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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】軽量窯道具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/64 20060101AFI20241212BHJP
   C04B 35/18 20060101ALI20241212BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20241212BHJP
   C04B 41/87 20060101ALI20241212BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241212BHJP
   H01M 4/505 20100101ALN20241212BHJP
   H01M 4/525 20100101ALN20241212BHJP
   H01M 4/58 20100101ALN20241212BHJP
【FI】
C04B35/64
C04B35/18
C04B38/00 303Z
C04B41/87 R
H01M4/36 Z
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020179534
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070459
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】391029509
【氏名又は名称】イソライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】石原 康隆
(72)【発明者】
【氏名】上道 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】末吉 篤
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103311498(CN,A)
【文献】国際公開第2021/090778(WO,A1)
【文献】特開2014-118339(JP,A)
【文献】特開2019-121601(JP,A)
【文献】特開2011-201762(JP,A)
【文献】登録実用新案第3187621(JP,U)
【文献】特開平10-167840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
C04B 41/87
C04B 38/00-38/10
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池用の正極材料の熱処理時に該正極材料を収容又は載置する本体部と、該本体部の少なくとも該正極材料に接する面に設けられた保護層とからなるかさ比重が0.5~1.5の軽量窯道具であって、前記本体部は気孔率の上限が80体積%であり、前記保護層はコランダム、ムライト、ユークリプタイト、アルミン酸リチウム、スポジュメン、スピネル、ジルコニア、ペリクレース、エンスタタイト、及びフォルステライトのうちの1種以上の鉱物組成を有し、室温~1000℃における熱膨張係数が10×10-6/K以下であって且つ該本体部の熱膨張係数の1.0~2.0倍の範囲内であり、気孔率の上限が50体積%であることを特徴とする軽量窯道具。
【請求項2】
前記本体部が、ムライトを0~96質量%、コランダムを0~85質量%、ユークリプタイトを0~58質量%、アルミン酸リチウムを0~65質量%、スポジュメンを0~98質量%、スピネルを0~82質量%、ジルコニアを0~78質量%、ペリクレースを0~65質量%、エンスタタイトを0~66質量%、及びフォルステライトを0~66質量%含有する鉱物組成を有しており、前記保護層が、ムライトを0~99.5質量%、コランダムを0~99.5質量%、ユークリプタイトを0~58質量%、アルミン酸リチウムを0~93質量%、スポジュメンを0~99質量%、スピネルを0~99.5質量%、ジルコニアを0~93.5質量%、ペリクレースを0~87質量%、エンスタタイトを0~90質量%、及びフォルステライトを0~90質量%含有する鉱物組成を有していることを特徴とする、請求項1に記載の軽量窯道具。
【請求項3】
前記軽量窯道具は、曲げ強さが3~22MPaであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の軽量窯道具。
【請求項4】
前記本体部は気孔率の下限が38体積%であり、前記保護層は気孔率の下限が20体積%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の軽量窯道具。
【請求項5】
