(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】振動装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/20 20060101AFI20241212BHJP
E04G 21/08 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E04G21/20
E04G21/08
(21)【出願番号】P 2020122908
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 政嗣
(72)【発明者】
【氏名】三橋 友行
(72)【発明者】
【氏名】池部 哲則
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特公昭51-000384(JP,B1)
【文献】特開2020-020552(JP,A)
【文献】特開2014-190128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/06-21/08
21/16-21/22
B06B1/00-3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルタル上に載置された物体を振動させる振動装置であって、
前記物体を保持する保持部と、
前記物体の上方に位置した状態で、前記保持部を振動させることで、前記物体を通じて前記モルタルを振動させる振動部と、
を備え、
前記保持部は、前記物体に形成された上方に開口する開口部に挿入可能であって、前記開口部に挿入された状態で前記開口部の径方向に広がり、前記開口部の壁面に密着可能な構成である、振動装置。
【請求項2】
前記保持部は、
軸方向に移動可能な軸部と、
前記軸部の外周を囲み、前記軸部の軸方向への移動に伴い前記軸部の径方向に移動可能な周壁部と、を有し、
前記周壁部は、前記径方向に広がることで前記開口部の壁面に密着する、
請求項1に記載の振動装置。
【請求項3】
前記振動部はモータを有し、
前記モータは、前記保持部が前記物体を保持した状態で、回転軸が前記軸方向に一致している、
請求項2に記載の振動装置。
【請求項4】
前記周壁部が前記開口部の壁面に密着したときに、
前記保持部と、前記モルタルと、の間には隙間が形成される、
請求項2に記載の振動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートブロック(以下、ブロックと言う)を積層されてなるブロック塀などは、ブロック間に、連結材としてのモルタルが介装されている。例えば、特許文献1には、連結材のモルタルを介してブロックが積層されて形成されたブロック積層構造体が開示されている。この特許文献1に記載のブロック積層構造体は、一般人にとって難しいとされる、ブロックの直線状の配置を容易にすることができる構造としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モルタルはペースト状である。このため、モルタル上にブロックを載置した際、そのブロックがモルタルに沈み込まないことがある。この場合、ブロックが直線状に整然と配置されるように、ブロックを叩いたりしてブロックをモルタルに沈み込みこませる必要がある。しかしながら、ブロックを叩くことでブロックが破損し、また、その作業が重作業となるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の目的の一つは、モルタル上に物体を載置する際、物体をモルタルに沈み込ませる振動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、モルタル上に載置された物体を振動させる振動装置であって、
前記物体を保持する保持部と、
前記物体の上方に位置した状態で、前記保持部を振動させることで、前記物体を通じて前記モルタルを振動させる振動部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、物体に振動を付与することで、物体をモルタルに沈み込ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1の振動装置の使用状態を示す図である。
【
図5】
図5は、吊ピンの構成を説明するための図である。
【
図6】
図6は、吊ピンの構成を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態2の振動装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態の振動装置について図面を参照して説明する。振動装置は、モルタル上に載置された物体に振動を付与する装置である。以下に説明する実施形態では、物体は、コンクリートブロック(以下、ブロックと言う)として説明するが、例えば、耐火物ブロックなどの定形ブロック、石庭などに設置する石などで、モルタル上に設置される物体であればよい。
【0010】
(実施形態1)
以下に、実施形態1の振動装置について説明する。
