(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】定着装置及びそれを備えた画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G03G15/20 515
(21)【出願番号】P 2020204208
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜多 昂大
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-235308(JP,A)
【文献】特開2016-099590(JP,A)
【文献】特開2020-181093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な無端状の定着ベルトと、
前記定着ベルトの内周面に配設されたニップ形成部材と、
前記定着ベルトの外側から前記ニップ形成部材に向かって圧接され、前記定着ベルトとの間に定着ニップ領域を形成する加圧ローラと、
前記定着ベルトの内側に配設され、前記定着ベルトを加熱する熱源と、
前記定着ベルトの回転軸方向の端部を回転可能に保持するベルト保持部材と、
前記熱源から前記定着ベルトのシート非通過領域への熱移動を遮蔽する遮蔽部材と、
を備えた定着装置において、
前記遮蔽部材に付設され、かつ、前記遮蔽部材に蓄積された熱を前記定着ベルト上のシート通過領域へ放熱する放熱部材を有し、
前記ベルト保持部材は、前記遮蔽部材を保持する遮蔽部材保持部を有し、
前記遮蔽部材は、前記遮蔽部材保持部の被係止部に係止される係止爪を有し、
前記遮蔽部材保持部は、前記係止爪が挿入される遮蔽部材保持溝を有し、
前記係止爪は、
前記遮蔽部材の端縁を折り曲げて形成されており、自身が折り曲げ方向に負荷された負荷状態において
、前記遮蔽部材保持溝を通じて前記被係止部へ挿入され、
自身が前記折り曲げ方向に負荷されていない自由状態において
、前記遮蔽部材保持溝の通過を阻害されること
を特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記放熱部材は、前記熱源から前記定着ベルトのシート通過領域への熱移動を許容する透孔を有することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の定着装置であって、
前記放熱部材は、前記熱源から前記定着ベルトのシート通過領域への熱移動を許容する透孔を有するメッシュ状に形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の定着装置であって、
前記ベルト保持部材は、前記放熱部材を保持する放熱部材保持部を有することを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項4に記載の定着装置であって、
前記放熱部材は、前記放熱部材保持部に係止される係止爪を有することを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の定着装置であって、
前記遮蔽部材と前記放熱部材とは、一体に形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の定着装置であって、
前記遮蔽部材と前記放熱部材とは、互いに接続されていることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項7に記載の定着装置であって、
前記遮蔽部材と前記放熱部材とは、互いに積層されていることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8のいずれかに記載の定着装置であって、
前記遮蔽部材と前記放熱部材とは、異なる材質から形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1つに記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着装置として、加圧ローラを回転可能な無端状の定着ベルトの外側に圧接し、定着ベルトの内周面に配設されたニップ形成部材によって定着ベルトと加圧ローラとの間に定着ニップ領域を形成し、シートを定着ニップ領域において加熱することにより、シートにトナー像を定着させる定着装置が知られている。
【0003】
定着ベルトは、定着ベルト上においてシートが通過する領域(通過領域)とそれ以外の領域(非通過領域)に画定される。通過領域においては、シートの通過によって定着ベルトの熱が奪われることから、熱の蓄積が発生し難い。一方、非通過領域においては、定着ベルトの熱を奪うシートの通過がないことから、熱の蓄積が発生し易い。特に、シートを連続で定着する場合には、定着ベルトの非通過領域の温度が過剰に上昇してしまう。
【0004】
そこで、特許文献1のように、熱源から定着ベルトの非通過領域への熱移動を遮蔽する遮蔽部材を有する定着装置が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、遮蔽部材によって遮蔽された熱は、遮蔽部材の表面から徐々に放熱される。遮蔽部材から放熱された熱は、定着ベルトの内部空間を介して、定着ベルトへと伝達される。遮蔽部材に過剰な熱が蓄積された場合にあっては、遮蔽部材からの熱移動による定着ベルトの過熱が懸念される。上記のような従来の技術では、遮蔽部材に蓄積された熱の放熱経路が十分に確保されていないという問題があった。
【0007】
特に、近年の小型化した定着ベルトにおいては、定着ベルトの内部空間の縮小によって遮蔽部材と定着ベルトが近接していることから、遮蔽部材の熱を積極的に放熱させる構造が求められている。