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特許7602911両眼眼位を測定するための方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】両眼眼位を測定するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/08 20060101AFI20241212BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A61B3/08
G02C13/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020513643
(86)(22)【出願日】2018-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 US2018049428
(87)【国際公開番号】W WO2019050877
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】15/696,161
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519247958
【氏名又は名称】ニューロレンズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】クラール ジェフリー ピー
(72)【発明者】
【氏名】プラムリー アリック
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0049301(US,A1)
【文献】特表2016-536105(JP,A)
【文献】特開平11-197108(JP,A)
【文献】特開昭60-092730(JP,A)
【文献】特開2012-100759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両眼眼位を決定する方法であって、
見かけの距離で患者の第1の眼及び第2の眼の分離斜位を測定する測定段階と、
前記測定された分離斜位を用いて前記見かけの距離での前記第1の眼及び前記第2の眼の調節性輻輳を決定する決定段階と、
を含み、前記決定段階は、
測定された前記分離斜位を用いて補正された前記見かけの距離の輻輳で前記第1の眼に対する第1の像及び前記第2の眼に対する第2の像を立体視ディスプレイを用いて提示する段階であって、前記第1の像及び前記第2の像は、融合可能であり、また前記第1の像及び前記第2の像は、周囲のものである、段階と、
前記立体視ディスプレイを用いて交替方式で、
前記第1の眼に対して第1の中心像として第1の追加の中心像を投影する段階と、
前記第2の眼に対して第2の中心像として第2の追加の中心像を投影する段階と、
前記第1の追加の中心像の投影に応答して、眼球追跡器を用いて、前記第1の眼の向きの調節を追跡する段階と、
前記第2の追加の中心像の投影に応答して、前記眼球追跡器を用いて、前記第2の眼の向きの調節を追跡する段階と、を含み、
前記決定段階は
前記立体視ディスプレイ及びコンピュータを用いて交替方式で、
前記第1の眼の向きの前記調節を低減するために第1の反復的関連斜位によってシフトした第1の追加の中心像を投影する段階と、
前記第2の眼の向きの前記調節を低減するために第2の反復的関連斜位によってシフトした第2の追加の中心像を投影する段階と、
前記シフトした第1の追加の中心像の前記投影に応答して、前記眼球追跡器を用いて、前記第1の眼の向きの調節を追跡する段階と、
前記シフトした第2の追加の中心像の前記投影に応答して、前記眼球追跡器を用いて、前記第2の眼の向きの調節を追跡する段階と、
前記第1及び第2の眼の向きの前記調節が調節閾値よりも小さいか否かを決定する段階と、
前記第1及び第2の眼の向きの前記調節が前記調節閾値よりも大きい場合に前記シフトした第1の追加の中心像を投影する前記段階に戻る段階と、
前記第1及び第2の眼の向きの前記調節が前記調節閾値よりも小さい場合に最後の前記第1の反復的関連斜位及び最後の前記第2の反復的関連斜位から安定化した関連斜位を識別する段階と、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記測定段階は、
立体視ディスプレイを用いて前記第1の眼及び前記第2の眼に対して融合不能像を投影する投影段階、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投影段階は、
前記第1の眼に対して優位像を投影する段階と、
前記第2の眼に対して非優位像を投影する段階と、
を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定段階は、
眼球追跡器を用いて、弛緩状態にある前記第1の眼及び前記第2の眼のうちの少なくとも一方の向きを測定することによって前記分離斜位を測定する段階、
を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記測定段階は、
立体視ディスプレイを用いて、見かけの距離の輻輳で前記第1の眼に対して中心像を投影する段階と、
前記立体視ディスプレイを用いて、見かけの距離の輻輳で前記第2の眼に対して分散像を投影する段階を含み、前記中心像と前記分散像が融合不能であり、そして
前記眼球追跡器を用いて前記第1の眼及び前記第2の眼のうちの少なくとも一方の回転を追跡する段階と、
前記追跡された回転の安定化から弛緩状態を識別する段階と、
前記眼球追跡器及びコンピュータを用いて前記弛緩状態にある前記第1の眼及び前記第2の眼のうちの少なくとも一方の向きを測定することによって前記分離斜位を測定する段階と、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の像及び前記第2の像は、動的である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の像及び前記第2の像は、静的である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記決定段階は、
前記分離斜位と前記安定化した関連斜位との和を前記見かけの距離に対応する前記調節性輻輳に対する補正として識別する段階、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記両眼眼位を特徴付けるために調節性反応に対する前記調節性輻輳の比を使用する段階、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
遠見視力見かけの距離で前記方法を実施することからもたらされる調節性輻輳として遠見視力調節性輻輳を決定し、かつ
近見視力見かけの距離で前記方法を実施することからもたらされる調節性輻輳として近見視力調節性輻輳を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
遠見視力調節性反応と近見視力調節性反応とを決定する段階と、
前記第1の眼及び前記第2の眼の前記両眼眼位を特徴付けるために、前記遠見視力調節性輻輳から前記近見調節性輻輳を差し引いたものを前記遠見視力調節性反応から前記近見視力調節性反応を差し引いたもので割り算した比を構成する段階と、
を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
近見視力調節性輻輳を決定する前記段階は、
赤道方向の下方の視角で前記近見視力調節性輻輳を決定する段階、
を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記見かけの距離での前記測定段階及び該見かけの距離での前記決定段階は、調節光学系を用いて実施される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記患者からの反応を要請することなく方法を実施する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、視力鋭敏性を測定するための方法及びシステムに関し、より具体的には、両眼眼位不良の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
