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特許7602701加熱殺菌装置、殺菌対象物および加熱殺菌方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】加熱殺菌装置、殺菌対象物および加熱殺菌方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/10 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
A23L3/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024566289
(86)(22)【出願日】2024-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2024033689
【審査請求日】2024-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2023164018
(32)【優先日】2023-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000152480
【氏名又は名称】株式会社日阪製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】渡海谷 里奈
(72)【発明者】
【氏名】中田 功一郎
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-155150(JP,A)
【文献】米国特許第05424087(US,A)
【文献】特開2012-249582(JP,A)
【文献】特開昭61-009273(JP,A)
【文献】特開2014-100071(JP,A)
【文献】特表2018-508420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/10-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温流体による加熱殺菌を行う殺菌対象物を内部に収容する収容空間を有し、前記殺菌対象物を加熱殺菌する前記高温流体および前記高温流体により加熱殺菌された前記殺菌対象物を冷却する冷却水が供給される殺菌槽と、
単一の槽からなる中温水槽と、
前記冷却水による前記殺菌対象物の冷却の前に、前記単一の槽からなる中温水槽に貯留された、前記冷却水の温度よりも高く、かつ、前記高温流体の温度よりも低い温度の、前記高温流体とは別個に生成されるとともに、前記単一の槽からなる中温水槽に貯留された中温水を用いて、加熱殺菌後の前記殺菌槽の熱を回収する中温水熱回収制御を行う制御部とを備える、加熱殺菌装置。
【請求項2】
前記制御部は、加熱殺菌を行った後の前記高温流体を前記殺菌槽から排出した状態で、前記中温水熱回収制御を行うように構成されている、請求項1に記載の加熱殺菌装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記冷却水による前記殺菌対象物の冷却の前に、前記単一の槽からなる中温水槽から供給される前記中温水を用いて、加熱殺菌後の前記殺菌槽の熱を回収する前記中温水熱回収制御を行うとともに、前記中温水熱回収制御に使用した前記中温水を前記単一の槽からなる中温水槽に貯留するように構成されている、請求項1に記載の加熱殺菌装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記高温流体による前記殺菌対象物の加熱の前に、前記中温水熱回収制御の際に加熱されて前記単一の槽からなる中温水槽に貯留された前記中温水を用いて、前記殺菌槽を予熱する予熱制御を行うように構成されている、請求項3に記載の加熱殺菌装置。
【請求項5】
前記殺菌槽と前記単一の槽からなる中温水槽とを互いに接続する第1接続経路をさらに備え、
前記制御部は、熱回収後の前記殺菌槽内の前記中温水を前記第1接続経路を介して前記単一の槽からなる中温水槽に回収して貯留する制御、および、予熱時に前記第1接続経路を介して前記殺菌槽に前記中温水を供給する制御を行うように構成されている、請求項4に記載の加熱殺菌装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記殺菌槽の予熱および前記殺菌槽の熱回収の各々において、前記単一の槽からなる中温水槽から供給される前記中温水を前記殺菌対象物に向けて放出する制御を行うように構成されている、請求項4に記載の加熱殺菌装置。
【請求項7】
前記殺菌槽に貯留された加熱殺菌後の前記高温流体である高温水を回収して貯留する高温水槽と、
前記殺菌槽と前記高温水槽とを互いに接続する第2接続経路とをさらに備え、
前記制御部は、前記殺菌対象物の加熱殺菌が終了して前記殺菌槽内から排出した前記高温水を前記第2接続経路を介して前記高温水槽内に回収した後、前記殺菌槽の前記中温水熱回収制御を行うように構成されている、請求項1に記載の加熱殺菌装置。
【請求項8】
前記中温水により加熱される熱伝達流体を供給する熱伝達流体供給部と、
前記単一の槽からなる中温水槽に貯留された前記中温水と、前記熱伝達流体供給部から供給される前記熱伝達流体との熱交換を行う熱交換器とをさらに備え、
前記制御部は、前記殺菌槽の予熱において、前記熱交換器における前記中温水との熱交換により温度を上昇させた前記熱伝達流体を前記殺菌槽に供給する制御を行うとともに、前記殺菌槽の熱回収において、前記熱交換器における前記中温水との熱交換により温度を低下させた前記熱伝達流体を前記殺菌槽に供給する制御を行うように構成されている、請求項3に記載の加熱殺菌装置。
【請求項9】
前記殺菌槽から排出された前記冷却水、前記高温流体および前記中温水の各々を吐出して前記殺菌槽に循環させる循環ポンプを含む循環経路をさらに備え、
前記制御部は、前記循環ポンプにより前記循環経路を介して前記中温水を前記殺菌槽に循環させることにより、前記中温水熱回収制御を行うように構成されている、請求項1に記載の加熱殺菌装置。
【請求項10】
高温流体により加熱殺菌を行う殺菌槽に前記高温流体を供給して前記殺菌槽内の殺菌対象物の加熱殺菌を行うステップと、
冷却水による前記殺菌対象物の冷却の前に、単一の槽からなる中温水槽に貯留された、前記冷却水の温度よりも高く、かつ、前記高温流体の温度よりも低い温度の、前記高温流体とは別個に生成されるとともに、前記単一の槽からなる中温水槽に貯留された中温水を用いて、加熱殺菌後の前記殺菌槽の熱回収を行うステップと、
前記殺菌槽の熱回収の後、前記冷却水により、加熱殺菌された前記殺菌対象物を冷却するステップとを備える、加熱殺菌方法。
【請求項11】
前記殺菌対象物を加熱殺菌する前記高温流体を前記殺菌槽に供給する前に、前記殺菌槽の前記熱回収の際に加熱された前記中温水を用いて前記殺菌槽の予熱を行うステップをさらに備える、請求項1に記載の加熱殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱殺菌装置、殺菌対象物および加熱殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、殺菌対象物を加熱殺菌する加熱殺菌装置が知られている。この加熱殺菌装置は、たとえば、特開2000-69948号公報が知られている。
【0003】
上記特開2000-69948号公報には、被殺菌物(殺菌対象物)を加熱殺菌する調理殺菌装置(加熱殺菌装置)が開示されている。
【0004】
上記特開2000-69948号公報の調理殺菌装置は、殺菌槽と、温水タンクと、冷水タンクと、給水タンクと、噴射ノズルと、熱交換器と、制御装置(制御部)とを備えている。殺菌槽は、内部に被殺菌物を収容する。温水タンクは、噴射ノズルから噴射する温水を貯留するタンクである。噴射ノズルは、殺菌槽内に収容された被殺菌物を加熱殺菌するために、温水タンクから供給される温水を加熱殺菌温度まで昇温させて噴流水(高温流体)として殺菌槽内に噴射する。ここで、調理殺菌装置では、高温の噴流水による加熱殺菌後、温水タンクから供給された温水の温度が所定温度まで下がるように、温水が、熱交換器において給水タンクから供給された水との熱交換により冷却される。そして、調理殺菌装置では、所定温度まで下がった温水が、温水タンクに回収される。その後、調理殺菌装置では、加熱殺菌後の加熱された被殺菌物および殺菌槽を冷却するために、冷水タンクから供給された冷却水を噴流水として殺菌槽内に噴射するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-69948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特開2000-69948号公報の調理殺菌装置では、加熱殺菌温度まで昇温させた高温の温水の温度が、温水タンクに回収される前に、熱交換器における低温の冷水との熱交換により低下してしまう。このため、上記特開2000-69948号公報の調理殺菌装置では、熱回収後の次の加熱殺菌の際に、温水(高温流体)を加熱殺菌温度まで昇温するのに要する時間が長くなるという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、熱回収後の次の加熱殺菌の際に、高温流体を加熱殺菌温度まで昇温するのに要する時間が長くなることを抑制することが可能な加熱殺菌装置、殺菌対象物および加熱殺菌方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の第1の局面による加熱殺菌装置は、高温流体による加熱殺菌を行う殺菌対象物を内部に収容する収容空間を有し、殺菌対象物を加熱殺菌する高温流体および高温流体により加熱殺菌された殺菌対象物を冷却する冷却水が供給される殺菌槽と、単一の槽からなる中温水槽と、冷却水による殺菌対象物の冷却の前に、単一の槽からなる中温水槽に貯留された、冷却水の温度よりも高く、かつ、高温流体の温度よりも低い温度の、高温流体とは別個に生成されるとともに、単一の槽からなる中温水槽に貯留された中温水を用いて、加熱殺菌後の殺菌槽の熱を回収する中温水熱回収制御を行う制御部とを備える。
【0009】
