(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム及びその製造方法、並びに電磁波シールドフィルム付きプリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20241212BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20241212BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20241212BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241212BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20241212BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20241212BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H05K9/00 W
B32B7/025
B32B7/12
B32B15/08 D
C09J7/30
C09J201/00
H05K1/02 P
(21)【出願番号】P 2020081872
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2022-11-09
【審判番号】
【審判請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】片桐 航
(72)【発明者】
【氏名】門間 栞
【合議体】
【審判長】篠塚 隆
【審判官】伊藤 隆夫
【審判官】北元 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-185717(JP,A)
【文献】特開2017-041630(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002780(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 9/00
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂層、電磁波遮蔽層、及び接着剤層をこの順で積層してなる電磁波シールドフィルムであって、
前記電磁波遮蔽層が、1μm以上5μm以下の厚さを有し、銅を含む金属層であり、
前記電磁波遮蔽層の前記接着剤層側の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.04μm以上0.25μm以下であり、
前記接着剤層が、樹脂を含み、前記樹脂の重量平均分子量(Mw)は63,000以上400,000以下であり、前記樹脂の酸価は2mgKOH/g以上50mgKOH/g以下を示
し、N原子の質量比率が0.5%以上10%以下であることを特徴とする、電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記接着剤層に含まれる前記樹脂が、アミン構造、アミド構造、ウレア構造、ウレタン構造、及びイミド構造のうち少なくともいずれか1つを有する樹脂である、請求項
1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記接着剤層が、メラミン構造、トリアジン構造、リン酸構造、アルコキシシラン構造、及びメルカプト基のうち少なくともいずれか1つを有する密着性向上剤を含む、請求項1
又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記接着剤層が、2μm以上25μm以下の厚みを有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
前記絶縁樹脂層の前記電磁波遮蔽層側の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.01μm以上0.3μm以下である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項6】
前記電磁波遮蔽層が、蒸着膜である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項7】
前記電磁波遮蔽層が、圧延銅箔である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項8】
絶縁樹脂層、電磁波遮蔽層、及び接着剤層をこの順で積層してなる電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
前記電磁波遮蔽層が、1μm以上5μm以下の厚さを有し、銅を含む金属層であり、
前記電磁波遮蔽層の前記接着剤層側の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.04μm以上0.25μm以下であり、
前記接着剤層が、樹脂を含み、前記樹脂の重量平均分子量(Mw)は63,000以上400,000以下であり、前記樹脂の酸価は2mgKOH/g以上50mgKOH/g以下を示し、
第1の離型フィルムに絶縁樹脂層形成用の塗料を塗布することにより前記絶縁樹脂層を形成した後、
前記絶縁樹脂層の前記電磁波遮蔽層側にセパレートフィルムを配し、加圧及び/又は加熱によるラミネート処理を施すことにより、前記絶縁樹脂層と前記セパレートフィルムとを接着させ、
その後、前記セパレートフィルムを前記絶縁樹脂層から剥離する、電磁波シールドフィルムの製造方法。
【請求項9】
基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、
前記プリント配線板の前記プリント回路が設けられた側の面に隣接する絶縁フィルムと、
前記接着剤層が前記絶縁フィルムに隣接するように設けられた請求項1~
7のいずれか一項に記載の電磁波シールドフィルムと、
を有する、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルム及びその製造方法、並びに電磁波シールドフィルム付きプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(以下、FPCともいう)から発生する電磁波ノイズや外部からの電磁波ノイズを遮蔽するために、絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層に隣接する金属薄膜層(以下、電磁波遮蔽層ともいう)、及び導電性接着剤層から構成される導電層とからなる電磁波シールドフィルムを、絶縁フィルム(以下、カバーレイフィルムともいう)を介してフレキシブルプリント配線板の表面に設けることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
電磁波シールドフィルムの電磁波遮蔽層とFPCの伝送線路とが電気的に結合すると、電磁波シールドフィルムはFPCの伝送特性に影響を及ぼす。FPC自体の薄膜化に伴い、カバーレイフィルムが薄くなるため、FPCの伝送線路と電磁波シールドフィルムの電磁波遮蔽層との距離が短くなってきており、電気的な結合が強さを増すことで、電磁波シールドフィルムがFPCの伝送特性に与える影響はより大きくなっている。
近年、FPCに使用する電気信号が高周波に移行しており、FPC自体の伝送特性の向上が求められている。これに伴い、電磁波シールドフィルムもFPCの伝送特性を向上させる設計が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FPCの伝送特性を向上させるためには、電磁波シールドフィルムにおける電磁波遮蔽層の厚みを厚くしたり、電磁波遮蔽層のFPC側の表面を平滑にしたりして、FPCにおける伝送ロスを減少させることが有効であると考えられる。
しかし、電磁波遮蔽層の厚膜化は、電磁波シールドフィルム付きFPCの薄膜化の障害となる。さらに、電磁波遮蔽層の厚膜化により電磁波シールドフィルムの柔軟性が低下するため、FPCの段差への追従性が低下し、カバーレイフィルムに設けられた小径からの電気的な接続が難しくなる。また、電磁波遮蔽層の平滑化は、電磁波遮蔽層と接着剤層との密着性を低下させる。電磁波遮蔽層と接着剤層との密着性が低下すると、電磁波シールドフィルムの剥離や耐熱性の低下を招く。
【0006】
そこで、本発明は、FPCの伝送特性を向上させることができる電磁波シールドフィルムであって、電磁波シールドフィルムの厚膜化と、それに伴う小径接続性の低下を防止でき、さらに電磁波シールドフィルムにおける電磁波遮蔽層と接着剤層との密着性の低下を防止することにより、電磁波シールドフィルムの剥離を生じさせず、耐熱性に優れた電磁波シールドフィルムを提供することを目的とする。
つまり、本発明は、FPCの伝送特性を向上させることができ、かつ電磁波シールドフィルムの薄膜化、密着性向上、剥離防止、及び良好な耐熱性のすべてを満足できる電磁波シールドフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、電磁波シールドフィルムにおける電磁波遮蔽層を、特定の膜厚と特定の表面粗さとを有する電磁波遮蔽層とし、電磁波シールドフィルムにおける接着剤層を、特定の樹脂からなる接着剤層とすることで、これらが相まって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1]絶縁樹脂層、電磁波遮蔽層、及び接着剤層をこの順で積層してなる電磁波シールドフィルムであって、
前記電磁波遮蔽層が、1μm以上5μm以下の厚さを有し、銅を含む金属層であり、
前記電磁波遮蔽層の前記接着剤層側の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.01μm以上0.25μm以下であり、
前記接着剤層が、樹脂を含み、前記樹脂の重量平均分子量(Mw)は50,000以上400,000以下であり、前記樹脂の酸価は2mgKOH/g以上50mgKOH/g以下を示すことを特徴とする、電磁波シールドフィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、FPCの伝送特性を向上させることができ、かつ電磁波シールドフィルムの薄膜化、密着性向上、剥離防止、及び良好な耐熱性のすべてを満足できる電磁波シールドフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、電磁波シールドフィルムの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図2は、電磁波シールドフィルムの他の実施形態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、電磁波シールドフィルムの他の実施形態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、電磁波シールドフィルムの他の実施形態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の電磁波シールドフィルムの製造工程の一実施形態として、工程(A1-1)~(A1-4)の製造工程を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図1の電磁波シールドフィルムの製造工程の他の実施形態として、工程(A2-1)~(A2-2)の製造工程を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図1の電磁波シールドフィルムの製造工程の他の実施形態として、工程(A2-3)の製造工程を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図1の電磁波シールドフィルムの製造工程の他の実施形態として、工程(A2-4)の製造工程を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図1の電磁波シールドフィルムの製造工程の他の実施形態として、
