(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】非地上系ネットワークに対するドップラー補償
(51)【国際特許分類】
H04B 7/005 20060101AFI20241212BHJP
H04B 1/40 20150101ALI20241212BHJP
H04B 7/185 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
H04B7/005
H04B1/40
H04B7/185
(21)【出願番号】P 2021565008
(86)(22)【出願日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 US2020030212
(87)【国際公開番号】W WO2020223201
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-04-14
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521478407
【氏名又は名称】ディッシュ ワイヤレス エル.エル.シー.
【氏名又は名称原語表記】DISH WIRELESS L.L.C.
【住所又は居所原語表記】9601 South Meridian Blvd., Englewood, Colorado 80112 USA
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】アラスティ メディ
(72)【発明者】
【氏名】ケヌモル シッダールタ
(72)【発明者】
【氏名】ソロンド マリアム
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-503935(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0241464(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0010239(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109525526(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/005
H04B 1/40
H04B 1/04
H04B 7/185
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非地上系直交周波数分割多重(OFDM)ネットワーク上のドップラーシフトを補償するための方法であって、
ユーザ装置(UE)インスタンスによって、前記非地上系OFDMネットワークの衛星から受信したダウンリンクOFDMシンボルの周波数を測定することと、
前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星から受信した前記ダウンリンクOFDMシンボルの期待されるダウンリンク周波数と測定された前記周波数との間の周波数シフトを判定することと、
前記UEインスタンスによって、前記UEインスタンスの絶対位置を判定することと、
前記UEインスタンスによって、前記UEインスタンスと前記非地上系OFDMネットワークの
前記衛星との間の角度を判定することと、
前記UEインスタンスによって、前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星に関する前記UEインスタンスの相対速度を判定することと、
前記UEインスタンスによって、公称アップリンクキャリア周波数、前記相対速度、及び前記角度に基づいて周波数デルタを判定することと、
前記UEインスタンスによって、前記周波数デルタを使用して、アップリンクOFDMシンボルが前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星へ送信される送信周波数を調整することと、
前記UEインスタンスによって、調整された前記送信周波数で前記アップリンクOFDMシンボルを送信することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星に関する前記UEインスタンスの前記相対速度を判定することは、
グローバルナビゲーション衛星システム(GNSS)測定値を使用して、地球に関する前記UEインスタンスの速度を判定すること
を含む、請求項1に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するための方法。
【請求項3】
前記衛星は地球低軌道(LEO)又は地球中軌道(MEO)にある、請求項2に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するための方法。
【請求項4】
前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星に関する前記UEインスタンスの前記相対速度を判定することは、
前記衛星の軌道及び軌道速度を指し示すデータにアクセスすること
を含む、請求項3に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するための方法。
