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特許7602810一体化された検出手段を備えるねじ締め装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】一体化された検出手段を備えるねじ締め装置
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20241212BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B25B23/14 610B
G01L5/00 103D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022506605
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2020066949
(87)【国際公開番号】W WO2021023422
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】19189731.3
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519367175
【氏名又は名称】ヨハネス・リュベリング・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】JOHANNES LUBBERING GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ベルクマン・ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ペーターマン・ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】リュベリング・アヒム
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072576(JP,A)
【文献】国際公開第2018/188829(WO,A1)
【文献】特開平07-040261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0029901(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
B25B 21/00
G01L 3/14
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじパートナー(20)にトルクを加えるねじ締め装置(10)であって、
前記ねじパートナー(20)に取り外し可能に連結可能な出力部(1b)、および、特に介在する角度および/またはベベル歯車装置(31)を介して、手動でまたは機械的に駆動トルクを適用可能な駆動部(1a)を備えるギア付きオフセットヘッド手段(1)と
前記ギア付きオフセットヘッド手段(1)のハウジング(30)に設けられ、前記出力
部側において前記ねじパートナー(20)に作用する出力トルクの決定および/またはモ
ニターに用いられる測定値を提供するように構成された検出手段(5)とを備え、
前記検出手段(5)が、前記ギア付きオフセットヘッド手段(1)の前記駆動部(1a)および前記出力部(1b)にトルクを伝達するように接続された、好ましくは直線歯形の歯車(4d)に作用する径方向の力および/または接線方向の力を検出可能に構成され、
前記検出手段(5)が、前記径方向の力および/または接線方向の力を、電子信号評価のために、提供可能であり、
前記検出手段(5)が、一体化された力センサ手段を有する略ディスク形状の力トランスデューサ(5a)を備え、一体化された前記力センサ手段は、前記力トランスデューサ(5a)に径方向および/または接線方向に加えられた圧縮力および/または引張力を検出するように構成されており、
一体化された前記力センサ手段が、グラフェンを含みかつ電気伝導率が可変なポリマー
部(15a,15b)により構成されており、前記ポリマー部(15a,15b)は、前記力トランスデューサ(5a)に取り付けられ又は一体化されていることを特徴とするねじ締め装置(10)。
【請求項2】
ねじパートナー(20)にトルクを加えるねじ締め装置(10)であって、
前記ねじパートナー(20)に取り外し可能に連結可能な出力部(1b)、および、特に介在する角度および/またはベベル歯車装置(31)を介して、手動でまたは機械的に駆動トルクを適用可能な駆動部(1a)を備えるギア付きオフセットヘッド手段(1)と 前記ギア付きオフセットヘッド手段(1)のハウジング(30)に設けられ、前記出力部側において前記ねじパートナー(20)に作用する出力トルクの決定および/またはモニターに用いられる測定値を提供するように構成された検出手段(5)とを備え、
前記検出手段(5)が、前記ギア付きオフセットヘッド手段(1)の前記駆動部(1a)および前記出力部(1b)にトルクを伝達するように接続された、好ましくは直線歯形の歯車(4d)に作用する径方向の力および/または接線方向の力を検出可能に構成され、
前記検出手段(5)が、前記径方向の力および/または接線方向の力を、電子信号評価のために、提供可能であり、
前記検出手段(5)が、一体化された力センサ手段を有する略ディスク形状の力トランスデューサ(5a)を備え、一体化された前記力センサ手段は、前記力トランスデューサ(5a)に径方向および/または接線方向に加えられた圧縮力および/または引張力を検出するように構成されており、
