(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】QOL改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20241212BHJP
A23L 17/60 20160101ALI20241212BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20241212BHJP
A23L 19/10 20160101ALI20241212BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20241212BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20241212BHJP
A23L 7/104 20160101ALI20241212BHJP
A23L 11/50 20210101ALI20241212BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20241212BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20241212BHJP
A61K 36/06 20060101ALI20241212BHJP
A61K 36/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L17/60 B
A23L17/60 W
A23L19/00 D
A23L19/00 101
A23L19/10
A23L2/00 F
A23L2/38 C
A23L2/38 F
A23L2/38 H
A23L2/38 D
A23L19/00 C
A23L19/00 Z
A23L7/104
A23L11/50 102
A23L17/60 102
A61P3/02
A61K35/744
A61K36/06
A61K36/02
(21)【出願番号】P 2022533255
(86)(22)【出願日】2020-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2020025433
(87)【国際公開番号】W WO2022003749
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-06-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506180660
【氏名又は名称】株式会社日本自然発酵
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中西 雅寛
(72)【発明者】
【氏名】安達 輝生
【審査官】楠 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/093104(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/009437(WO,A1)
【文献】大谷 直子,細胞老化の二面性-SASPによる炎症と発がん促進,医学のあゆみ,2015年,Vol. 253, No. 9,pp. 753-759
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61P
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(a)~(g)
(a)大麦、黒大豆、赤米、黒米、小豆、はと麦、ヒエ、アワおよびキビの麹菌発酵物
(b)ミカン、ブドウ、リンゴ、ヤマブドウ、モモ、カキ、パパイヤ、ナシ、スイカ、ウメ、イチジク、カリン、カボチャ、キンカン、ユズ、ビワ、アンズ、ナツメ、クリ、マタタビおよびスモモの酵母および/又は乳酸菌発酵物
(c)紫イモ、菊芋、ニンジン、タマネギ、サツマイモ、里芋、自然薯、大根、赤カブ、ゴボウ、レンコン、ヤーコン、ユリ根、クワイ、しょうが、にんにくおよびウコンの酵母および/又は乳酸菌発酵物
(d)キャベツ、紫蘇、桑葉、どくだみ、ヨモギ、クマザサおよびタンポポの酵母および/又は乳酸菌発酵物
(e)コンブ、ワカメおよびモズクの酵母および/又は乳酸菌発酵物
(f)黒ゴマ、クルミおよびギンナンの酵母および/又は乳酸菌発酵物
(g)マイタケおよびシイタケの酵母および/又は乳酸菌発酵物
の混合物である植物発酵物を有効成分として含有するQOL改善剤であって、
QOLが、情動・行動または代謝性疾患に基づくものであり、
情動・行動に基づくQOLの改善が、元気の改善、体調の改善、気分の改善、食行動の改善であ
り、
代謝性疾患に基づくQOLの改善が、血圧の改善、糖尿病の改善、肥満の改善、更年期の改善である、
ことを特徴とするQOL改善剤。
【請求項2】
植物発酵物が、植物発酵物100g当たり以下の組成のアミノ酸を含有するものである請求項1に記載のQOL改善剤。
アルギニン 0.2~0.6g
リジン 0.1~0.7g
ヒスチジン 0.1~0.4g
フェニルアラニン 0.2~0.8g
チロシン 0.1~0.6g
ロイシン 0.3~1.2g
イソロイシン 0.2~0.8g
メチオニン 0.05~0.30g
バリン 0.2~0.9g
アラニン 0.2~0.9g
グリシン 0.2~0.7g
プロリン 0.4~1.2g
グルタミン酸 1.2~3.0g
セリン 0.2~0.8g
スレオニン 0.2~0.7g
アスパラギン酸 0.4~1.5g
トリプトファン 0.03~0.15g
シスチン 0.05~0.40g
【請求項3】
植物発酵物が、植物発酵物100g当たり以下の組成の有機酸を含有するものである請求項1又は2に記載のQOL改善剤。
クエン酸 0.5~1.2g
リンゴ酸 0.05~0.5g
コハク酸 0.04~0.3g
乳酸 0.5~6.0g
ギ酸 0.01~0.1g
ピルビン酸 0.005~0.05g
遊離γ-アミノ酪酸 0.01~0.05g
【請求項4】
乳酸菌が、ぺディオコッカス・アシディラクティ(P.acidilacti)、ラクトバチルス・ブレビス(L. brevis)、ロイコノストック・メセンテロイデス(L. mesenteroides)、ラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)、ラクトコッカス・ラクチス(L. lactis)、ラクトバチルス・サケイ(L. sakei)、ペディオコッカス・ペントサセウス(P. pentosaceus)、ラクトバチルス・カゼイ(L. casei)およびラクトバチルス・クルバタス(L. curvatus)よりなる群から選ばれた1種または2種以上である請求項1~3のいずれかの項記載のQOL改善剤。
【請求項5】
酵母が、サッカロマイセス・セレビシエ(S. cervisiae)および/又はジゴサッカロマイセス・ロキシー(Z. rouxii)である請求項1~4のいずれかの項記載のQOL改善剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかの項記載のQOL改善剤を含有するQOL改善用飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物発酵物を利用したQOL改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療の現場でQOL(生活の質)が重視されるようになって久しく、例えば、下妻がQOLの歴史について解説をしている(非特許文献1)。これによればQOLの発想は癌の治療から始まっていて、医学的治癒を目指した様々な癌の治療による、様々な副作用や不快感を解消すること目的としている。
【0003】
このようにQOLの対象範囲は幅広いものであるが、更に不快さの回避や解消も対象となり、未病から疾病に至る多様且つ複合的な症状が対象となっている。
【0004】
また、上記QOLに加えて、高齢化の急速な進行に伴い、身体の器官・組織・細胞そのものおよび調節機能の老化に基づくQOLの低下の改善のニーズも高くなってきている。
【0005】
しかしながら、西洋で発達した科学を基盤とする医薬品では、病因と症状が1:1の関係で説明できることが求められ、わが国の医療体制も西洋科学が主要な原点となっている。西洋医学の基本は疾病の診断が確定し、それに対する処方が決められる。そのため、このような医薬品では多岐にわたるQOLを総合的に改善できるようなもの得られるはずもなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6013670号公報
【文献】国際公開第2019/009437号パンフレット
【文献】国際公開第2019/009438号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【文献】「QOL評価研究の歴史と展望」下妻晃二郎、行動医学研究、21巻、(1)4-7(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、多岐にわたるQOLを総合的に改善できるようなQOL改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究したところ、これまで本発明者らが開発してきた、老化抑制作用(特許文献1)、自然発がん予防作用(特許文献2)、免疫チェックポイント阻害作用(特許文献3)を明らかにしてきた植物発酵物が、多岐に渡るQOLの改善をできることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、次の(a)~(g)