【請求項5】
前記衛星は静止軌道にある、請求項1に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するための方法。
【請求項6】
前記アップリンクOFDMシンボルが前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星へ送信される前記送信周波数を調整することは、前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星から受信した前記ダウンリンクOFDMシンボルの期待される前記ダウンリンク周波数と測定された前記周波数との間の判定された前記周波数シフトに更に基づく、請求項
1に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するための方法。
【請求項7】
前記UEインスタンスは、5G New Radio(NR)無線アクセス技術(RAT)を使用して前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星と通信する、請求項1に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するための方法。
【請求項8】
前記UEインスタンスはスマートフォンである、請求項
7に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するための方法。
【請求項9】
非地上系直交周波数分割多重(OFDM)ネットワーク上のドップラーシフトを補償するためのシステムであって、
前記非地上系OFDMネットワークの一部である衛星と、
ユーザ装置(UE)インスタンスであって、
送信機と、
受信機と、
1つ以上のプロセッサを含む処理システムであって、
前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星から受信したダウンリンクOFDMシンボルの周波数を測定することと、
前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星から受信した前記ダウンリンクOFDMシンボルの期待されるダウンリンク周波数と測定された前記周波数との間の周波数シフトを判定することと、
前記UEインスタンスの絶対位置を判定することと、
前記UEインスタンスと前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星との間の角度を判定することと、
前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星に関する前記UEインスタンスの相対速度を判定することと、
公称アップリンクキャリア周波数、前記相対速度、及び前記角度に基づいて周波数デルタを判定することと、
前記周波数デルタを使用して、アップリンクOFDMシンボルが前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星へ送信される送信周波数を調整することと、
前記アップリンクOFDMシンボルが、調整された前記送信周波数で前記衛星へ送信されるようにさせることと
をするように構成された、前記処理システムと
を含む前記UEインスタンスと
を含む、システム。
【請求項10】
前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星に関する前記UEインスタンスの前記相対速度を判定するように構成されている前記UEインスタンスの前記処理システムは、
グローバルナビゲーション衛星システム(GNSS)測定値を使用して、地球に関する前記UEインスタンスの速度を判定すること
をするように構成された前記処理システムを含む、請求項
9に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するためのシステム。
【請求項11】
前記衛星は、地球低軌道(LEO)又は地球中軌道(MEO)にある、請求項
10に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するためのシステム。
【請求項12】
前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星に関する前記UEインスタンスの前記相対速度を判定するように構成された前記UEインスタンスの前記処理システムは、
前記衛星の軌道及び軌道速度を指し示すデータにアクセスすること
をするように構成されている前記UEインスタンスの前記処理システムを含む、請求項
11に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するためのシステム。
【請求項13】
前記衛星は静止軌道にある、請求項
9に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するためのシステム。
【請求項14】