一体化された前記力センサ手段が前記力トランスデューサ(5a)に取り付けられ、かつ、前記径方向に延びる前記力トランスデューサ(5a)の対向するストラット(7a,7b)に配置されたひずみゲージ(12a,12b)により構成されていることを特徴とするねじ締め装置(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のねじ締め装置において、前記ギア付きオフセットヘッド手段(1)が、歯車装置を有し且つ前記駆動部(1a)を構成する駆動アセンブリ(2)と、歯車装置を有し且つ前記出力部(1b)を構成する出力アセンブリ(3)との間に、前記検出手段(5)と相互作用する前記歯車(4d)を備え、または、出力アセンブリ(3)が、前記検出手段(5)と相互作用する前記歯車(4d)を備えることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のねじ締め装置において、前記ギア付きオフセットヘッド手段(1)が、前記駆動部(1a)と前記出力部(1b)との間にギア配列を構成する複数の歯車(4a,4b,4c,4d,4e)を備え、前記検出手段(5)と相互作用する前記歯車(4d)は、好ましくは、前記ギア配列を構成する前記歯車(4a,4b,4c,4d,4e)のうちの1つであることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のねじ締め装置において、前記ギア付きオフセットヘッド手段(1)が、複数の歯車(4a,4b,4c,4d,4e)を備え、前記複数の歯車の回転軸が、好ましくは、共通の平面を延びていることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のねじ締め装置において、前記力トランスデューサ(5a)が、前記歯車(4d)に加えられる合力の作用線(W)であって、前記歯車に対して径方向に延びる作用線(W)上に配置されていることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のねじ締め装置において、前記力トランスデューサ(5a)が、前記歯車の端面(6a)に、好ましくは前記歯車と同軸に配置されており、かつ/または前記力トランスデューサ(5a)の最大外径(d)もしくは最大径方向延長が、前記歯車(4d)の基部の円形と略対応することを特徴とするねじ締め装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のねじ締め装置において、前記力トランスデューサ(5a)が、前記歯車(4d)の軸受(19)に強固に連結または一体に形成されていることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項9】
請求項1または請求項1に従属する場合の請求項3からのいずれか一項に記載のねじ締め装置において、前記ポリマー部(15a,15b)が、ボロン含有シリコーン系のバウンシングパテであることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載のねじ締め装置において、前記検出手段(5)が、検出された前記出力トルクに応じた、かつ/または前記出力トルクを監視する測定値信号の、好ましくは無線での、信号伝達手段を備えることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のねじ締め装置において、前記検出手段(5)が、電子インターフェースおよび/または信号処理手段と、電気エネルギー供給手段とを備えることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項12】
請求項11に記載のねじ締め装置において、前記電気エネルギー供給手段が、前記ギア付きオフセットヘッド手段の運動部品、特に回転部品と相互作用する発電機手段として実現されていることを特徴とするねじ締め装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のねじ締め装置(10)と、
駆動部側において前記ギア付きオフセットヘッド手段に連結された駆動トルク生成手段(30)と、
を備える手持ち型または静置型のねじ締めシステム(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじパートナーにトルクを加えるねじ締め装置であって、出力トルクを検出するための一体化された検出手段を備えるねじ締め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術(特には、産業用ねじ締め技術)から、ギア付きオフセットヘッド手段を備えるねじ締め装置が一般的に知られている。ギア付きオフセットヘッド手段とは、通常、扁平なハウジング内に収容された歯車ユニットであって、通常一方の端部に設けられた駆動部と、反対側の端部に設けられ、ねじパートナー(トルクが加えられるねじなど)を(好ましくは着脱自在に)取り付けることができる出力部と、を備える歯車ユニットである。このようなねじ締め装置は、特に、空間的な設置条件によって届きづらいねじパートナーのねじ締めおよび組立て作業に用いられる。
【0003】
特に産業用途における品質保証上の理由により、または記録作成を目的として、出力部側の各ねじパートナーに作用する出力トルクを検出すること又は監視することが所望されている。一般的なねじ締め装置は、WO2018/188829A1(特許文献1)から既に知られている。特許文献1には、上記ギア付きオフセットヘッド手段に割り当てられ、当該ギア付きオフセットヘッド手段のヘリカルギアに作用する軸方向の力を検出する検出手段が開示されており、これにより、出力部側のねじパートナーに作用する出力トルクを決定できることが開示されている。しかし、検出された軸方向の力を評価することによってこのような決定を行うためには、さらなる軸方向軸受を設ける必要があり、ギア付きオフセットヘッド手段における構造的配置について設計の複雑さが増してしまう。また、この公知の検出手段は、ギア付きオフセットヘッド手段内において追加の設置スペースを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2018/188829A1(特表2020-516914)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既に知られている先行技術に基づくと、本発明の課題は、上記先行技術の短所を解消または少なくとも大幅に低減する、改良されたねじ締め装置を提供することである。特に、出力部側のねじパートナーに作用するトルクを決定および/または監視する代替的な手段を備え、同時に、費用効率が良くコンパクトなギア付きオフセットヘッドの設計を可能とするねじ締め装置を提供する。また、信頼性の高いトルクの決定および監視が可能となる。さらに、本発明は、下記の説明においてより詳細に記載される他の課題に対処する。
【0006】
