(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ねじ
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20241212BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20241212BHJP
F16B 25/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F16B35/00 T
E04B1/26 Z
F16B25/00 Z
(21)【出願番号】P 2021067415
(22)【出願日】2021-04-13
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】517242751
【氏名又は名称】合同会社良品店
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】芳賀沼 養一
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3088293(JP,U)
【文献】特開2006-329254(JP,A)
【文献】特表2015-520832(JP,A)
【文献】実開昭58-074604(JP,U)
【文献】国際公開第2016/194842(WO,A1)
【文献】特開2009-210036(JP,A)
【文献】特開2006-118194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/00
F16B 25/00
E04B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ本体部と、前記ねじ本体部に備わるねじ山とを備え、前記ねじ山は、第1高さの第1ねじ山と、第2高さの第2ねじ山とを含み、前記第1高さは、前記第2高さよりも高
く、前記第1ねじ山と前記第2ねじ山とは、前記ねじ本体部において、ランダムな順序で備わり、前記ねじ山は、前記第1高さおよび前記第2高さのいずれとも高さの異なる第3高さの第3ねじ山を更に備える、ねじであって、
第1の木製の板材と、
前記ねじを挿入する第2のねじ孔を側面に備える第2の木製の板材と、
前記第2のねじ孔とは互い違いに形成され、前記ねじを挿入する第3のねじ孔を側面に備える第3の木製の板材と、
が接合された建築材ユニットに用いられ、
前記建築材ユニットは、
前記第2のねじ孔から挿入された前記ねじによって、第1の木製の板材と前記第2の木製の板材の側面同士が接合され、
前記第3のねじ孔から挿入された前記ねじによって、前記第3の木製の板材で前記第2の木製の板材の前記第2のねじ孔を塞ぐとともに前記第2の木製の板材と前記第3の木製の板材の側面同士を接合することにより、前記第1の木製の板材と前記第2の木製の板材と前記第3の木製の板材とが接合されている、ねじ。
【請求項2】
前記第1ねじ山および前記第2ねじ山の少なくとも一方は、ねじ本体部において逆V字形状の稜線形状を有する、請求項
1記載のねじ。
【請求項3】
ねじ本体部と、前記ねじ本体部に備わるねじ山とを備え、前記ねじ山は、第1高さの第1ねじ山と、第2高さの第2ねじ山とを含み、前記第1高さは、前記第2高さよりも高く、前記第1ねじ山と前記第2ねじ山とは、前記ねじ本体部において、ランダムな順序で備わり、前記ねじ山は、前記第1高さおよび前記第2高さのいずれとも高さの異なる第3高さの第3ねじ山を更に備える、ねじと、
第1の木製の板材と、
前記ねじを挿入する第2のねじ孔を側面に備える第2の木製の板材と、
前記第2のねじ孔とは互い違いに形成され、前記ねじを挿入する第3のねじ孔を側面に備える第3の木製の板材と、
を準備し、
前記ねじを前記第2の木製の板材の前記第2のねじ孔から挿入し、第1の木製の板材と前記第2の木製の板材の側面同士を接合し、
次いで、前記ねじを前記第3の木製の板材の前記第3のねじ孔から挿入し、前記第3の木製の板材で前記第2の木製の板材の前記第2のねじ孔を塞ぐとともに前記第2の木製の板材と前記第3の木製の板材の側面同士を接合することにより、前記第1の木製の板材と前記第2の木製の板材と前記第3の木製の板材とが接合された建築材ユニットを製造する、建築材ユニット
の製造方法。
【請求項4】
前記第1ねじ山および前記第2ねじ山の少なくとも一方は、ねじ本体部において逆V字形状の稜線形状を有する、請求項3記載の建築材ユニット
