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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】日照計及び日照計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20241212BHJP
   G01W 1/12 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G01J1/02 U
G01W1/12 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023535103
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008521
(87)【国際公開番号】W WO2023286323
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2021118100
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390030395
【氏名又は名称】英弘精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 壽一
(72)【発明者】
【氏名】フーヘンダイク ケース
(72)【発明者】
【氏名】ポー マリオ
(72)【発明者】
【氏名】千葉 勇
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-224346(JP,A)
【文献】特開2003-021688(JP,A)
【文献】特開2002-286545(JP,A)
【文献】特開2001-091353(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112665717(CN,A)
【文献】実開平03-052208(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01J 11/00
G01W 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半天球から入射する自然光を投影光として射出するレンズと、
受光面に投影された前記投影光を光電変換して出力するセンサと、
前記センサの出力に基づいて日照の有無を判定する判定回路と、を有し、
前記センサは、前記受光面に複数の検出領域を有し、各前記検出領域に入射した前記投影光の強さに対応した信号を出力するように構成されており、
前記判定回路は、各前記検出領域から出力された信号の差異演算に基づいて、前記投影光に含まれる散乱光成分を取り除き、太陽光が入射する場合に前記投影光に含まれることになる直達光成分のみを取り出し、各前記検出領域から出力された信号の差分の最大値が、所定の閾値を満たす場合に、前記日照が有るものと判定することにより、前記自然光における日照の有無を判定する、日照計。
【請求項2】
請求項に記載の日照計であって、
前記センサは、4つの前記検出領域を有し、
前記判定回路は、所定の第1方向に並んで設けられる前記検出領域からの信号の合計と、前記第1方向に直交する第2方向に並んで設けられる前記検出領域からの信号の合計と、の差分を相互に比較して、前記日照の有無を判定する、日照計。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の日照計であって、
前記判定回路は、前記日照の有無を示す判定信号を出力する、日照計。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の日照計であって、
前記判定回路は、所定の校正値をさらに参照して、前記日照の有無を判定する、日照計。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の日照計であって、
前記判定回路は、前記直達光成分及び直達日射強度校正値に基づいて、直達日射強度を算出する、日照計。
【請求項6】
請求項に記載の日照計であって、
前記判定回路は、前記直達日射強度を出力する、日照計。
【請求項7】
半天球から入射する自然光を投影光として射出するステップと、
前記投影光の受光面における複数の検出領域に入射した前記投影光の強さに対応した信号をそれぞれ出力するステップと、
各前記検出領域から出力された信号の差異演算に基づいて、前記投影光に含まれる散乱光成分を取り除き、太陽光が入射する場合に前記投影光に含まれることになる直達光成分のみを取り出し、各前記検出領域から出力された信号の差分の最大値が、所定の閾値を満たす場合に、日照が有るものと判定することにより、前記自然光における日照の有無を判定するステップと、を備える、日照計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日照計及び日照計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地表への太陽光の照射を計測するために、日照計という計測装置が用いられる。日照計の種類としては、回転式日照計や光電式日照計などがある。また、太陽追尾装置に直達日射計を搭載して、日照を計測することもできる。昼間に半天球から届く自然光には、太陽光が大気を通過して地表に直接照射される直達光と、太陽光が大気中で散乱されて地表に照射される散乱光とが含まれる。日照計は、このうち、直達光の強度に基づいて日照の有無を判定する。例えば、直達光に対応する直達日射強度に対して所定の閾値が設けられており、当該閾値を上回る直達日射強度が日照計に入力された場合、日照計は、「日照」があると判定する信号を出力する。世界気象機関による定義によれば、直達日射強度(太陽を中心とした半角2.5度の視野からの日射)が120W/m2を超えた時間を日照時間としている。実際の運用においては、直達日射強度が120W/m2以上になる時間を日照時間としている。
