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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ディスクバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/08 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
F16K3/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020031074
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021134845
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-09-23
【審判番号】
【審判請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】福澤 覚
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2014/081037(JP,A1)
【文献】国際公開第2007/129679(WO,A1)
【文献】特開2001-152515(JP,A)
【文献】特開2016-37911(JP,A)
【文献】特開平11-199774(JP,A)
【文献】特開平9-309037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路や流量を切り換えるディスクバルブ装置に使用され、相手側ディスクバルブと摺動する合成樹脂製のディスクバルブであって、
前記ディスクバルブの摺動面は、前記流体が導入される溝部および穴部のうち少なくともいずれかの凹部が形成された研磨面であり、
前記ディスクバルブは、前記研磨面における前記凹部の開口部周囲に、前記研磨面に対して10度~25度傾斜した傾斜部を有することで、前記開口部周囲には研磨バリの発生が防止されるため研磨後の前記傾斜部には研磨バリを有さないことを特徴とするディスクバルブ。
【請求項2】
前記研磨面における前記傾斜部の幅は、5μm~500μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載のディスクバルブ。
【請求項3】
前記ディスクバルブは樹脂組成物の成形体であり、
前記樹脂組成物はポリフェニレンサルファイド樹脂またはポリエーテルエーテルケトン樹脂をベース樹脂とすることを特徴とする請求項1または請求項2記載のディスクバルブ。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、さらにポリテトラフルオロエチレン樹脂を含むことを特徴とする請求項3記載のディスクバルブ。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、さらに球状充填剤を含むことを特徴とする請求項3または請求項4記載のディスクバルブ。
【請求項6】
前記樹脂組成物は、繊維状充填剤を含まないことを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1項記載のディスクバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体局部洗浄装置、冷媒バルブ装置などに用いられるディスクバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒バルブ装置、人体局部洗浄装置などにおいて流路や流量を切り換えるディスクバルブ装置が使用されている(特許文献1、特許文献2)。このディスクバルブ装置は弁座に対し弁体が摺動自在に配置され、弁座および弁体には流路となる溝部や穴部が形成されている。
【0003】
弁座および弁体の摺動面は流体の漏れを防止するため、および摺動トルクを小さくするため精密な研磨が施されている。弁座および弁体は、複雑な形状を容易に形成するとともに摺動トルクを低くするため、摺動性合成樹脂の射出成形体が用いられている。
【0004】
しかし、合成樹脂製の弁座および弁体の摺動面を研磨加工すると、弁座および弁体に形成された溝部や穴部に対して、その開口面積を小さくするように研磨バリが発生する。発生した研磨バリは、流量を少なくすることや、使用中に剥がれて摺動面に噛みこんだりするおそれがある。このため、研磨バリを取り除く必要がある。
【0005】
特許文献1には、研磨バリによってオリフィスの開口が狭められたり、塞がれたりしてしまわないよう、オリフィスの開口部に窪み部分を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5615993号公報
【文献】特開2011-42981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のようにオリフィスの開口部に窪み部分を設けることは、流量の低下を防ぐという面では対応可能であるが、研磨バリの発生自体を無くすことはできないため、使用中に研磨バリが剥がれるというおそれは解消されない。研磨バリが弁座と弁体の摺動面に噛み込んだ場合、摺動面に傷がついて液漏れするおそれがある。また、人体局部洗浄装置においては、剥がれた研磨バリが洗浄ノズルの先端穴を詰まらせて機能低下となることや、人体への影響も懸念される。
