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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】軽量ボード、その製造方法及び構造材
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/04 20060101AFI20241212BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20241212BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20241212BHJP
   E04C 2/20 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
B32B17/04 Z
B32B5/18
B32B27/36 102
E04C2/20 N
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020191814
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080629
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】守田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】早川 典
(72)【発明者】
【氏名】小暮 直親
(72)【発明者】
【氏名】友利 格
(72)【発明者】
【氏名】高橋 誠治
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-072628(JP,A)
【文献】特開平04-062044(JP,A)
【文献】特開2019-155660(JP,A)
【文献】特開平10-130413(JP,A)
【文献】特開2012-158847(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109177352(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
E04C 2/00 - 2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸し、熱プレス成型を行った厚さ0.2mm以上2.0mm以下の表層材を、固形分100%の接着剤を用いて、発泡倍率5倍以上20倍以下のプラスチック発泡体の表裏に貼り合せ、
前記プラスチック発泡体がポリカーボネート系樹脂であり、
前記固形分100%の接着剤が、ウレタン系樹脂(ただし、ホットメルト接着剤を除く)又はエポキシ系樹脂(ただし、ホットメルト接着剤を除く)であることを特徴とする軽量ボード。
【請求項2】
前記ガラスクロスの坪量が、50g/m以上200g/m以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の軽量ボード。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ジアレルフタレート系樹脂のいずれか1種類の樹脂、或いは2種類以上の混合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軽量ボード。
【請求項4】
前記ガラスクロスの積層枚数は、2枚以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の軽量ボード。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂を含浸した前記ガラスクロスと印刷紙との積層体に、熱プレス成型した複数枚の化粧板を、前記固形分100%の接着剤を用いて相互に貼り合せ、前記表層材を形成することを特徴とする請求項1に記載の軽量ボード。
【請求項6】
ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸し、熱プレス成型を行った厚さ0.2mm以上2.0mm以下の表層材を、固形分100%の接着剤を用いて、発泡倍率5倍以上20倍以下のプラスチック発泡体の表裏に貼り合せ、
前記プラスチック発泡体がポリカーボネート系樹脂であり、
前記熱硬化性樹脂を含浸した前記ガラスクロスと印刷紙との積層体に、熱プレス成型した複数枚の化粧板を、前記固形分100%の接着剤を用いて相互に貼り合せ、前記表層材を形成することを特徴とする軽量ボード。
【請求項7】
ポリカーボネート系樹脂を発泡倍率5倍以上20倍以下で発泡させたプラスチック発泡体を用意し、
ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸し、熱プレス成型を行った厚さ0.2mm以上2.0mm以下の表層材とし、
前記プラスチック発泡体の表裏の一方の片面に、固形分100%の接着剤を塗布し、前記表層材を貼り合せ、
前記プラスチック発泡体の表裏の他方の片面に、前記接着剤を塗布し、前記表層材を貼り合せ、加圧した状態で所定時間乾燥させ
前記固形分100%の接着剤が、ウレタン系樹脂(ただし、ホットメルト接着剤を除く)又はエポキシ系樹脂(ただし、ホットメルト接着剤を除く)であることを特徴する軽量ボードの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の前記軽量ボードを任意の形に切削し、切削した前記軽量ボードを前記接着剤で互いに接合することで任意の形状に形成することを特徴とする構造材。
【請求項9】
ポリカーボネート系樹脂を発泡倍率5倍以上20倍以下で発泡させたプラスチック発泡体を用意し、
ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸し、熱プレス成型を行った厚さ0.2mm以上2.0mm以下の表層材とし、
前記プラスチック発泡体の表裏の一方の片面に、固形分100%の接着剤を塗布し、前記表層材を貼り合せ、
前記プラスチック発泡体の表裏の他方の片面に、前記接着剤を塗布し、前記表層材と前記プラスチック発泡体とを交互に貼り合わせて構造体を作製し、前記構造体の両端面の一方の片面に前記接着剤を塗布し、前記表層材を貼り合わせ、前記構造体の両端面の他方の片面に前記表層材を貼り合わせ、4面が前記表層材で囲われたことを特徴とする構造材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の剛性が高く、且つ靭性に優れた軽量ボード、その製造方法及び構造材に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な分野で軽量かつ高強度な材料が求められており、対策がとられてきた。建材分野においては、建具の軽量化のための芯材としてフラッシュ構造やハニカム構造が採用されている。
