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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241212BHJP
   H02P 21/22 20160101ALI20241212BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02P21/22
H02P27/06
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020193439
(22)【出願日】2020-11-20
(65)【公開番号】P2022082083
(43)【公開日】2022-06-01
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 達貴
(72)【発明者】
【氏名】関本 守満
(72)【発明者】
【氏名】大石 潔
(72)【発明者】
【氏名】横倉 勇希
(72)【発明者】
【氏名】品川 大成
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晃大
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/108374(WO,A1)
【文献】特開2017-204994(JP,A)
【文献】特開2014-068498(JP,A)
【文献】特開2013-183620(JP,A)
【文献】特開2002-238298(JP,A)
【文献】特開2004-350459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02P 21/22
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流を三相交流にスイッチング動作により変換して出力することにより、交流誘導電動機(3)を駆動するインバータ(12)と、
電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出する電流制御部(20)と、
前記電流制御部(20)によって算出された電圧指令値(Vα*、Vβ*)に基づいて、前記インバータ(12)のスイッチング動作を制御するスイッチング動作制御部(16)とを備えた電力変換装置であって、
前記インバータ(12)の出力電流を検出する電流検出部(15)をさらに備え、
前記電流制御部(20)は、前記インバータ(12)の出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)と前記電流検出部(15)の検出値(i、i、i)に基づく電流検出値(iα、iβ)とに基づいて、前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出する電流制御動作を、前記交流誘導電動機(3)のU相コイルを流れるU相電流、前記交流誘導電動機(3)のV相コイルを流れるV相電流、及び前記交流誘導電動機(3)のW相コイルを流れるW相電流に対応するα軸電流及びβ軸電流についてそれぞれ行うものであり、
前記出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)の基本波成分の角周波数を指令角周波数(ωre)としたとき、前記出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から前記電流検出値(iα、iβ)までの閉ループ周波数伝達関数のゲインが、前記指令角周波数(ωre)において略1であり、前記出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から前記電流検出値(iα、iβ)までの閉ループ周波数伝達関数の位相が、前記指令角周波数(ωre)において略0°であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記電流制御動作は、前記出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分に基づいて、前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出するものであり、
前記差分から前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数のゲインが、前記指令角周波数(ωre)において無限大であり、前記差分から前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数の位相が、前記指令角周波数(ωre)において略0°であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記電流制御動作は、前記差分とフィードバック値(FB)との差に基づいて前記フィードバック値(FB)を算出し、前記差に基づいて前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出するものであり、
前記フィードバック値(FB)は、前記差分に含まれる前記指令角周波数(ωre)の成分の増幅値を含むことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置において、
前記電流制御動作は、前記差を積分した第1積分値(Z)を第1のゲイン(f1)倍して第1の比例値を算出し、前記第1積分値(Z)を積分した第2積分値(Z2α)を第2のゲイン(f2)倍して第2の比例値を算出し、前記第1及び第2の比例値に基づいて前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出するものであり、
前記指令角周波数(ωre)が変化したときの前記第1及び第2のゲイン(f1、f2)の変化量は、前記指令角周波数(ωre)の2乗の変化量に比例することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置において、
前記指令角周波数(ωre)の2乗の変化量をD、前記出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から前記電流検出値(iα、iβ)までの開ループ周波数伝達関数のゲインの交差角周波数をωc、前記交流誘導電動機(3)の1次巻線のインダクタンスをL1、前記交流誘導電動機(3)の2次巻線のインダクタンスをL2、1次巻線と2次巻線との間の相互インダクタンスをMとした場合に、前記指令角周波数(ωre)が変化したときの前記第1のゲイン(f1)の変化量は、D・(L1・L2-M)/L2となり、前記指令角周波数(ωre)が変化したときの前記第2のゲイン(f2)の変化量は、3D・ωc・(L1・L2-M)/L2となることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の電力変換装置において、
前記電流制御動作は、前記電流検出値(iα、iβ)を第3のゲイン(f)倍して第3の比例値を算出し、前記第1の比例値、前記第2の比例値及び前記第3の比例値を0から減算して前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出するものであり、
前記出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から前記電流検出値(iα、iβ)までの開ループ周波数伝達関数のゲインの交差角周波数をωc、前記交流誘導電動機(3)の1次巻線のインダクタンスをL、前記交流誘導電動機(3)の2次巻線のインダクタンスをL、前記1次巻線と前記2次巻線との間の相互インダクタンスをM、前記1次巻線の抵抗をR、前記2次巻線の抵抗をRとし、前記第3のゲイン(f3)をfとしたとき、以下の式(A)が成立することを特徴とする電力変換装置。
【数6】
【請求項7】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、
前記電流制御動作は、前記出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分と、前記基本波成分の1周期前の前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)との和を所定の電流制御ゲイン倍することにより、前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出するものであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
交流電源(2)の交流電圧を前記直流に整流する整流部(11)と、
前記インバータ(12)の入力端(12a,12b)間に接続されたキャパシタンス素子(14)とをさらに備え、
前記キャパシタンス素子(14)は、前記交流電源(2)と前記キャパシタンス素子(14)との間のインダクタンス成分とでLCフィルタ(LC)を構成していることを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電力変換装置において、
