(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】立体認知能力評価システム、立体認知能力評価装置、立体認知能力評価プログラム、および立体認知能力評価方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20241212BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20241212BHJP
G06F 3/04815 20220101ALI20241212BHJP
【FI】
G16H50/30
G06F3/01 510
G06F3/04815
(21)【出願番号】P 2023513771
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2022032035
(87)【国際公開番号】W WO2023032806
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2021141500
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022030855
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】524233089
【氏名又は名称】FrontAct株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(72)【発明者】
【氏名】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】笠井 一希
(72)【発明者】
【氏名】江上 慎
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124789(JP,A)
【文献】国際公開第2020/035996(WO,A1)
【文献】特開平11-065418(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112434573(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
G06F 3/01
G06F 3/04815
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの位置の変化に基づいて前記被測定者の立体認知能力を評価するための立体認知能力評価システムであって、
前記移動オブジェクトの位置に関する情報を取得する位置取得部と、
学習済みの特定モデルを用いて前記立体認知能力を判定する立体認知能力判定部とを備え、
前記特定モデルの説明変数は、前記移動オブジェクトの進行方向において前記移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと前記移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および前記移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と前記移動オブジェクトとの間の第2距離から導かれる第2特徴量の少なくとも1つ
を含み、
前記特定モデルは、前記移動オブジェクトの操作者の立体認知能力によって予めラベル付けされた、当該操作者によって操作されて移動する前記移動オブジェクトの位置に関する情報を教師データとする機械学習によって学習済みモデルとされる、立体認知能力評価システム。
【請求項2】
前記第2特徴量は、前記第2距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる特徴量を含む、請求項1に記載の立体認知能力評価システム。
【請求項3】
前記第2特徴量は、前記第2距離を少なくとも2回時間微分した値から導かれる特徴量を含む、請求項1に記載の立体認知能力評価システム。
【請求項4】
前記第1特徴量は、前記第1距離を少なくとも2回時間微分した値から導かれる特徴量を含む、請求項1に記載の立体認知能力評価システム。
【請求項5】
前記特定モデルは、前記立体認知能力を目的変数とする決定木を含
む、請求項
4に記載の立体認知能力評価システム。
【請求項6】
前記説明変数は、前記被測定者の属性に関する情報を
さらに含む、請求項
5に記載の立体認知能力評価システム。
【請求項7】
前記移動オブジェクトに搭載された移動記録装置をさらに備え、
前記移動記録装置は、前記移動オブジェクトから前記移動オブジェクトの進行方向を見た場合の動画データを生成するカメラと、
前記移動オブジェクトの位置を測定する位置測定部とを含み、
前記位置取得部は、
前記基準オブジェクトおよび前記基準線の少なくとも1つを含む前記動画データおよび前記位置測定部の測定結果から前記移動オブジェクトの位置に関する情報を取得する、請求項1に記載の立体認知能力評価システム。
【請求項8】
前記移動オブジェクトは仮想現実によって提供され、
前記立体認知能力評価システムは、
前記仮想現実の動画像を表示するための電子ディスプレイを含む仮想現実ヘッドセットと、
前記仮想現実において移動する前記移動オブジェクトの動画像を前記電子ディスプレイに表示させる移動オブジェクト表示部とをさらに備え、
前記位置取得部は、前記移動オブジェクト表示部で表示される前記仮想現実における前記移動オブジェクトの位置を取得する、請求項1に記載の立体認知能力評価システム。
【請求項9】
被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの挙動の変化に基づいて前記被測定者の立体認知能力を評価するための立体認知能力評価システムであって、
前記移動オブジェクトの挙動に関する情報を取得する挙動取得部と、
学習済みの特定モデルを用いて前記立体認知能力を判定する立体認知能力判定部とを備え、
前記特定モデルの説明変数は、前記移動オブジェクトの進行方向において前記移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと前記移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および前記移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と前記移動オブジェクトとの間の第2距離に関する第2特徴量の少なくとも1つ
を含み、
前記特定モデルは、前記移動オブジェクトの操作者の立体認知能力によって予めラベル付けされた、当該操作者によって操作されて移動する前記移動オブジェクトの位置に関する情報を教師データとする機械学習によって学習済みモデルとされる、立体認知能力評価システム。
【請求項10】
前記挙動取得部は、前記移動オブジェクトの位置に関する情報を取得し、
前記第1特徴量および/または前記第2特徴量は、前記移動オブジェクトの位置に関する情報から導かれる、請求項
9に記載の立体認知能力評価システム。
【請求項11】
前記挙動取得部は、前記移動オブジェクトの加速度に関する情報を取得し、
前記立体認知能力判定部は、前記第2特徴量から前記立体認知能力を判定する、請求項
9に記載の立体認知能力評価システム。
【請求項12】
前記第2特徴量は、前記移動オブジェクトの加速度から導かれる、請求項
11に記載の立体認知能力評価システム。
【請求項13】
前記移動オブジェクトに搭載された移動記録装置をさらに備え、
前記移動記録装置は、前記移動オブジェクトから前記移動オブジェクトの進行方向を見た場合の動画データを生成するカメラと、
前記移動オブジェクトの加速度を測定する加速度センサとを含み、
前記挙動取得部は、前記動画データおよび前記加速度センサの測定結果から前記移動オブジェクトの加速度に関する情報を取得する、請求項
11に記載の立体認知能力評価システム。
【請求項14】
前記被測定者の端末装置と、
前記立体認知能力判定部の判定結果を前記端末装置に送信する通信部とをさらに備える、請求項1~
13のいずれか1項に記載の立体認知能力評価システム。
【請求項15】
被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの位置の変化に基づいて前記被測定者の立体認知能力を評価するための立体認知能力評価装置であって、
前記移動オブジェクトの位置に関する情報を取得する位置取得部と、
学習済みの特定モデルを用いて前記立体認知能力を判定する立体認知能力判定部と、
前記位置取得部および前記立体認知能力判定部を収容する筐体とを備え、
前記特定モデルの説明変数は、前記移動オブジェクトの進行方向において前記移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと前記移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および前記移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と前記移動オブジェクトとの間の第2距離から導かれる第2特徴量の少なくとも1つ
を含み、
前記特定モデルは、前記移動オブジェクトの操作者の立体認知能力によって予めラベル付けされた、当該操作者によって操作されて移動する前記移動オブジェクトの位置に関する情報を教師データとする機械学習によって学習済みモデルとされる、立体認知能力評価装置。
【請求項16】
被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの挙動の変化に基づいて前記被測定者の立体認知能力を評価するための立体認知能力評価装置であって、
前記移動オブジェクトの挙動に関する情報を取得する挙動取得部と、
学習済みの特定モデルを用いて前記立体認知能力を判定する立体認知能力判定部と、
前記挙動取得部および前記立体認知能力判定部を収容する筐体とを備え、
前記特定モデルの説明変数は、前記移動オブジェクトの進行方向において前記移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと前記移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および前記移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と前記移動オブジェクトとの間の第2距離に関する第2特徴量の少なくとも1つ
を含み、
前記特定モデルは、前記移動オブジェクトの操作者の立体認知能力によって予めラベル付けされた、当該操作者によって操作されて移動する前記移動オブジェクトの位置に関する情報を教師データとする機械学習によって学習済みモデルとされる、立体認知能力評価装置。
【請求項17】
コンピュータによって実行されることにより、前記コンピュータに、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの位置の変化に基づいて前記被測定者の立体認知能力を評価するための立体認知能力評価装置を構成させるための立体認知能力評価プログラムであって、前記立体認知能力評価装置は、
前記移動オブジェクトの位置に関する情報を取得する位置取得部と、
学習済みの特定モデルを用いて前記立体認知能力を判定する立体認知能力判定部とを備え、
前記特定モデルの説明変数は、前記移動オブジェクトの進行方向において前記移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと前記移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および前記移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と前記移動オブジェクトとの間の第2距離から導かれる第2特徴量の少なくとも1つ
を含み、
前記特定モデルは、前記移動オブジェクトの操作者の立体認知能力によって予めラベル付けされた、当該操作者によって操作されて移動する前記移動オブジェクトの位置に関する情報を教師データとする機械学習によって学習済みモデルとされる、立体認知能力評価プログラム。
【請求項18】
コンピュータによって実行されることにより、前記コンピュータに、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの挙動の変化に基づいて前記被測定者の立体認知能力を評価するための立体認知能力評価装置を構成させるための立体認知能力評価プログラムであって、前記立体認知能力評価装置は、
前記移動オブジェクトの挙動に関する情報を取得する挙動取得部と、
学習済みの特定モデルを用いて前記立体認知能力を判定する立体認知能力判定部とを備え、
前記特定モデルの説明変数は、前記移動オブジェクトの進行方向において前記移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと前記移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および前記移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と前記移動オブジェクトとの間の第2距離に関する第2特徴量の少なくとも1つ
を含み、
前記特定モデルは、前記移動オブジェクトの操作者の立体認知能力によって予めラベル付けされた、当該操作者によって操作されて移動する前記移動オブジェクトの位置に関する情報を教師データとする機械学習によって学習済みモデルとされる、立体認知能力評価プログラム。
【請求項19】
コンピュータによって実行されることにより、前記コンピュータに、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの位置の変化に基づいて前記被測定者の立体認知能力を評価
させるための立体認知能力評価方法であって、
前記移動オブジェクトの位置に関する情報を取得するステップと、
学習済みの特定モデルを用いて前記立体認知能力を判定するステップとを含み、
前記特定モデルの説明変数は、前記移動オブジェクトの進行方向において前記移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと前記移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および前記移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と前記移動オブジェクトとの間の第2距離から導かれる第2特徴量の少なくとも1つ
