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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】管継手、押輪および管の接合方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/04 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
F16L21/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020185472
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022074980
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】小田 圭太
(72)【発明者】
【氏名】岸 正蔵
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180472(JP,A)
【文献】特開昭59-217090(JP,A)
【文献】特開2014-005868(JP,A)
【文献】特開平09-144962(JP,A)
【文献】特開2003-222276(JP,A)
【文献】実開平06-043470(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管に形成された挿し口が他方の管に形成された受口内に挿入され、
挿し口端部の外周と受口奥側の内周との間には所要の空間が形成されて、一方の管に対して他方の管が屈曲可能に構成され、
受口奥側ほど縮径する第1のテーパー面が受口の内周に形成され、
第1のテーパー面と挿し口の外周との間にシール部材挿入空間が全周にわたり形成され、
受口の内周と挿し口の外周との間をシールする環状のシール部材がシール部材挿入空間に挿入され、
シール部材を受口の開口端面からシール部材挿入空間に押し込む押輪が挿し口に外嵌されて受口の開口端面に外側から対向し、
一方の管に対して他方の管が屈曲した状態においても、
押輪が複数の締結具を介して受口に締結される管継手であって、シール部材は、挿入方向における一端部に、管径方向において圧縮されてシール機能を発揮するバルブ部を有しており、
シール部材のバルブ部を受口の開口端面からシール部材挿入空間に案内する案内部が受口の内周に形成され、
案内部は受口奥側ほど縮径する第2のテーパー面を有し、
第2のテーパー面は、管軸方向において、受口の開口端面と第1のテーパー面との間に形成され、
管軸心に対する第2のテーパー面の傾斜角度が管軸心に対する第1のテーパー面の傾斜角度よりも大きく、
押輪に、締結具が挿通される締結具挿通孔と、受口の開口端面に当接する円環状の第1の突部と、第1の突部に囲まれた凹部とが設けられ、
第1の突部は管径方向において締結具挿通孔よりも内側に形成され、
シール部材が挿し口に外嵌された状態でシール部材挿入空間に挿入される際、
シール部材の離脱方向における他端部が押輪の凹部に嵌め込まれ、
シール部材のバルブ部の管径方向における内周と外周との間のバルブ中心部が、受口の開口端面側における第2のテーパー面の端部よりも、管径方向において内側に位置し、
受口の開口端面側における第2のテーパー面の端部の直径が押輪の第1の突部の内径よりも小さく、
一方の管に対して他方の管が屈曲した状態となることで、挿し口の外周と受口の内周との隙間が許容範囲の最小となる最小隙間部分が発生した場合、
最小隙間部分においても、シール部材の他端部が凹部に嵌め込まれていることが保たれているとともに、
最小隙間部分においても、バルブ中心部が受口の開口端面側における第2のテーパー面の端部よりも管径方向において内側に位置するという関係が保たれていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
第1の突部の内周面と第2のテーパー面とシール部材の外周面とで囲まれた隙間が形成されていることを特徴とする請求項に記載の管継手。
【請求項3】
上記請求項又は請求項における管継手に使用される押輪であって、
受口の開口端面に当接する第2の突部が形成され、
第2の突部は管径方向において第1の突部よりも外側に形成されていることを特徴とする押輪。
【請求項4】
複数の締結具挿通孔と複数の第2の突部とがそれぞれ管周方向において所定間隔をおいて形成され、
第2の突部は管径方向において締結具挿通孔よりも外側に形成され、
押輪の外周縁に、管径方向における内向きに凹んだ複数の外周凹部が形成され、