前記保護層は、厚さが0.5~5mmであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の軽量窯道具。
【請求項6】
リチウムイオン二次電池用の正極材料の熱処理時に該正極材料を収容又は載置する本体部と、該本体部を正極材料から保護する保護層とからなる軽量窯道具の製造方法であって、前記本体部の原料混合物と前記保護層の原料混合物とを用いて該本体部の少なくとも該正極材料に接する面に保護層が設けられるように一体成形する工程と、該一体成形により得た成形体を雰囲気温度1100~1400℃で焼成する工程とを有し、
前記本体部の原料混合物が、リチウム成分を元来含んでいるセラミックス粉末としてのユークリプタイト、アルミン酸リチウム、及びスポジュメンのうちの1種以上と、金属酸化物又は金属塩としてのコランダム、ムライト、スピネル、ジルコニア、ペリクレース、エンスタタイト、及びフォルステライトのうちの1種以上とが合計15~98.5質量%、耐熱性無機繊維としてのアルミナ繊維及び/又はムライト繊維、シリカ・アルミナ繊維、並びにシリカ・マグネシア・カルシア系の生体溶解性繊維のうちの1種以上が1~60質量%、賦形材としてのアルミナ微粒子及びシリカ微粒子のうちの1種以上が0.5~50質量%となるように配合して混合したものであり、前記保護層の原料混合物が、リチウム成分を元来含んでいるセラミックス粉末としてのユークリプタイト、アルミン酸リチウム、及びスポジュメン、並びに金属酸化物又は金属塩としてのコランダム、ムライト、スピネル、ジルコニア、ペリクレース、エンスタタイト、及びフォルステライトのうちの1種以上が70~99.5質量%、賦形材としてのアルミナ微粒子及びシリカ微粒子のうち1種以上が0.5~30質量%となるように配合して混合したものであることを特徴とする軽量窯道具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の正極材料を熱処理する際に用いる耐食性及び強度に優れた軽量窯道具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池の正極活物質は、リチウム含有化合物、コバルト含有化合物、マンガン含有化合物、ニッケル含有化合物、鉄含有化合物などからなる粉末原料を熱処理炉内に装入し、所定の熱処理条件で焼成処理することで製造される。この焼成処理には、該粉体原料を収容したり載置したりするセラミック製の窯道具として、ルツボ、匣鉢などの容器、棚板、敷板などのセッターが広く用いられている。
【0003】
これらの窯道具には、上記焼成処理時に被焼成物である上記粉末原料から発生するリチウム等のアルカリ成分による浸食で劣化するのを抑えるため、耐食性を有していることが求められる。また、上記の焼成処理後は、降温時間を短縮して製造効率を高めるため、該熱処理炉内にエアーを送入して炉内温度を強制的に冷却するなどにより該窯道具及びその内容物を急冷している。そのため、窯道具は耐熱衝撃性を有していることも求められる。また、窯道具は、一般的には曲げ強さ3MPa以上の強度を有していることが望ましい。
【0004】
このため、窯道具の材質には、緻密質でかさ比重が1.5を超えるものが一般的に用いられており、かさ比重が2.0程度のものが用いられることもある。このようにかさ比重が1.5を超えると窯道具自体が重くなるうえ、被焼成物を収容したり載置したりすると更に重くなるため、焼成炉が具備する窯道具の搬送用ローラーへの荷重負荷が大きくなり過ぎることがあった。その結果、該ローラーの曲がり、摩耗、折損等の問題が生じやすく、該ローラーを頻繁に交換する必要があった。また、かさ比重が大きくなると熱容量も大きくなるので、窯道具の加熱や冷却に多くのエネルギーと時間を要し、省エネルギー及び製造効率の観点からも好ましくなかった。
【0005】
そこで、窯道具の材質にかさ比重の小さいものを採用することが考えられる。かさ比重を小さくすることで熱容量を小さくでき、耐熱衝撃性も高くすることができる。しかしながら、この場合は気孔率が大きくなるので、上記のリチウム等のアルカリ成分による浸食が生じやすくなったり、構造物としての機械的強度が小さくなったりすることがあった。その対策として、塩基性材料を活用したスピネル系やアルミナ系等の材質を含む窯道具の表面をコーティングすることで、上記のアルカリ成分に対する窯道具の耐食性を向上させる技術が提案されている。
【0006】
例えば特許文献1には、かさ比重が小さいムライト又はコージライトの窯道具本体に、リチウムイオン二次電池の原料に対して反応しにくいジルコニア、アルミナ、マグネシアなどの金属酸化物の1種類以上の材料でコーティングすることで保護層を形成する技術が提案されている。また、特許文献2には、窯道具本体の表面に、正の熱膨張係数を有する金属酸化物及び金属塩のうちのいずれか一方若しくは両方と、負の熱膨張係数を有するLiAlSiOとを所定の配合割合で混合した材料でコーティングすることで保護層を形成する技術が提案されている。