【0003】
また、従来、樹脂層に、樹脂含浸ガラスクロスから構成された補強層を貼り合わせて積層した「外板用補強材」が知られている(特許文献1の段落[0059]~[0062]並びに図1及び図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-148091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のサンドイッチ構造材は、軽量で縦方向(面方向)からの剛性は高いが、側面の剛性が弱い。
また、面方向、側面方向共にフラッシュ並びにハニカム構造の断面が線状のため表面化粧板との接着面積が極めて少ないため、接着強度が得にくい。
さらにサンドイッチ構造材に加工した後は芯材の空隙が大きいため、切削加工が難しい。
【0006】
また、芯材としてプラスチックからなる発泡体を用いることもできる。発泡体の芯材は場所に関わらず面状に均一に構成されているため、表面化粧板との接着面積も十分に取れる。しかしながら、芯材である発泡体の強度が弱ければ、大きな力が加わった場合は発泡体が材料破壊する可能性が高い。
【0007】
一方、従来の「外板用補強材」(特許文献1)は、輸送機械などの各種産業機械の外板に貼着して、その外板を補強するためのものであり、本発明と用途を異にする。また、樹脂層において、「ポリカーボネート系樹脂」が記載されていないし、又、ガラスクロスの坪量等については記載されていない。
【0008】
本発明はかかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量かつ高い靭性を有し、後加工が容易な「軽量パネル」を提供することを課題とする。また、軽量パネルを加工してなる「構造材」を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る「軽量パネル」は、ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸し、熱プレス成型を行った厚さ0.2mm以上2.0mm以下の表層材を、固形分100%の接着剤を用いて、発泡倍率5倍以上20倍以下のプラスチック発泡体の表裏に貼り合せ、前記プラスチック発泡体がポリカーボネート系樹脂であることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る「軽量パネル」は、前記ガラスクロスの坪量が、50g/m以上200g/m以下の範囲であることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る「軽量パネル」は、前記熱硬化性樹脂が、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ジアレルフタレート系樹脂のいずれか1種類の樹脂、或いは2種類以上の混合物であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る「軽量パネル」は、前記ガラスクロスの積層枚数が、2枚以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る「軽量パネル」は、前記固形分100%の接着剤が、ウレタン系樹脂又はエポキシ系樹脂であることを特徴とする。
本発明の一態様に係る「軽量パネル」は、前記熱硬化性樹脂を含浸した前記ガラスクロスと印刷紙との積層体に、熱プレス成型した複数枚の化粧板を、前記固形分100%の接着剤を用いて相互に貼り合せ、前記表層材を形成することを特徴とする
【0012】
本発明の一態様に係る「軽量パネルの製造方法」は、ポリカーボネート系樹脂を発泡倍率5倍以上20倍以下で発泡させた発泡体を用意し、ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸し、熱プレス成型を行った厚さ0.2mm以上2.0mm以下の表層材とし、前記プラスチック発泡体の表裏の一方の片面に、固形分100%の接着剤を塗布し、前記表層材を貼り合せ、前記プラスチック発泡体の表裏の他方の片面に、前記接着剤を塗布し、前記表層材を貼り合せ、加圧した状態で所定時間乾燥させることを特徴とする。
本発明の一態様に係る「構造材」は、前記軽量ボードを任意の形に切削し、切削した前記軽量ボードを前記接着剤で互いに接合することで任意の形状に形成することを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る「構造材」は、ポリカーボネート系樹脂を発泡倍率5倍以上20倍以下で発泡させたプラスチック発泡体を用意し、ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸し、熱プレス成型を行った厚さ0.2mm以上2.0mm以下の表層材とし、前記プラスチック発泡体の表裏の一方の片面に、固形分100%の接着剤を塗布し、前記表層材を貼り合せ、前記プラスチック発泡体の表裏の他方の片面に、前記接着剤を塗布し、前記表層材と前記プラスチック発泡体とを交互に貼り合わせて構造体を作製し、前記構造体の両端面の一方の片面に前記接着剤を塗布し、前記表層材を貼り合わせ、前記構造体の両端面の他方の片面に前記表層材を貼り合わせ、4面が前記表層材で囲われたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、表面の剛性が高く、且つ靭性に優れた軽量ボード、その製造方法及び構造材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係わる軽量ボードの断面図である。
図2】第3実施形態に係わる構造材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態に係わる軽量ボード10)
図1中、10は、第1実施形態に係わる軽量ボードである。
軽量ボードは、プラスチック発泡体(以下、「発泡体11」という。)の表裏に表層材12を設けたサンドイッチ構造材に係り、特に表層材12に熱硬化性樹脂を含浸加圧加熱したガラスクロスを用いた繊維強化プラスチックサンドイッチ構造材に関する。
【0017】
発泡体11は、多孔質であるため極めて軽量であり、優れた防音性、防振性、断熱性を有している。表層材12は、熱硬化性樹脂を含浸したガラスクロスから構成され、強度と剛性を有する。
【0018】
(発泡体11)