【0008】
このように合成樹脂製のディスクバルブを研磨すると溝部や穴部の開口部に研磨バリが発生する。そこで、研磨バリによる不具合を回避するため、ショットブラスト、バレルタンブラー、手作業によるバリ取りなどが必要になるが、それがコストアップの原因になっていた。例えば、摺動面の外周部の研磨バリはバレルタンブラーで除去可能であるが、穴部の研磨バリはブラシ通しを行わないと除去できなかった。
【0009】
本発明では、冷媒バルブ装置、人体局部洗浄装置などにおいて流路や流量を切り換えるディスクバルブ装置の合成樹脂製のディスクバルブであっても研磨バリが発生しないディスクバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のディスクバルブは、流体の流路や流量を切り換えるディスクバルブ装置に使用され、相手側ディスクバルブと摺動する合成樹脂製のディスクバルブであって、上記ディスクバルブの摺動面は、上記流体が導入される溝部および穴部のうち少なくともいずれかの凹部が形成された研磨面であり、上記ディスクバルブは、上記研磨面における上記凹部の開口部周囲に、上記研磨面に対して10度~25度傾斜した傾斜部を有することを特徴とする。
【0011】
上記研磨面における上記傾斜部の幅は、5μm~500μmの範囲であることを特徴とする。
【0012】
上記ディスクバルブは樹脂組成物の成形体であり、上記樹脂組成物はポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)またはポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)をベース樹脂とすることを特徴とする。
【0013】
上記樹脂組成物は、さらにポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE樹脂)を含むことを特徴とする。
【0014】
上記樹脂組成物は、さらに球状充填剤を含むことを特徴とする。
【0015】
上記樹脂組成物は、繊維状充填剤を含まないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のディスクバルブは、合成樹脂製のディスクバルブであって、その摺動面が、流体が導入される溝部および穴部のうち少なくともいずれかの凹部が形成された研磨面であり、その研磨面における凹部の開口部周囲に、研磨面に対して10度~25度傾斜した傾斜部を有するので、研磨バリが発生しない。そのため、使用中に研磨バリが剥がれることに起因する不具合が解消される。すなわち、研磨バリがディスクバルブと相手側ディスクバルブの摺動面に噛み込むことによる摺動面の傷付きが防止され、液漏れを防止できる。また、例えば人体局部洗浄装置に使用される場合においては、剥がれた研磨バリが洗浄ノズルの先端穴を詰まらせ機能低下となることを防止でき、さらには、人体への影響が消滅する。
【0017】
研磨面における傾斜部の幅は、5μm~500μmの範囲であるので、相手側ディスクバルブとの不必要な干渉を防止でき、その結果液漏れを防止できる。
【0018】
ディスクバルブは樹脂組成物の成形体であり、該樹脂組成物はPPS樹脂またはPEEK樹脂をベース樹脂とするので、摺動特性に優れるとともに、吸油率、吸水率が小さく、耐油性、耐水性に優れ、また、研磨加工が容易になる。
【0019】
樹脂組成物は、さらにPTFE樹脂を含むので、研磨等によって摺動特性をより向上できる。
【0020】
樹脂組成物は、さらに球状充填剤を含むので、摺動面に露出した球状充填剤が脱落し易くなり脱落痕の凹部に液体が保持されることで液体中での潤滑効果が生じ、摺動特性に一層優れる。
【0021】
樹脂組成物は、繊維状充填剤を含まないので、研磨面の表面粗さを均一にすることができ、品質が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】弁体を摺動面側から見た図である。
図2】弁座を摺動面側から見た図である。
図3】凹部における傾斜部の断面を拡大した図である。
図4】円盤状成形体の平面図である。
図5】円盤状成形体に形成された貫通孔の断面図である。
図6】人体局部洗浄装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のディスクバルブが適用された人体局部洗浄装置14について、図6を用いて説明する。人体局部洗浄装置14は、内部に流路切り換え手段としてディスクバルブ装置21を備えた筐体15と、筐体15内の流路切り換え手段を駆動する駆動装置16とを備えている。筐体15の内部に備えられる流路切り換え手段は、後述する弁体1および弁座2から構成されている。また、筐体15は、筐体15内に洗浄水を供給する洗浄水供給装置17と、洗浄水供給装置17から供給される洗浄水を人体局部へ噴出する人体局部洗浄ノズル18と、人体局部洗浄ノズル18を洗浄するノズル洗浄水吐出部19と、洗浄水が排出される排水部20とに接続されている。
【0024】
