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  • 特許-閉塞装置を用いた閉塞方法 図1
  • 特許-閉塞装置を用いた閉塞方法 図2
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  • 特許-閉塞装置を用いた閉塞方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】閉塞装置を用いた閉塞方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/179 20060101AFI20241212BHJP
   F16L 55/134 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F16L55/179
F16L55/134
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020179059
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022070048
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】595108572
【氏名又は名称】クロダイト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 充
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-148067(JP,A)
【文献】特開2018-128092(JP,A)
【文献】特開平02-085595(JP,A)
【文献】特開2018-178645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/179
F16L 55/134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管に合流する枝管の合流口及び前記流体管内に構築された更生管に前記合流口に対応して穿孔された連通口に挿入可能な閉塞装置を用いて、前記流体管及び更生管の隙間の開口部を閉塞する閉塞方法であって、
前記閉塞装置は、
前記枝管と前記更生管とを接続可能な排水路が内部に形成された筒状基材と、
前記筒状基材の周囲に設けられて膨縮自在なエアバッグと、
前記エアバッグに外装されて、前記エアバッグの過膨張を規制する過膨張規制シートと、
前記過膨張規制シートの外周面に設けられ、前記流体管及び更生管の隙間の開口部を閉塞可能な保護シートと、
を備え、
前記エアバッグが膨張する際に、前記筒状基材は、弾性変形することなく前記エアバッグを内側から支持し、
前記更生管側から前記連通口及び合流口に前記閉塞装置を配置する工程と、
前記エアバッグを膨張させて、前記保護シートが流体管及び更生管の隙間の開口部を閉塞する工程と、
を含むことを特徴とする閉塞方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した既設の流体管の内壁に更生管をライニングする際に、流体管と更生管との隙間の開口部を閉塞する閉塞装置を用いた閉塞方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、老朽化した既設の下水管の内壁に合成樹脂製の更生管をライニングする下水管更生工法が開示されている。この工法では、先ず、下水管内に更生管が挿入され、更生管が下水管の内壁に密着してライニングされる。
【0003】
次に、下水管に接続されている枝管内において下水管との合流口近傍を密栓し、下水管の内部から更生管において合流口に対応する部位に小孔を開設し、小孔から圧入されたグラウト材が、下水管の内壁面と更生管の外壁面との間に滲入する。
【0004】
所定時間が経過してグラウト材が硬化した後に、密栓が取り外され、枝管側から合流口に対応する部位が開設されることで、枝管と更生管とを連通させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-52612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した下水管の更生工法では、グラウト材が硬化するまでの長時間にわたって枝管を密栓して枝管内の下水が下水管へ流下することを阻止する必要があり、下水道利用者に長時間にわたって排水制限を課すという問題があった。
【0007】
そこで、枝管の使用制限を課すことなく、老朽化した既設の流体管の内壁に更生管を構築する更生工法を行うことができる閉塞方法を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
記目的を達成するために、本発明に係る閉塞方法は、流体管に合流する枝管の合流口及び前記流体管内に構築された更生管に前記合流口に対応して穿孔された連通口に挿入可能な閉塞装置を用いて、前記流体管及び更生管の隙間の開口部を閉塞する閉塞方法であって、前記閉塞装置は、前記枝管と前記更生管とを接続可能な排水路が内部に形成された筒状基材と、前記筒状基材の周囲に設けられて膨縮自在なエアバッグと、前記エアバッグに外装されて、前記エアバッグの過膨張を規制する過膨張規制シートと、前記過膨張規制シートの外周面に設けられ、前記流体管及び更生管の隙間の開口部を閉塞可能な保護シートと、を備え、前記エアバッグが膨張する際に、前記筒状基材は、弾性変形することなく前記エアバッグを内側から支持し、前記更生管側から前記連通口及び合流口に前記閉塞装置を配置する工程と、前記エアバッグを膨張させて、前記保護シートが流体管及び更生管の隙間の開口部を閉塞する工程と、を含む。