前記LCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を含む電気的な物理量を検出する物理量検出部(18)と、
前記物理量検出部(18)により検出される値に基づいて、前記物理量に含まれる前記共振周波数の成分を減衰させるように前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を補正する出力電圧補正部(50)とをさらに備えていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電力変換装置において、
前記交流電源(2)と前記キャパシタンス素子(14)との間に接続されたリアクトル(13)を備え、
前記物理量は、前記リアクトル(13)の電圧であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項9に記載の電力変換装置において、
前記物理量は、前記キャパシタンス素子(14)の電圧であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項9に記載の電力変換装置において、
前記交流電源(2)と前記キャパシタンス素子(14)との間に接続されたリアクトル(13)を備え、
前記物理量は、前記リアクトル(13)を流れる電流であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項9に記載の電力変換装置において、
前記物理量は、前記キャパシタンス素子(14)を流れる電流であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
請求項9に記載の電力変換装置において、
前記物理量は、前記キャパシタンス素子(14)に蓄えられた電気的エネルギーであることを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
請求項9に記載の電力変換装置において、
前記物理量は、前記交流電源(2)からの入力電流であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記電流制御部(20)は、前記電流検出部(15)の検出値に基づいてすべり周波数(ω)を推定し、推定したすべり周波数(ω)に基づいて、前記出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)を算出することを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交流誘導電動機を駆動する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直流を三相交流にスイッチング動作により変換して出力することにより、交流誘導電動機を駆動するインバータと、電圧指令値を算出する電流制御部と、前記電流制御部によって算出された電圧指令値に基づいて、前記インバータのスイッチング動作を制御するスイッチング動作制御部とを備えた電力変換装置が開示されている。この電力変換装置では、電流制御部が、交流誘導電動機の回転角と相電流とから、d軸電流とq軸電流とを求め、d軸電流指令値とd軸電流との偏差が小さくなるように、d軸電圧指令値を生成するとともに、q軸電流指令値とq軸電流との偏差が小さくなるように、q軸電圧指令値を生成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】近藤、結城、「誘導電動機速度センサレスベクトル制御の鉄道車両駆動への適用検討」、電気学会論文誌.D、電気学会、2005年1月1日、第125巻、第1号、p.1~8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、交流誘導電動機を駆動する電力変換装置において、交流の出力電流指令値にインバータの出力電流を位相ずれなく追従させたいという要請がある。前記非特許文献1では、交流誘導電動機に対し、速度センサレスベクトル制御による電流制御を行う。速度センサレスベクトル制御では、検出電流に対する回転座標変換を、モータ機器定数に基づいて行うので、電流変化や温度変化や固体ばらつきによってモータ機器定数が変動すると、回転座標変換後の検出電流に誤差が生じやすい。したがって、出力電流指令値の基本波成分の周波数である指令角周波数において、出力電流指令値からインバータの実際の出力電流までの周波数伝達関数のゲインが、1から大きくずれたり、インバータの出力電流の位相が、出力電流指令値の位相から大きくずれ、交流誘導電動機の良好な性能が得られなくなる虞がある。
【0005】
本開示の目的は、モータ機器定数の変動により、指令角周波数において、出力電流指令値からインバータの実際の出力電流までの周波数伝達関数のゲインが1から大きくずれたり、インバータの出力電流の位相が出力電流指令値の位相から大きくずれ、交流誘導電動機の良好な性能が得られなくなるのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、直流を三相交流にスイッチング動作により変換して出力することにより、交流誘導電動機(3)を駆動するインバータ(12)と、電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出する電流制御部(20)と、前記電流制御部(20)によって算出された電圧指令値(Vα*、Vβ*)に基づいて、前記インバータ(12)のスイッチング動作を制御するスイッチング動作制御部(16)とを備えた電力変換装置であって、前記インバータ(12)の出力電流を検出する電流検出部(15)をさらに備え、前記電流制御部(20)は、前記インバータ(12)の出力電流指令値(Iαref、Iβref)と前記電流検出部(15)の検出値(i、i、i)に基づく電流検出値(iα、iβ)とに基づいて、前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出する電流制御動作を、前記交流誘導電動機(3)のU相コイルを流れるU相電流、前記交流誘導電動機(3)のV相コイルを流れるV相電流、及び前記交流誘導電動機(3)のW相コイルを流れるW相電流についてそれぞれ行うか、又は前記電流制御動作を、前記U相電流、V相電流、及びW相電流に対応するα軸電流及びβ軸電流についてそれぞれ行うものであり、前記出力電流指令値(Iαref、Iβref)の基本波成分の周波数を指令角周波数(ωre)としたとき、前記出力電流指令値(Iαref、Iβref)から前記電流検出値(iα、iβ)までの閉ループ周波数伝達関数のゲインが、前記指令角周波数(ωre)において略1であり、前記出力電流指令値(Iαref、Iβref)から前記電流検出値(iα、iβ)までの閉ループ周波数伝達関数の位相が、前記指令角周波数(ωre)において略0°であることを特徴とする。
【0007】
第1の態様では、回転座標変換を行わず、固定座標系でインバータ(12)の出力電流が出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)とほぼ等しくなるように電流制御を行うので、モータ機器定数の変動による電流制御への影響が少ない。したがって、モータ機器定数の変動によって交流誘導電動機(3)の良好な性能が得られなくなるのを防止できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記電流制御動作は、前記出力電流指令値(Iαref、Iβref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分に基づいて、前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出するものであり、前記差分から前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数のゲインが、前記指令角周波数(ωre)において無限大であり、前記差分から前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数の位相が、前記指令角周波数(ωre)において略0°であることを特徴とすることを特徴とする。
【0009】
第2の態様では、出力電流指令値(Iαref、Iβref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分から電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数のゲインが、指令角周波数(ωre)において無限大であるので、出力電流指令値(Iαref、Iβref)の基本波成分と電流検出値(iα、iβ)の指令角周波数(ωre)の成分との差分を略0にできる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第2の態様において、前記電流制御動作は、前記差分とフィードバック値(FB)との差に基づいて前記フィードバック値(FB)を算出し、前記差に基づいて前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出するものであり、前記フィードバック値(FB)は、前記差分に含まれる前記指令角周波数(ωre)の成分の増幅値を含むことを特徴とする。
