(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】コンプライアント3軸力センサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 5/1623 20200101AFI20241212BHJP
G01L 5/167 20200101ALI20241212BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01L5/1623
G01L5/167
G01L5/00 101Z
(21)【出願番号】P 2022504585
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2020070636
(87)【国際公開番号】W WO2021013874
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-06-12
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522030356
【氏名又は名称】タッチラブ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TOUCHLAB LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】ザカレヤ エルモ フセイン
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-85306(JP,A)
【文献】特開2008-209384(JP,A)
【文献】国際公開第2019/034828(WO,A1)
【文献】特開2012-173079(JP,A)
【文献】特開2006-250705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-1/26、
5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプライアント3軸力センサであって、
第1の配向の列電極のアレイを有する第1の電極層と、
第1の配向と直交する第2の配向の列電極のアレイを有する第2の電極層と、
力を受けたときに少なくとも1つの特性が変化するように構成された、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に設けられた力依存活性層と、
外部から加えられた力を前記
力依存活性層を介して伝達するように配置された少なくとも1つの3次元バンプを備え、
外力が加えられるまで
前記コンプライアント3軸力センサ内の2つ以上の層の間の間隔を維持するように配置された少なくとも1つのスペーサが設けられ
、
前記少なくとも1つのスペーサは、前記力依存活性層と前記第1および/または第2の電極層との間に設けられたバインダ材の形態を成し、前記バインダ材は、隣接する列電極の間のギャップ内に設けられ、前記力依存活性層と前記隣接する列電極のそれぞれの縁との間に延在するか、または、前記力依存活性層は、互いの間にギャップを有する第1の活性層と第2の活性層を備え、前記少なくとも1つのスペーサは、前記力依存活性層内に設けられている、
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項2】
前記
力依存活性層は、量子トンネル材料、ピエゾ抵抗材料、または圧電材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの特性は、量子トンネリング、導電率、抵抗率または電荷である、請求項
1に記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの3次元バンプは、前記
少なくとも1つの3次元バンプに加えられた力が少なくとも4つの個別の領域で前記
力依存活性層を介して伝達し得るように、前記第1の電極層の少なくとも2つの列電極の上及び前記第2の電極層の少なくとも2つの列電極の上を少なくとも部分的に延在するフットプリントを有する、請求項
1に記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの3次元バンプは、前記第1の電極層の2つの
隣接する列電極の間および前記第2の電極層の2つの
隣接する列電極の間の空間内に含まれるフットプリントを有する、請求項
1に記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項6】
前記第1の電極層の下のベース層、前記第2の電極層の上のトップ層、前記第1の電極層と前記
力依存活性層との間の第1の炭素層、前記第2の電極層と前記
力依存活性層との間の第2の炭素層、および前記少なくとも1つの3次元バンプ上のカバー層のうちの1つ以上をさらに備える、請求項1~
5のいずれかに記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項7】
前記第1および/または第2の炭素層は、前記第1および/または第2の電極層の複数の列電極を連続的に横切る、請求項
6に記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項8】
前記少なくとも1つのスペーサは
、ベース層
とトップ層との間に、または前記第1または第2の電極層の上にまたはそれを通して設けられている、請求項1~
5のいずれかに記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項9】
前記少なくとも1つのスペーサは、ドット状、円柱状、支柱状、円筒、管状、角錐状またはメッシュ状の形状である、請求項1~
5のいずれかに記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項10】
前記少なくとも1つのスペーサは、円、正方形、長方形、ひし形、五角形、六角形、またはハニカム格子の形の中実または中空の横断面を有する、請求項1~
5のいずれかに記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項11】
前記少なくとも1つのスペーサは、前記スペーサのアレイを備える、請求項1~
5のいずれかに記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項12】
前記アレイ内のスペーサは、複数の異なる寸法を有する、請求項
11に記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項13】
前記
力依存活性層は、前記第1および/または第2の電極層の複数の列電極を横切る連続層を形成する、請求項1~
5のいずれかに記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項14】
前記
力依存活性層は、前記第1および/または第2の電極層の列電極を横切る不連続層を形成する、請求項1~
5のいずれかに記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項15】
前記第1および/または第2の電極層の隣接する電極の間に絶縁体が設けられている、請求項1~
5のいずれかに記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項16】
前記1つまたは複数の隣接する層の間に接着剤層が設けられている、請求項1~
5のいずれかに記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項17】
前記少なくとも1つの3次元バンプは、前記
コンプライアント3軸力センサの残部とは異なる弾性を有するポリマーからなる、請求項1~
5のいずれかに記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項18】
前記少なくとも1つの3次元バンプは、メサ、ドーム、半球体、半球体部、円錐体、円錐体部、立方体、円筒体、半円筒体、角錐体、角錐体部、四面体、四面体部、六面体、三角柱、またはその他の多面体の形状である、請求項1~
5のいずれかに記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項19】
前記少なくとも1つの3次元バンプは、前記
コンプライアント3軸力センサの残部の高さの少なくとも2倍の高さを有する、請求項1~
5のいずれかに記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項20】
前記少なくとも1つの3次元バンプは、前記3次元バンプのアレイを備える、請求項1~
5のいずれかに記載の
コンプライアント3軸力センサ。
【請求項21】
請求項1~5のいずれかに記載のコンプライアント3軸力センサを製造する方法であって、
第1の配向の列電極のアレイを有する第1の電極層を設けるステップと、
前記第1の配向に直交する第2の配向の列電極のアレイを有する第2の電極層を設けるステップと、
力を受けたときに少なくとも1つの特性が変化するように構成された、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に設けられた力依存性活性層を設けるステップと、
外部から加えられた力を前記
力依存活性層を通して伝達するように配置された少なくとも1つの3次元バンプを設けるステップと、
外力が加えられるまで前記
コンプライアント3軸力センサ内の2つ以上の層の間の間隔を維持するように配置された少なくとも1つのスペーサを設けるステップと、
前記力依存活性層と前記第1および/または第2の電極層との間に設けられたバインダ材であって、隣接する列電極の間のギャップ内に設けられ、前記力依存活性層と前記隣接する列電極のそれぞれの縁との間に延在するバインダ材の形態を成す前記少なくとも1つのスペーサを設けるステップ、または、互いの間にギャップを有する第1の活性層と第2の活性層として前記力依存活性層を設けるステップ及び前記力依存活性層内に前記少なくとも1つのスペーサを設けるステップと、
を備える
、方法。
【請求項22】
前記の各層、
少なくとも1つの3次元バンプ、またはスペーサは、印刷、スクリーン印刷、ロールツーロール印刷、インクジェット印刷、3D印刷、エレクトロスピニング、堆積、液滴ディスペンシング、キャスティング、コーティング、モールディング、スピニング、またはウィービングのうちの一つによって設ける、請求項
21に記載の方法。
【請求項23】
単一の基板上に少なくとも前記第1の電極層および前記第2の電極層を形成し、前記基板を2つの部分に分割し、前記2つの部分を積み重ねるステップを含む、請求項
21または
22に記載の方法
【請求項24】
前記分割および/または積み重ねステップの前に、前記少なくとも1つのスペーサを少なくとも1つの部分の上に形成するステップを含む、請求項
23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンプライアント三軸力センサおよびそのようなセンサを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットや機械が人間と同じように周囲の世界と対話できるようにするためには、人間と同じように敏感な触覚も必要である。ロボットで模倣するのが最も難しい領域の1つは、手のひらであり、それは、人体で最も密度の高い神経受容体の1つであるためである。さらに、皮膚には、振動周波数だけでなく、さまざまな力/圧力を感知するための複数の機械受容器がある。圧力の静的感知は、ロボットが繊細な物体を処理する能力にとって最も重要である。この目的のために、圧力データを提供するために複数の触覚センサが作られている。
