(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】スカーフ加工装置
(51)【国際特許分類】
B27D 1/10 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B27D1/10 B
(21)【出願番号】P 2023543645
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005248
(87)【国際公開番号】W WO2023026516
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2021137079
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155182
【氏名又は名称】株式会社名南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【氏名又は名称】福山 正寿
(72)【発明者】
【氏名】井上 慎也
(72)【発明者】
【氏名】二宮 通人
(72)【発明者】
【氏名】小池 恭弘
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】実公昭44-024239(JP,Y2)
【文献】特開2009-073202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27D 1/00 - 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単板を搬送しながら該単板の繊維方向の第1端部にスカーフ面を加工するスカーフ加工装置であって、
フレームと、
前記第1端部が突出した状態、かつ、突出した該第1端部が前記単板の搬送方向に延在する態様で前記単板を保持可能な保持部を有し、前記搬送方向に移動可能に前記フレームに配置された保持搬送部と、
前記スカーフ面を加工可能な切削刃を有し、前記搬送方向の一方側から見たときの第1仮想投影面上における前記第1端部の投影と前記切削刃の投影とが交差する位置関係となるよう前記単板の搬送経路の途中に配置された加工部と、
少なくとも前記第1端部と前記切削刃とが最初に接触する接触位置において前記第1端部を載置可能な載置部を有し、少なくとも前記接触位置,および,該接触位置に関して前記搬送方向の上流側かつ該接触位置に隣接した押圧位置において、前記第1端部を前記搬送方向に搬送可能な第1端部搬送部と、
前記押圧位置において前記第1端部を前記載置部に向けて押圧可能なように、鉛直方向の一方側から見たときの第2仮想投影面上における前記載置部の投影領域の内側に少なくとも一部が配置された押圧部と、
を備えるスカーフ加工装置。
【請求項2】
前記第1端部搬送部は、前記載置部としての無端状ベルトを有するコンベヤであり、
前記無端状ベルトは、前記第1端部を載置可能な第1面と、該第1面と対をなす第2面と、を有しており、
前記第1端部は、前記第1面に当接可能な第3面と、該第3面と対をなす第4面と、を有しており、
前記押圧部は、前記第4面に当接可能かつ前記第1面に対向配置された第1当接部を有しており、
押圧可能状態にある前記押圧部の前記第1当接部の前記第1仮想投影面上における投影から該第1仮想投影面上における前記第1面の投影までの第1距離は、前記第1端部の板厚以下である
請求項1に記載のスカーフ加工装置。
【請求項3】
少なくとも前記接触位置において前記第1端部を支持可能なよう前記搬送方向の一方側から見たときに、前記第1端部搬送部に関して前記保持部とは反対側であって、前記第1端部搬送部に隣接した位置に配置された支持部をさらに備え、
前記押圧部は、前記第4面に当接可能な第2当接部をさらに有しており、
前記支持部は、前記第3面に当接可能かつ前記第2当接部に対向配置された第3当接部を有しており、
押圧可能状態にある前記押圧部の前記第2当接部の前記第1仮想投影面上における投影から該第1仮想投影面上における前記第3当接部の投影までの第2距離は、前記第1端部の板厚以下である
請求項2に記載のスカーフ加工装置。
【請求項4】
前記コンベヤは、前記無端状ベルトが巻き掛けられた第1プーリと、前記第1プーリを回転可能に該第1プーリに接続されたモータと、を有しており、
前記第1プーリは、前記第1面に当接可能であり、
前記第1プーリと前記第1面との間の摩擦係数は、前記第1プーリと前記第2面との摩擦係数よりも大きい
請求項2または3に記載のスカーフ加工装置。
【請求項5】
前記押圧部は、前記第1当接部を有する第1押圧部と、前記第2当接部を有する第2押圧部と、を備えている
請求項3または請求項3に従属する請求項4に記載のスカーフ加工装置。
【請求項6】
少なくとも前記接触位置において前記第1端部を支持可能なよう前記搬送方向の一方側から見たときに、前記第1端部搬送部に関して前記保持部とは反対側であって、前記第1端部搬送部に隣接した位置に配置された支持部をさらに備え、
第1端部搬送部は、前記載置部としての外周面を有する円板体と、該円板体を回転可能な駆動部と、を有しており、
前記第1端部は、前記外周面に当接可能な第5面と、該第5面と対をなす第6面と、を有しており、
前記押圧部は、前記第6面に当接可能な第4当接部および第5当接部を有しており、
前記支持部は、前記第5面に当接可能な第6当接部を有しており、
前記第4当接部は、前記外周面に対向配置されており、
前記第5当接部は、前記支持部に対向配置されており、
押圧可能状態にある前記押圧
部の前記第4当接部の前記第1仮想投影面上における投影から該第1仮想投影面上における前記外周面の投影までの第3距離は、前記第1端部の板厚以下であり、
押圧可能状態にある前記押圧部の前記第5当接部の前記第1仮想投影面上における投影から該第1仮想投影面上における前記第6当接部の投影までの第4距離は、前記第1端部の板厚以下である
請求項1に記載のスカーフ加工装置。
【請求項7】
前記円板体は、前記外周面に凹凸を有する請求項6に記載のスカーフ加工装置。
【請求項8】
前記保持搬送部および前記第1端部搬送部を制御する制御部をさらに備えており、
前記制御部は、前記保持搬送部の前記搬送方向の移動速度に基づいて前記第1端部搬送部による前記第1端部の搬送速度を決定し、決定した該搬送速度で前記第1端部が搬送されるよう該第1端部搬送部を制御する
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のスカーフ加工装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1端部が前記接触位置に到達するまでは前記第1端部搬送部による前記第1端部の搬送速度が前記保持搬送部による前記単板の搬送速度よりも遅くなるよう前記第1端部搬送部を制御する
請求項8に記載のスカーフ加工装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1端部が前記接触位置に到達した後は、前記第1端部搬送部による前記第1端部の搬送速度が前記保持搬送部による前記単板の搬送速度よりも速くとなるよう前記第1端部搬送部を制御する
請求項8または9に記載のスカーフ加工装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第1端部搬送部による前記第1端部の搬送速度が前記保持搬送部による前記単板の搬送速度と等しくなるよう前記第1端部搬送部を制御する
請求項8に記載のスカーフ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単板を搬送しながら当該単板の繊維方向の第1端部にスカーフ面を加工するスカーフ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-73202号公報(特許文献1)には、単板の繊維方向の両端部を支持可能な支持面を有する支持台と、単板の両端部にスカーフ面を加工可能に当該単板の両端部近傍に配置された丸鋸と、単板を支持面に押圧可能に丸鋸と単板とが最初に接触する接触部の近傍に配置された押圧部と、を備えるスカーフ加工装置が記載されている。
【0003】