(a)大麦、黒大豆、赤米、黒米、小豆、はと麦、ヒエ、アワおよびキビよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の豆・穀物類の麹菌発酵物
(b)ミカン、ブドウ、リンゴ、ヤマブドウ、モモ、カキ、パパイヤ、ナシ、スイカ、ウメ、イチジク、カリン、カボチャ、キンカン、ユズ、ビワ、アンズ、ナツメ、クリ、マタタビおよびスモモよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の果実類の酵母および/又は乳酸菌発酵物
(c)紫イモ、菊芋、ニンジン、タマネギ、サツマイモ、里芋、自然薯、大根、赤カブ、ゴボウ、レンコン、ヤーコン、ユリ根、クワイ、しょうが、にんにくおよびウコンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の根菜類・イモ類の酵母および/又は乳酸菌発酵物
(d)キャベツ、紫蘇、桑葉、どくだみ、ヨモギ、クマザサおよびタンポポよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の花・葉菜類の酵母および/又は乳酸菌発酵物
(e)コンブ、ワカメおよびモズクよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の海藻類の酵母および/又は乳酸菌発酵物
(f)黒ゴマ、クルミおよびギンナンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の種子類の酵母および/又は乳酸菌発酵物
(g)マイタケおよびシイタケよりなる群から選ばれる1種又は2種のキノコ類の酵母および/又は乳酸菌発酵物
の混合物である植物発酵物を有効成分として含有することを特徴とするQOL改善剤である。
【0011】
また、本発明は、上記QOL改善剤を含有するQOL改善用飲食品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のQOL改善剤は、これまでも食経験の豊かな特定の植物発酵物を有効成分としているため飲食品等としても好適である。
【0013】
また、本発明のQOL改善剤は、従来のものと異なり、多岐にわたるQOL、例えば、情動・行動、老化症状、消化器症状、慢性疲労、慢性炎症、代謝性疾患、認知症等に基づくQOLを総合的に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は胸腺と腎臓のDNAマイクロアレイ解析のヒートマップを示す。
【
図2】
図2は老化促進マウスの腸内細菌の属レベルの存在比率を示す。
【
図3】
図3は老化促進マウスのLactobacillus属の増減を示す。
【
図4】
図4は老化促進マウスのLactobacillus種の各試験群における数を示す。
【
図5】
図5は老化促進マウスのBacteroides属の増減を示す。
【
図6】
図6は老化促進マウスのClostridium属の増減を示す。
【
図7】
図7はUnifrac解析を用いたα―多様性の結果を示す。
【
図8】
図8はUnifrac解析を用いたβ―多様性の結果を示す。
【
図9】
図9は菌叢間のリード数(組成比)を加味したWeighted Unifrac 解析の結果を示す。
【
図11】
図11は被験者の4週間の摂取後のTリンパ球年齢を示す。
【
図12】
図12は被験者の摂取終了2週間後のTリンパ球年齢を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のQOL改善剤は、下記の植物発酵物を有効成分として含有するものである。この植物発酵物は、以下の(a)~(g)の植物発酵物の混合物である。
【0016】
(a)大麦、黒大豆、赤米、黒米、小豆、はと麦、ヒエ、アワおよびキビよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の豆・穀類に麹菌を作用させることにより得られる発酵物
【0017】
(b)ミカン、ブドウ、リンゴ、ヤマブドウ、モモ、カキ、パパイヤ、ナシ、スイカ、ウメ、イチジク、カリン、カボチャ、キンカン、ユズ、ビワ、アンズ、ナツメ、クリ、マタタビおよびスモモよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の果実類に酵母および/又は乳酸菌を作用させることにより得られる発酵物
【0018】
(c)紫イモ、菊芋、ニンジン、タマネギ、サツマイモ、里芋、自然薯、大根、赤カブ、ゴボウ、レンコン、ヤーコン、ユリ根、クワイ、しょうが、にんにくおよびウコンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の根菜類・イモ類に酵母および/又は乳酸菌を作用させることにより得られる発酵物
【0019】
(d)キャベツ、紫蘇、桑葉、どくだみ、ヨモギ、クマザサおよびタンポポよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の花・葉菜類に酵母および/又は乳酸菌を作用させることにより得られる発酵物
【0020】
(e)コンブ、ワカメおよびモズクよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の海藻類に酵母および/又は乳酸菌を作用させることにより得られる発酵物
【0021】
(f)黒ゴマ、クルミおよびギンナンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上の種子類に酵母および/又は乳酸菌を発酵させることにより得られる発酵物
【0022】
(g)マイタケおよびシイタケよりなる群から選ばれる1種又は2種のキノコ類に酵母および/又は乳酸菌を作用させることにより得られる発酵物
【0023】
本発明のQOL改善剤は、上記(a)~(g)の発酵物を混合した植物発酵物をそのまま有効成分としてもよいが、さらに多段階発酵させることにより、呈味性や製剤性を向上させることができる。
【0024】
酵母としては、サッカロマイセス属、ジゴサッカロマイセス属等に属する酵母が挙げられ、中でもサッカロマイセス・セレビシエ(S. cervisiae)、ジゴサッカロマイセス・ロキシー(Z. rouxii)、サッカロマイセス・エキシグス(S.exiguus)等が好ましく用いられる。乳酸菌としては、例えば、ぺディオコッカス(Pediococcus)属、ロイコノストック(Leuconostoc)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属等に属する乳酸菌が挙げられ、中でも、ぺディオコッカス・アシディラクティ(P.acidilacti)、ラクトバチルス・ブレビス(L. brevis)、ロイコノストック・メセンテロイデス(L. mesenteroides)、ラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)、ラクトコッカス・ラクチス(L. lactis)、ラクトバチルス・サケイ(L. sakei)、ペディオコッカス・ペントサセウス(P. pentosaceus)、ラクトバチルス・カゼイ(L. casei)、ラクトバチルス・ロイテリ(L.reuteri)およびラクトバチルス・クルバタス(L. curvatus)等が好ましく用いられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。麹菌としては、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)等が例示でき、これらの1種又は2種以上を使用できる。これらは市販されているものも使用することができる。
【0025】
発酵に供する豆・穀類、果実等の植物は、そのまま使用してもよく、あるいは必要に応じて粉砕、乾燥等の前処理を行ってもよい。また必要に応じて水を添加して希釈してもよい。
【0026】
上記(a)~(g)の発酵物は、原料となる植物に、乳酸菌、酵母または麹菌を接種し、培養させることによって得られる。培養は、常法によって行えばよく、例えば、1種または2種以上の植物の混合物に対し、乳酸菌、酵母または麹菌を0.001~1質量%程度添加し、20~50℃で70~140時間程度発酵処理させればよい。
【0027】
このようにして得られた(a)~(g)の発酵物を混合してそのまま有効成分とすることもできるが、必要に応じさらに20~40℃で200~300時間程度培養することが好ましい。さらにこの混合物を後発酵(熟成)させることが好ましい。後発酵は、必要に応じて、酢酸菌を作用させてもよく、例えば、上記(a)~(g)に含まれる植物のうち1種または2種以上に上記酵母を作用させたものに、アセトバクター・アセチ(A.aceti)等の酢酸菌を作用させた酢酸発酵物を添加すればよい。後発酵は、25~35℃で70時間~約1年程度行えばよい。後発酵による熟成過程を経ることより、呈味性や製剤性を改善することができ、また抗酸化活性の増大を図ることもできる。
【0028】
上記植物発酵物を製造するための好適な方法の例として、多段階複合発酵方式が挙げられる。この方法は、果実類、野菜類、海藻類を主原料とする複合乳酸菌発酵物と、野菜類、根菜類、種子類、キノコ類、果実類を主要原料とする酵母発酵物を混合し、これに穀類、豆類を主原料とする麹菌発酵物を加え、さらに酢酸発酵物を加え混合した後、ろ過濃縮し、さらに約1年程度の後発酵を行うものである。このような多段階複合発酵によって、それぞれの発酵生産物がさらに別種の菌類によって資化・変換されることにより、風味が向上するとともに、抗酸化活性等の効果が高められると考えられる。