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、遮蔽部材の放熱経路を確保することにより、遮蔽部材から定着ベルトの非通過領域への熱移動を軽減する定着装置、及びそのような定着装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の定着装置は、回転可能な無端状の定着ベルトと、前記定着ベルトの内周面に配設されたニップ形成部材と、前記定着ベルトの外側から前記ニップ形成部材に向かって圧接され、前記定着ベルトとの間に定着ニップ領域を形成する加圧ローラと、前記定着ベルトの内側に配設され、前記定着ベルトを加熱する熱源と、前記定着ベルトの回転軸方向の端部を回転可能に保持するベルト保持部材と、前記熱源から前記定着ベルトのシート非通過領域への熱移動を遮蔽する遮蔽部材と、を備えた定着装置において、前記遮蔽部材に付設され、かつ、前記遮蔽部材に蓄積された熱を前記定着ベルト上のシート通過領域へ放熱する放熱部材を有し、前記ベルト保持部材は、前記遮蔽部材を保持する遮蔽部材保持部を有し、前記遮蔽部材は、前記遮蔽部材保持部の被係止部に係止される係止爪を有し、前記遮蔽部材保持部は、前記係止爪が挿入される遮蔽部材保持溝を有し、前記係止爪は、前記遮蔽部材の端縁を折り曲げて形成されており、自身が折り曲げ方向に負荷された負荷状態において、前記遮蔽部材保持溝を通じて前記被係止部へ挿入され、自身が前記折り曲げ方向に負荷されていない自由状態において、前記遮蔽部材保持溝の通過を阻害されることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記定着装置において、前記放熱部材は、前記熱源から前記定着ベルトのシート通過領域への熱移動を許容する透孔を有していてもよい。
【0011】
また、前記定着装置において、前記放熱部材は、前記熱源から前記定着ベルトのシート通過領域への熱移動を許容する透孔を有するメッシュ状に形成されていてもよい。
【0014】
また、前記定着装置において、前記ベルト保持部材は、前記放熱部材を保持する放熱部材保持部を有していてもよい。
【0015】
また、前記定着装置において、前記放熱部材は、前記放熱部材保持部に係止される係止爪を有していてもよい。
【0016】
また、前記定着装置において、前記遮蔽部材と前記放熱部材とは、一体に形成されていてもよい。
【0017】
また、前記定着装置において、前記遮蔽部材と前記放熱部材とは、互いに接続されていてもよい。
【0018】
また、前記定着装置において、前記遮蔽部材と前記放熱部材とは、互いに積層されていてもよい。
【0019】
また、前記定着装置において、前記遮蔽部材と前記放熱部材とは、異なる材質から形成されていてもよい。
【0020】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記定着装置を備えた画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、遮蔽部材に蓄積された熱を積極的に放熱するとともに、遮蔽部材からの熱移動による定着ベルトの過熱を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態1における定着装置を備えた画像形成装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
【
図2A】実施形態1における定着装置を正面側斜め上方から視た斜視図である。
【
図2B】実施形態1における定着装置を背面側斜め上方から視た斜視図である。
【
図3】加圧ローラの駆動系を入紙部側から視た側面図である。
【
図4A】加熱定着部及び加圧ローラ部分を正面側斜め上方から視た斜視図である。
【
図4B】加熱定着部及び加圧ローラ部分を背面側斜め上方から視た斜視図である。
【
図5】加熱定着部及び加圧ローラ部分を背面側から視た断面構造を示す斜視図である。
【
図6】加熱定着部及び加圧ローラ部分を背面側から視た断面図である。
【
図7】遮蔽部材が遮蔽部材保持部によって保持された状態を模式的に示す端面図である。
【
図8A】遮蔽部材及び放熱部材の構成の他の例を模式的に示す端面図である。
【
図8B】遮蔽部材及び放熱部材のさらに他の例を模式的に示す端面図である。
【
図9】加熱定着部の構成の一部を排紙部側から視た概略縦断面図である。
【
図11】実施形態2における遮蔽部材が遮蔽部材保持部によって保持された状態を模式的に示す端面図である。
【
図12】実施形態2における加熱定着部の構成の一部を排紙部側から視た概略縦断面図である。
【
図13】実施形態2における遮蔽部材の係止爪を模式的に示す図である。
【
図14】実施形態3における遮蔽部材及び放熱部材が保持部によって保持された状態を模式的に示す端面図である。
【
図15】実施形態3における放熱部材の係止爪を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。以下の説明では、同一の部品等には同一の符号を付しており、それら部品等の名称及び機能も同じである。従って、それらの部品等についての詳細な説明を省略している。
【0024】
(実施形態1)
-画像形成装置の全体構成-
図1は、実施形態1における定着装置200を備えた画像形成装置100の概略構成を模式的に示す断面図である。なお、図において、符号Xは、幅方向(前後方向)を示しており、符号Yは、幅方向Xに直交する左右方向Yを示しており、符号Zは、上下方向を示している。
【0025】
図1に示すように、画像形成装置100は、像担持体として作用する感光体ドラム10と、帯電装置90と、露光装置30と、現像装置40と、転写装置50と、クリーニング装置60と、定着装置200とを備えている。帯電装置90は、感光体ドラム10の表面10aを帯電させる。露光装置30は、帯電装置90によって帯電された感光体ドラム10を露光して静電潜像を形成する。現像装置40は、露光装置30によって形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する。転写装置50は、現像装置40によって形成されたトナー像を記録紙等のシートP上に転写する。クリーニング装置60は、感光体ドラム10に残留するトナーを除去し回収する。定着装置200は、転写装置50によって転写されたトナー像を搬送方向Fに搬送されるシートP上に定着して画像を形成する。この例では、画像形成装置100は、モノクロのプリンタ(具体的にはレーザプリンタ)とされている。なお、画像形成装置100は、例えば、カラー画像を形成できる中間転写方式のカラー画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置100は、この例では、プリンタとしたが、例えば、複写機、複合機又はファクシミリ装置であってもよい。
【0026】
感光体ドラム10は、基体11が画像形成装置100の本体フレーム(図示せず)に回転自在に支持され、図示を省略した駆動手段によって回転軸線γ回りに所定の第1回転方向G1(図中時計方向)に回転駆動される。
【0027】
帯電装置90は、帯電部材91を備えている。帯電部材91は、感光体ドラム10の表面10aを高電圧印加装置92にて均一に所定の電位に一様に帯電させる。帯電部材91は、この例では、帯電ローラであり、感光体ドラム10の回転に対して第2回転方向G2従動回転する。なお、帯電部材91は、帯電チャージャーであってもよい。
