IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7602767光学顕微鏡および光学顕微鏡によって画像撮影するための方法
<>
  • 特許-光学顕微鏡および光学顕微鏡によって画像撮影するための方法 図1
  • 特許-光学顕微鏡および光学顕微鏡によって画像撮影するための方法 図2
  • 特許-光学顕微鏡および光学顕微鏡によって画像撮影するための方法 図3
  • 特許-光学顕微鏡および光学顕微鏡によって画像撮影するための方法 図4
  • 特許-光学顕微鏡および光学顕微鏡によって画像撮影するための方法 図5
  • 特許-光学顕微鏡および光学顕微鏡によって画像撮影するための方法 図6
  • 特許-光学顕微鏡および光学顕微鏡によって画像撮影するための方法 図7
  • 特許-光学顕微鏡および光学顕微鏡によって画像撮影するための方法 図8
  • 特許-光学顕微鏡および光学顕微鏡によって画像撮影するための方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】光学顕微鏡および光学顕微鏡によって画像撮影するための方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20241212BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/36
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022519710
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2020078601
(87)【国際公開番号】W WO2021074073
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】102019127775.2
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 武慶
(72)【発明者】
【氏名】シュウェート,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】アンニュイ,ティエモ
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-512573(JP,A)
【文献】特開2014-240870(JP,A)
【文献】特表2008-536093(JP,A)
【文献】特開2013-020083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00
G02B 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学顕微鏡によって画像撮影するための方法であって、
試料(35)に照明光(12)を送るステップと、
複数の光子計数センサ素子(61)へ前記試料(35)からの検出光(15)を送るステップであって、各光子計数センサ素子(61)によって連続して複数の計数値(x)が取り込まれるステップと、
を含む方法において、
複数の被分析の計数値度数分布(81-83)と、前記計数値(x)からの少なくとも1つの参照計数値度数分布(80)とを形成するステップ(S3)と、ここで、各被分析の計数値度数分布(81-83)は、いくつかの計数値のそれぞれがどのくらいの頻度で発生するかを示し、
前記被分析の計数値度数分布(81-83)のそれぞれ1つと前記参照計数値度数分布(80)との間の類似性を算出するステップと、
付随する1つまたは複数の前記被分析の計数値度数分布(81-83)の、算出された類似性に応じて、光子計数センサ素子(61)に過度の負荷がかかっていることを識別するステップと、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記被分析の計数値度数分布(81-83)のそれぞれ1つと前記参照計数値度数分布(80)との間のリスケーリングを算出するステップであって、
前記被分析の計数値度数分布(81-83)のそれぞれ1つと前記参照計数値度数分布(80)との間の類似性の算出は、それぞれのリスケーリングを考慮して行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被分析の計数値度数分布(81-83)から棒グラフを形成するステップ、および/または前記参照計数値度数分布(80)から一参照棒グラフを形成し、前記参照計数値度数分布(80)は、非飽和であった1つまたは複数の光子計数センサ素子(61)の計数値から形成されるステップを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
参照計数値度数分布(80)として、または前記参照計数値度数分布(80)を形成するために、少なくとも1つの計数値度数分布を選択するステップであって、本選択は、対応する前記計数値度数分布の前記計数値(x)の大きさに応じて行われることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
参照計数値度数分布(80)として、または前記参照計数値度数分布(80)を形成するために、少なくとも1つの計数値度数分布を選択するステップの前提条件が、この計数値度数分布の最大の計数値(x)またはこの計数値度数分布の最大の計数値(x)から形成される平均値が、所与の上限値よりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
参照計数値度数分布(80)として、または前記参照計数値度数分布(80)を形成するために、少なくとも1つの計数値度数分布を選択するステップの前提条件が、この計数値度数分布の前記計数値(x)から算定される信号強度基準が、所与の最小値を上回ることであることを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
参照計数値度数分布(80)として用いるための、少なくとも1つの計数値度数分布の選択は、付随する1つまたは複数の前記光子計数センサ素子(61)の位置に応じて行われることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記被分析の計数値度数分布(81-83)のそれぞれ1つと前記参照計数値度数分布(80)との間のリスケーリングの算出は、上記の被分析の計数値度数分布(81-83)または前記参照計数値度数分布(80)の伸張もしくは圧縮によって行われることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
リスケーリングは少なくとも以下、すなわち、
前記参照計数値度数分布(80)と前記被分析の計数値度数分布(81-83)のそれぞれ1つとにフィット関数(90-93)を適合させるステップであって、その際フィットパラメータが算定されるステップと、
算定された前記フィットパラメータに応じて、前記被分析の計数値度数分布(81-83)の1つまたは前記参照計数値度数分布(80)を伸張または圧縮するステップと、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項10】
類似性の算出は、少なくとも以下、すなわち、前記被分析の計数値度数分布(81-83)の1つと前記参照計数値度数分布(80)との間でのリスケーリングが行われた後に、前記被分析の計数値度数分布(81-83)の1つと前記参照計数値度数分布(80)との間の相関係数を算出するステップを含み、
算出された前記相関係数が、確定された最小値を下回る場合、付随する前記被分析の計数値度数分布(81-83)に過度の負荷がかかっていると識別されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記照明光(12)で前記試料(35)が走査され、
隣り合う光子計数センサ素子(61)の距離は1エアリよりも小さく、
前記試料(35)の走査中に前記光子計数センサ素子(61)の1つが連続して取り込む前記計数値(x)は、同一の前記計数値度数分布(81-83)を形成するために用いられることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記照明光(12)を前記試料(35)に送ることによって、広視野照明が提供され、