【0029】
本発明に用いる有効成分の植物発酵物は、下記(1)から(4)の性質を有する。
(1)呈味性
果物、野菜等原料由来の甘味や有機酸に加え麹由来の甘味を有する。原料由来のポリフェノール類を含むものの苦味は少ない。
(2)水に対する溶解性
水に対して容易に溶解する。
(3)安定性
熱、酸に対して安定であり、ペーストは1年間室温保存しても腐敗や呈味性に変化はない。
(4)安全性
原料に用いた野菜、果物、ハーブ等は日常食しているものであり、また発酵に用いた酵母、乳酸菌、麹菌はいずれも食品の醸造や漬物等に由来する菌種を用いているため食経験が豊富である。
【0030】
本発明に用いる植物発酵物は、下記(ア)から(エ)の性質を有する。
【0031】
(ア)一般成分(100g当たり)
水分 15~35g
たんぱく質 5~20g
脂質 1~8g
灰分 1~5g
炭水化物 30~70g
ナトリウム 40~150mg
ビタミンB6 0.1~0.5mg
エネルギー 200~500kcal
【0032】
(イ)アミノ酸組成(100g当たり)
アルギニン 0.2~0.6g
リジン 0.1~0.7g
ヒスチジン 0.1~0.4g
フェニルアラニン 0.2~0.8g
チロシン 0.1~0.6g
ロイシン 0.3~1.2g
イソロイシン 0.2~0.8g
メチオニン 0.05~0.3g
バリン 0.2~0.9g
アラニン 0.2~0.9g
グリシン 0.2~0.7g
プロリン 0.4~1.2g
グルタミン酸 1.2~3.0g
セリン 0.2~0.8g
スレオニン 0.2~0.7g
アスパラギン酸 0.4~1.5g
トリプトファン 0.03~0.15g
シスチン 0.05~0.40g
【0033】
(ウ)有機酸組成(100g当たり)
クエン酸 0.5~1.2g
リンゴ酸 0.05~0.5g
コハク酸 0.04~0.3g
乳酸 0.5~6.0g
ギ酸 0.01~0.1g
ピルビン酸 0.005~0.05g
遊離γ-アミノ酪酸 0.01~0.05g
【0034】
(エ)ミネラル組成(100g当たり)
リン 100~400mg
鉄 1~5mg
カルシウム 500~900mg
カリウム 600~1000mg
マグネシウム 70~120mg
亜鉛 0.8~1.6mg
ヨウ素 1.0~2.5mg
【0035】
この植物発酵物を有効成分とするQOL改善剤は、種々のQOL例えば、情動・行動、老化症状、消化器症状、慢性疲労、慢性炎症、代謝性疾患、認知症等に基づくQOLを改善することができる。また、このQOL改善剤を摂取することにより、様々な分野で使用中の医薬品の減量ないしは終了することができる。
【0036】
本発明のQOL改善剤は、かくして得られた植物発酵物に、公知の製剤学的製法に準じて、薬理学的に許容され得る担体、賦形剤、水分活性調整剤等を加え、製剤化することにより得られる。植物発酵物は、必要に応じ濃縮して濃度を調整したり、噴霧または凍結乾燥等により粉末化してもよい。製剤化において用いられる担体や賦形剤としては、たとえば乳糖、ブドウ糖、蔗糖、デンプン、糖類混合物等が用いられる。最終的形態としては、溶液、ペースト、ソフトカプセル、チュアブル、カプセルが用いられる。用量・用法としては、例えば、有効成分の植物発酵物として大人1日当たり、0.1g以上、好ましくは0.1~12g、より好ましくは0.6~10g(固形分換算)程度経口摂取すればよい。
【0037】
また、本発明のQOL改善剤は医薬品、医薬部外品等に用いることができる他、公知の食品素材とともに配合することにより飲食品の形態とすることもできる。上記植物発酵物はそのまま摂取することも可能であるが、日持ち性向上のために殺菌後にろ過、濃縮してもよく、あるいは必要に応じて賦形剤を添加して噴霧または凍結乾燥した粉末状としてもよい。さらに、流通過程におけるシェルフライフ向上のためには、濃縮して水分活性を低下させたものが望ましい。かかる飲食品の形態としては、ペースト、ソフトカプセル、錠剤、ドリンク剤等が例示できる。大人1日当たり植物発酵物として0.1g以上、好ましくは0.1~12g、より好ましくは0.6~10g(固形分換算)程度経口摂取することにより、優れたQOL改善効果等を得ることができる。このような上記植物発酵物を製剤化、食品の形態とした市販品として、天生酵素金印、天生酵素カプセル、あもう酵素(日本自然発酵社製)等が挙げられる。
【0038】
また、本発明のQOL改善剤を含有する飲食品は、上記のものの他に、この有効成分である植物発酵物を、調味料等の一種として用いて、みそ等の調味料、食パン等のパン類、せんべい、クッキー、チョコレート、飴、饅頭、ケーキ等の菓子類、ヨーグルト、チーズ等乳製品、たくわん等の漬物類、ラーメン、そば、うどん等の麺類、コーンポタージュ、わかめスープ等のスープ類、清涼飲料、健康飲料、炭酸飲料、果汁飲料等の飲食品に含有させたものであってもよい。
【0039】
更に、本発明のQOL改善剤は、アルツハイマー等の認知症に基づくQOLを改善することができるが、この場合、例えば、公知の認知症改善作用が認められている物質と組み合わせることが好ましい。このような物質としては、例えば、魚由来のアンセリン等が挙げられる。具体的に本発明のQOL改善剤とアンセリンと組み合わせる場合、本発明のQOL改善剤の一日量と同時に大人1日当たりアンセリンとして500~1500mg、好ましくは700~1000mgを経口摂取させればよい。なお、本発明のQOL改善剤は、アルツハイマー等の認知症に基づくQOLを改善することができるが、アルツハイマー等の認証症になる前から摂取しておけば認知症の予防にもなることはいうまでもない。
【0040】
また更に、本発明のQOL改善剤の有効成分である植物発酵物は、慢性炎症に基づくQOLを改善することができる。この植物発酵物は医薬品と異なり、炎症性サイトカインやケモカインの発現を幅広く抑制、特にIL-6の発現を抑制することが本明細書で示されている。そのため、植物発酵物は、特にIL-6の過剰な発現や持続的な発現により引き起こされる慢性炎症に関連する各種疾患の予防、治療にも利用できる。このような疾患としては、関節リウマチ、若年性突発性関節炎、キャッスルマン病、成人発症スチル病、サイトカインストーム等が挙げられ、特に新型コロナウイルス(COVID-19)感染によるサイトカインストーム(多臓器不全等の急激な重篤化)や、川崎病様症状、敗血症、ベーチェット病、乾癬等を抑制する可能性がある。植物発酵物をIL-6の発現の抑制で使用するためには、本発明のQOL改善剤と同様の一日量を投与すればよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
製 造 例 1
植物発酵物の製造:
以下の植物を原料として使用した。
(a)豆・穀類(大麦、黒大豆、赤米、黒米、小豆、はと麦、ヒエ、アワ、キビ)
(b)果実類(ミカン、ブドウ、リンゴ、ヤマブドウ、モモ、カキ、パパイヤ、ナシ、スイカ、ウメ、イチジク、カリン、カボチャ、キンカン、ユズ、ビワ、アンズ、ナツメ、クリ、マタタビ、スモモ)
(c)根菜類(紫イモ、菊芋、ニンジン、タマネギ、サツマイモ、里芋、自然薯、大根、赤カブ、ゴボウ、レンコン、ヤーコン、ユリ根、クワイ、しょうが、にんにく、ウコン)
(d)花・葉菜類(キャベツ、紫蘇、桑葉、どくだみ、ヨモギ、クマザサ、タンポポ)
(e)海草類(コンブ、ワカメ、モズク)
(f)種子類(黒ゴマ、クルミ、ギンナン)
(g)キノコ類(マイタケ、シイタケ)
【0043】
上記(c)、(d)および(g)の原料(730g)に対し、乳酸菌類(P. acidilacti, L. brevis, L. mesenteroides, L. plantarum, L. lactis, L. sakei, L. casei)が約1.0×105cfu/gの菌濃度となるように調製した培養液を0.2質量%接種し、30℃で50時間培養を行った。また上記(b)、(e)および(f)の原料(900kg)に対し、酵母類(S. cervisiae 5種、Z. rouxii 2種)が約1.0×105cfu/gの菌濃度となるように調製した培養液を0.4質量%接種し30℃で50時間培養を行った。(a)豆類および穀類系原料(1000kg)には、麹菌類(黄麹菌、黒麹菌、白麹菌)を0.1質量%接種して35℃で70時間培養を行った。次いでそれぞれの培養物を混合後、30℃で200時間培養を行った。発酵を終了したモロミについて固液分離操作を行い、得られた濾液を濃縮してペースト状にしたものを容器に分注し、更に1年間後発酵(熟成)させ植物発酵物を得た。
【0044】
製造例1で得られた植物発酵物は以下の性質を有するものであった。
(ア)一般分析値(100g当たり)
水分 25.2g
たんぱく質 11.8g
脂質 3.6g
灰分 2.1g
炭水化物 57.3g
ナトリウム 54.0mg
ビタミンB6 0.20mg
エネルギー 309kcal
【0045】
(イ)アミノ酸組成(100g当たり)
試料を6規定塩酸で加水分解したものをアミノ酸自動分析計によって分析した。シスチンについては過蟻酸酸化処理後、塩酸加水分解を用いた。トリプトファンは高速液体クロマト法を用いた。
アルギニン 0.33g
リジン 0.34g
ヒスチジン 0.22g
フェニルアラニン 0.51g
チロシン 0.32g
ロイシン 0.74g
イソロイシン 0.42g
メチオニン 0.13g
バリン 0.54g
アラニン 0.48g
