(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】オキシメチレン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 2/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
C08G2/00
(21)【出願番号】P 2021018971
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】木原 雄一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 知宏
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-161695(JP,A)
【文献】特開平11-124422(JP,A)
【文献】特開2003-321525(JP,A)
【文献】米国特許第04224435(US,A)
【文献】米国特許第06037439(US,A)
【文献】米国特許第05886139(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 2/00-2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシメチレン重合体を連続的に製造する方法であって、
原料物質と、触媒を含む液体とを、内管と外管とで構成される二重管を用いて重合器内に導入する導入工程と、
前記重合器内で前記原料物質と前記触媒とを反応させてオキシメチレン重合体を生成させる反応工程と、
を有し、
前記導入工程において、
前記原料物質が前記二重管の前記内管と前記外管の間を通過し、
前記触媒を含む液体が前記二重管の前記内管の内部を通過し、
前記内管はその先端部において外観で先端に向かって細くなる形状であ
り、
前記原料物質及び前記触媒を含む液体が接触する直前の、前記原料物質及び前記触媒がいずれも一定の線速で流れる部分であって、前記内管の内部の空間の断面積及び前記内管と前記外管の間の空間の断面積のいずれもが一定となっている部分において、前記線速の単位をm/sとした場合に、前記原料物質の線速を前記触媒を含む液体の線速で除した比の範囲が0.4~8.9であり、
前記内管の断面において前記内管の内面をなす線と前記内管の壁の厚さの漸減が始まる点と前記内管の壁の厚さが最小になる点とを結ぶ直線とがなすテーパー角の角度が、10~70°の範囲である
ことを特徴とする、
オキシメチレン重合体の製造方法。
【請求項2】
前記原料物質と前記触媒を含む液体との接触と、重合器内への導入とが同時である、請求項1に記載のオキシメチレン重合体の製造方法。
【請求項3】
前記原料物質がトリオキサンである、請求項1又は2に記載のオキシメチレン重合体の製造方法。
【請求項4】
前記触媒がカチオン重合触媒である、請求項1~3のいずれか一項に記載のオキシメチレン重合体の製造方法。
【請求項5】
前記テーパー角の角度が、10~30°の範囲である、請求項
1~4のいずれか一項に記載のオキシメチレン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシメチレン重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オキシメチレン重合体は、加工性と生産性に優れるため、溶融射出成型や溶融押出成型等の成型方法により、所望の形状の製品や部品を効率良く生産できるという利点を有している。このような利点を生かし、オキシメチレン重合体は、電気・電子材料分野、自動車分野、その他各種工業材料分野、食品の包装分野、部品用材料分野に幅広く用いられている。これらの用途の製品製造に際し、原料物質と重合触媒を混合し、オキシメチレン重合体を連続的に、かつ安定して得られる重合工程を有するオキシメチレン重合体の製造方法が求められている。
【0003】
オキシメチレン重合体を得る方法のうち、原料物質と重合触媒を混合後に重合器へ供給する方法として、これまでに種々の提案が成されている。
例えば、モノマーとコモノマーの混合原料液配管に導入する重合触媒溶液配管の投入角度を変化させることで、ポリマーによる配管閉塞や狭窄で重合器への供給不良を発生させることなく連続運転を可能とする方法(例えば、特許文献1参照)や、コモノマーと重合触媒を予め混合した後、モノマーと混合させる工程において、コモノマーの供給方向と重合触媒の供給方向とを同方向にしながら両者を接触、混合させる方法(例えば、特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4092545号公報