外周凹部は押輪の外周縁から締結具挿通孔とその隣の締結具挿通孔との間に入り込んでいることを特徴とする請求項に記載の押輪。
【請求項5】
第1の突部の内周から外周までの管径方向の幅が第1の突部の外周から外周凹部までの管径方向の幅以上となるように構成されていることを特徴とする請求項に記載の押輪。
【請求項6】
一方の管に形成された挿し口が他方の管に形成された受口内に挿入され、
挿し口端部の外周と受口奥側の内周との間には所要の空間が形成されて、一方の管に対して他方の管が屈曲可能に構成され、
受口奥側ほど縮径する第1のテーパー面が受口の内周に形成され、
第1のテーパー面と挿し口の外周との間にシール部材挿入空間が全周にわたり形成され、
受口の内周と挿し口の外周との間をシールする環状のシール部材がシール部材挿入空間に挿入され、
シール部材を受口の開口端面からシール部材挿入空間に押し込む押輪が挿し口に外嵌されて受口の開口端面に外側から対向し、
押輪は複数の締結具を介して受口に締結され、
シール部材は、挿入方向における一端部に、管径方向において圧縮されてシール機能を発揮するバルブ部を有し、
シール部材のバルブ部を受口の開口端面からシール部材挿入空間に案内する案内部が受口の内周に形成され、
案内部は受口奥側ほど縮径する第2のテーパー面を有し、
第2のテーパー面は、管軸方向において、受口の開口端面と第1のテーパー面との間に形成されており、
管軸心に対する第2のテーパー面の傾斜角度が管軸心に対する第1のテーパー面の傾斜角度よりも大きく、
押輪に、締結具が挿通される締結具挿通孔と、受口の開口端面に当接するとともに管径方向において締結具挿通孔よりも内側に形成された円環状の第1の突部と、第1の突部に囲まれた凹部とが設けられており、
受口の開口端面側における第2のテーパー面の端部の直径が押輪の第1の突部の内径よりも小さい管継手における管の接合方法であって、
シール部材と押輪とを一方の管に外嵌した状態で、挿し口を他方の管の受口に挿入し、
シール部材の離脱方向における他端部を押輪に形成された凹部に嵌め込み、シール部材のバルブ部の管径方向における内周と外周との間のバルブ中心部を、第2のテーパー面の受口の開口端面側における端部よりも、管径方向において内側に位置させた状態で、締結具を締め込み、押輪でシール部材を受口の開口端面からシール部材挿入空間に押し込み、
一方の管に対して他方の管が屈曲した状態となることで、挿し口の外周と受口の内周との隙間が許容範囲の最小となる最小隙間部分が発生した場合、
最小隙間部分においても、シール部材の他端部を凹部に嵌め込ませるとともに、
最小隙間部分においても、バルブ部のバルブ中心部を、第2のテーパー面の受口の開口端面側における端部よりも、管径方向において内側に位置させることを特徴とする管の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の管に形成された挿し口が他方の管に形成された受口内に挿入された管継手およびこの管継手に使用される押輪、ならびに、管の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管継手としては、例えば図16に示すように、一方の管101に形成された挿し口102が他方の管103に形成された受口104内に挿入され、受口104の奥側ほど縮径する第1のテーパー面105が受口104の内周に形成され、第1のテーパー面105と挿し口102の外周との間にシール部材挿入空間106が全周にわたり形成され、受口104の内周と挿し口102の外周との間をシールする環状のシール部材107がシール部材挿入空間106に挿入され、シール部材107を受口104の開口端面108からシール部材挿入空間106に押し込む押輪109が挿し口102に外嵌されて受口104の開口端面108に外側から対向する管継手110が知られている。
【0003】
シール部材挿入空間106よりもさらに受口104の奥側には、受口104の内周から管径方向Bにおける内側に突出する受口突部111が全周にわたり形成されている。受口突部111よりもさらに受口104の奥側には、ロックリング112が収容されている。
【0004】
挿し口102はロックリング112を貫通しており、挿し口102の先端部外周には、挿し口突部113が全周にわたり形成されている。挿し口突部113は一方の管101の離脱方向Aにおいて受口104の奥側からロックリング112に係合可能であり、これにより、地震等の発生時に、挿し口102が受口104から離脱するのを防止している。
【0005】