グリシン 0.42g
プロリン 0.92g
グルタミン酸 2.25g
セリン 0.4g
スレオニン 0.36g
アスパラギン酸 0.84g
トリプトファン 0.06g
シスチン 0.15g
【0046】
(ウ)有機酸組成(100g当たり)
クエン酸 0.81g
リンゴ酸 0.31g
コハク酸 0.12g
乳酸 1.17g
ギ酸 0.03g
ピルビン酸 0.01g
遊離γ-アミノ酪酸 24mg
【0047】
(エ)ミネラル組成(100g当たり)
リン 262mg
鉄 2.65mg
カルシウム 72.1mg
カリウム 798mg
マグネシウム 97.8mg
亜鉛 1.19mg
ヨウ素 1.7mg
【0048】
この植物発酵物は、天生酵素金印(日本自然発酵社製)と同様のものであり、これを以下の実施例で用いた。なお、これをヒトに投与する場合には、植物発酵物の所定量をアルミシート内に封入し、これを使用時まで室温で保存したものを用いた。
【0049】
実 施 例 1
投与試験およびアンケートの集計
植物発酵物(天生酵素金印)を定常的に購入している購入者や、製造例1で製造した植物発酵物(天生酵素金印)を配布した工場見学対象者等(総数約3000人)に、任意の自発的なアンケート方式(アンケートの利用には許可を得ている)による聴き取り調査を行った。効能についての予備的情報を与えることなく、体感された自覚症状その他体験情報を、摂取状況と共に自由に記載して貰い、約3100通の回答の中から単なる礼状を除外して何らかの症状の記載のある回答をQOLにかかる大分野(情動・行動、老化症状、消化器症状、慢性疲労、慢性炎症、代謝性疾患等)ごとに抽出した(アンケートの抽出状況を以下の表1に示した)。採用回答は1679通であり、複数回答は症状に応じて分類に使用し、延べ事例数で仕分けた全有効事例数は2268であった。また、実施例における摂取量(g/日)については各人の販売記録や配布記録から推定した。更に、表中の%が改善率を示す。
【0050】
なお、本試験はランダム化された比較試験ではなく、定性的回答が主ではあるものの、検査値の推移の記載も含まれていた。自他覚症状の生の記載であり、サンプル数が多いので植物発酵物の効果は把握可能であり貴重なデータである。分類は以下の基準で実施した。厚労省の慢性疲労症候群の診断基準も自覚症状の記載中心であり、サイトカイン等の客観的他覚症状への効果は基準には入っていないので比較試験は困難であろう。
【0051】
【表1】
*症状不記載:単なる礼状等効果が評価不能な場合、現状症状はないが健康効果を期待して摂取した場合、摂取期間が短い場合等を除外した。
【0052】
以上の結果から、製造例1で製造した植物発酵物(天生酵素金印)にQOL改善効果があることが分かった。以下、大分野ごとにQOLの改善効果を詳細に説明する。
【0053】
<情動・行動>
この大分野における「食べると元気になる」における「元気」という自覚症状は主観的、主体的な反応であり、相当するアンケート回答は多様であった。敢えて分類すると以下の表2のようになった。中分野毎の事例数を性別、改善、不変、判定不能(摂取期間が短いため効果は判定できない)を表3に示した。
【0054】
【0055】
【0056】
事前の消費者の声である「植物発酵物を食べるとなんとなく元気になる」という現象が事例数として把握された。曖昧な表現であったものが、症状別に分類すると総合的なメンタルな自覚的なものから、年齢よりも若く見られる、という他覚的な評価も見られた。鬱症状は全体の印象で他覚的に見出される。慢性リンパ腫の患者や記憶障害の患者で、本植物発酵物で他覚的に鬱症状の改善が観察されている。
【0057】
元気・体調・健康感を合計すると改善率の回答はこの分野内で80%を占め、自覚的感想だけでなく、家族や友人からの他覚的コメントを得ている。気分だけでなく、30Kg台の低体重の食欲が出てきて低体重も危険域を脱している。悪化例は皆無であった。
【0058】
<老化症状>
この大分野における自覚症状に相当するアンケート回答は多様であった。敢えて分類すると以下の表4のようになった。中分野毎の事例数を性別、改善、不変、判定不能(摂取期間が短いため効果は判定できない)を表5に示した。
【0059】
【0060】
【0061】
老化では回復力が低下してくる。治癒力の強化を思わせる自覚効果が見られた。また、癌等の手術後の回復が早く、検査値の改善や投薬量が減ったとの回答は注目に値する。肌の艶はハリ、毛髪、表情等他人から若く見られる回答があった。SAMマウスで見られた老化症状の抑制効果と一致する。体力がついたことを自覚できる、運動だけでなく農作業や運搬にも貢献していると指摘があった。高齢化社会で問題になってきた「フレイル」(虚弱傾向)が改善されるようである。注目すべきは術後の回復力に関する記載である。術後とは多くは胃癌、肝癌、肺癌等であるが、術後の回復が早いあるいは健康が自覚できるという回答が目立った。健康感だけでなく、検査値の改善や治療薬の軽減も医師から提案される等他覚的にも確認されている。
【0062】
老化が進むと治癒力が徐々に低下してくる。SAM老化促進モデルマウスの長期飼育試験において、植物発酵物の摂取はSAM学会指定の老化指標のすべての項目で老化抑制を示し、かつ寿命延長を示した。高齢化に伴いザルコペニーが増え、転倒等から要介護になる例が増加している。これを防ぐための方策が求められていて厚労省も対策を必要としている。ロコモ対策の健康食品が散見されるが、分岐アミノ酸や蛋白、関節強化作用が殆どであり、植物発酵物がフレイル抑制効果を自覚させるのは注目される。大分野「元気・体調」において「元気・健康感」の改善率が60%と高率であり、メンタル面がフレイル改善効果に寄与している可能性もありうる。漢方分野では治癒力の向上が重視されていて、この分野でもメンタルな作用は注目されている。治癒力は病状や検査値の改善とともに医薬の投与量の減量で自覚されているのは新たな作用と思われる。機能の内容としては、SAMマウスの老化評価である行動、皮膚症状、眼の炎症、背骨の曲がりの4項目で採点を流用した。改善率は50%であり、ヒトでの老化抑制作用にも適用されることが示された。
【0063】
<消化器症状>
この大分野においては、便通(特に便秘)に関するコメントが多数あった。消費者は高齢者の比率が高い。これは消化器器官も高齢化により老化するためである。消化器は食べ物の消化と排便の機能だけでなく、免疫と深く関係し、脳機能と直結していることが分かってきた。QOLの重要分野として認識されつつある。分類すると以下の表6のようになった。中分野毎の事例数を性別、改善、不変、判定不能(摂取期間が短いため効果は判定できない)を表7に示した。
【0064】
【0065】
【0066】
この分野のQOL改善効果は便秘の改善が大部分であった。便秘はQOLの重要項目として我が国でも認知されるようになってきた。便秘解消効果は消費者が強く希望していることが分かる例数であった。胃症状についてのコメントは、「食欲が亢進する」、「胃がすっきりする」が見られ、多様であることが分かった。虚弱体質の方にとっては体重増加にもつながりQOL改善作用と思われる。下痢症状についての例数は少なかったが有効な治療法が少ない潰瘍性大腸炎に対する効果の回答は注目している。
【0067】
便通は、不快感や行動範囲の制限等QOLの重要分野として認識されている。アンケート回答では、便秘改善の頻度が高かった。便秘や下痢は消化器の活動はで中枢及び腸内細菌の状態とも深く関連し、QOLとして認識が進んでいる。便通の不具合は便秘と下痢は下部消化管であるが、「胃症状ではむかむかする」というような症状や食欲が進むというようなメンタルな面の症状を分類した。胃液の逆流や胃痛等は慢性炎症分野として振り分けた。
1)便通改善の回答の中で多いには便秘の改善効果である。特に女性の改善例が多かった。
2)日本では便秘の処置として野菜等の食物繊維の摂取が推奨される程度で、欧米の様にはQOLはあまり重視されていないようである。欧米では便秘はQOLの重要因子として見做され科学的研究も盛んである。
3)申請した植物発酵物の便通改善効果の比率は評価対象例数の166例に達し、自覚効果の再現性も高い。便秘で医薬品類の効果が期待できない常用者(5g/日)が3週間投与中断した例で摂取再開したところ3日間で回復に至っている。本植物発酵物の食物繊維量(酵素重量法)で5g/100g程度であり、エダマメ等中程度に過ぎない。とくに高齢者は腸の老化にもより便秘になりやすい。便秘改善薬は処方されるが、欠点としては何時便意を催すか予知できず、特に旅行中はトイレ探しが大変である。植物発酵物は穏やかに効果を示すので感謝されている。便性ではバナナ状の便がするりと出る快感はまさにQOL改善とのコメントであった。
4)口内炎に対する効果も指摘されているが、慢性炎症に分類した。
【0068】
<慢性疲労>
この大分野における対象としては、疲れにくい、元気が戻る等の疲労全般、の精神的疲労、筋肉疲労、代謝の疲労のような分野が対象となっている。敢えて分類すると以下の表8のようになった。中分野毎の事例数を性別、改善、不変、判定不能(摂取期間が短いため効果は判定できない)を表9に示した。慢性疲労の訴えは増加傾向にあり、QOL改善の重要なターゲットになっている。メカニズムが次第に分かってきていて、ピンポイントに治療効果を狙う場合も増えつつある。そのベースに慢性炎症があるが、慢性疲労は体感等主に主観的評価であり、原因が把握しやすい慢性炎症とは分けて集計した。
【0069】
【0070】
【0071】