前記光子計数センサ素子(61)の構造体によって生み出される解像度が、ナイキスト基準によって定められたものと少なくとも同じ高さになるように、前記光子計数センサ素子(61)へ試料平面の写像が行われることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記照明光(12)を前記試料(35)に送ることによって、広視野照明が提供され、
1つまたは複数の計数値度数分布(81-83)と前記参照計数値度数分布(80)のための計数値(x)を、前記光子計数センサ素子(61)で連続して取り込む時系列測定が実行されることを特徴とする請求項1から10または12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
取り込まれた前記光子計数センサ素子(61)の前記計数値(x)から、結果画像が算出され、
過度の負荷がかかっていると識別される前記光子計数センサ素子(61)の計数値(x)は前記結果画像の算出に加えられないか、または、前記結果画像の算出に利用される前に、少なくとも数学的に修正されることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記光子計数センサ素子(61)に過度の負荷がかかっていると識別される場合には、
A)画像撮影が繰り返され、前記光子計数センサ素子(61)に当たる検出光力が小さくなるように、顕微鏡設定が変更され、
B)制御ユニット(70)が、少なくとも変更された顕微鏡設定に基づいて、画像撮影が繰り返される場合に感光時間をどのくらい延長するかを算出し、
画像撮影が繰り返されても光子計数センサ素子(61)に過度の負荷がかかっていると識別される場合には、プロセスA)とB)とが繰り返されることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記照明光(12)は、複数の照明ポイントの形で前記試料(35)にわたってスキャンし、前記照明ポイントは、前記試料(35)の同一の領域を連続して走査し、
前記試料(35)のスキャン中に、過度の負荷の識別が行われ、第1の照明ポイントに関して過度の負荷が確認される場合、それ以外の照明ポイントに関する顕微鏡設定が変更されて、付随する光子計数センサ素子(61)に当たる検出光の出力が小さくなるようにすることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
過度の負荷がかかっている光子計数センサ素子(61)がないと識別された場合、または過度の負荷がかかっている光子計数センサ素子(61)は多くとも所与の最大数であると識別された場合、前記計数値(x)から算出される画像品質が、所与の目標画像品質に達しているかどうかが検査され(S7)、
所与の目標画像品質に達しない場合、変更された顕微鏡設定で新たな画像撮影(S2)が行われ、変更された顕微鏡設定によって、光子計数センサ素子(61)ごとにより高い検出光強度がもたらされるか、または、より長い感光時間がもたらされることを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
まず照明光強度を高めて、新たな画像撮影(S2)が行われ、
この新たな画像撮影(S2)の際に、光子計数センサ素子(61)に過度の負荷がかかっていると識別される場合には、照明光強度を上げる代わりに感光時間を延長させて、再度新たな画像撮影(S2)が行われることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
照明光(12)を試料(35)に放射するための光源(10)と、
前記試料(35)からの検出光(15)を検知するための複数の光子計数センサ素子(61)であって、各光子計数センサ素子(61)は、連続して複数の計数値(x)を取り込むために設備されている光子計数センサ素子(61)と、
を有する光学顕微鏡において、
複数の被分析の計数値度数分布(81-83)と、前記計数値(x)からの少なくとも1つの参照計数値度数分布(80)とを形成する(S3)ためと、ここで、各被分析の計数値度数分布(81-83)は、いくつかの計数値のそれぞれがどのくらいの頻度で発生するかを示し、
前記被分析の計数値度数分布(81-83)のそれぞれ1つと前記参照計数値度数分布(80)との間の類似性を算出するためと、
付随する1つまたは複数の前記被分析の計数値度数分布(81-83)の、算出された類似性に応じて、光子計数センサ素子(61)に過度の負荷がかかっていることを識別するためと、
に設備されている制御ユニット(70)を特徴とする光学顕微鏡。
【請求項20】
前記制御ユニット(70)は、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法を実施するために設備されているFPGAまたは別のプログラム可能なアセンブリを含む、請求項19に記載の光学顕微鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、請求項1に記載の光学顕微鏡による画像撮影法と、請求項19に記載の光学顕微鏡とに関する。
【背景技術】
【0002】
特に生物試料では、強い蛍光マーカーが使用される。高速で画像データ撮影を行うためには、高い照明強度が役立つ。しかしながら、試料は照明によって損傷を受けかねないので、照明強度を過度に高くすべきではない。
【0003】
とりわけこのような理由から、特に感度の高いセンサ素子が使用される。しばしば、マルチアルカリカソードを有する光電子増倍管(PMT)が、GaAsPカソードを有するPMTで代用されてきており、それによって可視スペクトル領域において、量子効率の改善を達成することができた。しかしながら、この場合に使用された強化プロセスの乗法的性質によって、測定された信号にノイズ(いわゆる増幅ノイズあるいは過剰ノイズ)が入る。これによって正味の感度は、特定の量子効率に対して低くなる。
【0004】
乗法ノイズを除去するためには、個々の光子によって引き起こされる個々のパルスを計数できるまでに、増幅を高めてよい。そのためにたとえば、時間相関単一光子計数法(TCSPC)が可能な電子機器が利用される。測定された信号は全くのデジタル信号であり、測定された強度値は、量子効率の分だけ減らされた、フォトカソードに衝突する光子の数に相当し得る。しかしながら電子機器には、たとえば数十ナノ秒の無駄時間があり、その間は衝突した光子を記録できない。
【0005】
無駄時間の結果として、センサの照明密度が高すぎる場合、信号が改竄されかねない。特に、センサ素子上の照明強度が高い場合には、測定値があまりに小さくなりかねない(いわゆるパイルアップ効果)。それゆえ光子計数法による測定は、非常に感度が高いが、しかしながら、画像データ内で所定の信号対ノイズ比(SNR)を達成するためには、比較的長い時間がかかる。この問題は、並列光子計数法によって軽減でき、その際信号の検出PSF(点広がり関数)が、複数の光子計数センサ素子から成るアレイ(Array)すなわち構造体(Anordnung)に割り振られる。それによって光子は、多数のセンサ素子に統計学上分散されて衝突する。それで、光子の衝突時にほとんどのセンサ素子が作動しており、ほんのわずかなセンサ素子のみが、以前の光子を記録した後の無駄時間にあるという可能性が、大きくなる。
【0006】
光学顕微鏡によって画像撮影するための本分野に係る方法は、少なくとも以下のステップ、すなわち、試料に照明光を送るステップと、それぞれ連続して複数の計数値を取り込む複数の光子計数センサ素子へ試料からの検出光を送るステップと、を含む。
【0007】
本分野に係る光学顕微鏡は対応するやり方で、照明光を試料に放射するための光源と、試料からの検出光を検知するための複数の光子計数センサ素子とを含む。光子計数センサ素子は、それぞれ連続して複数の計数値を取り込むために、設備されている。
【0008】