人体局部洗浄装置14は、筐体15の内部の流路切り換え手段を駆動装置16で駆動することにより、筐体15内の流路を切り換え、洗浄水供給装置17からの洗浄水を人体局部洗浄ノズル18またはノズル洗浄水吐出部19のいずれかに流通させる構成である。
【0025】
図6に示すように、ディスクバルブ装置21において、弁体1(可動ディスク)と弁座2(固定ディスク)は、各摺動面同士が摺動自在に配置される。弁体1は、その円形状の中心を回転軸として回転し、弁体1と弁座2の穴部や溝部同士が重なり合ったり、ずれたりすることで、水の流路や、流量を切り換えることができる。本発明のディスクバルブは、ディスクバルブ装置における弁体でもよく、弁座でもよい。
【0026】
本発明のディスクバルブの一例として、図1には弁体1を示し、図2には弁座2を示す。なお、以下では図2の弁座を用いて説明するが、図1の弁体とした場合も同様である。図2は、弁体と摺動する摺動面が見えるように図示されている。この摺動面は、両面研削盤などの機械的方法により平滑に研磨された研磨面3となっている。以後、摺動面を研磨面ともいう。
【0027】
図2に示すように、弁座2の摺動面(研磨面3)には、流体の流路を構成する様々な形状の溝部や穴部が形成されている。溝部は非摺動面側に貫通していない凹部であり、穴部は非摺動面側に貫通した凹部であり、以後、溝部と穴部を合わせて凹部4という。その凹部4の開口部周囲5には所定の角度の傾斜が設けられている。ここで、開口部周囲5とは、研磨面3と凹部4の内縁の境界の領域であり、研磨面3を平面視した場合における、凹部4の縁に存する1mm以内の幅の領域を意味する。
【0028】
図3には、弁座2の凹部4の開口部周囲(図示省略)について、弁座2の厚み方向の断面を拡大した図を示す。開口部周囲の傾斜部6の角度θは、摺動面(研磨面3)に対して傾斜部6がなす内角の角度を意味する。
【0029】
角度θは10度~25度であり、好ましくは15度~25度である。角度θが10度より小さいと研磨後に残る傾斜の管理が困難であり、25度より大きいと研磨バリの発生を防止する効果が得られにくい。なお、研磨後に残る傾斜部の管理が困難であるのは、研磨によって研磨面に残る傾斜部の幅wの寸法が大きく変化するため、研磨量の管理に高い精度が求められるためである。角度θは10度~25度であればよく、凹部4の全周に一定でもよく、部位によって異なるように設定してもよい。また、凹部毎に異なるように設定してもよい。
【0030】
傾斜部の研磨面3における幅wの範囲は、5μm~500μmの範囲、好ましくは5μm~300μmの範囲、さらに好ましくは5μm~100μmの範囲である。幅wは、傾斜部6を弁座2の厚み方向の断面から見た時に、深さ方向と水平方向に分けた長さのうち、水平方向長さのことであり、研磨面3を平面視した時の凹部4の内縁からの放射方向の長さである。この幅wが5μmより小さいと、傾斜の有無を目視で確認困難であり、研磨工程に時間がかかるようになる。500μmより大きいと、場合によっては液漏れの原因となり得る。幅wは、凹部4の全周に一定でもよく、部位によって異なるように設定してもよい。また、凹部毎に異なるように設定してもよい。
【0031】
上記ディスクバルブは、樹脂組成物の射出成形体であり、摺動特性を有するベース樹脂を含む。ベース樹脂としては、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、PPS樹脂、PEEK樹脂などが使用できる。特に、PPS樹脂、PEEK樹脂は吸油率、吸水率が小さく、耐油性、耐水性に優れるとともに、研磨加工が容易であるため、好ましい。上記樹脂組成物は、ベース樹脂のみ(ベース樹脂100%)で構成されてもよく、また、ベース樹脂に、以下に示す固体潤滑剤や球状充填剤などの充填剤を適宜配合してもよい。
【0032】
充填剤としては、潤滑特性を高くするため、例えば、黒鉛、二硫化モリブデン、PTFE樹脂などの固体潤滑剤を配合することが好ましい。中でもPTFE樹脂は潤滑性が優れるため好ましい。固体潤滑剤はベース樹脂100重量部に対して5~60重量部、好ましくは10~45重量部、さらに好ましくは20~30重量部配合できる。5重量部未満であると潤滑性の向上効果が得られにくく、60重量部を超えると研磨面に対し10度~25度の傾斜を形成しても研磨バリの発生を防止しにくくなる。
【0033】
また、充填剤として、球状黒鉛や、ガラスビーズなどの球状充填剤を含むことで液中での摺動特性が安定して得られる。この理由は、研磨によって球状充填剤が半球状に削られることで摺動面から脱落し易くなり、バレルタンブラー等の後処理によって、摺動面に露出した半球状の球状充填剤が脱落し、使用に際して脱落痕の凹部に液体が保持されるようになり液体中での潤滑効果が生じるためである。球状充填剤の配合量は、ベース樹脂100重量部に対して5~30重量部であり、好ましくは5~20重量部である。5重量部未満であると潤滑性の向上効果が得られにくく、30重量部を超えると耐摩耗性が低下するおそれがある。
【0034】
球状充填剤としては、ガラスビーズを用いることが好ましい。ガラスビーズの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、5μm~100μmであることが好ましく、5μm~50μmであることがより好ましい。ガラスビーズの平均粒子径は、例えば、電子顕微鏡の観察で得られる画像に対して、粒子径を測定する対象のガラスビーズを抽出して測定された粒子径から算出される数平均粒子径である。