【0011】
第3の態様では、フィードバック値(FB)が、差分に含まれる指令角周波数(ωre)の成分の増幅値を含むので、当該差分から電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数のゲインを、指令角周波数(ωre)において無限大にできる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第3の態様において、前記電流制御動作は、前記差を積分した第1積分値(Z)を第1のゲイン(f1)倍して第1の比例値を算出し、前記第1積分値(Z)を積分した第2積分値(Z2α)を第2のゲイン(f2)倍して第2の比例値を算出し、前記第1及び第2の比例値に基づいて前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出するものであり、前記指令角周波数(ωre)が変化したときの前記第1及び第2のゲイン(f1、f2)の変化量は、前記指令角周波数(ωre)の2乗の変化量に比例することを特徴とする。
【0013】
第4の態様では、第1及び第2のゲイン(f1、f2)を指令角周波数(ωre)に応じて変化させるので、電流制御動作を、幅広い指令角周波数(ωre)に適応させることができる。
【0014】
本開示の第5の態様は、第4の態様において、前記指令角周波数(ωre)の2乗の変化量をD、前記出力電流指令値(Iαref、Iβref)から前記電流検出値(iα、iβ)までの開ループ周波数伝達関数のゲインの交差角周波数をωc、前記交流誘導電動機(3)の1次巻線のインダクタンスをL1、前記交流誘導電動機(3)の2次巻線のインダクタンスをL2、1次巻線と2次巻線との間の相互インダクタンスをMとした場合に、前記指令角周波数(ωre)が変化したときの前記第1のゲイン(f1)の変化量は、D・(L1・L2-M)/L2となり、前記指令角周波数(ωre)が変化したときの前記第2のゲイン(f2)の変化量は、3D・ωc・(L1・L2-M)/L2となることを特徴とする。
【0015】
第5の態様では、電流制御部(20)が、幅広い指令角周波数(ωre)において、交流誘導電動機(3)に適した制御を行える。
【0016】
本開示の第6の態様は、第4又は第5の態様において、前記電流制御動作は、前記電流検出値(iα、iβ)を第3のゲイン(f)倍して第3の比例値を算出し、前記第1の比例値、前記第2の比例値及び前記第3の比例値を0から減算して前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出するものであり、前記出力電流指令値(Iαref、Iβref)から前記電流検出値(iα、iβ)までの開ループ周波数伝達関数のゲインの交差角周波数をωc、前記交流誘導電動機(3)の1次巻線のインダクタンスをL、前記交流誘導電動機(3)の2次巻線のインダクタンスをL、前記1次巻線と前記2次巻線との間の相互インダクタンスをM、前記1次巻線の抵抗をR、前記2次巻線の抵抗をRとし、前記第3のゲイン(f3)をfとしたとき、以下の式(A)が成立することを特徴とする。
【0017】
【数1】
【0018】
第6の態様では、電流制御部(20)が、幅広い指令角周波数において、交流誘導電動機(3)に適した制御を行える。
【0019】
本開示の第7の態様は、第1又は第2の態様において、前記電流制御動作は、前記出力電流指令値(Iαref、Iβref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分と、前記基本波成分の1周期前の前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)との和を所定の電流制御ゲイン倍することにより、前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出するものであることを特徴とする。
【0020】
本開示の第8の態様は、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、交流電源(2)の交流電圧を前記直流に整流する整流部(11)と、前記インバータ(12)の入力端(12a,12b)間に接続されたキャパシタンス素子(14)とをさらに備え、前記キャパシタンス素子(14)は、前記交流電源(2)と前記キャパシタンス素子(14)との間のインダクタンス成分とでLCフィルタ(LC)を構成していることを特徴とする。
【0021】
本開示の第9の態様は、第8の態様において、前記LCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を含む電気的な物理量を検出する物理量検出部(18)と、前記物理量検出部(18)により検出される値に基づいて、前記物理量に含まれる前記共振周波数の成分を減衰させるように前記電圧指令値(Vα*、Vβ*)を補正する出力電圧補正部(50)とをさらに備えていることを特徴とする。
【0022】
第9の態様では、出力電圧補正部(50)が、電圧指令値(Vα*、Vβ*)の補正により、物理量に含まれる前記共振周波数の成分を減衰できる。したがって、LC回路(LC)の共振によるキャパシタンス素子(14)の電圧変動を抑制できる。
【0023】
本開示の第10の態様は、第9の態様において、前記交流電源(2)と前記キャパシタンス素子(14)との間に接続されたリアクトル(13)を備え、前記物理量は、前記リアクトル(13)の電圧(VL)であることを特徴とする。
【0024】
第10の態様では、出力電圧補正部(50)が、電圧指令値(Vα*、Vβ*)の補正により、リアクトル(13)の電圧(VL)に含まれる前記共振周波数の成分を減衰できる。
【0025】
本開示の第11の態様は、第9の態様において、前記物理量は、前記キャパシタンス素子(14)の電圧(Vdc)であることを特徴とする。
【0026】
第11の態様では、出力電圧補正部(50)が、電圧指令値(Vα*、Vβ*)の補正により、キャパシタンス素子(14)の電圧(Vdc)に含まれる前記共振周波数の成分を減衰できる。
【0027】
本開示の第12の態様は、第9の態様において、前記交流電源(2)と前記キャパシタンス素子(14)との間に接続されたリアクトル(13)を備え、前記物理量は、前記リアクトル(13)を流れる電流であることを特徴とする。
【0028】
第12の態様では、出力電圧補正部(50)が、電圧指令値(Vα*、Vβ*)の補正により、リアクトル(13)を流れる電流に含まれる前記共振周波数の成分を減衰できる。
【0029】
本開示の第13の態様は、第9の態様において、前記物理量は、前記キャパシタンス素子(14)を流れる電流であることを特徴とする。
【0030】
第13の態様では、出力電圧補正部(50)が、電圧指令値(Vα*、Vβ*)の補正により、キャパシタンス素子(14)を流れる電流に含まれる前記共振周波数の成分を減衰できる。
【0031】
第14の態様は、第9の態様において、前記物理量は、前記キャパシタンス素子(14)に蓄えられた電気的エネルギーであることを特徴とする。
【0032】
第14の態様では、出力電圧補正部(50)が、電圧指令値(Vα*、Vβ*)の補正により、キャパシタンス素子(14)に蓄えられた電気的エネルギーに含まれる前記共振周波数の成分を減衰できる。
【0033】
第15の態様は、第9の態様において、前記物理量は、前記交流電源(2)からの入力電流であることを特徴とする。
【0034】
第15の態様では、出力電圧補正部(50)が、電圧指令値(Vα*、Vβ*)の補正により、交流電源(2)からの入力電流に含まれる前記共振周波数の成分を減衰できる。
【0035】
第16の態様は、第1~15の態様のうちいずれか1つにおいて、前記電流制御部(20)は、前記電流検出部(15)の検出値に基づいてすべり周波数(ω)を推定し、推定したすべり周波数(ω)に基づいて、前記出力電流指令値(Iαref、Iβref)を算出することを特徴とする。
【0036】
第16の態様では、電流制御部(20)が、推定したすべり周波数(ω)を、インバータ(12)の出力電流に反映させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、実施形態1に係る電力変換システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、正弦波追従制御器のブロック線図である。
図3図3は、電力変換システムのブロック線図である。
図4図4(a)は、出力電流指令値から電流検出値までの閉ループ周波数伝達関数のゲインを示すゲイン線図であり、図4(b)は、出力電流指令値から電流検出値までの閉ループ周波数伝達関数の位相を示す位相線図である。
