IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人水産総合研究センターの特許一覧 ▶ 株式会社タカハシ・インテックの特許一覧 ▶ 日光水産株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-魚釣装置及び魚釣装置の制御方法 図1
  • 特許-魚釣装置及び魚釣装置の制御方法 図2
  • 特許-魚釣装置及び魚釣装置の制御方法 図3
  • 特許-魚釣装置及び魚釣装置の制御方法 図4
  • 特許-魚釣装置及び魚釣装置の制御方法 図5
  • 特許-魚釣装置及び魚釣装置の制御方法 図6
  • 特許-魚釣装置及び魚釣装置の制御方法 図7
  • 特許-魚釣装置及び魚釣装置の制御方法 図8
  • 特許-魚釣装置及び魚釣装置の制御方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】魚釣装置及び魚釣装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 79/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
A01K79/00 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021008244
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112402
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-10-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・第17回国立研究開発法人水産研究・教育機構成果発表会 開催日 令和2年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】501168814
【氏名又は名称】国立研究開発法人水産研究・教育機構
(73)【特許権者】
【識別番号】517342017
【氏名又は名称】ユニマック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503184430
【氏名又は名称】日光水産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】小池 章太
(72)【発明者】
【氏名】木村 拓人
(72)【発明者】
【氏名】上原 崇敬
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晴朗
(72)【発明者】
【氏名】横田 耕介
(72)【発明者】
【氏名】大島 達樹
(72)【発明者】
【氏名】薮田 洋平
【審査官】小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062754(JP,A)
【文献】特開昭56-055134(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105409898(CN,A)
【文献】国際公開第99/055149(WO,A1)
【文献】米国特許第05540010(US,A)
【文献】特開平02-308743(JP,A)
【文献】実公昭45-031409(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 79/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動で魚釣りを行う魚釣装置であって、
船の舷側に配置され、針が釣糸を介して取り付けられた竿を、前記竿の末端を支点として少なくとも水面に対する略垂直面内で回転駆動可能な駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記針を水中に投入する投入動作と、
前記略垂直面内で前記竿を回転させ、水中に投入した前記針を徐々に前記舷側に近づける縦誘い動作と、
魚が針掛かりしたときに前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記魚を前記舷側に近づける縦寄せ動作と、
前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記魚を前記船の上に釣り上げる釣り上げ動作と、
が行われるように前記駆動部を制御し、
前記制御部は、前記縦誘い動作を終了した後に、前記水面に対する略水平面内で前記竿の先端を往復させる横誘い動作が行われるように前記駆動部を制御し、
前記横誘い動作は、前記竿の先端が前記略水平面内における一方の端または他方の端に移動してから、水中の前記針が前記竿の先端に伴って一方の端または他方の端に移動するまでの待ち時間として予め定められた時間だけ、前記竿を静止させる動作を含むことを特徴とする、
魚釣装置。
【請求項2】
請求項1に記載の魚釣装置であって、
前記制御部は、前記横誘い動作に伴って、前記略垂直面内で前記竿の先端を繰り返し往復させる垂直誘い動作が行われるように前記駆動部を制御することを特徴とする、
魚釣装置。
【請求項3】
自動で魚釣りを行う魚釣装置であって、
船の舷側に配置され、針が釣糸を介して取り付けられた竿を、前記竿の末端を支点として少なくとも水面に対する略垂直面内で回転駆動可能な駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記針を水中に投入する投入動作と、
前記略垂直面内で前記竿を回転させ、水中に投入した前記針を徐々に前記舷側に近づける縦誘い動作と、
魚が針掛かりしたときに前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記魚を前記舷側に近づける縦寄せ動作と、
前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記魚を前記船の上に釣り上げる釣り上げ動作と、
が行われるように前記駆動部を制御し、