図5や
図6で示す工程とは別の製造方法を用いた、工程(B1-1)~(B1-2)の製造工程を示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図1の電磁波シールドフィルムの製造工程の他の実施形態として、
図5で示す工程(A1-1)~(A1-2)の間に、工程(C1-1)~(C1-3)の製造工程を追加することを示す断面図である。
【
図11】
図11は、
図3の電磁波シールドフィルムの製造工程の一実施形態として、工程(A1-2)後に、工程(D1-1)~(D1-3)の製造工程を施すことを示す断面図である。
【
図12】
図12は、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の一実施形態を示す断面図である。
【
図13】
図13は、
図12の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造工程を示す断面図である。
【
図14】
図14は、実施例で行った小径接続性を評価するために用いた電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の構造を示す上から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電磁波シールドフィルムについて詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「等方導電性接着剤層」とは、厚さ方向及び面方向に導電性を有する導電性接着剤層を意味する。
「異方導電性接着剤層」とは、厚さ方向に導電性を有し、面方向に導電性を有しない導電性接着剤層を意味する。
「面方向に導電性を有しない導電性接着剤層」とは、表面抵抗が1×104Ω以上である導電性接着剤層を意味する。
導電性粒子の平均粒子径は、導電性粒子の顕微鏡像から30個の導電性粒子を無作為に選び、それぞれの導電性粒子について、最小径及び最大径を測定し、最小径と最大径との中央値を一粒子の粒子径とし、測定した30個の導電性粒子の粒子径を算術平均して得た値である。
フィルム(離型フィルム、絶縁フィルム等)、塗膜(絶縁樹脂層、接着剤層、導電性接着剤層等)、電磁波遮蔽層等の厚さは、顕微鏡を用いて測定対象の断面を観察し、5箇所の厚さを測定し、平均した値である。
表面抵抗は、石英ガラス上に金を蒸着して形成した、2本の薄膜金属電極(長さ10mm、幅5mm、電極間距離10mm)を用い、この電極上に被測定物を置き、被測定物上から、被測定物の10mm×20mmの領域を0.049Nの荷重で押し付け、1mA以下の測定電流で測定される電極間の抵抗である。
算術平均粗さRaは、試験片についてレーザー顕微鏡を用いて粗さ曲線を測定し、この粗さ曲線から、JIS B 0601:2013(ISO 4287:1997 Amd.1:2009)に基づいて求めた値である。
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定する。
樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して求める。
接着剤層のN原子の質量比率は、微量窒素分析装置ND―100型(三菱化学株式会社製)を使用して、JIS-K2609に従い求める。
【0012】
(電磁波シールドフィルム)
本発明の電磁波シールドフィルムは、絶縁樹脂層、電磁波遮蔽層、及び接着剤層をこの順で積層してなる。
電磁波遮蔽層は、1μm以上5μm以下の厚みを有し、銅を含む金属層である。
電磁波遮蔽層の接着剤層側の表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.01μm以上0.25μm以下である。
接着剤層が、樹脂を含み、樹脂の重量平均分子量(Mw)は50,000以上400,000以下であり、樹脂の酸価は2mgKOH/g以上50mgKOH/g以下を示す。
【0013】
図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの第1の実施形態を示す断面図であり、
図2は、本発明の電磁波シールドフィルムの第2の実施形態を示す断面図であり、
図3は、本発明の電磁波シールドフィルムの第3の実施形態を示す断面図であり、
図4は、本発明の電磁波シールドフィルムの第4の実施形態を示す断面図である。
各実施形態の電磁波シールドフィルム1は、絶縁樹脂層10と;絶縁樹脂層10に隣接する電磁波遮蔽層20と;電磁波遮蔽層20の絶縁樹脂層10とは反対側に隣接する接着剤層22と;絶縁樹脂層10の電磁波遮蔽層20とは反対側に隣接する第1の離型フィルム30と;接着剤層22の電磁波遮蔽層20とは反対側に隣接する第2の離型フィルム40とを有する。
【0014】
第1の実施形態の電磁波シールドフィルム1は、接着剤層22が異方導電性接着剤層24である例である。
第2の実施形態の電磁波シールドフィルム1は、接着剤層22が等方導電性接着剤層26である例である。
第3の実施形態の電磁波シールドフィルム1は、第1の実施形態の電磁波シールドフィルム1において、電磁波遮蔽層と接着剤層の間にさらにシランカップリング剤層80を含む例である。
第4の実施形態の電磁波シールドフィルム1は、第2の実施形態の電磁波シールドフィルム1において、電磁波遮蔽層と接着剤層の間にさらにシランカップリング剤層80を含む例である。
【0015】
<絶縁樹脂層>
絶縁樹脂層10は、電磁波シールドフィルム1をフレキシブルプリント配線板の表面に設けられた絶縁フィルムの表面に貼着し、第1の離型フィルム30を剥離した後には、電磁波遮蔽層20の保護層となる。
【0016】
絶縁樹脂層10としては、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む組成物を塗布し、半硬化または硬化させて形成された塗膜;熱硬化性樹脂と硬化剤と溶剤とを含む塗工液を塗布し、乾燥させ、半硬化または硬化させて形成された塗膜;熱可塑性樹脂と溶剤とを含む塗工液を塗布し、乾燥させて形成された塗膜;熱可塑性樹脂を含む組成物を溶融成形したフィルムからなる層等が挙げられる。絶縁樹脂層10としては、絶縁樹脂層10と電磁波遮蔽層20との接着性がさらに良好となる点から、樹脂材料(熱硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせ、または熱可塑性樹脂)と溶剤とを含む塗工液を塗布し、乾燥させ、必要に応じて半硬化または硬化させて形成された塗膜が好ましい。
【0017】
熱硬化性樹脂としては、ポリエステル、アミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、合成ゴム、紫外線硬化アクリレート樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、耐熱性に優れ、電磁波シールドフィルムをFPCに実装する際の温度で硬化できる点から、エポキシ樹脂が好ましい。
硬化剤としては、熱硬化性樹脂の種類に応じた公知の硬化剤が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、芳香族ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルホン、ポリフェニレンサルフィド、ポリフェニレンサルフィドサルホン、ポリフェニレンサルフィドケトン等が挙げられる。
【0018】
絶縁樹脂層10は、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板のプリント回路を隠蔽したり、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板に意匠性を付与したりするために、着色剤(顔料、染料等)およびフィラーのいずれか一方または両方を含んでいてもよい。
着色剤及びフィラーのいずれか一方又は両方としては、耐候性、耐熱性、隠蔽性の点から、顔料又はフィラーが好ましく、プリント回路の隠蔽性、意匠性の点から、黒色顔料、又は黒色顔料と他の顔料もしくはフィラーとの組み合わせがより好ましい。
絶縁樹脂層10は、難燃剤を含んでいてもよい。
絶縁樹脂層10は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
【0019】
絶縁樹脂層10の表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×106Ω以上が好ましい。絶縁樹脂層10の表面抵抗は、実用上の点から、1×1019Ω以下が好ましい。
絶縁樹脂層10の厚さは、0.1μm以上30μm以下が好ましく、0.5μm以上20μm以下がより好ましく、3μm以上15μm以下がさらに好ましい。絶縁樹脂層10の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、絶縁樹脂層10が保護層としての機能を十分に発揮できる。絶縁樹脂層10の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。
【0020】
絶縁樹脂層10の電磁波遮蔽層側の表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.01μm以上0.3μm以下であることが好ましい。電磁波遮蔽層20を絶縁樹脂層10上に形成させる場合、その形成方法にもよるが、表面が平滑な絶縁樹脂層10上に電磁波遮蔽層20を形成させることで、表面が平滑な電磁波遮蔽層20を得ることができるからである。
【0021】
<電磁波遮蔽層>
電磁波遮蔽層20は、銅を含む金属の薄膜からなる層である。電磁波遮蔽層20は、面方向に広がるように形成されていることから、面方向に導電性を有し、電磁波シールド層等として機能する。
【0022】
電磁波遮蔽層20としては、物理蒸着(真空蒸着、スパッタリング、イオンビーム蒸着、電子ビーム蒸着等)又は化学蒸着によって形成された蒸着膜、メッキによって形成されたメッキ膜、金属箔等が挙げられる。中でも、真空成膜法(真空蒸着法やスパッタリング法等)で形成される真空蒸着膜又はスパッタリング膜、あるいは電解メッキ法で形成されるメッキ膜が、面方向の導電性に優れる点から好ましい。簡便に形成できる点から、真空蒸着法による蒸着膜がより好ましい。また、真空蒸着法による蒸着膜は、絶縁性樹脂層との密着性にも優れている。
また、電磁波遮蔽層20が圧延銅箔である場合も、表面の平滑度及び所望の膜厚の電磁波遮蔽層が得られる点から好ましい。
【0023】
電磁波遮蔽層20を構成する金属としては、銅を含んでいれば、その他、例えば、アルミニウム、銀、金、導電性セラミックス等を含んでいても構わない。
【0024】
電磁波遮蔽層20の厚さは、1μm以上5μm以下であり、1μm以上3μm以下が好ましく、1.5μm以上3μm以下がより好ましい。電磁波遮蔽層20の厚さが1μm以上であれば、FPCの伝送特性の向上が期待できる。電磁波遮蔽層20の厚さが1.5μm以上であれば、FPCの伝送特性がさらに良好になる。電磁波遮蔽層20の厚さが5μm以下であれば、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。電磁波遮蔽層20の厚さが3μm以下であれば、電磁波シールドフィルム1の生産性、可とう性がよくなる。
【0025】
電磁波遮蔽層20の接着剤層側の表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.01μm以上0.25μm以下である。算術平均粗さ(Ra)が、0.01μm以上0.25μm以下の範囲の電磁波遮蔽層20であれば、FPCの伝送特性を向上させつつ、接着剤層との良好な密着性も担保できる。
【0026】