正常視力を用いて、個人は、異なる距離に位置付けられた物体にフォーカスすることができる。理想的には、個人は、遠見視力と呼ぶ遠い物体上にかつ近見視力と呼ぶ近い物体上にフォーカスすることができる。眼の光学系は、これらの距離の間でフォーカスを変えるために多くの筋肉を使用する。これらの筋肉は、遠見視力と近見視力の間で移行する時に眼の様々な態様を調節する。筋肉調節は、水晶体のフォーカスを調節するために水晶体の形状に微妙な変更を加える段階と、眼球を回転させてそれらの光軸を回転させる段階と、瞳孔のサイズを変える段階とを含む。
【0003】
老眼は、人が歳を取る時に眼の水晶体の柔軟性の損失によって引き起こされる近見視力の自然な悪化である。老眼は、近い物体を凝視する時に眼が強度にフォーカスしなくてもよいように近見視力屈折誤差を補正する「老眼」鏡を着用することによって部分的に補償することができる。老眼の個人は、近見視力及び遠見視力に対して異なる光学補正を必要とする。しかし、2つの眼鏡を用いること及びこれらを頻繁に取り替えることは気分を乱される。眼鏡を絶えず取り替えることを回避するために、近見視力及び遠見視力に対して異なる光学補正を提供する遠近両用眼鏡を使用することができる。これらの2つの視力領域間の移行は、急変又は漸変である可能性がある。後者の眼鏡は、累進加算レンズ(PAL)と呼ばれる。急変遠近両用眼鏡は、2つの視力領域を分離する可視ラインを有し、一方でPALは、異なる屈折力を有する領域間で可視ライン又はエッジを持たない。
【0004】
この全ての進歩にも関わらず、一部のタイプの視力関連の不快感が依然として存続している。これらの不快感の1つは、現代のデジタル生活方式での習慣のシフトに関連している。職業の大きくかつ増大する部分が、労働者にコンピュータ画面及びモバイルデバイスを含む近距離デジタルインタフェースにフォーカスするのにかれらの労働時間の大きくかつ増大する部分を費やすことを要求している。同じことは、取りわけ、何時間もビデオゲームを競技し、セル電話上で文字通信して更新をチェックする多くの人の私生活に関しても真である。これらの全ての職業的及び行動的なシフトは、人々がデジタル画面、デバイス、ディスプレイ、及びモニタを以前よりもかなり近い距離で注視するのに費やす時間を急激に増加させている。眼が近見視力像に慣れる時間の増加は、近見視力に係わる筋肉に対して過度の要求を課し、多くの場合に快適ゾーンを超えてそれらを緊張させる。これは、疲労、不快感、疼痛、又は更にデジタルによって誘起される偏頭痛に至る可能性がある。現在までのところ、何百万人もの患者が毎日これらの疼痛を体験していても、これらのデジタルデバイス関連の視力不快感、疼痛、及び偏頭痛の詳細な因果関係の機構に関する広く受け入れられる統一見解は存在しない。従って、デジタル眼球不快感からの救済を提供することができる眼鏡又は他の視機能ソリューションに対する必要性が存在する。
【0005】
図1図4は、両眼眼位不良の基本問題を示している。図1Aは、図示の十字のような近い物体を注視する時に人間の視力は以下の2つの方法で遠近調節することを示している。第1に、人間は、距離Lの場所にある近い物体を各眼の網膜上に結像するように眼1-1及び1-2の屈折力を遠近調節する。これは、多くの場合に調節性反応Aと呼ばれる。第2に、人間は、眼の視軸2-1及び2-2が同じ近い物体を指向するように眼1-1及び1-2を角度αだけ内向きに回転させる。この反応は、多くの場合に調節性輻輳ACと呼ばれる。明らかな幾何学的理由から、直線前方基準軸に対する調節性輻輳ACの角度αは、調節性反応Aの距離Lに直接に関係し、すなわち、α=α(L)が成り立つ。健康で十分な眼位を有する眼に関して、調節性反応Aに対する調節性輻輳ACの比AC/Aは、物体距離Lと2つの眼の瞳孔距離PDとに依存する幾何学的に十分に定義された関数である。
【0006】
図1B図1Cは、眼が多くの場合に様々な形態の調節性眼位不良を示すことを示している。図1Bでは、2つの眼は、各々が内向きに、しかし、幾何学形状が要求すると考えられるものよりも小さい程度まで回転する。その結果、調節性輻輳角αは、幾何学的に必要なものよりも眼位不良角度βだけ小さくなる。幾分詳細に説明すると、眼2-1及び2-2の視軸は、近い物体を適正に見るために必要調節性眼位として示す方向を指向しなければならないが、その代わりにそれらは、より小さい程度まで内向きに回転し、代わりに弛緩した又は自然な調節性眼位として示す方向を指向する。
【0007】
図1Cは、このより小さい回転が非対称である場合を示している。図示の場合に、第1の眼1-1の視軸2-1は、必要調節性眼位の方向を適正に指向し、一方で第2の眼1-2の視軸2-2は、調節性眼位不良角度βだけ眼位不良を有する弛緩した又は自然な調節性眼位の方向までのみ内向きに回転している。
【0008】
図2A図2Dは、一部のタイプの調節性眼位不良を示している。視力測定の異なる学派及び様々なモノグラフによって使用される眼位不良の定義は、一部の矛盾を示しており、これらの眼位不良を特徴付ける技術も様々である。従って、本明細書に示す定義は、単に例示的であるように意図しており、類似物及び均等物も例示する用語の範囲内である。
【0009】
本発明で議論する眼位不良を正しい状況に置くために、最初に、像を融合するという概念を導入する。人間の眼が同じ物体を注視する時に、各眼は、その独自の視覚的知覚を生成する。これらの知覚は、眼から視力野に伝達され、そこで脳が2つの像を融合し、見られた物体の3次元(3D)知覚を生成する。視力測定診断システムを用いて、この像融合を検査することができる。例えば、同じ形状の2つの別々の物体は、2つの投影が単一物体から到着するように見える偏向器、プリズム、及びミラーを用いて2つの眼の中に別々に投影することができる。これらの視覚的知覚は、脳によって単一知覚像に融合されることになる。このようにして投影される物体は、融合可能像を提示する融合可能物体と呼ばれる。
【0010】
実験で2つの物体間の距離が増大されるか、又は偏向角が増大されるか、又は物体の形状が修正される場合に、2つの眼内への投影は異なり始める。物体間の何らかの距離又は差の場所では、2つの眼の視覚的知覚間の不一致が閾値を超え、脳は、2つの像を単一知覚に融合することを停止する。距離、角度、又は形状のそのような差を有する物体は、融合不能像を提示する融合不能物体と呼ばれる。
【0011】
これを前置きとして、図2A図2Dは、多くの場合にマレットボックスと呼ばれる検査デバイスによって測定された固視不一致という概念を示している。マレットボックスは、垂直に位置合わせされた2つのバーと「X O X」水平「アンカー」とを表示する。一部の実施では、これら2つのバーを横方向にシフトさせることができる。他の実施では、同じ水平シフトを達成するために患者の眼の前に調節可能ミラー又はプリズムが配置される。適切な選択的光学系を用いて、アンカーとバーの一方のみとが中心バー5-1-cとして第1の眼1-1に対して示され、同じアンカーと他方のバーのみとが中心バー5-2-cとして第2の眼1-2に対して示される。アンカー、並びに中心バー5-1-c及び5-2-cは明らかに融合可能である。従って、調節性眼位不良問題なしに患者の脳は、これらの像を適正に融合することになる。
【0012】
図2Bは、調節性眼位不良を有する患者は像を適正に融合しないことになることを示している。典型的に観察されることは、両方の眼によって見られるアンカーの像は、単一像に適正に融合されるが、バーは、シフトされたものとして知覚されることである。第1の眼1-1は、シフトバー5-1-sを知覚し、一方で第2の眼1-2は、シフトバー5-2-sを知覚する。像中心への線と視軸2-1及び2-2のうちの一方との間の角度γは、固視不一致と呼ばれる。
【0013】
図2C図2Dは、固視不一致を相殺又は補償するのに必要とされる角度を測定する方法を示している。図2Cのシステムでは、2つのバーは、逆向きシフトされる。第1の眼1-1に対して逆向きシフトバー5-1-xが示され、第2の眼1-2に対して逆向きシフトバー5-2-xが示される。これらのバーは、患者が2つのバーを位置合わせされたものとして知覚するまで逆向きシフトされる。視軸と逆向きシフトバーまでの線との間のこれらの逆向きシフトに対応する角度γ*は、測定されて典型的に関連斜位と呼ばれる。図2Dのシステムでは、これらのバーは逆向きシフトされない。代わりに、調節可能又は交換可能プリズム7が患者の眼の前に挿入される。これらのプリズムは、2つのバーが位置合わせされたものとして患者によって知覚されるまで調節又は交換される。次いで、屈折した視軸のプリズム角又は屈折角は、関連斜位γ*として報告される。