図16図17に示すように、押輪109は複数のボルト114およびナット115を介して受口104に締結されている。ボルト114は押輪109に形成されたボルト挿通孔116に挿通されており、これらボルト114,ナット115およびボルト挿通孔116はそれぞれ管周方向Gにおいて所定間隔をおいて形成されている。また、押輪109には複数の突部117が設けられている。これら突部117はそれぞれ、ボルト挿通孔116よりも管径方向Bにおける外側に位置している。
【0006】
シール部材107は、挿入方向Cにおける一端部に、管径方向Bにおいて圧縮されてシール機能を発揮するバルブ部118を有している。
【0007】
これによると、シール部材107と押輪109とを一方の管101に外嵌し、挿し口102を受口104に挿入し、心出しを行って一方の管101の軸心を他方の管103の軸心に合わせる。この状態で、ボルト114およびナット115を締め込んで、シール部材107を、押輪109で、受口104の開口端面108からシール部材挿入空間106に押し込んでいく。
【0008】
図16に示すように、押輪109の突部117が受口104の開口端面108に当接するまでボルト114およびナット115を締め込むことにより、シール部材107が過大な力で押し付けられるのを防止することができる。これにより、一方の管101が他方の管103に接合される。
【0009】
尚、上記のような管継手は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2010-286110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記の従来形式では、一方の管101を他方の管103に接合する際、例えば、図17に示すように、先ず最初に、管継手110の最上位M1にあるボルト114,ナット115を締め込み、その後、順次、下位M2~M4にあるボルト114,ナット115を締め込み、最後に、管継手110の最下位M5にあるボルト114,ナット115を締め込むといった順序で、締付けトルクの管理を行わないような片締めを行った場合、シール部材107が伸びて、管継手110の下部においてシール部材107が下方に弛んでしまい、シール部材107のバルブ部118がシール部材挿入空間106に挿入できないという問題が発生することがある。そのため、従来形式においては全てのボルト114,ナット115の締付けトルクが均一になるように締め込む必要があり、ボルト114,ナット115の締め込み作業に時間を要していた。
【0012】
また、ボルト114とナット115を締め込み過ぎると、押輪109に過大な締め付け力が作用し、図18に示すように、押輪109の内周側が変形して受口104の開口端面108に接近する虞がある。さらに、挿し口102を受口104に挿入した後、図19に示すように、挿し口102を受口104に対して所定の屈曲角度θで屈曲させた際、挿し口102の外周が押輪109の内周に当接し、押輪109の内周側が変形して受口104の開口端面108に接近する虞がある。
【0013】
本発明は、押輪でシール部材をシール部材挿入空間に確実に押し込むことができ、また、押輪の変形を防止することが可能であり、さらに、締結具の締付けトルクの管理が不要となる管継手および押輪ならびに管の接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本第1発明は、一方の管に形成された挿し口が他方の管に形成された受口内に挿入され、
挿し口端部の外周と受口奥側の内周との間には所要の空間が形成されて、一方の管に対して他方の管が屈曲可能に構成され、
受口奥側ほど縮径する第1のテーパー面が受口の内周に形成され、
第1のテーパー面と挿し口の外周との間にシール部材挿入空間が全周にわたり形成され、
受口の内周と挿し口の外周との間をシールする環状のシール部材がシール部材挿入空間に挿入されシール部材を受口の開口端面からシール部材挿入空間に押し込む押輪が挿し口に外嵌されて受口の開口端面に外側から対向し、
一方の管に対して他方の管が屈曲した状態においても、
押輪が複数の締結具を介して受口に締結される管継手であって、
シール部材は、挿入方向における一端部に、管径方向において圧縮されてシール機能を発揮するバルブ部を有しており、
シール部材のバルブ部を受口の開口端面からシール部材挿入空間に案内する案内部が受口の内周に形成され、
案内部は受口奥側ほど縮径する第2のテーパー面を有し、
第2のテーパー面は、管軸方向において、受口の開口端面と第1のテーパー面との間に形成され、
管軸心に対する第2のテーパー面の傾斜角度が管軸心に対する第1のテーパー面の傾斜角度よりも大きく、
押輪に、締結具が挿通される締結具挿通孔と、受口の開口端面に当接する円環状の第1の突部と、第1の突部に囲まれた凹部とが設けられ、
