(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】カチオン性ポリマー配合化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20241212BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241212BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20241212BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241212BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20241212BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/34
A61K8/60
A61Q19/00
A61Q5/00
A61Q1/02
(21)【出願番号】P 2020174549
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(72)【発明者】
【氏名】太田 聡子
(72)【発明者】
【氏名】森 優子
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058813(JP,A)
【文献】特開2020-152700(JP,A)
【文献】特開2020-079239(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057571(WO,A1)
【文献】特開2004-352632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記一般式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)とを有し、
全構造単位100質量%に対して、該構造単位(A)の割合が50~95質量%であり、該構造単位(B)の割合が5~50質量%であり、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
重量平均分子量が2万~5万である共重合体と、保湿剤とを含有することを特徴とする化粧料
であって、
保湿剤が、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールから選択されるいずれか1 以上と、マンニトールと、ラフィノースとを含有することを特徴とする化粧料。
【化1】
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性ポリマーを配合した使用感に優れた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料を最後まで衛生的に保つためには、抗菌剤や防腐剤を配合して微生物が化粧料中で繁殖することを防ぐことが有効である。しかし、抗菌剤、防腐剤の多くは、皮膚刺激が強く、皮膚に残存して肌荒れなどの肌トラブルを引き起こすことが知られている。そこで、抗菌、防腐効果と肌への安全性を兼ね備えた素材の開発がされている。
【0003】
特許文献1(特開2016-183116号公報)は、抗菌性と安全性に優れたカチオン性ポリマーを開示している。特許文献1(特開2016-183116号公報)で開示されている、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体は、確かに優れた抗菌性と安全性を兼ね備えている。しかし、化粧料に配合する場合、同じINCI名である(アクリレーツ/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)コポリマーとして市販されている化粧品用原料に比べて、ポリマー独特の膜感やきしみ感を強く感じてしまうという、当該ポリマー独特の使用感の課題があった。
【0004】
ポリマー独特の膜感やきしみ感を抑制して滑らかさを付与するため、高分子量のシリコーンを配合する試みがなされている。例えば、特許文献2(特開平8-92044号公報)では、整髪用樹脂と高分子量シリコーンを含有するエアゾールタイプの毛髪化粧料、特許文献3(特開2010-53083号公報)では、皮膜形成ポリマー、高重合シリコーン、炭化水素油および高級アルコールを含有するエアゾールスプレー型整髪剤用組成物などが提案されている。
【0005】
化粧料の使用目的のひとつは、皮膚の乾燥を防ぎ、皮膚表面の水分を調節し、皮膚にしっとり感を与えることである。このため、化粧品には保湿剤として種々の成分が添加される。保湿剤として一般的に用いられるものとしては、グリセリンや1,3-ブチレングリコール、ソルビトールなどの多価アルコール、アミノ酸や有機酸、ヒアルロン酸などの生体系保湿成分がある。これらの保湿剤は、保湿効果と同時に皮膚にべたつくような不快な感触を与える。このため、これらの保湿剤を配合する場合、べたついた使用感とならないように様々な技術が提案されている。また、保湿剤は、べたつき感以外にもぬるつき感など不快な使用感を与えることも指摘されている。
例えば、特許文献4(特開2001-354510号公報)には、一般的な保湿剤を、外用組成物に多量に配合すると、得られる外用組成物は、皮膚の保湿効果に優れるものの、べたついた使用感を生じるが、炭素原子数が4~6の糖アルコールとシリコーン油とを配合すると、得られる水中油型の外用組成物は、一般的な保湿剤やムコ多糖類を単に配合して得た外用組成物よりも、皮膚に対する保湿効果に優れ、べたついた使用感のない外用組成物となることが開示されている
