させるステップS200と、を含むことを特徴とする浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の施工方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋工事の技術分野に関し、具体的には、杭基礎洗掘防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、港湾の工事や建設では、杭基礎を用いて上部の負荷を地下深くの耐荷性能に優れた地層に伝達することで、耐荷力及び沈下に関する要求を満たす。杭基礎は、複雑な水域環境において長期的に波や潮流の作用を受ける。そのため、杭基礎周辺の土は絶えず浸食されて洗掘を生じる。特に、河口や感潮区間等の流れの強い領域では洗掘現象が極めて著しく、港湾工事の安全性に重大な影響を及ぼす。
【0003】
現在よく見られる杭基礎の洗掘防止方式には、主に、捨て石、サンドパック、固化処理土及びソフトマットレス等の洗掘防止対策がある。このうち、捨て石による方法は、施工が簡単であるとの利点を有するが、捨て石時の投入経路を制御できないため、基礎に衝突して防食塗装を破壊しやすく、杭基礎の使用期間に影響を及ぼす。また、サンドパックによる方法は、砂袋を作製するためのジオテキスタイルが劣化しやすく、サンドパックが破損して砂が流失するため、杭基礎を有効に保護することができない。また、固化処理土による洗掘防止対策は、理論上、堆積領域の局所的な洗掘については効果が良好であるが、海底が全体的に洗掘される場合には、辺縁部分の洗掘に対して無効なことから、防護効果に劣る。また、ソフトマットレスによる方法は、理論的には効果が良好であるが、施工が難しく、実際にはあまり使用されていない。
【0004】
よって、従来の洗掘防止構造では洗掘防止効果と施工の利便性及び経済性を同時に達成することが難しいとの課題を如何にして解決するかが、当業者にとって早急に解決を要する技術的課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上に鑑みて、本発明の目的は、従来の洗掘防止構造では洗掘防止効果と施工の利便性及び経済性を同時に達成することが難しいとの技術的課題を解決するために、浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明で採用する技術方案は、以下の通りである。
【0007】
浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造は、フックで接続される複数の空洞体構造を含む。前記空洞体構造は、ゴムインナーと、ゴムインナーの外側を覆うとともに、ゴムインナーに固定的に接続されるコンクリートケーシングと、コンクリートケーシング内に予め埋め込まれ、且つ、横方向鉄筋、縦方向鉄筋及び垂直鉄筋を含み、前記横方向鉄筋の横方向の両端が横方向にコンクリートケーシングを貫通し、且つ、前記横方向鉄筋は、一端に水平フックが予め作製されており、他端に垂直フックが予め作製されており、前記縦方向鉄筋の縦方向の両端が縦方向にコンクリートケーシングを貫通し、且つ、前記縦方向鉄筋は、一端に水平フックが予め作製されており、他端に垂直フックが予め作製されており、前記垂直鉄筋の上端が垂直方向にコンクリートケーシングを貫通する鉄骨と、コンクリートケーシングの天井部に設けられるとともに、鉄骨に予め作製されて接続される吊り輪と、コンクリートケーシングの天井部に設けられるとともに、ゴムインナーの内部空間と連通する排気孔と、コンクリートケーシングの底部に設けられるとともに、ゴムインナーの内部空間と連通する給水孔、を含む。
【0008】
前記水平フック及び垂直フックは、大きさが等しく、且つ方向が垂直である。
【0009】
好ましくは、前記垂直鉄筋の上端には吊り輪が予め作製されている。
【0010】
好ましくは、前記ゴムインナーの外表面には、ゴムインナーとコンクリートケーシングとの接続強度を向上可能とする凹凸部が設けられている。
【0011】
好ましくは、前記コンクリートケーシングの底部には、ジオテキスタイル及びバイオニックグラスが予め埋め込まれている。
【0012】