電磁波遮蔽層20の表面抵抗は、0.001Ω以上1Ω以下が好ましく、0.001Ω以上0.1Ω以下がより好ましい。電磁波遮蔽層20の表面抵抗が上記範囲の下限値以上であれば、電磁波遮蔽層20を十分に薄くできる。電磁波遮蔽層20の表面抵抗が上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールド層として十分に機能できる。
【0027】
<接着剤層>
接着剤層22は、電磁波シールドフィルム1を絶縁フィルム付きプリント配線板に貼り付けるための層である。
接着剤層22は、導電性を有さない単なる接着剤層であってもよく、電磁波シールドフィルム1とプリント配線板とを電気的に接続するための導電性を有する導電性接着剤層であってもよい。接着剤層22としては、電磁波遮蔽層20を電磁波シールド層として十分に機能させる点から、導電性接着剤層が好ましい。
【0028】
接着剤層22は、樹脂を含む接着剤からなる層である。
接着剤層22に含まれる樹脂は、重量平均分子量(Mw)が50,000以上400,000以下であり、酸価が2mgKOH/g以上50mgKOH/g以下を示す。このような物性の樹脂を含有する接着剤層22は、電磁波遮蔽層20と接着剤層22との良好な密着性を確保することができる。
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、50,000以上400,000以下であり、65,000以上250,000以下がより好ましい。樹脂の重量平均分子量(Mw)が上記範囲の下限値以上であれば、熱圧着時のレジンフローを抑制できる。樹脂の重量平均分子量(Mw)が上記範囲の上限値以下であれば、熱圧着時に短時間で軟化するため、熱圧着の時間を短縮できる。
ここで、樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
【0029】
樹脂の酸価は、1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下が好ましく、10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下がより好ましい。樹脂の酸価が1mgKOH/g以上であれば、接着剤層と電磁波遮蔽層との密着性が向上する。樹脂の酸価が10mgKOH/g以上であれば、熱圧着時に十分に反応を進めることができ、圧力解放時に電磁波遮蔽層とFPCの電気的な接続の断線を防止できる。樹脂の酸価が上記範囲の上限値以下であれば、接着剤層の保存期間を延長できる。
ここで、酸価は、樹脂試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して以下の条件で測定を行う。
【0030】
[樹脂の酸価の測定方法]
(1)粉砕した樹脂試料(0.5g)~(2.0g)を精秤し、樹脂成分の重さをWgとする。
(2)(300mL)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(体積比4/1)の混合液(150mL)を加え溶解する。
(3)0.1mol/LのKOHのエタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する。
(4)この時のKOH溶液の使用量をS(mL)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(mL)とし、以下の式(i)で算出する。ただしfはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=[(S-B)×f×5.61]/W・・・式(i)
【0031】
接着剤層22に含まれる樹脂としては、上述した重量平均分子量(Mw)及び酸価の条件を満足する樹脂であれば、樹脂の種類に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
接着剤の種類としては、例えば、溶剤揮散型接着剤、熱硬化性接着剤、及び、これらの混合物等が挙げられる。
溶剤揮散型接着剤としては、熱可塑性樹脂と溶剤とを含むものが挙げられる。
熱硬化性接着剤としては、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含むものが挙げられる。
【0032】
中でも、電磁波遮蔽層20と接着剤層22との密着性向上という点から、接着剤層22に含まれる樹脂としては、アミン構造、アミド構造、ウレア構造、ウレタン構造、及びイミド構造のうち少なくともいずれか1つを有する樹脂であることが好ましい。例えば、熱硬化性樹脂としては、アミノ樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。また、例えば、熱可塑性樹脂としては、ポリウレア、ポリアミド等を挙げることができる。
接着剤層に含まれる樹脂としては、そのほか、スチレン系樹脂の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂の熱硬化性樹脂を用いることもできる。さらに、ニトリルゴムのゴム成分を用いてもよい。
【0033】
接着剤層22中には、電磁波遮蔽層20と接着剤層22との密着性向上という点から、アミノ基やアミド基等のN原子を含む構造を有する成分が含有されていることが好ましい。そこで、接着剤層22中にN原子の質量の占める割合(接着剤層のN原子の質量比率)は、0.5%以上10%以下であることが好ましく、0.5%以上5%以下であることがより好ましい。接着剤層のN原子の質量比率が0.5以上であれば、電磁波遮蔽層と接着剤層との密着性が向上する。接着剤層のN原子の質量比率が10以下であれば、樹脂中のN原子を含む剛直な分子骨格の割合を抑えることができ、電磁波シールドの可撓性が良くなる。接着剤層のN原子の質量比率が5以下であれば、接着剤層の誘電特性が向上して伝送特性がさらに良くなる。
接着剤層22中におけるN原子の質量の占める割合は、接着剤層22を形成する接着剤の質量全体に対する、N原子の質量の占める割合であり、例えば、以下の方法により求めることができる。
【0034】
[接着剤層のN原子の質量比率の測定方法]
接着剤層のN原子の質量比率はJIS-K2609に従い、測定する。
【0035】
また、接着剤層22中には、電磁波遮蔽層20と接着剤層22との密着性向上という点から、メラミン構造、トリアジン構造、リン酸構造、アルコキシシラン構造、及びメルカプト基のうち少なくともいずれか1つを有する密着性向上剤が含有されていることが好ましい。例えば、密着性向上剤として、メラミン骨格を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤、トリアジン骨格を有するイミダゾール等を挙げることができる。
【0036】
接着剤層22の厚さは、2μm以上25μm以下が好ましく、2μm以上10μm以下がより好ましい。接着剤層22の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、密着性を確保できる。接着剤層22の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルムを薄くできる。
【0037】
接着剤は、必要に応じて難燃剤を含んでいてもよい。
接着剤は、接着剤層の強度を高め、打ち抜き特性を向上させるために、セルロース樹脂、ミクロフィブリル(ガラス繊維等)を含んでいてもよい。
接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
【0038】
<<導電性接着剤層>>
接着剤層22が、導電性接着剤層である場合について、以下説明する。
導電性接着剤層は、少なくとも厚さ方向に導電性を有し、かつ接着性を有する。
導電性接着剤層としては、厚さ方向に導電性を有し、面方向には導電性を有さない異方導電性接着剤層24、または厚さ方向および面方向に導電性を有する等方導電性接着剤層26が挙げられる。導電性接着剤層としては、面方向には導電性を有さないために伝送特性が良く、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる点からは、異方導電性接着剤層24が好ましい。導電性接着剤層としては、電磁波シールド層として十分に機能できる点からは、等方導電性接着剤層26が好ましい。
【0039】
導電性接着剤層は、上述した樹脂を含む接着剤の層中に、導電性粒子が含有されている。
異方導電性接着剤層24は、例えば、上述した樹脂を含む接着剤24aと導電性粒子24bとを含む。
等方導電性接着剤層26は、例えば、上述した樹脂を含む接着剤26aと導電性粒子26bを含む。
【0040】
導電性粒子としては、金属(銀、白金、金、銅、ニッケル、パラジウム、アルミニウム、ハンダ等)の粒子、黒鉛粉、焼成カーボン粒子、めっきされた焼成カーボン粒子、金属を被覆されたコアシェル型樹脂粒子等が挙げられる。導電性が高い点からは、金属粒子が好ましく、安価な点からは、銅粒子がより好ましい。
【0041】
異方導電性接着剤層24における導電性粒子24bの平均粒子径は、2μm以上26μm以下が好ましく、4μm以上16μm以下がより好ましい。導電性粒子24bの平均粒子径が上記範囲の下限値以上であれば、電気的な接続の安定性が向上し、導電性粒子24bが異方導電性接着剤層24の樹脂の流動性を損ないにくくなるため、異方導電性接着剤層24の絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性を確保できる。導電性粒子24bの平均粒子径が上記範囲の上限値以下であれば、異方導電性接着剤層24の樹脂と被接着物表面との接触を導電性粒子24bが阻害することなく、十分な密着性が確保できる。
【0042】
等方導電性接着剤層26における導電性粒子26bの平均粒子径は、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.2μm以上1μm以下がより好ましい。導電性粒子26bの平均粒子径が上記範囲の下限値以上であれば、導電性粒子26bの接触頻度が増えることになり、3次元方向の導通性を安定的に高めることができる。導電性粒子26bの平均粒子径が上記範囲の上限値以下であれば、等方導電性接着剤層26の樹脂と被接着物表面との接触を導電性粒子26bが阻害することなく、十分な密着性が確保できる。
【0043】
異方導電性接着剤層24における導電性粒子24bの割合は、異方導電性接着剤層24の100体積%のうち、1体積%以上30体積%以下が好ましく、2体積%以上10体積%以下がより好ましい。導電性粒子24bの割合が上記範囲の下限値以上であれば、異方導電性接着剤層24の導電性が良好になる。導電性粒子24bの割合が上記範囲の上限値以下であれば、異方導電性接着剤層24の接着性、流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)が良好になる。また、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる。
【0044】
等方導電性接着剤層26における導電性粒子26bの割合は、等方導電性接着剤層26の100体積%のうち、50体積%以上80体積%以下が好ましく、60体積%以上70体積%以下がより好ましい。導電性粒子26bの割合が上記範囲の下限値以上であれば、等方導電性接着剤層26の導電性が良好になる。導電性粒子26bの割合が上記範囲の上限値以下であれば、等方導電性接着剤層26の接着性、流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)が良好になる。また、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる。
【0045】
異方導電性接着剤層24の表面抵抗は、1×104Ω以上1×1016Ω以下が好ましく、1×106Ω以上1×1014Ω以下がより好ましい。異方導電性接着剤層24の表面抵抗が上記範囲の下限値以上であれば、導電性粒子24bの含有量が低く抑えられる。異方導電性接着剤層24の表面抵抗が上記範囲の上限値以下であれば、実用上、異方性に問題がない。
【0046】