【0006】
特許文献5(特開2017-014120号公報)は、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3-ブチレングリコール、ソルビトール、マルチトール、マンニトールおよびブドウ糖などの保湿剤を含む化粧料にトリプロピレングリコールを配合すると、保湿剤に起因するべたつき感やぬるつき感等の不快な使用感を低減した優れた化粧料が得られることを開示している。
【0007】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体と保湿剤とを組み合わせることにより、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体の抗菌性と安全性を維持しつつ、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体独特の膜感やきしみ感や、保湿剤によるべたつき感、ぬるつき感がなく、優れた使用感の化粧料を得られることを見出し本発明を完成させた。本発明は、これらの知見に基づき、新たな化粧料を提案するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-183116号公報
【文献】特開平8-92044号公報
【文献】特開2010-53083号公報
【文献】特開2001-354510号公報
【文献】特開2017-014120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、下記一般式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記一般式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)とを有し、
全構造単位100質量%に対して、該構造単位(A)の割合が50~95質量%であり、該構造単位(B)の割合が5~50質量%であり、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
重量平均分子量が2万~5万である共重合体に独特の膜感、きしみ感や、保湿剤独特のべたつき感といった不快な使用感を感じることなく、使用感(のび、肌へのなじみ感、なじんだ後のさらさら感、保湿感)に優れた化粧料を提供することを課題とする。
【0010】
【0011】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題を解決するための手段は以下のとおりである。
1.下記一般式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記一般式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)とを有し、
全構造単位100質量%に対して、該構造単位(A)の割合が50~95質量%であり、該構造単位(B)の割合が5~50質量%であり、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
重量平均分子量が2万~5万である共重合体と、保湿剤とを含有することを特徴とする化粧料。
【0013】
【0014】
【化4】
2.1.に記載の保湿剤が、多価アルコール、糖アルコール又は糖類から選択されるいずれか1以上を含有することを特徴とする1.に記載の化粧料。
3.1.に記載の保湿剤が、多価アルコールから選択されるいずれか1以上と、糖アルコール若しくは糖類から選択されるいずれか1以上とを含有することを特徴とする1.または2.に記載の化粧料。
4.1.に記載の保湿剤が、多価アルコールから選択されるいずれか1以上と、糖アルコール若しくは糖類から選択されるいずれか2以上とを含有することを特徴とする1.~3.に記載の化粧料。
5.1.に記載の保湿剤が、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ブチレングリコール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、グルコース、ラフィノース、トレハロースから選択されるいずれか1以上を含有することを特徴とする1.~4.に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0015】
本発明の化粧料によって、本発明に用いるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体独特の膜感やきしみ感、保湿剤独特のべたつき感などの不快な使用感を感じることなく、優れた使用感(のび、肌へのなじみ感、なじんだ後のさらさら感、保湿感)を得ることができる。さらに、本発明に用いるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体の抗菌性と肌への安全性を維持して、化粧料を衛生的に最後まで使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の化粧料は、抗菌性や安全性を兼ね備えたカチオン性ポリマーを使用感よく化粧料に配合することができ、優れた使用感(のび、肌へのなじみ感、なじんだ後のさらさら感、保湿感)を得ることができる。
【0017】
本発明は、下記一般式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記一般式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)との共重合体(INCI名:(アクリレーツ/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)コポリマー)と、保湿剤を含有する化粧料に関する。
