(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】脳シグナル伝達および遺伝子発現を制御するために神経活動を駆動するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
(21)【出願番号】P 2020571346
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(86)【国際出願番号】 US2019021701
(87)【国際公開番号】W WO2019173847
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-09
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505477235
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】504391260
【氏名又は名称】エモリー ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】ガーザ,クリスティ ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】シンガー,アナベル シー.
(72)【発明者】
【氏名】ウッド,レヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ポールソン,アビゲイル エル.
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0304584(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00―5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において脳活動を制御する装置であって、
前記対象に刺激を送達するように構成された刺激因子を含み、
前記刺激は、複数のパラメータにより決定され、前記パラメータは、1時間未満の対象曝露時間を備え、
前記刺激は、前記対象の脳において神経活動を誘導し、前記対象内の細胞活性の少なくとも1つの可溶性メディエーターの発現をモジュレートするように構成され、前記対象に免疫調節応答を誘起
し、
刺激が無作為の感覚フリッカー刺激を含み、細胞活性の前記可溶性メディエーターが、インターロイキン-10(IL-10)、ガンマインターフェロン誘導モノカイン(MIG)、増殖調節癌遺伝子-α(GRO-α)、LIX(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、Regulated upon Activation,Normal T cell Expressed,and Secreted(RANTES)、および/またはマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を含む、前記装置。
【請求項2】
細胞活性の前記少なくとも1つの可溶性メディエーターが、サイトカイン、ケモカイン、または増殖因子を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記対象曝露時間は約30分未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
対象において脳活動を制御する装置であって、
前記対象に刺激を送達するように構成された刺激因子を含み、
前記刺激は、複数のパラメータにより決定され、前記パラメータは、1時間未満の対象曝露時間を備え、
前記刺激は、前記対象の脳において神経活動を誘導し、前記対象内の細胞活性の少なくとも1つの可溶性メディエーターの発現をモジュレートするように構成され、前記対象に免疫調節応答を誘起し、
刺激が一定の感覚刺激を含み、細胞活性の前記可溶性メディエーターが、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-13(IL-13)、単球化学誘引タンパク質1(MCP-1)、インターロイキン-1α(IL-1α)、および/またはマクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)を含む、
前記装置。
【請求項5】
前記脳活動が、感覚皮質、海馬、内側側頭葉、前頭葉、皮質下構造、視床、視床下部、または脳幹の少なくとも1つにおいて誘導される、請求項1~
4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記刺激因子は、前記対象の脳において疾患、傷害、感染症、または正常な加齢の少なくとも1つを治療するように構成される、請求項1~
5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記対象の脳における前記疾患、傷害、感染症、または正常な加齢が、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、癲癇、統合失調症、自閉症、外傷性脳傷害(TBI)、双極性障害、卒中、または鬱病である、請求項
6に記載の装置。
【請求項8】
細胞内シグナル伝達に対する刺激効果が、少なくとも1つの最初期遺伝子の発現または活性をモジュレートする、請求項1~
7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記疾患は鬱病であり、前記刺激は、40Hzの感覚フリッカー刺激または無作為の感覚フリッカー刺激を含む、請求項
6に記載の装置。
【請求項10】
前記疾患は鬱病であり、前記刺激は、20Hzの感覚フリッカー刺激または無作為の感覚フリッカー刺激を含む、請求項
6に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月9日に出願された「SYSTEMS AND METHODS FOR DRIVING NEURAL ACTIVITY TO CONTROL BRAIN IMMUNOMODULATORY SIGNALING」という名称の米国仮特許出願第62/640,736号、および2018年3月27日に出願された「Sensory Stimulation to Entrain Brain Rhythms in Deep Brain Regions」という名称の米国仮特許出願第62/648,472号の利益を主張し、これらの出願の開示は参照することによりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
連邦政府資金による研究に関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所により授与された助成金第2T32 NS 007480-18号の下での政府の支援により為された。政府は本発明においてある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
脳炎症は、特に、神経変性疾患、外傷性脳傷害(TBI)、正常な加齢、ならびに統合失調症および自閉症のような発達障害を含む複数の疾患において不可欠な役割を果たすと考えられている。脳炎症ならびに遺伝子およびタンパク質発現を精密かつ非侵襲的にモジュレートする新たな方法の同定は、疾患を治療し、炎症および脳機能における免疫調節シグナル伝達を研究し、健康な加齢を促進する能力を根本的に変えるであろう。
【0004】
ガンマ活動(例えば、20~80Hzの神経活動)は、短い時間尺度で一緒に発火するように細胞を駆動することにより神経通信、シナプス可塑性、多くのニューロンにわたる情報のコーディング(神経コード)を促進することが長い間学説とされてきた。最近、ガンマ活動の驚くべき新たな役割が発見され、これは、ガンマ周波数活動の駆動はアルツハイマー病(AD)マウスモデルにおいて小膠細胞の貪食およびアミロイドベータ(Aβ)のクリアランスを動員するというものである1。重要なことに、アルツハイマーマウスモデルにおいて行動障害、細胞死および顕著なプラーク集積の前にガンマ減衰が見出され、ガンマ欠乏はAD病理(AD pathology)の不可欠の成分であることを示唆する1。この時までに、免疫細胞に対するガンマ活動の影響は分かっていなかった。ガンマ活動の駆動が脳の免疫細胞、小膠細胞を動員するという発見は、したがって、神経の電気的活動と脳の免疫系との間の繋がりを明らかにした。この先行研究は、しかしながら、ガンマ活動の駆動の結果としての免疫調節シグナル伝達の変化を示さなかった。追加的に、この先行研究は、細胞内レベルで起こる活動を示さなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、対象において脳活動を制御する方法であって、対象に刺激を送達することを含み、刺激が、対象の脳において神経活動を誘導し、対象内の細胞活性の少なくとも1つの可溶性メディエーター(例えば、サイトカイン、ケモカイン、および/または増殖因子など)の発現をモジュレートし、刺激が1時間未満にわたり対象に送達される、方法が本明細書に開示される。一態様では、刺激は、30、10、または5分未満にわたり対象に送達され得る。
【0006】
刺激が非侵襲的刺激(例えば、20Hzの感覚フリッカー刺激、40Hzの感覚フリッカー刺激、無作為の感覚フリッカー刺激、一定の感覚刺激、またはその任意の組合せなど)である、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法もまた本明細書に開示される。一態様では、非侵襲的刺激は視覚または聴覚刺激であり得る。
【0007】
一態様では、モジュレートするためのタンパク質を選択すること、および選択されたタンパク質をモジュレートする20Hzの感覚フリッカー刺激、40Hzの感覚フリッカー刺激、無作為の感覚フリッカー刺激、または一定の感覚刺激の1つを選択することをさらに含む、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法が本明細書に開示される。
【0008】
刺激が40Hzの感覚フリッカー刺激を含み、細胞活性の可溶性メディエーターが、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-12 p70(IL-12p70)、インターロイキン-12 p40(IL-12p40)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、LIF、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP-1β)、および/またはエオタキシンを含む、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法もまた本明細書に開示される。
【0009】
刺激が無作為の感覚フリッカー刺激を含み、細胞活性の可溶性メディエーターがインターロイキン-10(IL-10)を含む、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法もまた本明細書に開示される。
【0010】
刺激が一定の感覚刺激を含み、細胞活性の可溶性メディエーターが、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-9(IL-9)、および/またはマクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)を含む、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法もまた本明細書に開示される。
【0011】
刺激が40Hzの感覚フリッカー刺激および無作為の感覚フリッカー刺激を含み、細胞活性の可溶性メディエーターが、ガンマインターフェロン誘導モノカイン(monokine induced by gamma interferon;MIG)、増殖調節癌遺伝子-α(GRO-α)、LIX(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、Regulated upon Activation,Normal T cell Expressed,and Secreted(RANTES)、および/またはマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を含む、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法もまた本明細書に開示される。
【0012】
刺激が40Hzの感覚フリッカー刺激および一定の感覚刺激を含み、細胞活性の可溶性メディエーターが、インターロイキン-13(IL-13)、単球化学誘引タンパク質1(MCP-1)、および/またはインターロイキン-1α(IL-1α)を含む、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法もまた本明細書に開示される。
【0013】
刺激が20Hzの感覚フリッカー刺激を含み、細胞活性の可溶性メディエーターが、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-12 p70(IL-12p70)、インターロイキン-12 p40(IL-12p40)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、LIF、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP-1β)、エオタキシン、インターロイキン-10(IL-10)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-9(IL-9)、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)、ガンマインターフェロン誘導モノカイン(MIG)、増殖調節癌遺伝子-α(GRO-α)、LIX(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、Regulated upon Activation,Normal T cell Expressed,and Secreted(RANTES)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インターロイキン-13(IL-13)、単球化学誘引タンパク質1(MCP-1)、および/またはインターロイキン-1α(IL-1α)を含む、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法もまた本明細書に開示される。
【0014】
刺激が感覚フリッカー刺激である、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法もまた本明細書に開示される。
【0015】
感覚フリッカー刺激が視覚フリッカー刺激または聴覚フリッカー刺激の少なくとも1つである、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法もまた本明細書に開示される。
【0016】
感覚フリッカー刺激が組み合わせた視覚および聴覚フリッカー刺激である、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法もまた本明細書に開示される。
【0017】
刺激が経頭蓋電気刺激または経頭蓋磁気刺激である、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法もまた本明細書に開示される。
【0018】
脳活動が感覚皮質または脳深部構造(例えば、海馬、内側側頭葉、もしくは前頭葉の1つなど)の少なくとも1つにおいて誘導される、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法もまた本明細書に開示される。
【0019】
一態様では、刺激が対象の脳において神経活動(例えば、ガンマ神経活動および/または約20~80Hzの範囲内の神経活動など)を駆動する、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法が本明細書に開示される。
【0020】
一態様では、対象に送達された刺激を使用して対象の脳において疾患、傷害、状態、感染症、または正常な加齢の少なくとも1つを治療することをさらに含む、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法が本明細書に開示される。一態様では、疾患は、神経変性疾患(例えば、統合失調症、癲癇、前頭側頭型認知症、血管性認知症、双極性障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、自閉症、筋萎縮性側索硬化症、卒中、外傷性脳傷害、双極性障害、虚血再灌流傷害、多発性硬化症、および/または鬱病など)を含み得る。一態様では、傷害は、神経変性疾患の結果としての炎症に起因する。一態様では、方法は、対象内の免疫調節シグナル伝達または細胞生存シグナル伝達の少なくとも1つをモジュレートすることにより対象において状態(例えば、癲癇、統合失調症、自閉症、外傷性脳傷害(TBI)、双極性障害、卒中、または鬱病など)を治療することをさらに含むことが理解され、本明細書において想定される。
【0021】
対象に送達された刺激を使用して対象の脳の神経可塑性を誘導することを含む、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法もまた本明細書に開示される。一部の態様では、刺激の送達は、少なくとも1つのタンパク質のモジュレーションが一過性であるようなものである。
【0022】
一態様では、刺激が少なくとも1つの細胞内シグナル伝達経路(例えば、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路、活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)経路、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)経路、核因子(赤血球由来2)様2(Nrf2)経路、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼ(PI3K)/Akt経路、および/またはヤヌスキナーゼ(JAK)-シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)経路が挙げられるがそれに限定されない古典的キナーゼ経路など)を上方調節する、任意の先行する態様の脳活動を制御する方法が本明細書に開示される。一態様では、細胞内シグナル伝達に対する刺激効果は、少なくとも1つの最初期遺伝子(例えば、活性調節細胞骨格関連タンパク質(ARC)またはFos癌原遺伝子(C-Fos)など)の発現または活性をモジュレート(例えば、上方調節または減少)する。
【0023】
一態様では、対象において神経学的疾患、傷害、状態、または感染症(例えば、統合失調症、癲癇、前頭側頭型認知症、血管性認知症、双極性障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、自閉症、筋萎縮性側索硬化症、卒中、外傷性脳傷害、双極性障害、虚血再灌流傷害、多発性硬化症、および/または鬱病など)に起因する炎症性傷害を含む神経学的疾患、傷害、状態、または感染症を治療する方法であって、対象を刺激に曝露することを含み、刺激が、対象の脳において神経活動を誘導し、対象内の細胞活性の少なくとも1つの可溶性メディエーターの発現をモジュレートし、刺激が1時間未満にわたり対象に送達される、方法が本明細書に開示される。
【0024】
一態様では、刺激が、20Hzの感覚フリッカー刺激、40Hzの感覚フリッカー刺激、無作為の感覚フリッカー刺激、一定の感覚刺激、またはその任意の組合せを含む、任意の先行する態様の神経学的疾患、傷害、状態、または感染症を治療する方法が本明細書に開示される。例えば、一態様では、刺激が40Hzの感覚フリッカー刺激または無作為の感覚フリッカー刺激を含み、神経学的状態が、加齢、外傷性脳傷害、ストレス、統合失調症、および/または鬱病の結果としてもたらされる炎症性損傷を含む、任意の先行する態様の神経学的疾患、傷害、状態、または感染症を治療する方法が本明細書に開示される。一態様では、刺激が20Hzの感覚フリッカー刺激または無作為の感覚フリッカー刺激を含む、任意の先行する態様の神経学的疾患、傷害、状態、または感染症を治療する方法が本明細書に開示される。
【0025】
対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法であって、対象を40Hzの感覚フリッカー刺激、無作為の感覚フリッカー刺激、一定の感覚刺激、またはその組合せに曝露することを含む、方法もまた本明細書に開示される。一態様では、方法が、細胞を40Hzの感覚フリッカー刺激に曝露することを含み、細胞活性の可溶性メディエーターが、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-12p70、IL-12p40、IFN-γ、LIF、TNF-α、MIP-1β、エオタキシン、MIG、GRO-α、IL-13、MCP-1、IL-1α、LIX、G-CSF、IL-1β、IL-3、IL-6、IL-15、RANTES、および/またはM-CSFを含む、任意の先行する態様の対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法が本明細書に開示される。一態様では、方法が、細胞を無作為の感覚フリッカー刺激に曝露することを含み、細胞活性の可溶性メディエーターが、IL-10、MIG、GRO-α、LIX、G-CSF、IL-1β、IL-3、IL-6、IL-15、RANTES、および/またはM-CSFを含む、任意の先行する態様の対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法が本明細書に開示される。一態様では、方法が、細胞を一定の感覚刺激に曝露することを含み、細胞活性の可溶性メディエーターが、VEGF、IL-2、IL-5、IL-9、IL-13、MCP-1、IL-1α、および/またはMIP-1αを含む、任意の先行する態様の対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法が本明細書に開示される。一態様では、方法が、細胞を40Hzの感覚フリッカー刺激または無作為の感覚フリッカー刺激に曝露することを含み、細胞活性の可溶性メディエーターが、MIG、GRO-α、LIX、G-CSF、IL-1β、IL-3、IL-6、IL-15、RANTES、および/またはM-CSFを含む、任意の先行する態様の対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法が本明細書に開示される。一態様では、方法が、細胞を40Hzの感覚フリッカー刺激または一定の感覚刺激に曝露することを含み、細胞活性の可溶性メディエーターが、IL-13、MCP-1、および/またはIL-1αを含む、任意の先行する態様の対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法が本明細書に開示される。
【0026】
対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を抑制する方法であって、対象を定常光または20Hzの点滅光に曝露することを含む、方法もまた本明細書に開示される。
【0027】
対象において脳の免疫調節シグナル伝達を制御する別の例示的方法が本明細書に記載される。方法は、対象に刺激を送達することを含み得る。刺激は、対象の脳において神経活動を誘導し得る。追加的に、刺激は、対象内の免疫調節シグナル伝達または細胞生存シグナル伝達の少なくとも1つをモジュレートし得る。任意選択的に、刺激はまた、分化を調節する細胞内シグナル伝達をモジュレートし得る。
【0028】
一部の実施態様では、刺激は非侵襲的刺激である。代替的または追加的に、刺激は非薬理学的である。代替的または追加的に、刺激は、対象の脳において神経活動を駆動する。対象の脳における神経活動は、感覚皮質の少なくとも1つにおいて誘導され得る。代替的または追加的に、対象の脳における神経活動は、海馬、内側側頭葉、前頭葉、皮質下構造、視床、視床下部、または脳幹の少なくとも1つなどの脳深部構造において誘導され得る。代替的または追加的に、神経活動はガンマ神経活動であり得る。代替的または追加的に、対象の脳における神経活動は、約20~80Hzの範囲内の神経活動であり得る。任意選択的に、対象の脳における神経活動は約40Hzの神経活動である。
【0029】
代替的または追加的に、方法は、対象に送達された刺激を使用して対象の脳において疾患、傷害、感染症、または正常な加齢の少なくとも1つを治療することを含み得る。
【0030】
代替的または追加的に、方法は、対象に送達された刺激を使用して神経変性疾患を治療することを含み得る。神経変性疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および多発性硬化症(MS)が挙げられるがそれに限定されない。
【0031】
代替的または追加的に、方法は、対象内の免疫調節シグナル伝達または細胞生存シグナル伝達の少なくとも1つをモジュレートすることにより対象において状態を治療することを含み得る。状態は、癲癇、統合失調症、自閉症、外傷性脳傷害(TBI)、または正常な加齢を含み得るがそれに限定されない。
【0032】
代替的または追加的に、方法は、対象に送達された刺激を使用して対象の脳の神経可塑性を誘導することを含み得る。
【0033】
代替的または追加的に、刺激は、約1時間またはそれ未満のうちに対象内に免疫調節シグナル伝達における応答を誘起し得る。例えば、刺激は、約60分もしくはそれ未満、30分もしくはそれ未満、または5分もしくはそれ未満のうちに対象内に免疫調節シグナル伝達における応答を誘起し得る。
【0034】
代替的または追加的に、方法は、免疫調節シグナル伝達または細胞生存シグナル伝達のモジュレーションが一過性であるように刺激の送達を制御することを含み得る。
【0035】
一部の実施態様では、刺激は感覚フリッカー刺激であり得る。任意選択的に、感覚フリッカー刺激の頻度は約40ヘルツ(Hz)である。感覚フリッカー刺激は視覚フリッカー刺激であり得る。代替的または追加的に、感覚フリッカー刺激は聴覚フリッカー刺激であり得る。代替的または追加的に、感覚フリッカー刺激は組み合わせた視覚および聴覚フリッカー刺激であり得る。
【0036】
代替的に、一部の実施態様では、刺激は経頭蓋電気刺激または経頭蓋磁気刺激であり得る。
【0037】