の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の建築材ユニットの製造方法で製造される、建築材ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製部材を始めとした部材の接合に用いられるねじに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な場所において、住宅、店舗、商業施設、公共施設、医療施設などの様々な種類で多くの建築物がある。これらの建築物は、その特性、大きさ、用途、要求スペックなどによって、使用される材料が選択される。特に、建築物の柱、梁、外壁、内壁、屋根、床などの構造体においては、コンクリート、新建材、木材、あるいはこれらの組み合わせが用いられる。勿論、建築物の基礎部分や、骨格部分などにおいても、コンクリート、新建材、木製部材、あるいはこれらの組み合わせが用いられる。
【0003】
また、コンクリート、新建材、木製部材以外の材料が用いられることもある。
【0004】
最近では、コンクリートだけではなく、柱、梁、外壁、内壁、屋根、床などの構造体に、新建材や木製部材が用いられることが多くなってきている。例えば、木製部材による外壁や床などが構成されることが増えてきている。住宅、店舗、公共施設などにおいては、木製部材により建築された建築物は、環境負荷を低減できるからである。
【0005】
また、居住者や利用者も、木製部材の建築物においては、心身のリラックスを感じることができる。勿論、居住性も高まるメリットがある。木製部材の建築物は、外気温に対する対応性が高い(夏では室内は涼しく、冬では室内は暖かい)、あるいは、室内湿度の適応性が高いといったメリットがある。このため、居住者や利用者の利便性も高まる。
【0006】
加えて、木製部材の建築物は、居住者や利用者の精神的なリフレッシュ効果をもたらす。特に我が国においては、過去から木製建築物が中心であったので、日本人の精神性に高いメリットがある。
【0007】
あるいは、新建材や特殊素材などにおいても、木製部材と同様の効果や異なる効果であってもコンクリートとは異なる建築物のメリットや良さを実現できることも多い。
【0008】
このようにコンクリート作りだけではなく、木製部材や新建材(あるいはこれらに準じる材料)が用いられる建築物は、今後ともに広まっていくものと考えられる。すなわち、木製部材や新建材(あるいはこれらに準じる材料)が、建築物の、柱、梁、外壁、内壁、屋根、床面など構造部に使用される。この使用により、住宅、店舗、公共施設などの建築物が建築される。
【0009】
ここで、木製部材や新建材などの材料が建築物に用いられる場合には、複数の板材を組み合わせて一体化した建材ユニットを製造する必要がある。例えば、木材の板材を、幅方向に接合して木製部材の建材ユニットとしたり、木材の板材を厚み方向に接合して木製部材の建材ユニットとしたりすることが行われる。
【0010】
新建材の建材ユニットでも、同様である。
【0011】
このような木材や新建材の板材を、幅方向に接合したり厚み方向に接合したりする場合には、(1)接着剤により接合する、(2)ねじなどの接続部材により接合する、(3)これらの併用、あるいは別の手段が用いられる。板材が接合されることで、外壁や内壁などの壁材や構造材としての建材ユニットが製造されるからである。
【0012】
ここで、(1)の接着剤が用いられる場合であるが、厚み方向の接合であれば一定の強度は発揮できるが、幅方向の接合の場合には強度不足が否めない。幅方向の接合は、板材の側面での接着に過ぎず、接着面積が小さすぎるからである。また、厚み方向であっても幅方向であっても、接着剤そのものの接合強度の不十分さや、熱(高温、低温の両方)、経年劣化、風雨などの外部環境の影響により、接着剤による接着力が減少してしまう問題も生じる。このような接着剤で接合された建材ユニットで建築された建築物は、耐久性や耐候性に劣る懸念がある。
【0013】
このため、木材や新建材の板材を、幅方向や厚み方向に接合するのに、(2)のようにねじなどの接続部材が使用される。ねじは板材を接合して、接合されることにより建材ユニットが製造される。
【0014】
このようなねじについて、幾つかの技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2018-189244号公報
【文献】特開2020-109321号公報
【文献】特開2020-133661