等方導電性接着剤層26の表面抵抗は、0.05Ω以上2.0Ω以下が好ましく、0.1Ω以上1.0Ω以下がより好ましい。等方導電性接着剤層26の表面抵抗が上記範囲の下限値以上であれば、導電性粒子26bの含有量が低く抑えられ、導電性接着剤の粘度が高くなりすぎず、塗布性がさらに良好となる。また、等方導電性接着剤層26の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)をさらに確保できる。等方導電性接着剤層26の表面抵抗が上記範囲の上限値以下であれば、等方導電性接着剤層26の全面が均一な導電性を有するものとなる。
【0047】
異方導電性接着剤層24の厚さは、2μm以上25μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。異方導電性接着剤層24の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、異方導電性接着剤層24の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)を確保でき、絶縁フィルムの貫通孔内を導電性接着剤で十分に埋めることができる。また、電磁波遮蔽層20とプリント回路の距離を広げることができ、伝送特性が良くなる。異方導電性接着剤層24の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。また、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる。
【0048】
等方導電性接着剤層26の厚さは、2μm以上20μm以下が好ましく、3μm以上10μm以下がより好ましい。等方導電性接着剤層26の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、密着性が良くなる。また、等方導電性接着剤層26の流動性(絶縁フィルムの貫通孔の形状への追随性)を確保でき、絶縁フィルムの貫通孔内を導電性接着剤で十分に埋めることができ、耐折性も確保でき繰り返し折り曲げても等方導電性接着剤層26が断裂することはない。等方導電性接着剤層26の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を薄くできる。また、電磁波シールドフィルム1の可とう性がよくなる。また、電磁波遮蔽層20より表面抵抗の高い等方導電性接着剤層26の膜厚が薄いことで伝送特性が良くなる。
【0049】
接着剤層22が、導電性接着剤層である場合には、「接着剤層のN原子の質量比率」とは、導電性接着剤層から導電性粒子を除いた接着剤の質量全体に対する、N原子の質量の占める割合をいう。
導電性接着剤層中におけるN原子の質量の占める割合は、例えば、以下の方法により求めることができる。
【0050】
[接着剤層のN原子の質量比率の測定方法]
接着剤層のN原子の質量比率はJIS-K2609に従い、測定する。
【0051】
<第1の離型フィルム>
第1の離型フィルム30は、絶縁樹脂層10の保護フィルムとなるものであり、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性を良好にする。第1の離型フィルム30は、電磁波シールドフィルム1を絶縁フィルム付きプリント配線板に貼り付けた後には、絶縁樹脂層10から剥離される。
【0052】
第1の離型フィルム30は、例えば、基材層32と、基材層32の絶縁樹脂層10側の表面に設けられた粘着剤層又は離型剤層34とを有する。尚、本明細書においては、粘着剤層又は離型剤層34を粘着剤層/離型剤層34とも表す。
第1の離型フィルム30は、基材層32の表面に粘着剤層/離型剤層34を直接設けたものであってもよく;絶縁樹脂層10の表面に粘着剤層/離型剤層34を設けた後、粘着剤層/離型剤層34の表面に基材層32を貼り付けることによって、基材層32の表面に粘着剤層/離型剤層34を設けたものであってもよい。
【0053】
基材層32の樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも記す。)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、合成ゴム、液晶ポリマー等が挙げられる。樹脂材料としては、電磁波シールドフィルム1を製造する際の耐熱性(寸法安定性)および価格の点から、PETが好ましい。
基材層32は、着色剤またはフィラーを含んでいてもよい。
【0054】
基材層32の厚さは、5μm以上500μm以下が好ましく、10μm以上150μm以下がより好ましく、25μm以上100μm以下がさらに好ましい。基材層32の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性が良好となる。基材層32の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム1を絶縁フィルム付きプリント配線板に熱プレスする際に接着剤層22に熱が伝わりやすい。
【0055】
基材層と絶縁樹脂層との間には、粘着剤層34又は離型剤層34が配される。
第1の離型フィルム30が粘着剤層又は離型剤層34を有することによって、第2の離型フィルム40を接着剤層22から剥離する際や電磁波シールドフィルム1をプリント配線板等に熱プレスによって貼り付ける際に、第1の離型フィルム30が絶縁樹脂層10から剥離することが抑えられ、第1の離型フィルム30が保護フィルムとしての役割を十分に果たすことができる。
粘着剤としては、公知の粘着剤を用いればよい。
また、離型剤層34は、基材層32の表面に、離型剤による離型処理が施して形成されたものである。第1の離型フィルム30が離型剤層34を有することによって、第1の離型フィルム30を絶縁樹脂層10から剥離する際に、第1の離型フィルム30を剥離しやすく、絶縁樹脂層10が破断しにくくなる。
離型剤としては、公知の離型剤を用いればよい。
【0056】
粘着剤層34の厚さは、0.05μm以上50.0μm以下が好ましく、0.1μm以上25.0μm以下がより好ましい。粘着剤層34の厚さが上記範囲内であれば、第1の離型フィルム30の表面が適度な粘着性を有する。
離型剤層34の厚さは、0.005μm以上2.0μm以下が好ましく、0.01μm以上1.5μm以下がより好ましい。離型剤層34の厚さが前記範囲内であれば、第1の離型フィルムをさらに剥離しやすくなる。
【0057】
<第2の離型フィルム>
第2の離型フィルム40は、接着剤層22を保護するものであり、電磁波シールドフィルム1のハンドリング性を良好にする。第2の離型フィルム40は、電磁波シールドフィルム1を絶縁フィルム付きプリント配線板に貼り付ける前に、接着剤層22から剥離される。
【0058】
第2の離型フィルム40は、例えば、基材層42と、基材層42の導電性接着剤層側の表面に設けられた離型剤層又は粘着剤層44とを有する。
尚、本明細書においては、離型剤層又は粘着剤層44を、離型剤層/粘着剤層44とも表す。
【0059】
基材層42の樹脂材料としては、第1の離型フィルム30の基材層32の樹脂材料と同様なものが挙げられる。
基材層42は、着色剤またはフィラーを含んでいてもよい。
基材層42の厚さは、5μm以上500μm以下が好ましく、10μm以上150μm以下がより好ましく、25μm以上100μm以下がさらに好ましい。
【0060】
基材層42と接着剤層22との間には、離型剤層44又は粘着剤層44が配される。
離型剤層44は、基材層42の表面に、離型剤による離型処理が施して形成されたものである。第2の離型フィルム40が離型剤層44を有することによって、第2の離型フィルム40を接着剤層22から剥離する際に、第2の離型フィルム40を剥離しやすく、接着剤層22が破断しにくくなる。
離型剤としては、公知の離型剤を用いればよい。
【0061】
離型剤層44の厚さは、0.05μm以上2.0μm以下が好ましく、0.1μm以上1.5μm以下がより好ましい。離型剤層44の厚さが前記範囲内であれば、第2の離型フィルム40をさらに剥離しやすくなる。
【0062】
粘着剤層44としては、上記<第1の離型フィルム>の欄で説明した粘着剤層34と同様なものが使用できる。
【0063】
<シランカップリング剤層>
本発明に係る電磁波シールドフィルムのさらなる好ましい態様として、
図3又は
図4で示すような、電磁波遮蔽層20と接着剤層22との間にシランカップリング剤層80を有する電磁波シールドフィルムを挙げることができる。
シランカップリング剤層を設けることにより、電磁波遮蔽層20と接着剤層22との密着性を向上させることができる。
シランカップリング剤層を電磁波遮蔽層20上に形成させるには、従来知られている方法を利用することができるが、例えば、シランカップリング剤を水や有機溶剤などに溶かし、この液を電磁波遮蔽層20の表面へ塗布した後に乾燥させることにより、形成させることができる。
シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0064】
<電磁波シールドフィルムの構成>
本発明において、電磁波シールドフィルムは、少なくとも、絶縁樹脂層、電磁波遮蔽層、及び接着剤層を有していればよい。電磁波シールドフィルムには、第1の離型フィルムや第2の離型フィルムが、含まれている場合もあれば、そうでない場合もある。
そこで、本明細書においては、絶縁樹脂層、電磁波遮蔽層、及び接着剤層に、第1の離型フィルム及び/又は第2の離型フィルムも含めて電磁波シールドフィルムという場合と、これら離型フィルムは含めずに電磁波シールドフィルムという場合とがある。
【0065】
<電磁波シールドフィルムの厚さ>
電磁波シールドフィルム1の厚さ(離型フィルムを除く)は、5μm以上45μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましい。電磁波シールドフィルム1の厚さ(離型フィルムを除く)が上記範囲の下限値以上であれば、第1の離型フィルム30を剥離する際に破断しにくい。電磁波シールドフィルム1の厚さ(離型フィルムを除く)が上記範囲の上限値以下であれば、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を薄くできる。
【0066】
(電磁波シールドフィルムの製造方法)
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の第1の実施形態としては、例えば、下記の方法(A1)による製造方法が挙げられる。尚、下記の方法(A1)では、電磁波シールドフィルムとして、
図1で示される接着剤層が異方導電性接着剤層24である電磁波シールドフィルムを例に用いたが、この接着剤層に限定されるものではない。以下に記載する製造方法は、接着剤層が、等方導電性接着剤層27であっても、導電性粒子を含まない接着剤層22であっても、同様に適用される。
方法(A1)は、具体的には、下記の工程(A1-1)~(A1-4)を有する方法である。
以下、
図5をもとに、方法(A1)について説明する。
工程(A1-1):第1の離型フィルム30の一方の面に絶縁樹脂層10を形成する工程。
工程(A1-2):絶縁樹脂層10の第1の離型フィルム30とは反対側の面に電磁波遮蔽層20を形成する工程。
工程(A1-3):電磁波遮蔽層20の絶縁樹脂層10とは反対側の面に異方導電性接着剤層24を形成する工程。
工程(A1-4):異方導電性接着剤層24の電磁波遮蔽層20とは反対側の面に第2の離型フィルム40を積層する工程。
以下、方法(A1)の各工程について詳細に説明する。
【0067】
工程(A1-1)における絶縁樹脂層10の形成方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
・第1の離型フィルム30の粘着剤層/離型剤層34側の面に、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む塗料を塗布し、半硬化又は硬化させる方法。
・第1の離型フィルム30の粘着剤層/離型剤層34側の面に、熱可塑性樹脂を含む塗料を塗布し、乾燥させる方法。
