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特許7602899アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体及びその構造体を備えた建造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体及びその構造体を備えた建造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/22 20060101AFI20241212BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20241212BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20241212BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E04B1/22
E04H9/02 301
E04H9/02 351
E04B1/21 C
E04B1/21 B
E04B1/58 503E
E04B1/58 507A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020197557
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2021156152
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2020057523
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】高森 直樹
(72)【発明者】
【氏名】朱 盈
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-019664(JP,A)
【文献】特開2011-052491(JP,A)
【文献】特開2007-285028(JP,A)
【文献】特開2007-224581(JP,A)
【文献】特開2016-118013(JP,A)
【文献】特開2003-013496(JP,A)
【文献】特開2001-295506(JP,A)
【文献】米国特許第05123220(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/21,1/22
E04B 1/58
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状に成型された第1のコンクリート部材と、前記第1のコンクリート部材にアンボンド状態で挿通され張力が印加された緊張材と、を含む第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体と、
柱状に成型された第2のコンクリート部材と、前記第2のコンクリート部材にアンボンド状態で挿通され張力が印加された緊張材と、を含む第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体と、
を含み、
前記第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体の一端と、前記第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体の一端とが、対向するように上下方向に配置されて形成された接合部を有し、
前記接合部において、前記第1のコンクリート部材及び前記第2のコンクリート部材の一方又は双方の端面がテーパー状に成型されており、
前記端面に型枠材が当接されている
ことを特徴とするアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体。
【請求項2】
前記接合部を挟んで、前記第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体と第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体とを架橋するよう設けられた制震装置をさらに含む
請求項1に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体。
【請求項3】
前記制震装置が、鋼材ダンパー、摩擦ダンパー、オイルダンパー、粘性ダンパー、粘弾性ダンパーから選ばれた一種の含む
請求項2に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体。
【請求項4】
前記テーパー状に成型されている領域に、前記型枠材が当接されている
請求項に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体。
【請求項5】
柱状に成型された第1のコンクリート部材と、前記第1のコンクリート部材にアンボンド状態で挿通され張力が印加された緊張材と、を含む第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体と、
柱状に成型された第2のコンクリート部材と、前記第2のコンクリート部材にアンボンド状態で挿通され張力が印加された緊張材と、を含む第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体と、
梁構造を有し柱梁接合部を含むコンクリート部材と、
を含み、
前記第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体と第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体とは、前記コンクリート部材の前記柱梁接合部を挟んで上下に配置され、
前記柱梁接合部において、前記第1のコンクリート部材及び前記第2のコンクリート部材の一方又は双方の端面は、周縁部が曲面に成型されており、
前記端面に型枠材が当接されている