【0003】
現在市場に出回っているセンサの大部分は、個々の力センサまたは他のセンサで構成されている。これらは、比較的大きな表面積と見なすことができる圧力のスカラー値のみを提供する。より高度な触覚情報を提供する他のセンサには、堅牢であるがロボットの指全体を交換する必要があるセンサが含まれる。
【0004】
しかし、力は、その大きさと方向の2つの要素を持つベクトルである。方向情報/データは、長年にわたってロボット工学の改善にとって大きな関心事であった。大きさと方向の両方を決定できるセンサは、通常、3軸力センサと呼ばれている。これらの力トルク(F/T)センサは、主にロボットのエンドエフェクターアームの一部として使用され(本明細書の末尾に記載の参考文献1参照)、最近ではロボットの指先の力の方向成分を測定するために使用されている(本明細書の末尾に記載の参考文献2参照)。歴史的にそのようなセンサに対して多くの試みがなされており、最近の試みは比較的高密度を達成しているが、それらは固体材料および/またはマイクロマシニング技術を使ってなされている。力の読み取りは、特定の表面の周りの曲げに敏感であるだけでなく、それらの多くは曲げることができず、ハードロボットにのみ組み込むことができる。最近では、人間とロボットの両方の監視のために、コンプライアントな触覚システムの必要性が認識されている。これらのコンプライアント/コンフォーマブル圧力感知システムの多くは、電子皮膚(eスキン)の一種として分類することができる。
【0005】
最近のeスキンとデータグローブの中には、複数点または高密度の触覚情報を提供する機能を備えたものがある(本明細書の末尾に記載の参考文献3および4参照)が、ほとんどの場合、多くの現象の計測に重要な方向情報を提供することができない。それは、ロボットが物体をつかみ、地球などの重力環境でその質量を検出することを可能にするだけでなく、たとえば、歩行分析などの他の物理現象のためにインソールの床反力を測定することも可能にし得る。
【0006】
最近、完全にコンプライアントな三軸力センサを作るために多くの試みがなされている。これには、eGaIn(共晶ガリウムインジウム)などの液体金属を使用したコンプライアントひずみゲージのさまざまな設計(本明細書の末尾に記載の参考文献5参照)や、ロゼットひずみゲージに類似したいくつかの設計など、さまざまな難解な方法が使用されており、製造が難しく、有毒な漏れを引き起こす可能性がある。その他に、かさばる空気圧チャンバーベースのセンサや、自動調整カーボンナノチューブ(CNT)アレイがある。
【0007】
これらのセンシングシステムのいずれかを高密度に統合することが望まれる場合、配線の考慮事項を減らし、したがってこれらが電子スキン上で占めるスペースを減らすため、マトリックスアレイが必要である。これは、金属、導電性液体、またはその他による容量センシングを使用して大部分が行われていた(本明細書の末尾に記載の参考文献6、7、および8参照)、このタイプのセンシングは、表面とセンサで生じ得る容量結合により、それが使用される基板(例えば、人間の皮膚、金属ロボット)に敏感である。さらに、静電容量センシングは複雑な読み出し電子機器を必要とし、バックグラウンド電磁(EM)ノイズの影響を受けやすいため、多くの用途では実用的ではない。他の方法も使用されているが、すべて特定の欠点があり、圧電センシング(本明細書の末尾に記載の参考文献9参照)は、作動および検出の潜在的な能力を有しているが(本明細書の末尾に記載の参考文献10参照)、重大なバックグラウンド電磁コンパチビリティ(EMC)ノイズの影響を受けやすく、静的センシングを実行できず、磁気センシング(ホール効果および誘導法を含む)(本明細書の最後に記載の参考文献11~14参照)も、バックグラウンドEMCおよび周囲の磁場の影響を受け、これらの磁場の一部は、ロボット自体のアクチュエーターによって生成される可能性がある。
【0008】
さらに、eスキンは、後付けされるデバイスに干渉しないようにできるだけ薄くすると同時に、コンパクトな電子読み取りシステムを備えることが最も重要であるが、このことがほとんどのソリューション/システムに欠けている。非常に有望であるが幾分費用がかかる製造プロセスが最近開発され、これによれば、自己調整カーボンナノチューブアレイを使用して、製造プロセス中に側壁に成長される集積アレイの3軸情報を優れた循環再現性で読み取ることができる(本明細書の末尾に記載の参考文献15参照)。
【0009】
量子トンネル材料とピエゾ抵抗複合材料がこれまで使用されていたが、提案されたシステムはどれも高度に集積可能またはラップ可能ではなかった。多くの場合、フレキシブル配線は、材料が剛性が高すぎるか1軸でしかコンプライアントでないため、または層が十分に薄くないために、十分にフレキシブルまたはコンプライアントでない。このようなデバイスのアーキテクチャは、通常、力をトルクに変換する「バンプ」の配置を含み、それは4つの直交配置された圧力センサまたは圧力センシングピクセル(センセル)の真上に配置される。ポストがその先端で特定の方向からの力を受けると、その力は下向きの力と横方向のトルクに変換される。その結果、4つの圧力センサは異なる力/圧力を経験する。次に、これらの各センサの抵抗変化の量を測定することで、その力を3Dデカルト成分(Fx、Fy、およびFz)に分解することができる。ピエゾ抵抗材料から信号を読み取るために、さまざまな電極構成を使用することができる(本明細書の末尾に記載の参考文献16参照)。
【0010】
今日まで、ピエゾ抵抗3軸センサアレイの製造に最も近いのは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に埋め込まれた側壁を備えたインターロック構造及びマイクロピラミッドアレイ構造である(本明細書の末尾に記載の参考文献17参照)。前者には、比較的高密度の3x3アレイに展開できるという利点があるが、0~225Paの非常に低い負荷で機能するのみである。後者には、128Paから44kPaまでの広いダイナミックレンジを持つという利点がある。しかし、マトリックスとして展開するのが難しいため、大量の配線が必要になる。また、全体の構造が数ミリメートルであるため、表面に巻き付けることができず、その複雑さのために、大量生産が非常に難しくなる。
【0011】
量子トンネリング複合材料(QTC(R))が、1996年にDavid Lusseyによって発見された。これらの材料は、本質的に金属粒子と非導電性エラストマバインダまたはマトリックスからなる複合材料である。これらの材料は電流に対して非常に高い抵抗を持ち、圧力が加えられていないときは本質的に絶縁体である。圧力が加えられると、それらの抵抗は指数関数的に低下し、これは正しい電気回路を使用して測定することができる。この理由は、金属粒子が特定の濃度で材料に分散しているが、互いに物理的に接触していないためである。圧力を加えると、金属粒子は互いに接近し、互いに接触することはできないが、電子が、量子トンネリングと呼ばれる現象を介して、ある粒子から別の粒子に飛び移ることができるようになる。圧力が高いほど、粒子が互いに近づき、このトンネル効果が増加し、材料の抵抗が減少する。これがうまく機能するためには、トンネリングは小さなスケールでのみ効果があるため、バインダ内の粒子の良好な分散と、それらの粒子が小サイズである必要がある。このため、粒子は通常、マイクロメートルまたはナノメートルのサイズで、導電性材料、通常は銀、金、マグネタイトなどの金属で構成される。それらはまた、しばしばナノパターン化され、例えば、「スパイク状」ナノ粒子は、粒子が互いにより遠い距離にある場合でも、微細なスパイクの先端がトンネル電流を増強するため、丸い粒子よりも優れたトンネル挙動を示し、これにより、感度と全体的なパフォーマンスが向上する。
【0012】
Peratechにより提供されるQTC(R)ピルが、3軸センサを作成するために使用されてきたが、これらのデバイスは、小型化やセンサヒステリシスなどの他の問題に悩まされている。QTC(R)ピルは、大量生産プロセス中に集積する機能がなく、厚さと最小直径の両方がかさばるため、扱いにくく、特にセンシティブではない。
【0013】
要約すると、市場に出回っている市販のフレキシブル力センサは、力のスカラー値のみを提供し、その方向またはせん断力は提供しない。それらは有意な屈曲に耐えることができず、また屈曲中にそれらの値を変化することもできない。更に、複数の高度なアプリケーションを可能にするために必要なデータを取得するには、3軸技術を含むアレイ技術が必要とされる。これは、たとえば、地面反力を測定する必要のある人間及びロボットの歩行分析、複雑な方法で物体を操作するロボット、繊細な物体を損傷することなく処理するロボット、衣服を身に着けた人間の筋肉活動や血流などの生理学的力を監視するロボット、潮流タービンや風力タービン上の空気や水などの流動現象を検出するロボットにおいて特に重要であり、また外科医が外科用ロボットなどで組織を「触診」することを可能にする。
【0014】
コンプライアント3軸センサは、複数の伝達メカニズム、例えば、ピエゾ抵抗(ひずみゲージやナノコンポジットなど)、容量的、圧電的、誘導的、光学的、または磁気的メカニズムを使用して(研究室で)作成することがでる。ピエゾ抵抗センサと静電容量センサが、その優れた性能により主流である。ただし、静電容量センサは、それらが配置される基板の表面との容量結合のために基板に敏感である可能性があり、はるかに複雑な読み出し電子機器を必要とし、それはスペース要件と実装の複雑さのために障害になる。他のセンサの欠点としては、圧電センサは、材料に誘導された電荷が非常に速く消散するため、静的接触力を感知できないこと、これらのセンサのほとんどは温度に敏感であり、一般的に堅牢でないこと、動的外力の感知範囲が不足していること、EMCノイズに敏感であること(特に磁気および圧電センサ)、一部の圧電センサは感光性であること、などがある。さらに、これらのセンサを作成するための最もよく知られているプロセスは、本質的に低歩留まりで、一貫性がなく、スケーラブルではない。多くの場合、このようなセンサを使用した測定は再現性がなく、センサの信頼性が低い。
【0015】
利用可能なすべてのセンサの中で、実際の設定で望ましい方法で機能するのに十分に堅牢なものはない。業界では、数千から数百万のサイクルに耐えることができ、温度や過酷な環境条件に影響されず、3軸力検出を実行できる耐久性のある材料を用いた堅牢なセンサが緊急に必要とされている。また、センサは、既存のデバイスの機能を損なうことなく追加できるように非常に薄くする必要がある。また、センサの動作は、柔らかいロボットや人間の皮膚などの柔らかい表面でも機能できるように、曲げの影響を受けないようにする必要がある。
【0016】
したがって、本発明の目的は、現在の技術とともに論じられた上記の問題の少なくともいくつかに対処する、コンプライアント三軸力センサおよびそのようなセンサを製造する方法を提供することである。
【発明の概要】
【0017】
本発明の第1の態様では、コンプライアント三軸力センサが提供され、該センサは、
第1の配向の列電極のアレイを有する第1の電極層と、
第1の配向に直交する第2の配向の列電極のアレイを有する第2の電極層と、