前記アップリンクOFDMシンボルが前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星へ送信される前記送信周波数を調整するように構成されている前記UEインスタンスの前記処理システムは、前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星から受信した前記ダウンリンクOFDMシンボルの期待される前記ダウンリンク周波数と測定された前記周波数との間の判定された前記周波数シフトに更に基づく、請求項
9に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するためのシステム。
【請求項15】
前記UEインスタンスは、5G New Radio(NR)無線アクセス技術(RAT)を使用して前記非地上系OFDMネットワークの前記衛星と通信する、請求項
9に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するためのシステム。
【請求項16】
前記UEインスタンスはスマートフォンである、請求項
15に記載の非地上系OFDMネットワーク上のドップラーシフトを補償するためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[クロスリファレンス]
この出願は、2019年5月2日に出願の“DOPPLER COMPENSATION FOR A NON-TERRESTRIAL NETWORK”と題された米国特許出願第16/401,528号の利益及び優先権を主張し、それは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
電磁信号に導かれるドップラーシフトの量は、式1により定義され得る。
【数1】
【0003】
式1において、周波数の変化(ΔF)は、公称キャリア周波数(F0)に、電磁信号を相互に向かって又は離れて送受信する物体の相対速度成分を乗算し、物体間の角度のコサインを光速で除算したものを乗算したものに等しい。キャリア周波数が高いほど、ドップラーシフトにより引き起こされるであろう周波数の変化は大きくなる。また、速度が大きいほど、周波数の変化は大きくなる。
【0004】
より低い周波数で、携帯電話等のユーザ装置のインスタンスが固定基地局と通信している場合に導かれるドップラーシフトの量は比較的小さく、周波数に有意な影響を与えないことがある。しかしながら、より高い周波数で、UEが(例えば、高速列車又は飛行機上で)高速で移動している状況では、ドップラーシフトの量はもはや無視できなくなり得る。
【発明の概要】
【0005】
直交周波数分割多重(OFDM)ネットワーク等の非地上系ネットワーク上のドップラーシフトを補償するための様々な配置が本明細書に提示される。ユーザ装置(UE)インスタンスは、UEインスタンスの絶対位置を判定し得る。UEインスタンスと非地上系OFDMネットワークの衛星との間の角度が判定され得る。非地上系OFDMネットワークの衛星に関してUEインスタンスの相対速度が判定され得る。周波数デルタは、公称アップリンクキャリア周波数、相対速度、及び角度に基づいて判定され得る。周波数デルタを使用して、アップリンクOFDMシンボルが非地上系OFDMネットワークの衛星へ送信される送信周波数が調整され得る。UEインスタンスは、調整された送信周波数でアップリンクOFDMシンボルを送信し得る。
【0006】
そうした配置の実施形態は、以下の機構の内の1つ以上を含み得、非地上系OFDMネットワークの衛星に関するUEインスタンスの相対速度を判定することは、グローバルナビゲーション衛星システム(GNSS)測定値を使用して地球に関するUEインスタンスの速度を判定することを含み得る。衛星は、地球低軌道(LEO)又は地球中軌道(MEO)にあり得る。非地上系OFDMネットワークの衛星に関するUEインスタンスの相対速度を判定することは、衛星の軌道及び軌道速度を指し示すデータにアクセスすることを含み得る。衛星は静止軌道にあり得る。非地上系OFDMネットワークの衛星から受信したダウンリンクOFDMシンボルの周波数が測定され得る。非地上系OFDMネットワークの衛星から受信したダウンリンクOFDMシンボルの期待されるダウンリンク周波数と測定された周波数との間の周波数シフトが判定され得る。アップリンクOFDMシンボルが非地上系OFDMネットワークの衛星へ送信される送信周波数を調整することは、非地上系OFDMネットワークの衛星から受信したダウンリンクOFDMシンボルの期待されるダウンリンク周波数と測定された周波数との間の判定された周波数シフトに更に基づき得る。UEインスタンスは、5G New Radio(NR)無線アクセス技術(RAT)を使用して、非地上系OFDMネットワークの衛星と通信し得る。UEインスタンスはスマートフォンであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
以下の図を参照することによって、様々な実施形態の性質及び利点の更なる理解が実現され得る。添付の図では、同様のコンポーネント又は機構は同じ参照ラベルを有し得る。更に、同じタイプの様々なコンポーネントは、参照ラベルに続いてダッシュと、同様のコンポーネント間を区別する第2のラベルを付すことによって区別され得る。明細書で第1の参照ラベルのみが使用されている場合、説明は、第2の参照ラベルに関係なく、同じ第1の参照ラベルを有する同様のコンポーネントの内の何れか1つに適用可能である。