前記制御部は、前記縦誘い動作を終了した後に、前記水面に対する略水平面内で前記竿の先端を往復させる横誘い動作が行われるように前記駆動部を制御し、
前記駆動部は、第1回転軸を中心に前記略垂直面内で前記竿を回転駆動する第1モータと、第2回転軸を中心に前記水面に対する略水平面内で前記竿を回転駆動する第2モータと、を備え、
前記制御部は、前記横誘い動作を、前記第2モータの制御により前記竿を前記略水平面内で回転させることによって行うことを特徴とする、
魚釣装置。
【請求項4】
請求項に記載の魚釣装置であって、
前記制御部は、前記横誘い動作中に前記魚が針掛かりしたときは前記横誘い動作を終了し、前記縦寄せ動作と、前記略水平面内で前記竿の先端を中央に移動する横寄せ動作と、前記釣り上げ動作と、の順に行われるように前記駆動部の前記第1モータおよび前記第2モータを制御することを特徴とする、
魚釣装置。
【請求項5】
請求項に記載の魚釣装置であって、
前記横寄せ動作は、前記竿の先端が前記略水平面内における中央に移動してから、針掛かりした前記魚が前記竿の先端に伴って中央に移動するまでの待ち時間として予め定められた時間だけ、前記竿を静止させる動作を含むことを特徴とする、
魚釣装置。
【請求項6】
針が釣糸を介して取り付けられた竿を、前記竿の末端を支点として少なくとも水面に対する略垂直面内で回転駆動可能な駆動部を備えた魚釣装置の制御方法であって、
前記駆動部を、
前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記針を水中に投入する投入動作と、
前記略垂直面内で前記竿を回転させ、水中に投入した前記針を徐々に前記駆動部に近づける縦誘い動作と、
魚が針掛かりしたときに前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記魚を前記駆動部に近づける縦寄せ動作と、
前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記魚を釣り上げる釣り上げ動作と、
が行われるように制御し、
前記駆動部を、前記縦誘い動作を終了した後に、前記水面に対する略水平面内で前記竿の先端を往復させる横誘い動作が行われるように制御し、
前記横誘い動作は、前記竿の先端が前記略水平面内における一方の端または他方の端に移動してから、水中の前記針が前記竿の先端に伴って一方の端または他方の端に移動するまでの待ち時間として予め定められた時間だけ、前記竿を静止させる動作を含むことを特徴とする、
魚釣装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣装置及び魚釣装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠洋漁業において、釣糸に擬餌針を取付けた竿でカツオなどを一本ずつ釣り上げる漁法がとられることがある。この漁法は高度な釣獲技術を持つ乗組員を多く必要とすることから、乗組員とその人件費の確保が経営の負担となっている。これに対し、釣獲作業の自動化を目的とした魚釣装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-62754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の魚釣装置は、一軸式の回転機構により、水面に対して略垂直方向に竿を回転させる。しかしながら、略垂直方向のみの動作の場合、乗組員が釣獲作業を行う場合よりも魚が針掛かりする確率が低い。すなわち、擬餌針を動かすために、擬餌針を再投入する回数が多くなり、釣獲機会の損失が課題となっていた。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、釣り針を再投入する回数を少なくすることができる魚釣装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る魚釣装置は、自動で魚釣りを行う魚釣装置であって、船の舷側に配置され、針が釣糸を介して取り付けられた竿を、前記竿の末端を支点として少なくとも水面に対する略垂直面内で回転駆動可能な駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記針を水中に投入する投入動作と、前記略垂直面内で前記竿を回転させ、水中に投入した前記針を徐々に前記舷側に近づける縦誘い動作と、魚が針掛かりしたときに前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記魚を前記舷側に近づける縦寄せ動作と、前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記魚を前記船の上に釣り上げる釣り上げ動作と、が行われるように前記駆動部を制御する。また、前記制御部は、前記縦誘い動作を終了した後に、前記水面に対する略水平面内で前記竿の先端を往復させる横誘い動作が行われるように前記駆動部を制御することを特徴とする。
なお、上記において針とはいわゆる釣り針を指し、例えば、かつお一本釣りでは擬餌針が使用される。
【0007】
この発明によれば、縦誘い動作を終了した後に、横誘い動作が行われる。つまり、水中に投入した針を舷側に近づける縦寄せ動作によって、船から離れた場所にいる魚を舷側に近づける。その後に魚を針掛かりさせる横誘い動作を行う。よって、より効果的に魚の針掛かりを誘い、釣獲機会を向上させることができる。したがって、釣り針を再投入する回数を少なくすることができる。
また、縦誘い動作のみを行う場合と比較して、針が水中に位置する時間を長くすることができる。つまり、縦誘い動作のみを行う場合と比較して、投入動作を行う回数を少なくすることができる。よって、魚を針によって船側に誘う時間を長くすることで、釣獲機会を向上させることができる。
【0008】
また、前記横誘い動作は、前記竿の先端が前記略水平面内における一方の端または他方の端に移動してから、水中の前記針が前記竿の先端に伴って一方の端または他方の端に移動するまでの待ち時間として予め定められた時間だけ、前記竿を静止させる動作を含んでいてもよい。