【0028】
露光装置30は、画像情報に基づいて変調された光を回転駆動される感光体ドラム10の表面10aに主走査方向である感光体ドラム10の回転軸線γ方向に繰返し走査する。現像装置40は、現像ローラ41と、現像槽42とを備えている。現像ローラ41は、感光体ドラム10の表面10aに現像剤DVを供給する。現像槽42は、現像剤DVを収容する。転写装置50は、転写部材51を備えている。転写装置50は、高電圧印加装置52にて感光体ドラム10と転写装置50との間に形成される転写ニップ領域TNに所定の高電圧を印加する。転写部材51は、この例では、転写ローラであり、感光体ドラム10の回転に対して第2回転方向G2に従動回転する。なお、転写部材51は、転写チャージャーであってもよい。
【0029】
クリーニング装置60は、クリーニングブレード61と、回収用ケーシング62とを備えている。クリーニングブレード61は、感光体ドラム10の表面10aに残留するトナーを除去する。回収用ケーシング62は、クリーニングブレード61によって除去されたトナーを収容する。定着装置200は、加熱定着部210(加熱定着ユニット)と、加圧ローラ220とを備えている。加圧ローラ220は、加熱定着部210と共に定着ニップ領域FNを形成する。定着装置200の詳しい構成については後ほど説明する。また、画像形成装置100は、画像形成装置100を構成する各構成要素を収容する筐体80を備えている。
【0030】
-定着装置-
図2Aは、本実施形態における定着装置200を正面側斜め上方から視た斜視図である。
図2Bは、本実施形態における定着装置200を背面側斜め上方から視た斜視図である。
図3は、定着装置200における加圧ローラ220への駆動系を入紙部95側から視た右側面図である。
図4Aは、加熱定着部210及び加圧ローラ220部分を正面側斜め上方から視た斜視図である。
図4Bは、加熱定着部210及び加圧ローラ220部分を背面側斜め上方から視た斜視図である。
図5は、加熱定着部210及び加圧ローラ220部分を背面側から視た断面構造を示す斜視図である。また、
図6は、加熱定着部210及び加圧ローラ220部分を背面側から視た断面図である。
図4A及び
図4Bにおいて、定着ベルト211の図示は省略している。
【0031】
図において、符号Wは、定着ベルト211の回転軸方向を示しており、-W方向(マイナスW方向)を軸線前方向とし、+W方向(プラスW方向)を軸線後方向とする。なお、本実施形態において、W方向は、X方向に沿っている。
【0032】
定着装置200は、加熱定着部210と、加圧ローラ220と、前フレーム230(側板)と、後フレーム240(側板)と、駆動伝達機構250と、回転駆動部260と、剥離部材270、とを備えている(
図2A~
図6参照)。以下、定着装置200の各構成を詳述する。
【0033】
<加熱定着部>
加熱定着部210は、定着ベルト211と、ニップ形成部材212と、熱源213と、反射部材214と、支持部材215と、摺動シート216と、遮蔽部材(217,218)と、放熱部材219と、を有している(
図4A~
図6参照)。加熱定着部210は、後述する加圧ローラ220との間に挟持されたシートPに、加熱によってトナーを定着させる役割を持つ。
【0034】
定着ベルト211は、無端状(筒状)に形成された耐熱性ベルトであり、後述する前上フレーム231及び後上フレーム241によって、前端部及び後端部のそれぞれにおいて回転自在に支持されている。定着ベルト211は、後述する加圧ローラ220とともに、シートPを入紙部95から排紙部96に向けて(F方向に)挟持搬送する役割を持つ。
【0035】
定着ベルト211は、具体的には、所定厚み(例えば30μm~100μm程度)の金属、又は、ポリイミド(PI)の基体上に所定厚み(例えば100μm~300μm程度)のシリコーンゴム層が形成されたものであって、さらに上層に所定厚み(例えば20μm~30μm程度)のフッ素樹脂層が形成されたものである。このフッ素樹脂層は、例えば、PFAのチューブの積層、又はフッ素樹脂の塗布により形成されている。本実施形態において、定着ベルト211は、シリコーンゴム上層にPFAのチューブが設けられたものである。また、本実施形態において、定着ベルト211の回転軸方向(W方向)に沿った幅は、340mmに設定されている。
【0036】
定着ベルト211の表面は、W方向において、シート通過領域αとシート非通過領域(β1,β2)に画定されている(
図3参照)。
【0037】
シート通過領域αは、搬送によってシートPが定着ベルト211上において通過し得る領域である。具体的には、シート通過領域αは、定着ベルト211の回転軸方向において、通過可能である最大のシートが、その長辺に沿った方向(いわゆる縦送り方向)で通過するに足りる大きさに設定されている。本実施例において、通過可能である最大のシートがA3サイズのシートであることから、シート通過領域αのW方向に沿った幅は、定着ベルト211の回転軸方向において、A3サイズのシートの短辺(297mm)と等しく設定されている。
【0038】
シート非通過領域(β1,β2)は、定着ベルト211の表面において、シート通過領域α以外の領域を指す。シート非通過領域β1は、シート通過領域αの前方に位置しており、シート非通過領域β2は、シート通過領域αの後方に位置している。本実施形態において、シート非通過領域β1及びシート非通過領域β2のW方向に沿った幅は、前述の定着ベルト211の幅及びシート通過領域αの幅に基づいて、それぞれ、21.5mmに設定されている((340-297)/2=21.5)。
【0039】
ニップ形成部材212は、定着ベルト211の内周面211aに配設されている(
図5、
図6参照)。ニップ形成部材212は、後述する加圧ローラと定着ベルト211との間に定着ニップ領域FNを形成する役割を持つ。
【0040】
ニップ形成部材212は、高剛性の耐熱性樹脂材料〔例えば、液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:Poly Ether Ether Ketone)、ポリフェニレンスルファイド(PPS:Poly Phenylene Sulfide)等〕又は高弾性の耐熱性樹脂材料(例えばゴム材料)から形成されている。ニップ形成部材212は、高剛性の耐熱性樹脂材料から形成されたニップ形成部材212の表面に、弾性層(例えばシリコーンゴム等のゴム層)が設けられたものでもよい。本実施形態において、ニップ形成部材212は、厚みが4.5mm、W方向に直交する短手方向Sの幅が15mmである液晶ポリマーから形成されている。