【0008】
【
図1】非地上系ネットワークの衛星に対してUEのインスタンスが移動する実施形態を説明する。
【
図2】ドップラーシフトを補償するために送信周波数を変更するUEのインスタンスの実施形態を説明する。
【
図3】ドップラーシフトを補償するためのUEのインスタンスのための方法の実施形態を説明する。
【
図4】ダウンリンク信号で測定されたドップラーシフトの量に基づいてドップラーシフトを補償するためのUEのインスタンスのための方法の別の実施形態を説明する。
【
図5】ダウンリンク信号で測定されたドップラーシフトの量と、計算された速度、位置、及び角度に基づいた周波数デルタとに基づいてドップラーシフトを補償するためのUEインスタンスのための方法の実施形態を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
直交周波数分割多重(OFDM)は、サブキャリア間にガードバンドが存在することなく、サブキャリア周波数上に狭帯域チャネルが存在することを可能にするデジタル信号変調の方式である。OFDM信号変調が適切に機能するためには、サブキャリア周波数間の干渉とクロストークとを低減するために、デバイスが、それらに割り当てられたサブキャリア周波数上で正確に送信することが重要である。低周波数において、相互に通信するデバイスが静止している、又は凡そ静止している場合には、そうした干渉とクロストークとを回避するには、ドップラー効果を考慮する必要がないことがある。しかしながら、周波数及び相対速度が増加すると、ドップラー効果は、周波数上に著しい影響を与え得る。
【0010】
非地上系ネットワーク(NTN)では、ユーザ装置(UE)インスタンスと衛星との間で通信が発生し得る。衛星が静止軌道にある場合、衛星は静止しているものとして効果的に取り扱われ得る。しかしながら、UEは可能性として高速で移動していることがある。実例として、UEは、高速列車又は飛行機に一時的に設置され得、又は恒久的に備え付けられ得る。実例として、乗客がインターネット及びその他のネットワークベースのサービスにアクセスし得るように、UEは、乗客にWiFiを提供するように使用され得る。衛星が非静止軌道(例えば、LEO又はMEO)にある場合、地球の周りの衛星の軌道に起因して、UEと衛星との間の相対速度成分は著しく増加し得る。簡単な例として、式1を参照すると、30GHzでLEOでの衛星の軌道は、720kHzのドップラーシフトの一因となり得る。
【0011】
UEインスタンスは、グローバルナビゲーション衛星システム(GNSS)を使用する等して、その位置及び速度を判定することが可能であり得る。UEは更に、衛星の位置及び軌道を指し示すデータへのアクセスを有し得る。UEは、UEと衛星との間の角度を判定することと、地球の表面に沿って衛星に向かう、又は衛星から離れる相対速度成分を判定することが可能であり得る。UEは、ドップラー効果によって引き起こされるであろう周波数シフトの量を計算することがその後可能であり得る。UEは、ドップラー効果を補償するために、OFDMシンボルの送信等のためのそのアップリンク送信周波数をその後調整し得る。
【0012】
追加的又は代替的に、UEインスタンスは、衛星からのダウンリンク信号の受信周波数を期待周波数と比較することが可能であり得る。周波数の差は、ドップラー効果に起因し得る。周波数のこの変化を使用して、UEは、ドップラー効果がアップリンク送信に影響を与えるであろう周波数の変化を計算することが可能であり得、それは、異なる周波数上で発生し得る。周波数のこの変化は、位置、速度、及び角度に基づいて計算された周波数の変化と組み合わせられ(例えば、平均化され)得、又はこの計算の代わりに使用され得る。
【0013】
図1は、非地上系ネットワークの衛星120に対してUEインスタンス110が移動するシステム100の実施形態を説明する。非地上系ネットワークはOFDMを使用し得、UEインスタンスとの双方向通信を可能にし得る。幾つかの実施形態では、非地上系ネットワークは、5G NR(New Radio)ネットワークであり得る。様々な実施形態において、衛星120は、静止軌道にあり得、又はLEO若しくはMEOにあり得る。UEインスタンス110(110-1、110-2)は、衛星120に対して地球101の表面に凡そ沿って様々な方向に移動し得る(2つのUEインスタンス110が説明されているが、UEのこの数は、例示のみを目的としている。実世界の実装では、遥かに多くの数のUEが衛星120と通信していることがある)。UEインスタンス110は、スマートフォン、携帯電話、タブレットコンピュータ、又はNTNの一部である衛星と通信する他のコンピュータ化されたデバイスであり得る。幾つかの実施形態では、UEインスタンスは、複数の他のユーザにネットワークアクセスを提供するために使用され得る。実例として、列車又は飛行機等の大量輸送機関は、多数の人々に対してWiFi又は別の方式のネットワークアクセスを可能にするインストールされたUEを有し得る。そうした通信は、5G New Radio(NR)無線アクセス技術(RAT)を使用して実施され得る。衛星120が静止軌道にある一実施形態では、衛星120は静止しているものとして取り扱われ得る。そうした実施形態では、アップリンク送信(すなわち、UEのインスタンスから衛星120へのデータ送信)におけるドップラーシフトは、特定のUEインスタンスの移動に完全に起因し得る。例えば、UEインスタンス110-1が600km/hrで西へ移動している場合、それは、100km/hrで東へ移動しているUEインスタンス110-2と比較して、アップリンク通信で著しい量のドップラーシフトをもたらし得る。