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1は、頭部10と軸部20とを備え、軸部20は、めねじ部材110と締結を行う通常ねじ山21を形成した通常ねじ部22と、通常ねじ部22に対して軸部先端側に設けられ通常ねじ山21より小径で同一ピッチの案内ねじ山25が形成された案内ねじ部265、案内ねじ部26のさらに軸部先端側に設けられた円筒状ガイド24と、を有するおねじ部材において、前記案内ねじ山25と円筒状ガイド24との間にねじ無し領域29を設け、案内ねじ山25の先端25eと円筒状ガイド24との間に軸方向の隙間gを設け、案内ねじ山25の谷部の外周面は、通常ねじ山の谷径と同一径で、ガイドより小径の円筒面となっていることを特徴とするおねじ部材を開示する。
【0017】
特許文献1に開示されるねじは、ねじの先端でのねじ山の高さが、他の部分のねじ山の高さよりも低いことで、ねじ孔に挿入することを容易化することを目的としている。
【0018】
しかしながら、ねじ孔への挿入が容易となっても板材の接合強度を向上させることはできない。従来の一般的なねじと同様である。これは、板材を厚み方向に接合する際にも接合強度を上げることができない。さらには、板材の側面同士を接合される幅方向の接合では、その強度は更に不十分である。接合強度が不十分であることで、建築物に使用された後での、耐久性、耐候性、環境対応力、経年劣化に対する耐久性などが不十分となる。すなわち、木製部材などを利用した建築物の耐久性や強度も向上させることができない。
【0019】
特許文献2は、始端頭部1と、始端頭部1と一体に連続接続した杆体2とを備える。杆体2は、主杆部21及び終端部22を有する。主杆部21及び終端部22は、第1の端部及び第2の端部をそれぞれ有し、主杆部21の第1の端部が始端頭部1側に設けられる。主杆部21の第2の端部と終端部22の第1の端部とが接続され、終端部22の第2の端部には、角錐端221が形成される。終端部22の直径は、主杆部21の直径より小さい。主杆部21上には、第2の端部から第1の端部に向かって螺旋状に延びた第1のねじ山23が形成される。終端部22上には、第2の端部から第1の端部に向かって螺旋状に延びた第2のねじ山24が形成される。第2のねじ山24と第1のねじ山23とが接続され、終端部22上には、複数のドリルユニット25が形成されるねじ構造を開示する。
【0020】
特許文献2は、特許文献1と同様の問題を有する。また、木製部材などの板材を幅方向に接合する場合には、接合力を高める工夫を有していない問題がある。特許文献2の技術は、ねじをうけるナットなどがある場合には接合力が上がるかもしれないが、ナットを必要とすると、板材を幅方向に連続的に接合できない問題がある。
【0021】
特許文献3は、ねじ軸本体に設けられたねじ山のフランク面131に部分的に凹部7が設けられたねじにおいて、凹部7が形成された部分のねじ山13は、正規のねじ山3よりも小さく、かつ、ねじ込み方向の先端部における山高さH12がねじ込み方向Wの後端部H11における山高さより低くなっていることを特徴とするねじを開示する。
【0022】
特許文献3は、特許文献1と同じ問題を有している。すなわち、板材の接合強度を向上させることが不十分である問題である。また、接合強度が不十分であることで、この建材ユニットで建築された建築物は、強度や耐久性において劣る問題につながる。
【0023】
以上のように、従来技術においては、木製部材などの板材を接合するのに十分な強度を発揮できない問題があった。
【0024】
本発明は、これらの課題に鑑み、板材を接合するのに十分な強度や接合後の耐久性を実現できるねじを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明のねじは、ねじ本体部と、
前記ねじ本体部に備わるねじ山とを備え、
前記ねじ山は、第1高さの第1ねじ山と、第2高さの第2ねじ山とを含み、
前記第1高さは、前記第2高さよりも高く、
前記第1ねじ山と前記第2ねじ山とは、前記ねじ本体部において、ランダムな順序で備わり、前記ねじ山は、前記第1高さおよび前記第2高さのいずれとも高さの異なる第3高さの第3ねじ山を更に備える、ねじであって、
第1の木製の板材と、
前記ねじを挿入する第2のねじ孔を側面に備える第2の木製の板材と、
前記第2のねじ孔とは互い違いに形成され、前記ねじを挿入する第3のねじ孔を側面に備える第3の木製の板材と、
が接合された建築材ユニットに用いられ、
前記建築材ユニットは、
前記第2のねじ孔から挿入された前記ねじによって、第1の木製の板材と前記第2の木製の板材の側面同士が接合され、
前記第3のねじ孔から挿入された前記ねじによって、前記第3の木製の板材で前記第2の木製の板材の前記第2のねじ孔を塞ぐとともに前記第2の木製の板材と前記第3の木製の板材の側面同士を接合することにより、前記第1の木製の板材と前記第2の木製の板材と前記第3の木製の板材とが接合されている。