この発明の第1の局面による加熱殺菌装置では、上記のように、単一の槽からなる中温水槽と、冷却水による殺菌対象物の冷却の前に、単一の槽からなる中温水槽に貯留された、冷却水の温度よりも高く、かつ、高温流体の温度よりも低い温度の、高温流体とは別個に生成されるとともに、単一の槽からなる中温水槽に貯留された中温水を用いて、加熱殺菌後の殺菌槽の熱を回収する中温水熱回収制御を行う制御部を設ける。これにより、高温流体とは別個に生成された中温水を用いて加熱殺菌後の殺菌槽の熱回収を行うことにより、高温流体の温度が低下しないようにすることができるので、熱回収後の次の加熱殺菌の際に、高温流体を加熱殺菌温度まで昇温するのに要する時間が長くなることを抑制することができる。また、冷却水による殺菌対象物の冷却の前に、冷却水の温度よりも高い温度の中温水により加熱殺菌後の殺菌槽を冷却することができるので、加熱殺菌後において、殺菌槽の急激な温度変化(急激な温度低下)を抑制することができる。その結果、殺菌槽の膨張および収縮の程度を小さくすることができるので、程度の大きい膨張および収縮が繰り返される場合と異なり、熱応力による金属疲労が大きくなるのを抑制することができ殺菌槽の耐久性が低下する(寿命が短くなる)ことを抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面による加熱殺菌装置において、好ましくは、制御部は、加熱殺菌を行った後の高温流体を殺菌槽から排出した状態で、中温水熱回収制御を行うように構成されている。このように構成すれば、高温流体を排出するだけで高温流体による熱回収を行うことにより、高温流体による熱回収を行うための専用の熱交換器および給水タンクなどが必要ないので、高温流体による熱回収を行うことに起因する装置の大型化を抑制することができる。
【0011】
上記第1の局面による加熱殺菌装置において、好ましくは、制御部は、冷却水による殺菌対象物の冷却の前に、単一の槽からなる中温水槽から供給される中温水を用いて、加熱殺菌後の殺菌槽の熱を回収する中温水熱回収制御を行うとともに、中温水熱回収制御に使用した中温水を単一の槽からなる中温水槽に貯留するように構成されている。このように構成すれば、中温水槽に中温水を貯留することにより、熱回収時に中温水を容易に加熱殺菌後の殺菌槽に供給することができるとともに、熱回収に使用した中温水を排出せず中温水槽に貯留することにより、容易に熱回収した熱を再利用することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、制御部は、高温流体による殺菌対象物の加熱の前に、中温水熱回収制御の際に加熱されて単一の槽からなる中温水槽に貯留された中温水を用いて、殺菌槽を予熱する予熱制御を行うように構成されている。このように構成すれば、熱回収に使用されて加熱された中温水を用いて殺菌槽の予熱を行うことにより、加熱殺菌の開始時の殺菌槽の初期温度を高くすることができるので、予熱を行わない場合と比較して、高温流体を加熱殺菌を行う温度まで上昇させる昇温の際に高温流体に与える熱量を小さくすることができる。すなわち、中温水を用いることにより熱回収した熱を予熱に有効利用することができる。その結果、予熱を行う場合に、加熱殺菌装置において必要となる熱エネルギーを減少させることができるので、その分、高温水の昇温のために使用する(高温)蒸気の使用量を低減することができる。
【0013】
上記制御部は、中温水を用いて、殺菌槽を予熱する予熱制御を行うように構成された加熱殺菌装置において、好ましくは、殺菌槽と単一の槽からなる中温水槽とを互いに接続する第1接続経路をさらに備え、制御部は、熱回収後の殺菌槽内の中温水を第1接続経路を介して単一の槽からなる中温水槽に回収して貯留する制御、および、予熱時に第1接続経路を介して殺菌槽に中温水を供給する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、第1接続経路を用いて、容易に、熱回収後の中温水の中温水槽への貯留、および、予熱時の中温水の中温水槽から殺菌槽への供給を行うことができる。
【0014】
上記制御部は、中温水を用いて、殺菌槽を予熱する予熱制御を行うように構成された加熱殺菌装置において、好ましくは、制御部は、殺菌槽の予熱および殺菌槽の熱回収の各々において、単一の槽からなる中温水槽から供給される中温水を殺菌対象物に向けて放出する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、殺菌槽の予熱の際に、放出された中温水を殺菌対象物に当てることにより中温水の温度を下げて、殺菌槽には温度が下がった中温水を当てることができるので、予熱時の低温の殺菌槽の急激な温度変化を抑制することができる。また、殺菌槽の熱回収の際に、放出された中温水を殺菌対象物に当てることにより中温水の温度を上げて、殺菌槽には温度が上がった中温水を当てることができるので、熱回収時の高温の殺菌槽の急激な温度変化を抑制することができる。これらにより、殺菌槽の予熱および殺菌槽の熱回収の各々において、急激な温度変化による熱応力の増大に起因する殺菌槽の耐久性の低下を抑制することができる。
【0015】
上記第1の局面による加熱殺菌装置において、好ましくは、殺菌槽に貯留された加熱殺菌後の高温流体である高温水を回収して貯留する高温水槽と、殺菌槽と高温水槽とを互いに接続する第2接続経路とをさらに備え、制御部は、殺菌対象物の加熱殺菌が終了して殺菌槽内から排出した高温水を第2接続経路を介して高温水槽内に回収した後、殺菌槽の中温水熱回収制御を行うように構成されている。このように構成すれば、殺菌槽と高温水槽とを互いに接続する専用の第2接続経路を介して殺菌槽内の高温水を回収することにより、加熱殺菌制御後、高温水の熱が奪われないようにすることができるので、高温水槽に回収する高温水の温度が低下するのを抑制することができる。
【0016】
上記中温水槽を備える加熱殺菌装置において、好ましくは、中温水により加熱される熱伝達流体を供給する熱伝達流体供給部と、単一の槽からなる中温水槽に貯留された中温水と、熱伝達流体供給部から供給される熱伝達流体との熱交換を行う熱交換器とをさらに備え、制御部は、殺菌槽の予熱において、熱交換器における中温水との熱交換により温度を上昇させた熱伝達流体を殺菌槽に供給する制御を行うとともに、殺菌槽の熱回収において、熱交換器における中温水との熱交換により温度を低下させた熱伝達流体を殺菌槽に供給する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、中温水を直接殺菌槽に供給する場合と比較して、殺菌槽の予熱において、予熱する温度を低下させることができるので、殺菌槽の急激な温度変化をより抑制することができる。
【0017】
上記第1の局面による加熱殺菌装置において、好ましくは、中温水により加熱される熱伝達流体を供給する熱伝達流体供給部と、単一の槽からなる中温水槽に貯留された中温水と、熱伝達流体供給部から供給される熱伝達流体との熱交換を行う熱交換器とをさらに備え、制御部は、殺菌槽の予熱において、熱交換器における中温水との熱交換により温度を上昇させた熱伝達流体を殺菌槽に供給する制御を行うとともに、殺菌槽の熱回収において、熱交換器における中温水との熱交換により温度を低下させた熱伝達流体を殺菌槽に供給する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、加熱殺菌制御および冷却制御の各々において使用される循環経路を熱回収制御において共通で利用することができるので、加熱殺菌装置の経路の増大に起因する構造の複雑化および大型化を抑制することができる。
【0020】
この発明の第の局面による加熱殺菌方法は、高温流体により加熱殺菌を行う殺菌槽に高温流体を供給して殺菌槽内の殺菌対象物の加熱殺菌を行うステップと、冷却水による殺菌対象物の冷却の前に、単一の槽からなる中温水槽に貯留された、冷却水の温度よりも高く、かつ、高温流体の温度よりも低い温度の、高温流体とは別個に生成されるとともに、単一の槽からなる中温水槽に貯留された中温水を用いて、加熱殺菌後の殺菌槽の熱回収を行うステップと、殺菌槽の熱回収の後、冷却水により、加熱殺菌された殺菌対象物を冷却するステップとを備える。
【0021】
この発明の第の局面による加熱殺菌方法では、上記のように、冷却水による殺菌対象物の冷却の前に、単一の槽からなる中温水槽に貯留された、冷却水の温度よりも高く、かつ、高温流体の温度よりも低い温度の、高温流体とは別個に生成されるとともに、単一の槽からなる中温水槽に貯留された中温水を用いて、加熱殺菌後の殺菌槽の熱回収を行うステップと、殺菌槽の熱回収の後、冷却水により、加熱殺菌された殺菌対象物を冷却するステップを設ける。これにより、高温流体とは別個に生成された中温水を用いて加熱殺菌後の殺菌槽の熱回収を行うことにより、高温流体の温度が低下しないようにすることができるので、熱回収後の次の加熱殺菌の際に、高温流体を加熱殺菌温度まで昇温するのに要する時間が長くなることを抑制することが可能で、かつ、急激な温度変化による熱応力の増大に起因する殺菌槽の耐久性の低下を抑制することが可能な加熱殺菌方法を提供することができる。
【0022】
上記第の局面による加熱殺菌方法において、好ましくは、殺菌対象物を加熱殺菌する高温流体を殺菌槽に供給する前に、殺菌槽の熱回収の際に加熱された中温水を用いて殺菌槽の予熱を行うステップをさらに備える。このように構成すれば、熱回収に使用されて加熱された中温水を用いて殺菌槽の予熱を行うことにより、加熱殺菌の開始時の殺菌槽の初期温度を高くすることができるので、予熱を行わない場合と比較して、高温流体を加熱殺菌を行う温度まで上昇させる昇温の際に高温流体に与える熱量を小さくすることができる。すなわち、中温水を用いることにより熱回収した熱を予熱に有効利用することができる。その結果、予熱を行う場合に、加熱殺菌装置において必要となる熱エネルギーの増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記のように、熱回収後の次の加熱殺菌の際に、高温流体の加熱殺菌温度まで昇温するのに要する時間が長くなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態の加熱殺菌装置を示した模式図である。
図2】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御において、熱回収で回収した熱を次回の加熱殺菌制御の予熱工程に利用することの概要を示したブロック図である。
図3】本実施形態の加熱殺菌装置による加熱殺菌制御の時間と殺菌槽の温度変化との関係を示したグラフである。
図4】比較例の加熱殺菌装置による加熱殺菌制御の時間と殺菌槽の温度変化との関係を示したグラフである。
図5】本実施形態の加熱殺菌装置の搬入工程の前に行われる高温水の準備を示した模式図である。
図6】本実施形態の加熱殺菌装置の搬入工程の前に行われる中温水の準備を示した模式図である。
図7】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における搬入工程を示した模式図である。
図8】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における予熱工程の中温水注入工程を示した模式図であり、図7に示す搬入工程に続く中温水注入工程を示した図である。
図9】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における予熱工程の中温水循環工程を示した模式図であり、図8に示す中温水注入工程に続く中温水循環工程を示した図である。