第1の突部は管径方向において締結具挿通孔よりも内側に形成され、
シール部材が挿し口に外嵌された状態でシール部材挿入空間に挿入される際、
シール部材の離脱方向における他端部が押輪の凹部に嵌め込まれ、
シール部材のバルブ部の管径方向における内周と外周との間のバルブ中心部が、受口の開口端面側における第2のテーパー面の端部よりも、管径方向において内側に位置し、
受口の開口端面側における第2のテーパー面の端部の直径が押輪の第1の突部の内径よりも小さく、
一方の管に対して他方の管が屈曲した状態となることで、挿し口の外周と受口の内周との隙間が許容範囲の最小となる最小隙間部分が発生した場合、
最小隙間部分においても、シール部材の他端部が凹部に嵌め込まれていることが保たれているとともに、
最小隙間部分においても、バルブ中心部が受口の開口端面側における第2のテーパー面の端部よりも管径方向において内側に位置するという関係が保たれているものである。
【0015】
これによると、シール部材を押輪でシール部材挿入空間に押し込む際、シール部材のバルブ部が案内部の第2のテーパー面によって受口の開口端面からシール部材挿入空間に案内される。
【0016】
これにより、押輪を受口に締結する際に締結具を片締めして、シール部材が伸びて弛んだ場合でも、シール部材のバルブ部は案内部の第2のテーパー面によって受口の開口端面からシール部材挿入空間に案内されるため、押輪でシール部材をシール部材挿入空間に確実に押し込むことができる。これにより、全ての締結具の締付けトルクが均一になるように締め込む必要はなく、締結具の締付けトルクの管理が不要になり、締結具の締め込み作業に要する時間を短縮することができる。
【0018】
また、シール部材のバルブ中心部が第2のテーパー面の端部よりも管径方向において内側に位置するため、押輪を受口に締結する際に締結具を片締めしてシール部材が管径方向に伸びても、シール部材のバルブ部は案内部の第2のテーパー面によって受口の開口端面からシール部材挿入空間に確実に案内される。
【0020】
また、一方の管の軸心が他方の管の軸心に対して管径方向にずれたり或いは一方の管が他方の管に対して屈曲することにより、最小隙間部分が発生した場合、シール部材のバルブ中心部は、最小隙間部分においても、第2のテーパー面の端部よりも管径方向において内側に位置する。これにより、押輪を受口に締結する際に締結具を片締めしても、シール部材のバルブ部は案内部の第2のテーパー面によって受口の開口端面からシール部材挿入空間に確実に案内される。
【0022】
さらに、シール部材を押輪でシール部材挿入空間に押し込む際、シール部材の他端部が押輪の凹部に嵌め込まれているため、シール部材の他端部が管径方向へずれてめくれてしまうのを防止することができる。
【0023】
本第発明における管継手は、第1の突部の内周面と第2のテーパー面とシール部材の外周面とで囲まれた隙間が形成されているものである。
【0024】
これによると、シール部材を押輪でシール部材挿入空間に押し込む際、シール部材が管径方向における外側へ変形しても、シール部材が隙間に逃げることにより、シール部材が押輪の第1の突部と受口の開口端面との間に挟まれてしまうのを防止することができる。
【0025】
本第発明は、上記第4発明又は第5発明における管継手に使用される押輪であって、
受口の開口端面に当接する第2の突部が形成され、
第2の突部は管径方向において第1の突部よりも外側に形成されているものである。
【0026】
これによると、締結具を締結具挿通孔に挿通して、押輪を受口に締結した際、押輪に過大な締結力が作用しても、第1の突部と第2の突部とがそれぞれ受口の開口端面に当接しているため、押輪の変形を防止することができる。
【0027】
また、挿し口を受口に挿入した後、挿し口を受口に対して所定の角度で屈曲させた際、挿し口の外周が押輪の内周に当接しても、第1の突部と第2の突部とがそれぞれ受口の開口端面に当接することにより、押輪の変形を防止することができる。
【0028】
本第発明における押輪は、複数の締結具挿通孔と複数の第2の突部とがそれぞれ管周方向において所定間隔をおいて形成され、
第2の突部は管径方向において締結具挿通孔よりも外側に形成され、
押輪の外周縁に、管径方向における内向きに凹んだ複数の外周凹部が形成され、
外周凹部は押輪の外周縁から締結具挿通孔とその隣の締結具挿通孔との間に入り込んでいるものである。
【0029】
これによると、押輪の外周縁に複数の外周凹部が形成されているため、外周凹部が形成されていない押輪に比べて、押輪を軽量化することができる。
【0030】