発泡体11は、プラスチック発泡体であり、ポリカーボネート系樹脂からなる。ポリカーボネート系樹脂は、炭酸とグリコール又はビスフェノール等から形成されるポリ炭酸エステルを意味し、特に、2,2-ビス(4-オキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-オキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-オキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-オキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-オキシフェニル)イソブタン、1,1-ビス(4-オキシフェニル)エタン等のビスフェノールから誘導される芳香族ポリカーボネート系樹脂が好ましく用いられる。
【0019】
上記ポリカーボネート系樹脂中には、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂などの他の樹脂を、全体の50重量%未満混合させることができる。上記他の樹脂の混合割合は全体の10重量%以下とすることが好ましく5重量%以下であることがより好ましく、ポリカーボネート系樹脂のみからなることがさらに好ましい。
【0020】
また、発泡体11は、前記ポリカーボネート系樹脂を押出発泡成形、インジェクション発泡成形、プレス発泡成形、発泡粒子の型内成形などによって発泡させて製造されるが、長尺の板状発泡体が得やすく、発泡倍率が高い発泡体が得やすいことから、押出発泡成形により得られた板状発泡体であることが好ましい。また、押出発泡成形により得られた板状発泡体は、押出発泡成形により得られた板状発泡体の表面スキンを切削して使用する場合、気泡が発泡体表面に露出しているため、接着剤を用いて表面材と接着する際、接着性に優れる軽量ボードとすることができることから好ましい。なお、発泡体11が板状発泡体である場合、板の一方の面を表としたとき、表面と反対の面が裏となる。
【0021】
発泡体11の発泡倍率は、5~20倍である。発泡倍率の下限は、軽量性、断熱性の観点から、5倍であり、7倍以上であることが好ましく、10倍以上であることがより好ましい。又、発泡倍率の上限は、剛性の観点から20倍であり、18倍以下であることが好ましく、15倍以下であることがより好ましい。なお、本明細書における発泡体11の発泡倍率は、発泡体11を構成する樹脂の密度を発泡体11の見掛け密度で割ることにより算出される。発泡体11の見掛け密度は、JIS K 6767(1999年)に準拠して求めることができる。
【0022】
発泡体11は、厚みが10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましい。押出発泡板の厚みの上限は、概ね120mm程度である。
発泡体11の厚みは、発泡体11の幅方向垂直断面の幅方向の端から他方の端までを等間隔に等分して両端を除く20箇所以上の測定点を定め、続いて、上記20箇所以上の測定点における発泡体11の厚みをそれぞれ測定し、測定値の相加平均値とすることができる。また、発泡体11は、幅が300mm以上であることが好ましく、350mm以上であることがより好ましく、400mm以上であることがさらに好ましい。発泡体11の幅の上限は、2000mm程度である。また、発泡体11は、長さが1000mm以上であることが好ましく、1500mm以上であることがより好ましい発泡体11の長さの上限は、10000mm程度である。
【0023】
発泡体11は、独立気泡率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。上記独立気泡率S(%)は、ASTM-D2856-70の手順Cに従って、空気比較式比重計(例えば、東芝ベックマン(株)製、空気比較式比重計、型式:930型)を使用して測定された発泡体11の真の体積Vxを用い、下記式(1)により算出される。
【0024】
S(%)=(V-W/ρ)×100/(V-W/ρ) (1)
ただし、Vx:上記空気比較式比重計による測定により求められるカットサンプルの真の体積(cm)(発泡体11のカットサンプルを構成する樹脂の容積と、カットサンプル内の独立気泡部分の気泡全容積との和に相当する。)
:測定に使用されたカットサンプルの外寸法から算出されたカットサンプルの見かけ上の体積(cm
W:測定に使用されたカットサンプル全重量(g)
ρ:発泡体11を構成する樹脂の密度(g/cm
【0025】
発泡体11の厚み方向の平均気泡径は0.08mm~3.0mmであることが好ましい。平均気泡径がこの範囲内のものは、圧縮強さ、断熱性等の基本物性を十分に発揮させることができる。この観点から、厚み方向の平均気泡径は0.2~2.5mmであることがより好ましく、0.5~2.0mmであることがさらに好ましい。
平均気泡径の測定方法は、以下のとおりである。発泡体11の厚み方向の平均気泡径(D:mm)及び発泡板11の幅方向の平均気泡径(D:mm)は、まず、発泡体11の幅方向に垂直な断面(発泡体11の押出方向と直交する垂直断面)を、発泡体11の押出方向の平均気泡径(D:mm)は発泡体11の押出方向の垂直な断面(押出発泡板の押出方向に平行に、幅方向の中央部で二等分する垂直断面)の顕微鏡の拡大写真を得る。ついで、前記拡大写真の上において測定しようとする方向に直線を引き、その直線と交差する気泡の数を計数し、直線の長さ(当然のことながら、この長さは拡大写真上の直線の長さではなく、写真の拡大率を考慮した直線の真の長さを指す。)を計数された気泡の数で割ることによって、各々の方向における平均気泡径を求める。また、発泡体11の水平方向の平均気泡径(D:mm)は、発泡板11の幅方向の平均気泡径(D)と発泡体11の押出方向の平均気泡径(D)の相加平均値とする。
【0026】
さらに、発泡体11においては、気泡変形率が1.2~3.5であることが好ましい。気泡変形率とは、上記測定方法により求められた発泡体11の厚み方向の平均気泡径(D)を発泡体11の水平方向の平均気泡径(D)で除すことにより算出される値(D/D)であり、気泡変形率が1よりも小さいほど気泡は扁平であり、1よりも大きいほど縦長である。気泡変形率が上記範囲内にあることにより、機械的強度に優れ、更に高い断熱性を有する発泡体11となる。上記観点から、上記気泡変形率は、1.5~3.2であることがより好ましく、1.8~3.0であることがさらに好ましい。
【0027】
(表層材12)
表層材12は、ガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸し、熱プレス成型を行って成形する。
表層材12の厚さは、例えば0.2mm以上2.0mm以下が望ましい。厚さの下限は、靱性と作業性という観点から、0.2mm以上が望ましく上限は、軽量性という観点から2.0mm以下が望ましい。
【0028】
ガラスクロスの坪量は、例えば50g/m以上200g/m以下の範囲が好ましい。坪量下限は、熱硬化性樹脂の含浸量を保持するという観点から、50g/m以上とすることが望ましく、又、上限は、熱硬化性樹脂の含浸後の乾燥という観点から、200g/m以下が望ましい。