慢性疲労は大変難しい分野であるが、不定愁訴の改善のニーズは高い。実際、広範な分野にわたる回答であった。「食べると疲れにくい」という表現も見受けられた。皮膚のハリ・ツヤは自覚と他覚症状の両面からの記載であった。肉体的疲労に加えて中枢が関与する疲労感や自律神経が疲労感に関与することが知られてきた。自律神経の活動を感知することは難しく、回答の症状から分類を試みた。皮膚症状としては肌にツヤ・ハリがあり、「若く見られる」という表現であった。全体の印象で消耗している状態も対象となる。運動・筋肉疲労分野では、疲労の表現は「運動しても疲れにくくなった、体力がついた、という表現を個々に分類した。胃症状は、何となく食欲が湧かないような状況であった。ただし、単なる食欲とは異なっているようだ。睡眠は、不眠症で悩んでいる人は多い。量と質が問題であり、表現としてはレム睡眠と非レム睡眠を測定しているわけでは無い。むしろ、よく眠れた、寝覚めがすっきりしていることがQOL改善の表現であった。理由ははっきりしないが疲労感はある。消耗性代謝疾患が原因の場合もあるが、原因は特定できない場合を指す。自律神経調節は最近では疲労感の重要原因の一つであることが解明されてきた。自律神経の活動度を自分で測定することは特殊な器具をのぞいては出来ないが、血圧値ではなく血圧変動のドキドキ感やめまい、冷え性、発汗、体の発熱感等はここに分類した。改善されるとQOL改善が体感できる分野である。
【0072】
<慢性炎症>
急性炎症反応は、創傷、感染等緊急な状態に対する修復作用の一連の生体反応であり、不具合の認知、痛み、発赤等一連の反応が終了すると治癒に向かっての一連の終息反応が起こる。これは正常な生体反応である。一方、急性炎症が終息する過程で、炎症反応は弱いが炎症状態が継続してしまう場合がしばしばみられ、これが慢性炎症となり多くの慢性疾患の基盤となる。いわゆる糖尿病等の生活習慣病、肥満、癌(発生・転移等)や老化、自己免疫等の生体の様々な不具合の基盤にこの慢性炎症が存在することが分かってきた。例えば、何らかのストレスで脳神経系のミクログリア細胞に炎症が起こり、炎症因子が血流にのって全身に運ばれ、他の炎症症状のトリガーとなっていることが分かってきた。認知症の初期にはこのような事が起こるのではないかと推定されていて、新たな治療薬や予防薬の探索が始まっている。いわゆるアレルギーや各種臓器の炎症はこの分野に分類した。慢性炎症は、警報機能として重要であり、痛みや発赤等の自覚できる症状が多い。回答内容も広範囲の症状であった。この大分野における自覚症状に相当するアンケート回答は多様であった。敢えて分類すると以下の表10のようになった。中分野毎の事例数を性別、改善、不変、判定不能(摂取期間が短いため効果は判定できない)を表11に示した。なお、肥満は脂肪細胞の炎症、インスリン耐性、および糖尿病は慢性炎症であるためここに分類した。また、単なる体重の増減もここに分類した。
【0073】
【0074】
【0075】
皮膚の炎症部位に直接塗布して軽快したとの回答があった。口内炎が軽快したという回答が多数見られた。胃痛、胸やけ、逆流性胃炎、むかむかするような炎症反応の軽快する回答があった。肝機能ではGOT、GPTの検査値の低下がみられ、また脂肪肝の効果もあった。脂肪肝に関係ある体重の増減もこの分野に纏めた。腎炎は糖尿病の悪化における随伴症状として見たほか、膀胱炎もこの中に入れた。循環器系では血圧に関する回答が多数あったが、血圧変動は様々な調節メカニズムに由来するためこの分野に含めず「その他のQOL関連分野」で計数した。高脂血症・血栓関連を採用した。糖尿病はベースに慢性炎症があり病状が進行すると腎炎や血管炎等の全身性の炎症につながるのでここに纏めた。癌は発がん、増殖、転移、再発等全般に慢性炎症が関わっているので中分野として設定した。癌手術後に植物発酵物が元気さを与えるという回答が目立ったが、この分類ではなく、大分類「元気」の中の「中分類:治癒力」に分類した。悪性リンパ腫が治癒したとの回答もあったが、薬剤治療の効果の可能性もあるものの回答通りに分類した。転移・再発抑制の効果確認は容易ではなく、確認は出来ていない。呼吸器分野・アレルギーでは気管支喘息、咳等が散見された。慢性関節リューマチ、白内障、緑内障の諸症状が少し改善したとの回答があった。蓄膿症が治ったとの回答や、蓄膿症の術後頭が重かったが、身体が軽くなり、仕事が続けられたとの回答もあった。
【0076】
<代謝性疾患等>
QOL改善に関わる生理的反応をここにまとめた。これに相当するアンケート回答は多様であった。敢えて分類すると以下の表12のようになった。中分野毎の事例数を性別、改善、不変、判定不能(摂取期間が短いため効果は判定できない)を表13に示した。なお、糖尿病、高脂血症、肥満は基礎疾患として慢性炎症を伴うが、ここでは代謝性疾患と分類した。
【0077】
【0078】
【0079】
血圧の改善が多数例見られた。血圧正常化だけでなく、服用していた降圧剤が減量したり、降圧剤が不要になる例もあり、興味深い。血圧は、心の吐出量x血管抵抗の結果であるが、これに影響する因子は多様である。アンケート回答者に高齢が多いことから、末梢血管の柔軟性が低下したり、メンタルの影響等様々である。
【0080】
<医薬品の減量ないしは終了>
アンケートの回答中に様々な分野で使用中の医薬品の減量ないしは終了に至った事例が散見されたので一覧表として抽出した。表14に示したように広い分野にわたるが、中には本人判断ではなく医師判断で処方から外す例も見られた。治療における補助効果としての効能も推定された。
【0081】
【0082】
<痛みの改善>
アンケートは、病態を基本にOQLの視点から分類したため、「痛みの改善」は多分野に分散してしまう傾向が見られた。そのためアンケ-ト結果から「痛み」のキーワードで抽出を試みた。それを表15に示した。
【0083】
【0084】
キーワード「痛み」が記載された回答は115件であり、内10件は植物発酵物の摂取開始から十分な時間を経てなく、評価していないために「評価不能」と判定した。何らかの有効を自覚した回答数は105例であり、その分野は多岐にわたっていた。悪化例はなかった。このように痛みの改善についても効果が認められた。
【0085】
<まとめ>
以上の結果から、植物発酵物に大分野(情動・行動、老化症状、消化器症状、慢性疲労、慢性炎症、代謝性疾患等)に基づくQOLの改善が認められた。これらをまとめたものを表16に示した。
【0086】
【0087】
全体例数一覧において注目すべき分野は、中分野「元気・健康感・気分」の改善数合計は389例であり、改善総数の14.9%を占めた。QOL分野は多様な分野がある中で改善数の14.9%は大きな数字である。この分野と治癒力向上例数(68例=3.0%)であり、根底には「元気・健康感・気分」の向上があるように思われた。現代の西洋医学ではこの様な概念は主要ではないが、漢方では重視されていて「上薬」と分類されている。西洋医学では病因(診断)と治療が1:1の関係が明らかなことが求められる。抗生物質による感染症の治療はその典型である。しかしながら、抗生物質は単に病原微生物に働き、その数を減らしているに過ぎない。病原菌の数が減ったために免疫等の生体防御により治癒に至ったのに過ぎないのである。便通不全は、従来はQOLの範疇とは思われていなかったが、欧米ではQOLの重要な位置を占めるようになった。男女共に改善数は多く194例で改善率は8.6%に達する。この植物発酵物は広範囲の分野での改善効果が自覚され、一部は医師からも医薬品の減量を提案される例もある。このようなQOL改善剤は新規である。
【0088】
実 施 例 2
慢性炎症に基づくQOL改善の裏付け:
(1)マウス
SAM-P1(♀)マウスは各群6匹で8週齢のものを三協ラボサービス株式会社から購入して使用した。飼育は、SPF仕様のマウス飼育施設(23±2℃、湿度50±10%、20:00~8:00の照明の明暗サイクル)を用い、マウスは各サンプル1群6匹を用い日本クレア製のポリカーボネートケージを用いSPF条件下で単独飼育した。餌は三協ラボサービスから購入した500N(γ線滅菌済)を自由摂取させた。床敷きは日本クレア製の高温殺菌済みを用いた。ケージ交換は週1回行った。なお、飼育中、マウスの摂餌量が減ることはなかった。
【0089】
(2)サンプル
サンプルとして製造例1で製造した植物発酵物を用いた。植物発酵物はイオン交換水に2.0%または0%(対照)となるように溶解し、500ml容のメジウム瓶に分注したものを全てオートクレーブ滅菌(121℃、20分)し、生じた沈殿は給水瓶のノズルが詰らないように上清を無菌的に給水瓶(滅菌済)に移したものを供した。なお、植物発酵物の投与量は、植物発酵物を日常的に多めに摂取している事例(77g/週=11g/日)を参考にし、この30倍相当量を体重Kg当たりに換算して、算出された値である。この換算率は富山大学和漢医薬研究所において漢方薬類をマウスに適用する場合に経験的に用いられている数値である。(松本欣三 Personal Information第28回SAM研究会「老化モデル動物SAMP8の認知行動障害に対する漢方薬・釣藤散及び中薬・冠元顆粒の改善効果とそれらの神経機構」、5 July(2013) 愛知学院大学)。マウスが2.0%の濃度のサンプル30ml程度を1日で飲用した場合、ヒト換算だと約10g/日である。上記のようにしてイオン交換水で希釈した植物発酵物は飲水として自由摂取させた。
【0090】
(3)試料の採取
上記サンプルを飲水として与えたSAMP-1(♂)マウス各群6匹について10週齢および56週齢まで長期飼育した(試験群を以下に示す)。このマウスをソムノペンチル麻酔後、開腹し胸腺および腎臓を採取し、氷冷したRNA Later溶液に浸漬して、測定機関(フィルジェン株式会社)に冷蔵輸送した。RNA抽出からDNAマイクロアレイでの測定も測定機関によって行われた。