図5図5(a)は、出力電流指令値から電圧指令値までの周波数伝達関数のゲインを示すゲイン線図であり、図5(b)は、出力電流指令値から電圧指令値までの周波数伝達関数の位相を示す位相線図である。
図6図6は、実施形態2の図1相当図である。
図7図7は、繰り返し制御器の構成を示すブロック図である。
図8図8は、実施形態3の図1相当図である。
図9図9は、実施形態4の図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0039】
《実施形態1》
図1は、電力変換システム(1)を示す。この電力変換システム(1)は、本開示の実施形態1に係る電力変換装置(10)と、交流誘導電動機(3)を備える。電力変換装置(10)は、三相交流電源(2)から入力される三相交流の電源電力を、所望周波数及び所望電圧を有する交流電力に変換して、交流誘導電動機(3)に供給する。
【0040】
電力変換装置(10)は、整流部としてのコンバータ(11)と、インバータ(12)と、リアクトル(13)と、キャパシタンス素子(14)と、電流検出部(15)と、電流制御部(20)と、スイッチング動作制御部としてのPWM変調部(16)とを備えている。
【0041】
コンバータ(11)は、三相交流電源(2)の交流電圧を直流に整流し、第1及び第2の出力ノード(11a,11b)に出力する。詳しくは、コンバータ(11)は、全波整流回路である。コンバータ(11)は、ブリッジ状に結線された6つのダイオード(11D)を有している。これらのダイオード(11D)は、そのカソードを第1の出力ノード(11a)側に向けるとともに、そのアノードを第2の出力ノード(11b)側に向けている。
【0042】
インバータ(12)は、コンバータ(11)により出力される直流を三相交流にスイッチング動作により変換して出力することにより、交流誘導電動機(3)を駆動する。詳しくは、インバータ(12)は、6つのスイッチング素子(12S)と、6つの還流ダイオード(12D)とを有している。6つのスイッチング素子(12S)は、ブリッジ結線されている。詳しく説明すると、インバータ(12)は、その第1及び第2の入力端(12a,12b)間に接続された3つのスイッチングレグを備えている。スイッチングレグは、2つのスイッチング素子(12S)が互いに直列に接続されたものである。
【0043】
3つのスイッチングレグの各々において、上アームのスイッチング素子(12S)と下アームのスイッチング素子(12S)との中点が、交流誘導電動機(3)の各相のコイル(u相、v相、w相のコイル)にそれぞれ接続されている。各スイッチング素子(12S)には、還流ダイオード(12D)が1つずつ逆並列に接続されている。
【0044】
リアクトル(13)の一端は、コンバータ(11)の第1の出力ノード(11a)に接続され、リアクトル(13)の他端は、インバータ(12)の第1の入力端(12a)に接続されている。
【0045】
キャパシタンス素子(14)は、インバータ(12)の第1及び第2の入力端(12a,12b)間に接続されている。したがって、リアクトル(13)は、三相交流電源(2)とキャパシタンス素子(14)との間に接続されている。
【0046】
キャパシタンス素子(14)の容量値は、コンバータ(11)の出力電圧をほとんど平滑化できないが、インバータ(12)のスイッチング動作に起因するリプル電圧を抑制できるように設定されている。リプル電圧とは、スイッチング素子(12S)におけるスイッチング周波数に応じたDCリンク電圧(Vdc)の電圧変動である。したがって、キャパシタンス素子(14)の電圧であるDCリンク電圧(Vdc)には、三相交流電源(2)の交流電圧の周波数に応じた脈動成分が含まれる。三相交流電源(2)は三相電源であるため、三相交流電源(2)の周波数に応じた脈動成分は、三相交流電源(2)の周波数の6倍である。
【0047】
キャパシタンス素子(14)は、三相交流電源(2)とキャパシタンス素子(14)との間のインダクタンス成分とで、LCフィルタ(LC)を構成する。前記インダクタンス成分は、リアクトル(13)を含む。
【0048】
電流検出部(15)は、インバータ(12)の出力電流を検出し、検出値(i、i、i)を出力する。詳しくは、電流検出部(15)は、交流誘導電動機(3)のU相コイルを流れるU相電流を検出して検出値(i)を出力するU相電流検出部(15a)、交流誘導電動機(3)のV相コイルを流れるV相電流を検出して検出値(i)を出力するV相電流検出部(15b)、及び交流誘導電動機(3)のW相コイルを流れるW相電流を検出して検出値(i)を出力するW相電流検出部(15c)を備える。また、実施例には図示しないが、各相の電流を直接検出する電流検出部(15)に代えて、シャント抵抗等を用いてインバータ(12)の入力電流を検出し、当該入力電流とインバータ(12)のスイッチング素子(12S)のオンオフ状態とに基づいて、各相の電流の検出値(i、i、i)を求める手段を設けてもよい。
【0049】
電流制御部(20)は、インバータ(12)のα軸出力電流指令値(Iα ref)、及びβ軸出力電流指令値(Iβ ref)を算出する。そして、電流制御部(20)は、インバータ(12)の出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)と、電流検出部(15)の検出値に基づく電流検出値(iα、iβ)とに基づいて、電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出する電流制御動作を、α軸電流及びβ軸電流についてそれぞれ行う。
【0050】
具体的には、電流制御部(20)は、uvw-αβ変換部(21)と、一次磁束推定器(22)と、磁束減算器(23)と、磁束制御器(24)と、トルク電流指令値生成部(25)と、MT-αβ変換部(26)と、正弦波追従制御器(27)とを備えている。
【0051】
uvw-αβ変換部(21)は、電流検出部(15)によって検出されたU相電流、V相電流、及びW相電流の検出値(i、i、i)を、α軸電流検出値(iα)及びβ軸電流検出値(iβ)に変換して出力する。
【0052】
一次磁束推定器(22)は、uvw-αβ変換部(21)によって出力されたα軸電流検出値(iα)及びβ軸電流検出値(iβ)に基づいて、一次磁束(Ψ^)及び位相(θψ^)を推定する。一次磁束(Ψ^)及び位相(θψ^)は、高橋僚太、他3名、「静止座標上での一次鎖交磁束推定と正弦波追従電流制御系に基づくIPMSMの位置センサレスベクトル制御(半導体電力変換 モータドライブ合同研究会・半導体電力変換一般およびACドライブ)」、電気学会研究会資料. SPC、電気学会、2015年8月28日、p.51-56に開示された公知の方法によって推定できる。具体的には、電圧指令値(Vα*、Vβ*)から一次抵抗による電圧降下量をそれぞれ減算した結果を積分することにより、固定子磁束(Ψ1α、Ψ1β)を推定し、当該固定子磁束(Ψ1α、Ψ1β)に基づいて一次磁束(Ψ^)及び位相(θψ^)を算出できる。電圧降下量のα軸成分は、一次巻線の抵抗とα軸電流検出値(iα)とを掛けることによって算出でき、電圧降下量のβ軸成分は、一次巻線の抵抗とβ軸電流検出値(iβ)とを掛けることによって算出できる。積分手段としては、位相補償器と不完全積分を組合わせた回路を使用できる。
【0053】
磁束減算器(23)は、磁束指令値(Ψ*)から一次磁束推定器(22)によって推定された一次磁束(Ψ^)を減算し、減算結果を出力する。
【0054】
磁束制御器(24)は、磁束減算器(23)により出力された減算結果に基づいて、磁束電流指令値(i)を生成する。
【0055】
トルク電流指令値生成部(25)は、トルク指令値(T*)を、交流誘導電動機(3)の極対数(Pn)及び電機子鎖交磁束(ψ^)で割ることにより、トルク電流指令値(i)を生成する。
【0056】
MT-αβ変換部(26)は、一次磁束推定器(22)によって推定された位相(θψ^)を参照して、磁束制御器(24)によって生成された磁束電流指令値(i)、及びトルク電流指令値生成部(25)によって生成されたトルク電流指令値(i)を、α軸出力電流指令値(Iα ref)及びβ軸出力電流指令値(Iβ ref)に変換して出力する。
【0057】
正弦波追従制御器(27)は、インバータ(12)の出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)と電流検出部(15)の検出値(i、i、i)に基づく電流検出値(iα、iβ)とに基づいて、電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出する電流制御動作を、前記交流誘導電動機(3)のU相コイルを流れるU相電流、前記交流誘導電動機(3)のV相コイルを流れるV相電流、及び前記交流誘導電動機(3)のW相コイルを流れるW相電流に対応するα軸電流及びβ軸電流についてそれぞれ行う。
【0058】
具体的には、正弦波追従制御器(27)は、図2に示すように、α軸電圧指令値算出部(27a)と、β軸電圧指令値算出部(27b)とを有する。
【0059】
