(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】角質削り具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/54 20060101AFI20241212BHJP
A47K 7/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A61B17/54
A47K7/02 Z
(21)【出願番号】P 2022079092
(22)【出願日】2022-04-20
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】317000821
【氏名又は名称】株式会社カスタム・クール・センター
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 政晴
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0005532(US,A1)
【文献】国際公開第2019/132271(WO,A1)
【文献】特表2005-502414(JP,A)
【文献】実開昭58-132656(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/54
A47K 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の表面に複数の突堤刃が形成された角質削り具であって、
前記突堤刃は、先端を一方向に向けた
所定の高さを有する複数の順方向突堤刃の間に、先端を他方向に向けた前記順方向突堤刃より高さの低い鋸歯状に形成した小寸突堤刃を突出形成したことを特徴とする角質削り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板の表面に、多数の突起刃を形成した角質削り具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒトの踵、肘などに生じる角質層を除去する用具として、軽石、顆粒状のセラミックを成型した商品、あるいは、薄いステンレスの板に突起物を設けた商品が使用されていた。また、特開平11-225915号公報(特許文献1)、実用新案登録第3131031号公報(特許文献2)に示されたように、板に切削孔が穿設された角質取り用具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-225915号公報
【文献】実用新案登録第3131031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に開示されている角質取り用具は、金属製の板に孔を穿設し、孔の円周の角で角質を削り取るようにしている。しかしながら、孔の内径が小さいことから、孔に落ち込む角質が僅かなことから、削り取ろうとする角質が少量であり、多くの時間を要する問題があった。また、角質を削り取る孔の内径の角部はほぼ直角に形成されていることから、角質が十分に削り取ることができず、しかも角質を孔に落ち込ませるために強く押し当てる必要があるため、疲労感が増大する問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、金属板の表面に形成した多数の突起刃によって、角質を簡易かつ効率良く削り取ることができる角質削り具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、金属板の表面に複数の突堤刃が形成された角質削り具であって、前記突堤刃は、先端を一方向に向けた所定の高さを有する複数の順方向突堤刃の間に、先端を他方向に向けた前記順方向突堤刃より高さの低い鋸歯状に形成した小寸突堤刃を突出形成したことを要旨としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、突堤刃が、先端を一方向に向けた所定の高さを有する複数の順方向突堤刃の間に、先端を他方向に向けた順方向突堤刃より高さの低い鋸歯状に形成した小寸突堤刃を突出形成することにより、角質削り具を順方向に移動したときは、所定荒削り状態で角質を効率良く削り取ることができる。また、角質削り具を逆方向に移動したときは、小寸突堤刃によって角質が少なく削り取られるので、仕上げ用として2通りの使い方ができる。さらに、角質削り具を使用するとき、通常の場合、逆方向に移動するとビビり現象が生ずることがあるが、このとき、小寸突堤刃によって削り取り量が小さいので、ビビり現象を抑制することができ、使用感を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】 本発明による角質削り具を示す斜視図である。