【0091】
【0092】
(4)DNAマイクロアレイ
上記機関から入手した分析データ(遺伝子数41354件)から、以下の遺伝子関連の発現を解析した。
【0093】
(a)炎症(inflam)関連遺伝子
上記機関から入手した分析データに、キーワード「炎症(inflam)」のフィルターをかけたところ、566件に絞り込まれた。発現の明確な遺伝子を絞り込むために、増加Ratioを1.5倍以上、減少Ratioを0.66倍以下で絞り込んだ遺伝子数は68件となった。これらの遺伝子を用いてクラスタリング解析を行った。なお、クラスタリングで比較した試験群とその目的は以下の通りである。また、腎のDANマイクロアレイ解析では、胸腺に比べて圧倒的に少なく、増減度も小さかった。SAM学会の各系統の説明では、SAM-P1は腎委縮が起こりやすいと記載されているが、本試験で採取した腎臓ではいずれも毛細血管、腎盂も組織的に異常はなく、炎症評価対象としなくてよい。
【0094】
【0095】
68件のGene Description内容を見ると、炎症関連の主要メディエーターやリセプター、酵素等の遺伝子が含まれていて本試験系での炎症反応が偏り少なく解析可能であることを示している。
【0096】
発現の増減の度合いを反映したヒートマップを作製したところ、サンプル0%で高週齢の影響は、老化度が進行(特許:老化抑制剤)するとともに、炎症度合いが増加したが、植物発酵物(2%)を摂取した場合は(老化総合点は有意に低かった)、炎症度が抑制される傾向が見られた。
【0097】
絞り込んだ68件の全遺伝子について文献調査を行った。炎症の場合、同じ遺伝子が増減両面に働くこともあるので個別に確認する必要がある。「Gene Symbol」と「Inflammation」をPub-Medにインプットして検索を行い、哺乳動物での炎症症状を調査した。ヒット数が極端に多い場合は、Google検索も用い、またPub-Medでヒットしない場合は、「Gene Description」も用いた。更にGene Database中の引用文献も参照した。
【0098】
【0099】
遺伝子発現増加により炎症症状が抑制される例は68件中11件であった。増減の両方を示すものは5件であった。右端の欄に植物発酵物の摂取効果の総合評価を表記した。炎症抑制効果は68件中36件であり、抑制傾向は27件あり、炎症症状が増強された。これらには慢性炎症が関係する遺伝子が多数含まれていた。胸腺と腎臓のDNAマイクロアレイ解析のヒートマップを
図1に示した。
【0100】
植物発酵物摂取による炎症抑制傾向が明瞭なものを抽出したところ15件であった。特許出願(公開済)「自然発がん抑制剤」で示したように、高週齢マウスでは自然発がん発生率は50%であったが、植物発酵物摂取群の自然発がんの有意な低下(17%)があり、自然発がん抑制に慢性炎症の抑制が関係することが推定されることが明らかになった。
【0101】
遺伝子発現の増加による炎症症状の増悪に繋がるものの発現抑制効果を示す場合が大部分であるが、遺伝子発現増強により炎症症状の軽減は組織保護の作用を示すものも見出され、炎症の多面性を表していた。例えば、遺伝子Ly86は別名MD1(Myeloid differentiation protein 1)は遺伝子欠損により心アレルギーが悪化する報告および潰瘍性大腸炎での症状が軽減される報告も見られ両面性を示した。
【0102】
腎臓についてもDNAマイクロアレイ試験を実施している。1.5倍増加~0.66倍減少の範囲(胸腺と同一条件)でのヒット数は10件であり、胸腺の68件に比べて加齢による炎症は軽度である。SAMP1(♂)は高齢化で腎委縮が起こるとSAM研究会の資料には記載されているが、この56週齢では腎重量も不変であり、組織検査結果も糸球体の構造は正常であった。この10件の中で最も高値を示したのがIL1-βの1.66倍増加であるが軽微であり、植物発酵物摂取群では不変であり、腎臓の僅かな炎症傾向も抑制した。
【0103】
(b)IL1-β関連遺伝子
アンケート結果に示したように植物発酵物は多彩な慢性炎症症状緩和に効果を示している。多彩な効果は、慢性炎症の連鎖反応の上流に位置する炎症因子の抑制によって効果を発揮していると思われた。IL-1βが多くの炎症の重要因子であることは下記の論文から明らかである。そのためIL1-β遺伝子の発現の解析を行った。IL1-βは56週齢(サンプル=0%)の発現増加率が10週齢マウス(サンプル=0%)の5.5倍と最大であったが、植物発酵物摂取群では1.9倍と大幅に減少した。56週齢マウス植物発酵物の有無で比較すると減少率は0.34で最大であった。
【0104】
IL1-βは炎症メディエーターの中でも中心となる存在で多くの炎症反応に介在し、炎症反応の重要因子であるNF-κB経由でTNF-αやIL-6等の炎症分子の発現に関わり、これらの上流に位置付けられている。
【0105】
IL1-βの炎症への関与が最も明瞭な事例は、ノバルティス社が開発した抗体医薬である特異抗体カナキヌマブ(開発番号ACZ885)である。急性冠動脈症候群および心血管死の主原因であるアテローム血栓症に有効性が約6年間、1万例以上の大規模臨床試験で証明された。(CANTOS: Canakinumab Anti-inflammatory Thrombosis Outcomes Study, The Lancet 2017 )(https://www.novartis.com)IL1-βの炎症作用のピンポイントで抑制が有効性を発揮した例である。
【0106】
IL1-βが炎症性疾患に関係がある報告は、以下の通りである。
・炎症性の慢性閉そく性肺疾患の上皮細胞での高発現(Pub-Med)
・前炎症性遺伝子の証明の報告(Pub-Med)
・気管支炎の炎症関連遺伝子である報告(Pub-Med)
【0107】
IL1-β測定キットは診断薬として市販されている。このIL1-βが異常値を示す疾患として、末梢単球培養上清中測定で多くの炎症疾患とともに「慢性疲労症候群」が挙げられている。((株)ファルコバイオシステムズ総合研究所のカタログ記載あり)
すなわち、慢性疲労症候群と慢性炎症は重複した領域である事は明らかである。
【0108】
(c)Aim2関連遺伝子
Aim2遺伝子は発現が増加で炎症軽減および減少の両方を示す。
・インフラマゾームで微生物感染を抑制
・乾癬、皮膚炎、関節炎、自己免疫抑制
・コレステロール過剰による炎症はAim2増加で炎症
・膵炎はAim2低下で炎症減少
【0109】
(d)Pathway解析
Pathway解析結果で表示される遺伝子は増加1.5倍以上、減少0.66倍以下を抽出表示している。この増減の制限範囲はクラスタリング解析でも同一である。しかしながら、クラスタリング解析では「炎症」のキーワードで範囲を限定しているので、両者の表示範囲の遺伝子数は異なっていて、Pathway解析の方が表示遺伝子数は多い。このため、炎症クラスタリング解析では表示されなかった遺伝子の変化が観察出来ている。
【0110】
表16に示した試験群で遺伝子の変化をPathwayごとの減少と増加別に表示させた。サンプル0%56週齢では炎症関連遺伝子の増加が著しく、サンプル2%の摂取は炎症を抑制することがこの増減の比較でも推定可能であった。
【0111】
【0112】
炎症クラスター解析で見出された、サンプルなしで長期飼育することにより胸腺の炎症関連遺伝子群が増加し、植物発酵物の摂取により炎症が抑制傾向になるという現象は、Pathway解析でも同様に観察された。また炎症クラスタリングでは抽出されなかった炎症関連の重要因子である、IL-6、IL-7、TNF-α等が同様に植物発酵物による炎症抑制効果が観察され、また炎症で頻発する肺の繊維化の抑制も観察された。また炎症クラスタリング解析では変化度が少なかった炎症のメディエーターであるTypeIIインターフェロンも同様な傾向を示した(表21)。
【0113】
【0114】
(1.IL-6)
1)IL-6Pathwayは、56週齢の老化促進を伴う高週齢化群で10週齢の若齢マウスに比べて有意(P=0.033)に増加した。関与する遺伝子は7件見出された。Pathway Mapにおいて、大半が見出される。
2)植物発酵物2%摂取群では7種の中で6種の増加が消失した。Gene SymbolがElf2aは減少しなかった。
3)植物発酵物は、炎症性サイトカインであるIL-6Pathwayを抑制した。
4)炎症関連総説では、IL-6関連の遺伝子Jak1、Jak2、Stat1、Stat3が医薬品開発のターゲットとして注目されているが、本表には見出されなかった。
しかしながら、IL-6関与が強い関節リウマチ患者で植物発酵物著効を示しているので別のPathwayが存在する可能性もある。
5)COVID-19重症例では急性呼吸窮迫症候群(ADRS)におけるサイトカインストームによる重症例には承認薬は無い。
6)IL-6阻害薬である「トシリマブ」に有効例が見られて臨床試験が続けられている。
【0115】
(2.Lung fibrosis)
1)肺炎症に由来する肺繊維化についてPathway解析を行った。
2)繊維症は炎症後に組織が繊維化したことに由来する(炎症で傷害を受けた組織が修復のため繊維が細胞を増殖させて補修した)
3)P=0.01で有意に強い遺伝子発現が起こり、2%植物発酵物がそれを抑制している。IL-1βが最も顕著な増加であり、有意な抑制である。
【0116】
(3.TNF-α)
