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特許7602938排ガス用炭化水素吸着材、及びその製造方法、並びに、排ガス浄化用HCトラップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】排ガス用炭化水素吸着材、及びその製造方法、並びに、排ガス浄化用HCトラップ
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/18 20060101AFI20241212BHJP
   B01J 29/74 20060101ALI20241212BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20241212BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241212BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20241212BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B01J20/18 D
B01J29/74 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J20/18 E
B01J20/28 Z
B01J20/30
F01N3/08 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021035144
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135379
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118991
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 聡二郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 由紀夫
(72)【発明者】
【氏名】石川 尭彦
(72)【発明者】
【氏名】藤村 雄大
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 圭
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/188341(WO,A1)
【文献】特表2013-517935(JP,A)
【文献】国際公開第2013/077404(WO,A1)
【文献】特開2004-105821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/18
B01J 29/74
B01D 53/94
B01J 20/28
B01J 20/30
F01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MSE型ゼオライト、及び前記MSE型ゼオライトに担持されたカリウム及びX(ここでXは、Cs)を少なくとも含有し、
前記MSE型ゼオライトのシリカアルミナ比(SiO2/Al23)が、モル比で10以上100以下であり、
Xのカリウム比(X/K)が、モル比で2.0以上25.0以下である、
排ガス用炭化水素吸着材。
【請求項2】
カリウムのアルミナ比(K/Al)が、モル比で0.04以上0.50以下である
請求項1に記載の排ガス用炭化水素吸着材。
【請求項3】
Xのアルミナ比(X/Al)が、モル比で0.10以上1.50以下である
請求項1又は2に記載の排ガス用炭化水素吸着材。
【請求項4】
粉末X線回折測定において、10nm以上100nm以下の結晶子径を有する
請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス用炭化水素吸着材。
【請求項5】
0.01μm以上20μm以下の平均粒子径D50を有する
請求項1~4のいずれか一項に記載の排ガス用炭化水素吸着材。
【請求項6】
内燃機関の排ガスを浄化する排ガス浄化用システムに用いられる排ガス浄化用HCトラップであって、
ハニカム型基材と、前記ハニカム型基材上及び/又は内に設けられた炭化水素吸着層と、を備え、
前記炭化水素吸着層は、請求項1~5のいずれか一項に記載の排ガス用炭化水素吸着材を少なくとも含有する、
排ガス浄化用HCトラップ。
【請求項7】
前記炭化水素吸着層は、前記ハニカム型基材の単位体積(1L)を基準として、前記排ガス用炭化水素吸着材を1g/L以上150g/L以下含む
請求項6に記載の排ガス浄化用HCトラップ。
【請求項8】
前記炭化水素吸着層は、貴金属成分としてPt、Pd、及びRhよりなる群から選択される1種以上を含む炭化水素吸着触媒層である
請求項6又は7に記載の排ガス浄化用HCトラップ。
【請求項9】
触媒層をさらに備える
請求項6~8のいずれか一項に記載の排ガス浄化用HCトラップ。
【請求項10】
K担持MSE型ゼオライトを準備する工程と、並びに
K担持MSE型ゼオライトにX(ここでXは、Cs)を付与して、シリカアルミナ比(SiO 2 /Al 2 3 )がモル比で10以上100以下であり且つXのカリウム比(X/K)がモル比で2.0以上25.0以下であるK-X担持MSE型ゼオライトを合成する工程、を少なくとも有する、
K-X担持MSE型ゼオライトの製造方法。
【請求項11】
前記K-X担持MSE型ゼオライトを合成する前記工程では、イオン交換法により前記K担持MSE型ゼオライトに前記Xを担持させる
請求項10に記載のK-X担持MSE型ゼオライトの製造方法。
【請求項12】
前記K担持MSE型ゼオライトを準備する前記工程では、カリウム存在下で水熱合成法により前記K担持MSE型ゼオライトを合成する
請求項10又は11に記載のK-X担持MSE型ゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス用炭化水素吸着材、及びその製造方法、並びに、排ガス浄化用HCトラップ等に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関の排ガス中には、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)及び粒子状物質(Particulate Matter:PM)等が含まれており、これらは内燃機関の種類に応じて開発された、各種排ガス浄化触媒を備える排ガス浄化システムによって効率的に浄化されている。