【0041】
熱源213は、定着ベルト211に内蔵されている(
図5、
図6参照)。熱源213は、定着ベルト211を内側から加熱する役割を持つ。
【0042】
熱源213の前端部は、前ランプ支持部231pを介して前上フレーム231に固定されており、熱源213の後端部は、後ランプ支持部241pを介して後上フレーム241に固定されている(
図4A、
図4B参照)。本実施形態において、熱源213には、ランプヒータが採用されている。
【0043】
反射部材214は、後述する支持部材215の形状に沿って折り曲げられた状態で、支持部材215において、熱源213と対向する面に設けられている(
図5、
図6参照)。反射部材214は、熱源213からの熱放射を定着ベルト211に向けて反射させる役割を持つ。
【0044】
反射部材214は、アルミニウム等の金属材料が板状に形成されたものである。また、反射部材214の表面には、熱源213からの熱放射を定着ベルト211へ効率的に反射させるために、鏡面加工がされている。
【0045】
支持部材215は、W方向から視た断面視で逆T字状に形成されており、W方向に沿って延設されている(
図5参照)。支持部材215は、ニップ形成部材212を定着ベルト211の内側から支持する役割を持つ。支持部材215の底面には、ニップ形成部材212が固定されている。
【0046】
摺動シート216は、定着ベルト211とニップ形成部材212との間に設けられている(
図5、
図6参照)。摺動シート216は、例えば、ガラス繊維材料(例えばガラスクロス)にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン:Poly Tetra Fluoro Etylene)等のフッ素樹脂を塗布したもの(例えばガラスクロスシート)から形成されている。摺動シート216の厚みは、例えば、0.1mm~0.5mm程度に設定されている。本実施形態において、摺動シート216の厚みは、0.13mmに設定されている。摺動シート216とニップ形成部材212とは、接着剤又は接着部材によって互いに接着されている。
【0047】
図7は、遮蔽部材(217,218)が遮蔽部材保持部(231c,241c)によって保持された状態を模式的に示す端面図である。
図8Aは、遮蔽部材(217,218)及び放熱部材219の構成の他の例を模式的に示す端面図である。
図8Bは、遮蔽部材(217,218)及び放熱部材219のさらに他の例を模式的に示す端面図である。
図9は、加熱定着部210の構成の一部を排紙部96側から視た概略縦断面図である。
【0048】
前後一対の遮蔽部材(217,218)は、シート非通過領域(β1,β2)において、熱源213と定着ベルト211との間に設けられている(
図7参照)。遮蔽部材(217,218)は、熱源213から定着ベルト211への熱移動を遮蔽する役割を持つ。遮蔽部材(217,218)は、前遮蔽部材217と、後遮蔽部材218と、を有している(
図4A、
図4B参照)。前遮蔽部材217は、定着ベルト211の前端側、すなわち、シート非通過領域β1において、熱源213と定着ベルト211との間に設けられている(
図4A、
図4B、
図5及び
図7参照)。後遮蔽部材218は、定着ベルト211の後端側、すなわち、シート非通過領域β2において、熱源213と定着ベルト211との間に設けられている(
図4A、
図4B、
図5及び
図7参照)。
【0049】
前遮蔽部材217及び後遮蔽部材218は、1/4円のドーム状に形成されている。前遮蔽部材217は、後述する前上フレーム231によって固定されており、後遮蔽部材218は、後述する後上フレーム241によって固定されている(
図4A、
図4B参照)。また、本実施形態において、前遮蔽部材217及び後遮蔽部材218のW方向に沿った幅は、前述のシート非通過領域β1及びシート非通過領域β2の幅(21.5mm)に基づいて、熱源213からシート非通過領域β1又はシート非通過領域β2への熱移動を確実に遮蔽することができるように、24mmに設定されている。
【0050】
前遮蔽部材217及び後遮蔽部材218は、ともに、所定の厚み(例えば、0.1mm)の金属材料(例えば、ステンレス鋼材、アルミニウム、銅等)が板状に形成されたものである。本実施形態において、前遮蔽部材217及び後遮蔽部材218は、SUS430から形成されている。
【0051】
本実施形態において、シート非通過領域(β1,β2)は、シート通過領域αにより分断されたシート非通過領域β1及びシート非通過領域β2を有していることから、シート非通過領域β1及びシート非通過領域β2のそれぞれに対応する前遮蔽部材217及び後遮蔽部材218が設けられている。もちろんこれに限られず、例えば、シート非通過領域が単数の領域又は近接する複数の領域を有している場合には、単一の遮蔽部材が設けられていてもよいし、一方、シート非通過領域が分離された複数の領域を有している場合には、3以上の遮蔽部材が設けられていてもよい。
【0052】
放熱部材219は、熱源213と定着ベルト211の間において、定着ベルト211のシート通過領域αに対向するように、遮蔽部材(217,218)に付設されている(
図7参照)。放熱部材219は、遮蔽部材(217,218)の熱をシート通過領域α側へと放熱させる役割を持つ。
【0053】
放熱部材219は、所定の厚み(例えば、0.1mm)の金属材料(例えば、ステンレス鋼材、アルミニウム、銅等)が板状に形成されたものである。本実施形態において、放熱部材219は、SUS430から形成されている。
【0054】
放熱部材219は、前遮蔽部材217と後遮蔽部材218とに連設されている(
図4A、
図4B、
図5及び
図7参照)。放熱部材219は、前遮蔽部材217及び後遮蔽部材218の形状に沿って、1/4円のドーム状に形成されているとともに、定着ベルト211の周方向の両端部(219b,219c)のそれぞれにおいて、支持部材215によって固定されている。
【0055】
また、本実施形態において、放熱部材219には、熱源213から定着ベルト211のシート通過領域αへの熱移動を許容する多数の貫通穴219a~219aが、メッシュ状に設けられている(
図4A、
図4B参照)。貫通穴219a~219aは、例えば、打ち抜き加工又はエッチング加工によって形成されている。貫通穴219a~219aは、請求項に記載の透孔に相当する。
【0056】
このような貫通穴219a~219aが放熱部材219に設けられていることにより、シート通過領域αにおいて、貫通穴219a~219aに通過させた熱によって、定着ベルト211が効率的に加熱されるという効果が生じる。
