(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】燃料用チューブおよびその製法
(51)【国際特許分類】
B32B 1/08 20060101AFI20241212BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20241212BHJP
B29C 48/09 20190101ALI20241212BHJP
B29C 48/21 20190101ALI20241212BHJP
B60K 15/01 20060101ALI20241212BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B32B1/08 B
B32B27/34
B29C48/09
B29C48/21
B60K15/01 A
F16L11/04
(21)【出願番号】P 2020149524
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【氏名又は名称】進藤 素子
(72)【発明者】
【氏名】水谷 幸治
(72)【発明者】
【氏名】平井 亮
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-292625(JP,A)
【文献】特開2005-022312(JP,A)
【文献】特開2021-038370(JP,A)
【文献】特開2017-193101(JP,A)
【文献】特開2011-214592(JP,A)
【文献】特開2001-310386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B29C48/00-48/96
C08G69/00-69/50
C08J5/00-5/02
5/12-5/22
F16L9/00-11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる管状の内層と、その外周面に接して設けられた脂肪族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる外層と、を備え、上記内層が、下記(A)、(B)および(C)成分を脱水縮合させて得られる脂肪酸アミド化合物を含有し、
上記芳香族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物における上記脂肪酸アミド化合物の含有割合は0.05~5重量%の範囲であり、上記内層と
上記外層が層間接着されていることを特徴とする燃料用チューブ。
(A)炭素数18~50の飽和脂肪族モノカルボン酸
(B)炭素数2~21のジアミン
(C)炭素数2~14の多塩基酸
【請求項2】
芳香族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる管状の内層と、その外周面に接して設けられた脂肪族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる外層と、を備え、上記内層が、下記(A)および(B)成分を脱水縮合させて得られ、脂環構造を有する脂肪酸アミド化合物を含有し、
上記芳香族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物における上記脂肪酸アミド化合物の含有割合は0.05~5重量%の範囲であり、上記内層と
上記外層が層間接着されていることを特徴とする燃料用チューブ。
(A)炭素数18~50の飽和脂肪族モノカルボン酸
(B)炭素数2~21のジアミン
【請求項3】
上記脂肪酸アミド化合物が、上記(A)および(B)成分に加え、下記(C)成分を脱水縮合させて得られる脂肪酸アミド化合物である請求項2記載の燃料チューブ。
(C)炭素数2~14の多塩基酸
【請求項4】
上記芳香族ポリアミド樹脂組成物の主成分が、ポリアミド9T(PA9T)である請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料用チューブ。
【請求項5】
上記内層の内周面上に、さらに、フッ素系樹脂からなる最内層を備える請求項1~
4のいずれか一項に記載の燃料用チューブ。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の燃料用チューブの製法であって、上記内層形成用の芳香族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物と、上記外層形成用の脂肪族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物とを、溶融押出成形により共押出することを特徴とする燃料用チューブの製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料(ガソリン、アルコール混合ガソリン、ディーゼル燃料等)
の輸送等に用いられる燃料用チューブおよびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車を取り巻く燃料ガスの蒸散規制は厳しくなってきており、これに対応する