【0003】
ところが、例えば内燃機関用排ガス浄化触媒のHC浄化性能は、触媒温度が200℃前後で十分な触媒活性を示すものが多い。そのため、排ガス浄化触媒が十分な触媒活性を示す温度に達していない状態では、期待される排ガス浄化性能は発揮されない。そのため、例えばエンジン始動直後等のコールドスタート時においては、HCの排出が多くなる場合があると想定される。
【0004】
そのため、内燃機関における低温時に排出されるHC浄化性能の改善が検討されている。具体的には、十分な触媒活性を示す温度に排ガス浄化触媒が暖機されるまでは、排ガス中に含まれるHCを一時的に炭化水素吸着材にトラップ(吸着、保持)し、触媒温度の上昇にともなって炭化水素吸着材からHCを徐々に脱離させ、これを排ガス浄化触媒にて浄化することで、HC浄化性能を向上させる手法が知られている。
【0005】
このような排ガス用の炭化水素吸着材としては、各種ゼオライトを用いたものが知られている。例えば特許文献1には、耐熱性能を高めるために、ケイバン比(シリカアルミナ比)が120以上あるいは200以上のβ型ゼオライトにAgを担持させた、ガス成分の低減材が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、12員環及び/又は10員環から構成される2次元細孔及び/又は3次元細孔を有する多次元細孔ゼオライト(ISV構造ゼオライト、BEC構造ゼオライト、MCM-68(MSE構造ゼオライト)、MWW構造ゼオライト)からなる排気ガス用炭化水素吸着材が、β型ゼオライトよりも高いHC吸着率を示すことが開示されている。
【0007】
一方、特許文献3には、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムまたはストロンチウムまたはそれらのいずれか二種以上の混合物から選択された活性金属が炭化水素吸着材料上に含浸された組成物を含む触媒層が開示されており、具体的には、ZSM-5(MFI型ゼオライト)にセシウムを含浸することで、HC浄化性能が向上することが示されている。
【0008】
また、特許文献4には、ホスト化合物及びゲスト物質を用いて調製した特殊な層間化合物を、HC吸着層に含ませることで、HC吸着浄化性能が向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-001109号公報
【文献】特開2004-105821号公報
【文献】特表2004-504130号公報
【文献】特開2006-297375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来技術の排ガス用炭化水素吸着材は、トラップしたHCの放出性能に劣り、そのため、コールドスタート時のHC浄化性能が依然として不十分なものであった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸着したHCのHC脱離開始温度が高く、コールドスタート時により高いHC浄化性能を発現可能な、排ガス用炭化水素吸着材及びその製造方法、並びに、排ガス浄化用HCトラップ等を提供することにある。
【0012】
なお、ここでいう目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも、本発明の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、MSE型ゼオライトに所定の元素を担持させたK-X担持MSE型ゼオライトが、吸着したHCのHC脱離開始温度が高く、コールドスタート時により高いHC浄化性能を発現し得ることを見出し、これを排ガス用炭化水素吸着材として用いることで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
〔1〕MSE型ゼオライト、及び前記MSE型ゼオライトに担持されたカリウム及びX(ここでXは、K以外のアルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属よりなる群から選択される1種以上の元素)を少なくとも含有し、前記MSE型ゼオライトのシリカアルミナ比(SiO2/Al23)が、モル比で10以上100以下であり、Xのカリウム比(X/K)が、モル比で2.0以上25.0以下である、排ガス用炭化水素吸着材。
【0015】
〔2〕カリウムのアルミナ比(K/Al)が、モル比で0.04以上0.50以下である〔1〕に記載の排ガス用炭化水素吸着材。
【0016】
〔3〕Xのアルミナ比(X/Al)が、モル比で0.10以上1.50以下である〔1〕又は〔2〕に記載の排ガス用炭化水素吸着材。
【0017】
〔4〕粉末X線回折測定において、10nm以上100nm以下の結晶子径を有する〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の排ガス用炭化水素吸着材。
【0018】
〔5〕0.01μm以上20μm以下の平均粒子径D50を有する〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の排ガス用炭化水素吸着材。
【0019】
〔6〕前記Xが、Cs、Rb、Ba、Sr、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Mo、Cu、Ag、及びAuよりなる群から選択される1種以上である〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の排ガス用炭化水素吸着材。
【0020】
〔7〕内燃機関の排ガスを浄化する排ガス浄化用システムに用いられる排ガス浄化用HCトラップであって、ハニカム型基材と、前記ハニカム型基材上及び/又は内に設けられた炭化水素吸着層と、を備え、前記炭化水素吸着層は、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の排ガス用炭化水素吸着材を少なくとも含有する、排ガス浄化用HCトラップ。