【0029】
熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアレルフタレート系樹脂のいずれか1種類の樹脂、或いは2種類以上の樹脂の混合物が好ましい。これは、ガラスクロスへの含浸性、含浸機での作業性、熱圧成型後の寸法安定性、強度という観点からである。
【0030】
ガラスクロスの積層枚数は、単数又は複数が可能である。積層枚数は、例えば3枚以上10枚以下であることが好ましい。発泡体の強度を増すことから下限は1枚、積層した際に糊ダクが目立たなくするため、より望ましくは3枚以上であり、積層する際に加熱加圧が十分にかけられる10枚を上限とすることが望ましい。
【0031】
なお、積層枚数として、「ガラスクロス」を基準としたが、これに限らず、ガラスクロスを熱硬化性樹脂に含浸し、加熱したものを、「プリプレグ」といい、当該「プリプレグ」を基準としても良い。
なお、「プリプレグ」は、表層材12、或いは後述する「化粧板」を製造する途中で製造された半製品であり、シート状の材料や強化プラスチック成形材料が該当する。
【0032】
また、「プリプレグ」を複数枚、積層し、熱プレス機でプレスし、一体化したものを、「化粧板」といい、当該「化粧板」を積層枚数の基準としても良い。
なお、「化粧板」も、「プリプレグ」と同様に、表層材12を製造する途中で製造された半製品という意味で使用する。
これに対し、表層材12は、「プリプレグ」や「化粧板」の集合体という意味で使用している。
【0033】
(軽量ボード10の製造方法)
軽量ボード10の製造方法としては、ポリカーボネート系樹脂を所定の倍率(例えば5倍以上20倍以下)で発泡させた所定の厚みを有する発泡体11を用意する。
表層材12に使用するガラスクロス(例えば50g/m以上200g/m以下)を用い、所定の熱硬化性樹脂(例えばエポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ジアレルフタレート系樹脂)に含浸し、加熱し、プリプレグを作製する。プリプレグを2枚以上積層して加熱プレス機で一定の温度(例えば230℃)且つ所定の時間(例えば30分)プレスして熱硬化させ、所定の厚み(例えば0.2mm以上2.0mm以下)の表層材12(或いは化粧板)とする。
【0034】
発泡体11の表裏には、図示しないが、固形分100%の接着剤を用いて、表層材12(或いは化粧板)を貼り合せ、軽量ボード10を製造する。
固形分100%の接着剤は、例えばウレタン系樹脂又はエポキシ系樹脂を用いる。
接着剤は、発泡体11の片面にゴムローラーを用いて塗布し、表層材12(或いは化粧板)を貼り合せる。同様な方法で、発泡体11のもう片面に、表層材12(或いは化粧板)を貼り合せ、所定の条件(例えば温度23℃、相対湿度50%)、一定の圧力(例えば重石をのせ)、所定の時間(例えば一晩)乾燥させ、軽量ボード10を得る。
【0035】
(表層材12の変形例)
表層材12の変形例としては、熱硬化性樹脂を含浸したガラスクロスと木目などの絵柄を印刷した印刷紙とを積層した後、熱プレス成型した複数枚の化粧板を、固形分100%の接着剤を用いて発泡体11と貼り合せた点を特徴とする。
本変形によれば、前記ガラスクロスと印刷紙とを積層することで、意匠も施された軽量ボードを同一工程で製造できるという利点がある。
【0036】
(第2実施委形態に係る構造材)
つぎに、図示しないが、第2実施形態に係る構造材について説明する。
本第2実施形態に係る構造材は、図示しないが、軽量ボード10を任意の形に切削し、切削した軽量ボードを接着剤で互いに接合することで任意の形状に形成する点を特徴する。
本第2実施形態によれば、任意の形状の構造材20を得ることができる。
【0037】
(第3実施形態に係る構造材)
図2を用いて、第3実施形態に係る構造材20について説明する。
本第3実施形態に係る構造材20は、発泡体11の片面に、固形分100%の接着剤をゴムローラー塗布し、表層材12(或いは化粧板)を貼り合せた。
【0038】
発泡体11のもう片面に、同様な方法で、表層材12(或いは化粧板)を貼り合せた。
さらに、この上に接着剤を塗工した発泡体11と表層材12(或いは化粧板)を交互に貼り合わせ、発泡体11が6層、その間に表層材12(或いは化粧板)を挟んだ構造体を作製した。
なお、構造体は、構造材20を製造する途中で製造された半製品という意味で使用する。
【0039】
この構造体をプレス機に投入し、12時間加圧した。
構造体の木口面に、上記と同様の方法で接着剤を塗布し、表層材12(或いは化粧板)を貼り合わせ、もう片面にも表層材12(或いは化粧板)を貼り合わせ、4面を表層材12(或いは化粧板)で囲われた構造体を作製した。
この構造体をプレス機に投入し、12時間加圧し、本第3実施形態に係る構造材20を得た。
本第3実施形態によれば、4面が表層材12(或いは化粧板)で囲われた構造材20を提供できる。
【実施例
【0040】
以下に、本発明に係る軽量ボード及び構造材の実施例1~実施例11、並びに比較例1~9について説明する。なお、本発明は、下記の実施例1~10に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
実施例1の構成は、次の表1の通りである。
また、次の表1には、実施例1のほか、実施例2~実施例10の各構成についても記載した。
【表1】
【0042】
実施例1では、上記表1の通り、ポリカーボネート樹脂(樹脂密度1.2g/cm)を12倍に発泡させた発泡体(商品名:ミラポリカ(登録商標)フォーム、株式会社JSP)、厚み50mm、幅300mm、長さ1800mmを用意した。なお、ポリカーボネート樹脂の発泡体は表裏を切削したものを使用した。
表層材に使用するガラスクロスとして200g/m(商品名:K7628WT-1270 S640 有沢製作所製)を用い、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂(商品名:DH2000B DIC株式会社)を含浸し、加熱し、プリプレグを作製した。
【0043】
プリプレグ2枚を熱プレス機で230℃、30分、プレスして熱硬化させ、表層材12の厚みが0.3mmの化粧板とした。
発泡体の片面にウレタン系接着剤(商品名:KU550 株式会社コニシ)をゴムローラー塗布し、2層の化粧板を貼り合せ、表裏の一方の面に位置する表層材を形成した。同様な方法で発泡体のもう片面に2層の化粧板を貼り合せ、表裏の他方の面に位置する表層材を形成した。その後、重石をのせて一晩乾燥、すなわち400kg/m、8時間乾燥させ、実施例1の軽量ボードを得た。
得られた軽量ボードの重量は、6.4kg/mとなった。
【0044】
(実施例2)