この場合、たとえば特許文献1に記述されているように、たとえ個々のセンサ素子の感度が原則的に個別に設定可能であっても、センサ素子に過度の負荷をかけるのは問題である。特に、できる限り良好な画像品質を達成するために、使用者が照明出力を上げれば、センサ素子から成るアレイであっても、画像情報の改竄を伴う不都合な飽和(Satting)をもたらす。照明強度が低い場合には、試料ポイント当たりの感光時間を長くすれば画像品質を向上できるが、これによって測定時間が長くなり、時間進行の観察には望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第9997551号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題とされ得るのは、光学顕微鏡と、光子計数センサ素子を使って光学顕微鏡によって画像撮影するための方法とを提供することであり、画像撮影ミスを認識し、場合によっては補正する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法と、請求項19の特徴を有する光学顕微鏡とによって、解決される。
【0012】
本発明に係る光学顕微鏡と本発明に係る方法の有利な変形形態は、従属請求項の対象であり、しかも以下の記述において説明される。
【0013】
上述のような方法では、本発明に従えば少なくとも以下のステップ、すなわち、
‐複数の被分析の計数値度数分布(英語:photon count distributions)と、計数値からの少なくとも1つの参照計数値度数分布とを形成するステップと、
‐被分析の計数値度数分布のそれぞれ1つと参照計数値度数分布との間の類似性を算出するステップと、
‐付随する被分析の計数値度数分布の、算出された類似性に応じて、センサ素子に過度の負荷がかかっていることを識別するステップと、
が実行される。
【0014】
上述のような光学顕微鏡は、本発明に従えば、
‐複数の被分析の計数値度数分布と、計数値からの少なくとも1つの参照計数値度数分布とを形成するためと、
‐被分析の計数値度数分布のそれぞれ1つと参照計数値度数分布との間の類似性を算出するためと、
‐付随する被分析の計数値度数分布の、算出された類似性に応じて、センサ素子に過度の負荷がかかっていることを識別するためと、
に設備されている制御ユニットを備える。
【0015】
本発明の様々な実施形態で利用されるのは、複数のセンサ素子は、非常に類似した1つの画像内容を測定するが、異なる度数の光強度を受信するということである。比較的理解しやすい例は、いわゆるエアリスキャン(Airyscan)(イメージスキャニング顕微鏡法とも呼ばれる)であり、試料ポイントが照らされて、この試料ポイントが、複数のセンサ素子から成るアレイに写像される。検出PSFは、複数のセンサ素子にわたって広がっているので、その測定値はほぼ同一の試料ポイントに起因する。しかし検出PSFは、センサ素子にわたって一定の値を有さず、センサ素子にわたって横方向にたとえばガウス曲線の経過を取りかねない。それゆえ、中心のセンサ素子は外側のセンサ素子よりも多くの光を受け、外側にあるセンサ素子よりも高い計数値を測定する。試料は照明光線でスキャンされてよく、センサ素子は、照らされる各試料ポイントに対してそれぞれ1つの計数値を測定する。1つのセンサ素子の計数値は、1つの計数値度数分布に統合され得るので、たとえばセンサ素子ごとに1つの計数値度数分布が形成される。計数値度数分布はほぼ、同じ画像内容に起因するが、主に検出PSFの経過に基づいて、計数値の大きさが異なる。特に、計数値度数分布の、異なる計数値の大きさを補正/標準化するリスケーリングの後には、それゆえ計数値度数分布はほぼ互いに一致するはずである。測定経過の間にセンサ素子に過度の負荷がかかった(飽和された)ならば、その最も大きい計数値は小さすぎる。それゆえ、センサ素子は計数値の取り込み時に過度の負荷がかかって、それによって改竄された画像情報に相当するかどうかを、計数値度数分布と比較して認識できる。センサ素子に過度の負荷がかかっていると識別されれば、任意的に適切な処置、たとえば過度の負荷がかかった計数値の数学的な修正あるいは適切に変更された顕微鏡設定での新たな画像撮影を自動で実行できるが、それについては後により詳細に記述される。
【0016】
計数値度数分布の形成
計数値度数分布の比較のために、少なくとも1つの計数値度数分布が、参照計数値度数分布として用いられる。参照計数値度数分布で知られている、あるいは想定されるのは、後により詳細に説明されるように、計数値の取り込み時に飽和がないことである。その他の計数値度数分布は、被分析の計数値度数分布と呼ばれる。
【0017】
計数値度数分布は、ちょうど1つのセンサ素子の計数値から、あるいは複数のセンサ素子の計数値から形成されていてよい。それゆえ、計数値度数分布の数、すなわち被分析の計数値度数分布と参照計数値度数分布の数は、センサ素子の数よりも少ないか、同じか、あるいは原則として多くてもよい。特に、センサ素子から成るグループが形成されていてよく(「ビニング」)、1つのグループのセンサ素子の計数値が統合され、共同で1つの計数値度数分布を形成する。少なくとも1つの参照計数値度数分布は同様に、このやり方で形成されてよい。代替的に、参照計数値度数分布は、複数の計数値度数分布の集合によっても算出されてよい。
【0018】
参照計数値度数分布の算定
参照計数値度数分布は、測定が行われる間は飽和されていない/過度の負荷がかかっていない1つあるいは複数のセンサ素子の計数値から形成されることになる。この選択は、様々なやり方で行われてよい。
【0019】
それで、参照計数値度数分布として用いられるために、少なくとも1つの計数値度数分布が選択されてよく、その選択は、対応する計数値度数分布の計数値の大きさに応じて行われる。計数値の大きさを考慮することによって、過度の負荷がかかっていない1つあるいは複数のセンサ素子の計数値から、参照計数値度数分布が形成されるのを、確実なものにできる。選択された計数値度数分布を参照計数値度数分布として用いる代わりに、選択された計数値度数分布からも、集合によって(たとえば加算、平均化あるいは、その後の加算または平均化を伴う標準化によって)、個々の参照計数値度数分布を算出してよい。
【0020】
センサ素子の計数値が参照計数値度数分布に用いられるための前提条件は、このセンサ素子によって測定される計数値の最大値が、所与の上限値よりも小さいということであってよい。前提条件は、この計数値度数分布の最大計数値から形成される平均値(たとえば計数値の最大パーセントの平均値)が、所与の上限値よりも小さくなくてはならないということに変えられてもよい。上限値は、センサ素子の最大計数率に応じて確定されていてよく、特に最大計数率の1%から30%の間で感光時間を乗じた数であってよい。この場合感光時間は、計数値を取り込むための測定時間を示している。そのような上限値によって、参照計数値度数分布の計数値が、飽和時には取り込まれなかったことが確かめられる。最大計数率は、1つのセンサ素子の飽和で達成され得る最大の計数率を示してよい。代替的に最大計数率は、センサ素子の無駄時間の逆数として、たとえば大体0.1/無駄時間として示されてもよい。センサ素子の無駄時間はしばしば知られており、10から100ナノ秒の間の値である。それで、無駄時間が50ナノ秒のセンサ素子の場合には、上限値は計数率に対して2MHzと確定できる。
【0021】
センサ素子の計数値から信号強度基準を算定することも意図されていてよく、たとえば計数値の平均値あるいは計数値の最大値が、信号強度基準として用いられてよい。センサ素子の計数値が参照計数値度数分布に用いられるための前提条件が、付随する信号強度基準が所与の最小値を上回るおよび/あるいは前述の上限値を下回るということであってよい。最小値を上回ることによって、十分に大きな信号値が参照計数値度数分布に用いられることが確実になる。
【0022】
代替的に、計数値度数分布の間の相関関係を算出することでも、複数の計数値度数分布から、1つの計数値度数分布を参照計数値度数分布として選択してよい。特に、できる限り大きな所定の数の別の計数値度数分布に対して所与の高い相関関係を有する1つの計数値度数分布が、参照計数値度数分布として選択されてよい。これは、しばしば光点の中心にあるいくつかのセンサ素子のみが過飽和であって、ほとんどのセンサ素子は線形領域で作動するという思想に基づいている。1つの計数値度数分布が、その他の多くの計数値度数分布に対して高い相関関係を有していれば、付随する1つあるいは複数のセンサ素子はおそらく線形(非飽和)領域で作動したであろう。さらに、飽和の程度によっては、計数値度数分布の形状が変化し、その結果、多くのセンサ素子に過度の負荷がかかった場合でも、それらの計数値度数分布は互いに対して常に高い相関関係を有するわけではない。任意的に、参照計数値度数分布として用いるためのさらなる前提条件が、計数値度数分布の信号強度基準が十分に高いものであることであってよい。たとえば、上でより詳細に定義された信号強度基準が最大であるか、あるいは少なくとも信号強度基準値がより小さい半分内にはない計数値度数分布が、互いに対して高い相関関係を有する計数値度数分布から、参照計数値度数分布のために選択されてよい。これによって、計数値のSNRが不都合なほど低い計数値度数分布が、参照計数値度数分布として選択されることが、回避される。