代替的または追加的に、刺激は、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達経路を上方調節し得る。一部の実施態様では、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達経路は古典的キナーゼ経路である。一部の実施態様では、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達経路は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路、活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)経路、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)経路、核因子(赤血球由来2)様2(Nrf2)経路、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼ(PI3K)/Akt経路、またはヤヌスキナーゼ(JAK)-シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)経路である。
【0038】
代替的または追加的に、刺激は、少なくとも1つの免疫調節性サイトカイン、ケモカイン、または増殖因子の発現を変化させ得る。少なくとも1つの免疫調節性サイトカイン、ケモカイン、または増殖因子は、単球炎症性タンパク質2(MIP-2、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド2、CXCL2)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF、コロニー刺激因子3、CSF3)、regulated on activation,normal T cell expressed and secreted(RANTES、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5、CCL5)、またはインターフェロンガンマ(IFN-γ)を含み得るがそれに限定されない。
【0039】
代替的または追加的に、細胞内シグナル伝達に対する刺激効果は、少なくとも1つの最初期遺伝子の発現または活性をモジュレート(例えば、上方調節または減少)し得る。少なくとも1つの最初期遺伝子は、活性調節細胞骨格関連タンパク質(ARC)またはFos癌原遺伝子(C-Fos)を含み得るがそれに限定されない。
【0040】
以下の図面および詳細な説明の検討により他のシステム、方法、特徴および/または利点が当業者に明らかとなるまたは明らかとなり得る。全てのそのような追加のシステム、方法、特徴および/または利点がこの明細書に含まれ、添付の特許請求の範囲により保護されることが意図される。
【0041】
図面における成分は、必ずしも互いに対して縮尺通りでない。類似の参照数字はいくつかの図を通じて対応する部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1A~1Bは、本明細書に記載の実施態様による例示的な実験プロトコールを示す。
図1Aはマウスの試験群(上)および対照群(下)を示す。
図1Bは例示的な実験プロトコールを示す。
【
図2】
図2は、MAPKおよびNFκB経路を示す図表である。これらの経路は、細胞生存およびタンパク質合成を調節し、これには、サイトカインおよび増殖因子などの、炎症および細胞挙動を調節するタンパク質が含まれる。
【
図3-1】
図3A~3Dは、どのように感覚フリッカーが細胞内シグナル伝達を最初に刺激し、次に抑制して、サイトカインおよび増殖因子の発現に繋がるかを示す図表である。
図3Aは、フリッカーに5~10分間曝露したマウスについての結果を示す。この図表は、視覚皮質においてMAPK経路内のAtf-2およびJnk(Junキナーゼ)ならびにNFκBのリン酸化が増進されているが、海馬においてはそうではないことを示す。さらに、MAPK経路シグナル伝達は、
図3Bに示されるようにフリッカーの60分後に抑制された。全てのデータをz-スコア化している。各列は1匹のマウスを表し、各行は1つのアナライトを表す。
【
図3-2】
図3A~3Dは、どのように感覚フリッカーが細胞内シグナル伝達を最初に刺激し、次に抑制して、サイトカインおよび増殖因子の発現に繋がるかを示す図表である。さらに、MAPK経路シグナル伝達は、
図3Bに示されるようにフリッカーの60分後に抑制された。全てのデータをz-スコア化している。各列は1匹のマウスを表し、各行は1つのアナライトを表す。
図3Cおよび
図3Dは、フリッカーに30分間(
図3C)または60分間(
図3D)曝露したマウスについての結果を示し、該マウスは、特に、MIP-2、およびRANTESを含む、複数の免疫調節性サイトカインの発現の増加を示した。60分のフリッカー後に、MAPK細胞内シグナル伝達は減少し、サイトカイン発現は増加している。全てのデータをz-スコア化している。各列は1匹のマウスを表し、各行は1つのアナライトを表す。
【
図4】
図4は、細胞生存、小膠細胞動員ならびに学習および記憶のために必須の神経コードを含む、多様な機能を支配する遺伝子を誘導する一般的な細胞内経路(例えば、MAPKおよびNFκB経路)をガンマ振動がどのように誘発するかを示す図表である。
【
図5】
図5は、ガンマ視覚フリッカーが視覚皮質において小膠細胞を変換し、アミロイドベータを低減することを示す図表である。
図5は、40Hzで点滅する光に曝露したマウスを示し、この光は、光がオフおよびオンとされるにつれて視覚皮質中の神経スパイクを40ヘルツ(Hz)で増加および減少するように駆動した。
【
図6】
図6A~6Bは、感覚フリッカーが脳の海馬(HPC)において神経活動を同調させることを示す図表である。
図6Aは、アステリスクで指し示したスパイク率ピークを有するCA1における聴覚フリッカーの関数としてのスパイクの比率(
図6A、左側)、無刺激またはフリッカー刺激に対する周期的応答を有する記録部位のパーセント(
図6A、中央)、および刺激の間の周期的記録部位についてのモジュレーションの深さの分布(
図6A、右側、n=772)を示す。
図6Bは、アステリスクで指し示したスパイク率ピークを有するCA1における聴覚および光フリッカー刺激によるスパイクモジュレーション(
図6B、左側)、無刺激またはフリッカー刺激に対する周期的応答を有する記録部位のパーセント(
図6B、中央)、ならびに刺激の間の周期的記録部位についてのモジュレーションの深さの分布(
図6B、右側、n=928)を示す。記録部位は、周期的応答または非周期的応答のいずれかを有すると決定し、周期的記録部位は、スパイク率ピーク間の全ての間隔(左のプロット)が22.5~27.5msに入るものとして定義した。
****p<0.0001、ウィルコクソン順位和検定。4匹のマウスにおける9セッションからのCA1における12の記録深さから記録されたデータ。
【
図7-1】
図7A~7Cは、サイトカインタンパク質発現は、感覚的視覚フリッカーへのマウスの曝露後に上方調節されることを示す図表である。
図7Aは、60分の視覚フリッカーまたは暗所のいずれかに曝露したマウスからの視覚皮質において定量化した32のサイトカインのヒートマップである(データをz-スコア化している)。
【
図7-2】
図7A~7Cは、サイトカインタンパク質発現は、感覚的視覚フリッカーへのマウスの曝露後に上方調節されることを示す図表である。
図7Bは多変量判別部分的最小二乗回帰(D-PLSR)のプロットであり、これは、視覚フリッカー動物と暗所動物とを区別するサイトカインのアクシス、LV1を同定することができた。
図7Cは、フリッカー動物から暗所動物を区別するアクシス、LV1が、視覚フリッカーまたは暗所と相関するサイトカインのプロファイルからなることを示す。各バーが大きければ大きい程、相関は高くなる。
【
図8-1】
図8A~8Cは、感覚的視覚フリッカーへのマウスの曝露後の炎症促進性細胞内シグナル伝達の上方調節を示す図表である。
図8Aに示されるように、5分の視覚的感覚フリッカー後に、MAPKおよびNFκB経路内のシグナル伝達の増加が視覚皮質において観察されるが、海馬においてはそうではない。
図8Bは多変量判別部分的最小二乗回帰(D-PLSR)のプロットである。D-PLSRは、HPCから視覚皮質における5分のフリッカーを区別するLV1シグナル伝達アクシスを同定する。アクシスは、視覚フリッカーと相関したMAPKおよびNFκBシグナルからなるものであった。10分までに、LV1におけるシグナル伝達は低減して、HPCにおけるものと類似した。
【
図8-2】
図8A~8Cは、感覚的視覚フリッカーへのマウスの曝露後の炎症促進性細胞内シグナル伝達の上方調節を示す図表である。
図8Cは免疫組織化学(IHC)分析を示す。IHCは、ホスホ-NFκBはNeuN標識したニューロンに局在することを明らかにした(青:Dapi、緑:NeuN、赤:NFκB)。
【
図9】
図9Aおよび
図9Bは、感覚フリッカー刺激を使用して海馬において律動活動の特定の周波数を駆動する方法を示す。
図9Aにおいて、多くの細胞の神経記録を行いながら動物を異なる形態の感覚フリッカーに曝露して海馬において神経活動を駆動するための感覚フリッカー方法を最適化している。
図9Bにおいて、長期的な感覚フリッカーがADマウスにおいて小膠細胞、ニューロン間の機能的な接続、神経コード、および欠損をどのように変化させるが決定されることを示す。
【
図10】
図10A~10Dは、5XFADマウスにおけるガンマ欠損を示す。認知障害およびプラークの蓄積のエビデンスが得られる前の5XFADマウス(3か月齢)におけるSWRおよびガンマ活動の欠損。その研究ではスパイクは記録されなかったが(Gillespie et al. 2016)、これらの欠損は、APOE3マウスと比較してAPOE4マウスにおいてSWRの間のガンマにおいて見出される欠損に著しく類似している。
図10Aは、5XFADマウス(緑)およびWT同腹子(黒)についての時間当たりのSWRを示す。
図10Bは、SWRの間のガンマを示す平均SWR誘発スペクトログラムがWT(青色区画、右)におけるよりも5XFAD(黄色区画、左)において強いことを示し;(10C)、SWRの間のガンマパワー;(10D)、上:ガンマ位相の関数としてのSWRの間のスパイクの比率(平均+/-s.e.m.)。下:SWRの間のガンマスパイクモジュレーションの深さ。全ての統計的検定はウィルコクソン順位和検定であった。
【
図11】
図11A~11Cは、頭部固定の記録および行動方法を示す。
図11Aは、バーチャルリアリティー(VR)行動パラダイムにおいて、仮想環境を頭部固定マウスの周囲のスクリーンに投影し、マウスの運動に基づいてアップデートしながら、マウスが球状トレッドミル上を走ることを示す。頭部固定アプローチはハイスループットの神経記録を促進する。
図11Bは、単一シャンク32チャンネルシリコーンプローブ(左)を、各チャンネルからの記録されたスパイク(右)および異なる色で示される異なる単一細胞と共に示す。
図11Cは典型的なLFPトレースを示す。このアプローチを使用して、局所的な電場電位、同時に多くの単一細胞のスパイクを記録し(SWR、ガンマ、および他の振動を検出するため)、光遺伝学的刺激とこれらの記録を組み合わせた。
【
図12】
図12A~12Cは、単一ニューロンにおけるスパイク活動の電気生理学的記録を示す。
図12Aは、32チャンネルシリコーンプローブを使用して記録した1つのHPCからのスパイク(ドット)の典型的なクラスターを示す。この記録は、54の良好に単離されたクラスターをもたらした。5つの例示的なクラスターをそれぞれ異なる色で示す。
図12Bは、ここでは4つの例示的なクラスターについて示される経時的な発火率が60分の記録にわたり安定であることを示す。
図12Cは、推定上の介在ニューロンおよび錐体細胞は、それらのスパイク波形幅および平均発火率に基づいて区別され得ることを示す。推定上の錐体細胞はより広いスパイク幅およびより低い発火率を有し(プロットの右下のドット)、推定上の介在ニューロンは狭いスパイク幅および広範囲の発火率を有する(プロットの左のドット)。プロットは、推定上の介在ニューロンおよび錐体細胞の2つの明確に別個の分布を示す。推定上のPV介在ニューロンは迅速にスパイクし、この記録は、2つのみの推定上のPV介在ニューロンをもたらした(左上の2つのドット)。ニューロンの種類は光遺伝学的タグ付加を用いて確認される。
【
図13】
図13は、神経活動を同調させるための異なる形態の感覚フリッカーの試験を示す。聴覚フリッカー単独、視覚フリッカー単独、両方の刺激が同時にオンにされる聴覚および視覚フリッカー(同位相多手法的フリッカー)ならびに聴覚および光刺激がサイクルの半分だけオフセットされてオンにされる聴覚および視覚フリッカー(オフセット位相多手法的フリッカー)に動物を曝露する。
【
図14】
図14は、感覚フリッカーの異なる周波数の効果を示す。予備研究において、HPCにおけるスパイクは、無フリッカー(一番右)または無作為フリッカー対照と比較して20Hz(一番左)、40Hz(中央左)、および80Hz(中央右)での組み合わせた聴覚および視覚フリッカーによりモジュレートされる。ヒストグラムは、アステリスクでピークを指し示した、オンおよびオフとされた光および音の関数としてスパイクの比率を示す(上)。全ての研究において、動物を10、20、40、60、80、100Hzのフリッカーの10sブロックに曝露する。
【
図15】
図15A~15DはVR学習パラダイムを示す。報酬を受け取るために動物がトラック中の正しい位置、または報酬ゾーンにおいてリッキングしなければならない、新たなVR行動パラダイムが開発される(15Aおよび15B)。動物は、訓練にわたり報酬を求めて正しい場所を学習し(報酬ゾーンにおいてより多くリッキングを行う)(15C)、タスクを解決するために視覚キューを使用する(視覚キューなしで成績はより悪い)(15D)ことが見出される。
図15Aは、白矢印で印をした報酬ゾーンを有するトラックを示す。
図15Bは、訓練の1日目(左)および6日目(右)における経時的な動物の位置を示し、動物は6日目に時間当たりより多くの試行を行い、報酬ゾーンにおいてより頻繁にリッキングを行ったことを示す。
図15Cは、7日の訓練にわたる報酬ゾーンにおけるリッキングのパーセントを示す(n=5のマウス)。
図15Dは、視覚キューあり(上)およびなし(下)のトラックを示す(左)。報酬ゾーンにおけるリッキングのパーセントは、視覚キューなしよりありのトラックにおいて有意に高かった(右、n=5のマウス、p<0.05)。エラーバー、平均+/-s.e.m.。
【
図16】
図16は、遺伝子発現におけるフリッカー誘導性変化の機序を示す。視覚皮質における遺伝子発現パターンの誘発における異なるパターンの刺激の1つの効果。アルツハイマー病に関連する、海馬などの脳深部領域における遺伝子発現変化を駆動する2つの同時的な聴覚/視覚フリッカー。
【
図17-1】
図17Aおよび
図17Bは、視覚フリッカーが視覚皮質においてサイトカイン発現を刺激することを示す。
図17Aは、1時間の感覚フリッカー後の視覚皮質における32のサイトカインのタンパク質発現を示す(z-スコア化)。
【
図17-2】
図17Aおよび
図17Bは、視覚フリッカーが視覚皮質においてサイトカイン発現を刺激することを示す。
図17Bは、40Hzのフリッカーはある特定のサイトカイン(例えば、MIG)の発現を促進し、無作為のフリッカーはIL-10の発現を促進し、定常光はVEGFを促進することを示す(17A中の矢印)。
【
図18】
図18は、刺激対遺伝子発現マップ(StGマップ)の概念化を示す。このマップは、異なる機能的な遺伝子セット(「モジュール」)の活性化を促進する刺激レジメンを同定する。
【
図19】
図19は、RNAseqは経路および細胞種特異的遺伝子発現を同定することを示す。
図19は、GSEAは1時間の40Hzのフリッカーの後に(492のうちの)31の有意に濃縮された遺伝子セットを同定したことを示す。
【
図20-1】MAPKおよびNFκBホスホシグナル伝達は、感覚的視覚フリッカーへのマウスの曝露後に上方調節される。
図20Aは、ニューロンにおけるガンマ活動は、一緒になってシナプス接続および小膠細胞変換を調節するMAPKおよびNFκBシグナル伝達を刺激することが示されることを示す。
図20Bは、Luminexマルチプレックスイムノアッセイは、無作為刺激または暗所に保ったマウスと比較して5分の40Hzのフリッカー後に視覚皮質におけるMAPKおよびNFκB経路内のシグナル伝達の増加を明らかにしたことを示す(データをz-スコア化している)。
図20Cは、40Hzのフリッカーは、血液脳関門浸透性小分子(100mg/kgのSL327)を使用してMekの上流阻害により抑制されたErkリン酸化を有意に増加させたことを示す(事後補正を伴う一元配置分散分析)。
【
図20-2】MAPKおよびNFκBホスホシグナル伝達は、感覚的視覚フリッカーへのマウスの曝露後に上方調節される。
図20Dは、IHCは、ホスホ-NFκBは5分の40Hzのフリッカー後にNeuN標識したニューロンに局在したことを示したことを示す(青:Dapi、緑:NeuN、赤:NFκB)。
【
図21】
図21は、40Hzの感覚的視覚フリッカーは、小分子MAPKまたはNFκB阻害剤により抑制されるサイトカインタンパク質発現を刺激することを示す。
図21は、Luminex分析を使用して、60分の視覚的な40Hzのフリッカー、無作為のフリッカー、20Hzのフリッカー、または定常光のいずれかに曝露したマウスからの視覚皮質における32のサイトカインを定量化したことを示す。棒グラフは、選択された有意な選択されたサイトカインを示す。
【
図22】
図22は、IHCは、1時間の40Hzの感覚的視覚フリッカー後にM-CSFはNeuNと共標識されることを示す。青:DAPI、緑:NeuN、赤:M-CSF。
【
図23-1】
図23A~23Rは、40Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートすることを示す。
図23Aは、100ms毎のラップで示した多くの10秒刺激ブロックを用いた40Hzの聴覚刺激に対する例示的な推定上の単一ユニットスパイク応答を示す(左)。4つの連続するパルスに対するスパイク応答の例(右)。
図23Bは、ACにおける40Hzの聴覚(青)および無作為刺激(橙色)の間のAに示されるユニットの発火率モジュレーションを示す。青チック(Blue ticks)、聴覚パルス;水色バー、無作為に分布したパルス。
【
図23-2】
図23A~23Rは、40Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートすることを示す。
図23Cは、全ての単一ユニットについての無(灰色、無刺激と標識)、無作為(橙色、無作為と標識)、および40Hzの聴覚刺激(暗青色、40Hz刺激と標識)条件についてのACにおける発火率のピーク間の間隔を示す(5匹のマウスにおける9つの記録セッションにおいてn=292ユニット。刺激内間隔の周囲の間隔の割合:P=0 40Hz対無刺激、P=0 40Hz対無作為;2つの割合についてのz検定。報告する全ての統計について、結果は、他に記載されなければボンフェローニ補正を使用する多重比較について調整後に有意である)。
図23Dは、40Hzの聴覚刺激の間の刺激開始に対する発火率モジュレーションの例示的な極性プロット(左、0において刺激開始)、40Hzの聴覚、無作為、および無刺激の間の単一ユニット発火率モジュレーションのベクトル強度(中央、
****P<0.00005 40Hz対無刺激、40Hz対無作為;コルモゴロフ-スミルノフ検定;9つのユニットは0.25より大きい40Hz刺激VS値を有した;6つのユニットは0.25より大きい無作為刺激VS値を有した)、ならびに単一ユニット発火率モジュレーションのレイリー統計値(右、
****P<0.00005 40Hz対無刺激、40Hz対無作為;コルモゴロフ-スミルノフ検定;40のユニットは30より大きい40Hz刺激RS値を有した;2つのユニットは30より大きい無作為刺激RS値を有した)を示す。
図23Eは、20Hz、40Hz、および80Hzの聴覚刺激についてのACにおける単一ユニットからのスパイク応答を有するパルスの比率を示す。
図23Fは、ACにおける刺激条件間の平均発火率を示す。
【
図23-3】
図23A~23Rは、40Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートすることを示す。
図23Gは、CA1についての(23A)と同じものを示す。
図23Hは、CA1についての(23B)と同じものを示す。
図23Iは、CA1についての(23C)と同じものを示す(5匹のマウスにおける10の記録セッションにおいてn=338つのユニット。P=0 40Hz対無刺激、P=0 40Hz対無作為;2つの割合についてのz検定)。
【
図23-4】
図23A~23Rは、40Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートすることを示す。
図23Jは、CA1についての(23D)と同じものを示す(中央、
****P<0.00005 40Hz対無刺激、40Hz対無作為;コルモゴロフ-スミルノフ検定;11のユニットおよび2つのユニットは40Hzまたは無作為の間にVS値>0.25をそれぞれ有した;右、
****P<0.00005 40Hz対無刺激、40Hz対無作為;コルモゴロフ-スミルノフ検定;7つのユニットは40Hz刺激RS値>30を有した)。
図23Kは、CA1についての(23E)と同じものを示す。
図23Lは、CA1についての(23F)と同じものを示す。
図23Mは、mPFCについての(23A)と同じものを示す。
【
図23-5】
図23A~23Rは、40Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートすることを示す。
図23Nは、mPFCについての(23B)と同じものを示す。
図23Oは、mPFCについての(23C)と同じものを示す(4匹のマウスにおける7つの記録セッションにおいてn=115ユニット。P=0 40Hz対無刺激、P=0 40Hz対無作為;2つの割合についてのz検定)。
図23Pは、mPFCについての(23D)と同じものを示す(中央、
****P<0.00005 40Hz対無刺激、40Hz対無作為;コルモゴロフ-スミルノフ検定;右、
****P<0.00005 40Hz対無刺激、40Hz対無作為;コルモゴロフ-スミルノフ検定;2つのユニットは40Hz刺激RS値>30を有した)。
【
図23-6】
図23A~23Rは、40Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートすることを示す。
図23Qは、mPFCについての(23E)と同じものを示す。
図23Rは、mPFCについての(23F)と同じものを示す。
【
図24-1】
図24A~24Uは、20Hzおよび80Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいて活動をモジュレートすることを示す。
図24Aは、聴覚皮質を検出するために使用した聴覚マッピング音に対する平均LFP応答を示す(左)。青色領域は、50msのマッピング音が鳴らされた場合を指し示す。クラスター化された推定上の単一ユニットの例(右)。
図24Bは、ACにおける全ての記録日の、記録日にわたる平均および標準偏差と共に40Hzの聴覚フリッカー刺激および無刺激期間に対するパワースペクトル密度(PSD)応答(左)、聴覚フリッカーに対するパワースペクトルLFP応答(記録深さ当たりの40Hzの聴覚フリッカーの間の最大の40Hzピークを有する記録部位を示す;方法を参照)(右)を示す。
【
図24-2】
図24A~24Uは、20Hzおよび80Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいて活動をモジュレートすることを示す。
図24Cは、20Hzの聴覚フリッカー刺激(左、緑)および80Hzの聴覚フリッカー(右、紫)に応答した推定上の単一ユニットの発火率モジュレーションを示す。
図24Dは、0Hzの周囲のAC中心における単一ユニットの複数の刺激条件の間の平均発火率の差異を示す(P>0.01 20Hz-40Hz、5つの比較について調整後にn.s.;
****P<0.00002 40Hz-無刺激;その他全てn.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定。全ての統計的検定において、他に記載されなければボンフェローニ補正を使用する多重比較について調整後に有意性が残存する)。
【
図24-3】
図24A~24Uは、20Hzおよび80Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいて活動をモジュレートすることを示す。
図24Eは、無作為、20Hz、40Hz、および80Hzの聴覚刺激に対するACにおける全ての分離した単一ユニットの発火率応答を示す。4つの連続する刺激サイクルに対するZ-スコア化した応答を示す。解析した4サイクルにおける平均刺激位相選好性によりユニットを順序付ける。白破線は聴覚パルスのタイミングを指し示す。
図24Fは、無刺激条件に対する20Hzおよび80Hzの聴覚刺激のベクトル強度分布(左、
****P<0.00005 20Hz対無刺激、80Hz対無刺激;コルモゴロフ-スミルノフ検定;11のユニットは0.25より大きい20Hz刺激VS値を有した;6つのユニットは0.25より大きい80Hz刺激VS値を有した)ならびに無刺激に対する20Hzおよび80Hzの聴覚刺激のレイリー統計分布(右、
****P<0.00005 20Hz対無刺激、80Hz対無刺激;コルモゴロフ-スミルノフ検定;74のユニットは30より大きい20Hz刺激RS値を有した;41のユニットは30より大きい80Hz刺激RS値を有した)を示す。
図24Gは、聴覚刺激の全ての周波数の間のベクトル強度値における細胞内差異の分布(distribution of within cell differences)(左、
****P<0.000025 20Hz-80Hz、20Hz-40Hz、40Hz-無作為;40Hz-80Hz n.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定)を示す。聴覚刺激の全ての周波数の間のレイリー統計値における細胞内差異(右、
****P<0.000025 20Hz-80Hz、20Hz-40Hz、40Hz-無作為;40Hz-80Hz n.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定)。
【
図24-4】
図24A~24Uは、20Hzおよび80Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいて活動をモジュレートすることを示す。
図24Hは、CA1を検出するために使用した、海馬の特徴であるシータリズムの例を示す。
図24Iは、CA1についての(24B)と同じものを示す。
図24Jは、CA1についての(24C)と同じものを示す。
【
図24-5】
図24A~24Uは、20Hzおよび80Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいて活動をモジュレートすることを示す。