図10】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における予熱工程の中温水回収工程を示した模式図であり、図9に示す中温水循環工程に続く中温水回収工程を示した図である。
図11】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における対象物加熱工程の高温水注入工程を示した模式図であり、図10に示す中温水回収工程に続く高温水注入工程を示した図である。
図12】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における対象物加熱工程の昇温工程および加熱殺菌工程を示した模式図であり、図11に示す高温水注入工程に続く昇温工程を示した図である。
図13】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における高温水熱回収工程において高温水を高温水槽に回収することにより熱回収を行う工程を示した模式図であり、図12に示す昇温工程に続く高温水熱回収工程を示した図である。
図14】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における中温水熱回収工程の中温水注入工程を示した模式図であり、図13に示す高温水熱回収工程に続く中温水注入工程を示した図である。
図15】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における中温水熱回収工程の中温水循環工程を示した模式図であり、図14に示す中温水注入工程に続く中温水循環工程を示した図である。
図16】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における中温水熱回収工程の中温水回収工程を示した模式図であり、図15に示す中温水循環工程に続く中温水回収工程を示した図である。
図17】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における対象物冷却工程の冷却水注入工程を示した模式図であり、図16に示す中温水回収工程に続く冷却水注入工程を示した図である。
図18】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における対象物冷却工程の冷却工程を示した模式図であり、図17に示す冷却水注入工程に続く冷却工程を示した図である。
図19】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における対象物冷却工程の冷却水回収工程を示した模式図であり、図18に示す冷却工程に続く冷却水回収工程を示した図である。
図20】本実施形態の加熱殺菌装置の加熱殺菌制御における搬出工程を示した模式図である。
図21】比較例の加熱殺菌装置による加熱殺菌制御のグラフと、本実施形態の加熱殺菌装置による加熱殺菌制御のグラフとを比較した図である。
図22】本実施形態の加熱殺菌装置による加熱殺菌方法を示したフローチャートである。
図23】本実施形態の第1変形例の貯湯式の加熱殺菌装置の対象物加熱工程の状態を示した模式図である。
図24】本実施形態の第2変形例の蒸気式の加熱殺菌装置の対象物加熱工程の状態を示した模式図である。
図25】本実施形態の第3変形例の加熱殺菌装置を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0026】
図1図22を参照して、本実施形態による加熱殺菌装置100の構成について説明する。
【0027】
(加熱殺菌装置)
図1に示すように、本実施形態による加熱殺菌装置100は、たとえば、食品を封入したレトルトパウチRpを、高温水Hthにより加熱することにより、食品およびレトルトパウチRpを加熱殺菌するスプレー式の装置である。なお、食品を封入したレトルトパウチRpは、請求の範囲の「殺菌対象物」の一例である。また、高温水Hthは、請求の範囲の「高温流体」の一例である。
【0028】
本実施形態によるスプレー式の加熱殺菌装置100は、図1に示すように、殺菌槽1と、スプレーノズル2と、高温水槽3と、中温水槽4と、循環経路5と、供給経路6と、排出経路7と、排出経路8と、供給経路9と、排出経路10と、熱交換器11と、制御部12とを備えている。
【0029】
(殺菌槽)
殺菌槽1は、レトルトパウチRpを高温水Hthにより加熱殺菌するとともに、加熱殺菌されたレトルトパウチRpを冷却水Cwにより冷却する密閉容器である。また、殺菌槽1には、レトルトパウチRpの予熱および熱回収の各々を行うために、中温水Htmが供給される。ここで、中温水Htmは、冷却水Cwの温度よりも高く、かつ、高温水Hthの温度よりも低い温度の、高温水Hthとは別個に生成された水である。なお、中温水Htmを用いた予熱および熱回収に関しては、後に詳細に説明する。殺菌槽1は、搬入出用扉1aと、温度センサ1bと、水位センサ1cと、収容空間1dと、貯留空間1eとを含んでいる。
【0030】
搬入出用扉1aは、複数のレトルトパウチRpを載置したトレーTrを複数段積み上げた状態で、殺菌槽1に搬入する際、および、殺菌槽1から搬出する際の各々において、ユーザの操作により開閉される扉である。温度センサ1bは、殺菌槽1内の温度を計測するためのセンサである。水位センサ1cは、貯留空間1eに貯留する高温水Hth、中温水Htmおよび冷却水Cwの各々の水位を計測するためのセンサである。収容空間1dは、高温水Hthによる加熱殺菌を行うレトルトパウチRpを内部に収容する空間である。貯留空間1eは、予熱、加熱殺菌、熱回収および冷却の各々を行う際に、高温水Hth、中温水Htmおよび冷却水Cwの各々を貯留させるための空間である。貯留空間1eは、収容空間1dにおいて、複数段積み上げたトレーTrのうちの最下段のトレーTrよりも下側の空間である。
【0031】
(スプレーノズル)
本実施形態によるスプレー式の加熱殺菌装置100におけるスプレーノズル2は、高温水Hth、中温水Htmおよび冷却水Cwの各々を殺菌槽1内に放出するように構成されている。スプレーノズル2は、複数の噴射口2aを含んでいる。複数の噴射口2aの各々は、複数段積み上げたトレーTrの位置に合わせて配置されている。これにより、スプレーノズル2から放出された高温水Hth、中温水Htmおよび冷却水Cwの各々は、トレーTrに載置されたレトルトパウチRpに向けて放出される。このような構成のスプレーノズル2は、殺菌槽1内に複数配置されている。
【0032】
(高温水槽)
図1に示すように、高温水槽3は、殺菌槽1に貯留された加熱殺菌後の高温流体である高温水Hthを回収して貯留するタンクである。高温水槽3は、貯留空間1eの容量と、循環経路5の容量と、供給経路6の容量とを合わせた容量の高温水Hthを貯留可能な温水貯留空間を有している。高温水槽3は、温度センサ3aと、水位センサ3bとを含んでいる。温度センサ3aは、高温水槽3内の温度を計測するためのセンサである。水位センサ3bは、温水貯留空間に貯留された高温水Hthの水位を計測するためのセンサである。
【0033】
(中温水槽)
ここで、本実施形態における中温水槽4は、殺菌槽1に貯留された予熱後および熱回収後の各々の中温水Htmを回収して貯留するタンクである。中温水槽4は、貯留空間1eの容量と、循環経路5の容量と、供給経路6の容量とを合わせた容量の中温水Htmを貯留可能な中温水貯留空間を有している。中温水槽4は、図1に示すように、温度センサ4aと、水位センサ4bとを含んでいる。温度センサ4aは、中温水槽4内の温度を計測するためのセンサである。水位センサ4bは、中温水貯留空間に貯留された中温水Htmの水位を計測するためのセンサである。
【0034】
(循環経路)
図1に示すように、循環経路5は、殺菌槽1から排出した冷却水Cw、高温水Hthおよび中温水Htmの各々を熱交換器11を介して、殺菌槽1内に戻す経路である。循環経路5は、排出管路5aと、排出管路5bと、上流側管路5cと、下流側管路5dと、温度センサ5eと、循環ポンプ5fと、流路切換弁5gとを含んでいる。
【0035】
排出管路5aおよび排出管路5bの各々は、貯留空間1eに貯留された冷却水Cw、高温水Hthおよび中温水Htmの各々を排出する管路である。上流側管路5cは、熱交換器11と、排出管路5aおよび排出管路5bの各々とを接続している。下流側管路5dは、熱交換器11と、殺菌槽1とを接続している。循環ポンプ5fは、殺菌槽1から排出された冷却水Cw、高温水Hthおよび中温水Htmの各々を吐出して殺菌槽1に循環させるポンプである。また、循環ポンプ5fは、殺菌槽1から排出された高温水Hthを高温水槽3に戻すポンプである。循環ポンプ5fは、殺菌槽1から排出された中温水Htmを中温水槽4に戻すポンプである。流路切換弁5gは、冷却水Cw、高温水Hthおよび中温水Htmの各々が流れる流路を切り替えるための弁である。
【0036】
(供給経路)
供給経路6は、循環経路5から分岐して、高温水槽3に高温水Hthを供給する管路である。また、供給経路6は、循環経路5から分岐して、中温水槽4に中温水Htmを供給する管路である。供給経路6は、共通管路6aと、分岐管路6bと、分岐管路6cと、流路切換弁6dと、流路切換弁6eとを含んでいる。共通管路6aは、循環経路5に接続されているとともに、高温水槽3および中温水槽4に対しての共通の管路である。分岐管路6bは、共通管路6aから分岐して高温水槽3に接続されている。分岐管路6cは、共通管路6aから分岐して中温水槽4に接続されている。
【0037】
(排出経路)
排出経路7は、高温水槽3内の高温水Hthを循環経路5に流入させるために、高温水槽3と排出経路8とを接続している管路である。排出経路7は、接続管路7aと、流路切換弁7bとを含んでいる。排出経路8は、中温水槽4内の中温水Htmを循環経路5に流入させるために、中温水槽4と循環経路5とを接続している管路である。排出経路8は、接続管路8aと、流路切換弁8bとを含んでいる。
【0038】
ここで、循環経路5と、供給経路6の共通管路6aおよび分岐管路6cと、排出経路8の接続管路8aとは、殺菌槽1と中温水槽4とを互いに接続する、請求の範囲の「第1接続経路」の一例である。また、循環経路5と、供給経路6の共通管路6aおよび分岐管路6bと、排出経路8の接続管路8aとは、殺菌槽1と高温水槽3とを互いに接続する、請求の範囲の「第2接続経路」の一例である。また、循環経路5には、加熱殺菌装置100が設置された工場に設けられた冷却水源200から供給される冷却水Cwが流入する。冷却水Cwは、上流側管路5cの循環ポンプ5fよりも上流側の部分に供給される。
【0039】
(供給経路)
供給経路9は、加熱殺菌装置100が設置された工場に設けられた、ボイラー設備の蒸気入口301、および、冷却水源の冷却水入口401の各々と、熱交換器11とを接続する経路である。供給経路9は、共通管路9aと、接続管路9bと、流路切換弁9cと、流路切換弁9dとを含んでいる。