本第発明における押輪は、第1の突部の内周から外周までの管径方向の幅が第1の突部の外周から外周凹部までの管径方向の幅以上となるように構成されている。
【0031】
これによると、押輪の外周縁に複数の外周凹部を形成しても、押輪の強度を十分に保つことができる。
【0032】
本第発明は、一方の管に形成された挿し口が他方の管に形成された受口内に挿入され、
挿し口端部の外周と受口奥側の内周との間には所要の空間が形成されて、一方の管に対して他方の管が屈曲可能に構成され、
受口奥側ほど縮径する第1のテーパー面が受口の内周に形成され、
第1のテーパー面と挿し口の外周との間にシール部材挿入空間が全周にわたり形成され、
受口の内周と挿し口の外周との間をシールする環状のシール部材がシール部材挿入空間に挿入され、
シール部材を受口の開口端面からシール部材挿入空間に押し込む押輪が挿し口に外嵌されて受口の開口端面に外側から対向し、
押輪は複数の締結具を介して受口に締結され、
シール部材は、挿入方向における一端部に、管径方向において圧縮されてシール機能を発揮するバルブ部を有し、
シール部材のバルブ部を受口の開口端面からシール部材挿入空間に案内する案内部が受口の内周に形成され、
案内部は受口奥側ほど縮径する第2のテーパー面を有し、
第2のテーパー面は、管軸方向において、受口の開口端面と第1のテーパー面との間に形成されており、
管軸心に対する第2のテーパー面の傾斜角度が管軸心に対する第1のテーパー面の傾斜角度よりも大きく、
押輪に、締結具が挿通される締結具挿通孔と、受口の開口端面に当接するとともに管径方向において締結具挿通孔よりも内側に形成された円環状の第1の突部と、第1の突部に囲まれた凹部とが設けられており、
受口の開口端面側における第2のテーパー面の端部の直径が押輪の第1の突部の内径よりも小さい管継手における管の接合方法であって、
シール部材と押輪とを一方の管に外嵌した状態で、挿し口を他方の管の受口に挿入し、
シール部材の離脱方向における他端部を押輪に形成された凹部に嵌め込み、シール部材のバルブ部の管径方向における内周と外周との間のバルブ中心部を、第2のテーパー面の受口の開口端面側における端部よりも、管径方向において内側に位置させた状態で、締結具を締め込み、押輪でシール部材を受口の開口端面からシール部材挿入空間に押し込み、
一方の管に対して他方の管が屈曲した状態となることで、挿し口の外周と受口の内周との隙間が許容範囲の最小となる最小隙間部分が発生した場合、
最小隙間部分においても、シール部材の他端部を凹部に嵌め込ませるとともに、
最小隙間部分においても、バルブ部のバルブ中心部を、第2のテーパー面の受口の開口端面側における端部よりも、管径方向において内側に位置させるものである。
【発明の効果】
【0034】
以上のように本発明によると、シール部材を押輪でシール部材挿入空間に押し込む際、シール部材のバルブ部が案内部の第2のテーパー面によって受口の開口端面からシール部材挿入空間に案内される。これにより、締結具を片締めして押輪を受口に締結する場合、シール部材が伸びて弛んでも、シール部材のバルブ部は案内部の第2のテーパー面によって受口の開口端面からシール部材挿入空間に案内されるため、押輪でシール部材をシール部材挿入空間に確実に押し込むことができる。また、全ての締結具の締付けトルクが均一になるように締め込む必要はなく、締結具の締付けトルクの管理が不要になり、締結具の締め込み作業に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1の実施の形態における管継手の上部の断面図である。
図2】同、管継手の挿し口と受口とシール部材と押輪の一部拡大断面図であり、シール部材をシール部材挿入空間に挿入する直前の様子を示す。
図3】同、管継手の押輪の正面図である。
図4】同、管継手の押輪の背面図である。
図5図3におけるX-X矢視図である。
図6図3におけるY-Y矢視図である。
図7】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
図8】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
図9】同、管継手における管の接合方法を示す一部拡大断面図であり、シール部材がシール部材挿入空間に挿入され始めたときの様子を示す。
図10】同、管継手における管の接合方法を示す一部拡大断面図であり、シール部材がシール部材挿入空間に挿入途中の様子を示す。
図11】同、管継手における管の接合方法を示す一部拡大断面図であり、シール部材がシール部材挿入空間に挿入されたときの様子を示す。
図12】本発明の第2の実施の形態における管継手によって屈曲して接合された管を示す図である。