図24Kは、CA1についての(24D)と同じものを示す(P>0.01 40Hz-無刺激、5つの比較について調整後にn.s.;その他全てn.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定)。
図24Lは、CA1についての(24E)と同じものを示す。
【
図24-6】
図24A~24Uは、20Hzおよび80Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいて活動をモジュレートすることを示す。
図24Mは、CA1についての(24F)と同じものを示す(左、
****P<0.00005、20Hz対無刺激、80Hz対無刺激;コルモゴロフ-スミルノフ検定;12のユニットは0.25より大きい20Hz刺激VS値を有した;10のユニットは0.25より大きい80Hz刺激VS値を有した;右、
****P<0.00005、20Hz対無刺激、80Hz対無刺激;コルモゴロフ-スミルノフ検定;4つのユニットは30より大きい20Hz刺激RS値を有した;5つのユニットは30より大きい80Hz刺激RS値を有した)。
図24Nは、CA1についての(24G)と同じものを示す(左、
**P<0.0025 20Hz-80Hz;
***P<0.00025 20Hz-40Hz;
****P<0.000025 40Hz-無作為、40Hz-80Hz n.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定;右、P>0.0125 20Hz-80Hz、4つの比較について調整後にn.s.;
**P<0.0025 20Hz-40Hz、
****P<0.000025 40Hz-無作為、40Hz-80Hz n.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定)。
図24Oは、mPFCにおけるプローブトレースおよび記録位置を示す組織画像を示す。赤矢印は記録位置を指し示す。
【
図24-7】
図24A~24Uは、20Hzおよび80Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいて活動をモジュレートすることを示す。
図24Pは、mPFCについての(24B)と同じものを示す。
図24Qは、mPFCについての(24C)と同じものを示す。
図24Rは、mPFCについての(24D)と同じものを示す(右、n.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定)。
【
図24-8】
図24A~24Uは、20Hzおよび80Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいて活動をモジュレートすることを示す。
図24Sは、mPFCについての(24E)と同じものを示す。
図24Tは、mPFCについての(24F)と同じものを示す(左、
****P<0.00005 20Hz対無刺激、80Hz対無刺激;コルモゴロフ-スミルノフ検定;4つのユニットは0.25より大きい20Hz刺激VS値を有した;右、
****P<0.00005 20Hz対無刺激、80Hz対無刺激;コルモゴロフ-スミルノフ検定;5つのユニットは30より大きい20Hz刺激RS値を有した;3つのユニットは30より大きい80Hz刺激RS値を有した)。
図24Uは、mPFCについての(24G)と同じものを示す(左、
****P<0.000025 40Hz-無作為、その他全てn.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定;右、
****P<0.000025 40Hz-無作為、その他全てn.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定)。
【
図25】
図25A~25Cは、組み合わせた聴覚および視覚GENUSは小膠細胞によるクラスタリング表現型応答を誘導することを示す。
図25A 40Hzの聴覚-視覚刺激の間の単一ユニットの発火率モジュレーション(左)。40Hz A+V刺激、無作為A+V刺激、および無刺激期間に対する応答のベクトル強度(右、
****P<0.00005 40Hz対無刺激、40Hz対無作為;コルモゴロフ-スミルノフ検定;9つのユニットは0.25より大きい40Hz刺激VS値を有した;3つのユニットは0.25より大きい無作為刺激VS値を有した。パネルA~Cの全ての統計的検定について、結果は、他に記載されなければボンフェローニ補正を使用する多重比較について調整後に有意である)。
図25Bは、CA1についてのAと同じものを示す(右、
****P<0.00005 40Hz対無刺激、40Hz対無作為;コルモゴロフ-スミルノフ検定;8つのユニットおよび3つのユニットは40Hzまたは無作為刺激についてVS値>0.25をそれぞれ有した)。
図25Cは、mPFCについてのAと同じものを示す(右、
****P<0.00005 40Hz対無刺激、40Hz対無作為;コルモゴロフ-スミルノフ検定;5つのユニットは40Hz刺激VS値>0.25を有した)。
【
図26-1】40Hzの組み合わせた聴覚および視覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートする。
図26Aは、ACにおける全ての記録日の、記録日にわたる平均および標準偏差と共に40Hzの聴覚-視覚フリッカー刺激および無刺激期間に対するパワースペクトル密度(PSD)応答(左)、聴覚-視覚フリッカー刺激に対するパワースペクトルLFP応答(記録深さ当たりの40Hzの聴覚-視覚フリッカーの間の最大の40Hzピークを有する記録部位を示す;方法)(右)を示す。
図26Bは、聴覚-視覚無作為刺激に対する
図6Aに示される推定上の単一ユニットの発火率モジュレーション、40Hzの聴覚-視覚刺激に対する単一ユニット応答のレイリー統計分布を示す(右、
****P<0.00005 40Hz対無刺激、40Hz対無作為;コルモゴロフ-スミルノフ検定;40のユニットは30より大きい45Hz刺激RS値を有した;5つのユニットは30より大きい無作為刺激RS値を有した。全ての統計的検定において、他に記載されなければボンフェローニ補正を使用する多重比較について調整後に有意性が残存する)。
図26Cは、20Hzの聴覚-視覚フリッカー刺激(左、緑)および80Hzの聴覚-視覚フリッカー刺激(右、紫)に応答した推定上の単一ユニットの発火率モジュレーションを示す。
【
図26-2】40Hzの組み合わせた聴覚および視覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートする。
図26Dは、0Hzの周囲のAC中心における複数の刺激条件の間の単一ユニットの平均発火率の差異を示す(P>0.01 40Hz-無刺激、5つの比較について調整後にn.s.;その他全てn.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定)。
図26Eは、無作為、20Hz、40Hz、および80Hzの聴覚-視覚刺激に対するACにおける分離した各単一ユニットの発火率応答を示す。4つの連続する刺激サイクルに対するZ-スコア化した応答を示す。解析した4サイクルにおける平均刺激位相選好性によりユニットを順序付ける。白破線は聴覚パルスのタイミングを指し示す。
【
図26-3】40Hzの組み合わせた聴覚および視覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートする。
図26Fは、無刺激条件に対する20Hzおよび80Hzの聴覚-視覚刺激のベクトル強度分布(左、
****P<0.00005 20Hz対無刺激、80Hz対無刺激;コルモゴロフ-スミルノフ検定;12のユニットは0.25より大きい20Hz刺激VS値を有した;10のユニットは0.25より大きい80Hz刺激VS値を有した)、ならびに無刺激に対する20Hzおよび80Hzの聴覚-視覚刺激のレイリー統計分布(右、
****P<0.00005 20Hz対無刺激、80Hz対無刺激;コルモゴロフ-スミルノフ検定;86のユニットは30より大きい20Hz刺激RS値を有した;35のユニットは30より大きい80Hz刺激RS値を有した)を示す。
図26Gは、聴覚刺激の全ての周波数の間のベクトル強度値における細胞内差異の分布(左、
***P<0.00025 20Hz-40Hz;
****P<0.000025 20Hz-80Hz、40Hz-無作為;40Hz-80Hz n.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定)を示す。聴覚刺激の全ての周波数の間のレイリー統計値における細胞内差異(右、
***P<0.00025 20Hz-80Hz;
****P<0.000025 20Hz-40Hz、40Hz-無作為;40Hz-80Hz n.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定)。
図26Hは、CA1についての(26A)と同じものを示す。
【
図26-4】40Hzの組み合わせた聴覚および視覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートする。
図26Iは、CA1についての26Bと同じものを示す(右、
****P<0.00005 40Hz対無刺激、40Hz対無作為;コルモゴロフ-スミルノフ検定;8つのユニットは30より大きい40Hz刺激RS値を有した)。
図26Jは、CA1についての26Cと同じものを示す。
図26Kは、CA1についての26Dと同じものを示す(P>0.01 40Hz-無刺激、5つの比較について調整後にn.s.;その他全てn.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定)。
【
図26-5】40Hzの組み合わせた聴覚および視覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートする。
図26Lは、CA1についての(26E)と同じものを示す。
図26Mは、CA1についての(26F)と同じものを示す(左、
****P<0.0005 20Hz対無刺激、80Hz対無刺激;コルモゴロフ-スミルノフ検定;16のユニットは0.25より大きい20Hz刺激VS値を有した;7つのユニットは0.25より大きい80Hz刺激VS値を有した;右、
****P<0.0005 20Hz対無刺激、80Hz対無刺激;コルモゴロフ-スミルノフ検定;21のユニットは30より大きい20Hz刺激RS値を有した;3つのユニットは30より大きい80Hz刺激RS値を有した)。
図26Nは、CA1についての(26G)と同じものを示す(左、
***P<0.00025 20Hz-40Hz;
****P<0.00025 20Hz-80Hz、40Hz-無作為;40Hz-80Hz n.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定;右、
**P<0.0025 20Hz-40Hz;
****P<0.000025 40Hz-無作為;その他全てn.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定)。
【
図26-6】40Hzの組み合わせた聴覚および視覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートする。
図26Oは、mPFCについての(26A)と同じものを示す。
図26Pは、mPFCについての(26B)と同じものを示す(右、
****P<0.00005 40Hz対無刺激、40Hz対無作為;コルモゴロフ-スミルノフ検定;1つのユニットは30より大きい40Hz刺激RS値を有した)。
図26Qは、mPFCについての(26C)と同じものを示す。
【
図26-7】40Hzの組み合わせた聴覚および視覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートする。
図26Rは、mPFCについての(26D)と同じものを示す(P>0.01 40Hz-無刺激、5つの比較について調整後にn.s.;その他全てn.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定)。
図26Sは、mPFCについての(26E)と同じものを示す。
【
図26-8】40Hzの組み合わせた聴覚および視覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートする。
図26Tは、mPFCについての(26F)と同じものを示す(左、
****P<0.00005 20Hz対無刺激、80Hz対無刺激;コルモゴロフ-スミルノフ検定;4つのユニットは0.25より大きい20Hz刺激VS値を有した;1つのユニットは0.25より大きい80Hz刺激VS値を有した;右、
****P<0.00005 20Hz対無刺激、80Hz対無刺激;コルモゴロフ-スミルノフ検定;5つのユニットは30より大きい20Hz刺激RS値を有した;1つのユニットは30より大きい80Hz刺激RS値を有した)。
図26Uは、mPFCについての(26G)と同じものを示す(左、
****P<0.000025 40Hz-無作為;その他全てn.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定;右、
****P<0.000025 40Hz-無作為;その他全てn.s.;0中央値についてのウィルコクソン符号順位検定)。
【
図27】
図27は、いずれのサイトカインがいずれの条件において上昇しているかを示すベン図を示し、これは異なる刺激周波数が特定のサイトカインまたはサイトカイン群をどのように増加または減少させるかを示す。ベン図の特定の部分に列記されるサイトカインは、それらのサイトカインがそれらの条件において上昇していることを意味する。このようなベン図(またはリン酸化タンパク質への刺激もしくは遺伝子マップへの刺激)を使用して、いずれのサイトカインを増加させることが最も望ましいかに基づいて療法が特定の状態または患者に標的化される。
【発明を実施するための形態】
【0043】
他に定義されなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料が本開示の実施または試験において使用され得る。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」は、文脈が明確に他に規定しなければ、複数の指示対象を含む。
【0044】
本明細書において使用される「含む」(comprising)という用語およびその変形形態は、「含む」(including)という用語およびその変形形態と同義に使用され、開放的な、非限定的な用語である。
【0045】
本明細書において使用される「任意選択的な」または「任意選択的に」という用語は、その後に記載される特徴、事象または状況が起こっても起こらなくてもよいこと、ならびにその記載が、前記特徴、事象または状況が起こる事例およびそれが起こらない事例を含むことを意味する。
【0046】
範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして本明細書において表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。同様に、先行語「約」の使用により、値がおおよそのものとして表現される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。各範囲の端点が他の端点に関して、および他の端点から独立しての両方において有意であることがさらに理解される。多数の値が本明細書に開示されること、および各値は、値それ自体に加えて「約」その特定の値としても本明細書において開示されることもまた理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。当業者により適切に理解されるように、値が開示される場合、「より小さいまたは等しい」値、「より大きいまたは等しい値」および値の間の可能な範囲もまた開示されることもまた理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「10より小さいまたは10に等しい」ものの他に、「10より大きいまたは10に等しい」ものもまた開示される。本出願の全体を通じて、データが多数の異なるフォーマットにおいて提供されること、ならびにこのデータは端点および開始点、およびデータ点の任意の組合せについての範囲を表すこともまた理解される。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点15が開示される場合、10および15より大きい、10および15より大きいまたはそれに等しい、10および15より小さい、10および15より小さいまたはそれに等しい、ならびに10および15に等しいものの他に、10~15が開示されると考えられることが理解される。2つの特定の単位の間の各単位もまた開示されることもまた理解される。例えば、10および15が開示される場合、11、12、13、および14もまた開示される。
【0047】
「対象」という用語は、霊長動物(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラットおよびマウスなどが挙げられるがそれに限定されない哺乳動物などの動物を含むものとして本明細書において定義される。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0048】
「増加」は、より小さい遺伝子発現、タンパク質発現、症状の量、疾患、組成物、状態、または活性を結果としてもたらす任意の変化を指すことができる。物質はまた、物質ありでの遺伝子産物の遺伝子出力が物質なしでの遺伝子産物の出力と比べてより少ない場合に、遺伝子の遺伝子出力を増加させると理解される。また、例えば、増加は、障害の症状が以前に観察されたよりも小さいような症状の変化であり得る。増加は、統計的に有意な量での状態、症状、活性、組成物における任意の個々の、中央値の、または平均の減少であり得る。そのため、減少は、増加が統計的に有意である限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の増加であり得る。
【0049】
「減少」は、より小さい遺伝子発現、タンパク質発現、症状の量、疾患、組成物、状態、または活性を結果としてもたらす任意の変化を指すことができる。物質はまた、物質ありでの遺伝子産物の遺伝子出力が物質なしでの遺伝子産物の出力と比べてより少ない場合に、遺伝子の遺伝子出力を減少させると理解される。また、例えば、減少は、障害の症状が以前に観察されたよりも小さいような症状の変化であり得る。減少は、統計的に有意な量での状態、症状、活性、組成物における任意の個々の、中央値の、または平均の減少であり得る。そのため、減少は、減少が統計的に有意である限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100%の減少であり得る。
【0050】
「阻害する」(inhibit)、「阻害する」(inhibiting)、および「阻害」は、活性、応答、状態、疾患、または他の生物学的パラメーターを減少させることを意味する。これは、活性、応答、状態、または疾患の完全な消失を含み得るがそれに限定されない。これはまた、例えば、天然または対照レベルと比較して活性、応答、状態、または疾患の10%の低減を含んでもよい。そのため、低減は、天然または対照レベルと比較して10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、またはその間の任意の量の低減であり得る。
【0051】
本明細書において使用される「予防する」(prevent)、「予防する」(preventing)、「予防」という用語、およびその文法的変形形態は、部分的もしくは完全に疾患および/もしくはその付随的症状の1つもしくはより多くの発病もしくは再発を遅延させもしくは不可能にしまたは対象が疾患を獲得もしくは再獲得することを妨げまたは疾患もしくはその付随的症状の1つもしくはより多くを獲得もしくは再獲得する対象のリスクを低減する方法を指す。
【0052】
本明細書および後続する特許請求の範囲においていくつかの用語が言及され、該用語は以下の意味を有するものとして定義される。
【0053】
本出願の全体を通じて、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示は全体的に、本出願が関係する技術分野の現状をより充分に記載するために参照することにより本出願中に組み込まれる。開示される参考文献はまた、参考文献が依拠される文において議論される該文献中に含有される材料について参照することにより個々的および具体的に本明細書に組み込まれる。
【0054】
上記のように、ガンマ周波数活動を駆動することは、アルツハイマー病(AD)マウスモデルにおいて小膠細胞の貪食およびAβのクリアランスを動員する。また、ガンマ欠損はAD病理の不可欠の成分であり得る。これらの発見は、ガンマ振動は神経活動および神経免疫機能の促進および同調において重要な二重の役割を果たすことを指し示す。しかしながら、ガンマ活動が神経コーディングおよび神経免疫においてこの二重の役割を果たし得る機序は以前に完全には分かっていなかった。追加的に、先行研究は、ガンマ周波数活動の駆動の結果としての免疫調節シグナル伝達の変化を示さなかった。本明細書に記載されるように、ガンマ振動が免疫活性およびシナプス可塑性の両方を調節する分子メカニズムが同定された。ガンマ活動はADのヒトおよび動物モデルの両方において機能不全であるので、ガンマ活動の役割および機序を理解する満たされていない必要性が存在する。1~4
【0055】
以下に記載の実施例では、ガンマ活動は、動物(例えば、マウス)に40Hzの感覚フリッカー(急速なストロボ光)刺激を与えることにより非侵襲的に駆動され得る。1 感覚フリッカー刺激は、ニューロンおよび免疫機能を調節し、ガンマ刺激に応答した神経の電気的活動を特徴付ける細胞内および細胞外シグナル伝達タンパク質をプロファイルする技術と対にされる。例えば、視覚皮質における細胞内シグナル伝達経路および免疫調節性サイトカインが、動物を光フリッカーに曝露した後にプロファイルされた。感覚フリッカーは、経路のサブセット(例えば、MAPK、NFκB)において急速なスパイク(例えば、<5分)、続いて1時間以内に小膠細胞を調節することが公知のサイトカインの産生の増加を誘発する。感覚フリッカー曝露の類似の時間経過にわたり、神経の電気的活動は劇的に増加し、これは神経回路が可塑性を起こしていることを示唆する。1 これらのデータは、ガンマ振動は、免疫機能およびシナプス可塑性の両方を支配する遺伝子を誘導する一般的な細胞内経路を誘発することを示唆する(例えば、
図4を参照)。
【0056】
ニューロンの電気的活動を駆動して、炎症、細胞生存、可塑性および他の細胞機能を支配するシグナル伝達を変化させるための例をこれより記載する。点滅光技術を使用してマウスの脳の視覚皮質においてガンマ神経活動を誘導し、炎症性シグナルに対するその効果を評価した。視覚皮質組織のシステム解析を使用して、多数の細胞内炎症性シグナルに対するフリッカーの効果を調べた。40Hzでのフリッカーは、炎症経路のサブセットにおいて急速なスパイク(<5分)、続いて1時間以内に小膠細胞を調節することが公知の炎症性サイトカインの産生の増加を誘発することが発見された。これらのデータは、神経活動を駆動すること(一部の実施態様では、非侵襲的に神経活動を駆動すること)は、炎症を制御する脳における分子的シグナル伝達をマニピュレートする方法として使用され得ることを示す。さらに、これらの炎症経路およびそれらが調節する下流の遺伝子は、特に、生存、増殖、分化、可塑性、および神経発生を含む、多様な有益な細胞機能を制御する。したがって、脳炎症をモジュレートするこのアプローチは、多くの脳疾患、脳傷害、感染症、および正常な脳加齢の効果を治療するために使用され得る。これらの発見は、臨床レベルおよび基礎科学レベルの両方において広範囲の影響力を有する。例えば、神経活動を駆動して炎症性シグナル伝達をモジュレートすることは、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)を治療するために使用され得る。追加的に、神経活動を駆動して炎症性シグナル伝達をモジュレートすることは、炎症性シグナル伝達(例えば、統合失調症)、脳の免疫応答、および/または神経活動を伴う障害を治療するために使用され得る。
【0057】
本明細書に記載の研究により収集されたデータは、感覚刺激が、炎症ならびに細胞生存、増殖、および分化を調節する細胞内シグナル伝達の変化を引き起こすことを初めて示す。さらには、このデータは、標準的な薬学的方法が炎症性シグナル伝達をマニピュレートし得るより有意に早く、感覚フリッカーが急速な免疫応答を誘導する(数分以内に開始する)ことの最初のエビデンスをもたらす。換言すれば、このデータは、炎症性シグナルおよび下流の炎症性タンパク質がどのようにフリッカーに経時的に応答するのかを示す。
【0058】
視覚皮質において強い律動的神経活動を駆動するためにガンマ周波数の点滅光を使用した。視覚皮質においてガンマを駆動するために光フリッカーを使用して、野生型C57Bl/6マウスを異なる期間にわたり異なる周波数の光フリッカー(すなわち、試験群)または定常光もしくは暗チャンバー(すなわち、対照群)に曝露して、ガンマ神経活動に対する炎症性シグナル伝達応答を特徴付けた。
図1Aの例では、マウスをフリッカーまたは暗所に5、10、30、または60分間曝露し、次に脳をマウスから迅速に除去し、視覚皮質および海馬を顕微解剖し、溶解させてタンパク質を抽出した。これを
図1Bに示す。視覚皮質は光フリッカーに対して高度に感受性であることが公知である一方、海馬はそうではなく、そのため海馬は内部対照として働いた。
【0059】
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)および活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)経路の変化が観察された。これらの細胞内経路は、遺伝子発現およびタンパク質合成を調節することにより炎症を強くモジュレートする。これを
図2に示す。さらに、MAPKおよびNFκB経路はまた、細胞生存、増殖、および細胞分化を促進する機能を有する。マルチプレックスイムノアッセイを使用して(例えば、LUMINEX CORP.、Austin、TexasおよびEMD MILLIPOREのマルチプレックスアッセイシステムを使用して)、フリッカーまたは対照条件後のMAPKおよびNFκB経路内のタンパク質リン酸化を定量化した。
【0060】
結果として、炎症性シグナルに対するフリッカー刺激の複数の鍵となる効果が発見された。第1に、フリッカー後に炎症促進性シグナル伝達は、Atf-2およびJnk(Junキナーゼ)のリン酸化の急速な一過性(約5分)の増加、続いてシグナル伝達の持続的な減少を起こす。これらの効果を