【0011】
この構成によれば、更生管側から閉塞装置を合流口及び連通口に配置し、エアバッグが膨張して保護シートが流体管と更生管との隙間の開口部を塞ぐとともに、更生管と枝管とが排水路を介して接続されることにより、更生管を構築する場合であっても、枝管内を流下する流体が更生管内へ排水可能であるとともに、流体管と更生管との隙間に充填された充填材が更生管や枝管内に流入したり、更生管や枝管内を流下する流体が充填材に混入することを阻止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、枝管の使用制限を課すことなく、流体管の更生工法を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る閉塞装置を適用して下水管を更生した状態を示す縦断面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】閉塞装置を示す斜視図である。
図4図3に示す閉塞装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る閉塞装置1について、図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0015】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0016】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0017】
図1、2に示すように、閉塞装置1は、老朽化した既設の流体管としての下水管Aの内壁に更生管Bを構築する更生工法で使用される。
【0018】
更生管Bは、分割可能な複数のセグメントを組み合わせることで下水管A内に構築される。下水管Aと更生管Bとの隙間には、エポキシ樹脂、モルタル又はグラウト材等の充填材Cが充填されている。
【0019】
閉塞装置1は、充填材Cが下水管Aと更生管Bとの隙間に流し込まれる前に、下水管Aに合流する枝管Dの合流口E及び更生管Bの合流口Eに対応して穿孔された連通口Fに挿入され、下水管Aと更生管Bとの隙間の開口部を閉塞する。以下、閉塞装置1の構成について説明する。
【0020】
図3、4に示すように、閉塞装置1は、筒状基材2と、エアバッグ3と、過膨張規制シート4と、保護シート5と、を備えている。
【0021】
筒状基材2は、略円筒状に形成されており、枝管Dよりも小径の口径で且つ下水管Aと更生管Bとの間隙よりも長く延伸されている。筒状基材2の材質は、例えば、金属製、コンクリート製、塩化ビニル製、ポリエチレン製又はポリオレフィン製等である。筒状基材2は、後述するエアバッグ3の膨張を内側から支持可能な程度の剛性を備えている。
【0022】
筒状基材2は、一方端に設けられた流入口21と、他方端に設けられた流出口22と、を備えている。また、筒状基材2の内部に設けられて流入口21と流出口22とを連通する排水路23は、枝管D内を流下する下水を通水可能である。また、筒状基材2には、内外を連通する連通孔24が形成されている。なお、符号25は、筒状基材2の外周の両端にそれぞれ装着されたステンレス製等のカシメリングである。
【0023】
エアバッグ3は、略円筒状に形成され、気密性及び柔軟性を有するゴム製等のシートから成る。エアバッグ3は、内周面が筒状基材2の外周面に接着されることで、筒状基材2と一体化されている。なお、エアバッグ3の長さ寸法は、適宜変更可能であるが、下水管Aと更生管Bとの隙間より長く設定されるのが好ましい。
【0024】
エアバッグ3は、連通孔24を通るエアホース31を備えている。エアホース31は、流出口22から外部に向けて延伸されており、エアバッグ3の内部に圧縮空気を供給可能な図示しないエアポンプに接続される。これにより、エアバッグ3は、圧縮空気が流出入されることによって膨縮自在に構成されている。
【0025】
過膨張規制シート4は、引張強さ及び摩擦係数が大きく、透水率が小さくて柔軟性を有する布製である。過膨張規制シート4は、エアバッグ3より大きい略円筒状に形成され、エアバッグ3を内部に収容して覆うように筒状基材2に取り付けられている。過膨張規制シート4の両端は、外装されたカシメリング25によって筒状基材2に圧着されている。
【0026】
エアバッグ3の外周面と過膨張規制シート4の内周面とは、図示しない両面テープを介して着脱自在に貼着されていても構わない。これにより、エアバッグ3と過膨張規制シート4とが一体化され、過膨張規制シート4がエアバッグ3の膨縮に追従する。また、カシメリング25による圧着を解除した後に、過膨張規制シート4をエアバッグ3から引き剥がすことで、過膨張規制シート4を筒状基材2から取り外すことができる。
【0027】
保護シート5は、過膨張規制シート4に外装されており、厚み方向に弾性を有するクロロプレンゴム等の合成ゴム製である。保護シート5は、過膨張規制シート4に図示しない両面テープを介して着脱自在に貼着されている。保護シート5は、過膨張規制シート4の一部(他方端側)を除いて過膨張規制シート4の略全面を被覆するように設けられている。保護シート5の長さ寸法は、下水管Aと更生管Bとの隙間よりも長く形成されている。