当該スカーフ加工装置では、丸鋸と単板とが最初に接触する接触部の近傍において、単板の両端部が押圧部によって支持面に押圧された状態、即ち、単板の両端部のねじれや反り等のあばれを矯正した状態でスカーフ加工するため、良好なスカーフ面を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、生産性向上という観点から、単板を搬送しながら当該単板の両端部にスカーフ面を加工するスカーフ加工装置が提案されている。当該スカーフ加工装置においても、良好なスカーフ面を実現するために、上述した公報に記載のスカーフ加工装置のように押圧部を設けることが考えられる。しかしながら、単板を搬送しながら当該単板の両端部にスカーフ面を加工するスカーフ加工装置では、単板の両端部と押圧部および支持面との間に搬送方向とは反対方向の摩擦力が作用するため、例えば、単板の両端部が割れ目や裂け目を有していた場合、良好なスカーフ面を実現できない場合が生じる。即ち、単板の両端部と押圧部および支持面との間に生じる摩擦力が、単板の両端部の割れ目や裂け目を広げる方向に作用してスカーフ面が欠損したり、あるいは、割れ目や裂け目が広がった状態でスカーフ加工されることによりスカーフ未加工部が発生したり、割れ目や裂け目が広がった状態でスカーフ加工された後に、広がった割れ目や裂け目が単板の弾性によって元に戻ることによりスカーフ面が段差を有したりする場合があり、生産性向上と良好なスカーフ面の実現との両立という点において、なお改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、生産性向上と良好なスカーフ面の実現との両立に資する技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスカーフ加工装置は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明に係るスカーフ加工装置の好ましい形態によれば、単板を搬送しながら当該単板の繊維方向の第1端部にスカーフ面を加工するスカーフ加工装置が構成される。当該スカーフ加工装置は、フレームと、搬送方向に移動可能にフレームに配置された保持搬送部と、スカーフ面を加工可能な切削刃を有する加工部と、少なくとも第1端部と切削刃とが最初に接触する接触位置において第1端部を載置可能な載置部を有する第1端部搬送部と、鉛直方向の一方側から見たときの第2仮想投影面上における載置部の投影領域の内側に少なくとも一部が配置された押圧部と、を備えている。保持搬送部は、第1端部が突出した状態、かつ、突出した当該第1端部が単板の搬送方向に延在する態様で単板を保持可能な保持部を有している。加工部は、搬送方向の一方側から見たときの第1仮想投影面上における第1端部の投影と切削刃との投影とが交差する位置関係となるように単板の搬送経路の途中に配置されている。第1端部搬送部は、少なくとも接触位置および当該接触位置に関して搬送方向の上流側かつ当該接触位置に隣接した押圧位置において、第1端部を搬送方向に搬送可能である。そして、押圧部は、押圧位置において第1端部を載置部に向けて押圧可能である。
【0009】
ここで、本発明における「接触位置」は、典型的には、単板の第1端部と切削刃とが最初に接触したときの状態を、鉛直方向の一方側から見たときの仮想投影面上における当該第1端部の投影と切削刃の投影との交点を通る仮想直線であって、搬送方向に直交する仮想直交線の位置がこれに該当する。また、本発明における「接触位置に隣接した押圧位置」とは、接触位置そのものの他、接触位置と所定距離隔てた位置を好適に包含する。ここで、所定距離は、接触位置に近いほど望ましいが、例えば、単板の搬送方向の長さの半分以下の距離を含む概念である。なお、押圧位置が接触位置と所定距離隔てた位置に配置される態様には、押圧位置と接触位置との間に第3の物体(カバーなど)が配置される態様を好適に包含する。
【0010】
本発明によれば、単板のうちスカーフ面が加工される第1端部を第1端部搬送部によって、単板の搬送方向と同じ方向に搬送可能であるため、第1端部が押圧部によって押圧されることに起因して当該第1端部に搬送方向と反対方向に作用する摩擦力を低減することができる。これにより、第1端部が割れ目や裂け目を有する場合に、上述した摩擦力に起因する割れ目や裂け目を広げる方向、あるいは、過度に当該割れ目や裂け目を閉じる方向に作用するモーメントを低減することができる。この結果、スカーフ面の欠損や、割れ目や裂け目が広がった状態でスカーフ加工されることによるスカーフ未加工部の発生、あるいは、割れ目や裂け目が過度に閉じた状態でスカーフ加工され後に単板の弾性によって当該割れ目や裂け目が元に戻る(開く)ことにより生じるスカーフ面の段差などを良好に抑制することができる。
【0011】
なお、繊維方向に沿う方向の単板の寸法(搬送方向および単板の厚み方向の両方向に直交する方向における単板の寸法)が変更された場合、保持部からの第1端部の突出量が変化するが、当該突出量が増加する場合、従来のスカーフ加工装置、即ち、第1端部搬送部を有さないスカーフ加工装置では、第1端部の突出量の増加に基づいて加工部および押圧部を保持部から離れる方向(突出方向)に配置し直す必要がある。しかしながら、加工部および押圧部と保持部との距離、より具体的には、保持部から加工部および押圧部までの距離(搬送方向および単板の板厚方向の両方向に直交する方向の距離)が増加すると、上述したモーメントが増加してしまうため、保持部から加工部および押圧部までの距離が所定距離以下に維持されるように保持部の配置も変更する必要がある。この結果、スカーフ加工装置の改良の程度が増大してしまう。本発明によれば、上述したモーメントを低減することができるため、保持部から加工部および押圧部までの距離(搬送方向および単板の板厚方向の両方向に直交する方向の距離)を所定距離以下に維持する必要がなくなるため、加工部および押圧部を配置し直すのみで良く、スカーフ加工装置の改良の程度の増大を抑制できる。
【0012】
また、押圧部により第1端部を載置部に向けて押圧可能であるため、第1端部に発生するねじれや反り等のあばれを矯正した状態でスカーフ加工することができる。もとより、単板を搬送しながら第1端部にスカーフ面を加工するため、単板の搬送を一時停止した状態で第1端部にスカーフ面を加工する構造に比べて、生産性の向上を図ることができる。
【0013】
本発明に係るスカーフ加工装置の更なる形態によれば、第1端部搬送部は、載置部としての無端状ベルトを有するコンベヤである。無端状ベルトは、第1端部を載置可能な第1面と、当該第1面と対をなす第2面と、を有している。第1端部は、第1面に当接可能な第3面と、当該第3面と対をなす第4面と、を有している。押圧部は、第4面に当接可能かつ第1面に対向配置された第1当接部を有している。そして、押圧可能状態にある押圧部の第1当接部の第1仮想投影面上における投影から当該第1仮想投影面上における第1面の投影までの第1距離は、第1端部の板厚以下である。
【0014】
本形態によれば、押圧部によって第1端部を無端状ベルトに確実に押圧可能である。これにより、第1端部を搬送方向に確実に搬送することができるため、スカーフ面の欠損や、スカーフ未加工部の発生、スカーフ面の段差などが発生することをより確実に抑制することができる。
【0015】
本発明に係るスカーフ加工装置の更なる形態によれば、第1端部搬送部は、少なくとも接触位置において第1端部を支持可能なように搬送方向の一方側から見たときに、第1端部搬送部に関して保持部とは反対側であって、第1端部搬送部に隣接した位置に配置された支持部をさらに備えている。押圧部は、第4面に当接可能な第2当接部をさらに有している。支持部は、第3面に当接可能かつ第2当接部に対向配置された第3当接部を有している。そして、押圧可能状態にある押圧部の第2当接部の第1仮想投影面上における投影から当該第1仮想投影面上における第3当接部の投影までの第2距離は、第1端部の板厚以下である。本発明における「第1端部搬送部に隣接した位置」とは、第1端部搬送部に接する位置の他、第1端部搬送部と所定距離隔てた位置を好適に包含する。ここで、所定距離は、第1端部搬送部に近いほど望ましいが、例えば、第1端部搬送部と支持部との距離が第1端部搬送部と保持部との距離もよりも小さくなる範囲内の距離として規定される。なお、第1端部搬送部が支持部と所定距離隔てた位置に配置される態様には、第1端部搬送部と支持部との間に第3の物体が配置される態様を好適に包含する。
【0016】
本形態によれば、押圧部によって第1端部を無端状ベルトに確実に押圧可能であると共に、押圧部によって第1端部を支持部に確実に押圧可能である。これにより、第1端部を搬送方向に確実に搬送することができるため、スカーフ面の欠損や、スカーフ未加工部の発生、スカーフ面の段差などが発生することをより確実に抑制することができると共に、第1端部に発生するねじれや反り等のあばれを矯正した状態でスカーフ加工することができる。
【0017】
本発明に係るスカーフ加工装置の更なる形態によれば、コンベヤは、無端状ベルトが巻き掛けられた第1プーリと、第1プーリを回転可能に当該第1プーリに接続されたモータと、を有している。第1プーリは、第1面に当接可能である。そして、第1プーリと第1面との間の摩擦係数は、第1プーリと第2面との摩擦係数よりも大きい。
【0018】
本形態によれば、第1プーリの回転駆動力を無端状ベルトにより確実に伝達することができる。これにより、第1端部の搬送方向への搬送性能を向上することができる。
【0019】
本発明に係るスカーフ加工装置の更なる形態によれば、押圧部は、第1当接部を有する第1押圧部と、第2当接部を有する第2押圧部と、を備えている。
【0020】
本形態によれば、第1押圧部によって第1端部を無端状ベルトに確実に押圧可能である。これにより、第1端部を搬送方向に確実に搬送することができるため、スカーフ面の欠損や、スカーフ未加工部の発生、スカーフ面の段差などが発生することをより確実に抑制することができる。また、第2押圧部によって、第1端部を支持部に確実に押圧可能である。これにより、安定した状態で第1端部にスカーフ加工を施すことができるため、良好なスカーフ面を確保することができる。
【0021】