を含み、
前記特定モデルは、前記移動オブジェクトの操作者の立体認知能力によって予めラベル付けされた、当該操作者によって操作されて移動する前記移動オブジェクトの位置に関する情報を教師データとする機械学習によって学習済みモデルとされる、立体認知能力評価方法。
【請求項20】
コンピュータによって実行されることにより、前記コンピュータに、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの挙動の変化に基づいて前記被測定者の立体認知能力を評価
させるための立体認知能力評価方法であって、
前記移動オブジェクトの挙動に関する情報を取得するステップと、
学習済みの特定モデルを用いて前記立体認知能力を判定するステップとを含み、
前記特定モデルの説明変数は、前記移動オブジェクトの進行方向において前記移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと前記移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および前記移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と前記移動オブジェクトとの間の第2距離に関する第2特徴量の少なくとも1つ
を含み、
前記特定モデルは、前記移動オブジェクトの操作者の立体認知能力によって予めラベル付けされた、当該操作者によって操作されて移動する前記移動オブジェクトの位置に関する情報を教師データとする機械学習によって学習済みモデルとされる、立体認知能力評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立体認知能力評価システム、立体認知能力評価装置、立体認知能力評価プログラム、および立体認知能力評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定者の反応に基づいて被測定者の認知機能を評価するシステムが知られている。たとえば、特許第6000968号公報(特許文献1)には、視覚に関する測定を利用して認知機能を評価するシステムとして、携帯型タッチスクリーンパーソナルコンピューティングデバイスを使用したシステムが開示されている。当該システムにおいては、表示された認知評価刺激に対する反応速度に基づき個人の認知評価を実行する。認知評価試験においては、パーソナルコンピューティングデバイスのディスプレイに文字が表示されてから、ボタンの押下というユーザの応答までの反応時間が測定される。
【0003】
特表2015-502238号公報(特許文献2)には、被験者が短時間提示される視覚刺激を見つける検査を含む、被験者の周辺視野をマッピングするためのビデオゲームを提供するシステムが開示されている。当該システムにおいては、ディスプレイにターゲットが表示され、それに対するユーザの反応に基づいて、緑内障の視野欠損の計測が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6000968号公報
【文献】特表2015-502238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
立体認知能力は、物体の遠近を認識し、それに適切に対応できるかという能力であり、たとえば、遠近感としても表現され得る。近年、高齢者などで認知機能が低下する際に、立体認知能力も同様に低下するという傾向が知られている。そのため、立体認知能力を評価することは、認知機能の評価に近い効果を有する可能性がある。
【0006】
しかし、特許文献1に開示されているシステムにおいては、表示した物体が移動されるが、当該物体に対するユーザの遠近感に関しては考慮されていない。また、当該システムにおいては、被測定者の集中度、あるいは操作方法の習熟度のような各種属性によっても認知機能の測定結果が左右されるため、ユーザの立体認知能力を客観的に評価することは困難である。さらに、特許文献2に開示されているシステムにおいては、被験者とモニタとの間の距離は計測されるが、表示されるターゲットに対する被験者の遠近感に関しては考慮されていない。
【0007】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、立体認知能力の客観的な評価を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一局面に係る立体認知能力評価システムは、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの位置の変化に基づいて被測定者の立体認知能力を評価する。立体認知能力評価システムは、位置取得部と、立体認知能力判定部とを備える。位置取得部は、移動オブジェクトの位置に関する情報を取得する。立体認知能力判定部は、移動オブジェクトの進行方向において移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と移動オブジェクトとの間の第2距離から導かれる第2特徴量の少なくとも1つから被測定者の立体認知能力を判定する。
【0009】
本開示の他の局面に係る立体認知能力評価システムは、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの挙動の変化に基づいて被測定者の立体認知能力を評価する。立体認知能力評価システムは、挙動取得部と、立体認知能力判定部とを備える。挙動取得部は、移動オブジェクトの挙動に関する情報を取得する。立体認知能力判定部は、移動オブジェクトの進行方向において移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と移動オブジェクトとの間の第2距離に関する第2特徴量の少なくとも1つから立体認知能力を判定する。
【0010】
本開示の他の局面に係る立体認知能力評価装置は、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの位置の変化に基づいて被測定者の立体認知能力を評価する。立体認知能力評価装置は、位置取得部と、立体認知能力判定部と、筐体とを備える。位置取得部は、移動オブジェクトの位置に関する情報を取得する。立体認知能力判定部は、移動オブジェクトの進行方向において移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と移動オブジェクトとの間の第2距離から導かれる第2特徴量の少なくとも1つから被測定者の立体認知能力を判定する。筐体は、位置取得部および立体認知能力判定部を収容する。
【0011】
本開示の他の局面に係る立体認知能力評価装置は、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの挙動の変化に基づいて被測定者の立体認知能力を評価する。立体認知能力評価装置は、挙動取得部と、立体認知能力判定部と、筐体とを備える。挙動取得部は、移動オブジェクトの挙動に関する情報を取得する。立体認知能力判定部は、移動オブジェクトの進行方向において移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と移動オブジェクトとの間の第2距離に関する第2特徴量の少なくとも1つから立体認知能力を判定する。筐体は、挙動取得部および立体認知能力判定部を収容する。
【0012】
本開示の他の局面に係る立体認知能力評価プログラムは、コンピュータによって実行されることにより、コンピュータに、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの位置の変化に基づいて被測定者の立体認知能力を評価するための立体認知能力評価装置を構成させる。立体認知能力評価装置は、位置取得部と、立体認知能力判定部とを備える。位置取得部は、移動オブジェクトの位置に関する情報を取得する。立体認知能力判定部は、移動オブジェクトの進行方向において移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と移動オブジェクトとの間の第2距離から導かれる第2特徴量の少なくとも1つから被測定者の立体認知能力を評価する。
【0013】
本開示の他の局面に係る立体認知能力評価プログラムは、コンピュータによって実行されることにより、コンピュータに、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの挙動の変化に基づいて被測定者の立体認知能力を評価するための立体認知能力評価装置を構成させる。立体認知能力評価装置は、挙動取得部と、立体認知能力判定部とを備える。挙動取得部は、移動オブジェクトの挙動に関する情報を取得する。立体認知能力判定部は、移動オブジェクトの進行方向において移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と移動オブジェクトとの間の第2距離に関する第2特徴量の少なくとも1つから立体認知能力を評価する。
【0014】
本開示の他の局面に係る立体認知能力評価方法は、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの位置の変化に基づいて被測定者の立体認知能力を評価する。立体認知能力評価方法は、移動オブジェクトの位置に関する情報を取得するステップを含む。立体認知能力評価方法は、移動オブジェクトの進行方向において移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と移動オブジェクトとの間の第2距離から導かれる第2特徴量の少なくとも1つから被測定者の立体認知能力を判定するステップをさらに含む。
【0015】
本開示の他の局面に係る立体認知能力評価方法は、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの挙動の変化に基づいて被測定者の立体認知能力を評価する。立体認知能力評価方法は、移動オブジェクトの挙動に関する情報を取得するステップを含む。立体認知能力評価方法は、移動オブジェクトの進行方向において移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と移動オブジェクトとの間の第2距離に関する第2特徴量の少なくとも1つから立体認知能力を判定するステップをさらに含む。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係る立体認知能力評価システム、立体認知能力評価装置、立体認知能力評価プログラム、および立体認知能力評価方法によれば、基準オブジェクトと移動オブジェクトとの間の第1距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる第1特徴量、および基準線と移動オブジェクトとの間の第2距離に関する第2特徴量の少なくとも1つから被測定者の立体認知能力を判定することにより、被測定者の立体認知能力の客観的な評価を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1に係る立体認知能力評価システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の立体認知能力評価システムのハードウェア構成を示す図である。
【
図3】
図2のプロセッサの、立体認知能力の評価機能の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図2のプロセッサの、機械学習機能の構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図2の評価モデルに入力される特徴量を導出するために必要な自動車に関する距離を説明するための図である。
【
図6】
図5の先行車および自動車の各々の速度のタイムチャートである。
【
図7】
図6のタイムチャートにおいて先行車が等速走行している区間が特定された結果を示すタイムチャートである。
【
図8】複数の区間の走行データから導出される複数の特徴量を示す図である。
【
図9】立体認知能力が高いことを意味するラベルが付された運転者によって自動車が運転される場合の、
図5の先行車の軌跡および自動車の軌跡を併せて示す図である。
【
図10】立体認知能力が低いことを意味するラベルが付された運転者によって自動車が運転される場合の、
図5の先行車の軌跡および自動車の軌跡を併せて示す図である。
【
図11】
図2の決定木の一例であり、間隔加速度から導かれる特徴量を説明変数として含む決定木を示す図である。
【
図12】
図11の決定木の分類対象に立体認知能力が低い運転者を追加した場合の分類結果を示す図である。
【
図13】
図2の決定木の他の例であり、スライド量の絶対値およびスライド速度の絶対値から導かれる特徴量を説明変数として含む決定木DT2を示す図である。
【
図14】
図2の決定木の他の例であり、スライド量の絶対値、スライド速度の絶対値、およびスライド加速度の絶対値から導かれる特徴量を説明変数として含む決定木を示す図である。
【
図15】
図2の決定木の他の例であり、スライド量の絶対値、スライド速度の絶対値、およびスライド加速度の絶対値から導かれる特徴量を説明変数として含む決定木を示す図である。
【
図16】
図2の決定木の他の例であり、スライド量から導かれる特徴量を説明変数として含む決定木を示す図である。
【
図17】
図2の決定木の他の例であり、スライド量から導かれる特徴量を説明変数として含む決定木を示す図である。
【
図18】
図2の立体認知能力評価プログラムを実行するプロセッサによって行われる立体認知能力評価方法における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図19】実施の形態1の変形例に係る立体認知能力評価システムの構成を示すブロック図である。
【
図20】
図19の立体認知能力評価システムのハードウェア構成を示す図である。
【
図21】実施の形態2に係る立体認知能力評価システムにおいて、被測定者の立体認知能力がドライブシミュレーションによる測定テストによって測定されている様子を示す図である。
【
図22】