【0023】
参照計数値度数分布として用いるための、少なくとも1つの計数値度数分布の選択は、付加的にあるいは代替的に、1つあるいは複数の付随するセンサ素子の位置に応じて行われてもよい。たとえば計数値度数分布は、外側の領域に設けられた1つあるいは複数のセンサ素子の計数値から形成されてよく、参照計数値度数分布として用いられてよい。外側の領域としては、たとえばすべてのセンサ素子の最外側の30%と見なされ得る。測定方法によっては、計数値度数分布がたとえばリング形状に設けられたセンサ素子の計数値からそれぞれ形成されるビニングが使用されてよい。参照計数値度数分布としては、センサ素子のリング形状の外側(あるいは最外側)の計数値度数分布が利用されてよい。参照計数値度数分布として用いるための、少なくとも1つの計数値度数分布の選択は、入射する光強度分布の中心点に対する、1つあるいは複数の付随するセンサ素子の位置に応じて行われてもよい。特に、選択されたセンサ素子の過飽和のリスクを小さいままにしておくために、その位置が光強度分布の中心点に対して距離がある1つあるいは複数のセンサ素子が選択されてよい。
【0024】
リスケーリングと類似性の決定
任意的に、被分析の計数値度数分布のそれぞれ1つと参照計数値度数分布との間のリスケーリングの算出が行われてよい。それから、被分析の計数値度数分布のそれぞれ1つと参照計数値度数分布との間の類似性の算出が、それぞれのリスケーリングを考慮して行われる。
【0025】
リスケーリングの算出には、様々な信号強度の計数値度数分布を互いにより良好に比較できるようにするという目的がある。リスケールとは、計数値度数分布の計数値が現れる領域および/あるいは計数値の大きさを変えることと理解され得る。リスケールは、度数分布の計数値のスケール変更(Umskalieren)あるいはスケール(Skalieren)とも呼ばれ得る。画像内容が類似している場合、計数値度数分布は、そのスケーリング以外は類似しているはずであり、すなわち、類似する経過形状を有するはずである。そうでない場合には、原因はセンサ素子の飽和にあるかもしれない。リスケーリングのために、被分析の計数値度数分布および/あるいは参照計数値度数分布をリスケールしてよい。被分析の計数値度数分布と参照計数値度数分布のサイズ基準が決定されてよく、さらに、引き続いてサイズ基準が互いに一致するように、サイズ基準に応じて、計数値度数分布の1つを伸張あるいは圧縮してよい。
【0026】
リスケーリングは、参照計数値度数分布への被分析の計数値度数分布の(線形)写像(あるいはその逆)と見なされ得る。それゆえリスケーリングのために、被分析の計数値度数分布あるいは参照計数値度数分布に適用される写像機能の、1つあるいは複数のパラメータが決定されてよい。
【0027】
リスケーリングはたとえば、フィット関数が参照計数値度数分布に適合されることと、フィット関数が被分析の計数値度数分布の1つにもそれぞれ適合されるということとを含んでよい。つまり各計数値度数分布のために、それぞれの計数値度数分布の経過を描写する1つあるいは複数のフィットパラメータが算定される。被分析の計数値度数分布の1つあるいは参照計数値度数分布の伸張あるいは圧縮が行われてよく、伸張/圧縮は、算定されたフィットパラメータに応じたものである。特に、伸張された/圧縮された計数値度数分布にフィット関数を適合させることで、比較されるべき計数値度数分布のフィットパラメータと同じフィットパラメータが生み出されるように、伸張/圧縮が実行されてよい。
【0028】
フィット関数はたとえば、指数関数的減衰を示していてよく、特にフィット関数f(x)は、f(x)=f0*exp(-x/c)と定義されていてよく、あるいは少なくともf0*exp(-x/c)という式を、乗法、加法あるいはその他のやり方でさらなる式と結び付けて含んでよい。この場合、xは計数値度数分布の計数値、fは計数値の度数、expは指数関数、f0とcはフィットパラメータである。別のフィット関数も用いられてよく、フィット関数が2つのフィットパラメータだけあるいは多くとも3つのフィットパラメータを含んでいれば、有利となり得る。
【0029】
フィット関数が、計数値度数分布の上記の計数値の一部分にだけ、たとえば計数値がより大きい半分にだけ適合され、他方で計数値がより小さい半分は無視されることが、意図されていてよい。これには、適合とそれに続くリスケーリングが、参照計数値度数分布と被分析の計数値度数分布の最大の計数値の度数を、特に良好に互いに比較可能にするという利点がある。最大の計数値xの度数の差異は、被分析の計数値度数分布での飽和の特に明白な兆候である。
【0030】
フィット関数としての指数関数の上述の例では、一般的に、f0とcの算定された値は、参照計数値度数分布と被分析の計数値度数分布との間で異なる。c(任意的にはf0も)の算定された2つの値の間の差異から、濃淡値軸(計数値軸)を伸張もしくは圧縮させるファクタが算定される。続くフィット適合によって、比較される2つの計数値度数分布のためのcとf0と同じ値が生じるように、伸縮もしくは圧縮が行われる。
【0031】
類似性の算出は、特に被分析の計数値度数分布Hnの1つと参照計数値度数分布Hrとの間でのリスケーリングが行われた後の、被分析の計数値度数分布Hnの1つと参照計数値度数分布Hrとの間の相関係数R(あるいはこれに応じた値)の、たとえば数式1による少なくとも1つの算出を含んでよい。
R = covar(Hn, Hr,) / (stdev(Hn)*stdev(Hr))
この場合、covar(Hn, Hr,)はHnとHrとの間の共分散、stdev(Hn)とstdev(Hr)はHnもしくはHrの標準偏差である。
【0032】
算出された相関係数Rが、確定された最小値を下回る場合、付随する被分析の計数値度数分布に過度の負荷がかかっていると識別され、もしくは、その計数値から被分析の計数値度数分布が形成された1つあるいは複数のセンサ素子に過度の負荷がかかっていると識別される。たとえば、付随する相関係数Rあるいはその数値が、特に0.80から0.98の間特に0.92から0.97の間にある限界値よりも大きい場合、2つの計数値度数分布の類似性が肯定されることが、意図されていてよい。
【0033】
リスケーリングと類似性の決定は、共通の計算処理で行われてもよい。
【0034】
さらなる実施形態において、初めに、これらの計数値度数分布に適合されたフィット関数に対する、最大の計数値の度数値の偏差基準が算定される。引き続いてリスケーリングを適用できるので、類似性の決定を実行するために、被分析の計数値度数分布の偏差基準と参照計数値度数分布の偏差基準とを互いに比較できる。特にそのように算出する場合には、リスケーリングと類似性決定のための計算処理を交換してよく、あるいは異なる順序で行ってよい。
【0035】
類似性決定の方法によっては、リスケーリングを単独で行う必要はない。これは特に、参照計数値度数分布と被分析の計数値度数分布との間の変更された相互相関を算出することによって類似性を決定する以下の例の場合に当てはまる。相互相関係数corr{k}はこの場合、数式2によって算出できる。
corr{k}:=sum [Hn(x) ・Hr(x,k)]/[sum Hn(x)2 ・sum Hr(x,k)2]1/2
その際合計は計数値xを超え、計数値度数分布Hn(x)とHr(x)は、様々な計数値xの度数を示す。相互相関の通例の算出法では、kは、Hr(x+k)の形で変位を表わしている。それとは異なって、本願ではパラメータkは、計数値xの伸張あるいは圧縮を描写し得る。特に、少なくとも1つの計数値度数分布Hn(x)とHr(x)の計数値xは、パラメータkに応じて伸張/圧縮されてよく、任意的にも付加的にも、計数値xが現れる度数の伸張/圧縮が行われてよい。伸張/圧縮は、様々な数式によって描写され得え、たとえばkは(計数値xに乗じる)1つのファクタであってよく、k=k(x)はxに依存していてもよい。x値の変位と乗法とを含むより複雑な式は、相互相関係数corr{k}の算出において伸張/圧縮を描写するために用いられてよい。