・第1の離型フィルム30の粘着剤層/離型剤層34側の面に、熱可塑性樹脂を含む組成物を押出成形により成形したフィルムを直接積層する方法。
上記方法のなかでも、ハンダ付け等の際の耐熱性の点から、第1の離型フィルム30の粘着剤層/離型剤層34側の面に、熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む塗料を塗布し、半硬化又は硬化させる方法が好ましい。
前記塗料の塗布方法としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の各種コーターを用いた方法を適用することができる。
熱硬化性樹脂を半硬化又は硬化させる際には、ヒータ、赤外線ランプ等の加熱器を用いて加熱すればよい。
【0068】
工程(A1-2)では、絶縁樹脂層10の第1の離型フィルム30とは反対側の面に電磁波遮蔽層20を形成する。
電磁波遮蔽層20の形成方法としては、真空成膜法(真空蒸着、スパッタリング)による方法、電界メッキ法による方法、金属箔(銅箔)を貼り付ける方法等が挙げられる。
電磁波遮蔽層20の膜厚が3um未満の場合は、所望の膜厚、表面形状を有する電磁波遮蔽層20を形成できる点から、真空蒸着によって蒸着膜を形成する方法、又は電解メッキによってメッキ膜を形成する方法が好ましい。ガス透過性が高く、高温条件にて内部で発生したガスを外部へ放出しやすい電磁波遮蔽層20を形成でき、ドライプロセスにて簡便に電磁波遮蔽層20を形成できる点から、真空蒸着によって蒸着膜を形成する方法がさらに好ましい。
電磁波遮蔽層20の膜厚が3um以上の場合は、真空蒸着の熱履歴による絶縁樹脂層10の劣化が起こらず、所望の膜厚を有する電磁波遮蔽層20を容易に形成できる点から、絶縁樹脂層10と金属箔(銅箔)とが接するように、加圧及び/又は加熱によるラミネート処理を施す方法が好ましい。
ここで、加圧処理における圧力としては、0.1kPa以上100kPa以下が好ましく、0.1kPa以上20kPa以下がより好ましく、1kPa以上10kPa以下がさらに好ましい。
加圧処理と同時に加熱してもよい。その際の加熱温度としては半硬化又は硬化させた絶縁樹脂層のガラス転移温度から-30℃以上+50℃以下が好ましく、50℃以上150℃以下が好ましい。
【0069】
工程(A1-3)では、電磁波遮蔽層20の絶縁樹脂層10とは反対側の面に、接着剤24aと導電性粒子24bと溶剤とを含有する導電性接着剤塗料を塗布する。
塗布した導電性接着剤塗料より溶剤を揮発させることにより、異方導電性接着剤層24を形成する。
導電性接着剤塗料に含まれる溶剤としては、例えば、エステル(酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノアセテート等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、アミルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングルコール等)、トルエン等が挙げられる。
導電性接着剤の塗布方法は、工程(A1-1)における塗料の塗布方法と同様である。
電磁波遮蔽層20の絶縁樹脂層10とは反対側の面に、導電性接着剤塗料を塗布することにより、異方導電性接着剤層24に含まれる電磁波遮蔽層20と相互作用の強い成分や分子骨格が電磁波遮蔽層20に配向するように、異方導電性接着剤層24を形成することで、電磁波遮蔽層20と異方導電性接着剤層24との密着性を向上できる。
【0070】
工程(A1-4)では、第2の離型フィルム40を、異方導電性接着剤層24の電磁波遮蔽層20とは反対側の面に、離型剤層/粘着剤層44が異方導電性接着剤層24に接するように積層する。
第2の離型フィルム40を異方導電性接着剤層24に積層した後には、第1の離型フィルム30、絶縁樹脂層10、電磁波遮蔽層20、異方導電性接着剤層24、及び第2の離型フィルム40からなる積層体に、各層同士の密着性を高めるため、加圧及び/又は加熱によるラミネート処理を施してもよい。
加圧条件は、工程(A1-2)における加圧処理と同様である。また、工程(A1-4)においても、工程(A1-2)と同様に加熱処理をしてもよい。
尚、方法(A1)では、ラミネート処理は、工程(A1-2)、(A1―4)にて行う例を記載したが、ラミネート処理を行う段階はこれに限られない。
【0071】
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の第2の実施形態としては、例えば、下記の方法(A2)による製造方法が挙げられる。
方法(A2)は、具体的には、下記の工程(A2-1)~(A2-4)を有する方法である。
以下、
図6~
図8をもとに、方法(A2)について説明する。工程(A2-1)~(A2-2)を
図6に、工程(A2-3)を
図7に、工程(A2-4)を
図8に示す。
工程(A2-1):第1の離型フィルム30の一方の面に絶縁樹脂層10を形成する工程。
工程(A2-2):絶縁樹脂層10の第1の離型フィルム30とは反対側の面に電磁波遮蔽層20を形成して積層体(p1)を形成する工程。
工程(A2-3):第2の離型フィルム40に異方導電性接着剤層24を形成して積層体(p2)を形成する工程。
工程(A2-4):積層体(p1)と積層体(p2)とを、積層体(p1)の電磁波遮蔽層20と積層体(p2)の異方導電性接着剤層24とが接するように貼り合せる工程。
【0072】
工程(A2-1)、及び工程(A2-2)は、各々、前記の工程(A1-1)、及び工程(A1-2)と同様である。
工程(A2-3)は、電磁波遮蔽層20ではなく、第2の離型フィルム40の離型剤層/粘着剤層44が設けられている面に、熱硬化性接着剤24a及び導電性粒子24bを含む導電性接着剤塗料を塗布して異方導電性接着剤層24を形成すること以外は前記の工程(A1-3)と同様である。
工程(A2-4)における積層体(p1)と積層体(p2)との貼り合せでは、積層体(p1)と積層体(p2)との密着性を高めるための加圧によるラミネート処理を施してもよい。加圧条件は、工程(A1-2)における加圧処理と同様である。また、工程(A2-4)においても、工程(A1-2)と同様に加熱処理をしてもよい。
電磁波遮蔽層20と異方導電性接着剤層24とをラミネート処理により貼り合わせることで、絶縁樹脂層10が溶剤に弱い場合や電磁波遮蔽層20を酸化させてしまう水系溶剤のような成分を含む導電性接着剤塗料を使用する場合でも電磁波遮蔽層20と異方導電性接着剤層24とを積層することができる。
【0073】
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の第3の実施形態としては、例えば、下記の方法(B1)による製造方法が挙げられる。
図5の工程(A1-2)で得られる積層体、あるいは
図6の工程(A2-2)で得られる積層体は、上記の方法(A1)や(A2)に限られず、下記の方法(B1)によっても製造することができる。
下記の方法(B1)は、例えば、上記の方法(A1)や(A2)が、絶縁樹脂層10上に電磁波遮蔽層20を形成するのに対して、電磁波遮蔽層20上に絶縁樹脂層10を形成する点が異なっている。
方法(B1)は、具体的には、下記の工程(B1-1)~(B1-4)を有する方法である。
以下、
図9をもとに、方法(B1)について説明する。
工程(B1-1):電磁波遮蔽層20のキャリアフィルム100とは反対側の面に絶縁樹脂層10を形成する工程。
工程(B1-2):絶縁樹脂層10の電磁波遮蔽層20とは反対側の面に第1の離型フィルム30を形成する工程。
【0074】
工程(B1-1)において、電磁波遮蔽層20は金属箔(銅箔)の単層、又は、表面に離型剤層104が設けられた基材層102を有するキャリアフィルム100に形成された積層の状態であることが望ましい。
金属箔(銅箔)の単層としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。電磁波遮蔽層20の表面を平滑にできる点から、圧延銅箔が好ましい。
キャリアフィルム100としては、第1の離型フィルム30と同様のフィルム、金属箔(銅箔)等が挙げられる。より平滑な電磁波遮蔽層20を形成できる点から、第1の離型フィルム30と同様のフィルムが好ましい。
キャリアフィルム100上に電磁波遮蔽層20を形成する方法としては、真空成膜法(真空蒸着、スパッタリング)による方法、電界メッキ法による方法等が挙げられる。ガス透過性が高く、高温条件にて内部で発生したガスを外部へ放出しやすい電磁波遮蔽層20を形成でき、ドライプロセスにて簡便に電磁波遮蔽層20を形成できる点から、真空蒸着によって蒸着膜を形成する方法が好ましい。
電磁波遮蔽層20上に絶縁樹脂層10を形成する方法としては、上記工程(A1-1)と同様な方法が挙げられる。
つまり、絶縁樹脂層10の形成方法としては、電磁波遮蔽層20に絶縁樹脂層形成用の塗料を塗布する方法等が挙げられる。
工程(B1-2)では、第1の離型フィルム30を、絶縁樹脂層10の電磁波遮蔽層20とは反対側の面に、粘着剤層/離型剤層34が絶縁樹脂層10に接するように積層する。
キャリアフィルム100は、工程(B1-1)と(B1-2)の間、又は工程(B1-2)の後に、キャリアフィルム100を剥離しても絶縁樹脂層10と電磁波遮蔽層20とを含む積層体のハンドリングが可能になった段階で剥離する。
工程(B1-1)~(B1-2)により、
図5の工程(A1-2)で得られる積層体、あるいは
図6の工程(A2-2)で得られる積層体と同様の積層体が得られる。
そのため、得られる積層体に、
図5で示す(A1-3)~(A1-4)の工程、あるいは、
図7から
図8で示す(A2-3)~(A2-4)の工程に供することができる。
【0075】
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の第4の実施形態としては、例えば、下記の方法(C1)による製造方法が挙げられる。
方法(C1)は、具体的には、下記の工程(C1-1)~(C1-2)を有する方法である。
図5の工程(A1-1)~(A1-2)の間に、あるいは
図6の工程(A2-1)~(A2-2)の間に、
図10で示す工程(C1-1)~(C1-3)の製造工程を追加することができる。
工程(C1-1):絶縁樹脂層10の第1の離型フィルム30とは反対側の面にセパレートフィルム90を形成し、第1の離型フィルム30、絶縁樹脂層10、及びセパレートフィルム90からなる積層体に、加圧及び/又は加熱によるラミネート処理を施し、絶縁樹脂層10とセパレートフィルム90とを接着させる工程。
工程(C1-2):第1の離型フィルム30、絶縁樹脂層10、及びセパレートフィルム90からなる積層体を加熱して絶縁樹脂層10を硬化する工程。
工程(C1-3):絶縁樹脂層10の表面からセパレートフィルム90を剥離する工程。
【0076】
工程(C1-1)では、絶縁樹脂層10の電磁波遮蔽層20側にセパレートフィルム90を用いてラミネート処理を施し、絶縁樹脂層10とセパレートフィルム90とを接着させる。これにより、絶縁樹脂層10の電磁波遮蔽層20側の表面を平滑化する。
ラミネート処理の条件としては、上記工程(A1-2)で記載したラミネート条件と同様の条件で行うことができる。
ここで、セパレートフィルムの種類としては、ラミネート処理した際、絶縁樹脂層10の表面を平滑化できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第1の離型フィルム30と同様のフィルムが挙げられる。
工程(C1-3)により、絶縁樹脂層10からセパレートフィルム90を剥離した後は、
図5の工程(A1-2)や
図6の工程(A2-2)で示す工程と同様にして、絶縁樹脂層10上に電磁波遮蔽層20を形成する。
図10に記載の工程(A1-2)により、第1の離型フィルム30、絶縁樹脂層10、及び電磁波遮蔽層20からなる積層体が得られた後は、
図5で示す(A1-3)~(A1-4)の工程、あるいは、
図7から
図8で示す(A2-3)~(A2-4)の工程に供することができる。
【0077】