【0040】
(排出経路)
排出経路10は、加熱殺菌装置100が設置された工場に設けられた、蒸気ドレン302、および、冷却水出口402の各々と、熱交換器11とを接続する経路である。排出経路10は、共通管路10aと、接続管路10bと、流路切換弁10cと、流路切換弁10dと、スチームトラップ10eとを含んでいる。
【0041】
(熱交換器)
図1に示すように、熱交換器11は、循環経路5を流れる冷却水Cwおよび高温水Hthの各々と、蒸気入口301から流入する蒸気とを熱交換させることにより、冷却水Cwおよび高温水Hthの各々を加熱する部材である。熱交換器11は、循環経路5を流れる冷却水Cwと、冷却水入口401から流入する冷却水とを熱交換させることにより、冷却水Cwを冷却する部材である。
【0042】
(制御部)
制御部12は、加熱殺菌装置100を制御するように構成されている。制御部12は、CPU(Central Processing Unit)と、SSD(Solid State Drive)またはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリとを含んでいる。記憶部には、加熱殺菌装置100における、レトルトパウチRpの搬入および搬出に関する制御と、レトルトパウチRpの加熱殺菌、冷却、予熱および熱回収に関する制御とを行う加熱殺菌プログラムが記憶されている。
【0043】
制御部12は、温度センサ1b、水位センサ1c、温度センサ3a、水位センサ3b、温度センサ4a、水位センサ4b、温度センサ5eと、循環ポンプ5f、流路切換弁5g、流路切換弁6d、流路切換弁6e、流路切換弁7b、流路切換弁8b、流路切換弁9c、流路切換弁9d、流路切換弁10c、および、流路切換弁10dの各々と電気的に接続されている。また、制御部12は、上記したセンサだけでなく、流量計測センサおよび圧力センサなどとも電気的に接続されている。
【0044】
制御部12は、各種センサのうちから必要な計測情報に基づいて、レトルトパウチRpの搬入および搬出に関する制御と、レトルトパウチRpの加熱殺菌、冷却、予熱および熱回収に関する制御とを行う。
【0045】
(本実施形態の加熱殺菌装置の動作制御の概要)
まず、本実施形態の加熱殺菌装置100の動作制御(以下、「加熱殺菌制御」という)の概要(コンセプト)について、図2を参照して説明する。
【0046】
図2に示すように、本実施形態の加熱殺菌制御は、予熱工程、対象物加熱工程、高温水熱回収工程、中温水熱回収工程および対象物冷却工程を一連の処理として含んでいる。本実施形態の加熱殺菌制御では、一連の処理を含む加熱殺菌制御を複数回行う場合の、必要な熱エネルギーの総量を減少させる。
【0047】
具体的には、対象物加熱工程の前に、低温の殺菌槽1およびレトルトパウチRp(殺菌対象物)を加熱する予熱工程を行っている。この予熱工程では、対象物加熱工程の際に、高温水Hthの熱が殺菌槽1に奪われる熱量を減少させつつ、高温水HthによりレトルトパウチRpを加熱殺菌を行う加熱殺菌温度Tstまで昇温しやすくなる。
【0048】
ここで、本実施形態の加熱殺菌制御では、図2に示すように、1回目の加熱殺菌制御で加熱殺菌を行った後の高温の殺菌槽1およびレトルトパウチRp(殺菌対象物)から、中温水熱回収工程において熱を回収して温度を(約90℃に)上昇させた中温水Htmが、2回目の加熱殺菌制御の予熱に利用されて中温水Htmの温度が約90℃から約50℃まで低下される。そして、2回目の加熱殺菌制御において回収した熱が、3回目の予熱に利用されるように、2回目以降においても同様に熱回収した熱の利用が繰り返し行われる。
【0049】
これにより、予熱を行うための加熱に必要な熱エネルギーを、本来であれば、対象物冷却工程において冷却水Cwを介して排出されていた、高温の殺菌槽1およびレトルトパウチRp(殺菌対象物)から得ているので、一連の処理を含む加熱殺菌制御を複数回行う場合の、必要な熱エネルギーの総量が減少される。
【0050】
(本実施形態の加熱殺菌制御の詳細)
以下、図3図22を参照して、本実施形態の予熱工程および中温水熱回収工程を含む加熱殺菌制御の詳細について説明する。
【0051】
図3に示すように、本実施形態による加熱殺菌制御は、搬入工程、予熱工程(予熱制御)、対象物加熱工程(殺菌対象物加熱殺菌制御)、高温水熱回収工程(高温水熱回収制御)、中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)、対象物冷却工程(殺菌対象物冷却制御)および搬出工程を順に行う制御である。予熱工程は、中温水注入工程、中温水循環工程および中温水回収工程の各々を含んでいる。対象物加熱工程は、高温水注入工程、昇温工程および加熱殺菌工程の各々を含んでいる。中温水熱回収工程は、中温水注入工程、中温水循環工程および中温水回収工程の各々を含んでいる。対象物冷却工程は、冷却水給水工程、冷却工程および冷却水回収工程の各々を含んでいる。
【0052】
上記した工程を含む本実施形態の加熱殺菌制御に対して、図4に示す比較例(従来例に相当)の加熱殺菌制御では、レトルトパウチの搬入工程および搬出工程に関する制御と、レトルトパウチの加熱殺菌工程、高温水熱回収工程および冷却工程に関する制御とが行われている。すなわち、この比較例の加熱殺菌制御を行う加熱殺菌装置は、中温水を貯留する中温槽を備えていないとともに、中温水を用いた予熱および熱回収の制御を行わない。
【0053】
このように、本実施形態の加熱殺菌制御の上記した複数の工程のうち、予熱工程および中温水熱回収工程が、比較例の加熱殺菌制御にない差異となる構成である。以下、詳細に説明する。
【0054】
〈温水の準備〉
まず、図5に示すように、搬入工程の前に、高温水Hthの事前準備が行われる。
【0055】
具体的には、制御部12は、流路切換弁5g、流路切換弁6eおよび流路切換弁8bを閉状態にするとともに、流路切換弁6dおよび流路切換弁7bを開状態にすることにより、温水準備循環路Ci1を形成する制御を行う。そして、制御部12は、冷却水源200から供給された冷却水Cwを温水準備循環路Ci1を循環ポンプ5fにより循環させながら、熱交換器11における蒸気との熱交換により循環する冷却水Cwを加熱することにより、高温の高温水Hthを準備する制御を行う。ここで、温水準備循環路Ci1は、上流側管路5c、下流側管路5d、共通管路6a、分岐管路6b、接続管路7aおよび接続管路8aを有している。温水準備循環路Ci1では、接続管路7a、接続管路8a、上流側管路5c、下流側管路5d、共通管路6aおよび分岐管路6bの順に冷却水Cwが流れる。
【0056】
〈中温水の準備〉
また、図6に示すように、搬入工程の前に、中温水Htmの事前準備が行われる。
【0057】
具体的には、制御部12は、高温水Hthを準備した後、流路切換弁5g、流路切換弁6dおよび流路切換弁7bを閉状態にするとともに、流路切換弁6eおよび流路切換弁8bを開状態にすることにより、中温水準備循環路Ci2を形成する制御を行う。そして、制御部12は、冷却水源200から供給された冷却水Cwを循環ポンプ5fにより中温水準備循環路Ci2を循環させながら、熱交換器11における蒸気との熱交換により循環する冷却水Cwを加熱することにより、中温(約90℃)の中温水Htmを準備する制御を行う。ここで、中温水準備循環路Ci2は、上流側管路5c、下流側管路5d、共通管路6a、分岐管路6cおよび接続管路8aを有している。中温水準備循環路Ci2では、接続管路8a、上流側管路5c、下流側管路5d、共通管路6aおよび分岐管路6cの順に冷却水Cwが流れる。
【0058】
〈搬入工程〉
図7に示すように、中温水Htmおよび高温水Hthを準備した後、搬入工程が行われる。搬入工程では、複数のレトルトパウチRpを載置したトレーTrが複数段積み上げられた状態で、ユーザの操作により殺菌槽1に搬入される。
【0059】
〈予熱工程〉
図8に示すように、制御部12は、高温水HthによるレトルトパウチRpの加熱殺菌の前に、中温水槽4から供給される中温水Htmを用いて、殺菌槽1およびレトルトパウチRpを予熱する制御を行う。これにより、殺菌槽1に高温水Hthを注入する前に中温水Htmで殺菌槽1を予熱するので、殺菌槽1の急激な温度変化Tch1(図4の比較例参照)が抑制される。
【0060】
具体的には、制御部12は、流路切換弁6d、流路切換弁6eおよび流路切換弁7bを閉状態にするとともに、流路切換弁5gおよび流路切換弁8bを開状態にすることにより、中温水注入路Sp1を形成する制御を行う。そして、制御部12は、循環ポンプ5fにより中温水槽4内の中温水Htmを中温水注入路Sp1を介して殺菌槽1に注入する制御を行う(中温水注入工程(図3参照))。ここで、中温水注入路Sp1は、上流側管路5c、下流側管路5d、および、接続管路8aを有している。中温水注入路Sp1では、接続管路8a、上流側管路5cおよび下流側管路5dの順で中温水Htmが流れる。
【0061】
このように、制御部12は、予熱時に上流側管路5c、下流側管路5d、および、接続管路8aを介して殺菌槽1に中温水Htmを供給する制御を行う。
【0062】
図9に示すように、制御部12は、中温水Htmを注入した後、流路切換弁6d、流路切換弁6e、流路切換弁7bおよび流路切換弁8bを閉状態にするとともに、流路切換弁5gを開状態にすることにより、中温水循環路Ci3を形成する制御を行う。そして、制御部12は、熱交換器11において熱交換させずに、循環ポンプ5fにより、中温水循環路Ci3を介して中温水Htmを殺菌槽1に循環させることによって、予熱制御を行う(中温水循環工程(図3参照))。ここで、中温水循環路Ci3は、循環経路5(排出管路5a、排出管路5b、上流側管路5cおよび下流側管路5d)を有している。中温水循環路Ci3では、排出管路5aおよび排出管路5bの各々と、上流側管路5cと、下流側管路5dとの順で中温水Htmが流れる。
【0063】
この際、制御部12は、殺菌槽1の予熱において、中温水槽4から供給される中温水HtmをレトルトパウチRpに向けて放出する制御を行う。ここで、予熱工程において、中温水Htmの温度は、殺菌槽1およびレトルトパウチRpに熱を与えたことにより、予熱後温度(約50℃)まで下がっている。
【0064】
図10に示すように、制御部12は、所定時間の間、中温水Htmを循環させた後、予熱後の殺菌槽1内の中温水Htmを中温水回収路Re1を介して中温水槽4に回収して貯留する制御を行う。
【0065】