【0036】
画像撮影モード
過度の負荷がかかっているセンサ素子を識別するための本発明に係る処置は、画像撮影モードが異なる場合、特に試料スキャン方法が様々な場合と広視野撮影の場合に適している。
【0037】
いくつかの実施形態では、照明光で試料をスキャン/走査し、その間に光子計数センサ素子が連続して計数値を取り込む。この場合少なくとも1つの照明ポイント(照明スポット)が試料上に生成され、照明スポットは連続して、被検査の試料領域を巡回する。しばしばエアリスキャンとも呼ばれるイメージスキャニング顕微鏡法では、隣り合うセンサ素子の距離(1つのセンサ素子の中心から隣り合うセンサ素子の中心までを測定して)は、1エアリ(1AU、エアリユニット)よりも小さい。1エアリは、試料平面の1つの点が上に写像される画像平面での回折ディスクのサイズである。この場合センサ素子は、画像平面に設けられている。1つのエアリのサイズは検出PSFによって決定され、当該検出PSFは、たとえばガウス関数の形あるいはよく知られた回折ディスクの関数状の形を有してよい。それで、照らされる試料ポイントは、検出PSFに従って複数の光子計数センサ素子に写像され、中心のセンサ素子は、外側のセンサ素子よりも多くの光を受ける。それゆえ、過度の負荷がかかっていない参照計数値度数分布は、たとえば1つあるいは複数の外側のセンサ素子の計数値から形成されてよい。それから、画像中心部の飽和したセンサ素子は、計数値度数分布を比較することによって、認識され得る。
【0038】
類似する画像撮影モードは、共焦点(レーザー)スキャニング顕微鏡法である。この場合、同時に測定された複数あるいはすべてのセンサ素子の計数値が統合されて、目下照らされている試料ポイントに起因する試料ポイント信号が生成される。
【0039】
代替的に、照明光を試料に送ることによって、広視野照明が提供されてもよい。上述のエアリスキャンの場合のように、試料ポイントが複数のセンサ素子に写像されるよう、センサ素子が互いに近接して集まっていてよい。特に、結果として生じるセンサ素子の解像度が、ナイキスト基準相当と少なくとも同じ高さ、特に少なくとも2倍の高さになるように、センサ素子が互いに近接して集まっていてよい。これによって、広視野照明の場合でも、計数値度数分布の比較が可能になる。なぜならば、隣り合うセンサ素子は非常に類似した画像内容を測定し、差異は主に過飽和に起因するからである。この場合意図されていてよいのは、参照計数値度数分布を1つだけ用いるのではなく、類似する画像情報を受信する複数の隣り合うセンサ素子の1つのグループのためにそれぞれ、それぞれの参照計数値度数分布を利用するということである。
【0040】
照明光を試料に送ることによって、広視野照明が提供されれば、上述の特徴に付加的あるいは代替的に、時系列測定も実行できる。時系列測定においては、同一の試料領域が照らされる間、異なる照明設定および/あるいは検出設定、あるいは常に同一の照明設定および/あるいは検出設定を連続して行うことができ、1つあるいは複数の計数値度数分布のための計数値を連続して取り込むことができる。計数値度数分布はそれぞれ、隣り合うセンサ素子の計数値から、および/あるいは同一のセンサ素子によって連続して取り込まれた計数値から形成されてよい。照明設定および/あるいは検出設定は、たとえば試料に到達する照明光強度あるいは照明光出力、センサ素子に当たる光出力に影響するフィルタ設定および/あるいはセンサ素子の感度設定(それによって、衝突する光子が記録される可能性が変化する)が異なっていてよい。これによってセンサ素子は、大きさが異なる計数値を時系列測定において取り込み、当該計数値は、同一の試料ポイントに起因するが、異なる照明設定および/あるいは検出設定によって異なったものになっている。
【0041】
過度の負荷がかかっているセンサ素子の識別時の追跡行動
1つあるいは複数のセンサ素子に過度の負荷がかかっていると識別されると、一方では利用者に対して、たとえば照明光出力が高すぎるという注意によって、適当なアウトプットが行われてよい。付加的あるいは代替的に、さらなる行動が自動的に実行されてよい。
【0042】
センサ素子に過度の負荷がかかっていると識別されると行動が実行されることが以下に記述される場合、これには、所与の最小数のセンサ素子あるいは付随する計数値度数分布に過度の負荷がかかっていると識別された場合にのみ、その行動が実施されるという変形形態も含まれることになる。
【0043】
特に、取り込まれたセンサ素子の計数値すなわち取り込まれた計数値の少なくとも一部から、結果画像が算出されてよい。過度の負荷がかかっていると識別されるセンサ素子の計数値はここに加えられ得ないか、あるいは、結果画像の算出に加えられる前に、少なくとも数学的に修正され得る。画像濃淡値の改竄を回避するために意図されていてよいのは、過度の負荷がかかっていると識別されたセンサ素子によって取り込まれる計数値すべてを拒否し、結果画像の算出に加えないことである。数学的に修正する場合には、過度の負荷がかかっていると識別されたセンサ素子のすべての計数値が該当してよいか、あるいは上限値を超えた計数値の一部だけが該当してよい(過度の負荷がかかっていると識別されたセンサ素子のより小さい計数値はおそらく、飽和には襲われていないため)。数学的な修正のために、たとえば過度の負荷がかかったセンサ素子の計数値を、隣り合う(過度の負荷がかかっていない)センサ素子の外挿計数値と置換してよい。外挿法は、検出PSFを考慮した上で、かつ特に、それぞれの計数値度数分布の平均的な計数値に応じて行われてよい。隣り合うセンサ素子の計数値から1つの計数値を導き出す場合には、外挿法の代わりに内挿法を持ち出してもよい。
【0044】
代替的に、センサ素子に過度の負荷がかかっていると識別される場合には、変更された顕微鏡設定で、試料検査(/画像撮影)が繰り返されてもよい。その際意図されていてよいのは、過度の負荷がかかっていると識別されたセンサ素子の数に応じて、数学的な修正が実行されるか、あるいは、数学的な修正なしに、変更された顕微鏡設定で試料検査が繰り返されることである。この場合顕微鏡設定は、当たる光出力がセンサ素子ごとに小さくなるように、変更される。たとえば、照明光源の光強度を低下させてよく、および/あるいは検出光路におけるズーム光学系を調節してよいので、検出光の光線断面は、センサ素子に衝突する際に大きくなっている。
【0045】
制御ユニットは、変更された顕微鏡設定に基づいて、かつ、所与の目標画像品質に任意的に基づいて、試料検査が繰り返される場合に感光時間をどのくらい延長するかを算出できる。感光時間はスキャン時には、ほぼ同一の試料ポイントが照らされるピクセル滞在時間であってよい。これによって、センサ素子に当たる光出力が低下しても、十分な画像品質が達成される。
【0046】
試料検査が繰り返される場合になおもセンサ素子に過度の負荷がかかっていると識別されるならば、過度の負荷がかかっているセンサ素子がないと識別されるまで、あるいは過度の負荷がかかっているセンサ素子は所与の最大数以下と識別されるまで、当たる光出力を低下させて任意的に感光時間を上げるための前述のプロセスを繰り返してよい。
【0047】
上述のスキャン方法は、マルチスポット照明によって実行に移されていてもよい。この場合照明光は、複数の照明ポイントの形で試料にわたってスキャンする。照明ポイントは任意的に、試料の同一の領域を連続して走査してよい。様々な照明ポイントに起因する検出光は、たとえば既述のセンサ素子の複数のアレイによって、単独で検出される。これらのアレイは、センサ素子のより大きな1つのアレイの隣り合う一部であってもよい。前記の計数値度数分布は、第1の照明ポイントに起因する。既述のような過度の負荷が確認される場合(すなわち第1の照明ポイントに関して)、意図されていてよいのは、それ以外の照明ポイントに関する顕微鏡設定を変更して、当たる光出力が、それぞれの照明ポイントに属するセンサ素子ごとに低下するようにすることである。このやり方で、さらなる照明ポイントに関する過度の負荷を回避できる。好適にはこの場合、第1の照明ポイントで試料のスキャンがまだ行われている間に、すでに過度の負荷の識別が行われる。