低透過な燃料用チューブが各種検討されている。このような燃料用チューブとしては、従
来はフッ素樹脂製のチューブであったが、より厳しい燃料低透過性能が要求される場合に
は、フッ素樹脂層の厚みを厚くせざるを得ず、そのためホースが高価になるという難点が
ある。そこで、フッ素樹脂よりも安価であり、燃料低透過性に優れる樹脂として、例えば
、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリアミド9T(PA9T)等の芳香族
ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の芳香族ポリエステル樹脂が
注目されている。これらの樹脂からなる燃料低透過層を備えたチューブは、近年、各種提
案されている(例えば、特許文献1~4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-138372号公報
【文献】特開2003-287165公報
【文献】特開2003-110736公報
【文献】特開2011-214592公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、チューブ材料に用いられる、燃料低透過性に特に優れたPA9T等の芳香族
ポリアミド樹脂は、剛性が高く、これのみを用いて単層構造のチューブとした場合、柔軟
性に劣り、特に低温での衝撃に弱く、チューブ割れを生じやすい。この問題を解消するた
め、上記芳香族ポリアミド樹脂層の厚みを薄くし、その外周に、脂肪族ポリアミド樹脂,
ポリエチレン樹脂等の、柔軟性に優れた熱可塑性樹脂からなる外層を構成した積層チュー
ブが検討されている。しかしながら、芳香族ポリアミド樹脂は、他の材料との接着性が悪
いことから、上記内層と外層との積層化には、通常、その両層の界面に接着剤層を設ける
必要がある。そのため、上記接着剤層の分だけ製造工程が複雑化し、さらにチューブ重量
の増加にもつながるといった問題が生じる。また、接着のために内層の組成物中に低分子
の脂肪酸塩を用いると、ポリアミド樹脂のアミド結合の開裂反応が進み、樹脂強度の低下
に繋がるといった問題が生じる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、燃料低透過性に優れるとともに、層間
接着性等にも優れた燃料用チューブおよびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、芳香族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物
からなる管状の内層と、その外周面に接して設けられた脂肪族ポリアミド樹脂を主成分と
する組成物からなる外層と、を備え、上記内層が、下記(A)および(B)成分を脱水縮
合させて得られる脂肪酸アミド化合物を含有し、前記内層と前記外層が層間接着されてい
ることを特徴とする燃料用チューブを第一の要旨とする。
(A)炭素数18~50の飽和脂肪族モノカルボン酸
(B)炭素数2~21のジアミン
【0007】
また、本発明は、芳香族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる管状の内層と、
その外周面に接して設けられた脂肪族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる外層
と、を備え、上記内層が、上記(A)および(B)成分に加え、下記(C)成分を脱水縮
合させて得られる脂肪酸アミド化合物を含有し、前記内層と前記外層が層間接着されてい
ることを特徴とする燃料用チューブを第二の要旨とする。
(C)炭素数2~14の多塩基酸
【0008】
さらに、本発明は、芳香族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる管状の内層と
、その外周面に接して設けられた脂肪族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる外
層と、を備え、上記内層に特定の脂肪酸アミド化合物を含有し、上記脂肪酸アミド化合物
が脂環構造を有し、前記内層と前記外層が層間接着されていることを特徴とする燃料用チ
ューブを第三の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、上記第一から第三の要旨の燃料用チューブの製法であって、上記内層
形成用の芳香族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物と、上記外層形成用の脂肪族ポリア
ミド樹脂を主成分とする組成物とを、溶融押出成形により共押出する燃料用チューブの製
法を第四の要旨とする。
【0010】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。そして、燃料低
透過性に優れたPA9T等の芳香族ポリアミド樹脂製内層の外周に、PA12等の脂肪族
ポリアミド樹脂からなる外層を備えた積層チューブに関し、その内層/外層間の層間接着
性を改善することを中心に研究を重ねた。その研究の過程で、上記積層チューブにおける