図21の立体認知能力評価システムによるドライブシミュレーションにおいて立体認知能力評価装置を介して被測定者に表示される画面の一例を示す図である。
【
図24】
図23の立体認知能力評価装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図25】眼の機能の測定に使用する視標の概念を表わす図である。
【
図26】瞳孔近距離反射による、視標距離(被測定者の眼と視標の間の距離)と瞳孔径との関係を示す図である。
【
図27】視標距離と瞳孔位置(輻輳開散運動)との関係を示す図である。
【
図28】
図24のプロセッサの立体認知能力の評価機能の構成を示す機能ブロック図である。
【
図29】
図24の立体認知能力評価プログラムを実行するプロセッサによって行われる立体認知能力評価方法における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図30】実施の形態3に係る立体認知能力評価システムのハードウェア構成を示す図である。
【
図31】
図30のプロセッサの、立体認知能力の評価機能の構成を示す機能ブロック図である。
【
図32】
図30のプロセッサの、機械学習機能の構成を示す機能ブロック図である。
【
図33】実施の形態3の変形例に係る立体認知能力評価システムのハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則として繰り返さない。
【0019】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係る立体認知能力評価システム100の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、立体認知能力評価システム100は、情報処理装置110(立体認知能力評価装置)と、被測定者Sb1の端末装置800と、自動車Cs1(移動オブジェクト)に搭載されたドライブレコーダ900(移動記録装置)とを備える。情報処理装置110と、端末装置800と、自動車Cs1と、ドライブレコーダ900とは、ネットワークNWを介して互いに接続されている。ネットワークNWは、たとえばインターネット、LAN(Local Area Network)、あるいはクラウドシステムを含む。
【0020】
被測定者Sb1は、立体認知能力評価システム100によって立体認知能力が測定される対象である。被測定者Sb1は、自動車Cs1に乗車して自動車Cs1を運転する。被測定者Sb1によって運転された自動車Cs1の走行データ(動画データ)は、ドライブレコーダ900によって記録される。
【0021】
情報処理装置110は、ドライブレコーダ900から被測定者Sb1の走行データを取得する。情報処理装置110は、当該走行データから被測定者Sb1に操作されて移動する自動車Cs1の位置の変化を特徴付ける指標(特徴量)を導出する。情報処理装置110は、当該特徴量に基づいて被測定者Sb1の立体認知能力を評価する。情報処理装置110は、立体認知能力の評価結果を被測定者Sb1の端末装置800に送信する。情報処理装置110は、たとえばパーソナルコンピュータあるいはワークステーションを含む。情報処理装置110は、自動車Cs1に搭載されていてもよい。
【0022】
被測定者Sb1は、端末装置800とネットワークNWとの接続を確立可能な場所であればどこにいても端末装置800を参照することにより、当該評価結果を確認することができる。端末装置800は、たとえば無線通信が可能なスマートフォンを含む。
【0023】
図2は、
図1の立体認知能力評価システム100のハードウェア構成を示す図である。
図2に示されるように、情報処理装置110は、プロセッサ101と、RAM(Random Access Memory)102と、ストレージ103と、通信部104と、メモリインターフェース105と、筐体Hs1とを含む。筐体Hs1は、プロセッサ101と、RAM(Random Access Memory)102と、ストレージ103と、通信部104と、メモリインターフェース105とを収容している。
【0024】
プロセッサ101は、情報処理装置110の動作を制御する各種の機能を実行するための処理回路である。プロセッサ101は、たとえばコンピュータのような情報機器を動作させるCPU(Central Processing Unit)あるいはGPU(Graphics Processing Unit)を含む。
【0025】
RAM102は、揮発性メモリを含む。RAM102は、プロセッサ101が動作する際のワークエリア、あるいは一時的なデータの格納領域などとして使用される。
【0026】
ストレージ103は、たとえばフラッシュROM(Read Only Memory)あるいはSSD(Solid State Drive)のような不揮発性メモリを含む。ストレージ103には、コンピュータプログラムおよびそれの実行時に参照されるデータが保存されている。たとえば、ストレージ103には、当該コンピュータプログラムとして、OS(Operating System)プログラム(不図示)と、立体認知能力評価プログラム103aと、機械学習プログラム103bとが保存されている。また、ストレージ103には、コンピュータプログラムの実行時に参照されるデータとして、評価モデル103c(特定モデル)と、学習データ103dとが保存されている。
【0027】
評価モデル103cは、被測定者Sb1の走行データから導かれた特徴量から被測定者Sb1の立体認知能力を評価する。評価モデル103cは、被測定者Sb1の立体認知能力を予め定められた複数のレベルのいずれかに分類する分類モデルであってもよいし、当該立体認知能力に対応する数値を出力する回帰モデルであってもよい。当該評価モデル103cは、立体認知能力評価プログラム103aによって参照される。評価モデル103cは、決定木DT(Decision Tree)を含む。評価モデル103cは、たとえば、ニューラルネットワークあるいはサポートベクターマシンを含んでいてもよい。学習データ103dは、機械学習プログラム103bによって参照される。機械学習プログラム103bは、機械学習アルゴリズムとして、たとえばCART(Classification and Regression Trees)を実行する。学習データ103dは、運転者の認知能力によって予めラベル付けされた当該運転者の走行データ(教師データ)を含む。走行データに付されるラベルとしては、たとえば、メンタルローテーション課題、視覚能力評価テスト、「見る力」理解力テスト、K-ABC(Kaufman Assessment Battery for Children)検査、視知覚スキル検査、運動除外視覚認知テストなどの既存の視空間認知評価バッテリー、運転者の運転技能、職業、年齢、または運転歴等(被測定者の属性に関する情報)から予め判断された立体認知能力のレベルを挙げることができる。
【0028】
通信部104は、ネットワークNWを介して、端末装置800、自動車Cs1、およびドライブレコーダ900の各々と通信する。通信部104とネットワークNWとは、有線通信(たとえばイーサネット(登録商標))によって接続されてもよいし、無線通信(たとえばWi-Fi(登録商標))によって接続されてもよい。
【0029】
メモリインターフェース105は、情報処理装置110の外部の記憶媒体へのアクセスを可能にする。メモリインターフェース105は、SD(Secure Digital)カードおよびUSB(Universal Serial Bus)に対応する。
【0030】
情報処理装置110には、ユーザからの入力を受けるとともに、プロセッサ101の処理結果をユーザに表示する入出力部(不図示)が接続されていてもよい。当該入出力部は、たとえば、ディスプレイ、タッチパネル、キーボード、スピーカ、ランプ、およびマウスを含む。
【0031】
ドライブレコーダ900は、プロセッサ901と、カメラ902と、RAM903と、通信部904と、ストレージ905と、メモリインターフェース906と、位置測定部907とを含む。プロセッサ901、RAM903、通信部904、メモリインターフェース906は、情報処理装置110のプロセッサ101、RAM102、通信部104、メモリインターフェース105とそれぞれほぼ同様の機能を有するため、プロセッサ901、RAM903、通信部904、およびメモリインターフェース906の当該機能についての説明を繰り返さない。
【0032】
カメラ902は、自動車Cs1の運転席から自動車Cs1の進行方向を見た場合の走行データ905aを生成する。走行データ905aは、ストレージ905に保存される。走行データ905aは、通信部904によって情報処理装置110に送信される。位置測定部907は、GPS(Global Positioning System)等のGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して自動車Cs1の位置を測定する。
【0033】
自動車Cs1は、自動車Cs1を操作する被測定者Sb1の反応に関するデータを情報処理装置110に送信する。具体的には、自動車Cs1は、ハンドル、アクセルペダル、およびブレーキペダル等への被測定者の入力情報(たとえば、ハンドルの回転角、アクセルペダルの踏度、およびブレーキペダルの踏度)に基づいて、被測定者Sb1の反応に関するデータを情報処理装置110に送信する。なお、反応とは、移動オブジェクトの遠近を認識し、対応することを意味する。
【0034】
立体認知能力評価システム100の立体認知能力の評価機能は、ストレージ103に保存された立体認知能力評価プログラム103aをプロセッサ101が読み出してRAM102のワークエリアを利用して実行することにより実現される。立体認知能力評価プログラム103aが実行されることにより立体認知能力評価に関する各種の機能を実現するモジュールが形成され、当該モジュールが当該機能を実現する動作を実行する。
【0035】
図3は、
図2のプロセッサ101の、立体認知能力の評価機能の構成を示す機能ブロック図である。立体認知能力評価システム100においては、ストレージ103に保存された立体認知能力評価プログラム103aがプロセッサ101によって実行されることにより、位置取得部101b、反応入力部101d、および立体認知能力判定部101eという機能ブロックを形成するモジュールが構成される。したがって、
図3においては、
図2のプロセッサ101および立体認知能力評価プログラム103aに替えて、それらによって実現される機能ブロックが示されている。以下、それらの機能ブロックについて説明する。
【0036】
位置取得部101bは、ドライブレコーダ900から被測定者Sb1の走行データおよび自動車Cs1の位置の測定結果(測位結果)を取得する。位置取得部101bは、当該走行データおよび測位結果から自動車Cs1の位置に関する情報を取得する。位置取得部101bは、立体認知能力判定部101eに自動車Cs1の位置に関する情報を出力する。自動車Cs1の位置に関する情報は、自動車Cs1と先行する別の自動車(先行車)との間の車間距離を1回時間微分した値(間隔速度)、当該距離を2回時間微分した値(間隔加速度)、自動車Cs1の進行方向に沿う基準線と自動車Cs1との間の距離(スライド量)、スライド量を1回時間微分した値(スライド速度)、およびスライド量を2回時間微分した値(スライド加速度)の少なくとも1つを導出可能な情報を含む。たとえば、自動車Cs1の位置に関する情報は、時刻と自動車Cs1の三次元空間座標との対応関係、少なくとも1つの基準位置の各々の三次元空間座標、および三次元空間における基準線を特定可能な情報を含む。
【0037】
反応入力部101dは、被測定者Sb1が認識した自動車Cs1の三次元位置に対応してなされる被測定者Sb1の能動的な反応の入力を受ける。反応入力部101dは、自動車Cs1のハンドル、アクセルペダル、およびブレーキペダル等への被測定者の入力情報に基づいて、自動車Cs1を運転する被測定者Sb1の反応を特定する。反応入力部101dは、当該反応に関する情報を立体認知能力判定部101eに出力する。
【0038】
なお、能動的な反応とは、所定の目的を達成するための積極的な操作を意味し、具体的には、自動車Cs1の位置によって位置が動的に定められる目標に対して行なわれる操作を意味する。能動的な反応には、たとえば、自動車Cs1を所定の場所に近付ける操作が含まれる。この場合、自動車Cs1の位置によって、自動車Cs1の位置と所定の場所の位置との差分が動的に決定され、当該差分を減少させることが目標となる。また、能動的な反応には、たとえば、自動車Cs1と先行して走行する別の自動車(先行車)との間の距離を一定に保つ操作が含まれる。この場合、先行車の位置によって、先行車と自動車Cs1との差分が動的に決定され、当該差分を一定に保つことが目標となる。
【0039】
立体認知能力判定部101eは、自動車Cs1の位置に関する情報に基づいて、自動車Cs1の間隔速度、間隔加速度、スライド量の絶対値、スライド速度の絶対値、スライド加速度の絶対値、スライド量、スライド速度、およびスライド加速度の少なくとも1つから導かれる特徴量を導出する。立体認知能力判定部101eは、評価モデル103cを用いて、当該特徴量から、被測定者Sb1の立体認知能力を判定する。被測定者Sb1の立体認知能力の判定に、反応入力部101dからの反応に関する情報が使用されてもよい。立体認知能力判定部101eは、通信部104を介して、立体認知能力の評価結果を被測定者Sb1の端末装置800に送信する。
【0040】
立体認知能力評価システム100においては、プロセッサ101によって機械学習プログラム103bが実行されることにより、情報処理装置110が学習済みの評価モデル103cを生成する学習装置として機能する。
【0041】
図4は、
図2のプロセッサ101の、機械学習機能の構成を示す機能ブロック図である。
図4に示されるように、立体認知能力評価システム100においては、機械学習プログラム103bがプロセッサ101によって実行されることにより、位置取得部111b、および学習部101fという機能ブロックを形成するモジュールが構成される。したがって、
図4においては、
図2のプロセッサ101および機械学習プログラム103bに替えて、それらによって実現される機能ブロックが示されている。以下、それらの機能ブロックについて説明する。
【0042】
位置取得部111bは、学習データ103dから走行データを取得する。位置取得部111bは、