【0035】
また、上記樹脂組成物には、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状充填剤は含まないことが好ましい。繊維状充填剤が含まれると、研磨後の表面粗さが不均一になるおそれがある。
【0036】
これらを考慮して、ディスクバルブを形成する樹脂組成物としては、PPS樹脂またはPEEK樹脂をベース樹脂とし、該ベース樹脂100重量部に対して、PTFE樹脂を20~30重量部、ガラスビーズを5~20重量部含み、かつ繊維状充填剤は含まないものが特に好ましい。さらに、ガラスビーズの平均粒子径が5μm~50μmであることが好ましい。
【0037】
本発明のディスクバルブ装置は、流体の流路や流量を切り換える合成樹脂製のディスクバルブ装置であって、互いに摺動する弁体および弁座で構成され、弁体および弁座の各摺動面は、流体が導入される溝部および穴部のうち少なくともいずれかの凹部が形成された研磨面であり、弁体および弁座は、各研磨面における凹部の開口部周囲に、研磨面に対して10度~25度傾斜した傾斜部を有する。この場合、弁体および弁座はそれぞれ、上述した本発明のディスクバルブで構成される。
【0038】
また、本発明のディスクバルブ装置において、弁体および弁座はいずれも樹脂組成物の成形体である。各樹脂組成物は同じ樹脂組成物でもよく、互いに異なる樹脂組成物であってもよい。互いに異なる樹脂組成物とは、その組成が異なるという意味であり、弁体と弁座を構成する各原料が異なることのみならず、各原料が同一で組成比が異なる場合も含む。例えば、弁体のベース樹脂をPPS樹脂として、弁座のベース樹脂をPEEK樹脂としてもよい。
【実施例
【0039】
ディスクバルブの研磨面に対する凹部の開口部周囲の傾斜の角度と、研磨バリの発生の関係性を検討するため、ディスクバルブに模した円盤状成形体を用いて、以下の試験を行った。
【0040】
試験例1
PPS樹脂100重量部に対し、PTFE樹脂25重量部、ガラスビーズ(平均粒子径20~30μm)15重量部を含む樹脂組成物を用いて、射出成形によって射出成形体(直径Φ20mm、厚さ4mm)を得た。得られた射出成形体の両面を両面研削盤によって所定量研磨した。研磨後にバレル研磨によって射出成形体の表面に付着した砥粒を除去して、円盤状成形体を得た。
【0041】
図4には得られた円盤状成形体の正面と背面それぞれの平面図を示す。ここで、後述する実施例1~4および比較例1~2の傾斜部が形成された面を正面とし、比較例3~8の傾斜部が形成された面を背面と呼ぶ。図4(a)は正面図であり、図4(b)は背面図である。
図4に示すように、円盤状成形体7の正面および背面の各表面には、Φ1.5mmの貫通孔(凹部)8~13が形成されており、貫通孔8~13の正面および背面それぞれの開口部周囲には、その表面に対して、表1に示す所定角の傾斜が形成されている。
【0042】
図5には貫通孔の断面図の一例として、比較例1の傾斜部が形成された貫通孔12の円盤状成形体7の厚み方向の断面を示す。貫通孔12の正面側には比較例1の傾斜部が形成されており、背面側には比較例5の傾斜部が形成されている。なお、研磨後の研磨面は、研磨前の表面が水平に研磨されるため、研磨の前後で傾斜の角度は変わらない。
【0043】
マイクロスコープ(倍率100倍)によって、円盤状成形体7の各傾斜部の研磨バリの有無を確認した。結果を表1に併記した。
【0044】
【表1】
【0045】
傾斜部の研磨バリの有無は、各試験数10個のうち、研磨バリの有る円盤状成形体の個数を数え、以下の基準に基づき評価した。
〇:全数研磨バリ無し
△:研磨バリ有り1~9個
×:全数研磨バリ有り
【0046】
表1のように研磨面における凹部としての貫通孔の開口部周囲に、研磨面に対して10度~25度の傾斜部を形成することで、研磨バリの発生を防止できた。
【0047】
試験例2
次に、充填剤を含まないPEEK樹脂(PEEK樹脂のみからなる樹脂組成物)を用い、試験例1と同じ金型を用いて、射出成形体を成形した。この射出成形体を試験例1と同じ両面研磨を行い、バレル研磨によって射出成形体の表面に付着した砥粒を除去した。得られた円盤状成形体をマイクロスコープ(倍率100倍)によって観察し、各傾斜部の研磨バリの有無を確認した。確認の結果、研磨バリの状態は表1と全く同じ傾向であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のディスクバルブは、合成樹脂製のディスクバルブでありながら、平面を研磨したときに生じる研磨バリが発生しないため、使用中に研磨バリが剥がれることに起因する問題点が解消され、冷媒バルブ装置、人体局部洗浄装置などのディスクバルブとして広く使用できる。
【符号の説明】
【0049】
1 弁体(ディスクバルブ)
2 弁座(ディスクバルブ)
3 研磨面
4 凹部
5 開口部周囲
6 傾斜部
7 円盤状成形体
8~13 貫通孔
14 人体局部洗浄装置
15 筐体
16 駆動装置
17 洗浄水供給装置
18 人体局部洗浄ノズル
19 洗浄水吐出部
20 排水部
21 ディスクバルブ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6