本発明に係るスカーフ加工装置の更なる形態によれば、少なくとも接触位置において第1端部を支持可能なよう搬送方向の一方側から見たときに、第1端部搬送部に関して保持部とは反対側であって、第1端部搬送部に隣接した位置に配置された支持部をさらに備えている。第1端部搬送部は、載置部としての外周面を有する円板体と、当該円板体を回転可能な駆動部と、を有している。第1端部は、外周面に当接可能な第5面と、当該第5面と対をなす第6面と、を有している。また、押圧部は、第6面に当接可能な第4当接部および第5当接部を有している。さらに、支持部は、第5面に当接可能な第6当接部を有している。また、第4当接部は、外周面に対向配置されている。第5当接部は、支持部に対向配置されている。押圧可能状態にある押圧部の第4当接部の第1仮想投影面上における投影から当該第1仮想投影面上における外周面の投影までの第3距離は、第1端部の板厚以下である。そして、押圧可能状態にある押圧部の第5当接部の第1仮想投影面上における投影から当該第1仮想投影面上における第6当接部の投影までの第4距離は、第1端部の板厚以下である。本発明における「第1端部搬送部に隣接した位置」とは、第1端部搬送部に接する位置の他、第1端部搬送部と所定距離隔てた位置を好適に包含する。ここで、所定距離は、第1端部搬送部に近いほど望ましいが、例えば、第1端部搬送部と支持部との距離が第1端部搬送部と保持部との距離もよりも小さくなる範囲内の距離として規定される。なお、第1端部搬送部が支持部と所定距離隔てた位置に配置される態様には、第1端部搬送部と支持部との間に第3の物体が配置される態様を好適に包含する。
【0022】
本形態によれば、押圧部によって第1端部を円板体の外周面に確実に押圧可能である。これにより、第1端部を搬送方向に確実に搬送することができるため、スカーフ面の欠損や、スカーフ未加工部の発生、スカーフ面の段差などが発生することをより確実に抑制することができる。また、押圧部によって第1端部を支持部に確実に押圧可能である。これにより、第1端部に発生するねじれや反り等のあばれを矯正した状態でスカーフ加工することができる。
【0023】
本発明に係るスカーフ加工装置の更なる形態によれば、円板体は、前記外周面に凹凸を有している。
【0024】
本形態によれば、外周面に凹凸を有さない円板体に比べて、外周面に凹凸を有する円板体の方が、当該円板体が回転する際に、円板体の外周面と第1端部との間に発生する摩擦力を大きくすることができるため、第1端部を搬送方向に確実に搬送することができる。これにより、スカーフ面の欠損や、スカーフ未加工部の発生、スカーフ面の段差などが発生することをより確実に抑制することができる。ここで「摩擦力」とは突き刺しを含む
【0025】
本発明に係るスカーフ加工装置の更なる形態によれば、保持搬送部および第1端部搬送部を制御する制御部をさらに備えている。そして、制御部は、保持搬送部の搬送方向の移動速度に基づいて第1端部搬送部による第1端部の搬送速度を決定し、決定した搬送速度で第1端部が搬送されるように第1端部搬送部を制御する。
【0026】
本形態によれば、第1端部搬送部による単板の第1端部の搬送方向への搬送速度を、保持搬送部による単板の搬送方向への搬送速度に基づいた速度とすることができる。これにより、第1端部の割れ目や裂け目を広げる方向のモーメントをより効果的に低減することができる。
【0027】
本発明に係るスカーフ加工装置の更なる形態によれば、制御部は、第1端部が接触位置に到達するまでは第1端部搬送部による第1端部の搬送速度が保持搬送部による単板の搬送速度よりも遅くなるように第1端部搬送部を制御する。
【0028】
本形態によれば、第1端部搬送部による第1端部の搬送速度が保持搬送部による単板の搬送速度よりも遅いため、第1端部が接触位置に到達するまでは、第1端部が搬送方向とは反対方向の摩擦力を受ける。当該摩擦力は、第1端部のうち搬送方向の下流側に割れ目や裂け目がある場合に、当該割れ目や裂け目を閉じる方向に作用する。これにより、割れ目や裂け目が広がった状態でスカーフ加工されることによるスカーフ未加工部の発生を抑制することができる。この結果、第1端部のうち搬送方向の下流側に割れ目や裂け目がある場合であっても、良好にスカーフ加工を行うことができる。
【0029】
本発明に係るスカーフ加工装置の更なる形態によれば、制御部は、第1端部が接触位置に到達した後は、第1端部搬送部による第1端部の搬送速度が保持搬送部による単板の搬送速度よりも速くなるように第1端部搬送部を制御する。
【0030】
本形態によれば、第1端部搬送部による第1端部の搬送速度が保持搬送部による単板の搬送速度よりも速いため、第1端部が接触位置に到達した後は、第1端部が搬送方向と同方向の摩擦力を受ける。当該摩擦力は、第1端部のうち搬送方向の上流側に割れ目や裂け目がある場合に、当該割れ目や裂け目を閉じる方向に作用する。これにより、割れ目や裂け目が広がった状態でスカーフ加工されることによるスカーフ未加工部の発生を抑制することができる。この結果、第1端部のうち搬送方向の上流側に割れ目や裂け目がある場合であっても、良好にスカーフ加工を行うことができる。
【0031】
本発明に係るスカーフ加工装置の更なる形態によれば、制御部は、第1端部搬送部による第1端部の搬送速度が保持搬送部による単板の搬送速度と等しくなるように第1端部搬送部を制御する。
【0032】
本形態によれば、第1端部に割れ目や裂け目がある場合であっても、搬送面からの摩擦力が当該割れ目や裂け目を過度に閉じる方向や開く方向に作用することを抑制できる。これにより、スカーフ面の欠損や、割れ目や裂け目が広がった状態でスカーフ加工されることによるスカーフ未加工部の発生、あるいは、割れ目や裂け目が閉じた状態でスカーフ加工され後に単板の弾性によって当該割れ目や裂け目が元に戻る(開く)ことにより生じるスカーフ面の段差などを良好に抑制することができる。この結果、第1端部に割れ目や裂け目がある場合であっても、良好にスカーフ加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、生産性向上と良好なスカーフ面の実現との両立に資するスカーフ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本実施の形態に係るスカーフ加工装置1を備えるスカーフ加工システムの構成の概略を示す構成図である。
【
図2】本実施の形態に係るスカーフ加工装置1の構成の概略を示す構成図である。
【
図3】本実施の形態に係るスカーフ加工装置1を長手方向に直交する側方から見た側面図である。
【
図4】本実施の形態に係るスカーフ加工装置1を長手方向の一方側から見た正面図である。
【
図5】挟持搬送部4の構成の概略を示す斜視図である。
【
図8】挟持バー28,28,29,29によって単板90が挟持された様子を示す説明図である。
【
図9】加工部6,7および支持台8,9の構成の概略を示す構成図である。
【
図10】押圧部56,57と丸鋸当接部54,55と無端状ベルトBLT,BLTとの位置関係を示す説明図である。
【
図11】丸鋸当接部54,55と補助コンベヤ60,62と挟持バー28,29との位置関係を示す説明図である。
【
図12】単板90の押圧解除状態にある押圧部56,57を示す説明図である。
【
図13】補助コンベヤ60,62の構成の概略を示す構成図である。
【
図14】当接部58,59と,丸鋸当接部54,55の上面54a,55aと,無端状ベルトBLT,BLTの外側面OS,OSおよび内側面IS,ISと,載置面50a,52aと,単板90上面91および下面93と,の位置関係を示す説明図である。
【
図15】割れCr1,Cr2を有する単板90の平面図である。
【
図16】当接部158,159,258,259と,丸鋸当接部54,55の上面54a,55aと,無端状ベルトBLT,BLTの外側面OS,OSおよび内側面IS,ISと,載置面50a,52aと,単板90の上面91および下面93と,の位置関係を示す説明図である。
【
図17】変形例のスカーフ加工装置300の円板搬送機構360,362の構成の概略を示す構成図である。
【
図18】変形例のスカーフ加工装置400の円板搬送機構460,462の構成の概略を示す構成図である。
【
図19】変形例のスカーフ加工装置500の円板搬送機構560,562の構成の概略を示す構成図である。
【
図20】当接部58,59と,丸鋸当接部54,55の上面54a,55aと,円板361,363の外周面361a,363aと,単板90上面91および下面93と,の位置関係を示す説明図である。
【
図21】当接部58,59と,丸鋸当接部54,55の上面54a,55aと,円板461,463,561,563の外周面461a,463a,561a,563aと,単板90上面91および下面93と,の位置関係を示す説明図である。
【
図22】変形例の挟持搬送部604の外観を示す外観図である。
【
図23】変形例の挟持搬送部704の外観を示す外観図である。
【
図24】変形例の支持台8A,9Aの構成の概略を示す概略構成図である。
【
図25】変形例の支持台808A,809Aの構成の概略を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0036】
本発明の実施の形態に係るスカーフ加工装置1は、
図1に示すように、搬入コンベヤ80によって搬入される単板90の繊維方向FDの両端部90a,90bに、スカーフ面を加工すると共に、スカーフ面が加工された単板90を搬出コンベヤ82に搬出する装置として構成されている。スカーフ加工装置1は、
図2ないし
図4に示すように、長手方向を有するフレーム2と、当該フレーム2の長手方向に移動可能に当該フレーム2に配置された挟持搬送部4と、フレーム2の長手方向の途中に配置された一対の加工部6,7と、当該一対の加工部6,7の近傍に配置された一対の支持台8,9(支持台9は
図4参照)と、スカーフ加工装置1全体を制御する制御装置70と、を備えている。両端部90a,90bは、本発明における「第1端部」に対応し、「フレーム2の長手方向の途中」は、本発明における「前記単板の搬送経路の途中」に対応する実施構成の一例である。
【0037】
フレーム2は、
図1に示すように、単板90を搬送する搬送方向TDに長手方向を有している。フレーム2は、
図2に示すように、長手方向に延在する一対の上梁12a,12bおよび一対の下梁12c,12dと、当該一対の上梁12a,12bおよび一対の下梁12c,12dの長手方向の両端に接続されたベース体14a,14bと、を備えている。