【0018】
【0019】
【化6】
全構造単位100質量%に対して、
構造単位(A)の割合が、50~95質量%、構造単位(B)の割合が5~50質量%、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
この共重合体の重量平均分子量が2万~5万である。
【0020】
<共重合体について>
共重合体の全構造単位100質量%に対する構造単位(A)の割合は、50~95質量%であり、50~90質量%が好ましく、50~75質量%がより好ましく、55~65質量%がさらに好ましい例として挙げられる。
共重合体の全構造単位100質量%に対する構造単位(B)の割合は、5~50質量%であり、10~50質量%が好ましく、25~50質量%がより好ましく、35~45質量%がさらに好ましい例として挙げられる。
なお、本明細書において、「A~B」(A、Bは数値)との記載は、A、Bも含む範囲を表す。
【0021】
本発明に用いる共重合体は、上記メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)及びメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。その他の単量体(E)としては、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル及びメタクリル酸エチルと共重合できるものである限り特に制限されない。
【0022】
以下に単量体(E)として用いることが出来る単量体を例示する。
例えば、不飽和モノカルボン酸(塩)であり、(メタ)アクリル酸(塩)などが挙げられる。
例えば、(メタ)アクリル酸とアルキルアルコールとのエステルとして、アルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。この場合アルキル基は直鎖構造であっても、分岐構造であってもよく、炭素数は1~12が好ましい。
例えば、上記(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステル(メタ)アクリレート類で、置換基を有するものが挙げられる。この場合置換基としては、水酸基、アルコキシ基、オキシアルキレン基、スルホン基などが挙げられる。
例えば、エチレン性不飽和基を2個以上有する単量体が含まれていてもよい。
例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、1,4-ブタンジオール等のポリオールの2置換以上の水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステル類;上記ポリオールの2置換以上の水酸基とアリルアルコール、ビニルアルコール等の不飽和アルコールとのエーテル類等が挙げられる。
これらその他の単量体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
(保湿剤)
本発明に用いる保湿剤とは、化粧品として必要な皮膚の保湿機能(湿潤機能)を有する物質であればよい。このような物質としては、多価アルコール、糖アルコール、糖類や保湿効果を有する各種物質が利用可能である。多価アルコール、糖アルコール、糖類以外の保湿効果を有する物質としては、コラーゲン、アミノ酸を例示できる。
【0024】
(多価アルコール)
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオールなどのグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどのグリセリン類;ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド類が挙げられる。
本発明の化粧料において、肌への優れた使用感の観点で、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ブチレングリコールが好ましいものとして挙げられる。
【0025】
(糖アルコール)
糖アルコールとしては
キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、アラビトール、リビトール、ガラクチトール、グルシトール、エリトリトールなどの糖アルコールが挙げられる。
肌に塗布したときの使用感の観点で、マンニトール、ソルビトール、マルチトールが好ましく、肌に塗布したときのべたつき感、なじんだ後のさらさら感の観点でマンニトール、ソルビトールがとくに好ましい。
【0026】
(糖類)
糖類としては、グルコース、フルクトース等の単糖類、スクロース、トレハロース等の二糖類、ラフィノース等の三糖類、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸等のムコ多糖類などを使用することができる。本発明の化粧料に用いるポリマー独特の膜感やきしみ感を抑制する効果の高さ、べたつき感を感じずに肌になじんだ後のさらさら感の観点から、単糖類、二糖類、三糖類が好ましく、グルコース、ラフィノース、トレハロースがさらに好ましい。
【0027】
アミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジンを例示できる。
【0028】
本発明の化粧料に用いる多価アルコール、糖アルコールならびに糖類として、多価アルコールから選択される1以上と、糖アルコール若しくは糖類から選択される1以上とを配合することが好ましく、多価アルコールから選択される1以上と、糖アルコール若しくは糖類から選択される2以上とを配合することが、より優れた使用感が得られる点でさらに好ましい。