図3Aおよび
図3Bに示す。
図3Bは、60分の刺激後のMAPK経路における明白な持続的な減少を示す。第2に、炎症性サイトカインはフリッカー曝露の約30分以内に増加し、フリッカーの開始後2時間にわたり増加し続ける)。これらの効果を
図3Cおよび
図3Dに示す。MAPKおよびNFκB経路内のシグナル伝達はサイトカイン発現に先立ち、免疫応答を調節することが公知である。したがって、これらの早期細胞内シグナルは、サイトカイン発現を促進してその後の神経炎症を調節する機序である可能性がある。
【0061】
フリッカーに応答して発現されるサイトカイン(例えば、RANTES、MIP-2など)は免疫調節性調節因子である。さらに、G-CSFなどの、フリッカーに応答して増加する他の因子は神経栄養性である。そのため、これらの結果は、感覚フリッカーは、脳免疫応答の他に、特に、細胞生存、増殖、分化、可塑性、および神経発生に関与するシグナル伝達のカスケードを誘導することを示す。
【0062】
ガンマフリッカーは、神経炎症、細胞生存、および可塑性を支配する細胞内シグナル伝達を刺激する。これらの機能は正常な脳機能において不可欠であり、傷害および疾患と関連付けられる神経学的状態において脱調節される。そのため、これらの経路のガンマ刺激性モジュレーションは、多数の状態において介入して脳の健康を促進するための強力なツールとなる。
【0063】
例示的な実施形態
上記のように、ガンマ周波数活動を駆動することは、アルツハイマー病(AD)マウスモデルにおいて小膠細胞の貪食およびAβのクリアランスを動員する。また、ガンマ欠損はAD病理の不可欠の成分であり得る。これらの発見は、ガンマ振動は神経活動および神経免疫機能の促進および同調において重要な二重の役割を果たすことを指し示す。しかしながら、ガンマ活動が神経コーディングおよび神経免疫においてこの二重の役割を果たし得る機序は以前に完全には分かっていなかった。追加的に、先行研究は、ガンマ周波数活動の駆動の結果としての免疫調節シグナル伝達の変化を示さなかった。本明細書に記載されるように、ガンマ振動が免疫活性およびシナプス可塑性の両方を調節する分子メカニズムが同定された。ガンマ活動はADのヒトおよび動物モデルの両方において機能不全であるので、ガンマ活動の役割および機序を理解するための満たされていない必要性が存在する。
【0064】
以下に記載の例では、ガンマ活動は、動物(例えば、マウス)に40Hzの感覚フリッカー(急速なストロボ光)刺激を与えることにより非侵襲的に駆動され得る
1。感覚フリッカー刺激は、ニューロンおよび免疫機能を調節し、ガンマ刺激に応答した神経の電気的活動を特徴付ける細胞内および細胞外シグナル伝達タンパク質をプロファイルする技術と対にされる。例えば、視覚皮質における細胞内シグナル伝達経路および免疫調節性サイトカインが、動物を光フリッカーに曝露した後にプロファイルされた。感覚フリッカーは、経路のサブセット(例えば、MAPK、NFκB)において急速なスパイク(例えば、<5分)、続いて1時間以内に小膠細胞を調節することが公知のサイトカインの産生の増加を誘発する。感覚フリッカー曝露の類似の時間経過にわたり、神経の電気的活動は劇的に増加し、これは神経回路が可塑性を起こしていることを示唆する。これらのデータは、ガンマ振動は、免疫機能およびシナプス可塑性の両方を支配する遺伝子を誘導する一般的な細胞内経路を誘発することを示唆する(例えば、
図4を参照)。
【0065】
ニューロンの電気的活動を駆動して、炎症および他の細胞機能、例えば、生存および可塑性を支配するシグナル伝達を変化させるための例をこれより記載する。点滅光技術を使用してマウスの脳の視覚皮質においてガンマ神経活動を誘導し、炎症性シグナルに対するその効果を評価した。視覚皮質組織のシステム解析を使用して、多数の細胞内炎症性シグナルに対するフリッカーの効果を調べた。フリッカーは、炎症経路のサブセットにおいて急速なスパイク(<5分)、続いて1時間以内に小膠細胞を調節することが公知の炎症性サイトカインの産生の増加を誘発することが発見された。これらのデータは、神経活動を駆動すること(一部の実施態様では、非侵襲的に神経活動を駆動すること)は、炎症を制御する脳における分子的シグナル伝達をマニピュレートする方法として使用され得ることを示す。さらに、これらの炎症経路およびそれらが調節する下流の遺伝子は、特に、生存、増殖、分化、可塑性、および神経発生を含む、多様な有益な細胞機能を制御する。したがって、脳炎症をモジュレートするこのアプローチは、多くの脳疾患、脳傷害、感染症、および正常な脳加齢の影響を治療するために使用され得る。これらの発見は、臨床レベルおよび基礎科学レベルの両方において広範囲の影響力を有する。例えば、神経活動を駆動して炎症性シグナル伝達をモジュレートすることは、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)を治療するために使用され得る。追加的に、神経活動を駆動して炎症性シグナル伝達をモジュレートすることは、炎症性シグナル伝達(例えば、統合失調症)、脳の免疫応答、および/または神経活動を伴う障害を治療するために使用され得る。
【0066】
本明細書に記載の研究により収集されたデータは、感覚刺激が、炎症ならびに細胞生存、増殖、および分化に関与する遺伝子の発現を広く調節する細胞内シグナル伝達の変化を引き起こすことを初めて示す。さらには、このデータは、標準的な薬学的方法が炎症性シグナル伝達をマニピュレートし得るより有意に早く、感覚フリッカーが急速な免疫応答を誘導する(数分以内に開始する)ことの最初のエビデンスをもたらす。換言すれば、このデータは、炎症性シグナルおよび下流の炎症性タンパク質がどのようにフリッカーに経時的に応答するのかを示す。
【0067】
視覚皮質において強いガンマ振動を駆動するためにガンマ周波数の点滅光を使用した。視覚皮質においてガンマを駆動するために光フリッカーを使用して、野生型C57Bl/6マウスを異なる期間にわたり光フリッカー(すなわち、試験群)または暗チャンバー(すなわち、対照群)に曝露して、ガンマ神経活動に対する炎症性シグナル伝達応答を特徴付けた。これを
図1Aに示す。マウスをフリッカーまたは暗所に5、10、30、または60分間曝露し、次に脳をマウスから迅速に除去し、視覚皮質および海馬を顕微解剖し、溶解させてタンパク質を抽出した。これを
図1Bに示す。視覚皮質は光フリッカーに対して高度に感受性であることが公知である一方、海馬はそうではなく、そのため海馬は内部対照として働いた。
【0068】
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)および活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)経路の変化が観察された。これらの細胞内経路は、遺伝子発現およびタンパク質合成を調節することにより炎症を強くモジュレートする。これを
図2に示す。さらに、MAPKおよびNFκB経路はまた、細胞生存、増殖、および細胞分化を促進する機能を有する。マルチプレックスイムノアッセイを使用して(例えば、LUMINEX CORP.、Austin、TexasおよびEMD MILLIPOREのマルチプレックスアッセイシステムを使用して)、フリッカーまたは対照条件後のMAPKおよびNFκB経路内のタンパク質リン酸化を定量化した。
【0069】
結果として、炎症性シグナルに対するフリッカー刺激の複数の鍵となる効果が発見された。第1に、フリッカー後に炎症促進性シグナル伝達は、Atf-2およびJnk(Junキナーゼ)のリン酸化の急速な一過性(約5分)の増加、続いてシグナル伝達の持続的な減少を起こす。これらの効果を
図3Aおよび
図3Bに示す。
図3Bは、60分の刺激後のMAPK経路における明白な持続的な減少を示す。第2に、炎症性サイトカインはフリッカー曝露の約30分以内に増加し、フリッカーの開始後2時間にわたり増加し続ける)。これらの効果を
図3Cおよび
図3Dに示す。MAPKおよびNFκB経路内のシグナル伝達はサイトカイン発現に先立ち、免疫応答を調節することが公知である。したがって、これらの早期細胞内シグナルは、サイトカイン発現を促進してその後の神経炎症を調節する機序である可能性がある。
【0070】
フリッカーに応答して発現されるサイトカイン(例えば、RANTES、MIP-2など)は免疫調節性調節因子である。さらに、G-CSFなどの、フリッカーに応答して増加する他の因子は神経栄養性である。そのため、これらの結果は、感覚フリッカーは、脳免疫応答の他に、特に、細胞生存、増殖、分化、可塑性、および神経発生に関与するシグナル伝達のカスケードを誘導することを示す。
【0071】
ガンマフリッカーは、神経炎症、細胞生存、および可塑性を支配する細胞内シグナル伝達を刺激する。これらの機能は正常な脳機能において不可欠であり、傷害および疾患と関連付けられる神経学的状態において脱調節される。そのため、これらの経路のガンマ刺激性モジュレーションは、多数の状態において介入して脳の健康を促進するための強力なツールとなる。
【0072】
対象において脳の免疫調節シグナル伝達を制御する例示的な方法が以下に記載される。方法は、対象に刺激を送達することを含み得る。任意選択的に、刺激は、感覚刺激などの非侵襲的刺激であり、それは以下において詳細に記載される。追加的に、刺激は非薬理学的なものであり得る。刺激は、対象の脳において神経活動を駆動する。特に、刺激は、対象の脳においてガンマ活動を誘導し得る。ガンマ活動は、20Hz~100Hzの周波数を有する神経振動である。一部の実施態様では、ガンマ活動は、20Hz~80Hzの範囲内の神経振動である。任意選択的に、ガンマ活動は約40Hzの神経振動である。ガンマ活動は当該技術分野において公知であり、したがって本明細書においてさらに詳細に記載されない。ガンマ活動は、対象の脳の感覚皮質において誘導され得る。代替的または追加的に、ガンマ活動は、海馬、内側側頭葉、前頭葉、皮質下構造、視床、視床下部、または脳幹などの脳深部領域において誘導され得る。本開示は、ガンマ活動が神経系の他の脳領域または部分において誘導され得ることを想定する。換言すれば、感覚皮質、海馬、内側側頭葉、および/または前頭葉においてガンマ活動を誘導することは、例としてのみ提供される。
【0073】
上記のように、刺激は、任意選択的に、感覚フリッカー刺激(本明細書において「感覚フリッカー」と称されることがある)であり得る。感覚フリッカー(例えば、視覚的、聴覚的など)は、ガンマ活動(例えば、約40Hzの神経振動)を誘導するために使用される。一部の実施態様では、感覚フリッカー刺激は視覚フリッカーである。ガンマ周波数の点滅光は、脳の視覚皮質においてガンマ振動を駆動することが公知である。また、効果はより弱いが、ガンマ周波数の点滅光は、海馬(HPC)においてガンマ振動を駆動することが公知である。例えば、視覚フリッカー刺激は、任意選択的に、光(例えば、白色光)を25ミリ秒(ms)毎に12.5msにわたりフラッシュすることにより生成され得る。視覚フリッカー刺激の色および/またはパラメーター(例えば、周波数、期間、デューティサイクルなど)は例としてのみ提供され、ガンマ活動を依然として誘導しながら他の特徴/値を有し得ることが理解されるべきである。他の実施態様では、感覚フリッカー刺激は聴覚フリッカーである。聴覚的感覚フリッカーは、HPCにおいてガンマ振動を駆動し得る。例えば、聴覚フリッカー刺激は、任意選択的に、25ms毎に1msの長さの10kHzの音を鳴らすことにより生成され得る。聴覚フリッカー刺激の音の周波数および/またはパラメーター(例えば、周波数、期間、デューティサイクルなど)は例としてのみ提供され、ガンマ活動を依然として誘導しながら他の特徴/値を有し得ることが理解されるべきである。さらに他の実施態様では、感覚フリッカーは、組み合わせた視覚および聴覚フリッカーであり得る。例えば、組み合わせた視覚および聴覚フリッカー刺激は、任意選択的に、25ms毎に光をフラッシュし、音を鳴らすことにより生成され得る。
【0074】
代替的に、刺激は経頭蓋電気刺激(TES)であり得る。TESは、1つまたはより多くの電極を介して脳に電流を送達する。電流は刺激因子により供給される。電流は、脳において神経活動を駆動する電場を生成する。TESは当該技術分野において公知であり、したがって以下において詳細に記載されない。代替的に、刺激は経頭蓋磁気刺激(TMS)であり得る。TMSは、電磁誘導を介して脳において電気的活動を駆動するために変動磁場を使用する。TMSは、対象の頭部の近くに磁場生成器(例えば、コイル)を置くことにより提供される。変動電流は、刺激因子によりコイルに供給される。TMSは当該技術分野において公知であり、したがって以下において詳細に記載されない。感覚刺激(例えば、聴覚および/または視覚フリッカー)、TES、ならびにTMSは例示的な刺激技術としてのみ提供されることが理解されるべきである。本開示は、対象に刺激を送達するために他の技術を使用することを想定し、該技術としては、光遺伝学的刺激、磁気生成刺激(magnogenetic stimulation)、侵襲的電気刺激、機械的刺激、集中的超音波、または末梢神経刺激が挙げられるがそれに限定されない。
【0075】
追加的に、刺激は、対象内の免疫調節シグナル伝達または細胞生存シグナル伝達の少なくとも1つをモジュレートし得る。免疫調節シグナル伝達は、炎症促進性または抗炎症性シグナル伝達を含み得る。刺激はまた、分化を調節する細胞内シグナル伝達をモジュレートしてもよい。本明細書に記載されるように、刺激は、1つまたはより多くの細胞機能を調節する細胞内シグナル伝達をモジュレートし、該細胞機能としては、神経炎症(例えば、炎症促進性または抗炎症性)、細胞生存、および分化が挙げられるがそれに限定されない。神経炎症、細胞生存、および分化は、本明細書に記載の刺激によりモジュレートされる細胞内シグナル伝達により調節される細胞機能の例としてのみ提供される。任意選択的に、刺激の送達は、免疫調節シグナル伝達および/または細胞生存シグナル伝達のモジュレーションが一過性となるように制御され得る。換言すれば、刺激は、免疫調節シグナル伝達および/または細胞生存シグナル伝達がオンおよびオフにされるように制御される。慢性的に活性化された免疫応答はほとんどの場合に望ましくないことが理解されるべきである。刺激は、少なくとも1つの細胞内シグナル伝達経路を上方調節し得る。これは
図2、
図3A、および
図3Bにより示され、これらの図は、感覚フリッカーに対するMAPKおよびNFκBシグナル伝達応答を示す。一部の実施態様では、細胞内シグナル伝達経路は古典的キナーゼ経路であり得る。一部の実施態様では、細胞内シグナル伝達経路は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路、活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)経路、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)経路、核因子(赤血球由来2)様2(Nrf2)経路、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼ(PI3K)/Akt経路、またはヤヌスキナーゼ(JAK)-シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)経路であり得る。本明細書に記載の細胞内シグナル伝達経路は例としてのみ提供されることが理解されるべきである。
【0076】
代替的または追加的に、刺激は、少なくとも1つの免疫調節性サイトカイン、ケモカイン、または増殖因子の発現を変化させ得る。これは
図3Cおよび
図3Dにより示され、これらの図は、感覚フリッカーに応答して炎症を調節するサイトカインの発現の増加を示す。例えば、少なくとも1つの免疫調節性サイトカイン、ケモカイン、または増殖因子は、MIP-2、G-CSF、RANTES、またはIFN-γである。本明細書に記載の免疫調節性サイトカイン、ケモカイン、または増殖因子は例としてのみ提供されることが理解されるべきである。
【0077】
代替的または追加的に、細胞内シグナル伝達に対する刺激効果は、少なくとも1つの最初期遺伝子の発現または活性をモジュレート(例えば、上方調節または減少)し得る。例えば、少なくとも1つの最初期遺伝子は、活性調節細胞骨格関連タンパク質(ARC)またはFos癌原遺伝子(C-Fos)を含み得るがそれに限定されない。本明細書に記載の最初期遺伝子は例としてのみ提供されることが理解されるべきである。
【0078】
本明細書に記載されるように、刺激は、従来方法と比較してより急速な免疫調節応答を誘起し得る。例えば、例えば注射を介する、炎症性シグナル伝達を変化させるために使用される薬理剤(すなわち、薬物)は、脳に到達して免疫調節シグナル伝達を変化させるために数時間を要することがある。さらに、本明細書に記載の刺激方法は、多くの薬理剤がそうであるような血液脳関門による制限を受けない。一部の実施態様では、本明細書に記載の感覚刺激は、約1時間またはそれ未満のうちに対象内に免疫調節シグナル伝達における応答を誘起し得る(例えば、
図3BにおけるMAPK経路の持続的な減少;
図3Dにおけるサイトカイン発現の増加)。一部の場合には、刺激は、約30分またはそれ未満のうちに対象内に免疫調節シグナル伝達における応答を誘起し得る(例えば、
図3Cにおけるサイトカイン発現の増加)。さらに他の場合には、刺激は、約5分またはそれ未満のうちに対象内に免疫調節シグナル伝達における応答を誘起し得る(例えば、
図3AにおけるAtf-2およびJnkのリン酸化の急速な一過性の増加)。
【0079】
本明細書に記載の方法は、神経活動を駆動することにより、神経炎症、そしてまた細胞生存、増殖、および分化を調節する、細胞内シグナル伝達をモジュレートするために使用され得る。したがって、方法は、対象に送達された刺激を使用して対象の脳において疾患、傷害、感染症、または正常な加齢の少なくとも1つを治療することを含み得る。例えば、方法は、神経変性疾患を治療することを含み得る。神経変性疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および多発性硬化症(MS)が挙げられるがそれに限定されない。代替的または追加的に、刺激は対象内の炎症性シグナル伝達をモジュレートし得るので、新たなクラスの状態が治療され得る。特に、本明細書に記載の方法は、癲癇、統合失調症、自閉症、外傷性脳傷害(TBI)、または正常な加齢が挙げられるがそれに限定されない、炎症性シグナル伝達を伴う状態を治療することを含み得る。代替的または追加的に、方法は、対象に送達された刺激を使用して対象の脳の神経可塑性を誘導することを含み得る。本明細書に記載の方法を用いて上方調節されることが示された細胞内経路の1つであるMAPK経路は、シナプス可塑性の鍵となる調節因子であることが公知である。
【0080】
脳活動を制御する追加の方法が以下に記載される。本明細書に記載されるように、刺激(例えば、視覚的および/または聴覚的感覚刺激)は対象に送達され得る。一部の実施態様では、刺激は、任意選択的に、感覚フリッカー刺激である。感覚フリッカー刺激(例えば、40Hzのフリッカー刺激)は、シナプス可塑性、代謝、増殖、遺伝子発現、分化、有糸分裂、細胞生存、および/またはアポトーシスを含む多くの脳機能に関与する遺伝子の発現を制御する細胞内シグナル伝達(例えば、MAPK(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ)、およびNFκB(活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー)経路)を誘発し得る。感覚フリッカー刺激は、ニューロン内のこれらの経路をモジュレートして、内皮細胞、オリゴデンドロサイト、星状膠細胞、および小膠細胞を含む、脳における全ての他の細胞種に影響する、サイトカインなどの鍵となる分泌因子のニューロン発現を引き起こす。そのため、感覚フリッカー刺激は、神経活動を駆動してMAPKおよびNFκB経路を制御し、最終的に、リソソーム機能障害、ミエリン形成、星状膠細胞の活性化およびグルコース代謝調節、血液脳関門機能、脳血管成長、ならびに脂質および金属代謝が挙げられるがそれに限定されない、神経変性疾患および神経学的疾患に関係があるとされる多様な機能における変化を駆動する。感覚フリッカー刺激に応答して発現される特定のサイトカイン(例えば、VEGF、MIG)を考慮すると、中枢神経系の外部の細胞、例えば、末梢免疫細胞浸潤が、制御され得る。
【0081】
以下に記載の一部の実施態様では、これらの経路により調節されるタンパク質(例えば、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子など)の発現を差次的にもたらすために異なる刺激パラメーター(例えば、刺激周波数および/または刺激持続期間)が使用される。換言すれば、刺激の持続期間および/または周波数などのパラメーターは、刺激の効果を調整するために使用され得る。例えば、5分の40Hzのフリッカーは、MAPK経路におけるタンパク質であるERKのリン酸化の増加に繋がり、30分またはより長い40HzのフリッカーはERKリン酸化の減少に繋がる。追加的に、1時間の20Hzのフリッカーはサイトカインレベルの低下に繋がり、40Hzのフリッカーはサイトカインレベルの上昇に繋がり、定常光刺激は2つの間のサイトカインレベルを結果としてもたらす。これらは2つの例としてのみ提供される。他の例示的な差次的な効果は
図17および
図27に示される。
【0082】
一部の実施態様では、刺激パラメーター(例えば、持続期間、周波数など)とタンパク質発現とのこれらの関係性は、特定の患者または疾患状態のために療法を個別化するために使用され得る。この関係性は刺激対遺伝子発現(StG)マップと呼ばれ得る。刺激は、そのため、必要性に依存して個体間で異なる効果を生じさせるために使用され得る。例えば、1つの疾患または個体において、RANTES(異なるサイトカイン)を増加させながらTNF-アルファ(特定のサイトカイン)を低減することが望ましいことがある。この効果を達成するために、これらの効果を生じさせる特定の刺激条件を調べ、次にそれを患者に適用し、脳脊髄液において効果を読み取ることができる。刺激パラメーターは次に、患者の応答または経時的な個体変動に基づいて微調整され得る。
【0083】
対象において脳活動を制御する例示的な方法が記載される。この方法によれば、刺激が短い持続期間にわたり送達される。第1のステップにおいて、刺激が対象に送達され、刺激が、対象の脳において神経活動を誘導し、対象内の細胞活性の少なくとも1つの可溶性メディエーターの発現をモジュレートする。本明細書に記載されるように、対象内の細胞活性の少なくとも1つの可溶性メディエーターは、サイトカイン、ケモカイン、または増殖因子であり得る。追加的に、刺激は、1時間未満にわたり対象に送達され得る。任意選択的に、刺激は、約30分未満(例えば、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1分)にわたり対象に送達され得る。任意選択的に、刺激は、約10分未満(例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1分)にわたり対象に送達され得る。任意選択的に、刺激は、約5分未満(例えば、5、4、3、2、1分)にわたり対象に送達され得る。従来、免疫機能をマニピュレートする技術は、効果が見られるまでに1時間より長くかかる。対照的に、本明細書に記載されるように、MAPKおよびNFκB経路は、本明細書に記載の方法を使用して急速にオン/オフされることが見出された(例えば、5分において上昇および10分において減少)。追加的に、望ましくないまたは適応不良なことがある慢性免疫応答とは対照的に、一過性の免疫応答は多くの場合に望ましい。さらに、従来技術を使用して起こる持続的な経路活性化は、遺伝子発現および他の機序により調節されるフィードバックを介して負の調節に繋がり得る。そのため、本明細書に記載の短い持続期間の刺激技術は、多様な遺伝子の発現を「精密に」調節する能力を可能とする経路活性化に繋がり得る。したがって、本明細書に記載の方法は、脳活動を制御するための従来技術と比較して、上記に列挙されるものが挙げられるがそれに限定されない利点を有する。
【0084】
一部の実施態様では、刺激は非侵襲的刺激であり得る。一部の実施態様では、刺激は経頭蓋電気刺激または経頭蓋磁気刺激であり得る。他の実施態様では、刺激は、視覚刺激、聴覚刺激、またはその組合せであり得る。上記のように、視覚刺激は光(例えば、白色光)を用いて生成することができ、聴覚刺激は音を用いて生成することができる。任意選択的に、刺激は、ガンマ活動を誘導するために使用される感覚フリッカーであり得る。例えば、刺激は20Hzの感覚フリッカー刺激であり得る。代替的に、刺激は40Hzの感覚フリッカー刺激であり得る。視覚フリッカー刺激は、所望の周波数(例えば、40Hzのために25ミリ秒(ms)毎に12.5ms(ms)のオン、20Hzのために50ms毎に25msのオン)で光をフラッシュすることにより生成され得る。本開示は、4~50%のデューティサイクルが視覚フリッカー刺激のために使用され得ることを想定する。視覚フリッカー刺激の色および/またはパラメーター(例えば、周波数、期間、デューティサイクルなど)は例としてのみ提供され、ガンマ活動を依然として誘導しながら他の特徴/値を有し得ることが理解されるべきである。聴覚フリッカー刺激は、25ms毎に1msの長さの10kHzの音を鳴らすことにより生成され得る。聴覚フリッカー刺激の音の周波数および/またはパラメーター(例えば、周波数、期間、デューティサイクルなど)は例としてのみ提供され、ガンマ活動を依然として誘導しながら他の特徴/値を有し得ることが理解されるべきである。一部の実施態様では、刺激は、無作為の感覚フリッカー刺激であり得る。無作為の感覚フリッカーは、可変のパルス(例えば、光または音)内間隔を用いて、例えば、光または音パルスがオフとなる時と次の光または音パルスがオンとなるまでの時間を変更して、達成され得る。代替的に、刺激は、(フリッカー刺激とは対照的に)一定の感覚刺激、例えば、定常光刺激であり得る。
【0085】
刺激を送達することにより、脳活動は、感覚皮質の少なくとも1つにおいて誘導され得る。代替的または追加的に、脳活動は、海馬、内側側頭葉、または前頭葉の少なくとも1つなどの脳深部領域において誘導され得る。任意選択的に、一部の実施態様では、刺激は対象の脳においてガンマ神経活動を駆動する。
【0086】
任意選択的に、次のステップにおいて、対象における疾患または状態は、対象に送達された刺激を使用して治療される。一部の実施態様では、対象の脳における疾患、傷害、感染症、または正常な加齢が治療される。他の実施態様では、神経変性疾患が治療される。神経変性疾患としは、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および多発性硬化症(MS)を挙げることができるがそれに限定されない。さらに他の実施態様では、対象における状態は、対象内の免疫調節シグナル伝達または細胞生存シグナル伝達の少なくとも1つをモジュレートすることにより治療される。状態は、癲癇、統合失調症、自閉症、外傷性脳傷害(TBI)、双極性障害、卒中、または鬱病を含み得るがそれに限定されない。