【0038】
一対の上梁12a,12bの内側面(一対の上梁12a,12bが有する面のうち互いに向かい合う面)には、
図6に示すように、それぞれ上下一対のガイドレールR1,R1が配置されている(
図2も併せて参照)。また、一対の下梁12c,12dの内側面(一対の下梁12c,12dが有する面のうち互いに向かい合う面)にも同様に、それぞれ上下一対のガイドレールR2,R2が配置されている(
図2も併せて参照)。ガイドレールR1,R1,R2,R2は、
図2に示すように、上梁12a,12bおよび下梁12c,12dの長手方向の全域に亘って延在している。
【0039】
ベース体14a,14bは、基本的には同一形状を有している。ベース体14a,14bは、
図2および
図4に示すように、一対の脚部15a,15a,15b,15bと、当該一対の脚部15a,15a,15b,15bに接続された上梁16a,16bおよび下梁17a,17bと、から構成されている。換言すれば、ベース体14a,14bは、長手方向の一方側から見た場合に、略A字形状を有していると言うことができる。なお、ベース体14a側に搬入コンベヤ80が配置されると共に、ベース体14b側に搬出コンベヤ82が配置される(
図1参照)。
【0040】
挟持搬送部4は、
図5および
図7に示すように、上側挟持体20と、下側挟持体22と、から構成されている。上側挟持体20および下側挟持体22は、基本的には同一の構成を有している。上側挟持体20および下側挟持体22は、平面視略H字形状を有する本体部20a,22aと、当該本体部20a,22aに配置された4つのエアシリンダ24a,24a,24a,24a,26a,26a,26a,26aと、当該エアシリンダ24a,24a,24a,24aのロッド25,25,25,25に固定された挟持バー28,28およびエアシリンダ26a,26a,26a,26aのロッド27,27,27,27に固定された挟持バー29,29と、を有している。挟持搬送部4は、本発明における「保持搬送部」に対応し、挟持バー28,29は、本発明における「保持部」に対応する実施構成の一例である。
【0041】
本体部20aおよび本体部22aは、
図5および
図7に示すように、一対の縦片30a,30aおよび一対の縦片32a,32aと、当該一対の縦片30a,30aおよび一対の縦片32a,32aの長手方向の略中央部において縦片30a,30a同士および縦片32a,32a同士を接続する横片30bおよび横片32bと、から構成されており、平面視略H字形状を有している。
【0042】
一対の縦片30a,30aの外側面(横片30bが接続された面とは反対側の面)には、
図5ないし
図7に示すように、上下一対のガイド部31,31が配置されている。また、一対の縦片32a,32aの外側面(横片32bが接続された面とは反対側の面)には、
図5ないし
図7に示すように、上下一対のガイド部33,33が配置されている。ガイド部31,31およびガイド部33,33は、
図6に示すように、ガイドレールR1,R1およびガイドレールR2,R2に係合可能である。即ち、上側挟持体20は、ガイド部31,31およびガイドレールR1,R1を介して上梁12a,12bに摺動可能に支持され、下側挟持体22は、ガイド部33,33およびガイドレールR2,R2を介して下梁12c,12dに摺動可能に支持される。なお、上側挟持体20および下側挟持体22は、仮想水平面VHPに関して面対象に配置されている(
図7参照)。
【0043】
横片30bおよび横片32bには、
図5ないし
図7に示すように、雌ネジ体34,35が固定されている。雌ネジ体34は、ベース体14a,14bの上梁16a,16bに回転可能に支持された雄ネジロッド36にネジ係合されている。雄ネジロッド36は、上梁16bに固定されたモータM1によって回転される。また、雌ネジ体35は、ベース体14a,14bの下梁17a,17bに回転可能に支持された雄ネジロッド37にネジ係合されている。雄ネジロッド37は、下梁17bに固定されたモータM2によって回転される。即ち、モータM1,M2が雄ネジロッド36,37を正逆回転することによって、上側挟持体20および下側挟持体22が、上梁12a,12bおよび下梁12c,12dの長手方向に往復移動される。
【0044】
エアシリンダ24a,24a,24a,24aは、
図7に示すように、縦片30a,30aの長手方向の両端部であって、縦片30a,30aの内側面(横片30bが接続された面)に配置される。また、エアシリンダ26a,26a,26a,26aは、縦片32a,32aの長手方向の両端部であって、縦片32a,32aの内側面(横片32bが接続された面)に配置される。ロッド25,25,25,25,27,27,27,27が突出する方向にエアシリンダ24a,24a,24a,24a,26a,26a,26a,26aが駆動されることにより、挟持バー28,28および挟持バー29,29が互いに近づく。これにより、当該挟持バー28,28および挟持バー29,29の間に単板90が挟持される。一方、ロッド25,25,25,25,27,27,27,27が引っ込む方向にエアシリンダ24a,24a,24a,24a,26a,26a,26a,26aが駆動されることにより、挟持バー28,28および挟持バー29,29が互いに離れる。これにより、挟持バー28,28および挟持バー29,29による単板90の挟持が解除される。なお、挟持バー28,28および挟持バー29,29は、
図8に示すように、両端部90a,90bを突出した状態で単板90を挟持する。
【0045】
このように、挟持搬送部4は、搬入コンベヤ80から搬入された単板90を挟持バー28,28および挟持バー29,29の間に挟持した状態で、搬送方向TDに移動することにより、当該単板90を搬出コンベヤ82まで搬送する。
【0046】
加工部6,7は、基本的には同一の構成を有しており、
図6に示すように、丸鋸40a,41aと、回転軸RS,RSを有するモータ40b,41bと、を備えている。丸鋸40a,41aは、回転軸RS,RSを介してモータ40b,41bに接続されている。丸鋸40a,41aは、本発明における「切削刃」に対応する実施構成の一例である。
【0047】
モータ40bは、
図6に示すように、ブラケットBRを介して上梁12aの外側面(一対の上梁12aが有する面のうち上梁12b側とは反対側を向く面)に固定されており、モータ41bは、
図6に示すように、ブラケットBRを介して下梁12dの外側面(一対の下梁12dが有する面のうち下梁12c側とは反対側を向く面)に固定されている。即ち、加工部6,7は、フレーム2の長手方向の一方側(単板90の搬送方向TDの一方側)から見たとき、即ち、単板90の両端部90a,90bの延在方向(
図6の紙面に垂直な方向)の一方側から見たときの仮想投影面上において、雄ネジロッド36,37の中心同士を結ぶ仮想線分VLの中央点P1に関して点対称となる位置関係で配置される。
【0048】
また、加工部6,7は、
図6に示すように、当該仮想投影面上における丸鋸40a,41aの投影と、単板90の両端部90a,90bの投影と、が交差する(両端部90a,90bの投影の一部が丸鋸40a,41aの投影の内側に含まれる)位置関係で配置されている。
【0049】
このように配置された加工部6,7によって、単板90の両端部90a,90bには、互いに平行なスカーフ面が加工される。なお、加工部6,7は、フレーム2の長手方向のほぼ中間位置に配置され、挟持搬送部4が単板90を搬出コンベヤ82まで搬送する際中に、両端部90a,90bにスカーフ面を加工する。
【0050】
支持台8,9は、基本的には同一の構成を有しており、
図9に示すように、基台50,52と、当該基台50,52に一体にされた丸鋸当接部54,55と、基台50,52に揺動軸SS,SSを介して揺動自在に支持された押圧部56,57と、基台50,52に支持された補助コンベヤ60,62と、を有している。補助コンベヤ60,62は、本発明における「第1端部搬送部」および「コンベヤ」に対応する実施構成の一例である。
【0051】
基台50,52は、
図9に示すように、単板90の両端部90a,90bを載置可能な載置面50a,52aを有している。載置面50a,52aには、後述する丸鋸当接部54,55が配置される。また、載置面50a,52aは、後述する無端状ベルトBLT,BLTの撓みを抑制する機能を有している。
【0052】
基台50は、
図8に示すように、下梁12cの外側面(下梁12cが有する面の下梁12d側とは反対側を向く面)に固定され、基台52は、
図8に示すように、上梁12bの外側面(上梁12bが有する面のうち上梁12a側とは反対側を向く面)に固定される。即ち、支持台8,9は、フレーム2の長手方向の一方側(単板90の搬送方向TDの一方側)から見たとき、即ち、単板90の両端部90a,90bの延在方向(
図8の紙面に垂直な方向)の一方側から見たときの仮想投影面上において、中央点P1に関して点対称となる位置関係で配置される。
【0053】
丸鋸当接部54,55は、単板90の両端部90a,90bにスカーフ面を加工する際の丸鋸受けとしての機能を有しており、
図9および
図10に示すように、基台50,52の載置面50a,52aのうち丸鋸40a,41aの刃先が当接する位置に配置されている。丸鋸当接部54,55は、本実施の形態では、
図14に示すように、上面54a,55a(後述する当接部58,59に対向する面)が、載置面50a,52aと面一となるように設定されている。丸鋸当接部54,55には、合成樹脂や木材などを用いることが好ましい。なお、鉛直方向(