実施例2では、ポリカーボネート樹脂を12倍に発泡させた発泡体(商品名:ミラポリカ(登録商標)フォーム、株式会社JSP)、厚み50mm、幅300mm、長さ1800mmを用意した。
表層材に使用するガラスクロスとして200g/m(商品名:K7628WT-1270 S640 有沢製作所製)を用い、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂(商品名:DH2000B DIC株式会社)を含浸し、加熱し、プリプレグを作製した。プリプレグ5枚を積層し、熱プレス機で230℃、30分、プレスして一体化させ、表層材12の厚みが0.8mmの化粧板とした。
【0045】
発泡体の片面に、ウレタン系接着剤(商品名:KU550 株式会社コニシ)をゴムローラー塗布し、5層の化粧板を貼り合せ、表裏の一方の面に位置する表層材を形成した。同様な方法で発泡体のもう片面に5層の化粧板を貼り合せ、表裏の他方の面に位置する表層材を形成した。その後、重石をのせて一晩乾燥させ、実施例2の軽量ボードを得た。
得られた軽量ボードの重量は、9kg/mとなった。
【0046】
(実施例3)
実施例3では、ポリカーボネート樹脂を12倍に発泡させた発泡体(商品名:ミラポリカ(登録商標)フォーム、株式会社JSP)、厚み50mm、幅300mm、長さ1800mmを用意した。
表層材に使用するガラスクロスとして200g/m(商品名:K7628WT-1270 S640 有沢製作所製)を用い、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂(商品名:DH2000B DIC株式会社)を含浸し、加熱しプリプレグを作製した。プリプレグ10枚を積層し、熱プレス機で230℃30分、プレスして一体化させ、表層材12の厚みが1.6mmの化粧板とした。
【0047】
発泡体の片面に、ウレタン系接着剤(商品名:KU550 株式会社コニシ)をゴムローラー塗布し、10層の化粧板を貼り合せた。同様な方法で発泡体のもう片面に、10層の化粧板を貼り合せた。表裏の他方の面に位置する表層材を形成した。その後、重石をのせて一晩乾燥させ、実施例3の軽量ボードを得た。
得られた軽量ボードの重量は、11.2kg/mとなった。
【0048】
(実施例4)
実施例4では、ポリカーボネート樹脂を12倍に発泡させた発泡体(商品名:ミラポリカ(登録商標)フォーム、株式会社JSP)、厚み50mm、幅300mm、長さ1800mmを用意した。
表層材に使用するガラスクロスとして50g/m(商品名:1080NT-1270 S640 有沢製作所製)を用い、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂(商品名:DH2000B DIC株式会社)を含浸し、加熱しプリプレグを作製した。
プリプレグ10枚を積層し、熱プレス機で230℃30分、プレスして一体化させ、表層材12の厚みが0.2mmの化粧板とした。
【0049】
発泡体の片面に、ウレタン系接着剤(商品名:KU550 株式会社コニシ)をゴムローラー塗布し、10層の化粧板を貼り合せた。同様な方法で発泡体のもう片面に、10層の化粧板を貼り合せた。表裏の他方の面に位置する表層材を形成した。その後、重石をのせて一晩乾燥させ、実施例4の軽量ボードを得た。
得られた軽量ボードの重量は、7.5kg/mとなった。
【0050】
(実施例5)
実施例5では、ポリカーボネート樹脂を12倍に発泡させた発泡体(商品名:ミラポリカ(登録商標)フォーム、株式会社JSP)、厚み50mm、幅300mm、長さ1800mmを用意した。
表層材に使用するガラスクロスとして200g/m(商品名:K7628WT-1270 S640 有沢製作所製)を用い、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂(商品名:DH2000B DIC株式会社)を含浸し、加熱しプリプレグを作製した。プリプレグ13枚を積層し、熱プレス機で230℃30分、プレスして一体化させ、表層材12の厚みが2.0mmの化粧板とした。
【0051】
発泡体の片面に、ウレタン系接着剤(商品名:KU550 株式会社コニシ)をゴムローラー塗布し、13層の化粧板を貼り合せた。同様な方法で発泡体のもう片面に、13層の化粧板を貼り合せた。表裏の他方の面に位置する表層材を形成した。その後、重石をのせて一晩乾燥させ、実施例5の軽量ボードを得た。
得られた軽量ボードの重量は、13.8kg/mとなった。
【0052】
(実施例6)
実施例6では、ポリカーボネート樹脂を5倍に発泡させた発泡体(商品名:ミラポリカ(登録商標)フォーム、株式会社JSP)、厚み50mm、幅300mm、長さ1800mmを用意した。
表層材に使用するガラスクロスとして200g/m(商品名:K7628WT-1270 S640 有沢製作所製)を用い、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂(商品名:DH2000B DIC株式会社)を含浸し、加熱しプリプレグを作製した。プリプレグ2枚を積層し、熱プレス機で230℃30分、プレスして一体化させ、表層材12の厚みが0.3mmの化粧板とした。
【0053】
発泡体の片面に、ウレタン系接着剤(商品名:KU550 株式会社コニシ)をゴムローラー塗布し、2層の化粧板を貼り合せた。同様な方法で発泡体のもう片面に、2層の化粧板を貼り合せた。表裏の他方の面に位置する表層材を形成した。その後、重石をのせて一晩乾燥させ、実施例6の軽量ボードを得た。
得られた軽量ボードの重量は、7.8kg/mとなった。
【0054】
(実施例7)
実施例7では、ポリカーボネート樹脂を20倍に発泡させた発泡体(商品名:ミラポリカ(登録商標)フォーム、株式会社JSP)、厚み50mm、幅300mm、長さ1800mmを用意した。
表層材に使用するガラスクロスとして200g/m(商品名:K7628WT-1270 S640 有沢製作所製)を用い、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂(商品名:DH2000B DIC株式会社)を含浸し、加熱しプリプレグを作製した。プリプレグ2枚を積層し、熱プレス機で230℃30分、プレスして一体化させ、表層材12の厚みが0.3mmの化粧板とした。
【0055】
発泡体の片面に、ウレタン系接着剤(商品名:KU550 株式会社コニシ)をゴムローラー塗布し、2層の化粧板を貼り合せた。同様な方法で発泡体のもう片面に、2層の化粧板を貼り合せた。表裏の他方の面に位置する表層材を形成した。その後、重石をのせて一晩乾燥させ、実施例7の軽量ボードを得た。
得られた軽量ボードの重量は、6.0kg/mとなった。
【0056】
(実施例8)