ことを特徴とするアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体。
【請求項6】
前記柱梁接合部を挟んで、前記第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体と前記コンクリート部材とを架橋するように設けられた第1の制震装置と、
前記柱梁接合部を挟んで、前記第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体と前記コンクリート部材とを架橋するように設けられた第2の制震装置と、をさらに含む
請求項に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体。
【請求項7】
前記曲面の曲率半径は、前記緊張材に対するコンクリートのかぶり厚さより小さい
請求項又はに記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体。
【請求項8】
前記第1の制震装置及び前記第2の制震装置が、鋼材ダンパー、摩擦ダンパー、オイルダンパー、粘性ダンパー、粘弾性ダンパーから選ばれた一種の含む
請求項に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体。
【請求項9】
前記柱梁接合部において、前記第1のコンクリート部材及び前記第2のコンクリート部材の一方又は双方の端面は、周縁部が曲面に代えてテーパー状に成型されている
請求項乃至のいずれか一項に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体。
【請求項10】
前記テーパー状に成型されている領域に、前記型枠材が当接されている
請求項に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体を含む建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体に関する。本明細書で開示される発明の一実施形態は、アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱の構造、アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱と梁の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高層建築物に用いられる柱として、鉛直方向に張力を付与したプレキャストフプレストレストコンクリート(以下、「PCaPC」ともいう)柱が知られている。引張力を付与したPCaPC柱は、通常のプレキャストコンクリート柱に比べて残留変形がないため、高層建物に用いる柱として適していると考えられている。例えば、PCaPC柱として、コンクリート柱体に形成された複数の緊張材挿通孔にそれぞれ緊張材が挿通され、緊張材が引張力を掛けられた状態で設けられると共に、緊張材がコンクリート柱体に対してアンホボンド状態で配設された構造が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-019664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンボンドプレストレス構造は鉄筋コンクリート構造に比べて、端部が開くことで揺れに対して変形に富み損傷を小さくすることいができる。しかし、部材の脚部、頂部の端部においてかぶりコンクリートが圧縮されることで損傷が起こりやすいという問題がある(以下、このような損傷を「圧壊」又は「圧縮破壊」という)。地震等によってアンボンドPCaPC柱に圧縮破壊が生じると耐震性が低下する原因となるため、強度を維持するためには圧縮破壊した部分の補修が必要となる。
【0005】
このような問題に鑑み、本発明の一実施形態は、アンボンドPCaPC構造体において、圧縮破壊を防止することのできる構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体は、柱状に成型された第1のコンクリート部材と第1のコンクリート部材にアンボンド状態で挿通され張力が印加された緊張材とを含む第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体と、柱状に成型された第2のコンクリート部材と第2のコンクリート部材にアンボンド状態で挿通され張力が印加された緊張材とを含む第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体と、を含む。第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体の一端と、第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体の一端とが対向するように上下方向に配置されて形成された接合部を有し、接合部において、第1のコンクリート部材及び第2のコンクリート部材の一方又は双方の端面は、周縁部が曲面に成型されている。
【0007】
本発明の一実施形態に係るアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体は、柱状に成型された第1のコンクリート部材と第1のコンクリート部材にアンボンド状態で挿通され張力が印加された緊張材とを含む第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体と、柱状に成型された第2のコンクリート部材と第2のコンクリート部材にアンボンド状態で挿通され張力が印加された緊張材とを含む第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体と、梁構造を有し柱梁接合部を含むコンクリート部材と、を含む。