【0014】
UEインスタンス110の各々は、その絶対位置を判定可能であり得る。実例として、グローバルナビゲーション衛星システム(GNSS)モジュールが各UEインスタンスに搭載され得る。そうしたGNSSモジュールは、全地球測位システム(GPS)、GLONASS、Galileo、Beidou、及び/又は他の方式の測位システムを使用し得る。各UEインスタンスは、1)衛星120の位置を指し示すデータへのアクセスを有し得、2)GNSSモジュールを使用してその絶対位置を判定することが可能であり得、3)複数のGNSS測定値を使用する等して(地球の表面に対する)その対地速度を判定することが可能であり得る。この情報を使用して、各UEインスタンスは、1)地球の表面に沿って衛星に向かう速度又は衛星から離れる速度を指し示す相対速度成分、及び2)角度131を判定し得る。角度131は、アップリンク通信経路130と凡そ地球101の表面(又は衛星120の真下の地球101の表面上にあるポイント135への方向)との間の差を表す。角度131は式1の一部として使用され得る。実例として、UEインスタンス110-1は、UE110-2(距離142)よりも地球101の表面に沿って衛星120からより長い距離(距離132)を変位するので、UEインスタンス110-1の移動は、UEインスタンス110-2の移動よりもドップラーシフトに大きな影響を与え得る。
【0015】
実施形態の第1のセットでは、衛星120は静止軌道にある。したがって、各UEインスタンスは、UEインスタンスの絶対位置、地球の表面に沿って衛星に向かう、又は衛星から離れる相対速度成分、及び衛星の位置に基づいて周波数シフトの量を計算し得る。実施形態の第2のセットでは、衛星120は、LEO又はMEO軌道にある。そうした実施形態では、地球101の周りの衛星の軌道がアップリンク送信に影響を与えるであろうドップラーシフトの量を判定するために、衛星120の軌道及び速度が考慮される必要がある。実例として、UEインスタンス110-1の速度111が地球101の表面に沿って衛星120から直接離れ、衛星121が速度121の反対方向に移動している場合、(速度111とは反対方向で同じ速さであり得る)速度112で進み得るUEインスタンス110-2からのアップリンク送信よりもアップリンク送信でのドップラーシフトが著しく大きくなり得る。速度112は衛星120の速度121と同じ方向にあるので、速度はドップラー効果を部分的に相殺し得る。UEインスタンス110-1は、ポイント135に向かう、又はポイント135から離れる速度成分を判定し得る。
【0016】
図2は、ドップラーシフトを補償するために送信周波数を変更するUEのインスタンスの実施形態を説明する。説明するUEインスタンスは、
図1のUEインスタンス110-1である。UEの他のインスタンスは、同じ又は同様のコンポーネントを含み得る。UEインスタンス110-1は、処理システム210、衛星軌道データ215、GNSS受信機220、周波数コントローラ230、受信機240、送信機250、及びドップラーシフトアナライザ260を含み得る。処理システム210は、1つ以上のプロセッサを含み得る。処理システム210は、1つ以上の専用又は汎用プロセッサを含み得る。そうした専用プロセッサは、本明細書に詳述される機能を実施するように特別に設計されたプロセッサを含み得る。そうした専用プロセッサは、本明細書に詳述される機能を実施するように物理的及び電気的に構成された汎用コンポーネントであるASIC又はFPGAであり得る。そうした汎用プロセッサは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)、又はソリッドステートドライブ(SSD)等の1つ以上の非一時的プロセッサ可読媒体を使用して格納された専用ソフトウェアを実行し得る。
【0017】
処理システム210は、地球101に対する絶対位置測定値をGNSS受信機220から受信し得る。絶対位置測定値に基づいて、処理システム210は、地球の表面に対するUEのインスタンスの(速さ及び方向を指し示し得る)の速度を判定し得る。処理システム210は、衛星軌道データ215を格納し得る非一時的プロセッサ可読媒体へのアクセスを有し得る。衛星軌道データ215は、静止衛星の位置を格納し得る。衛星軌道データ215は、アップリンク送信が送信される衛星の現在の位置及び速度を処理システム210が計算することを可能にするLEO及び/又はMEO衛星に対する軌道情報を格納し得る。処理システム210は、UEインスタンス110-1と、アップリンク送信が送信される衛星との移動によって引き起こされるドップラーシフトの量を計算するために式1を使用し得る。周波数が調整される量(周波数デルタ)又は修正されたキャリア周波数は、処理システム210によって周波数コントローラ230へ出力され得る。周波数コントローラ230は、OFDMシンボル等のアップリンク送信が送信機250により送信される周波数を制御するように構成され得る。