図10で示す工程(C1-1)~(C1-2)の製造工程を経ることにより、絶縁樹脂層10を形成する塗料のレベリングが悪い場合でも、表面がより平滑な絶縁樹脂層10を形成することができる。そして、表面がより平滑な絶縁樹脂層10上に電磁波遮蔽層20を形成させることで、表面がより平滑な電磁波遮蔽層20を得ることができる。電磁波遮蔽層20のFPC側の表面をより平滑化させることで、FPCの伝送特性がより良好な電磁波シールドフィルムを得ることができる。
【0078】
本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法の第5の実施形態としては、例えば、下記の方法(D1)による製造方法が挙げられる。
下記の方法(D1)は、
図3の電磁波シールドフィルムを製造する方法に対応している。下記の方法(D1)は、例えば、上記の方法(A1)や(A2)に対し、電磁波遮蔽層20と接着剤層22との間にシランカップリング剤層80を形成させる点が異なっている。
方法(D1)は、具体的には、下記の工程(D1-1)~(D1-3)を有する方法である。
以下、
図11をもとに、方法(D1)について説明する。尚、
図11は、例えば、
図5の工程(A1-2)や
図6の工程(A2-2)で得られた第1の離型フィルム30、絶縁樹脂層10、及び電磁波遮蔽層20からなる積層体を用いて、下記工程(D1-1)~(D1-3)の製造工程を施す。
工程(D1-1):電磁波遮蔽層20の絶縁樹脂層10とは反対側の面にシランカップリング層80を形成する工程。
工程(D1-2):シランカップリング層80の電磁波遮蔽層20とは反対側の面に異方導電性接着剤層24を形成する工程。
工程(D1-3):異方導電性接着剤層24の電磁波遮蔽層20とは反対側の面に第2の離型フィルム40を積層する工程。
以下、方法(D1)の各工程について詳細に説明する。
【0079】
工程(D1-1)では、電磁波遮蔽層20の絶縁樹脂層10とは反対側の面に、シランカップリング剤を溶剤に溶かしたシランカップリング剤層形成用の塗料を塗布する。
塗布したシランカップリング剤層形成用の塗料から溶剤を揮発させることにより、シランカップリング層80を形成する。
工程(D1-2)では、上記工程(A1-3)と同様にして、シランカップリング層80の電磁波遮蔽層20とは反対側の面に、接着剤24aと導電性粒子24bと溶剤とを含有する導電性接着剤塗料を塗布する。
塗布した導電性接着剤塗料より溶剤を揮発させることにより、異方導電性接着剤層24を形成する。
工程(D1-3)では、上記工程(A1-4)と同様にして、第2の離型フィルム40を、異方導電性接着剤層24の電磁波遮蔽層20とは反対側の面に、離型剤層/粘着剤層44が異方導電性接着剤層24に接するように積層する。
【0080】
<作用効果>
本態様の電磁波シールドフィルム1は、電磁波遮蔽層が特定の膜厚と表面粗さとを有し、接着剤層が特定の樹脂を含有していることにより、FPCの伝送特性を向上させることができ、かつ電磁波シールドフィルムの薄膜化及び密着性向上をも満足できるものとなっている。
【0081】
<他の実施形態>
本発明における電磁波シールドフィルムは、絶縁樹脂層と、絶縁樹脂層に隣接する電磁波遮蔽層と、電磁波遮蔽層の絶縁樹脂層とは反対側に隣接する接着剤層とを有するものであればよく、図示例の実施形態に限定はされない。
例えば、第1の実施形態において異方導電性接着剤層24を等方導電性接着剤層26に変更してもよい。
例えば、絶縁樹脂層は、2層以上であってもよい。
第1の離型フィルムは、粘着剤層の代わりに離型剤層を有していてもよい。
第2の離型フィルムは、離型剤層の代わりに粘着剤層を有していてもよい。
第1の離型フィルムまたは第2の離型フィルムは、粘着剤層または離型剤層を有さず、基材層のみからなるものであってもよい。
絶縁樹脂層が十分な柔軟性や強度を有する場合は、第1の離型フィルムを省略しても構わない。
接着剤層の表面のタック性が少ない場合は、第2の離型フィルムを省略しても構わない。
【0082】
(電磁波シールドフィルム付きプリント配線板)
本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板は、基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、プリント配線板のプリント回路が設けられた側の面に隣接する絶縁フィルムと、接着剤層が絶縁フィルムに隣接するように設けられた上記本発明の電磁波シールドフィルムとを有する。
【0083】
図12は、本発明の製造方法で得られる電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の第1の実施形態を示す断面図である。
電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2は、フレキシブルプリント配線板50と、絶縁フィルム60と、第1の実施形態の電磁波シールドフィルム1とを備える。
フレキシブルプリント配線板50は、ベースフィルム52の少なくとも片面にプリント回路54が設けられたものである。
絶縁フィルム60は、フレキシブルプリント配線板50のプリント回路54が設けられた側の表面に設けられる。
電磁波シールドフィルム1の異方導電性接着剤層24は、絶縁フィルム60の表面に接着されている。また、異方導電性接着剤層24は、絶縁フィルム60に形成された貫通孔(図示略)を通ってプリント回路54に電気的に接続されている。
電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2においては、第2の離型フィルム40は、異方導電性接着剤層24から剥離されている。
電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2において第1の離型フィルム30が不要になった際には、第1の離型フィルム30は、絶縁樹脂層10から剥離される。
【0084】
貫通孔のある部分を除くプリント回路54(信号回路、グランド回路、グランド層等)の近傍には、電磁波シールドフィルム1の電磁波遮蔽層20が、絶縁フィルム60および異方導電性接着剤層24を介して離間して対向配置される。
貫通孔のある部分を除くプリント回路54と電磁波遮蔽層20との離間距離は、絶縁フィルム60の厚さと異方導電性接着剤層24の厚さの総和とほぼ等しい。離間距離は、15μm以上200μm以下が好ましく、30μm以上200μm以下がより好ましい。離間距離が15μmより小さいと、信号回路の特性インピーダンスの調整のために、信号回路の線幅を小さくしなければならず、安定したプリント回路54の製造が技術的に困難になる。離間距離が200μmより大きいと、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2が厚くなり、可とう性も不足する。
【0085】
<フレキシブルプリント配線板>
フレキシブルプリント配線板50は、銅張積層板の銅箔を公知のエッチング法により所望のパターンに加工してプリント回路(電源回路、グランド回路、グランド層等)としたものである。
銅張積層板としては、ベースフィルム52の片面または両面に接着剤層(図示略)を介して銅箔を貼り付けたもの;銅箔の表面にベースフィルム52を形成する樹脂溶液等をキャストしたもの等が挙げられる。
接着剤層の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
接着剤層の厚さは、0.5μm以上30μm以下が好ましい。
【0086】
<<ベースフィルム>>
ベースフィルム52としては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムがより好ましく、ポリイミドフィルムがさらに好ましい。
ベースフィルム52の表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×106Ω以上が好ましい。ベースフィルム52の表面抵抗は、実用上の点から、1×1019Ω以下が好ましい。
ベースフィルム52の厚さは、5μm以上200μm以下が好ましく、屈曲性の点から、6μm以上100μm以下がより好ましく、10μm以上50μm以下がより好ましい。
【0087】
<<プリント回路>>
プリント回路54(信号回路、グランド回路、グランド層等)を構成する銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられ、屈曲性の点から、圧延銅箔が好ましい。
銅箔の厚さは、1μm以上50μm以下が好ましく、7μm以上35μm以下がより好ましい。
プリント回路54の長さ方向の端部(端子)は、ハンダ接続、コネクター接続、部品搭載等のため、絶縁フィルム60や電磁波シールドフィルム1に覆われていない。
【0088】
<絶縁フィルム>
絶縁フィルム60は、絶縁フィルム本体(図示略)の片面に、接着剤の塗布、接着剤シートの貼り付け等によって接着剤層(図示略)を形成したものである。
絶縁フィルム本体の表面抵抗は、電気的絶縁性の点から、1×106Ω以上が好ましい。絶縁フィルム本体の表面抵抗は、実用上の点から、1×1019Ω以下が好ましい。
絶縁フィルム本体としては、耐熱性を有するフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルムがより好ましく、ポリイミドフィルムがさらに好ましい。
絶縁フィルム本体の厚さは、1μm以上100μm以下が好ましく、可とう性の点から、3μm以上25μm以下がより好ましい。
接着剤層の材料としては、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン等が挙げられる。エポキシ樹脂は、可とう性付与のためのゴム成分(カルボキシ変性ニトリルゴム等)を含んでいてもよい。
接着剤層の厚さは、1μm以上100μm以下が好ましく、1.5μm以上60μm以下がより好ましい。
【0089】
貫通孔の開口部の形状は、特に限定されない。貫通孔62の開口部の形状としては、例えば、円形、楕円形、四角形等が挙げられる。
【0090】
(電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法)
本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法は、基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、上記本発明の電磁波シールドフィルムとを、絶縁フィルムを介して圧着する工程を有し、圧着する際には、絶縁フィルムを、プリント配線板のプリント回路が設けられた側の面に密着させると共に、電磁波シールドフィルムの接着剤層に密着させる、製造方法である。
本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法は、上記の本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法によって、電磁波シールドフィルムを製造した後、下記の工程(a)及び工程(b)を実施する。
工程(a):プリント配線板のプリント回路が設けられた側の表面に絶縁フィルムを設け、絶縁フィルム付きプリント配線板を得る工程。
工程(b):電磁波シールドフィルムが第2の離型フィルムを有する場合は、電磁波シールドフィルムから第2の離型フィルムを剥離した後、絶縁フィルム付きプリント配線板と電磁波シールドフィルムとを、絶縁フィルムの表面に接着剤層が接触するように重ね、これらをプレスすることによって、絶縁フィルムの表面に接着剤層を接着し、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を得る工程。
【0091】
より好ましい実施形態として、本発明の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法は、下記の工程(a)~(d)を有する。
工程(a):プリント配線板のプリント回路が設けられた側の表面に絶縁フィルムを設け、絶縁フィルム付きプリント配線板を得る工程。