図13】同、管継手の下部の断面図である。
図14】同、管継手における管の接合方法を示す断面図である。
図15】同、管継手における管の接合方法を示す断面図であり、図14における一部分を拡大表示したものである。
図16】従来の管継手の上部の断面図である。
図17】同、管継手を一方の管の管軸方向から見た図である。
図18】同、管継手の上部の断面図であり、押輪が変形した様子を示す。
図19】同、管を屈曲して接合した場合の管継手の下部の断面図であり、押輪が変形した様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0037】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1図2に示すように、1は管継手であり、この管継手1は、一方の管2に形成された挿し口3が他方の管4に形成された受口5内に挿入されている。
【0038】
受口5の内周には、第1のテーパー面8とストレート面9と受口突部10とロックリング収容溝11とが形成されている。第1のテーパー面8は受口5の奥側ほど縮径している。ストレート面9は、管4の管軸心13に平行であり、第1のテーパー面8の奥端部から受口5の奥側に連続している。
【0039】
第1のテーパー面8と挿し口3の外周との間にシール部材挿入空間14が全周にわたり形成されている。受口5の内周と挿し口3の外周との間をシールする環状のシール部材15がシール部材挿入空間14に挿入されている。
【0040】
シール部材15を受口5の開口端面16からシール部材挿入空間14に押し込む押輪17が挿し口3に外嵌されて受口5の開口端面16に外側から対向している。押輪17は複数のT頭ボルト19(締結具の一例)およびナット20(締結具の一例)を介して受口5に締結される。
【0041】
受口5には、T頭ボルト19が挿通される複数のボルト孔21が形成されている。
【0042】
ロックリング収容溝11はシール部材挿入空間14よりも受口5の奥側に形成されており、ロックリング収容溝11にはロックリング22が収容されている。ロックリング22は、一箇所が切断された一つ割り構造のリングであり、切断部分の幅を拡径器(図示省略)で拡大することによって拡径し、拡径器を切断部分から取り外すことによって縮径して元の径に戻るような弾性を有している。
【0043】
挿し口3はロックリング22を貫通しており、挿し口3の先端部外周には、挿し口突部23が全周にわたり形成されている。挿し口突部23は一方の管2の離脱方向Aにおいて受口5の奥側からロックリング22に係合可能であり、これにより、地震等の発生時に、挿し口3が受口5から離脱するのを防止している。
【0044】
受口突部10は、受口5の内周から管径方向Bにおける内側に突出しており、シール部材挿入空間14とロックリング収容溝11との間に全周にわたり形成されている。受口突部10の内周と挿し口3の外周との間には心出し用リング24が嵌め込まれている。心出し用リング24は、一箇所が切断された一つ割り構造のリングであり、弾性を有する樹脂等の材質で製造されている。
【0045】
シール部材15は、ゴム製のリングであり、挿入方向Cにおける一端部に設けられた断面が円形状のバルブ部26と、バルブ部26に一体に設けられた断面が台形状の基部27とを有している。図1に示すように、シール部材15がシール部材挿入空間14に挿入された状態で、バルブ部26は管径方向Bにおいて圧縮されてシール機能を発揮する。
【0046】
シール部材15のバルブ部26を受口5の開口端面16からシール部材挿入空間14に案内する案内部29が受口5の内周に形成されている。案内部29は受口5の奥側ほど縮径する第2のテーパー面30を有している。第2のテーパー面30は、管軸方向Eにおいて、受口5の開口端面16と第1のテーパー面8との間に全周にわたり形成されている。図1に示すように、管軸心13に対する第2のテーパー面30の傾斜角度α2が管軸心13に対する第1のテーパー面8の傾斜角度α1よりも大きい。
【0047】
図3図6に示すように、押輪17には、T頭ボルト19が挿通される複数のボルト挿通孔32(締結具挿通孔の一例)と、受口5の開口端面16に当接する円環状の第1の突部33と、開口端面16に当接する複数の第2の突部34と、第1の突部33に囲まれた凹部35とが設けられている。
【0048】
第1の突部33と第2の突部34と凹部35とは、受口5の開口端面16に対向する押輪17の接合面側に形成されている。
【0049】
第1の突部33は管径方向Bにおいてボルト挿通孔32よりも内側に形成されている。図1図9に示すように、シール部材15の基部27の離脱方向Aにおける他端部が押輪17の凹部35に嵌め込まれている。