【発明の効果】
【0026】
本発明のねじは、第1高さのねじ山と第2高さのねじ山とが備わることで、板材の接合での接合強度が高まる。特に、木製部材や新建材などの板材を接合する際の接合力が高まる。加えて、板材同士の側面を繋げる方向での接合においても、その接合強度を実現できる。
【0027】
また、ねじそのものおよび接合状態での耐久性も高い。これにより、ねじで接合されて製造される建材ユニットの強度や耐久性も向上する。
【0028】
結果として、この建材ユニットで建築される建築物の強度や耐久性も向上する。特に、従来は木製部材の建材ユニットが使用しにくい部位でも、木製部材の建材ユニットを適用することができるようになる、
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明のねじを用いて板材同士を接合する作業を示す写真である。
【
図2】本発明のねじを用いて板材同士を接合する状態を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態1におけるねじの側面図である。
【
図4】本発明の実施の形態1におけるねじ1の引抜試験の比較結果である。
【
図5】本発明のねじにより側面方向で接合された2枚の板材の模式図である。
【
図6】本発明の実施の形態1におけるねじ山の拡大図である。
【
図7】本発明の実施の形態2における建築材ユニットの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1の発明に係るねじは、ねじ本体部と、
前記ねじ本体部に備わるねじ山とを備え、
前記ねじ山は、第1高さの第1ねじ山と、第2高さの第2ねじ山とを含み、
前記第1高さは、前記第2高さよりも高い。
【0031】
この構成により、接合力を高くすることができる。
【0032】
本発明の第2の発明に係るねじでは、第1の発明に加えて、前記ねじは、板材の側面方向での接合、もしくは、板材の厚み方向での接合に用いられる。
【0033】
この構成により、高い接合強度で板材同士を接合できる。
【0034】
本発明の第3の発明に係るねじでは、第2の発明に加えて、前記板材は、木製である。
【0035】
この構成により、木製の板材同士を接合した建築材ユニットを実現できる。
【0036】
本発明の第4の発明に係るねじでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、単数または複数の前記第1ねじ山と単数または複数の前記第2ねじ山とは、前記ねじ本体部において、交互に備わる。
【0037】
この構成により、接合強度が高まる。
【0038】
本発明の第5の発明に係るねじでは、第4の発明に加えて、前記ねじ本体部において、前記第1ねじ山と前記第2ねじ山とが交互に備わる。
【0039】
この構成により、製造が容易となることに加えて、ねじによる板材の接合強度が高まる。
【0040】
本発明の第6の発明に係るねじでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、前記第1ねじ山と前記第2ねじ山とは、前記ねじ本体部において、ランダムな順序で備わる。
【0041】
この構成により、より複雑な嵌合力と抵抗力を発揮して、接合強度を高めることができる。
【0042】
本発明の第7の発明に係るねじでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、前記ねじ山は、前記第1高さおよび前記第2高さのいずれとも高さの異なる第3高さの第3ねじ山を更に備える。
【0043】
この構成により、より接合強度を高めることができる。
【0044】
本発明の第8の発明に係るねじでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、前記第1ねじ山および前記第2ねじ山の少なくとも一方は、ねじ本体部において逆V字形状の稜線形状を有する。
【0045】
この構成により、ねじの差し込みにおいて、おがくずを排出しやすくできる。結果として密着度を高めて接合強度を高める。
【0046】
本発明の第9の発明に係る建築材ユニットは、請求項1から8のいずれか記載のねじと、
前記ねじを挿入するねじ孔を備える複数の板材と、を備え、
前記ねじにより、前記複数の板材が接合されている。
【0047】
この構成により、高い強度や耐久性を有する建築材ユニットを実現できる。
【0048】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0049】