工程(b):電磁波シールドフィルムが第2の離型フィルムを有する場合は、電磁波シールドフィルムから第2の離型フィルムを剥離した後、絶縁フィルム付きプリント配線板と電磁波シールドフィルムとを、絶縁フィルムの表面に接着剤層が接触するように重ね、これらをプレスすることによって、絶縁フィルムの表面に接着剤層を圧着し、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を得る工程。
工程(c):電磁波シールドフィルムが第1の離型フィルムを有する場合は、工程(b)の後、第1の離型フィルムが不要になった際に電磁波シールドフィルムから第1の離型フィルムを剥離する工程。
工程(d):接着剤層に含まれる接着剤が熱硬化性接着剤である場合は、必要に応じて、工程(a)と工程(b)との間、または工程(c)の後に接着剤層を本硬化させる工程。
【0092】
以下、電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板を製造する方法について、
図13を参照しながら説明する。
【0093】
<工程(a)>
図13に示すように、フレキシブルプリント配線板50に、プリント回路54に対応する位置に貫通孔62が形成された絶縁フィルム60を重ね、フレキシブルプリント配線板50の表面に絶縁フィルム60の接着剤層(図示略)を接着し、接着剤層を硬化させることによって、絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板3を得る。フレキシブルプリント配線板50の表面に絶縁フィルム60の接着剤層を仮接着し、工程(d)にて接着剤層を本硬化させてもよい。
接着剤層の接着および硬化は、例えば、プレス機(図示略)等による熱プレスによって行う。
【0094】
<工程(b)>
図13に示すように、絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板3に、第2の離型フィルム40を剥離した電磁波シールドフィルム1を重ね、プレスする(好ましくは熱プレスする)ことによって、絶縁フィルム60の表面に異方導電性接着剤層24が圧着され、かつ異方導電性接着剤層24が、貫通孔62を通ってプリント回路54に電気的に接続された電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板2を得る。
【0095】
異方導電性接着剤層24の接着は、例えば、プレス機(図示略)等による熱プレスによって行う。
熱プレスの時間は、20秒以上60分以下が好ましく、30秒以上30分以下がより好ましい。
熱プレスの温度(プレス機の熱盤の温度)は、140℃以上210℃以下が好ましく、150℃以上190℃以下がより好ましい。
熱プレスの圧力は、0.5MPa以上20MPa以下が好ましく、1MPa以上16MPa以下がより好ましい。
【0096】
<工程(c)>
図13に示すように、第1の離型フィルム30が不要になった際に、絶縁樹脂層10から第1の離型フィルム30を剥離する。
【0097】
<作用効果>
本態様の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板2は、上記本発明の電磁波シールドフィルムの特徴を有しており、FPCの伝送特性が良好であり、かつ薄膜化及び密着性に優れた電磁波シールドフィルムを有するプリント配線板となっている。
【0098】
<他の実施形態>
尚、本発明における電磁波シールドフィルム付きプリント配線板は、プリント配線板と、プリント配線板のプリント回路が設けられた側の表面に隣接する絶縁フィルムと、接着剤層が絶縁フィルムに隣接した電磁波シールドフィルムを有するものであればよく、図示例の実施形態に限定はされない。
例えば、フレキシブルプリント配線板は、裏面側にグランド層を有するものであってもよい。また、フレキシブルプリント配線板は、両面にプリント回路を有し、両面に絶縁フィルムおよび電磁波シールドフィルムが貼り付けられたものであってもよい。
フレキシブルプリント配線板の代わりに、柔軟性のないリジッドプリント基板を用いてもよい。
第1の実施形態の電磁波シールドフィルム1の代わりに、第2~第4の実施形態の電磁波シールドフィルム1等を用いてもよい。
【実施例】
【0099】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
(導電性接着剤塗料の配合)
導電性接着剤として、下記配合に従い、接着剤Aから接着剤Hを得た。
<接着剤A>
接着剤層に含有させる樹脂1として、重量平均分子量が94,000、酸価が10mgKOH/gを示す酸変性したSEBS(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンの水添したスチレン系熱可塑性ブロックコポリマー;旭化成社製、M1943)を用いた。
また、接着剤層に含有させる樹脂2として、エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、jER 1001)を用いた。
樹脂1を60質量部と、樹脂2を40質量部と、硬化剤(味の素ファインテクノ株式会社製、UDH-J)3質量部と、密着性向上剤(四国化成工業株式会社製、メラミン骨格シランカップリング剤のVD-5)3質量部と、導電性粒子(Culox社製、Culox3050)20質量部とを混合して、下記表1で示すように、導電性接着剤塗料である接着剤Aを作製した。
接着剤AにおけるN原子の質量比率は、1.2%であった。
【0101】
<接着剤B~接着剤H>
接着剤Aにおいて、樹脂1の種類を下記表1で示すように変更した以外は、接着剤Aと同様にして、接着剤B~接着剤Hを作製した。
表1において、NBRはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体からなるニトリルゴムを示し、HNBRは水素化ニトリルゴムを示す。
表1において、接着剤Bの樹脂1は旭化成社製のM1911を、接着剤Cの樹脂1は東洋紡社製のUR3500を、接着剤Dの樹脂1は日本ゼオン社製のNX775を、接着剤Eの樹脂1は日本ゼオン社製の3610を、接着剤Fの樹脂1は旭化成社製のH1041を、接着剤Gの樹脂1は東洋紡社製のUR1700を、接着剤Hの樹脂1は日本ゼオン社製の2010Hを、それぞれ用いた。
接着剤B~接着剤HにおけるN原子の質量比率の測定結果を、表1に記載する。
【0102】
【0103】
(実施例1)
アクリル系粘着剤からなる粘着剤層が離型PETフィルム(東洋紡株式会社製、CN200、膜厚50μm)の離型層が形成された面とは反対の面に設けられた第1の離型フィルムを用意した。
エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、jER 1001)と、硬化剤(2-メチル-4-エチルイミダゾール)と、カーボンブラックとを質量比で100:2:4の割合で混合し、絶縁樹脂層用塗料を作製した。
第1の離型フィルムの粘着剤層表面に、絶縁樹脂層用塗料をダイコーダーを用いて塗布し、乾燥させて、その後、ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製、P2002)を配し、120℃でラミネート処理した。
絶縁樹脂層を120℃、48時間で硬化させ、ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製、P2002)を剥離した。硬化後の絶縁性樹脂層の膜厚は、10μmであった。
次いで、上記絶縁性樹脂層の第1の離型フィルムとは反対側の面に、電子ビーム蒸着法により銅を物理的に蒸着させて、銅蒸着膜からなる電磁波遮蔽層(膜厚1μm)を形成した。
次いで、上記接着剤Aの塗料を、上記電磁波遮蔽層の絶縁性樹脂層とは反対側の面に、ダイコーダーを用いて塗布し、その後乾燥させて、導電性接着剤層(膜厚4μm)を形成した。
非シリコーン系離型剤からなる離型剤層がPETフィルム(東洋紡株式会社製、CN200、膜厚50μm)の片側に設けられた第2の離型フィルムを用意した。
上記導電性接着剤層の電磁波遮蔽層とは反対側の面に上記第2の離型フィルムを、上記導電性接着剤層に上記離型剤層が接するようにラミネート処理し、実施例1の電磁波シールドフィルムを得た。
実施例1の電磁波シールドフィルムにおける、電磁波遮蔽層の接着剤層側の表面の算術平均粗さ(Ra)の測定結果、及び絶縁樹脂層の電磁波遮蔽層側の表面の算術平均粗さ(Ra)の測定結果を下記表2に示す。
【0104】
(電磁波シールドフィルムの評価)
<伝送特性の評価>
実施例1の電磁波シールドフィルムについて、下記の方法により、伝送特性を評価した。
伝送特性測定用プリント配線板に実施例1で得られた電磁波シールドフィルムを貼り付けた電磁波シールドフィルム付きプリント配線板において、配線板の露出した信号配線(上記プリント回路54に対応)にネットワークアナライザE5071C(アジレント・ジャパン社製)を接続し、10GHzのサイン波を入力し、伝送損失を測定し、電磁波シールドフィルムを貼り付けていない伝送特性測定用プリント配線板の伝送特性との差異から伝送特性を評価した。
上記伝送特性測定用プリント配線板として用いたFPCケーブルの構成は、次のとおりである。L2カバーレイ:ポリイミド(膜厚12.5μm)、接着層(膜厚25μm)、L2圧延銅箔(膜厚18μm)、ベース:LCP(膜厚50μm)、L1圧延銅箔(膜厚18μm)、接着層(膜厚25μm)、L1カバーレイ:ポリイミド(膜厚12.5μm)の積層順で構成されたFPCケーブルを用いた。FPCケーブルの全長は144mmで、信号線全長は140mm、両端のそれぞれ2mmが、露出部(コネクタ接続部)である。L2圧延銅箔(膜厚18μm)、ベース:LCP(膜厚50μm)、L1圧延銅箔(膜厚18μm)の積層部分は、両端のそれぞれにおいて、接着層(膜厚25μm)や、L2又はL1カバーレイ:ポリイミド(膜厚12.5μm)よりも、2mmずつ長くなって露出部分を形成しており、その露出部分には、無電解ニッケルメッキ(1μm)と無電解金メッキ(0.05μm)からなる酸化防止のための表面処理が施されている。
下記基準により伝送特性を評価した。
[評価基準]
◎ 伝送損失の差異が2.0dB/140mm未満 極めて良好である。
〇 伝送損失の差異が2.0dB/140mm以上、10.0dB/140mm未満 良好である。
× 伝送損失の差異が10.0dB/140mm以上 実用不可。
【0105】
<耐熱性の評価>
実施例1の電磁波シールドフィルムについて、下記の方法により、耐熱性を評価した。
125umのポリイミドフィルムに電磁波シールドフィルムを導電性接着剤層とポリイミドフィルムが接するように2MPa、180℃、120秒の条件でプレス処理した後、第1の離型フィルムを剥離してから150℃、1時間オーブンで加熱することで導電性接着剤層を硬化させて評価用積層体を得た。評価用積層体を288℃のはんだ浴にはんだと絶縁樹脂層が接するように10秒間浮かべた。評価用積層体をはんだ浴から取り出した後の電磁波シールドフィルムの外観から耐熱性を評価した。
下記基準により耐熱性を評価した。
[評価基準]
〇 異常なし
× 気泡等の異常が発生している
【0106】
<密着性の評価>
実施例1の電磁波シールドフィルムについて、下記の方法により、電磁波遮蔽層と接着剤層との密着性(接着性)を評価した。
上述した評価用積層体に対して、JIS K 5600-5-6:1999(ISO 2409:1992)に準拠して付着性の試験(クロスカット法)を実施した。切込みは絶縁樹脂層側から行った。5×5=25個のマスのうちの残存数から接着性を評価した。
下記基準により密着性を評価した。
[評価基準]
〇 24マス以上異常なし
× 2マス以上に異常がある
【0107】
<接続最小径の評価>
電磁波シールドフィルムの電磁波遮蔽層とFPCの伝送線路との電気的結合をできるだけ抑制し、電磁波シールドフィルムのFPCの伝送特性に及ぼす影響を抑えることができるかを以下の方法により確認した。
電磁波シールドフィルム付きプリント配線板において、貫通孔(接続孔ともいう)に存在する電磁波シールドフィルムを経由して、配線-電磁波遮蔽層-配線間で電気的に接続される際の貫通孔の最小径を測定した。
