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  • 特許-ネットワークチップ抵抗器 図1
  • 特許-ネットワークチップ抵抗器 図2
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  • 特許-ネットワークチップ抵抗器 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ネットワークチップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 1/142 20060101AFI20241212BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01C1/142
H01C7/00 110
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020528846
(86)(22)【出願日】2019-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2019026034
(87)【国際公開番号】W WO2020009051
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-07
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018125854
(32)【優先日】2018-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000242633
【氏名又は名称】北陸電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004059
【氏名又は名称】弁理士法人西浦特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 豊
(72)【発明者】
【氏名】沢井 淳一
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】山本 章裕
【審判官】畑中 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-81901(JP,A)
【文献】実開昭59-84802(JP,U)
【文献】特開平11-317301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/142, 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面と裏面を有する細長い絶縁基板と、
前記絶縁基板の前記表面の長手方向の両端に設けられた一対の端子電極と、
前記絶縁基板の前記長手方向と直交する幅方向に位置する一対の側面上に少なくとも設けられ、前記一対の端子電極と電気的に接続された2組の一対の側面電極と、
前記絶縁基板の前記表面の前記一対の端子電極の間に設けられた中間電極と、
前記一対の側面上に少なくとも設けられ、前記中間電極と電気的に接続された一対の中間側面電極と、
前記一対の端子電極と前記中間電極との間に設けられた一対の抵抗体と、
耐メッキ液性を有する材料により形成されて、前記一対の抵抗体の上に設けられた一対の保護層と、
前記一対の端子電極及び前記2組の一対の側面電極の上と、前記中間電極及び前記一対の中間側面電極の上にそれぞれ形成された1層以上のメッキ層とを備え、
前記絶縁基板の前記長手方向に位置する一対の側面上には側面電極がなく、
前記中間側面電極から延びて、前記絶縁基板の前記裏面上に延びる中間延長電極をさらに有しており、
前記中間延長電極は厚膜中間延長電極により構成されており、
前記絶縁基板の前記裏面には、耐メッキ液性を有する材料により形成されて、前記中間延長電極の中央部を覆うようにして前記絶縁基板の長手方向に延びる裏面側保護層が設けられていることを特徴とするネットワークチップ抵抗器。
【請求項2】
前記一対の端子電極及び前記中間電極は、一対の厚膜端子電極及び厚膜中間電極により構成されている請求項1に記載のネットワークチップ抵抗器。
【請求項3】
前記一対の側面電極及び前記一対の中間側面電極は、一対の薄膜側面電極及び一対の薄膜中間側面電極により構成されている請求項1に記載のネットワークチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワンチップで分圧回路を構成することができるネットワークチップ抵抗器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平10-208901号公報(特許文献1)、特開2018-6726号公報(特許文献2)、実開昭64-37002号公報(特許文献3)等には、絶縁基板の表面及び裏面の対向する両端部に一対の端子電極を形成し、その一対の端子電極間に分圧回路用電極をそれぞれ分離形成した後、絶縁基板の表面の対向する一対の端子電極間を橋絡し、かつ、絶縁基板の表面の分圧回路用電極を横断するように膜状抵抗体を形成して分圧回路を構成するネットワークチップ抵抗器が開示されている。これらのチップ抵抗器では、いずれも一対の端子電極に対して基板の長手方向の両端面を覆う端面電極を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-208901号公報
【文献】特開2018-6726号公報