1)TNF-αは起炎物質の代表であり多くの炎症に直接関与している。しかしながら、SAMマウスの老化には深くは関与していない事が本PathwayのP値が有意でない事から推定された。植物発酵物が著効を示した関節リウマチには、TNF-αの関与は薄い事がしられている。IL-6はTNF-αより炎症反応の上流に位置し、より多彩な反応の調節作用を持っている。
【0117】
(4.IL-1)
1)IL-1も炎症を起こす重要なサイトカインである。Pathway 解析では、P値がいずれの試験系においてもP=0.007およびP=0.01を示し、本試験における炎症反応の主役の一つである。植物発酵物は、このPathwayに関与する殆どの遺伝子発現を抑制する作用がある。キーワード検索のデータとよく一致した。しかし、炎症反応ではIL-6の下流で働くことが多い。
【0118】
(5.Chemokaine)
1)ケモカイン (Chemokine) は、Gタンパク質共役受容体を介してその作用を発現する塩基性タンパク質であり、サイトカインの一群である。白血球等の遊走を引き起こし炎症の形成に関与する。走化性の(chemotactic)サイトカイン(cytokine)を意味する。炎症の部位の様々な炎症反応を起こし、IL-6の下流に位置する。
2)本Pathwayでも多数のケモカインが検出され、P値=0.02で有意である。試験系1(老化)で増大し、植物発酵物の摂取で全てを減少させた。
【0119】
(6.総合所見)
1)最も注目されたのはIL-6であった。
2)P値は0.03であり、試験系1(老化)で増加し、試験系2、3で示されたように植物発酵物の摂取で抑制された。
3)抗リウマチ薬のターゲットはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤が注目されている。この阻害剤による起炎因子の一つであるIL-6抑制がCOVID-19(新型コロナウイルス感染)における重篤なウイルス性肺炎を抑制することが治療試行過程で示され。重篤化抑制に繋がることが期待され、現在、臨床試験が行われている。本植物発酵物もアンケートで関節リウマチ患者に著効を示し、また類似に疾患であるベーチェット病患者にも有効であることが医師の診断で示された。この2疾患ともIL-6が病状の悪化に伴って血中濃度が上昇し、鎮静化で低下することが知られている。
4)現在IL-6の受容体に対する遺伝子組換えによる医薬品2種が承認されている。しかし、いずれも特異性は高く、多彩な炎症反応はターゲットになっていない。しかも、注射薬(点滴)であり、薬価が非常の高いために重篤な患者に対してのみ使用するように指導されている。
5)一方、本植物発酵物は、食品であり商品市場で広く販売されていて副作用、や中止例も殆ど報告されていない。しかも、医薬品に比べて安価である。炎症関連Pathway一覧にも示したように、慢性炎症の主役であるIL-6の抑制のみならず、IL-1、Chemokineそして炎症の結果起こる肺の繊維化の抑制も起こり多彩である。炎症反応、特に慢性炎症反応は多彩であり、正常な生体防御反応の制御もつかさどる多くの炎症因子を抑制することが出来る。1:1の作用で炎症を抑制する従来の医薬品は、場合によっては正常な生体防御反応も抑制してしまう可能性がある。植物発酵物は漢方薬のように全体のバランスを取りながら、副作用も少なく正常化する働きがある。しかも、経口であり安価である。
【0120】
高週齢化による各種老化症状と並行して広範囲な炎症症状を呈し、植物発酵物の摂取が老化症状の抑制と並行して各種炎症症状を抑制することは明らかである。発がんや転移には多くの人にとって恐怖であり、心的QOLに影響する。糖尿病、肥満、高脂血症等いわゆる生活習慣病や老化等はいずれも慢性炎症が母地になっていて、慢性炎症の抑制は健康寿命の延長に有効である。
【0121】
以上のことから、植物発酵物は、炎症関連のQOLを改善することが裏付けられた。
【0122】
実 施 例 3
慢性疲労に基づくQOL改善の裏付け:
(1)マウス
実施例2と同様のものを用いた。
(2)サンプル
実施例2と同様のものを用いた。
(3)試料の採取
実施例2と同様にして行った。
(4)DNAマイクロアレイ
上記機関から入手した分析データ(遺伝子数566件)から、以下の遺伝子関連の発現を解析した。
【0123】
(a)インターフェロン関連遺伝子
インターフェロンのヒトに対する副作用としては、倦怠感、脱力感、発熱が頻発する。炎症クラスタリング解析データにもTypeIIインターフェロン遺伝子が加齢により増強し、植物発酵物の摂取では発現の抑制が観察された。炎症クラスタリング解析でも対象遺伝子は少ないものの同様の結果である。これは炎症と慢性疲労の関連を示唆している。
【0124】
(b)Pathway解析
慢性疲労についてはクラスタリング解析においてキーワード(fatigue, tired, exhaust, anxiety)検索をしても、該当件数が0であった。そのため、WIKI-Pathway解析を用いた。クラスタリング解析とは異なるDatabaseを用いたため、増減度やヒットする遺伝子も違いがみられることがある。
【0125】
【0126】
Pathway解析では、アルツハイマー病関連の遺伝子の関与が見られ、遺伝子の低下「Atp2a1=ATPase、Ca膜透過」関与で、神経細胞のCa2+の低下によるアポプトーシスを起し、最近はアルツハイマー病との関連が疑われている。植物発酵物の抑制効果は顕著ではなく、老化に付随する現象の可能性がある。炎症に関与するマーカーの一つであるカスパーゼ12遺伝子の発現増加は植物発酵物摂取で変化は消滅する。注目すべきはインターロイキン1-βである。0%56週齢で若齢マウスに比べて発現量は5.5倍に達するが、植物発酵物摂取群では、増加も減少も見られなかった。炎症クラスタリングでは植物発酵物摂取で発現量は約2倍に低下する。IL1-βは脳のミクログリアが感染やストレスで活性化すると分泌され、全身に移動して炎症を起こすとともに、慢性疲労症候群の症状を呈することが知られている。
【0127】
セロトニンと前駆体であるトリプトファンは慢性疲労との関連がしられていたが、最近は少し変わりつつある。Pathway解析では両者の遺伝子は高齢化群では2~3倍増強するが、植物発酵物摂取群ではいずれも低下した。慢性疲労症状の緩和との関連が示唆される。ミクログリアの遺伝子2種も同様の傾向を示した。
慢性疲労症状に関与する遺伝子も炎症と同様に植物発酵物摂取群では、遺伝子発現が低下した。
【0128】
以上のことから、植物発酵物は、アルツハイマー症等の認知症関連や慢性疲労関連のQOLを改善することが裏付けられた。
【0129】
実 施 例 4
腸内細菌調節の裏付け:
(1)老化促進マウスの腸内細菌の分析
用いたSAMマウスの試験群は表17に示した。このため、DNAマイクロアレイの結果は個体レベルで相互比較することが可能である。なお、マイクロアレイの分析には、各群6匹の胸腺試験の保存しておいた便サンプルを用いた。腸内細菌叢の分析は、採取した個別の糞便を基に、株式会社テクノスルガ・ラボ(清水市)に委託し、TFLP法(ヒト型およびマウス型)と16sRNAによる次世代シークエンサー(ヒト型)による種まで分析を実施した。
【0130】
属レベルの存在比率を
図2に示した。なお、ヒト型遺伝子をテンプレートに用いているため、「rejected」と判定されるものが出てきている。上位の3微生物であるLactobacillus, Bacteroides, Clostridiumについての各試験群における増減を
図3~6に示した。各棒グラフの最大値は「rejected」に分類されたものを示すが、これを除く腸内細菌の中で、水サンプル摂取で56週齢ではLactobacilli属が10週齢に比べて低値を示したが、植物発酵物2%摂取群では56週齢でもLactobacilli属は減少せず、10週齢の値に近かった。これは文献(「腸内細菌叢や免疫系が情動に及ぼす影響」、宮島倫生、「実験医学37巻(2)140-147(2019)」)の結果と一致する。植物発酵物の摂取により、腸の老化が抑制されている。また採便は解剖して行うが、腸管自体、腹膜、動脈・静脈等の弾力性もサンプル摂取群の方が高く、10週齢の若齢マウスの弾性に近かった。マウスにはBifidobacteriumは無いが、Lactobacillus属は主要腸内細菌であり、高週齢マウスでは10週齢マウスに比べて減少し、植物発酵食品摂取で低下しない結果は腸の老化抑制にも働いていることを示唆している。
【0131】
若齢マウスはLactobacilus属が多いが、サンプル0%56週齢では激減したが、2%投与群では減少は抑えられていた。
図3より、検出頻度の最も高いLactobacillus属については種レベルまで分析した。Lactobacillusの種レベルでの解析では、3種が殆どであり、L.reuteri、L. intestinalis殆どを占め、0%56週齢では10週齢に比べ低値であり高齢化で減少し、植物発酵摂取群では高週齢でも低下は抑制されている。ヒトでのアンケート結果で植物発酵物摂取者で高率に便通の改善見られたことと符合する。L.reuteriは有用な乳酸菌として広く市販されていて、有用性については、Wikipediaに詳しい。
【0132】
図5より、Bacteroidesの増減は殆ど見られなかった。
【0133】
図6より、Clostridium subclassは、Lactobacillus属に比べて変化は少かった。
【0134】
(2)SAMマウスの老化と腸内菌叢の変化の多様性の解析