好ましくは、複数の前記空洞体構造は縦方向及び横方向に線形に分布する。且つ、隣り合う2つの前記空洞体構造は水平フック及び垂直フックで掛合することにより接続される。
【0013】
好ましくは、隣り合う2つの前記空洞体構造の水平フックと垂直フックは、単層で掛合され、又は、2層で掛合される。また、前記空洞体構造と杭基礎の間にはゴムパッドが設けられている。
【0014】
本発明の第2の目的は、浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の製造方法を提供することである。前記方法は、ステップS10、S20、S30、S40、S50を含む。
【0015】
ステップS10において、金型内に鉄骨を架設して結束する。
【0016】
ステップS20において、ゴムインナーを鉄骨の内部空間に配置し、給気して密封する。
【0017】
ステップS30において、ゴムインナーと金型との隙間にコンクリートを流し込んで満たす。
【0018】
ステップS40において、養生により、コンクリートケーシングを硬化させてゴムインナーの外側に成形する。且つ、コンクリートケーシングには、ゴムインナーの内部空間と連通する排気孔及び給水孔が成形される。
【0019】
ステップS50において、排気孔内の封止栓を抜いてゴムインナーから排気させる。且つ、前記コンクリートケーシングはゴムインナーに固定的に接続される。
【0020】
本発明の第3の目的は、浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の施工方法を提供することである。前記方法は、ステップS100、S200を含む。
【0021】
ステップS100において、複数の空洞体構造をフックで接続して所望の形状の洗掘防止構造とする。
【0022】
ステップS200において、前記洗掘防止構造を予め設定された海域まで輸送して、杭基礎の一方の側の海底面まで沈下させる。
【0023】
好ましくは、前記ステップS200は、まず、前記洗掘防止構造を水中に吊るし、浮揚輸送方式で前記洗掘防止構造を沈下位置まで牽引輸送してから、ロープを引いて給水孔内の封止栓を抜き取ることで、洗掘防止構造全体を沈下させることを含む。
【0024】
好ましくは、前記ステップS200は、まず、前記洗掘防止構造を輸送船上に吊るし、船舶輸送方式で前記洗掘防止構造を沈下位置まで輸送してから、給水孔内の封止栓を抜き取って、輸送船上のクレーンにより洗掘防止構造を水中に吊るして沈下させることを含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0026】
1.本発明では、ゴムインナーにより空洞体構造の内部に空洞を形成することで、洗掘防止構造の重量の低下、コンクリートの使用量の減少及び製造コストの低下が可能となるだけでなく、ゴムインナーの排気及び給水によって洗掘防止構造の浮揚輸送及び沈下を実現することも可能となり、牽引輸送船に対する要求を低下させることも可能である。
【0027】
2.本発明における洗掘防止構造は、複数の空洞体構造が、鉄骨の水平フックと垂直フックで掛合することにより接続される。掛合による接続は柔軟性がより良好なため、複数の空洞体構造を掛合して任意の形状の洗掘防止構造に組み立てることが可能である。また、海底の地形にいっそう良好に適応可能であり、現場の状況に応じて2層又は単層で掛合することも可能である。且つ、当該空洞体構造はいずれも予めモジュール化されているため、全体の組み立て性に優れる。海底面の洗掘には様々な形状が存在し得るが、一定数の空洞体構造をつないで組み合わせるだけで、例えば、円形、正方形、矩形等の任意の形状の洗掘防止構造を設計して各種現場のニーズを満たすことが可能である。そのほか、何らかの洗掘溝を補填するものとして、現場での測定に基づき洗掘溝の面積を特定し、現場で迅速に洗掘溝の形状に組み立てて所定の位置に沈下させることも可能である。
【0028】
3.本発明における鉄骨及び空洞体構造は迅速な事前作製が可能である。また、設計について、現場の状況と当所の設計状況とが異なることに気づいた場合には、迅速につなぎ合わせて補填することも可能である。且つ、陸地及び船上のいずれにおいても迅速な組み立て及び接続が可能である。よって、洗掘防止構造の実用性が向上する。