【0014】
図3は、部分関連斜位を増大させることによって固視不一致がどのように部分的に補償されるかを示している。厳密には、固視不一致を完全に補償する(完全)関連斜位は、この曲線と部分関連斜位軸との交点によって与えられる。人間の視力が仮に純粋に光学過程であれば、部分関連斜位は、単に部分的に補償された固視不一致の負号のものに等しいであろう。従って、曲線は、原点を通り、-45度傾いて左上コーナから右下コーナに向く直線であろう。しかし、図3は、人間の視力がかなり複雑であることを示しており、そこでは知覚及び像処理が決定的な役割を演じる。図3は、部分的に補償された固視不一致と部分関連斜位の間の4つのタイプの関係を示している。明らかに、これらの線のどれもが真っ直ぐではなく、原点も通らず、更にこれらの線のうちの2つは水平軸と交わりもしない。これらのタイプII及びIII関係は、部分関連斜位のどのような量も固視不一致を完全には補償することができないことを意味する。従って、患者の固視不一致を完全に補償する関連斜位を決定する実質的な課題が残っている。終わりに慣用表現に関して簡単に説明する:眼が内向きに必要な程度まで回転しない場合の固視不一致は「exo」と呼ばれ、一方で眼が内向きに過度に回転する希な場合に、それは「eso」と呼ばれる。
【0015】
図4A図4Cは、分離斜位と呼ばれる関連の視力眼位不良を示している。分離斜位を特徴付けるために、図2A図2Dと同様の実験を実施することができ、違いは、融合可能像5-1及び5-2を示す代わりに、視力測定医が、第1の眼1-1及び第2の眼1-2に対して融合不能像6-1-s及び6-2-sを示すことである。図4Aでは、これらの融合不能像は十字及びバーである。図4Bが示すように、眼が像を融合することができない状態で、多くの場合に視軸のうちの一方又は両方は外向きに回転する。図示の非対称の場合に、第2の眼1-2の視軸2-2は、調節性眼位不良角度δだけ外向きに回転する。外向き回転のこの角度δは測定され、これは分離斜位と呼ばれる。様々な用途において、下記のように、分離斜位は2つの眼にわたって均等に分配され、従って、各眼の分離斜位はδ/2に等しい。一部の場合に、例えば、図1Cに示すように、分離斜位δは、それ自体不均等に発現する場合があり、眼と眼の間で相応に分配しなければならない。
【0016】
図4Cは、第2の眼1-2に対して単に像が示されず、第2の眼1-2の視野が遮蔽された時の特に明確な場合を示している。これは、融合不能像の極端な場合である。図4Bに関しては、遮蔽に応答して第2の眼1-2の視軸2-2は、測定可能な分離斜位角δだけ外向きに回転する。
【0017】
固視不一致及び分離斜位を含む調節性眼位不良の定量的特徴付けとして、一部の医師は、眼位不良の影響を受けたAC/A比を使用する。このAC/Aは、固視不一致によって減少した調節性輻輳角α-δ/2(「プリズムジオプトリ」Δに関する正接で表される)を調節距離Lで割り算した屈折力Dで表される比である。ACの一般的な定義は、プリズムジオプトリに関するAC=100tan(α-δ/2)である。平均の視力機能では、6-6.5Δ/DのAC/A比が必要であり、一方で驚くべきことに大きい人口セグメントにおいて眼位不良の影響を受けたAC/A比は約3.5Δ/Dと測定されている。明らかに、様々な形態の調節性眼位不良が人口の大きい百分率に影響を及ぼし、これからの救済に向けたあらゆる進歩は非常に価値がある。
【0018】
対応する視力測定分野の驚くべき事実は、経験豊かな医師によって決定された関連斜位角及び分離斜位角が際立って広い変化を示すことである。同じ患者に対して異なる視力測定医によって実施された実験、時には異なる時点で同じ視力測定医によって実施された実験であっても、3Δ程度の大きい標準偏差を有する分布を有するプリズムジオプトリΔで表した関連斜位角が報告されている。(1Δのプリズムジオプトリは、1メートルの距離で1cmのプリズム屈折に対応する。)これらの方法の大きい変動性は、調節性眼位不良の有効な決定及び補償を不可能にする。
【0019】
この並外れて大きい標準偏差は、時にいくつかのファクタに起因する。これらのファクタは、以下のことを含む。(1)決定方法は、患者の主観的反応を主要な入力として使用する。(2)関連斜位を決定するために、一部の方法は中心像を用い、一方で他の方法は周囲像を使用する。これらの方法の相対的な精度及び適切性は依然として厳密に評価されていない。(3)殆どの医師が単一測定値又は単一方法を用い、従って、複数の検査を実施することで収集することができる潜在的に重要な医療情報の利益を受けていない。(4)前回の調査プロジェクトにおいて、本出願人は、眼のプリズム反応が移動する検査像では全く異なることも見出している。しかし、静止検査像及び移動検査像に基づいて最適なプリズム矯正の関係を理解する段階は、その初期過程にしかない。(5)プリズム性眼位不良を定めるにはいくつかの方法があり、これらは、様々なプリズムの予想及び診断をもたらすが、最終的には眼鏡の中に単一プリズムを形成しなければならない。診断的に決定された様々なプリズム矯正をどのように変換して単一プリズム処方に組み合わせるべきかが明らかであるとは到底言えない。本出願人は、プリズム処方の効果及び変動性が、決定された複数のプリズム矯正の考えられる組合せにどの程度依存するかを評価したという重要な研究を知っていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述の理由の全てから、調節性眼位不良を最適に補償するプリズム屈折力を決定することは、火急の医療的必要性のままである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した医療必要性に対処するために、本発明の一部の実施形態は、両眼眼位を決定する方法を含み、本方法は、見かけの距離で患者の第1の眼及び第2の眼の分離斜位を測定する段階と、測定された分離斜位を用いて見かけの距離での第1の眼及び第2の眼の調節性輻輳を決定する段階とを含む。
【0022】
他の実施形態では、両眼眼位を決定するシステムは、第1の眼及び第2の眼に対する像の投影のための立体視ディスプレイと、見かけの距離に従って像の投影を修正するための調節光学系と、第1の眼及び第2の眼の向きを追跡するための眼球追跡器と、両眼眼位の決定を管理するために立体視ディスプレイ、調節光学系、及び眼球追跡器に結合されたコンピュータとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】様々な調節性眼位不良を示す図である。
図1B】様々な調節性眼位不良を示す図である。
図1C】様々な調節性眼位不良を示す図である。
図2A】調節性眼位不良のタイプを決定する方法を示す図である。
図2B】調節性眼位不良のタイプを決定する方法を示す図である。
図2C】調節性眼位不良のタイプを決定する方法を示す図である。
図2D】調節性眼位不良のタイプを決定する方法を示す図である。
図3】固視不一致と部分関連斜位の間の関係の4つのタイプを示す図である。
図4A】分離斜位を決定する方法を示す図である。
図4B】分離斜位を決定する方法を示す図である。
図4C】分離斜位を決定する方法を示す図である。
図5】両眼眼位不良を決定するシステムを示す図である。
図6A】両眼眼位不良を決定するシステムの実施形態を示す図である。
図6B】両眼眼位不良を決定するシステムの実施形態を示す図である。
図7】眼球追跡器によるIR像を示す図である。
図8A】両眼眼位不良を決定するシステムの実施形態を示す図である。
図8B】両眼眼位不良を決定するシステムの実施形態を示す図である。
図9】両眼眼位不良を決定するシステムの実施形態を示す図である。
図10A】調節光学系の実施形態を示す図である。
図10B】調節光学系の実施形態を示す図である。
図11】両眼眼位不良を決定する方法を示す図である。