(実施の形態1)
【0050】
(ねじを使った建築材ユニットの製造)
本発明のねじは、木材などを原料とする板材同士を接合するのに用いられる。
図1は、本発明のねじを用いて板材同士を接合する作業を示す写真である。木製の板材を側面同士で接合する。このとき、側面からねじを挿入してねじを回転させることで板材同士を接続する。ねじは、板材の中で、ねじ山とねじ溝により木材と嵌合する。この嵌合により、ねじは板材同士を接続する力を有して、板材を接合する。
【0051】
このとき、
図1のように、板材の表面(面積の広い部位)同士ではなく、板材の側面(面積の狭い部位)同士を接合することもありえる。後者の場合には、接合面積が小さいことで、接合後の強度や耐久性に不十分なことが生じる懸念もある。このため、ねじによる接合では、より強度と耐久性のある接合が求められる。すなわち、接合強度を高めるねじが必要となる。
【0052】
図2は、本発明のねじを用いて板材同士を接合する状態を示す説明図である。板材100同士を接合する必要がある。例えば、木製の板材同士を接合してより大きな単位の建築材ユニット200とする場合である。より大きな単位の建築材ユニット200は、住宅、施設などの様々な建築物の柱、梁、外壁、内壁、屋根、床面など構造部に使用される。例えば、壁材として、建築材ユニット200は使用される。
【0053】
また、板材100は、より広い表面積をもつ表面同士ではなく、
図2のように側面同士が接合されることがある。より広い面積をもつ建築材ユニット200を製造したい場合があるからである。上述したように、建築物の外壁や内壁などに使用される場合には、面積の大きな建築材ユニット200が必要だからである。これは、木製の板材100のみではなく、樹脂、新素材、その他の材料による板材同士を接合することも含む。
【0054】
ねじ1は、このような板材100同士を接合するのに用いられる。すなわち、
図2のように、板材100の側面同士を接合して、より面積の大きな建築材ユニット200の製造に用いられる。
図1は、この建築材ユニット200の製造を行う装置での作業を示したものである。
【0055】
もちろん、
図2のような側面同士の接合以外(表面同士の接合やその他の部位同士の接合)においても、ねじ1が使用されればよい。ねじ1によって、複数の板材100が接合される。これにより、建築材ユニット200が製造される。この建築材ユニット200は、建築物の様々な場所に使用できる。このため、
図2のように2枚の板材100のみだけではなく、3枚以上の板材100が接合されてもよい。
【0056】
ねじ1が、接合方向での板材100の1枚の長さよりも長ければ、2枚の板材100を
図2のように接合できる。このねじ1による接合を、板材100において互い違いにすれば、3枚以上の板材100を接合することができる。あるいは、接合方向での板材100を2枚以上の長さよりも長いねじ1であれば、3枚の板材100を、一度に接合することができる。
【0057】
このように、異なる長さのねじ1を使い分けたり、板材100の接合順序とねじ1の配置を工夫したりすることで、3枚以上の板材100を接合して、より大きな建築材ユニット200を製造することもできる。
【0058】
このような建築材ユニット200を板材100によって製造するのに、ねじ1が用いられるので、ねじ1には、強い嵌合力や接合力が求められる。特に、板材100を接合する際に、接着剤を用いずに、ねじ1だけで接合することもある。接着剤を用いると、板材100に変質が生じたりすることがあるからである。あるいは、接合して得られる建築材ユニット200の柔軟性が失われるなどの問題がある。
【0059】
このような理由もあって、ねじ1による機械的・物理的接合により、複数の板材100から建築材ユニット200が製造されることが行われる。
【0060】
(ねじ1)
図3は、本発明の実施の形態1におけるねじの側面図である。
図2で説明したねじ1を側面から見た状態を示している。ねじ1は、ねじ本体部2とねじ本体部2に備わるねじ山3を備える。ねじ山3は、ねじ本体部2の外周にスパイラル状に形成された凸部である。
【0061】
このスパイラル状に形成された凸部がねじ山3となることで、先端7から板材100に挿入されて行くことで、ねじ1は板材100を接合できる。ねじ山3以外の部分は、溝となる。また、ねじ1の頭部6には、工具に合わせた凹部がある。この凹部に工具が嵌められてねじ1が板材100に挿入される。
【0062】