【0021】
〔8〕前記炭化水素吸着層は、前記ハニカム型基材の単位体積(1L)を基準として、前記排ガス用炭化水素吸着材を1g/L以上150g/L以下含む〔7〕に記載の排ガス浄化用HCトラップ。
【0022】
〔9〕前記炭化水素吸着層は、貴金属成分としてPt、Pd、及びRhよりなる群から
選択される1種以上を含む炭化水素吸着触媒層である〔7〕又は〔8〕に記載の排ガス浄
化用HCトラップ。
【0023】
〔10〕触媒層をさらに備える〔7〕~〔9〕のいずれか一項に記載の排ガス浄化用HCトラップ。
【0024】
〔11〕K担持MSE型ゼオライトを準備する工程と、並びに前記K担持MSE型ゼオライトにX(ここでXは、K以外のアルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属よりなる群から選択される1種以上の元素)を付与してK-X担持MSE型ゼオライトを合成する工程、を少なくとも有する、K-X担持MSE型ゼオライトの製造方法。
【0025】
〔12〕前記K-X担持MSE型ゼオライトを合成する前記工程では、イオン交換法により前記K担持MSE型ゼオライトに前記Xを担持させる〔11〕に記載のK-X担持MSE型ゼオライトの製造方法。
【0026】
〔13〕前記K担持MSE型ゼオライトを準備する前記工程では、カリウム存在下で水熱合成法により前記K担持MSE型ゼオライトを合成する〔11〕又は〔12〕に記載のK-X担持MSE型ゼオライトの製造方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、吸着したHCのHC脱離開始温度が高く、コールドスタート時により高いHC浄化性能を発現可能な排ガス用炭化水素吸着材等を実現することができ、これにより、浄化性能に優れる排ガス浄化用HCトラップや排ガス浄化HCトラップ触媒等を実現することができる。また、本発明によれば、そのような高性能な排ガス用炭化水素吸着材を、工業的に簡易なプロセスで、また、比較的に低コストで供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いる。例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0029】
[排ガス用炭化水素吸着材]
本実施形態の排ガス用炭化水素吸着材は、MSE型ゼオライト、及び前記MSE型ゼオライトに担持されたカリウム及びX(ここでXは、K以外のアルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属よりなる群から選択される1種以上の元素)を少なくとも含有し、前記MSE型ゼオライトのシリカアルミナ比(SiO2/Al23)が、モル比で10以上100以下であり、Xのカリウム比(X/K)が、モル比で2.0以上25.0以下であることを特徴とする。
【0030】
MSE型ゼオライトは、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association,以降では「IZA」と略称することがある。)によりMSEの骨格タイプコードが与えられたアルミノシリケートである。MSE型ゼオライトは、大細孔(12員環細孔)や中細孔(10員環細孔)が三次元的に交わったMSE特有の3次元細孔構造を有し、比較的に広い表面積と大きな内部空間を持つため、その分子篩作用により、ベンゼン、トルエン、キシレン、ベンズアルデヒド等の炭化水素(HC)の吸着能力が高い。このMSE型ゼオライトの構造は、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites, Fifth revised edition (2007)に記載の粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)パターン、又は、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-struture.org/databases/のZeolite Framework Typesに記載のXRDパターンのいずれかと比較することで、同定することができる。
【0031】
MSE型ゼオライトのシリカアルミナ比(SiO2/Al23、モル比、以降において単に「SAR」を称する場合がある。)は、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、一般的にはモル比で10以上100以下であることが好ましく、より好ましくは15以上80以下、さらに好ましくは18以上60以下である。なお、本明細書において、シリカアルミナ比は、蛍光X線分析から求められる値を意味する。具体的には、Axios(スペクトリシス社)を用いて、試料約5gを20tで加圧成型したサンプルを測定に供し、得られたSiO2及びAl23の質量%の結果からSARを算出した。シリカアルミナ比が大きいと、耐水熱性に優れる傾向にあるため、高温の排ガスに曝される用途での採用が期待される。一方、シリカアルミナ比が小さいと、親水性に優れるとともに酸量が高くなる傾向にあるため、固体酸触媒として高い活性を示すことが期待される。
【0032】
ここで用いるMSE型ゼオライトとしては、特に限定されないが、熱的耐久性及び触媒性能の観点から粉末X線回折測定において、10nm以上100nm以下の結晶子径を有するものが好ましく、より好ましくは15nm以上90nm以下、さらに好ましくは20nm以上80nm以下である。
【0033】
なお、粉末状の形態で用いる場合、MSE型ゼオライトの粒子径は、要求性能等に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、表面積や取扱性等の観点から、平均粒子径D50が0.01μm~20μmが好ましく、より好ましくは0.1~18μm、さらに好ましくは、0.5μm~15μmである。なお、本明細書において、平均粒子径D50は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社製、レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-3100等)で測定されるメディアン径を意味する。また、ゼオライトの粒子形状は、特に限定されず、例えば直方体状、球状、楕円体状、破砕状、扁平形状、不定形状等いずれであっても構わない。