、内層/外層間の層間接着性の悪さは、
外層材料である脂肪族ポリアミド樹脂と内層材料である芳香族ポリアミド樹脂の線膨張係
数の違いにより、熱溶融時には接着していても、冷却後には物理的な微小な空隙が発生す
ることがその一因であるとの知見を得、本発明者らが更に研究を重ねた結果、内層材料中
に特定の脂肪酸アミド化合物を配合することにより、特定の脂肪酸アミド化合物が内層材
料である芳香族ポリアミド樹脂中の表面にブリードアウトし、特定の脂肪酸アミド化合物
の飽和脂肪族の部分が外層材料である脂肪族ポリアミド樹脂と水素結合により結合し、特
定の脂肪酸アミド化合物のアミド結合の部分が内層材料である芳香族ポリアミド樹脂と水
素結合による結合することで冷却後の物理的な微小な空隙発生を抑制するからである。
これにより、所望の層間接着力が得られることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の燃料用チューブは、PA9T等の芳香族ポリアミド樹脂を主成
分とする樹脂組成物からなる管状の内層と、脂肪族ポリアミド樹脂を主成分する樹脂組成
物からなる外層とを備え、上記内層形成用樹脂組成物に、特定の脂肪酸アミド化合物を含
有するものである。そのため、本発明の燃料用ホースは、層間接着性が高く、また、軽量
で、燃料低透過性に優れるとともに、柔軟性、低温衝撃性、耐熱性にも優れている。また
、本発明の燃料用チューブは、その層間の接着を接着剤レスで行うことが可能であり、し
かも、材料コストが安価であるため、上記のように高性能であるにもかかわらず、低コス
ト化を達成することができる。
【0012】
また、上記内層の内周面上に、さらに、フッ素系樹脂からなる最内層を備えると、より
燃料低透過性に優れるようになる。
【0013】
そして、上記燃料用チューブは、内層形成用の樹脂組成物と、外層形成用の樹脂組成物
とを、溶融押出成形により共押出することによって、内層材料中の特定の脂肪酸アミド化
合物の作用により、接着剤レスで層間接着がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の燃料用チューブの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
本発明の燃料用ホースは、例えば、
図1に示すように、燃料を流通させる管状の内層1
の外周面に、外層2が積層形成されて、構成されている。
そして、芳香族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる管状の内層1と、その外周
面に接して設けられた脂肪族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる外層2と、を
備え、上記内層1が、下記(A)および(B)成分を脱水縮合させて得られる脂肪酸アミ
ド化合物を含有し、前記内層と前記外層が層間接着されているという構成をとる。
なお、上記芳香族ポリアミド樹脂および脂肪族ポリアミド樹脂の「主成分」とは、その樹
脂組成物全体の特性に大きな影響を与えるもののことであり、本発明においては、全体の
50重量%以上を意味する。
(A)炭素数18~50の飽和脂肪族モノカルボン酸
(B)炭素数2~21のジアミン
【0017】
また、芳香族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる管状の内層1と、その外周
面に接して設けられた脂肪族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる外層2と、を
備え、上記内層1が、上記(A)および(B)成分に加え、下記(C)成分を脱水縮合さ
せて得られる脂肪酸アミド化合物を含有し、前記内層と前記外層が層間接着されていると
いう構成をとる。
(C)炭素数2~14の多塩基酸
【0018】
さらに、芳香族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる管状の内層1と、その外
周面に接して設けられた脂肪族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物からなる外層2と、
を備え、上記内層1が、特定の脂肪酸アミド化合物を含有し、上記脂肪酸アミド化合物が
脂環構造を有し、前記内層1と前記外層2が層間接着されているという構成をとる。
【0019】
上記内層1の形成材料として用いられる芳香族ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリ
アミド4T(PA4T)、ポリアミド6T(PA6T)、ポリアミドMXD6(PAMX
D6)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリアミド10T(PA10T)、ポリアミド1
1T(PA11T)、ポリアミド12T(PA12T)、ポリアミド13T(PA13T
)等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、柔軟
性とバリア性の観点から、PA9Tが好ましく用いられる。