【0057】
また、貫通穴219a~219aがメッシュ状に形成されていることにより、シート通過領域αにおいて、熱源213から定着ベルト211への熱移動の経路がより多く確保されることから、定着ベルト211がより効率的に加熱されるという効果が生じる。
【0058】
本実施形態において、放熱部材219は、遮蔽部材(217,218)と一体形成されている。これにより、部品数が削減されるとともに、組付コストが削減されるという効果が生じる。
【0059】
放熱部材219は、もちろん、遮蔽部材(217,218)と一体形成されたものに限られず、放熱部材219は、遮蔽部材(217,218)とは異なる材質から形成されていてもよいし、遮蔽部材(217,218)とは別体に形成されていてもよい(
図8A、
図8B参照)。また、放熱部材219は、遮蔽部材(217,218)の内側に接続されていてもよいし(
図8A参照)、遮蔽部材(217,218)の外側に接続されていてもよい(
図8B参照)。要は、放熱部材219が遮蔽部材(217,218)に付設されていることにより、遮蔽部材(217,218)から放熱部材219への熱移動が許容され、かつ、その熱が放熱部材219を介してシート通過領域α側へと放熱される構造であれば足りる。
【0060】
また、このような放熱部材219が熱源213と定着ベルト211との間に設けられていることにより、定着ベルト211を熱源213との接触から保護することが可能となる。
【0061】
<加圧ローラ>
加圧ローラ220は、後述する前回動部材232b又は後回動部材242bによって、その前端部及び後端部のそれぞれにおいて回転自在に支持されており、後述する回転駆動部260(駆動モータ)の回転駆動力によって回転駆動される。加圧ローラ220は、定着ベルト211の外側からニップ形成部材212に向けて圧接された状態で、定着ベルト211とともに、シートPを入紙部95から排紙部96に向けて(F方向に)挟持搬送する役割を持つ。
【0062】
加圧ローラ220は、アルミニウム等の金属製の基体上に所定厚み(例えば6mm程度)、硬度35度~40度程度の弾性部材(シリコーンゴム等のスポンジゴムやソリッドゴム等のゴム部材)が形成されたものであって、さらに弾性部材の上層にフッ素樹脂層を形成したものである。このフッ素樹脂層は、例えば、PFAのチューブの積層、又はフッ素樹脂の塗布により形成されている。本実施形態において、加圧ローラ220は、弾性部材上にPFAのチューブが設けられたものである。
【0063】
<前フレーム及び後フレーム>
図10Aは、前ベルト保持部材231aを示す背面図である。
図10Bは、後ベルト保持部材241aを示す正面図である。
【0064】
前フレーム230は、前上フレーム231と、前下フレーム232と、連結部233と、を有している(
図2A、
図2B参照)。前上フレーム231及び前下フレーム232は、連結部233によって上下に連結されている。
【0065】
後フレーム240は、後上フレーム241と、後下フレーム242と、連結部243と、を有している(
図2A、
図2B参照)。後上フレーム241及び後下フレーム242は、連結部243によって上下に連結されている。
【0066】
前フレーム230及び後フレーム240は、定着ベルト211及び加圧ローラ220の前端部及び後端部のそれぞれを回転自在に支持するとともに、定着ベルト211の内側に配置された他部品(熱源213等)を支持する役割を持つ。
【0067】
前上フレーム231は、前ベルト保持部材231aと、前ランプ支持部231pと、を有しており、後上フレーム241は、後ベルト保持部材241aと、後ランプ支持部241pと、を有している(
図2A、
図2B、
図4A及び
図4B参照)。
【0068】
前ベルト保持部材231aは、前ベルト摺接部231bと、前遮蔽部材保持部231cと、を有しており、後ベルト保持部材241aは、後ベルト摺接部241bと、後遮蔽部材保持部241cと、を有している(
図10A、
図10B参照)。
【0069】
前ベルト摺接部231bは、前ベルト摺接部231bの+W方向側に半リング状に凸設されており、後ベルト摺接部241bは、後ベルト保持部材241aの-W方向側に半リング状に凸設されている(
図4A、
図4B参照)。前ベルト保持部材231a及び後ベルト保持部材241aは、定着ベルト211の前端部及び後端部のそれぞれの内側に、前ベルト摺接部231b及び後ベルト摺接部241bのそれぞれを摺接させることにより、定着ベルト211を回転自在に支持する役割を持つ。前ベルト摺接部231b及び後ベルト摺接部241bは、いずれも、定着ベルト211との摺接面が定着ニップ領域FNとは反対側に向くように設けられている。
【0070】
前遮蔽部材保持部231cは、前ベルト摺接部231bの内周側に設けられており、後遮蔽部材保持部241cは、後ベルト摺接部241bの内周側に設けられている(
図10A、
図10B参照)。前遮蔽部材保持部231cは、前遮蔽部材217を保持する役割を持つ。後遮蔽部材保持部241cは、後遮蔽部材218を保持する役割を持つ。前遮蔽部材保持部231cは、外タブ231dと、内タブ231eと、前遮蔽部材保持溝231fと、を有しており、後遮蔽部材保持部241cは、外タブ241dと、内タブ241eと、後遮蔽部材保持溝241fと、を有している(
図10A、
図10B参照)。外タブ231d及び内タブ231eは、ともに、前ベルト摺接部231bの+W方向側に1/4円の半リング状に凸設されており、所定の間隔をもって離間されている。外タブ241d及び内タブ241eは、ともに、後ベルト保持部材241aの-W方向側に1/4円の半リング状に凸設されており、所定の間隔をもって離間されている。前遮蔽部材保持溝231fは、外タブ231d及び内タブ231eによって形成された溝であり、後遮蔽部材保持溝241fは、外タブ241d及び内タブ241eによって形成された溝である(
図10A、
図10B参照)。前遮蔽部材保持溝231fには、前遮蔽部材217が差し込まれている。後遮蔽部材保持溝241fには、後遮蔽部材218が差し込まれている。前遮蔽部材保持溝231fは、W方向から視た断面視で、前遮蔽部材217の形状に沿った湾曲状に形成されている。後遮蔽部材保持溝241fは、W方向から視た断面視で、後遮蔽部材218の形状に沿った湾曲状に形成されている。
【0071】