力を受けたときに少なくとも1つの特性が変化するように構成され且つ第1の電極層と第2の電極層との間に設けられた力依存活性層と、
外部から加えられた力を活性層を介して伝達するように配置された少なくとも1つの3次元バンプを備え、
外力が加えられるまでセンサ内の2つ以上の層の間の間隔を維持するように配置された少なくとも1つのスペーサが設けられている。
【0018】
したがって、本発明の実施形態はコンプライアント3軸力センサを構成し、該センサは完全にコンプライアントおよびフレキシブルになるように薄い材料層で作ることができるが、特定の層間の間隔を維持するために1つまたは複数のスペーサを含み、センサ自体の曲げが誤った力の読み取りを引き起こすことはなく、それゆえこのセンサは堅牢で信頼性が高く、繰り返し使用することができる。従って、このセンサは故障することなく数千から数百万のサイクルに耐えることができ、よって産業環境で有効に動作することがでる。また、一貫した出力によって、各検出素子を個別に校正するために必要となるかもしれないかなりの時間が不要になる。これは、タクテル(触覚要素)、すなわちバンプ、ごとに4つのセンセル(感知要素)を使用するいくつかの実施形態において特に有用である。さらに、このセンサはバックグラウンドノイズの影響を受けにくく、アプリケーションに応じてさまざまな力検出範囲に合わせて簡単に構成することができる(つまり、アクティブ層の厚さを増減することにより)。
【0019】
有利なことに、センサは、3つの異なる軸(x、y、およびz)で力を測定することができる、薄く、伸縮性があり、順応性のある、ナノコンポジットベースの触覚デバイスとして構成することができる。本発明の実施形態は、非常に小さい曲げ半径または柔らかいロボットに巻き付けるのに十分なコンプライアントであり、それにもかかわらず、信号の完全性または応答に最小限の影響しか及ぼさず、力の大きさおよび方向の正確な測定を可能にする。したがって、センサの性能は曲げの影響を受けない。柔軟な接続と電気配線は、層と電極構造を介してセンサに統合され、力をトルクに変換する「バンプ」層が上部にある。さらに、このセンサは、高い歩留まりを維持しながら、スクリーン印刷やカスタマイズ可能な材料を使用したロールツーロール印刷など、既存の簡単な大量生産プロセスのいずれかを使用して大量生産するのに適している。したがって、電子スキン用途に必要とされるような大規模アレイに展開することができる。現在、このタイプの汎用電子スキンは存在しない。このセンサは、さまざまなデバイス、製品、または衣服に高度に統合可能であり、硬く、柔らかく、伸縮性のある表面に後付けすることができる。さらに、環境に優しい材料を使用することができる。
【0020】
各層は(例えば、スクリーン印刷またはインクジェット印刷によって)印刷することができ、非常に小型化することができる(少なくとも、ロボットのエンドエフェクターに望まれる理想的な1mm×1mmの3軸ピクセル密度まで)。いくつかの実施形態では、第1および/または第2の電極層は、下の層の上に堆積された導電性インクから形成することができる。
【0021】
上記の利点のすべてが、本発明の実施形態を、制御された実験室環境または学界の外の「現実の」産業用途に適した商業的に実行可能なセンサの提供するものとし得る。
【0022】
活性層は、量子トンネル材料、ピエゾ抵抗材料、または圧電材料のうちの少なくとも1つを含み得る。従って、活性層が力を受けたときに変化する可能性のある少なくとも1つの特性は、量子トンネリング、導電率、抵抗率または電荷の量である。したがって、本発明の実施形態は、加えられた力を感知信号に変換するために、量子トンネル伝導メカニズムまたはピエゾ抵抗伝導メカニズムを利用する複合材料を使用することができる。活性層は都合よく異方性であるため、薄層に堆積されたとき、その材料特性のために、垂直力に対してより選択的に反応する。
【0023】
少なくとも1つの3次元バンプは、バンプに加えられた力が少なくとも4つの個別の領域で活性層を介して伝達し得るように、第1の電極層の少なくとも2つの列電極の上及び第2の電極層の少なくとも2つの列電極の上に少なくとも部分的に広がるフットプリントを有しうる。このように、各タクテル(触覚要素)は4つのセンセル(センシング要素)またはピクセルに接続され、各センセルでの力の強さを使用して、加えられた力の大きさと方向の両方を決定することができる(つまり、せん断力と圧縮力の組み合わせをもたらす)。
【0024】
他の実施形態では、少なくとも1つの3次元バンプは、第1の電極層の2つの列電極の間、および第2の電極層の2つの列電極の間の空間内に含まれるフットプリントを有する。この場合、1つまたは複数のスペーサを使用して、バンプに加えられた力を4つのセンセル(感知要素)のそれぞれに再配分することができる。
【0025】
活性層は、それらの間にギャップを有する第1の活性層と第2の活性層を備える。
【0026】
センサは、第1の電極層の下のベース層、第2の電極層の上のトップ層、第1の電極層と活性層との間の第1の炭素層、第2の電極層と活性層との間の第2の炭素層、および少なくとも1つの3次元バンプ上のカバー層の1つ以上を備えることができる。
【0027】
第1および/または第2の炭素層は、第1および/または第2の電極層の複数の列電極を連続的に横切って延在してよい。
【0028】
少なくとも1つのスペーサは活性層内に、ベース層とトップ層との間に、または第1または第2の電極層の上にまたはそれを通して設けることができる。
【0029】
少なくとも1つのスペーサは、ドット状、円柱状、支柱状、円筒状、管状、角錐状またはメッシュ状の形状とし得る。
【0030】
少なくとも1つのスペーサは、円、正方形、長方形、ひし形、五角形、六角形、またはハニカム格子の形の中実または中空の横断面を有し得る。
【0031】
前記センサは、前記スペーサのアレイを含み得る。前記アレイ内のスペーサは、複数の異なる寸法を有し得る。
【0032】
前記活性層は、前記第1および/または第2の電極層の列電極を横切る連続層を形成し得る。
【0033】
前記活性層は、前記第1および/または第2の電極層の列電極を横切る不連続層を形成し得る。
【0034】
前記センサは、前記第1および/または第2の電極層の隣接する電極間に絶縁体を備え得る。
【0035】
前記少なくとも1つのスペーサは、前記活性層と前記第1および/または第2の電極層との間に設けられたバインダの形態をとることができ、前記バインダは、隣接する列電極間の空隙に設けられ、前記活性層と前記隣接する列電極のそれぞれのエッジとの間に延在する。
【0036】
前記センサは、前記1つまたは複数の隣接する層の間に設けられた接着剤層を含み得る。
【0037】
前記少なくとも1つの3次元バンプは、前記センサの残りの部分とは異なる弾性を有するポリマーを含み得る。
【0038】
前記少なくとも1つの3次元バンプは、メサ、ドーム、半球体、半球体部、円錐体、円錐体部、立方体、円筒体、半円筒体、角錐体、角錐体部、四面体、四面体部、六面体、三角列、多面体、またはその他の形状にし得る。
【0039】
前記少なくとも1つの3次元バンプは、センサの残部の高さの少なくとも2倍の高さを有し得る。いくつかの実施形態では、剪断力を異なる圧力で下の活性層材料を圧縮する十分に高いトルクに変換するために、バンプはセンサの残部よりもかなり高くする(例えば、高さ3mmまで)ことができる。いくつかの実施形態では、活性層は、電極間に1mmの幅を有し、各タクテルは、感知領域が3mm×3mm=9mm2となるように、それぞれ2mm間隔のマトリックスアレイ内の4ピクセルで構成され得る。ただし、より感度の高い活性層を使用すると、より良い解像度を得ることができる。タクテルとセンサの間の間隔は、解像度を上げるために、それらが接触しないでそれらの間でトンネリングが発生しない限り、非常に小さくすることができる(たとえば、500μm以下)。このように電極を分離すことは、センサのクロストークを減らすのに役立つ。
【0040】
前記センサは、前記3次元バンプのアレイを含み得る。
【0041】
本発明の第2の態様によれば、上記の第1の態様によるセンサを製造する方法が提供され、該方法は、
第1の配向の列電極のアレイを有する第1の電極層を設けるステップと、
前記第1の配向に直交する第2の配向の列電極のアレイを有する第2の電極層を設けるステップと、
力を受けたときに少なくとも1つの特性が変化するように構成され且つ前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に設けられた力依存性活性層を設けるステップと、
外部から加えられた力を前記活性層を介して伝達するように配置された少なくとも1つの3次元バンプを設けるステップと、
外力が加えられるまで前記センサ内の2つ以上の層の間の間隔を維持するように配置された少なくとも1つのスペーサを設けるステップと、
を備える。
【0042】
従って、本発明のこの態様の実施形態は、様々な既存の技術を使用して容易に大量生産することができるセンサ製造方法を提供する。
【0043】
各層、バンプ、またはスペーサは、スクリーン印刷、ロールツーロール印刷、インクジェット印刷、3D印刷、エレクトロスピニング、堆積、液滴ディスペンシング、キャスティング、コーティング、モールディング、スピニング、またはウィービングのうちの一つによって設けることができる。
【0044】
この方法は、単一の基板上に少なくとも第1の電極層および第2の電極層を形成し、前記基板を2つの部分に分離し、前記2つの部分を積み重ねるステップを含み得る。
【0045】
この方法は、前記分離および/または積み重ねステップの前に、前記少なくとも1つのスペーサを少なくとも1つの部分上に形成するステップを含み得る。
【0046】
次に、本発明の非限定的な実施形態を、以下の図面を参照して、単なる例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1A】本発明の第1の実施形態による、ドーム形バンプを含むコンプライアント三軸力センサの上面斜視図を示す。
【
図2A】本発明の第2の実施形態による、立方体形のバンプを含むコンプライアント三軸力センサの上面斜視図を示す。
【
図3A】本発明の第3の実施形態による、円筒形のバンプを含むコンプライアント三軸力センサの上面斜視図を示す。
【
図4】本発明の一実施形態によるセンサの製造方法のフローチャートである。
【
図5】
図5A~
図5Iは、本発明の別の実施形態によるセンサを製造する方法のステップを示す。
【
図6】
図6A~
図6Iは、本発明のさらなる実施形態によるセンサを製造する方法のステップを示す。
【
図7】
図7A~
図7Gは、本発明のさらに別の実施形態によるセンサを製造する方法のステップを示す。
【
図8】
図8Aおよび
図8Bは、本発明の実施形態による、異なる円柱状支柱の配置を含むセンサの一部の平面図を示す。
【
図9】
図9Aおよび
図9Bは、本発明の実施形態による、異なるひし形支柱の配置を含むセンサの一部の平面図を示す。
【
図10】
図10Aおよび
図10Bは、本発明の実施形態による、異なる正方形支柱の配置を含むセンサの一部の平面図を示す。
【
図12】
図12Aは、本発明の実施形態によるセンサの単一の触覚要素(タクテル)の上面斜視図を示し、
図12Bは、斜めの力が加えられる前後の
図12Aの触覚要素の側面斜視図を、対応する力対時間のグラフとともに示し、
図12Cは、斜めの力が加えられたときの