【0034】
なお、MSE型ゼオライトのBET比表面積は、要求性能等に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、100m2 /g以上1000m2 /g以下が好ましく、300m2 /g以上800m2 /g以下がより好ましく、300m2 /g以上600m2 /g以下がさらに好ましい。
【0035】
MSE型ゼオライトは、当業界で公知の手法により合成することができ、その合成方法は特に限定されない。代表的な合成方法としては、例えば、シリカ源(例えばコロイダルシリカやシリカゲルやケイ酸ナトリウム等)とアルミナ源(或いはシリカアルミナ源)、アルカリ金属水酸化物等のアルカリ金属源(例えばNaOHやKOH等)、有機構造指向剤OSDA(例えば水酸化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム等のテトラエチルアンモニウムイオン;N,N,N’,N’-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム二ヨウ化物等のN,N,N',N'‐テトラアルキルビシクロ[2,2,2]オクタ‐7‐エン‐2,3:5,6‐ジピロリジニウムジカチオン;1,1-ジメチル-1-アゾニア-4-アザ-4-シクロヘキシルシクロヘキサン;ジメチルジプロピルアンモニウム等)、及び水等を含有する混合物(原料組成物)から水熱合成する方法が知られている。水熱合成の処理温度(反応温度)は、特に限定されないが、得られるMSE型ゼオライトの結晶性や経済性等の観点から、通常100℃以上200℃以下、好ましくは120℃以上190℃以下、より好ましくは150℃以上180℃以下である。また、水熱合成の処理時間(反応時間)は、十分な時間をかけて結晶化させればよく、特に限定されないが、得られるMSE型ゼオライトの結晶性や経済性等の観点から、通常1時間以上20日間以下、好ましくは4時間以上16日以下、より好ましくは12時間以上14日以下である。合成後には、必要に応じて固液分離処理、水洗処理、例えば大気中50~150℃程度の温度で水分を除去する乾燥処理等を常法にしたがって行うことで、目的とするMSE型ゼオライトを得ることができる。また、OSDAを用いずに既合成のMSE型ゼオライトをシード結晶(種晶)として用いて、シリカアルミナ源であるFAU型ゼオライト、NaOHやKOH等のアルカリ金属源、及び水を含有する混合物を水熱合成することによりMSE型ゼオライトを合成することもできる。なお、合成の容易性及び経済性等の観点から、アルカリ金属源としてカリウム存在下で水熱合成法によりMSE型ゼオライトを合成することが好ましい。
【0036】
なお、合成後のMSE型ゼオライトには、細孔内等に有機構造指向剤やアルカリ金属等を含んでいる場合がある。そのため、必要に応じて、酸性水溶液を用いた液相処理、有機構造指向剤の分解成分を含んだ薬液を用いた液相処理、レジン等を用いた交換処理、例えば400℃以上800℃以下、好ましくは450℃以上750℃以下の焼成処理等を行い、有機構造指向剤を除去することもできる。これらの処理は、任意の組み合わせで行うことができる。これらの中でも、有機構造指向剤の除去は、製造効率等の観点から、焼成処理が好ましく用いられる。焼成処理における処理時間(焼成時間)は、処理温度及び経済性等に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、通常0.5時間以上72時間以下、好ましくは1時間以上48時間以下、より好ましくは3時間以上40時間以下である。
【0037】
なお、上記のゼオライトは、そのイオン交換サイト上にアルカリ金属イオン等の金属イオンを有する場合がある。ここで所望する性能に応じて、イオン交換を行うイオン交換工程を行うことができる。このイオン交換工程では、常法にしたがってアンモニウムイオン(NH4 +)やプロトン(H+)等の非金属カチオンにイオン交換することができる。例えば、MSE型ゼオライトに対して硝酸アンモニウム水溶液や塩化アンモニウム水溶液等のアンモニウムイオンを含有する水溶液を用いた液相処理を行うことでアンモニウム型にイオン交換することができる。また、MSE型ゼオライトをアンモニアでイオン交換した後に焼成処理を行うことで、プロトン型にイオン交換することができる。また、必要に応じて、さらに酸量の低下処理を行うこともできる。酸量の低下処理は、例えばシリル化、水蒸気処理、ジカルボン酸処理等により行うことができる。
【0038】
本実施形態の排ガス用炭化水素吸着材は、MSE型ゼオライトに担持された、カリウム及びX(ここでXは、K以外のアルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属よりなる群から選択される1種以上の元素)を少なくとも含有する。ここで、K及びXは、酸化物又は複合酸化物の形態、又はゼオライト吸着サイトにおいてイオンの形態で存在し得る。このようにカリウム及びXが担持されたMSE型ゼオライトは、そうでないものと比較して、吸着したHCのHC脱離開始温度が高く、比較的に高温になるまでHCを細孔内に留めておくことができ、十分な触媒活性を示す温度(例えば200℃前後)の直前までHCの脱離を抑制することができるため、コールドスタート時により高いHC浄化性能を発現することができる。
【0039】
MSE型ゼオライトに担持されたカリウムは、上述した水熱合成に由来してMSE型ゼオライトに担持されていてもよいし、合成後のMSE型ゼオライトに別途付与したもの(担持した)であってもよい。カリウムは、例えば硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、酸化物、複合酸化物、又は錯塩等として供給することができる。合成後のMSE型ゼオライトにカリウムを担持させる方法としては、常法にしたがって行えばよく、特に限定されないが、イオン交換法、蒸発乾固法、沈殿担持法、物理混合法、及び含浸担持法等が挙げられる。なお、カリウムの担持処理の後、必要に応じて、固液分離処理、水洗処理、例えば大気中50~150℃程度の温度で水分を除去する乾燥処理等を常法にしたがって行うことができる。