【0007】
更に、窯道具本体の表面に保護層を形成する方法について、様々な方法が提案されている。例えば特許文献3には、被焼成物との反応性が低い材料を窯道具の表面にスプレーコートすることで保護層を形成する技術が提案されている。また、特許文献4には、二次プレス法を用いて窯道具の表面に被焼成物との反応性が低い材料からなる保護層を形成する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-118339号公報
【文献】特開2019-121601号公報
【文献】特開2002-154884号公報
【文献】中国特許出願公開第103311498号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に例示されている金属酸化物は、窯道具本体より大きな正の熱膨張係数を有しているため、該金属酸化物からなる保護層には亀裂が生じやすく、そのまま使い続けると保護層が剥がれることがあった。特許文献2の技術は、窯道具本体の熱膨張係数によっては、長期に亘って繰り返し使用しているうちに保護層が剥がれることがあった。また、保護層の気孔率が大きい場合や保護層の厚さが薄い場合は、浸食が生じることがあった。
【0010】
特許文献3の方法は、焼成で形成した窯道具本体にコーティング処理を施した後、乾燥・焼成からなる加熱処理を再び行う必要があるため、製造工程が多くなって製造原価が高くなるという問題を抱えている。特許文献4の技術は、コーティング層の厚さを厚くできる利点があるが、かさ比重が大きくなるという問題を抱えている。本発明は、上記した従来技術が抱える問題点に鑑みてなされたものであり、リチウムイオン二次電池の正極材料の熱処理の際に使用する、耐食性に優れた高強度で且つ軽量の窯道具及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る軽量窯道具は、リチウムイオン二次電池用の正極材料の熱処理時に該正極材料を収容又は載置する本体部と、該本体部の少なくとも該正極材料に接する面に設けられた保護層とからなるかさ比重が0.5~1.5の軽量窯道具であって、前記本体部は気孔率の上限が80体積%であり、前記保護層はコランダム、ムライト、ユークリプタイト、アルミン酸リチウム、スポジュメン、スピネル、ジルコニア、ペリクレース、エンスタタイト、及びフォルステライトのうちの1種以上の鉱物組成を有し、室温~1000℃における熱膨張係数が10×10-6/K以下であって且つ該本体部の熱膨張係数の1.0~2.0倍の範囲内であり、気孔率の上限が50体積%であることを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る軽量窯道具の製造方法は、リチウムイオン二次電池用の正極材料の熱処理時に該正極材料を収容又は載置する本体部と、該本体部を正極材料から保護する保護層とからなる軽量窯道具の製造方法であって、前記本体部の原料混合物と前記保護層の原料混合物とを用いて該本体部の少なくとも該正極材料に接する面に保護層が設けられるように一体成形する工程と、該一体成形により得た成形体を雰囲気温度1100~1400℃で焼成する工程とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リチウムイオン二次電池の正極材料の熱処理の際に使用する、耐食性に優れた高強度で且つ軽量の窯道具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の軽量窯道具の実施形態について説明する。この本発明の実施形態の軽量窯道具は、リチウムイオン二次電池用の正極材料の熱処理時に該正極材料を収容又は載置する軽量の材質からなる本体部と、該本体部の少なくとも該正極材料に接する面に設けられた保護層とで構成され、該軽量窯道具に対して、ノギス等により測定して算出した体積Vで秤量器により測定した質量Wを除すること(すなわちW/V)で得られるかさ比重を0.5~1.5の範囲内に収めることができる。
【0015】
これら本体部及び保護層の材質には、耐食性を高めるため、被焼成物である該正極材料との反応性が低い材質を用いるのが好ましい。具体的には、各々の原材料に、リチウム成分を元来含んでいるセラミックス粉末、金属酸化物、及び金属塩のうちの1種以上を用いるのが好ましい。更に、本体部の原材料には、上記の原材料に加えて、耐熱性無機繊維及び賦形剤を含むのが好ましい。
【0016】
本発明の実施形態の窯道具は、後述するように本体部の気孔率が大きいので軽量にすることができる。更に耐熱衝撃性、強度、及び熱膨張特性に優れている。一方、保護層の原材料には、上記のセラミックス粉末等に加えて賦形剤を含むのが好ましい。この保護層は、気孔率が本体部の気孔率より小さいので、耐食性をより一層高めることができる。更に、耐熱衝撃性、強度、熱膨張特性に優れており、本体部からの剥離が生じにくい。
【0017】