図12】測定段階の例示的詳細を示す図である。
図13A】測定段階を実施する段階を示す図である。
図13B】測定段階を実施する段階を示す図である。
図13C】測定段階を実施する段階を示す図である。
図13D】測定段階を実施する段階を示す図である。
図14】決定段階の例示的詳細を示す図である。
図15A】決定段階を実施する段階を示す図である。
図15B】決定段階を実施する段階を示す図である。
図15C-1】決定段階を実施する段階を示す図である。
図15C-2】決定段階を実施する段階を示す図である。
図16】両眼眼位不良を決定する方法の赤道下実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本特許明細書に説明するシステムは、上記で指定した医療必要性に少なくとも以下の態様で対処する。(1)本説明のシステム及び方法は、患者からの主観的入力を用いずに客観的測定値だけによってプリズム矯正を決定する。この態様だけでも患者毎及び医師毎の結果の変化を有意に低減する。実際に、本出願人のシステム及び方法を用いた大規模な患者サンプルに関する調査は、上述の3Δから1Δを有意に下回るまで低減した標準偏差しか伴わないプリズム矯正を決定した。結果の標準偏差のこの有意な低減だけでも、本明細書に説明する方法を定量的に予想可能な診断法という位置付けとして確立している。(2)本発明のシステム及び方法は、周囲プリズム矯正と中心プリズム矯正とがどのように達成されるかに関する新しく発展させた理解に基づいて中心と周囲の両方の検査像を使用する。従って、本説明のシステム及び方法は、中心と周囲の両方の調節性眼位不良を補償するための最適な妥協点を確立する最適妥協プリズム処方を決定する有望なプラットフォームである。(3)本説明の方法は2つの過程を有し、この場合に、第1の過程において得られた重要な眼位不良情報に基づいて第2の過程において最終的なプリズム矯正を決定する。従って、本方法は、様々な方法によって決定された知識を統合し、これらの全てによって決定された情報から利益を提供する。(4)本方法の過程のうちの1つは、検査像を移動する段階を含む。従って、最終的に決定されるプリズム矯正は、更に眼の動的プリズム反応も取り込んで統合する。(5)上述の大規模調査の確実な再現性及び小さい変動性により、本出願人の方法は、最適化された客観的な単一プリズム矯正をもたらすために様々な方法の出力を客観的かつ有効な方式で組み合わせるという説得力のある説明を与える。本明細書に説明するこれら5つの態様は、個々にかつ組合せで利点を提供する。
【0025】
図5図10は、両眼眼位を決定するシステム10を示しており、図11図16は、両眼眼位を決定するための対応する方法100を示している。
【0026】
図5は、一部の実施形態では、両眼眼位を決定するシステム10が、第1の眼1-1及び第2の眼1-2に対して可視像を投影するための立体視ディスプレイ20と、見かけの距離に従って投影可視像を修正するための調節光学系30と、第1の眼1-1及び第2の眼1-2の向きを追跡するための眼球追跡器40と、両眼眼位の決定を管理するために立体視ディスプレイ20、調節光学系30、及び眼球追跡器40に結合されたコンピュータ50とを含むことができることを示している。以下では、眼を第1の眼1-1及び第2の眼1-2とラベル付けする。このラベル付けは、左眼及び右眼に対応するものとするか又はその逆とすることができる。
【0027】
図6Aは、システム10の一部の実施形態の詳細図を示している。一部の実施形態では、眼球追跡器40は、第1の眼1-1及び第2の眼1-2の上に赤外線眼球追跡ビームを投影するためにシステム10の直前に配置された赤外線発光ダイオード又はIR LED42-1及び42-2、並びに第1の眼1-1及び第2の眼1-2を赤外線結像光で照明するための赤外線光源44-1及び44-2を含むことができる。赤外線眼球追跡ビームと赤外線線結像光とは両方共に眼1-1及び1-2から反射される。眼球追跡器40は、第1の眼1-1及び第2の眼1-2から反射された赤外線眼球追跡ビーム及び赤外線結像光を検出するための赤外線(IR)カメラ48-1及び48-2を有する赤外線(IR)テレスコープ46-1及び46-2を更に含むことができる。
【0028】
システム10の要素のうちの多くは、対で、例えば、赤外線テレスコープ46-1及び46-2で含められる。誤解を招かない場合に、提示の簡略化に向けて、そのような要素対は、「赤外線テレスコープ46-1及び46-2」を略記する「赤外線テレスコープ46」のような先頭識別子だけによって参照する。
【0029】
図7は、IRカメラ48によって検出又は感知された得られたIR像49を示している。この実施形態では、各眼に対して4つのIR LED42-1、...42-4が別々に存在する。図7の説明では混乱を避けるために、特定の眼を示す「-1」又は「-2」を省略する。この場合の「-1」...「-4」という表示は、全てがIR眼球追跡ビームを同じ眼の上に投影する4つのIR LEDを参照する。4つのIR LED42-1、...42-4は、4つのIR眼球追跡ビームを眼の上に投影し、これらのビームは角膜から反射してIR像49の中にいわゆるプルキニエ点P1-1、...P1-4を発生させる。「P1」という表示は、角膜の近位面からの反射を参照する。大きい指標のプルキニエ点P2、...は、眼胞の近位面及び遠位面からの反射のような眼内の深い場所に位置付けられた面からの反射を参照する。ここで説明する実施形態は、P1プルキニエ点を利用し、一方で他の実施形態は、より大きい指標のプルキニエ点を使用することができる。
【0030】
IR光源44の反射IR結像光も、IRカメラ48によって検出される。検出された反射IR結像光の上に重ねられた4つのプルキニエ点P1-1、...P1-4は、図示のように合わさってIR像49を形成する。
【0031】
一部の実施形態では、眼球追跡器40は、プルキニエ点P1-1、...P1-4を形成する検出された赤外線眼球追跡ビームと、合わさってIR像49を形成する検出された赤外線結像光とを用いて第1の眼1-1及び第2の眼1-2の向きを決定するための像認識システム52を含むことができる。像認識システム52は、例えば、エッジ認識法を用いて瞳孔3の輪郭の像を抽出することができる。次いで、像認識システム52は、瞳孔3の中心から眼1の向きを決定することができる。それとは別に、像認識システム52は、プルキニエ点P1-1、...P1-4から眼の向きを決定することができる。最後に、像認識システム52は、様々な公知の像認識技術及び像解析技術を用いて決定された2つの向きを組み合わせることにより、重み付けアルゴリズムを用いて「最良結果」の向きを決定することができる。像認識システム52は、個別のプロセッサ、個別の特定用途向け集積回路とすることができ、又はシステム管理コンピュータ50内に配備されるソフトウエアとして実施することができる。
【0032】
図6A図6Bは、更にシステム10が、投影可視像26-1及び26-2を立体視ディスプレイ20から第1の眼1-1及び第2の眼1-2の上に経路変更するための並びに第1の眼1-1及び第2の眼1-2からの反射赤外線眼球追跡ビームと反射赤外線結像光とが合わさったもの45-1及び45-2を透過させるための赤外線透過性可視光ミラー24-1及び24-2を各眼に対して1つを含むことができることを示している。これらの実施形態では、立体視ディスプレイ20の立体視表示画面22-1及び22-2をシステム10の主光路の周囲に配置することができ、眼球追跡器40の赤外線テレスコープ46-1及び46-2をシステム10の主光路に配置することができる。参考までに、この実施形態では、各眼に対する調節光学系レンズ34――ミラー24――IRテレスコープ46の軸を一般的に主光路と呼ぶ。同様に、明瞭化の目的で、光路及びビームを示す複数の図において一部のラベル付けを簡略化している。
【0033】
図6Bは、この実施形態では周囲立体視表示画面22-1及び22-2が可視像26-1及び26-2をシステム10の主光路に向けて投影することができ、これらの像が赤外線透過性可視光ミラー24-1及び24-2によって眼1-1及び1-2に向けて経路変更されることを示している。同時に、眼1-1及び1-2から反射された反射IR眼球追跡ビームと反射IR結像光とが合わさったもの45-1及び45-2は、同じ赤外線透過性可視光ミラー24-1及び24-2によってシステム10の主光路に沿ってIRテレスコープ46-1及び46-2に向けて透過される。