図12Bの触覚要素の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1A、B、およびCに従って、本発明の第1の実施形態による4つの3次元ドーム形バンプ102を含むコンプライアント三軸力センサ100が示されている。センサ100は、底部膜カプセル化層の形態のベース層104と、第1の配向の列電極106aのアレイを有する第1の(底部)電極層106と、第1の配向に直交する第2の配向の列電極108aのアレイを有する第2の(上部)電極層108と、第1の電極層106と第2の電極層104との間に設けられ、力を受けたときに少なくとも1つの特性を変化するように構成された量子トンネル材料層の形態の力依存活性層110と、上部膜カプセル化層の形態のトップ層112とを備える。ドーム形バンプ102は、トップ層の上に設けられ、外部から加えられた力を活性層110を介して伝達するように配置される。
図1A、BおよびCには示されていないが、外力が加えられるまで、センサ100内の2つ以上の層の間に間隔を維持するために配置された少なくとも1つのスペーサが設けられる。これらのスペーサは、
図4から
図11Cに関連して以下でより詳細に説明される。
【0049】
図1Aおよび1Bに示されるように、任意の絶縁アレイ114が、第1の電極層106の列電極106aの間に設けられる。同様の絶縁アレイ116が、第2の電極層108の列電極108aの間に設けられる。各バンプ102は、円形底部102aと平坦上部102cまで延びる湾曲側壁102bを有する。
【0050】
この実施形態では、ベース層104、第1の電極層106、活性層110、第2の電極層108およびトップ層112のそれぞれは、0.10mmの厚さであり、0.50mmの厚さのセンサ本体を形成する。さらに、各列電極106a、108aは幅1mmであり、各バンプ102は高さが1mmで、最大直径3mmフットプリントを有する。隣接する各バンプ102の間には1mmのギャップがある。他の実施形態では、特定の用途に適合するように他の寸法を使用することができる。しかしながら、センサ本体は、通常、センサがコンプライアントになり、湾曲した形状または他の形状の表面を与えることができるように比較的薄い層に形成することが想定される。ここに示されるように、いくつかの実施形態では、剪断力を十分に高いトルクに変換して下の活性層110を異なる圧力で押圧するために、バンプ102はセンサ本体よりも十分に高くすることができる。
【0051】
図1Cに示されるように、各3次元ドーム形バンプ102は、バンプ102に加えられた力が少なくとも4つの別個の領域において活性層110を介して伝達し得るように、第1の電極層106の少なくとも2つの列電極の上に少なくとも部分的に、第2の電極層108の少なくとも2つの列電極の上に少なくとも部分的に広がるフットプリントを有する。このように、各バンプ102は、4つの感知要素(センセル)またはピクセルに接続された触覚要素(タクテル)と見なすことができ、各感知器での力の強さを使用して、
図12A、BおよびCを参照して以下でさらに説明されるように、加えられた力(すなわち、剪断力および圧縮力の組み合わせをもたらす)の位置、大きさ及び方向を決定することができる。
図1Cでは、列電極106a、108aはセンサ100の層が透明であるかのように破線で示されていることに留意されたい。
【0052】
センサ100は、4つのバンプ102のアレイで示されているが、センサ本体を延長して、任意の所与の用途に必要とされる任意の数のバンプ102を含めることができる。
【0053】
記載された実施形態のいずれかにおいて、センサは、以下にリストアップした材料の任意選択により形成することができる。
【0054】
ベース層104およびトップ層106は、任意の適切な基板材料から形成することができ、1つまたは複数のポリ(パラキシレレン)ポリマー(パリレン)、2,8-ジクロロトリシクロ[8.2.2.24,7]ヘキサデカ-1(12)、4,6,10,13,15-ヘキサエン(パリレン-C)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリイミド(PI)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(ポリブチレート)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA/アクリル)、prop-2-エノエート(アクリレート)、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリウレタン(PU)、ポリシロキサン(シリカ)、塩化ポリビニル(PVC)、ポリエチレンイミン(PEI)、ナフタレートポリエチレン(PEN)、プロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、脂肪族または半芳香族ポリアミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、非織布またはそのブレンド、を含み得る。低いヤング率のポリマーは、より高い適合性を達成するのに役立つ可能性があり、そのようなポリマーは、最大1.5MPa(メガパスカル)、より好ましくは最大1.2MPa、さらにより好ましくは最大1MPa、好ましくは700kPa~1MPaの範囲内のような少なくとも500kPa、例えば700~800kPaのヤング率、を有する。これは特にPDMSに当てはまり、これらの低ヤング率ポリマーの欠点は、多くの場合、壊れやすいか、一部の用途に対して十分な耐熱性がないことである。このため、TPUコーティングされたシリコーンなどのブレンドを使用することができる。リスト内のより多くの剛性ポリマー(PENなど)は、25ミクロンの厚さなどで非常に柔軟性がある。考えられるさまざまな基板の厚さの例は、Parylene-C、500-10000nm;PEN、25-100ミクロン;PET、36-125ミクロン;シリコーン、5~500ミクロン;およびTPU、50~75ミクロンである。
【0055】
第1の電極層106および第2の電極層108の両方の列電極106a、108aは、金属フィラー粒子(マイクロまたはナノスケール)を含むインクなどの導電性複合材料で形成することができる。炭素、銀、金、銅が最も一般的に使用されている。金属薄膜(金/銅など)は、基板が伸縮性でないか、特に薄い場合に、または金属が屈曲性を有し、金属自体を伸ばす代わりに、基板が伸ばされている間に曲がる場合に、使用することができる。これらはすべて導電性が高い必要があり、使用に最適な金属は、すべての金属の中で最も展性があり延性がある金である。列電極106a、108aに使用することができるいくつかの例示的な材料は、Engineered Materials Solutions, Inc.(EMS)社の導電性インク(CI)である(例えば、厚さ25.4ミクロンの厚さで0.010Ω/スクエア未満のシート抵抗を有する銀導電性インクであるCI-1031;または厚さ25.4ミクロンの厚さで50Ω/スクエア未満のシート抵抗を有する炭素ベースの導電性インクであるCI-2051)。他の適切な材料としては、AsahiTMインクおよび摂氏20度で約2.44x10-8Ωm未満の抵抗率を有する金の薄膜が含まれる。
【0056】
活性層110は、量子トンネル材料、ピエゾ抵抗材料、または圧電材料を含み得る。量子トンネル材料は、量子トンネリングにより抵抗が指数関数的に減少し、非常に大きな動的力範囲に亘って、1012Ωにのぼる大きな抵抗変化をもたらす。いくつかの実施形態では、感知できる力の範囲は、0.003Nから200Nまで低くすることができ、より剛性の高い材料がセンサに使用される場合、その範囲はより高く拡張することができる。適切な量子トンネル材料の例は、バインダ材料に加えて、高アスペクト比の先端(例えば、円形、スパイク状、または針状)を有するニッケルまたはシリコン(半導体)フィラー粒子を含む量子トンネル複合材料(QTC(R))である。二酸化チタンまたはヒュームドシリカ粒子などの誘電体材料で構成される粒子も、材料に使用することができる。ボイドベアリング構造を有する金属または金属合金もまた、様々な異なるバインダと共に使用され得る。別の適切な量子トンネル材料は、スパイク状のまたは針状のマグネタイトおよび/またはニッケル粒子およびポリウレタンバインダを含むQTSS(R)である。粒子は互いに接触しないが、電流は量子トンネル効果のメカニズムによって粒子を通過することができる。ゼロ次元、一次元、または二次元のナノ粒子材料は、それらのダイナミックレンジと感度が向上するため、望ましい。この理由の一部は、量先端での電界の局所的な集中が子トンネリングを強化すること、および必要とされる材料のパーコレーションしきい値(したがって量)が低いことに起因し得る。有利なことに、量子トンネル材料は、抵抗を測定する電極間の圧縮圧力に最も敏感であり、これにより、例えば、ひずみゲージでは提供されない有意な選択性が可能になる。量子トンネル材料は、他の多くのセンサや材料よりも、温度や環境の電磁両立性ノイズに対する感度も低くなる。
【0057】
適切なピエゾ抵抗材料には、ナノコンポジットおよびエレクトロスピニングされたマイクロまたはナノファイバーが含まれる。ピエゾ抵抗材料は、それらに電位差が印加され、材料に圧力が加えられると、電流の流れを変調する。これらは、カーボン、カーボンナノチューブ(CNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、グラフェン、ボロフェン、銀、量子ドット、またはその他の導電性または半導体マイクロ/ナノ粒子であり得る活性フィラー(マイクロ/ナノ粒子)を含む。それらはまた、分散を増加させるとともに、例えば、ファンデルワールス力による凝集を減少させるために、ナノ粒子の表面上で通常官能化される界面活性剤を含み得る。PDMS、シリコーン、テトラフルオロエチレン(TFE)、プロピレン、PVDF(すべての状態で圧電性ではない)などのバインダ、基板やコンクリートに含まれる他のポリマーなどのバインダも使用される。ポリマーは、熱硬化性(すなわち、熱、湿気、光、または空気による永続的な架橋反応を受ける)であっても、非熱硬化性(すなわち、溶融)であってもよい。それらはまた、フルオロポリマーであってもよい。ピエゾ抵抗材料はまた、粘度を制御するための溶媒を含み得るが(例えば、印刷中)、それは通常、空気中または硬化中にほとんど蒸発する。ナノ粒子は、材料の異方性挙動を強化して、材料の屈曲および伸長による圧力の読み取りを最小限に抑えながら、法線方向の圧力を感知するために、理想的には垂直に整列(および十分に分散)される。ピエゾ抵抗材料中のいくつかの粒子は、(硬化および/または堆積前および/または中に材料全体に静または変化電界および/または磁場を印加することによって)電気的または磁気的に整列させることができる。たとえば、これは、硬化前に材料を通るAC(交流)電界を変化させることによる誘電泳動アライメト、または材料を通るDC電流を印加することによるDC(直流)アライメントを用いて、または純粋にDC電界によって(その場合には電流が導電性粒子を通過しないで静電界が材料に存在する)行うことができる。このアライメントは、ピエゾ抵抗材料をより異方性にまたは光学的に透過性にするために行うことができる。ピエゾ抵抗材料自体の導電性粒子が印加された電界に応答しない場合、それらをアライメントさせるために他のナノ粒子(例えば、強磁性である酸化鉄ナノ粒子)で機能化することができる。他の潜在的に適切なピエゾ抵抗材料は、上記のナノコンポジットで使用されるフィラーのいずれかの薄膜を含む。
【0058】