【0009】
この発明によれば、横誘い動作は、竿の先端が略水平面内における一方の端または他方の端に移動してから、水中の針が竿の先端に伴って一方の端または他方の端に移動するまでの待ち時間として予め定められた時間だけ、竿を静止させる動作を含む。これにより、竿を静止させない場合と比較して、針の移動距離を伸ばし、魚が針を追いかけやすくすることで、魚の針掛かりを促すことができる。よって、誘い能力の向上により釣獲機会を増やすことができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記横誘い動作に伴って、前記略垂直面内で前記竿の先端を繰り返し往復させる垂直誘い動作が行われるように前記駆動部を制御してもよい。
【0011】
この発明によれば、横誘い動作に伴って、略垂直面内で竿の先端を繰り返し往復させる垂直誘い動作が行われるように駆動部を制御する。これにより、水中の針が上下に移動する。このことで、魚に対して、餌をより自然に見せたり、疑似餌をより本物であるかのように見せたりすることができる。よって、魚が針に掛かる確率を増やし、より釣獲機会を向上することができる。
【0012】
また、前記駆動部は、第1回転軸を中心に前記略垂直面内で前記竿を回転駆動する第1モータと、第2回転軸を中心に水面に対する略水平面内で前記竿を回転駆動する第2モータと、を備え、前記制御部は、前記横誘い動作を、前記第2モータの制御により前記竿を前記略水平面内で回転させることによって行ってもよい。
【0013】
この発明によれば、魚釣装置は、横誘い動作を、舷側に配置された駆動部が備える第2モータによって竿を略水平面内で回転させることによって行う。これにより、横誘い動作のために駆動部を平行移動させる、すなわち竿全体を平行移動させる構成と比較して、魚釣装置の可動領域を小さくすることができる。よって、船において魚釣装置を設置する間隔を小さくし、より多くの魚釣装置を配置することができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記横誘い動作中に前記魚が針掛かりしたときは前記横誘い動作を終了し、前記縦寄せ動作と、前記略水平面内で前記竿の先端を中央に移動する横寄せ動作と、前記釣り上げ動作と、の順に行われるように前記駆動部の第1モータおよび第2モータを制御してもよい。
【0015】
この発明によれば、制御部は、横誘い動作中に魚が針掛かりしたときは横誘い動作を終了し、縦寄せ動作と、略水平面内で竿の先端を中央に移動する横寄せ動作と、釣り上げ動作と、の順に行われるように駆動部の第1モータおよび第2モータを制御する。つまり、魚が針掛かりしたとき、横寄せ動作よりも先に縦寄せ動作を行う。これにより、横寄せ動作を先に行う場合と比較して、魚の針掛かりをより確実に行うことができる。よって、より効率よく魚を釣り上げることができる。
【0016】
また、前記横寄せ動作は、前記竿の先端が前記略水平面内における中央に移動してから、針掛かりした前記魚が前記竿の先端に伴って中央に移動するまでの待ち時間として予め定められた時間だけ、前記竿を静止させる動作を含んでいてもよい。
【0017】
ここで、魚が略水平面内における中央に移動する前に釣り上げ動作を行うと、釣り上げられた魚は空中において斜め方向に移動する。舷側において魚釣装置が複数配置されたとき、あるいは魚釣装置の付近に作業員がいるとき、釣り上げられた魚が斜め方向に移動すると、釣り上げられた魚が付近の魚釣装置あるいは作業員に衝突するおそれがある。
これに対し、この発明によれば、横寄せ動作は、竿の先端が略水平面内における中央に移動してから、針掛かりした魚が竿の先端に伴って中央に移動するまでの待ち時間として予め定められた時間だけ、竿を静止させる動作を含む。これにより、水中から釣り上げられた魚は中央に移動した竿と略平行に空中を移動する。よって、上述の問題が生じることを防ぐことができる。
【0018】
また、本発明に係る魚釣装置の制御方法は、針が釣糸を介して取り付けられた竿を、前記竿の末端を支点として少なくとも水面に対する略垂直面内で回転駆動可能な駆動部を備えた魚釣装置の制御方法であって、前記駆動部を、前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記針を水中に投入する投入動作と、前記略垂直面内で前記竿を回転させ、水中に投入した前記針を徐々に前記駆動部に近づける縦誘い動作と、魚が針掛かりしたときに前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記魚を前記駆動部に近づける縦寄せ動作と、前記略垂直面内で前記竿を回転させ、前記魚を釣り上げる釣り上げ動作と、が行われるように制御し、前記駆動部を、前記縦誘い動作を終了した後に、前記水面に対する略水平面内で前記竿の先端を往復させる横誘い動作が行われるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、釣り針を再投入する回数を少なくすることができる魚釣装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣装置が配置された船を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る魚釣装置において、擬餌針を投入してから、擬餌針が竿の先端の真下まで移動する様子を示す模式図である。
図3図2において、竿を上下させて擬餌針を水中で上下させる動作(垂直誘い動作)を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る魚釣装置の駆動部の詳細図であって、(a)が正面図、(b)が平面図、(c)が側面図、(d)が平面図において第2回転軸によって基部の向きが変動した状態を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る魚釣装置の側面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る魚釣装置の平面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る魚釣装置において、竿の先端を水平方向に移動する様子を示す模式図である。