【0034】
図8Aは、立体視表示画面22及びIRテレスコープ46の場所が入れ替えられた別の実施形態を示している。図8Bは、この実施形態が、第1の眼1-1及び第2の眼1-2から反射された反射赤外線眼球追跡ビームと反射赤外線結像光とが合わさったもの45-1及び45-2をIRテレスコープ46-1及び46-2に向けて経路変更するための可視光透過性赤外線(IR)ミラー24’-1及び24’-2を含むことができることを示している。同時に、可視光透過赤外線ミラー24’-1及び24’-2は、立体視ディスプレイ20の立体視表示画面22-1及び22-2からの投影可視像26-1及び26-2を第1の眼1-1及び第2の眼1-2に透過させることができる。システム10のこれらの実施形態では、立体視ディスプレイ20は、システム10の主光路に配置することができ、眼球追跡器40の赤外線テレスコープ46は、システム10の主光路の周囲に配置することができる。参考までに、この実施形態では、各眼に対する調節光学系レンズ34――ミラー24――立体視表示画面22の軸を一般的に主光路と呼ぶ。
【0035】
図9は、立体視ディスプレイ20が単一立体視表示画面22と同期眼鏡28とを含むことができる図8A図8Bのシステム10の変形を示している。同期眼鏡28は、シャッター眼鏡又は偏光眼鏡とすることができる。この実施形態では、図8A図8Bの左右の立体視表示画面22-1及び22-2の投影可視像26-1と26-2の両方が単一立体視表示画面22によって高速交替シーケンスで表示される。同期眼鏡28は、この交替シーケンスと正確に協働させることができ、高速交替方式での第1の眼1-1及び第2の眼1-2への可視像26-1及び26-2の投影を可能にし、個別の像がこれらの眼の中に投影されるという印象を発生させる。同期眼鏡28は、3D映画の投影に使用される3D眼鏡と類似とすることができ、同期眼鏡28の2つのレンズの円偏光を高速に切り換えることができる液晶LED層に頼ることができる。そのようなシステム10は、有利とすることができるシステム10に対する小さいフットプリントを達成することができる。最適な作動に向けて、立体視表示画面22に対して十分に広い視野を有利とすることができる。
【0036】
システム10の一部の実施形態は、ミラー24又は24’を含むことを必要としない。これらのシステムでは、眼球追跡器40は、IRカメラ48が立体視表示画面22の投影を遮蔽しないように、システム10の直前に配置されて十分に大きい角度に傾斜されたIRカメラ48の小型の実施を含むことができる。眼球追跡器40のそのような実施の像認識システム52は、実質的に傾斜されたIR像49及び一部がこの傾斜によって掩蔽される場合さえもあるプルキニエ点P1、...P4から眼の視軸の方向を決定するために幾何学的変換ユニットを含むことができる。
【0037】
システム10の実施形態では、調節光学系30は、様々な屈折力の一連の調節光学系レンズ34-1及び34-2を有するフォロプターホイール32-1及び32-2を含むことができる。これらの調節光学系レンズ34は、第1の眼1-1及び第2の眼1-2に対する見かけの距離を模擬するのに有利である。
【0038】
方法100に関して下記で説明するように、システム10を用いて患者に対して異なる見かけの距離にある可視像26を投影することができる。この投影を行う段階は、少なくとも2つの技術的方法を含むことができる。第1に、可変屈折力を有する調節光学系レンズ34を挿入することにより、投影可視像26が遠いか又は近いという印象を発生させることができる。第2に、互いに近いか又は遠い可視像26-1と26-2とを投影することにより、これらの像を患者に対する見かけの距離にあるように見せる際の別の重要なファクタであるこれらの像の適切な輻輳を模擬することができる。
【0039】
一部の実施形態では、第1の技術的方法に向けて、調節光学系30は、フォロプターホイール32の代わりに又はフォロプターホイール32との組合せで湾曲ミラー、試用レンズ、出し入れ交換レンズ、調節可能液体レンズ、変形可能ミラー、z方向可動ミラー、回転回折光学要素、平行移動回折光学要素、可変フォーカスモアレレンズ、又はフォーカスレンズ群を含むことができる。
【0040】
図10A図10Bは、第2の技術的方法に向けて、調節光学系30が、第1の眼及び第2の眼に関する見かけの距離の輻輳を模擬するために像26-1及び26-2の投影を第1の眼1-1及び第2の眼1-2に偏向するための1対の回転可能偏向器36、回転可能プリズム38、又は調節可能プリズム38(一方のものしか示していない)を含むことができることを示している。
【0041】
一部の実施形態では、輻輳は、上述の光学要素によってではなく、立体視表示画面22-1及び22-2による投影可視像26-1の投影と26-2の投影とを互いに向けてシフトさせること、言い換えれば、これらの像を互いに近い状態で投影することによって模擬することができる。
【0042】
一部のシステム10では、調節光学系30と立体視ディスプレイ20とをマイクロレンズアレイを含む単一光照射野ディスプレイに組み合わせることができ、この場合に、立体視表示画面22-1及び22-2上に示されている投影可視像26-1及び26-2をマイクロレンズアレイの光学特性との組合せに用いて患者が見る投影可視像26-1及び26-2の見かけの距離を変えることができる。
【0043】
一部のシステム10では、調節光学系30と立体視ディスプレイ20とをmemsスキャナ、フォーカス調整器、又は光源を含む単一光照射野ディスプレイに組み合わせることができる。
【0044】
プリズム性又は調節性の眼位不良の問題と、これらの問題の関連において進歩をもたらすために開発したシステム10の実施形態とを説明し終えたところで、次いで、システム10の実施形態を用いて両眼眼位不良を決定するための様々な方法100を以下に説明する。
【0045】
図11図16は、眼1-1及び1-2の両眼眼位を決定するためにシステム10の上述した実施形態を使用する方法100を示している。
【0046】
図11は、方法100の一部の実施形態が、見かけの距離での患者の第1の眼1-1及び第2の眼1-2の分離斜位の測定段階120と、測定した分離斜位を用いてこの見かけの距離での第1の眼1-1及び第2の眼1-2の調節性輻輳の決定段階140とを含むことができることを示している。上述のように、方法100は二段方法であり、従って、その結果は、2つの異なる段によって明らかになった情報及び知識を統合する。
【0047】
下記で詳細に説明するように、一部の実施形態では、測定段階120は、システム10の立体視ディスプレイ20を用いて融合不能可視像26-1及び26-2を第1の眼1-1及び第2の眼1-2に対して投影する段階を含むことができる。方法100をより簡潔に説明するために、図5図10の可視像26-1及び26-1を以下では簡潔に像26-1及び26-2と呼ぶ。
【0048】
分離斜位を決定するために融合不能像を投影する段階の例に対しては、例えば、図2C図2Dに関して記載している。この場合に、2つの融合不能像6-1-sと6-2-sとは同等の外見又は優位性のものであった。方法100の一部の実施形態は、そのような同等の優位性の融合不能像を投影する段階を含む。
【0049】
他の実施形態では、投影段階は、第1の眼1-1に対して優位像を投影する段階と、第2の眼1-2に対して非優位像を投影する段階とを含むことができる。図2C図2Dに関して上述したように、非優位像が見える眼1-2は、多くの場合に、2つの融合不能像を融合しようとする脳の努力が失敗した後に揺動して逸れ始める。これらの実施形態では、測定段階120は、眼球追跡器40を用いて眼1-1及び1-2を追跡する段階と、揺動する眼1-2が最終的に弛緩した向きに到達する時を決定する段階を含むことができる。この弛緩状態に到達する段階は、例えば、眼球追跡器40が、眼1-2の移動が閾値よりも減速したこと、方向性移動から不規則微小振動に変化したこと、又は停止したことを決定することによって推測することができる。眼1-2が弛緩状態に達したことを眼球追跡器40が決定すると、眼球追跡器40によって第1の眼1-1及び第2の眼1-2のうちの少なくとも一方の向きを測定することによって分離斜位を測定することができる。