本実施形態において、外タブ(231d,241d)及び内タブ(231e,241e)は、ともに、W方向に沿って10mmの長さに設定されている。これらの外タブ(231d,241d)及び内タブ(231e,241e)の長さは、遮蔽部材(217,218)が保持されるに足りる長さに設定されている。また、遮蔽部材保持溝(231f,241f)の溝幅は、遮蔽部材(217,218)が差し込まれるに足り、かつ、遮蔽部材(217,218)の脱落を阻止できる大きさに設定されている。
【0072】
このような前遮蔽部材保持部231cが前ベルト保持部材231aに設けられるとともに、後遮蔽部材保持部241cが後ベルト保持部材241aに設けられていることにより、遮蔽部材(217,218)が、熱源213とシート非通過領域(β1,β2)との間において、安定的に保持されるという効果が生じる。
【0073】
前ランプ支持部231p及び後ランプ支持部241pは、それぞれ、熱源213の前端部(又は後端部)を支持することを目的として、前ベルト保持部材231a(又は後ベルト保持部材241a)の外側に配設されている(
図2A、
図2B、
図4A及び
図4B参照)。
【0074】
前下フレーム232は、前下フレーム本体232aと、前回動部材232bと、を有しており、後下フレーム242は、後下フレーム本体242aと、後回動部材242bと、を有している(
図2A、
図2B参照)。前回動部材232b及び後回動部材242bは、それぞれ、前下フレーム本体232a(又は後下フレーム本体242a)に対して、図示しない回動軸により回動軸線δ回りに回動自在に支持されている。前回動部材232b及び後回動部材242bは、それぞれ、加圧ローラ220の前端部(又は後端部)を回転自在に支持する役割を持つ。前回動部材232bは、付勢部材234によって定着ベルト211に向けて付勢されており、後回動部材242bは、付勢部材244によって、定着ベルト211に向けて付勢されている。付勢部材(234,244)の付勢力によって、加圧ローラ220は、定着ベルト211に圧接される。
【0075】
<駆動伝達機構及び回転駆動部>
駆動伝達機構250は、駆動ギア251と、従動ギア252と、を有している(
図3参照)。駆動ギア251は、回転駆動部260の回転軸261に固定されている。従動ギア252は、駆動ギア251と噛み合った状態で加圧ローラ220の回転軸220aに固定されている。回転駆動部260の駆動によって、加圧ローラ220が駆動伝達機構250を介して第2回転方向G2に回転駆動される。
【0076】
<剥離部材>
剥離部材270は、排紙部96において、定着ベルト211の近傍に設けられた剥離板である(
図6参照)。剥離部材270によって、定着ベルト211と加圧ローラ220との間を通過したシートPが、定着ベルト211から剥離され、シートPの定着ベルト211への巻き付きが阻止される。
【0077】
次に、熱源213から遮蔽部材(217,218)に蓄積された熱の放熱経路について説明する。
【0078】
熱源213によって発せられた熱は、定着ベルト211側へと移動する。このとき、熱源213から定着ベルト211のシート非通過領域β1へと向かって移動する熱は、その熱移動の経路上に配置された前遮蔽部材217によって、その移動が遮られる。熱源213から定着ベルト211のシート非通過領域β2へと向かって移動する熱は、その熱移動の経路上に配置された後遮蔽部材218によって、その移動が遮られる。熱源213からの熱によって、前遮蔽部材217及び後遮蔽部材218が加熱されるとともに、熱が前遮蔽部材217及び後遮蔽部材218に蓄積する。前遮蔽部材217及び後遮蔽部材218の熱は、前遮蔽部材217及び後遮蔽部材218に付設された放熱部材219へと移動する。前遮蔽部材217に蓄積された熱は、放熱部材219を介して+W方向側、すなわち、シート通過領域α側へと伝導されるとともに、放熱部材219の表面から放熱される。同様に、後遮蔽部材218に蓄積された熱は、放熱部材219を介して-W方向側、すなわち、シート通過領域α側へと伝導されるとともに、放熱部材219の表面から放熱される。放熱部材219が、定着ベルト211のシート通過領域αに対向するように設けられていることから、放熱部材219の表面から放熱された熱は、定着ベルト211のシート通過領域αへと移動する。
【0079】
従って、このような放熱部材219が設けられていることにより、遮蔽部材(217,218)によってシート非通過領域(β1,β2)への移動が遮られた熱が、放熱部材219を介してシート非通過領域(β1,β2)からシート通過領域αへと移動されるとともに、定着ベルト211のシート通過領域αへと放熱されるという効果が生じる。
【0080】
(実施形態2)
図11は、実施形態2における遮蔽部材(217,218)が遮蔽部材保持部(231c,241c)によって保持された状態を模式的に示す端面図である。
図12は、実施形態2における加熱定着部210の構成の一部を排紙部96側から視た概略縦断面図である。
図13は、実施形態2における遮蔽部材(217,218)の係止爪700を模式的に示す図である。
【0081】
実施形態2において、遮蔽部材保持部(231c,241c)は、上記の実施形態1における遮蔽部材保持部(231c,241c)に加えて、被係止部(231g,241g)をさらに有している(
図11参照)。前遮蔽部材保持部231cには、被係止部231gが設けられており、後遮蔽部材保持部241cには、被係止部241gが設けられている。被係止部231g及び被係止部241gには、それぞれ、後述する遮蔽部材(217,218)の係止爪700が係止される。被係止部231gは、前遮蔽部材保持溝231fの奥部において、前遮蔽部材217の外周側に凹設されており、被係止部241gは、後遮蔽部材保持溝241fの奥部において、後遮蔽部材218の外周側に凹設されている(
図11参照)。
【0082】
実施形態2において、遮蔽部材(217,218)は、上記の実施形態1における遮蔽部材(217,218)に加えて、係止爪700をさらに有している(
図11参照)。前遮蔽部材217の-W方向側の端縁には、被係止部231gに係止される係止爪700が設けられており、後遮蔽部材218の+W方向側の端縁には、被係止部241gに係止される係止爪700が設けられている。
【0083】
係止爪700は、遮蔽部材(217,218)の端縁から略平行に設けられた2本のスリット701及びスリット702の間に形成された切片703が、遮蔽部材(217,218)の外周側を向くように折り曲げられたことにより、形成されている(
図11、
図13参照)。
【0084】