図3の位置取得部101bと同様に、当該走行データに対応する自動車の位置に関する情報を取得する。位置取得部111bは、学習部101fに当該自動車の位置に関する情報および当該走行データに付されたラベルを出力する。
【0043】
学習部101fは、位置取得部111bから取得した自動車の位置に関する情報に基づいて、当該自動車の間隔速度、間隔加速度、スライド量の絶対値、スライド速度の絶対値、スライド加速度の絶対値、スライド量、スライド速度、およびスライド加速度の少なくとも1つから導かれる特徴量を導出する。学習部101fは、当該特徴量および当該自動車の位置に関する情報に付されたラベルを用いて評価モデル103cに対して機械学習を行って、評価モデル103cを学習済みモデルとする。たとえば、学習部101fは、CARTを実行することにより、当該特徴量に対応する運転者の立体認知能力を目的変数とするとともに、当該特徴量を説明変数とする決定木DTを生成する。
【0044】
基準オブジェクトと移動オブジェクトとの間隔を第1距離と定義し、移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と移動オブジェクトとの間の距離(スライド量)を第2距離と定義すると、本開示は以下のような範囲の実施の態様を含む。
【0045】
すなわち、本開示の立体認知能力評価システムは、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの位置の変化に基づいて被測定者の立体認知能力を評価する。立体認知能力評価システムは、位置取得部と、立体認知能力判定部とを備える。位置取得部は、移動オブジェクトの位置に関する情報を取得する。
【0046】
立体認知能力判定部は、移動オブジェクトの進行方向において移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと移動オブジェクトとの間の第1距離に関する第1特徴量、および移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と移動オブジェクトとの間の第2距離に関する第2特徴量の少なくとも1つから被測定者の立体認知能力を判定する。
【0047】
また、上記位置取得部は、上記移動オブジェクトの位置に関する情報を取得し、上記第1特徴量および/または上記第2特徴量は、上記移動オブジェクトの位置に関する情報から導かれる。上記第1特徴量は、第1距離の値、第1距離を1回時間微分した値、第1距離を2回時間微分した値のいずれか1から導かれてもよい。上記第2特徴量は、第2距離の値、第2距離を1回時間微分した値、第2距離を2回時間微分した値のいずれか1つから導かれてもよい。
【0048】
図5は、
図2の評価モデル103cに入力される特徴量を導出するために必要な自動車Cs1に関する距離を説明するための図である。
図5に示されるように、被測定者Sb1によって運転される自動車Cs1に先行して、先行車Ca1が走行している。先行車Ca1および自動車Cs1は、進行方向Dr1に沿って走行している。スライド方向Dr2は、進行方向Dr1に直交する。先行車Ca1は、先行車Ca1の位置として定義された基準位置Pr1を含む。自動車Cs1は、自動車Cs1の位置として定義された基準位置Pr0を含む。自動車Cs1と先行車Ca1との間の距離(第1距離)は、基準位置Pr0から基準位置Pr1に向かうベクトルVc1の大きさとして定義される。
【0049】
基準線VL1は、進行方向Dr1に平行であり、基準位置Pr1を通過する。基準線VL1は、基準位置Pr2を含む。基準位置Pr2からPr0へ向かうベクトルVc2は、進行方向Dr1と直交する。自動車Cs1と基準線VL1との間の距離(第2距離)は、ベクトルVc2の大きさに、スライド方向Dr2におけるベクトルVc2の方向に応じた符号を付した値として定義される。すなわち、ベクトルVc2がスライド方向Dr2のプラス方向に向かう場合、スライド量はプラスの値となる。ベクトルVc2がスライド方向Dr2のマイナス方向に向かう場合、スライド量はマイナスの値となる。なお、スライド量は、先行車Ca1がいない場合でも定義可能である。この場合の基準線VL1は、たとえば自動車Cs1が走行する車線のセンターラインである。そのため、先行車Ca1がいない場合であっても、スライド量から導かれる特徴量を用いて被測定者Sb1の立体認知能力を評価可能である。
【0050】
以下では
図6~
図8を用いて、立体認知能力評価システム100において、被測定者Sb1の立体認知能力を評価のためにどのような特徴量が導出されるかを具体的に説明する。
図6は、
図5の先行車Ca1および自動車Cs1の各々の速度のタイムチャートである。グラフCvaは、サンプリングタイム毎に測定された先行車Ca1の速度と、当該サンプリングタイムとの対応関係を示す。グラフCvsは、サンプリングタイム毎に測定された自動車Cs1の速度と、当該サンプリングタイムとの対応関係を示す。
【0051】
図7は、
図6のタイムチャートにおいて先行車Ca1が等速走行している区間が特定された結果を示すタイムチャートである。なお、先行車Ca1が等速走行している区間とは、先行車Ca1の速度の変化が所定の範囲に含まれている区間である。
図7に示されるように、先行車Ca1が等速走行している区間として複数の区間Sc1,Sc2,Sc3,Sc4,Sc5,Sc6が特定されている。先行車Ca1が等速走行している区間として、5以下の区間が抽出されてもよいし、7以上の区間が抽出されてもよい。先行車Ca1が等速運転している区間の走行データを用いて特徴量を導出することにより、特徴量にノイズ(立体認知能力に関係性の低い情報)が含まれることを低減することができる。その結果、被測定者Sb1の立体認知能力の評価の精度を向上させることができる。なお、先行車Ca1が等速運転していない区間の走行データから導出された特徴量を用いても、被測定者Sb1の立体認知能力を評価することは可能である。
【0052】
図8は、複数の区間の走行データから導出される複数の特徴量を示す図である。なお、以下では、「X_m」は値Xの1区間の平均値(区間平均値)を表し、「X_s」は値Xの1区間の標準偏差(区間標準偏差)を表す。「X_mm」は値Xの区間平均値(区間代表値)の平均値(区間代表平均値)を表し、「X_ms」は値Xの区間平均値の標準偏差(区間代表標準偏差)を表す。「X_sm」は値Xの区間標準偏差(区間代表値)の平均値(区間代表平均値)を表し、「X_ss」は値Xの区間標準偏差の標準偏差(区間代表標準偏差)を表す。値X1は値X0が1回時間微分された値を表し、値X2は値X0が2回時間微分された値を表す。
【0053】
図8に示されるように、サンプリングタイム毎の走行データから、当該サンプリングタイムにおける車間距離D0、間隔速度D1、間隔加速度D2、スライド量S0、スライド速度S1、スライド加速度S2、スライド量S0の絶対値AS0、スライド速度の絶対値AS1、およびスライド加速度の絶対値AS2が算出される。
【0054】
区間ScN(Nは自然数)に着目する場合、車間距離D0に関して区間平均値D0_mおよび区間標準偏差D0_sが特徴量として算出される。間隔速度D1に関して区間平均値D1_mおよび区間標準偏差D1_sが特徴量として算出される。間隔加速度D2に関して区間平均値D2_mおよび区間標準偏差D2_sが特徴量として算出される。
【0055】
スライド量S0に関して区間平均値S0_mおよび区間標準偏差S0_sが特徴量として算出される。スライド速度S1に関して区間平均値S1_mおよび区間標準偏差S1_sが特徴量として算出される。スライド加速度S2に関して区間平均値S2_mおよび区間標準偏差S2_sが特徴量として算出される。
【0056】
スライド量S0の絶対値AS0に関して区間平均値AS0_mおよび区間標準偏差AS0_sが特徴量として算出される。スライド速度の絶対値AS1に関して区間平均値AS1_mおよび区間標準偏差AS1_sが特徴量として算出される。スライド加速度の絶対値AS2に関して区間平均値AS2_mおよび区間標準偏差AS2_sが特徴量として算出される。
【0057】
各区間の区間平均値D0_m,D1_m,D2_mおよび区間標準偏差D0_s,D1_s,D2_sから、区間代表平均値D0_mm,D1_mm,D2_mm,D0_sm,D1_sm,D2_smがそれぞれ特徴量として算出されるとともに、区間代表標準偏差D0_ms,D1_ms,D2_ms,D0_ss,D1_ss,D2_ssがそれぞれ特徴量として算出される。
【0058】
各区間の区間平均値S0_m,S1_m,S2_mおよび区間標準偏差S0_s,S1_s,S2_sから、区間代表平均値S0_mm,S1_mm,S2_mm,S0_sm,S1_sm,S2_smがそれぞれ特徴量として算出されるとともに、区間代表標準偏差S0_ms,S1_ms,S2_ms,S0_ss,S1_ss,S2_ssがそれぞれ特徴量として算出される。
【0059】
各区間の区間平均値AS0_m,AS1_m,AS2_mおよび区間標準偏差AS0_s,AS1_s,AS2_sから、区間代表平均値AS0_mm,AS1_mm,AS2_mm,AS0_sm,AS1_sm,AS2_smがそれぞれ特徴量として算出されるとともに、区間代表標準偏差AS0_ms,AS1_ms,AS2_ms,AS0_ss,AS1_ss,AS2_ssがそれぞれ特徴量として算出される。
【0060】
立体認知能力評価システム100においては、車間距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる特徴量(第1特徴量)およびスライド量から導かれる特徴量(第2特徴量)の少なくとも1つを用いて、被測定者Sb1の立体認知能力の評価が行われる。すなわち、当該評価においては、
図8において点線で囲まれた領域Rgに含まれる特徴量の少なくとも1つが用いられる。
【0061】
以下では、
図9および
図10を用いて、スライド量と立体認知能力との関係について説明する。
図9は、立体認知能力が高いことを意味するラベルが付された運転者によって自動車Cs1が運転される場合の、
図5の先行車Ca1の軌跡Tra1および自動車Cs1の軌跡Trs1を併せて示す図である。
図10は、立体認知能力が低いことを意味するラベルが付された運転者によって自動車Cs1が運転される場合の、
図5の先行車Ca1の軌跡Tra2および自動車Cs1の軌跡Trs2を併せて示す図である。
図9に示されるように、軌跡Trs1は、ほぼ軌跡Tra1に追従するように変化している。一方、
図10に示されるように、軌跡Trs2は、軌跡Tra2から離れることが多く、蛇行している。立体認知能力が相対的に低い運転者は、立体認知能力が相対的に高い運転者よりも、自動車の進行方向を維持する能力が低い傾向がある。したがって、スライド量から導かれる特徴量は、自動車の進行方向を維持する能力を反映する特徴量として、当該自動車の運転者(被測定者)の立体認知能力の評価に有効である。
【0062】
以下では、
図11~
図17を用いて、
図2の決定木DTの具体例について説明する。
図11は、
図2の決定木DTの一例であり、間隔加速度D2から導かれる特徴量を説明変数として含む決定木DT1を示す図である。
図11に示されるように、決定木DT1は、ルートノードRn10と、分岐ノードBn11と、リーフノードLn11,Ln12,Ln13とを含む。ルートノードRn10において分類対象となる19人の運転者(学習データとしての走行データ)のうち、14人の運転者に立体認知能力(目的変数)が高いことを示すラベル(「高」)が付され、5人の運転者に立体認知能力が低いことを示すラベル(「低」)が付されている。
【0063】
ルートノードRn10は、説明変数として特徴量D2_ms(間隔加速度D2の区間平均値の区間代表標準偏差)を含む。運転者の特徴量D2_msが0.417以下である場合、当該運転者はリーフノードLn11に分類される。運転者の特徴量D2_msが0.417より大きい場合、当該運転者は分岐ノードBn11に分類される。ルートノードRn10における分類対象である19人の運転者のうち、13人の運転者がリーフノードLn11に分類され、6人の運転者が分岐ノードBn11に分類されている。リーフノードLn11に分類された全運転者に「高」のラベルが付されている。分岐ノードBn11に分類された6人の運転者のうち、1人の運転者に「高」のラベルが付され、5人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0064】
分岐ノードBn11は、説明変数として特徴量D2_ss(間隔加速度D2の区間標準偏差の区間代表標準偏差)を含む。運転者の特徴量D2_ssが1.594以下である場合、当該運転者はリーフノードLn12に分類される。運転者の特徴量D2_ssが1.594より大きい場合、当該運転者はリーフノードLn13に分類される。分岐ノードBn11における分類対象である6人の運転者のうち、5人の運転者がリーフノードLn12に分類され、1人の運転者がリーフノードLn13に分類されている。リーフノードLn12に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。リーフノードLn13に分類された全運転者に「高」のラベルが付されている。
【0065】
以上のように、決定木DT1は、説明変数として特徴量D2_ms,D2_ssを含む。決定木DT1は、立体認知能力が高い被測定者をリーフノードLn11,Ln13に分類し、立体認知能力が低い被測定者をリーフノードLn12に分類する。
【0066】
なお、決定木DT1の各ノードに示されるジニ係数は、当該ノードに対応する運転者に付されたラベルに複数の種類がどの程度混ざっているか(不純度)を示す指標値である。ジニ係数が大きいほど、運転者に付されたラベルに複数の種類が混ざっている程度が高い。たとえばリーフノードLn11~Ln13の各々に分類された運転者に付されたラベルの種類は1種類であり、他のラベルが混ざっていないため、当該リーフノードのジニ係数は最小値の0となる。一方、たとえば分岐ノードBn11に分類された運転者に付されたラベルには「高」のラベルと「低」のラベルが混ざっているため、ジニ係数は0より大きい。
【0067】
図12は、
図11の決定木DT1の分類対象に立体認知能力が低い運転者を追加した場合の分類結果を示す図である。
図12に示されるように、