図10の紙面に垂直な方向)の一方側から見たときの仮想投影面上における丸鋸40a,41aの刃先の投影と丸鋸当接部54,55の投影とが交差する点CPにおいて、丸鋸40a,41aの刃先と単板90の両端部90a,90bとが最初に接触する。以下、当該点CPを通る仮想直線であって、搬送方向TDに直交する仮想直交線を「接触位置CpL」という。基台50,52および丸鋸当接部54,55は、本発明における「支持部」に対応し、上面54a,55aは、本発明における「第3当接部」に対応する実施構成の一例である。また、鉛直方向(
図10の紙面に垂直な方向)の一方側から見たときの仮想投影面は、本発明における「第2仮想投影面」に対応する実施構成の一例である。
【0054】
押圧部56,57は、揺動軸SS,SSの軸線方向の一方側から見たときの形状が略逆L字形状を有するレバー部56a,57aと(
図9参照)、当該レバー部56a,57aの第1片56a1,57a1の先端部から揺動軸SS,SSの軸線方向に沿って延在する接続部56b,57bと(
図10および
図11参照)、当該接続部56b,57bの延在端部(第1片56a1,57a1に接続された端部とは反対側の端部)からレバー部56a,57aの第2片56a2,57a2の延在方向と同方向に延在する押圧アーム56c,57cと(
図9および
図10参照)、ロッドR,Rを有するエアシリンダ56d,57dと(
図9参照)、から構成されている。
【0055】
レバー部56a,57aは、
図9に示すように、第1片56a1,57a1と第2片56a2,57a2との交差部において、揺動軸SS,SSに支持されている。なお、揺動軸SS,SSは、基台50,52に固定されている。押圧アーム56c,57cは、
図10に示すように、鉛直方向(
図10の紙面に垂直な方向)の一方側から見たときの仮想投影面上における丸鋸当接部54,55の投影領域および後述する無端状ベルトBLT,BLTの投影領域の内側に配置される。換言すれば、接続部56b,57bは、押圧アーム56c,57cが丸鋸当接部54,55および無端状ベルトBLT,BLTの真上に配置されるような長さを有していると言うことができる。
【0056】
また、押圧アーム56c,57cは、
図9および図10に示すように、接続部56b,57bの延在端部から所定距離だけ水平に延在した後、下方に向かって折れ曲った折曲部56b1,57b1を有している。折曲部56b1,57b1は、単板90の両端部90a,90bに当接する当接部58,59を有している。当接部58,59の丸鋸当接部54,55および無端状ベルトBLT,BLTに対向する面は、先端側(
図9の左側)に向かうにしたがい、丸鋸当接部54,55および無端状ベルトBLT,BLTに漸次近付く傾斜を有している。なお、当接部58,59には、比較的摩擦係数が小さい合成樹脂等を用いることが好ましい。当接部58,59のうち丸鋸当接部54,55および無端状ベルトBLT,BLTに対向する面は、それぞれ本発明における「第2当接部」および「第1当接部」に対応する実施構成の一例である。
【0057】
エアシリンダ56d,57dは、
図9に示すように、ロッドR,Rを介して第2片56a2,57a2の先端部に接続されている。また、エアシリンダ56d,57dは、ロッドR,Rが配置された側とは反対側において、ブロック体Br,Brを介して揺動自在に基台50,52に支持されている。ロッドR,Rが引っ込む方向にエアシリンダ56d,57dが駆動されることによって、押圧部56,57が揺動軸SS,SSを中心として反時計回り(
図9における反時計回り)に揺動(回転)し、これにより、押圧部56,57、より具体的には、当接部58,59によって単板90の両端部90a,90bが丸鋸当接部54,55および後述する無端状ベルトBLT,BLT側に向かって押圧される。なお、当接部58,59と両端部90a,90bとの接触状態は、線接触となる。
【0058】
一方、ロッドR,Rが伸長する方向にエアシリンダ56d,57dが駆動されることによって、押圧部56,57が揺動軸SS,SSを中心として時計回り(
図12における時計回り)に揺動(回転)し、これにより、押圧部56,57、より具体的には、当接部58,59による単板90の両端部90a,90bの押圧が解除される。
【0059】
ここで、当接部58,59は、
図10に示すように、接触位置CpLよりも搬送方向TDの上流側であって、当該接触位置CpLに隣接した押圧位置PpLにおいて、単板90の両端部90a,90bに当接するように設定されている。接触位置CpLと押圧位置PpLとは、可能な限り近い位置に配置することが望ましい。
【0060】
補助コンベヤ60,62は、基本的には同一の構成を有している。補助コンベヤ60,62は、
図13に示すように、4つのプーリPr1,Pr2,Pr3,Pr4と、当該4つのプーリPr1,Pr2,Pr3,Pr4に巻き掛けられた無端状ベルトBLTと、プーリPr3に接続された図示しない回転軸を有するモータM3と、を有している。無端状ベルトBLTは、本発明における「載置部」に対応する実施構成の一例である。
【0061】
プーリPr1,Pr1は、
図13に示すように、それぞれ基台50,52に固定された支持アーム61a,63aに回転可能に支持されており、プーリPr2,Pr2は、それぞれ基台50,52に固定された支持アーム61b,63bに回転可能に支持されている。支持アーム61a,63a,61b,63bは、
図10および
図11に示すように、基台50,52の内側面(基台50,52が有する面のうち挟持バー28,29側を向く面)に固定されている。また、支持アーム61a,63aは、
図13に示すように、基台50,52から単板90の搬送方向TDに向かって突出しており、支持アーム61b,63bは、基台50,52から単板90の搬送方向TDとは反対方向に向かって突出している。支持アーム61a,63aと支持アーム61b,63bとは、同じ高さ位置に配置されている。これにより、プーリPr1とプーリPr2とが、同じ高さ位置に配置される。即ち、プーリPr1およびプーリPr2間の無端状ベルトBLTは、水平に延在する(
図13参照)。プーリPr1,Pr1は、本発明における「第1プーリ」に対応する実施構成の一例である。
【0062】
ここで、プーリPr1およびプーリPr2間に延在する無端状ベルトBLTの内側面ISは、
図14に示すように、基台50,52の載置面50a,52aに対して所定距離を隔てた状態で対向している。これにより、プーリPr1およびプーリPr2間に延在する無端状ベルトBLTが撓んだ際に、内側面ISが当該載置面50a、52aに当接して、無端状ベルトBLTの撓みが抑制され得る。なお、内側面ISは、無端状ベルトBLTのうち単板90を搬送するための搬送面としての外側面OSと対をなす面である。外側面OSは、本発明における「第1面」に対応し、内側面ISは、本発明における「第2面」に対応する実施構成の一例である。
【0063】
上述したように、丸鋸当接部54,55の上面54a,55a(当接部58,59に対向する面)が、載置面50a,52aと面一となっているため、プーリPr1およびプーリPr2間に延在する無端状ベルトBLTが撓んで内側面ISが載置面50a、52aに当接したとしても、外側面OS,OSが上面54a,55aよりも上方、即ち、当接部58,59寄りに配置される。なお、本実施形態では、以下の関係式が成立するように、押圧部56,57、基台50,52、補助コンベヤ60,62、および、丸鋸当接部54,55が配置されている。これにより、単板90の両端部90a,90bが、押圧部56,57の当接部58,59によって、無端状ベルトBLTの外側面OS,OSおよび丸鋸当接部54,55の上面54a,55aに確実に押圧され得る。
【0064】
(式1)
a1≦t・・・・・・・(1)
a2≦t・・・・・・・・(2)
ここで、a1は、スカーフ加工装置1を搬送方向の一方側から見たときの仮想投影面上における押圧可能状態の押圧部56,57の当接部58,59の投影から当該仮想投影面上における外側面OS,OSの投影までの距離、tは、単板90の両端部90a,90bの板厚である(
図14参照)。また、a2は、スカーフ加工装置1を搬送方向の一方側から見たときの仮想投影面上における押圧可能状態の押圧部56,57の当接部58,59の投影から当該仮想投影面上における上面54a,55aの投影までの距離である。a1は、本発明における「第1距離」に対応し、a2は、本発明における「第2距離」に対応する実施構成の一例である。また、上面91は、本発明における「第4面」に対応する実施構成の一例である。なお、上面91と対をなす下面93(
図14参照)は、本発明における「第3面」に対応する実施構成の一例である。さらに、仮想投影面は、本発明における「第1仮想投影面」に対応する実施構成の一例である。
【0065】
プーリPr3,Pr4は、プーリPr1,Pr2と同様、基台50,52の内側面(基台50,52が有する面のうち挟持バー28,29側を向く面)に固定されている(
図11参照)。こうしたプーリPr1,Pr2,Pr3,Pr4の配置によって、補助コンベヤ60,62は、
図11に示すように、搬送方向TDの一方側から見たときに、丸鋸当接部54,55と挟持バー28,29との間であって丸鋸当接部54,55に隣接した位置に配置される。
【0066】
なお、プーリPr1,Pr2,Pr4に対しては、内側面ISが巻き掛けられ、プーリPr3に対しては外側面OSが巻き掛けられる。ここで、外側面OSとプーリPr3との間の摩擦係数は、内側面ISとプーリPr3との間の摩擦係数よりも大きくなるように設定されている。これにより、プーリPr3の回転駆動力を無端状ベルトBLT,BLTにより確実に伝達することができる。この結果、単板90の両端部90a,90bの搬送方向TDへの搬送性能の向上を図ることができる。