【0087】
一態様では、刺激は開示された方法において1時間未満にわたり送達され得ることが理解され、本明細書において想定される。一態様では、1時間未満の刺激は、単一の曝露としてまたは1日当たり2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、150もしくはより多くのドースの曝露において送達され得る。追加的に、刺激治療は少なくとも、6、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48時間毎に1回、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31日毎に1回、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12か月毎に1回施され得ることが理解され、本明細書において想定される。一態様では、治療は、単一回数でまたは神経学的疾患もしくは状態を治療するための必要に応じて施され得る。そのため、一態様では、治療は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、45、60日、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24か月、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90またはより長い年にわたり行われ得る。一態様では、治療は、対象の人生の残余にわたり続けられる。
【0088】
対象において脳活動を制御する別の例示的な方法が記載される。この方法によれば、特定の患者および/または疾患状態のために療法を個別化するために刺激パラメーターとタンパク質発現との関係性が使用される。第1のステップにおいて、モジュレートすべき対象内の細胞活性の少なくとも1つの可溶性メディエーター(例えば、サイトカイン、ケモカイン、または増殖因子)が選択される。これは、例えば、特定の対象および/または疾患の治療に関連するタンパク質を選択することにより達成され得る。
【0089】
次のステップにおいて、細胞活性の選択された少なくとも1つの可溶性メディエーターをモジュレートする刺激の種類が選択され得る。刺激パラメーター(例えば、種類、周波数、持続期間など)は、細胞活性のいずれの可溶性メディエーターがモジュレートされるかに依存して変更または選択され得る。例えば、20Hzの感覚フリッカー刺激、40Hzの感覚フリッカー刺激、無作為の感覚フリッカー刺激、または一定の感覚刺激の1つが選択され得る。細胞活性の選択された可溶性メディエーターをモジュレートする刺激は、例えば、所望の効果を生じさせる特定の刺激条件を調べることにより、選択され得る。一部の実施態様では、異なる刺激周波数は異なる効果を生じさせる。一部の実施態様では、異なる刺激持続期間は、単純な用量依存曲線(例えば、より長い刺激=より大きい効果)ではない仕方で異なる効果を生じさせる。例えば、MAPKは5分の40Hzにおいて上昇し、30分において低下する一方、サイトカインは1時間の40Hzにおいて上昇する。異なる刺激パラメーターの他の例示的な差次的な効果は
図17および
図27に示される。例示的な20Hzの感覚フリッカー刺激、40Hzの感覚フリッカー刺激、無作為の感覚フリッカー刺激、および一定の感覚刺激は上記される。上記に提供される感覚フリッカーの周波数(例えば、20Hzおよび40Hz)は例としてのみ提供されることならびに他の周波数が本明細書に記載の技術と共に使用されてもよいことが理解されるべきである。
【0090】
20Hzの感覚フリッカー刺激は、細胞活性の可溶性メディエーターをモジュレートし得る。一態様では、20Hzの感覚フリッカー刺激は、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-12 p70(IL-12p70)、インターロイキン-12 p40(IL-12p40)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、LIF、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP-1β)、エオタキシン、インターロイキン-10(IL-10)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-9(IL-9)、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)、ガンマインターフェロン誘導モノカイン(MIG)、増殖調節癌遺伝子-α(GRO-α)、LIX(CXCL5としても公知)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、Regulated upon Activation,Normal T cell Expressed,and Secreted(RANTES)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インターロイキン-13(IL-13)、単球化学誘引タンパク質1(MCP-1)、および/またはインターロイキン-1α(IL-1α)をモジュレートし得る。40Hzの感覚フリッカー刺激は、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-12 p70(IL-12p70)、インターロイキン-12 p40(IL-12p40)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、LIF、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP-1β)、および/またはエオタキシンをモジュレートし得る。無作為の感覚フリッカー刺激はIL-10をモジュレートし得る。一定の感覚刺激は、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-9(IL-9)、および/またはマクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)をモジュレートし得る。一態様では、刺激は、40Hzの感覚フリッカー刺激または無作為の感覚フリッカーであり得る。刺激が40Hzの感覚フリッカー刺激または無作為の感覚フリッカーである場合、刺激は、がん遺伝子-α(GRO-α)、LIX(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、Regulated upon Activation,Normal T cell Expressed,and Secreted(RANTES)、および/またはマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)をモジュレートし得る。別の態様では、刺激は、40Hzの感覚フリッカー刺激または一定の感覚刺激であり得る。刺激が40Hzの感覚フリッカー刺激または一定の感覚刺激である場合、刺激は、インターロイキン-13(IL-13)、単球化学誘引タンパク質1(MCP-1)、および/またはインターロイキン-1α(IL-1α)をモジュレートし得る。
【0091】
次のステップにおいて、選択された感覚刺激が対象に送達され、感覚刺激が対象の脳において神経活動を誘導する。
【0092】
任意選択的に、次のステップにおいて、対象における疾患または状態は、対象に送達された刺激を使用して治療される。一部の実施態様では、対象の脳における疾患、傷害、感染症、または正常な加齢が治療される。他の実施態様では、神経変性疾患が治療される。神経変性疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、および多発性硬化症(MS)を挙げることができるがそれに限定されない。さらに他の実施態様では、対象における状態は、対象内の免疫調節シグナル伝達または細胞生存シグナル伝達の少なくとも1つをモジュレートすることにより治療される。状態は、癲癇、統合失調症、自閉症、外傷性脳傷害(TBI)、双極性障害、卒中、または鬱病を含み得るがそれに限定されない。
【実施例】
【0093】
[実施例1]
以下の実施例は、ガンマ振動がアルツハイマー病において脳免疫活性をモジュレートする機序への洞察を提供する。データは、ガンマ振動の形態の神経活動は、MAPKおよびNFκB経路内のシグナル伝達を急速に刺激することにより神経免疫活性を促進できることを示す。刺激された活性は、小膠細胞を動員する他に、特に、生存、増殖、分化、可塑性、および神経発生を含む、多様な有益な細胞機能を制御することが公知である複数のサイトカイン、ケモカイン、および増殖因子の発現を誘導する。
【0094】
方法。マウスに視覚的または聴覚的な40Hzの感覚フリッカーを与えることによりマウス脳の複数の部分においてガンマ振動を誘導するプロトコールを開発した。追加的に、統合されたシステム解析を使用して、細胞内シグナル伝達経路をプロファイルし、ガンマ誘導と密接に関連する候補シグナルおよび経路を同定した。この学際的アプローチは、ガンマ活動、神経機能、および免疫活性の間の複雑な関係性を特徴付ける前例のない機会を提供する。ADを有する患者におけるガンマ活動の報告された欠損を考慮すれば、この研究は、ADにおけるこの喪失が含意するものの重要な新たな理解に貢献する。
【0095】
聴覚フリッカーおよび組み合わせた聴覚および視覚フリッカーは海馬においてガンマを駆動する
ガンマ周波数(例えば、約40Hz)における神経活動の駆動は、小膠細胞を形態学的に変換させ、それを動員して、その凝集がADにおいて神経毒性事象を開始させると考えられているタンパク質であるアミロイドベータの貪食を増加させることが最近発見された(
図5)。1時間の40Hzの神経活動の駆動は、アミロイドベータの40%の低減を結果としてもたらした。最初に侵襲的な光遺伝学を使用してガンマを駆動した。侵襲的な光遺伝学は、レーザー光を用いて神経活動を駆動するためにウイルス感染および繊維インプラントを必要とする。40Hzの点滅光という、非侵襲的にガンマを駆動する方法を次に開発した。ガンマ周波数の点滅光は視覚皮質において強いガンマ振動を駆動するが、効果は、空間および経験記憶のために必須の脳領域である海馬(HPC)においてより弱い。
【0096】
40Hzでの聴覚的感覚フリッカーもまた、HPCにおいて40Hzの神経活動を駆動する(
図6A~6B)。この発見により、学習および記憶のために必須の海馬神経コードに対する非侵襲的なガンマ駆動の効果を研究することが可能となる。球状トレッドミル上で走るまたは休息する野生型(C57BL6J)マウスの海馬CA1亜領域(HPC)において32チャンネルシリコーンプローブを使用して電気生理学的記録を行った。神経活動を記録しながら、動物に交互期間の(1)静かな暗所、(2)40Hzでオンおよびオフにされる音(25ms毎に鳴らされる1msの長さの10kHzの音;以下において聴覚フリッカー刺激と称する)、ならびに(3)40Hzでオンおよびオフにされる音および光(25ms毎の1msの長さの10kHzの音および12.5msの長さの白色光;以下において多手法的フリッカー刺激と称する)を与えた。視覚フリッカー、聴覚フリッカー、および多手法的フリッカー刺激はまた、本明細書においてそれぞれ視覚フリッカー、聴覚フリッカー、および組み合わせた視覚および聴覚フリッカーと称されることがある。追加的に、これらの刺激は、本明細書に記載されるような感覚フリッカーの例である。感覚刺激に応答して、スパイクは音と共に周期的に増加および減少し、そのため神経活動は40Hzの聴覚または多手法的フリッカー刺激の間に40Hzに同調した(
図6A~6B)。40Hzの聴覚フリッカーの間のスパイク率におけるピーク間の間隔は、記録部位の大部分について約25ms(40Hzと同等)であった。聴覚刺激の間に、平均で55%の記録部位は周期的なスパイク応答を有し、聴覚プラス視覚刺激の間に、ベースライン期間の間の1%の記録部位と比較して、61%のCA1記録部位は周期的なスパイクを有した(
図6A~6B)。そのため、40Hzの聴覚または聴覚および視覚フリッカー刺激は、CA1においてロバストな40Hzの同調を誘導した。さらには、7日間の1時間/日の聴覚フリッカーまたは組み合わせた聴覚および視覚フリッカーへの動物の曝露はHPCにおいて小膠細胞を動員し、アミロイドベータ負荷を低減することが見出された。非侵襲的にガンマを駆動するために組み合わせた聴覚および視覚フリッカー方法を以下において使用して、ガンマが小膠細胞活性および神経コーディングをモジュレートする機序を同定し、そしてまたガンマ治療がADマウスを治療するためにどれほど効果的であり得るかを示した。
【0097】
感覚フリッカーは視覚皮質において炎症促進性サイトカインの発現を上方調節する
フリッカーにより活性化される免疫シグナル伝達を同定するために、マルチプレックスイムノアッセイ(例えば、LUMINEX CORP.、Austin、TexasおよびEMD MILLIPOREのマルチプレックスアッセイシステム)を使用して、マウスに30分または60分間視覚フリッカーを与えた後に視覚皮質内の32のサイトカインおよび増殖因子タンパク質の発現を定量化した。解析は、30分によるある特定のサイトカインの微妙な増加(データ示さず)、および60分による小膠細胞の動員および活性化に関与するサイトカインの著しい増加(increased)を明らかにした(
図7A)。データの多次元的な性質を説明するために、判別部分的最小二乗回帰(D-PLSR)を不偏の戦略として使用して、フリッカーと最も強く相関するサイトカインを同定した。D-PLSRは主成分分析に類似するが、群間の最大差異を同定する。分析は、フリッカーマウスを暗所マウスから最良に区別するサイトカインのプロファイル、LV1を同定した(
図7B)。アクシスLV1は、視覚皮質においてフリッカーまたは暗所動物と相関したサイトカインのプロファイルからなるものであった(
図7C)。重要なことに、フリッカーとの上位の相関は、小膠細胞の動員および活性化/局在化に関与するMIP-2、IL-3、RANTES、およびIFN-γであった。これらのデータは、細胞外サイトカイン/ケモカインシグナル伝達はフリッカーに応答して小膠細胞活性に関与し得ることを示唆する。
【0098】
感覚フリッカーは視覚皮質において細胞内MAPKおよびNFκBシグナル伝達を上方調節する
免疫活性は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)および活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)経路を含むいくつかの古典的キナーゼ経路内の細胞内シグナル伝達により中枢的に調節される。これらの経路は、小膠細胞の動員および活性化に関与する、サイトカインを含む多数の因子の下流の発現を調節する。さらに、これらの経路は、神経活動を調節するArcおよびC-Fosを含む、最初期遺伝子の発現および活性を調節する。これらの経路はまた、ニューロンおよび他の細胞種内の生存シグナル伝達を調節および促進する。したがって、それらは、電気的ガンマ活動と、小膠細胞および星状膠細胞の動員および活性化、ならびにニューロンの健康および生存のようなより広い免疫応答との間の天然の繋がりを表す。重要なことに、小膠細胞活性化などの細胞応答表現型は、細胞内シグナル伝達(分程度)よりはるかに長い時間スケール(時間(hr)~日程度)で起こる
8。そのため、5または10分の視覚フリッカーの直後の時点において視覚皮質を解析した。マウスをフリッカーに曝露した後、直ちに安楽死させ、安楽死の3分以内に脳組織を収集し溶解した。Luminex分析を再び使用したが、今回はMAPK経路内の5つのホスホタンパク質およびNFκB経路内の2つのホスホタンパク質を定量化した(
図8A)。D-PLSR分析を使用して、ホスホタンパク質のアクシス、LV1に沿って、視覚皮質中の5分のフリッカーの試料をHPCフリッカー試料から分離した(
図8B)。この場合、LV1は、Atf-2、Jnk、IκB、およびNFκBを含むホスホタンパク質のプロファイルからなるものであり、これらは視覚皮質において5分の時点で上方調節されたが海馬ではそうではなかった。さらに、シグナル伝達におけるこの増加は、10分の時点までに視覚皮質において失われた(
図8B)。興味深いことに、上方調節されたシグナルの全ては経路中の比較的下流にあり、上流のリン酸化は早期の時点において起こり得ることを示唆する。追加的に、これらの経路は、30分または60分の時点において上方調節は見出されず(図示せず)、これはキナーゼシグナル伝達の公知の一過性と合致する
8、9。最後に、サイトカインデータは細胞外サイトカインシグナル伝達がガンマ後の小膠細胞活性に関与し得ることを示唆するので、免疫組織化学(IHC)を次に使用して、いずれの細胞種においてNFκBシグナル伝達が起こっているのかを決定した。共標識化により、NFκBはニューロンマーカーNeuNと共局在することが見出された(
図8C)。Iba1+小膠細胞とのNFκBの共標識化は同定されなかった(データ示さず)。サイトカインデータと組み合わせると、これらのシグナル伝達データは、ガンマ振動はニューロン内シグナル伝達を誘導し、それがサイトカインなどの免疫調節因子の下流の発現を刺激し、小膠細胞活性を刺激することを示唆する。
【0099】
アルツハイマー病マウスにおいてガンマ欠損が見出される
ガンマ振動の欠損は、トランスジェニック5xFADアミロイドマウスモデルを含むアルツハイマーのマウスモデルにおいて見出された。特に、ガンマ振動の強度における欠損の他に、どれほど良好にスパイクがガンマ振動によりモジュレートされるかが、健常マウスにおける空間学習および記憶のために必須の活動である鋭波リップル(SWR)の間に同定された。これらの欠損は、疾患において行動欠損(3か月齢において最初に検出される)の前に最初に始まる。さらには、ガンマ活動の駆動は、アミロイドベータレベルを有意に低減し、小膠細胞を動員してアミロイドの貪食を増加させることが見出された(
図5)。これらの結果は、神経活動の欠損は学習および記憶障害に繋がり得るだけでなく、ADの分子および細胞病理に寄与し得ることを示唆する。これらの動物モデルは非常に異なる基礎病理を有するが、5xFADマウスにおいて見出される欠損は、APOE4マウスにおいて見出されるものと著しく類似している。さらには、5xFADマウスにおいて見出される欠損は、別のマウスモデル、hAPP、およびADを有するヒトにおいて報告されている欠損とある程度の類似性を有する。これらの結果は、SWRおよびガンマは複数のADモデルにおいて変化していることを示し、この活動を生じさせる細胞および回路はAD病理に特に感受性であり得ることを示唆する。そのため、本明細書に記載の感覚刺激は、最も一般的な認知症であるアルツハイマー病、または律動活動において欠損を有する他の疾患のための新たな療法に繋がる可能性を有する。結果として、本明細書に記載の律動活動の特定のパターンを駆動するための非侵襲的な方法は、神経活動をレスキューし、分子病理に影響するための広範囲の臨床応用を有し得る。
【0100】
データは、5xFADアルツハイマーマウスはガンマ活動の低減を患っていることを実証する。さらに、ガンマ振動は、刺激の数分以内にMAPKおよびNFκB経路内の細胞内シグナル伝達、1時間以内に多数の免疫調節性サイトカインの発現の増進、1時間後に小膠細胞活性化の変化、および1週の経過にわたりアミロイド負荷の低減を誘導することが見出された。
【0101】
細胞内MAPKおよびNFκBシグナル伝達経路は小膠細胞表現型に対するガンマ活動の効果を媒介する
データは、フリッカー誘導性ガンマ振動はMAPKおよびNFκB経路内のシグナル伝達の急速な(<5分)上方調節(
図8A~8C)、続いて炎症促進性サイトカインの発現の増加(
図7A~7C)を刺激することを示唆する。さらに、刊行されたデータは、ガンマは1週にわたり5xFADマウスにおいて小膠細胞活性およびAβクリアランスを促進することを示す
1。末梢および脳におけるこれらの経路の公知の炎症促進性の役割を考慮すると、これらのデータにおける時間的な関係性は、MAPKおよびNFκB経路はガンマ誘導性神経免疫活性の調節因子であることを示唆する(例えば、
図4を参照)。
【0102】
重要なことに、5xFADマウスモデル、およびアルツハイマー病を有する患者は、特に、肥厚プロセスを伴うIba1+活性化小膠細胞の両方、多数の炎症促進性サイトカイン、活性酸素種からなる、神経炎症の微環境を既に有する。さらに、慢性神経炎症環境は病理を促進すると現在考えられている。それにもかかわらず、データは、ガンマフリッカーは免疫調節シグナル伝達を誘導し、小膠細胞活性およびAβクリアランスを促進することを示唆する(
図5)。このデータおよび他の研究は、免疫調節活性は、炎症促進対抗炎症または能動対受動として単純に分類できないことを示唆する。AD微環境およびフリッカーの両方は小膠細胞活性を刺激するが、それは潜在的に異なる仕方においてまたは異なる機能的な表現型へのものである。
【0103】
上記で議論したように、古典的な小膠細胞活性化マーカーは、神経炎症の微環境に対するシグナル伝達阻害の効果を充分に解明することができない。そのため、Luminex分析を介する32のサイトカイン/ケモカインのタンパク質定量化に依拠することができる6。小膠細胞活性の広い見解を得るために、免疫組織化学(IHC)を介するIba1などの古典的なマーカーと共に、単離された小膠細胞の広範なRNAseqベースのプロファイリングの両方を使用することができる。
【0104】
フリッカーに応答した免疫調節シグナル伝達および小膠細胞活性の時間的解析が以下に記載される。野生型(WT)および5xFAD同腹マウスを40Hzの聴覚および聴覚/視覚フリッカー(40Hz)、無作為の感覚フリッカー、または無フリッカー(シャム)に2時間、1週にわたり1時間/日、または1か月にわたり1時間/日で曝露することができる。無作為および無フリッカーシャム群は対照として働き得る。無作為のフリッカーの間に、光および音が40Hzの平均の無作為の間隔で与えられ得る。ガンマ周波数の神経活動は増加しないが、曝露期間にわたり平均で同じ回数の刺激が送達されるので、無作為刺激は対照として働く1。動物を研究室に連れてきて、静かな部屋に1時間座らせ、次に清潔な空の曝露ボックスに入れ、指定された時間にわたりフリッカーまたは無刺激に曝露することができる。複数日にわたりフリッカーに曝露される動物について、この手順を各日の同じ時間に繰り返すことができ、次に動物を動物施設に戻すことができる。最終のフリッカー曝露後に、動物を屠殺することができる。
【0105】
この解析は、ガンマフリッカー誘導性の免疫活性の時間的進展を充分に特徴付け、健常WTと5xFAD疾患マウスとの間にこの活性において差異があるか否かを決定する。
【0106】
組み合わせた聴覚/視覚フリッカーを5xFADマウスおよび野生型同腹対照に使用することができる。32の免疫調節性(immunomodulatory)サイトカインのLuminexタンパク質発現(expression)に関して、小膠細胞および星状膠細胞活性化マーカー(Iba1およびGFAP)の組織学的(histological)解析を介して、ならびに組織からフロー選別された小膠細胞のRNAseq解析を介して、応答を2時間、1週、および1か月の時点において評価することができる。各遺伝子型において、1)40Hz、2)シャム、および3)ガンマを誘導しない無作為のフリッカーからなる実験群を使用することができる。Iba1+小膠細胞サイズの差異
1、フリッカー刺激および非刺激の脳領域の間でホスホ-Atf2において見出された差異(
図8A~8C)、フリッカーおよびシャム暗所動物の間のMIP-2における差異(
図7A~7C)に基づいて、検定力分析(両側、80%の検定力、α=0.05)は、40Hzと2つの対照群との間で差異を見るために実験群当たりN=10のマウスが必要とされることを示す。タンパク質の差異を解析するために計180匹のマウスが必要とされる(10マウス/群×3群×3つの時点×2つの遺伝子型(genotypes))。
【0107】
神経炎症応答の定量化および統計解析
分子解析のために使用される全てのマウスにおいて、マウスを麻酔(イソフルラン)し、安楽死させ、脳を除去することができる。右半球を10%のホルマリン中に固定することができ、左半球を顕微解剖して視覚皮質、海馬、および線条体を単離することができる。各単離された組織セグメントを、Luminex分析およびウエスタンブロッティングと適合性のBio-Plex溶解緩衝液(Bio-Rad)に溶解することができる。Luminex分析(Millipore)を使用して、各領域中に発現される32のサイトカインのパネル(
図7A~7C)および7つのタンパク質のリン酸化(
図8A~8C)を定量化することができる。右脳切片の免疫組織化学(IHC)を使用して、Aβプラーク数の観点でAβ病理を定量化することができる(6E10抗体、Biolegend)。IHCを使用して、各脳領域におけるIba-1+小膠細胞(Waco)およびGFAP+(Novus Biologicals)星状膠細胞の数を定量化することもできる。群間の活性化マーカーまたは個々のホスホタンパク質もしくはサイトカインにおける差異を、シェッフェ(Scheffe)事後検定を用いる一元配置分散分析を使用して評価することができる。判別部分的最小二乗回帰(D-PLSR)を使用してLuminexデータを解析することもできる。逆χ
2分布を使用して二次元空間において統計的検定を行うことができる。
【0108】
トランスクリプトーム小膠細胞表現型解析:サイトカインデータならびに星状膠細胞および小膠細胞マーカー解析は、フリッカーに対する炎症性小膠細胞応答の詳細であるが狭い見解を与えることができる。2時間および1か月における小膠細胞表現型に対する感覚フリッカーの効果を決定するために、生理食塩水の心臓灌流後にパーコール(Percoll)勾配アプローチを以前に記載されたように使用することができる。次に、CD11b+細胞をFACSにより選別し、RNAseq解析のためにTRIzol(Thermo Fisher)に直接的に収集することができる。TruSeq Stranded RNA Library Prep Kit(Illumina)を使用して解析のためにmRNAを調製し、Illumina NextSeq 500での高出力モードにおいてシークエンシングすることができる。TopHatソフトウェアを使用してシークエンシングデータをアライメントすることができ、リード数を断片/エクソンキロ塩基/100万(FPKM)の観点で報告する。
【0109】
データを使用して、感覚フリッカーに曝露したマウスにおける分子的炎症性シグナル伝達、および神経膠免疫活性の詳細な時間的進展を確立することができる。さらに、経路阻害研究を使用して、MAPKおよび/またはNFκB経路がガンマ誘導性の免疫調節および刺激に関与することを示すことができる。合わせると、これらのデータを使用して、感覚刺激、神経活動、および免疫細胞活性を関連付けることができる。さらに、長期の1か月の時点を使用して、持続的な(sustain)感覚フリッカーが5xFADマウスモデルにおいて小膠細胞活性およびアミロイドクリアランスを維持できるかどうかを決定することができる。