【0003】
直達光及び散乱光の測定精度を高めることによって、日照の有無の判定を精度よく行うことができる。例えば、特許文献1には、散乱光が不規則に変化した場合であっても直達光及び散乱光の測定誤差を軽減する日照計が示される。特許文献1に記載の日照計(計測装置)では、円筒状のガラス内に、第1のスリットを通じて入射する光を検知する熱電対と第2のスリットを通じて入射する光を検知する熱電対とが設けられる。この日照計には、2つの熱電対の一方に直達光が入射するように第1のスリット及び第2のスリットが設けられ、散乱光に阻害されずに直達光のみを検出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-77215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の日照計では、ガラスやスリットの加工が必要であり、計測に用いるセンサが複数必要であることから装置が複雑となる。また、特許文献1に記載の日照計を含む他の従来の日照計においては、日照計の設置場所の緯度に応じて、日照計の設置角度を設定し、さらには方角を調整する必要があった。また、他の従来の日照計においては、季節ごとに変化する太陽の位置の変化(赤緯変化)によって、直達光の強度計測において計測誤差が生じることがある。また、太陽追尾装置に直達日射計を搭載する手法による日照の計測は、機器の数も多く費用もかかり、大掛かりなシステムとなる。また、回転式日照計では、ガラス管の中で回転する金属ミラーからの反射をとらえるため、可動部が必要であり、構成が複雑となる。このように、設置の際に調整が必要であることは容易な測定を妨げる。また、日照計に追加の部品としての可動部が必要であることは日照計の耐久性を低下させ得る。
【0006】
そこで、本発明は、可動部を有さず、計測のための調整が簡便である日照計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る日照計は、半天球から入射する自然光を投影光として射出するレンズと、受光面に投影された投影光を光電変換して出力するセンサと、センサの出力に基づいて日照の有無を判定する判定回路と、を有し、センサは、受光面に複数の検出領域を有し、各検出領域に入射した投影光の強さに対応した信号を出力するように構成されており、判定回路は、各検出領域から出力された信号の差異演算に基づいて、投影光に含まれる散乱光成分を取り除き、太陽光が入射する場合に投影光に含まれることになる直達光成分のみを取り出すことにより、自然光における日照の有無を判定する。
【0008】
この態様によれば、半天球全体からの光が全て投影光としてセンサの受光面に投影されるので、自然光に含まれる直達光と散乱光が全てセンサによって検出される。そして、判定回路は、各検出領域から出力された信号の差異演算をするので、投影光に含まれる散乱光成分が取り除かれ、直達光成分のみが取り出される。したがって、本態様に係る日照計によれば半天球上における太陽の位置の変化に影響されることなく日照の有無が判定可能であり、可動部が不要である。また、日照計が設置される位置の緯度に応じて日照計の姿勢を調整する必要がない。さらには、赤緯変化によって生じる直達光の強度計測における計測誤差を抑制することができる。したがって、本態様に係る日照計は、可動部を有さず、計測のための調整が簡便な日照計である。
【0009】
また、判定回路は、各検出領域から出力された信号の差分の最大値が、所定の閾値を満たす場合に、日照が有るものと判定してもよい。この態様では、複数の差分がある場合であっても、日照の有無の判断においては最大値を用いることで、判断が適切に行われる。
【0010】
また、上記態様において、センサは、4つの検出領域を有し、判定回路は、所定の第1方向に並んで設けられる検出領域からの信号の合計と、第1方向に直交する第2方向に並んで設けられる検出領域からの信号の合計と、の差分を相互に比較して、日照の有無を判定してもよい。
【0011】
この態様によれば、例えば、センサが2つのみの検出領域を有する場合と比較して、直達光が検出領域の間に位置する場合であっても、信号の差分を相互に比較して、直達光成分に基づく日照の有無の判定を行うことができる。
【0012】
また、判定回路は、日照の有無を示す判定信号を出力してもよい。この態様によれば、外部装置が、日照計を用いて日照の記録を行うようにできる。
【0013】