図11のルートノードRn10の分類対象に「低」のラベルが付された2人の運転者が追加されている。当該運転者は、ルートノードRn10から分岐ノードBn11を介して、
図11と同様にリーフノードLn12に分類されている。決定木DT1は学習データ以外の走行データに対する汎用性を有しているため、高精度に被測定者の立体認知能力を判定することができる。
【0068】
図13は、
図2の決定木DTの他の例であり、スライド量S0の絶対値AS0およびスライド速度S1の絶対値AS1から導かれる特徴量を説明変数として含む決定木DT2を示す図である。
図13に示されるように、決定木DT2は、ルートノードRn20と、分岐ノードBn21,Bn22,Bn23と、リーフノードLn21,Ln22,Ln23,Ln24,Ln25とを含む。ルートノードRn20において分類対象となる21人の運転者のうち、14人の運転者に「高」のラベルが付され、7人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0069】
ルートノードRn20は、説明変数として特徴量AS0_ss(スライド量S0の絶対値AS0の区間標準偏差の区間代表標準偏差)を含む。運転者の特徴量AS0_ssが0.093以下である場合、当該運転者は分岐ノードBn21に分類される。運転者の特徴量AS0_ssが0.093より大きい場合、当該運転者はリーフノードLn21に分類される。ルートノードRn20における分類対象である21人の運転者のうち、16人の運転者が分岐ノードBn21に分類され、5人の運転者がリーフノードLn21に分類されている。リーフノードLn21に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。分岐ノードBn21に分類された16人の運転者のうち、14人の運転者に「高」のラベルが付され、2人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0070】
分岐ノードBn21は、説明変数として年齢を含む。運転者の年齢が60歳以下である場合、当該運転者は分岐ノードBn22に分類される。運転者の年齢が60歳より高い場合、当該運転者はリーフノードLn22に分類される。分岐ノードBn21における分類対象である16人の運転者のうち、15人の運転者が分岐ノードBn22に分類され、1人の運転者がリーフノードLn22に分類されている。リーフノードLn22に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。分岐ノードBn22に分類された15人の運転者のうち、14人の運転者に「高」のラベルが付され、1人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0071】
分岐ノードBn22は、説明変数として特徴量AS0_ms(スライド量S0の絶対値AS0の区間平均値の区間代表標準偏差)を含む。運転者の特徴量AS0_msが0.206以下である場合、当該運転者はリーフノードLn23に分類される。運転者の特徴量AS0_msが0.206より大きい場合、当該運転者は分岐ノードBn23に分類される。分岐ノードBn22における分類対象である15人の運転者のうち、13人の運転者がリーフノードLn23に分類され、2人の運転者が分岐ノードBn23に分類されている。リーフノードLn23に分類された全運転者に「高」のラベルが付されている。分岐ノードBn23に分類された2人の運転者のうち、1人の運転者に「高」のラベルが付され、1人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0072】
分岐ノードBn23は、説明変数として特徴量AS1_sm(スライド速度S1の絶対値AS1の区間標準偏差の区間代表平均値)を含む。運転者の特徴量AS1_smが0.001以下である場合、当該運転者はリーフノードLn24に分類される。運転者の特徴量AS1_smが0.001より大きい場合、当該運転者はリーフノードLn25に分類される。分岐ノードBn23における分類対象である2人の運転者のうち、1人の運転者がリーフノードLn24に分類され、1人の運転者が分岐ノードBn25に分類されている。リーフノードLn24に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。リーフノードLn25に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。
【0073】
以上のように、決定木DT2は、説明変数として特徴量AS0_ss,AS0_ms,AS1_sm、および年齢を含む。決定木DT2は、立体認知能力が高い被測定者をリーフノードLn23,Ln25に分類し、立体認知能力が低い被測定者をリーフノードLn21,Ln22,Ln24に分類する。
【0074】
図14は、
図2の決定木DTの他の例であり、スライド量S0の絶対値AS0、スライド速度S1の絶対値AS1、およびスライド加速度S2の絶対値AS2から導かれる特徴量を説明変数として含む決定木DT3を示す図である。
図14に示されるように、決定木DT3は、ルートノードRn30と、分岐ノードBn31,Bn32と、リーフノードLn31,Ln32,Ln33,Ln34とを含む。ルートノードRn30において分類対象となる21人の運転者のうち、14人の運転者に「高」のラベルが付され、7人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0075】
ルートノードRn30は、説明変数として特徴量AS0_ss(スライド量S0の絶対値AS0の区間標準偏差の区間代表標準偏差)を含む。運転者の特徴量AS0_ssが0.093以下である場合、当該運転者は分岐ノードBn31に分類される。運転者の特徴量AS0_ssが0.093より大きい場合、当該運転者はリーフノードLn31に分類される。ルートノードRn30における分類対象である21人の運転者のうち、16人の運転者が分岐ノードBn31に分類され、5人の運転者がリーフノードLn31に分類されている。リーフノードLn31に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。分岐ノードBn31に分類された16人の運転者のうち、14人の運転者に「高」のラベルが付され、2人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0076】
分岐ノードBn31は、説明変数として特徴量AS2_mm(スライド加速度S2の絶対値AS2の区間平均値の区間代表平均値)を含む。運転者の特徴量AS2_mmが0.0以下である場合、当該運転者はリーフノードLn32に分類される。運転者の特徴量AS2_mmが0.0より大きい場合、当該運転者は分岐ノードBn32に分類される。分岐ノードBn31における分類対象である16人の運転者のうち、12人の運転者がリーフノードLn32に分類され、4人の運転者が分岐ノードBn32に分類されている。リーフノードLn32に分類された全運転者に「高」のラベルが付されている。分岐ノードBn32に分類された4人の運転者のうち、2人の運転者に「高」のラベルが付され、2人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0077】
分岐ノードBn33は、説明変数として特徴量AS1_mm(スライド速度S1の絶対値AS1の区間平均値の区間代表平均値)を含む。運転者の特徴量AS1_mmが0.0以下である場合、当該運転者はリーフノードLn33に分類される。運転者の特徴量AS1_mmが0.0より大きい場合、当該運転者はリーフノードLn34に分類される。分岐ノードBn32における分類対象である4人の運転者のうち、2人の運転者がリーフノードLn33に分類され、2人の運転者がリーフノードLn34に分類されている。リーフノードLn33に分類された全運転者に「高」のラベルが付されている。リーフノードLn34に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。
【0078】
以上のように、決定木DT3は、説明変数として特徴量AS0_ss,AS2_mm,AS1_mmを含む。決定木DT3は、立体認知能力が高い被測定者をリーフノードLn32,Ln33に分類し、立体認知能力が低い被測定者をリーフノードLn31,Ln34に分類する。
【0079】
図15は、
図2の決定木DTの他の例であり、スライド量S0の絶対値AS0、スライド速度S1の絶対値AS1、およびスライド加速度S2の絶対値AS2から導かれる特徴量を説明変数として含む決定木DT4を示す図である。
図15に示されるように、決定木DT4は、ルートノードRn40と、分岐ノードBn41,Bn42と、リーフノードLn41,Ln42,Ln43,Ln44とを含む。ルートノードRn40において分類対象となる21人の運転者のうち、14人の運転者に「高」のラベルが付され、7人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0080】
ルートノードRn40は、説明変数として特徴量AS2_ms(スライド加速度S2の絶対値AS2の区間平均値の区間代表標準偏差)を含む。運転者の特徴量AS2_msが0.0以下である場合、当該運転者は分岐ノードBn41に分類される。運転者の特徴量AS2_msが0.0より大きい場合、当該運転者は分岐ノードBn42に分類される。ルートノードRn40における分類対象である21人の運転者のうち、14人の運転者が分岐ノードBn41に分類され、7人の運転者が分岐ノードBn42に分類されている。分岐ノードBn41に分類された14人の運転者のうち、13人の運転者に「高」のラベルが付され、1人の運転者に「低」のラベルが付されている。分岐ノードBn42に分類された7人の運転者のうち、1人の運転者に「高」のラベルが付され、6人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0081】
分岐ノードBn41は、説明変数として特徴量AS1_ms(スライド速度S1の絶対値AS1の区間平均値の区間代表標準偏差)を含む。運転者の特徴量AS1_msが0.001以下である場合、当該運転者はリーフノードLn41に分類される。運転者の特徴量AS1_msが0.001より大きい場合、当該運転者はリーフノードLn42に分類される。リーフノードLn41に分類された全運転者に「高」のラベルが付されている。リーフノードLn42に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。
【0082】
分岐ノードBn42は、説明変数として特徴量AS0_mm(スライド量S0の絶対値AS0の区間平均値の区間代表平均値)を含む。運転者の特徴量AS0_mmが0.467以下である場合、当該運転者はリーフノードLn43に分類される。運転者の特徴量AS0_mmが0.467より大きい場合、当該運転者はリーフノードLn44に分類される。リーフノードLn43に分類された全運転者に「高」のラベルが付されている。リーフノードLn44に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。
【0083】
以上のように、決定木DT4は、説明変数として特徴量AS2_ms,AS1_ms,AS0_mmを含む。決定木DT4は、立体認知能力が高い被測定者をリーフノードLn41,Ln43に分類し、立体認知能力が低い被測定者をリーフノードLn42,Ln44に分類する。
【0084】
図16は、
図2の決定木DTの他の例であり、スライド量S0から導かれる特徴量を説明変数として含む決定木DT5を示す図である。
図16に示されるように、決定木DT5は、ルートノードRn50と、分岐ノードBn51,Bn52,Bn53,Bn54と、リーフノードLn51,Ln52,Ln53,Ln54,Ln55,Ln56とを含む。ルートノードRn50において分類対象となる21人の運転者のうち、14人の運転者に「高」のラベルが付され、7人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0085】
ルートノードRn50は、説明変数として特徴量S0_s(スライド量S0の区間標準偏差)を含む。運転者の特徴量S0_sが0.314以下である場合、当該運転者は分岐ノードBn51に分類される。運転者の特徴量S0_sが0.314より大きい場合、当該運転者はリーフノードLn51に分類される。ルートノードRn50における分類対象である21人の運転者のうち、17人の運転者が分岐ノードBn51に分類され、4人の運転者がリーフノードLn51に分類されている。リーフノードLn51に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。分岐ノードBn51に分類された17人の運転者のうち、14人の運転者に「高」のラベルが付され、3人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0086】
分岐ノードBn51は、説明変数として特徴量S0_sを含む。運転者の特徴量S0_sが0.156以下である場合、当該運転者はリーフノードLn52に分類される。運転者の特徴量S0_sが0.156より大きい場合、当該運転者は分岐ノードBn52に分類される。分岐ノードBn51における分類対象である17人の運転者のうち、10人の運転者がリーフノードLn52に分類され、7人の運転者が分岐ノードBn52に分類されている。リーフノードLn52に分類された全運転者に「高」のラベルが付されている。分岐ノードBn52に分類された7人の運転者のうち、4人の運転者に「高」のラベルが付され、3人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0087】
分岐ノードBn52は、説明変数として特徴量S0_sを含む。運転者の特徴量S0_sが0.173以下である場合、当該運転者はリーフノードLn53に分類される。運転者の特徴量S0_sが0.173より大きい場合、当該運転者は分岐ノードBn53に分類される。分岐ノードBn52における分類対象である7人の運転者のうち、2人の運転者がリーフノードLn53に分類され、5人の運転者が分岐ノードBn53に分類されている。リーフノードLn53に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。分岐ノードBn53に分類された5人の運転者のうち、4人の運転者に「高」のラベルが付され、1人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0088】