【0048】
いくつかの実施形態では、過度の負荷がかかっているセンサ素子がないと識別された場合、あるいは過度の負荷がかかっているセンサ素子は所与の最大数以下と識別された場合、計数値から算出される画像品質が、所与の目標画像品質に達しているかどうかが、検査される。画像品質は、計数値から直接的にあるいは、計数値から形成される結果画像から算出されてよい。たとえば信号対ノイズ比(SNR)が画像品質として算出されてよく、所与の目標画像品質は目標SNRである。所与の目標画像品質に達しない場合、変更された顕微鏡設定で新たな画像撮影が行われる。変更された顕微鏡設定によって、センサ素子ごとにより高い検出光強度あるいは、より長い感光時間特に試料をスキャンする場合のより長いピクセル滞在時間がもたらされる。たとえば、照明光源の出力を上げることができ、光路のフィルタをそれに応じて調節でき、あるいはズーム光学系が検出PSFのサイズを変更できる。照明光がよりゆっくりと試料上を移動することによって、ピクセル滞在時間を延ばすことができる。これによって同じ効果がもたらされて、照明光でも同一の試料領域を何度も連続して走査できる。新たな画像撮影で測定される計数値に対して、センサ素子に過度の負荷がかかっていたかどうかと、目標画像品質が達成されたかどうかが、計数値度数分布を介して再度算定される。目標画像品質がなおも達成されなかった場合、顕微鏡設定が上述のように再び変更される。
【0049】
望ましい目標画像品質の他に、できる限り迅速な測定が達成されるべきである。このために意図されていてよいのは、まず照明光強度は高めるがピクセル滞在時間は長くせずに、新たな画像撮影を行うことである。この新たな画像撮影の際に、センサ素子に過度の負荷がかかっていると識別される場合にのみ、照明光強度を再び低下させその代わりにピクセル滞在時間を延長させてさらなる画像撮影が行われる。この場合目標画像品質が達成されないと、ピクセル滞在時間をさらに長くし、照明光強度をそれ以上高くしない新たな画像撮影が再度行われる。
【0050】
光子計数センサ素子はたとえば、PMT(光電子増倍管)もしくはマルチアノードPMTによって形成されていてよい。代替的に光子計数センサ素子は、SPAD素子(単一光子アバランシェダイオード)であってよい。試料平面が写像されて、検出光を光子計数センサ素子に転送する繊維束が備わっていてもよい。SPAD素子は、自由荷電体のない空乏領域が存在する半導体化合物を含んでよい。降伏電圧より上の電圧が、化合物に印加される。光子が吸収されると、空乏領域に自由電荷を発生させかねず、結果として電荷雪崩が引き起こされかねず、当該電荷雪崩はダイオードにわたって広がり、光子計数値として検知される。それゆえ光子計数センサ素子は、記録された光子数に相当する離散計数値をアウトプットする。複数のセンサ素子が一緒になって、1つのSPADアレイとして形成されていてよく、当該SPADアレイは、たとえばCMOS技術もしくはCMOS準拠のプロセスにおいて、光子計数アレイとして製造されていてよい。この開示において挙げられたセンサ素子は、1つあるいは複数の当該アレイによって形成されていてよい。
【0051】
センサ素子の飽和が起こらない限り、記録された光子数(計数値)は、衝突する光子数に比例する。それで光子伝達曲線は、線状の経過を有する。しかしながら、衝突する光子数が多い場合には、いくつかの光子はセンサ素子に到達するが、他方で前の光子の記録後にセンサ素子は無駄時間内にある。それによって、衝突する光子が記録されないので、光子伝達曲線は、衝突する光子数の増加で平らになる。飽和は、記録された光子数が、線状の光子伝達曲線から最小値分偏差することによって定義されていてよい。従って、最小値が10%の場合、計数値もしくは計数率が、目下衝突する光子率で、線状の光子伝達曲線によって予測される値から10%以上相違していれば、飽和状態と呼ばれる。
【0052】
能動的に抑制する場合すなわちSPAD素子の動作電圧を能動的に回復させる場合、光子伝達曲線は漸近的に平らになる。これに対して受動的に抑制する場合には、衝突する光子は無駄時間の間、動作電圧の回復のために必要な時間が長くなってしまう。無駄時間が長くなると、衝突する光子数の増加で飽和になれば、記録される光子の数が減ってしまうという結果になる。
【0053】
上述のセンサ素子は、共通のセンサのピクセルであってよい。このセンサは、さらなるセンサ素子を含んでもよく、当該センサ素子の測定値は、必ずしもその他のセンサ素子について記述されたように処理される必要はない。その上上述のセンサ素子は、複数のセンサの一部であってよい。特にマルチスポット照明の場合には、たとえば、測定値が記述されたやり方で判定されるそれぞれのセンサ素子を含む複数のセンサが備わっていてよい。
【0054】
制御ユニットは原則的に、任意の計算装置であってよく、当該計算装置は場所が分散されて、あるいは代替的に1つの機器あるいは1つのアセンブリによって形成されていてよい。たとえば、制御ユニットはコンピュータ、プロセッサ、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)あるいは別のプログラム可能なアセンブリによって形成されていてよく、または、上述のコンポーネントの1つあるいは複数を含んでよい。1つあるいは複数のFPGAあるいは別のプログラム可能なアセンブリは、特にセンサと接続されていてよく、あるいは、センサ素子を含むセンサの一部として構成されていてよい。
【0055】
本発明の光学顕微鏡の実施形態は、記述された方法の変形形態を実施するために設備されていてよい。計算処理と制御処理、たとえば計数値度数分布に関するステップとそれに応じた顕微鏡設定の制御が、光学顕微鏡の制御ユニットによって行われてよい。特に制御ユニットは、ここで記述された方法あるいはその方法のステップが実装されているFPGAあるいは別のプログラム可能なアセンブリを含んでよい。これによって、全自動化された進行を行うことができ、あるいは代替的に、少なくとも、センサ素子の制御と計数値の処理、特に独立方法請求項の特徴部分の特徴に関する方法ステップを自動化して実施することができる。逆のやり方で、本発明に係る光学顕微鏡の記述された実施形態を規定通り使用すれば、本発明に係る方法の変形形態ももたらされる。数値および、数字の関連で用いられる「ほぼ」あるいは「約」といった表現は、正確な関連性もしくは数値、および/あるいは10%までの偏差が含まれていることと理解され得る。
【0056】
本発明のさらなる利点と特徴は、添付の概略図に関連して、以下に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本願が開示する光学顕微鏡の一実施例の概略図である。
図2図1のセンサの概略図である。
図3図1の光学顕微鏡のセンサ素子の計数値度数分布の棒グラフである。
図4図3図5図7の棒グラフの計数値度数分布から算出された棒グラフである。
図5図1の光学顕微鏡のセンサ素子の計数値度数分布の棒グラフである。
図6図3図5図7の棒グラフの計数値度数分布から算出された棒グラフである。
図7図1の光学顕微鏡のセンサ素子の計数値度数分布の棒グラフである。
図8図3図5図7の棒グラフの計数値度数分布から算出された棒グラフである。
図9】本願の開示内容に従った方法の一実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
同じ部材や同じ作用がある部材は、図において通例、同一の符号が付されている。
【0059】
図1は、光学顕微鏡100の一実施例を示している。この光学顕微鏡は光源10たとえば1つあるいは複数のレーザーを含み、当該光源10は、スキャナ25と任意の光学素子23、24と対物レンズ30とを介して、被検査の試料35が設けられ得る試料平面に送られる照明光12を放射する。スキャナ25のスキャン動作によって、照明光12は、様々な光路12A、12Bに沿って連続して送られて、試料35を走査する。検出光15たとえば蛍光ライトは、試料35から出てきて、対物レンズ30と光学素子24、23とスキャナ25とを介して送られる。光学顕微鏡100はさらにビームスプリッタ22を含み、当該ビームスプリッタ22は、たとえば波長に応じて照明光12を反射させ、検出光15を透過させるかあるいはその逆を行う。ビームスプリッタ22の後に検出光15は、さらなる任意の光学素子27、28、29を介して、センサ60に到達する。概略的に示された制御ユニット70は、光源10とスキャナ25とセンサ60とを制御する。