【0029】
本発明に用いるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体の濃度は、抗菌作用が期待できる範囲内であれば特に制限されないが、濃度の下限値は、化粧料全質量%に対して、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがさらに好ましい。また、濃度の上限値は、化粧料全質量%に対して20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることがとくに好ましい。
【0030】
本発明の化粧料において、本発明に用いるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体1質量%に対する保湿剤の質量比は、0.5以上500以下であるが好ましく、1以上500以下がより好ましい。質量比が0.5未満であると、本発明に用いるポリマー独特のきしみ感や膜感を感じる場合があり、500を超えると保湿剤に由来するべたつき感を感じて使用感に劣る場合がある。
【0031】
本発明の化粧料において、本発明に用いるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体1質量%に対する多価アルコールの質量比は、0.5以上500以下であるが好ましく、1以上400以下がより好ましい。本発明の化粧料において、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体1質量%に対する糖アルコール若しくは糖類の質量比は、0.5以上500以下であることが好ましく、1以上200以下がより好ましい。
【0032】
本発明の化粧料に用いる多価アルコール、糖アルコールならびに糖類として、多価アルコールから選択される1以上と、糖アルコール若しくは糖類から選択される1以上とを配合する場合、または、多価アルコールから選択される1以上と、糖アルコール若しくは糖類から選択される2以上とを配合する場合、本発明に用いるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体1質量%に対する多価アルコールの質量比が、1以上400以下であり、該共重合体1質量%に対する糖アルコール若しくは糖類の質量比が、1以上100以下であることが好ましい。
【0033】
本発明の化粧料は、通常使用される製剤化方法にしたがって製造することができ、化粧水、乳液、クリーム、ジェル等の溶液状、乳化物状、高分子ゲル状製剤、また、泡状製剤、多層状製剤、スプレー製剤、不織布等に含浸させたシートあるいはゲルパック製剤とすることができる。
【0034】
本発明の化粧料には本発明の効果を損なわない限り、植物油のような油脂類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、香料、pH調整剤等を含有させることができる。ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
【0035】
本発明の化粧料は常法により製造することができる。
【0036】
以下、本願発明者らが行った試験であって、該発明者らが、
下記一般式(1)で表されるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル由来の構造単位(A)と、下記一般式(2)で表されるメタクリル酸エチル由来の構造単位(B)とを有し、
全構造単位100質量%に対して、該構造単位(A)の割合が50~95質量%であり、該構造単位(B)の割合が5~50質量%であり、その他の単量体由来の構造単位の割合が5質量%未満であり、
重量平均分子量が2万~5万である共重合体と、保湿剤とを含有することを特徴とする化粧料が、該共重合体独特の膜感やきしみ感を感じず、優れた使用感が得られるという知見を得た試験について説明する。本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0037】
【0038】
【実施例】
【0039】
<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)>
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。測定条件、装置などは以下の通りである。
装置:Waters社製 e2695
検出器:示差屈折率計(RI)検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel α-M、α-2500
カラム温度:40℃
流速:0.8mL/min
注入量:10μL(試料濃度0.4wt%の溶離液調製溶液)
検量線:ジーエルサイエンス社製 ポリエチレングリコール
GPCソフト:Waters社製 EMPOWER3
溶離液:0.5M酢酸+0.2M硝酸Na/アセトニトリル=50/50(v/v)
【0040】
実施例1~41、比較例1~8として、各成分を表1~4に示す質量比で配合し、化粧料を調製した。使用した各成分は、以下の通りである。
【0041】
本発明に用いるメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体として、株式会社日本触媒製の、全構造単位100質量%に対してメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが約60質量%、メタクリル酸エチルが約40質量%であり、分子量が約30000である共重合体(以下、共重合体(1))、または、全構造単位100質量%に対してメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルが約87質量%、メタクリル酸エチルが約10質量%、アクリル酸が約3質量%であり、分子量が約40000である共重合体(以下、共重合体(2))を用いた。