【0050】
図3図4に示すように、ボルト挿通孔32と第2の突部34とはそれぞれ管周方向Gにおいて所定間隔をおいて形成されており、さらに、第2の突部34は管径方向Bにおいてボルト挿通孔32よりも外側に形成されている。図5に示すように、第1の突部33の高さh1と第2の突部34の高さh2とは同じである。
【0051】
押輪17の外周縁には、管径方向Bにおける内向きに凹んだ複数の外周凹部37が形成されている。図3図4に示すように、外周凹部37は押輪17の外周縁からボルト挿通孔32とその隣のボルト挿通孔32との間に入り込んでいる。
【0052】
第1の突部33の内周から外周までの管径方向Bの幅W1が第1の突部33の外周から外周凹部37までの管径方向Bの幅W2以上となるように構成されている。
押輪17の第1の突部33の内周面33aは挿入方向Cほど拡径するテーパー面である。図2に示すように、受口5の開口端面16側における第2のテーパー面30の端部30aの直径D2が押輪17の第1の突部33の内径D1よりも小さい。
【0053】
図1図11に示すように、第1の突部33の内周面33aと第2のテーパー面30とシール部材15の基部27の外周面とで囲まれた隙間39が全周にわたり形成されている。
【0054】
また、図2図9に示すように、シール部材15が挿し口3に外嵌された状態でシール部材挿入空間14に挿入される際、シール部材15のバルブ部26の管径方向Bにおける内周と外周との間のバルブ中心部41が、受口5の開口端面16側における第2のテーパー面30の端部30aよりも、管径方向Bにおいて内側に位置する。
【0055】
上記管継手1における管2,4の接合方法を以下に説明する。
【0056】
先ず、ロックリング22をロックリング収容溝11に収容し、拡径器(図示省略)を用いてロックリング22の切断部分の幅を拡大することにより、ロックリング22を拡径する。
【0057】
次に、心出し用リング24とシール部材15と押輪17とを一方の管2に外嵌した状態で、一方の管2の挿し口3を他方の管4の受口5に挿入する。この際、上記のように拡径器を用いてロックリング22を拡径しているため、挿し口突部23は、受口5の開口端面16からロックリング22の内周を通過して、ロックリング22よりも受口5の奥側に達する。
【0058】
その後、拡径器をロックリング22の切断部分から取り外すことによって、ロックリング22が縮径して挿し口3の外周に抱き付く。
【0059】
次に、図7に示すように、心出し用リング24を、管軸方向Eに摺動させて、受口突部10の内周と挿し口3の外周との間に挿入する。これにより、挿し口3が受口5に対して心出しされ、一方の管2の軸心と他方の管4の軸心とのずれがほとんど無くなる。
【0060】
さらに、図8図9に示すように、シール部材15の基部27の離脱方向Aにおける他端部を押輪17の凹部35に嵌め込み、T頭ボルト19を受口5のボルト孔21と押輪17のボルト挿通孔32とに挿通し、ナット20をT頭ボルト19に締め込んで、押輪17でシール部材15を受口5の開口端面16からシール部材挿入空間14に押し込む。
【0061】
この際、図9図10に示すように、シール部材15のバルブ部26が案内部29の第2のテーパー面30によって受口5の開口端面16からシール部材挿入空間14に案内される。
【0062】
尚、図9に示すように、シール部材15のバルブ中心部41が第2のテーパー面30の端部30aよりも管径方向Bにおいて内側に位置するため、押輪17を受口5に締結する際にT頭ボルト19およびナット20を上位にあるものから順次下位にあるものへと片締めした場合、シール部材15が伸びて弛んでも、バルブ部26は案内部29の第2のテーパー面30によって受口5の開口端面16からシール部材挿入空間14に確実に案内され、押輪17でシール部材15をシール部材挿入空間14に確実に押し込むことができる。
【0063】
これにより、全てのT頭ボルト19およびナット20の締付けトルクが均一になるように締め込む必要はなく、T頭ボルト19およびナット20の締付けトルクの管理が不要になり、T頭ボルト19およびナット20の締め込み作業に要する時間を短縮することができる。
【0064】
また、シール部材15を押輪17でシール部材挿入空間14に押し込む際、シール部材15の他端部が押輪17の凹部35に嵌め込まれているため、シール部材15の他端部が管径方向Bへずれてめくれてしまうのを防止することができる。
【0065】
また、図11に示すように、シール部材15が管径方向Bにおける外側へ変形しても、シール部材15が隙間39に逃げることにより、シール部材15が押輪17の第1の突部33と受口5の開口端面16との間に挟まれてしまうのを防止することができる。