また、判定回路は、所定の校正値をさらに参照して、日照の有無を判定してもよい。この態様によれば、日照計の環境に応じた校正値を含めて日照の有無を判定することができるので、日照の有無の判定をより精度よく行うことができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る日照計測方法は、半天球から入射する自然光を投影光として射出するステップと、投影光の受光面における複数の検出領域に入射した投影光の強さに対応した信号をそれぞれ出力するステップと、各検出領域から出力された信号の差異演算に基づいて、投影光に含まれる散乱光成分を取り除き、太陽光が入射する場合に投影光に含まれることになる直達光成分のみを取り出すことにより、自然光における日照の有無を判定するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、可動部を有さず、計測のための調整が簡便である日照計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】日照計による計測の原理を説明する模式図である。
図2】日照計による計測の原理を、日照およびその時間経過による移動を示して説明する模式図である。
図3】第1実施形態に係る日照計の断面図である。
図4】第1実施形態に係る判定回路を説明するブロック図である。
図5】第1実施形態に係るセンサにおける信号を示す図である。
図6】第1実施形態に係る判定回路における処理を説明するフローチャートである。
図7】第1実施形態に係る判定回路における処理を説明する図である。
図8】第1実施形態に係る判定回路による処理の結果を説明する図である。
図9】第2実施形態に係る判定回路における処理を説明するフローチャートである。
図10】第2実施形態に係る判定回路における処理を説明する図である。
図11】第2実施形態に係る判定回路による処理の結果を説明する図である。
図12】第2実施形態に係る判定回路による日照の有無の判定結果を説明する図である。
図13】第2実施形態に係る判定回路による日照の有無の他の判定結果を説明する図である。
図14】第3実施形態に係る判定回路を説明するブロック図である。
図15】第3実施形態に係る判定回路により算出された直達日射強度を説明する図である。
図16】変形例に係る日照計による計測を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0018】
(原理説明)
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る日照計による日照の有無の第1の判定原理について説明する。図1は、本発明に係るレンズ及びセンサを側面から模式的に示した図である。図1には、レンズ101に対して半天球HSから太陽光である自然光ILが入射し、レンズ101からセンサ102に対して投影光PLが射出される状況が示されている。
【0019】
レンズ101は、自然光ILが、図1に示すz軸方向下側(以降の説明において、x-y-z各軸の正の方向を「上側」と称し、各軸の負の方向を「下側」と称する。)に、z軸に沿う投影光PLとして照射されるように、自然光ILを屈折させる対物レンズである。レンズ101は、広角の入射角を有する凸レンズ、例えば、魚眼レンズである。レンズ101は、複数のレンズなどで構成されていてもよい。レンズ101は、半天球HSを観測可能に、半天球HSからの光を集光可能に構成された光学素子である。半天球HSから入射した自然光ILは、レンズ101により平行光線に変換され、投影光PLとしてセンサ102の受光面に投影される。すなわち、センサ102の受光面には、投影光PLにより半天球HSの平面投影像が形成される。センサ102は、投影光PLに対して光電変換を行い、センサ102が受光した光の強さに応じた信号(電気信号)を出力する。センサ102は、複数の検出領域を有する(図2参照)。
【0020】
自然光ILには、太陽からの直達光と半天球HSの空間からの散乱光とが含まれる。したがって、自然光ILの平面投影像を形成する投影光PLには、太陽の直達光に対応する直達光成分と半天球HSの空間からの散乱光に対応する散乱光成分とが含まれることになる。
【0021】
図2は、投影光PLがセンサ102の受光面RSに投影された平面投影像を示す平面図である。受光面RSは、検出領域R1,R2,R3,及びR4に分割されている。センサ102は、検出領域R1,R2,R3,及びR4それぞれに投影される投影光の強度に応じて、それぞれ信号を出力する。例えば、各信号は投影される光の強度に対応する振幅値を有する電圧信号である。図2において、直達光は、検出領域R1の領域DRに投影される光として示されている。散乱光は、領域SCにおける光として示されている。散乱光を示す領域SCは、検出領域R1,R2,R3,及びR4に跨った全領域である。
【0022】
時刻の経過に伴って太陽が移動すると、これに伴って、受光面RSに形成される平面投影像において、直達光が領域DRから、図2の破線に沿って矢印の向きに受光面RSを移動する。
【0023】
図2において、最初、検出領域R1からの信号は、領域DRに位置する直達光による直達光成分とその周辺の散乱光による散乱光成分とを合わせた光成分の強度に対応した信号となる。また、検出領域R4からの信号は、散乱光成分のみの強度に対応した信号となる。よって、日照の有無の判定に必要な直達光成分の信号は、検出領域R1からの信号から、検出領域R4からの信号を差し引く差分演算により、散乱光成分を取り除くことで得ることができる。そして、得られた直達光成分の信号に基づいて、日照の有無の判定を行うことができる。これは、検出領域R4に代えて、検出領域R2やR3の信号を用いた場合も同じである。したがって、複数の検出領域から2つの信号の差分演算を全ての組み合わせについて行い、複数の差分のうち最大値を示す差分について、所定の閾値と比較することにより、日照の有無を判定することができる。差分が最大値を示しているということは、その差分演算の対象となった検出領域のいずれかに最も光量の強い直達光成分が含まれていることを意味するからである。この第1の判定原理に沿った具体的な適応例を第1実施形態で後述する。なお、上記第1の測定原理及び次の第2の測定原理に沿った日照の有無を判定するための演算を総称して、本明細書では「差異演算」とも称する。