具体的には、制御部12は、所定時間の間、中温水Htmを循環させた後、流路切換弁5g、流路切換弁6d、流路切換弁7bおよび流路切換弁8bを閉状態にするとともに、流路切換弁6eを開状態にすることにより、中温水回収路Re1を形成する制御を行う。そして、制御部12は、循環ポンプ5fにより中温水回収路Re1を介して中温水Htmを中温水槽4に回収する回収制御を行う(中温水回収工程(図3参照))。ここで、中温水回収路Re1は、排出管路5a、排出管路5b、上流側管路5c、下流側管路5d、共通管路6aおよび分岐管路6cを有している。中温水回収路Re1では、排出管路5aおよび排出管路5bの各々と、上流側管路5cと、下流側管路5dと、共通管路6aと、分岐管路6cとの順で中温水Htmが流れる。
【0066】
そして、制御部12は、殺菌槽1内の中温水Htmを中温水回収路Re1を介して中温水槽4内に回収した後、レトルトパウチRpの対象物加熱工程を行う。この際、水位センサ1cにより、中温水Htmが殺菌槽1から排出されたことを確認することにより、高温水Hthの温度が、中温水Htmにより低下することが抑制される。
【0067】
〈対象物加熱工程〉
図11および図12に示すように、制御部12は、中温水HtmによるレトルトパウチRpの予熱の後に、高温水槽3から供給される高温水Hthを用いて、レトルトパウチRpを加熱殺菌する制御を行う。
【0068】
具体的には、図11に示すように、制御部12は、流路切換弁6d、流路切換弁6eおよび流路切換弁8bを閉状態にするとともに、流路切換弁5gおよび流路切換弁7bを開状態にすることにより、温水注入路Sp2を形成する制御を行う。そして、制御部12は、循環ポンプ5fにより高温水槽3内の中温水Htmを温水注入路Sp2を介して殺菌槽1に注入する制御を行う(高温水注入工程(図3参照))。ここで、温水注入路Sp2は、上流側管路5c、下流側管路5d、接続管路7aおよび接続管路8aを有している。温水注入路Sp2では、接続管路7a、接続管路8a、上流側管路5cおよび下流側管路5dの順で高温水Hthが流れる。
【0069】
図12に示すように、制御部12は、高温水Hthを注入した後、流路切換弁6d、流路切換弁6e、流路切換弁7bおよび流路切換弁8bを閉状態にするとともに、流路切換弁5gを開状態にすることにより、昇温・加熱殺菌循環路Ci4を形成する制御を行う。そして、制御部12は、循環ポンプ5fにより、昇温・加熱殺菌循環路Ci4を介して高温水Hthを殺菌槽1に循環させながら、熱交換器11において蒸気との熱交換により高温水Hthを加熱殺菌温度Tst(たとえば、約120℃より高温)まで昇温させる昇温制御を行う(昇温工程(図3参照))。ここで、昇温・加熱殺菌循環路Ci4は、循環経路5(排出管路5a、排出管路5b、上流側管路5cおよび下流側管路5d)を有している。昇温・加熱殺菌循環路Ci4では、排出管路5aおよび排出管路5bの各々と、上流側管路5cと、下流側管路5dとの順で高温水Hthが流れる。なお、加熱殺菌温度Tstが、約120℃より高温というのはあくまで一例であり、加熱殺菌対象物の種類により異なる。
【0070】
また、制御部12は、高温水Hthを加熱殺菌温度Tstまで昇温させた後、循環ポンプ5fにより、昇温・加熱殺菌循環路Ci4を介して高温水Hthを殺菌槽1に循環させながら、熱交換器11において蒸気との熱交換により高温水Hthを加熱殺菌温度Tstを維持する加熱殺菌制御を行う(加熱殺菌工程)。
【0071】
〈高温水熱回収工程〉
図13に示すように、制御部12は、所定時間の間、高温水Hthによる加熱殺菌の後、加熱殺菌後の殺菌槽1内の高温水Hthを温水回収路Re2を介して高温水槽3に回収して貯留する制御を行う。高温水熱回収工程は、加熱殺菌後の温度を維持した状態で高温水Hthを高温水槽3に回収する工程である。
【0072】
具体的には、制御部12は、所定時間の間、高温水Hthによる加熱殺菌の後、流路切換弁5g、流路切換弁6e、流路切換弁7bおよび流路切換弁8bを閉状態にするとともに、流路切換弁6dを開状態にすることにより、温水回収路Re2を形成する制御を行う。そして、制御部12は、循環ポンプ5fにより温水回収路Re2を介して高温水Hthを高温水槽3に回収する回収制御を行う(高温水熱回収工程(図3参照))。ここで、温水回収路Re2は、排出管路5a、排出管路5b、上流側管路5c、下流側管路5d、共通管路6aおよび分岐管路6bを有している。温水回収路Re2では、排出管路5aおよび排出管路5bの各々と、上流側管路5cと、下流側管路5dと、共通管路6aと、分岐管路6bとの順で高温水Hthが流れる。
【0073】
そして、制御部12は、殺菌槽1内から排出した高温水Hthを温水回収路Re2を介して高温水槽3内に回収した後、殺菌槽1およびレトルトパウチRpの中温水熱回収工程を行う。すなわち、制御部12は、加熱殺菌を行った後の高温水Hthを殺菌槽1から排出した状態で、中温水熱回収工程制御を行う。この際、水位センサ1cにより、高温水Hthが殺菌槽1から排出されたことを確認することにより、中温水Htmの温度が、高温水Hthにより上昇することが抑制される。
【0074】
〈中温水熱回収工程〉
図14図16に示すように、制御部12は、冷却水CwによるレトルトパウチRpの冷却の前に、中温水槽4から供給される中温水Htmを用いて、殺菌槽1およびレトルトパウチRpの熱を回収する中温水熱回収工程を行う。これにより、殺菌槽1に冷却水Cwを注入する前に中温水Htmで殺菌槽1の熱を回収するので、殺菌槽1の急激な温度変化Tch2(図4の比較例参照)が抑制される。
【0075】
具体的には、図14に示すように、制御部12は、流路切換弁6d、流路切換弁7bおよび流路切換弁6eを閉状態にするとともに、流路切換弁5gおよび流路切換弁8bを開状態にすることにより、中温水注入路Sp3を形成する制御を行う。そして、制御部12は、循環ポンプ5fにより中温水槽4内の中温水Htmを中温水注入路Sp3を介して殺菌槽1に注入する制御を行う(中温水注入工程(図3参照))。ここで、中温水注入路Sp3は、上流側管路5c、下流側管路5dおよび接続管路8aを有している。中温水注入路Sp3では、接続管路8a、上流側管路5cおよび下流側管路5dの順で中温水Htmが流れる。
【0076】
図15に示すように、制御部12は、中温水Htmを注入した後、流路切換弁6d、流路切換弁6e、流路切換弁7bおよび流路切換弁8bを閉状態にするとともに、流路切換弁5gを開状態にすることにより、熱回収循環路Ci5を形成する制御を行う。そして、制御部12は、熱交換器11において熱交換させずに、循環ポンプ5fにより、熱回収循環路Ci5を介して中温水Htmを殺菌槽1に循環させることによって、中温水熱回収制御を行う(中温水循環工程(図3参照))。ここで、熱回収循環路Ci5は、循環経路5(排出管路5a、排出管路5b、上流側管路5cおよび下流側管路5d)を有している。熱回収循環路Ci5では、排出管路5aおよび排出管路5bの各々と、上流側管路5cと、下流側管路5dとの順で中温水Htmが流れる。
【0077】
この際、制御部12は、殺菌槽1の熱回収において、中温水槽4から供給される中温水HtmをレトルトパウチRpに向けて放出する制御を行う。ここで、中温水循環工程において、中温水Htmの温度は、殺菌槽1およびレトルトパウチRpの各々などから熱を奪うことにより、熱回収後温度(約90℃)まで上昇する。
【0078】
図16に示すように、制御部12は、所定時間の間、中温水Htmを循環させた後、熱回収後の殺菌槽1内の中温水Htmを中温水回収路Re3を介して中温水槽4に回収して貯留する制御を行う。
【0079】
具体的には、制御部12は、所定時間の間、中温水Htmを循環させた後、流路切換弁5g、流路切換弁6d、流路切換弁7bおよび流路切換弁8bを閉状態にするとともに、流路切換弁6eを開状態にすることにより、中温水回収路Re3を形成する制御を行う。そして、制御部12は、循環ポンプ5fにより中温水回収路Re3を介して中温水Htmを中温水槽4に回収する回収制御を行う(中温水回収工程(図3参照))。ここで、中温水回収路Re3は、排出管路5a、排出管路5b、上流側管路5c、下流側管路5d、共通管路6aおよび分岐管路6cを有している。中温水回収路Re3では、排出管路5aおよび排出管路5bの各々と、上流側管路5cと、下流側管路5dと、共通管路6aと、分岐管路6cとの順で中温水Htmが流れる。
【0080】
このように、制御部12は、冷却水CwによるレトルトパウチRpの対象物冷却工程の前に、中温水槽4から供給される中温水Htmを用いて、加熱殺菌後の殺菌槽1の熱を回収する中温水熱回収工程を行うとともに、中温水熱回収工程に使用した中温水Htmを中温水槽4に貯留する制御を行う。すなわち、制御部12は、熱回収後の殺菌槽1内の中温水Htmを、排出管路5a、排出管路5b、上流側管路5c、下流側管路5d、共通管路6aおよび分岐管路6cを介して中温水槽4に回収して貯留する制御を行う。
【0081】
そして、制御部12は、殺菌槽1内の中温水Htmを中温水回収路Re3を介して中温水槽4内に回収した後、レトルトパウチRpの冷却工程を行う。この際、水位センサ1cにより、中温水Htmが殺菌槽1から排出されたことを確認することにより、冷却水Cwの温度が、中温水Htmにより上昇することが抑制される。
【0082】
〈対象物冷却工程〉
図17図19に示すように、制御部12は、中温水HtmによるレトルトパウチRpの熱回収の後に、冷却水源200(図1参照)から供給される冷却水Cwを用いて、レトルトパウチRpおよび殺菌槽1を冷却する冷却工程を行う。
【0083】
具体的には、図17に示すように、制御部12は、流路切換弁6d、流路切換弁6e、流路切換弁7bおよび流路切換弁8bを閉状態にするとともに、流路切換弁5gを開状態にすることにより、冷却水注入路Sp4を形成する制御を行う。そして、制御部12は、循環ポンプ5fにより冷却水源200から供給される冷却水Cwを冷却水注入路Sp4を介して殺菌槽1に注入する制御を行う(冷却水注入工程(図3参照))。ここで、冷却水注入路Sp4は、循環経路5(排出管路5a、排出管路5b、上流側管路5cおよび下流側管路5d)を有している。冷却水注入路Sp4では、上流側管路5cと、下流側管路5dと、排出管路5aおよび排出管路5bの各々との順で冷却水Cwが流れる。
【0084】
図18に示すように、制御部12は、冷却水Cwを注入した後、流路切換弁6d、流路切換弁6e、流路切換弁7bおよび流路切換弁8bを閉状態にするとともに、流路切換弁5gを開状態にすることにより、冷却循環路Ci6を形成する制御を行う。そして、制御部12は、循環ポンプ5fにより、冷却循環路Ci6を介して冷却水Cwを殺菌槽1に循環させながら、熱交換器11において冷却水との熱交換により、レトルトパウチRpおよび殺菌槽1の各々から熱を奪って昇温した冷却水Cwを冷却する冷却制御を行う(冷却工程(図3参照))。ここで、冷却循環路Ci6は、循環経路5(排出管路5a、排出管路5b、上流側管路5cおよび下流側管路5d)を有している。冷却循環路Ci6では、排出管路5aおよび排出管路5bの各々と、上流側管路5cと、下流側管路5dとの順で冷却水Cwが流れる。
【0085】