【0020】
また、上記のように、内層1用材料には、炭素数18~50の飽和脂肪族モノカルボン
酸および炭素数2~21のジアミンを脱水縮合させて得られる脂肪酸アミド化合物が配合
される。炭素数18~50の飽和脂肪族モノカルボン酸について好ましくは、炭素数18
~30の飽和脂肪族モノカルボン酸である。すなわち、飽和脂肪族モノカルボン酸とジア
ミンの炭素数が上記範囲未満であると、脂肪族ポリアミド樹脂との水素結合が弱くなるか
らであり、逆に、炭素数が上記範囲を超えると、芳香族ポリアミド中からのブリードアウ
トが極端に進み過ぎるからである。そして、上記飽和脂肪族モノカルボン酸の具体例とし
ては、例えば、ステアリン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、ペンタコシル酸、ネルボ
ン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、その他市販品として炭素数18~50の直
鎖アルキル基に一級カルボキシル基を有する化合物のような無置換飽和脂肪族モノカルボ
ン酸類等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記飽和脂
肪族モノカルボン酸のなかでも、脂肪族ポリアミドとの水素結合に優れる点から、モンタ
ン酸が、好ましく用いられる。
炭素数2~21のジアミンについて好ましくは、炭素数2~10のジアミンである。すな
わち、飽和脂肪族モノカルボン酸とジアミンの炭素数が上記範囲未満であると、芳香族ポ
リアミド樹脂との水素結合が弱くなるからであり、逆に、炭素数が上記範囲を超えると、
芳香族ポリアミド樹脂との相溶性が低下するからである。そして、上記ジアミンの具体例
としては、例えば、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミ
ン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシレン
ジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,1
2-ドデカンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミ
ン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4
-ビスアミノメチルシクロヘキサン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロ
ヘキシルアミン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジイルジメタンアミン、4,4
-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシ
ルアミン)、2,2’-ジメチル-4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-1-イルア
ミン)が挙げられる。中でも脂環式ジアミン類がより好ましく、脂環式ジアミンとして、
1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキ
サンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4-ビスアミノメチルシク
ロヘキサン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン、ビシク
ロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジイルジメタンアミン、4,4-ジアミノジシクロヘキ
シルメタン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、2,2’-
ジメチル-4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-1-イルアミン)が挙げられる。
これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。上記ジアミンのなかでも、芳香族ポ
リアミドとの水素結合に優れる点から、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンが、好
ましく用いられる。
【0021】
さらに、上記のように、内層1用材料には、炭素数18~50の飽和脂肪族モノカルボ
ン酸および炭素数2~21のジアミン成分に加え、炭素数2~14の多塩基酸を脱水縮合
させて得られる脂肪酸アミド化合物が配合される。好ましくは、炭素数2~10の多塩基
酸である。すなわち、多塩基酸の炭素数が上記範囲未満であると、脂肪族ポリアミド樹脂
との水素結合が弱くなるからであり、逆に、炭素数が上記範囲を超えると、芳香族ポリア
ミド中からのブリードアウトが極端に進み過ぎるからである。そして、上記多塩基酸の具
体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ピメリン酸、