【文献】特許第3208377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、これらは原料物質と触媒が混合することにより重合反応が進行し、混合接触部から重合器へ到達するまでの時間を規定しているが、原料物質、触媒液の供給量変動や、重合器内の圧変動により接触部での滞留時間が長くなり、重合物が配管先端部に固着、ひいては供給部の閉塞による重合停止を招く可能性がある。
【0006】
上記特許文献2では、触媒液とコモノマーを予め混合して混合物とし、原料物質であるトリオキサンと混合する際の、混合流の線速度、混合時間が規定されているが、触媒液、コモノマー、及びトリオキサンを混合した際に重合固形物が付着し、供給部配管が閉塞する可能性は否定できない。
【0007】
そこで、本発明は、重合器にてオキシメチレン重合体を連続的に安定して得ることができるオキシメチレン重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、重合器の原料物質、及び触媒を含む液体(以下、「触媒液」ともいう)を供給する配管において、両者が接触する際の配管近傍での原料物質、及び触媒液の混合液滞留により生じる重合固形物の配管付着により、重合が阻害されることを見出した。そして、本発明者らは、特定の構造を有する二重管を用いて原料物質と触媒液を重合器に供給することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
即ち、本実施形態は以下のとおりである。
[1]
オキシメチレン重合体を連続的に製造する方法であって、
原料物質と、触媒を含む液体とを、内管と外管とで構成される二重管を用いて重合器内に導入する導入工程と、
前記重合器内で前記原料物質と前記触媒とを反応させてオキシメチレン重合体を生成させる反応工程と、
を有し、
前記導入工程において、
前記原料物質が前記二重管の前記内管と前記外管の間を通過し、
前記触媒を含む液体が前記二重管の前記内管の内部を通過し、
前記内管はその先端部において外観で先端に向かって細くなる形状であり、
前記原料物質及び前記触媒を含む液体が接触する直前の、前記原料物質及び前記触媒がいずれも一定の線速で流れる部分であって、前記内管の内部の空間の断面積及び前記内管と前記外管の間の空間の断面積のいずれもが一定となっている部分において、前記線速の単位をm/sとした場合に、前記原料物質の線速を前記触媒を含む液体の線速で除した比の範囲が0.4~8.9であり、
前記内管の断面において前記内管の内面をなす線と前記内管の壁の厚さの漸減が始まる点と前記内管の壁の厚さが最小になる点とを結ぶ直線とがなすテーパー角の角度が、10~70°の範囲である
ことを特徴とする、
オキシメチレン重合体の製造方法。
[2]
前記原料物質と前記触媒を含む液体との接触と、重合器内への導入とが同時である、[1]に記載のオキシメチレン重合体の製造方法。
[3]
前記原料物質がトリオキサンである、[1]又は[2]に記載のオキシメチレン重合体の製造方法。
[4]
前記触媒がカチオン重合触媒である、[1]~[3]のいずれかに記載のオキシメチレン重合体の製造方法。
[5]
前記テーパー角の角度が、10~30°の範囲である、[1]~[4]のいずれかに記載のオキシメチレン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオキシメチレン重合体の製造方法により、オキシメチレン重合体を連続的に、かつ安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態で用いる二重管をその軸に沿う面により切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
(オキシメチレン重合体の製造方法)
本実施形態のオキシメチレン重合体の製造方法は、原料物質と、触媒を含む液体とを、二重管を用いて重合器内に導入する導入工程と、前記重合器内で原料物質と触媒とを反応させてオキシメチレン重合体を生成させる反応工程と、を有し、前記導入工程において、原料物質が二重管の外側流液部(内管と外管の間)を通過し、触媒液が二重管の内側流液部(内管の内部)を通過し、内管はその先端部において、外観で先端に向かって細くなる形状であることを特徴とする。なお、先端部とは、厳密に管の先端のみを指すものではなく、
図1に示すように、管の形状を把握するのに合理的な範囲を含む。
【0014】
[導入工程]
本実施形態のオキシメチレン重合体の製造方法は、原料物質と触媒を含む液体(触媒液)とを、内管と外管とで構成される二重管を通して重合器に供給する導入工程を含む。導入工程において、原料物質と触媒液と共に、後述する分子量調整剤などの任意成分も一緒に二重管を用いて重合器に供給してよい。