本発明の根底をなす課題は、ねじパートナーにトルクを加えるねじ締め装置であって、独立請求項1の構成を有するねじ締め装置により実現される。本発明の有利な実施態様は、従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、ねじパートナーにトルクを加えるねじ締め装置であって、
前記ねじパートナーに着脱自在に連結可能な出力部、および、好ましくは介在する
(中間にある)角度を介しておよび/またはベベル歯車装置(zwischengeschaltete Winkel-und/oder Kegelverzahnung)を介して、手動でまたは機械的に駆動トルクを適用可能な駆動部を備えるギア付きオフセットヘッド手段と、
出力部側において前記ねじパートナーに作用する出力トルクの決定および/または監視に用いられる測定値を提供する検出手段と、を備え、
前記オフセットギアヘッド手段のハウジングに設けられた前記検出手段が、前記ギア付きオフセットヘッド手段の前記駆動部および前記出力部にトルクを伝達するように接続された、好ましくは直線歯形の歯車に作用する径方向の力および/または接線方向の力を検出可能に構成され、
前記検出手段が、前記径方向の力および/または接線方向の力を、好ましくは電子信号評価のために、提供可能であることを特徴とするねじ締め装置に関する。
【0008】
本発明に係る前記検出手段が、前記ギア付きオフセットヘッド手段の前記ハウジングに一体化され、前記ギア付きオフセットヘッド手段において前記検出手段と相互作用する歯車の径方向の力および/または接線方向の力もしくは円周方向の力を検出する構成により、出力部側のねじパートナーに作用する出力トルクを決定および/または監視に用いられる測定値を高い信頼性をもって提供するシンプルな設計的解決手段が提供される。特に、既に知られている先行技術に比べると、前記ギア付きオフセットヘッド手段において必要となる設置スペースを最小限にすることができる。さらに、本発明に係る前記ねじ締め装置の構成により、費用効率よく製造することおよびメンテナンスを簡単にすることが可能となる。また、前記検出手段と相互作用する前記歯車が直線的にかみ合わされることにより、前記ギア付きオフセットヘッド手段の効率が高まる。上記の出力トルクの決定および/または計測に用いられる測定値とは、好ましくは、前記検出手段により検出される径方向の力および/もしくは接線方向の力、または、それらを表す測定値もしくは測定値信号を意味している。
【0009】
特に、電子的に評価可能な信号を生成するための本発明の設計の単純さにより、標準化された外部評価可能性のための(電子)インターフェース機能、および/または、小型電子部品を用いた外部への(好ましくは無線による)信号伝達を、コンパクトかつ費用効率よく実現できる。特に、本発明の範囲内の実施態様に従ってこのような電子インターフェースまたは信号処理手段のために設けられた電気エネルギー供給手段により、当該電気エネルギー供給手段とする電源手段に加えて、このような無線による自給式の、従って自由度の高い機能が可能となる。例えば、発電機による解決策(elektrische Generatorloesung)を、追加の実施態様におけるオプションとしてもよい。こうした発電処理は、有利にも、本発明に係るねじ締め装置において必然的に生じる関連の歯車部品の回転を利用するものであり、この機械的な運動エネルギーを上記の機能のための電気的な動作エネルギーへと、一般的に知られた方法で変換することが可能である。バッテリまたは他の有線電源から独立していることにより得られる利点についても明白である。
【0010】
上述した前記歯車に作用する径方向および/または接線方向の力とは、前記歯車において、当該歯車に加えられる径方向の力および/または接線方向の力をそれぞれ意味し、特に、当該歯車と噛み合う他の歯車または歯車装置と動作接続された状態にあるときに当該歯車に加えられる径方向の力および/または接線方向の力をそれぞれ意味している。前記歯車に作用する径方向および/または接線方向の力とは、特に、前記検出手段により検出可能な、径方向および/または接線方向における前記歯車の軸受反力(Lagerreaktionskraft)を意味している。好ましくは、前記検出手段に連結された前記歯車においてトルクが伝達されたときに、(好ましくは前記ハウジングに固定された)前記歯車の軸受または回転軸に加えられる径方向の力および/または接線方向の力のそれぞれが、この工程で検出される。ここで、前記径方向の力および/または接線方向の力は、好ましくは、前記歯車の前記回転軸および/または前記ギア付きオフセットヘッドの主軸に対して略垂直な平面における力を意味している。
【0011】
特に好適な例示的実施態様では、前記検出手段が、前記歯車に加えられる接線方向もしくは円周方向の力であって、好ましくは同じ方向に作用する接線方向もしくは円周方向の力が、合力が得られるように組み合わされ、または組み合わされ得る作用線上の径方向の力または前記作用線に沿った径方向の力を検出するように構成されている。このプロセスで検出される径方向の力は、前記歯車に加えられる力または前記歯車の軸受反力である。
【0012】
本発明に係る前記検出手段と相互作用する前記歯車が直線歯形を有する場合、前記
歯車が、前記ギア付きオフセットヘッド手段において当該歯車と噛み合う他の歯車または歯車装置と動作接続されているとき、または相互作用しているとき、好ましくは回転力のみが前記歯車に導入され、これにより、径方向および/または接線方向の力のみが前記歯車に作用する。好ましくは、軸方向の力、つまり前記歯車の回転軸に沿った力が生じない。この場合、前記出力部側のトルクを高い信頼性をもって表すおよび/または監視する測定値信号が、前記検出手段により、好ましくは電子信号評価のために提供され得る。
【0013】
本発明に係る前記検出手段と相互作用する前記歯車が、ヘリカル歯車を有するかまたはヘリカル歯車である場合、径方向および/または接線方向の力に加えて、前記歯車に対する軸方向の力または前記軸方向に作用する反力が生じる。好ましくは、これらの追加の力は、本発明に係る前記検出手段によって検出されない。ただし、前記出力部側のトルクを高い信頼性をもって監視する測定値信号が、前記検出手段により、好ましくは電子信号評価のために提供され得る。特に、検出された前記径方向および/または接線方向の力のずれから、前記出力部側のトルクにずれがあると判断することができる。
【0014】