アゼライン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボ
ン酸、ダイマー酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸として、フタル酸、テレフタル酸
、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。中でも脂環式ジカルボン酸がより好ましく、
脂環式ジカルボン酸として、1,1-シクロプロパンジカルボン酸、1,2-シクロプロ
パンジカルボン酸、1,1-シクロブタンジカルボン酸、1,2-シクロブタンジカルボ
ン酸、1,3-シクロブタンジカルボン酸、3,4-ジフェニル-1,2-シクロブタン
ジカルボン酸、2,4-ジフェニル-1,3-シクロブタンジカルボン酸、3,4-ビス
(2-ヒドロキシフェニル)-1,2-シクロブタンジカルボン酸、2,4-ビス(2-
ヒドロキシフェニル)-1,3-シクロブタンジカルボン酸、1-シクロブテン-1,2
-ジカルボン酸、1-シクロブテン-3,4-ジカルボン酸、1,1-シクロペンタンジ
カルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン
酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,
4-シクロヘキサンジカルボン酸、1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シ
クロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、1,4-(2-ノルボルネン)ジカルボン酸、2
,3-ノルボルナンジカルボン酸、3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボ
ン酸、4-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、スピロ[3.3]ヘプ
タン-2,6-ジカルボン酸、1,1-シクロヘキサン二酢酸、1,4-シクロヘキサン
二酢酸、cis-1,2,2-トリメチル-1,3-シクロペンタンジカルボン酸、ビシ
クロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン
-2,3-ジカルボン酸、2,5-ジオキソ-1,4-ビシクロ[2.2.2]オクタン
ジカルボン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、4,8-ジオキソ-1,3-アダマ
ンタンジカルボン酸、2,6-デカリンジカルボン酸、1,5-デカリンジカルボン酸、
1,6-デカリンジカルボン酸、2,3-デカリンジカルボン酸、2,7-デカリンジカ
ルボン酸、1,3-アダマンタン二酢酸が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上
併せて用いられる。上記多塩基酸のなかでも、脂肪族ポリアミド樹脂との接着性に優れる
点から、1,1-シクロヘキサン二酢酸が、好ましく用いられる。
【0022】
上記内層1用材料である芳香族ポリアミド樹脂を主成分とする組成物における上記脂肪
酸アミド化合物の含有割合は、0.05~5重量%の範囲であることが好ましく、より好
ましくは、0.1~1重量%の範囲である。すなわち、上記範囲未満であると、脂肪酸ア
ミド化合物による所望の層間接着効果が得られないからであり、逆に、上記範囲を超える
と、接着界面近傍において、過剰に偏在することで、この場合も、所望の層間接着効果が
得られなくなるからである。
【0023】
上記外層2の形成材料として用いられる脂肪族ポリアミド樹脂としては、例えば、ポリ
アミド46(PA46)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリ
アミド99(PA99)、ポリアミド610(PA610)、ポリアミド612(PA6
12)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド912(PA912)、ポリアミド1
2(PA12)、ポリアミド6とポリアミド66との共重合体(PA6/66)、ポリア
ミド6とポリアミド12との共重合体(PA6/12)等があげられる。これらは単独で
もしくは二種以上併せて用いられる。
【0024】
なお、上記内層1用材料や外層2用材料には、その主成分である樹脂や、それに添加さ
れる特定の脂肪酸アミド化合物以外にも、必要に応じ、カーボンブラック、酸化チタン等
の顔料、炭酸カルシウム等の充填剤、脂肪酸エステル,ミネラルオイル,ブチルベンゼン
スルホンアミド等の可塑剤、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸
化防止剤、耐熱老化防止剤、α-ポリオレフィン等の耐衝撃剤、紫外線防止剤、帯電防止
剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカー等の補強剤、難燃剤等を含有して
も差し支えない。
【0025】