分岐ノードBn53は、説明変数として特徴量S0_mを含む。運転者の特徴量S0_mが0.613以下である場合、当該運転者はリーフノードLn54に分類される。運転者の特徴量S0_mが0.613より大きい場合、当該運転者は分岐ノードBn54に分類される。分岐ノードBn53における分類対象である5人の運転者のうち、3人の運転者がリーフノードLn54に分類され、2人の運転者が分岐ノードBn54に分類されている。リーフノードLn54に分類された全運転者に「高」のラベルが付されている。分岐ノードBn54に分類された2人の運転者のうち、1人の運転者に「高」のラベルが付され、1人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0089】
分岐ノードBn54は、説明変数として特徴量S0_mを含む。運転者の特徴量S0_mが0.853以下である場合、当該運転者はリーフノードLn55に分類される。運転者の特徴量S0_mが0.853より大きい場合、当該運転者はリーフノードLn56に分類される。分岐ノードBn54における分類対象である2人の運転者のうち、1人の運転者がリーフノードLn55に分類され、1人の運転者がリーフノードLn56に分類されている。リーフノードLn55に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。リーフノードLn56に分類された全運転者に「高」のラベルが付されている。
【0090】
以上のように、決定木DT5は、説明変数として特徴量S0_s,S0_mを含む。決定木DT5は、立体認知能力が高い被測定者をリーフノードLn52,Ln54,Ln56に分類し、立体認知能力が低い被測定者をリーフノードLn51,Ln53,Ln55に分類する。
【0091】
図17は、
図2の決定木DTの他の例であり、スライド量S0から導かれる特徴量を説明変数として含む決定木DT6を示す図である。
図17に示されるように、決定木DT6は、ルートノードRn60と、分岐ノードBn61,Bn62と、リーフノードLn61,Ln62,Ln63,Ln64とを含む。ルートノードRn60において分類対象となる21人の運転者のうち、14人の運転者に「高」のラベルが付され、7人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0092】
ルートノードRn60は、説明変数として特徴量S0_sを含む。運転者の特徴量S0_sが0.314以下である場合、当該運転者は分岐ノードBn61に分類される。運転者の特徴量S0_sが0.314より大きい場合、当該運転者はリーフノードLn61に分類される。ルートノードRn60における分類対象である21人の運転者のうち、17人の運転者が分岐ノードBn61に分類され、4人の運転者がリーフノードLn61に分類されている。リーフノードLn61に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。分岐ノードBn61に分類された17人の運転者のうち、14人の運転者に「高」のラベルが付され、3人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0093】
分岐ノードBn61は、説明変数として年齢を含む。運転者の年齢が47歳以下である場合、当該運転者はリーフノードLn62に分類される。運転者の年齢が47歳より高い場合、当該運転者は分岐ノードBn62に分類される。分岐ノードBn61における分類対象である17人の運転者のうち、12人の運転者がリーフノードLn62に分類され、5人の運転者が分岐ノードBn62に分類されている。リーフノードLn62に分類された全運転者に「高」のラベルが付されている。分岐ノードBn62に分類された5人の運転者のうち、2人の運転者に「高」のラベルが付され、3人の運転者に「低」のラベルが付されている。
【0094】
分岐ノードBn62は、説明変数として特徴量S0_sを含む。運転者の特徴量S0_sが0.134以下である場合、当該運転者はリーフノードLn63に分類される。運転者の特徴量S0_sが0.134より大きい場合、当該運転者はリーフノードLn64に分類される。分岐ノードBn62における分類対象である5人の運転者のうち、2人の運転者がリーフノードLn63に分類され、3人の運転者がリーフノードLn64に分類されている。リーフノードLn63に分類された全運転者に「高」のラベルが付されている。リーフノードLn64に分類された全運転者に「低」のラベルが付されている。
【0095】
以上のように、決定木DT6は、説明変数として特徴量S0_sおよび年齢を含む。決定木DT6は、立体認知能力が高い被測定者をリーフノードLn62,Ln63に分類し、立体認知能力が低い被測定者をリーフノードLn61,Ln64に分類する。
【0096】
図16の決定木DT5と
図17の決定木DT6とを比較すると、ルートノードに含まれる説明変数に関する条件、および分類対象が互いに同じである。一方、説明変数に関して、決定木DT5の説明変数には被測定者の属性に関する情報が含まれないが、決定木DT6の説明変数には被測定者の属性に関する情報が含まれる。その結果、分岐の回数(ルートノードおよび分岐ノードの数)に関して、決定木DT5は5回であるのに対して、決定木DT6は3回である。このように、説明変数に被測定者の属性に関する情報が含まれることにより、効率的な分岐構造を有する決定木の生成が可能になる。
【0097】
図18は、
図2の立体認知能力評価プログラム103aを実行するプロセッサ101によって行われる立体認知能力評価方法における処理の流れを示すフローチャートである。以下ではステップを単にSと記載する。
【0098】
図18に示されるように、プロセッサ101は、S101において、自動車Cs1の運転者として被測定者Sb1を選択し、処理をS102に進める。プロセッサ101は、S102において、被測定者Sb1に関する演算データ(たとえば以前の走行データから導出された特徴量)をストレージ103から読み込んで、処理をS103に進める。プロセッサ101は、S103において今回の走行データをドライブレコーダ900から取得して、処理をS105に進める。プロセッサ101は、S105においてスライド量に関する特徴量を演算し、処理をS106に進める。プロセッサ101は、S106において、先行車が存在するかどうかを判定する。
【0099】
先行車が存在していない場合(S106においてNO)、プロセッサ101は、S107において運転者が変更されたか否かを判定する。運転者が変更されていない場合(S107においてNO)、プロセッサ101は、処理をS102に戻し、S105で演算された特徴量等を含む演算データをストレージ103に書き込む。運転者が変更された場合(S107においてYES)、プロセッサ101は、S108において、S105で演算された特徴量等を含む演算データをストレージ103に書き込んで処理をS109に進める。プロセッサ101は、S109において、評価モデル103cを用いて、スライド量に関する特徴量に基づいて被測定者Sb1の立体認知能力を評価して、処理をS114に進める。
【0100】
先行車が存在する場合(S106においてYES)、プロセッサ101は、S110において、車間距離に関する特徴量を演算し、処理をS111に進める。プロセッサ101は、S111において運転者が変更されたか否かを判定する。運転者が変更されていない場合(S111においてNO)、プロセッサ101は、処理をS102に戻し、S105,S110の各々で演算された特徴量等を含む演算データをストレージ103に書き込む。運転者が変更された場合(S111においてYES)、プロセッサ101は、S112において、S105,S110の各々で演算された特徴量等を含む演算データをストレージ103に書き込んで処理をS113に進める。プロセッサ101は、S113において、評価モデル103cを用いて、スライド量および車間距離に関する特徴量に基づいて被測定者Sb1の立体認知能力を評価して、処理をS114に進める。プロセッサ101は、S114において立体認知能力の評価結果を被測定者Sb1の端末装置に送信して、処理を終了する。
【0101】
立体認知能力評価システム100によれば、機械学習によって生成された学習済みの評価モデル103cを用いて、定量化された特徴量(
図8参照)に基づいて、被測定者の立体認知能力を客観的に評価することができる。
【0102】
[実施の形態1の変形例]
実施の形態1においては、情報処理装置110が立体認知能力の評価機能、および評価モデルを学習済みとする学習機能の両方を有している構成について説明した。実施の形態1の変形例においては、立体認知能力の評価機能を有する装置と、学習機能を有する装置とが別である構成について説明する。
【0103】
図19は、実施の形態1の変形例に係る立体認知能力評価システム100Aの構成を示すブロック図である。立体認知能力評価システム100Aの構成は、
図1の情報処理装置110が110Aに置き換えられているとともに、学習装置600が追加された構成である。これら以外の立体認知能力評価システム100Aの構成は、
図1の立体認知能力評価システム100の構成と同様であるため、当該構成についての説明を繰り返さない。
図19に示されるように、情報処理装置110Aと、学習装置600と、端末装置800と、自動車Cs1と、ドライブレコーダ900とは、ネットワークNWを介して互いに接続されている。
【0104】
図20は、
図19の立体認知能力評価システム100Aのハードウェア構成を示す図である。情報処理装置110Aのハードウェア構成は、
図2のストレージ103から機械学習プログラム103bおよび学習データ103dが除かれた構成である。これら以外の情報処理装置110Aのハードウェア構成は、
図2の情報処理装置110のハードウェア構成と同様であるため、当該ハードウェア構成についての説明を繰り返さない。
【0105】
図20に示されるように、学習装置600は、プロセッサ601と、RAM602と、ストレージ603と、通信部604と、メモリインターフェース605と、筐体Hs11とを含む。筐体Hs11は、プロセッサ601と、RAM602と、ストレージ603と、通信部604と、メモリインターフェース605とを収容している。プロセッサ601、RAM602、ストレージ603、通信部604、およびメモリインターフェース605は、
図2のプロセッサ101、RAM102、ストレージ103、通信部104、およびメモリインターフェース105とそれぞれ同様の機能を有するため、プロセッサ601、RAM602、ストレージ603、通信部604、およびメモリインターフェース605の当該同様の機能についての説明を繰り返さない。
【0106】
ストレージ603には、機械学習プログラム103bと、評価モデル103cと、学習データ103dとが保存されている。プロセッサ601は、機械学習プログラム103bを実行することによって学習済みの評価モデル103cを生成する。プロセッサ601は、通信部604を介して、学習済みの評価モデル103cを情報処理装置110Aに提供する。
【0107】
以上、実施の形態1および変形例に係る立体認知能力評価システム、立体認知能力評価装置、立体認知能力評価プログラム、および立体認知能力評価方法によれば、立体認知能力の客観的な評価を実現することができる。
【0108】
[実施の形態2]
実施の形態1および変形例においては、現実の世界において被測定者によって操作される移動オブジェクトの位置の変化に基づいて当該被測定者の立体認知能力を評価する構成について説明した。実施の形態2においては、仮想現実(仮想空間)において被測定者によって操作される移動オブジェクトの位置の変化に基づいて当該被測定者の立体認知能力を評価する構成について説明する。なお、実施の形態2においても実施の形態1と同様に移動オブジェクトが自動車である場合について説明するが、移動オブジェクトは自動車に限定されない。被測定者の操作に応じて移動オブジェクトの位置が変化すれば移動オブジェクトはどのようなものであってもよく、たとえばバイク、自転車、飛行機、あるいは船であってもよい。
【0109】
図21は、実施の形態2に係る立体認知能力評価システム200において、被測定者Sb2の立体認知能力がドライブシミュレーションによる測定テストによって測定されている様子を示す図である。
図21に示されるように、立体認知能力評価システム200は、立体認知能力評価装置210と、コントロール装置Cdとを備える。立体認知能力評価装置210と、コントロール装置Cdとは、互いに無線または有線によって接続されている。コントロール装置Cdは、ハンドルHdと、アクセルペダルApと、ブレーキペダルBpとを含む。立体認知能力評価システム200は、実施の形態1に係る立体認知能力評価システムと同様に、車間距離を少なくとも1回時間微分した値から導かれる特徴量、およびスライド量から導かれる特徴量の少なくとも1つを用いて、被測定者Sb2の立体認知能力の評価を行う。
【0110】
図22は、
図21の立体認知能力評価システム200によるドライブシミュレーションにおいて立体認知能力評価装置210を介して被測定者Sb2に表示される画面の一例を示す図である。
図22に示されるように、被測定者Sb2には、仮想空間において被測定者Sb2が運転する自動車Cs2(移動オブジェクト)の運転席からの風景が表示される。当該風景には、自動車Cs2の前方を走行する先行車Ca2(基準オブジェクト)が表示される。
図21のコントロール装置への被測定者Sb2の入力に応じて、自動車Cs2が仮想空間において移動する。なお、自動車Cs2のスライド量に関する特徴量を用いて被測定者Sb2の立体認知能力が評価される場合には、先行車Ca2は表示されていなくてもよい。
【0111】
図23は、
図21の立体認知能力評価装置210の外観斜視図である。
図23において、破線で示された構成は、立体認知能力評価装置210の筐体Hs2の内部に収容され、外部からは視認することができない。当該構成の詳細については、後に
図24を参照しながら説明する。立体認知能力評価装置210は、被測定者に移動オブジェクトを視認させ、それに対する被測定者の反応を評価することによって被測定者の立体認知能力を評価する。
