IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社石井鐵工所の特許一覧

<>
  • 特許-冷却用衣服 図1
  • 特許-冷却用衣服 図2
  • 特許-冷却用衣服 図3
  • 特許-冷却用衣服 図4
  • 特許-冷却用衣服 図5
  • 特許-冷却用衣服 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】冷却用衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20241212BHJP
   A41D 13/005 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/005 103
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021192589
(22)【出願日】2021-11-26
(65)【公開番号】P2023079120
(43)【公開日】2023-06-07
【審査請求日】2024-05-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年11月27日~令和3年8月31日に取引先に販売 (2)令和3年8月11月に醍醐倉庫蔵出し楽天市場店(オンラインショップ)、ウェブサイト(https://item.rakuten.co.jp/daigo-kuradashi/ihv-04j-set/)への掲載により公開 (3)令和3年8月11月にYahoo!ショッピング(オンラインショップ)、ウェブサイト(https://store.shopping.yahoo.co.jp/dyn/03092ihv-04j-set.html?sc_i=shp_pc_search_itemlist_shsrg_img)への掲載により公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000147729
【氏名又は名称】株式会社石井鐵工所
(72)【発明者】
【氏名】石井 宏治
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 裕光
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-002455(JP,A)
【文献】特開2020-158895(JP,A)
【文献】特開2021-088788(JP,A)
【文献】特開2012-007597(JP,A)
【文献】登録実用新案第3173198(JP,U)
【文献】登録実用新案第3173011(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0220721(US,A1)
【文献】国際公開第2020/246139(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/002
A41D 13/005
A41D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の身体を冷却する冷却用衣服であって、
前記冷却用衣服本体は、その裾部が着用者の腰骨よりも上に位置する着丈とした後身頃と該後身頃に繋がる前身頃とからなり、
前記後身頃は、
前記後身頃上方の中央部に設けられ、パネル材或いは保冷剤を収容することができる中央ポケットと、
前記中央ポケットに少なくとも部分的に重ね合わせて配置され、かつ前記後身頃の中心線から左右振り分け位置に互いに離隔して設けられ、保冷剤を収容することができる二つの上部ポケットとを備えており、
作業服の内側に装着し、該作業服の外側にフルハーネス型安全帯を装着した際に、
前記上部ポケットのそれぞれに収容した保冷剤と、
前記フルハーネス型安全帯のベルト及びD環止めが同じ位置とならないように前記上部ポケットを配置した、冷却用衣服。
【請求項2】
前記冷却用衣服は、
前記中央ポケットの下方に離隔して設けられたファンポケットと、
前記ファンポケットに収容された小型ファンとを備えており、
前記保冷剤を収容した二つの前記上部ポケットの間に、前記小型ファンから上方に向けて送風される空気の流路を形成する、請求項1に記載の冷却用衣服。
【請求項3】
前記中央ポケットに前記パネル材を収容し、