図1は、振動装置10の使用状態を示す図である。振動装置10は、ブロック102を設置する設置面100にモルタル101が塗布され、そのモルタル101上に載置されたブロック102を通じてモルタル101を振動させることで、ブロック102をモルタル101内に落とし込む装置である。
【0011】
ブロック102は直方体形状であり、その上面には、上方に開口した開口部103が形成されている。ブロック102の形状、及び、開口部103の数は特に限定されない。振動装置10は、三つの開口部103のうち、いずれか一つに、後述の吊ピン1を挿入し、その状態で振動することで、ブロック102に振動を付与する。
図1(A)は、吊ピン1を開口部103に挿入する前の状態、
図1(B)は、吊ピン1を開口部103に挿入した状態を示す。
【0012】
図2は、振動装置10の正面図である。
図3は、振動装置10の上面図である。
図4は、振動装置10の側面図である。
【0013】
振動装置10は、吊ピン1と、油圧駆動部2と、振動モータ3と、を備えている。
【0014】
吊ピン1は、径方向に拡縮可能な円筒状の部材であり、ブロック102を保持する保持部である。吊ピン1は、ブロック102の開口部103に挿入可能であって、開口部103に挿入された状態で径方向に広がり、開口部103の壁面に密着可能な構成であり、ブロック102を開口部103の内側から保持する。
【0015】
図5及び
図6は、吊ピン1の構成を説明するための図である。
図5は、吊ピン1の断面図である。
図6は、円筒状の吊ピン1を、軸方向から視た図である。なお、振動装置10は、その使用状態において、軸方向が鉛直方向と一致する。したがって、以下では、軸方向を鉛直方向として説明する。
【0016】
吊ピン1は、軸部11と、軸部11の周方向に配置される周壁部12と、軸部11と周壁部12とを接続する接続部13とを有している。
【0017】
軸部11は、鉛直方向に長い円柱形状である。軸部11は、軸支持部11Aにより、鉛直方向に移動可能に支持されていて、軸部11の一端は、油圧駆動部2に接続されている。軸部11は、油圧駆動部2が駆動することで、鉛直方向に沿って移動する。以下、軸部11の他端が軸支持部11Aに近づく方向へ軸部11を移動させることを、軸部11の引き上げと言い、軸部11の他端が軸支持部11Aから離れる方向へ軸部11を移動させることを、軸部11の引き下げと言う。
【0018】
周壁部12は、複数(
図6では四つ)の円弧状の部材を有し、軸部11の外周を囲むように、各部材が軸部11の周方向に沿って配置されている。各部材は、接続部13により軸部11に接続されている。また、周壁部12は、軸支持部11Aにより鉛直方向に直交する径方向に移動可能、かつ、鉛直方向に対して移動不可に、保持されている。
【0019】
軸部11と周壁部12とを接続する接続部13は、周壁部12との接続部分、及び、軸部11との接続部分それぞれを支点に回転可能に設けられている。そして、接続部13は、鉛直方向に対して傾斜した状態で、軸部11と周壁部12とを接続している。
【0020】
吊ピン1が上記のように構成されることで、軸部11の引き上げ及び引き下げに伴い、周壁部12は、径方向に移動するようになる。詳しくは、
図5(A)に示す状態から、軸部11を引き上げると、接続部13は、
図5(B)に示すように、周壁部12を径方向外側へ押しつつ、傾斜角度が広がるようになる。これにより、周壁部12は、径方向に拡大する。一方、
図5(B)に示す状態から、軸部11を引き下げると、接続部13は、
図5(A)に示すように、周壁部12を径方向内側へ引っぱりつつ、傾斜角度が狭めるようになる。これにより、周壁部12は、径方向に縮小する。
【0021】
図5(B)の状態において、周壁部12が開口部103の壁面に密着したとき、吊ピン1と、モルタル101との間には隙間が形成されるようになっている。これにより、モルタル101が振動装置10により直接振動されないようにでき、モルタル101の厚みを調整しやすくなる。その理由は、直接モルタル101を振動させると、直接モルタル101を振動させない場合と比較してモルタルの流動性は高くなり、厚みの制御を行い難くなるためである。
【0022】
なお、径方向に拡縮する吊ピン1の構成は、上記に限定されず、周知の構成を適宜採用することができる。
【0023】
油圧駆動部2は、軸部11の一端を支持し、油圧により、軸部11を鉛直方向に移動させる。油圧駆動部2は、例えば油圧ジャッキなど、周知の構成を採用できるため、その説明は省略する。油圧駆動部2には、油圧ポンプ接続部4が設けられている。油圧ポンプ接続部4には、動力源である不図示の油圧ポンプが接続される。
【0024】
なお、吊ピン1の軸部11を移動させる手段は、油圧式としているが、電動式であってもよいし、機械式であってもよい。
【0025】
振動モータ3は、油圧駆動部2に固定され、吊ピン1及び油圧駆動部2を振動させる振動部である。振動モータ3は、偏心モータなど、吊ピン1及び油圧駆動部2を振動させることができ、かつ、吊ピン1からブロック102へ伝わる振動を発するモータであれば特に限定されない。振動モータ3は、その回転軸3Aが鉛直方向と一致する姿勢で、油圧駆動部2に固定されている。