【0029】
4.本発明における鉄骨はゴムインナーの外側に位置するため、空洞体構造を製造する際には、鉄骨でゴムインナーの体積及び位置を規制可能である。また、成形金型を組み合わせることで、流し込んだコンクリートケーシングの厚さ及び空洞の大きさの制御を実現することができる。これにより、定量的に空洞体構造の浮力を制御することができるだけでなく、大規模及び大量製造が容易となり、洗掘防止構造の施工コストが更に低下するため、より良好な経済性を有する。且つ、コンクリートケーシングが不透水のゴムインナーの外側を覆うことで、コンクリートケーシングの内部に空洞が形成されて、空洞体構造の浮揚輸送を実現可能となるだけでなく、浮揚輸送時に海水がコンクリートケーシングを通って内部空間に浸入するという事態も防止可能となるため、洗掘防止構造の浮揚輸送の安全性が保証される。そのほか、ゴムインナーは調達価格が安いため、洗掘防止構造の浮揚輸送要求を満たすことを前提に、洗掘防止構造の製造コストを最大限低下させて、洗掘防止構造の経済性を向上させることが可能である。
【0030】
5.本発明における鉄骨は次の5つの機能を有する。第一に、鉄骨は、隣り合う2つの空洞体構造を柔軟に接続(フックで接続)することで、組み立てられた洗掘防止構造全体について海底の地形に対する適応性を向上可能とする。第二に、鉄骨はコンクリートケーシングに組み合わされて鉄筋コンクリート構造を形成する。当該構造はシンプルで製造しやすく、且つ、空洞体構造の構造強度を向上可能とする。第三に、鉄骨はコンクリートケーシングの代わりに力を伝達可能である。鉄骨は接続の一体性に優れるため、力の作用が簡単且つ明確である。また、構造全体の安定性が保証されるとともに、海上でよく行われる吊り上げ作業、浮揚輸送、敷設等の施工方式に十分適応可能である。第四に、鉄骨はゴムインナーの体積及び位置を規制可能である。よって、実際のニーズ及び計算結果に基づき、コンクリートケーシングの厚さ及び空洞の大きさを正確に制御して、構造を浮揚しやすくすることが可能である。また、形成される空洞によってコンクリート材料の使用も減少する。第五に、鉄骨に吊り上げフックを予め作製し、垂直方向の骨格としつつ、吊り上げ輸送時の主要な力点とすることで、洗掘防止構造の吊り上げ作業及び施工が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明における空洞体構造の概略構造図である。
図2図2は、ゴムインナーと鉄骨との位置関係を示す。
図3図3は、図2の正面図である。
図4図4は、図2の平面図である。
図5図5は、鉄骨の概略斜視図である。
図6図6は、浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の概略斜視図である。
図7図7は、浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の正面図である。
図8図8は、水平フックと垂直フックの接続の概略図である。
図9図9は、浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の使用状態の参考図1である。
図10図10は、浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の使用状態の参考図2である。
図11図11は、浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の使用状態の参考図3である。
図12図12は、浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の使用状態の参考図4である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、図面を組み合わせて、本発明の具体的実施形態につき更に詳細に説明する。なお、これらの実施形態は本発明を説明するためのものにすぎず、本発明を制限するものではない。
【0033】