【0110】
MAPK経路およびNFκB経路の両方が視覚フリッカーに応答して上方調節されたので、これらの経路の両方が神経炎症の微環境に寄与することがあり得る。そのため、サイトカイン、神経膠活性化マーカー、または小膠細胞トランスクリプトームの顕著なモジュレーションは、1つの経路を単独で阻害することによっては見出されない可能性がある。これが事実であれば、両方の経路を同時に阻害することができる。追加的に、先行研究は、例えばMAPK経路内の、標的化された阻害は、PI3K/Aktなどの異なる経路内の応答性シグナル伝達を引き起こし得ることを示している。そのため、免疫調節の明確な徴候が見られない場合、Luminex分析およびウエスタンブロッティングを使用して他の経路内の活性化についてチェックすることができる。最後に、MAPKおよびNFκB経路はニューロンおよび他の細胞種において栄養支持機能を提供するので、ニューロン死、シナプス損失、またはこれらの薬物の1日毎の投与の他のアーチファクトが見出され得る可能性がある。この可能性は低いが、薬物投与の説明不可能な病的アーチファクトが見出される場合、薬物用量を低減することができ、またはガンマ治療パラダイムを一日おきに変更することができる。
【0111】
データは、神経活動が脳内で炎症性シグナル伝達を変化させる分子メカニズムを確立する。これらの発見は、感覚フリッカーに曝露することによりアルツハイマーまたは他の脳疾患を有する患者を治療するための迅速に翻訳可能な戦略に繋がり得る。発見はまた、機能間の原因分子の繋がりを実証すること、および非侵襲的刺激を介して脳内の複数の細胞種の活性をモジュレートするための新たなツールを提供することにより神経科学および神経炎症/神経膠活性の分野に影響を及ぼし得る。本明細書において定量化される炎症性プロファイルはまた、脳脊髄液および血液の解析を介してヒトにおいて試験されてもよい。そのため、この研究は、ヒトに対する長期的な感覚フリッカーの効果の臨床的に実行可能な試験の基礎をなす。
【0112】
[実施例2]
ミリ秒の精度で神経活動を駆動するための非侵襲的な方法
背景:ガンマ周波数(40Hz)の点滅光は視覚皮質においてガンマ周波数の神経活動を駆動し、アルツハイマー病(AD)のマウスモデルにおいて小膠細胞を動員して病原性タンパク質を貪食させることが最近発見された。この非侵襲的な感覚刺激は、神経活動をマニピュレートし、神経変性疾患を治療するために脳の免疫系を動員することができる。この新規の刺激アプローチはまた、ヒトにおけるガンマ活動の原因的効果および疾患進行における小膠細胞の仮定される役割の研究を可能とする。しかしながら、感覚刺激を使用してガンマを駆動し、視覚皮質の外部に小膠細胞を動員する方法は未だに知られていない。認知症の最も一般的な形態であるADを治療するために、既存の時間的に精密な非侵襲的刺激方法によっては到達できない海馬のような脳深部構造を標的化するための新たな形態の感覚刺激が開発される。開発された感覚フリッカーは、神経活動を同調させ、免疫細胞を動員し、学習および記憶のために必須であり、ADにおいて早期に影響される海馬におけるニューロン間の機能的な接続を変化させるためのツールとして使用することができる。
【0113】
先行する感覚刺激方法、点滅光は、視覚皮質において時間的に精密な神経活動を駆動したが、それは弱くのみ海馬に影響した。聴覚的感覚フリッカーは海馬において律動的神経活動を駆動し、このアプローチがさらに開発されることが見出された。さらなる特徴付けは、海馬において最も強い律動活動を駆動する(drive)感覚刺激の種類(聴覚、視覚、または両方)および律動感覚刺激が内因性の振動活動に類似の方式で神経細胞種を駆動するかどうかを決定する。データは、聴覚刺激は海馬小膠細胞を動員し、それを形態学的に変換して、疾患における病原体のクリアランスおよび健常な脳におけるシナプス可塑性の両方に関連したプロセスであるタンパク質の貪食を増加させることを示す。次に、ガンマの駆動が小膠細胞、ニューロン間の接続、および海馬における記憶のために必須の神経活動をどのように変化させるのかが推定される。本明細書におけるデータは、3つの主要な満たされていない必要性に対処する:(1)脳深部構造において時間的に精密な神経活動を駆動するための非侵襲的な方法、(2)神経回路の形成および病原体の除去において能動的な役割を果たす脳における免疫細胞である小膠細胞を動員するための非侵襲的な方法、ならびに(3)ADを治療するための新規のアプローチ。
【0114】
革新的な感覚刺激および大規模な記録を統合して、提案される研究は、ミリ秒の精度で律動的神経活動を駆動するためおよび脳深部構造において小膠細胞を動員するための非侵襲的な方法を初めて提供する。律動的な脳活動および小膠細胞は、アルツハイマー病から癲癇、そして統合失調症までの広範囲の神経学的疾患に関係があるとされ、学習および記憶において鍵となる役割を果たすと仮定されている。そのため、これらの結果は、多数の疾患に対する新規の治療アプローチを駆り立て、広範囲の影響力を有する新たな基礎科学研究を刺激する。
【0115】
本研究は、神経活動を同調させ、免疫細胞を動員し、海馬におけるニューロン間の機能的な接続を変化させるための感覚フリッカーの開発を示す(
図9)。海馬(HPC)は、ADにおいて早期に影響される学習および記憶のために必須の脳深部構造であるので、この研究はHPCに焦点を当てる。HPCにおいて律動的神経活動を駆動するための非侵襲的な方法を最初に開発し、それを最適化する。次に、ニューロン間のシナプス有効性およびADのマウスモデルにおける神経活動欠損を含む、学習および記憶のために必須である小膠細胞および神経活動にHPCにおける非侵襲的なガンマ活動の駆動がどのように影響するのかが決定される。これらのデータは、律動的神経活動を駆動し、免疫細胞を動員し、脳深部領域におけるシナプス接続の強度を変化させるための容易に実行可能なツールを結果としてもたらす。これらのデータはまた、将来の研究においてADならびに他の神経学的および精神医学的疾患を有するヒトにおける治療法としての感覚フリッカーを試験するための基礎を提供する。
【0116】
脳深部領域を標的化する方法として感覚フリッカーを評価するために、海馬活動を3つの理由から特徴付けた。第1に、海馬はヒト脳において深部にあるので、経頭蓋磁気刺激のような既存の脳刺激方法を用いて標的化することが特に難しい。そのため、海馬活動をマニピュレートできるアプローチが非常に必要とされる。第2に、HPCは空間および経験記憶のために必須であり、海馬活動のマニピュレーションは学習および記憶を増進し得る。神経活動に対するガンマ周波数の感覚刺激の効果を理解するために、我々の研究は、海馬神経活動がどのように空間学習および記憶の基礎となっているのかを確立した齧歯動物における広範な先行研究を活用する。第3に、HPCは、認知症の最も一般的な形態であるADにおいて早期に影響される脳領域の1つであり、HPCは、癲癇、鬱病、および不安障害のような複数の他の疾患に関係があるとされる。したがって、HPCにおいて神経活動を非侵襲的にマニピュレートする新たな方法は複数の疾患に対する新たな療法に繋がる。
【0117】
この方法の影響力は、時間的に精密な神経活動を駆動し、小膠細胞を動員し、脳深部構造においてニューロン間の接続の強度を変化させるための容易に実行可能な非侵襲的な方法の開発に由来する。高速ストロボ光に類似した特定の周波数の点滅光という初期の感覚刺激方法は、視覚皮質において時間的に精密な神経活動を駆動したが、それは弱くのみHPCに影響した。そのため、新たなアプローチが必要とされる。したがって、HPCにおいて律動的神経活動を駆動するための最適な種類の感覚フリッカーが初めて確立される。研究は、聴覚的感覚フリッカー(オンおよびオフにされる音)は、神経活動の同調と呼ばれる、フリッカーと同じ周波数でのHPC神経スパイクを駆動することを示す(
図9)。次に、聴覚、視覚、ならびに組み合わせた聴覚および視覚フリッカーの効果が試験される。覚醒状態の行動性動物において複数の種類の多くの単一細胞が同時に記録される(record)。研究はまた、感覚フリッカーの形態が神経活動の最大の同調を生じさせることおよびどのフリッカー周波数が神経活動を同調させることができるのかを決定する。追加的に、複数の研究および臨床的な環境においてこれらの刺激を送達するための携帯型システムが開発される。したがって、データは、ヒトにおいて容易に応用可能な、脳深部領域において時間的に精密な神経活動を同調させるための単純な非侵襲的なツールを示す。
【0118】
覚醒状態の行動性動物において複数の種類の多くの単一細胞が同時に記録される(record)。研究はまた、感覚フリッカーの形態が神経活動の最大の同調を生じさせることおよびどのフリッカー周波数が神経活動を同調させることができるのかを決定する。追加的に、複数の研究および臨床的な環境においてこれらの刺激を送達するための携帯型システムが開発される。したがって、データは、ヒトにおいて容易に応用可能な、脳深部領域において時間的に精密な神経活動を同調させるための単純な非侵襲的なツールを示す。
【0119】
短い時間尺度で一緒に発火するようにニューロンを駆動することにより、ガンマ振動は、広範囲の行動の間にニューロン間のシナプス接続および神経コードを強化すると考えられる。小膠細胞はまた、シナプスを貪食することによりシナプス可塑性において能動的な役割を果たす。ガンマ感覚刺激はニューロンを一緒に発火するように駆動し、小膠細胞の貪食を誘導するので、研究は、この感覚刺激はフリッカーが停止した後でさえニューロン間の機能的な接続を変化させて、内因性のガンマ活動および神経コードの変化に繋がるかどうかを理解することに焦点を当てる。さらには、ガンマの駆動はAD病原体を低減するので、ガンマ感覚フリッカーはADマウスにおいて神経活動欠損を寛解させることが示される。そのため、健常およびADマウスにおける小膠細胞、神経接続、ならびに学習および記憶のために必須の神経コードに対するガンマ駆動の機能的な効果を決定するために、この新たな発見は、40Hzの感覚フリッカーはHPCにおいて非侵襲的に神経活動を駆動することを指し示す。第1に、小膠細胞に対する聴覚または組み合わせた聴覚および視覚フリッカーの効果が確立される。データは、1時間/日の7日の聴覚フリッカーへの動物の曝露はマウスHPCにおいて小膠細胞の形態学的変換およびアミロイドベータの小膠細胞貪食を誘導することを示す。第2に、in vivoでのニューロン間の機能的な接続に対する長期的な40Hzのフリッカーの効果が2時間のフリッカーの経過にわたり試験される。in vivoでの機能的な接続の測定は、フリッカー曝露の経過にわたるリアルタイムでのニューロン間のシナプス有効性における変化の試験を可能とする。行動の間の機能的な接続を調べるために、1つのニューロンの発火が短い時間尺度(<3ms)で別のニューロンをどれほどよく駆動するのかが単シナプス強度のアッセイで測定される。先行データは、HPC神経応答は約10分のフリッカー曝露にわたり変化し、それはフリッカーの間の一緒のニューロン発火の結果としての機能的な接続の変化に起因し得ることを示す。急速にスパイクする介在ニューロンおよび錐体ニューロンはガンマリズムにより絡み合うので、40Hzのフリッカーはこれらの細胞種間の機能的な接続を変化させることが示される。最後に、学習および記憶のために必須の神経コードである鋭波リップル(SWR)およびSWR再生の間にどのようにフリッカーがガンマに影響するのかが決定される。長期的なフリッカーはSWRの間に内因性のガンマ振動を増進し、結果として、再生忠実度を増加させることが示される。また、長期的な感覚フリッカーは、ADのマウスモデルにおけるようなSWR欠損をレスキューする。そのため、長期的なフリッカーは、ADマウスモデルのHPCにおいて小膠細胞、シナプス接続の強度、および神経欠損に影響することが示される。
【0120】
脳深部領域において律動的な脳活動を非侵襲的に駆動することの臨床的な含意
非侵襲的に脳律動を駆動する新たな方法の開発は、疾患において欠いている神経活動を駆動することおよび明確な病原体に小膠細胞を動員することの両方によりヒト疾患に対する新たな療法に繋がり得る。変化した律動活動が、アルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症、および癲癇を含む多くの疾患において観察されている。ADのマウスモデルおよびADを有するヒトにおいてガンマの欠損が示されている。5つの家族性AD突然変異を有するADのよく確立されたモデルである5XFADマウスにおいてSWRの間のガンマの欠損が次にさらに決定される。SWR活動は空間学習および記憶において極めて重要な役割を果たし、SWRが破壊された場合、動物は空間記憶タスクにおいて有意により不良な成績となる。SWRは学習後に多くの回数で活動の列を繰り返すので、シナプス可塑性を駆動するために良好に適する。SWRの間のガンマ振動は多くのニューロンにわたりこの再生を同調させる。5XFADマウスは、認知障害の前(3か月齢)および後(6か月齢)の両方において時間当たりのより少ないSWRおよびSWRの間のより弱いガンマを有することが、これらのマウスにおいて報告されている(
図10)。さらには、ガンマ振動の駆動は有意に、小膠細胞を動員してアミロイドベータの貪食を増加させたことが示される。小膠細胞は複数の神経学的疾患に関係があるとされているが、ニューロン損傷を誘導することなく小膠細胞を動員する方法は現在ないので、疾患におけるこれらの免疫細胞の原因的役割を確立することは困難であった。非侵襲的に小膠細胞を動員する本発明の方法により科学者は、疾患の原因またはこれらの細胞のマニピュレートの治療可能性を試験することができる。ここに開発された非侵襲的刺激方法は、神経活動の欠損を寛解させ、明確な病原体に小膠細胞を動員することにより、アルツハイマー病および他の疾患に対する新たな療法のための基礎を形成することができる。結果として、律動活動を駆動するためのこの新たな非侵襲的な方法は、神経活動および明確な病理をレスキューするための広範な臨床用途を有する。
【0121】
方法および材料
方法論:マウスにおける神経活動を観察およびマニピュレートするために、行動の間の神経活動を記録するための革新的なアプローチが使用される。マウスがバーチャルリアリティー環境を進む際に脳活動が記録される。頭部固定マウスが仮想環境を進むこのパラダイム(
図11)は、いくつかの鍵となる実験を行うことを可能とする。第1に、それは、神経コードに対する感覚刺激の効果を特徴付けるために行動の間の神経活動の試験を可能とする。リアルリアリティーとバーチャルリアリティーとの差異、例えば、バーチャルリアリティーにおける自己運動キューの欠如があることに留意することは重要である。しかしながら、リアルおよびバーチャルリアリティーにおいて、非常に類似の海馬SWRおよびガンマ活動が見出されるため、本明細書に開示される方法のための強いサポートが提供される。第2に、このアプローチを用いる場合、特定の細胞種およびニューロン間の相互作用に対する感覚刺激の効果を調べるために異なる細胞種の多くの単一細胞が記録される。第3に、動物が頭部固定されている場合、記録デバイスはマウスが持つための充分に小さいものである必要はないので、このアプローチは、ADの主要な動物モデルであるマウスから記録を取るために良好に適する。
【0122】
モデルシステムの選択:研究は、健常およびADマウスにおいて神経活動、神経接続、および小膠細胞に対する感覚フリッカー刺激の効果を調べる。SWR欠損が検出可能であり、ガンマフリッカーが小膠細胞を動員し、アミロイドレベルを低減することが見出される3か月齢のADの5XFADマウスモデルおよび野生型マウス(WT)同腹子において神経活動が記録され、小膠細胞が評価される。先行データは既に、APOE4およびhAPPマウスモデルならびにADを有するヒトにおいて報告された欠損に対してある程度の類似性を有する5XFADマウスモデルにおいて神経活動の欠損を明らかにしている。重要なことに、ガンマおよびSWRならびにこの活動を生じさせる回路は、マウス、ラット、非ヒト霊長動物、およびヒトを含む種にわたり保存されているため、動物モデルにおいて発見されたガンマおよびSWRの変化はヒトに拡張される。
【0123】
HPCにおいて神経活動の特定の周波数を駆動するための感覚フリッカー方法の開発および最適化
データは、HPCにおいて時間的に精密な神経活動を駆動するための新規の非侵襲的な方法を示す。第1に、球状トレッドミル上で走るまたは休息する野生型(C57BL6J)マウスの海馬CA1亜領域において32チャンネルシリコーンプローブを使用することにより電気生理学的記録を行った。神経活動を記録しながら、動物に交互期間の(1)静かな暗所、(2)40Hzでオンおよびオフにされる音(25ms毎に鳴らされる1msの長さの10kHzの音;以後、聴覚フリッカー刺激と称する)、ならびに(3)40Hzでオンおよびオフにされる音および光(25ms毎の1msの長さの10kHzの音および12.5msの長さの白色光;以後、多手法的フリッカー刺激と称する)を与えた。スパイクは音と共に周期的に増加および減少したため、神経活動は40Hzの聴覚または多手法的フリッカー刺激の間に40Hzに同調した(
図12)。40Hzの聴覚フリッカーの間のスパイク率におけるピーク間の間隔は記録部位の大部分について約25ms(40Hzと同等)であった。聴覚刺激の間に、平均で55%の記録部位が周期的なスパイク応答を有し、聴覚プラス視覚刺激の間に、61%のCA1記録部位が周期的なスパイクを有したが、これと比較してベースライン期間の間には1%の記録部位であった(
図12)。モジュレーションの深さはスパイクモジュレーションの振幅の指標であり、0(無モジュレーション)~1(最大モジュレーション)の範囲に及ぶが、これは40Hzの聴覚フリッカーの間に0.057~0.391、40Hzの聴覚プラス視覚刺激の間に0.049~0.333であった(25~75パーセンタイル、
図6)。CA1における局所的な電場電位は、40Hzの聴覚刺激の間に40Hzにおいてパワーの上昇を示したが、効果は記録位置およびセッションの間で異なった。そのため、40Hzの聴覚フリッカー刺激はCA1においてロバストな40Hzの同調を誘導した。第2に、覚醒状態の行動性動物においてシリコーンプローブを使用することにより、推定上の錐体細胞および介在ニューロンを含む、多くの単一ユニットが記録された。典型的には、30~50の良好に単離されるユニットが32チャンネルシリコーンプローブで記録され、128チャンネルプローブを使用することによりその収率を向上させる(
図12)。細胞種の分類は、記録のサブセットにおいて光遺伝学的刺激を使用することにより確認される。光遺伝学的刺激および神経記録はマウスにおいて以前に組み合わせられている(
図12a、b)。
【0124】
実験手順:第1に、感覚フリッカーの異なる種類を試験して、3か月齢のWTおよび5XFADマウスにおけるHPCにおいて何が最大のガンマ同調を駆動するかを決定する(
図13)。上記の研究におけるものと類似のアプローチを使用して、動物に異なる聴覚、視覚、または多手法的フリッカーを与えながらHPCにおける神経活動を記録する。動物に交互の10sのブロックの無刺激(ベースライン)ならびにフリッカー刺激(聴覚、視覚、および多手法的フリッカーの間で交互)を与えて、記録内で各刺激の効果を比較する。多手法的フリッカーについて、光および音が同時にオンにされる(同位相多手法的フリッカー)またはサイクルの半分だけオフセットされてオンにされる(オフセット位相多手法的フリッカー)刺激を試験する(
図13)。先行研究および先行ヒト研究に沿ったデューティサイクル(刺激がオンであるサイクルのパーセント)を有する40Hzのフリッカー、すなわち、各25msのサイクルにおいて聴覚刺激の1msのオンおよび視覚刺激の12.5msのオンを動物に与える。実験の別々のセットにおいて、これらのデューティサイクルを変更し、動物を4%のデューティサイクル(1msのオン)を有する視覚および聴覚刺激の両方または50%のデューティサイクル(12.5msのオン)を有する両方に曝露する。全ての刺激について、スパイク率におけるピーク間の間隔およびスパイク率モジュレーションの深さを含む、律動的な神経同調を測定する(
図12)。ウィルコクソン順位和検定、および、一部の結果は正規分布が期待されないので多重比較用の補正のためにボンフェローニ方法を使用することにより聴覚、視覚、同位相多手法的、およびオフセット位相多手法的フリッカーの効果を比較する。追加的に、レイリーの角度統計的検定を使用して、スパイクがフリッカー刺激のある特定の位相に有意にロックされるかどうかを評価する。次に、ウィルコクソン順位和検定および多重比較用の補正のためにボンフェローニ方法を使用して聴覚、視覚、同位相多手法的、またはオフセット位相多手法的フリッカーに有意に位相ロックされた細胞の数に関する比較を行う。同じ統計解析アプローチを使用して異なるデューティサイクルの効果を比較する。また、パワースペクトル密度を局所的な電場電位において使用する。
【0125】
第2に、第1の実験において最大の応答を生じさせるフリッカー刺激を使用して、フリッカー刺激の周波数を次に変更してどのような周波数範囲で感覚フリッカーが神経活動を同調させるかを決定する。上記と同じアプローチを使用して、動物を10sのブロックの10、20、40、60、80、100Hzのフリッカーに曝露する(
図14)。神経応答および信頼性を上記のように測定する。群当たり8匹の雄および8匹の雌マウスの試料サイズ、動物当たり2回の記録は、80%より高いパワーおよびp<0.05でフリッカーとベースライン期間との間およびフリッカーの異なる周波数の間で周期的記録部位のパーセンテージにおける有意差を検出するために充分である。
【0126】
[実施例3]
感覚フリッカーにより生成される脳活動の特定の周波数とアルツハイマー病において脳の健康を促進する多様な細胞機能に対するその効果との間で作成される包括マップ
ここで、感覚フリッカーにより生成される脳活動の特定の周波数とアルツハイマー病において脳の健康を促進する多様な細胞機能に対するその効果との間で包括マップを作成する。刺激の別々の周波数および持続期間は、
1.記憶、シナプス密度、およびニューロン生存を増進し、
2.ニューロンの健康を促進する栄養因子を生成し、
3.アミロイドベータプラークをクリアランスできる神経膠活性化および神経原線維変化を含む、健常な神経免疫機能を促進する因子の発現を刺激する、
精密な遺伝子発現パターンを誘発することが示される。
そのため、この研究は、アルツハイマー病理の5xFADマウスモデルを使用して「刺激対遺伝子発現マップ(StGマップ)」をもたらす。これは、アルツハイマー病における細胞機能および機能障害を制御するための抜本的な新たな方法のための基礎である。
【0127】
この刺激対遺伝子発現(StG)マップは、我々が開発するアプローチを、アルツハイマー病に対する脳の応答の修飾に変換する可能性を有する。以下の革新が同定される:
1.聴覚/視覚的感覚フリッカー技術は完全に非侵襲的である。これは、感覚フリッカーが記憶と関連付けられる脳深部領域における遺伝子発現をどのように変化させるのかを決定する初めての研究である。
2.秒の時間スケールでニューロンの電気的活動を変化させるために40Hzのガンマ刺激が以前に使用されているが、これは分から時間の複数の時間スケールにわたり脳における遺伝子発現に対する刺激の周波数の範囲の効果を調べる初めての研究である。この研究は、そのため、1時間の40Hzが免疫遺伝子の発現を誘導できるという先行する発見を劇的に拡張する(
図19)。
3.組織全体からのRNAseqデータを使用して異なる細胞種からの遺伝子発現シグネチャーを単離するために新規の遺伝子クラスタリングアプローチが使用される。
【0128】
これらの革新は、ニューロンの健康、学習および記憶、保護的な小膠細胞活性、ならびにアルツハイマーのアミロイド病理の寛解を促進する非侵襲的な刺激パターンを同定することを可能とするこの種類の初めてのStGマップを結果としてもたらす。このマップは保護的な刺激レジメンを同定できるだけではなく、フリッカー刺激の効果と関連付けられる多数の機序および経路を研究者が調べることも可能とする。
【0129】
視覚フリッカーは刺激依存的方式でサイトカイン発現を刺激する:40Hzのガンマ視覚フリッカーは、小膠細胞変換、ならびに、サイトカインを含む神経炎症の転写を強く調節するMAPKおよびNFkBシグナル伝達を促進するので(
図20)、1時間の視覚フリッカー後に視覚皮質において32のサイトカイン/ケモカインのタンパク質発現を定量化する。データは、40Hzのフリッカーは、定常光、20Hzのフリッカー、または無作為のフリッカーを用いた刺激と比較して多数のサイトカインの発現をロバストに促進することを示した(
図17a)。重要なことに、各フリッカー刺激群は特有のサイトカイン発現パターンを有し、例えば、抗炎症性IL-10は無作為のフリッカーにより特に刺激され、VEGFは定常光により最も刺激され、20Hzのフリッカーは他の群と比較して全てのサイトカインを強く抑制した(
図17a、b)。これらのデータは、異なる刺激パターンは、健常な神経免疫を修飾し、病理を除去し、ニューロンの健康を促進するために重要な別個の遺伝子の発現をもたらすことを示す。これらのデータは、遺伝子発現に刺激を関係付けるためのStGマップの作成の重要性を強く支持する。
【0130】
異なる刺激パターンは、別個のサイトカインタンパク質発現プロファイルをもたらすことが見出された(
図17a、b、矢印)。次に、刺激の持続期間および周波数は、脳内で異なる遺伝子発現パターンを生じさせるための鍵となる「レバー」であることが示される(
図18に概念化している)。これらは、1)ニューロン生存および栄養サポート、2)シナプス可塑性、3)小膠細胞トランス形成および神経免疫を含む。
【0131】
組み合わせた聴覚+視覚フリッカー刺激の使用は、視覚皮質および海馬においてガンマを同調させることを可能とする。視覚皮質において遺伝子発現を解析することによりStGを最初に作成し、次にアルツハイマー病への翻訳妥当性を増進するコンパニオンマップを海馬において作成する。
【0132】
マウスコホート:Georgia TechにおけるジョイントSinger/Woodマウスコロニーにおいて飼育および収容した雄5xFADマウスのコホート。5xFADマウスは、2か月(2mo)までに可溶性Aβのレベルおよび6か月までにロバストなプラーク形成の上昇を示す。早期アルツハイマー病理の治療的に関連する状況においてフリッカー療法の効果を同定するために、3か月の5xFADマウスを本研究のために使用する。
【0133】