図8図7において、魚釣装置の隣に位置する乗組員の正面に、竿の先端が移動した状態を示す模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係る魚釣装置の制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る魚釣装置100を説明する。
図1に示すように、魚釣装置100は、船1の舷側1Sに設けられる。船1は、例えば、遠洋漁業に用いられる漁船である。船1は、例えば、全長56mである。魚釣装置100は、前述の船1の舷側1Sにおいて、1台から複数台設けられる。魚釣装置100を複数台配置する場合、魚釣装置100の本体部20(後述する)同士の間隔は、1.5m程度とすることが好ましい。また、図1に示すように、魚釣装置100が設けられている側の舷側1Sには、散水装置200が設けられている。
【0022】
魚釣装置100は、竿10と、本体部20と、制御部30と、機器間ケーブル40と、電力ケーブル50と、を備える。
竿10は、魚釣装置100において魚を釣り上げる役割を有する。図2及び図3に示すように、竿10の先端には、釣糸12を介して擬餌針13(針)が取付けられている。また、末端は、本体部20に備えられた駆動部22の基部21(後述する)に取付けられている。竿10は中空であってもよく、中実であってもよい。本実施形態において、竿10は中空である。また、釣糸12は不図示のロードセルに直結され、釣糸12の張力によって魚が掛かったことを検知する(詳細は後述する)。本実施形態において、竿10は長さ3mのものが好適に用いられる。
【0023】
釣糸12は、竿10と擬餌針13とを繋ぐ。上述のように、釣糸12は、竿10の内部に設けられたロードセルに直結している。これにより、釣糸12の張力を測定する。釣獲作業時に、魚が擬餌針13に掛かると、釣糸12の張力が増加する。この張力増加をロードセルによって検知し、釣り上げ動作を行う(詳細は後述する)。本実施形態において、釣糸12の長さは4~5mであることが好ましい。
【0024】
擬餌針13は、釣獲対象となる魚の好む餌(例えば小魚)を模して形成され、内部に釣り針が設けられた部材である。魚がこの擬餌針13を捕食すると、捕食した魚が釣り針に掛かる。これにより水中を泳ぐ魚を捕獲する。以下において、魚が擬餌針13を捕食して釣り針に掛かることを、針掛かりと呼ぶことがある。
【0025】
本体部20は、竿10を操作する部位である。図2に示すように、本体部20は、基部21と、駆動部22と、を備える。
図3に示すように、基部21は、竿10の後端を支持する。竿10と基部21との接続は任意の方法が用いられるが、例えば、基部21の内部に竿10の後端を挿入し、基部21に設けられたクランプによって固定する方法が好適に用いられる。
【0026】
駆動部22は、基部21を動作する部位である。駆動部22が基部21を動作することによって、基部21に接続された竿10の向きあるいは位置を操作する。本実施形態において、駆動部22による竿10の操作は、制御部30に組み込まれたプログラムによって行われる(詳細は後述する)。
駆動部22は、図4に示すように、第1モータ22Aと、第1回転軸22aと、第1減速機22Cと、第2モータ22Bと、第2回転軸22bと、第2減速機22Dと、ワイヤチェーン22cと、ダイスライドブッシュ22dと、を備える。
【0027】
第1モータ22Aは、第1回転軸22aの駆動源となるモータである。第1モータ22Aと第1回転軸22aとは、第1モータ22Aに設けられた第1減速機22C(後述する)を介して接続されている。第1モータ22Aのモータ種類に関しては、回転数とトルク電流を計測・制御する構成とすれば、サーボモータだけでなく、ステッピングモータ、インダクションモータ、直流モータ等、種類を問わない。本実施形態において、第1モータ22Aは、サーボモータであるとする。第1モータ22Aの諸元について、表1に示す。
【0028】
第1回転軸22aは、棒状の基部21に直接接続され、第1モータ22Aによって回転することで、基部21を回転駆動させる。つまり、基部21の回転運動の支点となる部位である。また、第1回転軸22aは、竿10の長手方向に直交する。これにより、図5に示すように、第1回転軸22aは、第1モータ22Aによって、基部21を水面に対する略垂直面内において回転駆動可能とする。ここで、略垂直面とは、船1が位置する水面を基準として、これに直交する平面を指す。また、時化等によって水面が荒れることで、水面が荒れていない状態に対して船1の姿勢(水面に対する角度)が変動することがある。これにより第1回転軸22aによって基部21すなわち竿10が回転する平面の水面に対する角度が変動することがある。
第1減速機22Cは、第1モータ22Aと第1回転軸22aとの間に設けられ、第1モータ22Aの回転を減速して第1回転軸22aに伝達する。本実施形態において、第1減速機22Cの減速比は1/160である。
【0029】
第2モータ22Bは、第2回転軸22bの駆動源となるモータである。第2モータ22Bと第2回転軸22bとは、第2減速機22Dとワイヤチェーン22cを介して接続される。第2モータ22Bのモータ種類に関しては、回転数とトルク電流を計測・制御する構成とすれば、サーボモータだけでなく、ステッピングモータ、インダクションモータ、直流モータ等、種類を問わない。本実施形態において、第2モータ22Bは、サーボモータであるとする。第2モータ22Bの諸元について、表1に示す。
【0030】
第2回転軸22bは、上端が第1モータ22Aの下部に接続され、第2回転軸22bの下端はダイスライドブッシュ22dによって支持されている。また、第2回転軸22bは第1回転軸22aに直交する。これにより、図6に示すように、第2回転軸22bは、第2モータ22Bによって、第1モータ22A及び第1回転軸22aに接続された基部21を水面に対する略水平面内において回転させる。ここで、略水平面とは、船1が位置する水面を基準として、これに平行な平面を指す。ここで、第1回転軸22a及び第1モータ22Aによって、基部21が水面に対して平行でない状態となることがある。略水平面は、このように基部21が水面に対して平行でない状態のまま第2回転軸22b及び第2モータ22Bによって回転した場合における基部21の回転領域も含むものとする。また、時化によって水面が荒れた場合については、上述の略垂直面と同様とする。