【0066】
また、図1に示すように、T頭ボルト19を受口5のボルト孔21と押輪17のボルト挿通孔32とに挿通し、ナット20を締め込んで押輪17を受口5に締結した際、押輪17に過大な締結力が作用しても、第1の突部33と第2の突部34とがそれぞれ受口5の開口端面16に当接しているため、押輪17の変形を防止することができる。
【0067】
また、図3図4に示すように、押輪17の外周縁に複数の外周凹部37が形成されているため、外周凹部37が形成されていない押輪に比べて、押輪17を軽量化することができる。
【0068】
また、図3図6に示すように、押輪17は第1の突部33の内周から外周までの幅W1が第1の突部33の外周から外周凹部37までの幅W2以上となるように構成されているため、押輪17の外周縁に複数の外周凹部37を形成しても、押輪17の強度を十分に保つことができる。
【0069】
(第2の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、図1に示すように、一方の管2は他方の管4に屈曲せずに真っすぐに接合されているが、以下に説明する第2の実施の形態では、図12図13に示すように、一方の管2は所定の屈曲角度θで屈曲して他方の管4に接合されている。この際、一方の管2は挿し口3側の端部が反対側の端部よりも上位になるように傾斜している。
【0070】
このような屈曲した管継手1において一方の管2を他方の管4に接合する場合、心出し用リング24とシール部材15と押輪17とを一方の管2に外嵌した状態で、一方の管2の挿し口3を他方の管4の受口5に挿入する。
【0071】
そして、図14に示すように、心出し用リング24を、管軸方向Eに摺動させて、受口突部10の内周と挿し口3の外周との間に挿入した後、一方の管2を他方の管4に対して所定の屈曲角度θで屈曲させる。
【0072】
この際、挿し口3は心出し用リング24に支持されて所定の屈曲角度θで屈曲しているため、挿し口3の外周と受口5の内周との隙間が許容範囲の最小となる最小隙間部分43が、管継手1の下部に発生する。
【0073】
このような状態で、シール部材15の基部27の他端部を押輪17の凹部35に嵌め込み、T頭ボルト19を受口5のボルト孔21と押輪17のボルト挿通孔32とに挿通し、ナット20をT頭ボルト19に締め込み、押輪17でシール部材15を受口5の開口端面16からシール部材挿入空間14に押し込む。
【0074】
この際、図15に示すように、シール部材15のバルブ部26が案内部29の第2のテーパー面30によって受口5の開口端面16からシール部材挿入空間14に案内される。
【0075】
尚、押輪17を受口5に締結する際にT頭ボルト19およびナット20を上位のものから順次下位のものへと片締めした場合、上記のような最小隙間部分43においても、シール部材15のバルブ中心部41が第2のテーパー面30の端部30aよりも管径方向Bにおいて内側に位置するため、バルブ部26は案内部29の第2のテーパー面30によって受口5の開口端面16からシール部材挿入空間14に確実に案内され、押輪17でシール部材15をシール部材挿入空間14に確実に押し込むことができる。
【0076】
また、図13に示すように、屈曲した挿し口3の外周が押輪17の内周に当接した場合でも、第1の突部33と第2の突部34とがそれぞれ受口5の開口端面16に当接することにより、押輪17の変形を防止することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 管継手
2 一方の管
3 挿し口
4 他方の管
5 受口
8 第1のテーパー面
13 管軸心
14 シール部材挿入空間
15 シール部材
16 開口端面
17 押輪
19 T頭ボルト(締結具)
20 ナット(締結具)
26 バルブ部
29 案内部
30 第2のテーパー面
30a 第2のテーパー面の端部
32 ボルト挿通孔(締結具挿通孔)
33 第1の突部
33a 第1の突部の内周面
34 第2の突部
35 凹部
37 外周凹部
39 隙間
41 バルブ中心部
43 最小隙間部分
A 離脱方向
B 管径方向
C 挿入方向
D1 第1の突部の内径
D2 第2のテーパー面の端部の直径
E 管軸方向
W1 第1の突部の内周から外周までの管径方向の幅
W2 第1の突部の外周から外周凹部までの管径方向の幅
α1 第1のテーパー面の傾斜角度
α2 第2のテーパー面の傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19