α軸電圧指令値算出部(27a)、及びβ軸電圧指令値算出部(27b)は、それぞれ、MT-αβ変換部(26)によって出力された対応する出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)と、uvw-αβ変換部(21)によって出力された対応する電流検出値(iα、iβ)とに基づいて、電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出する。つまり、α軸電圧指令値算出部(27a)は、MT-αβ変換部(26)によって出力されたα軸出力電流指令値(Iα ref)と、uvw-αβ変換部(21)によって出力されたα軸電流検出値(iα)とに基づいて、α軸電圧指令値(Vα*)を算出する。また、β軸電圧指令値算出部(27b)は、MT-αβ変換部(26)によって出力されたβ軸出力電流指令値(Iβ ref)と、uvw-αβ変換部(21)によって出力されたβ軸電流検出値(iβ)とに基づいて、β軸電圧指令値(Vβ*)を算出する。
【0060】
具体的には、α軸電圧指令値算出部(27a)、及びβ軸電圧指令値算出部(27b)は、それぞれ、第1減算器(31)と、第2減算器(32)と、第1積分器(33)と、第2積分器(34)と、フィードバック値生成部(35)と、第1比例器(36)と、第2比例器(37)と、第3比例器(38)と、第3減算器(39)とを備えている。
【0061】
第1減算器(31)は、出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から電流検出値(iα、iβ)を減算し、出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分を出力する。
【0062】
第2減算器(32)は、第1減算器(31)の出力、すなわち出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分から、後述するフィードバック値(FB)を減算し、前記差分とフィードバック値(FB)との差を出力する。
【0063】
第1積分器(33)は、第2減算器(32)の出力、すなわち出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分とフィードバック値(FB)との差を積分し、第1積分値(Z)を出力する。
【0064】
第2積分器(34)は、第1積分器(33)により出力される第1積分値(Z)を積分し、第2積分値(Z2α)を出力する。
【0065】
フィードバック値生成部(35)は、第2積分値(Z2α)を所定の指令角周波数(ωre)の2乗倍してフィードバック値(FB)を生成する。指令角周波数(ωre)は、出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)の基本波成分の周波数である。フィードバック値(FB)は、出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分に含まれる指令角周波数(ωre)の成分の増幅値を含む。
【0066】
第1比例器(36)は、第1積分器(33)によって出力された第1積分値(Z)を第1のゲイン(f1)倍して第1の比例値を算出する。
【0067】
第2比例器(37)(f1)は、第2積分器(34)によって出力された第2積分値(Z2α)を第2のゲイン(f2)倍して第2の比例値を算出する。
【0068】
第3比例器(38)は、電流検出値(iα、iβ)を第3のゲイン(f3)倍して第3の比例値を算出する。
【0069】
第3減算器(39)は、第1比例器(36)によって算出された第1の比例値、第2比例器(37)によって算出された第2の比例値、及び第3比例器(38)によって出力された第3の比例値を0から減算して電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出する。
【0070】
このように、電流制御部(20)による電流制御動作は、出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分に基づいて、電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出するものである。また、電流制御部(20)による電流制御動作は、出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分とフィードバック値(FB)との差に基づいてフィードバック値(FB)を算出し、前記差に基づいて電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出するものである。また、電流制御部(20)による電流制御動作は、第1比例器(36)によって算出された第1の比例値、第2比例器(37)によって算出された第2の比例値に基づいて電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出するものである。
【0071】
PWM変調部(16)は、電流制御部(20)によって算出された電圧指令値(Vα*、Vβ*)に基づいて、スイッチング信号(S、S、S)を出力することにより、インバータ(12)のスイッチング素子(12S)のスイッチング動作をPWM制御する。
【0072】
ここで、交流誘導電動機(3)の状態方程式は、以下の式(1)に示すようになる。
【0073】
以下、Rは1次巻線の抵抗、Rは2次巻線の抵抗、Lは交流誘導電動機(3)の1次巻線のインダクタンス、Lは交流誘導電動機(3)の2次巻線のインダクタンス、Mは交流誘導電動機(3)の1次巻線と2次巻線との間の相互インダクタンス、ωreは指令角周波数、iαはα軸電流、iβはβ軸電流、ψ1αは固定子磁束のα軸成分、ψ1βは固定子磁束のβ軸成分、vαはα軸電圧指令値、vβはβ軸電圧指令値を示す。
【0074】
【数2】
【0075】
したがって、電力変換システム(1)のブロック線図は、図3に示すように表される。
【0076】
第1のゲイン(f1)をf、第2のゲイン(f2)をf、第3のゲイン(f)をfとすると、第1~第3のゲイン(f1、f2、f)は以下の式(2)~式(4)に示すように設定される。以下、ωは出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から電流検出値(iα、iβ)までの開ループ周波数伝達関数のゲインの交差角周波数を示す。
【0077】
【数3】
【0078】
【数4】
【0079】
【数5】
【0080】
第1~第3のゲイン(f1、f2、f)は、図3のブロック線図に基づいて、上記式(2)~式(4)に示すように求められる。このように、交流誘導電動機(3)の状態方程式に基づいて定められた第1~第3のゲイン(f1、f2、f)を用いるので、電流制御部(20)が、幅広い指令角周波数(ωre)において、交流誘導電動機(3)に適した制御を行える。
【0081】
したがって、指令角周波数(ωre)が変化したときの第1及び第2のゲイン(f1、f2)の変化量は、指令角周波数(ωre)の2乗の変化量に比例する。具体的には、指令角周波数(ωre)の2乗の変化量をDとしたとき、指令角周波数(ωre)が変化したときの第1のゲイン(f1)の変化量は、D・(L1・L2-M)/L2となり、前記指令角周波数(ωre)が変化したときの前記第2のゲイン(f)の変化量は、3D・ωc・(L1・L2-M)/L2となる。
【0082】
図4(a)は、指令角周波数(ωre)を754rad/sとした場合、すなわち指令周波数を120Hzとした場合における,各出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から各電流検出値(iα、iβ)までの閉ループ周波数伝達関数のゲインを示すゲイン線図である。同図に示すように、各出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から各電流検出値(iα、iβ)までの閉ループ周波数伝達関数のゲインは、指令角周波数(ωre)において、略0dB、すなわち略1となっている。ここで、「ゲインが略1」とは、ゲインが0.95以上1.05以下であることを意味する。
【0083】
図4(b)は、指令角周波数(ωre)を754rad/sとした場合における,各出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から各電流検出値(iα、iβ)までの閉ループ周波数伝達関数の位相を示す位相線図である。同図に示すように、各出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から各電流検出値(iα、iβ)までの閉ループ周波数伝達関数の位相は、指令角周波数(ωre)において、略0°となっている。ここで、「位相が略0°」とは、位相が-5°以上5°以下であることを意味する。
【0084】