第1のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体と第2のアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体とは、コンクリート部材の柱梁接合部を挟んで上下に配置され、柱梁接合部において、第1のコンクリート部材及び第2のコンクリート部材の一方又は双方の端面は、周縁部が曲面に成型されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、アンボンドプレキャストプレストレストコンクリート柱体の端部におけるかぶりコンクリートの圧縮破壊を避けて変位を増幅させることで、その変位を利用することによって振動エネルギーを吸収することのできるアンボンドプレキャストプレストレストコンクリート構造体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の接合部の構造を示す断面模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の接合部の構造を示す平面模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱梁接合部の構造を示す断面模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱梁接合部の構造を示す平面模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の接合部において制震装置が付加された構造を示す断面模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の接合部において制震装置が付加された構造を示す平面模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱梁接合部において制震装置が付加された構造を示す断面模式図である。
図8】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱梁接合部において制震装置が付加された構造を示す平面模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱梁接合部において制震装置が付加された構造を示す平面模式図である。
図10】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の接合部の構造を示す断面模式図である。
図11】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の接合部の構造を示す平面模式図である。
図12】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱において、プレキャストコンクリート工法で製造されるコンクリート部材と型枠材とを模式的に示す図である。
図13】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱梁接合部の構造を示す断面模式図である。
図14】本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC柱の柱梁接合部の構造を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の内容を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様を含み、以下に例示される実施形態の内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、それはあくまで一例であって、本発明の内容を限定するものではない。また、本明細書において、ある図面に記載されたある要素と、他の図面に記載されたある要素とが同一又は対応する関係にあるときは、同一の符号(又は符号として記載された数字の後にa、b等を付した符号)を付して、繰り返しの説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有しない。
【0011】
[第1の実施形態]
本発明の一実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体の構成について示す。本実施形態では、アンボンドPCaPC構造体が柱状構造を有する一例を示す。
【0012】
図1は、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体100aの断面模式構造を示す。アンボンドPCaPC構造体100aは、第1のアンボンドPCaPC柱体102と第2のアンボンドPCaPC柱体112とを含む。アンボンドPCaPC構造体100aは、第1のアンボンドPCaPC柱体102と第2のアンボンドPCaPC柱体112とが一つの柱体を形成するように上下方向に重ねて配置された構造を有する。図1は、アンボンドPCaPC構造体100aにおいて、特に、第1のアンボンドPCaPC柱体102と第2のアンボンドPCaPC柱体112との接合部の断面模式構造を示す。また、図2(A)は、第1のアンボンドPCaPC柱体102の平面模式構造(図1に示すA1側を平面視したときの構造)を示し、図2(B)は、第2のアンボンドPCaPC柱体112の平面模式構造(図1に示すB1側を平面視したときの構造)を示す。以下の説明では、これらの図面を適宜参照するものとする。
【0013】
第1のアンボンドPCaPC柱体102は、柱状に成型された第1のコンクリート部材(第1のプレキャストコンクリート部材)104を含み、第2のアンボンドPCaPC柱体112は、柱状に成型された第2のコンクリート部材(第2のプレキャストコンクリート部材)114を含む。本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体100aは、第1のアンボンドPCaPC柱体102の一端と第2のアンボンドPCaPC柱体112の一端とが対向するように上下方向に重ねて配置されて接合された構造を有する。
【0014】