適切な圧電材料には、ナノコンポジットおよびエレクトロスピニングされたマイクロまたはナノファイバーも含まれる。これらは、外部応力により電荷分離を示す活性フィラー(マイクロ/ナノ粒子)を含み、酸化亜鉛(ZnO)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリ[(フッ化ビニリデン-コトリフルオロエチレン][P(VDF-TrFE)]、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(II)(PbTiO3)、タンタライトリチウム(LiTaO3)、窒化アルミニウム(AlN)、複合元素(トルマリン)を含むケイ酸ホウ素ミネラル、チタン酸鉛マグネシウム(PMN-PT)、またはそれらの任意の組み合わせに加えて、上記の如きバインダを含む。他の潜在的に適切な圧電材料は、上記のナノコンポジットで使用されているフィラーのいずれかの薄膜を含む。
【0059】
バンプ102は、誘電体ポリマーなどのポリマー、ポリシロキサン、ゴム、シリコーン、またはガラスなどのアモルファス結晶材料を含み得る。
【0060】
図2A、B、およびCは、本発明の第2の実施形態による4つの三次元直方体バンプ202を含むコンプライアント三軸力センサ200を示す。センサ200は、センサ100について上で説明したものと同一のセンサ本体を備えるが、4つのドーム型バンプ102が4つの直方体バンプ202で置き換えられている。したがって、同様の参照番号が同様の部品に使用されている。上記のように、バンプ202はそれぞれ、バンプ202に加えられた力が少なくとも4つの個別の領域で活性層110を介して伝達可能であるように、第1の電極層106の2つの列電極106aの上および第2の電極層108の2つの列電極の上に広がるフットプリントを有する。
【0061】
図3A、B、およびCは、本発明の第3の実施形態による4つの三次元円筒形バンプ202を含むコンプライアント三軸力センサ300を示す。センサ300は、センサ100について上で説明したものと同一のセンサ本体を備えるが、4つのドーム形バンプ102が4つの円筒形バンプ302に置き換えられている。したがって、同様の参照番号が同様の部品に使用されている。上記のように、バンプ302はそれぞれ、バンプ302に加えられた力が少なくとも4つの個別の領域で活性層110を介して伝達可能であるように、第1の電極層106の2つの列電極106aの上および第2の電極層108の2つの列電極の上に広がるフットプリントを有する。
【0062】
上記の3次元バンプは単なる例であり、他の実施形態では、各バンプは、メサ、ドーム、半球体、半球体状部、円錐体、円錐体部、直方体、円筒体、半円筒体、角錐体、角錐体部、四面体、四面体部、六面体、三角柱、多面体、またはその他の形状にすることができる。さらに、センサは、任意の所与の用途に適合するように、異なる形状および/または材料のバンプを備え得る。
【0063】
図4は、本発明の実施形態による、上記のようなセンサを製造する一般的な方法400のフローチャートである。方法400は、第1の配向の列電極106aのアレイを有する第1の電極層106を設けるステップ402と、第1の配向に直交する第2の配向の列電極108aのアレイを有する第2の電極層108を設けるステップ404と、力を受けたときに少なくとも1つの特性を変化させるように構成され且つ第1の電極層106と第2の電極層108との間に設けられる力依存活性層110を設けるステップ406と、活性層110を介して外部から加えられた力を伝達するように配置された少なくとも1つの3次元バンプ102、202、302を設けるステップ408と、外力が加えられるまで、センサ内の2つ以上の層の間に間隔を維持するために配置される少なくとも1つのスペーサを設けるステップ410と、を備える。上記したように、スペーサが図示され、以下でより詳細に説明される。
【0064】
各層、バンプ、またはスペーサは、印刷、スクリーン印刷、ロールツーロール印刷、インクジェット印刷、3D印刷、エレクトロスピニング、堆積、液滴ディスペンシング、キャスティング、コーティング、モールディング、スピニング、またはウィービングのいずれかによって設けることができる。方法400は、以下でさらに詳しく説明するように、単一の基板104の上に少なくとも第1の電極層106および第2の電極層108を形成するステップ、基板を2つの部分に分離するステップ、および2つの部分を積み重ねるステップを含み得る。方法400はまた、前記分離および/または積み重ねステップ前に、少なくとも1つの部分上に少なくとも1つのスペーサを形成するステップを含み得る。
【0065】
図5A~5Iは、本発明の実施形態によるセンサを製造する特定の方法500のステップを示す。
図5Aにおいて、ベース層504が、底部ポリマーカプセル化層を形成する薄い膜にスピンコーティング、堆積、キャスト、またはスプレーコーティングされる。理想的には、ベース層504は、活性層のバインダ材の一部も形成し得るPDMSまたはパリレン-Cなどの所望の弾性特性を有する絶縁ポリマーで作られる。スピンコーティングの場合、これはシラン処理されたシリコンウェーハ上で行うことができるため、ポリマーが付着されず、製造後にデバイスを剥がすことができる。
図5Bにおいて、第1の電極層506が、(例えば、フォトリソグラフィーパターンを使用して)下部列電極のマトリックスアレイにスクリーン印刷、キャスト、スパッタコーティング、またはスピンコーティングされる。第1の電極層506は、炭素含浸エラストマーなどの導電性接着剤、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)などの本質的に導電性のポリマー、または金または銀などの金属から構成することができる。
図5Cは、追加の剛性またはロバスト性のために、スクリーン印刷またはフォトリソグラフィーパターニングを使用して、第1の電極層506の各列電極の間に絶縁層514を追加する任意のステップを示す。この場合、絶縁層514は、ベース層504と同じ材料とし得る。
図5Dは、例えば、上記のような量子トンネル材料の薄い活性層510のスクリーン印刷、鋳造、スピンコーティング、スプレーコーティング、または取り付けを示す。活性層510の厚さは、センサの感度を決定することができ、数十ミクロンからミリメートルまでの間で変えることができる。金属およびバインダマトリックス材料の種類は、所望の用途に応じて変えることができ、材料の組成は液体または固体の形態とすることができる。例えば、活性層510は、金ナノ粒子およびPDMSを含むことができ、あるいは、マグネタイトおよび水ベースのポリマーインクを含むことができる。それは、既知の材料またはカスタム処方された材料としてもよい。
図5Eは、バインダ材料の薄層(~10-100μmの厚さ)を生成し、電極が堆積されるべき場所の間の領域にのみスペーサを、電極の縁がスペーサの縁の上になるように形成するためのスクリーン印刷、鋳造、スパッタコーティング、またはスピンコーティング(例えば、フォトリソグラフィーパターンを使用する)を示す。これらのスペーサは、電極間に小さなエアギャップを形成する。エアギャップを作成するためには、部分的に溶解可能な層を例えば光硬化性ポリマーを利用してパターン化するなどの標準的な微細加工または化学技術を使用することができる。
図5Fは、スペーサ520の上に、第1の電極層506に直角の第2の電極層508の上部電極のマトリックスアレイを形成するためのスクリーン印刷、鋳造、スパッタコーティング、スピンコーティングまたは取り付け(例えば、フォトリソグラフィーパターンを使用する)を示す。第2の電極層508は、炭素含浸エラストマーなどの導電性接着剤、PEDOT:PSSなどの本質的に導電性のポリマー、または金または銀などの金属から構成することができる。任意選択で、上部電極が形成されるスペーサ520の間に支持層が設けられる。
図5Gは、スクリーン印刷またはフォトリソグラフィーパターン化技術を使用して、追加の剛性またはロバスト性のために第2の電極層508の上部電極間に絶縁層514を追加する任意のステップを示す。上記のように、絶縁層514は、ベース層504と同じ材料とし得る。
図5Hにおいて、トップ層512が、薄い膜にスピンコーティング、堆積、キャスト、またはスプレーコーティングされて、トップポリマーカプセル化層を形成する。トップ層512は、PDMSまたはパリレン-Cなどの所望の弾性特性を有する絶縁ポリマーで作ることができ、理想的には、活性層510のバインダ材と同じ材料で形成することができる。
図5Iにおいて、ポリマー層のキャスティングにより4つの重複電極またはセンセルのすべてのセットの上にバンプ502を形成することによって、4つの三次元表面バンプ502がトップ層512に追加される。特に、バンプ502は、センサの残りの部分とは異なる弾性および剛性を有し得る(例えば、バンプ502は、センサ本体よりも高い剛性にすることができる)。各バンプ502の三次元形状は、例えば、立方体、円錐、またはメサ/半球とすることができ、そしてその隅部は4つの下にある電極とある程度重複させるべきである。これにより、アレイ内の4つの電極(つまり、センサ)の各グループが、単一の3次元または3軸の力検出触覚要素(タクテル)になり得る。方法500に記載されているすべてのステップの後に、任意選択の酸素プラズマ層、チオール層、または他の化学接着剤層を追加して、センサの堅牢性を高めることができる。ベース層502がスピンコーティングされている場合、それを剥がすことによってアセンブリ全体をウェーハから切り離すために、さらなるステップが必要となることがある。
【0066】
上記の方法のバインダ材料が伸縮性エラストマーである場合、センサアレイ全体を伸縮性にすることも可能であり、その潜在的な用途をさらに増やすことができる。
【0067】
センサを作成するために使用される基板またはベース層504は、用途に幾分依存する。厚さが25~125ミクロンのPET(ポリエチレンテレフタレート)や10~100ミクロン(通常は25ミクロン)の厚さが変化するPEN(ポリエチレンナフタレート)のように、1つの軸だけでコンプライアントである従来のフレキシブルエレクトロニクス基板を使用することができる。これらの材料は、高解像度が必要な場合、またはデバイスが水中などの過酷な外部環境に耐える必要がある場合に必要になり得る。過酷でない条件では、TPU(熱可塑性ポリウレタン)やシリコーンのように、複数の軸でコンプライアントである基板を使用することができる。また、堆積後のナノコンポジットインクの熱硬化中にシリコーンに誘発される収縮を低減するために、TPUコーティングされたシリコーンがある。これらの材料も25から125ミクロンの間の厚さ範囲内で使用し得る。不織布も、紙、さまざまなゴムやラテックスと同様に、基板として使用し得る。他のさまざまなポリマーも基板として使用し得る。パリレン-Cは、10nm~1ミクロンの範囲内で、たとえば、生体適合性用途や、エクストリームコンプライアンス及び/又は完全な対外界シールを必要とする用途に使用し得る。さらに、必要に応じて、印刷プロセス中の電極用のインクの拡散を容易にするために、基板の上に油を提供することもできる。
【0068】