前記パネル材は、軟質樹脂で形成された、薄板状部材又はハニカム状部材とする、請求項に記載の冷却用衣服。
【請求項4】
前記小型ファンは、
遠心ファンと、
前記遠心ファンを収納する偏平な略直方体形状のケーシングと、
前記ケーシングの一方の偏平面に開口された吸込口と、
前記ケーシングの上端面に開口された吹出口と、
前記ケーシングの前記偏平面に対向する位置に取付けられた前面カバーとを備え、
前記小型ファンは、前記吸込口から空気を吸い込むための空間部が前記前面カバーと前記偏平面との間に形成されたものである、請求項2又は3に記載の冷却用衣服。
【請求項5】
前記小型ファンは、該小型ファンのモータを断続運転させるON-OFF制御部を備えており、
前記ON-OFF制御部は、前記冷却用衣服に取付けた温度センサ又は湿度センサで検知した温度又は湿度が設定値を超えた場合に電源をONし、設定値以下となった場合に電源をOFF作動するようにした電子回路で構成したON-OFF制御部とする、請求項ないし4のいずれかに記載の冷却用衣服。
【請求項6】
前記小型ファンは、該小型ファンから送風する風量を予め設定した時間間隔毎に変化させる風量制御部を備えており、
前記小型ファンの外部又は内部に設置した温度センサ及び又は湿度センサが、予め設定した上限値を検知すると、前記風量制御部を経由して、前記小型ファンの風量を増加させ、前記温度センサ及び又は前記湿度センサが、予め設定した下限値を検知すると、前記小型ファンの風量を少なくするようにフィードバック制御する、請求項ないし5のいずれかに記載の冷却用衣服。
【請求項7】
前記冷却用衣服は、
前記後身頃の幅方向の中心寄りに縫合され、保冷剤を収容することができる中心寄りポケットと、
前記中心寄りポケットと部分的に重なり合って配置され、前記着用者が前記冷却用衣服を着用した際に前記着用者の脇の下に位置し、保冷剤を収容することができる脇下ポケットとをさらに備え、
前記中心寄りポケットと前記脇下ポケットが前記後身頃下部の左右対称のそれぞれの箇所に設けられている、請求項1ないし6のいずれかに記載の冷却用衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着用者の身体を冷却する冷却用衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、暑熱環境下における作業者の熱中症防止や作業能率の低下防止を目的に、ファンや保冷剤を用いて身体を冷却する空調衣服や冷却衣服が提案されている。
【0003】
例えば、作業用の衣服の両側面に開口部を設け、この開口部に送風ファンを臨ませて配設し、携帯可能な電源により駆動される送風ファンを駆動することにより、外気を衣服内に取り入れ、袖口或いは首周りから排出して冷却し、暑熱環境下において快適に作業できるようにする作業用の衣服が開示されている。(特許文献1)
【0004】
また、後面布の収納ポケットに背中を冷却するための冷却材を、前面布の収納ポケットに脇の下方を冷却するための冷却材をそれぞれ収納できるようにしたナイロンメッシュ素材のベスト型の冷却機能を有する作業用の衣服が開示されている。(特許文献2)
【0005】
さらに、衣服の背面に設けた取付口に、外気を取り込む空気取入口と衣服内に空気を送出する空気送出口を有する軸流ファンを装着すると共に、取付口の上方に設けたポケットに保冷剤を収納し、衣服内に送出された外気を保冷剤で冷却した冷却風を衣服内に循環させて、衣服の襟元部に備えた排出路等から冷却風を排出するようにした冷却衣服が提案されている。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】登実3198778号公報
【文献】特許第3655835号公報
【文献】特許第6233674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の空調衣服や冷却衣服では、空気の流れが取入口から送出口に向けてファンの回転軸に沿って流れる軸流ファンが主に使用されており、軸流ファンを側面や背面等に備えた空調衣服では、着用者の身体の特定部位に強い風を間断なく当て続けることになるため、長時間着用する場合には、着用者に不快感や疲労感をもたらすことがある。
また、涼風効果を高める大風量の軸流ファンは、騒音が大きく、会話の障害になったり、空調衣服や冷却衣服の全体に風を孕ませて膨らませることから作業の支障になったりすることがある。
【0008】