【0042】
POEアルキルグルコシドは、マクビオブライドMG-10E(日油株式会社製)を用いて試験を行った。その他に、マクビオブライドMG-20E(日油株式会社製)、NIKKOL BMG-10(日光ケミカルズ株式会社製)などが例示できる。
ソルビトールは、三菱商事フードテック株式会社製のソルビットD-70を使用した。ソルビットD-70は、ソルビトール70質量%と水30質量%から成る混合原料である。
【0043】
調製した化粧料について、肌に塗布したときの膜感、きしみ感、のび、肌へのなじみ感、べたつき感、なじんだ後のさらさら感、保湿感の7項目について、訓練された専門パネラー10名が、調製した化粧料を点眼ビンから手の甲に1~2滴、または上腕内側部に2~4滴(専門パネラー毎に使用感を判断できる滴下量および滴下部位を判断した)を取り出し、満遍なく塗り広げ、塗布している間ならびに塗布後の使用感を以下の基準により評価した。各項目について以下の基準にて評価した。
【0044】
(膜感)
膜感とは、化粧料を塗布して吸収された後に、皮膚表面が被膜で覆われてつっぱりを感じてしまう肌感覚である。
5:気にならなかった
4:あまり気にならなかった
3:どちらともいえない
2:やや気になった
1:気になった
【0045】
(きしみ感)
きしみ感とは、化粧料を塗布後に、必要以上の摩擦を感じる様な、塗布部の物理的不快感を意味し、塗布部表面が被膜で覆われているような、凹凸が多々存在して滑らかさが失われ、ざらつきが生じているような場合にも感じ得る感触である。
5:気にならなかった
4:あまり気にならなかった
3:どちらともいえない
2:やや気になった
1:気になった
【0046】
(のび)
のびとは、化粧料を肌に塗布してのび広げるときに、化粧料がのび広がったときの長さ、面積を以下の基準により評価したものである。
5:良い
4:やや良い
3:どちらともいえない
2:やや悪い
1:悪い
【0047】
(肌へのなじみ感)
肌へのなじみ感とは、化粧料を塗布したときに、肌に吸収されて浸み込んでいく様な感覚であり、塗布後一定時間経過後に残液感を感じず化粧料がはじかれている感覚とは相反する感覚のことである。
5:良い
4:やや良い
3:どちらともいえない
2:やや悪い
1:悪い
【0048】
(べたつき感)
べたつき感とは、化粧料を肌に塗布した後、一定時間経過後も感じる粘性もしくは粘着性を伴う残液感のことである。
5:気にならなかった
4:あまり気にならなかった
3:どちらともいえない
2:やや気になった
1:気になった
【0049】
(なじんだ後のさらさら感)
化粧料を肌に塗布した後、前述のとおりのなじみ感を感じ、塗布部を指でなぞったときに抵抗を感じずにさらさらとすべる様な感覚のことで、肌のなめらかさのことである。
5:良い
4:やや良い
3:どちらともいえない
2:やや悪い
1:悪い
【0050】
(保湿感)
化粧料を肌に塗布した後の肌のうるおいのことであり、物足りなさ、さっぱりしているか、しっとりしているか、丁度よいか、べたつくかについても複合的に判断する感覚である。
5:良い
4:やや良い
3:どちらともいえない
2:やや悪い
1:悪い
【0051】
(総合評価)
前述の官能評価7項目の平均点を算出し、以下の基準にて評価した。なお、官能評価のうち、ひとつでも×の評価があるものは実使用上も使用性に問題があると評価した。
◎:平均点4以上
〇:平均点3以上4未満
△:平均点2以上3未満
×:平均点2未満
【0052】
(結果)
【0053】
【0054】
本発明に用いた共重合体(1)、(2)(メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルとメタクリル酸エチルとの共重合体)は、優れた抗菌性と安全性を兼ね備えているが、同じINCI名である(アクリレーツ/メタクリル酸ジメチルアミノエチル)コポリマーとして市販されている化粧品用原料に比べて、ポリマー独特の膜感やきしみ感を強く感じてしまうという、当該ポリマー独特の使用感の課題があった。実施例1~12に示す保湿剤によって、当該ポリマー独特の膜感ときしみ感を解消することができ、のび、肌へのなじみ感、べたつき感、なじんだ後のさらさら感、保湿感の評価が高く、使用感に優れることが確認できた。一方、比較例2に示す、ポリクオタニウムー51(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液)ではきしみ感を抑制することができないことが確認できた。また、比較例3~6に示す、PCAイソステアリン酸グリセレスー25、シリカ、カルボマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーでは、僅かに膜感を抑制できることが確認できたが、PCAイソステアリン酸グリセレスー25は肌へのなじみ感、保湿感の評価が低く、シリカ、カルボマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーは肌へのなじみ感の評価が低いことが確認できた。
【0055】
【表2】
実施例13~20に示す通り、当該共重合体1質量%に対し、多価アルコールまたは糖アルコールが1質量%と少ない量でも(実施例13,17)、膜感、きしみ感を感じずに優れた使用感の化粧料が得られることが確認できた。
【0056】
【表3】