前記
図1に示した本発明の燃料用ホースは、例えば、つぎのようにして作製することが
できる。すなわち、先に述べたような、内層1用材料および外層2用材料をそれぞれ準備
し、その各層の形成材料を、例えば、押出成形機(プラスチック工学研究所社製の多層押
出成形機)を用いて溶融混練(内層材料は260~330℃、外層材料は200~250
℃で混練する)しながら共押出成形し、この共押出した溶融チューブをサイジングダイス
に通すことにより、内層1の外周面に外層2が形成されてなる、2層構造の燃料用ホース
を作製することができる。このように溶融押出(共押出)成形することによって、内層1
材料中の特定の脂肪酸アミド化合物の作用により、両層の層間が良好に接着されるように
なる。
【0026】
なお、ホースを蛇腹状に形成する場合には、上記共押出した溶融チューブをコルゲート
成形機に通すことにより、所定寸法の蛇腹状ホースを作製することが可能である。
【0027】
このようにして得られる本発明の燃料用ホースにおいて、ホース内径は1~40mmの
範囲内が好ましく、特に好ましくは2~36mmの範囲内であり、ホース外径は2~44
mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは3~40mmの範囲内である。また、内層1の
厚みは0.02~1.0mmの範囲内が好ましく、特に好ましくは0.05~0.6mm
の範囲内である。外層2の厚みは、0.03~1.5mmの範囲内が好ましく、特に好ま
しくは0.05~1.0mmの範囲内である。
【0028】
なお、本発明の燃料用ホースは、前記
図1に示したような2層構造に限定されるもので
はなく、例えば、内層1の内周面に最内層を形成した3層構造に形成することも可能であ
る。
【0029】
そして、上記最内層は、フッ素系樹脂からなるものであると、本発明の燃料用ホースが
、より燃料低透過性に優れるようになり、好ましい。上記フッ素系樹脂としては、例えば
、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリ
クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、
テトラフロオロエチレン・ヘキサフルオロ共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン
・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・
ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、エチレンとテ
トラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、エチレンとポリクロロトリフルオロエチ
レンの共重合体(ECTFE)等の共重合体や、それらの変性共重合体、各種グラフト重
合体及びブレンド体、さらに、これらにカーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチュ
ーブ、導電性高分子等を添加し、導電性が付与された導電フッ素系樹脂等があげられる。
これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0030】
上記内層1の内周面に最内層を形成してなる、本発明の燃料用ホースは、例えば、つぎ
のようにして作製することができる。すなわち、先の内層1用材料および外層2用材料と
ともに、最内層用材料を準備し、先に述べた製法に準じ、最内層を、内層1および外層2
とともに共押出成形するか、もしくは、別途、最内層用押出成形機を用いて、先に述べた
製法により成形された内層1の内周面に最内層を押出成形し、これにより得られた溶融チ
ューブをサイジングダイスに通すことにより、内層1の内周面に最内層が形成されてなる
燃料用ホースを作製することができる。
【0031】
本発明の燃料用ホースにおいて、上記最内層の厚みは、0.03~0.5mmの範囲内
が好ましく、特に好ましくは0.05~0.3mmの範囲内である。なお、上記最内層を
構成する本発明の燃料用ホースにおいて、内層1,外層2の厚み、ホース内径,外径の好
適な範囲は、先の記載に準じる。
【0032】
また、本発明の燃料用ホースは、必要に応じて、例えば、外層2の外周に、適宜の材料
からなる最外層を形成した構造であっても差し支えない。
【0033】
本発明の燃料用ホースは、ガソリン、アルコール混合ガソリン、ディーゼル燃料、CN
G(圧縮天然ガス)、LPG(液化石油ガス)等の自動車用燃料の輸送用ホースとして好
適に用いられるが、これに限定されるものではなく、メタノールや水素、ジメチルエーテ
ル(DME)等の燃料電池自動車用の燃料輸送用ホースとしても使用可能である。
【実施例】
【0034】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限
定されるものではない。
【0035】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0036】
〔PA9T〕