従来の作業服や空調衣服の内側に着用する保冷剤利用の冷却衣服では、衣服内の換気が十分に行われない状況においては、衣服内湿度が高くなり、発汗で濡れた下着は乾き難くなることから、着用者は反って不快になることがある。
【0009】
また、大風量の軸流ファンを装備し、かつ保冷剤を併用して冷却効果を高めようとする空調衣服においては、暑い外気が大量に冷却衣服内に取り込まれることにより、保冷材の保冷効果の保持時間が短くなる傾向にある。
【0010】
空調衣服や冷却衣服の上からフルハーネス型安全帯を装着する場合、フルハーネス型安全帯の装着位置を考慮されていない衣服では、フルハーネス型安全帯の付属品の重さやベルトの締め付けにより、衣服内の空気の流路が閉ざされて、衣服内空気の滞留を生じ、着用者の汗の蒸発を阻害する傾向にある。
【0011】
更には、従来の冷却衣服に縫合されて所定の位置に固定される保冷剤を収容するポケットは、冷却部位の調整や、空気の流路確保のための保冷剤の位置の調整、或いは冷却効率を向上させるためのファンと保冷剤との相対位置を調整することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
着用者の身体を冷却する冷却用衣服であって、
前記冷却用衣服本体は、その裾部が着用者の腰骨よりも上に位置する着丈とした後身頃と該後身頃に繋がる前身頃とからなり、
前記後身頃は、
前記後身頃上方の中央部に設けられ、パネル材或いは保冷剤を収容する中央ポケットと、
前記中央ポケットに少なくとも部分的に重ね合わせて配置され、かつ前記後身頃の中心線から左右振り分け位置に互いに離隔して設けられ、保冷剤を収容する二つの上部ポケットと、
前記中央ポケットの下方に離隔して設けられたファンポケットと、
前記ファンポケットに収容された小型ファンとを備えており、
前記保冷剤を収容した二つの前記上部ポケットの間に、前記小型ファンから上方に向けて送風される空気の流路を形成する、冷却用衣服を提供する。
【0013】
また、本発明は、
前記冷却用衣服は、伸縮性及び通気性を有するメッシュ素材で形成し、
前記ファンポケットは、上部を開口するように前記後身頃に縫合され、前記小型ファンが空気を取入れることができる網目の大きいメッシュ素材で形成する、前記の冷却用衣服を提供する。
【0014】
本発明はさらに、
前記パネル材は、軟質樹脂で形成された、薄板状部材又はハニカム状部材とする、前記の冷却用衣服を提供する。
【0015】
本発明はさらに、
前記小型ファンは、
遠心ファンと、
前記遠心ファンを収納する偏平な略直方体形状のケーシングと、
前記ケーシングの一方の偏平面に開口された吸込口と、
前記ケーシングの上端面に開口された吹出口と、
前記ケーシングの前記偏平面に対向する位置に取付けられた前面カバーとを備え、
前記小型ファンは、前記吸込口から空気を吸い込むための空間部が前記前面カバーと前記偏平面との間に形成されたものである、
前記の冷却用衣服を提供する。
【0016】
本発明はさらに、
前記小型ファンは、該小型ファンのモータを断続運転させるON-OFF制御部を備えている、前記の冷却用衣服を提供する。
【0017】
本発明はさらに、
前記小型ファンは、該小型ファンから送風する風量を予め設定した時間間隔毎に変化させる風量制御部を備えている、前記の冷却用衣服を提供する。
【0018】
本発明はさらに、
作業服の内側に装着し、該作業服の外側にフルハーネス型安全帯を装着した際に、
前記上部ポケットのそれぞれに収容した保冷剤と、
前記フルハーネス型安全帯のベルト及びD環止めが同じ位置とならないように前記上部ポケットを配置した、
前記の冷却用衣服を提供する。
【0019】
本発明は、作業服の内側に着用することにより、作業服内を効率的に冷却するとともに、蒸発した汗を作業服の外側に円滑に排出することが可能な冷却用衣服を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態に係る冷却用衣服の使用状態を示す背面の表面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る冷却用衣服の内面のポケットの構造を示す正面展開図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る小型ファンを設けた冷却用衣服の使用状態を示す説明図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る小型ファンの詳細構造を示す説明図である。