本発明の実施形態の窯道具は、本体部の耐熱衝撃性を高めるため、熱膨張係数が負のユークリプタイト若しくは熱膨張係数が小さいスポジュメン又はこれらの両方と、熱膨張係数の大きいアルミン酸リチウム、スピネル、ジルコニア、ペリクレース、エンスタタイト、フォルステライト、コランダム、及びムライトの中から選択した1種以上との比率を調整することで、室温(RT)~1000℃における本体部の熱膨張係数を5×10-6/K以下に、好ましくは3.5×10-6/K以下にすることができる。上記のように本体部の熱膨張係数を5×10-6/K以下にすることで、割れ等の発生を効果的に防止できる。
【0018】
また、本発明の実施形態の窯道具は、保護層の熱膨張係数を上記本体部の熱膨張係数で除することで得られる熱膨張係数比を1.0~2.0の範囲内に、好ましくは1.0~1.4の範囲内にすることができる。すなわち、本発明の実施形態の窯道具は、保護層の熱膨張係数を10×10-6/K以下に、好ましくは7×10-6/K以下にすることができる。熱膨張係数比を上記範囲内にすることで、保護層の熱膨張係数が本体部の熱膨張係数に近くなるので、本体部の表面への保護層の密着性が良好になり、保護層が本体部から剥がれにくくなる。この熱膨張係数比が2.0を超えると、保護層の剥離が生じるおそれがある。
【0019】
上記本体部は気孔率の上限が80体積%であり、好適な上限は60体積%である。この気孔率が80体積%を超えると機械的強度が低下するうえ、焼成処理時の収縮率が大きくなって変形しやすくなるので好ましくない。逆に、上記本体部の気孔率の下限は38体積%が好ましく、50体積%がより好ましい。上記本体部の気孔率が38体積%未満では、かさ比重が所望の上限値を超えてしまうおそれがある。
【0020】
一方、上記保護層の気孔率の上限は50体積%であり、好適な上限は30体積%である。この気孔率が50体積%を超えると、耐食性が低下する。逆に、下限は15体積%が好ましく、20体積%がより好ましい。上記保護層の気孔率が15体積%未満では、熱膨張係数が所望の上限値を超えてしまうおそれがある。なお、上記の気孔率は原材料に用いるセラミックス粉末、耐熱性無機繊維、及び賦形剤の粒度分布や配合割合を調整したり、成形時の押圧力や焼成時の熱処理条件を調整することで増減させることができる。
【0021】
本発明の実施形態の軽量窯道具は、JIS R1601に準拠して作製した試験片をスパン100mmで支持し、常温で3点曲げ試験を行うことにより測定した曲げ強さを好適には3MPa以上に、より好適には5MPa以上にすることができる。この曲げ強さが3MPa未満ではハンドリング性に劣るうえ、加工性も劣るので好ましくない。なお、軽量窯道具のかさ比重を前述したように0.5~1.5の範囲内にすることで、この曲げ強さを最大22MPaまで高めることができる。このように、上記の曲げ強さは、主に軽量窯道具のかさ比重により調整することができる。
【0022】
本発明の実施形態の窯道具は、本体部がムライトを0~96質量%、コランダムを0~85質量%、ユークリプタイトを0~58質量%、アルミン酸リチウムを0~65質量%、スポジュメンを0~98質量%、スピネルを0~82質量%、ジルコニアを0~78質量%、ペリクレースを0~65質量%、エンスタタイトを0~66質量%、及びフォルステライトを0~66質量%含有する鉱物組成を有しているのが好ましい。
【0023】
また、本発明の実施形態の窯道具は、保護層がムライトを0~99.5質量%、コランダムを0~99.5質量%、ユークリプタイトを0~58質量%、アルミン酸リチウムを0~93質量%、スポジュメンを0~99質量%、スピネルを0~99.5質量%、ジルコニアを0~93.5質量%、ペリクレースを0~87質量%、エンスタタイトを0~90質量%、及びフォルステライトを0~90質量%含有する鉱物組成を有しているのが好ましい。
【0024】
次に、本発明に係る軽量窯道具の製造方法の実施形態について説明する。前述したように、本発明の実施形態の軽量窯道具を構成する本体部及び保護層の原材料には、リチウムを元来含むセラミックス粉末、金属酸化物、及び金属塩のうちの1種以上を用いる。これらのうち、リチウム成分を元来含んでいるセラミックス粉末としては、ユークリプタイト、アルミン酸リチウム、及びスポジュメンを挙げることができる。一方、上記の金属酸化物及び金属塩としては、コランダム、ムライト、スピネル、ジルコニア、ペリクレース、エンスタタイト、及びフォルステライトを挙げることができる。本発明においては、これらリチウム成分を元来含んでいるセラミック粉末、金属酸化物及び金属塩をまとめてセラミックス粉末と称することがある。このセラミックス粉末は、本体部の原材料全体の15~98.5質量%を占めるように配合するのが好ましく、保護層の原材料全体の70~99.5質量%を占めるように配合するのが好ましい。
【0025】