第2減速機22Dは、第2モータ22Bと第2回転軸22bとの間に設けられ、第2モータ22Bの回転を減速して第2回転軸22bに伝達する。本実施形態において、第2減速機22Dの減速比は1/240である。
【0031】
ワイヤチェーン22cは、第2モータ22Bに接続された第2減速機22Dと第2回転軸22bとを接続する。これにより、第2モータ22Bの回転力を第2回転軸22bに伝達する。ワイヤチェーン22cには任意の材料を使用可能である。
ダイスライドブッシュ22dは、第2回転軸22bを摺動可能に支持する筒状の部材である。これにより第2回転軸22bはワイヤチェーン22cによって伝達された回転力を、第1モータ22Aに伝達する。ダイスライドブッシュ22dには市販品が好適に用いられる。
【0032】
上述の構成によって、駆動部22は、基部21に接続された竿10を水面に対する略垂直面内及び略水平面内において回転させる。このように2平面において竿10を回転させることで、1平面における2次元の動きから、空間における3次元の動きとすることができる。よって、より釣り人の動きを再現することができる。また、略垂直面内の回転を第1モータ22Aによって、略水平面内の回転を第2モータ22Bによって行うことで、それぞれの回転を独立して動作させることができる。
【0033】
ここで、第1モータ22A及び第1回転軸22aによる略垂直面内での回転は、特に投入動作及び釣上げ動作に用いられることから、比較的竿を高速回転させる必要がある(詳細は後述する)。これに対し、第2モータ22B及び第2回転軸22bによる略水平面内での回転は、特に横誘い動作に用いられることから、略垂直面内の回転に求められる程度の回転速度は必要としない(詳細は後述する)。
本実施形態において、第1モータ22Aは略垂直面内において基部21及び竿10のみを回転させる構造とし、基部21及び竿10の略水平面内での回転は第2モータ22Bによって第1モータ22Aごと回転させることで行われる。このような構造とすることで、第1モータ22Aに負荷される慣性を小さくし、上述の性能を確保することができる。これにより、本体部20は、釣獲作業における竿10の操作を担う。
また、図4に示すように、第1モータ22Aの下方において第2回転軸22bは第1回転軸22a及び水面(甲板)に直交するよう配置され、第2モータ22Bは水面(甲板)に水平に配置されている。これにより、略水平面内での竿10の動作のために2台目のモータを垂直に配置する場合に比して本体部20の高さを抑制することができる。
さらに、本体部20は、船1の舷側1Sに、不図示の架台を介して取付けられている。また、架台は任意の素材で形成することが可能である。本実施形態において、課題はステンレス製の物が用いられる。
【0034】
制御部30は、本体部20を制御する部位である。図1に示すように、制御部30は、制御器31と、制御盤32(表示/操作器)と、を備え、いずれも船1における船橋1Bに設けられている。
制御器31は、機器間ケーブル40によって本体部20と直接接続されている。制御器31は、不図示の記録装置や処理装置を有し、釣糸12に接続されたロードセルや第1モータ22A及び第2モータ22Bの情報に基づき、駆動部22の基部21に取付けられた竿10を操作する部位である。
【0035】
制御盤32は、制御器31に接続されている。制御盤32は、不図示の表示器および操作器を有し、船1の作業員に対し本体部20の状態等を表示する役割を有する。あるいは、魚釣装置100による釣獲作業において特殊な事態が発生したり、制御プログラムに異常が発生したりした場合等に、制御盤32の有する操作器によって、作業員が直接本体部を操作してもよい。
【0036】
機器間ケーブル40は、制御器31と本体部20とを接続するケーブルである。機器間ケーブル40は、本体部20に対し電力を供給する動力線の役割と、本体部20と制御器31との間において機器の状態や制御の指示を通信する制御線の役割と、を有する。
電力ケーブル50は、制御器31と、船1に備えられた電源とを接続する。これにより、魚釣装置100に電力を供給する。なお、本実施形態において、船1の電源はAC200V電源が好適に用いられる。魚釣装置のその他諸元について、以下の表1に示す。
【表1】
【0037】
散水装置200は、魚釣装置100が設けられている側の舷側1Sに設けられている。散水装置200は、船1付近の水面に散水する。これにより、散水された領域である散水領域200aを形成することができる。散水領域200aでは、水面が泡立ち小魚が狂奔しているような擬音が発生する。この擬音は、小魚を餌とする魚に餌の存在を誤認させることで、その魚を散水領域200aの近傍に集めたり、魚の針掛かりをしやすくしたりすることができる。
【0038】
次に、釣獲作業時における魚釣装置100の各動作について説明する。
<投入動作>
投入動作は、擬餌針13が水中に投入されるよう、略垂直面内で竿10を回転させる動作である。投入動作は、図1における船側から水面側に向けて竿10を振り下ろすように、第1回転軸22aによって竿10を回転させる。このとき、竿の回転速度は、100°/秒とすることが好ましい。擬餌針13は、竿10の先端の動きに伴って移動し、水面に着水する。すると、図2に示すように、擬餌針13は、釣糸12及び竿10が直線上に位置するように、すなわち舷側1Sから最も遠い位置に着水する。このとき、擬餌針13は、散水領域200aよりも舷側1Sから離れた場所に着水する。
【0039】
<縦誘い動作>