実施例8では、ポリカーボネート樹脂を12倍に発泡させた発泡体(商品名:ミラポリカ(登録商標)フォーム、株式会社JSP)、厚み50mm、幅300mm、長さ1800mmを用意した。
表層材に使用するガラスクロスとして200g/m(商品名:K7628WT-1270 S640 有沢製作所製)を用い、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂(商品名:DH2000B DIC株式会社)を含浸し、加熱しプリプレグを作製した。プリプレグ5枚を積層し、熱プレス機で230℃30分、プレスするさい、一般的なフラットな鏡面版ではなく、砂目調のエンボス版を使って一体化させ、表層材12の厚みが0.8mmの化粧板とした。化粧板の表面はエンボス版の砂目の凹凸が転写された。
【0057】
発泡体の片面に、ウレタン系接着剤(商品名:KU550 株式会社コニシ)をゴムローラー塗布し、5層の化粧板を貼り合せた。同様な方法で発泡体のもう片面に、5層の化粧板を貼り合せた。表裏の他方の面に位置する表層材を形成した。その後、重石をのせて一晩乾燥させ、実施例8の軽量ボードを得た。
得られた軽量ボードは表面のンボスにより防滑性能が付与された。重量は、6.4kg/mとなった。
【0058】
(実施例9)
実施例9では、ポリカーボネート樹脂を12倍に発泡させた発泡体(商品名:ミラポリカ(登録商標)フォーム、株式会社JSP)、厚み50mm、幅300mm、長さ1800mmを用意した。
表層材に使用するガラスクロスとして200g/m(商品名:K7628WT-1270 S640 有沢製作所製)を用い、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂(商品名:DH2000B DIC株式会社)を含浸し、加熱しプリプレグを作製した。プリプレグ5枚を積層し、熱プレス機で230℃30分、プレスするさい、表面に木目柄を印刷したチタン紙を置いた状態で一体化させ、表層材12の厚みが0.9mmの化粧板とした。化粧板は木目意匠が付与された。なお、チタン紙はメラミン化粧板などにも使用される樹脂の含浸性がよい印刷紙である。
【0059】
発泡体の片面に、ウレタン系接着剤(商品名:KU550 株式会社コニシ)をゴムローラー塗布し、5層の化粧板を貼り合せた。同様な方法で発泡体のもう片面に、5層の化粧板を貼り合せた。表裏の他方の面に位置する表層材を形成した。その後、重石をのせて一晩乾燥させ、実施例9の軽量ボードを得た。
得られた軽量ボードは木目意匠が施された美麗なものになった。重量は、6.6kg/mとなった。
【0060】
(実施例10)
実施例10では、ポリカーボネート樹脂を12倍に発泡させた発泡体(商品名:ミラポリカ(登録商標)フォーム、株式会社JSP)、厚み50mm、幅300mm、長さ1800mmを用意した。
表層材に使用するガラスクロスとして200g/m(商品名:K7628WT-1270 S640 有沢製作所製)を用い、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂(商品名:DH2000B DIC株式会社)を含浸し、加熱しプリプレグを作製した。プリプレグ10枚を積層し、熱プレス機で230℃30分、プレスして一体化させ、表層材12の厚みが1.6mmの化粧板とした。
【0061】
発泡体の片面に、ウレタン系接着剤(商品名:KU550 株式会社コニシ)をゴムローラー塗布し、10層の化粧板を貼り合せた。同様な方法で発泡体のもう片面に、10層の化粧板を貼り合せた。表裏の他方の面に位置する表層材を形成した。その後、重石をのせて一晩乾燥させ、実施例10の軽量ボードを得た。
得られた軽量ボードの重量は、11.2kg/mとなった。
【0062】
さらに、この上に接着剤を塗工した発泡体と化粧板を交互に貼り合わせ、発泡体が6層、その間に化粧板を挟んだ構造体を作製した。
この構造材をプレス機に投入し、12時間加圧した。構造体の木口面に、上記と同様の方法で接着剤を塗布し10層の化粧板を貼り合わせ、もう片面にも10層の化粧板を貼り合わせ、4面を化粧板、すなわち表層材で囲われた構造体を作製した。
この構造体をプレス機に投入し、12時間加圧し、実施例10に係る構造材を得た。
得られた構造材の重量は44.3kg/mとなった。
【0063】
(実施例11)
実施例11は、熱硬化性樹脂がユリア樹脂である外は、実施例2と同様であり、実施例11の軽量ボードを得た。
【0064】
(比較例1)
比較例1の構成は、次の表2の通りである。
また、次の表1には、比較例1のほか、比較例2~比較例8の各構成についても記載した。
【表2】
【0065】
比較例1は、上記表2の通り、発泡体の素材がポリスチレンである外は、実施例2と同様であり、比較例1の軽量ボードを得た。
【0066】
(比較例2)
比較例2は、接着剤がクロロプレンゴム系である外は、実施例2と同様であり、比較例2の軽量ボードを得た。
【0067】
(比較例3)
比較例3は、ガラスクロスの積層枚数を1枚、表層材12の厚みが0.15mmである外は、実施例1と同様であり、比較例3の軽量ボードを得た。
【0068】
(比較例4)
比較例4は、ガラスクロスの積層枚数が15枚、表層材12の厚みが2.4mmである外は、実施例1と同様であり、比較例4の軽量ボードを得た。
【0069】
(比較例5)
比較例5は、発泡体の発泡率が4倍である外は、実施例1と同様であり、比較例5の軽量ボードを得た。
【0070】
(比較例6)
比較例6は、発泡体の発泡率が23倍である外は、実施例1と同様であり、比較例6の軽量ボードを得た。
【0071】
(比較例7)
比較例7は、ガラスクロスの坪量が40g/mであり、熱硬化樹脂を含浸させた際に、当該樹脂の量が少なく、2枚を積層し、熱圧を加えても層間の密着強度を得ることができなかった。そのため、軽量ボードを得ることができなった。
【0072】
(比較例8)
比較例8は、ガラスクロスの坪量が210g/mであり、熱硬化樹脂を含浸させ、乾燥させる際に、当該樹脂の量が多く、乾燥が不十分となり、プリプレグを生産、積層した際に、常温でプレプレグ同士が接着するブロッキング状態となった。そのため、軽量ボードを得ることができなかった。
【0073】
(評価方法及び評価基準)
軽量ボード及び構造材の評価方法、すなわち物性評価は、次の13種類である。
なお、(1)~(13)の評価方法の評価基準については後述する。
(1)曲げ破壊強度
(2)曲げ破壊状況
(3)糊ダクの状態
(4)作業性・加工性
(5)軽量性
(6)断熱性
(7)剛性
(8)プリプレグの性能と生産性
(9)曲げ試験後の状態観察
(10)意匠性
(11)加工性(切削工具の摩耗)
(12)接着性
(13)総合評価
【0074】
(曲げ破壊強度)
曲げ破壊強度は、徐々に数値を上げ、曲げ破壊時の数値を記入した。
【0075】
(曲げ破壊状況)
曲げ破壊状況は、曲げ破壊強した際の状況を観察した。