上記のセラミックス粉末は、メジアン径(D50)が0.01μm~1mmの範囲内であるのが好ましく、0.1~10μmの範囲内であるのがより好ましい。このメジアン径が1mmより大きい場合は、窯道具の製造の際に原材料の流動性が悪くなり、成形できない可能性が高くなる。逆にこのメジアン径が0.01μmより小さい場合は、窯道具の原材料費が高くなり過ぎる。なおメジアン径(D50)とは、レーザー回折式粒度分布測定装置によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0026】
上記のセラミックス粉末に加えて、該本体部の原材料に用いる耐熱性無機繊維は、アルミナ繊維(ムライト繊維を含む)、シリカ・アルミナ繊維、及びシリカ・マグネシア・カルシア系の生体溶解性繊維のうちの1種以上から構成される。これらの耐熱性無機繊維は、耐熱温度が500℃以上1600℃以下であるので、窯道具の本体部の原材料に適している。なお、耐熱温度T℃とは、ブランケット形態において雰囲気温度T℃にて24時間加熱したときの加熱線収縮率が4.0%以下の場合をいう。
【0027】
上記の耐熱性無機繊維は、平均繊維径が2~15μmであるのが好ましく、4~10μmであるのがより好ましい。ここで平均繊維径とは、測定対象となる繊維群を電子顕微鏡で撮影し、得られた画像上の任意の200本の繊維に対して、それらの任意の部分の幅を計測し、それらを算術平均して求めたものである。また、上記の耐熱性無機繊維は、平均繊維長が200μm以上であるのが好ましい。但し、繊維長が5000μmを超えると繊維同士が絡まりあいやすくなり、均一な混合ができにくくなって成形性の低下や亀裂の発生につながるので、平均繊維長の上限は5000μmが好ましい。ここで平均繊維長とは、測定対象となる繊維群を電子顕微鏡で撮影し、得られた画像上の任意の100本の繊維に対して、それらの長手方向の端から端までの直線距離を計測し、それらを算術平均して求めたものである。
【0028】
一般に耐熱性無機繊維中には繊維の製造過程で生成する非繊維状粒子(ショット)が含まれ、その粒径は9割以上が45μm以上である。このような粒径の大きな非繊維状粒子が多量に存在すると、本体部に大きな気孔が生じやすくなり、強度が小さくなる。従って、耐熱性無機繊維と非繊維状粒子との全体に対する非繊維状粒子の含有率は、10質量%以下とすることが好ましい。ここで非繊維状粒子含有率は、JIS R3311の測定方法にて求めたものである。
【0029】
上記の耐熱性無機繊維には市販されているものを用いることができ、例えばアルミナ繊維ではデンカ株式会社製のアルセン(登録商標)、ムライト繊維では株式会社ITM社製のファイバーマックス(登録商標)や三菱ケミカル株式会社製のマフテック(商品名)、シリカ・アルミナ繊維ではイソライト工業株式会社製イソウール(商品名)、シリカ・マグネシア・カルシア繊維系の生体溶解性繊維ではイソライト工業株式会社製イソウールBSSR1300(商品名)などを好適に使用することができる。
【0030】
上記の耐熱性無機繊維は、本体部の原材料全体の1~60質量%を占めるように配合するのが好ましい。これにより該本体部において骨材としての役割を担わせることができ、該本体部の曲げ強さを3MPa以上にすることができる。この含有率が1質量%未満では、該本体部の曲げ強さが3MPa未満になるおそれがある。逆にこの含有率が60質量%を超えると、窯道具のかさ比重を0.5以上にすることが困難になり、その結果、気孔率が高くなり過ぎるおそれがある。
【0031】
上記の耐熱性無機繊維は引張強度及び引張弾性率が高いので、圧縮力によって引張力が働いてもひび割れが発生しにくく、よって耐熱性無機繊維を本体部に含めることで機械強度を高める効果が得られる。但し、上記の耐熱性無機繊維は気孔率を大きくする方向に働くので、リチウム等のアルカリ成分による浸食で劣化しないようにするため、保護層の原材料には使用しない。
【0032】
一方、前述したように、賦形材は、本体部の原材料及び保護層の原材料の両方に用いられる。この賦形剤は、アルミナ微粒子(フュームドアルミナとも称する)及びシリカ微粒子(フュームドシリカとも称する)のうち1種以上からなり、BET法で測定した比表面積が60m/g以上であるのが好ましく、100m/g以上であるのがより好ましい。また、この賦形材はメジアン径(D50)が1~100nm程度のナノサイズの微粒子からなるのが好ましい。
【0033】
上記の賦形材は、本体部の原材料全体の0.5~50質量%を占めるように配合するのが好ましく、10~30質量%を占めるのがより好ましい。この配合割合が0.5質量%未満では、上記のセラミックス粉末を構成する各粒子の表面を十分に覆うことができなくなり、所望の強度が得られなくなるおそれがある。逆にこの配合割合が50質量%を超えると、焼成処理時の収縮率が大きくなって変形しやすくなるので好ましくない。
【0034】