図5(a)は、指令角周波数(ωre)を754rad/sとした場合における,各出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から各電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数のゲインを示すゲイン線図である。同図に示すように、各出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から各電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数のゲインは、指令角周波数(ωre)において、無限大となっている。したがって、出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分から、電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数のゲインも、指令角周波数(ωre)において無限大となる。
【0085】
図5(b)は、指令角周波数(ωre)を754rad/sとした場合における,各出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から各電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数の位相を示す位相線図である。同図に示すように、各出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から各電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数の位相は、指令角周波数(ωre)において、略0°となっている。したがって、出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分から、電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数の位相も、指令角周波数(ωre)において略0°となる。
【0086】
したがって、本実施形態1によれば、回転座標変換を行わず、固定座標系でインバータ(12)の出力電流が出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)とほぼ等しくなるように電流制御を行うので、モータ機器定数の変動による電流制御への影響が少ない。したがって、モータ機器定数の変動によって交流誘導電動機(3)の良好な性能が得られなくなるのを防止できる。
【0087】
また、指令角周波数(ωre)において、固定座標系における出力電流指令値(Iαref、Iβref)から電流検出値(iα、iβ)までの閉ループ周波数伝達関数のゲインが略1であるので、当該ゲインが1から大きくずれることにより交流誘導電動機(3)の良好な性能が得られなくなるのを防止できる。
【0088】
また、指令角周波数(ωre)において、固定座標系における出力電流指令値(Iαref、Iβref)から電流検出値(iα、iβ)までの閉ループ周波数伝達関数の位相が、略0°であるので、インバータ(12)の出力電流の位相が、出力電流指令値(Iαref、Iβref)の位相から大きくずれることにより、交流誘導電動機(3)の良好な性能が得られなくなるのを防止できる。
【0089】
また、1次磁束推定器(22)が、モータ機器定数として交流誘導電動機(3)の1次巻線の抵抗だけを用いるので、モータ機器定数の変動による1次磁束推定への影響は小さい。したがって、算出される出力電流指令値(Iαref、Iβref)へのモータ機器定数の変動による影響も小さくなる。
【0090】
また、正弦波追従制御器(27)の第1~第3のゲイン(f1、f2、f)を算出するために、モータ機器定数として、交流誘導電動機(3)の1次巻線のインダクタンス、前記交流誘導電動機(3)の2次巻線のインダクタンス、1次巻線と2次巻線との間の相互インダクタンス、1次巻線の抵抗、及び2次巻線の抵抗を用いるので、モータの機器定数の変動が、ゲイン(f1、f2、f)に影響し、応答性に影響を及ぼす可能性はある。しかし、モータの機器定数の変動は、インバータ(12)の出力電流を出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)とほぼ等しくすることには影響を及ぼさない。
【0091】
また、第1及び第2のゲイン(f1、f2)を指令角周波数(ωre)に応じて変化させるので、電流制御動作を、幅広い指令角周波数(ωre)に適応させることができる。
【0092】
《実施形態2》
図6は、実施形態2の図1相当図である。本実施形態2では、電力変換装置(10)の電流制御部(20)が、正弦波追従制御器(27)に代えて、繰り返し制御器(40)を有している。この繰り返し制御器(40)は、図7に示すように、α軸電圧指令値算出部(40a)と、β軸電圧指令値算出部(40b)とを有する。
【0093】
α軸電圧指令値算出部(40a)、及びβ軸電圧指令値算出部(40b)は、それぞれ、MT-αβ変換部(26)によって出力された対応する出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)と、uvw-αβ変換部(21)によって出力された対応する電流検出値(iα、iβ)とに基づいて、対応する電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出する。つまり、α軸電圧指令値算出部(40a)は、MT-αβ変換部(26)によって出力されたα軸出力電流指令値(Iα ref)と、uvw-αβ変換部(21)によって出力されたα軸電流検出値(iα)とに基づいて、α軸電圧指令値(Vα*)を算出する。また、β軸電圧指令値算出部(40b)は、MT-αβ変換部(26)によって出力されたβ軸出力電流指令値(Iβ ref)と、uvw-αβ変換部(21)によって出力されたβ軸電流検出値(iβ)とに基づいて、β軸電圧指令値(Vβ*)を算出する。
【0094】
具体的には、α軸電圧指令値算出部(40a)、及びβ軸電圧指令値算出部(40b)は、それぞれ、減算器(41)、加算器(42)、増幅部(43)、及び遅延要素(44)を有している。
【0095】
減算器(41)は、出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から電流検出値(iα、iβ)を減算し、出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分を出力する。
【0096】
加算器(42)は、減算器(41)の出力、すなわち出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分と、基本波成分の1周期前の電圧指令値(Vα*、Vβ*)とを加算し、加算結果を出力する。
【0097】
増幅部(43)は、加算器(42)の出力、すなわち出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分と、基本波成分の1周期前の電圧指令値(Vα*、Vβ*)との和を所定の電流制御ゲイン倍することにより、電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出する。
【0098】
遅延要素(44)は、増幅部(43)によって出力された電圧指令値(Vα*、Vβ*)を、出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)の基本波成分の1周期分遅延させて出力する。基本波成分の1周期は、2πを指令角周波数(ωre)で割ることにより算出できる。
【0099】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同じ構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0100】
本実施形態2においても、各出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から各電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数のゲインは、指令角周波数(ωre)において、無限大となり、各出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)及び電流検出値(iα、iβ)の差分から、各電圧指令値(Vα*、Vβ*)までの周波数伝達関数のゲインも、指令角周波数(ωre)において無限大となる。したがって、各出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)から各電流検出値(iα、iβ)までの閉ループ周波数伝達関数のゲインは、指令角周波数(ωre)において、略0dB、すなわち略1となる。
【0101】
《実施形態3》
図8は、実施形態3の図1相当図である。本実施形態3では、電力変換装置(10)が、実施形態2の構成に加え、DCリンク電圧検出部(17)と、物理量検出部(18)と、出力電圧補正部(50)とをさらに備えている。
【0102】