【0024】
ところで、太陽が移動して、受光面RSに投影される直達光が図2の領域DR2に示される位置に投影されるようになったものとする。この場合、直達光は、検出領域R1と検出領域R4とに2分割されて投影されてしまう。このような直達光の位置では、検出領域R1からの信号は、半分の直達光成分と散乱光成分とを合わせた光成分の強度に応じた信号となる。また、検出領域R4からの信号は、半分の直達光成分と散乱光成分のみの強度に応じた信号となる。したがって、検出領域R1からの信号から、検出領域R4からの信号を差し引く差分演算の結果は、差分がゼロ又はゼロに近い値となる。つまり太陽の位置が検出領域の境界に跨っているような場合には、正しく直達光成分の信号を得ることができない。
【0025】
そこで、第2の測定原理として、複数の検出領域からの信号の差分を相互に比較して、直達光成分に基づく日照の有無の判定を行う。以下、差異演算の詳細について説明する。
ここでは、検出領域Rx(xは1~4のいずれか)からの信号をQxとし、信号を、直達光成分Dxと散乱光成分Sxに分解して、Qx=Dx+Sxとして考える。直達光成分の算出は以下の手順(a)~(g)で行われる。
【0026】
(a)検出領域R1からの信号Q1と検出領域R4からの信号Q4とを合計し、信号Q1+Q4(=D1+D4+S1+S4)を算出する。
(b)検出領域R2からの信号Q2と検出領域R3からの信号Q3とを合計し、信号Q2+Q3(=D2+D3+S2+S3)を算出する。
(c)信号Q1+Q4と信号Q2+Q3との第1差分を絶対値として算出する。
(d)検出領域R1からの信号Q1と検出領域R2からの信号Q2とを合計し、信号Q1+Q2(=D1+D2+S1+S2)を算出する。
(e)検出領域R3からの信号Q3と検出領域R4からの信号Q4とを合計し、信号Q3+Q4(=D3+D4+S3+S4)を算出する。
(f)信号Q1+Q2と信号Q3+Q4との第2差分を絶対値として算出する。
(g)第1差分と第2差分のうち、絶対値が大きい差分を判定差分とし、判定差分が所定の閾値以上であるかに基づいて、日照の有無の判定を行う。
【0027】
例えば、快晴時の条件下で、図2の領域DR2に示される位置に直達光が投影される場合、直達光成分はD1=D4=d/2であり、直達光成分はD2=D3=0である。ここでdは、直達光全体による直達光成分である。また、散乱光成分はS1=S2=S3=S4=sである。
【0028】
このとき、手順(c)による第1差分は、D1+D4=dである。また、手順(f)による第2差分は、D1-D4=0である。よって、判定差分はdとなり、直達光全体による直達光成分に基づいて日照の判定を行うことが可能となる。言い換えれば、所定の第1方向(図2の例ではx軸方向)に並んで設けられる検出領域(図2の例では、x軸方向に並ぶ検出領域R1+R4、及び、検出領域R2+R3)からの信号の合計と、第1方向に直交する第2方向(図2の例ではy軸方向)に並んで設けられる検出領域(図2の例では、y軸方向に並ぶ検出領域R1+R2、及び、検出領域R4+R3)からの信号の合計と、の差分を相互に比較すれば、どのような位置に直達光が投影されていたとしても、日照の有無を正しく判定できるのである。以上の第2の測定原理に沿った適用例を第2実施形態において後述する。
【0029】
(第1実施形態)
以下、上記第1の測定原理に基づいた第1実施形態について説明する。図3には、第1実施形態に係る日照計10の断面図であって、中心軸Cに沿って日照計10を切断した面が示される。日照計10は、レンズ101、センサ102、筐体103、判定回路104、及びコネクタ105を備える。また、図3では、図1における自然光ILの一部が自然光L1、投影光PLの一部が投影光L2として示されている。上記原理説明で参照したレンズ及びセンサは、本実施形態におけるレンズ101及びセンサ102にそれぞれ相当する。
【0030】
筐体103は、中心軸Cを軸心とする円筒状の部材である。筐体103は例えば、野外に設置された場合に物理的・化学的耐性のある材料、金属材料によって形成される。筐体103に後述のレンズ101、センサ102、及び判定回路104が収容される。筐体103は、負のz軸方向下側に、複数の脚1031を有する。脚1031は、筐体103の接地面に対する傾きを調整可能な部材である。
【0031】
レンズ101は、筐体103のz軸方向上側に、筐体103に収容されて設けられる。レンズ101は、入射面1011及び出射面1012を有する。レンズ101は、入射面1011から入射する自然光ILを、出射面1012から投影光PLとしてセンサ102へ投影する。レンズ101は、筐体103において、半天球からの光を集光可能な位置に設けられる。レンズ101は、筐体103に設けられるカバー1013によって、外部の付着物から保護される。また、カバー1013は、ガラス材等で形成され、投影光PLのcos(余弦)特性を良好にする光透過性を有する保護部材である。
【0032】