【0040】
カリウムの担持量は、要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、カリウムのアルミナ比(K/Al)が、モル比で0.04以上0.50以下であることが好ましく、より好ましくは0.04以上0.45以下、さらに好ましくは0.05以上0.40以下である。
【0041】
MSE型ゼオライトに担持されるXとしては、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、Rb(ルビジウム)、Cs(セシウム)等のK(カリウム)以外のアルカリ金属;Be(ベリリウム)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)等のアルカリ土類金属:Sc(スカンジウム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Tc(テクネチウム)、Ru(ルテニウム)、Ag(銀)等の周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する遷移元素;等が挙げられるが、これらに特に限定されない。Xの中でも、Cs、Rb、Ba、Sr、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Mo、Cu、Ag、及びAuよりなる群から選択される1種以上が好ましく、Cs及びRbよりなる群から選択される1種以上がより好ましい。これらの好ましい元素を用いることで吸着したHCのHC脱離開始温度を高くすることができる。Xは、例えば硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、酸化物、複合酸化物、及び錯塩等として供給することができる。この具体的な方法としては、MSE型ゼオライトのイオン交換サイト又は細孔の少なくともいずれかにXが保持される方法であればよく、例えばイオン交換法、蒸発乾固法、沈殿担持法、物理混合法、及び含浸担持法等が挙げられるが、これらに特に限定されない。典型的には、MSE型ゼオライトにXを含有する水溶液を用いた液相処理を行うことでX型にイオン交換することができる。なお、Xの担持処理の後、必要に応じて、固液分離処理、水洗処理、例えば大気中50~150℃程度の温度で水分を除去する乾燥処理等を常法にしたがって行うことができる。また、さらに酸量の低下等の処理を行うこともできる。酸量の低下処理は、例えばシリル化、水蒸気処理、ジカルボン酸処理等により行えばよい。これら酸量の低下処理、組成の変更は、常法にしたがって行えばよい。
【0042】
Xの担持量は、要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、Xのアルミナ比(X/Al)が、モル比で0.10以上1.50以下であることが好ましく、より好ましくは0.30以上1.25以下、さらに好ましくは0.50以上1.00以下である。
【0043】
また、Xのカリウム比(X/K)が、要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、モル比で2.0以上25.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以上23.0以下、さらに好ましくは7.0以上20.0以下である。
【0044】
ここで、K-X担持MSE型ゼオライトの好ましい製造方法としては、カリウム存在下で水熱合成法によりK担持MSE型ゼオライトを合成し、このK担持MSE型ゼオライトにイオン交換法によりXを付与してK-X担持MSE型ゼオライトを得る方法が挙げられる。このように水熱合成に由来してカリウムが既に担持した(プロトン性水素原子を有するブレンステッド酸型の)MSE型ゼオライトを用いて、イオン交換法によりXをさらに付与して(ルイス酸型の)K-X担持MSE型ゼオライトを得ることで、工程が簡略化するとともに、カリウムのアルミナ比(K/Al)、Xのアルミナ比(X/Al)、及びXのカリウム比(X/K)等の調整が容易となる。かかる観点から、好ましい製造方法では、MSE型ゼオライトをNH4 +型にイオン交換する工程(例えば、MSE型ゼオライトを硝酸アンモニウム水溶液や塩化アンモニウム水溶液等のアンモニウムイオンを含有する水溶液を用いて液相処理する工程等)を別途に有さないことが望ましい。
【0045】
本発明のK-X担持MSE型ゼオライトは、固体酸触媒として有望なものであり、また、比較的に耐熱性も優れるので炭化水素吸着材として有望なものである。さらに詳細にはパラフィンを接触分解する触媒、例えば石油化学工業における長鎖炭化水素(例えばヘキサン)のクラッキング触媒として特に有望であり、また、ガソリンエンジン及びディーゼルエンジン等の各種内燃機関(例えば、ディーゼル自動車、ガソリン自動車、ジェットエンジン、ボイラー、ガスタービン等)の排ガス浄化用HCトラップとしても特に有望なものである。
【0046】
[排ガス浄化用HCトラップ]
上述したK-X担持MSE型ゼオライトは、排ガス用の炭化水素吸着材として殊に有効に利用され、各種の態様で実施可能である。例えば、上述したK-X担持MSE型ゼオライトは、粉末のまま用いることができる。また、例えば、粉末を任意の形状に成形することで、粒状やペレット状の成形体として用いることもできる。なお、成形体の作製時には、各種公知の分散装置、混練装置、成形装置を用いることができる。さらに、上述したK-X担持MSE型ゼオライトを、コージェライト製、シリコンカーバイド製、窒化珪素製等の等のセラミックモノリス担体、ステンレス製等のメタルハニカム担体やワイヤメッシュ担体、スチールウール状のニットワイヤ担体等の触媒担体に保持(担持)させて用いることもできる。なお、これらは、1種のみを単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び割合で用いることができる。触媒担体に上述したK-X担持MSE型ゼオライトを保持させる際には、各種公知のコーティング法、ウォッシュコート法、ゾーンコート法を適用することができる。
【0047】