また、この工程において、原料物質と触媒液との接触と重合器内への導入とが同時であることが好ましい。ここで、「原料物質と触媒液との接触と重合器内への導入とが同時」とは、原料物質の少なくとも一部と触媒液の少なくとも一部との接触の時点と重合器内への導入の時点との時差が0.1秒未満であることを指す。また、ここで、「重合器内への導入の時点」とは、原料物質と触媒液とが接触して形成された混合液が、重合器の開口部(二重管の先端としてよい)よりも重合器の内側に位置するようになった時点を指す。
【0015】
<二重管>
図1に、本実施形態で用いる二重管をその軸に沿う面により切断したときの断面図で示す。
本実施形態で用いる二重管は、原料物質、及び触媒液を重合器内へ供給するための配管であり、重合器の最前段部、上側に設置される。二重管は、その内管と外管との間を原料物質、内管の内部を触媒液が流れる構造である。ここで、内管の内部の空間が二重管内側流液部を形成し、内管と外管との間の空間が二重管外側流液部を形成する(
図1参照)。二重管内側流液部の断面積は、内管の先端部の所定の延在長さに亘って一定であってよく、また、二重管外側流液部の断面積は、内管の先端部の所定の延在長さに亘って一定であってよい(
図1参照)。
【0016】
具体的には、ホモポリマーの場合は、原料物質として例えばトリオキサンと任意の分子量調整剤をあらかじめ混合し、コポリマーの場合は、例えば、原料物質としてトリオキサンと、コモノマーである環状エーテル及び/又は環状ホルマール、及び任意の分子量調整剤をあらかじめ混合して、二重管外側流液部を通過させる。内側流液部は触媒とその希釈溶媒をあらかじめ混合した触媒液を通過させる。
【0017】
二重管の先端部の少なくとも一部、例えば、原料物質、及び触媒液が接触する直前の一定線速で流れる部分(二重管内側流液部の断面積及び二重管外側流液部の断面積のいずれもが一定となっている部分)での、原料物質の線速を触媒液の線速で除した比(原料物質の線速の触媒液の線速に対する割合)の範囲が0.4~8.9であり、0.9~8.4であるとより好ましい。ここで、線速の単位としては、m/sを用いる。
【0018】
また、
図1に示すように、二重管の内管は、その先端部において、外観で先端に向かって細くなる形状(テーパー形状)である。ここで、先端部における二重管内側流液部の断面積は、非先端部における二重管内側流液部の断面積と同じとしてよい。即ち、二重管の内管では、先端部において、二重管の内管の壁の厚さが、先端に向かって漸減している。内管の断面(
図1参照)において、内管の内面をなす線と内管の壁の厚さの漸減が始まる点と内管の壁の厚さが最小になる点とを結ぶ直線とが角(テーパー角)をなして交わる。内管の断面において、内管の内面をなす線の端は、内管の外面をなす線の端よりも、二重管の軸方向外方に位置している。
上記テーパー角の角度は、10~70°であることが好ましく、10~30°であることがより好ましく、10~20°であるとさらに好ましい。なお、上記テーパー角の角度とは、内管の内面をなす線と内管の壁の厚さの漸減が始まる点と内管の壁の厚さが最小になる点とを結ぶ直線とがなす角度のうち小さい角度としてよい。
【0019】
本実施形態では、原料物質の線速を触媒液の線速で除した比の範囲、及び内管の先端角が上記範囲内にあることで、原料物質、触媒液の混合液が二重管先端部で滞留することなく安定して連続重合を行うことができる。
【0020】
<原料物質>
本実施形態に用いる原料物質は、例えばトリオキサンを用いることができる。
トリオキサンは、酸性触媒の存在下でホルムアルデヒドを反応させることにより製造することができる。
原料物質には、通常、水、ギ酸が不純物として含まれる。これら不純物は、連鎖移動剤として作用し、重合により得られるオキシメチレン重合体のポリマー末端基が熱的に不安定な状態となり、熱安定性の高いオキシメチレン重合体を得ることが難しくなる場合があり得る。そのため、これら不純物を、重合開始までに、一定濃度まで精製除去することが好ましい。原料物質におけるこれら不純物の合計含有量は、原料物質の質量を基準として、100質量ppm以下であることが好ましく、50質量ppm以下であることがより好ましく、30質量ppm以下であることがさらに好ましい。
【0021】
<コポリマーの原料物質>
本実施形態でオキシメチレン重合体のコポリマーを製造する場合は、原料物質に添加するコモノマー成分として環状エーテル及び/又は環状ホルマールを用いることができる。具体的に、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキサイド、オキセタン、1,3-ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4-ブタンジオールホルマール、1,5-ペンタンジオールホルマール、1,6-ヘキサンジオールホルマール等を挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