センサ102は、レンズ101よりz軸方向下側に、出射面1012に対向して設けられる。センサ102は、筐体103に接続されるセンサ基板1021上に設けられる。センサ102は、光電変換センサである。例えば、半導体素子もその一つである。例えば、センサ102は同一面に設けられる複数の検出領域を有するフォトダイオードである。センサ102では、個々の検出領域が個々の信号を出力する。より具体的には、センサ102は4つの検出領域を有するフォトダイオードである。センサ102は、配線1022を通じて、個々の検出領域からの信号を外部に出力する。ここでの信号は、例えば、受光した投影光の強度に対応した振幅値を有する電圧信号である。
【0033】
判定回路104は、当該判定回路104を搭載する基板が筐体103に接続された態様にて、センサ102よりz軸方向下側に設けられる。判定回路104は、配線1022を通じてセンサ102と電気的に接続される。判定回路104は、センサ102からの信号に基づいて、投影光PLが日照であると判断しうる光の強度であるか否かを判定する。判定回路104の詳細については後述する。
【0034】
判定回路104は、配線1041を通じて判定した結果を示す判定信号を外部に出力する。配線1041は筐体103に設けられるコネクタ105に接続される。コネクタ105には、ケーブル106が接続される。ケーブル106を通じて、日照計10への電源供給、日照計10による計測結果の読み出し、日照計10による計測設定の書き込みが可能となる。
【0035】
図4を参照して、判定回路104について説明する。判定回路104は、記憶回路201、信号処理回路202、及び算出回路203を有する。判定回路104は、記憶回路201、信号処理回路202を含むマイクロコンピュータ内の回路として実現される。算出回路203は、マイクロコンピュータが記憶回路201に記憶されたソフトウェアプログラムを実行することにより実現される機能的ブロックである。
【0036】
記憶回路201は、上記マイクロコンピュータに本発明の日照計測方法を実行させるためのソフトウェアプログラムを記憶するほか、判定回路104による信号処理に用いられる各種の情報を記録する。記憶回路201は、マイクロコンピュータのメモリである。記憶回路201には、算出回路203による処理を規定するプログラムコードや、投影光PLが日照を示すか否かの判定に用いられる各種の閾値が記憶される。記憶回路201に記憶される情報は、ケーブル106を通じて日照計10に接続される外部の機器によって書き換え可能とされていてもよい。
【0037】
信号処理回路202は、センサ102からのアナログ信号としての信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータである。
【0038】
算出回路203は、デジタル変換された信号を用いて、投影光PLが日照を示すか否かを判定するための差異演算を行う。算出回路203は、投影光PLが日照を示すと判定した場合、日照を示す旨の情報を記憶回路201に記憶する。算出回路203による演算については後述する。
【0039】
判定回路104は、電源205及び外部機器206に接続される。電源205は、判定回路104を含む日照計10に電源を供給する。判定回路104は、判定回路104による判定結果、及びセンサ出力を示す信号を外部機器206に送信する。外部機器206は、例えば、コンピュータやデータロガーである。外部機器206がコンピュータあるいはデジタル通信が可能なデータロガーの場合、判定回路104は、デジタル変換された信号を外部機器206に出力する。あるいは、外部機器206がアナログ値を読み取り可能なデータロガーである場合、判定回路104はセンサ102からのアナログ信号を外部機器206に出力する。外部機器206は、判定回路104からの判定結果に基づいて日照時間を積算することができる。
【0040】
図5は、天候が晴れのときに、一日の各検出領域からの信号をプロットしたグラフ例である。図5には、検出領域R1からの信号Q1、検出領域R2からの信号Q2、検出領域R3からのQ3、及び検出領域R4からの信号Q4がそれぞれ示される。
【0041】
午前中において検出領域R1からの信号Q1が大きく、他の信号Q2,Q3,Q4は小さい。これは、領域DR2が検出領域R1上に位置することを示す。このとき、信号Q1には、直達光及び散乱光に対応する電圧成分がともに含まれ、Q2,Q3,Q4には、散乱光に対応する電圧成分が含まれる。
【0042】
時刻の経過に伴い、信号Q1が減少し、信号Q4が増加する。これは、領域DR2が検出領域R1上から検出領域R4上に移動しつつあることを示す。午後になると、信号Q4が大きく、他の信号Q1,Q3,Q4は小さい状態となる。これは、領域DR2が完全に検出領域R4上に位置したことを示す。図5から、太陽の移動に応じて、領域DR2が移動し、その移動が検出されていることが示される。また、日没前に、信号Q3が少し上昇することから、領域DR2が検出領域R3上にかかっていることも示される。
【0043】
図6を参照して、センサ102からの信号に基づく、判定回路104による日照計測方法について説明する。当該方法は、日照計10が動作している間、繰り返し実行される処理手順である。以下の演算手順は、上記第1の測定原理の説明において詳述したとおりであり、簡単に説明する。
【0044】
図6のステップS601において、信号処理回路202は、センサ102の各検出領域からの信号を取得する。
【0045】
ステップS602において、算出回路203は、信号どうしの差分を計測値として算出する。差分は絶対値として算出される。