【0050】
図12はこれらの段階の実施をより詳細に説明しており、図13A図13Dは特定の実施形態でのこれらの段階を示している。これらの実施形態では、測定段階120は、以下の段階を含むことができる。すなわち、中心像を見かけの距離の輻輳で第1の眼に対して立体視ディスプレイを用いて投影する段階122、中心像と融合することができない分散像を見かけの距離の輻輳で第2の眼に対して立体視ディスプレイを用いて投影する段階124、第1の眼及び第2の眼のうちの少なくとも一方の回転を眼球追跡器を用いて追跡する段階126、追跡中の回転の安定化から弛緩状態を識別する段階128、及び弛緩状態にある第1の眼及び第2の眼のうちの少なくとも一方の向きを眼球追跡器及びコンピュータを用いて測定することによって分離斜位を測定する段階130である。
【0051】
図13Aの左のパネルは、中心像の投影段階122が、この場合は十字である中心像201-1をシステム10の立体視ディスプレイ20の立体視表示画面22-1上に投影する段階を含むことができることを示している。投影段階122は、見かけの距離の輻輳206で行うことができる。参照に向けた基準軸202-1が、第1の眼1-1の中心と立体視表示画面22-1の中心とを接続する中心法線として導入される。この基準軸202-1を用いて、見かけの距離Lの場所で2つの眼1-1と1-2の間の中間に配置された物体を注視する時に第1の眼の視軸204-1が基準軸202-1となす角度で見かけの距離の輻輳角α=α(L)によって見かけの距離の輻輳206を特徴付けることができる。より一般的には、見かけの距離の輻輳206は、基準軸202-1に対して第1の眼1-1の中心から角度α(L)の方向に向く線により、第1の眼の視軸204-1がこの線に沿うように向いていない場合であっても表されることになり、この線を参照するものとする。
【0052】
中心像201-1は、見かけの距離の輻輳206を模擬するための見かけの距離の輻輳角α(L)だけしか立体視表示画面22-1の中心から不一致ではないという意味で中心にある。簡潔化の目的で、場合によってこの角度を単に輻輳角αと呼ぶ。第1の眼の視軸204-1の定義は、第1の眼1-1が中心像201-1に着目している時に観察する調節光学系30-1のレンズ又は他の関連部分を組み込むことができる。
【0053】
図13Aの右のパネルは、第2の眼1-2に対する分散像、この場合は見かけの中心を持たない不規則に配置されたボール又は不規則なサイズ及び位置の球のセットの投影段階124を示している。中心像201-1は優位像の例であり、分散像201-2は非優位像の例である。中心優位像201-1及び分散非優位像201-2は融合不能像の例である。これに代えて、不規則に配置されたボールの代わりに、融合不能分散像201-2の別の実施形態として立体視表示画面22-2を図4Cの遮蔽と同じく単純に暗くすることができる。
【0054】
図13Bは、上述のように、同じく第2の眼1-2が最初に第1の眼1-1とほぼ同じ見かけの距離の輻輳角αだけ内向きに回転することになるが、脳が融合不能の中心像201-1と分散像201-2とを融合し損ねた後に第2の眼1-2が揺動して離れることを示している。眼球追跡器40は、揺動中の第2の眼1-2が弛緩状態に達したことを視力測定医又は自動プログラムが識別段階128において追跡中の回転の安定化から決定するまで第2の眼1-2の追跡段階126を実行することができる。この安定化は、様々な方法で、すなわち、眼が停止すること、眼の微小振動の振幅が閾値よりも小さくなること、又は眼の方向性回転が方向性のない揺動に推移することで定めることができる。
【0055】
段階128で弛緩状態が識別されると、測定段階130において、眼球追跡器40が、第2の眼の視軸204-2と見かけ輻輳206との角度δを決定することによって弛緩した第2の眼1-2の向きを測定することができる。この測定段階130では、見かけの距離の輻輳206からの弛緩した第2の眼1-2の角度不一致であるδを分離斜位角δの分離斜位208と呼ぶ。この定義は、図4B図4Cに記載と非常に類似している。上述のように、様々な医師の分離斜位定義の間で小さい相違点が存在する。
【0056】
一部の関連実施形態では、追跡段階126は、第1の眼1-1、第2の眼1-2、又はこれら両方の回転を追跡する段階を含むことができる。これらの実施形態では、分離斜位208を第1の眼の関連斜位角δ-1、第2の眼の関連斜位角δ-2を測定する段階130と、分離斜位δを何らかのタイプのδ-1とδ-2の平均として決定する段階とで定めることができる。
【0057】
図13A図13Bは、全体の測定段階120の段階122~130を近視距離、例えば、Lが40cm~100cmの範囲にあるものとして実施することができることを示している。
【0058】
図13C図13Dは、同じ段階122~130を見かけの距離Lが大きく、見かけの距離の輻輳角αがα=0である時の遠見視力検査の一部として実施することができることを示している。関連実施形態では、Lを1m~10mの範囲にあるとすることができる。ジオプトリで表すと、方法100は、1~3Dに対応する近視距離、0~0.5Dに対応する遠視距離を用いて実施することができる。
【0059】
要約すると、方法100の第1の段である測定段階120の結果は、分離斜位角δを有する分離斜位208である。決定段階140である方法100の第2の段は、直前に決定された分離斜位208に基づくプリズム性眼位不良の追加の検査を実施する。従って、全体の方法100は、第1の段と第2の段との組合せであり、それによって方法100はプリズム性眼位不良の2つの明確に異なる検査を統合し、従って、2つの異なるタイプの両眼眼位に関する知識及びデータを統合する。そうすることで、視力の質的により完全な治療及び質的により良好な改善が確実にされる。
【0060】
図14は、決定段階140が、測定された分離斜位を用いて補正された見かけの距離の輻輳による第1の眼に対する第1の像及び第2の眼に対する第2の像の立体視ディスプレイを用いた提示段階142を含むことができ、第1の像と第2の像とが融合可能であることを示している。
【0061】
図15Aは、提示段階142の一部の実施では、融合可能の第1の像210-1を立体視表示画面22-1上で第1の眼1-1に対して提示することができ、融合可能の第2の像210-2を立体視表示画面22-2上で第2の眼1-2に対して提示することができることを示している。これら融合可能な像210-1及び210-2は周囲とすることができる。例えば、周囲の像210-1及び210-2は、図示のようにボール又はプラネットから構成される2つの実質的に等しいバンド又はリングとすることができる。融合可能な像210-1及び210-2の中心を測定段階120において測定された分離斜位δ(208)によって輻輳角αが補正された見かけの距離の輻輳206に従って互いに向けてシフトさせることができる。測定された分離斜位δは、図示のように2つの眼の間でδ/2-δ/2として対称に分配することができる。これらの典型的な場合に、融合可能な像210-1及び210-2の中心を基準軸202-1及び202-2に対する分離斜位δによって輻輳角αが補正されたα-δ/2に従って互いに向けてシフトさせることができる。従って、第1の眼の視軸204-1及び第2の眼の視軸204-2は、これらの視軸204が融合可能像210の中心に向くことによって示すように、分離斜位208によって補正された見かけの距離の輻輳206と典型的に位置合わせする。
【0062】
一部の場合に、2つの眼の両眼眼位不良が非対称である時に、視力測定医は、測定された分離斜位δを2つの眼の間で不均等に分配するという決定をすることができる。先の慣用表現は、この後も変わらずに本説明を容易にし、混乱を招かない場合に、本説明では「制限条件N-1及び制限条件N-2」の対を簡潔に「制限条件N」と記すことにすることにも注意しなければならない。
【0063】
融合可能像210のシフトに調節光学系30が影響を及ぼすことができる。調節光学系30の設定は、調節距離であるLに依存するか又は時に円柱レンズ又は収差によって更に補正された患者が好ましい眼鏡倍率に依存する可能性がある。
【0064】