図5図2のポケット部のA―A線の平面図である。
図6図2のポケット部のB―B線の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る冷却用衣服の実施形態例について図1から図6を参照しながら説明する。本発明は下記の実施形態にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で下記の構成要素の省略または付加、構成要素の形状等の実施形態の変更を加えることが出来るのはもちろんである。なお、図は概略を示すもので、一部のみを描き詳細構造は省略した。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態に係る冷却用衣服の使用状態を示す背面の表面図である。
冷却用衣服1は、作業服60の内側に着用され、着用者50の身体を冷却するための冷却手段を設けた冷却用衣服1である。
冷却用衣服1本体は、その裾部1aが着用者50の腰骨よりも上に位置する着丈としたものである。
冷却用衣服1は、着用者50の後側を覆う後身頃3と、後身頃3に繋がる、着用者50の前側を覆う前身頃2とから構成され、着用者50の腕を通す袖ぐり部32を備えている。なお、前身頃2は、前立てに位置し、着脱自在に連結できるバックル等の連結具4を備えている。
【0023】
後身頃3には複数のポケットからなるポケット部6が設けられている。
ポケット部6は、後身頃3上方の中央部に設けられ、パネル材12或いは保冷剤5を収容する中央ポケット7と、中央ポケット7に部分的に重なり合って、後身頃3の中心から左右振り分け位置に互いに離隔して設けられ、保冷剤5を収容する二つの上部ポケット8、8と、中央ポケット7の下方に離隔して設けられ、上方に向けて送風する小型ファン20を収容するファンポケット11で構成されている。
なお、図1のように、後身頃3下部の左右対称のそれぞれの箇所において、部分的に重なり合った中心寄りポケット9、脇下ポケット10を設けても良い。
【0024】
中央ポケット7にパネル材12を収容し、二つの上部ポケット8、8のそれぞれに20~30mm程度の厚みを有する保冷剤5を収容した時に二つの上部ポケット8、8の間に、小型ファン20から送風される空気の流路13を形成することができる。
小型ファン20から上向きに排出される空気は、二つの上部ポケット8、8間に形成された空気の流路13を介して、作業服60の襟口61から外側に排出される。
中央ポケット7にパネル材12を収容することにより、着用者50が冷却用衣服1を着用し、その外側に作業服60を着用し、かつ作業服60の外側にフルハーネス型安全帯40を装着した際に、フルハーネス型安全帯40のベルト41及びベルト41のクロス部に位置するD環止め42を、パネル材12で支持することが可能となり、小型ファン20から上方の作業服60の襟口61に向かって送風される空気の流路13が閉塞されることを防止することができる。
【0025】
冷却用衣服1は、作業服60の外側にフルハーネス型安全帯40を装着し、上部ポケット8、8のそれぞれに保冷剤5を収容した時に、フルハーネス型安全帯40のベルト41及びD環止め42を保冷剤5と重ならない位置に配置することができる。図1に示す通り、冷却用衣服1の内面の上部ポケット8、8と下部の中心寄りポケット9、9の合計4つのポケットに保冷剤5を収容することにより、身体の冷却効果を向上することができる。
着用者50がフルハーネス型安全帯40を装着しない場合は、パネル材12の代わりに、中央ポケット7に保冷剤5を収容することにより、着用者50の背中中心部を冷却することもできる。また、中央ポケット7にパネル材12、保冷剤5のどちらも収容しない構造とすることもできる。
【0026】
冷却用衣服1は、図1で示すように、高温環境下で作業等を行う者が着用するベストであって、作業服60の内側に着用され、着用者50の身体を冷却することが可能である。
図1図5図6は着用者50が下着70を着用し、その外側に冷却用衣服1を着用し、その外側に作業服60を着用し、作業服60の外側にフルハーネス型安全帯40を装着する事例を示している。着用者50が下着70を着用せずに身体に冷却用衣服1を直接着用することもできる。
なお、冷却用衣服1は、袖付きのシャツやジャケット等でも良く、作業服60を着用せずに、冷却用衣服1の外側から直接フルハーネス型安全帯を装着することもできる。