非侵襲的なガンマ感覚フリッカー刺激:5xFADマウスをフリッカー周波数の広がり(Hz)および曝露の持続期間[0.5、1、2、4、8](hr)に曝露する。周波数の広がりは、40Hzのフリッカーが我々の予備データにおいて強い免疫応答をもたらしたこと、また顕著により低いおよびより高い周波数は神経系(例えば、可塑性)に対して反対の効果を有し得ることから同定した。持続期間の範囲は、0.5時間の40Hzの刺激はサイトカイン発現における変化をもたらし、4~8時間は遺伝子発現経路内の負のフィードバックと関連付けられる時間定数であることを先行研究が示したことに基づいて選択した。刺激の間に、動物を研究室に連れてきて、静かな部屋に1時間座らせ、清潔な空の曝露ボックスに入れ、指定された時間にわたり同時の聴覚/視覚フリッカーに曝露する。フリッカー曝露後に、動物を屠殺し、脳を迅速に除去し(<2分)、顕微解剖し、視覚皮質および海馬をRNA抽出のために単離する。ベースラインを確立するために、N=5のマウスから組織を収集し、定常光中に1時間保つ。
【0134】
RNAseqデータ収集:炎症応答および/または細胞死に関与する遺伝子セット/経路を広く理解するために、TRIzol(Thermo Fisher)を使用して各脳領域(視覚皮質、海馬)からRNAを単離する。Bioznalyzer 2100を使用してRNA品質を検証し、RIN>6の試料のみを実施する。次にNextera XT Index Kit v2を使用する解析のためにRNAを調製し、Illumina NextSeq 500(IBB、Georgia Tech Molecular Evolution and High Throughput Sequencing Core)で高出力モードにおいてシークエンシングする。TopHatを使用してシークエンシングデータをアライメントし、リード数を断片/エクソンキロ塩基/100万(FPKM)の観点で報告する(FPKM)。各脳領域からの試料を単一のバッチにおいて実施し、それによりバッチ効果は予期されない。このトランスクリプトームワイドのデータセットは、充実した内容であり、そのためデータは迅速に学術論文において報告され、以下に議論されるStGマップと共に刊行される。
【0135】
StGマッピング:StGマップはこの種類における最初のものである。したがって、マップを構築するために3つの相補的なマッピングアプローチを採用する:
1.遺伝子セットの濃縮:Broad Molecular Signatures Databaseからの既存の精選された遺伝子セットを遺伝子セット濃縮分析(GSEA)と共に使用して、各刺激周波数/持続期間に応答した各遺伝子セットの濃縮を同定する。この分析の主要な適用の証明を、40Hzのフリッカーまたは定常光に1時間曝露したマウスから収集されたRNAseqデータに対して実行する(
図19)。この分析は、偽発見率調整済みq値<0.25を有する顕著に濃縮された31の遺伝子セットを同定した。刺激の周波数および持続期間をスイープし、それぞれを定常光対照と比較することにより、
図18に概念化されるマップを生成する。
【0136】
感覚フリッカーはニューロンのMAPKおよびNFκBシグナル伝達を上方調節する。免疫活性は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)および活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)経路を含むいくつかの古典的キナーゼ経路内の細胞内シグナル伝達により中枢性に調節される。これらの経路は、小膠細胞の動員および活性化に関与する、サイトカインを含む多数の因子の下流の発現を調節する(
図20a)。さらに、これらの経路は、シナプス可塑性に関与する最初期遺伝子(例えば、Arc、cFos)を調節する。ニューロンのカルシウム流入により調節されるMAPKおよびNFκB経路は、フリッカーの二重のシナプス活性および免疫活性の機序であることを次に示す。40Hzのフリッカーによるこれらの経路の刺激を試験するために、LuminexマルチプレックスELISAパネル(Millipore)を使用して、視覚皮質の組織全体からの各経路における6つのホスホタンパク質を定量化する。ホスホ-シグナル伝達経路における活性は遺伝子またはタンパク質発現よりはるかに早く起こるので、組織を5分の視覚フリッカー後に収集し、安楽死の2分以内に脳を迅速に収集した。解析は、両方の経路(例えば、リン酸化されたMek、Erk、Jnk、NFκB)は無作為刺激に曝露したまたは暗所に保ったマウスと比較して40Hzのフリッカーにおいて上方調節されることを示した(
図20b)。
【0137】
MAPK経路シグナル伝達をモジュレートするために、マウスに血液脳関門浸透性小分子MEK阻害剤、SL327を腹腔内(IP)注射した。下流のErkリン酸化の観点で薬物の活性を評価したところ(
図20c)、40Hzのフリッカーは無作為のフリッカーと比較してホスホ-Erkを有意に増加させることおよび薬物はホスホ-Erkを有意に抑制することが見出された。ビヒクルの有意な効果は同定されなかった(33%のDMSO、33%のPEG、33%の生理食塩水;灰色点対黒色点、
図20c)。合わせると、これらのデータは、40Hzのガンマフリッカーは、小分子阻害剤を使用することによりモジュレートされ得るニューロン内シグナル伝達を誘導することを示す。
【0138】
40Hzのフリッカーは、MAPKおよびNFκBシグナル伝達により媒介されるサイトカイン発現を誘導する。40Hzのフリッカーおよび関連するMAPK/NFκBシグナル伝達が小膠細胞を動員および変換する可能な分子メカニズムを同定するために、Luminexを使用して、マウスに30または60分間視覚フリッカーを与えた後の視覚皮質内の32のサイトカインタンパク質の発現を定量化した(Millipore)。40Hzのフリッカーに応答して、この解析は、定常光、20Hzのフリッカー、または無作為のフリッカーに曝露したマウスと比較して、30分までにある特定のサイトカインの微妙な増加、および60分までに小膠細胞動員に関与するサイトカインの著しい増加(increased)を明らかにした(
図21)。棒グラフは、20Hzのフリッカーと比較して40Hzのフリッカーにおいて有意に増加した選択されたサイトカインを示す。追加的に、判別部分的最小二乗回帰(D-PLSR)を使用して、40Hzのフリッカーと強く相関した複合サイトカインプロファイルを同定した。この複合サイトカインプロファイルは、群間の明確な差異を実証した(
図21)。最後に、IHCは、小膠細胞活性化に関与するサイトカインであるM-CSFはニューロンマーカーNeuNに局在したことを示す(
図22)。
【0139】
次に、MAPKおよびNFκBシグナル伝達は、40Hzのフリッカーに応答してサイトカイン発現を媒介することを示す(
図20a)。そのために、フリッカーの開始の30分前にマウスに各経路の小分子阻害剤をIP注射する。経路阻害がサイトカインをもたらすかどうかを見るために、MekおよびJnkのMAPK阻害剤を併用投与してマウスの1群においてMAPK経路を阻害し、IKKβおよびNFκBのNFκB阻害剤(クルクミン、Nrf2も活性化させる)を併用投与してマウスの異なる群においてNFκB経路を阻害した。非常に興味深いことに、いずれかの経路の阻害は、40Hzのフリッカーに応答してサイトカイン発現を抑制することが見出された。ホスホ-シグナル伝達データと共に、これらのデータは、40Hzのフリッカーは、小膠細胞活性化および動員を調節することが公知の広範なサイトカインの発現を媒介するMAPKおよびNFκB経路シグナル伝達を刺激することを示す。
【0140】
アルツハイマー病のマウスモデルはin vivoでガンマにおける欠損を有する。先行研究は、トランスジェニック5XFADアミロイドマウスモデルを含むアルツハイマーのマウスモデルにおいてガンマ振動における欠損を示した。特に、欠損は、ガンマ振動の強度において、ならびに、健常マウスにおいて空間学習および記憶のために必須の活動である鋭波リップル(SWR)の間のガンマ振動によりスパイクがどれほど良好にモジュレートされるかにおいて同定された。これらの欠損は、疾患において行動欠損(3か月齢において最初に検出される)の前に早期に始まる。さらには、ガンマ活動の駆動は、アミロイドベータレベルを有意に低減し、小膠細胞を動員してアミロイドの貪食を増加させることが見出された。これらの結果は、神経活動の欠損は、学習および記憶障害に繋がるだけでなく、ADの分子および細胞病理にも寄与することを示す。5XFADマウスにおいて見出される欠損は、ヒト、hAPP、およびAPOE4マウスにおいて見出されるものに著しく類似している。そのため、ここで開発した非侵襲的刺激は、最も一般的な認知症であるアルツハイマー病、または律動活動において欠損を有する他の疾患に対する新たな療法に繋がる可能性を有する。結果として、律動活動の特定のパターンを駆動するためのこの新たな非侵襲的な方法は、神経活動をモジュレートし、分子病理に影響するための広範囲の臨床応用を有する。この単純な非侵襲的な感覚刺激は、ヒトにおいて容易に試験可能である。次に、ADを有するヒト対象において我々の発見を試験する。
【0141】
予備データは、5XFADアルツハイマーマウスはガンマ活動の低減を患っていることを実証した。さらに、ガンマ振動は、刺激の数分以内にMAPKおよびNFκB経路内の細胞内シグナル伝達、1時間以内に多数の免疫調節性サイトカインの発現の増進、1時間後に小膠細胞活性化の変化、1週の経過にわたりアミロイド負荷の低減を誘導することが見出された。次に、(1)MAPKおよび/またはNFκB経路は、ガンマが神経免疫活性をモジュレートする機序であること、ならびに(2)ガンマ刺激およびこれらの同じ分子経路の誘導が、ADのマウスモデルにおいて同定されたシナプス有効性における欠損にどのように影響するのかを示す。これは、神経-免疫相互作用の分子メカニズムを調べた最初の研究であり、組織応答の広い細胞種特異的な解析と共にこれらの経路の薬理学的乱れは、40Hzのガンマを小膠細胞の神経免疫応答ならびに学習および記憶と関連付ける機序への深い洞察をもたらす。
【0142】
5XFADおよびAPP/PS1コホートの生成:3~4か月齢の雄および雌5XFADマウスならびに5~6か月齢のAPPswe/PS1dE9(APP/PS1)マウスを使用する。5XFADマウスは、アミロイド前駆体タンパク質において3つの突然変異およびプレセニリン1において2つの突然変異を半接合的に宿し、これらのそれぞれは、ヒトにおける遺伝性ADに個々に関与する。APP/PS1は、共にCNSニューロンを標的として、ヒトにおける家族性ADに関与するAPPおよびPS1においてそれぞれ単一の突然変異を半接合的に宿す。
【0143】
5XFADマウスは、2か月までに可溶性のAβの上昇および6か月までにロバストなプラーク形成を示す。40HzのフリッカーはこのモデルにおいてAβクリアランスを促進することが示された。
【0144】
フリッカーに応答した免疫調節シグナル伝達および小膠細胞活性の時間的解析:野生型(WT)および5XFAD同腹マウスを複数モーダル聴覚/視覚フリッカー(フリッカーと称する)に曝露する。マウスを40Hzのフリッカー、20Hzのフリッカー、または無作為の感覚フリッカーに5分、1時間、または1時間/日で1週間曝露する。無作為および20Hz群は対照として働く。無作為のフリッカーの間に、光および音を40Hzの平均の無作為の間隔で与える。ガンマ周波数の神経活動は増加しないが、曝露期間にわたり平均で同じ回数の刺激が送達されるので、無作為刺激は対照として働く。動物を研究室に連れてきて、静かな部屋に1時間座らせ、清潔な空の曝露ボックスに入れ、指定された時間にわたりフリッカーまたは定常光に曝露する。複数日にわたりフリッカーに曝露される動物について、この手順を各日に同じ時間に繰り返し、次に動物を動物施設に戻す。最終のフリッカー曝露後に、動物を屠殺する。
【0145】
感覚フリッカーに応答した野生型および5XFADマウスにおけるホスホ-シグナル伝達、サイトカイン発現、および小膠細胞表現型の時間的進展。第1のパートにおいて、フリッカーへの応答を5XFADマウスおよび野生型同腹子の両方において5分、1時間、および1週の時点で定量化する。これらの時点は、ホスホ-シグナル伝達(
図20、5分)、サイトカイン発現(
図21、1時間)における変化を同定する示されたデータ、ならびに1週で小膠細胞の形態および表現型が変換されるという刊行された発見に対応することから選択される。
【0146】
実験群:各遺伝子型において、1)40Hz、2)20Hz、および3)無作為のフリッカーからなる実験群が必要とされる。20Hzおよび無作為群のいずれもガンマを誘導しない。Iba1+小膠細胞のサイズの差異、40Hzのフリッカー動物と無作為動物との間のホスホ-Erkにおいて我々が見出した差異(
図20)、および40Hzの動物と20Hzの動物との間のM-CSFの差異(
図21)に基づいて、検定力分析(両側、80%の検定力、α=0.05)は、40Hzと2つの対照群との間で差異を見るためには実験群当たりN=10のマウスが必要とされることを示す。
【0147】
シグナル伝達およびサイトカイン:刺激後に左半球(left hemistphere)を顕微解剖し(microdissect)、Luminex(Millipore)を使用して視覚皮質および海馬の両方からの全ての時点におけるMAPKおよびNFκB経路の12のタンパク質のリン酸化(
図20)ならびに32のサイトカイン/ケモカイン(
図21)を定量化する。
【0148】
免疫組織化学(IHC)および蛍光(flourescent) in situハイブリダイゼーション(FISH):右半球を4%のパラホルムアルデヒドに固定し、IHCを使用して古典的な活性化マーカーIba1(小膠細胞、但し非特異的)およびGFAP(星状膠細胞)を定量化する。追加的に、IHCを使用して、ニューロンマーカーNeuN(Novus)と共に上位ホスホタンパク質(例えば、ホスホ-NFκB)およびサイトカイン(例えば、MIG)について共標識してニューロンからのそれらの発現レベルを決定する。FISH(Thermo Fisher)も使用して、鍵となるサイトカインについてのmRNA共局在性を検証する。
【0149】
RNAseqを介する小膠細胞表現型解析:単離された小膠細胞のRNAseq解析のために、FACS関連小膠細胞活性化(activaiton)を回避するためにCD11b+カラムを使用して全脳から小膠細胞を単離する。動物を保存するために、この解析を1時間および1週の時点において実行する。
【0150】
サイトカインおよびAβの定量化:上記の方法を使用してサイトカインおよびAβを定量化する。小膠細胞応答を定量化するために、AD患者における炎症性および他の生理学的差異を単離するために最近使用され、アルツハイマーの小膠細胞遺伝子発現シグネチャーを単離するために使用された加重遺伝子共発現ネットワーク解析(WGCNA)を使用する。WGCNAを使用して、各遺伝子モジュールが感覚フリッカーに応答してどのように変化するのかが決定される。フィッシャー直接検定を使用して群間の有意な変化を評価する。
【0151】
ADマウスにおけるシナプス有効性の欠損:錐体細胞と介在ニューロンとの接続が2つのADマウスモデル(5XFADおよびAPP/PS1)において変化しているかどうかを試験するために、スパイク幅およびオートコレログラムの質量中心を使用することにより単一ユニットを推定上の興奮性錐体細胞および阻害性介在ニューロンに分類する。ジッター(jitter)方法を使用して推定上の単シナプス接続およびミリ秒同期ユニットを同定する。シナプス有効性または強度を測定するために、シャッフル平均と比較して細胞ペアのクロスコレログラムにおいて1~3msのラグで有意なピークまたはトラフを検出することにより推定上の単シナプスで接続されたユニットを同定する。シャッフル平均と比較して細胞ペアのクロスコレログラムにおいて0msのラグで有意なピークを検出することにより推定上の同期ユニットを同定する。接続強度、または機能的なシナプス有効性を定量化することにより、シナプス接続がADマウスとWT同腹子との間で異なったかどうかを次に比較する。これは、正規化されたクロスコレログラムの0~3msの範囲のピークの振幅として定義される。興味深いことに、データは、錐体ニューロンから介在ニューロンへの接続の接続強度はWT同腹子と比較して5XFADマウスにおいて有意に低かったことを示す(
図29a、b)。同期性の調査は、介在ニューロン-介在ニューロンペアの間で有意により低い同期性があったが他の細胞種ではそうではなかったことを示す(
図29c、d)。
【0152】
[実施例4]
非侵襲的な感覚刺激は覚醒マウスにおいて脳深部構造を標的化する
結果
40Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてスパイク活動をモジュレートする。聴覚音刺激がAC、HPCのCA1領域、およびmPFCにおいてGENUSを生じさせ得るかどうかを決定するために、動物に20Hz、40Hz、80Hzで繰り返される音列、または無作為間隔の音列を与えた(1msの長さの10kHzの音が12.5ms、25ms、50ms毎に、または無作為の音間隔で奏される;以下、「聴覚刺激」と称する、方法)。3~8か月齢の雄野生型(C57BL6J)マウスが球状トレッドミル上を走るまたは休息する際に該マウスにおいて32チャンネルシリコン(silicon)プローブを使用することにより音提示の間のAC、CA1、またはmPFCにおける神経活動を記録した。推定上の単一ユニットの発火率は各音と共に周期的に増加および減少し、それにより40Hzの聴覚刺激に同調した(
図23A、G、およびM;
図23B、H、およびN、青色)。ユニットを無作為刺激によってもモジュレートした。全ての無作為のパルスをアライメントした場合、刺激後に発火率モジュレーションの変化があり、単一ユニットは無作為刺激パルスに応答したことを指し示した。しかしながら、聴覚音の無作為列は、刺激自体は周期的ではないので周期的な発火モジュレーションを誘導しなかった(
図23B、H、およびN、橙色)。聴覚刺激への同調は、位相分布および振幅の両方において単一ユニット間で異なった。聴覚刺激の間に、ニューロンは刺激の関数として発火したが、あらゆるサイクルにおいておよび多くの場合に広範囲の位相において発火するわけではなかった。40Hzの聴覚刺激に応答して、ほとんどのニューロンは、ACにおいて0~22パルス毎、CA1において0~30パルス毎、mPFCにおいて0~34パルス毎に発火したが(第1~第3四分位数を報告する;
図23B、H、およびN;
図23E、K、およびQ)、発火率におけるピーク間の間隔は単一ユニットの大部分において約25ms(40Hzと同等)であった(
図23C、I、およびO)。対照的に、音なしのベースライン期間および無作為の音を用いた期間の間に、ピーク間の間隔は約25msの広い分布を有した(すなわち、発火率は40Hzにおいてモジュレートされなかった;
図23C、I、およびO)。刺激位相の関数として単一ユニット発火率を考慮し、そのベクトル強度(VS)を算出することによりモジュレーション強度を定量化した(
図23D、J、およびP、左)。ベクトル強度値は0~1の範囲に及び、0は発火が刺激によりモジュレートされない均一な分布を表し(VS=0)、1はニューロンが特定の刺激位相に対してのみ発火した分布を表す(VS=1)。40Hzの聴覚刺激に対する単一ユニット応答のベクトル強度の分布は無刺激および無作為刺激より有意に高かった(
図23D、J、およびP、中央)。無作為刺激のベクトル強度もまた無刺激より有意に高かったが(ベクトル強度は刺激によるモジュレーションを測定するため)、それは周期的な発火モジュレーションを誘導しなかった。同様に、40Hzの聴覚刺激の間の単一ユニットについてのレイリー統計の分布は、無刺激および無作為刺激対照のそれより有意に高かった(
図23D、JおよびP、右)。単一ユニット内の刺激条件間のベクトル強度およびレイリー統計における差異は、ニューロンは周期的な刺激によってより強くモジュレートされること、および単一ユニットは刺激のより低い周波数により有意により強くモジュレートされることを示した(
図24G、N、およびU)。単一ニューロンの平均発火率は、40Hzの聴覚刺激と無刺激、無作為刺激、20Hz、および80Hzの聴覚刺激対照との間で類似していた(
図23F、L、およびR;
図24D、K、およびR)。ACにおける局所的な電場電位は、40Hzの聴覚刺激の間に40Hzでのパワーの上昇を示したが、効果は、記録位置、記録セッション、およびマッピング音に対する応答潜時の間で異なった(
図24B、I、およびP)。これらの発見は、40Hzの聴覚刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてGENUSをロバストに誘導することを示唆する。
【0153】
組み合わせた聴覚および視覚GENUSは小膠細胞によるクラスタリング表現型応答を誘導する。GENUSは視覚刺激(Iaccarino et al., 2016)および聴覚刺激の両方を通じて応用できることが示されているので、次の実験は、40Hzの光フリッカーとの40Hzの聴覚音刺激の組合せ(組合せGENUS)がAC、CA1、およびmPFCにおいて神経応答を同調させ、いずれかの感覚モダリティー単独より強い効果を有するかどうかを決定することを目的とする。3~8か月齢の雄野生型(C57BL6J)マウスが球状トレッドミル上を走るまたは休息する際に32チャンネルシリコンプローブを使用してAC、CA1、またはmPFCにおける神経活動を記録しながら、動物に40Hzでの12.5msの長さの光パルスと組み合わせた1msの長さの聴覚音(聴覚プラス視覚、またはA+Vの、刺激)を与えた(方法)。単一ユニット発火率は、音および光がオンの各期間と共に周期的に増加および減少したため、組合せGENUSの間に40Hzに同調した(
図25A~C、左)。AC、CA1、およびmPFCにわたり、ベクトル強度分布は有意により高く、無作為および無刺激期間と比較して40Hz A+Vへの単一ニューロンの同調したスパイクを示した(
図25A~C、右)。AC、CA1、およびmPFCにおける40HzでのLFPにおけるパワーの上昇が40Hz A+V刺激の間に観察された(
図26A、H、およびO)。LFPパワーの増加はmPFCにおいて非常に小さかったが、無刺激と比較したA+V刺激の間の平均発火率の差異の中央値分布は0から有意に異なった一方(
図26O、R)、いずれの効果も聴覚GENUSを単独で用いたmPFCにおいて見られなかった(
図24P、R)。そのため、40Hzでの組み合わせた音プラス光刺激はAC、CA1、およびmPFCにおいてGENUSを誘導した。顕著な同調はまた、20Hz、80Hz、および無作為の周波数のA+V刺激を用いて3つ全ての領域において観察されたが、後者は周期的な発火モジュレーションを誘導しなかった(
図26B~G、I~N、P~U)。
【0154】
一態様では、対象において神経学的疾患、傷害、状態、または感染症(例えば、統合失調症、癲癇、前頭側頭型認知症、血管性認知症、双極性障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、自閉症、筋萎縮性側索硬化症、卒中、外傷性脳傷害、双極性障害、虚血再灌流傷害、多発性硬化症、および/または鬱病など)に起因する炎症性傷害を含む神経学的疾患、傷害、状態、または感染症を治療する方法であって、対象を刺激に曝露することを含み、刺激が、対象の脳において神経活動を誘導し、対象内の細胞活性の少なくとも1つの可溶性メディエーターの発現をモジュレートし、刺激が1時間未満にわたり対象に送達される、方法が本明細書に開示される。
【0155】
一態様では、神経学的疾患、傷害、状態、または感染症を治療する開示される方法において治療のために使用される刺激は、開示される方法において1時間未満にわたり送達され得ることが理解され、本明細書において想定される。一態様では、1時間未満の刺激は、単一の曝露としてまたは1日当たり2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、150もしくはより多くのドースの曝露において送達され得る。追加的に、刺激治療は少なくとも、6、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48時間毎に1回、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31日毎に1回、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12か月毎に1回施され得ることが理解され、本明細書において想定される。一態様では、治療は、単一回数でまたは神経学的疾患もしくは状態を治療するための必要に応じて施され得る。そのため、一態様では、治療は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、45、60日、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24か月、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90またはより長い年にわたり行われ得る。一態様では、治療は、対象の人生の残余にわたり続けられる。
【0156】
対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法であって、対象を40Hzの感覚フリッカー刺激、無作為の感覚フリッカー刺激、一定の感覚刺激、またはその組合せに曝露することを含む、方法もまた本明細書に開示される。一態様では、方法が、細胞を40Hzの感覚フリッカー刺激に曝露することを含み、細胞活性の可溶性メディエーターが、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-12p70、IL-12p40、IFN-γ、LIF、TNF-α、MIP-1β、エオタキシン、MIG、GRO-α、IL-13、MCP-1、IL-1α、LIX、G-CSF、IL-1β、IL-3、IL-6、IL-15、RANTES、および/またはM-CSFを含む、任意の先行する態様の対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法が本明細書に開示される。一態様では、方法が、細胞を無作為の感覚フリッカー刺激に曝露することを含み、細胞活性の可溶性メディエーターが、IL-10、MIG、GRO-α、LIX、G-CSF、IL-1β、IL-3、IL-6、IL-15、RANTES、および/またはM-CSFを含む、任意の先行する態様の対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法が本明細書に開示される。一態様では、方法が、細胞を一定の感覚刺激に曝露することを含み、細胞活性の可溶性メディエーターが、VEGF、IL-2、IL-5、IL-9、IL-13、MCP-1、IL-1α、および/またはMIP-1αを含む、任意の先行する態様の対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法が本明細書に開示される。
【0157】
対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を抑制する方法であって、対象を定常光または20Hzの点滅光に曝露することを含む、方法もまた本明細書に開示される。
【0158】
考察