とりわけ、上述したK-X担持MSE型ゼオライトは、各種態様の排ガス浄化用システムにおいて、HCトラップないしはHCトラップ触媒として使用可能である。排ガス浄化用HCトラップとしての実施態様は、特に限定されないが、ハニカム型基材と、このハニカム型基材上及び/又はハニカム型基材内に設けられた炭化水素吸着層と、を備え、炭化水素吸着層が上述した排ガス用炭化水素吸着材(K-X担持MSE型ゼオライト)を少なくとも含有する態様が挙げられる。このようにハニカム型基材に支持させることで、ガス流量を比較的大きく保つことができるので効率的なHCトラップを実現することができる。
【0048】
ハニカム型基材としては、炭化水素吸着材を支持可能なものである限り、その種類は特に限定されない。例えば、金属、合金、プラスチック、セラミックス、紙、合成紙、不織布、これらを組み合わせた積層体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、ハニカム型基材の形状、平面形状、厚さ等も、用途や要求性能等に応じて適宜設定すればよい。また、例えば自動車排ガス用途における支持体として、コージェライト、シリコンカーバイド、窒化珪素等のセラミックモノリス担体、ステンレス製等のメタルハニカム担体、ステンレス製等のワイヤメッシュハニカム担体、スチールウール状のニットワイヤハニカム担体等、当業界で公知のものを用いることができる。また、その外形形状としては、例えば角柱状、円筒状、球状、ハニカム状、シート状等の任意の形状のものが選択可能である。これらは、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。炭化水素吸着材の支持体としてハニカム型基材を用いることで、ガス流中に設置する適用が容易となる。
【0049】
ハニカム型基材のサイズは、用途や要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されない。ハニカム型基材の開口部の孔数は、処理すべき排気ガスの種類、ガス流量、圧力損失或いは除去効率等を考慮して適宜設定すればよい。そのセル密度は、特に限定されないが、ガス流に対する表面積を高く維持し圧力損失の増大を抑制する等の観点から、通常100~900セル/inch2(15.5~139.5セル/cm2)が好ましく、200~600セル/inch2(31~93セル/cm2)がより好ましい。なお、セル密度とは、ハニカム型基材を気体流路に対して直角に切断した際の断面における単位面積あたりのセル数のことを意味する。
【0050】
なお、自動車排ガス用途のハニカム型基材としては、気体流路が連通しているフロースルー型構造体と、気体流路の一部端面が目封じされ且つ気体流路の壁面を通して気体が流通可能になっているウォールフロー型構造体とが広く知られている。本実施形態では、いずれも適用可能であるが、空気抵抗が少なく且つ排気ガスの圧力損失が少ないフロースルー型構造体が好ましく用いられる。
【0051】
触媒担体やハニカム型基材へ上述したK-X担持MSE型ゼオライトを付与する方法は、常法にしたがって行えばよく、特に限定されない。一例を挙げると、上述したK-X担持MSE型ゼオライトと、水系媒体と、必要に応じて当業界で公知のバインダー、他の触媒、助触媒粒子、OSC材、母材粒子、添加剤等とを所望の配合割合で混合してスラリー(スラリー状混合物)を調製し、得られたスラリー状混合物を触媒担体やハニカム型基材に付与し、その後必要に応じて、乾燥や焼成をすることができる。この際、必要に応じてpH調整のために酸や塩基を配合したり、粘性の調整やスラリー分散性向上のための界面活性剤や分散用樹脂等を配合したりすることができる。なお、スラリーの混合方法としては、ボールミル等による粉砕混合が適用可能であるが、他の粉砕、或いは混合方法を適用することもできる。触媒担体やハニカム型基材へのスラリー組成物の付与方法は、常法にしたがって行えばよく、特に限定されない。各種公知のコーティング法、ウォッシュコート法、ゾーンコート法を適用することができる。
【0052】
触媒担体やハニカム型基材へのスラリー組成物の塗布量(被覆量)は、要求性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、NOx吸着性能又は触媒性能、及び圧損のバランス等の観点から、前述した触媒用スラリー組成物の組成換算で(Cu含有ゼオライト換算で)で、0.1~500g/Lが好ましく、10~400g/Lがより好ましく、20~300g/Lがさらに好ましい。
【0053】
そして、スラリー組成物の塗布後は、常法にしたがい、例えば真空乾燥機等を用いた減圧乾燥を行い、約50℃~200℃で約1~48時間程度の乾燥処理を行うことができる。また、触媒担体やハニカム型基材に塗布されたスラリー組成物を、例えば300℃以上1000℃以下で熱処理する焼成処理を行うこともできる。焼成温度は、使用原料等に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、好ましくは400℃以上900℃以下、より好ましくは430℃以上800℃以下、さらに好ましくは450℃以上750℃以下である。また、この焼成処理における処理時間(焼成時間)は、処理温度及び経済性等に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、通常0.1時間以上72時間以下、好ましくは0.2時間以上48時間以下、より好ましくは0.5時間以上40時間以下である。なお、焼成処理は、酸素含有雰囲気で行うことが好ましく、例えば大気雰囲気で行えばよい。また、加熱手段としては、特に限定されず、例えば電気炉やガス炉等、当業界で公知のものを用いることができる。
【0054】