実施例21、22に比べ、実施例23~26、28に示すように多価アルコールから選択される1以上と、糖アルコール若しくは糖類から選択される1以上を組み合わせると、当該共重合体独特のきしみ感を感じず、とくに、のび、保湿感といった使用感が向上することが確認できた。さらに、実施例31~34に示すとおり、多価アルコールから選択される1以上と、糖アルコール若しくは糖類から選択される2以上を組み合わせることにより、膜感、きしみ感を感じず、実施例32の、のびの評価を除いて、すべての官能試験の評価項目において最も高い評価となり、使用感に非常に優れた化粧料が得られることが確認できた。
【0057】
【表4】
実施例35~41に示す通り、当該共重合体1質量%に対し、多価アルコールまたは糖アルコールが400質量%と多い量(実施例35~38)でも膜感、きしみ感を感じずに優れた使用感の化粧料が得られることが確認できた。
【0058】
処方例1(乳液)
(配合成分) (質量%)
1.共重合体(1) 0.1
2.グリセリン 8
3.1.3-ブチレングリコール 5
4.1,2-ペンタンジオール 1
5.マンニトール 2
6.ソルビトール 2
7.キサンタンガム 0.08
8.スクワラン 3
9.ジメチコン 1
10.ポリソルベート60 0.8
11.ステアリン酸ソルビタン 0.3
12.pH調整剤 適量
13.精製水 残余
常法により乳液を得た。処方例1の乳液はべたつかず、しっとり感が持続する保湿性の良い乳液であった。なお、膜感、きしみ感は全くなかった。
【0059】
処方例2(粒子含有パック化粧料)
(配合成分) (質量%)
1.共重合体(1) 0.1
2.ポリエチレン末 0.12
3.1,3-ブチレングリコール 5
4.1,2-ペンタンジオール 1.5
5.グリセリン 10
6.ジグリセリン 8
7.マンニトール 2
8.ソルビトール 2
9.カルボキシメチルセルロースNa 4
10.ローカストビーンガム 0.15
11.pH調整剤 適量
12.精製水 残余
すべての成分を均一に混合し、粒子含有パック化粧料を得た。処方例2の粒子含有パック化粧料は、べたついたりせず、洗い流した後もしっとり感に優れ、膜感、きしみ感は全くなかった。
【0060】
処方例3(シート状マスク)
(配合成分) (質量%)
1.共重合体(1) 0.1
2.1,3-ブチレングリコール 6
3.1,2-ペンタンジオール 2
4.グリセリン 6
5.トリプロピレングリコール 3
6.マンニトール 2
7.ソルビトール 2
8.テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 5
9.ジメチコン 1
10.ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 0.1
11.ステアリン酸ポリグリセリル-10 2
12.(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
0.15
13.水酸化カリウム 0.05
14.pH調整剤 適量
15.精製水 残余
すべての成分を均一に混合し、乳液状の化粧料を得た。不織布に含浸させ、シート状マスクとした。処方例3のマスクを15分間顔面に塗布し、肌になじませ、マスクをはがした後、べたついたりせず、しっとり感に優れ、効果が持続した。なお、膜感、きしみ感は全くなかった。
【0061】
処方例4(ヘアケアトリートメントローション)
(配合成分) (質量%)
1.共重合体(1) 0.1
2.1,3-ブチレングリコール 5
3.1,2-ペンタンジオール 1.5
4.ジグリセリン 1
5.トリプロピレングリコール 5
6.マンニトール 2
7.ソルビトール 2
8.塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.5
9.メチルフェニルポリシロキサン 1
10.ジメチコン 1
11.pH調整剤 適量
12.精製水 残余
すべての成分を均一に混合し、トリートメントローションを得た。処方例4のトリートメントローションは、毛髪においても、べたついたりせず、しっとり感に優れていた。なお、膜感、きしみ感は全く感じなかった。
【0062】
処方例5(美容エッセンス)
(配合成分) (質量%)
1.共重合体(1) 0.1
2.1,3-ブチレングリコール 2
3.1,2-ペンタンジオール 1.5
4.グリセリン 10
5.トリプロピレングリコール 15
6.マンニトール 2
7.ソルビトール 2
8.水添レシチン 0.1
9.ジメチコン 2
10.SIMULGEL NS 2
11.pH調整剤 適量
12.精製水 残余
すべての成分を均一に混合し、美容エッセンスを得た。べたつきのないしっとり感に優れた美容液を得られた。なお、きしみ感は全くなかった。SIMUGEL NSは、SEPPIC社製の(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーを主として含有するプレミックス原料である。
【0063】
処方例6(リキッドファンデーション)
(配合成分) (質量%)
1.共重合体(1) 0.1
2.1,3-ブチレングリコール 10
3.グリセリン 10
4.トリプロピレングリコール 8
5.マンニトール 2
6.ソルビトール 2
7.シクロメチコン 10
8.ジメチコンコポリオール 3
9.ジメチコン 0.5
10.ジオクタン酸ネオペンチルグリコール 2.5
11.水添レシチン 0.4
12.ヒアルロン酸Na 0.03
13.加水分解コラーゲン 0.01
14.マイカ 3
15.タルク 2
16.水酸化Al 2
17.ジステアリン酸Al 0.2
18.酸化鉄 1
19.酸化チタン 12
20.精製水 残余
すべての成分を均一に混合し、リキッドファンデーションを得た。処方例6のリキッドファンデーションは、べたついたり、きしんだりせず、しっとり感に優れていた。なお、膜感やきしみ感は全く感じなかった。