【0046】
ステップS603において、算出回路203は、算出された複数の差分の中から、その絶対値が最も大きい差分を差分の最大値として特定する。
【0047】
ステップS604において、算出回路203は、差分の最大値が、記憶回路201に記憶された所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0048】
ステップS604にて肯定判断された場合、ステップS605において、算出回路203は、処理が実行されている時刻において、日照があると判定する。
【0049】
ステップS604にて否定判断された場合、ステップS606において、算出回路203は、処理が実行されている時刻において、日照がないと判定する。
【0050】
ステップS607において、算出回路203は、判定結果に基づいて、判定信号を出力する。
【0051】
図7を参照して、処理の具体例について説明する。図7には、信号Q1,Q2,Q3,Q4のそれぞれが、(9.5,0.7,0.9,0.8)である場合及び(0.2,0.5,0.3,0.4)である場合(単位はmV)が例示される。
【0052】
ステップS602における処理によって、差分|Q1-Q2|,|Q1-Q3|,|Q1-Q4|,|Q2-Q3|,|Q2-Q4|,及び|Q3-Q4|がそれぞれ算出される。
【0053】
ステップS603における処理によって、差分の最大値が特定される。ステップS604からS606までの処理によって、差分の最大値が、閾値以上である場合は、日照ありと判断され、閾値以下である場合は日照なしと判断される。ここでは、例示的に日照ありと判断される場合と日照なしと判断される場合が示されるが、判定結果は閾値に応じて変わり得る。
【0054】
図8には、図5の計測が行われた日とは異なる日に算出された差分の最大値を示す曲線V1が示される。比較例として、同日同時刻に太陽追尾装置に搭載した直達日射計によって計測された直達日射強度を示す曲線E1も示されている。図8から、差分の最大値によっても、日照の状態を適切に計測できていることがわかる。よって、日照計10は差分の最大値に基づく日照の判定を適切に行うことができる。
【0055】
なお、ステップS604において、算出回路203は、差分の最大値が、記憶回路201に記憶された所定の閾値以上であるか否かを判定するにあたって、記憶回路201に予め記憶された校正値を考慮してもよい。
【0056】
(第2実施形態)
次に、上記第2の測定原理に基づいた第2実施形態について説明する。第2実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。
第2実施形態では、日照計10の各部及び判定回路104の各回路は第1実施形態と共通する。第2実施形態では、判定回路104による判定処理における差異演算が、4つの検出領域からの信号に基づく差分を相互に比較して行われる点で異なる。
【0057】
図9には、第2実施形態に係る判定回路104による日照計測方法のフローチャートが示される。以下の演算手順は、上記第2の測定原理の説明において詳述したとおりであり、簡単に説明する。
【0058】
ステップS901において、算出回路203は、各検出領域から信号を取得する。
【0059】
ステップS902において、算出回路203は、各信号に基づいて、各検出領域からの信号の合計を算出する。
【0060】
ステップS903において、算出回路203は、合計間の相互の差分を正規化して算出する。差分は絶対値として算出される。
【0061】
ステップS904において、算出回路203は、その絶対値が最大となる差分を判定差分として特定する。
【0062】
ステップS905において、算出回路203は、判定差分が、所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0063】
ステップS905にて肯定判断された場合、ステップS906において、算出回路203は、処理が実行されている時刻において、日照があると判定する。
【0064】
ステップS905にて否定判断された場合、ステップS907において、算出回路203は、処理が実行されている時刻において、日照がないと判定する。
【0065】
ステップS908において、算出回路203は、判定結果に基づいて、判定信号を出力する。
【0066】
図10を参照して、処理の具体例について説明する。図10では、信号Q1,Q2,Q3,Q4のそれぞれが、(9.5,0.7,0.9,0.8)、(4.8,0.5,0.6,4.8)、(4.8,4.8,0.5,0.6)、(0.6,4.8,4.8,0.5)、(0.5,0.6,4.8,4.8)、(0.2,0.5,0.3,0.4)である場合が例示される。
【0067】
ステップS902における処理によって、検出領域R1及び検出領域R2からの信号の合計値Q1+Q2及び検出領域R3及び検出領域R4からの信号の合計値Q3+Q4が算出される。ステップS902における処理によって、検出領域R1及び検出領域R4からの信号の合計値Q1+Q4及び検出領域R2及び検出領域R3からの信号の合計値Q2+Q3がそれぞれ計測値として算出される。
【0068】
ステップS903における処理によって、検出領域R1及び検出領域R2の組と検出領域R3及び検出領域R4の組とのそれぞれの計測値の差分の絶対値が、Q1からQ4の合計値によって正規化されて差分Δ1が算出される。ステップS903における処理によって、検出領域R1及び検出領域R4の組と検出領域R2及び検出領域R3の組とのそれぞれからの信号の差分の絶対値がQ1からQ4の合計値によって正規化されて差分Δ2が算出される。差分Δ1,Δ2のそれぞれは、以下の計算式