【0067】
制御装置70は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートおよび通信ポートと、を備えている。制御装置70には、搬入コンベヤ80からスカーフ加工装置1に単板90が搬入されたことを検知するセンサからの検知信号や、挟持バー28,29による単板90の挟持および挟持解除を検知するセンサからの検知信号などが入力ポートを介して入力されている。また、制御装置70からは、モータM1,M2への駆動信号や、モータ40b,41bへの駆動信号、エアシリンダ24a,24a,24a,24a,26a,26a,26a,26aへの駆動信号、エアシリンダ56d,57dへの駆動信号、モータM3への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。制御装置70は、本発明における「制御部」に対応する実施構成の一例である。
【0068】
次に、上述した構成のスカーフ加工装置1の動作について説明する。単板90が、搬入コンベヤ80から一組の挟持バー28,29によって挟持可能な位置まで搬入されたときに、制御装置70のCPUは、一組の挟持バー28,29によって単板90を挟持するようにエアシリンダ24a,24a,24a,24a,26a,26a,26a,26aを駆動する。
【0069】
続いて、制御装置70のCPUは、挟持した単板90が搬送方向TDに速度V1で搬出コンベヤ82まで搬送されるようにモータM1,M2を駆動すると共に、補助コンベヤ60,62の無端状ベルトBLT,BLTが速度V2で回転するようにモータM3,M3を駆動する処理を実行する。ここで、本実施の形態では、速度V2は、速度V1よりも若干遅い速度に設定されている。
【0070】
また、制御装置70のCPUは、丸鋸40a,41aが回転するようにモータ40b,41bを駆動すると共に、押圧部56,57(当接部58,59)が所定の押圧力をもって単板90の両端部90a,90bを無端状ベルトBLT,BLTおよび丸鋸当接部54,55(上面54a,55a)に向かって押圧可能なように、エアシリンダ56d,57dを駆動する制御を実行する。
【0071】
搬送方向TDに速度V1で搬送される単板90の両端部90a,90bが無端状ベルトBLT,BLTの上流端に達し、当該無端状ベルトBLT,BLTの外側面OS,OSに載置されると、単板90の両端部90a,90bは、無端状ベルトBLT,BLTによって速度V2で搬送方向TDに搬送される。即ち、単板90は、繊維方向FDの中央部近傍では、一組の挟持バー28,29によって搬送方向TDに速度V1で搬送されると共に、両端部90a,90bでは、無端状ベルトBLT,BLTによって速度V2で搬送方向TDに搬送される。
【0072】
ここで、
図15に示すように、搬送される単板90の端部90aが、繊維方向FDに沿う割れCr1,Cr2を有する場合を考える。なお、割れCr1は、搬送方向TDの下流側の割れであり、割れCr2は、搬送方向TDの上流側の割れである。当該割れCr1,Cr2を有する端部90aが無端状ベルトBLT,BLTによって搬送方向TDに速度V2で搬送されるため、端部90aが押圧部56,57(当接部58,59)によって押圧されることに起因して当該端部90aに搬送方向TDと反対方向に作用する摩擦力が低減される。これにより、当該摩擦力に起因する割れCr1,Cr2を広げる方向、あるいは、過度に当該割れCr1,Cr2を閉じる方向に作用するモーメントを低減することができる。
【0073】
なお、端部90aの搬送方向TDへの速度V2は、一組の挟持バー28,29による単板90の搬送方向TDへの速度V1よりも小さいため、搬送方向TDと反対方向に作用する上述した摩擦力に起因する割れCr1を閉じる方向の適度なモーメントが単板90に作用する。これにより、搬送方向TDの下流側の割れCr1が広がった状態でスカーフ加工されることによるスカーフ未加工部の発生、あるいは、割れCr1が過度に閉じた状態でスカーフ加工され後に単板90の弾性によって当該割れCr1が元に戻る(開く)ことにより生じるスカーフ面の段差などを良好に抑制することができる。
【0074】
そして、単板90の両端部90a,90bが接触位置CpLに到達したときに、制御装置70のCPUは、補助コンベヤ60,62の無端状ベルトBLT,BLTが速度V3で回転するようにモータM3,M3を駆動する処理を実行する。ここで、本実施の形態では、速度V3は、速度V1よりも若干速い速度に設定されている。
【0075】
このように、単板90の両端部90a,90bが接触位置CpLに到達して以降、即ち、両端部90a,90bへのスカーフ加工が開始されて以降は、端部90aの搬送方向TDへの速度V3が、一組の挟持バー28,29による単板90の搬送方向TDへの速度V1よりも大きいため、搬送方向TDと同方向に作用する摩擦力に起因する割れCr2を閉じる方向の適度なモーメントが端部90aに作用する。これにより、搬送方向TDの上流側の割れCr2が広がった状態でスカーフ加工されることによるスカーフ未加工部の発生、あるいは、割れCr2が過度に閉じた状態でスカーフ加工され後に単板90の弾性によって当該割れCr2が元に戻る(開く)ことにより生じるスカーフ面の段差などを良好に抑制することができる。ここで、「到達して以降」および「開始されて以降」とは、「到達した直後」および「開始された直後」や、「到達したときから所定時間経過した後」および「開始されたときから所定時間経過後」を含む概念である。
【0076】
なお、スカーフ加工を施す単板90の繊維方向FDに沿う方向の寸法(搬送方向TDおよび単板90の厚み方向の両方向に直交する方向における単板90の寸法)が大きいものに変更された場合、挟持バー28,29からの両端部90a,90bの突出量が増加する。このため、両端部90a,90bの突出量をスカーフ加工に必要な所定の突出量に維持するために、支持台8,9を挟持バー28,29から離れる方向に配置し直す(移動する)必要が生じる。この場合、支持台8,9から挟持バー28,29までの距離が大きくなり、当該距離と上述した摩擦力とに応じたモーメントであって、上述した割れCr1,Cr2を広げる方向、あるいは、過度に当該割れCr1,Cr2を閉じる方向に作用するモーメントが増大してしまう。当該モーメントを低減するために、従来は、支持台8,9から挟持バー28,29までの距離を小さくするべく、支持台8,9の配置変更に伴って挟持バー28,29の配置変更(挟持搬送部4の構造変更)も必要であった。しかしながら、本実施の形態では、上述した摩擦力を低減することができるため、支持台8,9の配置変更のみで対応することが可能となる。これにより、スカーフ加工装置1の変更の程度を抑えながら、単板90の寸法違いに対応することができる。
【0077】
また、本実施の形態によれば、接触位置CpLに到達した両端部90a,90bは、押圧部56,57(当接部58,59)によって、両端部90a,90bに発生するねじれや反り等のあばれを矯正した状態でスカーフ加工することができるため、良好なスカーフ面を確保することができる。さらに、押圧部56,57(当接部58,59)によって、両端部90a,90bを無端状ベルトBLT,BLTの外側面OS,OSに確実に押圧することができるため、両端部90a,90bを搬送方向TDに確実に搬送することができる。これにより、スカーフ面の欠損や、スカーフ未加工部の発生、スカーフ面の段差などが発生することをより確実に抑制することができる。
【0078】
もとより、単板90を搬送しながら両端部90a,90bにスカーフ面を加工するため、単板90の搬送を一時停止した状態で両端部90a,90bにスカーフ面を加工する構造に比べて、生産性の向上を図ることができる。
【0079】
本実施の形態では、押圧部56,57の当接部58,59の丸鋸当接部54,55および無端状ベルトBLT,BLTに対向する面は、先端側(
図9の左側)に向かうにしたがい、丸鋸当接部54,55および無端状ベルトBLT,BLTに漸次近付く傾斜を有する構成としたが、これに限らない。例えば、当接部58,59の丸鋸当接部54,55および無端状ベルトBLT,BLTに対向する面は、基台50,52の載置面50a,52a(丸鋸当接部54,55の上面54a,55a)に平行な構成としても良いし、丸鋸当接部54,55が球面状を有する構成としても良い。この場合、当接部58,59と両端部90a,90bとの接触状態は面接触や点接触となる。
【0080】
本実施の形態および上述した変形例では、載置面50a,52aと無端状ベルトBLT,BLTの内側面IS,ISとの間に所定距離を有する構成としたが、当該所定距離を有さない構成、即ち、内側面IS,ISが載置面50a,52aに当接する構成としても良い。
【0081】
本実施の形態では、1つの押圧部56,57によって単板90の両端部90a,90bを無端状ベルトBLT,BLTおよび丸鋸当接部54,55側に押圧する構成としたが、変形例の押圧部156,157,256,257を例示する
図16に示すように、押圧部156,157によって両端部90a,90bを丸鋸当接部54,55側に押圧すると共に、押圧部256,257によって単板90の両端部90a,90bを無端状ベルトBLT,BLT側に押圧する構成としても良い。この場合、押圧部156,157と押圧部256,257とは、各別のエアシリンダ(図示せず)によって搖動(回動)される構成とすれば良い。また、以下の関係式が成立するように、押圧部156,157,256,257、基台50,52、補助コンベヤ60,62、および、丸鋸当接部54,55を配置すれば良い。