【0027】
保冷剤5は、ポリエチレン(PE)、ナイロン(PA)からなる略直方体の袋体である。保冷剤5の成分は、水と高吸水性ポリマーであり、袋体内に格納されている。保冷剤5は、冷凍庫で冷凍した後に、ポケット部6に収容する。
また、保冷剤5は、袋体の身体側に接する面を冷却面とし、袋体の後身頃3の内面側に接する面が断熱面となるように上部ポケット8に収容される。断熱面は、冷却面と比較し、水と高吸水性ポリマーを覆う袋体の側面部の厚みを増し、断熱性を確保している。
保冷剤5は、略プレート形状の一部分が着用者50の身体の姿勢に応じて身体の幅方向に沿って屈曲し、身体側に密接する構造とすることもできる。
【0028】
図2は、本発明の一実施の形態に係る冷却用衣服の内面のポケットの構造を示す正面展開図である。
冷却用衣服1本体は、伸縮性及び通気性を有するメッシュ素材とする。
具体的には、網目状の優れたストレッチ素材の生地を使用し、縫製には静電気防止糸を使用する。
なお、中央ポケット7、左右一対の上部ポケット8、8の生地は、小型ファン20からの風を通すように、通気性を有する立体メッシュ布地としても良い。
【0029】
冷却用衣服1は、上部と、下部の左右対称のそれぞれの箇所において、保冷剤5或いはパネル材12を収容することができるポケット部6が設けられている。
上部のポケット部6は、冷却用衣服1の後身頃3の幅方向Xの中心部に縫合部17で縫合された中央ポケット7と、中央ポケット7と少なくとも部分的に重なり合って配置され、後身頃3の幅方向の中心線Lの両側の左右対称位置に設けられた上部ポケット8、8で構成された二重ポケット構造とする。上部ポケット8、8は、冷却用衣服1の幅方向Xの左右対称位置に配置された、左側と右側の上部ポケット8、8の2つで構成され、左側と右側のそれぞれの上部ポケット8、8は、一部分が中央ポケット7と縫合部19で縫合され、他の部分が冷却用衣服1の後身頃3と縫合部18で縫合されている。
下部のポケット部6は、冷却用衣服1の幅方向Xの中心寄りに縫合部16で縫合された中心寄りポケット9と、中心寄りポケット9と部分的に重なり合って配置された、脇下ポケット10で構成されている。脇下ポケット10は、冷却用衣服1着用時に着用者50の脇の下に位置するポケットである。脇下ポケット10は、一部分が中心寄りポケット9と縫合部14で縫合され、他の部分が冷却用衣服1の後身頃3と縫合部15で縫合されている。
それぞれのポケット部6は、上部に設けられた出し入れ口部を開閉可能に閉じる面ファスナからなる閉鎖手段31が設けられている。ポケット部6に保冷剤5或いはパネル材12を収容した後、それぞれの出し入れ口部を閉鎖手段31で着脱自在に結合でき、保冷剤5或いはパネル材12の脱落を防止することができる。それぞれのポケット部6は、概ね同じ大きさとし、それぞれのポケット部6に同じ大きさの保冷剤5を収容できるように縫合されている。
なお、図2の中央ポケット7は、二つの上部ポケット8、8と少なくとも部分的に重ね合わせた実施態様を示しているが、中央ポケット7と二つの上部ポケット8、8の全体が重なる大きさ、配置としても良い。
【0030】
パネル材12は、軟質樹脂からなる薄板状部材とすることができる。
軟質樹脂からなるパネル材12は、中央ポケット7に収容した時に、ポケット部6と着用者50の身体側或いは下着70側との間に空気の流路13を確保できるように支持し、身体の姿勢に対応して柔軟に変形させることができる。軟質樹脂は、軟質塩化ビニール或いはゴムスポンジ等の柔軟性を有するものとする。
なお、パネル材12として、軟質塩化ビニールやゴムスポンジに比べて柔軟性は劣るが、ポリカーボネート等、更に形状を保持できるものを使用することもできる。
また、パネル材12は、薄板状部材の他に、ハニカム状部材で形成することもできる。
ハニカム状部材は、立体メッシュ布地の上層及び下層をハニカム(六角形)構造の網状に形成し、上層と下層を複数の支持糸で繋いだ構造とすることができる。
フルハーネス型安全帯40のベルト41やD環止め42等による外力でパネル材12が容易に屈曲することがなく、小型ファン20から上方の作業服60の襟口61に向かって送風する空気の流路13を安定して確保することができる。
【0031】
図3は、本発明の一実施の形態に係る小型ファンを設けた冷却用衣服の使用状態を示す説明図である。