【0060】
センサ60は、図2において拡大して示されており、複数の光子計数センサ素子61ここでは例としてSPAD素子を含む。目下のスキャナポジションに従って照らされる試料ポイントから出てくる検出光は、検出PSFに対応して検出光スポット16として、検出平面/画像平面に写像される。図2の例においては、検出光スポット16は、すべてのセンサ素子61にわたって広がっている。原則的に各センサ素子61は、スキャンプロセスの間、照らされる様々な試料ポイントに起因する複数の計数値を連続して取り込むことができる。代替的に複数のセンサ素子61は、グループ65A、65B、65C、65Dに統合されてよく(「ビニング」)、同一グループのセンサ素子の計数値が統合される。
【0061】
検出PSFもしくは検出光スポット16は、複数のセンサ素子61にわたって広がっているので、センサ素子は、ほんの僅かだけ互いに変位している非常に類似した画像情報を測定する。しかしながらセンサ素子61の計数値は、検出PSFの経過に基づいて、非常に異なっている。たとえば検出PSFは、中心のセンサ素子61(たとえばグループ65Cと65Dのセンサ素子)が外側のセンサ素子61(たとえばグループ65Aのセンサ素子)よりも強い検出光を受けるガウス曲線形状を有してよい。
【0062】
光子計数センサ素子61が衝突する光子を記録すると、短い無駄時間が生じ、この間このセンサ素子61は、衝突するさらなる光子を測定できない。それゆえ、検出光強度が高いと、センサ素子61の飽和/過度の負荷に脅かされる。そうなれば、測定された計数値は、衝突する光子数にもはや比例しない。それゆえ、計数値から試料の画像(=結果画像)/試料画像が算出されると、個々のセンサ素子の飽和によって、誤った画像情報がもたらされる。
【0063】
本発明によって、そのような飽和が認識される。このために利用されるのは、複数のセンサ素子61はほぼ同じ画像内容を測定するが、検出PSFの経過にほぼ基づいて、高さの異なる検出光強度に当てられるということである。複数のセンサ素子61の計数率を比較して著しい差異が出る場合、飽和を指摘しているのかもしれない。飽和したセンサ素子を識別するための本発明に係る措置は、図3から図8に関連して記述される。
【0064】
図3は、濃淡値の度数もしくはセンサ素子61あるいはセンサ素子のグループ65Aの計数値xの度数を示す計数値度数分布81の棒グラフを示している。見やすいように、計数値度数分布81の計数値がより大きい半分だけが示されている。計数値は、試料スキャンの間、様々な試料ポイントで取り込まれていてよい。横座標は計数値xを特徴付けており、縦座標はそれぞれの計数値が測定された度数を示している。
【0065】
その上図3は、参照計数値度数分布80のさらなる棒グラフ(参照棒グラフ)を示しており、当該棒グラフは、別のセンサ素子61あるいはセンサ素子の別のグループ65Bによって、試料スキャンの間に取り込まれた計数値の度数を示す。参照計数値度数分布80として、測定の間全く飽和しなかったかあるいは少なくとも飽和が非常に稀であったのが確実な1つの計数値度数分布が用いられるが、これについては別の箇所でより詳細に説明されている。
【0066】
2つの計数値度数分布80、81の形状を互いにより良好に比較できるようにするために、まずは被分析の計数値度数分布81のリスケーリングが行われる。このために、フィット関数91が計数値度数分布81に適合され、フィット関数90が参照計数値度数分布80に適合される。フィット関数91、90は同じものであり、表わされた例においてはf(x)=f0*exp(-x/c)であり、xは計数値を示す。図3の指数関数軸表記では、f(x)は傾きが-1/cで縦座標の軸切片がf0の直線に相当する。関数適合によって、計数値度数分布80と参照計数値度数分布81のためのフィットパラメータf0とcの値が算定される。フィットパラメータの算定された値から、計数値度数分布80をどのように変形させるべきかが算出されて、それによって新たな関数適合の際に、参照計数値度数分布81とほぼ同一のフィットパラメータ値が達成されるようにする。この変形の結果は、図4に示されている。
【0067】
図4は、図3のフィット関数90が付随する参照計数値度数分布80の参照棒グラフを示している。図3の被分析の計数値度数分布81は、記述されたように変形されており、この変形された計数値度数分布81Bの棒グラフは、図4に表わされている。フィット関数90は、計数値度数分布81Bへの適合時に算定され得るフィット関数91Bとほぼ同じである(フィット関数91Bの算出は必要ではなく、ここでは単により理解しやすいように挙げられているだけである)。2つの計数値度数分布80、81Bは、統計学的な変動を除いてほぼ一致することが、認識できる。それに従えば、計数値度数分布81の計数値の取り込み時に、センサ素子の飽和による大きな影響には至らなかった。
【0068】
別の例が、図5に示されている。これは再度、参照計数値度数分布80に適合されたフィット関数90を有する参照計数値度数分布80の参照棒グラフを示している。その上、別のセンサ素子61あるいは別のグループ65Cの計数値によって形成されている被分析の計数値度数分布82のさらなる棒グラフが示されている。フィット関数92は、計数値度数分布82に適合され、続いて計数値度数分布82は、上で記述されたように変形される。その結果は、図6に示されている。
【0069】
図6において、参照計数値度数分布80の参照棒グラフと、変形された被分析の計数値度数分布82Bの棒グラフとの間の偏差、特に計数値が約150の値を超えて極めて大きい場合の偏差が認識できる。この差異はほとんど、計数値度数分布82の計数値を取り込む際のセンサ素子の飽和に因るものである。それゆえ、参照計数値度数分布80を計数値度数分布82Bと比較すれば、この飽和が明示される。
【0070】
量的には比較は、たとえば、数式3として定義され得る相関係数Rの算出によって行われてよい。
R = covar(Hn, Hr,) / (stdev(Hn)*stdev(Hr))
この場合Hnは、リスケーリング後の被分析の計数値度数分布82Bを意味し、Hrは参照計数値度数分布80を意味する。完全に一致する場合、R=1になる。それゆえ、限界RGを確定でき、当該限界RGは、たとえば0.95あるいはより一般的には0.92から0.97の間の値であってよい。R<Rであれば、計数値度数分布82は、飽和している/過度の負荷がかかっていると、識別される。
【0071】
特に明確にセンサ素子に過度の負荷がかかっていることは、図7図8との関連で図解される。図7は再度、適合されたフィット関数90を有する参照計数値度数分布80の参照棒グラフと、適合されたフィット関数93を有するさらなる被分析の計数値度数分布83の棒グラフとを示している。より見やすいように、ここでは、計数値度数分布83の計数値がより大きい部分だけが示されており、フィット関数93は、計数値度数分布83のすべての計数値、あるいは計数値の表わされた部分だけ、あるいは表わされた部分の計数値よりも大きい計数値に適合されていてよい。そこで、計数値度数分布83のリスケーリングが実行される。結果は、図8に示されている。参照計数値度数分布80のフィット関数90は、リスケールされた計数値度数分布83Bのフィット関数93Bと確かに一致するが、参照計数値度数分布80とリスケールされた計数値度数分布83Bとの間の差異、特に計数値が約100を超える場合の差異がはっきりと認識できる。この場合、相関係数Rの算出によって、明らかに限界RGを下回る値が出るので、付随するセンサ素子の飽和が想定される。
【0072】
この措置の進行と飽和の際に考えられ得る行動とは、図9に関連して以下に説明される。図9は、本発明に係る方法の一実施例のフローチャートを示している。
【0073】