【0018】
ドップラーシフトアナライザ260は、受信機240を介して衛星からダウンリンク送信を受信し得る。受信機240は、特定の周波数上でダウンリンク送信を受信することを期待し得る。しかしながら、衛星及び/又はUEインスタンス110-1の移動によって引き起こされるドップラーシフトに起因して、ダウンリンク送信は、異なる周波数上で受信され得る。ドップラーシフトアナライザ260は、ダウンリンク送信が受信される期待周波数とダウンリンク送信が受信された実際の周波数との間の周波数の差(又は周波数デルタ)を判定し得る。
【0019】
処理システム210は、計算されたドップラーシフトに加えて、又はその代わりに、ドップラーシフトアナライザ260によって観測された周波数デルタを使用し得る。実例として、幾つかの実施形態では、ドップラーシフトアナライザ260によって判定された周波数の変化は、処理システム210によって、計算された周波数の変化と平均化され得る。他の実施形態では、処理システム210は、ドップラーシフトアナライザ260から受信した周波数の変化を使用することと、観測された条件に基づいて計算された周波数の変化を使用することとの間で選択し得る。UEインスタンス110-1によって送信されたアップリンクデータがドップラーシフトをどの程度よく補償しているかを指し示すフィードバックが衛星から受信され得る。アップリンク送信が周波数補正に十分な誤差を有する場合、処理システム210は、ドップラーシフトアナライザ260によって判定された周波数の変化と、計算された周波数の変化とを使用してドップラーシフトを補償する方法を切り替え得、又は調整し得る。
【0020】
ダウンリンク通信上のドップラーシフトは、アップリンク送信上のドップラーシフトよりも干渉を少なくさせる傾向があり得る。ダウンリンク送信の全ては同じソース(すなわち、衛星)から発信されるので、各UEインスタンスは、周波数領域内でシフトされた全てのダウンリンク送信を観測するであろう。全てのダウンリンク送信は周波数領域内でシフトされるので、そうしたダウンリンク送信間の干渉は殆ど又は全く発生しない。
【0021】
図3は、ドップラーシフトを補償するためのUEのインスタンスのための方法300の実施形態を説明する。方法300は、UEインスタンス110-1等のUEインスタンスによって実施され得る。UEインスタンスは、
図2に関連して詳述されたようなコンポーネントを含み得る。ブロック305において、UEインスタンスは、地球に関するその絶対位置を判定し得る。この絶対位置は、GNSSコンポーネントを使用して判定され得る。
【0022】
ブロック310において、UEインスタンスが通信しようとしている、又は既に通信している衛星に関するUEインスタンスの相対速度成分が判定又は計算され得る。相対速度成分は、衛星の位置の真下にある地球上のポイントに向かう速度、又は地球上のポイントから離れる速度を表し得る。衛星が静止軌道を有する場合、衛星は静止しているものとして取り扱われ得る。衛星がLEO又はMEO軌道にある場合、相対速度成分を判定するために、UEインスタンスに向かう、又はUEインスタンスから離れる衛星の相対速度成分は、UEの速度成分に加算され得(反対方向の場合)、又はUEの速度成分から減算され得る(同じ方向の場合)。
【0023】
ブロック315において、UEインスタンスと衛星との間の角度が判定され得る。角度は、衛星への直接経路(例えば、アップリンク通信経路130)と、衛星の真下の地球の表面上のポイント(例えば、
図1のポイント135)との間であり得る。角度が小さいほど、衛星により受信されるようなアップリンク送信上のドップラーシフトの相対速度成分の影響は大きくなる。角度を判定するために、衛星の位置がUEインスタンスによって必要とされ得る。UEインスタンスは、ローカルに格納された衛星軌道データにアクセスし得、又はネットワークを介する等してリモートソースから、格納された衛星データにアクセスし得る。
【0024】
ブロック320において、式1を使用してUEインスタンスによって周波数デルタが計算され得る。式1は、UEインスタンスによって計算され得、周波数デルタを判定するために、衛星及びUEが相互に向かって又は相互に離れて移動する相対速度成分と、ブロック315において計算された角度とを使用し得る。
【0025】
ブロック325において、OFDMシンボル等のアップリンクデータ送信が送信される送信周波数は、周波数デルタを使用して変更され得る。周波数デルタは、送信周波数を増加させるため、又は送信周波数を減少させるために使用され得る。UEインスタンス及び衛星が相互に離れて移動していることを相対速度成分が指し示す場合、送信周波数は増加させられ得、UEインスタンス及び衛星が相互に向かって移動していることを相対速度成分が指し示す場合、送信周波数は減少させられ得る。
【0026】
ブロック330において、アップリンクOFDMシンボルは、調整された送信周波数を使用して送信され得る。計算された周波数デルタを使用して周波数が調整されていることによって、OFDMシンボルが送信されたサブキャリアが衛星によって受信される場合に、UEの他のインスタンスによる他のサブキャリア送信との干渉が殆ど又は全く発生しないようにドップラーシフトは補償され得る。したがって、衛星は、公称サブキャリア周波数で(知覚される何れのドップラーシフトなしに)アップリンク送信を効果的に受信し得る。