本発明の記載において、説明すべき点として、「中心」、「縦」、「横」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「天井」、「底」、「内」、「外」等の用語で示される方向又は位置関係は、図示に基づく方向又は位置関係であって、本発明の記載の便宜上及び記載の簡略化のためのものにすぎず、対象となる装置又は部材が特定の方向を有し、特定の方向で構成及び操作されねばならないことを明示又は暗示するものではない。よって、本発明を制限するものと解釈すべきではない。また、「第1」、「第2」との用語は記載の便宜上のものにすぎず、相対的な重要性を明示又は暗示するものと解釈すべきではない。
【0034】
説明すべき点として、本発明の記載において、別途明確に規定及び限定している場合を除き、「取り付ける」、「連なる」、「接続する」との用語は広義に解釈すべきである。例えば、固定的な接続であってもよいし、取り外し可能な接続であってもよいし、一体的な接続であってもよい。また、機械的な接続であってもよいし、電気的な接続であってもよい。且つ、直接的な連なりであってもよいし、中間媒体を介した間接的な連なりであってもよいし、2つの部材内部の連通であってもよい。当業者であれば、具体的状況に応じて本発明における上記用語の具体的意味を解釈可能である。
【0035】
また、別途説明する場合を除き、本発明の記載において、「複数」とは2つ又は2つ以上を意味する。
【0036】
実施例:図1図12に示すように、浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造は、洋上風力発電の杭基礎について洗掘防止・保護を行うために用いられる。当該洗掘防止構造は、複数の空洞体構造10を掛合してなる。当該空洞体構造10は、ゴムインナー100、コンクリートケーシング200、鉄骨300、吊り輪400、排気孔500及び給水孔600を含む。
【0037】
前記コンクリートケーシング200は、ゴムインナー100の外側を覆う。且つ、コンクリートケーシング200は、ゴムインナー100に固定的に接続される。
【0038】
前記鉄骨300は、コンクリートケーシング200内に予め埋め込まれる。且つ、鉄骨300は、横方向鉄筋310、縦方向鉄筋320及び垂直鉄筋330を含む。前記横方向鉄筋310は、横方向にコンクリートケーシング200内に予め埋め込まれる。且つ、横方向鉄筋310の一端は、横方向に延伸してコンクリートケーシング200を貫通するとともに、一体成形により水平フック340が予め作製されている。また、横方向鉄筋310の他端は、横方向に延伸してコンクリートケーシング200を貫通するとともに、一体成形により垂直フック350が予め作製されている。前記縦方向鉄筋320は、縦方向にコンクリートケーシング200内に予め埋め込まれる。且つ、縦方向鉄筋320の一端は、縦方向に延伸してコンクリートケーシング200を貫通するとともに、一体成形により水平フック340が予め作製されている。また、縦方向鉄筋320の他端は、縦方向に延伸してコンクリートケーシング200を貫通するとともに、一体成形により垂直フック350が予め作製されている。水平フック340と垂直フック350は、大きさが等しく、且つ方向が垂直である。つまり、垂直フック350は上向き又は下向きとなっており、水平フック340は前向き又は後向きとなっている。
【0039】
前記吊り輪400は、コンクリートケーシング200の天井部に設けられる。且つ、吊り輪400は、鉄骨300の上端に予め作製及び成形される。
【0040】
前記排気孔500は、コンクリートケーシング200の天井部に設けられる。且つ、排気孔500はゴムインナー100の内部空間と連通する。
【0041】
前記給水孔600は、コンクリートケーシング200の底部に設けられる。且つ、給水孔600はゴムインナー100の内部空間と連通する。
【0042】