【0076】
(糊ダクの状態)
糊ダクの状態を目視で観察した。
糊ダクが無いものを、「○」とし、合格とした。
上記以外は、「×」とし、不合格とした。
【0077】
(作業性・加工性)
一般的に化粧板を製造する大きさはいわゆる4尺×8尺、約1200mm×約2400mmである。この大きさを人力で取り扱う場合もあるため、化粧板の硬性や重量も考慮し、作業性を確認する必要がある。また、上記観点から、以降の各評価方法に実用性が有る否かを個別に評価した。
作業性と加工性との両方について個別に評価した。
【0078】
評価は、「○」と「×」との2段階で評価した。
作業性と加工性との両方に優れるものを、「○」とし、合格とした。
上記以外は、すなわち作業性と加工性とのいずれか一方、又は両方が劣るものを、「×」とし、不合格とした。
【0079】
(軽量性)
軽量性について評価した。
評価は、「○」と「×」との2段階で評価した。
軽量性に優れるものを、「○」とし、合格とした。
上記以外は、すなわち軽量性に劣るものを、「×」とし、不合格とした。
【0080】
(断熱性)
断熱性について評価した。
評価は、「○」と「×」との2段階で評価した。
断熱性に優れるものを、「○」とし、合格とした。
上記以外は、すなわち断熱性に劣るものを、「×」とし、不合格とした。
【0081】
(剛性)
剛性について評価した。
評価は、「○」と「×」との2段階で評価した。
剛性に優れるものを、「○」とし、合格とした。
上記以外は、すなわち剛性に劣るものを、「×」とし、不合格とした。
【0082】
(プリプレグの性能と生産性)
プリプレグの性能と生産性を、作業を通じて評価した。
評価は、「○」と「×」との2段階で評価した。
生産性に優れるものを、「○」とし、合格とした。
上記以外は、すなわち生産性に劣るものを、「×」とし、不合格とした。
【0083】
(曲げ試験後の状態観察)
曲げ試験後の状態観察、すなわち「表層」と「発泡体」との状態を目視して評価した。
評価は、「○」、「△」、「×」の3段階で評価した。
曲げ試験後の状態観察は、曲げ試験後、「表層のみ割れ」の場合には、「○」とし、合格とし、又、「表層のクラック」が発生した場合には、「△」とし、合格とした。
上記以外、例えば「発泡体の割れ」、「発泡体のはがれ」が発生した場合には、「×」とし、不合格とした。
【0084】
なお、曲げ試験後の状態観察の評価を、3段階で評価したが、これに限定されず、「○」と「×」の2段階で評価した場合には、「表層のみ割れ」に加え、「表層のクラック」が発生した場合には、「×」とし、不合格と判断することも可能である。
【0085】
(意匠性)
意匠性として、糊ダクの状態を目視し、評価した。
評価は、「○」、「×」の2段階で評価した。
糊ダクが無いものを、「○」とし、合格とした。
上記以外は、「×」とし、不合格とした。
【0086】
(加工性(切削工具の摩耗))
加工性は、切削工具の摩耗を目視し、評価した。
評価は、「○」と「×」との2段階で評価した。
切削工具の摩耗が見られないものを、「○」とし、合格とした。
上記以外は、「×」とし、不合格とした。
【0087】
(接着性)
接着性は、曲げ破壊強度試験の破壊時の状況から、評価した。
評価は、「○」と「×」との2段階で評価した。
破壊時に表層材と発泡体が剥がれなかったものを、「○」とし、合格とした。
剥がれたものを、「×」とし、不合格とした。
【0088】
(総合評価)
総合評価は、(3)糊ダクの状態~(12)接着性の状態を総合的に評価した。
評価は、「○」と「×」との2段階で評価した。
すべて合格のものを、「○」とし、合格とした。
上記以外は、「×」とし、不合格とした。
【0089】
なお、総合評価においては、すべて合格のものを、「○」とし、合格としたが、これに限定されず、すべて「○」のものだけを、「○」とし、合格とし、それ以外、すなわち「△」や「×」があるものを、「×」とし、不合格としても良い。
【0090】
(評価結果1)
実施例1~実施例11の評価結果1は、次の表3の通りである。
【表3】
【0091】
(評価結果2)
比較例1~比較例8の評価結果2は、次の表4の通りである。
【表4】
【0092】
(実施例1~実施例11及び比較例1~比較例8の評価結果)
実施例1~実施例11及び比較例1~比較例8の評価結果を比較すると、表3及び表1に示す通り、総合評価が「○」で合格のものは、実施例1~実施例11だけであった。
これに対し、比較例1~比較例8は、総合評価がすべて「×」であり、すべて不合格であった。
【0093】
(曲げ破壊強度、曲げ破壊状況、糊ダクの状態について)
曲げ破壊強度、曲げ破壊状況、糊ダクの状態について、表3及び表4を用いて、実施例1~実施例11、比較例1~比較例8を比較すると、次の通りである。
【0094】
(実施例1の評価結果)
実施例1では、得られた軽量ボードの曲げ強度を測定したところ、2.7kNまでの荷重をかけるとたわみがでるものの、荷重を外すと元の状態に戻った。
これに対し、実施例1では、2.8kNまで荷重をかけると、表層のみ割れるものの、発泡体は割れることはなかった。
【0095】
また、実施例1では、得られた軽量ボードを電動丸ノコで切断したところ、熱によりプラスチック発泡体が溶融することもなく、通常の木材と同様に簡単に切断することができた。
さらに、実施例1の糊ダクの状態については、糊ダクが無く、合格であった。実施例1のほか、残る実施例2~実施例10についても同様に合格であった。
【0096】
(実施例2の評価結果)
実施例2では、得られた軽量ボードの曲げ強度を測定したところ、5.9kNまでの荷重をかけるとたわみがでるものの、荷重を外すと元の状態に戻った。
また、実施例2では、6kNまで荷重をかけると、表層のみ割れるものの、実施例1のものと同様に、発泡体は割れることはなかった。
【0097】
また、実施例2では、得られた軽量ボードを電動丸ノコで切断したところ、実施例1のものと同様に、熱によりプラスチック発泡体が溶融することもなく、通常の木材と同様に簡単に切断することができた。
【0098】
(実施例3の評価結果)
実施例3では、得られた軽量ボードの曲げ強度を測定したところ、12.9kNまでの荷重をかけるとたわみがでるものの、荷重を外すと元の状態に戻った。
また、実施例3では、13kNまで荷重をかけると、表層のみ割れるものの、実施例1のものと同様に、発泡体は割れることはなかった。
また、実施例3では、得られた軽量ボードを電動丸ノコで切断したところ、実施例1のものと同様に、熱によりプラスチック発泡体が溶融することもなく、通常の木材と同様に簡単に切断することができた。
【0099】
(実施例4の評価結果)
実施例4では、得られた軽量ボードの曲げ強度を測定したところ、2.4kNまでの荷重をかけるとたわみがでるものの、荷重を外すと元の状態に戻った。