重合時における、環状エーテル及び/又は環状ホルマールの添加量は、原料物質1molに対して、0.01~0.2molの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01~0.15molの範囲であり、さらにこの好ましくは0.01~0.1molの範囲であり、特に好ましくは0.01~0.05molの範囲である。環状エーテル及び/又は環状ホルマールの添加量が前記範囲内にあれば、重合速度がある程度速く、重合収率も十分高くなり、安定的にオキシメチレン重合体を製造することができる傾向にある。
【0023】
<触媒>
本実施形態の製造方法に用いる触媒は、オキシメチレン重合体を安定して製造できる触媒であれば特に限定されないが、好ましくはカチオン重合触媒である。カチオン重合触媒としては、ルイス酸、プロトン酸、及びそのエステル又は無水物等が挙げられる。ルイス酸としては、例えば、ホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモン化物が挙げられ、特に、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素系水和物、及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましい。プロトン酸、及びそのエステル又は無水物等としては、例えば、パークロル酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パークロル酸3級ブチルエステル、アセチルパークロラート、トリメチルオキソニウムヘキサフルオロホスフェート、ヘテロポリ酸、イソポリ酸、ヘテロポリ酸の酸性塩及びイソポリ酸の酸性塩が挙げられ、特にヘテロポリ酸が好ましい。これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
重合触媒の添加量は、安定して連続重合する観点から、原料物質1molに対して1×10-9~1×10-2molの範囲が好ましく、より好ましくは2×10-9~1×10-2molの範囲であり、さらに好ましくは5×10-9~1×10-3molの範囲である。
【0025】
<触媒液>
本実施形態の製造方法に用いる触媒液は、上述した触媒種を、重合反応に悪影響のない不活性な希釈溶媒で重合触媒を希釈して調製したものである。
重合触媒を希釈するための希釈溶媒としては、水酸基を有さない炭化水素化合物であることが望ましい。炭化水素化合物の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素化合物;n-ヘキサン、n-へプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素化合物;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、1,4-ジオキサンなどのエーテル化合物;等が挙げられ、用いるカチオン重合触媒の溶解性に応じて適宜選択することができる。上記水酸基を有さない炭化水素化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このような水酸基を有さない炭化水素化合物を希釈溶媒として用いることで、オキシメチレン重合体の分子量を容易にコントロールすることができる。
【0026】
重合時における、希釈溶媒の添加量は、原料物質1molに対して、0.1×10-3~0.2molの範囲が好ましく、より好ましくは0.2×10-3~0.1molの範囲であり、さらに好ましくは0.5×10-3~0.05molの範囲である。希釈溶媒の添加量が前記範囲内であれば、重合反応を阻害することなく、より高収率でオキシメチレン重合体を得ることができる点で好ましい。
【0027】
<分子量調整剤>
本実施の形態においては、分子量調整剤として、低分子量アセタール化合物を使用してもよい。低分子量アセタール化合物は、原料物質と環状エーテル及び/又は環状ホルマールとの重合時に連鎖移動剤として機能するものであり、分子量が200以下、好ましくは60~170のアセタール化合物である。具体的に、分子量調整剤としては、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラールを好適に挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、重合時における低分子量アセタール化合物の添加量は、ポリアセタールコポリマーの分子量を好適な範囲に制御する観点から、原料物質1molに対して0.1×10-4~0.6×10-2molの範囲内であることが好ましい。
【0028】
[反応工程]