縦誘い動作は、投入動作によって水面に着水した擬餌針13が徐々に舷側1Sに近づくように、略垂直面内で竿10を回転させる動作である。上述の投入動作の後、擬餌針13は水中に沈む。このとき、擬餌針13の動きに合わせて、第1モータ22Aによる第1回転軸22aの回転によって竿10を少しずつ船1の側に回転させる。すなわち、竿10の先端が水面から離れるように回転させる。このことで、擬餌針13を船1の側に移動させる。擬餌針13が船1の側に移動すると、擬餌針13が散水領域200aに移動する。これにより、魚を船1に近い散水領域200aに誘う。このとき、竿10の回転は、一定の速度であってもよいし、間隔をあけて回転と停止を繰り返してもよいし、船1の側への回転と、反対方向である水面側への回転とを交互に繰り返してもよい。なお、縦誘い動作において竿10を回転させる場合は、10°/秒程度の回転速度が好適に用いられる。
【0040】
<横誘い動作>
横誘い動作は、縦誘い動作を終了した後に、水面に対する略水平面内で竿10の先端を繰り返し往復させる動作である。本実施形態において、横誘い動作は、図6に示すように、第2モータ22Bによる第2回転軸22bの回転によって竿10の先端を略水平面内において回転させることで行う。
【0041】
ここで、図7及び図8に示すように、魚釣装置100の本体部20は、船1の舷側1Sに配置される。この場合において、本体部20が舷側1Sに間隔をあけて複数並べられたり、本体部20の隣で乗組員3がいたりすることで、同時に釣獲作業が行われることがある。このとき、本体部同士あるいは本体部20と乗組員3との間隔は、1.5m程度とされる。また、上述のように、竿10は3mのものが好適に用いられる。
【0042】
このため、横誘い動作の稼働幅については、隣で釣獲作業を行う乗組員3の持つ竿10との交差を防ぐために、舷側1Sから水面側に垂直の状態を0°とした場合、±30°まで釣り竿10を回転することができる。これにより、乗組員3が自身の正面(舷側1Sから水面側に垂直方向)で釣獲作業を行った場合、竿10同士の交差は発生しない。
横誘い動作において竿10を回転させる場合は、5°/秒程度の回転速度が好適に用いられる。
【0043】
ここで、横誘い動作では、竿10の先端が略水平面内における一方の端または他方の端(左右いずれかの端部)に移動してから、水中の擬餌針13が竿10の先端に伴って略水平面内における一方の端または他方の端に移動するまで、竿10を静止させる。これにより、魚がより擬餌針13を追いかけやすくすることで、釣獲機会が向上する役割を有する。以下において、竿10を静止させる時間を待ち時間と呼ぶことがある。
魚が針掛かりしていない状態において、この待ち時間は、1秒程度の範囲が好適に用いられる。
【0044】
<垂直誘い動作>
垂直誘い動作は、横誘い動作に伴って、略垂直面内で竿10の先端を繰り返し小刻みに往復させる動作である。上述のように、横誘い動作は、第2モータ22Bによる第2回転軸22bの回転によって竿10の先端を水面に対する略水平面内において回転させることで行われる。この動きと同時に、第1モータ22Aによって竿10を略垂直面内で回転させることで、垂直誘い動作を行う。このとき、竿10の回転は、船1の側への回転と、水面側への回転とを交互に繰り返すようにして行う。これにより、水中において擬餌針13を上下に移動させることで、魚に対して疑似餌をより本物であるかのように見せる。なお、縦誘い動作において竿10を回転させる場合は、10°/秒程度の回転速度が好適に用いられる。また、回転方向の転換は、1秒ごとに行うことが好ましい。
【0045】
<縦寄せ動作>
縦寄せ動作は、縦誘い動作中又は横誘い動作中において魚が針掛かりしたときに、魚が舷側1Sに近づくように略垂直面内で竿10を船1の側へ回転させる動作である。なお、このときの回転速度は、30°/秒程度とすることが好ましい。
ここで、寄せとは、針掛かりの後、すぐに釣り上げ動作(後述する)に入らずに、竿10の先端を水面側に向けて竿10を水面に対して平行とした位置を0°(略垂直面内での基準位置)として、竿10を船1の側に45°回転させた位置まで戻すとともに保持し、魚を竿下に誘導させる動作である。これにより、魚の針掛かりを確実にしたり、釣り上げの動作を安全に行うことにできるようにしたりする役割を有する。
【0046】
<横寄せ動作>
横寄せ動作は、横誘い動作中に魚が針掛かりしたときに、略水平面内で竿10の先端を中央に、すなわち舷側1Sに取り付けられた駆動部22から水面側をみて正面に移動する動作である。また、正面とは、投入動作を行う際の竿10の向きである。なお、このときの回転速度は、30°/秒程度とすることが好ましい。
ここで、魚が略水平面内における中央に移動する前に釣り上げ動作を行うと、釣り上げられた魚は空中において斜め方向に移動する。舷側1Sにおいて魚釣装置100が複数配置されたとき、あるいは魚釣装置100の付近に作業員がいるとき、釣り上げられた魚が斜め方向に移動すると、釣り上げられた魚が付近の魚釣装置100あるいは作業員に衝突するおそれがある。これを防ぐために、横寄せ動作によって針掛かりした魚を竿10の正面に移動させてから釣り上げ動作を行う。
【0047】
ここで、横寄せ動作は、竿10の先端が略水平面内における中央に移動してから、針掛かりした魚が竿10の先端に伴って略水平面内における中央に移動するまで、竿10を静止させる。以下において、竿10を静止させる時間を待ち時間と呼ぶことがある。
魚が針掛かりしていない状態において、この待ち時間は、少なくとも1秒以上とすることが好ましい。
また、竿10の先端が略水平面内で中央にある位置を0°(略水平面内での基準位置)とする。
【0048】
<釣り上げ動作>
釣り上げ動作は、針掛かりした魚が船1の上に釣り上げられるように、略垂直面内で竿10を回転させる動作である。上述のように、この動作は、竿10の先端が略水平面内における中央にある状態で行う。また、水中の魚を船1の上に移動させるため、略垂直面内での基準位置に対し、竿10を船1の側に90°以上回転させる。なお、このときの竿10の回転速度は、魚の重量で異なる。例えば、5kg前後のカツオでは、竿の回転速度は、60°/秒とすることが好ましい。
【0049】
<針外し動作>