第1のコンクリート部材104及び第2のコンクリート部材114は、断面が正方形状になるように成型され、主筋及びフープ筋(図示されず)が埋設されている。また、第1のコンクリート部材104は、第1の緊張材挿通孔105が長手方向に貫通するように設けられ、第2のコンクリート部材114は、第2の緊張材挿通孔115が長手方向に貫通するように設けられる。第1の緊張材挿通孔105は、平面視において、第1のコンクリート部材104の輪郭に沿った複数箇所に設けられる。第1の緊張材挿通孔105は、表面から所定のかぶり厚さを有するように、第1のコンクリート部材104の内側の領域に設けられる。第2の緊張材挿通孔115も同様に、第2のコンクリート部材114に設けられる。
【0015】
なお、図2(A)及び(B)は、第1の緊張材挿通孔105及び第2の緊張材挿通孔115が、プレキャストコンクリート部材の角部とその間の領域の合計8箇所に対応して設けられる例を示すが、緊張材貫通孔の数に限定はなく、適宜設けることができる。また、第1のコンクリート部材104及び第2のコンクリート部材114の断面形状は正方形状に限定されず、長方形状、六角形状等の角形形状であってもよいし、円形又は楕円形であってもよい。
【0016】
第1のアンボンドPCaPC柱体102は、第1の緊張材106が第1の緊張材挿通孔105に挿通され、第2のアンボンドPCaPC柱体112は、第2の緊張材116が第2の緊張材挿通孔115に挿通される。第1の緊張材106及び第2の緊張材116は、例えば、芯材として用いられるPC鋼棒の表面に特殊なグリースが塗布され、さらにその外周をポリエチレン等のプラスチック材料で被覆された構造を有する。第1の緊張材挿通孔105及び第2の緊張材挿通孔115の内径は、挿通される緊張材の外径よりも大きく形成される。そのため、第1の緊張材挿通孔105の内壁と第1の緊張材106との間には隙間が形成され、第2の緊張材挿通孔115の内壁と第2の緊張材116との間には隙間が形成される。第1の緊張材106はコンクリートに接合されず、第1のコンクリート部材104にアンボンド状態で挿通され、第2の緊張材116も同様に、第2のコンクリート部材114にアンボンド状態で挿通されている。
【0017】
なお、本発明において、アンボンド状態とは、上記のように緊張材がコンクリートと接合されず、コンクリート柱体に揺れが生じた際に緊張材がその材軸方向に自由に変形できる状態をいうものとする。
【0018】
緊張材がアンボンド状態で設けられるアンボンドPCaPC構造体100aは、例えば、次のようにして組み立てられる。第1のコンクリート部材104は、上端部には凹部130が設けられ、第1の緊張材挿通孔105は凹部130の内側に形成されている。緊張材を通すことのできる貫通孔が設けられたプレート132が、第1の緊張材挿通孔105と重なるように配置される。第1の緊張材106は、上部がプレート132から突出した状態に設けられ、ジャッキ等により上方に引っ張られて張力が印加される。第1の緊張材106は、張力が印加された状態でプレート132上のナット134により締め付けられる。第1の緊張材106は、ナット134により締め付けられているため、ジャッキ等を外しても張力が残留している。
【0019】
その後、第1の緊張材106の上端部は、継手136によって第2の緊張材116の下端部と連結される。そして、第1のコンクリート部材104の上端部に、第1の緊張材106、ナット134の周りを覆うカバー材138を設ける。この状態で第2のコンクリート部材114を上方から下降させ、グラウト140を介して第1のコンクリート部材104の上端部と第2のコンクリート部材114の下端部とを接合させる。その後、第2のコンクリート部材114及び第2の緊張材116に対しても同様の作業が行われる。このようにして、第1のアンボンドPCaPC柱体102と第2のアンボンドPCaPC柱体112とが接合されたアンボンドPCaPC構造体100が形成される。アンボンドPCaPC構造体100aは、緊張材(第1の緊張材106及び第2の緊張材116)により、全体として圧縮力が加えられた状態を有する。
【0020】
このようなアンボンドPCaPC構造体100aは、第1のコンクリート部材104及び第2のコンクリート部材114が、アンボンド状態に設けられた緊張材により圧縮応力が加えられていることで、通常の鉄筋コンクリートよりも強度が高く、ひび割れが生じにくいという利点を有する。また、プレストレスを与えている緊張材(第1の緊張材106及び第2の緊張材116)には復元力があるため、アンボンドPCaPC構造体100aに一時的に過大な荷重が作用しても、その荷重が除かれると復元するという利点を有する。
【0021】
ところで、地震の横揺れに対して、柱体の脚部には、横方向の力が作用する側に引っ張り応力が作用し反対側には圧縮応力が作用し、柱体の頂部には、横方向の力が作用する側に圧縮応力が作用し反対側には引っ張り応力が作用する。この場合において、基礎スラブと天井スラブの間に、柱頭部と柱脚部がアンボンド状態で設けられたコンクリート柱体は、地震等の振動により回転変位すると、端部のかぶりコンクリートが圧縮破壊されやすいという問題を有する。また、このような圧縮破壊は、アンボンド状態でコンクリート部材が接合された柱状構造体の接合部でも起こり得るので問題となる。
【0022】
これに対し、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体100aは、第1のコンクリート部材104の上端部、及び第2のコンクリート部材114の下端部において、それらの周縁部110が曲面状に成型されている。別言すれば、第1のコンクリート部材104の上端部及び第2のコンクリート部材114の下端部は、周縁部110が角張っておらず曲面形状を有する。このような第1のコンクリート部材104及び第2のコンクリート部材114の端部の形状によれば、柱状体が回転変位したときに圧縮される側の端部において圧縮応力が集中しないことにより、かぶりコンクリートの圧縮破壊を防止することができる。別言すれば、アンボンドPCaPC構造体100aは、第1のアンボンドPCaPC柱体102及び第2のアンボンドPCaPC柱体112が、第1のコンクリート部材104及び第2のコンクリート部材114の端部において周縁部110が曲面形状を有することで、柱状体に回転変位を生じさせるエネルギーを吸収しやすい構造を有している。第1のコンクリート部材104及び第2のコンクリート部材114の端部に形成される曲面形状は、周縁部110の全周に亘って設けられていることが好ましい。また、図示されないが、第1のコンクリート部材104の下端部、第2のコンクリート部材の上端部にも同様に周縁部110が曲面に成型されていることが好ましい。