また、実施例4では、2.5kNまで荷重をかけると、表層のみ割れるものの、実施例1のものと同様に、発泡体は割れることはなかった。
【0100】
また、実施例4では、得られた軽量ボードを電動丸ノコで切断したところ、実施例1のものと同様に、熱によりプラスチック発泡体が溶融することもなく、通常の木材と同様に簡単に切断することができた。
【0101】
(実施例5~実施例10の評価結果)
実施例5~実施例7のものは、表3に示すように、曲げ破壊強度の数値は異なるものの、曲げ破壊状況は実施例1のものと同様であった。
【0102】
(実施例11の評価結果)
実施例11では、得られた軽量ボードの曲げ強度を測定したところ、2kNまでの荷重をかけると、表層のみ割れと、クラックとが発生した。
これは、熱硬化性樹脂に、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアレルフタレート系樹脂のいずれか1種類の樹脂、或いは2種類以上の樹脂の混合物以外の熱硬化性樹脂として、「ユリア樹脂」を用いていることが原因と推測できる。
このため、「クラック」を防止するには、「ユリア樹脂」を除く熱硬化性樹脂を用いていることが有効であるものと推測できる。
【0103】
(比較例1の評価結果)
比較例1では、表4に示すように、得られた軽量ボードの曲げ強度を測定したところ、2kNまでの荷重をかけると、表層材と発泡体とが同時に破断した。
【0104】
(比較例2の評価結果)
比較例2では、得られた軽量ボードの曲げ強度を測定したところ、1kNまでの荷重をかけると、表層材のはがれが発生した。
【0105】
(作業性・加工性について)
一般的に化粧板を製造する大きさは、いわゆる4尺×8尺、約1200mm×約2400mmである。この大きさを人力で取り扱う場合もあるため、化粧板の硬性や重量も考慮し、作業性を確認する必要がある。また、この大きさで製造した後は目的に応じて、切削加工を行うことになるため、その際に使用する切削機械は汎用のもの、今回は木工用の切削機械が使えることが望ましい。
【0106】
上記観点から、作業性・加工性については評価した。
作業性・加工性については、比較例3及び比較例4の作業性・加工性が、ともに「×」であり、不合格であった。
【0107】
比較例3は、表層材12の厚みが0.15mmで薄すぎ、たわみが出てしまうため、2辺を支えないと持ち運ぶことができず、作業性に劣るものであるため、不合格とした。
比較例4は、表層材12の厚みが2.4mmで厚すぎて重く、作業性に劣るものであるため、不合格とした。
【0108】
実施例1及び実施例4と、比較例3及び比較例4とを比較すると、表層材12の厚みの下限値にいては、0.15mmを超え、0.2mm以上であることが好ましいものと推測できる。表層材12の厚みの上限値にいては、2.4mmを下回り、少なくとも、1.6以下であることが推測でき、又、2.0mm以下が望ましい。
【0109】
(軽量性、断熱性、剛性について)
軽量性、断熱性、剛性については、表4に示すように、比較例5及び比較例6の軽量性、断熱性、剛性の少なくとも1個が、「×」であり、不合格であった。
比較例5は、発泡率が4倍であり、軽量性及び断熱性に劣り、不合格とした。
比較例6は、発泡率が23倍であり、剛性に劣り、不合格とした。
実施例6及び実施例7と、比較例5及び比較例6とを比較すると、発泡倍率5倍以上20倍以下が良いものと推測できる。
【0110】
(プリプレグの性能と生産性)
プリプレグの性能と生産性については、表4に示すように、比較例7及び比較例8のプリプレグの性能と生産性が、ともに「×」であり、不合格であった。
比較例7は、ガラスクロスの坪量が40g/mで少なすぎ、熱硬化性含浸樹脂を十分に保持することができず、含浸後の積層での熱圧プレスを行った際に、層間剥離を生じたため、不合格とした。
【0111】
比較例8は、ガラスクロスの坪量が210g/mで多すぎ、熱可塑性樹脂の含浸量が多く、乾燥が十分に行えず、プレプレグ同士のブロッキング(くっつき)が発生したため、不合格とした。
実施例1及び実施例5と、比較例7及び比較例8とを比較すると、ガラスクロスの坪量が50g/m以上200g/m以下の範囲が良いものと推測できる。
【0112】
(曲げ試験後の状態観察)
曲げ試験後の状態観察については、表4に示すように、比較例1及び比較例2の曲げ試験後の状態観察が、すべて「×」であり、不合格であった。
比較例1は、発泡体の素材にポリスチレンを使用し、2kNまでの荷重をかけると、表層材と発泡体とが同時に破断したため、不合格とした。
【0113】
比較例2は、接着剤にクロロプレンゴム系を使用し、1kNまでの荷重をかけると、表層材のはがれが発生したため、不合格とした。
実施例1と、比較例1~比較例2とを比較すると、熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂、発泡体の素材としてポリカーボネート樹脂、接着剤としてウレタン系が好ましいことが推測できる。
【0114】
(意匠性)
意匠性については、表4に示すように、比較例3の意匠性が、「×」であり、不合格であった。
比較例3は、プリプレグの厚みが0.15mmと薄いため、接着剤の塗りムラを覆い隠すことができない、いわゆる糊だくが発生し、意匠性が良くなかった。実施例5のプリプレグの厚み0.2mmでは糊だくが発生していないため、プリプレグの厚みは0.2mm以上必要だと推論できる。
【0115】
(加工性(切削工具の摩耗))
加工性については、表4に示すように、比較例4の加工性(切削工具の摩耗)が、「×」であり、不合格であった。
比較例4は、表層材12の厚みが2.4mmで厚すぎて、切削工具の摩耗が発生するため、不合格とした。
実施例5と、比較例4とを比較すると、表層材12の厚みが2.0mm以下であることが好ましいことが推測できる。
【0116】
(接着性)
接着性については、表4に示すように、比較例2の接着剤が、「×」であり、不合格であった。比較例2は接着剤の固形分が12%であることから、揮発分を含む接着剤では接着不良が起こることから不合格とした。
【0117】
(エンボス加工)
軽量ボード10の最表層に、実施例8のようにエンボス加工を施しても良い。
軽量ボード10の最表層に、エンボス加工をすることで、滑り止めとすることができる。
なお、軽量ボード10の最表層に、エンボス加工をしたが、これに限定されず、構造材20の最表層にエンボス加工を施しても良い。
【0118】
(接着剤の追加説明)
接着剤は、固形分が100%であることが必要である。
これは、揮発分を含む接着剤では、接着不良が起こるためである。すなわち、揮発分が基材に染みこまない。このため、揮発できないため、プリプレグと発泡体11の間で発泡が起こるためである。
【符号の説明】
【0119】
10 軽量ボード
11 発泡体
12 表層材
20 構造材
図1
図2