【数1】
を用いて計算される。
【0069】
ステップS904における処理によって、差分Δ1及び差分Δ2のその大きい差分が判定差分として特定される。すなわち、Δ1≧Δ2のときは、Δ1が判定差分とされ、Δ2>Δ1のときは、Δ2が判定差分とされる。
【0070】
ステップS905からS907までの処理によって、差分の最大値が、閾値(0.5)以上である場合は、日照ありと判断され、閾値以下である場合は日照なしと判断される。
なお、ここでの閾値はあくまでも例示であり、閾値は環境に応じて適切に設定され得る。
【0071】
図10の1列目及び6列目の信号の組は、図6の1列目及び2列目に示される第1実施形態に係る信号の組と同じである。第2実施形態に係る日照計10においても、適切に日照の有無の判定が行われていることが示される。
【0072】
また、図10の2列目から5列目の信号の組のそれぞれは、領域DR2が検出領域R1と検出領域R4との中間に位置する場合、領域DR2が検出領域R1と検出領域R2との中間に位置する場合、領域DR2が検出領域R2と検出領域R3との中間に位置する場合、領域DR2が検出領域R3と検出領域R4との中間に位置する場合のそれぞれに対応する。いずれの場合でも日照ありと適切に判定されている。よって、第2実施形態に係る日照計10は、日照計10が設置される方角によらず日照の有無を適切に判定することができる。
【0073】
図11には、図8の計測が行われた日に算出された判定差分を示す曲線N1が示される。比較例として、同日同時刻に太陽追尾装置に搭載した直達日射計によって計測された直達日射強度を示す曲線E1が示される。図11では、判定差分が、0.5以上である場合は日照あり、直達日射強度が120W/m2を超えた場合は日照ありと判断される。図11により、判定差分によっても、日照の状態を適切に計測できていることが示される。つまり、図11により、第2実施形態に係る日照計10による日照の判定は、可動部を有する、日照計10より複雑な構成である太陽追尾装置に搭載した直達日射計による日照の判定と同等であることが示される。よって、本実施形態の日照計10によれば、判定差分に基づく日照の有無の判定も、可動部を設けることなく、適切に行うことができることが明らかにされた。
【0074】
図12には、図11の曲線N1により示される判定差分に基づいて判定された日照の状態(A)と、図11の曲線E1により示される直達日射強度に基づいて判定された日照の状態(B)とが示される。縦軸の値が、1の場合は日照あり、0の場合は日照なしである。図12に示されるように、第2実施形態に係る日照計10では、日照の有無が、太陽追尾装置に搭載した直達日射計と同様に適切に判定されている。この場合、外部機器206は、時間T1を日照時間として算出する。
【0075】
図13には、他の日における判定差分に基づいて判定された日照の状態(A)と、同日の直達日射強度に基づいて判定された日照の状態(B)とが示される。いずれの場合も、一定の時間、雲などによって太陽が隠れたことが示されている。図13に示されるように、第2実施形態に係る日照計10では、日照が中断する場合であっても、日照の有無が、太陽追尾装置に搭載した直達日射計と同様に適切に判定されている。この場合、外部機器206は、日照ありと判定された時間の合計値として日照時間を算出する。
【0076】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る日照計は、第1実施形態及び第2実施形態で説明した日照の有無の判定に加えて、直達日射強度を算出することができる。第3実施形態に係る日照計は、図3で示した日照計10と同様の構造を有しているが、判定回路104が、図14に示す判定回路104Aに置き換えられた点で日照計10と異なる。
【0077】
判定回路104Aは、記憶回路201A、信号処理回路202、及び算出回路203Aを有する。判定回路104Aは、記憶回路201A、信号処理回路202を含むマイクロコンピュータ内の回路として実現される。算出回路203Aは、マイクロコンピュータが記憶回路201Aに記憶されたソフトウェアプログラムを実行することにより実現される機能的ブロックである。
【0078】
記憶回路201Aには、記憶回路201Aに記憶される情報に加えて、直達日射強度を算出するための校正値が記憶される。算出回路203Aは、算出回路203が行う演算に加えて、直達日射強度を算出する演算を行う。
【0079】
算出回路203Aによる直達日射強度の算出について説明する。算出回路203Aは、上述の第2の測定原理に基づく差異演算を行い第1差分と第2差分を算出する。算出回路203Aは、第1差分と第2差分のうち、絶対値が大きい差分を判定差分Dとする。なお、判定差分Dは、第2実施形態における差分Δ1,Δ2のように正規化された値であってもよく、正規化されない値であってもよい。ここでは、判定差分Dは正規化されていないものとして説明する。
【0080】
算出回路203Aは、図9のステップS901からS904までの処理と同様の処理を行い、判定差分Dを算出する。
【0081】
算出回路203Aは、以下の計算式
【数2】