【0023】
なお、図1図2(A)及び(B)は、第1のコンクリート部材104の上端部及び第2のコンクリート部材114の下端部の両方の周縁部110が曲面形状を有する態様を示すが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、第1のコンクリート部材104の上端部及び第2のコンクリート部材114の下端部の一方の周縁部110にのみ曲面形状が設けられていても同様の作用効果を得ることができる。
【0024】
第1のコンクリート部材104、第2のコンクリート部材114の端部において、周縁部110に設けられる曲面形状の曲率半径は、かぶりコンクリートの厚さ以下であればよい。別言すれば、緊張材に対するコンクリート部材のかぶり厚さより小さいことが好ましい。
【0025】
なお、本実施形態では、第1のコンクリート部材104及び第2のコンクリート部材114の端部における周縁部110が曲面形状を有する構造を示すが、このような形状の他に、第1のコンクリート部材104及び第2のコンクリート部材114の端部における周縁部110が30度から60度の角度、例えば45度の角度で面取りされた形状を有していてもよい。このような面取り形状によっても、同様の作用効果を得ることができる。
【0026】
以上のように、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体は、地震等による振動エネルギーが作用した場合であっても、かぶりコンクリートの圧縮破壊を防止することができる。すなわち、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体は、微小な振動に対しては建物の剛性で抵抗し、大地震のように大きさ揺れが作用した場合には、アンボンドPCaPC柱体の端部におけるかぶりコンクリートの圧縮破壊を避けて変位を増幅させることで、その変位を利用することによって振動エネルギーを吸収することができる。
【0027】
[第2の実施形態]
本実施形態は、アンボンドPCaPC構造体が柱梁接合構造を有する場合の一例を示す。以下においては、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0028】
図3は、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体100bの断面模式構造を示す。アンボンドPCaPC構造体100bは、コンクリート部材124で形成された梁122を挟んで配置された第1のアンボンドPCaPC柱体102と第2のアンボンドPCaPC柱体112とを含む。第1のアンボンドPCaPC柱体102は梁122の下側に配置されて柱梁接合を形成し、第2のアンボンドPCaPC柱体112は梁122の上側に配置されて柱梁接合を形成する。図3は、このようなアンボンドPCaPC構造体100bの柱梁接合部120の断面模式構造を示す。また、図4(A)は、梁122の柱梁接合部120の平面模式構造(図3に示すA2側を平面視したときの構造)を示し、図4(B)は、第2のアンボンドPCaPC柱体112の平面模式構造(図3に示すB1側を平面視したときの構造)を示す。以下の説明では、これらの図面を適宜参照するものとする。
【0029】
梁122は、例えば、プレキャストコンクリート梁であり、柱梁接合部120に第3の緊張材挿通孔125が設けられた構造を有する。第3の緊張材挿通孔125は、第1の緊張材挿通孔105及び第2の緊張材挿通孔115の配置と整合する位置に設けられる。例えば、図4(A)に示すように、第3の緊張材挿通孔125は、第2のコンクリート部材114に設けられる第2の緊張材挿通孔115の配置に対応して(図4(B)参照)、8箇所設けられる。別言すれば、図3に示すように、第3の緊張材挿通孔125は、第1の緊張材挿通孔105及び第2の緊張材挿通孔115と連通するように設けられる。
【0030】
第3の緊張材挿通孔125には第3の緊張材126が挿通され、継手136によって第1の緊張材106及び第2の緊張材116と連結される。なお、図示されないが、第1の緊張材106がそのまま第3の緊張材挿通孔125に連通され、第2のアンボンドPCaPC柱体112の部分で継手136により第2の緊張材116と連結される構造を有していてもよい。
【0031】
第1のアンボンドPCaPC柱体102と梁122との接合部、及び第2のアンボンドPCaPC柱体112と梁122との接合部にはグラウト140が充填される。第1の実施形態と同様に、第1のアンボンドPCaPC柱体102は、第1のコンクリート部材104の上端の周縁部110が曲面形状を有し、第2のアンボンドPCaPC柱体112は、第2のコンクリート部材114の下端の周縁部110が曲面形状を有する。梁122の下面及び上面に形成される柱梁接合部120の平坦な面に対して、第1のコンクリート部材104及び第2のコンクリート部材114の端部が曲面形状を有していることで、第1のアンボンドPCaPC柱体102、第2のアンボンドPCaPC柱体112が回転変位しても、かぶりコンクリートの圧縮破壊を防止することができる。また、第1のアンボンドPCaPC柱体102及び第2のアンボンドPCaPC柱体112は、回転変位に対して変位しやすい構造を有し、その変位を利用したエネルギーによって振動エネルギーを吸収することができる。
【0032】
以上のように、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体100bは柱梁接合部を有し、その柱梁接合部においても第1の実施形態と同様に、かぶりコンクリートの圧縮破壊を防止することができる。また、アンボンドPCaPC構造体100bは、微小な振動に対しては建物の剛性で抵抗し、大地震のように大きさ揺れが作用した場合には、アンボンドPCaPC柱体の端部におけるかぶりコンクリートの圧縮破壊を避けて変位を増幅させることで、その変位を利用することによって振動エネルギーを吸収することができる。