本願では、中空構造を採用し、ゴムインナー100の周辺に鉄骨300を設置するとともに、ゴムインナー100の周辺にコンクリートケーシング200を流し込んで成形する。鉄骨300とコンクリートケーシング200を組み合わせることで、空洞体構造10の構造強度を向上させることができる。また、ゴムインナー100により空洞体構造10の内部に空洞を形成することで、洗掘防止構造の重量の低下、コンクリートの使用量の減少及び製造コストの低下をさせることが可能となるだけでなく、ゴムインナー100の排気及び給水によって空洞体構造10の浮揚輸送及び沈下を実現することも可能となり、牽引輸送船に対する要求が低下する。また、鉄骨300の横方向及び縦方向の両端に水平フック340及び垂直フック350を予め作製することで、隣り合う2つの空洞体構造10を掛合させることにより接続しやすくなり、洗掘防止構造の施工が容易となるだけでなく、洗掘防止構造の標準化及び大規模生産が実現可能となる。また、コンクリートケーシング200が受けた水流からの衝撃力を横方向鉄筋310又は縦方向鉄筋320により伝達することで、水流からの衝撃力がコンクリートケーシング200に及ぼす影響を低下させることができるため、洗掘防止構造の安定性が向上する。且つ、鉄骨300の上部に吊り輪400を予め作製することで、空洞体構造10の吊り上げが容易となり、クレーンの製造コストを抑えることができる。
【0043】
具体的実施例において、図2図3図4図5に示すように、前記垂直鉄筋330は、垂直方向にコンクリートケーシング200内に予め埋め込まれる。且つ、垂直鉄筋330の上端は、垂直に延伸してコンクリートケーシング200を貫通するとともに、一体成形により吊り輪400が予め作製されている。
【0044】
好ましくは、図5に示すように、前記鉄骨300は直方体のフレームであって、4本の横方向鉄筋310、4本の縦方向鉄筋320及び4本の垂直鉄筋330を結束及び固定してなる。且つ、各垂直鉄筋330の上端には、いずれも一体成形により吊り輪400が1つずつ予め作製されている。鉄骨300のうちコンクリートケーシング200から露出する部分には防食塗装が施されており、吊り輪400にも防食塗装が施されている。
【0045】
図5に示すように、本実施例における水平フック340とは、当該フック全体が水平に設けられているものを言う。即ち、当該フックの軸線は水平面と垂直である。且つ、全ての水平フック340は1つの側を向いており、防食塗装が施されている。また、垂直フック350とは、当該フック全体が垂直に設けられているものを言う。即ち、当該フックの軸線は水平面と平行である。且つ、全ての垂直フック350は1つの側を向いており、防食塗装が施されている。また、本願における横方向とは、図5における双方向矢印の方向であり、縦方向とは図5における実線単一矢印の方向であり、垂直方向とは図5における点線単一矢印の方向である。
【0046】
具体的実施例において、前記ゴムインナー100の外表面には凹凸部(図示しない)が設けられている。当該凹凸部は、ゴムインナー100とコンクリートケーシング200との接続強度を強化可能とする。即ち、給気したゴムインナー100の外側にコンクリートを流し込んだ後、養生して形成されるコンクリートケーシング200はゴムインナー100に固定的に接続可能となる。且つ、ゴムインナー100から排気した後も、コンクリートケーシング200はゴムインナー100に固定的に接続されたままとなる。
【0047】
具体的に、前記凹凸部は模様であってもよいし、凹凸形状であってもよい。
【0048】
具体的実施例において、前記コンクリートケーシング200の底部にはジオテキスタイル及びバイオニックグラス(bionic grass)が予め埋め込まれている。つまり、コンクリートを流し込む前に、鉄骨300の下方にジオテキスタイル及びバイオニックグラスを敷設しておく。このようにすることで、ジオテキスタイルの逆濾過機能とバイオニックグラスの攪流作用を利用して、杭基礎20周辺の土砂の流出を防止可能となる。
【0049】
具体的実施例において、図6図7図8に示すように、前記洗掘防止構造は、複数の空洞体構造10が横方向及び/又は縦方向に線形に分布するとともに、掛合することにより接続される。且つ、当該洗掘防止構造は、少なくとも杭基礎20の一方の側を囲むことが可能である。
【0050】
好ましくは、例えば、地盤表面の高さが一様ではなく、でこぼこして平坦でないというように、場所への高い適応性が必要とされる地盤の場合には、横方向に分布する及び/又は縦方向に分布する隣り合う2つの空洞体構造10の上層における水平フック340と垂直フック350が単層の掛合による接続を形成する。また、現場の風や波が大きい水域の場合には、縦方向に分布する及び/又は横方向に分布する隣り合う2つの空洞体構造10の上層及び下層における水平フック340と垂直フック350が二層の掛合による接続を形成する。