【0112】
立体認知能力評価装置210は、典型的には、三次元の仮想現実を表わす動画像を表示する電子ディスプレイを備えたヘッドマウントディスプレイ(ゴーグル)であり、仮想現実ヘッドセットの形態をとる。立体認知能力評価装置210には、典型的にはゴムバンドのような装着用バンドRbが取り付けられている。ユーザ(被測定者)は、立体認知能力評価装置210を目の周りを覆うように当てて、装着用バンドRbを頭部に巻き付けることにより、立体認知能力評価装置210を目の周囲に装着する。
【0113】
図24は、
図23の立体認知能力評価装置210のハードウェア構成を示す図である。
図24に示されるように、立体認知能力評価装置210は、プロセッサ201と、RAM202と、ストレージ203と、通信部204と、メモリインターフェース205と、電子ディスプレイ211と、視線・瞳孔センサ212とを含む。プロセッサ201、RAM202、ストレージ203、通信部204、およびメモリインターフェース205は、
図2のプロセッサ101、RAM102、ストレージ103、通信部104、およびメモリインターフェース105とそれぞれ同様の機能を有するため、プロセッサ201、RAM202、ストレージ203、通信部204、およびメモリインターフェース205の当該同様の機能についての説明を繰り返さない。
【0114】
ストレージ203には、OS(Operating System)プログラム(不図示)と、立体認知能力評価プログラム203aと、機械学習プログラム203bと、評価モデル203c(特定モデル)と、学習データ203dとが保存されている。
【0115】
電子ディスプレイ211は、たとえば、LCD(Liquid Crystal Display)、または有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどのようなフラットパネルディスプレイを含む。電子ディスプレイ211は、被測定者側に配置された接眼レンズを介して、立体認知能力評価装置210を目の周囲に装着した被測定者に対して、仮想空間において移動する移動オブジェクトの動画像を表示する。動画像のデータが電子ディスプレイ211のデータバッファ領域にプロセッサ201から転送されると、電子ディスプレイ211はデータバッファ領域から画像のデータを読み出して、それが表わす動画像を表示する。電子ディスプレイ211は、右眼用と左眼用が独立しており、それぞれ、接眼レンズを介してユーザが視認する。電子ディスプレイ211に表示されるオブジェクトは、それの位置が無限遠の場合は、右眼用と左眼用の電子ディスプレイ211において同じ位置に表示される。その結果、左右の眼で視差が生じず、左右の眼が開散状態となることにより、被測定者に無限遠に存在している感覚を与えることができる。当該オブジェクトは、それの位置がユーザ側に近付くにつれ、右眼用の電子ディスプレイ211と左眼用の電子ディスプレイ211とで内側寄りに表示される。その結果、左右の眼で視差が生じ、左右の眼が輻輳状態となることにより、被測定者に近くに存在している感覚を与えることができる。
【0116】
視線・瞳孔センサ212は、電子ディスプレイ211の上側などに被測定者側に向けて配置された、左右の眼のそれぞれの視線方向、および瞳孔の大きさを検出する。視線・瞳孔センサ212は、左右の眼のそれぞれの画像をカメラのような画像取得手段で取得し、画像中の瞳の位置および瞳孔の大きさを特定することにより、視線の方向および瞳孔の大きさを求め、それらを視線情報としてプロセッサ201に出力する。カメラとしては、可視光カメラや赤外カメラを使用することができる。被測定者が移動オブジェクトを視認していることの判定のためには、まず、視線の方向が重要なデータである。左右の眼の視線(瞳孔の中心部の法線)のそれぞれが正確に当該移動オブジェクトを通過していることを確認することによって、移動オブジェクトの視認を確認することができる。この際、近くの移動オブジェクトを視認していれば、視差により左右の眼の視線が内側寄りになって輻輳状態となる。また、近づいている移動オブジェクトを被測定者が連続的に視認していることの判定のためには、瞳孔径を追加的に使用することができる。近づいている移動オブジェクトを被測定者が連続的に視認している場合は、瞳孔近距離反射により、瞳孔径が次第に小さくなるため、それを検出することによって視認の成否を確認できる。
【0117】
立体認知能力は、視覚情報の取得のための正常な眼の機能(たとえば瞳孔調節、あるいは眼球運動)を前提としている。そのため、立体認知能力は、たとえば移動オブジェクトなどを被測定者が見たときに、当該移動オブジェクトの視覚情報からその位置関係を脳で正確に把握し、その把握した位置関係に基づいて適切かつ正確に当該移動オブジェクトに対応する動作を行うことができる能力と定義される。
【0118】
正常な眼の機能を確認する方法として、たとえば、瞳孔測定および近点距離測定という手法が知られている。これらの測定は、トライイリスという機器を用いて行うことができる。瞳孔測定は、視標からの可視光刺激に対する瞳孔反応(対光反応)を測定すること、および、移動視標を見ているときの瞳孔変化を測定することを少なくとも含む。具体的には、瞳孔変化は、瞳孔近距離反射により起こり、視標が近方に移動すると瞳孔が縮小する。また、近点距離測定は、具体的には、被測定者が、定屈折速度で接近する視標が観察中にぼやけたところで手元スイッチを押し、そのときの視標位置が近点距離として記録される。これらの測定は、眼球の状態(瞳孔)とぼやけた時点でのスイッチ押下により近点距離の測定であるが、その主目的は、近点距離の測定である。
【0119】
立体認知能力は、特に移動オブジェクトを眼で正確に追尾し、その位置を正しく認識し、それに対して的確に反応する能力も含む。移動オブジェクトを眼で追尾する機能を測定するためには、瞳孔調節と輻輳反応とを測定する方法が特に有用と考えられる。これらの測定方法について以下で説明する。
図25は、眼の機能の測定に使用する視標の概念を表わす図である。視標(先行車Ca2)は、被測定者の眼の前方で視認されるように、遠ざかる方向と近づく方向との間で移動する。指標を反復させて、その都度、被測定者の眼の様子を確認することが望ましい。
【0120】
図26は、瞳孔近距離反射による、視標距離(被測定者の眼と視標の間の距離)と瞳孔径との関係を示す図である。
図26(A)には視標距離が近い時は瞳孔径が小さくなることが示されている。
図26(B)には視標距離が遠い時は瞳孔径が大きくなることが示されている。
図26(C)には、横軸を視標距離とし、縦軸を瞳孔径としたときのグラフを示す。実線は左眼のグラフを示し、一点鎖線は右眼のグラフを示す。これらのグラフには、視標距離が近い場合に瞳孔径が小さくなり、視標距離が遠い場合に瞳孔径が大きくなることが示されている。また、視標距離にかかわらず、右眼と左眼とはほぼ同じ瞳孔径となることも示されている。
【0121】
図27は、視標距離と瞳孔位置(輻輳開散運動)との関係を示す図である。
図27(A)には視標距離が近い場合に左右の眼が内側寄りの輻輳状態になることが示されている。
図27(B)には視標距離が遠い場合に左右の眼が平行状態の開散状態になることが示されている。
図27(C)には、横軸を視標距離とし、縦軸を瞳孔位置としたときのグラフが示されている。実線が左眼のグラフを示し、一点鎖線が右眼のグラフを示す。これらのグラフには、視標距離が近い場合に左右の眼の瞳孔の間の距離が小さくなって輻輳の状態であること、および視標距離が遠い場合に左右の眼の瞳孔の間の距離が大きくなって開散の状態であることが示されている。
【0122】
被測定者が見ている視標の遠近を変化させるように指標を移動させると、それに伴って、上述の瞳孔径の変化および輻輳開散運動のような被測定者の反応が発生する。被測定者の視認の機能が衰えている場合、それらの反応は低下する。したがって、視標の遠近を変化させたときの被測定者の瞳孔径の変化および輻輳開散運動を測定することによって、視認の機能を測定することができる。立体認知能力評価システム200によれば、視標の遠近を変化させるような大掛かりな装置が不要であるため、立体認知能力評価システム200を小型化することができる。
【0123】
図28は、
図24のプロセッサ201の立体認知能力の評価機能の構成を示す機能ブロック図である。立体認知能力評価システム200においては、ストレージ203に保存された立体認知能力評価プログラム203aがプロセッサ201によって実行されることにより、移動オブジェクト表示部201a、位置取得部201b、視認判定部201c、反応入力部201d、および立体認知能力判定部201eという機能ブロックを形成するモジュールが構成される。したがって、
図28においては、
図24のプロセッサ201および立体認知能力評価プログラム203aに替えて、それらによって実現される機能ブロックが示されている。以下、それらの機能ブロックについて説明する。
【0124】
移動オブジェクト表示部201aは、自動車Cs2の運転席から被測定者Sb2が見る前方の風景の画像を自動車Cs2の進行に合わせて三次元レンダリングによって連続的に生成し、動画データとして電子ディスプレイ211のデータバッファ領域に転送する。動画データは、電子ディスプレイ211における右眼および左眼各々のデータである。動画データは、移動オブジェクトの位置に応じて、右眼用の動画データと左眼用の動画データとの間で、自動車Cs2から被測定者Sb2に見える風景における位置に視差を生じさせる。そのため、動画データを電子ディスプレイ211で見た被測定者は、現実的な遠近感でボールを見ることができる。移動オブジェクト表示部201aは、当該動画データに基づく自動車Cs2の走行データを位置取得部201bに送信する。
【0125】
位置取得部201bは、移動オブジェクト表示部201aから被測定者Sb2の走行データを取得する。位置取得部201bは、当該走行データから自動車Cs2の位置に関する情報を取得する。位置取得部201bは、視認判定部201cおよび立体認知能力判定部201eに自動車Cs2の位置に関する情報を出力する。
【0126】
視認判定部201cは、自動車Cs2の位置に対して、視線方向が正しく対応しているかどうかを判定することによって、被測定者Sb2が自動車Cs2を視覚により空間的に認識しているかを判定する。視認判定部201cは、視線・瞳孔センサ212が感知した、被測定者Sb2の左右の眼の視線の方向のデータを受信し、左右の眼のそれぞれの視線の方向が、移動オブジェクト表示部201aから送信された自動車Cs2の位置と対応しているか否かを判定することによって、被測定者Sb2が自動車Cs2を空間的に認識しているか否かを判定する。視認判定部201cは、視線・瞳孔センサ212によって感知された被測定者Sb2の左右の眼の瞳孔径のデータをさらに受信してもよい。視認判定部201cは、先行車Ca2の位置が所定の視点に近づいて遠近距離が小さくなる間に、両眼の瞳孔径が次第に小さくなっているとさらに判定した場合(遠近距離が小さくなることに応じた瞳孔近距離反射が発生している場合)に、被測定者が物体を空間的に認識していると判定するように動作してもよい。視認判定部201cは、判定結果を視認情報として立体認知能力判定部201eに出力する。
【0127】
反応入力部201dは、被測定者Sb2が認識した自動車Cs2の仮想空間における三次元位置に対応して行われる被測定者Sb2の能動的な反応の入力を受ける。反応入力部201dは、コントロール装置Cdへの被測定者Sb2の入力情報に基づいて、自動車Cs2を運転する被測定者Sb2の反応を特定する。反応入力部201dは、当該反応に関する情報を立体認知能力判定部201eに出力する。
【0128】
立体認知能力判定部201eは、自動車Cs2の位置に関する情報に基づいて、自動車Cs2の間隔速度、間隔加速度、スライド量の絶対値、スライド速度の絶対値、スライド加速度の絶対値、スライド量、スライド速度、およびスライド加速度の少なくとも1つから導かれる特徴量を導出する。立体認知能力判定部201eは、評価モデル203cを用いて、当該特徴量および視認判定部201cからの視認情報から、被測定者Sb2の立体認知能力を判定する。被測定者Sb2の立体認知能力の判定に、当該視認情報が使用されなくてもよい。また、被測定者Sb2の立体認知能力の判定に、反応入力部201dからの反応に関する情報が使用されてもよい。立体認知能力判定部201eは、通信部204を介して、立体認知能力の評価結果を被測定者Sb2の端末装置820に送信する。
【0129】
立体認知能力評価システム200においては、プロセッサ201によって機械学習プログラム203bが実行されることにより、立体認知能力評価装置210が学習済みの評価モデル203cを生成する学習装置として機能する。実施の形態1の変形例と同様に、立体認知能力評価装置210とは別個の学習装置によって評価モデル203cに対する機械学習が行われてもよい。
【0130】
図29は、
図24の立体認知能力評価プログラム203aを実行するプロセッサ201によって行われる立体認知能力評価方法における処理の流れを示すフローチャートである。
図29に示される処理は、
図18に示されるフローチャートのS103とS105との間にS204が追加されているとともに、S109,S113がS209,S213にそれぞれ置き換えられたフローチャートである。
【0131】
図29に示されるように、プロセッサ201は、実施の形態1と同様にS101~S103を実行した後、S204において視線・瞳孔センサ212から視線情報を取得し、処理をS105に進める。プロセッサ201は、実施の形態1と同様にS105~S108またはS105,106,S110~S112を実行した後、S209,S213の各々において、評価モデル203cを用いて、スライド量に関する特徴量および視認情報に基づいて被測定者Sb2の立体認知能力を評価して、処理をS114に進める。プロセッサ201は、実施の形態1と同様にS114を実行して処理を終了する。
【0132】
以上、実施の形態2に係る立体認知能力評価システム、立体認知能力評価装置、立体認知能力評価プログラム、および立体認知能力評価方法によれば、立体認知能力の客観的な評価を実現することができる。
【0133】
[実施の形態3]
実施の形態1においては、ドライブレコーダの位置測定部によって測定された移動オブジェクトの位置から特徴量を演算する構成について説明した。実施の形態3においては、ドライブレコーダの加速度センサによって特徴量を直接に測定する構成について説明する。