【
図2】 角質削り具に形成された突堤刃を示す断面図である。
【
図3】 角質削り具に形成された順方向突堤刃と小寸突堤刃を示す断面図である。
【
図4】 (A)(B)は、突堤刃の形成工程を示す工程説明図である。
【
図5】 (A)(B)は、角質削り具により踵の角質を削り取る状態を示した説明図である。
【
図6】 (A)(B)は、本発明による角質削り具の他の実施例を示す一部断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
金属板の表面に複数の突堤刃が形成された角質削り具は、前記突堤刃は、先端を一方向に向けた所定の高さを有する複数の順方向突堤刃の間に、先端を他方向に向けた前記順方向突堤刃より高さの低い鋸歯状に形成した小寸突堤刃を突出形成している。
【0014】
以下、本発明による角質削り具について、図面により詳細に説明する。
図1は、角質削り具1を示し、この角質削り具1に使用される金属板2は、ステンレス、銅、アルミニウムが使用される。この金属板2は長方形に形成され、板厚は、0.5mmから2.0mmとすることが好ましく、これらの金属板2には鍍金を施したものでも良い。さらに、角質削り具11は、使用者の使い勝手を考慮した形状に形成され、長手方向の一端側には把持部1a形成されている。そして、把持部1aを除く金属板2の表面には、複数の突堤刃3が等間隔に形成されている。
【0015】
突堤刃3は、
図2、
図3に示すように、金属板2の表面に、順方向突堤刃3aと小寸突堤刃3bが長手方向と直行する方向に形成されている。
図3に示すように、順方向突堤刃3aの高さH1は、金属板2表面から概ね0.2mm乃至0.5mmの所定の高さに形成されている。この順方向突堤刃3aは鋸歯状に形成され、先端が図示左方の一方向に向けられている。一方、小寸突堤刃3bは、方向突堤刃3aの高さH1よりも低い高さH2に形成され、金属板2表面から概ね0.1mm乃至0.4mmの所定の高さに形成されている。この小寸突堤刃3bも鋸歯状に形成され、先端が図示右方に向けられている。
【0016】
これらの順方向突堤刃3aと小寸突堤刃3bは、
図4に示す工程によって形成される。角質削り具1の母材となる金属板2は、ステンレス、銅、アルマイト処理を施したアルミニウムから選択される。金属板2の板厚は、0.5mmから2.0mmの適宜の板厚としている。金属板2は、図示しない加工装置に載置される。その後、
図4に示すように、掘り起こし工具5により、順方向突堤刃3aを等間隔に起立形成する。
【0017】
掘り起こし工具5は、底面側の先端に移動方向と直角な刃部5aが形成されていて、その幅は、角質削り具1を形成する順方向突堤刃3aの幅に設定されている。また、この掘り起こし工具5は、金属材1の一方面に対して後端側が高くなるように所定の角度θ1で傾斜させて図示しない駆動装置に取り付けられる。この傾斜角度θ1は、概ね10度から60度に設定される。また、掘り起こし工具5の摺接面5bと移動方向との角度θ2は、概ね30度から80度に設定されている。
【0018】
まず、
図4(A)に示すように、掘り起こし工具5の刃部5aを金属板2の順方向突堤刃3aを形成する位置に当接させた後、掘り起こし工具5を駆動装置により所定の角度θ1で矢示の方向で金属板2に侵入させると、掘り起こし工具5の刃部5aが金属板2の一方面に食い込むことにより、順方向突堤刃3aが起立形成される。この順方向突堤刃3aの高さH1は、0.1mm乃至0.5mm程度が望ましい。
【0019】
次いで、掘り起こし工具5を原点位置まで復帰させるとともに、次の順方向突堤刃3aを起立形成する位置まで金属板2を前進させ、その位置に掘り起こし工具5を当接させた後、
図4(B)に示すように、掘り起こし工具5を駆動装置により所定の角度θ1で矢示の方向で金属板2に挿入させると、掘り起こし工具5の刃部5aが金属板2の一方面に食い込むことにより、
図4(A)によって形成された順方向突堤刃3aよりも離間した位置に、次の順方向突堤刃3bが起立形成される。このように形成される2つの順方向突堤刃3bは、概ね3mm~10mm程度の等間隔とする。以後、掘り起こし工具5の原点復帰と金属板2の前進を、順方向突堤刃3aを形成すべき長さに達するまで繰り返す。
【0020】
その後、複数の順方向突堤刃3aが起立形成した金属板2を180度反転する。そして、上述した工程によって形成された順方向突堤刃3aの間に、
図4(C)に示すように、逆方向の小寸突堤刃3bを起立形成する。この小寸突堤刃3bの起立形成の工程は、前述した