【0051】
より好ましくは、空洞体構造10と杭基礎20の間には、洗掘防止構造から杭基礎20への衝撃作用を低下させるためのゴムパッド30が設けられている。
【0052】
実施例:図1図2図5に示すように、浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の製造方法は、ステップS10、S20、S30、S40、S50を含む。
【0053】
ステップS10において、金型内に鉄骨300を架設して結束する。且つ、鉄骨300の横方向の両端及び縦方向の両端には、それぞれ対応して、水平フック340及び垂直フック350が設けられている。
【0054】
具体的には、金型内に、4本の横方向鉄筋310、4本の縦方向鉄筋320及び4本の垂直鉄筋330を結束及び固定して、直方体の鉄骨300とする。横方向鉄筋310及び縦方向鉄筋320の一端には、一体成形により水平フック340が予め作製されている。また、横方向鉄筋310及び縦方向鉄筋320の他端には、一体成形により垂直フック350が予め作製されている。また、垂直鉄筋330の上端には、一体成形により吊り輪400が予め作製されている。
【0055】
その他の実施例において、鉄骨300は、例えば楕円形といったその他の形状であってもよい。
【0056】
ステップS20において、ゴムインナー100を鉄骨300の内部空間に配置し、給気して密封する。
【0057】
具体的には、ゴムインナー100を鉄骨300の内部空間に配置する。ゴムインナー100の天井部は排気管と連通し、ゴムインナー100の底部は給水管と連通する。天井部の排気管からゴムインナー100に給気してから(給水管は封止栓で密封しておく)、封止栓によりゴムインナー100の天井部の排気管を塞ぐ。鉄骨300は、ゴムインナー100の体積の大きさを規制する役割を有する。
【0058】
ステップS30において、ゴムインナー100と金型との隙間にコンクリートを流し込んで満たす。
【0059】
具体的には、ゴムインナー100と金型との隙間にコンクリートが満たされるまで、金型内にコンクリートを流し込む。即ち、コンクリートは、鉄骨300の外側全体を覆う。且つ、ゴムインナー100上の排気管及び給水管はいずれもコンクリートから露出する。
【0060】
ステップS40において、養生により、コンクリートケーシング200を硬化させてゴムインナー100の外側に成形する。且つ、コンクリートケーシング200には、ゴムインナー100の内部空間と連通する排気孔500及び給水孔600が成形される。
【0061】
ステップS50において、排気孔内の封止栓を抜いてゴムインナー100から排気させる。且つ、コンクリートケーシング200はゴムインナー100に固定的に接続されたままとなる。
【0062】
具体的には、コンクリートの養生終了後に、コンクリートが凝固してコンクリートケーシング200となり、ゴムインナー100に固定的に接続された後、排気管内の封止栓を抜いても、排気したゴムインナー100はコンクリートケーシング200に固定的に接続されたままとなる。
【0063】
実施例:図9図10図11図12に示すように、浮揚・吊り上げ一体式杭基礎洗掘防止構造の施工方法は、ステップS100、S200を含む。
【0064】
ステップS100において、複数の空洞体構造10を縦方向及び/又は横方向にフックで接続して、所望の形状の洗掘防止構造とする。
【0065】
具体的には、複数の空洞体構造10を縦方向及び/又は横方向に線形に分布させ、隣り合う2つの空洞体構造10における水平フック340と垂直フック350を掛合させることにより接続することで、杭基礎20と嵌め合い可能な洗掘防止構造を形成する。
【0066】
ステップS200において、洗掘防止構造を予め設定された海域まで輸送して、杭基礎20の一方の側の海底面まで沈下させる。
【0067】
具体的実施例では、まず、組み立て済みの洗掘防止構造を吊り輪400により海面まで吊り上げ輸送し、給水孔600内の封止栓のロープを牽引輸送船のウインチに結びつける。次に、浮揚輸送方式で洗掘防止構造を所定の杭基礎20の位置まで牽引輸送し、正確に位置決めした後、ウインチを起動して、全ての給水孔600内の封止栓を抜き取る。これにより、ゴムインナー100の内部空間に水を満たして、洗掘防止構造全体を海底面まで沈下させる。