【文献】実開昭64-37002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁基板の長さが長くなればなるほど、絶縁基板の長手方向の両端に端面電極を設けた場合には、半田が硬化する際にチップ抵抗器が立ち上がる、いわゆるマンハッタン現象が発生する可能性が高くなる。
【0005】
本発明の目的は、半田付けの際にマンハッタン現象が起こらない、ワンチップで分圧回路を構成することができるネットワークチップ抵抗器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のネットワークチップ抵抗器は、表面と裏面を有する細長い絶縁基板と、絶縁基板の表面の長手方向の両端に設けられた一対の端子電極と、絶縁基板の長手方向と直交する幅方向に位置する一対の側面上に少なくとも設けられ、一対の端子電極と電気的に接続された2組の一対の側面電極と、絶縁基板の表面の一対の端子電極の間に設けられた中間電極と、一対の側面上に少なくとも設けられ、中間電極と電気的に接続された一対の中間側面電極と、一対の端子電極と中間電極との間に設けられた一対の抵抗体と、耐メッキ液性を有する材料により形成されて、一対の抵抗体の上に設けられた一対の保護層とを有している。本発明のネットワークチップ抵抗器においては、特に、一対の端子電極及び2組の一対の側面電極の上と、中間電極及び一対の中間側面電極の上にそれぞれ形成された1層以上のメッキ層とを備えている。
【0007】
本発明のように、2組の一対の側面電極と一対の中間側面電極を設けると、長い絶縁基板の側面が片側3カ所で半田で固定されるため、マンハッタン現象が起こり難くなる。また絶縁基板の長手方向の両端に側面電極がなければ、チップ抵抗器を長手方向が直線状に並ぶように配置しても、隣り合うチップ抵抗器間の間隔を短くすることができ、実装密度を高くすることができる。
【0008】
一対の端子電極及び中間電極を、一対の厚膜端子電極及び厚膜中間電極により構成すると、印刷により各電極を形成することができる。また一対の側面電極及び一対の中間側面電極を、一対の薄膜側面電極及び一対の薄膜中間側面により構成すると、各側面電極の形成が容易である上、抵抗器の小型化が容易になる。
【0009】
また中間側面電極から延びて、絶縁基板の裏面上に延びる中間延長電極をさらに有しており、絶縁基板の裏面には、耐メッキ液性を有する材料により形成されて、少なくとも中間延長電極の中央部を覆うようにして絶縁基板の長手方向に延びる裏面側保護層が設けられていてもよい。このような構成を採用すると、1層以上のメッキ層が付着しやすくなる。しかも中間電極に対応する絶縁基板の角部に中間側面電極と中間延長電極の連続部が存在するため、付着したメッキ層が対応する絶縁基板の角部に対応する部分から剥がれるのを防止できる。なお中間延長電極が厚膜中間延長電極により構成されていれば、中間延長電極の形成が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)乃至(C)は、本実施の形態のネットワークチップ抵抗器の正面図、底面図及び平面図である。
図2図1(B)のII-II線断面である。
図3】(A)は図1(B)のIIIA-IIIA線断面図であり、(B)は図1(B)のIIIB-IIIB線断面図である。
図4】抵抗体R1及びR2を含む本実施の形態のネットワークチップ抵抗器の等価回路である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明のネットワークチップ抵抗器の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1(A)乃至(C)は、本実施の形態のネットワークチップ抵抗器の正面図、底面図及び平面図であり、図2図1(B)のII-II線断面であり、図3(A)は図1(B)のIIIA-IIIA線断面図であり、図3(B)は図1(B)のIIIB-IIIB線断面図である。なお図2及び図3(A)及び(B)においては、断面であることを示すハッチングを省略してある。また本実施の形態のネットワークチップ抵抗器は、抵抗体が実装回路基板側に向くように逆向きに実装されるため、図1(A),図2及び図3(A)(B)では絶縁基板の表面が下を向く姿勢で表示してある。
【0012】
これらの図において、1はセラミック製の細長い矩形状に形成された表面1Aと裏面1Bを有する絶縁基板である。絶縁基板1の表面1Aの上に、一対の端子電極に相当する一対の厚膜端子電極2,2が設けられ、また一対の厚膜端子電極2,2の間には中間電極に相当する厚膜中間電極3が設けられている。厚膜端子電極2,2及び厚膜中間電極3は、それぞれ、銀、パラジウムを含む導電ペーストによりスクリーン印刷をして電極パターンを形成したものを焼成して形成されている。一対の厚膜端子電極2,2と厚膜中間電極3との間には、一対の抵抗体R1及びR2が設けられている。抵抗体R1及びR2は、酸化ルテニウムを含む抵抗ペーストを材料として、絶縁基板1の表面にスクリーン印刷した印刷パターンを焼成することにより形成されている。本実施の形態では、抵抗体R1及びR2の抵抗値は同じである。
【0013】
図4は、抵抗体R1及びR2を含む本実施の形態のネットワークチップ抵抗器の等価回路である。
【0014】
また絶縁基板1は、絶縁基板1の長手方向と直交する幅方向に位置する一対の側面1C及び1D上に設けられ、一対の厚膜端子電極2,2と電気的に接続された2組の一対の側面電極に相当する一対の薄膜側面電極4,4及び5,5を有している[図3(A)参照]。また一対の側面1C及び1D上には、厚膜中間電極3と電気的に接続された一対の中間側面電極に相当する一対の薄膜中間側面電極6,6が形成されている[図3(B)参照]。薄膜側面電極4,4及び5,5及び一対の薄膜中間側面電極6,6は、それぞれスパッタリングにより形成されたものであり、本実施の形態では、チタン、ニッケル、アルミ、銅等の材料で形成されている。