ステップS1において、光学顕微鏡の制御ユニットは、利用者のデフォルトに応じて、顕微鏡設定を設定する。利用者のデフォルトは、たとえば対物レンズの選択、照明光および/あるいは検出光のための少なくとも1つのスペクトル帯、目標画像品質、たとえば目標SNRあるいは目標SBR(SBR:信号対バックグラウンド比)の値、および/あるいは解像と走査のためのパラメータおよび励起されるべき蛍光色素の指示を含む。制御ユニットによってセットされた顕微鏡設定は、たとえば照明光出力を含んでよく、および/あるいは試料スキャンの際にはピクセル滞在時間を含んでよい。対物レンズや色素についての情報から、制御ユニットは、センサ上の検出光スポットのサイズを算定し、システムズームを介してセンサ上のスポットサイズを設定できる。
【0074】
センサ素子ごとの最大の計数率は、制御ユニットに知られている。制御ユニットは、照らされるセンサ素子の数を、センサ上の算出されたスポットサイズから算出できる。これによって制御ユニットは、予期され得る平均的な計数率fPhotonsを決定でき、それによって、設定されるべきピクセル滞在時間Tpixelを目標SNRに従って、特にTpixel=SNR2/fPhotonsとして確定できる。
【0075】
これらの顕微鏡設定によって、ステップS2において試料画像が撮影される。たとえば、試料は照明光でスキャンされ、光子計数センサ素子がそれぞれ複数の計数値を検知する。それで各センサ素子によって、連続して走査された試料ポイントに属する複数の計数値がアウトプットされる。
【0076】
続いてステップS3において、それぞれ1つのセンサ素子あるいはセンサ素子のそれぞれ1つのグループの複数の計数値が、棒グラフデータとも呼ばれ得る計数値度数分布として統合される。この場合本発明は、棒グラフ形状の計数値度数分布のグラフ表示を必要としない。むしろ、計数値度数分布はたとえば表として存在してよい。図3から図8における棒グラフのグラフ表示は任意的なものであり、ほとんどより理解しやすくするためのものである。
【0077】
計数値度数分布の画像は、少なくとも1つの参照計数値度数分布の画像も含む。参照計数値度数分布の確定は、たとえば1つの計数値度数分布の計数値の大きさに応じて行われ得るので、参照計数値度数分布は、飽和が存在しかねない過度に大きな計数値を含んでいないが、しかし、記録されたわずかな検出光出力に対応して、測定精度もしくはSNRが小さいであろう小さな計数値だけを含むわけでもない。参照計数値度数分布を算定するために、比較的低い照明光強度で最初の画像撮影を行い、続いてより高い照明光強度でさらなる画像撮影を行うことも可能であり、その際、被分析の計数値度数分布を形成する計数値が取り込まれる。それに従って、参照計数値度数分布と被分析の計数値度数分布は、同時にあるいは連続して取り込まれてよい。
【0078】
次にステップS4において、図3から図8でも記述されたように、計数値度数分布のリスケーリングと類似性の評価とが実行される。計数値度数分布の少なくとも1つ(あるいはより一般的には計数値度数分布の少なくとも1つの所与の数)にとって不十分な類似性が確認されるという結果であれば、該当する1つあるいは複数のセンサ素子に過度の負荷がかかっていると識別される。原則的に、これに関して情報を利用者にアウトプットすることで、本方法が終了してよい。
【0079】
しかし表わされた例において、計数値度数分布の類似性が不十分であれば、ステップS5が続き、当該ステップS5において、事前の測定時に生じたような過度の負荷を回避するために、顕微鏡設定が変更される。顕微鏡設定は照明設定および/あるいは検出設定であり、より弱い照明光が試料に当たるように、および/あるいはセンサ素子ごとの衝突する光子数が減るように、変更される。たとえば、光源あるいはフィルタを適当に制御することによって、試料に当たる照明光出力を下げることができる。過度の負荷がかかっていると識別された少なくとも1つのセンサ素子の感度を下げてもよい。代替的に、ズーム光学系によって、センサ上の検出光スポットのサイズを拡大できるので、より多くのセンサ素子にわたって検出光が分散される。続いて再びステップS2からS4が続き、すなわち新たな画像撮影が行われ、リスケールされた計数値度数分布が参照計数値度数分布に類似しているかどうかが、S4において再び検査される。
【0080】
類似していれば、ステップS7が続く。このステップにおいて、計数値もしくは計数値から形成される結果画像が、所与の目標画像品質に達しているかどうかが、検査される。目標画像品質は、たとえば所与のSNR値であってよい。SNR値は、光子計数値度数からあるいは原則として既知のやり方で結果画像から算出されてよい。
【0081】
目標画像品質に達しなければ、本方法はステップS8に移行する。顕微鏡設定が変更されて、新たに撮影された画像の画像品質がより高いものになる。たとえば、照明光出力あるいはピクセル滞在時間を上げる。この後に、再度ステップS2からS7が続く。
【0082】
ステップS7において、目標画像品質が達成されたことが確認されると、ステップS9において、最後に取り込まれた計数値から形成される結果画像がアウトプットされる。これでもって本方法は、終了する。
【0083】
任意の一形態においては、これまでの進行で、照明光出力の低下を伴うステップS5が実行されなかった場合、ステップS8において照明出力が上げられる。さもなければ、ステップS4の次の実施の際に類似性が否定されてしまう可能性がある。これまでの進行で照明光出力が、ステップS5において低下されていれば、S8においてピクセル滞在時間が延長される。
【0084】
任意のさらなる一形態においては、ステップS4において不十分な類似性が確認された場合、必ずしもステップS5が行われるわけではない。むしろ、判定基準に応じて、ステップS5かステップS6のどちらかが実施される。ステップS5を実施するための判定基準はたとえば、所定の最小数の計数値度数分布が、S4において類似性を否定されることであってよい。これに対して、所与の最小数よりも少ない計数値度数分布が類似性を否定される場合、ステップS6が続く。別の判定基準は、S2‐S3‐S4‐S5の循環が所定の数繰り返された場合、S4において類似性が否定されると、次のステップとしてS5の代わりにS6が続くことであってよい。
【0085】
任意のステップS6において、S4で類似性が否定された計数値度数分布が選び出され、置換され、あるいは修正される。たとえば、これらの計数値度数分布は、隣り合うセンサ素子の外挿計数値と置換されてよい。この後に、ステップS7が続く。
【0086】
方法ステップは、試料をスキャンする手段による画像撮影について、図解で記述された。同様に方法ステップは、スキャンせずに広視野照明での画像撮影でも行われてよい。広視野照明の場合には、図1において、スキャナ25が無くてよい。光学素子が図1において補足されていてよく、表わされた光学素子も原則的に無くても構わない。その上、表わされたデスキャンされた構造体は、例示的なものに過ぎない。照明光と検出光は、同一の対物レンズ30を介して送られる必要はなく、その場合には、ビームスプリッタ22が無くてよい。照明光12と検出光15のための共通のスキャナが、照明光12のためのスキャナと検出光のための別個のスキュナとに置換されてもよい。
【0087】
共焦点測定の際に、ピンホールストップが補足されていてよい。しかしこれは強制ではない。なぜなら、センサ素子がデジタルピンホールストップとして、あるいは任意的にセンサ素子の前に設けられた光ファイバーがピンホールとしての機能を果たしてよいからである。
【0088】
記述されたやり方で、過度の負荷がかかっているセンサ素子を効率的に識別できる。過度な負荷を回避し、かつ、同時に十分高い画像品質を達成する新たな画像撮影を、自動化して実行するために、適切な処置を実行できる。
【符号の説明】
【0089】
10 光源
12 照明光
12A、12B スキャナ25の目下の設定に対応する光路
15 検出光
16 センサ60上の検出光スポット
22 ビームスプリッタ
23、24、27、28、29 光学素子
25 スキャナ
30 対物レンズ
35 試料
60 光子計数センサ素子61を含むセンサ
61 光子計数センサ素子
65A-65D 統合されたセンサ素子61のグループ
70 制御ユニット
80 参照計数値度数分布
81-83 被分析の計数値度数分布
81B-83B リスケールされた被分析の計数値度数分布
90、91-93、91B-93B 計数値度数分布に対するフィット関数
100 光学顕微鏡
S1-S9 方法ステップ
x 光子計数センサ素子の計数値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9