【0068】
別の具体的実施例では、まず、組み立て済みの洗掘防止構造を吊り輪400により輸送船まで吊り上げ輸送し、輸送船により所定の杭基礎20の位置まで輸送する。次に、正確に位置決めした後、全ての給水孔600内の封止栓を抜き取って、輸送船上のクレーンにより洗掘防止構造を海水中に下ろす。これにより、ゴムインナー100の内部空間に水を満たして、洗掘防止構造全体を海底面まで沈下させる。
【0069】
従来技術と比較して、本願は、少なくとも以下の有益な技術的効果を有する。
【0070】
1.本願の洗掘防止構造は、ゴムインナー、鉄骨及びコンクリートケーシングから構成されており、標準化及び規格化生産を実現可能である。
【0071】
2.本願の洗掘防止構造は、施工環境条件に応じて異なる輸送形式を採用可能である。浮揚式の牽引輸送を採用する場合には、施工船に対する要求を効果的に低減させることができ、水上での施工手順が減少し、施工コストを抑えることができる。また、浮揚式で所定の位置まで牽引輸送した後は、水を満たすことで洗掘防止構造を海底面まで沈下させられる。よって、サンドパックやソフトマットレスといった洗掘防止対策と比較して、クレーンの製造コストを節約可能となる。また、従来の船舶輸送方式を採用する場合には、内部が中空の洗掘防止構造は、中実の洗掘防止構造よりも重量が小さいため、牽引輸送船に対する要求を低下させることができる。
【0072】
3.本願では、現場の条件に応じて洗掘防止構造を柔軟に接続可能である。場所への適応性要求が高い地盤の場合、隣り合う空洞体構造は、上列の2本の縦方向鉄筋又は横方向鉄筋のみがフックで接続される。こうして、洗掘防止構造の一部に一定の回転変形能力を持たせることで、より良好に地形に適応させる。また、現場の風や波が大きい水域の場合、隣り合う2つの空洞体構造は、上下2列の4本の横方向鉄筋又は縦方向鉄筋をフックで接続することで、洗掘防止構造全体の安定性を保証可能とする。
【0073】
4.本願の空洞体構造は、フックで任意の形状の洗掘防止構造に組み立て可能なため、海流及び地質環境への適用範囲が広い。
【0074】
5.本願のゴムは防水性に優れ、廉価である。また、ゴムインナーとコンクリートケーシングを組み合わせる方式で洗掘防止構造を形成することで、表層のコンクリートに対する防水性能要求が低減するため、製造コストを抑えることができる点で有利である。
【0075】
6.本願の鉄骨は、ゴムインナーの体積の大きさを規制可能なだけでなく、接続及びリフティングポイントの機能を兼ね備えることも可能なため、製造コストや輸送・取り付けコストを抑えることができる点で有利である。
【0076】
7.本願は、洗掘防止構造の天井部に4つのリフティングポイントが設けられているため、吊り上げ作業時に、施工・設計ニーズに応じて任意のリフティングポイントを選択し、吊り上げ作業を行うことが可能である。
【0077】
8.本願では、コンクリートケーシングの底部にジオテキスタイル及びバイオニックグラスが予め埋め込まれているため、製造及び施工が容易なだけでなく、洗掘防止効果を更に保証することも可能である。
【0078】
9.本願のコンクリートケーシングの底部の形状は、実際の場所の条件に応じて調整可能なため、海底への適用性が増し、洗掘防止効果が保証される。
【0079】
以上の記載は本発明の好ましい実施形態にすぎない。指摘すべき点として、当業者であれば、本発明の技術原理を逸脱しないことを前提に、若干の改良及び置き換えを行うことも可能であり、これらの改良及び置き換えも本発明の保護の範囲と見なすべきである。
【符号の説明】
【0080】
10 空洞体構造
20 杭基礎
30 ゴムパッド
100 ゴムインナー
200 コンクリートケーシング
300 鉄骨
310 横方向鉄筋
320 縦方向鉄筋
330 垂直鉄筋
340 水平フック
350 垂直フック
400 吊り輪
500 排気孔
600 給水孔


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12