DCリンク電圧検出部(17)は、キャパシタンス素子(14)の電圧であるDCリンク電圧(Vdc)を検出する。なお、実施形態1,2においても、電力変換装置(10)は、PWM変調に用いるDCリンク電圧(Vdc)を検出するために、DCリンク電圧検出部(17)を備えているが、実施形態1,2ではその図示及び説明を省略している。
【0103】
物理量検出部(18)は、リアクトル(13)の電圧であるリアクトル電圧(VL)を物理量として検出する。リアクトル電圧(VL)は、LCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を含む電気的な物理量である。
【0104】
また、出力電圧補正部(50)は、物理量検出部(18)によって検出されたリアクトル電圧(VL)に基づいて、リアクトル電圧(VL)に含まれる共振周波数の成分を減衰させるように電圧指令値(Vα*、Vβ*)を補正する。出力電圧補正部(50)は、極座標変換部(51)、変調率演算部(52)、補正量算出部(53)及び補正部用減算器(54)を有している。
【0105】
極座標変換部(51)は、繰り返し制御器(40)によって出力された電圧指令値(Vα*、Vβ*)に対し、極座標変換を行うことにより、電圧の振幅を示す電圧指令値(V*)と、電圧位相(θv)とを算出する。
【0106】
変調率演算部(52)は、極座標変換部(51)によって算出された電圧指令値(V*)と、DCリンク電圧検出部(17)によって検出されたDCリンク電圧(Vdc)とに基づいて変調率(D**)を算出する。変調率(D**)をD**、電圧指令値(V*)をV*、DCリンク電圧(Vdc)をVdcとすると、以下の式(5)が成立する。
【0107】
D**=V* * √2/Vdc ・・・式(5)
補正量算出部(53)は、物理量検出部(18)によって検出されたリアクトル電圧(VL)に基づいて、リアクトル電圧(VL)に含まれるLCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を減衰させるように補正量(Dk)を算出する。具体的には、補正量算出部(53)は、物理量検出部(18)によって検出されたリアクトル電圧(VL)を所定の補正ゲイン倍することにより、補正量(Dk)を算出する。
【0108】
補正部用減算器(54)は、変調率演算部(52)によって算出された変調率(D**)から補正量算出部(53)によって算出された補正量(Dk)を減算し、減算結果を補正後の変調率(D*)として出力する。
【0109】
PWM変調部(16)は、補正部用減算器(54)によって算出された変調率(D**)と極座標変換部(51)により算出された電圧位相(θv)とに基づいて、スイッチング信号(S、S、S)を出力することにより、インバータ(12)のスイッチング素子(12S)のスイッチング動作をPWM制御する。
【0110】
したがって、本実施形態3によれば、出力電圧補正部(50)が、電圧指令値(Vα*、Vβ*)の補正により、リアクトル電圧(VL)に含まれる前記共振周波数の成分を減衰できる。したがって、LC回路(LC)の共振によるキャパシタンス素子(14)の電圧変動を抑制できる。
【0111】
《実施形態3の変形例1》
実施形態3の変形例1では、DCリンク電圧検出部(17)が、物理量検出部(18)を構成する。つまり、物理量検出部(18)が、キャパシタンス素子(14)の電圧であるDCリンク電圧(Vdc)を物理量として検出する。
【0112】
また、補正量算出部(53)が、物理量検出部(18)によって検出されたDCリンク電圧(Vdc)に基づいて、DCリンク電圧(Vdc)に含まれるLCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を減衰させるように補正量(Dk)を算出する。詳しくは、補正量算出部(53)は、物理量検出部(18)によって検出されたDCリンク電圧(Vdc)から、DCリンク電圧(Vdc)に含まれるリプル成分、及びDCリンク電圧(Vdc)の直流成分を引くことにより、DCリンク電圧(Vdc)に含まれるLCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を抽出する。そして、補正量算出部(53)は、抽出した共振周波数の成分に基づいて、当該共振周波数の成分を抑制するように、補正量(Dk)を算出する。具体的には、補正量算出部(53)は、共振周波数の成分を所定の補正ゲイン倍することにより、補正量(Dk)を算出する。
【0113】
なお、DCリンク電圧(Vdc)に含まれるリプル成分を特定するには、まず、三相交流電源(2)によって出力された交流電圧のうち、二相の交流電圧の線間電圧のゼロクロス信号の周波数を6倍した三角波を生成する。そして、複数の位相と各位相に対応するリプル波形とを示す所定のルックアップテーブルを参照することによって、当該三角波の位相に対応するリプル波形をリプル成分として特定する。
【0114】
また、DCリンク電圧(Vdc)の直流成分は、ローパスフィルタによって特定してもよいし、三相交流電源(2)によって出力される交流電圧の1周期分の平均値を直流成分として特定するようにしてもよい。
【0115】
その他の構成は、実施形態3と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0116】
したがって、本実施形態3の変形例1によれば、出力電圧補正部(50)が、電圧指令値(Vα*、Vβ*)の補正により、DCリンク電圧(Vdc)に含まれる前記共振周波数の成分を減衰できる。
【0117】
《実施形態3の変形例2》
実施形態3の変形例2では、物理量検出部(18)が、リアクトル(13)を流れる電流であるリアクトル電流を物理量として検出する。
【0118】
また、補正量算出部(53)が、物理量検出部(18)によって検出されたリアクトル電流に基づいて、リアクトル電流に含まれるLCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を減衰させるように補正量(Dk)を算出する。詳しくは、補正量算出部(53)は、物理量検出部(18)によって検出されたリアクトル電流から、リアクトル電流に含まれるリプル成分、及びリアクトル電流の直流成分を引くことにより、リアクトル電流に含まれるLCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を抽出する。そして、補正量算出部(53)は、抽出した共振周波数の成分に基づいて、当該共振周波数の成分を抑制するように、補正量(Dk)を算出する。具体的には、補正量算出部(53)は、共振周波数の成分を所定の補正ゲイン倍することにより、補正量(Dk)を算出する。
【0119】
リアクトル電流に含まれるリプル成分、及びリアクトル電流の直流成分は、実施形態3の変形例1においてDCリンク電圧(Vdc)のリプル成分及び直流成分を特定した方法と同様の方法によって特定できる。
【0120】
その他の構成は、実施形態3と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0121】
したがって、本実施形態3の変形例2によれば、出力電圧補正部(50)が、電圧指令値(Vα*、Vβ*)の補正により、リアクトル電流に含まれる前記共振周波数の成分を減衰できる。
【0122】
《実施形態3の変形例3》
実施形態3の変形例3では、物理量検出部(18)が、キャパシタンス素子(14)を流れる電流であるキャパシタンス電流を物理量として検出する。
【0123】
また、補正量算出部(53)が、物理量検出部(18)によって検出されたキャパシタンス電流に基づいて、キャパシタンス電流に含まれるLCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を減衰させるように補正量(Dk)を算出する。詳しくは、補正量算出部(53)は、物理量検出部(18)によって検出されたキャパシタンス電流から、キャパシタンス電流に含まれるリプル成分を引くことにより、キャパシタンス電流に含まれるLCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を抽出する。そして、補正量算出部(53)は、抽出した共振周波数の成分に基づいて、当該共振周波数の成分を抑制するように、補正量(Dk)を算出する。具体的には、補正量算出部(53)は、共振周波数の成分を所定の補正ゲイン倍することにより、補正量(Dk)を算出する。
【0124】
キャパシタンス電流に含まれるリプル成分は、実施形態3の変形例1においてDCリンク電圧(Vdc)のリプル成分を特定した方法と同様の方法によって特定できる。
【0125】
その他の構成は、実施形態3と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0126】
したがって、本実施形態3の変形例3によれば、出力電圧補正部(50)が、電圧指令値(Vα*、Vβ*)の補正により、キャパシタンス電流に含まれる前記共振周波数の成分を減衰できる。
【0127】
《実施形態3の変形例4》