導電性インクの第1の層を印刷することができ、この層は、第1の電極層506の導電性トラックとして機能し、導電性が高い。この第1の電極層506のマトリックスパターンを画定するために、切除されたまたは溶媒で洗い流された適切な開口部を有するステンシルフィルムまたはマスクまたはスクリーン印刷メッシュを使用することができ、それを通して、スクリーン印刷やロールツーロール印刷で一般的であるように、スキージを使用してインクを基板上に広げることができる。0.05オーム/mm2の範囲のシート抵抗率を有するこの電極層は、ナノコンポジット材料で作られ、柔軟性か伸縮性のいずれかとし得る。伸縮性インクは、TPUやシリコーンなどの一定の割合の伸縮性を許容する基板と共働する。このようなインクは、多くの場合ナノメートルのオーダーの1つの寸法と、多くの場合ミクロンのオーダーの全体サイズを有する導電性粒子を含み、通常、溶剤化学物質および界面活性剤と混合されたポリマーマトリックスに埋め込まれ、インクの粒子間に均一に分散することが保証される。粒子は通常、銀または炭素で構成されるが、金、グラフェン、銅、タングステン、亜鉛などでも同様に構成することができる。スクリーン印刷では、堆積されるインクの厚さは10~50ミクロン(場合によっては100)のオーダーにし得るが、インクジェット印刷を使用した場合にはそれ以下にすることもできる。一部の電極の幅は、20ミクロンから1ミリメートルまで低くすることができる。
【0069】
電極インクが堆積した後、通常80~120℃の温度で硬化させる必要がある。硬化プロセス中に、ポリマー複合材料が硬化している間に溶媒の一部が蒸発する。
【0070】
センサを読み出し電子機器に接続するために必要とされる得るトラックと電極自体の構成は同じ構成であっても、または異なる構成であってもよい。任意選択で、異なる組成のインクのコーティングを、各電極の下の領域に延びる導電性トラックの上に、電極用に印刷することができる。
【0071】
1つまたは複数のセンシティブ(潜在的に異方性、すなわち、材料の厚さまたはその固有の特性によって、垂直方向にのみセンシティブである)活性層が各センサに設けられる。
【0072】
さらに、誘電体ポリマーからなるスペーサが、液滴分配法を使用してセンサ上に印刷または堆積され得る。これらのスペーサは、高さが約10~50ミクロン、直径または幅が1~200ミクロンで、特定の力がかかるまでセンサのグリッド層を互いに離隔した状態に保つように機能する。それらは、また、曲げられときに力を再配分し、センサスキンに折り目やしわが生じないように機能し、これにより、センサに圧力測定値を生じさせ得る局所的な圧力ポイントまたは「バブル」を発生させ得る。
【0073】
センサが印刷されたら、高コンプライアンスで伸縮性のある材料の場合、または25ミクロン以下のような非常に薄い材料の場合は、接続された電極トレースまたはトラックの端に補強材を追加して、通常のはんだタブまたはケーブルをそれらに圧着することができ、センサの電子機器を堅固な電子処理回路に接続することができる。
【0074】
図6Aから
図6Iは、本発明のさらなる実施形態による別のセンサを製造する方法600のステップを示す。各ステップにおいて、センサは3次元ビューと2次元ビューの両方で示されている。
図6Aにおいて、適切な基板材料604(例えば、PEN、PET、TPU、PDMS、TPUコーティングされたシリコーン、ラテックスなど)が選択され、所望の厚さに製造される。この場合、基板604は、以下でより詳細に説明されるように、センサのベース層とトップ層の両方を形成する。この実施形態では、基板604は、36ミクロンの厚さのPETである。
図6Bは、行電極と列電極が互いに直角に方向されたマトリックスアレイ内の第1の電極層606と第2の電極層608の両方を印刷するステップ(例えば、スクリーン印刷またはインクジェット印刷)を示す。電極は、通常、銀または低抵抗カーボンを含むインクから形成される。この実施形態では、電極は、25.4ミクロンの厚さで0.010Ω/スクエア未満の低いシート抵抗率を有するCI-1036伸縮性銀ベースの導電性インクから作られる。この例では、電極は乳剤の厚さでスクリーン印刷されているため、硬化前の厚さは14~25ミクロンである。各電極は2mmの幅を有し、組み立てられたときに幅1cm×長さ1cmになるセンサを形成するように、第1および第2の電極層606、608のそれぞれに3つの電極が設けられる。以下に説明するように、各層を容易に分離できるようにするために、基板604上の第1の電極層606と第2の電極層608との間に2mmのギャップが設けられる。
図6Cは、第1および第2の電極層606、608の各電極上に炭素層607、609をスクリーン印刷する任意選択のステップを示す。
図6Dは、第1および第2の電極層606、608の各電極上に活性層610を堆積するステップ(例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、エレクトロスピニング)を示す。活性層は、圧電抵抗性および/または量子トンネリングおよび/または圧電材料層を含むことができ、層の厚さを制御するために互いの上に単一の層または複数の層として堆積することができる。活性層は、連続シートまたは例えば、線状、正方形状、点状または他の形状の個別部分を含むものとし得る。この実施形態では、活性層は、グリッド領域のみの電極列および行の上に印刷された量子技術スーパーセンサ(QTSS(登録商標))C75ピエゾ抵抗インクで形成され、前の層と同様の厚さを有する。
図6Eにおいて、スペーサ層620は、誘電体、絶縁体、または導電性材料を使用して堆積される。スペーサ層620は、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、または液滴ディスペンサーを使用することによって堆積することができる。この実施形態では、スペーサ層620は、基板604の片側のみに、第2組の電極608を形成する電極の間のギャップ内に形成される。この例では、スペーサ層620は、円筒状支柱のアレイを構成し、各支柱は50ミクロンの直径および100ミクロンの高さを有し、基板604を横切って1mmの間隔で設けられる。この例ではスペーサ層620に使用される材料は、伸縮性であると同時にフレキシブルであるEMS DI-7548などの誘電体である。スペーサ層620は、センサの片面に単一の厚い層として、複数の積み重ね層として、または層が薄い場合はセンサの両面に印刷する(この場合には正確な位置合わせが必要になる)ことができる。
【0075】
図6Fにおいて、基板604は、例えば、シザーズ、レーザー、ナイフプロッターまたはメスで切断され、第1の電極層606および第2の電極層608を2つの部分に分離される。次に、2つの部分は、
図6Gに示されるように、第2の電極層608が第1の電極層606の上に積み重ねられて導電性マトリックスグリッドを形成するように、内側に折り重ねられる。この構成では、第2の電極層608に取り付けられた基板604は、センサのトップ層を形成する。さらに、スペーサ層620の支柱がベース層を形成する基板604とトップ層を形成する基板604との間に延在して、第1の電極層606に設けられた活性層610の部分と第2の電極層608に設けられた活性層610の部分との間にエアギャップ622が存在する。センサが
図6Gのように積み重ねられると、スペーサ層620は、センサが曲げられたときに力を分散するように働き、この場合、活性層610の間のエアギャップを維持するように働き、所定のオフセット力が加えられるまで、開回路を必ず維持するように働く。いくつかの実施形態では、センサの側面をデバイスの縁に沿っておよび活性層領域の周囲に塗布した接着ペースト(例えば、シリコーンPDMS)と結合させて、センサを耐久性のある方法で外部環境から密封するとともにセンサの側面をラミネートすることができる。さらに、APTES(3‐アミノプロピルトリエトキシシラン)リンカーの蒸気堆積物をトップ層に1時間塗布することができる。いくつかの実施形態では、この段階でセンサをラテックスなどのコンプライアントポリマーで完全にコーティングすることができる。非常に薄いセンサの場合、ディップコーティング技術を使用することもできる。
【0076】
次に、
図6Hに示されるように、力をトルクに変換するためにバンプ602がセンサの上面に設けられる。力の方向と大きさの両方を感知するために、バンプは、4つの直交配置された電極(センサ)の各セットの中央に配置する必要があり、押されたときに、加えられた力をトルクに変換する。次に、そのトルクによって一部のセンサが他のセンサよりも圧縮され、これは、接続された電子回路を介して読み取ることができる。バンプは、さまざまな印刷技術(3D印刷またはシリコンエッチングなど)を使用して複数の誘電体層を印刷するか、バンプをモールド成形によって作成することができる(この場合、使用するポリマーが液体状態または部分硬化状態である間、センサをモールドに上下逆さまに配置する必要があり、その後アセンブリ全体を硬化させる必要がある)。この実施形態では、高さ2mm、長さおよび幅6mmの4つの立方体バンプ602用に、PLAからマスターモールドを作成する。次に、液体PDMS(またはシリコン/ラテックス/TPU/ゴム)をモールドに流し込み(エラストマーと硬化剤の重量比が10:1)、オーブンで80℃で1時間硬化させる。その後、PDMSを、それが基板604のPETトップ層に結合される前に、UV-オゾンまたは酸素プラズマで処理して、接着性をさらに増加させる。アセンブリを一晩放置して、PDMSバンプとPETの間に強力な結合を形成することができる。バンプ602は、それらが所定の厚さでデバイスを屈曲させることを可能にする限り、それ自体が剛性またはコンプライアントであり得る。より薄いバンプ602、ならびに非常にコンプライアントな材料から作られたものは、曲げ時の測定の歪みが少なく、したがって、デバイスが曲げられた状態にある間、垂直力に対してより良い異方性選択性を与える。
【0077】
図6Iに示されるように、最後の任意のステップは、外部要素に不浸透性のカバー層624を作製するために、センサの上部またはセンサのエッジまたはセンサ構造全体をラミネートまたは絶縁することを含み得る。ラミネートは、例えば完全にコンフォーマルなパリレンコーティング(より具体的には、1ナノメートルから1ミクロンの厚さのパリレン-C)で行うことができ、絶縁は、シリコーン、ゴム、ポリウレタン、または他のポリマーブレンドで達成することができる。
【0078】
センサ内の任意の層に任意の適切なプリンターを使用できることが理解されよう。ただし、適切なスクリーンプリンターの一例は、Horizon Dek i3TMである。
【0079】
センサの読み出しは、既知のゼロ電位法を使用して行うことができる。この方法により、大きなアレイ内の隣接するセンサ間のクロストークが最小に抑えられる。抵抗膜アレイ回路では、ある検出素子の抵抗が周囲の他の検出素子の抵抗に近づくと、大きな干渉電流が発生し得る。ここで説明するような負のピエゾ抵抗係数センサでは、検出要素は高抵抗で始まり、圧力が加えられると抵抗が減少する。これは、記載のセンサでは、材料が静止時に高い抵抗を有するため、低い圧力がより高い干渉を生成することを意味する。これらのセンサの動作のより詳細は、
図12A~
図12Cに関連して以下に提供される。
【0080】
図7A~7Gは、本発明のさらに別の実施形態によるセンサを製造する方法のステップを示している。このセンサは、上記の他のセンサとは動作が異なる4線式シングルポイントセンサと見なすことができる。特に、このセンサは、電極グリッドの4本のワイヤーの間にある抵抗領域に加えられている圧力の「重心」を測定するという点で異なる。このセンサのバンプは、重心の位置が力の方向を示すことができるという点で、ジョイスティックと同じように機能する。
【0081】