本実施形態の製造方法は、重合器内で原料物質と触媒とを反応させてオキシメチレン重合体を生成させる反応工程を含む。オキシメチレン重合体は、塊状法でのカチオン重合により重合される。使用する重合反応機の形状(構造)としては、特に限定するものでないが、一般的には、ジャケットに熱媒を通すことのできる2軸のパドル式やスクリュー式の撹拌混合型重合反応機を好適に使用することができる。
重合反応温度は、63~135℃の範囲に保つことが好ましい。また、重合反応温度は、より好ましくは70~120℃の範囲であり、さらに好ましくは70~100℃の範囲である。
重合反応機内の滞留(反応)時間は、好ましくは0.1~30分であり、より好ましくは0.1~25分であり、さらに好ましくは0.1~20分である。
【0029】
重合反応温度及び重合反応機内の滞留時間をそれぞれ上記の範囲に調整することにより、オキシメチレン重合体の熱分解をより効果的に抑えることができ、熱的により安定なオキシメチレン重合体を製造することができる。
【0030】
<重合後の洗浄、ろ過、乾燥処理>
そして、重合後には、例えば、得られたオキシメチレン重合体から重合触媒を洗浄除去することができる。重合触媒の洗浄除去方法としては、従来から提案されている方法を用いることができ、例えば、水のみ、あるいは、アンモニア、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン等のアミン類、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機塩類、有機酸塩等の少なくとも1種以上の失活剤を含む水溶液に、重合反応機から排出されたオキシメチレン重合体を投入し、スラリー状態で数分~数時間、室温~100℃以下の範囲で連続撹拌しながら重合触媒を洗浄除去することができる。オキシメチレン重合体が大きな塊状の場合には、重合触媒の洗浄除去効率を高める観点から、オキシメチレン重合体を粉砕し、微細化することにより、洗浄除去し易くすることが好ましい。重合触媒の洗浄除去後、遠心分離機等でろ過し、窒素環境下などで乾燥することにより、目的とするオキシメチレン重合体を得ることができる。
【実施例】
【0031】
以下、具体的な実施例と参考例と比較例を挙げて本実施形態について詳細に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
なお、実施例、参考例及び比較例で適用した評価方法、及び原料は以下のとおりとした。
【0033】
[運転安定性 評価方法]
重合器へ、原料物質、触媒液を、二重管を介して供給し、連続で重合させた際に、二重管先端部の閉塞による原料物質供給部、触媒液供給部の圧変動が定常時の値の50%以上で見られるまでの連続運転時間を評価した。
【0034】
[実施例1]
重合器として、80℃に設定した同方向回転の2軸型パドル式連続重合反応機(株式会社栗本鐵工所社製、径2B、L/D=14.8)を用いた。なお、酸素混入を防止するため、重合反応機のフィード口付近から、1時間当たり60Lの窒素を流した。内管の先端部をテーパー形状とした二重管を用い、テーパー角の角度θは後述のとおりとした。そして、重合反応機に、トリオキサンを4000g/hrで二重管外側流液部を通して供給した。また、トリオキサン1molに対して0.045mol(148.0g/hr)の環状エーテル及び/又は環状ホルマールとしての1,3-ジオキソランを重合反応機にフィードした。その後、重合触媒としての三塩化鉄を希釈溶媒としての1,4-ジオキサンを用いて適切な割合で希釈し、得られた重合触媒液を、二重管内側流通部を通して重合器に供給し、重合を開始した。トリオキサン及び1,3-ジオキソランの混合物と三塩化鉄の1,4-ジオキサン溶液との接触の時点とこれらの混合液が重合反応機の開口部より内側に位置するようになるのに要した時間は0.1秒未満であった。
結果を表1に示す。
【0035】
[実施例2~5、参考例6、7]
原料物質と触媒液の線速比、及び内管先端角を表1に示した条件とした以外は、実施例1と同様に実施した。
結果を表1に示す。
【0036】
【0037】
[比較例1、2]
原料物質と触媒液の線速比、及び内管先端角を表2に示した条件とした以外は、実施例1と同様に実施した。
結果を表2に示す。
【0038】
【0039】
表1に示すように、実施例1~5、参考例6、7では、内管先端部が先端に向かって狭くなる形状であるため、供給配管の圧変動なく、7h以上問題なく連続運転可能であった。
表2に示すように、比較例1~2では、内管先端部が先端に向かって狭くなる形状でないため、供給配管の圧変動が顕著であり、重合開始して間もなく重合器の運転を停止した。重合器停止後に二重管先端部を観察したところ、重合体析出による配管閉塞が見られ、実用レベルではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のオキシメチレン重合体の製造方法により、オキシメチレン重合体を連続的に、かつ安定して得ることができる。