【0033】
[第3の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態に示すアンボンドPCaPC構造体に対し、制震装置が付加された構成を示す。以下においては、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0034】
図5は、制震装置150が設けられたアンボンドPCaPC構造体100cの断面模式構造を示す。図6(A)は、第1のアンボンドPCaPC柱体102側の平面模式構造(図5に示すA3側を平面視したときの構造)を示し、図6(B)は、第2のアンボンドPCaPC柱体112の平面模式構造(図5に示すB3側を平面視したときの構造)を示す。以下の説明では、これらの図面を適宜参照するものとする。
【0035】
制震装置150は、接合部を挟んで第1のアンボンドPCaPC柱体102と第2のアンボンドPCaPC柱体112とを架橋するように設けられる。制震装置150は柱状体に取り付けることができ、その効果を発揮できるものであればその構造に限定はない。例えば、制震装置150として、一対の支持部材の間にダンパー部材が設けられたものを用いることができる。この場合、一方の支持部材が第1のアンボンドPCaPC柱体102に固定され、他方の支持部が第2のアンボンドPCaPC柱体に固定され、ダンパー部材が接合部を交差するように設けられる。制震装置150としては、例えば、鋼材ダンパー、摩擦ダンパー、オイルダンパー、粘性ダンパー、粘弾性ダンパー等を用いることができる。
【0036】
制震装置150は、第1のアンボンドPCaPC柱体102及び第2のアンボンドPCaPC柱体112の外周に沿って複数設けられることが好ましい。例えば、図6(A)及び(B)に示すように、制震装置150が、第1のアンボンドPCaPC柱体102及び第2のアンボンドPCaPC柱体112の各角部を挟むように、合計8箇所に設けられていてもよい。このように、制震装置150を等方的に設けることで、柱体の特定方向の変位によらず、様々な方向から作用する応力に対して制震機能を発揮させることができる。
【0037】
第1の実施形態で説明したように、第1のコンクリート部材104の端部は、周縁部110が曲面形状に成形されているため、地震等の揺れが作用すると第1のアンボンドPCaPC柱体102は回転変位しやすいという特性を有する。また、第2のアンボンドPCaPC柱体112についても同様である。これに対し、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体100cは、通常時(静止時)においては制震装置150が回転変位を抑制するように作用し、安定性を向上させることができる。一方、アンボンドPCaPC構造体100cは、地震等の揺れが作用したとき、一定限度の揺れに対して制震装置150が振動エネルギーを吸収し、制震装置150の限界を超えた揺れに対しては、柱体の変位を利用して振動エネルギーを吸収することで構造の安定性を高めることができる。
【0038】
このように、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体100cは、第1の実施形態において得られる作用効果に加え、制震装置150が付加されたことで、より安定性の高い柱体構造を得ることができる。
【0039】
[第4の実施形態]
本実施形態は、第2の実施形態に示すアンボンドPCaPC構造体に対し、制震装置が付加された構成を示す。以下においては、第2の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0040】
図7は、制震装置が設けられたアンボンドPCaPC構造体100dの断面模式構造を示す。図8は、制震装置が設けられたアンボンドPCaPC構造体100dの平面模式構造(図7に示すA4部分の断面を平面視したときの模式的な構造)を示す。以下の説明では、これらの図面を適宜参照するものとする。
【0041】
制震装置150は、柱梁接合部120を挟んで第1のアンボンドPCaPC柱体102と梁122とを架橋するように第1の制震装置150aが設けられ、柱梁接合部120を挟んで第2のアンボンドPCaPC柱体112と梁122とを架橋するように第2の制震装置150bが設けられる。第1の制震装置150a及び第2の制震装置150bは、第3の実施形態に示すものと同様のものが適用される。
【0042】
第1の制震装置150aは、第1のアンボンドPCaPC柱体102と梁122の側面部との間、及び第1のアンボンドPCaPC柱体102と梁122の上面部との間を架橋するように設けることができる。また、第2の制震装置150bは、第2のアンボンドPCaPC柱体112と梁122の側面部との間、及び第2のアンボンドPCaPC柱体112と梁122の上面部との間を架橋するように設けることができる。このように、図8に示すように、複数の制震装置は、第1のアンボンドPCaPC柱体102及び第2のアンボンドPCaPC柱体112の各角部を挟むように配置され、梁122と架橋するように合計8箇所に設けられていてもよい。
【0043】
第1の制震装置150a及び第2の制震装置150bの取り付け構造は、適宜変更され得る。例えば、第1の制震装置150a及び第2の制震装置150bは、柱体の側面と梁の側面を架橋するように取り付けることができる。また、第1の制震装置150a及び第2の制震装置150bは、柱体の側面と梁の上面とを架橋するように取り付けることができる。
【0044】
図9は、アンボンドPCaPC構造体100dにおいて、梁122が十字梁である場合の平面概略図を示す。図9は、十字梁123と第2のアンボンドPCaPC柱体112の構造を示すが、第2の制震装置150bは、上記と同様にして取り付けることができる。
【0045】