好適な実施態様では、本発明に係る前記検出手段と相互作用する前記歯車が、歯車装置を備える前記ギア付きオフセットヘッド手段の駆動アセンブリと、歯車装置を備える前記ギア付きオフセットヘッド手段の出力アセンブリとの間に配置されている。本実施態様では、本発明に係る前記検出手段と相互作用する前記歯車が、前記出力アセンブリと直接相互作用する又は噛み合う歯車として構成されていることが好ましい。代替的に、前記出力アセンブリは、本発明に係る前記検出手段と相互作用する前記歯車を直接含むものとすることができる。例えば、前記直線歯形の歯車自体が、前記ギア付きオフセットヘッド手段の前記出力アセンブリを構成することができる。このように、いずれの変形例も、本発明の実質的な利点を実現することが可能であり、つまり、本発明にしたがって、前記ギア付きオフセットヘッド手段の前記出力部の側における測定値を、前記検出手段を用いてできるだけ正確に検出することが可能である。
【0015】
好適な実施態様では、前記ギア付きオフセットヘッド手段が、前記ギア付きオフセットヘッド手段の前記駆動部と前記出力部との間にギア配列を構成する複数の歯車を備える。本実施態様では、本発明に係る前記検出手段と相互作用する前記歯車が、前記ギア配列を構成する前記歯車のうちの1つであることが好ましい。前記ギア配列は、直線歯形の歯車装置またはヘリカル歯車装置を備えていてもよい。また、前記ギア配列は、アングル、ベベル、かつ/またはスパイラル状の歯車装置を備えていてもよい。
【0016】
好適な実施態様では、前記ギア付きオフセットヘッド手段は、複数(少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ)の直線歯形の歯車またはヘリカル歯車を備えている。特に好ましくは、前記ギア付きオフセットヘッド手段は、直線歯形の歯車のみを備える。一方、これに代えて、前記ギア付きオフセットヘッド手段は、少なくとも一部にヘリカル歯車を備えていてもよい。前記ギア付きオフセットヘッド手段の前記歯車のすべての回転軸は、好ましくは一平面において延びている。前記回転軸は、好ましくは、互いに平行に延びており、前記ギア付きオフセットヘッドの前記ハウジングのフラット面を通って延びている。
【0017】
前記ギア付きオフセットヘッドの前記ハウジングは、好ましくは、2つの平行フラット面または対向する平面状外側表面を有する。好ましくは、これらの面は、突起または凸部を有していない。前記ハウジングは、好ましくは2つの部分からなり、2つの対向する半体を有する。前記ハウジングの最大幅は、好ましくは、30mm未満であり、より好ましくは20mm未満である。
【0018】
前記検出手段と相互作用する前記歯車は、好ましくは、前記ハウジングに固定、特には回転不能に固定された軸受軸を有し、前記軸受軸に、前記歯車のリングギアが回転自在に取り付けられており、好ましくはニードルベアリングを用いて回転自在に取り付けられている。
前記検出手段は、好ましくは、少なくとも1つの力トランスデューサを備える。好ましくは、前記力トランスデューサは、軸受または前記歯車の前記軸受軸に強固に連結、特に回転不能に連結、または一体に形成されている。この場合、前記力トランスデューサは、前記軸受軸と前記ギア付きオフセットヘッド手段の前記ハウジングとの間に、好ましくは回転不能に配置されている。また、この場合、前記力トランスデューサは、ハウジングカバーとの適宜のピン接続により、および/または対応の形状とすることにより、前記ハウジングに対して回転しないようにハウジングカバーの凹部に固定し得る。
【0019】
前記力トランスデューサは、好ましくは、前記歯車に加えられる合力の作用線であって、前記歯車に対して径方向に延びる作用線上に配置されている。好ましくは、この合力は、径方向に作用する力であり、前記歯車に加えられる接線方向または円周方向の力(好ましくは同じ方向に作用する力)が、合力が得られるように組み合わされ、または組み合わされ得る。特に、前記力トランスデューサは、好ましくは、作用線上の又は作用線に沿った径方向の力を検出できるように配置されている。
【0020】
前記力トランスデューサは、好ましくはスポークホイールの形態で実現され、かつ/または好ましくは本来ディスク状である。前記力トランスデューサは、好ましくは、割り当てられた前記歯車および/または前記歯車の前記軸受軸と同じ材料からなる。前記力トランスデューサは、好ましくは、前記歯車の端面に形成または配置されている。特に、前記力トランスデューサは、前記歯車のギアリングエッジに直接配置することができる。より好ましくは、2つの力トランスデューサであって、好ましくは同じ種類の力トランスデューサを、前記歯車の両端面に形成または配置することができる。
【0021】
前記力トランスデューサは、好ましくは、前記力トランスデューサから前記ギア付きオフセットヘッド手段の前記ハウジングへの力の伝達が、前記軸方向に、つまり、特に前記歯車の回転軸に沿って生じないように配置されている。
【0022】
前記力トランスデューサは、配置された前記歯車と同軸に、かつ/または回転対称に配置または形成することができる。前記力トランスデューサの外径または最大径方向延長は、好ましくは、割り当てられた前記直線歯形の歯車の前記歯車装置の基部の円形と略同一である。前記力トランスデューサの厚さは、前記軸方向において、好ましくは1mmから5mmの範囲であり、より好ましくは1mmから2.5mmの範囲である。
【0023】
好適な実施態様では、前記力トランスデューサが、一体化された力センサ手段であって、前記力トランスデューサに対して、前記歯車または前記力トランスデューサの径方向および/または接線方向に加えられる圧縮力および/または引張力を検出するように構成された力センサ手段を備える。前記力センサ手段は、好ましくは、前記歯車に加えられる合力の作用線上であって、前記径方向に延びる作用線上に配置されている。
【0024】
前記力センサ手段は、好ましくは、前記力トランスデューサに取り付けられた少なくとも1つのひずみゲージを備える。好ましくは、少なくとも2つのひずみゲージが、前記力トランスデューサに配置されているか、取り付けられている。好ましくは、前記ひずみゲージは、前記力トランスデューサにおいて前記径方向に延びるスポークまたはストラット、好ましくは対向するスポークまたはストラットに配置されている。この構成に代えて、またはこの構成に加えて、前記力センサ手段がピエゾ要素を備えていてもよい。