後身頃3には、小型ファン20を収容保持し、上部に開口部が形成されたファンポケット11が取り付けられ、ファンポケット11は、外気を取り込むことができる網目の大きいメッシュ素材とし、ファンポケット11に収容された小型ファン20から上向きの送風が実現される。
ファンポケット11は、図3に示すように、冷却用衣服1の後身頃3の中心部の下部に設けられる。中央ポケット7の下方に設けられることが好ましい。
ファンポケット11は、小型ファン20が冷却用衣服1内の空気を取り込めるように、中央ポケット7や上部ポケット8と比較して網目の大きいメッシュ素材を使用することが好ましい。
また、ファンポケット11は、小型ファン20を収容した際に、小型ファン20の遠心ファン22の吸込口23或いは吹出口24と対向する位置に開口部を設けた構造としても良い。
なお、ファンポケット11は、小型ファン20がファンポケット11内から脱落しないように、上向きの送風ができる大きさの開口部が上部に部分的に設けられた袋状や箱状の構造を採用することもできる。また、袋状や箱状のファンポケット11に面ファスナーが設けられ、面ファスナーを開閉することで、小型ファン20を挿脱する構造とすることもできる。
さらに、ファンポケット11を冷却用衣服1の裾部1aに設ける構造としても良い。
【0032】
図4は、本発明の一実施の形態に係る小型ファンの詳細構造を示す説明図である。(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
小型ファン20は、遠心ファン22と、遠心ファン22を収納する偏平な略直方体形状のケーシング21とを備えている。
ケーシング21は、下端面21a、偏平面21b、上端面21cからなる偏平な略直方体形状の筐体である。
ケーシング21は、一方の偏平面21bに開口された吸込口23と、上端面21cに開口された吹出口24と、偏平面21bに対向する位置に取付けられた前面カバー25とを備えている。
ケーシング21は、吸込口23から空気を吸い込むための空間部が前面カバー25と偏平面21bとの間に形成されている。
なおケーシング21及び前面カバー25は合成樹脂で成形されている。
小型ファン20は、遠心ファン22と対向する位置に空間部を介して前面カバー25を有しているため、遠心ファン22と着用者50の身体又は下着70が接した際に、外気を取り込むための空間部が確保される。
前面カバー25は、ケーシング21上部に固定部26で着脱自在に固定される。
ケーシング21は、遠心ファン22の回転により、ケーシング21の下方や側方から吸込口23を介して空気Wsが吸い込まれ、吹出口24から空気Wpを上方に向けて吹き出す。
なお、ファンポケット11を前面カバー25とケーシング21の偏平面21bで挟持し、ファンポケット11のメッシュの間に固定部26を挿通することにより、小型ファン20をファンポケット11に固定することもできる。
【0033】
小型ファン20の種類は、遠心ファン、シロッコファン等である。
小型ファン20は、冷却用衣服1の後身頃3下部のファンポケット11に収容され、保冷剤5或いはパネル材12が収容されるポケット部6よりも下方に設けられ、遠心ファン22から上方に向かって送風される空気が当たる位置に保冷剤5が位置するようにする。
小型ファン20は、冷却用衣服1内の空気の流れを促進するものであり、図4に示すように、偏平な略直方体形状を呈している。小型ファン20は、吸込口23から冷却用衣服1内の空気を取り込み、吹出口24から上方に向けて送風を行うように機能する遠心ファン22本体の電源スイッチ27を有しており、内蔵するバッテリ29から電力の供給を受けて作動するように構成されている。
また、小型ファン20は、保冷剤5で冷やされた着用者50の汗の蒸散を促進することができ、風の強さを段階的に調節できるものが好ましい。
なお小型ファン20は携帯型とし、ファンポケット11から取り出して使用することも可能である。また小型ファン20は、ファンポケット11以外のポケット部6に収容することも可能である。
【0034】
図5は、図2のポケット部のA―A線の平面図である。
(a)~(d)は、それぞれのポケット部6に、保冷剤5或いはパネル材12を挿入した状態を示しており、保冷剤5或いはパネル材12を挿入した後は、それぞれのポケット部6の出し入れ口部を閉鎖手段31で着脱自在に結合でき、保冷剤5或いはパネル材12の脱落を防止することができる。