【0134】
図30は、実施の形態3に係る立体認知能力評価システム300のハードウェア構成を示す図である。
図30の情報処理装置310の構成は、
図2の立体認知能力評価プログラム103a、機械学習プログラム103b、評価モデル103c、および学習データ103dが、立体認知能力評価プログラム303a、機械学習プログラム303b、評価モデル303c、および学習データ303dにそれぞれ置き換えられた構成である。また、
図30のドライブレコーダ930は、
図2の位置測定部907が加速度センサ937に置き換えられた構成である。加速度センサ937は、たとえば、自動車Cs1の進行方向に沿う基準線と直交する方向(横方向)の自動車Cs1の加速度を測定する。加速度センサ937は、当該基準線の方向の自動車Cs1の加速度を測定してもよい。これら以外の立体認知能力評価システム300の構成は、立体認知能力評価システム100の構成と同様であるため、同様の構成についての説明を繰り返さない。
【0135】
図31は、
図30のプロセッサ101の、立体認知能力の評価機能の構成を示す機能ブロック図である。立体認知能力評価システム300においては、ストレージ103に保存された立体認知能力評価プログラム303aがプロセッサ101によって実行されることにより、挙動取得部301b、反応入力部301d、および立体認知能力判定部301eという機能ブロックを形成するモジュールが構成される。したがって、
図31においては、
図30のプロセッサ101および立体認知能力評価プログラム303aに替えて、それらによって実現される機能ブロックが示されている。以下、それらの機能ブロックについて説明する。
【0136】
図31に示されるように、挙動取得部301bは、ドライブレコーダ930から被測定者の走行データ、および自動車Cs1の挙動に関する情報として加速度センサ937の測定結果を取得する。挙動取得部301bは、当該走行データおよび測定結果から自動車Cs1の加速度(たとえばスライド加速度)を取得する。挙動取得部301bは、立体認知能力判定部301eに自動車Cs1の加速度を出力する。なお、挙動取得部301bは、ドライブレコーダ930からの被測定者の走行データおよび自動車Cs1の位置の測位結果から、自動車Cs1の挙動に関する情報として、自動車Cs1の位置に関する情報を取得してもよい。
【0137】
反応入力部301dは、被測定者が認識した自動車Cs1の三次元位置に対応してなされる被測定者の能動的な反応の入力を受ける。反応入力部301dは、自動車Cs1のハンドル、アクセルペダル、およびブレーキペダル等への被測定者の入力情報に基づいて、自動車Cs1を運転する被測定者の反応を特定する。反応入力部301dは、当該反応に関する情報を立体認知能力判定部301eに出力する。
【0138】
立体認知能力判定部301eは、評価モデル303cを用いて、自動車Cs1の加速度から、被測定者の立体認知能力を判定する。被測定者の立体認知能力の判定に、反応入力部301dからの反応に関する情報が使用されてもよい。立体認知能力判定部301eは、実施の形態1の立体認知能力判定部101eと同様に、通信部104を介して、立体認知能力の評価結果を被測定者の端末装置800に送信する。
【0139】
図32は、
図30のプロセッサ101の、機械学習機能の構成を示す機能ブロック図である。立体認知能力評価システム300においては、機械学習プログラム303bがプロセッサ101によって実行されることにより、挙動取得部311b、および学習部301fという機能ブロックを形成するモジュールが構成される。したがって、
図32においては、
図30のプロセッサ101および機械学習プログラム303bに替えて、それらによって実現される機能ブロックが示されている。以下、それらの機能ブロックについて説明する。
【0140】
図32に示されるように、挙動取得部311bは、学習データ303dから走行データを取得する。挙動取得部311bは、
図31の挙動取得部301bと同様に、当該走行データに対応する自動車の加速度を取得する。挙動取得部311bは、学習部301fに当該加速度および当該走行データに付されたラベルを出力する。
【0141】
学習部301fは、挙動取得部311bからの加速度およびラベルを用いて評価モデル303cに対して機械学習を行って、評価モデル303cを学習済みモデルとする。
【0142】
以下の表1は、複数の被測定者に関して、加速度センサ937によって取得されるスライド加速度から導かれる特徴量S0_s,S1_s,S2_sの各々と、実施の形態2に係る立体認知能力評価システムによって取得された仮想空間におけるスライド量から導かれる特徴量S0_s,AS1_sの各々との相関係数の一例を示す。なお、表1に示される各特徴量は、当該特徴量と同じ文字列の
図8に示される特徴量に対応する。
【0143】
【0144】
加速度センサ937によって取得されるスライド加速度から導かれる特徴量に関して、特徴量S2_sは、加速度センサ937によって取得されるスライド加速度の区間標準偏差である。特徴量S1_sは、スライド速度の区間標準偏差であり、特徴量S2_sを1回時間積分することによって導かれる。特徴量S0_sは、スライド量の区間標準偏差であり、特徴量S1_sを1回時間積分する(特徴量S2_sを2回時間積分する)ことによって導かれる。加速度センサ937によって取得されるスライド加速度は、たとえば、S字カーブ、クランク、および直線等を含む自動車教習所のコースを走行する教習車のドライブレコーダから取得することができる。
【0145】
仮想空間におけるスライド量から導かれる特徴量に関して、特徴量S0_sは、スライド量の区間標準偏差である。特徴量AS1_sは、スライド速度の絶対値の区間標準偏差である。
【0146】
表1に示されるように、特徴量S0_s,S1_s,S2_sの各々と、実施の形態2の仮想空間において取得されたスライド量から導かれる特徴量S0_s,AS1_sの各々との間には、正の相関が認められる。したがって、仮想空間におけるスライド量から導かれる特徴量S0_s,AS1_sと同様に、加速度センサ937によって取得されたスライド量に関する特徴量S0_s,S1_s,S2_sによっても、立体認知能力の客観的な評価を実現することができる。
【0147】
基準オブジェクトと移動オブジェクトとの間隔を第1距離と定義し、移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と移動オブジェクトとの間の距離(スライド量)を第2距離と定義すると、本開示は以下のような範囲の実施の態様を含んでいる。
【0148】
本開示の立体認知能力評価システムは、被測定者に操作されて移動する移動オブジェクトの挙動の変化に基づいて被測定者の立体認知能力を評価する。立体認知能力評価システムは、挙動取得部と、立体認知能力判定部とを備える。
【0149】
立体認知能力判定部は、移動オブジェクトの進行方向において移動オブジェクトよりも先行する基準オブジェクトと移動オブジェクトとの間の第1距離に関する第1特徴量、および移動オブジェクトの進行方向に沿う基準線と移動オブジェクトとの間の第2距離に関する第2特徴量の少なくとも1つから被測定者の立体認知能力を判定する。また、上記挙動取得部は、上記移動オブジェクトの加速度に関する情報を取得する。
【0150】
上記第1特徴量及び/又は第2特徴量は、上記移動オブジェクトの加速度に関する情報から導かれる特徴量である。また、上記第1距離に関する第1特徴量は、第1距離方向の加速度の値、第1距離方向の加速度を1回時間積分した値、第1距離方向の加速度を2回時間積分した値のいずれか1から導かれてもよい。また、上記第2距離に関する第2特徴量は、第2距離方向の加速度の値、第2距離方向の加速度を1回時間積分した値、第2距離方向の加速度を2回時間積分した値のいずれか1から導かれてもよい。
【0151】
なお、実施の形態3においては加速度センサを用いる構成について説明したが、加速度センサの代わりにジャイロセンサ(角速度センサ)を用いてもよく、加速度センサおよびジャイロセンサの両方を一緒に用いてもよい。ジャイロセンサを用いる場合、立体認知能力を判定する特徴量は、角速度の値、角速度を1回時間積分した値、および角速度を2回時間積分した値のいずれか1つから導かれてもよい。
【0152】
[実施の形態3の変形例]
図33は、実施の形態3の変形例に係る立体認知能力評価システム300Aのハードウェア構成を示す図である。
図33のドライブレコーダ930は、
図2のドライブレコーダ900に
図30の加速度センサ937が追加された構成である。これら以外の立体認知能力評価システム300Aの構成は、立体認知能力評価システム100の構成と同様であるため、同様の構成についての説明を繰り返さない。
【0153】
以上、実施の形態3および変形例に係る立体認知能力評価システム、立体認知能力評価装置、立体認知能力評価プログラム、および立体認知能力評価方法によれば、立体認知能力の客観的な評価を実現することができる。
【0154】
[実施の形態4]
実施の形態3の変形例においては、自動車に設置されたドライブレコーダの加速度センサまたは位置測定部によって測定されるデータを用いる構成について説明したが、実施の形態4では、スマートフォン等の携帯可能なモバイル端末に含まれる、カメラ、加速度センサ、あるいは位置測定部によって測定されるデータを用いる構成について説明する。なお、各種プログラムを格納する情報処理装置は、モバイル端末に含まれていてもよいし、通信部を介してモバイル端末と通信する、モバイル端末とは別個の装置であってもよい。
【0155】
実施の形態4においては、モバイル端末がカメラ、加速度センサ、あるいは位置測定部を備えているため、移動オブジェクトは自動車に限定されない。移動オブジェクトは、被測定者とともに移動し、被測定者の操作に応じて移動オブジェクトの位置が変化すればどのようなものであってもよく、たとえば、自転車、自動二輪車、飛行機、あるいは船舶であってもよい。
【0156】
以上、実施の形態4に係る立体認知能力評価システム、立体認知能力評価装置、立体認知能力評価プログラム、および立体認知能力評価方法によれば、立体認知能力の客観的な評価を実現することができる。
【0157】
本開示の実現例である実施の形態1~4において説明された立体認知能力の客観的な評価は、様々な場面において活用され得る。たとえば、当該評価は、人間の成長過程における高次脳機能の発達の指標として利用可能である。特に、従来、立体認知能力は、クイズ形式で問題を解くこと、あるいはスポーツ等競技における経験則に基づいて評価されている。しかし、本明細書に記載の立体認知能力評価システム、立体認知能力評価装置、立体認知能力評価プログラム、および立体認知能力評価方法を用いて立体認知能力を定量的に評価することにより、より精度の高い立体認知能力の評価が可能になる。
【0158】
本明細書に記載の立体認知能力評価システム、立体認知能力評価装置、立体認知能力評価プログラム、および立体認知能力評価方法は、自動車運転等の日常生活の活動中の継続的な立体認知能力の評価を可能にする。その結果、一定時間内で行うクイズ形式の評価方法等の従来の評価方法では得られない立体認知能力の客観的な評価が可能になる。
【0159】
本明細書に記載の立体認知能力の客観的な評価の活用の他の例として、脳損傷、精神疾患、あるいは認知症等における、認知障害の評価への活用を挙げることができる。この例において、被測定者の状況に応じた仮想現実(仮想空間)を用いることにより安全に立体認知能力を客観的に評価することができる。また、服薬による立体認知能力の回復、あるいは悪影響等の変化を確認することも可能になる。
【0160】
さらなる他の例として、自動車等の移動オブジェクトの運転に必要な能力を客観的に定義における活用を挙げることができる。具体的には、立体認知能力を当該能力の1つとして規定することができる。特に加齢による高齢者の立体認知能力の低下は、事故につながる可能性があり、運転の適性を判断する上でも立体認知能力の客観的な評価は重要である。また、高齢者の他に、運転未熟者、疲労度の高い運転者、あるいは注意力の低い運転者等の被測定者の立体認知能力を客観的に評価することにより、被測定者の立体認知能力の低下を早期に察知することができる。その結果、被測定者の立体認知能力の低下を警告することにより事故を未然に防ぐことも可能となる。なお、立体認知能力を客観的に評価が可能な被測定者は、自動車の運転者に限定されず、直線および曲線状に走行可能な移動オブジェクトの操作者を含む。直線および曲線状に走行可能な移動オブジェクトには、たとえば、自転車、自動二輪車、飛行機、または船舶等が含まれる。また、立体認知能力を客観的に評価は、立体認知能力の低下を補うような補助機能を備えた移動オブジェクトの設計の指標にもなり得る。
【0161】
今回開示された各実施の形態は、矛盾しない範囲で適宜組み合わされて実施されることも予定されている。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0162】
100,100A,200,300,300A 立体認知能力評価システム、101,201,601,901 プロセッサ、101b,111b,201b 位置取得部、101d,201d,301d 反応入力部、101e,201e,301e 立体認知能力判定部、101f,301f 学習部、102,202,602,903 RAM、103,203,603,905 ストレージ、103a,203a,303a 立体認知能力評価プログラム、103b,203b,303b 機械学習プログラム、103c,203c,303c 評価モデル、103d,203d,303d 学習データ、104,204,604,904 通信部、105,205,605,906 メモリインターフェース、110,110A,310 情報処理装置、201a 移動オブジェクト表示部、201c 視認判定部、210 立体認知能力評価装置、211 電子ディスプレイ、212 瞳孔センサ、301b,311b 挙動取得部、600 学習装置、800,820 端末装置、900 ドライブレコーダ、902 カメラ、905a 走行データ、Ap アクセルペダル、Bp ブレーキペダル、Ca1,Ca2 先行車、Cd コントロール装置、Cs1,Cs2 自動車、DT,DT1~DT6 決定木、Hd ハンドル、Hs1,Hs2,Hs11 筐体、NW ネットワーク、Rb 装着用バンド、Sb1,Sb2 被測定者。