図19に示すように、制御部12は、所定時間の間、冷却水Cwによる冷却の後、循環ポンプ5fにより冷却後の殺菌槽1内の冷却水Cwを冷却水回収路Re4を介して回収する制御を行う(冷却水回収工程)。ここで、冷却水回収路Re4は、排出管路5a、排出管路5bおよび上流側管路5cを有している。冷却水回収路Re4では、排出管路5aおよび排出管路5bの各々と、上流側管路5cとの順で冷却水Cwが流れる。
【0086】
〈搬出工程〉
搬出工程では、図20に示すように、冷却された、複数のレトルトパウチRpが、ユーザにより殺菌槽1から搬出される。
【0087】
そして、複数のレトルトパウチRpに対する次の加熱殺菌制御が行われる。この際、制御部12は、高温水HthによるレトルトパウチRpの加熱の前に、中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)の際に加熱されて中温水槽4に貯留された中温水Htmを用いて、殺菌槽1を予熱する予熱工程を行う。これにより、本実施形態の加熱殺菌制御では、中温水熱回収工程の際に、レトルトパウチRpおよび殺菌槽1などから奪った熱が利用されるので、熱損失の発生が抑制される。また、図6に示した中温水Htmの事前準備の際に、多少の再昇温(たとえば、約1~2℃程度)が必要になるだけなので、初回の加熱殺菌制御以降において、中温水Htmの加熱に必要な熱量、および、中温水Htmの加熱に必要な時間の発生が抑制される。
【0088】
このような加熱殺菌制御は、1日において複数回行われる。そして、中温水槽4に貯留された中温水Htmは、再利用された後、中温水槽4から排出される。そして、中温水槽4に新たな中温水Htmを貯留する制御が行われる(図6参照)。このような中温水Htmを入れ替えるタイミングは、1日ごと、または、数日ごとであり、ユーザにより適宜設定される。これにより、加熱制御毎に中温水Htmを準備する場合と比較して、中温水Htmを用いることに起因する水の使用量の増加が抑制される。
【0089】
(比較例の加熱殺菌制御と本実施形態の加熱殺菌制御との比較)
図21には、図4で示した比較例(従来例に相当)の加熱殺菌制御のグラフと、図3で示した本実施形態の加熱殺菌制御のグラフとを重ね合わせたグラフが示されている。ここで、比較例の加熱殺菌制御のグラフは、太い二点鎖線で示されている。また、本実施形態の加熱殺菌制御のグラフは、太い実線で示されている。
【0090】
比較例の加熱殺菌制御と本実施形態の加熱殺菌制御とを比較すると、実施形態の加熱殺菌制御の作業時間は、予熱工程および中温水熱回収工程が追加されたので、時間Tlag分だけ増加する。
【0091】
しかしながら、本実施形態の加熱殺菌制御のうちの対象物加熱工程の昇温工程の時間Uiは、比較例の加熱殺菌制御のうちの対象物加熱工程の昇温工程の時間Ueよりも短くなっている。これは、本実施形態の加熱殺菌制御では、予熱工程により対象物加熱工程の初期温度が、比較例の加熱殺菌制御のうちの対象物加熱工程の初期温度よりも高いためである。さらに、本実施形態の加熱殺菌制御のうちの対象物冷却工程の時間Diは、比較例の加熱殺菌制御のうちの対象物冷却工程の時間Deよりも短くなっている。これは、本実施形態の加熱殺菌制御では、中温水熱回収工程により対象物冷却工程の初期温度が、比較例の加熱殺菌制御のうちの対象物冷却工程の初期温度よりも低いためである。
【0092】
また、昇温工程の時間Uiを昇温工程の時間Ueよりも短くなることにより、高温水Hthの昇温の際に必要な蒸気の使用量が減少される。また、中温水Htmの事前準備において中温水Htmを蒸気により加熱するが、中温水Htmの再利用、および、高温水Hthの昇温の際に必要な蒸気の使用量の減少により、複数回の加熱殺菌制御を行った場合には、比較例の加熱殺菌制御を複数回行った場合と比較して、加熱殺菌制御に必要な熱エネルギーが減少される。
【0093】
また、本実施形態の加熱殺菌制御では、搬入工程の後に中温水Htmを殺菌槽1に注入しているので、搬入工程後の殺菌槽1の温度変化Ti1は、比較例の搬入工程後の殺菌槽1の温度変化Te1よりも、温度差Td1分だけ小さい。さらに、加熱殺菌制御では、高温水熱回収工程の後に中温水Htmを殺菌槽1に注入しているので、高温水熱回収工程後の殺菌槽1の温度変化Ti2は、比較例の搬入工程後の殺菌槽1の温度変化Te2よりも、温度差Td2分だけ小さい。これにより、殺菌槽1の急激な温度変化を抑制することにより、殺菌槽1の膨張および収縮が抑制される。
【0094】
(加熱殺菌方法)
図7図9図12図15図18図20および図22を参照して、上記した加熱殺菌装置100において行われる加熱殺菌方法について説明する。加熱殺菌方法は、加熱殺菌プログラムに基づいて制御部12により実行される方法である。
【0095】
ここで、図22に示すステップS1の予熱工程よりも前において、高温水Hthおよび中温水Htmが準備されている。ここで、以下の説明では、中温水Htmは、上記した中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)の際に加熱されて中温水槽4に貯留されている場合を想定する。そして、複数のレトルトパウチRpを載置したトレーTrが複数段積み上げられた状態で、ユーザにより殺菌槽1に搬入される搬入工程が行われる(図7参照)。
【0096】
図22に示すステップS1において、搬入工程の後、予熱工程が行われる。予熱工程は、レトルトパウチRpを加熱殺菌する高温水Hthを殺菌槽1に供給する前に、殺菌槽1の熱回収の際に加熱された中温水Htmを用いて殺菌槽1の予熱を行う工程である(図9参照)。
【0097】
ステップS2において、対象物加熱工程が行われる。対象物加熱工程は、高温水Hthにより加熱殺菌を行う殺菌槽1に高温水Hthを供給して殺菌槽1内のレトルトパウチRpの加熱殺菌を行う工程である(図12参照)。
【0098】
ステップS3において、高温水熱回収工程が行われる。高温水熱回収工程は、高温水Hthによる加熱殺菌の後、加熱殺菌後の殺菌槽1内の高温水Hthを温水回収路Re2を介して高温水槽3に回収して貯留する工程である(図13参照)。
【0099】
ステップS4において、中温水熱回収工程が行われる。中温水熱回収工程は、冷却水CwによるレトルトパウチRpの冷却の前に、冷却水Cwの温度よりも高く、かつ、高温水Hthの温度よりも低い温度の、高温水Hthとは別個に生成された中温水Htmを用いて、加熱殺菌後の殺菌槽1の熱回収を行う工程である(図15参照)。
【0100】
ステップS5において、対象物冷却工程が行われる。対象物冷却工程は、殺菌槽1の熱回収の後、冷却水Cwにより、加熱殺菌されたレトルトパウチRpを冷却する工程である(図18参照)。そして、ステップS5の後、加熱殺菌方法が終了する。
【0101】
ここで、加熱殺菌方法が終了した後、ユーザにより殺菌槽1から冷却されたレトルトパウチRpが搬出される搬出工程が行われる(図20参照)。
【0102】
(レトルトパウチ)
このような加熱殺菌槽方法により生産されたレトルトパウチRpは、加熱殺菌装置100により加熱殺菌処理される。
【0103】
具体的には、レトルトパウチRp(殺菌対象物)は、高温水Hth(高温流体)による加熱殺菌を行うレトルトパウチRp(殺菌対象物)を内部に収容する収容空間1dを有し、レトルトパウチRp(殺菌対象物)を加熱殺菌する高温水Hth(高温流体)および高温水Hth(高温流体)により加熱殺菌されたレトルトパウチRp(殺菌対象物)を冷却する冷却水Cwが供給される殺菌槽1と、冷却水CwによるレトルトパウチRp(殺菌対象物)の冷却の前に、冷却水Cwの温度よりも高く、かつ、高温水Hth(高温流体)の温度よりも低い温度の、高温水Hth(高温流体)とは別個に生成された中温水Htmを用いて、加熱殺菌後の殺菌槽1の熱を回収する中温水熱回収制御を行う制御部12とを備える加熱殺菌装置100により、加熱殺菌処理されている。
【0104】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0105】
本実施形態では、上記のように、加熱殺菌装置100は、冷却水CwによるレトルトパウチRp(殺菌対象物)の冷却の前に、冷却水Cwの温度よりも高く、かつ、高温水Hthの温度よりも低い温度の、高温水Hthとは別個に生成された中温水Htmを用いて、対象物加熱工程(加熱殺菌制御)後の殺菌槽1の熱を回収する中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)を行う制御部12を備えている。これにより、高温水Hthとは別個に生成された中温水Htmを用いて加熱殺菌後の殺菌槽1の熱回収を行うことにより、高温水Hthの温度が低下しないようにすることができるので、熱回収後の次の加熱殺菌の際に、高温水Hthを加熱殺菌温度Tstまで昇温するのに要する時間が長くなることを抑制することができる。また、冷却水CwによるレトルトパウチRp(殺菌対象物)の冷却の前に、冷却水Cwの温度よりも高い温度の中温水Htmにより対象物加熱工程(加熱殺菌制御)後の殺菌槽1を冷却することができるので、対象物加熱工程(加熱殺菌制御)後において、殺菌槽1の急激な温度変化(急激な温度低下)を抑制することができる。この結果、殺菌槽1の膨張および収縮の程度を小さくすることができるので、程度の大きい膨張および収縮が繰り返される場合と異なり、熱応力による金属疲労が大きくなるのを抑制することができ殺菌槽1の耐久性が低下する(寿命が短くなる)ことを抑制することができる。
【0106】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12は、冷却水CwによるレトルトパウチRp(殺菌対象物)の冷却の前に、冷却水Cwの温度よりも高く、かつ、高温水Hthの温度よりも低い温度の、高温水Hthとは別個に生成された中温水Htmを用いて、対象物加熱工程(加熱殺菌制御)後の殺菌槽1の熱を回収する中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)を行う。これにより、中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)において対象物加熱工程(加熱殺菌制御)後の殺菌槽1の熱を中温水Htmにより回収することにより、対象物加熱工程(加熱殺菌制御)の際にレトルトパウチRpおよび殺菌槽1に与えられた熱の熱損失を抑制することができる。
【0107】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12は、加熱殺菌を行った後の高温水Hthを殺菌槽1から排出した状態で、中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)を行う。これにより、高温水Hthを排出するだけで高温水Hthによる熱回収を行うことにより、高温水Hthによる熱回収を行うための専用の熱交換器および給水タンクなどが必要ないので、高温水Hthによる熱回収を行うことに起因する装置の大型化を抑制することができる。
【0108】