また、上記の賦形剤は保護層の原材料全体の0.5~30質量%を占めるように配合するのが好ましく、10~20質量%を占めるのがより好ましい。この配合割合が0.5質量%未満では、上記のセラミックス粉末を構成する各粒子の表面を十分に覆うことができなくなり、所望の強度が得られなくなるおそれがある。逆にこの配合割合が30質量%を超えると、焼成処理時の収縮率が大きくなって変形しやすくなるので好ましくない。
【0035】
上記の本体部の原材料及び保護層の原材料の各々において、上記の配合割合となるようにセラミックス粉末、耐熱性無機繊維(本体部の原材料のみ)、及び賦形材を秤り取って好ましくは撹拌翼(ブレード)を備えた粉体混合機で混合する。この混合の際、必要に応じて気孔賦与材を添加してもよい。この気孔賦与材には、セルロース、でんぷん、及びポリビニルアルコールのうちの1種以上からなる有機物が好適に用いられる。気孔賦与材はメジアン径(D50)が100μm以下のものを用いるのが好ましい。この気孔賦与材の粒子群のメジアン径(D50)が100μmを超えると、原材料の流動性が低下して窯道具を所望の形状に成形するのが困難になるうえ、前述した気孔率の上限値を超えやすくなり、該軽量窯道具の強度が不十分になるおそれがある。
【0036】
上記気孔賦与材の添加量は、上記の原材料の合計100質量部に対して100質量部以下であるのが好ましく、60質量部以下であるのがより好ましい。この添加量が100質量部を超えると、該軽量窯道具の上記かさ比重の下限値である0.5よりも小さくなりやすく、該軽量窯道具の強度が不十分になるおそれがあるうえ、後述する焼成処理時の収縮率が大きくなって変形しやすくなるので好ましくない。上記気孔賦与材の添加量の下限は特に限定がないが、上記の原材料の合計100質量部に対して30質量部以上であるのが好ましい。
【0037】
上記の混合の際、上記混合機のブレードの回転速度は3000rpm以上にすることが好ましい。これにより耐熱性無機繊維を十分に解繊することができるので、該耐熱性無機繊維群をある特定方向に配向させることなくランダムな方向に延在させた状態で上記の混合物中にほぼ均一に分散させることができる。その結果、かさ比重が1.5以下であるにもかかわらず、かさ比重が2程度の従来品と同等以上の強度を得ることができる。
【0038】
上記の混合により得た混合物を、次に乾式により加圧成形する。この加圧成形では、次工程の焼成処理によって生成した焼成物である軽量窯道具のかさ比重が0.5~1.5の範囲内になるように適宜条件を調整する。この条件の調整方法には特に限定はなく、例えば過去に行った乾式加圧成形時の加圧条件と、その条件で乾式加圧成形して得た成形体の焼成処理後のかさ比重との関係を示す検量線に基づいて乾式加圧成形時の加圧条件を定める方法を挙げることができる。
【0039】
なお、上記の原材料を混合することで得られる混合物は、安息角が比較的小さく流動性が良いため、複雑な形状の軽量窯道具を成形できる。この加圧成形では、本体部用の原材料の混合物を先ず所定の軽量窯道具の形状となるように加圧成形し、次に、この本体部用として成形した成形体のうち、窯道具として使用する際に少なくとも正極材料に接する面(例えば窯道具が匣鉢の場合はその内面全体又はその底部)を保護層用の原材料の混合物で被覆して一体成形するのが好ましい。あるいは、本体部用の原材料の混合物と保護層用の原材料の混合物とを2層に積層した後、この積層方向にこれら2層を同時に加圧することで一体成形してもよい。
【0040】
このようにして乾式加圧成形することで得た成形体を加熱炉に装入し、雰囲気温度1100~1400℃で焼成処理する。この焼成処理時の炉内雰囲気には特に限定はないが、大気雰囲気が好ましい。また、焼成時間にも特に限定はないが、2~5時間程度が好ましい。上記の焼成温度は、耐熱性無機繊維やセラミックス粉末の種類や含有量に応じて1100~1400℃の範囲内で適宜調整するのが好ましい。これにより、かさ比重が0.5~1.5、好ましくは0.9~1.1の軽量窯道具を作製することができる。このかさ比重が0.5未満では、該軽量窯道具が強度不足となるおそれがあり、逆にかさ比重が1.5を超えると該軽量窯道具が重くなり過ぎるおそれがある。
【0041】
また、この軽量窯道具は保護層の厚さが0.5~5mmであるのが好ましく、1~3mmであるのがより好ましい。この厚さが0.5mm未満では、前工程の乾式加圧成形の際に一体成形を行うことが困難になる。逆にこの厚さが5mmを超えると、保護層の質量が大きくなり過ぎて軽量窯道具のかさ比重が前述した範囲の上限値を超えたり、繰り返しの使用で亀裂が入ったりするので好ましくない。なお、一般的には軽量窯道具の本体部の肉厚は5~20mm程度である。