によって、直達日射強度を算出する。ここで、θは太陽高度角(°)である。算出回路203Aは、太陽高度角θを、日照計の設置箇所の緯度、経度、及び接地箇所の時刻に基づいて算出する。α~αは、レンズ103の角度特性を測定し、角度に対するセンサ102の出力値を多項式近似式した場合の、各次数における係数である。kは感度定数であり、その次元は[W/m]である。係数α~α及び感度定数kは、校正値として、記憶回路201Aに記憶される。
【0082】
ここで、感度定数kは、例えば、太陽追尾装置に搭載された直達日射計を用いて算出された直達日射強度βと本実施形態に係る日照計によって算出される判定差分D、太陽高度角θ及び係数α~αを用いて
【数3】

として算出される。
【0083】
図15には、ある日時において、算出回路203Aが、判定差分D、太陽高度角θ、係数α~α及び感度定数kに基づいて算出した直達日射強度を示す曲線E2と、同日同時刻に太陽追尾装置に搭載した直達日射計によって計測された直達日射強度を示す曲線E3とが示される。図15により、第3実施形態に係る日照計10によって算出される直達日射強度は、可動部等を備えることで、本第3実施形態3の日照計10より複雑な構成を有する太陽追尾装置に搭載した直達日射計によって算出された直達日射強度と同等であることが示される。よって、第3実施形態の日照計10によれば、可動部を設けることなく、判定差分に基づく直達日射強度の算出を適切に行うことができることが明らかにされた。
【0084】
(変形例)
上記各実施形態の変形例について説明する。例えば、第1実施形態において、受光面RSが検出領域R1,R2,R3,及びR4に分割されているセンサ102に対して、各検出領域の境界に直達光が入射することがある。各検出領域の境界は、センサ102の素子がない不感領域である。不感領域は、例えば、数μmから100μm程度の幅を有した、矩形状の領域である、各検出領域の境界において直達光及び散乱光は検出されない。したがって、直達光が各検出領域の境界に入射する場合、直達光が検出されにくくなることがある。本変形例では、センサ102が不感領域を有する場合であっても、直達光成分の検出を可能とする日照計について説明する。
【0085】
本変形例に係る日照計は、センサ102に入射する直達光が、センサ102上に形成する像をぼやけさせることで、不感領域に係る問題を解決する。センサ102上の像をぼやけさせることが可能な日照計の概念の一例を図16に示す。
【0086】
図16は、本変形例に係るレンズ、センサ、及び拡散板を側面から模式的に示した図である。図16には、図1と同様に、レンズ101に対して半天球HSから太陽光である自然光ILが入射し、レンズ101からセンサ102に対して投影光PLが射出される状況が示されている。本変形例では、レンズ101とセンサ102との間に拡散板1601が設けられる。拡散板1601は、レンズ101からの光を透過させる際に、投影光PLを散乱させる。拡散板1601によって、センサ102には散乱された投影光PLが投影される。
【0087】
レンズ101からの投影光を散乱させることで、直達光がセンサ102上に形成する像をぼやけさせることができる。これにより、直達光がセンサ102の不感領域のみに到達することを回避し、直達光がセンサ102の素子によって検出されるようにできる。よって、センサ102が不感領域を有する場合であっても、直達光成分の検出が可能となる。
【0088】
直達光が、センサ102上に形成する像をぼやけさせるための構成は、拡散板を用いる方法に限られない。例えば、図3において、カバー1013を透明なガラスではなく光を拡散させるすりガラスによって形成すれば、センサ102上の像をぼやけさせることができる。また、レンズ101の入射面1011又は出射面1012をすりガラスによって形成しても、センサ102上の像をぼやけさせることができる。あるいは、レンズ101の焦点距離と異なる距離にセンサ102を設置することで、センサ102上の像をぼやけさせることができる。日照計等の光学機器では、レンズの焦点距離に正しくセンサを設置することで光が真っ直ぐ届くことが重要視されることがある。本変形例では、そのような技術常識に反して、あえて像をぼやけさせる構成を採用するという発想の転換をすることで不感領域に係る問題を解決している。
【0089】
上述のような像をぼやけさせる構成の他に、不感領域に係る問題を解決するための構成を説明する。例えば、不感領域に光を反射するミラー等の反射部材や光を屈折させる屈折部材を配置することで、不感領域に届く光をセンサ102の受光領域に向かうように、光の方向を調整することができる。当該構成によれば、不感領域に光が届かないようにできるので、不感領域に係る問題が解決される。あるいは、日照計10を駆動装置等によって偏心駆動可能に構成することで、不感領域に光が届かないように日照計10を移動すれば、不感領域に係る問題を解決し得る。あるいは、不感領域に光が届いている場合のセンサ102の出力に応じて、不感領域の影響を小さくするように演算を行うことで、不感領域に係る問題を解決し得る。
【0090】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0091】
10…日照計、101…レンズ、102…センサ、103…筐体、104,104A…判定回路、201,201A…記憶回路、202…信号処理回路、203,203A…算出回路、R1,R2,R3,R4…検出領域、1601…拡散板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16