【0027】
図4は、ダウンリンク信号で測定されたドップラーシフトの量に基づいてドップラーシフトを補償するためのUEのインスタンスのための方法の別の実施形態を説明する。方法400は、UEインスタンス110-1等のUEインスタンスによって実施され得る。UEインスタンスは、
図2に関連して詳述されたようなコンポーネントを含み得る。方法400は、方法300の代わりに、又は方法300に加えて実施され得る。ブロック401において、ダウンリンク信号が衛星から受信され得る。ブロック405において、ダウンリンク信号の受信周波数がUEインスタンスによって判定され得る。ブロック410において、UEインスタンスは、ダウンリンク信号を受信すると期待した周波数を判定し得る。実例として、ダウンリンクメッセージは、データが送信された周波数を指し示すデータを含み得、又はUEインスタンスは、ダウンリンクデータが衛星により送信される周波数を指し示す格納されたデータを有し得る。ブロック415において、期待周波数と受信周波数との間の周波数デルタがUEインスタンスによって計算され得る。
【0028】
式1と同等の式2を使用して、ブロック415において判定された周波数デルタと公称キャリア周波数とを使用して、
【数2】
の値が判定され得る。
【数3】
【0029】
式2から計算された
【数4】
の値を使用して、ブロック420においてアップリンク送信のドップラーシフトを補償するための周波数デルタを判定するために、式1は、アップリンクOFDMシンボル送信に対する公称キャリア周波数を使用してその後再評価され得る。
【数5】
の値は実際のダウンリンク送信に基づくので、該値は、判定された相対速度成分と判定された角度とに基づいてUEインスタンスによって計算される場合よりも正確であり得る。更に、そうした実施形態では、UEインスタンスは、それ自体の速度又は絶対位置を判定する必要がなくてもよい。
【0030】
ブロック425において、OFDMシンボル等のアップリンクデータ送信が送信される送信周波数は、ブロック420において計算された周波数デルタを使用して変更され得る。周波数デルタは、送信周波数を増加させるため、又は送信周波数を減少させるために使用され得る。UEインスタンス及び衛星が相互に離れて移動していることを相対速度成分が指し示す場合、送信周波数は増加させられ得、UEインスタンス及び衛星が相互に向かって移動していることを相対速度成分が指し示す場合、送信周波数は減少させられ得る。ブロック425において、OFDMシンボル等のアップリンク送信は、調整された送信周波数を使用して送信され得る。ダウンリンク送信の測定されたドップラーシフトに基づいて計算された周波数デルタを使用して周波数が調整されていることによって、UEの他のインスタンスによる他のサブキャリア送信との干渉が殆ど又は全く発生しないようにドップラーシフトは補償され得る。
【0031】
図5は、ダウンリンク信号で測定されたドップラーシフトの量と、計算された速度、位置、及び角度に基づいた周波数デルタとに基づいてドップラーシフトを補償するためのUEインスタンスのための方法の実施形態を説明する。ブロック505において、UEインスタンスは、地球に関するその絶対位置を判定し得る。この絶対位置は、GNSSコンポーネントを使用して判定され得る。
【0032】
ブロック510において、UEインスタンスが通信しようとしている、又は既に通信している衛星に関するUEインスタンスの相対速度成分が判定又は計算され得る。相対速度成分は、衛星の位置の真下にある地球上のポイントに向かう速度、又は該ポイントから離れる速度を表し得る。衛星が静止軌道を有する場合、衛星は静止しているものとして取り扱われ得る。衛星がLEO又はMEO軌道にある場合、相対速度成分を判定するために、UEインスタンスに向かう、又はUEインスタンスから離れる衛星の相対速度成分は、UEの速度成分に加算され得(反対方向の場合)、又はUEの速度成分から減算され得る(同じ方向の場合)。
【0033】
ブロック515において、UEインスタンスと衛星との間の角度が判定され得る。角度は、衛星への直接経路(例えば、アップリンク通信経路130)と、衛星の真下の地球の表面上のポイント(例えば、
図1のポイント135)との間であり得る。角度が小さいほど、衛星により受信されるようなアップリンク送信上のドップラーシフトの相対速度成分の影響は大きくなる。角度を判定するために、衛星の位置がUEインスタンスによって必要とされることがある。UEインスタンスは、ローカルに格納された衛星軌道データにアクセスし得、又はネットワークを介する等のリモートソースから、格納された衛星データにアクセスし得る。
【0034】
ブロック520において、式1を使用してUEインスタンスによって第1の周波数デルタが計算され得る。式1は、UEインスタンスによって計算され得、周波数デルタを判定するために、衛星及びUEが相互に向かって移動する、又は相互に離れて移動する相対速度成分と、ブロック515において計算された角度とを使用し得る。
【0035】