【0042】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る軽量窯道具の製造方法においては、成形体を乾式加圧成形で形成するので、湿式成形法で形成した成形体とは異なり、前述したように耐熱性無機繊維をランダムな方向に延在させた状態でほぼ均一に分散させることができる。すなわち、従来の湿式成形法では、混合物に無機バインダーと適量の水とを加えて調製したスラリーを真空吸引あるいはプレスして脱水しながら加圧成形するため、得られた成形体は吸引方向に対して略直交する方向に繊維群が延在した状態で積層しやすく、強度に方向性が生じやすかった。これに対して、本発明の実施形態の方法で形成した成形体は、その強度に方向性がほとんどないので、高強度の窯道具を作製することができる。
【0043】
また、乾式加圧成形では、湿式成形法とは異なり、無機結合剤の役割を担う賦形材を凝集させずに使用できるため、その働きを充分に発揮させることができる。よって、かさ比重が小さくても所望の強度を確保することができる。すなわち、湿式成形法では無機バインダーの歩留を上げるため凝集させることから、成形体そのものが大粒子状の無機バインダーの集合体から形成される傾向にある。
【0044】
また、湿式成形法は、耐熱性無機繊維の量が多いと成形性が低下しやすくなるうえ、成形体のかさ比重が小さくなるように加圧成形すると、十分な強度が得られなくなるという問題も抱えていたが、本発明の実施形態の方法ではこれらの問題も生じにくくなる。次に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例
【0045】
[実施例1]
略酒桝状の本体部とその底面に設けられた保護層とからなる軽量窯道具としての匣鉢を、該本体部用の原材料としてのセラミックス粉末、耐熱性無機繊維、及び賦形剤から構成される該本体部用の原材料と、セラミック粉末及び賦形材から構成される保護層用の原材料とを用いて作製し、その特性を測定した。具体的には、本体部用の原材料には、セラミックス粉末としての丸ス釉薬合資会社製のスポジュメン粉末(メジアン径23μm)が55質量%、耐熱性無機繊維としてのデンカ株式会社製の平均繊維径4.0μm、平均繊維長3.5mmのアルミナ繊維(Al:80質量%、SiO:20質量%)が15質量%、賦形剤としてのキャボットコーポレーション株式会社製のフュームドアルミナ(メジアン径100nm)が30質量%の配合割合となるようにそれぞれ秤取って、せん断機能を有する粉体混合機の円筒容器内に充填した。この円筒容器の底部に設けられているブレードを回転数3000rpmで回転させることで混合した。得られた混合物を該円筒容器から取り出して成形型に装入し、上方から圧縮成形することで、匣鉢の本体部となる成形体を形成した。
【0046】
一方、保護層用の原材料には、セラミックス粉末としての丸ス釉薬合資会社製のスポジュメン粉末(メジアン径23μm)が30質量%、セラミックス粉末としてのサンゴバン株式会社の8%イットリア安定化のジルコニア粉末(メジアン径15μm)が50質量%、賦形剤としてのキャボットコーポレーション株式会社製のフュームドシリカ(メジアン径50nm)が20質量%の配合割合となるようにそれぞれ秤取って、上記の本体部の場合と同じ条件で混合した。得られた混合物を該円筒容器から取り出し、上記の本体部となる成形体の底面を被覆するように積層した後、押圧することで本体部となる成形体と一体成形した。この一体成形体を雰囲気温度1100℃で3時間かけて焼成することにより、実施例1の匣鉢を作製した。
【0047】
[実施例2~30、比較例1~17]
本体部用及び保護層用の原材料の種類、並びにそれらの配合割合を様々に変えたり、焼成処理時の雰囲気温度を様々に変えたりした以外は上記実施例1の場合と同様にして実施例2~30及び比較例1~17の匣鉢を作製した。その際、耐熱性無機繊維には、実施例1で用いた原材料のほか、ITM株式会社製のムライト繊維(平均繊維径5.0μm、平均繊維長3.0mm、Al:72質量%、SiO:28質量%、非繊維粒子割合8質量%)、イソライト工業株式会社製のシリカ・アルミナ繊維(商品名イソウール1260、Al:46質量%、Al+SiO:99質量%、平均繊維径4.2μm、平均繊維長4.2mm、繊維粒子割合10質量%)、イソライト工業株式会社製の生体溶解性繊維(商品名イソウールBSSR1300、Al:77質量%、CaO+MgO:20質量%、平均繊維径3.5μm、平均繊維長4.5mm、非繊維粒子割合10質量%)を用いた。
【0048】
また、セラミックス粉末には、実施例1で用いた原材料のほか、丸ス釉薬合資会社製のユークリプタイト粉末(メジアン径12μm)、高純度化学研究所株式会社製のアルミン酸リチウム粉末(メジアン径5μm)、昭和電工株式会社製のスピネル粉末(メジアン径22μm)、宇部マテリアルズ(株)製のマグネシア粉末(メジアン径13μm)、浅田製粉株式会社製のエンスタタイト粉末(メジアン径7μm)、日産化学工業株式会社製のフォルステライト粉末(メジアン径5μm)、住友化学株式会社のアルミナ粉末(メジアン径10μm)を用いた。これら実施例1~30及び比較例1~17の本体部の原材料の配合割合を下記表1(実施例)及び表2(比較例)に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