針外し動作は、上述の釣り上げ動作によって魚が船1の上に着地した後、魚を擬餌針13から外す動作である。ここで、本実施形態において用いられる擬餌針13には一般的な釣り針に設けられる「かえし」を有さない。このため、擬餌針13に対し、釣糸12によって張力が負荷されていない場合は、自然と魚から擬餌針13が外れる。よって、針外し動作は、船1の上において竿10を略垂直面内において小刻みに往復させ、魚を擬餌針13から振り落とす動作である。なお、釣り上げ動作の直後に魚が擬餌針13から外れた場合は、本動作は不要である。
【0050】
次に、本実施形態に係る魚釣装置100によって、自動で魚釣りを行う制御方法について、図9に示すフローチャートを用いて説明する。なお、本実施形態に係る制御は、制御器31の備えるPLCによるシーケンス制御である。図9に示すフローの処理は、例えば、上述の制御盤32よりフロー開始の指示をすることにより開始される。フロー開始時の竿10は基準位置に対し100~110°とする。
【0051】
まず、投入動作を実行して竿10を-45°まで回転させ、擬餌針13を水中に投入する(ステップS1)。その後、縦誘い動作を開始する(ステップS2)。このとき、釣糸12に接続されたロードセルによって、釣糸12の張力測定を開始する。この張力測定は、本制御のフローが終了するまで継続して行われる。上述のように、魚の針掛かりは、釣糸12の張力が一定の規定値を超えることにより検知する。縦誘い動作中に張力が規定値を超えない場合(ステップS3:NO)は、縦誘い動作を継続する。縦誘い動作を終了(ステップS4:YES)するかの判断は、例えば、一定の時間以上または竿10が基準位置の0°に至るまで釣糸12の張力が規定値を超えない(ステップS3:NO)こと等が挙げられる。前記一定の時間は、例えば、制御部30に記憶されている。
【0052】
ステップS4がYESとなったことにより縦誘い動作を終了すると、横誘い動作及び垂直誘い動作を開始する(ステップS5)。このとき、上述のように、駆動部22は、横誘い動作を行いながら垂直誘い動作を実施する。具体的には、第1モータ22Aによる略垂直面内の回転(垂直誘い動作)を、第2モータ22Bによる略水平面内の回転(横誘い動作)と同時に行う。横誘い動作及び垂直誘い動作中に釣糸12の張力が一定の規定値を超えない場合(ステップS6:NO)は、横誘い動作及び垂直誘い動作を継続する。垂直誘い動作では、竿10を-5~0°などの範囲で動作させる。
横誘い動作中に竿10の位置が左右いずれかの端部に達する(ステップS7:YES)と、横誘い動作及び垂直誘い動作を停止して、上述の待ち時間を実行する(ステップS8)。このとき、例えば、制御部は、1回の横誘い動作が完了したと判定し、横誘い動作の総回数が1回増えたとして、総回数を記憶しておく。なお、横誘い動作中に竿10の位置が左右の端部に達したか否かは、駆動部22による回転の限界が達したことを、制御部30が取得することにより、判定される。
その後、横誘い動作の移動方向を変更し、再度横誘い動作及び垂直誘い動作を開始する。横誘い動作中に竿10の位置が左右いずれかの端部に達していない場合(ステップS7:NO)は、ステップS8を飛ばし、ステップS9に移行する。
横誘い動作を終了(ステップS9:YES)するかの判断は、例えば、一定の時間以上、あるいは、横誘い動作における竿10の往復回数が規定値を超えるまで釣糸12の張力が規定値を超えない(ステップS6:NO)ことが挙げられる。横誘い動作では、正面を基準位置として竿10を-30~30°などの範囲で動作させる。
【0053】
ステップS9がYESとなったことにより横誘い動作を終了すると、再投入動作を実行する(ステップS10)。再投入動作とは、竿10を略垂直方向に回転させて一度擬餌針13を水中から引き揚げた後、再び投入動作を実行するものである。
【0054】
次に、縦誘い動作中に魚が針掛かりした場合(ステップS3:YES)及び横誘い動作中に魚が針掛かりした場合(ステップS6:YES)について説明する。
縦誘い動作中に魚が針掛かりした(ステップS3:YES)とき、縦誘い動作を終了(ステップS11)し、縦寄せ動作を開始する(ステップS12)。ここで、縦寄せ動作は、竿10の角度が規定値(本実施形態では45°)に達するまで継続される(ステップS13:NO)。竿10の角度は、例えば、制御部30が第1モータ22Aの基準位置からの回転量を計測し、回転量を基部21の角度に変換することによって判定することができる。竿10の角度が規定値に達したとき(ステップS13:YES)に縦寄せ動作を終了し、待ち時間を実行する(ステップS19)。
【0055】
横誘い動作中に魚が針掛かりした(ステップS6:YES)とき、横誘い動作及び垂直誘い動作を終了(ステップS14)し、縦寄せ動作を開始する(ステップS15)。ここで、縦寄せ動作は、竿10の角度が規定値(本実施形態では45°)に達するまで継続される(ステップS16:NO)。竿10の角度が規定値に達したとき(ステップS16:YES)に縦寄せ動作を終了し、横寄せ動作を開始する(ステップS17)。横寄せ動作は、略水平面内において竿10の角度が0°となるまで継続される(ステップS18:NO)。竿10の角度が0°となったとき(ステップS18:YES)に横寄せ動作を終了し、待ち時間を実行する(ステップS19)。
【0056】
ステップS19の待ち時間を実行後、釣り上げ動作(ステップS20)により魚を船1の上に移動させ、必要に応じて針外し動作(ステップS21)を実行後、制御を終了する。
あるいは、釣獲作業時に何らかの異常が生じた場合等は、制御盤32を用いて終了の指示をしてもよい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る魚釣装置100によれば、縦誘い動作を終了した後に、横誘い動作が行われる。つまり、水中に投入した擬餌針13を舷側1Sに近づける縦寄せ動作によって、船1から離れた場所にいる魚を舷側1Sに近づける。その後に魚を針掛かりさせる横誘い動作を行う。よって、より効果的に魚の針掛かりを誘い、釣獲機会を向上させることができる。したがって、擬餌針13を再投入する回数を少なくすることができる。
また、縦誘い動作のみを行う場合と比較して、擬餌針13が水中に位置する時間を長くすることができる。つまり、縦誘い動作のみを行う場合と比較して、投入動作を行う回数を少なくすることができる。よって、魚を擬餌針13によって船側に誘う時間を長くすることで、釣獲機会を向上させることができる。