ブロック525において、ダウンリンク信号が衛星から受信され得る。ブロック530において、ダウンリンク信号の受信周波数がUEインスタンスによって判定され得る。ブロック535において、UEインスタンスは、ダウンリンク信号を受信すると期待した周波数を判定し得る。実例として、ダウンリンクメッセージは、データが送信された周波数を指し示すデータを含み得、又はUEインスタンスは、ダウンリンクデータが衛星により送信される周波数を指し示す格納されたデータを有し得る。ブロック540において、期待周波数と受信周波数との間のダウンリンク周波数デルタがUEインスタンスによって計算され得る。
【0036】
ブロック545において、アップリンク送信のドップラーシフトを補償するための第2の周波数デルタを判定するために、アップリンクOFDMシンボル送信に対する公称キャリア周波数に対して式1を計算するために、方法400に関連して詳述したような式2を使用して、
【数6】
の値が使用され得る。
【0037】
ブロック550において、第1の周波数デルタ又は第2の周波数デルタの何れかが、(例えば、OFDMシンボルの)アップリンク送信周波数を調整するために使用するために選択される。幾つかの実施形態では、第1の周波数デルタ及び第2の周波数デルタは、共に平均化され、さもなければ組み合わされる。幾つかの実施形態では、重み付けが使用される。実例として、UEインスタンスからのアップリンク送信の周波数の誤差の量を指し示すフィードバックが衛星から時折受信され得る。フィードバックデータに基づいて、第2の周波数デルタと比較した第1の周波数デルタの重み付けが調整され得る。他の実施形態では、フィードバックデータは、計算された第1の周波数デルタ又は計算された第2の周波数デルタの何れがアップリンク送信を調整するために使用されるべきかを指し示し得る。
【0038】
ブロック555において、OFDMシンボル等のアップリンクデータ送信が送信される送信周波数は、ブロック550において組み合わされた周波数デルタを使用して変更され得る。周波数デルタは、送信周波数を増加させるため、又は送信周波数を減少させるために使用され得る。UEインスタンス及び衛星が相互に離れて移動していることを相対速度成分が指し示す場合、送信周波数は増加させられ得、UEインスタンス及び衛星が相互に向かって移動していることを相対速度成分が指し示す場合、送信周波数は減少させられ得る。ブロック560において、OFDMシンボル等のアップリンク送信は、調整された送信周波数を使用して送信され得る。ダウンリンク送信の測定されたドップラーシフトに基づいて計算された周波数デルタを使用して周波数が調整されていることによって、UEの他のインスタンスによる他のサブキャリア送信との干渉が殆ど又は全く発生しないようにドップラーシフトは補償され得る。
【0039】
上で論じた方法、システム、及びデバイスは例示である。必要に応じて、様々な構成が様々な手順又はコンポーネントを省略、置換、又は追加し得る。実例として、代替的構成では、方法は、説明されたものとは異なる順序で実施され得、及び/又は様々な段階が追加、省略、及び/又は組み合わされ得る。また、ある一定の構成に関して説明した機構は、他の様々な構成では組み合わされ得る。構成の異なる態様及び要素は、同様の方法で組み合わされ得る。また、技術は進化しているため、要素の多くは例示であり、開示又は請求項の範囲を限定しない。
【0040】
(実装を含む)例示的構成の完全な理解を提供するために、具体的な詳細が説明に与えられている。しかしながら、構成はこれらの具体的な詳細なしに実践され得る。例えば、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造、及び技法は、構成を不明瞭にすることを避けるために、不必要な詳細なしに示されている。この説明は、例示的構成のみを提供し、請求項の範囲、適用可能性、又は構成を限定しない。むしろ、構成の前述の説明は、説明した技術を実装するための有効な説明を当業者に提供するであろう。開示の精神又は範囲から逸脱することなく、要素の機能及び配置に様々な変更がなされ得る。
【0041】
また、構成は、フロー図又はブロック図として描写されたプロセスとして説明され得る。各々は、動作を順次プロセスとして説明し得るが、動作の多くは並行して又は同時に実施され得る。また、動作の順序は再配置され得る。プロセスは、図に含まれていない追加のステップを有し得る。更に、方法の例は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、又はそれらの任意の組み合わせにより実装され得る。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、又はマイクロコードで実装される場合、必要なタスクを実施するためのプログラムコード又はコードセグメントは、ストレージ媒体等の非一時的コンピュータ可読媒体内に格納され得る。プロセッサは、説明されるタスクを実施し得る。
【0042】
幾つかの例示的構成を説明したが、開示の精神から逸脱することなく、様々な修正物、代替構築物、及び均等物が使用され得る。例えば、上記の要素は、より大きなシステムのコンポーネントであり得、他の規則が、発明の適用に優先され得るか、さもなければ発明の適用を修正し得る。また、上記の要素が考慮される前、間、又は後に、幾つかのステップが着手され得る。