なお、必要に応じて、プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム等の白金族元素(PGM:Platinum Group Metal)やCuやFeやWやCe等の遷移金属をスラリー組成物中に配合しておき、K-X担持MSE型ゼオライトの表面に担持させてもよい。これらは排ガス浄化のための触媒活性成分として機能し得るため、炭化水素吸着層に高い触媒性能を付与することができる(炭化水素吸着触媒層)。好ましい一態様として触媒活性の観点から、Pt、Pd、及びRhよりなる群から選択される1種以上を含む炭化水素吸着触媒層が例示される。これらの担持方法は、公知の手法を適用でき、特に限定されない。例えば、白金族元素や遷移金属元素を含む塩の溶液を調製し、スラリー組成物(触媒用スラリー組成物)にこの含塩溶液を含浸させ、その後に焼成することにより、白金族元素や遷移金属元素の担持を行うことができる。白金族元素や遷移金属元素は、例えば硝酸塩水溶液、ジニトロジアンミン硝酸塩溶液、塩化物水溶液、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、酸化物、複合酸化物、及び錯塩等として供給することができるが、これらに特に限定されない。
【0055】
また、上述したK-X担持MSE型ゼオライトとともに、他のゼオライトを併用することもできる。他のゼオライトの具体例としては、SSF型ゼオライト、MFI型ゼオライト、MEL型ゼオライト、MWW型ゼオライト、*BEA型ゼオライト、BEC型ゼオライト、BIK型ゼオライト、BOF型ゼオライト、BOG型ゼオライト、BRE型ゼオライト、CAS型ゼオライト、CDO型ゼオライト、CFI型ゼオライト、-CHI型ゼオライト、CON型ゼオライト、CSV型ゼオライト、DAC型ゼオライト、DDR型ゼオライト、DOH型ゼオライト、DON型ゼオライト、EEI型ゼオライト、EON型ゼオライト、EPI型ゼオライト、ESV型ゼオライト、EUO型ゼオライト、*-EWT型ゼオライト、FER型ゼオライト、GON型ゼオライト、HEU型ゼオライト、IFR型ゼオライト、-IFU型ゼオライト、IFW型ゼオライト、IHW型ゼオライト、IMF型ゼオライト、IRN型ゼオライト、IRR型ゼオライト、-IRY型ゼオライト、ISV型ゼオライト、ITE型ゼオライト、ITG型ゼオライト、ITH型ゼオライト、*-ITN型ゼオライト、ITR型ゼオライト、ITT型ゼオライト、ITW型ゼオライト、IWR型ゼオライト、IWS型ゼオライト、IWV型ゼオライト、IWW型ゼオライト、LTF型ゼオライト、MAZ型ゼオライト、MEI型ゼオライト、MEP型ゼオライト、MFS型ゼオライト、MON型ゼオライト、MOR型ゼオライト、*MRE型ゼオライト、MTF型ゼオライト、MTN型ゼオライト、MTT型ゼオライト、MTW型ゼオライト、NES型ゼオライト、NON型ゼオライト、NSI型ゼオライト、OKO型ゼオライト、-PAR型ゼオライト、PCR型ゼオライト、POS型ゼオライト、RRO型ゼオライト、RSN型ゼオライト、RTE型ゼオライト、RTH型ゼオライト、RUT型ゼオライト、RWR型ゼオライト、SEW型ゼオライト、SFE型ゼオライト、SFF型ゼオライト、SFG型ゼオライト、SFH型ゼオライト、SFN型ゼオライト、SFS型ゼオライト、*SFV型ゼオライト、SGT型ゼオライト、SOF型ゼオライト、SSF型ゼオライト、*-SSO型ゼオライト、SSY型ゼオライト、STF型ゼオライト、STI型ゼオライト、*STO型ゼオライト、STT型ゼオライト、STW型ゼオライト、-SVR型ゼオライト、SVV型ゼオライト、SZR型ゼオライト、TER型ゼオライト、TON型ゼオライト、TUN型ゼオライト、UOS型ゼオライト、UOV型ゼオライト、UTL型ゼオライト、UWY型ゼオライト、VET型ゼオライト、VNI型ゼオライト、VSV型ゼオライト、YUG型ゼオライト等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、これらの他のゼオライトは、それぞれ1種を単独で、又は2種以上の任意の組み合わせ及び割合で用いることができる。
【0056】
(バインダー)
さらに、必要に応じて、バインダーを含有していてもよい。バインダーをスラリー組成物に配合することで、得られる炭化水素吸着層(炭化水素吸着聡層)の被膜強度やハニカム型基材等への密着性等が高められる傾向にある。ここでバインダーとしては、当業界で公知のバインダーを用いることができ、その種類は特に限定されない。バインダーとしては、ベーマイト、コロイダルアルミナ、アルミナゾル、チタニアゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩もバインダーとして使用することができる。その他、酢酸、硝酸、塩酸、硫酸等の酸も、バインダーとして使用することができる。なお、バインダーは、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0057】
バインダーの使用量は、特に限定されず、炭化水素吸着層(炭化水素吸着聡層)の被膜強度や密着性の維持に必要な程度の量であれば構わない。具体的には、バインダーの含有量は、スラリー組成物の総量に対して、0.1~40質量%であることが好ましく、より好ましくは1~35質量%であり、さらに好ましくは2~30質量%である。
【0058】
上述した製法等によって、ハニカム型基材及びその少なくとも一方の面側に設けられた炭化水素吸着層を少なくとも備える積層構造の排ガス浄化用HCトラップや、ハニカム型基材及びその少なくとも一方の面側に設けられた炭化水素吸着触媒層を少なくとも備える積層構造の排ガス浄化用HCトラップ触媒等を得ることができる。ここで、本明細書において、「ハニカム型基材の少なくとも一方の面側に設けられた」とは、ハニカム型基材の一方の面と炭化水素吸着層との間に任意の他の層(例えばプライマー層、接着層等)が介在した態様を包含する意味である。すなわち、本明細書において、「一方の面側に設ける」とは、ハニカム型基材と炭化水素吸着層とが直接載置された態様、ハニカム型基材と炭化水素吸着層とが任意の他の層を介して離間して配置された態様の双方を含む意味で用いている。また、炭化水素吸着層は、ハニカム型基材の一面のみに設けられていても、複数の面(例えば、一方の主面及び他方の主面等)に設けられていてもよいことを意味する。このとき、ハニカム型基材を用い、ガス流が通過する流路内に積層構造を設置し、ハニカム型基材のセル内にガス流を通過させることで、高効率に排ガス浄化を行うことができる。
【0059】