【0058】
また、横誘い動作は、竿10の先端が略水平面内における一方の端または他方の端に移動してから、水中の擬餌針13が竿10の先端に伴って一方の端または他方の端に移動するまでの待ち時間として予め定められた時間だけ、竿10を静止させる動作を含む。これにより、竿10を静止させない場合と比較して、擬餌針13の移動距離を伸ばし、魚が擬餌針13を追いかけやすくすることで、魚の針掛かりを促すことができる。よって、誘い能力の向上により釣獲機会を増やすことができる。
【0059】
また、横誘い動作に伴って、略垂直面内で竿10の先端を繰り返し往復させる垂直誘い動作が行われるように駆動部22を制御する。これにより、水中の擬餌針が上下に移動する。このことで、魚に対して、餌をより自然に見せたり、疑似餌をより本物であるかのように見せたりすることができる。よって、魚が擬餌針に掛かる確率を増やし、より釣獲機会を向上することができる。
【0060】
また、魚釣装置100は、横誘い動作を、舷側1Sに配置された駆動部22が備える第2モータ22Bによって竿10を略水平面内で回転させることによって行う。これにより、横誘い動作のために駆動部22を平行移動させる、すなわち竿全体を平行移動させる構成と比較して、魚釣装置100の可動領域を小さくすることができる。よって、船1において魚釣装置100を設置する間隔を小さくし、より多くの魚釣装置100を配置することができる。
【0061】
また、制御部30は、横誘い動作中に魚が針掛かりしたときは横誘い動作を終了し、縦寄せ動作と、略水平面内で竿10の先端を中央に移動する横寄せ動作と、釣り上げ動作と、の順に行われるように駆動部22の第1モータ22Aおよび第2モータ22Bを制御する。つまり、魚が針掛かりしたとき、横寄せ動作よりも先に縦寄せ動作を行う。これにより、横寄せ動作を先に行う場合と比較して、魚の針掛かりをより確実に行うことができる。よって、より効率よく魚を釣り上げることができる。
【0062】
ここで、魚が略水平面内における中央に移動する前に釣り上げ動作を行うと、釣り上げられた魚は空中において斜め方向に移動する。舷側1Sにおいて魚釣装置100が複数配置されたとき、あるいは魚釣装置100の付近に作業員がいるとき、釣り上げられた魚が斜め方向に移動すると、釣り上げられた魚が付近の魚釣装置100あるいは作業員に衝突するおそれがある。
これに対し、横寄せ動作は、竿10の先端が略水平面内における中央に移動してから、針掛かりした魚が竿10の先端に伴って中央に移動するまでの待ち時間として予め定められた時間だけ、竿10を静止させる動作を含む。これにより、水中から釣り上げられた魚は中央に移動した竿10と略平行に空中を移動する。よって、上述の問題が生じることを防ぐことができる。
【0063】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、魚釣装置100は、風下側となる船1の左舷のみならず、風上側の右舷に配置してもよい。
【0064】
また、魚の針掛かりは、釣糸12の張力による判断としなくてもよい。例えば、第1モータ22Aの回転が、制御部30による指示と異なる動きをした場合(回転停止、逆回転等)を検知してもよいし、竿10の先端の動きをカメラによって撮影することで検知してもよい。
【0065】
また、縦寄せ動作後における竿10の角度は、上述の45°とせず、任意に決定してもよい。
また、本体部20にジャイロセンサによる角度補正機能を設け、波や風による船1の角度変化に対応して船1と本体部20との相対角度を変化させ、本体部20を常に水平に保つようにしてもよい。
また、本実施形態においては擬餌針13を用いるとして説明したが、魚の餌を模していない通常の釣り針を用いてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、第1モータ22Aによって竿10を略垂直面内で回転させると共に第2モータ22Bによって竿10を略水平面内で回転させることで駆動部22自体は移動しないものとしたが、第1モータ22Aによって竿10を略垂直面内で回転させると共にこの第1モータ22Aと竿10を一体で船1の舷に沿って移動させる構成とし、この構成で縦誘い動作の終了後に横誘い動作を行うものとしてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、横誘い動作に際して竿10が一方の端または他方の端で静止する待ち時間を設けるものとしたが、こうした待ち時間は設けなくてもよい。
また、本実施形態では、横誘い動作に伴って垂直誘い動作を行うものとしたが、この垂直誘い動作を行わないものとしてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、横寄せ動作に際して竿10が中央に移動してから魚が中央に移動するまでの待ち時間を設けるものとしたが、こうした待ち時間は設けなくてもよい。
また、本実施形態では、船1に散水装置200が取り付けられているものとしたが、散水装置200が取り付けられていない船1に魚釣装置100が取り付けられているものとしてもよい。
【0069】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。本実施形態では本発明を魚釣装置の形態として説明したが、本発明を魚釣装置の制御方法の形態としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 船
1B 船橋
1S 舷側
10 竿
12 釣糸
13 擬餌針(針)
20 本体部
21 基部
22 駆動部
22a 第1回転軸
22A 第1モータ
22b 第2回転軸
22B 第2モータ
22c ワイヤチェーン
22C 第1減速機
22d ダイスライドブッシュ
22D 第2減速機
30 制御部
31 制御器
32 制御盤
40 機器間ケーブル
50 電力ケーブル
100 魚釣装置
200 散水装置
200a 散水領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9