また、本実施形態では、上記のように、加熱殺菌装置100は、中温水Htmが貯留される中温水槽4を備えている。制御部12は、冷却水CwによるレトルトパウチRp(殺菌対象物)の冷却の前に、中温水槽4から供給される中温水Htmを用いて、加熱殺菌後の殺菌槽1の熱を回収する中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)を行うとともに、中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)に使用した中温水Htmを中温水槽4に貯留するように構成されている。これにより、中温水槽4に中温水Htmを貯留することにより、熱回収時に中温水Htmを容易に加熱殺菌後の殺菌槽1に供給することができるとともに、熱回収に使用した中温水Htmを排出せず中温水槽4に貯留することにより、容易に熱回収した熱を再利用することができる。
【0109】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12は、高温水HthによるレトルトパウチRp(殺菌対象物)の加熱の前に、中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)の際に加熱されて中温水槽4に貯留された中温水Htmを用いて、殺菌槽1を予熱する予熱工程(予熱制御)を行う。これにより、熱回収に使用された加熱された中温水Htmを用いて殺菌槽1の予熱を行うことにより、対象物加熱工程(加熱殺菌制御)の開始時の殺菌槽1の初期温度を高くすることができるので、予熱を行わない場合と比較して、高温水Hthを対象物加熱工程(加熱殺菌制御)を行う温度まで上昇させる昇温の際に高温水Hthに与える熱量を小さくすることができる。すなわち、中温水Htmを用いることにより熱回収した熱を予熱に有効利用することができる。この結果、予熱を行う場合に、加熱殺菌装置100において必要となる熱エネルギーの増大を減少させることができるので、その分、高温水Hthの昇温のために使用する(高温)蒸気の使用量を低減することができる。
【0110】
また、本実施形態では、上記のように、加熱殺菌装置100は、殺菌槽1と中温水槽4とを互いに接続する循環経路5、共通管路6a、分岐管路6cおよび接続管路8a(第1接続経路)を備えている。制御部12は、熱回収後の殺菌槽1内の中温水Htmを、排出管路5a、排出管路5b、上流側管路5c、下流側管路5d、共通管路6aおよび分岐管路6c(第1接続経路)を介して中温水槽4に回収して貯留する制御、および、予熱時に上流側管路5c、下流側管路5d、および、接続管路8a(第1接続経路)を介して殺菌槽1に中温水Htmを供給する制御を行う。これにより、共通管路6aおよび分岐管路6c(第1接続経路)を用いて、容易に、熱回収後の中温水Htmの中温水槽4への貯留、および、予熱時の中温水Htmの中温水槽4から殺菌槽1への供給を行うことができる。
【0111】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12は、殺菌槽1の予熱および殺菌槽1の熱回収の各々において、中温水槽4から供給される中温水HtmをレトルトパウチRp(殺菌対象物)に向けて放出する制御を行う。これにより、予熱時に低温の殺菌槽1の予熱の際に、放出された中温水HtmがレトルトパウチRp(殺菌対象物)に当てることにより中温水Htmの温度が下がり、殺菌槽1には温度が下がった中温水Htmを当てることができるので、殺菌槽1の急激な温度変化を抑制することができる。また、殺菌槽1の熱回収の際に、放出された中温水HtmをレトルトパウチRp(殺菌対象物)に当てることにより中温水Htmの温度が上がり、熱回収時の高温の殺菌槽1には温度が上がった中温水Htmを当てることができるので、殺菌槽1の急激な温度変化を抑制することができる。これらにより、殺菌槽1の予熱および殺菌槽1の熱回収の各々において、急激な温度変化による熱応力の増大に起因する殺菌槽1の耐久性の低下をより抑制することができる。
【0112】
また、本実施形態では、上記のように、加熱殺菌装置100は、殺菌槽1に貯留された対象物加熱工程(加熱殺菌制御)後の高温水Hthである高温水Hthを回収して貯留する高温水槽3を備えている。加熱殺菌装置100は、殺菌槽1と高温水槽3とを互いに接続する共通管路6aおよび分岐管路6b(第2接続経路)を備えている。制御部12は、レトルトパウチRp(殺菌対象物)の対象物加熱工程(加熱殺菌制御)が終了して殺菌槽1内から排出した高温水Hthを共通管路6aおよび分岐管路6b(第2接続経路)を介して高温水槽3内に回収した後、殺菌槽1の中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)を行う。これにより、殺菌槽1と高温水槽3とを互いに接続する専用の共通管路6aおよび分岐管路6b(第2接続経路)を介して殺菌槽1内の高温水Hthを回収することにより、対象物加熱工程(加熱殺菌制御)後、高温水Hthの熱が奪われないようにすることができるので、高温水槽3に回収する高温水Hthの温度が低下するのを抑制することができる。
【0113】
また、本実施形態では、上記のように、加熱殺菌装置100は、殺菌槽1から排出された冷却水Cw、高温水Hthおよび中温水Htmの各々を吐出して殺菌槽1に循環させる循環ポンプ5fを含む循環経路5を備えている。制御部12は、循環ポンプ5fにより循環経路5を介して中温水Htmを殺菌槽1に循環させることにより、中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)を行う。これにより、対象物加熱工程(加熱殺菌制御)および対象物冷却工程(冷却制御)の各々において使用される循環経路5を中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)において共通で利用することができるので、加熱殺菌装置100の経路の増大に起因する構造の複雑化および大型化を抑制することができる。
【0114】
また、本実施形態では、上記のように、レトルトパウチRp(殺菌対象物)は、高温水Hthによる加熱殺菌を行うレトルトパウチRp(殺菌対象物)を内部に収容する収容空間1dを有し、殺菌対象物を対象物加熱工程(加熱殺菌制御)する高温水Hthおよび高温水Hthにより対象物加熱工程(加熱殺菌制御)されたレトルトパウチRp(殺菌対象物)を冷却する冷却水Cwが供給される殺菌槽1と、冷却水CwによるレトルトパウチRp(殺菌対象物)の冷却の前に、冷却水Cwの温度よりも高く、かつ、高温水Hthの温度よりも低い温度の、高温水Hthとは別個に生成された中温水Htmを用いて、対象物加熱工程(加熱殺菌制御)後の殺菌槽1の熱を回収する中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)を行う制御部12とを備える加熱殺菌装置100により、加熱殺菌処理されている。これにより、高温水Hthとは別個に生成された中温水Htmを用いて加熱殺菌後の殺菌槽1の熱回収を行うことにより、高温水Hthの温度が低下しないようにすることができるので、熱回収後の次の加熱殺菌の際に、高温水Hthを加熱殺菌温度Tstまで昇温するのに要する時間が長くなることを抑制することが可能で、かつ、急激な温度変化による熱応力の増大に起因する殺菌槽1の耐久性の低下を抑制することが可能な加熱殺菌装置100により加熱殺菌処理されたレトルトパウチRp(殺菌対象物)を提供することができる。
【0115】
また、本実施形態では、上記のように、加熱殺菌方法は、上記のように、冷却水CwによるレトルトパウチRp(殺菌対象物)の冷却の前に、冷却水Cwの温度よりも高く、かつ、高温水Hthの温度よりも低い温度の、高温水Hthとは別個に生成された中温水Htmを用いて、対象物加熱工程(加熱殺菌制御)後の殺菌槽1の熱回収を行うステップS4を備えている。これにより、高温水Hthとは別個に生成された中温水Htmを用いて加熱殺菌後の殺菌槽1の熱回収を行うことにより、高温水Hthの温度が低下しないようにすることができるので、熱回収後の次の加熱殺菌の際に、高温水Hthを加熱殺菌温度Tstまで昇温するのに要する時間が長くなることを抑制することが可能で、かつ、急激な温度変化による熱応力の増大に起因する殺菌槽1の耐久性の低下を抑制することが可能な加熱殺菌方法を提供することができる。
【0116】
また、本実施形態では、上記のように、加熱殺菌方法は、レトルトパウチRp(殺菌対象物)を対象物加熱工程(加熱殺菌制御)する高温水Hthを殺菌槽1に供給する前に、殺菌槽1の熱回収の際に加熱された中温水Htmを用いて殺菌槽1の予熱を行うステップS1を備えている。これにより、殺菌槽1の予熱を行うことにより、対象物加熱工程(加熱殺菌制御)の開始時の殺菌槽1の初期温度を高くすることができるので、予熱を行わない場合と比較して、高温水Hthを対象物加熱工程(加熱殺菌制御)を行う温度まで上昇させる昇温の際に高温水Hthに与える熱量を小さくすることができる。また、中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)後の中温水Htmを殺菌槽1の予熱に利用することにより、中温水Htmを予熱する温度まで上昇させるために、対象物加熱工程(加熱殺菌制御)後の殺菌槽1およびレトルトパウチRp(殺菌対象物)の熱を利用することができる。これらにより、中温水熱回収工程(中温水熱回収制御)後の中温水Htmによる殺菌槽1の予熱では、予熱を行うことに起因する、加熱殺菌装置100において必要となる熱エネルギーを減少させることができるので、その分、高温水Hthの昇温のために使用する(高温)蒸気の使用量を低減することができる。
【0117】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12は、予熱工程において、流路切換弁6d、流路切換弁6eおよび流路切換弁7bを閉状態にするとともに、流路切換弁5gおよび流路切換弁8bを開状態にすることにより、中温水注入路Sp1を形成した後、循環ポンプ5fを用いて、中温水槽4内の中温水Htmを中温水注入路Sp1を介して殺菌槽1に注入する制御を行う。これより、循環ポンプ5f以外のポンプを使用しなくても、中温水槽4から殺菌槽1への中温水Htmの注入を行うことができる。
【0118】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12は、予熱工程において、流路切換弁5g、流路切換弁6d、流路切換弁7bおよび流路切換弁8bを閉状態にするとともに、流路切換弁6eを開状態にすることにより、中温水回収路Re1を形成した後、循環ポンプ5fを用いて、中温水回収路Re1を介して中温水Htmを中温水槽4に回収する回収制御を行う。これにより、循環ポンプ5f以外のポンプを使用しなくても、殺菌槽1から中温水槽4への中温水Htmの回収を行うことができる。