【0082】
(式2)
a3≦t・・・・・・・(3)
a4≦t・・・・・・・(4)
ここで、a3は、スカーフ加工装置1を搬送方向の一方側から見たときの仮想投影面上における押圧可能状態の押圧部256,257の当接部258,259の投影から当該仮想投影面上における外側面OS,OSの投影までの距離であり(
図16参照)、a4は、スカーフ加工装置1を搬送方向の一方側から見たときの仮想投影面上における押圧可能状態の押圧部156,157の当接部158,159の投影から当該仮想投影面上における上面54a,55aの投影までの距離である(
図16参照)。a3は、本発明における「第1距離」に対応し、a4は、本発明における「第2距離」に対応し、仮想投影面は、本発明における「第1仮想投影面」に対応する実施構成の一例である。
【0083】
ここで、当接部258,259は、本発明における「第1当接部」に対応し、当接部158,159は、本発明における「第2当接部」に対応し、上面54a,55aは、本発明における「第3当接部」に対応し、上面91は、本発明における「第4面」に対応し、外側面OS,OSは、本発明における「第1面」に対応し、内側面IS,ISは、本発明における「第2面」に対応する実施構成の一例である。なお、上面91と対をなす下面93(
図16参照)は、本発明における「第3面」に対応する実施構成の一例である。
【0084】
当該構成によれば、押圧部156,157(当接部158,159)によって、両端部90a,90bを丸鋸当接部54,55の上面54a,55aに確実に押圧可能であるため、安定した状態で両端部90a,90bにスカーフ加工を施すことができる。また、押圧部256,257(当接部258,259)によって、両端部90a,90bを無端状ベルトBLT,BLTの外側面OS,OSに確実に押圧することができる。これにより、両端部90a,90bを搬送方向TDに確実に搬送することができる。この結果、スカーフ面の欠損や、スカーフ未加工部の発生、スカーフ面の段差などが発生することをより確実に抑制することができる。
【0085】
本実施の形態および上述した変形例では、補助コンベヤ60,62によって、単板90の両端部90a,90bを搬送方向TDに搬送する構成としたが、これに限らない。例えば、
図17ないし
図19に例示する変形例のスカーフ加工装置300,400,500に示すように、補助コンベヤ60,62に替えて円板搬送機構360,362,460,462,560,562によって、単板90の両端部90a,90bを搬送方向TDに搬送する構成としても良い。変形例のスカーフ加工装置300,400,500は、本実施の形態のスカーフ加工装置1に対して、補助コンベヤ60,62を円板搬送機構360,362,460,462,560,562に置き換えた構成を有している。したがって、重複する説明を回避するため、変形例のスカーフ加工装置300,400,500の構成のうち本実施の形態のスカーフ加工装置1の構成に相当する構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0086】
円板搬送機構360,362,460,462,560,562は、
図17ないし
図19に示すように、円板361,363,461,463,561,563の形状が異なる点を除いて、基本的には同一の構成を有している。即ち、円板搬送機構360,362,460,462,560,562は、2つのプーリPr5,Pr6と、円板361,363,461,463,561,563と、2つのプーリPr5,Pr6に巻き掛けられたベルトやチェーンなどの動力伝達部材PTと、プーリPr
6に接続された図示しない回転軸を有するモータM3と、を有している。円板搬送機構360,362,460,462,560,562は、本発明における「第1端部搬送部」に対応し、円板361,363,461,463,561,563は、本発明における「円板体」に対応し、プーリPr5,Pr6、動力伝達部材PTおよびモータM3は、本発明における「駆動部」に対応する実施構成の一例である。
【0087】
プーリPr5,Pr6は、
図17ないし
図19に示すように、回転軸RSFT(
図20および
図21参照)を介して、それぞれ基台50,52に回転可能に支持されている。円板361,363,461,463,561,563は、
図20および
図21に示すように、プーリPr
5を回転可能に支持する回転軸RSFTに一体に支持されている。円板361,363,461,463,561,563は、基台50,52とプーリPr1との間に配置される。円板361,363の外周面361a,363aは、
図17に示すように、凹凸を有していないが、円板461,463,561,563の外周面461a,463a,561a,563aは、
図18および図19に示すように、円周方向に複数の凹凸UEを有している。外周面461a,463aの凹凸UEは凸部先端が尖っており、外周面561a,563aの凹凸UEは凸部先端が平坦面となっている。
外周面361a,363a,461a,463a,561a,563aは、本発明における「載置部」に対応する実施構成の一例である。
【0088】
そして、押圧部56,57、基台50,52、円板搬送機構360,362,460,462,560,562、および、丸鋸当接部54,55は、以下の関係式が成立するように配置されている。
【0089】
(式3)
a5≦t・・・・・・・(5)
a6≦t・・・・・・(6)
ここで、a5は、スカーフ加工装置1を搬送方向の一方側から見たときの仮想投影面上における押圧可能状態の押圧部56,57の当接部58,59の投影から当該仮想投影面上における外周面361a,363a,461a,463a,561a,563aの投影までの距離であり、tは、単板90の両端部90a,90bの板厚である(
図20および
図21参照)。また、a6は、スカーフ加工装置1を搬送方向の一方側から見たときの仮想投影面上における押圧可能状態の押圧部56,57の当接部58,59の投影から当該仮想投影面上における上面54a,55aの投影までの距離である。a5は、本発明における「第3距離」に対応し、a6は、本発明における「第4距離」に対応する実施構成の一例である。また、上面91は、本発明における「第6面」に対応する実施構成の一例である。なお、上面91と対をなす下面93(
図20および
図21参照)は、本発明における「第5面」に対応する実施構成の一例である。さらに、仮想投影面は、本発明における「第1仮想投影面」に対応する実施構成の一例である。また、当接部58,59のうち外周面361a,363a,461a,463a,561a,563aおよび上面54a,55aに対向する部分は、それぞれ本発明における「第4当接部」および「第5当接部」に対応し、上面54a,55aは、本発明における「第6当接部」に対応する実施構成の一例である。
【0090】
本実施の形態では、単板90の両端部90a,90bが接触位置CpLに到達するまでは、無端状ベルトBLT,BLTが両端部90a,90bを搬送する速度(V2)を、一組の挟持バー28,29が単板90を搬送する速度(V1)よりも遅くし、両端部90a,90bが接触位置CpLに到達して以降、即ち、両端部90a,90bへのスカーフ加工が開始されて以降は、無端状ベルトBLT,BLTが両端部90a,90bを搬送する速度(V3)を、一組の挟持バー28,29が単板90を搬送する速度(V1)よりも速くしたが、これに限らない。例えば、単板90の両端部90a,90bが接触位置CpLに到達するまでは、無端状ベルトBLT,BLTが両端部90a,90bを搬送する速度(V2)を、一組の挟持バー28,29が単板90を搬送する速度(V1)よりも遅くし、両端部90a,90bが接触位置CpLに到達して以降、即ち、両端部90a,90bへのスカーフ加工が開始されて以降は、無端状ベルトBLT,BLTが両端部90a,90bを搬送する速度(V1)と、一組の挟持バー28,29が単板90を搬送する速度(V1)と、を同じにしても良い。あるいは、単板90の両端部90a,90bが接触位置CpLに到達するまでは、無端状ベルトBLT,BLTが両端部90a,90bを搬送する速度(V1)と、一組の挟持バー28,29が単板90を搬送する速度(V1)と、を同じにし、両端部90a,90bが接触位置CpLに到達して以降、即ち、両端部90a,90bへのスカーフ加工が開始されて以降は、無端状ベルトBLT,BLTが両端部90a,90bを搬送する速度(V3)を、一組の挟持バー28,29が単板90を搬送する速度(V1)よりも速くしても良い。さらに、無端状ベルトBLT,BLTが両端部90a,90bを搬送する速度(V1)を、一貫して一組の挟持バー28,29が単板90を搬送する速度(V1)と同じとしても良い。
【0091】
当該構成によっても、両端部90a,90bが押圧部56,57によって押圧されることに起因して両端部90a,90bに搬送方向TDと反対方向に作用する摩擦力を低減することができる。これにより、両端部90a,90bが割れ目や裂け目を有する場合に、上述した摩擦力に起因する割れ目や裂け目を広げる方向、あるいは、過度に当該割れ目や裂け目を閉じる方向に作用するモーメントを低減することができる。この結果、スカーフ面の欠損や、割れ目や裂け目が広がった状態でスカーフ加工されることによるスカーフ未加工部の発生、あるいは、割れ目や裂け目が閉じた状態でスカーフ加工され後に単板の弾性によって当該割れ目や裂け目が元に戻る(開く)ことにより生じるスカーフ面の段差などを良好に抑制することができる。この結果、第1端部に割れ目や裂け目がある場合であっても、良好にスカーフ加工を行うことができる。