ここで、ねじ山3は、第1高さの第1ねじ山4と第2高さの第2ねじ山5を含む。第1高さは第2高さよりも高い。すなわち、第1ねじ山4は、第2ねじ山5よりも高いねじ山となっている。このように、ねじ1は、高さの異なる第1ねじ山4と第2ねじ山5とを混在して備えている。
【0063】
このように第1高さの第1ねじ4と第2高さの第2ねじ山5とが混在していることで、ねじ1の接合力が高まる。第1ねじ山4と第2ねじ山5の高さが異なることで、ねじ山3が板材100の内部での密着度が高まる。特に、第1高さの第1ねじ山4による板材100内部での密着と、第2高さの第2ねじ山5による板材100内部での密着との物理的位置や物理的体積が異なる。この異なった状態が混在することで、ねじ1は、板材100の接合強度を高めることができる。
【0064】
ねじ1による板材100同士の接合強度は、接続されている板材100同士を逆方向に引っ張ったときに、ねじ1による接合が外れるかどうかで把握される。あるいは、ねじ1を板材100から引き抜くときの耐久力により把握される。
【0065】
高さの異なる第1ねじ山4と第2ねじ山5とが板材100を接合している。これにより、高さの異なる密着が混在して板材100内部にある。このため、引抜き圧力が加わっても、高い接合強度を維持できる。
【0066】
異なる高さでの密着が混在していることで、引抜に対して、より複雑な抵抗力を発揮できる。第1ねじ山4と第2ねじ山5とが、異なる高さでの引抜圧力への抵抗を生じさせる。この異なる抵抗の組み合わせが、複雑な抵抗力を生み出す。この複雑な抵抗力によって、接合強度や耐久性が高まる。
【0067】
本発明の実施の形態1におけるねじ1は、このように異なる高さの第1ねじ山4と第2ねじ山5を混在させていることで、接合強度を高めることができる。接合強度が高いことで、接合後の耐久性も高い。
【0068】
また、第1ねじ山4と第2ねじ山5とは、ねじ本体部2において螺旋状の形状を形成する。また、第1ねじ山4と第2ねじ山5とは、V字状を有している。これにより、ねじ1が木材にねじ込まれる際には、おがくずを外に排出しやすい。おがくずを排出しやすいことは、木材の繊維を破壊しにくいことに繋がる。この結果、ねじ1と木材との密着度が上がる。すなわち、ねじ1は、板材100との接合強度を高めることができる。
【0069】
図4は、本発明の実施の形態1におけるねじ1の引抜試験の比較結果である。
図4では、スギ材の板材に本発明のねじ1と他の種類のねじとを入れて、それぞれを頭部から引っ張るときの荷重を測定した結果を示す。グラフにおいては、横軸が変位量である。変位量は、ねじ頭部から引き抜く荷重をかけて、板材から引き抜けた量を示す。
【0070】
ねじであるので、ねじ山が板材内部と嵌合している状態である。この状態で、ねじを頭部から引き抜く荷重を加える。この引抜荷重により、内部嵌合が弱まり(ねじ山とねじ溝による密着が外れる)、板材から引き抜かれていく。勿論、ねじを回して普通に取り外すこととは異なり、引っ張ることで強制的に引き抜く荷重付与である。
【0071】
この引き抜かれる荷重により、ねじが板材から引き抜けた量が横軸の変位量である。そして、ねじに加えた引抜の荷重が、
図4グラフの縦軸である。
【0072】
すなわち、ある引抜量(変位量)を実現するのに必要となる引抜荷重が縦軸の値である。
図4のグラフにおいては、同じ変位量を生み出す必要荷重(縦軸)が大きいほど、そのねじの接合力が高いことを示す。ここでは、本発明のねじ1と、他の種類のねじを比較例1~5として実験を行った結果が、
図4のグラフに示されている。
【0073】
ここで、比較例1~5のねじは、本発明のねじ1と異なり、高さの異なるねじ山を混在させているものではなく、一般的なねじである。
【0074】
(荷重のピークでの比較)
変位量において1.5mm位が、加える荷重(グラフにおいては試験力(単位はニュートン(N))がねじ1および比較例のいずれでもピークである。
【0075】
このピークとして必要となる(すなわち、ねじを1.5mm程度引き抜くために必要となる)荷重は、ねじ1がもっとも大きく1500N程度である。比較例では、1100N~1400N程度と低い。すなわち、比較例1~5は、本発明のねじ1に比較してより小さい荷重で、1.5mmの変位量を実現できる。
【0076】
言い換えると、ねじ1は、引抜荷重のピークとしても比較例1~5などのねじに比較して、引抜にはより大きな引抜荷重を必要とする。これは、ねじ1は比較例のねじに比べて、接合強度や接合後の耐久性が高いことを示している。
【0077】
(最大変位量での比較)
実験においては、変位量4mm程度が、最大変位量である。この4mmの変位量(引抜量)を生み出すのに必要となる引抜荷重(試験力)は、本発明のねじ1では1050N程度である。これに対して、比較例1~5では、500N~800N程度である。