【0026】
以下に、上記のように構成された振動装置10の使用方法について説明する。設置面100には、モルタル101が塗布され、そのモルタル101にはブロック102が載置されている。振動装置10の吊ピン1を、径方向に縮小した状態でブロック102の開口部103に挿入する。油圧駆動部2を駆動して、軸部11を引き上げることで、周壁部12を径方向へ拡大する。これにより、周壁部12が開口部103の壁面を押すように密着する。これにより、振動装置10は、ブロック102を保持する。
【0027】
ブロック102を保持した状態で、振動モータ3を駆動して、振動装置10全体を振動させる。振動モータ3の回転軸3Aは鉛直方向と一致している。つまり、振動装置10がブロック102を保持した状態では、振動モータ3の回転軸3Aは、鉛直方向と一致している。この状態で、ブロック102を保持する吊ピン1を振動させると、回転軸の径方向及び周方向である水平方向への振動は強くなる。これにより、ブロック102は、回転軸3Aを水平方向に一致させた状態の振動モータ3を振動させた場合と比べて、より大きく水平方向へ振動するようになる。なお、このときの振動の周波数又は振幅は、ブロック102の大きさなどにより決定すればよい。
【0028】
ブロック102が振動することで、モルタル101が振動して、ブロック102は、モルタル101へ沈み込むようになる。このように、ブロック102を叩いてブロック102をモルタル101へ沈み込ませるといった重作業を必要とせず、また、叩くことでブロック102を破損することがなく、ブロック102をモルタル101へ沈み込ませることができる。
【0029】
(実施形態2)
以下に、実施形態2の振動装置について説明する。実施形態2の振動装置は、実施形態1の振動装置10ではブロック全体を振動させることができない大きさのブロックを、モルタル内に落とし込む装置である。実施形態2の振動装置は、ブロックを保持する保持部の構成が、実施形態1と相違する。
【0030】
図7は、振動装置20の平面図である。
図8は、振動装置20の側面図である。
図9は、振動装置20の正面図である。
【0031】
ブロック105は、一方向(以下、長さ方向と言う)に延びた直方体形状である。振動装置20は、ブロック105の上面に載置されて、ブロック105を振動させる。
図7は、ブロック105の上面をブロック105の高さ方向から視た図である。
図8は、長さ方向に直交する方向から視た図である。
図9は、長さ方向から視た図である。
【0032】
振動装置20は、保持部21と、振動モータ3とを備えている。
【0033】
保持部21は、ブロック105の側面を挟み込んで、ブロック105を保持する。保持部21は、ベース22と、取っ手23と、固定部24とを備えている。なお、
図7及び
図9では、固定部24の図示は省略している。
【0034】
ベース22は、ブロック105の上面に載置される。ベース22は、長さ方向に延び、少なくとも一端部は、L字状に折れ曲がっている。ベース22は、L字状に折れ曲がった部分でブロック105の側面を支持する。ベース22の他端部には固定部24が設けられている。
【0035】
固定部24は、ブロック105の側面を支持する軸部24Aと、レバー24Bとを有している。固定部24は、
図8中矢印に示すように、レバー24Bが操作されることで、軸部24Aが長さ方向に進退するよう構成されている。固定部24は、軸部24Aがブロック105側に移動することで、L字状に折れ曲がった部分と、軸部24Aとで、ブロック105を両側面から保持する。
【0036】
取っ手23は、ベース22に設けられ、ベース22の装着又は取り外しの際に作業者に握られる。
【0037】
振動モータ3はベース22に固定されている。振動モータ3は、実施形態1と同じであるため、その構成の説明は省略する。振動モータ3は、その回転軸3Aがベース22の平面に直交するように、ベース22に固定されている。つまり、振動モータ3は、その回転軸3Aが、鉛直方向に一致した姿勢となる。これにより、実施形態1と同様、ブロック105をより大きく水平方向へ振動させることができる。
【0038】
上記のように構成された振動装置20は、保持部21でブロック105を保持した状態で、振動モータ3を振動させることで、振動モータ3の振動が保持部21を介して、ブロック105からモルタルに振動が伝わるようになる。ブロック105及びモルタルが振動することで、ブロック105は、モルタルへ沈み込むようになる。このように、ブロック105を叩いてブロック105をモルタルへ沈み込ませるといった重作業を必要とせず、また、叩くことでブロック105を破損することがなく、ブロック105をモルタルへ沈み込ませることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 吊ピン
2 油圧駆動部
3 振動モータ
3A 回転軸
4 油圧ポンプ接続部
10 振動装置
11 軸部
11A 軸支持部
12 周壁部
13 接続部
21 保持部
22 ベース
23 取っ手
24 固定部
24A 軸部
24B レバー
100 設置面
101 モルタル
102 ブロック
103 開口部
105 ブロック