【0092】
本実施の形態および上述し変形例では、挟持搬送部4が上側挟持体20および下側挟持体22を備え、上側挟持体20および下側挟持体22によって単板90を挟持した状態で、当該単板90を搬送方向TDに搬送する構成としたが、これに限らない。例えば、
図22に例示する変形例の挟持搬送部604に示すように、挟持搬送部604が上側コンベヤ620および下側コンベヤ622を備え、上側コンベヤ620および下側コンベヤ622によって単板90を挟持した状態で、当該単板90を搬送方向TDに搬送する構成や、
図23に例示する変形例の挟持搬送部704に示すように、挟持搬送部704が上側挟持ロール720および下側挟持ロール722を備え、上側挟持ロール720および下側挟持ロール722によって単板90を挟持した状態で、当該単板90を搬送方向TDに搬送する構成としても良い。挟持搬送部604,704は、それぞれ本発明における「保持搬送部」に対応する実施構成の一例である。
【0093】
本実施の形態および上述した変形例では、単板90を挟持した状態で、当該単板90を搬送方向TDに搬送する構成としたが、これに限らない。単板90を保持した状態で、搬送方向TDに搬送することができれば、挟持搬送部4に代えて、例えば、単板90を吸引した状態で、当該単板90を搬送方向TDに搬送する吸引搬送部や、単板90を刺着した状態で、当該単板90を搬送方向TDに搬送する刺着搬送部を用いても良い。
【0094】
本実施の形態および上述した変形例では、プーリPr1およびプーリPr2間に延在する無端状ベルトBLTが撓んで内側面ISが載置面50a、52aに当接したとしても、外側面OS,OSが上面54a,55aよりも上方、即ち、当接部58,59寄りに配置される構成としたが、押圧部56,57,156,157,256,257の当接部58,59,158,159,258,259によって、無端状ベルトBLTの外側面OS,OSおよび丸鋸当接部54,55の上面54a,55aに単板90の両端部90a,90bを確実に押圧することができれば、当該構成に限らない。例えば、
図24および
図25に例示する変形例の支持台8A,9A,808A,809Aに示すように、押圧部56A,57Aの当接部58A,59Aのうち外側面OS,OSに対向する部分58A1,59A1、および、押圧部256A,257Aの当接部258A,259Aが、それぞれ押圧部56A,57Aの当接部58A,59Aのうち上面54a,55aに対向する部分58A2,59A2、および、押圧部156A,157Aの当接部158A,159Aよりも下方、即ち、床面FL寄りに配置される構成の場合には、無端状ベルトBLTが撓んで内側面ISが載置面50a、52aに当接したときに、外側面OS,OSが上面54a,55aよりも下方、即ち、床面FL寄りに配置される構成であっても良い。当接部58A,59Aのうち外側面OS,OSに対向する部分58A1,59A1は、本発明における「第1当接部」および「第4当接部」に対応し、当接部58A,59Aのうち上面54a,55aに対向する部分58A2,59A2は、本発明における「第2当接部」および「第5当接部」に対応する実施構成の一例である。また、押圧部156A,157Aは、それぞれ本発明における「第2押圧部」に対応し、押圧部256A,257Aは、本発明における「第1押圧部」に対応する実施構成の一例である。さらに、当接部158A,159Aは、本発明における「第2当接部」に対応し、当接部258A,259Aは、本発明における「第1当接部」に対応する実施構成の一例である。
【0095】
本実施の形態および上述した変形例では、丸鋸当接部54,55を有する構成としたが、丸鋸当接部54,55は無くても良い。
【0096】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。なお、本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。
【符号の説明】
【0097】
1 スカーフ加工装置(スカーフ加工装置)
2 フレーム(フレーム)
4 挟持搬送部(保持搬送部)
6 加工部(加工部)
7 加工部(加工部)
8 支持台
9 支持台
12a 上梁
12b 上梁
12c 下梁
12d 下梁
14a ベース体
14b ベース体
15a 脚部
15b 脚部
16a 上梁
16b 上梁
17a 下梁
17b 下梁
20 上側挟持体
20a 本体部
22 下側挟持体
22a 本体部
24a エアシリンダ
25 ロッド
26a エアシリンダ
27 ロッド
28 挟持バー(保持部)
29 挟持バー(保持部)
30a 縦片
30b 横片
31 ガイド部
32a 縦片
32b 横片
33 ガイド部
34 雌ネジ体
35 雌ネジ体
36 雄ネジロッド
37 雄ネジロッド
40a 丸鋸(切削刃)
40b モータ
41a 丸鋸(切削刃)
41b モータ
50 基台(支持部)
50a 載置面
52 基台(支持部)
52a 載置面
54 丸鋸当接部(支持部)
54a 上面(第3当接部、第6当接部)
55 丸鋸当接部(支持部)
55a 上面(第3当接部、第6当接部)
56 押圧部(押圧部)
56a レバー部
56a1 第1片
56a2 第2片
56b 接続部
56c 押圧アーム
56d エアシリンダ
57 押圧部(押圧部)
57a レバー部
57a1 第1片
57a2 第2片
57b 接続部
57c 押圧アーム
57d エアシリンダ
58 当接部(第1当接部、第2当接部、第4当接部、第5当接部)
59 当接部(第1当接部、第2当接部、第4当接部、第5当接部)
60 補助コンベヤ(第1端部搬送部、コンベヤ)
61a 支持アーム
61b 支持アーム
62 補助コンベヤ(第1端部搬送部、コンベヤ)
63a 支持アーム
63b 支持アーム
70 制御装置(制御部)
80 搬入コンベヤ
82 搬出コンベヤ
90 単板(単板)
90a 端部(第1端部)
90b 端部(第1端部)
91 上面(第4面、第6面)
93 下面(第3面、第5面)
156 押圧部(第2押圧部)
157 押圧部(第2押圧部)
158 当接部(第2当接部)
159 当接部(第2当接部)
256 押圧部(第1押圧部)
257 押圧部(第1押圧部)
258 当接部(第1当接部)
259 当接部(第1当接部)
300 スカーフ加工装置(スカーフ加工装置)
360 円板搬送機構(第1端部搬送部)
361 円板
361a 外周面(載置部、外周面)
362 円板搬送機構(第1端部搬送部)
363 円板
363a 外周面(載置部、外周面)
400 スカーフ加工装置(スカーフ加工装置)
460 円板搬送機構(第1端部搬送部)
461 円板
461a 外周面(載置部、外周面)
462 円板搬送機構(第1端部搬送部)
463 円板
463a 外周面(載置部、外周面)
500 スカーフ加工装置(スカーフ加工装置)
560 円板搬送機構(第1端部搬送部)
561 円板
561a 外周面(載置部、外周面)
562 円板搬送機構(第1端部搬送部)
563 円板
563a 外周面(載置部、外周面)
604 挟持搬送部(保持搬送部)
620 上側コンベヤ
622 下側コンベヤ
704 挟持搬送部(保持搬送部)
720 上側挟持ロール
722 下側挟持ロール
8A 支持台
9A 支持台
56A 押圧部(押圧部)
57A 押圧部(押圧部)
58A 当接部
58A1 当接部58Aのうち外側面OS,OSに対向する部分(第1当接部、第4当接部)
58A2 当接部58Aのうち上面54a,55aに対向する部分(第2当接部、第5当接部)
59A 当接部(第1当接部、第4当接部)
59A1 当接部59Aのうち外側面OS,OSに対向する部分(第1当接部、第4当接部)
59A2 当接部59Aのうち上面54a,55aに対向する部分(第2当接部、第5当接部)
156A 押圧部(第2押圧部)
157A 押圧部(第2押圧部)
158A 当接部(第2当接部)
159A 当接部(第2当接部)
256A 押圧部(第1押圧部)
257A 押圧部(第1押圧部)
258A 当接部(第1当接部)
259A 当接部(第1当接部)
808A 支持台
809A 支持台
R1 ガイドレール
R2 ガイドレール
VHP 仮想水平面
M1 モータ
M2 モータ
M3 モータ(モータ、駆動部)
RS 回転軸
BR ブラケット
VL 仮想線分
P1 中央点
SS 揺動軸
BLT 無端状ベルト(無端状ベルト)
IS 内側面(第2面)
OS 外側面(載置部、第1面)
CP 点
TD 搬送方向(搬送方向)
FD 繊維方向(繊維方向)
CpL 接触位置(接触位置)
R ロッド
Br ブロック体
PpL 押圧位置(押圧位置)
Pr1 プーリ
Pr2 プーリ
Pr3 プーリ(第1プーリ)
Pr4 プーリ
Pr5 プーリ(駆動部)
Pr6 プーリ(駆動部)
VP 仮想平面(仮想平面)
PT 動力伝達部材(駆動部)
UE 凹凸
RSFT 回転軸
FL 床面
a1 押圧可能状態の当接部58,59の投影から外側面OS,OSの投影までの距離(第1距離)
a2 押圧可能状態の当接部58,59の投影から上面54a,55aの投影までの距離(第2距離)
a3 押圧可能状態の当接部258,259の投影から外側面OS,OSの投影までの距離(第1距離)
a4 押圧可能状態の当接部158,159の投影から上面54a,55aの投影までの距離(第2距離)
a5 押圧可能状態の当接部58,59の投影から外周面361a,363a,461a,463a,561a,563aの投影までの距離(第3距離)
a6 押圧可能状態の当接部58,59の投影から上面54a,55aの投影までの距離(第4距離)
t 板厚(板厚)