【0025】
代替的または付加的に、前記力センサ手段が、前記力トランスデューサに取り付けられた又は接続された油圧式または空圧式のセンサ手段を備えていてもよい。この場合、前記力トランスデューサは、凹部またはキャビティからなる少なくとも1つまたは好ましくは2つの適宜のチャンバを備えていてもよく、例えば、前記チャンバ内に、前記油圧または空圧センサの読取に適した液体が配置または導入されている。好ましくは、前記チャンバは、前記力トランスデューサにおいて互いに向かい合って配置されており、前記力トランスデューサの各半体に配置されている。
【0026】
代替的または付加的に、前記力センサ手段が、グラフェンを含むポリマー体であって、好ましくは電気伝導率が可変なポリマー体を含み、前記ポリマー体は前記力トランスデューサに取り付けられているか、一体化されている。例えば、前記ポリマー体は、前記力トランスデューサの凹部またはキャビティからなる適宜のチャンバであって、例えば、好ましくは前記力トランスデューサの各半体において互いに向かい合って配置されたチャンバに導入することができる。好ましくは、前記ポリマー体は、ボロン含有シリコーンベースの弾力性のあるパテ(Huepfknete)などの、グラフェンを含む粘弾性のポリマー体からなる。グラフェンからなる一体化粒子またはフレークを有し、当該ポリマー体にかかる圧力が変化した場合に可変の電気抵抗を発現するこうした導電性ポリマー体は、Zeitschrift Science, 9, 12. 2016, Vol. 354, Ausgabe 6317, Seiten 1257-1260から知られている。
【0027】
上記のセンサ手段は、高い信頼性をもって且つ高い測定品質および精度レベルで、好ましくは電子信号評価のために、前記出力部側のトルクを表すおよび/または監視する測定信号を提供することができる。前記検出手段は、検出された前記出力トルクに応じた測定信号の無線信号伝達のための、および/または前記出力トルクを監視するための手段を備えていてもよい。これに加えて、前記検出手段は、電子インターフェースおよび/または信号処理手段と、電気エネルギー供給手段とを備えていてもよい。前記電気エネルギー供給手段は、前記オフセットギアヘッド手段の運動部品、特に回転部品と相互作用する発電機手段として実現し得る。
【0028】
前記検出手段により提供される測定信号は、前記ねじ締め装置に配置された又は接続可能な演算部に伝達することができ、前記演算部は、検出された前記信号を評価し、検出された前記信号の評価に基づいて各出力トルクを計算もしくは演算および/または監視する。この工程は、例えば、比較表および/またはデータベースの情報に基づいて行うことができる。前記比較表および/またはデータベースの情報は、例えば、一連のテストで決定された前記検出手段の測定値や、与えられた前記測定値に基づいて各出力トルクを計算もしくは演算および/または監視するために用いることができる関連の各トルク値を含んでいてもよい。この場合、前記演算部は、定義可能な目標値からの偏差を検出し、前記偏差が大きすぎる場合に、例えば、好ましくは10%を越え、より好ましくは5%を超える場合に、アラームまたは警告信号を発信するように構成することができる。
【0029】
本発明に係る前記ギア付きオフセットヘッド手段は、好ましくは、クローズ型またはオープン型のギア付きオフセットヘッド手段である。前記オフセットギアヘッド手段は、アングル歯車を用いた設計又は用いない設計とすることができる。また、前記ギア付きオフセットヘッド手段は、スパイラル歯車装置を、例えばアングル歯車の一部として備えていてもよい。この場合、本発明に係る前記検出手段は、スパイラル歯車装置を有する歯車に割り当てられてもよいし、前記歯車と相互作用して、当該歯車において作用する前記径方向および/または接線方向の力を検出してもよい。
【0030】
本発明の他の態様は、上記のねじ締め装置と、駆動部側において前記ギア付きオフセットヘッド手段に連結された駆動トルク生成手段とを備える、(好ましくは手持ち型または静置型の)ねじ締めシステムに関する。前記駆動トルク生成手段は、好ましくは、手動で操作可能な、または自動型のスクリュードライバの形態で構成されている。静置型の前記ねじ締めシステムとは、好ましくは、製造ユニット(例えば、ロボットセル)に常設され、好ましくは自動制御手段により操作可能なねじ締めシステムを意味する。
【0031】
本発明のさらなる利点、構成および詳細は、以下の好適な例示的実施態様についての説明および図面から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明のねじ締めシステムであって、本発明の好適な例示的実施態様に係るシステムを示す斜視図である。
図2】本発明に係るギア付きオフセットヘッド手段を、ハウジングが部分的に取り外された状態で示す斜視図である。
図3a】検出手段と相互作用する歯車を示す斜視図である。
図3b図3aの歯車の部分断面図である。
図3c図3aおよび図3bの力トランスデューサを示す斜視図である。
図3d】力トランスデューサの代替的な実施態様を示す斜視図である。
図4a】油圧式または空圧式のセンサ手段を備える検出手段と相互作用する歯車の他の好適な実施態様を示す斜視図である。
図4b図4aに示す検出手段と相互作用する歯車の断面図である。
図5】本発明に係る力トランスデューサの他の好適な実施態様であって、グラフェンを含みかつ電気伝導率が可変なポリマー部を有するセンサ手段を備える実施態様を示す斜視図である。
図6】検出手段と相互作用する歯車に加えられた力を示す例示的な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、ねじなどのねじパートナー(Schraubpartner)20にトルクを加えるための、本発明に係るねじ締め装置(Schraubvorrichtung)10の好適な実施態様を示す。ねじ締め装置10は、ねじパートナー20に着脱自在に連結可能な出力部1bと、例えば介在する角度および/またはベベル歯車装置31を介して、手動でまたは機械的に駆動トルクを適用可能な駆動部1aと、を備えるギア付きオフセットヘッド手段1を備える。
【0034】