係止爪700は、自由状態からさらに折り曲げ方向に負荷された状態で、遮蔽部材保持溝(231f,241f)から被係止部(231g,241g)へと挿入される。係止爪700は、被係止部(231g,241g)内において、また自由状態に戻る。係止爪700の形状は、負荷状態において遮蔽部材保持溝(231f,241f)内の通過が可能でとなり、かつ、自由状態において遮蔽部材保持溝(231f,241f)内の通過が困難となる形状に設定されている。
【0085】
このような係止爪700が遮蔽部材(217,218)に設けられていることにより、遮蔽部材(217,218)が、熱源213とシート非通過領域(β1,β2)との間において、遮蔽部材保持部(231c,241c)によって、より安定的に保持されるという効果が生じる。
【0086】
被係止部(231g,241g)の形状及び係止爪700の形状は、もちろん、前述のような形状に限られず、要は、遮蔽部材(217,218)の遮蔽部材保持部(231c,241c)からの離脱を阻止し得る形状であればよい。また、係止爪700は、遮蔽部材(217,218)とは別体に形成されていてもよいし、複数の係止爪700が遮蔽部材(217,218)に設けられていてもよい。
【0087】
実施形態2において、放熱部材219には、熱源213から定着ベルト211のシート通過領域αへの熱移動を許容する第1透孔219d、第2透孔219e及び第3透孔219fが設けられている(
図12参照)。第1透孔219d、第2透孔219e及び第3透孔219fは、それぞれ、W方向に沿って形成されている。第1透孔219dと第2透孔219eとの間には、第1保護枠219gが形成されており、第2透孔219eと第3透孔219fとの間には、第2保護枠219hが形成されている(
図12参照)。
【0088】
このような第1透孔219d、第2透孔219e及び第3透孔219fが設けられていることにより、シート通過領域αにおいて、熱源213からの熱を第1透孔219d、第2透孔219e及び第3透孔219fに通過させるとともに、定着ベルト211を効率的に加熱することが可能となる。また、このような第1保護枠219g及び第2保護枠219hが設けられていることにより、定着ベルト211を熱源213との接触から保護することが可能となる。
【0089】
(実施形態3)
図14は、実施形態3における遮蔽部材(217,218)及び放熱部材219が保持部(231h,241h)によって保持された状態を模式的に示す端面図である。
図15は、実施形態3における放熱部材219の係止爪900を模式的に示す図である。
【0090】
実施形態3において、遮蔽部材(217,218)は、それぞれ、放熱部材219の内周面に接続されている(
図14参照)。前遮蔽部材217は、放熱部材219の-W方向側の端部に接続されている(
図14参照)。後遮蔽部材218は、放熱部材219の+W方向側の端部に接続されている(
図14参照)。
【0091】
実施形態3において、遮蔽部材(217,218)は、後述する保持部(231h,241h)によって、放熱部材219とともに保持されることにより接続されている。もちろんこれに限られず、遮蔽部材(217,218)は、溶接によって放熱部材219に接続されていてもよいし、接着剤又は接着部材を介して放熱部材219に接続されていてもよい。
【0092】
遮蔽部材(217,218)と放熱部材219とが互いに接続されていることにより、遮蔽部材(217,218)と放熱部材219とが別体に形成されている場合であっても、遮蔽部材(217,218)に蓄積された熱が放熱部材219を介してシート通過領域α側へと伝導されるという効果が生じる。
【0093】
また、実施形態3において、遮蔽部材(217,218)は、それぞれ、放熱部材219の板厚方向に積層されている(
図14参照)。もちろんこれに限られず、遮蔽部材(217,218)は、放熱部材219に施されためっき(例えば、銅めっきにニッケルめっきを被膜したもの、銀めっき等)をもって形成されるとともに、放熱部材219に積層されたものでもよい。
【0094】
遮蔽部材(217,218)が放熱部材219の板厚方向に積層されることにより、遮蔽部材(217,218)と放熱部材219とを互いの板厚面同士で連設させた場合と比較して、遮蔽部材(217,218)と放熱部材219との接触面積がより多く確保されることから、遮蔽部材(217,218)の熱が、放熱部材219へ、より効率的に移動されるという効果が生じる。
【0095】
また、実施形態3において、遮蔽部材(217,218)は銅から形成されている。遮蔽部材(217,218)には、耐腐食のために、無電解ニッケルめっきが施されている。遮蔽部材(217,218)が、SUS430と比較して熱伝達に優れる銅から形成されていることにより、遮蔽部材(217,218)がSUS430から形成されている場合と比較して、遮蔽部材(217,218)が、定着ベルト211に対して、熱源213からの熱をより積極的に遮蔽することができるという効果が期待できる。
【0096】
また、実施形態3において、放熱部材219は、アルミニウムから形成されている。放熱部材219が、SUS430と比較して熱伝導に優れるアルミニウムから形成されていることにより、放熱部材219がSUS430から形成されている場合と比較して、放熱部材219が遮蔽部材(217,218)に蓄積された熱をより積極的にシート通過領域α側へと移動することができるという効果が期待できる。
【0097】
このように、遮蔽部材(217,218)及び放熱部材219が、それぞれ異なる材質から形成されていることにより、熱源213からの熱の遮蔽及び遮蔽部材(217,218)に蓄積された熱の放熱が効率化されるという効果が生じる。
【0098】
実施形態3において、遮蔽部材(217,218)は、上記の実施形態2と同様に、係止爪700をさらに有している(
図11参照)。前遮蔽部材217の-W方向側の端縁には、被係止部231gに係止される係止爪700が設けられており、後遮蔽部材218の+W方向側の端縁には、被係止部241gに係止される係止爪700が設けられている。
【0099】
実施形態3において、放熱部材219は、前ベルト保持部材231aから後ベルト保持部材241aまで延設されている(
図14参照)。また、実施形態3において、放熱部材219は、上記の実施形態1における放熱部材219に加えて、被係止部(231g,241g)に係止される係止爪900をさらに有している(
図14参照)。係止爪900は、放熱部材219の-W方向側の端縁及び+W方向側の端縁に、それぞれ設けられている。
【0100】
係止爪900は、放熱部材219の端縁から略平行に設けられた2本のスリット901及びスリット902の間に形成された切片903が、放熱部材219の内周側を向くように折り曲げられたことにより、形成されている(