図7に示すような柱梁接合構造は、柱体が回転変位すると柱梁接合面から剥離しやすいという問題を有する。これに対し、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体100dは、通常時(静止時)においては第1の制震装置150a及び第2の制震装置150bが回転変位を抑制するように作用し、柱梁接合部の構造安定性が高められている。一方、アンボンドPCaPC構造体100dは、地震等の揺れが作用したとき、一定限度の揺れに対しては第1の制震装置150a及び第2の制震装置150bが振動エネルギーを吸収し、第1の制震装置150a及び第2の制震装置150bの限界を超えた揺れに対しては、柱体の変位を利用して振動エネルギーを吸収することで柱梁接合構造の安定性を高めている。
【0046】
このように、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体100dは、第2の実施形態において得られる作用効果に加え、制震装置が付加されたことで、より安定性の高い柱体構造を得ることができる。
【0047】
[第5の実施形態]
本実施形態は、第1の実施形態に示すアンボンドPCaPC構造体に対し、上下に配置されるアンボンドPCaPC柱体の端部の形状が異なる態様を示す。以下においては、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0048】
図10は、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体100eの断面模式構造を示す。図11(A)は、第1のアンボンドPCaPC柱体102e側の平面模式構造(図10に示すA5側を平面視したときの構造)を示し、図11(B)は、第2のアンボンドPCaPC柱体112eの平面模式構造(図10に示すB5側を平面視したときの構造)を示す。以下の説明では、これらの図面を適宜参照するものとする。
【0049】
第1のアンボンドPCaPC柱体102eは第1のコンクリート部材104eを含み、第2のアンボンドPCaPC柱体112eは第2のコンクリート部材114eを含む。第1のコンクリート部材104eの上端部及び第2のコンクリート部材114eの下端部は、周縁部111がテーパー状に成型された形状を有する。別言すれば、第1のコンクリート部材104eと第2のコンクリート部材114eとが対向する端面の周縁部は、テーパー状に面取りされた形状を有する。すなわち、第1の実施形態では、第1のアンボンドPCaPC柱体102eと第2のアンボンドPCaPC柱体112eとの接合部におけるコンクリート部材の周縁部が曲面形状に成形されていたが、本実施形態においては直線状の傾斜面を有するテーパー形状に成型されている。
【0050】
図10図11(A)及び(B)は、第1のコンクリート部材104e及び第2のコンクリート部材114eの断面形状が角形である例を示すが、周縁部111におけるテーパー状の成型面は各面に形成されていることが好ましい。また、第1のコンクリート部材104e及び第2のコンクリート部材114eの断面形状が円形である場合には、周縁部111におけるテーパー状の成型面が全周に亘って形成されていることが好ましい。
【0051】
一方、第1のコンクリート部材104e及び第2のコンクリート部材114eの端部の周縁部111をテーパー状に成型すると、柱体として断面積が減少することになり、軸力比が増加し耐震性への影響が懸念される場合がある。そのような場合には、第1のコンクリート部材104a及び第2のコンクリート部材114aの一部に超高強度コンクリートを用いてもよい。具体的には、第1のコンクリート部材104aの上端部から所定の領域までを、及び第2のコンクリート部材114eの下端部から所定の領域までを超高強度コンクリートで形成してもよい。第1のコンクリート部材104a及び第2のコンクリート部材114aにおいて、超高強度コンクリートで形成する領域の長さ(材軸方向の長さ)は、100mm~500mm、例えば200mm程度とすればよい。
【0052】
図10は、第1のコンクリート部材104eの上側に超高強度コンクリート領域103と、と第2のコンクリート部材114eの下側に超高強度コンクリート領域113が形成された例を示す。第1のコンクリート部材104e及び第2のコンクリート部材114eにおいて、他の領域は高強度コンクリートで形成されていればよい。このような構造は、コンクリート構造体の製造工程において、プレキャストコンクリート工法でコンクリートを打設する際に強度の異なるコンクリートを2段階で打設すればよい。
【0053】
このように、アンボンドPCaPC柱体の接合部分を強度の高いコンクリートで形成することで、接合部におけるコンクリートの周縁部をテーパー状に成型したとしても、軸力比の増加による耐震性の低下を抑制することができる。
【0054】
本実施形態で示す第1のコンクリート部材104e及び第2のコンクリート部材114eの形状は、プレキャストコンクリート工法でコンクリートを打設するときに型枠材を用いることで形成することができる。図12は、プレキャストコンクリート工法で製造される第2のコンクリート部材114eと型枠材142とを模式的に示す(第1のコンクリート部材104eについても同様である)。型枠材142は、コンクリートを打設する前に図示されない型枠材の中に設置される。型枠材142は、第2のコンクリート部材114eの各面に対応して配置される。型枠材142の断面形状は直角三角形であり、斜面が打設されるコンクリートに接するように配置される。
【0055】
型枠材142の材質は適宜選択され得るが、発泡スチロール等の発泡性樹脂材料、シリコーンゴム等のゴム材料、熱可塑性樹脂材料(プラスチック)等を用いることが好ましい。このような材料を用いることで、型枠材142を容易に成型することができる。
【0056】
型枠材142は、コンクリートを打設した後も、第1のコンクリート部材104e及び第2のコンクリート部材114eの端部にそのまま残存されてもよい。すなわち、第1のコンクリート部材104e及び第2のコンクリート部材114eのテーパー状に成型された部分に当接するように型枠材142が設けられていてもよい。第1のコンクリート部材104e及び第2のコンクリート部材114eに残存する型枠材142は、グラウト140を充填するときの型枠材としても利用することができる。