冷却用衣服1上部のポケット部6は、冷却用衣服1の幅方向Xの中心部に縫合された中央ポケット7と、中央ポケット7と部分的に重なり合って配置され、後身頃3の幅方向の中心線Lの両側の左右対称位置に設けられた二つの上部ポケット8、8で構成された二重ポケット構造とする。上部ポケット8、8は、冷却用衣服1の幅方向Xの左右対称位置に配置された、左側と右側の二つの上部ポケット8、8の2つで構成されている。
後身頃3と中央ポケット7は縫合部17で縫合されている。
上部ポケット8、8は、一部分が後身頃3と縫合部18で縫合され、他の部分が中央ポケット7と縫合部19で縫合されている。
なお、縫合部17、18、19は、静電気発生防止或いは帯電防止のために静電気防止糸を使用することが好ましい。
(a)は中央ポケット7にパネル材12を収容せず、上部ポケット8、8に保冷剤5を1個ずつ収容している状態を示しており、小型ファン20から上向きに排出される空気の流路13が作業服60側と着用者の下着70側、身体側との間に形成されている。
(b)は中央ポケット7にパネル材12を収容し、上部ポケット8、8に保冷剤5を1個ずつ収容している状態を示しており、後身頃3の中心部が身体側に入り込むことを防ぎ、小型ファン20から上向きに排出される空気の流路13を作業服60側と着用者50の下着70側、身体側との間において、確実に確保することができる。
(c)は、中央ポケット7に保冷剤5を収容している状態を示しており、着用者50の背中中心部を冷却することができる。
(d)は、中央ポケット7を後身頃3の外面に配置した事例である。中央ポケット7にパネル材12を収容し、上部ポケット8、8に保冷剤5を1個ずつ収容している状態を示しており、後身頃3の中心部が身体側に入り込むことを防ぎ、小型ファン20から上向きに排出される空気の流路13を作業服60側と着用者50の下着70側、身体側との間において、確実に確保することができる。
なお中央ポケット7と上部ポケット8、8の両方に保冷剤5を収容しても良い。
このように、冷却用衣服1は、作業環境や作業姿勢等に応じて、保冷剤5の個数を変更することができる。
【0035】
図6は、図2のポケット部のB―B線の平面図である。
(a)、(b)は、それぞれのポケット部6に、保冷剤5を挿入した状態を示しており、保冷剤5を挿入した後は、それぞれのポケット部6の出し入れ口部を閉鎖手段31で着脱自在に結合でき、保冷剤5の脱落を防止することができる。
冷却用衣服1の下部のポケット部6は、後身頃3の幅方向Xの中心寄りに縫合された中心寄りポケット9と、中心寄りポケット9と部分的に重なり合って配置された、脇下ポケット10で構成されている。
中心寄りポケット9は、後身頃3に縫合部16で縫合されている。
脇下ポケット10は、着用者50が冷却用衣服1着用時において、脇の下に位置するポケットである。脇下ポケット10は、一部分が後身頃3と縫合部15で縫合され、他の部分が中心寄りポケット9と縫合部14で縫合されている。
(a)は、中心寄りポケット9に保冷剤5を収容している状態を示しており、着用者50の背中下部の中心側を冷却することができる。
(b)は、脇下ポケット10に保冷剤5を収容している状態を示しており、着用者50の脇の下を冷却することができる。
なお、中心寄りポケット9と脇下ポケット10の両方に保冷剤5を収容しても良いし、中心寄りポケット9と脇下ポケット10の両方に保冷剤5を収容しない構成とすることもできる。
また、冷却用衣服1に中心寄りポケット9と脇下ポケット10のどちらか一方を設けても良いし、両方設けない構造としても良い。
【0036】
保冷剤5を入れるポケット部6を部分的に重なり合ったポケット構造としているため、着用者50は、保冷剤5を入れるポケット部6を変更することで、冷却用衣服1の内面側の保冷剤5の位置を微調整することができ、小型ファン20から上向きに排出される空気の流路13を形成し、保冷剤5の位置を冷風が当たる位置に微調整することができる。
【0037】
小型ファン20は、 温度や湿度、時間等の何れかの設定値で小型ファン20のモータ33を断続運転させるON-OFF制御部29を備えている。図4においては、ON-OFF制御部29が小型ファン20に内蔵されている事例を示しているが、小型ファン20の外部にON-OFF制御部29が設けられた構造としても良い。