【0078】
すなわち、ねじ1では、比較例1~5に比べて、より大きな引抜荷重を必要とする。結果として、ねじ1の接合強度は、比較例よりも高いことが分かる。最大変位量で比較する場合でも、ねじ1の接合強度や耐久性が高いことが分かる。
【0079】
もちろん、
図4のグラフから、どの変位量であってもほぼねじ1における引抜荷重が大きいことが分かる。すなわち、板材に嵌合しているねじ1は、比較例のねじよりも、高い接合力を発揮していることがわかる。また、引抜に対して強いことは、経年により変化しうる接合の耐久性も高いことを示している。すなわち、ねじ1は、板材同士の接合力が高く、経年劣化に対する耐久性も高いことを示している。
【0080】
図4の実験結果からも、第1高さの第1ねじ山4と第2高さの第2ねじ山5が混在しているねじ1は、接合力が高いことが確認された。また、実験では、スギ材という木製板材を嵌合している場合である。すなわち、第1ねじ山4と第2ねじ山5を備えるねじ1は、木製板材の接合において、高い接合力や耐久性を発揮できる。
【0081】
(各部の詳細やバリエーション)
次に、各部の詳細やバリエーションについて説明する。
【0082】
(ねじによる板材の接合)
図5は、本発明のねじにより側面方向で接合された2枚の板材の模式図である。
図5は、接合後の状態を示している。
【0083】
ねじ1は、板材100の側面方向での接合に用いられる(
図5の状態)。あるいは、板材100の厚み方向での接合に用いられる。なお、接合とは固定した接続であり、板材100同士を接続することである。複数の板材100により、一つのユニットを構成できる。
【0084】
ねじ1は、
図5のように2枚の板材100を側面方向で接合できる長さを有している。この状態で、一方の板材100の側面から挿入されて、2枚の板材100を接合できる。
図4の実験結果でも説明したように、ねじ1の接合力は非常に高い。このため、
図5のように2枚の板材100が側面方向で接合される場合でも、構成される建築材ユニット200の構造強度も高くなる。
【0085】
ここで、板材100は、木製であることも多い。勿論、木製以外でもよいが、近年においては、その風合いや耐候性から木製建築物が好まれる傾向もある。あるいは、木製建築物の優位性により、木製建築物を施工することもある。
【0086】
このようなトレンドにより、木製の建築材ユニット200を必要とすることがある、木製の板材100は、木を原料とする以上、面積や厚みには限界がある。このため、複数の板材100を接合することで、面積や厚みを大きくした建築材ユニット200を構成することが必要となる。このため、
図5のように、ねじ1による接合を必要とする。
【0087】
このとき、板材100の側面方向での接合では、接合面の面積が小さいことから、ねじ1による高い接合力が必要である。ねじ1は、既述したように高い接合力を発揮できるので、
図5のような建築材ユニット200を構成することを確実にできる。
【0088】
(ねじ山)
ねじ山3は、第1高さの第1ねじ山4と第2高さの第2ねじ山5を含む。ここで、
図3に示されるように、第1ねじ山4と第2ねじ山5とが、交互に備わることでもよい。第1ねじ山4を形成するスパイラル状の凸部と、第2ねじ山5を形成するスパイラル状の凸部とを、ねじ本体部2に形成する。この形成により、第1ねじ山4と第2ねじ山5とが交互に備わる状態となる。
【0089】
交互に備わることで、接合力が高まる。
【0090】
このとき、複数の第1ねじ山4と複数の第2ねじ山5とが交互に備わるパターン、複数の第1ねじ山4と単数の第2ねじ山5とが交互に備わるパターン、単数の第1ねじ山4と複数の第2ねじ山5とが交互に備わるパターン、単数の第1ねじ山4と単数の第2ねじ山5とが交互に備わるパターン、といった形態がある。
【0091】
様々なパターンで高さの異なる第1ねじ山4と第2ねじ山5とが備わることで、接合力を高めることができる(接続力、嵌合力を高める)。
【0092】
また、第1ねじ山4と第2ねじ山5とが、ねじ本体部2においてランダムな順序で備わることも好適である。ランダムに備わることで、変則的な荷重に対する接合力や耐久性を高めることができる。
【0093】
もちろん、これら以外の配置となるように、第1ねじ山4と第2ねじ山5とが備わることでもよい。
【0094】
また、第1高さおよび第2高さのいずれとも異なる高さの第3高さの第3ねじ山が更に備わることも好適である。勿論、第4ねじ山が備わることもよい。このように、高さの異なる複数のねじ山が備わることも好適である。複数の異なる抵抗力が、板材との嵌合の中で生まれる。これにより、接合力や耐久力を更に高めることができるからである。