図14に示す構成の電磁波シールドフィルム付きプリント配線板を用いた。
図14において、基板110(上記ベースフィルム52に対応)上には、プリント配線111(上記プリント回路54に対応)が設けられており、該プリント配線111上には、絶縁フィルムが設けられている。
プリント配線111上の絶縁フィルムには、円形の開口部である貫通孔112及び113(接続孔ともいう、上記
図13の貫通孔62に対応)が設けられている。
貫通孔113の直径を113a及び113bのペアで変更した、プリント配線板を数種類用意した。
それぞれのプリント配線板上に、
図14で示すように電磁波シールドフィルム114を設けた。
それぞれの電磁波シールドフィルム付きプリント配線板に対して、テスターを当てて、配線-電磁波遮蔽層-配線間の抵抗値を測定した。
抵抗値が1Ω以下を示した電磁波シールドフィルム付きプリント配線板における貫通孔の直径を求め、該直径のうち最小の直径を、接続最小径とした。
【0108】
実施例1の電磁波シールドフィルムに対する、上記伝送特性、耐熱性、密着性、及び接続最小径の評価結果を下記表3に示す。
【0109】
(実施例2~実施例10)
実施例1において、電磁波遮蔽層の膜厚、及び表面の算術平均粗さ(Ra)の各条件、絶縁樹脂層の表面の算術平均粗さ(Ra)、並びに導電性接着剤層の接着剤の種類を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~実施例8の電磁波シールドフィルムを作製した。
但し、実施例7では、実施例1において、ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製、P2002)を配した後、120℃でラミネート処理したのを、温度を120℃から100℃に変更した。また、実施例8では、実施例1において、ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製、P2002)を配した後、120℃でラミネート処理したのを、温度を120℃から80℃に変更した。
実施例9では、圧延銅箔(膜厚3μm)上に、絶縁樹脂層用塗料を塗布し、乾燥させて、その後、第1の離型フィルムを配し、120℃でラミネート処理した。次いで、上記接着剤Aの塗料を、上記圧延銅箔の絶縁樹脂層側とは反対側の面に、塗布し、乾燥させて、導電性接着剤層(膜厚4μm)を形成した。その後、第2の離型フィルムを、上記導電性接着剤層に上記離型剤層が接するように貼り付けて、ラミネート処理し、実施例9の電磁波シールドフィルムを得た。
実施例10では、実施例9において、電磁波遮蔽層の膜厚、及び表面の算術平均粗さ(Ra)の各条件を表2に示すように変更した以外は、実施例10と同様にして、電磁波シールドフィルムを作製した。
作製した電磁波シールドフィルムに対して、実施例1と同様の評価を行った。
結果を表3に示す。
【0110】
(比較例1~比較例10)
実施例1において、電磁波遮蔽層の膜厚、及び表面の算術平均粗さ(Ra)の各条件、絶縁樹脂層の表面の算術平均粗さ(Ra)、並びに導電性接着剤層の接着剤の種類を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1~比較例4の電磁波シールドフィルムを作製した。
比較例5~7では、実施例1において、第1の離型フィルムの粘着剤層表面に、絶縁樹脂層用塗料を塗布、乾燥した後、絶縁性樹脂層の第1の離型フィルムとは反対側の面に、銅を蒸着させた。つまり、比較例5~7では、ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製、P2002)を用いてラミネート処理することは行わなかった。比較例5~7における、電磁波遮蔽層の膜厚、及び表面の算術平均粗さ(Ra)の各条件、絶縁樹脂層の表面の算術平均粗さ(Ra)、並びに導電性接着剤層の接着剤の種類は、表2に示すとおりである。
比較例8~9では、実施例9において、電磁波遮蔽層の膜厚、及び表面の算術平均粗さ(Ra)の各条件、並びに導電性接着剤層の接着剤の種類を表2に示すように変更した以外は、実施例9と同様にして、比較例8~9の電磁波シールドフィルムを作製した。
比較例10では、実施例9において、圧延銅箔の代わりに、電解メッキ法で作製した、電解メッキ銅箔膜を用いた以外は、実施例9と同様にして、比較例10の電磁波シールドフィルムを作製した。比較例10における電磁波遮蔽層の膜厚、及び表面の算術平均粗さ(Ra)の各条件、並びに導電性接着剤層の接着剤の種類は、表2に示すとおりである。
作製した電磁波シールドフィルムに対して、実施例1と同様の評価を行った。
結果を表3に示す。
【0111】
【0112】
【0113】
本発明は以下記載の態様を含むものである。
[1]絶縁樹脂層、電磁波遮蔽層、及び接着剤層をこの順で積層してなる電磁波シールドフィルムであって、
前記電磁波遮蔽層が、1μm以上5μm以下の厚さを有し、銅を含む金属層であり、
前記電磁波遮蔽層の前記接着剤層側の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.01μm以上0.25μm以下であり、
前記接着剤層が、樹脂を含み、前記樹脂の重量平均分子量(Mw)は50,000以上400,000以下であり、前記樹脂の酸価は2mgKOH/g以上50mgKOH/g以下を示すことを特徴とする、電磁波シールドフィルム。
[2]前記接着剤層のN原子の質量比率が、0.5%以上10%以下である、前記[1]に記載の電磁波シールドフィルム。
[3]前記接着剤層に含まれる前記樹脂が、アミン構造、アミド構造、ウレア構造、ウレタン構造、及びイミド構造のうち少なくともいずれか1つを有する樹脂である、前記[1]又は[2]に記載の電磁波シールドフィルム。
[4]前記接着剤層が、メラミン構造、トリアジン構造、リン酸構造、アルコキシシラン構造、及びメルカプト基のうち少なくともいずれか1つを有する密着性向上剤を含む、前記[1]~[3]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
[5]前記接着剤層が、2μm以上25μm以下の厚みを有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
[6]前記絶縁樹脂層の前記電磁波遮蔽層側の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.01μm以上0.3μm以下である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
[7]前記電磁波遮蔽層が、蒸着膜である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
[8]前記電磁波遮蔽層が、圧延銅箔である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
[9]前記電磁波遮蔽層と前記接着剤層との間にシランカップリング剤層を有する、前記[1]~[8]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
[10]前記[1]~[7]、及び[9]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
前記絶縁樹脂層の表面に、真空成膜法又は電解メッキ法により前記電磁波遮蔽層を形成する、電磁波シールドフィルムの製造方法。
[11]前記絶縁樹脂層の表面に、真空蒸着法により前記電磁波遮蔽層を形成する、前記[10]に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
[12]前記[1]~[9]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
前記電磁波遮蔽層の前記絶縁樹脂層側の表面と、前記絶縁樹脂層の前記電磁波遮蔽層側の表面とを、加圧及び/又は加熱によるラミネート処理を施すことにより接着させる、電磁波シールドフィルムの製造方法。
[13]前記[1]~[9]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
前記絶縁樹脂層は、前記電磁波遮蔽層に絶縁樹脂層形成用の塗料を塗布することにより形成される、電磁波シールドフィルムの製造方法。
[14]前記[1]~[9]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
前記絶縁樹脂層は、第1の離型フィルムに絶縁樹脂層形成用の塗料を塗布することにより形成される、電磁波シールドフィルムの製造方法。
[15]第1の離型フィルムに絶縁樹脂層形成用の塗料を塗布することにより前記絶縁樹脂層を形成した後、
前記絶縁樹脂層の前記電磁波遮蔽層側にセパレートフィルムを配し、加圧及び/又は加熱によるラミネート処理を施すことにより、前記絶縁樹脂層と前記セパレートフィルムとを接着させ、
その後、前記セパレートフィルムを前記絶縁樹脂層から剥離する、前記[7]に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法。
[16]前記[1]~[8]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
前記接着剤層は、前記電磁波遮蔽層に接着剤層形成用の塗料を塗布することにより形成される、電磁波シールドフィルムの製造方法。
[17]前記[9]に記載の電磁波シールドフィルムの製造方法であって、
前記シランカップリング剤層は、前記電磁波遮蔽層にシランカップリング剤層形成用の塗料を塗布することにより形成され、
前記接着剤層は、形成された前記シランカップリング剤層に接着剤層形成用の塗料を塗布することにより形成される、電磁波シールドフィルムの製造方法。
[18]基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、
前記プリント配線板の前記プリント回路が設けられた側の面に隣接する絶縁フィルムと、
前記接着剤層が前記絶縁フィルムに隣接するように設けられた前記[1]~[9]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムと、
を有する、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板。
[19]基板の少なくとも片面にプリント回路が設けられたプリント配線板と、前記[1]~[9]のいずれかに記載の電磁波シールドフィルムとを、絶縁フィルムを介して圧着する工程を有し、
圧着する際には、前記絶縁フィルムを、前記プリント配線板の前記プリント回路が設けられた側の面に密着させると共に、前記電磁波シールドフィルムの前記接着剤層に密着させる、電磁波シールドフィルム付きプリント配線板の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の電磁波シールドフィルムは、スマートフォン、携帯電話、光モジュール、デジタルカメラ、ゲーム機、ノートパソコン、医療器具等の電子機器用のフレキシブルプリント配線板における、電磁波シールド用部材として有用である。
【符号の説明】
【0115】
1 電磁波シールドフィルム
2 電磁波シールドフィルム付きフレキシブルプリント配線板
3 絶縁フィルム付きフレキシブルプリント配線板
10 絶縁樹脂層
20 電磁波遮蔽層
22 接着剤層
24 異方導電性接着剤層
24a 接着剤
24b 導電性粒子
26 等方導電性接着剤層
26a 接着剤
26b 導電性粒子
30 第1の離型フィルム
32 基材層
34 粘着剤層/離型剤層
40 第2の離型フィルム
42 基材層
44 離型剤層/粘着剤層
50 フレキシブルプリント配線板
52 ベースフィルム
54 プリント回路
60 絶縁フィルム
62 貫通孔
80 シランカップリング剤層
90 セパレートフィルム
100 キャリアフィルム
102 基材層
104 離型剤層