図4(A)(B)による工程と同様であるが、前述した順方向突堤刃3aと異なる点は、高さと向きである。
【0021】
すなわち、小寸突堤刃3bを起立形成する位置に掘り起こし工具5を当接させた後、
図4(C)に示すように、掘り起こし工具5を駆動装置により所定の角度θ1で矢示の方向で金属板2に挿入させると、掘り起こし工具5の刃部5aが金属板2の表面に食い込ませることにより、
図4(A)によって形成された順方向突堤刃3aの間に小寸突堤刃3bが起立形成される。この小寸突堤刃3bは、金属板2表面から概ね0.1mm乃至0.4mmの所定の高さH2に形成される、また、小寸突堤刃3bの先端の向きは、順方向突堤刃3aと反対の方向に向いている。以後、掘り起こし工具5の原点復帰と金属板2の前進を、小寸突堤刃3bを形成すべき長さに達するまで繰り返す。
【0022】
以上のように形成された複数の順方向突堤刃3aと、向きの異なる複数の小寸突堤刃3bは、各々の断面が略鋸歯状に形成される。これは、図示のように、金属板2の表面に対して、掘り起こし工具5の摺接面5bに摺接した側面の傾斜角度が鈍角に形成され、他方の側面の傾斜角度が鋭角に形成されるからである。
【0023】
この角質削り具1を使用するときは、荒削りと仕上げ削りの2通りの使い方が可能である。例えば、人の踵6に生じた角質が大きい場合には、まず、荒削りとして使用する。この場合、
図5(A)に示すように、踵6に角質削り具1を押し当て、順方向突堤刃3aの先端側が矢示の進行方向となるように移動する。このとき、順方向突堤刃3aの先端が鋭角に形成されているので、踵6に角質に順方向突堤刃3aの先端が食い込むことより大きく削りとることができる。角質削り具1の位置を変えながら移動することにより、踵6の角質が徐々に削り取られる。
【0024】
荒削りが終了した後、又は、踵6の角質が少ない場合には、仕上げ削りを行う。仕上げ削りは、
図5(B)に示すように、踵6に角質削り具1を軽く押し当て、小寸突堤刃3bの先端側が矢示の進行方向となるように移動する。このとき、小寸突堤刃3bの高さが小さいので、踵6の角質に食い込む量が小さいので、角質の削り量が少ないことから仕上げ削りが可能となる。このように仕上げ削りを行っているとき、順方向突堤刃3aの先端が逆方向を向いているので、踵6に押し当てて移動しても、先端を滑るだけで角質を削り取ることはない。従って、ビビリ現象も生じない。
【0025】
図6は、本発明による角質削り具1の
他の実施例を示している。
図6(A)は、金属板2の表面に起立形成した複数の順方向突堤刃3aの間に、先端の向きを順方向突堤刃3aと反対の方向に向けた逆方向突堤刃3cを突出形成した例を示している。このように、順方向突堤刃3aと逆方向突堤刃3cを突出形成した角質削り具1を使用して、
図5に示した人の踵6に生じた角質を削り取るときは、踵6に角質削り具1を押し当て、順方向突堤刃3aの先端側が進行方向となるように移動することにより角質が削り取られる。その後、角質削り具1を踵6に押し当てた状態で、角質削り具1を逆方向に移動することにより、逆方向突堤刃3cによって角質が削り取られる。このように、角質削り具1を往復させることにより、踵6の角質を効率良く削り取ることができる。
【0026】
図6(B)は、金属板2の表面に、複数の順方向突堤刃3aを起立形成した例を示している。このように、同じ順方向突堤刃3aを複数形成した角質削り具1を使用して、人の踵6に生じた角質を削り取るときは、踵6に角質削り具1を押し当て、順方向突堤刃3aの先端側が進行方向となるように移動することにより角質が削り取られる。その後、角質削り具1を引き戻し、再び角質削り具1を踵6に押し当てて移動することにより、角質を削り取ることができる。このように、複数の順方向突堤刃3aのみを起立形成した場合には、角質削り具1を押し当てた状態で引き戻しても、順方向突堤刃3aが角質を滑りながら乗り越えるので、ビビリ現象が生じない。
【0027】
以上説明した本発明は、これら実施例に限定されることなく本発明を逸脱しない範囲において種々変更できる。前述した実施例においては、金属板の表面に、複数の突堤刃を等間隔に突出形成した例を示したが、角質削り具の使い勝手に応じて、部分的に不等間隔に形成しても良い。また、複数の順方向突堤刃の間には、複数の小寸突堤刃を起立形成しても良い。さらに、複数の突堤刃は、角質削り具の長手方向に対して所定の角度に形成しても良い。また、複数の順方向突堤刃と複数の小寸突堤刃は、部分的に異なる高さとなるように形成しても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 角質削り具
2 金属板
3 突堤刃
3a 順方向突堤刃
3b 小寸突堤刃