老化と腸内細菌叢の関連について新井らが解説している(「腸内フローラと老化」日老医誌、53巻、318-325,2016)。この文献によれば加齢に伴い免疫機能、特に獲得免疫の応答が低下することが知られていて、免疫老化と呼ばれている。免疫老化は軽度の慢性免疫反応である“inflamaging”を惹き起こす。高齢者の腸内細菌叢は成人と比較して、個人差が大きいことや、多様性および安定性が低下する。SAMマウスの長期飼育試験について、Lactobacillusが若齢では検出数が多いが、高週齢マウスでは約50%に低下するが、植物発酵物2%摂取群では約82%の検出数を維持していた。L. reuteriにおいて顕著でありこの菌は免疫増強作用があることが知られている。ここでは、老化における菌叢の多様性の変化に注目して解析した。
【0135】
多様性についてはUnifrac解析を用いて、α―多様性とβ―多様性の両方について調べた。その結果を
図7および8に示した。
【0136】
α―多様性解析では、10週齢(0%)が56週齢(0%/2%)に比べて多様性に勝り、上記文献の結果と符合するものの、p=0.05に達せず、有意差ではなかった。つまりα―多様性解析では用いた3群は類似の多様性を示した。
【0137】
β―多様性の解析では、OUTに含まれるリード数(組成比)を考慮しないUnweightedと考慮したWeightedの方法がある。前者は菌種の有無だけが、後者は同一菌種の組成比の相違が両細菌叢間の類似性の距離に反映される(「ヒト腸内マイクロバイオーム解析のための最新技術」服部正平、Jpn.J.Clin.Immunol.,37巻、(5)412-422(2014))。
【0138】
Unweighted-unifrac解析では
図8に示すように、試験群10wk 0%(●)は6匹のマウスの6点は左端にコンパクトに分布したが、56週齢はいずれも右端に縦に集まり、10週齢とは明らかに異なった。また、56週齢において2%群は第1象限にコンパクトに分布し、0%群はやや分散して第2象限に分布した。両者の多様性に差があることを示しているが、OUTの組成比を加味していない。菌叢間のリード数(組成比)を加味したWeighted Unifrac 解析を表した
図9を示す。
【0139】
0%10週齢の若齢マウス(●)は右肩下がりの直線状に分布したが、0%56週齢マウスでは広く分散し、各マウス間の菌叢の差が大きいことが示されている。これに対し56週齢でも2%サンプルを摂取させたマウス(▲)の菌叢分布は纏まりが見られ、10週齢マウスの分布の傾斜との類似性が見られた。SAMマウスの高週齢化における2%の植物発酵物は、腸内細菌のβ-多様性に関しては若齢マウスに類似した傾向を示している。この三者の関係は他の慢性炎症指標や慢性疲労の指標類と同様の傾向であった。
【0140】
属レベルの分散図と同様の傾向であるが、56週齢マウスはサンプル濃度が0%、2%ともに右側に分布していて、若齢(10週齢)マウスとは分散傾向が異なっている。2%群はマウス間のバラツキが小さい。
【0141】
この様に、植物発酵物によるin vivoの効果は、SAMマウスの老化を抑制し、寿命を延長し、さらに自然発がんを抑制し、免疫チェックポイント抑制効果を示した。総合的に健康寿命の延伸に繋がり、しかも総合的にQOL改善効果を有する稀有な発酵産物であると思われる。高齢化したマウスにおける腸内細菌の変化としては若齢マウスに比べてLactobacillus属の減少が起こり、植物発酵物の摂取によりLactobacillusの減少が防げていることにも裏付けられた。いわゆるプレバイオティックスの効果も持つことが明らかになった。
【0142】
以上のことから、植物発酵物は、Lactobacillus属、特にLactobacillus reuteriを著しく増加させるため、腸内環境の調整、下痢、便秘を含む機能性胃腸疾患、ピロリ菌、虫歯菌、歯周病菌の発育抑制等を目的に広く利用できることが裏付けられた。
【0143】
実 施 例 5
ヒト投与試験:
(1)方法
69歳男(n=1)に植物発酵物(天生酵素金印)を5g/日投与した。投与前2週間、ヨーグルト、バナナ等の免疫に関わる食物の摂取中止し、投与を開始し、4週間連日投与し、終了時および終了後2週間後、合計3時点で末梢血を採取、リンパ球の試験に供した。分析は株式会社オルトメディコに委託した。方法の概略は株式会社オルトメディコのホームページ(https://www.orthomedico.jp/clinical-trials/case/immunity.html)に記載されている。なお、同時に便を採取し、腸内細菌の分析に供し、分析は株式会社オルトメディコに委託した。分析方法はTFLP法を用いた。結果を
図10~12に示した。
【0144】
摂取直前、T細胞は十分に存在するが、CD4+/CD8+細胞比およびCD8CD28+T細胞数が低値であった。Tリンパ球年齢は78~81歳と評価された(
図10)。
4週間の摂取後、CD4+/CD8+細胞比およびCD8CD28+T細胞数が増加した。Tリンパ球年齢は66~69歳と評価された(
図11)。
摂取終了2週間後、リンパ球のパターンは維持されていた。Tリンパ球年齢は66~69歳と評価された(
図12)。
【0145】
以上のことから、植物発酵物のヒト(69歳男性)の摂取を試みた。4週間連日摂取の前、直後、4週後における末梢血リンパ球の動向から免疫年齢を推定する方法によると、摂取前は71~81歳80歳相当であった値が、摂取により66~69歳相当に低下し、摂取中止後2週間後でもその値が維持された。山越によると、細胞老化により発生したSASPと慢性炎症、発がんの関係が解説されている(「細胞老化と慢性炎症」日老医誌、53巻p.88-94(2016))。この際、腸内細菌の解析を実施したところ、免疫増強を示唆するClostridium subclusterIXaの増加が見られている。
【0146】
以上のことから、植物発酵物は、末梢血のリンパ球の老化を回復させ免疫老化の抑制を示した。腸内細菌も免疫増強に関わるClostridiumクラスターXaが増加もそれを支持する。免疫老化は感染防御能力等の抗原抗体反応力に深く関与し、QOL評価軸に取り上げた免疫老化の指標の一つである。
【0147】
実 施 例 6
認知症に基づくQOLの改善:
MRI画像診断等からアルツハイマー病の確定診断を受けた患者が、植物発酵物(天生酵素金印)を5g/日の連日摂取した。1ヵ月後に家族および友人達が、患者の表情の変化に気が付いた。眼の集中力が強くなり、表情が明るくなり、また会話にも積極的に参加できた。その後、改善状態は更に1ヶ月継続していた。
【0148】
摂取から2ヶ月強経過した後、再度診断を受けたところ、MRI画像からは、右脳萎縮はあるが、アルツハイマーや水頭症ではないと診断された(海馬については言及はなかった)。
【0149】
更に、摂取から数ヶ月経過した後でも改善状態は継続していた。
【0150】
実 施 例 7
QOL改善用みそ様食品:
製造例1で製造したペースト状の植物発酵物とみそを混合し、調味料で味を調整してQOL改善用みそ様食品を製造した。
【0151】
実 施 例 8
QOL改善用飲料:
製造例1で製造したペースト状の植物発酵物を水に溶解した後、果糖ブドウ糖液と果汁を混合し、味を調整してQOL改善用飲料を製造した。
【0152】
実 施 例 9
ソフトカプセル:
製造例1で製造したペースト状の植物発酵物と、植物油、レシチンを混合したものを常法でソフトカプセルに充填してQOL改善に用いられるソフトカプセルを製造した。
【0153】
実 施 例 10
チュアブル錠:
製造例1で製造したペースト状の植物発酵物と、結晶セルロース、白糖を混合したものを常法で打錠してQOL改善に用いられるチュアブル錠を製造した。
【0154】
実 施 例 11
ソフトカプセル:
製造例1で製造したペースト状の植物発酵物(一日分量)と、植物油、レシチンおよびアンセリン900mgを混合したものを常法でソフトカプセルに充填してQOL改善に用いられるソフトカプセルを製造した。
【0155】
実 施 例 12
IL-6関連疾患の予防、治療:
実施例1の投与試験およびアンケートの集計において、以下の疾患の改善例があった。
【0156】
【0157】
【0158】
上記の通り、本発明のQOL改善剤の有効成分である植物発酵物は、自己免疫疾患であり、血中のIL-6濃度が病状の悪化と並行して上昇するリウマチ性関節炎やベーチェット病にも有効性が期待される。これらは、いずれも難病であり、痛み、病状によりQOL低下が著しく精神的ダメージも大きく、QOL改善効果は大である。また、本発明のQOL改善剤の有効成分である植物発酵物は、IL-6の発現を抑制することが実施例2で示されており、このようなIL-6の発現の抑制をする物質はこれまで類がなく、新規な発明である。既存の抗体医薬とも機構が異なるため、抗体医薬との併用も可能である。
【0159】
また、上記の通り、本発明のQOL改善剤の有効成分である植物発酵物は肺の炎症関連疾患についても有効性が期待される。このような肺の炎症関連疾患は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染による急激な重篤化によっても引き起こされる疾患である。そのため、本発明のQOL改善剤の有効成分である植物発酵物は新型コロナウイルス感染による急激な重篤化を抑制する可能性が大であり、感染早期からの摂取が効果的と思われる。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明のQOL改善剤は、多岐にわたるQOL、例えば、情動・行動、老化症状、消化器症状、慢性疲労、慢性炎症、代謝性疾患、認知症等に基づくQOLの改善に利用できる。