ねじ締め装置10は、好ましくは選択的に、ねじ締め器具30に連結させることができ、これにより本発明に係るねじ締めシステム40を構成することができる。ねじ締め器具30はスタンダード器具とすることができ、介在する角度および/またはベベル歯車装置31を介して、モータにより例えば電気的にまたは空気圧で、ねじ締め装置10のギア付きオフセットヘッド手段1にトルクを導入することができる。このようにして導入された駆動トルクは、ねじパートナー20のねじ締め動作のために、下記のように出力部1bとして設けられた器具32へと、歯車式オフセットヘッド手段1により伝達される。
ねじ締め装置10は扁平なハウジング30を備え、好ましくは、このハウジングは、ほぼ同じ形状の2つのハウジング半体30a,30bにより構成されている。好ましくは、ハウジング30の最大高さまたは幅bは30mmであり、より好ましくは20mmである。
【0035】
図2は、本発明に係るオフセットギアヘッド手段1を、ハウジングが部分的に取り外された状態で示す斜視図である。ギア付きオフセットヘッド手段1は、例えば、駆動部側に設けられた角度付きおよび/またはベベル歯車装置(mit der antriebsseitig vorgesehenen Winkel und/oder Kegelverzahnung)31と相互作用するための駆動アセンブリ2と、例えば、ねじパートナーに連結され且つ出力部側に設けられた器具32を介して、ねじパートナー20と相互作用するための出力アセンブリ3とを備える。
【0036】
ギア付きオフセットヘッド手段1は、好ましくは、ギア付きオフセットヘッド手段1の駆動部1aと出力部1bとの間にギア配列を形成する複数の歯車4a,4b,4c,4d,4eを備える。これらの歯車は、好ましくは、例えば変速比が1:1となる直線歯形の歯車(geradverzahnte Zahnraeder)である。図2に示されている形態に対する代替として、前記歯車は、ヘリカル歯車として実現することも可能である。異なる変速比とすることも可能である。
【0037】
前記歯車は、好ましくは、ハウジング30内において軸方向に平行に配置され、ハウジング30の長手方向延長に沿って直線的に延びており、前記歯車は、このハウジング内において回転可能に配置されている。駆動アセンブリ2または出力アセンブリ3は、前記歯車のうちの一部を含んでいてもよい。好ましくは、駆動アセンブリ2および出力アセンブリ3はそれぞれ1つの歯車装置または1つの歯車4a,4eを含み、当該1つの歯車装置または1つの歯車は、前記ギア配列の他の歯車と動作接続された状態にある。特に、駆動アセンブリ2および出力アセンブリ3はそれぞれ1つの歯車4a,4eにより構成されていてもよい。
【0038】
このようなギア付きオフセットヘッド手段1は、手動でのねじ締め動作を通常行う際に提供され、最大トルク約200Nmの伝達に適している。このような直線歯形のギア配列の一般的な効率(つまり、駆動部側の4aにおけるトルクに対する出力部側の4eにおけるトルクの比)は、歯車装置の潤滑状態および厳密な設計に応じて、約85%から95%の範囲である。
【0039】
検出手段5は、駆動アセンブリ2と出力アセンブリ3との間に配置されており、検出手段5は、出力部側においてねじパートナー20に作用する出力トルクを決定および/または監視するための測定値を提供するように構成されている。検出手段5は、好ましくは直線歯形の歯車4dに割り当てられているか、または同歯車と動作接続された状態にある。検出手段5に連結された歯車4dは、好ましくは、出力アセンブリ3の歯車4eと噛み合う。代替的に、検出手段5に連結された歯車4dは、出力アセンブリ3に直接包含されてもよいし、またはこの出力アセンブリを構成してもよい。
【0040】
図6は、図2に示された直線歯形の歯車群4c,4d,4eの直線的な配列を概略的に示す模式図である。同図に一例として示された噛み合う歯車4c,4d,4eの自由体図には、それぞれの接線方向または円周方向の力F1a,F1bおよびF2a,F2bが、歯車装置の係合状態において、図示されたY方向に作用し、ギア配列4c,4d,4eの延在方向Xに対して略垂直となることが示されている。歯車装置の係合状態における力の原点は、一例として、中央の歯車4dの両側に示されている。これらの力の大きさは、歯車段の中で生じ得る効率損失においてのみ異なる。同じ方向に作用する2つの円周方向の力F1a,F1bおよびF2a,F2bを組み合わせて合力を得た場合、それらの力の作用線Wは歯車4dのほぼ中央に位置する。よって、本発明に係る検出手段5は、好ましくは、歯車4dに加えられる合力の作用線上に配置されるか、作用線においてもしくは作用線に沿って生じる力を検出することができるように配置されている。
【0041】
図3aは、歯車4dと、対応する又は割り当てられた検出手段5とを示す斜視図である。
検出手段5は、スポークホイール(図3cも参照)の形状で、好ましくは略ディスク状の力トランスデューサ5aを備えており、前記力トランスデューサは、例えば、歯車4aの回転軸19と一体に形成かつ/または強固に(特には回転不能に)連結されている。さらに、力トランスデューサ5aは、ハウジング30a,30bに回転不能に取り付けられており、例えば、軸方向に設けられたボア9a,9bおよびその内部に収容された連結ピン(図示せず)を用いて取り付けられている。この形態に対する代替的構成として、力トランスデューサ5aは、形状を確保して前記ハウジングに取り付けることが可能である。この場合、力トランスデューサ5aの外形(図3dを参照)は、ほぼ台形状とすることができ、例えば、ハウジング30a,30bの対応する凹部に回転不能に収容または取り付け可能な形状とすることができる。
【0042】
力トランスデューサ5aは、好ましくは、歯車4dの端面6aまたは歯車4dの回転軸19に配置されている。検出手段5は、好ましくは2つの力トランスデューサ5aを備え、これらの力トランスデューサは、好ましくは同種のものであり、歯車4aの2つの対向する端面6a,6bまたは歯車4dの回転軸19に配置されている(図3bを参照)。
【0043】