図14、
図15参照)。
【0101】
係止爪900は、自由状態からさらに折り曲げ方向に負荷された状態で、後述する保持溝(231j,241j)から被係止部(231g,241g)へと挿入される。係止爪900は、被係止部(231g,241g)内において、また自由状態に戻る。係止爪900の形状は、負荷状態において保持溝(231j,241j)内の通過が可能でとなり、かつ、自由状態において保持溝(231j,241j)内の通過が困難となる形状に設定されている。
【0102】
このような係止爪900が設けられていることにより、放熱部材219が、熱源213とシート通過領域αとの間において、保持部(231h,241h)によって、より安定的に保持されるという効果が生じる。
【0103】
被係止部(231g,241g)の形状並びに係止爪700及び係止爪900の形状は、もちろん、前述の形状に限られず、要は、遮蔽部材(217,218)及び放熱部材219の保持部(231h,241h)からの離脱を阻止し得る形状であればよい。また、係止爪700は、遮蔽部材(217,218)とは別体に形成されていてもよいし、複数の係止爪700が遮蔽部材(217,218)に設けられていてもよい。同様に、係止爪900は、放熱部材219とは別体に形成されていてもよいし、複数の係止爪900が放熱部材219に設けられていてもよい。
【0104】
実施形態3において、ベルト保持部材(231a,241a)は、実施形態1におけるベルト保持部材(231a,241a)とは異なり、遮蔽部材保持部(231c,241c)の代わりとして保持部(231h,241h)を有している(
図14参照)。保持部(231h,241h)は、請求項に記載の遮蔽部材保持部及び放熱部材保持部に相当する。
【0105】
前保持部231hは、前ベルト摺接部231bの内周側に設けられており、後保持部241hは、後ベルト摺接部241bの内周側に設けられている。前保持部231hは、前遮蔽部材217及び放熱部材219を保持する役割を持ち、後保持部241hは、後遮蔽部材218及び放熱部材219を保持する役割を持つ。
【0106】
保持部(231h,241h)は、遮蔽部材保持溝(231f,241f)の代わりとして保持溝(231j,241j)を有している(
図14参照)。
【0107】
前保持部231hは、外タブ231dと、内タブ231eと、前保持溝231jと、を有している(
図14参照)。後保持部241hは、外タブ241dと、内タブ241eと、後保持溝241jと、を有している(
図14参照)。外タブ231d及び内タブ231eは、ともに、前ベルト摺接部231bの+W方向側に1/4円の半リング状に凸設されており、所定の間隔をもって離間されている。外タブ241d及び内タブ241eは、ともに、後ベルト保持部材241aの+W方向側に1/4円の半リング状に凸設されており、所定の間隔をもって離間されている。
【0108】
前保持溝231jは、外タブ231d及び内タブ231eによって形成された溝であり、後保持溝241jは、外タブ241d及び内タブ241eによって形成された溝である。前保持溝231jには、前遮蔽部材217及び放熱部材219が差し込まれており、後保持溝241jには、後遮蔽部材218及び放熱部材219が差し込まれている。前保持溝231jは、W方向から視た断面視で、前遮蔽部材217の形状に沿った湾曲状に形成されており、後保持溝241jは、W方向から視た断面視で、後遮蔽部材218の形状に沿った湾曲状に形成されている。
【0109】
保持溝(231j,241j)の溝幅は、遮蔽部材(217,218)及び放熱部材219が積層された状態で差し込まれるに足り、かつ、遮蔽部材(217,218)及び放熱部材219の脱落を阻止できる大きさに設定されている。
【0110】
このような保持部(231h,241h)がベルト保持部材(231a,241a)に設けられていることにより、放熱部材219が、熱源213とシート通過領域αとの間において、安定的に保持されるという効果が生じる。
【0111】
前保持部231hには、被係止部231gが設けられており、後保持部241hには、被係止部241gが設けられている。被係止部231g及び被係止部241gには、それぞれ、遮蔽部材(217,218)の係止爪700及び放熱部材219の係止爪900が係止される。
【0112】
被係止部231gは、前保持溝231jの奥部において前遮蔽部材217の外周側に凹設された第1被係止部231kと、前保持溝231jの奥部において前遮蔽部材217の内周側に凹設された第2被係止部231mと、を有している(
図14参照)。被係止部241gは、後保持溝241jの奥部において後遮蔽部材218の外周側に凹設された第1被係止部241kと、後保持溝241jの奥部において後遮蔽部材218の内周側に凹設された第2被係止部241mと、を有している(
図14参照)。
【0113】
第1被係止部231kには、前遮蔽部材217の係止爪700が差し込まれており、第1被係止部241kには、後遮蔽部材218の係止爪700が差し込まれている。第2被係止部231m及び第2被係止部241mには、それぞれ、放熱部材219の係止爪900が差し込まれている。
【0114】
なお、実施形態3においては、遮蔽部材(217,218)及び放熱部材219をともに保持する保持部(231h,241h)が設けられているが、もちろんこれに限られず、遮蔽部材(217,218)を保持する部分と放熱部材219を保持する部分とが別々に設けられていてもよい。
【0115】
上記の実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみにより解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0116】
100 画像形成装置
200 定着装置
210 加熱定着部
220 加圧ローラ
211 定着ベルト
212 ニップ形成部材
213 熱源
214 反射部材
215 支持部材
216 摺動シート
217 前遮蔽部材
218 後遮蔽部材
219 放熱部材
230 前フレーム
231a 前ベルト保持部材
231b 前ベルト摺接部
231c 前遮蔽部材保持部
231f 前遮蔽部材保持溝
231h 前保持部
231j 前保持溝
240 後フレーム
241a 後ベルト保持部材
241b 後ベルト摺接部
241c 後遮蔽部材保持部
241f 後遮蔽部材保持溝
241h 後保持部
241j 後保持溝
250 駆動伝達機構
260 回転駆動部
270 剥離部材