【0095】
図6は、本発明の実施の形態1におけるねじ山の拡大図である。ねじ1のねじ山の形状を強調して示している。
図6に示されるように、第1ねじ山4および第2ねじ山5の少なくとも一方は、ねじ本体部2において、逆V字形状の稜線形状を有する。
【0096】
稜線形状がこのような逆V字形状であることで、ねじ1が木製の板材に嵌合する際に、おがくずを外にかき出しやすくなる。嵌合の際に発生するおがくずを外に出せると、ねじ1のねじ山とねじ溝と、板材100内部との密着度を高めることができる。密着度が高いことは、ねじ1による板材100の接合強度を上げることに繋がる。
【0097】
また、おがくずが排出されていれば、接合状態にあるときに、板材100内部のねじ1の周囲は、木製部分であり粉砕されたおがくずではない。このため、密着しているのが固形状態であるので、密着による嵌合力が高い。粉体であるおがくずの場合には、密着していても嵌合力が弱くなってしまう。
【0098】
このように、逆V字状の稜線形状であることで、ねじ1はおがくずを出しながら嵌合する。この結果、密着度が高まる上に、密着部分は固体部であるので嵌合力も強くなる。こうして、接合力や接合後の耐久性も高まる。
【0099】
以上のように、実施の形態1におけるねじ1は、板材100同士を、高い接合力で接合できる。特に、木製の板材100同士の接合強度と耐久性を高めることができる。これにより、複数の板材100同士を接合して、面積や厚みを大きくする建築材ユニット200を製造できる。これにより製造されて建築材ユニットは、高い強度や耐久性をもって、建築物に使用できる。
【0100】
(実施の形態2)
【0101】
図7は、本発明の実施の形態2における建築材ユニットの模式図である。3つの板材100が面積方向(側面同士)で、ねじ1により接合されている。この接合により、面積が大きくなった建築材ユニット200である。複数のねじ1により、3枚の板材100が接合されている。
【0102】
板材100には、ねじ1が挿入されるねじ孔110も備わっている。このねじ孔110からねじ1が回されて挿入される。ねじ孔110は、板材100の側面に備わる。この側面のねじ孔110からねじ1がさしこまれる。ねじ1は、側面方向に繋がる板材100を接合する。これにより、
図7に示されるような建築材ユニット200が製造される。
【0103】
板材100は、木製であることもよい。これにより、木製の板材100の接合での木製の建築材ユニット200が製造される。このような建築材ユニット200は、木製建築物の壁材や床材などに使用される。
図7のように、単体の板材100よりも面積が拡大された建築材ユニット200が製造されることで、建築物の様々な場所に好適に使用できる。結果として、木製建築物が、容易に建築できる。
【0104】
実施の形態1で説明したように、ねじ1の接合力や耐久性は、他のねじよりも高い。これにより、製造された建築材ユニット200は、高い強度や耐久性を有する。すなわち、建築物の強度や耐久性も高くなる。
【0105】
ねじ1が接合に使用されることで、板材100(特に、木製の板材)同士が接合されて製造される建築材ユニット200は、強度および耐久性を備えることができる。この建築材ユニット200が壁材や床材に使用される建築物の強度や耐久性を向上させる。
【0106】
木材を原料とする建築材ユニット200が壁材や床材に使用されることで、木材の風合いややさしさ、また保温・吸湿などの木材独特のメリットを享受した建築物を実現できる。居住者や使用者にとってのメリットも高めることができる。
【0107】
実施の形態1、2で説明したねじ1は、
図8のように実際に製造される。
図8は、製造された本発明のねじの写真である。
図8の写真にあるように、ねじ1は、第1ねじ山4と第2ねじ山5とを備えている。第1ねじ山4は第1高さを有し、第2ねじ山5は第2高さを有する。第1高さが第2高さよりも高い。なお、この高さは、ねじ本体部2の表面からの突出高さである。
【0108】
以上、ねじ1を用いた建築材ユニット200は、高い強度と耐久性により、建築物の材料に適している。特に、木製の場合にも適している。
【0109】
以上、実施の形態1~2で説明されたねじ1および建築材ユニットは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0110】
1 ねじ
2 ねじ本体部
3 ねじ山
4 第1ねじ山
5 第2ねじ山
6 頭部
7 先端
100 板材
200 建築材ユニット