上記にて作製した実施例1~30及び比較例1~17の匣鉢の各々に対して、かさ比重及び曲げ強さを測定すると共に、本体部及び保護層の各々の気孔率、熱膨張係数、及び鉱物組成を測定した。更に、各窯道具を半分に切断した切断面における保護層の厚さをノギスを用いて測定した。曲げ強さはJIS R1601に準拠した3点曲げ試験により測定した。気孔率は各窯道具から採取した本体部及び保護層の各々のかさ比重及び真比重を測定した後、「気孔率=(1-かさ比重/真比重)×100」により算出した。熱膨張係数は、各窯道具から採取した本体部及び保護層の各々に対してNETZSCH社製の熱間線膨張率測定装置(TD5000SE/H)を用いてJIS R2207-3(耐火物の熱膨張の試験方法-第3部:棒状試験片を用いる接触法)に準拠して測定した。鉱物組成は、同様に各窯道具から採取した本体部及び保護層の各々に対してX線粉末回折装置により測定した。
【0052】
耐食性の評価は下記の方法で行った。すなわち、上記の実施例1~30及び比較例1~17の匣鉢の各々に対して、炭酸リチウム及び酸化コバルトをCo:Li=1:1のモル比となるように混合した混合粉を10kg充填し、加熱炉内に装入して雰囲気温度950℃まで300℃/hrで昇温し、該雰囲気温度950℃で10時間保持して上記混合粉を加熱処理した。この10時間の保持が経過した後、該加熱炉内にエアーを導入することで強制冷却して匣鉢を室温まで降温させた。
【0053】
上記の降温後は、匣鉢内から混合粉を取り出して、匣鉢内面の損傷の有無を目視にて観察した。そして、損傷が認められない場合は、上記の混合粉の加熱処理を繰り返した。このようにして、内面に損傷が認められるまでの回数で耐食性を評価した。上記の各匣鉢の耐食性の評価結果である損傷が認められるまでの加熱処理の回数を、該匣鉢のかさ比重、曲げ強度、熱膨張係数比、及びその焼成処理時の焼成温度、並びに本体部及び保護層の各々の気孔率、熱膨張係数、及び鉱物組成と共に下記表3~10に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
【表8】
【0060】
【表9】
【0061】
【表10】
【0062】
上記表3~7から分かるように、実施例1~30の匣鉢はいずれも本発明の要件を満たすため、かさ比重が0.5~1.5と軽量であるにもかかわらず、曲げ強さが3~22MPaの範囲内であった。また、耐食性の評価結果が12回以上であり、実施例1~30の匣鉢はいずれも高い耐食性を有していることが分かった。
【0063】
一方、上記の表8~10から分かるように、本体部の原材料のうち耐熱性無機繊維の配合割合が61質量%の比較例1は、本体部の気孔率が80体積%を超えていたため、曲げ強さが2.5MPaと低く、耐食性も良くなかった。比較例2は、本体部の原材料のうち耐熱性無機繊維の配合割合が0(ゼロ)質量%であったため、かさ比重が1.8と大きくなり過ぎた。本体部の原材料のうちセラミックス粉末の配合割合が14質量%の比較例3は、かさ比重が0.45となり、また、本体部の気孔率が80体積%を超えていたため、曲げ強さが2MPaと低く耐食性も良くなかった。
【0064】
本体部の原材料のうちセラミックス粉末の配合割合が99質量%の比較例4は、かさ比重が1.7となり、大きくなり過ぎた。本体部の原材料のうち賦形材の配合割合が0(ゼロ)質量%の比較例5は、良好に成形できなかったので窯道具の作製を途中で中止した。本体部の原材料のうち賦形材の配合割合が51質量%の比較例6は、本体部の気孔率が80体積%を超えていたため、かさ比重が0.47となり、曲げ強さが2.5MPaと低く、耐食性も良くなかった。比較例7は、かさ比重が1.8となり大きくなり過ぎた。また、熱膨張係数が小さいスポジュメンと熱膨張係数の大きいアルミン酸リチウム、スピネル、ジルコニア、ペリクレース、エンスタタイト、フォルステライト、及びコランダムのうちのいずれか1種以上との組みあわせが適正でないため、本体部の熱膨張係数が5.2×10-6/Kとなった。
【0065】
比較例8は、本体部の気孔率が所定の下限値より低かったのでかさ比重が1.5を超えた。逆に比較例9は、本体部の気孔率が所定の上限値を超えていたので曲げ強さ0.7MPaと低くなり、耐食性も良くなかった。比較例10は、保護層の原材料に含まれるセラミックス粉末の配合割合が69質量%で、賦形材の配合割合が31質量%であったため、気孔率が50体積%を大きく超え、耐食性が良くなかった。比較例11も保護層の気孔率が50体積%を超えたため、耐食性が低くなった。比較例12は、熱膨張係数比が上限の2.0を超えていたため耐食性が低くなった。比較例13も、熱膨張係数比が上限の2.0を超えていたため耐食性が低く、更に保護層の厚さが0.4mmと薄かったこともあり、保護層が本体部から剥離した。比較例14~17は、保護層の熱膨張係数が10×10-6/Kを超えていたため、耐食性が低くなった。