歯車4dは、好ましくは、中央回転軸19を備え、前記中央回転軸は内部にボア19aが設けられており、ギア付きオフセットヘッド手段1が好ましくは回転不能に配置されるように、かつ/または検出手段5に割り当てられたセンサ線もしくは配線13を案内するように構成されている。軸19は、好ましくはその両端に、部分19bを有することが好ましく、前記部分は、軸方向に突出しており、少なくとも1つの力トランスデューサ5aが取り付けられるように、かつ/または連結されるように構成されている。部分19bは、特に、力トランスデューサ5aの中央ボア8に係合させることができ、好ましくは回転不能に係合させることができる。力トランスデューサ5aと軸19の主軸体との間に、スペーサまたドリルディスク(Distanz- oder Bohrscheibe)21を配置することができる。歯車4dのリングギア22は、軸19上に回転自在に配置されており、好ましくはニードルベアリング23を用いて回転自在に配置されている。
【0044】
力トランスデューサ5aは、力トランスデューサ5aを回転軸19に連結するための、および/またはセンサ線13を案内するための、中央ボア8を有する。力トランスデューサ5aは、円形の外形を有することが好ましい。力トランスデューサ5aの外径dまたは最大径方向延長は、歯車4dの基部の円形よりも小さいか、この基部の円形と略同一であることが好ましい。力トランスデューサ5aの厚さtは、好ましくは1mmから5mmの範囲であり、より好ましくは1mmから2.5mmの範囲である。
【0045】
力トランスデューサ5aは、少なくとも2つの(好ましくは対向する)径方向ストラットまたはバー7a,7bと、好ましくは略円弧状の中間凹部11a,11b,11c,11dと、を備える。力トランスデューサ5aは、内側の円18aと、当該内側の円と同軸に形成された外側の円18bとにより構成され、径方向に延びるストラットまたはバー7a,7b,7c,7dを備えていてもよい。
【0046】
力トランスデューサ5aは、その内部に一体化または取り付けられた力センサ手段を備え、前記力センサ手段は、前記力トランスデューサに、したがって、当該力トランスデューサと共に回転させるように連結された軸受軸19に軸受反力として加えられる、歯車4dに対して径方向および/または接線方向の圧縮力および/または引張力を検出するように構成されている。図3aから図3cに示される実施態様において、前記力センサ手段は、力トランスデューサ5aに取り付けられたひずみゲージ12a,12bにより構成されている。前記ひずみゲージ12a,12bは、力トランスデューサ5aにおいて径方向に延びるストラット7a,7bに、好ましくは対向するストラットに配置されており、これにより、特に、割り当てられた歯車4dが当該歯車と噛み合う歯車4c,4eと相互作用するときに、これらのストラットに作用する圧縮力および/または引張力を検出することができる。ストラット7a,7bまたは力センサ手段12a,12bは、各ギア配列において歯車4dに加えられる合力の作用線W(図6も参照)に沿って、またはこれと並行に配置されていることが好ましい。
【0047】
その後の処理および評価のために従来公知の方法で提供された信号は、センサ配線13により発信することができる。好ましくは、径方向の力による弾性変形の結果としての電圧変動が、力センサ手段としてのひずみゲージにより発生させられ、この電圧変動が電子信号評価のために、および特には出力部側のトルクの決定および/または監視のために与えられる。電子信号評価のための測定信号を発信するために、前記装置は無線信号伝達用の手段(図示せず)を備えていてもよい。前記信号評価は、前記装置に割り当てられた又は前記装置に接続することができる演算手段(図示せず)により行うことができ、前記演算手段は、例えば、発振された電圧信号に基づいて対応する又は適用されたトルクを演算または監視する。例えば、前記信号評価は、データベースに保存された比較表に基づいて行うことができる。本発明に係る歯車4dおよび当該歯車に連結された力トランスデューサ5aが出力アセンブリ3の歯車4aと直接噛み合い、出力トルクが、ねじ締めのためにねじパートナー20へと直接導入されるので、力センサ信号は、オフセットギアヘッド手段の出力部側における実際のトルク比を極めて正確に、かつ干渉なく再現可能に示しまたはモニターして、本発明の目的を実現することができる。このようにトルクを対とすることによるロスは無視できる程度である。
【0048】
図4aおよび図4bには、本発明に係る検出手段5の他の好適な実施態様であって、力トランスデューサ5aが油圧式または空圧式のセンサ手段を備える実施態様が示されている。特に、力トランスデューサ5aは、少なくとも1つ、好ましくは2つの適宜のチャンバ14a,14bを備え、前記チャンバは、適宜の流体が配置または導入される凹部またはキャビティからなる。チャンバ14a,14bは、好ましくは、力トランスデューサ5aにおいて互いに向かい合って、かつ力トランスデューサ5aを2つの半体に分割する軸心Aに沿って対称に設けられている。歯車4dと、当該歯車に噛み合う歯車4c,4eとが相互作用することにより生じるチャンバ14a,14b内の油圧または空圧の変化は、チャンバ14a,14bに割り当てられた適宜の圧力センサを用いて検出することができる。力トランスデューサ5aの外部に配置された圧力センサへの伝達は、適宜のライン14c,14dを用いて行うことができる。チャンバ14a,14bはそれぞれ充填用および/または通気用の開口24を有していてもよく、この開口は、対応するプラグ(図示せず)を用いて任意に閉じることができる。その後、前記センサ手段により、対応する電子信号を発信させることができ、この信号発信から、歯車4dに加えられたトルクを推定することができる。
【0049】
図4bに示されているように、検出手段5は、好ましくは、歯車4dの2つの端面6a,6bまたは回転軸19に設けられた2つの力トランスデューサ5aを備える。同図に示されているように、各チャンバ14a,14bは、好ましくは回転軸19に形成またはその内部に案内されたチャネル25により接続または連結されていることが好ましい。
【0050】
図5には、本発明に係る検出手段5の他の好適な実施態様であって、力トランスデューサ5aが、グラフェンを含みかつ電気伝導率が可変なポリマー部をセンサ手段として備える実施態様が示されている。特に、力トランスデューサ5aは、少なくとも1つ、好ましくは2つの適宜のチャンバ15a,15bを備え、前記チャンバは、グラフェンを含むポリマー部が導入される凹部またはキャビティであって、それぞれ対応する電線16a,16bおよび17a,17bと接触している凹部またはキャビティからなる。チャンバ15a,15bは、好ましくは、力トランスデューサ5aを2つの半体に分割する軸心Bに沿って対称に設けられている。好ましくは、チャンバ15a,15b内に、支持構造要素として、径方向に延びるばね要素26が配置されている。