【0015】
そして一対の抵抗体R1及びR2の上には、耐メッキ液性を有する材料により形成されて、一対の抵抗体R1及びR2を保護する一対の保護層7が形成されている。保護層7は、ガラス材料からなる第1の保護層7Aとエポキシ材料からなる第2の保護層7Bとから構成されている。
【0016】
本実施の形態のネットワークチップ抵抗器においては、特に、一対の厚膜端子電極2,2及び2組の一対の薄膜側面電極4,4及び5,5の上と、厚膜中間電極3及び一対の薄膜中間側面電極6,6の上にそれぞれ形成された1層以上のメッキ層8とを備えている。本実施の形態では、メッキ層8は、ニッケル(Ni)からなる第1のメッキ層8Aと錫(Sn)からなる第2のメッキ層8Bとから構成されている。メッキ層8はバレルメッキにより形成されている。
【0017】
また本実施の形態のネットワークチップ抵抗器においては、一対の薄膜中間側面電極6,6と連続するように、絶縁基板1の裏面1B上に延びる中間延長電極に相当する厚膜中間延長電極9をさらに有している。この厚膜中間延長電極9も、銀、パラジウムを含む導電ペーストによりスクリーン印刷をして電極パターンを形成したものを焼成して形成されている。
【0018】
さらに絶縁基板1の裏面1Bには、耐メッキ液性を有する材料により形成されて、少なくとも厚膜中間延長電極9の中央部を覆うようにして絶縁基板1の長手方向に延びるエポキシ樹脂等からなる裏面側保護層10が設けられている。このように厚膜中間延長電極9を設けると、1層以上のメッキ層8が付着しやすくなる。しかも絶縁基板1の角部に薄膜中間側面電極6,6と厚膜中間延長電極9の連続部が存在するため、付着したメッキ層8が対応する絶縁基板1の角部に対応する部分から剥がれるのを防止できる。
【0019】
また半田付けの際に、一対の薄膜中間側面電極6,6が剥がれることを防止できるという効果が得られる。また裏面側保護層10は、ネットワークチップ抵抗器を吸着ノズルで吸着して回路基板に実装する際に、吸着ノズルの吸着面を構成して、吸着ノズルの先端面の摩耗を防止している。
【0020】
本実施の形態のネットワークチップ抵抗器は、絶縁基板1に、一対の厚膜端子電極2,2と、両厚膜端子電極2,2間を橋絡する抵抗体R1及びR2と、抵抗体R1及びR2に接続する厚膜中間電極3と、薄膜中間側面電極6,6を、分圧回路用の電極として設けることにより、ワンチップで分圧回路を構成することができる。その結果、実装面積が小さくなって電子部品のさらなる小型化が可能となる。また、半田付けなどが削減でき、実装作業の効率化が図れる。
【0021】
本実施の形態では、厚膜中間延長電極9を設けたが、この厚膜中間延長電極9は設けなくてもよいし、途中で切断されていてもよいのは勿論である。また厚膜中間延長電極9を薄膜電極で覆ってもよいのは勿論である。
【0022】
本実施の形態のネットワークチップ抵抗器を回路基板に実装する際には、図2に示すように絶縁基板1の表面1Aを回路基板側に向け、2組の一対の薄膜側面電極4,4及び5,5及び一対の薄膜中間側面電極6,6の途中まで半田フィレットが形成されるように、厚膜端子電極2,2及び厚膜中間電極3の上にメッキ層8を介して半田が付けられる。このようにすると絶縁基板1の長手方向の両端面に、半田フィレットが形成されることがないので、半田付け時にチップ抵抗器が立つマンハッタン現象の発生を防止することができる。
【0023】
なお本実施の形態のネットワークチップ抵抗器の具体的基準寸法は、L=0.6mm、W=0.3mm、T=0.22mm、A=0.1mm。B=0.95mm、C=0.16mmである。また抵抗体R1及びR2の抵抗値は、10オーム~1メグオームである。
【0024】
上記実施の形態では、絶縁基板1としてセラミック基板を用いたが、その他の絶縁基板を用いてもよいのは勿論である。また上記実施の形態では、薄膜側面電極4,4及び5,5及び一対の薄膜中間側面電極6,6をスパッタリングにより形成したが、これらを蒸着等のその他の薄膜形成技術により形成してもよいのは勿論である。
【0025】
また上記実施の形態では、一対の端子電極及び中間電極は、一対の厚膜端子電極及び厚膜中間電極により構成しているが、これらの電極を薄膜電極により形成してもよい。また本実施の形態では、一対の側面電極及び一対の中間側面電極は、一対の薄膜側面電極及び一対の薄膜中間側面電極により構成しているが、これらの電極を厚膜により形成してもよいのは勿論である。さらに本実施の形態では中間延長電極を厚膜により形成しているが、この電極を薄膜により形成してもよいのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のように、2組の一対の側面電極と一対の中間側面電極を設けると、長い絶縁基板の側面が片側3カ所で半田で固定されるため、マンハッタン現象が起こり難くなる。また絶縁基板の長手方向の両端に側面電極がなければ、チップ抵抗器を長手方向が直線状に並ぶように配置しても、隣り合うチップ抵抗器間の間隔を短くすることができ、実装密度を高くすることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 絶縁基板
2 厚膜端子電極
3 厚膜中間電極
4 薄膜側面電極
5 薄膜側面電極
6 薄膜中間側面電極
7 保護層
8 メッキ層
9 厚膜中間延長電極
10 裏面側保護層
図1
図2
図3
図4