実施形態3の変形例3では、物理量検出部(18)が、キャパシタンス素子(14)に蓄えられた電気的エネルギーを物理量として検出する。物理量検出部(18)は、DCリンク電圧検出部(17)により検出されたDCリンク電圧(Vdc)の二乗を算出する第1乗算器(図示せず)と、第1乗算器により算出されたDCリンク電圧(Vdc)の二乗に1/2を掛けた値を算出する第2乗算器(図示せず)とで構成される。
【0128】
また、補正量算出部(53)が、物理量検出部(18)によって検出された電気的エネルギーに基づいて、当該電気的エネルギーに含まれるLCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を減衰させるように補正量(Dk)を算出する。詳しくは、補正量算出部(53)は、物理量検出部(18)によって検出された電気的エネルギーから、電気的エネルギーに含まれるリプル成分、及び電気的エネルギーの直流成分を引くことにより、電気的エネルギーに含まれるLCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を抽出する。そして、補正量算出部(53)は、抽出した共振周波数の成分に基づいて、当該共振周波数の成分を抑制するように、補正量(Dk)を算出する。具体的には、補正量算出部(53)は、共振周波数の成分を所定の補正ゲイン倍することにより、補正量(Dk)を算出する。
【0129】
電気的エネルギーに含まれるリプル成分、及び電気的エネルギーの直流成分は、実施形態3の変形例1においてDCリンク電圧(Vdc)のリプル成分及び直流成分を特定した方法と同様の方法によって特定できる。
【0130】
その他の構成は、実施形態3と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0131】
したがって、本実施形態3の変形例4によれば、出力電圧補正部(50)が、電圧指令値(Vα*、Vβ*)の補正により、キャパシタンス素子(14)に蓄えられた電気的エネルギーに含まれる前記共振周波数の成分を減衰できる。
【0132】
《実施形態3の変形例5》
実施形態3の変形例5では、物理量検出部(18)が、三相交流電源(2)からの入力電流、すなわちコンバータ(11)への入力電流を物理量として検出する。物理量検出部(18)が、は、三相交流電源(2)からの三相の入力電流のうち、いずれか一相の入力電流を検出する。
【0133】
また、補正量算出部(53)が、物理量検出部(18)によって検出された入力電流に基づいて、当該入力電流に含まれるLCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を減衰させるように補正量(Dk)を算出する。詳しくは、補正量算出部(53)は、物理量検出部(18)によって検出された入力電流から、当該入力電流に含まれるリプル成分、及び当該入力電流の直流成分を引くことにより、入力電流に含まれるLCフィルタ(LC)の共振周波数の成分を抽出する。そして、補正量算出部(53)は、抽出した共振周波数の成分に基づいて、当該共振周波数の成分を抑制するように、補正量(Dk)を算出する。具体的には、補正量算出部(53)は、共振周波数の成分を所定の補正ゲイン倍することにより、補正量(Dk)を算出する。
【0134】
三相交流電源(2)からの入力電流に含まれるリプル成分、及び当該入力電流の直流成分は、実施形態3の変形例1においてDCリンク電圧(Vdc)のリプル成分及び直流成分を特定した方法と同様の方法によって特定できる。
【0135】
その他の構成は、実施形態3と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0136】
したがって、本実施形態3の変形例5によれば、出力電圧補正部(50)が、電圧指令値(Vα*、Vβ*)の補正により、三相交流電源(2)からの入力電流に含まれる前記共振周波数の成分を減衰できる。
【0137】
《実施形態4》
図9は、実施形態4の図1相当図である。本実施形態4では、電力変換装置(10)の電流制御部(20)が、実施形態1の構成に加え、αβ-MT変換部(61)と、すべり周波数推定部(62)と、速度推定部(63)と、加算器(64)と、推定速度算出部(65)と、周波数減算器(66)と、速度制御器(67)とをさらに備えている。
【0138】
αβ-MT変換部(61)は、uvw-αβ変換部(21)によって出力されたα軸電流検出値(iα)及びβ軸電流検出値(iβ)を、磁束電流検出値(i1M)及びトルク電流検出値(i1T)に変換して出力する。
【0139】
すべり周波数推定部(62)は、αβ-MT変換部(61)によって出力された磁束電流検出値(i1M)及びトルク電流検出値(i1T)と、一次磁束推定器(22)によって推定された一次磁束(Ψ^)とに基づいて、すべり周波数(ω)を推定する。すべり周波数(ω)は、以下の式(6)により推定される。式(6)において、ωsは、すべり周波数(ω)、i1Tはトルク電流検出値(i1T)、Ψ^は一次磁束推定器(22)によって推定された一次磁束(Ψ^)、σは、交流誘導電動機(3)の結合度合い、i1Mは磁束電流検出値(i1M)を示す。
【0140】
ωs=R・L・i1T/(L・|Ψ^|-σ・L・L・i1M) ・・・(6)
速度推定部(63)は、αβ-MT変換部(61)によって出力されたトルク電流検出値(i1T)と、一次磁束推定器(22)によって推定された一次磁束(Ψ^)とに基づいて、一次周波数(ω)を推定する。一次周波数(ω)は、以下の式(7)により推定される。式(7)において、ωは一次周波数(ω)、v1TはT軸電圧指令値、i1Tはトルク電流検出値(i1T)、Ψ^は一次磁束推定器(22)によって推定された一次磁束(Ψ^)を示す。
【0141】
ω=(v1T-R・i1T)/|Ψ^| ・・・(7)
加算器(64)は、すべり周波数推定部(62)によって推定されたすべり周波数(ω)と、速度推定部(63)によって推定された一次周波数(ω)とを加算する。
【0142】
推定速度算出部(65)は、加算器(64)により出力される加算結果を、交流誘導電動機(3)の極対数(Pn)で割ることにより、推定速度(ωm^)を算出する。
【0143】
周波数減算器(66)は、指令速度(ωm*)から推定速度(ωm^)を減算し、減算結果を出力する。
【0144】
速度制御器(67)は、周波数減算器(66)により出力される減算結果に基づいて、例えば比例積分(PI)制御により、トルク指令値(T*)を生成して出力する。
【0145】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同じ構成には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0146】
このように、電流制御部(20)は、電流検出部(15)の検出値(i、i、i)に基づいてすべり周波数(ω)を推定する。そして、電流制御部(20)は、推定したすべり周波数(ω)に基づいて、出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)を算出する。
【0147】
したがって、本実施形態4によれば、電流制御部(20)が、推定したすべり周波数(ω)を、インバータ(12)の出力電流に反映させることができる。
【0148】
《その他の実施形態》
なお、前記実施形態1~4及び変形例では、電流制御部(20)が、インバータ(12)の出力電流指令値(Iα ref、Iβ ref)と、電流検出部(15)の検出値(i、i、i)に基づく電流検出値(iα、iβ)とに基づいて、電圧指令値(Vα*、Vβ*)を算出する電流制御動作を、U相電流、V相電流、及びW相電流に対応するα軸電流及びβ軸電流についてそれぞれ行った。しかし、電流制御部(20)が、前記電流制御動作を、U相電流、V相電流、及びW相電流についてそれぞれ行うようにしてもよい。つまり、電流制御部(20)が、U相電流指令値、V相電流指令値、及びW相電流指令値と、電流検出部(15)により検出されたU相電流、V相電流、及びW相電流の検出値(i、i、i)とに基づいて、U相電圧指令値、V相電圧指令値、及びW相電圧指令値を算出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0149】
以上説明したように、本開示は、交流誘導電動機を駆動する電力変換装置について有用である。
【符号の説明】
【0150】
2 三相交流電源
3 交流誘導電動機
10 電力変換装置
11 コンバータ(整流部)
12 インバータ
12a 第1の入力端
12b 第2の入力端
13 リアクトル
14 キャパシタンス素子
15 電流検出部
16 PWM変調部(スイッチング動作制御部)
18 物理量検出部
20 電流制御部
50 出力電圧補正部
LC LCフィルタ
α* α軸電圧指令値
β* β軸電圧指令値
、i、i 検出値
α ref α軸出力電流指令値
β ref β軸出力電流指令値
α α軸電流検出値
β β軸電流検出値
ωre 指令角周波数
ω すべり周波数
FB フィードバック値
第1積分値
2α 第2積分値
f1 第1のゲイン
f2 第2のゲイン
f3 第3のゲイン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9