【0119】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12は、中温水熱回収工程において、流路切換弁6d、流路切換弁7bおよび流路切換弁6eを閉状態にするとともに、流路切換弁5gおよび流路切換弁8bを開状態にすることにより、中温水注入路Sp3を形成した後、循環ポンプ5fを用いて、中温水槽4内の中温水Htmを中温水注入路Sp3を介して殺菌槽1に注入する制御を行う。これにより、循環ポンプ5f以外のポンプを使用しなくても、中温水槽4から殺菌槽1への中温水Htmの注入を行うことができる。
【0120】
また、本実施形態では、上記のように、制御部12は、中温水熱回収工程において、流路切換弁5g、流路切換弁6d、流路切換弁7bおよび流路切換弁8bを閉状態にするとともに、流路切換弁6eを開状態にすることにより、中温水回収路Re3を形成した後、循環ポンプ5fを用いて、中温水回収路Re3を介して中温水Htmを中温水槽4に回収する回収制御を行う。これにより、循環ポンプ5f以外のポンプを使用しなくても、殺菌槽1から中温水槽4への中温水Htmの回収を行うことができる。
【0121】
また、本実施形態では、供給経路6は、循環経路5から分岐して、高温水槽3に高温水Hthを供給する管路である。また、供給経路6は、循環経路5から分岐して、中温水槽4に中温水Htmを供給する管路である。供給経路6は、共通管路6aを含んでいる。共通管路6aは、循環経路5に接続されているとともに、高温水槽3および中温水槽4に対しての共通の管路である。これにより、中温水Htmにより殺菌槽1の予熱を行う際に、中温水Htmが共通管路6aを流れるので、殺菌槽1だけでなく、共通管路6aも中温水Htmにより予熱される。したがって、殺菌槽1と高温水槽3および中温水槽4とをつなぐ配管を共通化していない場合と比較して、殺菌槽1の予熱後に高温水Hthを殺菌槽1に供給する際に、共通管路6aも予熱されているので、殺菌槽1だけでなく共通管路6aにおいても急激な温度上昇を抑制することができる。その結果、殺菌槽1だけでなく共通管路6aにおいても急激な温度上昇に起因して発生する応力に伴う割れの発生のリスクを低減することができる。また、中温水Htmにより殺菌槽1の熱回収を行う際に、殺菌槽1内の高温水Hthを高温水槽3に回収する際に高温水Hthにより加熱された共通管路6aを中温水Htmが流れるので、殺菌槽1だけでなく、共通管路6aが高温水Hthにより加熱された熱も中温水Htmにより熱回収される。これにより、高温水Hthで加熱した共通管路6aの熱も回収できるので、共通管路6aを使用しない場合と比較して次回の殺菌槽1の予熱に使用する中温水Htmの温度をより高くすることができる。
【0122】
また、本実施形態では、上記のように、中温水槽4は、殺菌槽1に貯留された予熱後および熱回収後の各々の中温水Htmを回収して貯留するタンクである。これにより、熱回収後の中温水Htmを回収することにより予熱を行う中温水Htmを貯留することができるとともに、予熱後の中温水Htmを回収することにより熱回収を行う中温水Htmを貯留することができる。これにより、中温水Htmの殺菌槽1への供給元と、殺菌槽1から回収される中温水Htmの回収先とを1つの中温水槽4にすることができるので、簡易な構成で熱回収および予熱を行う加熱殺菌装置100を実現することができる。
【0123】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0124】
たとえば、上記実施形態では、加熱殺菌装置100は、スプレーノズル2を備えるスプレー式の装置である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、加熱殺菌装置は、中温水で予熱および熱回収の各々を行う、貯湯式の装置、または、高温流体として蒸気を用いる蒸気式の装置であってもよい。
【0125】
たとえば、図23に示すような第1変形例の貯湯式の加熱殺菌装置500では、以下のような加熱殺菌制御が行われる。すなわち、制御部512は、対象物加熱工程において高温水Hth(高温流体)によりレトルトパウチRp(殺菌対象物)を加熱殺菌した後、殺菌槽1内から排出した高温水Hth(高温流体)を高温水槽503に回収後、高温水Hth(高温流体)とは別個に生成された中温水Htmを用いて、加熱殺菌後の殺菌槽1の熱を回収する中温水熱回収制御を行う。
【0126】
ここで、貯湯式の加熱殺菌装置500では、加熱殺菌のために高温水Hth(高温流体)を使用せずに、高温水槽503に高温水Hthを回収した後、中温水槽4の中温水Htmを殺菌槽1に循環させることにより、加熱殺菌後の殺菌槽1の熱回収を行うことができるので、高温水Hthの温度が低下しないようにすることができる。
【0127】
また、たとえば、図24に示すような第2変形例の蒸気式の加熱殺菌装置600では、以下のような加熱殺菌制御が行われる。すなわち、制御部612は、対象物加熱工程において高温の蒸気Vah(高温流体)によりレトルトパウチRp(殺菌対象物)を加熱殺菌した後、高温の蒸気Vah(高温流体)とは別個に生成された中温水Htmを用いて、加熱殺菌後の殺菌槽1の熱を回収する中温水熱回収制御を行う。
【0128】
ここで、蒸気式の加熱殺菌装置600では、加熱殺菌のために高温水を用いずに蒸気Vah(高温流体)を用いるので、高温水による熱回収を行うことができない。しかしながら、本実施形態の第2変形例の上記構成により、中温水熱回収制御を行うことによって、蒸気式の加熱殺菌装置600においても、加熱殺菌後の殺菌槽1の熱を回収することができる。
【0129】
また、上記実施形態では、加熱殺菌装置100は、高温水槽3および中温水槽4の両方を備えている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、加熱殺菌装置は、中温水槽を備えていればよく、温水槽を備えていなくてもよい。
【0130】
また、上記実施形態では、加熱殺菌装置100は、食品を封入したレトルトパウチRpを、高温水Hthにより加熱殺菌する装置である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、加熱殺菌装置は、缶詰などの他の製品を加熱殺菌する装置であってもよい。
【0131】
また、上記実施形態では、制御部12は、中温水槽4から供給される中温水Htmを直接的に用いて、殺菌槽1およびレトルトパウチRpを予熱および熱回収の各々を行うように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、加熱殺菌装置は、以下のように、中温水を間接的に用いる変形例の構成を備えていてもよい。
【0132】
具体的には、図25に示す第3変形例のように、加熱殺菌装置700は、中温水Htmにより加熱される熱伝達流体Htfを供給する熱伝達流体供給部713を備えている。加熱殺菌装置700は、中温水槽704に貯留された中温水Htmと、熱伝達流体供給部713から供給される熱伝達流体Htfとの熱交換を行う熱交換器714を備えている。制御部12は、殺菌槽1の予熱において、熱交換器714における中温水Htmとの熱交換により温度を上昇させた熱伝達流体Htfを殺菌槽1に供給する制御を行うとともに、殺菌槽1の熱回収において、熱交換器714における中温水Htmとの熱交換により温度を低下させた熱伝達流体Htfを殺菌槽1に供給する制御を行う。
【0133】
これにより、中温水Htmを直接殺菌槽1に供給する場合と比較して、殺菌槽1の予熱において、熱伝達流体Htfと中温水Htmとを熱交換器714において熱交換することにより加熱することで、緩やかに熱伝達流体Htfを温度上昇させつつ殺菌槽1に熱伝達流体Htfを供給することができるので、殺菌槽1との温度差を抑えつつ殺菌槽1を熱伝達流体Htfにより緩やかに予熱温度まで昇温することができる。この結果、殺菌槽1の急激な温度変化をより抑制することができる。また、熱伝達流体Htfと中温水Htmとを熱交換器714において熱交換することにより熱を回収することで、緩やかに熱伝達流体Htfの温度を下降させつつ殺菌槽1に熱伝達流体Htfを供給することができるので、殺菌槽1との温度差を抑えることで殺菌槽1を熱伝達流体Htfにより緩やかに熱回収後温度(予冷温度)まで下げることができる。この結果、殺菌槽1の急激な温度変化をより抑制することができる。
【0134】
また、図25に示す第3変形例では、中温水槽704と熱交換器714とが、接続されている。すなわち、中温水槽704は、流入管路704cと、供給管路704dと、流路切換弁704eと、流路切換弁704fとを含んでいる。
【0135】
また、上記実施形態では、制御部12は、予熱後の殺菌槽1内の中温水Htmを中温水槽4に回収して貯留する制御、および、熱回収後の殺菌槽1内の中温水Htmを中温水槽4に回収して貯留する制御の両方の制御を行う例を示したが、本発明は、これに限られない。本発明では、制御部は、予熱後の殺菌槽内の中温水を中温水槽に回収して貯留する制御、および、熱回収後の殺菌槽内の中温水を中温水槽に回収して貯留する制御の少なくとも一方の制御が行われていればよい。
【0136】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、制御部12の制御処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0137】
1 殺菌槽
1d 収容空間
3、503 高温水槽
4、704 中温水槽
5 循環経路(第1接続経路、第2接続経路)
5a 排出管路(第1接続経路、第2接続経路)
5b 排出管路(第1接続経路、第2接続経路)
5c 上流側管路(第1接続経路、第2接続経路)
5d 下流側管路5d(第1接続経路、第2接続経路)
5f 循環ポンプ
6a 共通管路(第1接続経路、第2接続経路)
6b 分岐管路(第2接続経路)
6c 分岐管路(第1接続経路)
11 熱交換器
12、612 制御部
100、500、600、700 加熱殺菌装置
713 熱伝達流体供給部
714 熱交換器
Cw 冷却水
Htf 熱伝達流体
Hth 高温水
Htm 中温水
Rp レトルトパウチ(殺菌対象物)
【要約】
この加熱殺菌装置100は、高温流体Hthによる加熱殺菌を行う殺菌対象物Rpを内部に収容する収容空間1dを有し、殺菌対象物Rpを加熱殺菌する高温流体Hthおよび高温流体Hthにより加熱殺菌された殺菌対象物Rpを冷却する冷却水Cwが供給される殺菌槽1を備える。加熱殺菌装置100は、冷却水Cwによる殺菌対象物Rpの冷却の前に、冷却水Cwの温度よりも高く、かつ、高温流体Hthの温度よりも低い温度の、高温流体Hthとは別個に生成された中温水Htmを用いて、加熱殺菌後の殺菌槽1の熱を回収する中温水熱回収制御を行う制御部12を備える。
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