【0051】
前記グラフェンを含むポリマー部の電気伝導率は、歯車4dにトルクが加えられたとき、したがって、歯車4dと相互作用する力トランスデューサ5aに反力が生じたときに変動する。これにより、電子信号評価のために、トルクに応じたセンサ信号を発することができる。
【0052】
上記の実施態様は例示的なものに過ぎず、本発明は図面に示された実施態様に限定されるものではない。特に、図示された例示的な実施態様は、互いに組み合わせることもできる。
以下、本発明に含まれる態様を記す。
〔態様1〕ねじパートナー(20)にトルクを加えるねじ締め装置(10)であって、
前記ねじパートナー(20)に取り外し可能に連結可能な出力部(1b)、および、特に介在する角度および/またはベベル歯車装置(31)を介して、手動でまたは機械的に駆動トルクを適用可能な駆動部(1a)を備えるギア付きオフセットヘッド手段(1)と
出力部側において前記ねじパートナー(20)に作用する出力トルクの決定および/またはモニターに用いられる測定値を提供する検出手段(5)と、を備え、
前記ギア付きオフセットヘッド手段(1)のハウジング(30)に設けられた前記検出手段(5)が、前記ギア付きオフセットヘッド手段(1)の前記駆動部(1a)
および前記出力部(1b)にトルクを伝達するように接続された、好ましくは直線歯形の歯車(4d)に作用する径方向の力および/または接線方向の力を検出可能に構成され、
前記検出手段(5)が、前記径方向の力および/または接線方向の力を、好ましくは電子信号評価のために、提供可能であることを特徴とするねじ締め装置(10)。
〔態様2〕態様1に記載のねじ締め装置において、前記ギア付きオフセットヘッド手段(1)が、歯車装置を有し且つ前記駆動部(1a)を構成する駆動アセンブリ(2)と、歯車装置を有し且つ前記出力部(1b)を構成する出力アセンブリ(3)との間に、前記検出手段(5)と相互作用する前記歯車(4d)を備え、または、出力アセンブリ(3)が、前記検出手段(5)と相互作用する前記歯車(4d)を備えることを特徴とするねじ締め装置。
〔態様3〕態様1または2に記載のねじ締め装置において、前記ギア付きオフセットヘッド手段(1)が、前記駆動部(1a)と前記出力部(1b)との間にギア配列を構成する複数の歯車(4a,4b,4c,4d,4e)を備え、前記検出手段(5)と相互作用する前記歯車(4d)は、好ましくは、前記ギア配列を構成する前記歯車(4a,4b,4c,4d,4e)のうちの1つであることを特徴とするねじ締め装置。
〔態様4〕態様1から3のいずれか一態様に記載のねじ締め装置において、前記ギア付きオフセットヘッド手段(1)が、複数の歯車(4a,4b,4c,4d,4e)を備え、前記複数の歯車の回転軸が、好ましくは、共通の平面を延びていることを特徴とするねじ締め装置。
〔態様5〕態様1から4のいずれか一態様に記載のねじ締め装置において、前記検出手段(5)が、前記歯車(4d)に加えられる合力の作用線(W)であって、前記歯車に対して径方向に延びる作用線(W)上に配置された少なくとも1つの力トランスデューサ(5a)を備えることを特徴とするねじ締め装置。
〔態様6〕態様5に記載のねじ締め装置において、前記力トランスデューサ(5a)が、前記歯車の端面(6a)に、好ましくは前記歯車と同軸に配置されており、かつ/または前記力トランスデューサ(5a)の最大外径(d)もしくは最大径方向延長が、前記歯車(4d)の基部の円形と略対応することを特徴とするねじ締め装置。
〔態様7〕態様5または6に記載のねじ締め装置において、前記力トランスデューサ(5a)が、前記歯車(4d)の軸受(19)に強固に連結または一体に形成されていることを特徴とするねじ締め装置。
〔態様8〕態様5から7のいずれか一態様に記載のねじ締め装置において、前記力トランスデューサ(5a)が、一体化された力センサ手段であって、前記力トランスデューサ(5a)に径方向および/または接線方向に加えられた圧縮力および/または引張力を検出するように構成された力センサ手段を備えることを特徴とするねじ締め装置。
〔態様9〕態様8に記載のねじ締め装置において、一体化された前記力センサ手段が、前記力トランスデューサ(5a)に取り付けられ、かつ、好ましくは、前記径方向に延びる前記力トランスデューサ(5a)の対向するストラット(7a,7b)に配置されたひずみゲージ(12a,12b)により構成されていることを特徴とするねじ締め装置。
〔態様10〕態様8に記載のねじ締め装置において、一体化された前記センサ手段が、前記力トランスデューサ(5a)に取り付けられ又は接続された油圧式または空圧式のセンサ手段(14a,14b)により構成されていることを特徴とするねじ締め装置。
〔態様11〕態様8に記載のねじ締め装置において、一体化された前記センサ手段が、グラフェンを含みかつ電気伝導率が可変なポリマー部(15a,15b)により、特に、ボロン含有シリコーン系のバウンシングパテなどの、グラフェンを含む粘弾性ポリマー部により構成されており、前記ポリマー部(15a,15b)は、前記力トランスデューサ(5a)に取り付けられ又は一体化されていることを特徴とするねじ締め装置。
〔態様12〕態様1から11のいずれか一態様に記載のねじ締め装置において、前記検出手段(5)が、検出された前記出力トルクに応じた、かつ/または前記出力トルクを監視する測定値信号の、好ましくは無線での、信号伝達手段を備えることを特徴とするねじ締め装置。
〔態様13〕態様1から12のいずれか一態様に記載のねじ締め装置において、前記検出手段(5)が、電子インターフェースおよび/または信号処理手段と、電気エネルギー供給手段とを備えることを特徴とするねじ締め装置。
〔態様14〕態様13に記載のねじ締め装置において、前記電気エネルギー供給手段が、前記オフセットギアヘッド手段の運動部品、特に回転部品と相互作用する発電機手段として実現されていることを特徴とするねじ締め装置。
〔態様15〕態様1から14のいずれか一態様に記載のねじ締め装置(10)と、
駆動部側において前記ギア付きオフセットヘッド手段に連結された駆動トルク生成手段(30)と、を備える手持ち型または静置型のねじ締めシステム(40)。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図5
図6