一部の実施形態では、融合可能の第1の像210-1及び融合可能の第2の像210-2は動的なものとすることができる。図15Aでは、有向の破線の弧が、プラネットのリングをその中心の周りに回転させることができることを示している。周囲融合可能像210を回転させることによって周囲プリズム効果がより確実に再現性高く取り込まれることは実験によって示されている。提示段階142では、最適な重みを有する眼位情報を提供するために、これらの融合可能像210の半径、空間分布、配色、動特性、及び回転速度を全て調節することができる。
【0065】
一部の実施形態では、第1の像210-1及び第2の像210-2は静的なものとすることができる。一部の実施形態では、第1の像210-1及び第2の像210-2は中心とすることができる。これらの実施形態は、独自の利点を示すことができる。
【0066】
図14は、提示段階142に投影段階144を続けることができることを説明しており、図15はそれを示している。投影段階144は、第1の眼1-1に対する第1の追加の中心像212-1の投影段階と、第2の眼1-2に対する第2の追加の中心像212-2の投影段階とを含むことができる。これらの中心像212は、融合可能像210の中心に投影することができる。融合可能像210が周回するプラネットの実施形態では、追加の中心像212は、図示のようにプラネット周回の中心に例えば十字として投影することができる。
【0067】
これら2つの追加の中心像212-1及び212-2の投影段階144は、立体視ディスプレイ20を用いて交替方式を用いて実施することができる。図15Bでは、追加の中心像の一方のみを投影する段階144の交替方式を表すために、十字212-1を実線に示し、他方の追加の中心像212-2は、破線を用いて示している。交替の周期は、いくつかの異なる基準に従って選択することができ、1秒よりも短く、1~100秒の範囲、一部の場合は5~10秒の範囲にあるとすることができる。
【0068】
段階120において測定された分離斜位208の角度であるδが眼1の両眼眼位を完全に取り込んだ場合に、眼1は、分離斜位角δ/2によって補正された輻輳角αを使用する追加の中心像212の投影段階144に適応する必要はなくなったと考えられる。これは、投影段階144の後に眼の視軸204が分離斜位角δ/2によって補正された輻輳角αに位置合わせ状態に留まることで顕在化したと考えられる。
【0069】
しかし、本出願人の研究は、患者が、補正された輻輳角α-δ/2による追加の中心像212の投影段階144に応答して自分の眼1を移動して調節することを明らかにした。これは、本出願人に眼の残存プリズム性眼位不良を決定するために追加の測定が必要であるという認識に至らせた。これらの追加の測定を段階146~154において以下の通りに説明する。すなわち、眼球追跡器を用いて、第1の追加の中心像の投影に応答して第1の眼の調節を追跡し、第2の追加の中心像の投影に応答して第2の眼の調節を追跡する段階146、立体視ディスプレイ及びコンピュータを用いて交替方式で、第1の眼の調節を低減するために第1の反復的関連斜位によってシフトした第1の追加の中心像を投影し、第2の眼の調節を低減するために第2の反復的関連斜位によってシフトした第2の追加の中心像を投影する段階148、眼球追跡器を用いて、シフトした第1の追加の中心像の投影に応答して第1の眼の調節を追跡し、シフトした第2の追加の中心像の投影に応答して第2の眼の調節を追跡する段階150、第1及び第2の眼の有効調節が調節閾値よりも小さいか否かを決定し、第1及び第2の眼の有効調節が調節閾値よりも大きい場合に、シフトした第1の追加の中心像を投影する段階に戻る段階152、第1及び第2の眼の有効調節が調節閾値よりも小さい場合に、最後の第1の反復的関連斜位と最後の第2の反復的関連斜位とで安定化した関連斜位を識別する段階154、及び分離斜位と安定化した関連斜位との和を見かけの距離に対応する調節性輻輳への補正として識別する段階156である。次いで、これらの段階をある程度詳細に説明する。
【0070】
図14は、残存プリズム性眼位不良を決定するために、眼球追跡器40を用いて、第1の追加の中心像212-1の投影に応答して第1の眼1-1の調節の追跡段階、及び第2の追加の中心像212-2の投影に応答して第2の眼1-2の調節の追跡段階146を投影段階144に続けることができることを説明しており、図15Bはそれを示している。図15Bは、第1の眼1-1が、ε-1で表示している第1の眼の調節角度214-1で第1の眼の視軸204-1を回転させることによって投影段階144に対して調節し、第2の眼1-2が、ε-2で表示している第2の眼の調節角度214-2で第2の眼の視軸204-2を回転させることによって調節することを示している。ここで、簡潔化に向けて、これらの角度は、基準軸202の代わりに角度α-δ/2を有する分離斜位によって補正された見かけの距離の輻輳を参照する。調節角度ε-1及びε-2が非ゼロであることが見出されたことで、決定段階140の後続段階が必要になった。
【0071】
図15C-1、図15C-2は、調節性輻輳を決定する段階140が、次いで、第1の眼1-1の調節を低減するために第1の反復的関連斜位φ(n)-1によってシフトした第1の追加の中心像212-1を投影し、第2の眼1-2の調節を低減するために第2の反復的関連斜位φ(n)-2によってシフトした第2の追加の中心像212-2を投影する段階148を含むことを示している。この場合に、眼の調節は、下記で詳述する調節角度の変化ε(n)-1によって測定することができる。
【0072】
明瞭化及び簡潔化に向けて、この図15C-1、図15C-2では、第1の眼1-1のみを指定している。シフトした追加の中心像212は眼1に接続され、シフトした像軸216によって特徴付けられる。図15C-1、図15C-2は、シフトした第1の追加の中心像212-1を第1の眼1-1に接続する第1のシフトした像軸216-1を示している。
【0073】
図2図3に関して、固視不一致γと、それを補償するのに必要な関連斜位γ*とが単純に等しく互いに反対であるわけではないことを説明した。この認識と同様に、関連斜位φ(n)-1は、第1の眼の調節角度ε(n)-1に単純に等しくその反対であるわけではない。従って、方法100の実施形態は、段階1、2、...nにおいてこれらの量を反復的に決定する。上述の定義では段階指標をφ(n)-1及びε(n)-1として示しており、1回目の第1の反復的関連斜位をφ(1)-1で表示し、1回目の第2の反復的関連斜位をφ(1)-2で表示し、以降同じく続く。当然ながら、「-1」及び「-2」という指標は、第1の眼1-1及び第2の眼1-2それぞれの角度を続けてラベル付けし、一方で「(1)」、「(2)」、...「(n)」という指標は、反復プロセスの1回目、2回目、及びn回目の段階をラベル付けする。
【0074】
投影段階144の場合と同様に、これらのシフトした追加の中心像212-1及び212-2の投影段階148は、立体視ディスプレイ20及びコンピュータ50を用いて交替方式で実施することができる。
【0075】
図15C-1、図15C-2は、投影段階148が、眼球追跡器40を用いて、シフトした第1の追加の中心像212-1の投影段階に応答して第1の眼1-1の調節の追跡段階、及びシフトした第2の追加の中心像212-2の投影段階に応答して第2の眼1-2の調節の追跡段階150を続けることができることを更に例示している。第1の眼1-1に対する提示のみを指定すると、追跡段階150は、第1の反復的関連斜位φ(n)-1によってシフトした第1の追加の中心像212-1の投影段階148に応答して第1の眼1-1の調節角度ε(n+1)-1の追跡段階を含む。
【0076】
この追跡段階150は、追跡段階146と同様である。追跡段階150は、(n)から(n+1)に大きくなった反復段階指標によって区別される。簡単には、方法の実施形態は、追加の中心像212を反復的関連斜位φ(n)によってシフトさせる段階と、眼1の反応性調節角度ε(n+1)を追跡する段階と、調節角度の変化ε(n+1)-ε(n)から眼1の調節を決定する段階と、次いで、調節角度の変化ε(n+1)-ε(n)を低減するように大きさ及び符号が選択される新しい反復的関連斜位φ(n+1)によって追加の中心像212のシフトを繰り返す段階とを含む。