周波数が増加するにつれて各クリックはより調節性となるが、遅い聴覚クリック列刺激は、ACニューロンから、同期した位相ロックされたスパイク応答を誘発することができる。これらの結果と合致して、ACニューロンは、20Hz、40Hz、および80Hzで繰り返される音に同調すること、ならびに、より速い周波数について、ニューロンは、個々の音と比べてより小さい比率に応答しておよびより広範囲の位相において発火することが見出された。CA1およびmPFCニューロンが、聴覚刺激を含む感覚キューに応答できるという大規模なエビデンスがあるが、40Hzの聴覚、またはA+Vの刺激はこれらの脳領域において40Hzで小さいが有意な発火率同調を誘発することが初めて示される(
図23B、H、およびNならびに
図25A~C)。ACにおけるように、CA1およびmPFCにおける単一ユニットはモジュレーションを示し、あらゆるパルスに応答して発火するわけではないが刺激位相の関数として発火した。感覚入力はHPCおよびmPFCにおいて、スパイクの同調をローパスフィルターする可能性がある複数の間接的な経路を通じてこれらの領域に到達するので、より弱いスパイクモジュレーションがこれらの領域において予期され得る。
【0159】
率コーディングの研究は、ニューロンは刺激に対して同期することなく発火率を使用してクリック列をコードできることを示す。各脳領域において、一部のニューロンは聴覚列の周波数に依存して異なる率で発火するが、全体としての集団は異なる刺激周波数に対してより多くまたはより少なく発火することはないことが見出された(
図23F、L、およびRならびに
図26D、K、およびR)。したがって、他の周波数ではそうではなかったが40Hzの聴覚刺激に応答した、小膠細胞、星状膠細胞、脈管系、およびアミロイドレベルの他に、行動成績における観察された変化は、発火率の全体的な変化によっては説明できないと結論される。
【0160】
方法および材料
外科的処置。成体(2~3か月齢)マウスをイソフルランで麻酔し、定位フレームに固定した。眼科用軟膏(Puralube Vet Ointment、Dechra)を目に塗布し、頭皮を剃り、ポビドンヨード(Dynarex)および70%のエタノールで滅菌した。歯科用セメント(C&B Metabond、Parkell)を使用して特注のステンレス鋼頭部プレートを固定し、LFP記録のための標的開頭部位を頭骨上にマークした(mm単位で、CA1を標的化するためにブレグマから-2.0前/後、+/-1.8内/外;聴覚皮質を標的化するために-2.0~-3.0前/後、+/-1.8内/外;前頭前皮質を標的化するために+1.3~+1.4前/後、+/-1.0内/外)。開頭術を後に3~8か月齢のマウスにおいて行った。最初の記録セッションの前日または当日に、歯科用ドリルを用いて頭骨を薄厚化し、次に27ゲージ針を用いて孔を作製することにより開頭術(200~500μmの直径)を行った。記録していない時には、無菌シリコンエラストマー(Kwik-Sil WPI)を用いて開頭部をシールした。
【0161】
電気生理学的記録。記録の間に、頭部固定動物は、空気浮遊する8インチの球状トレッドミル上を走った。全ての動物は以前に、加糖練乳(1:2の水希釈)を時折与えられながら、快適になるまでトレッドミル上での運動を学習していた。動物は最大5時間ボール上に置かれ、この時間の間に走行および休息の複数の期間を有した。単一シャンク32チャンネルプローブ(NeuroNexus)を標的位置まで進めた。記録部位は250μmにわたった。聴覚皮質の記録のために、プローブを鉛直平行から45°の角度で冠状面に3~4.15mmの深さまで進めた。5、10、15、および20kHzの一連の50msの音を与えて平均LFPにおける聴覚応答を検出した。CA1記録のために、海馬錐体層の電気生理学的特徴(大きいシータ波および鋭波リップル、複数のチャンネルにおける150+μVのスパイク)が観察されるまで、プローブを開頭部を通じて鉛直に1.14~2.05mmの深さまで進めた。前頭前皮質の記録のために、プローブを鉛直から20°の角度、冠状面から49°の角度で1.48~2.15mmの深さまで進めた。データが同じ記録セッションの間に複数の深さにおいて収集される場合、記録部位の位置が依然として標的位置にあることを確実にするために新たな深さをマッピングした(ACについて5匹のマウスにおける9セッションからのn=9の記録深さ、CA1について5匹のマウスにおける10セッションからの12の記録深さ、mPFCについて4匹のマウスにおける7セッションからのn=7の記録深さ)。参照として粉砕したペレットを使用してIntan RHD2000 Evaluation Systemを使用して20kHzのサンプリング率でデータを取得した。
【0162】
電気生理学的記録のための聴覚および視覚刺激。10sのベースライン期間と交互の10sの刺激ブロックを動物に与えた。20Hz、40Hz、80Hzで、または無作為刺激(25msの平均間隔を有する均一な分布から決定される無作為のパルス内間隔と共にパルスを送達した)を用いて聴覚のみもしくは聴覚および視覚刺激の間で刺激ブロックを循環させた。刺激ブロックを交互として、観察される結果がニューロン応答における経時的な変化に起因しないことを確実にした。10sの長さの刺激ブロックを使用して、開始効果の影響を低減し、長期的な律動刺激への神経応答を調べた。全ての聴覚パルスは1msの長さの10kHzの音であった。全ての視覚パルスは刺激周波数(25ms、12.5ms、または6.25msの長さ)の50%のデューティサイクルであった。組み合わせた刺激のために、聴覚および視覚パルスを各パルスの開始にアライメントした。
【0163】
前頭前皮質の組織構造。各動物における最終のmPFC記録の間に、プローブをDiIでコーティングし、標的深さまで挿入した。マウスに麻酔(イソフルラン)下でリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の4%のパラホルムアルデヒドを経心的に灌流させ、脳を終夜1xPBS中の4%のパラホルムアルデヒドに後固定した。Leica VT1000Sビブラトーム(Leica)を用いて脳を100μmの厚さに切片化した。切片を1xPBS中の0.2%の1mMolのDAPIで染色し、Vectashieldマウンティング培地と共に顕微鏡スライドにマウントした。付属のZen Blue 2ソフトウェアを用いてZeiss Axio Observer Z1倒立落射蛍光顕微鏡上で画像を取得した。
【0164】
スパイクの選別および単一ユニットの安定性。MountainSort自動化スパイク選別、続いて波形およびクロスコレログラムの目視検査に基づく手動精選を使用してスパイクの検出および選別を実行した。手動精選の前に、1より大きいまたは1に等しいピークSNR、ノイズとの10%未満のオーバーラップ、および良好に単離された単一ユニットを結果としてもたらす他のユニットに対して95%より高い単離を有するユニットのみが含まれるように品質閾値を適用した。単一ユニットが損失している記録において不安定性の期間を説明するために、安定な期間(単一ユニットの発火率の突然の損失がない)のみが解析において考慮されるように安定性基準を適用した。各ユニットについての発火率(FR)を記録セッションの経過にわたり計算した。k平均クラスタリングを使用して発火率を2つの分布、低FRおよび高FRにクラスター化した。高FRの平均の10%未満に低下したFRを有するユニットについて、さらなる解析により、FRが低FRの平均より2標準偏差高い時間の最も長い長さとして定義される安定記録期間を同定した。
【0165】
LFP。未加工トレースを2kHzにダウンサンプリングし、1~300Hzの間でバンドパスフィルターをかけることによりLFPを得た。
【0166】
パワースペクトル。Chronux toolboxからのマルチテーパー方法(時間バンド幅生成物=3、テーパー数=5)を使用してパワースペクトル密度解析を行った。LFPトレースを各刺激条件の10s試行に分割した。頭骨の上の生理食塩水中の粉砕されたペレットを参照して、これらの試行にわたり各動物(同じ記録日および記録深さ内)について平均パワースペクトル密度を計算した。パワースペクトル密度解析を最初にAC、CA1、およびmPFCにおける全ての記録部位について計算する。各記録深さから、40Hzのフリッカー刺激に応答して最大の40Hzピークを有するトレースを解析に含めた。提示したデータに示される深さ当たりのトレースは、聴覚フリッカー刺激に応答して最大の40Hzピークを有した。
【0167】
フリッカー刺激の間の発火。各刺激周波数についての単一ユニットの刺激前後時間ヒストグラム(PSTH)は、刺激列にわたるスパイクを示すために、サイクル当たり10ビンと共に2つの刺激サイクル(
【0168】
【数1】
)を含んだ。複数のサイクルにわたりスパイクモジュレーションを示すことは、振動によるモジュレーションを示すために典型的である。それぞれの光オンまたは音オンのパルスの開始の前後に1つの刺激サイクルについてスパイクをビニングすることにより全ての単一ユニットについてPSTHを計算した。無作為刺激条件におけるように、無作為に分布したパルス時間を使用して無刺激(ベースライン)ヒストグラムを算出した。ビン当たりのスパイク数をそのビンにおける総時間(パルス時間ビンサイズの総数)で割ることにより各ビンにおいて発火率を計算した。刺激周波数に対する発火率の周期性を定量化するために、発火率ピークの間の時間間隔を全ての単一ユニットヒストグラムについて算出した。各PSTHのピークは、1つの刺激間隔内の最大発火率であった。刺激による発火率モジュレーションを定量化し、角度統計を計算するために、刺激前後スパイク時間をラジアン:(刺激前後スパイク時間)×2π×(刺激周波数)に変換し、ベクトル強度およびレイリー統計を計算した。ベクトル強度はCircStat toolboxの方法を使用して計算し、レイリー統計は式RS=2nVS
2(式中、nは総スパイク数であり、VSはベクトル強度である;(Berens, 2009)、Ma et al. 2013)を使用して計算した。各ユニットについての刺激条件間のこれらの値における差異を取ることによりベクトル強度およびレイリー統計値における差異を計算した。全ての記録された単一ユニットについてのフリッカーに対する発火率応答を示すヒートマップを4つの連続する刺激サイクルにわたり計算した。全てのニューロンの応答を示すために、各刺激期間の4つの連続する刺激サイクルを示す。これを行うために、各刺激条件の10sの提示期間をアライメントし、次に各提示期間の最初の100msを除外して開始効果が同調を曖昧にすることを防止した。次に、次の4つの刺激サイクル(20Hzについて200ms、40Hzについて100ms、80Hzについて50ms)にわたりスパイク応答を平均してフリッカーに対する発火率応答を得た。各単一ユニットについての発火率を1msのビンにおいて計算し、各刺激周波数に比例したガウス窓(
【0169】
【数2】
)を用いて平滑化し、z-スコア化した。解析した4サイクルにおける平均刺激位相選好性によりニューロンをアライメントした。
【0170】
平均発火率。平均発火率を各刺激条件についての各単一ユニットについて計算した。各ユニットについて安定な期間のみが平均FRの算出に寄与した(上記のスパイクの選別および単一ユニットの安定性を参照)。そのユニットについての各条件における平均FRの差異を取ることにより各ユニット内の刺激条件間の平均発火率の差異を計算した。
【0171】
参考文献
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
主題を構造的特徴および/または方法論的行為に対する特定の表現において記載したが、添付の特許請求の範囲において定義される主題は、上記の特定の特徴または行為に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。むしろ、上記の特定の特徴および行為は、請求項を実施する例示的な形態として開示される。
本願は、以下の発明を含む。
(発明1)
対象において脳活動を制御する方法であって、
前記対象に刺激を送達することを含み、
前記刺激が、前記対象の脳において神経活動を誘導し、前記対象内の細胞活性の少なくとも1つの可溶性メディエーターの発現をモジュレートし、
前記刺激が1時間未満にわたり前記対象に送達される、方法。
(発明2)
細胞活性の前記少なくとも1つの可溶性メディエーターが、サイトカイン、ケモカイン、または増殖因子を含む、発明1に記載の方法。
(発明3)
前記刺激が約30分未満にわたり前記対象に送達される、発明1に記載の方法。
(発明4)
前記刺激が約10分未満にわたり前記対象に送達される、発明3に記載の方法。
(発明5)
前記刺激が約5分未満にわたり前記対象に送達される、発明4に記載の方法。
(発明6)
前記刺激が非侵襲的刺激である、発明1~5のいずれか1項に記載の方法。
(発明7)
前記刺激が、20Hzの感覚フリッカー刺激、40Hzの感覚フリッカー刺激、無作為の感覚フリッカー刺激、または一定の感覚刺激である、発明1~6のいずれか1項に記載の方法。
(発明8)
前記刺激が視覚刺激または聴覚刺激の少なくとも1つである、発明7に記載の方法。
(発明9)
モジュレートするための細胞活性の可溶性メディエーターを選択すること、および
細胞活性の前記選択された可溶性メディエーターをモジュレートする刺激プロトコールを選択すること
をさらに含む、発明7または8に記載の方法。
(発明10)
前記刺激プロトコールが、前記20Hzの感覚フリッカー刺激、前記40Hzの感覚フリッカー刺激、前記無作為の感覚フリッカー刺激、または前記一定の感覚刺激の1つである、発明9に記載の方法。
(発明11)
刺激が40Hzの感覚フリッカー刺激を含み、細胞活性の前記可溶性メディエーターが、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-12 p70(IL-12p70)、インターロイキン-12 p40(IL-12p40)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、LIF、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP-1β)、ガンマインターフェロン誘導モノカイン(MIG)、増殖調節癌遺伝子-α(GRO-α)、LIX(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、Regulated upon Activation,Normal T cell Expressed,and Secreted(RANTES)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インターロイキン-13(IL-13)、単球化学誘引タンパク質1(MCP-1)、および/またはインターロイキン-1α(IL-1α)、および/またはエオタキシンを含む、発明1~10に記載の方法。
(発明12)
刺激が無作為の感覚フリッカー刺激を含み、細胞活性の前記可溶性メディエーターが、インターロイキン-10(IL-10)、ガンマインターフェロン誘導モノカイン(MIG)、増殖調節癌遺伝子-α(GRO-α)、LIX(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、Regulated upon Activation,Normal T cell Expressed,and Secreted(RANTES)、および/またはマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を含む、発明1~10に記載の方法。
(発明13)
刺激が一定の感覚刺激を含み、細胞活性の前記可溶性メディエーターが、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-13(IL-13)、単球化学誘引タンパク質1(MCP-1)、インターロイキン-1α(IL-1α)、および/またはマクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)を含む、発明1~10に記載の方法。
(発明14)
刺激が40Hzの感覚フリッカー刺激または無作為の感覚フリッカー刺激を含み、細胞活性の前記可溶性メディエーターが、ガンマインターフェロン誘導モノカイン(MIG)、増殖調節癌遺伝子-α(GRO-α)、LIX(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、Regulated upon Activation,Normal T cell Expressed,and Secreted(RANTES)、および/またはマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を含む、発明1~10に記載の方法。
(発明15)
刺激が40Hzの感覚フリッカー刺激または一定の感覚刺激を含み、細胞活性の前記可溶性メディエーターが、インターロイキン-13(IL-13)、単球化学誘引タンパク質1(MCP-1)、および/またはインターロイキン-1α(IL-1α)を含む、発明1~10に記載の方法。
(発明16)
刺激が20Hzの感覚フリッカー刺激を含み、細胞活性の前記可溶性メディエーターが、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-7(IL-7)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-12 p70(IL-12p70)、インターロイキン-12 p40(IL-12p40)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、LIF、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP-1β)、エオタキシン、インターロイキン-10(IL-10)、血管内皮増殖因子(VEGF)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-9(IL-9)、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)、ガンマインターフェロン誘導モノカイン(MIG)、増殖調節癌遺伝子-α(GRO-α)、LIX(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-15(IL-15)、Regulated upon Activation,Normal T cell Expressed,and Secreted(RANTES)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、インターロイキン-13(IL-13)、単球化学誘引タンパク質1(MCP-1)、および/またはインターロイキン-1α(IL-1α)を含む、発明1~10に記載の方法。
(発明17)
前記刺激が感覚フリッカー刺激である、発明1~5のいずれか1項に記載の方法。
(発明18)
前記感覚フリッカー刺激が視覚フリッカー刺激または聴覚フリッカー刺激の少なくとも1つである、発明17に記載の方法。
(発明19)
前記感覚フリッカー刺激が組み合わせた視覚および聴覚フリッカー刺激である、発明18に記載の方法。
(発明20)
前記刺激が経頭蓋電気刺激または経頭蓋磁気刺激である、発明1~5のいずれか1項に記載の方法。
(発明21)
前記脳活動が感覚皮質の少なくとも1つにおいて誘導される、発明1~20のいずれか1項に記載の方法。
(発明22)
前記脳活動が、海馬、内側側頭葉、前頭葉、皮質下構造、視床、視床下部、または脳幹の少なくとも1つにおいて誘導される、発明1~20のいずれか1項に記載の方法。
(発明23)
前記刺激が前記対象の脳において神経活動を駆動する、発明1~22のいずれか1項に記載の方法。
(発明24)
前記対象の脳における前記神経活動が約20~80Hzの範囲内の神経活動である、発明23に記載の方法。
(発明25)
前記対象に送達された前記刺激を使用して前記対象の脳において疾患、傷害、感染症、または正常な加齢の少なくとも1つを治療することをさらに含む、発明1~24のいずれか1項に記載の方法。
(発明26)
前記対象に送達された前記刺激を使用して神経変性疾患を治療することを含む、発明1~24のいずれか1項に記載の方法。
(発明27)
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または多発性硬化症(MS)である、発明26に記載の方法。
(発明28)
前記対象内の免疫調節シグナル伝達または細胞生存シグナル伝達の少なくとも1つをモジュレートすることにより前記対象において状態を治療することを含む、発明1~24のいずれか1項に記載の方法。
(発明29)
前記状態が、癲癇、統合失調症、自閉症、外傷性脳傷害(TBI)、双極性障害、卒中、または鬱病である、発明28に記載の方法。
(発明30)
前記対象に送達された前記刺激を使用して前記対象の脳の神経可塑性を誘導または抑制することを含む、発明1~24のいずれか1項に記載の方法。
(発明31)
細胞活性の前記少なくとも1つの可溶性メディエーターのモジュレーションが一過性であるように前記刺激の送達を制御することをさらに含む、発明1~30のいずれか1項に記載の方法。
(発明32)
前記刺激が少なくとも1つの細胞内シグナル伝達経路を上方調節する、発明1~31のいずれか1項に記載の方法。
(発明33)
前記少なくとも1つの細胞内シグナル伝達経路が古典的キナーゼ経路を含む、発明32に記載の方法。
(発明34)
前記少なくとも1つの細胞内シグナル伝達経路が、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路、活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)経路、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)経路、核因子(赤血球由来2)様2(Nrf2)経路、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸3-キナーゼ(PI3K)/Akt経路、またはヤヌスキナーゼ(JAK)-シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)経路を含む、発明32に記載の方法。
(発明35)
細胞内シグナル伝達に対する刺激効果が、少なくとも1つの最初期遺伝子の発現または活性をモジュレートする、発明1~34のいずれか1項に記載の方法。
(発明36)
前記少なくとも1つの最初期遺伝子が活性調節細胞骨格関連タンパク質(ARC)またはFos癌原遺伝子(C-Fos)である、発明35に記載の方法。
(発明37)
前記刺激が、分化を調節する細胞内シグナル伝達をモジュレートする、発明1~36のいずれか1項に記載の方法。
(発明38)
対象において神経学的状態を治療する方法であって、前記対象を刺激に曝露することを含み、前記刺激が、前記対象の脳において神経活動を誘導し、前記対象内の細胞活性の少なくとも1つの可溶性メディエーターの発現をモジュレートし、前記刺激が1時間未満にわたり前記対象に送達される、方法。
(発明39)
前記刺激が、20Hzの感覚フリッカー刺激、40Hzの感覚フリッカー刺激、無作為の感覚フリッカー刺激、一定の感覚刺激、またはその任意の組合せを含む、発明38に記載の方法。
(発明40)
前記神経学的状態が、統合失調症、癲癇、前頭側頭型認知症、血管性認知症、双極性障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、卒中、外傷性脳傷害、多発性硬化症、または鬱病を含む、発明38に記載の神経学的状態を治療する方法。
(発明41)
前記神経学的状態が鬱病を含む、発明40に記載の神経学的状態を治療する方法。
(発明42)
前記刺激が40Hzの感覚フリッカー刺激または無作為の感覚フリッカー刺激を含む、発明41に記載の神経学的状態を治療する方法。
(発明43)
前記神経学的状態が、加齢、外傷性脳傷害、ストレス、統合失調症、および/または鬱病の結果としてもたらされる炎症性損傷を含む、発明38に記載の神経学的状態を治療する方法。
(発明44)
前記刺激が20Hzの感覚フリッカー刺激または無作為の感覚フリッカー刺激を含む、発明41に記載の神経学的状態を治療する方法。
(発明45)
対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法であって、前記対象を40Hzの感覚フリッカー刺激、無作為の感覚フリッカー刺激、一定の感覚刺激、またはその任意の組合せに曝露することを含む、方法。
(発明46)
前記方法が、前記細胞を40Hzの感覚フリッカー刺激に曝露することを含み、細胞活性の前記可溶性メディエーターが、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-12p70、IL-12p40、IFN-γ、LIF、TNF-α、MIP-1β、エオタキシン、MIG、GRO-α、IL-13、MCP-1、IL-1α、LIX、G-CSF、IL-1β、IL-3、IL-6、IL-15、RANTES、および/またはM-CSFを含む、発明45に記載の細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法。
(発明47)
前記方法が、前記細胞を無作為の感覚フリッカー刺激に曝露することを含み、細胞活性の前記可溶性メディエーターが、IL-10、MIG、GRO-α、LIX、G-CSF、IL-1β、IL-3、IL-6、IL-15、RANTES、および/またはM-CSFを含む、発明45に記載の細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法。
(発明48)
前記方法が、前記細胞を一定の感覚刺激に曝露することを含み、細胞活性の前記可溶性メディエーターが、VEGF、IL-2、IL-5、IL-9、IL-13、MCP-1、IL-1α、および/またはMIP-1αを含む、発明45に記載の細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法。
(発明49)
前記方法が、前記細胞を40Hzの感覚フリッカー刺激または無作為の感覚フリッカー刺激に曝露することを含み、細胞活性の前記可溶性メディエーターが、MIG、GRO-α、LIX、G-CSF、IL-1β、IL-3、IL-6、IL-15、RANTES、および/またはM-CSFを含む、発明45に記載の細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法。
(発明50)
前記方法が、前記細胞を40Hzの感覚フリッカー刺激または一定の感覚刺激に曝露することを含み、細胞活性の前記可溶性メディエーターが、IL-13、MCP-1、および/またはIL-1αを含む、発明45に記載の細胞活性の可溶性メディエーターの発現を上方調節する方法。
(発明51)
対象の脳において細胞活性の可溶性メディエーターの発現を抑制する方法であって、前記対象を定常光または20Hzの点滅光に曝露することを含む、方法。