【0057】
また、アンボンドPCaPC構造体100eの中に型枠材142がそのまま残存していてもよい。第1のアンボンドPCaPC柱体102eと第2のアンボンドPCaPC柱体112eの接合部に型枠材142が存在することで、地震等で水平方向に力が作用した場合に、型枠材142の変形、破壊によってそのエネルギーを吸収し、損傷を低減することができる。
【0058】
本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体は、第1の実施形態におけるものと同様に、地震等による振動エネルギーが作用した場合であってもかぶりコンクリートの圧縮破壊を防止することができる。さらに、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体は、プレキャストコンクリート工法の中で型枠材を使ってコンクリート部材を成型できるので、施工が容易となる。また、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体は、型枠材によって回転変位のエネルギーの一部を吸収することで、耐震性を高めることができる。
【0059】
本実施形態で示す接合部の構造は、第3の実施形態で示すアンボンドPCaPC構造体に適用することもでき、第3の実施形態で得られる作用効果に加え、本実施形態で得られる作用効果を得ることができる。
【0060】
[第6の実施形態]
本実施形態は、第2の実施形態に示すアンボンドPCaPC構造体に対し、上下に配置されるアンボンドPCaPC柱体の端部の形状が異なる態様を示す。以下においては、第2の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0061】
図13は、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体100fの断面模式構造を示す。アンボンドPCaPC構造体100fは、コンクリート部材124で形成された梁122を挟んで配置された第1のアンボンドPCaPC柱体102fと第2のアンボンドPCaPC柱体112fとを含む。第1のアンボンドPCaPC柱体102fは梁122の下側に配置されて柱梁接合を形成し、第2のアンボンドPCaPC柱体112fは梁122の上側に配置されて柱梁接合を形成する。また、図14(A)は、梁122の柱梁接合部120の平面模式構造(図13に示すA6側を平面視したときの構造)を示し、図14(B)は、第2のアンボンドPCaPC柱体112fの平面模式構造(図13に示すB6側を平面視したときの構造)を示す。以下の説明では、これらの図面を適宜参照するものとする。
【0062】
第5の実施形態と同様に、第1のアンボンドPCaPC柱体102fの第1のコンクリート部材104fの上端部及び第2のコンクリート部材114fの下端部は、周縁部111がテーパー状に成型された形状を有する。周縁部111には、同様に型枠材142が設けられていてもよい。
【0063】
梁122の下面及び上面に形成される柱梁接合部120の平坦な面に対して、第1のコンクリート部材104f及び第2のコンクリート部材114fの端部がテーパー状に成型されていることで、第1のアンボンドPCaPC柱体102f、第2のアンボンドPCaPC柱体112fが回転変位しても、かぶりコンクリートの圧縮破壊を防止することができる。また、第1のコンクリート部材104f及び第2のコンクリート部材114fの端部に型枠材142が配置されていることで、回転変位に対するエネルギーの一部を吸収することができる。
【0064】
以上のように、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体は柱梁接合部を有し、その柱梁接合部においても第5の実施形態と同様に、地震等による振動エネルギーが作用した場合であってもかぶりコンクリートの圧縮破壊を防止することができる。さらに、本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体は、プレキャストコンクリート工法の中で型枠材を使ってコンクリート部材を成型できるので、施工が容易となる。また本実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体は、型枠材によって回転変位のエネルギーの一部を吸収することで、耐震性を高めることができる。
【0065】
本実施形態で示す接合部の構造は、第4の実施形態で示すアンボンドPCaPC構造体に適用することもでき、第3の実施形態で得られる作用効果に加え、本実施形態で得られる作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
第1乃至第6の実施形態に係るアンボンドPCaPC構造体は、ビルディング等の高層建築物の柱又は柱梁構造として用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
100・・・アンボンドPCaPC構造体、102・・・第1のアンボンドPCaPC柱体、104・・・第1のコンクリート部材、105・・・第1の緊張材挿通孔、106・・・第1の緊張材、110・・・周縁部、111・・・周縁部、112・・・第2のアンボンドPCaPC柱体、113・・・超高強度コンクリート領域、114・・・第2のコンクリート部材、115・・・第2の緊張材挿通孔、116・・・第2の緊張材、120・・・柱梁接合部、122・・・梁、123・・・十字梁、124・・・コンクリート部材、125・・・第3の緊張材挿通孔、126・・・第3の緊張材、130・・・凹部、132・・・プレート、134・・・ナット、136・・・継手、138・・・カバー材、140・・・グラウト、142・・・型枠材、150・・・制震装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14