【0077】
一部の実施形態では、φ(n+1)-φ(n)の大きさは、ε(n+1)-ε(n)に等しい、すなわち、|φ(n+1)-φ(n)|=|ε(n+1)-ε(n)|が成り立つように選択することができる。一部の場合に、これらの実施形態は、遅い輻輳を示すことができる。従って、一部の実施形態では、|φ(n+1)-φ(n)|をλ|ε(n+1)-ε(n)|に等しい、すなわち、λ<1の時に|φ(n+1)-φ(n)|=λ|ε(n+1)-ε(n)|が成り立つように選択することができる。これらの実施形態は、多くの場合に、良好な輻輳を示している。様々な実施形態では、他の非線形関係、多項式関係、非解析的関係、又は解析的関係を使用することができる。
【0078】
これらの段階148及び150を反復的に実施した後に、決定段階152を実施して第1及び第2の眼の有効調節が調節閾値よりも小さいか否かを決定することができる。上述のフレームワークを用いて、決定段階152は、調節角度の変化|ε(n+1)-ε(n)|が閾値よりも小さいか否かを評価することができる。有効調節は、様々な方法で定めることができる。この定義は、眼のうちの一方のみの調節角度の変化、すなわち、眼1-1に関する|ε(n+1)-ε(n)|、又は眼1-1と1-2の両方に関する調節角度の変化の和、又は何らかの重み付き平均、又は非線形関係を含むことができる。
【0079】
調節角度の変化|ε(n+1)-ε(n)|が閾値よりも大きい場合に、本方法は、図15C-1、図15C-2に示すシフトした第1の追加の中心像212の投影段階148に戻ることができる。
【0080】
それに対して、段階(n)において、例えば、調節角度の変化|ε(n+1)-ε(n)|によって特徴付けられる眼の調節が閾値よりも小さいことが見出された場合に、反復を停止することができ、本方法は、最後の第1の反復的関連斜位φ(n)-1と最後の第2の反復的関連斜位φ(n)-2とでの安定化した関連斜位φの識別段階154を続けることができる。上述の場合のように、この段階154において安定化した関連斜位φを定めるために異なる計算式、例えば、φ=(φ(n)―1)+(φ(n)-2)を使用することができる。
【0081】
従来の実施形態では、分離斜位δ及び関連斜位φを一般的に2つの眼に対して互いに定めた。従って、対称な場合に、単眼値は、本明細書で定める角度の半分である。
【0082】
識別段階154には、分離斜位δと安定化した関連斜位φとの和(δ+φ)の見かけの距離に対応する調節性輻輳角αを有する調節性輻輳ACへの補正としの識別段階156を続けることができる。これは、方法100によって決定された完全な又は完全に補正された調節性輻輳を対応する完全な又は完全に補正された調節性輻輳角[α-(δ+φ)/2]の正接によってプリズムジオプトリΔに関して表すことができる。上述のように、調節性輻輳の典型的な定義は、プリズムジオプトリΔにおいてAC=100tan[α-(δ+φ)/2]である。この式は、方法100の実施形態の結果が、αを補正するのに分離斜位δしか使用されず、すなわち、AC=100tan[α-δ/2]である従来の方法と比較して明確に異なる前進である方式のうちの1つを示している。従来の方法と比較して別の相違点は、δを決定した特定のシステム10及び方法100である。
【0083】
方法100によって完全に補正されたACが決定されると、両眼眼位を特徴付けるために、ここでもまた両眼眼位を調節性反応Aに対する調節性輻輳ACの比であるAC/A比によって特徴付けることができる。このAC/A比は、単一距離に関して決定することができ、又は複数の距離に関するAC及びAの値から形成することができる。簡潔化に向けて、ここで、完全に補正された調節性輻輳ACを簡潔に調節性輻輳ACと呼ぶ。
【0084】
一部の実施形態では、方法100は、遠見視力見かけの距離Ldの場所で方法100を実施する段階からもたらされる調節性輻輳として遠見視力調節性輻輳AC(Ld)を決定する段階と、近見視力見かけの距離Lnの場所で本方法を実施する段階からもたらされる調節性輻輳として近見視力調節性輻輳AC(Ln)を決定する段階とを含むことができる。
【0085】
これらを準備段階として、一部の実施形態では、第1の眼と第2の眼との両眼眼位を特徴付けるために、最初に遠見視力調節性反応A(Ld)と近見視力調節性反応A(Ln)とをジオプトリで決定し、次いで、遠見視力調節性輻輳AC(Ld)から近見調節性輻輳AC(Ld)を差し引いたもことを遠見視力調節性反応A(Ld)から近見視力調節性反応A(Ln)を差し引いたもので割り算した比を構成することによって第1の眼及び第2の眼の両眼眼位を次式として特徴付けることができる。
両眼眼位=[AC(Ld)-AC(Ln)]/[A(Ld)-A(Ln)] (1)
【0086】
一部の実施形態では、見かけの距離での測定段階120及びこの見かけの距離での決定段階140は、調節光学系30を用いて実施することができる。
【0087】
先に既存の方法の欠点を説明した時に、データ内の散乱の1つの発生源及び限られた再現性の理由として患者のフィードバックの主観性を示した。この関連において、重要な量又は角度のうちの一方を決定するのに患者からの実質的反応を要請することなく方法100の実施形態を実施することができる。(当然ながら、例えば、快適さに関する非実質的反応は、全く問題なく方法100の一部とすることができる。)これは、方法100が高い再現性で測定値を発生させる主な理由のうちの1つである。
【0088】
図16は、一部の実施形態では、方法100が近見視力に対応する見かけの距離を用いて実施される時に、赤道方向9の下方に中心像201を表示することによって近見視力に対応する分離斜位及び調節性輻輳を赤道方向9の下方の視角において決定することができることを示している。
【0089】
本出願人の広範囲にわたる実験により、方法100によって決定された調節性輻輳に基づいてプリズム眼鏡が製造された場合に、この眼鏡を着用した患者がデジタルデバイス関連の視力の不快感、疼痛、及び偏頭痛の特に有望な軽減を報じたことが例証されている。
【0090】
この実質的な改善は、取りわけ、方法100が以下のように上述の点(1)~(5)に関する方法を開発して統合したことによって得られた可能性が非常に高い。
(1)方法100は、患者の主観的な反応を主要な入力として用いない。
(2)方法100は、周囲像、例えば、画像124及び210と、中心像、例えば、画像201及び212との両方を使用する。
(3)方法100は、測定段階120と決定段階140とを有する二段方法を用い、中心視力と周囲視力の両方に関する情報を収集して利用する。
(4)方法100は、移動検査像、例えば、画像210を使用する。
(5)方法100は、例えば、段階142~156において調節性輻輳の特定の定義及びその決定に向けたプロトコルを発展させ、この定義を用いて処方された眼鏡が眼精過労関連の不快感を特に効率的に軽減することを広範囲にわたる検査によって明らかにした。
【0091】
上記全ての理由から、上述したシステム10及び方法100は、眼精疲労関連の不快感、疼痛、及び偏頭痛を軽減する有望な新しい方式を提供する。
【0092】
本出願は多くの実施形態を含むが、これらは、本発明の範囲又は主張することができるものの範囲に対する限定ではなく、本発明の特定の実施形態に独特の特徴の説明であると解釈しなければならない。本出願において個別の実施形態の状況で説明されたある一定の特徴は、単一実施形態に組み合わせて実施することができる。それとは逆に、単一実施形態の状況で説明された様々な特徴は、実施形態に別々に又はあらゆる適切な部分結合で実施することができる。更に、上記では、ある一定の組合せで機能する特徴を説明した又は最初にそのように主張した場合もあるが、一部の場合に、主張した組合せからの1又は2以上の特徴は、当該組合せから除外することができ、主張した組合せは、部分結合又は部分結合の変形とすることができる。
【符号の説明】
【0093】
1-1 第1の眼
1-2 第2の眼
10 両眼眼位を決定するシステム
32-1、32-2 フォロプターホイール
34-1、34-2 調節光学系レンズ
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15A
図15B
図15C-1】
図15C-2】
図16