【0028】
次に、閉塞装置1を用いて合流口E及び連通口Fを閉塞する手順を、更生管Bで下水管Aを更生する方法とともに図1、2に基づいて説明する。
【0029】
まず、下水管Aの内部に複数のセグメントを組み合わせて更生管Bが構築される。このとき、下水管Aと更生管Bとの間には所定の隙間が確保されている。また、更生管Bには、枝管Dの合流口Eに対応する位置に連通口Fが穿孔されている。なお、下水管Aの直径は、例えば800mm以上であり、枝管Dの直径は、例えば直径100~200mm程度である。
【0030】
次に、作業員が、更生管B側から閉塞装置1を合流口E及び連通口F内に配置する。このとき、閉塞装置1の一方端側が枝管Dに挿入され、閉塞装置1の他方端側が更生管B内に配される。すなわち、閉塞装置1は、筒状基材2を弾性変形させることなく、合流口E及び連通口Fに挿入されるように合流口E及び連通口F内に配置される。
【0031】
次に、エアポンプからエアバッグ3に圧縮空気を供給する。エアバッグ3は、閉塞装置1の径方向の外側に向かって徐々に膨張するが、エアバッグ3の外周側に設けられた過膨張規制シート4が、エアバッグ3の過度な膨張を規制して膨張時の形状を維持すると共に、エアバッグ3の損傷や破裂等を保護する。
【0032】
そして、エアバッグ3が膨張すると、保護シート5が合流口E及び連通口Fに密着し、下水管Aと更生管Bとの隙間の開口部を塞ぐ。また、更生管Bと枝管Dとは、筒状基材2の排水路23を介して連通されており、枝管D内を流下する下水は、更生管B内へ排水可能である。
【0033】
また、単一のエアバッグ3が、合流口E及び連通口Fを跨ぐように膨張するため、例えば、合流口Eと連通口Fとをそれぞれ別個のエアバッグで塞ぐ場合と比べて、簡便な構成で合流口E及び連通口Fを閉塞できる。
【0034】
また、筒状基材2は、エアバッグ3が膨張する際に、ほとんど弾性変形することなく略円筒状を維持した状態で膨張するエアバッグ3を内側から支持するため、筒状基材2が可撓性を有した場合に筒状基材2が撓んで形状変化する虞があるのに比べて、エアバッグ3を安定して膨張させることができ、下水管Aと更生管Bとの隙間の開口部を確実に塞ぐことができる。
【0035】
次に、下水管Aと更生管Bとの隙間に充填材Cが流し込まれる。保護シート5は、下水管Aと更生管Bとの隙間から充填材Cが更生管Bや枝管D内に流れ出ることを抑制するとともに、更生管Bや枝管D内を流下する下水が充填材Cに混入することを阻止する。
【0036】
そして、充填材Cが下水管Aと更生管Bとの隙間に充填されて硬化すると、エアバッグ3の圧縮空気を排出してエアバッグ3を収縮させる。閉塞装置1を合流口E及び連通口Fから除去すると、合流口E及び連通口Fが確保された状態で、下水管Aと更生管Bとが一体化され、下水管Aを耐震補強することができる。
【0037】
このようにして、本実施形態に係る閉塞装置1は、枝管Dの合流口E及び更生管Bの連通口Fに挿入可能な閉塞装置1であって、枝管Dと更生管Bとを接続可能な排水路23が内部に形成された筒状基材2と、筒状基材2の周囲に設けられて膨縮自在なエアバッグ3と、エアバッグ3に外装されて、エアバッグ3の過膨張を規制する過膨張規制シート4と、過膨張規制シート4の外周面に設けられ、下水管A及び更生管Bの隙間の開口部を閉塞可能な保護シート5と、を備えている構成とした。
【0038】
この構成によれば、エアバッグ3が膨張して保護シート5が下水管Aと更生管Bとの隙間の開口部を塞ぐとともに、更生管Bと枝管Dとが排水路23を介して接続されることにより、更生管Bを構築する場合であっても、枝管D内を流下する下水が更生管B内へ排水可能であるとともに、下水管Aと更生管Bとの隙間に充填された充填材Cが更生管Bや枝管D内に流入したり、更生管Bや枝管D内を流下する下水が充填材Cに混入することを阻止できる。
【0039】
また、本実施形態に係る閉塞装置1を用いて、下水管A及び更生管Bの隙間の開口部を閉塞する閉塞方法であって、更生管B側から連通口F及び合流口Eに閉塞装置1を配置する工程と、エアバッグ3を膨張させて、保護シート5が下水管A及び更生管Bの隙間の開口部を閉塞する工程と、を含む構成とした。
【0040】
この構成によれば、更生管B側から閉塞装置1を合流口E及び連通口Fに配置し、エアバッグ3が膨張して保護シート5が下水管Aと更生管Bとの隙間の開口部を塞ぐとともに、更生管Bと枝管Dとが排水路23を介して接続されることにより、更生管Bを構築する場合であっても、枝管D内を流下する下水が更生管B内へ排水可能であるとともに、下水管Aと更生管Bとの隙間に充填された充填材Cが更生管Bや枝管D内に流入したり、更生管Bや枝管D内を流下する下水が充填材Cに混入することを阻止できる。
【0041】
また、本発明は上記で説明した以外にも、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0042】
なお、流体管内を流れる流体は、上述した下水に限定されず、上水等であっても構わない。
【符号の説明】
【0043】
1 :閉塞装置
2 :筒状基材
21:流入口
22:流出口
23:排水路
24:連通孔
25:カシメリング
3 :エアバッグ
31:エアホース
4 :過膨張規制シート
5 :保護シート
図1
図2
図3
図4