図7Aに示されるように、基板704の適切な材料がその厚さと一緒に選択される。この実施形態では、基板704は、36ミクロンの厚さのPTEで形成される。
図7Bは、同じ基板704上の第1および第2の電極層706、708の両方のスクリーン印刷を示しており、各層の電極は互いに直角に方向されている。この実施形態では、電極は、25.4ミクロンの厚さで0.010Ω/スクエア未満の低いシート抵抗率を有する伸縮性銀ベースの導電性インクEMSCI-1036TMで作られる。この実施形態では、電極は、硬化前のインクの厚さが14から25ミクロンである乳剤の厚さでスクリーン印刷される。電極は2mm幅であり、2つの電極のみが、第1および第2の電極層706、708のそれぞれの縁に沿って設けられ、1cm×1cmのフットプリントセンサを形成する。
【0082】
図7Cは、第1の電極層706の2つの電極の上に堆積され、それらの間に延在する第1の高抵抗炭素層707と、第2の電極層708の2つの電極の上に堆積され、それらの間に延在する第2の高抵抗炭素層709のスクリーン印刷を示す。この実施形態では、両方の高抵抗炭素層は、ECI 7004HR及びNCI7002インクと呼ばれる2つのHenkel
TMインク(80/20%の重量混合比)から混合され、硬化後に10ミクロンの厚さで~約10,100Ω/スクエアのシート抵抗率を得る。堆積は、乳剤の厚さが約20~40ミクロンのメッシュを介して実行される。他の実施形態では、高抵抗炭素層は、EMSMT CI-2050 LR(25.4ミクロンで1,500~2500Ω /スクエア/ミル)および/またはHR(25.4ミクロンで10MΩ/スクエア/ミル未満)を使用して形成され得る。いくつかの実施形態では、第1および第2の高抵抗炭素層707、709は異なっていてもよい。
【0083】
このタイプのセンサの場合、高抵抗炭素層707、709が、デバイス内の鉛抵抗と外界と接触する接触抵抗の合計よりもはるかに高い抵抗であることが重要である。この理由は、デバイスの上部電極層708または底部電極層706の間に電圧が印加されるとき、電圧降下の大部分が抵抗性炭素領域内で発生することが望ましいためである。これにより、バンプ層に加えられたトルクの圧力の中心の位置を確実に測定することができる。デバイスに圧力が加えられると、両方の活性層710が所与の点の周りで互いに接触する。デバイスの片側(上部または底部)で電極間に電位差が印加され、デバイスの反対側の電極のいずれかから電圧が測定されると、これにより分圧回路が形成される。炭素面の反対側の電極の1つから読み取られた電圧は、その両端に電位差が加えられており、圧力が加えられている2つの電極間の圧力の位置(1つの軸)を示す。この電気的構成は、デバイスの反対側の電極/カーボン層で他の軸の位置を読み取るために反転させることができる。
【0084】
図7Dは、第1の高抵抗炭素層707および第2の高抵抗炭素層709のそれぞれの上の活性層710のスクリーン印刷、インクジェット印刷またはエレクトロスピニングを示す。この実施形態では、活性層710は、 Quantum Technology SuperSensors(QTSS(R))C75のピエゾ抵抗性水性インクで形成される。
【0085】
図7Eにおいて、短い円柱状スペーサドットの正方形アレイからなるスペーサ層720が、基板の片側(第1の側)の活性層710の上に設けられる。各スペーサドットの高さは200ミクロンで、隣りのドットから2mm間隔である。この実施形態では、スペーサ層720は、Stratasys’ Tango
TM(すなわち、TangoPlus
TM、FLX930)材料を用いて印刷され、この材料はゴム状熱可塑性エラストマーをシミュレートするPolyJet
TMの印刷可能材料である。この材料の典型的な特性は、26~28のショア硬度と170~220%の破断点伸びにある。したがって、スペーサは、デバイス自体が平らな状態で使用された場合でも、湾曲している間デバイスの上部と下部の引張応力と圧縮応力の差に耐えることができる。次に、基板704を、例えば、はさみ、レーザー、ナイフプロッターまたはメスで切断して、第1の電極層706および第2の電極層708を2つの部分に分離する。次に、
図7Eに示されるように、第2の電極層708が第1の電極層706の上に積み重ねられて導電性マトリックスグリッドを形成するように、2つの部分が内側に折り重ねられる。この構成では、第2の電極層708に取り付けられた基板704がセンサのトップ層を形成する。さらに、
図7Fに示されるように、スペーサ層720の支柱が、活性層710の中央にエアギャップが存在するように、第1の電極層706上の活性層710と第2の電極層708上の活性層710との間に延在する。デバイスが切断され折り重ねられると、デバイスの縁の周りに塗布されたシリコーンPDMS接着剤で側面が接着される。次に、以下に説明するPDMS接着を促進するために、APTES(3―アミノプロピルトリエトキシシラン)リンカーの蒸気堆積物がデバイスの上面に1時間塗布される。
【0086】
図7Gにおいて、バンプ702が、センサの中央に、電極グリッドから離して設けられる。バンプ702は、キャスティングまたは印刷することができ、これには多くのポリマー、例えばよりコンプライアントなPDMS、またはより低いコンプライアントSU8を使用することができる。バンプ702は、所望の用途に応じて、様々な形状、サイズ、および高さを有することができる。この実施形態では、マスターモールドは、高さが2mmで、長さおよび幅が6mmである直方体バンプ702用にPLAから作られる。液体PDMSを型に流し込み(10:1のエラストマー対硬化剤の重量比)、オーブンで80℃で1時間硬化される。この後、PDMSはUV-オゾンまたは酸素プラズマで処理して接着力をさらに高めてから、基板704のトップ層に接着される。アセンブリはPDMSバンプと基板704との間に強い結合を形成するために一晩放置される。
【0087】
このタイプのセンサの場合、読み取りは、バンプ702ごとに3つの別々の読み取り値で構成される。以下で説明するように、1つの読み取り値がX位置に、もう1つがY位置に必要とされる。毎回、電圧(および電流)が一方の平面の電極(すなわち、第1または第2の電極層706、708)を横切って印加され、反対平面上の1つの電極(すなわち、第1または第2の電極層706、708の他方)が電圧を読み取るために使用される。これは分圧回路を形成し、読み取られる電圧は、力が加えられて両方の平面が接触する(xまたはy)位置に対応する。高抵抗カーボン層は、デバイスを外界に接続するリード線及び接触抵抗よりも抵抗がはるかに高く、それらの抵抗は本質的に無視できることが重要である。そうでなければ、リード線で大幅な電圧降下が発生するため、位置の読み取りが制限されることになる。
【0088】
力自体を読み取るために、活性層710(すなわち、ピエゾ抵抗材料)を間に挟んで、電流が一方の平面から他方の平面に流れなければならない。これは、上面の1つの電極(すなわち、第2の電極層708)と底面の別の電極(すなわち、第1の電極層706)との間に電位差を印加することによって行うことができる。この場合、加えられた圧力が活性層の抵抗に影響を与え、デバイスを流れる電流を変化させる。この結果として、活性層710を横切る全体的な電圧降下も変化する。両平面(電流を伝達するために使用されていない)上の対向電極を使用することによって、どちらかの場所の電圧を測定することができる。これは、電子文献で4点プローブ測定として知られているものに対応し、それは、接触抵抗、この場合はデバイスへの電極とそれに対応するリード線の電圧降下を測定しないためである。しかし、電圧降下を測定しているため、完全ではない。加えられる圧力の位置に応じて、高抵抗面上の異なる距離を電流が通過する必要があり、これにより、抵抗が変化し、したがって、圧力の位置によって抵抗層で電圧降下が変化する。高抵抗層の抵抗と均一性を知ることで、位置に基づいて、デバイスのキャリブレーションによって、抵抗測定値をどの程度調整する必要があるかがわかる。したがって、センサの上部のバンプ702が力を受けると、その剪断成分がバンプ702にトルクを生じさせ、圧力の中心をデバイスの特定の領域に集中させる。これの位置と大きさを測定することで、力の平均的な方向と大きさを測定することができる。
【0089】
本発明の実施形態のいずれかにおけるスペーサは、力を分散し、オフセット力が加えられていないときに開回路が存在することを確認しながら、力を分散し、圧力として誤って記録されるであろうしわがセンサに形成されるのを防ぐのに役立つ。
図8A~
図11Cは、本発明の実施形態で使用するための様々な例示的なスペーサ配置を示す。説明のために、それぞれの場合のセンサの一部のみが示されている。
【0090】
図8Aおよび
図8Bは、本発明の実施形態による、異なる円柱状スペーサ配置を含むセンサの一部の平面図を示す。いずれの場合にも、基板804は、第1の電極層806に3つの水平電極および第2の電極層808に3つの直交電極を備えている。活性材料810が、第1の電極層806の電極と第2の電極層808の電極との間に設けられている。いずれの場合も、スペーサは円柱状の支柱、柱、または点で形成される。
【0091】
図8Aでは、スペーサ820aは、基板804の両側に印刷され、電極マトリックスの重複部分の間に、各電極層から、または各電極層を通って基板804まで延在するように配置されている。
【0092】
図8Bでは、スペーサ820bは、基板804の片側のみに印刷され、電極マトリックスの重複部分の間で、基板804の下部と上部の間に延在するように配置されている。
【0093】
図8Aおよび8Bのスペーサは、誘電体ポリマー、ポリシロキサン、ゴム、シリコーンなどのポリマー、またはガラスなどのアモルファス結晶性物質で形成することができる。スペーサは、円柱状、円錐状または円錐断片、角錐または角錐断片、直方体、半球状または半球断片、半円柱状、四面体または四面体断片、六面体、三角柱、多面体、その他の形状にすることができる。いくつかの実施形態では、スペーサは、センサ全体の高さ、形状、寸法、または間隔が変化するように傾斜させることができる。一例では、スペーサは、幅50ミクロン、高さ25ミクロン、間隔1mmの円錐形とすることができる。
【0094】
図9Aおよび9Bは、本発明の実施形態による、異なるひし形のスペーサ配置を含むセンサの一部の平面図を示す。いずれの場合も、基板904は、第1の電極層906に3つの水平電極および第2の電極層908に3つの直交電極を備えている。活性材料910が第1の電極層906と第2の電極層908の電極の間に設けられる。いずれの場合も、スペーサはひし形または正方形のメッシュで形成される。
【0095】
図9Aでは、スペーサ920aは、基板904の片側のみに印刷され、電極マトリックスの重複部分の間に、各電極層から、または各電極層を通って延在するように配置されている。
【0096】
図9Bでは、スペーサ920bは、基板904の両側に印刷され、電極マトリックスの重複部分の上および/または間で、基板904の下部および上部の上および/または間に延在するように配置されている。
【0097】
図9Aおよび9Bのスペーサは、例えば、様々な軟質ポリマーのいずれかを使用して3D印刷された、織布メッシュまたは可撓性/ゴム性ポリマーメッシュで作ることができる。
【0098】
図10Aおよび10Bは、本発明の実施形態による、異なる正方形のスペーサ配置を含むセンサの一部の平面図を示す。どちらの場合も、基板1004は、第1の電極層1006に3つの水平電極を備え、第2の電極層1008に3つの直交電極を備えている。第1の電極層1006の電極と第2の電極層1008との間に活性材料1010が設けられている。どちらの場合も、スペーサは中空の四角い支柱で形成されている。