例えば、冷却用衣服1に取付けた温度センサ又は湿度センサ(図示しない)で検知した温度又は湿度が設定値を超えた場合に電源をONし、設定値以下となった場合に電源をOFF作動するようにした電子回路で構成したON-OFF制御部29とする。ON-OFF制御部29は、小型ファン20に内蔵するか、或いは冷却用衣服1の外部に設けられ、電気ケーブルで小型ファン20に接続される構成でも良い。温度又は湿度の設定値は、冷却用衣服1を着用した着用者50が冷涼感を得ることができ、不快感を感じることがない温度とする。
また、予め設定された時間間隔毎に電源のON、OFFを切り替える制御を行うこともできる。
【0038】
即ち、予め設定した時間間隔毎に小型ファン20の電源のON、OFFを切り替えることにより、長時間にわたり一定風量で送風された時の様な不快感を冷却用衣服1の着用者50に与えることがない。また、作業服60内の空間の温度又は湿度が設定値に到達した場合に小型ファン20を運転させ、作業服60内の温度又は湿度が設定値を下回った場合は小型ファン20を停止させるように制御することにより、着用者50の冷却用衣服1内の環境を常に快適に保つことができ、かつ連続運転の場合よりも小型ファン20のバッテリを長持ちさせることが可能となる。
小型ファン20を長時間継続運転した際の不快感を着用者50に与えることがなく、バッテリを長持ちさせることができる。
【0039】
また、小型ファン20は、遠心ファン22の回転数の変化により送風量を変化させることが可能な風量制御部30を備えた構成とすることで、予め設定された時間間隔毎に予め設定された送風量に変化させることが可能となる。
さらに、小型ファン20の外部または内部に設置した温度センサ及び又は湿度センサ(図示しない)が、予め設定した上限値を検知すると、風量制御部30を経由して、小型ファン20の風量を増加させ、温度センサ及び又は湿度センサが、予め設定した下限値を検知すると、小型ファン20の風量を少なくするようにフィードバック制御することも可能となる。温度又は湿度の上限値、下限値間の範囲は、冷却用衣服1を着用した着用者50が冷涼感を得ることができ、不快感を感じることがない範囲に設定し、上限値、下限値間の温度、湿度範囲内では風量を一定に制御することができる。
【0040】
即ち、予め設定した時間間隔毎に小型ファン20の風量を変えることにより、長時間にわたり一定風量で送風された時の様な不快感を冷却用衣服1の着用者50に与えることがない。また、作業服60内の空間の温度又は湿度が上限値に到達し、送風が必要な場合には、小型ファン20から送風される風量を増加させ、作業服60内の温度又は湿度が下限値に到達し、送風が不要な場合には小型ファン20から送風される風量を絞ることにより、着用者50の冷却用衣服1内の環境を快適に保つことができる。風量可変の小型ファン20とすることで、内蔵バッテリの減少を抑制可能とし、冷却用衣服1の使用可能時間を長くすることが可能となる。
【0041】
以上説明したように本実施形態によれば、作業服60の内側に着用する冷却用衣服1は、背部に設けた複数のポケット部6に保冷剤5或いはパネル材12を収容し、小型ファン20から冷却用衣服1内部の空間に供給された空気が保冷剤5によって冷却風となり、保冷剤5を収容し、厚みを有する左右一対の上部ポケット8、8間の隙間に形成された空気の流路13を介して、蒸発した汗とともに作業服60の外側に円滑に排出することができ、長時間快適に着用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の構成変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 冷却用衣服
1a 裾部
2 前身頃
3 後身頃
4 連結具
5 保冷剤
6 ポケット部
7 中央ポケット
8 上部ポケット
9 中心寄りポケット
10 脇下ポケット
11 ファンポケット
12 パネル材
13 空気の流路
14 縫合部
15 縫合部
16 縫合部
17 縫合部
18 縫合部
19 縫合部
20 小型ファン
21 ケーシング
21a 下端面
21b 偏平面
21c 上端面
22 遠心ファン
23 吸込口
24 吹出口
25 前面カバー
26 固定部
27 電源スイッチ
28 バッテリ
29 ON-OFF制御部
30 風量制御部
31 閉鎖手段
32 袖ぐり部
33 モータ
40 フルハーネス型安全帯
41 ベルト
42 D環止め
50 着用者
60 作業服
61 襟口
70 下着

L 中心線
X 幅方向
Y 高さ方向
Ws 吸込の流れ
Wp 吹出の流れ


図1
図2
図3
図4
図5
図6