ジェネスタ N1001A(融点:304℃)、クラレ社製
【0037】
〔PA6T〕
アーレン AE4200、三井化学社製
【0038】
〔MXD6〕
レニーS6007、三菱ガス化学社製
【0039】
〔脂肪酸アミド化合物(i)〕
スリパックスE(エチレンビスステアリン酸アミド、炭素数18の飽和脂肪族モノカル
ボン酸/炭素数2のジアミン)、三菱ケミカル社製
【0040】
〔脂肪酸アミド化合物(ii)〕
スリパックスZHB(ヘキサメチレンビスべヘン酸アミド、炭素数22の飽和脂肪酸モ
ノカルボン酸/炭素数6のジアミン)、三菱ケミカル社製
【0041】
〔脂肪酸アミド化合物(iii)〕
攪拌器、温度計、分水器を備えた反応装置に、モノカルボン酸としてモンタン酸(和光
純薬工業社製)850質量部と、ジカルボン酸としてマレイン酸(和光純薬工業社製)2
00質量部と、ジアミンとしてヘキサメチレンジアミン(和光純薬工業社製)300質量
部を加え、窒素雰囲気下、180~220℃で3~5時間、脱水しながら縮合反応を行っ
てアミド化させ室温まで冷却し、脂肪酸アミド化合物(iii)を得た。
【0042】
〔脂肪酸アミド化合物(iv)〕
攪拌器、温度計、分水器を備えた反応装置に、脂肪族モノカルボン酸としてモンタン酸
(和光純薬工業社製)850質量部と、脂環式ジカルボン酸として1,1-シクロヘキサ
ン二酢酸(和光純薬工業社製)200質量部と、脂環式ジアミンとして1,3-ビスアミ
ノメチルシクロヘキサン(和光純薬工業社製)300質量部を加え、窒素雰囲気下、18
0~220℃で3~5時間、脱水しながら縮合反応を行ってアミド化させ室温まで冷却し
、脂肪酸アミド化合物(iv)を得た。
【0043】
〔飽和脂肪族金属塩〕
ステアリン酸亜鉛、和光純薬社製
【0044】
〔PA12〕
リルサン AESN NOIR P20TL、アルケマ社製
【0045】
〔耐衝撃剤〕
タフマーA-4085(α-ポリオレフィン)、三井化学社製
【0046】
〔可塑剤〕
ブチルベンゼンスルホンアミド、和光純薬工業社製
【0047】
〔耐熱老化防止剤〕
イルガノックス1010、チバ・ジャパン社製
【0048】
〔フッ素樹脂〕
ネオフロン RP5000、ダイキン工業社製
【0049】
つぎに、上記材料を用いて、以下に示すようにホースを作製した。
【0050】
〔実施例1~10、比較例1~2〕
下記の表1~表3に示す、最内層用材料(実施例9、10のみ),内層用材料,外層用
材料を準備し、これらを、押出成形機(プラスチック工学研究所社製の多層押出成形機)
を用いて溶融混練し、共押出成形することにより、内径6mmの平滑ホースを作製した。
なお、上記作製した平滑ホースが2層構造の場合、内層の厚み0. 3mm/外層の厚み0
. 7mmとし、3層構造の場合、最内層の厚み0.05mm/内層の厚み0.25mm/
外層の厚み0.7mmとした。
【0051】
このようにして得られた実施例および比較例のホースを用い、下記の基準に従い、各特
性の評価を行った。
【0052】
〔燃料透過量〕
各ホースに対し、等圧式ホース透過率測定装置(GTRテック社製、GTR-TUBE
3-TG)を用いて、トルエン/イソオクタン/エタノールを45:45:10(体積比
)の割合で混合した模擬アルコール添加ガソリンの透過係数を、40℃で一カ月間測定し
た(単位:mg/m/day)。なお、表に記載した値は、平衡に達したときの値である
。そして、この値が、50(mg/m/day)未満のものを○、50(mg/m/da
y)以上のものを×と評価した。
【0053】
〔層間接着力〕
各ホースを、10mm幅で短冊状に切断して、サンプルを作製した。そして、各サンプ
ルの層間(実施例1~10,比較例1~2においては、内層/外層間。実施例15~20
においては、最内層/内層、および内層/外層間。)を剥離させ、各々引張試験機のチャ
ックに挟み、引張速度50mm/分の条件で、180°剥離強度(N/cm)を測定した
。なお、剥離強度が25N/cm以上であれば、層間接着性が良好という目標値を設定し
、その評価において○と表記し、20N/cm以上25N/cm未満のものは△、20N
/cm未満のものは×と評価した。なお、本発明においては、△以上の評価(○、△)が
要求される。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
上記結果から、実施例品は、いずれも燃料透過量が小さく、層間接着性に優れているこ
とがわかる。
【0058】
これに対して、比較例1品は、実施例品と同様、PA9T内層とPA12外層との積層
構造をとるが、内層材料に特定の脂肪酸アミド化合物を含有しておらず、実施例品のよう
な層間接着性が得られていない。比較例2品は、内層が発泡し、成形することができなか
った。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の燃料用ホースは、ガソリン、アルコール混合ガソリン、ディーゼル燃料、CN
G(圧縮天然ガス)、LPG(液化石油ガス)等の自動車用燃料の輸送用ホースして好適
に用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 内層
2 外層