【0099】
図10Aでは、スペーサ1020aは、基板1004の片側のみに印刷され、大きなセンサ領域に広がるように配置され、例えば、一つの正方形につき9つの電極の重複部分を含んでいる。
【0100】
図10Bでは、スペーサ1020bは、基板1004の片側のみに印刷され、例えば、各電極マトリックスの重複部分の間の小さなセンサ領域の周りに延在するように配置されている。
【0101】
図10Aおよび10Bのスペーサは、円筒形またはひし形スペーサについて上で説明したものと同様の材料で形成することができる。
【0102】
図11A、11Bおよび11Cは、本発明の実施形態による、異なる六角形のスペーサ配置を含むセンサの一部の平面図を示す。いずれの場合も、基板1104は、第1の電極層1106に3つの水平電極、第2の電極層1108に3つの直交電極を備えている。第1の電極層1106の電極と第2の電極層1108との間に活性材料1110が設けられている。いずれの場合も、スペーサは異なるサイズの中空の六角形(すなわちハニカム)メッシュで形成されている。
【0103】
図11Aでは、スペーサ1120aは、基板1104の片側のみに印刷され、電極マトリックスの重複部分の間に延在するように配置されている。
【0104】
図11Bでは、スペーサ1120bは、基板1104の片側のみに印刷され、各電極マトリックスの重複部分の上および/または間に、小さなセンサ領域の周りに延在するように配置されている。
【0105】
図11Cでは、スペーサ1120cは、基板1104の片側のみに印刷され、電極マトリックスの重複部分の間に延在し、前記電極マトリックスの重複部分を結合するように配置されている。
【0106】
図11A、11B、および11Cのスペーサは、押し出しメッシュまたは印刷メッシュで形成することができる。これらは、ハニカム、三角形、四辺形、ひし形、フェルール付きひし形、正方形、またはプレーン形状にすることができる。用途に応じてさまざまな織り方を選択でき、センサ活性層が十分に互いに接触できるようにする必要がある。織りメッシュは他のスペーサ層と同じ目的を持っている。平畳織り、綾織り、平織り、綾畳織り、ロッククリンプ、インタークリンプ、綾織り畳織りの二重またはストランド織りを使用することができる。メッシュは、非導電性の繊維糸で作ることができ、または導電性の糸(例えば、銀またはチタン)を使用して、圧力をセンサ内に分散させながら感度を高めることができる。
【0107】
完全にコンプライアントなフラットセンサを作成するには、複数の課題がある。センサは薄く、電極はコンプライアントである必要があり、センサは所望の力以外の力に反応してはならない。量子トンネル活性層材料は、非常に高い抵抗(~109Ω)で開始するため、有利である。この材料への接触は複数の異なる材料で構成することができるが、この材料を使用して物体を包み込むことができるように、電極は柔軟でわずかに弾性である必要がある。 これを行う1つの方法は、それらが圧力によってわずかに変化する場合でも、伸縮性のある銀電極を作成するか、導電性接着剤を交互に使用することである。
【0108】
上で説明したように、これらのセンサのグリッド/マトリックスは、両側で直角方向に走る行電極と列電極の間にアクティブ層を挟むことによって作成することができる。これは、以前は非コンプライアントな電極と電子機器で行われ、曲げ半径が制限されているが巨視的に観察可能な表面では完全にはコンプライアントでない「フレキシブル」電子機器でも行われていた。マトリックスを読み取るには、アレイ内のすべてのセンセル(検出ピクセル)を1つずつ読み取り、マイクロコントローラまたはその他の信号処理ハードウェアおよびソフトウェアに接続するマルチプレクサが必要である。これは、以前に非コンプライアントの電極と電子機器で行われ、曲げ半径が制限されているが巨視的に観察可能な表面では完全にはコンプライアントでない「フレキシブル」電子機器でも行われていた。マトリックスを読み取るには、アレイ内のすべてのセンサ(検出ピクセル)を1つずつ読み取るマルチプレクサが必要とされ、それをマイクロコントローラまたはその他の信号処理ハードウェアおよびソフトウェアに接続する必要がある。
【0109】
本発明の実施形態では、単純なデバイスが提案され、それは、デバイス全体がコンプライアントであるだけでなく、グリッド内の4つのセンセルのすべてのクラスターが、デバイスのトップ層に力伝達構造として機能するバンプまたは形状を含むことによって3D力感知「タクテル」(触覚ピクセル)に変換され得るものである。
【0110】
提案された装置は、ロールツーロール印刷、スクリーン印刷、または同様の微細加工技術などの印刷を使用する大量生産用に作られている。
【0111】
上記のセンサの主な動作メカニズムは次のとおりあり、4つのセンサのそれぞれの抵抗の変化とそれらの正規分布を使用して、センサにかかる3方向の力を推定する。各バンプは、力の伝達構造として機能する。各バンプに方向性のある力を加えることによって「バンプ」を変形させることにより応力が生成される。力の垂直成分が、その下の各センセルを均等に圧縮する(対称的な抵抗変化をもたらす)が、せん断成分が、アクティブ層にトルクを生成し、いくつかのセンセルを他のセンセルよりも圧縮する(非対称の抵抗変化をもたらす)。この感度の調整は、活性層の厚さとバインダ材、および「バンプ」とその下にある基板材料の高さと剛性の両方を変えることによって行うことができる。
【0112】
クロストークや短絡を引き起こす層の間にトンネリングが確立されなければ、個々のグリッド線は10umまで小さくすることができ、それらの間の間隔を必要なだけ小さくすることができる。
【0113】
信号を読み取るには、各列と行の電極を適切な電気的読み取り回路に接続する必要がある。信号を読み取るとき、各電極は互いに空間的に分離されるため、抵抗性クロストークノイズは大幅に低減される。しかし、各センセルのクロストークのさらなる低減または信号対雑音比(SNR)の向上を達成するには、次のいずれかの方法の一つを採用することができる。i)Pubrickの電圧ミラー法(この場合には、測定ポイントで考慮されていないドライブラインは、出力電圧に等しい電位に設定される)、またはii)より単純なゼロ電位法(この場合には、走査電極の電圧がゼロに設定される)。これらは、クロストークの影響を排除する等電位ゾーンを形成する。上記の回路を実際に構成するには、複数の方法がある。
【0114】
デバイスのキャリブレーションが必要であるが、適切なトレーニングデータが与えられれば、機械学習または人工知能アルゴリズムでセンサの動作を「学習」させることもできる。このようなセンサで測定できる力の範囲は、活性層の配合、そのバインダ、およびセンサの全体的な厚さに応じて、0.01Nから理論的に無限の量までの範囲である。
【0115】
どの層も好ましい厚さはないが、デバイス全体がコンプライアントであるためには、厚さが1mm以下、薄さが10nm以上であることが期待される。表面のバンプは、列記されたものとは異なる形状のものとすることができるが、ほとんどの場合、4つのセンセルごとに1つのバンプを有するという制約が適用される。
【0116】
図12Aは、本発明の実施形態によるセンセルの単一触覚要素(タクテル)1200の上面斜視図を示す。このタクテルは、読み取られるピクセルを表す4つのセンセルC1、C2、C3およびC4上に設けられたドーム形のバンプ1202を有する。以下の表1は、異なる力を受けたときに4つのセンセルのそれぞれが受ける電気抵抗の変化を示している。したがって、このようなセンセルの電気的読み取り値は、加えられた力の位置、大きさ、および方向の測定値に変換することができる。
【表1】
【0117】
図12Bは、バンプ1202に斜めの力が加えられる前と後の
図12Aの触覚要素1200の側面斜視図と、対応する力対時間のグラフを示す。これは、斜めの力が加えられたときにx、y、z軸で受ける力の違いを示している。
【0118】
図12Cは、バンプ1202に斜めの力が加えられたときの
図12Bの触覚要素1200の側面図を示す。これは、図解を容易にするために、上部及び下部基板1204の間に挟まれた活性層1210を含む簡略化されたセンサ層構造を示す。この例では、力の印加時にセンセルC3は小さな変形を経験し、一方、センセルC4は大きな変形を経験する。これは、C4よりもC3の方が弱い変化に変換され、加えられた力の方向を正確に特定するのに役立つ。
【0119】
記載のセンサには多くの用途がある。これらは、信頼性の高い動作をするコンプライアント3軸力センサに対する産業、家庭、および医療の大きな需要に由来する。例としては、ロボット工学(ハードおよびソフトロボット、スリップ検出)、電子皮膚、人工器官、人間-ロボットインタラクション、壁や床などの触覚システム及び表面、仮想現実、ゲーム、構造的完全性の監視(飛行機の翼、建物)、スマート衣類(手袋など)、歩行分析インソール(地面反力の方向、全圧、糖尿病性足潰瘍の監視など、それらは力感知プレートを交換できる)、スポーツ衝撃監視(衝撃の方向と大きさを検出できる)、埋め込み型デバイス、ウェアラブル(例:スマートホームでの使用)、生物医学装置、薬物送達パッチ/システム、伸縮可能電子回路、アダルトおよびセックス玩具産業(例:リアルタイムのパフォーマンス/フィードバックおよび/または適応装置を備えた玩具または人形)、動きを感知する枕、じゅくそう、血圧の監視及び検出を監視する病院のベッド(例:衣服やウェアラブルなどで血圧及び血流を監視することによる冠状動脈性心臓病(CVD)診断のために)、筋力/運動、疲労の監視及び検出、寿命またはエネルギー生成能力を向上させるための潮または風力タービンのブレード周辺の流れ特性の監視、自律型ロボットが想定される可能性があり、高レベルの器用さと触覚情報を必要とするすべての領域(例:倉庫のピッキングと仕分け、宇宙探査、捜索救助、高齢者ケア、料理、電子機器の組み立て、フィッシング、ソーシャルロボットなど)、飛行機の翼(重量及びコストの削減とともにより良い翼の設計に役立つ負荷/力の監視)、建設作業環境での力の監視、馬のサドル圧力の監視、筋力のマッピング/監視、組織の硬度/密度の監視(例:乳がんの診断/女性の出産時期の予測)、人口装具(例:切断者の場合だけでなく、とりわけ、パーキンソン病、ALSなどの特定の病気の振戦補償のためにも使用することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、皮膚の高周波および低周波のメカノレセプタをよりよく模倣するために、バンプ層を取り付ける前にピエゾ抵抗層および圧電層を積み重ねることができる。
【0121】
さらに、デバイスを逆さまに(つまり、バンプをユーザーの皮膚に接触させ、ベース層に力を加える状態で)使用することもできる。これは、デバイスの表面に空気力学的または流体力学的特性が維持される場合に特に有益である。
【0122】
以上の説明は例示的な実施形態を説明したが、当業者は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内でこれらの実施形態に多くの変形を行うことができることは理解されよう。さらに、1つまたは複数の実施形態の特徴は、1つまたは複数の他の実施形態の特徴と混合して組み合わせることができる。
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