そして、積層構造の排ガス浄化用HCトラップや排ガス浄化用HCトラップ触媒において、炭化水素吸着層や炭化水素吸着触媒層は、単層、複層のいずれでもよい。炭化水素吸着層のみの単層としてもよいし、炭化水素吸着触媒層のみ単層としてもよいし、炭化水素吸着層を2層以上積層していてもよいし、炭化水素吸着触媒層を2層以上積層していてもよいし、炭化水素吸着層と炭化水素吸着触媒層を組み合わせて2層以上としてもよいし、炭化水素吸着層と当業界で公知の触媒層とを組み合わせて2層以上としてもよいし、当業界で公知の層と炭化水素吸着触媒層とを組み合わせて2層以上としてもよい。このとき、上述した炭化水素吸着層の被覆量は、特に限定されないが、触媒性能や圧損のバランス等の観点から、前記触媒担体やハニカム型基材又はハニカム型基材の単位体積(1L)を基準として、上述したK-X担持MSE型ゼオライトの固形分換算で1g/L以上150g/Lが好ましく、3g/L以上135g/Lがより好ましく、5g/L以上120g/Lがさらに好ましい。
【0060】
上述した排ガス浄化用HCトラップ(排ガス浄化HCトラップ触媒)は、内燃機関の各種エンジンの排気系に配置することができる。排ガス浄化用HCトラップ(排ガス浄化HCトラップ触媒)の設置個数及び設置箇所は、排ガス規制に応じて適宜設計できる。そして、本実施形態の排ガス浄化用HCトラップ(排ガス浄化HCトラップ触媒)によれば、吸着したHCのHC脱離開始温度が高く、コールドスタート時により高いHC浄化性能を発現することができ、これにより、浄化性能に優れる排ガス浄化システムを実現することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、そのような高性能な排ガス用炭化水素吸着材、排ガス浄化用HCトラップ(排ガス浄化HCトラップ触媒)、排ガス浄化システムを、工業的に簡易なプロセスで、また、比較的に低コストで供給することができる。
【実施例
【0061】
以下に試験例、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0062】
(製造例1)OSDAの合成
まず、特開2020-050611号公報に記載の方法に準じて、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボン酸二無水物(東京化成工業社製)から、N.N‘-ジエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-テトラカルボキシルジイミドを合成した。次いで、特許6430303号公報に記載の方法に準じて、N,N,N’,N’-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム二ヨウ化物を合成した。
【0063】
(調製例1)MSE型ゼオライトの合成
続いて、T. Shibata et al., Microporous and Mesoporous Materials, 116 (2008) 216に記載の方法に準じて、MSE型ゼオライトを合成した。コロイダルシリカ(スノーテックスN40、日産化学社製)102.5g、水157.0g、水酸化アルミニウムゲル(キョーワードKW200S、協和化学社製)6.0g、水酸化カリウム(富士フイルム和光純薬社製)10gを水90gに溶解した溶液と、製造例1のN,N,N’,N’-テトラエチルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:5,6-ジピロリジニウム二ヨウ化物40.1gとを混合し、ステンレス製ビーカー内で16時間撹拌した。混合物の組成は次のとおりであった。下記組成における数値は、SiO2の物質量を1としたときの物質量比を表す。
SiO2
0.051 Al23
0.100 OSDA
0.375 KOH
30.00 H2
【0064】
次いで、この原料組成物(混合物)を300ccPTFE製耐圧密閉容器2つに分けて投入し、160℃で384時間静置保持した。この水熱処理後の生成物を固液分離し、得られた固相を水で洗浄し、105℃で乾燥して生成物を得た。得られた生成物の全量を、空気を流通させながら600℃で5時間焼成した。この様にして得られた生成物について粉末蛍光X線分析装置(ブルカージャパン株式会社、D8 Advance)を用いて、粉末蛍光X線分析(XRD:X-ray diffraction)を行ったところ、単相のMSE型ゼオライトであることが確認された(SAR:20、結晶子径:62nm、平均粒子径D50:14μm)。また、ICP発光分析装置(株式会社 島津製作所、ICPS-8100)を用いてICP法により元素分析測定を行ったところ、モル比でK/Al=0.35であった。
【0065】
(実施例1)Cs-K担持MSE型ゼオライト
調製例1の焼成済MSE型ゼオライト5.0gを、酢酸セシウム(富士フイルム和光純薬社製)5.0gを水100gに溶解した水溶液に加えて加熱撹拌し、80℃で3時間保持した。冷却後、ろ過し、その後にもう一度同様の操作を繰り返した。その後、水で洗浄し、105℃で16時間乾燥して、実施例1のCs-K担持MSE型ゼオライトを得た。得られた実施例1のCs-K担持MSE型ゼオライトを、ICP発光分析装置(株式会社 島津製作所、ICPS-8100、及びサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 iCAP6500)を用いてICP法により元素分析測定を行ったところ、モル比でK/Al=0.06、Cs/Al=0.76、Cs/K=13.6であった。得られた実施例1のCs-K担持MSE型ゼオライトを、ハニカム型基材にハニカム型基材1Lあたり100gの塗工量でウェット塗布し、その後に500℃で焼成することで、Cs-K担持MSE型ゼオライトを含む炭化水素吸着層がハニカム型基材上に設けられた、実施例1の排ガス浄化用HCトラップを得た。
【0066】
実施例1のCs-K担持MSE型ゼオライトのHC吸着性能を評価するため、トルエン吸着脱離測定を行った。ここでは、Cs-K担持MSE型ゼオライトを分取し、TPR(Temperature Programmed Reaction)測定装置(マイクロトラックベル株式会社BELCAT-A、BEL-Mass)を用いて、飽和蒸気圧設定温度80℃(飽和蒸気圧47377Pa)にて流量300cc/minのGas-1(5%Ar、残部He)雰囲気下、ガス70℃から600℃まで30℃/minで昇温後、600℃~70℃まで降温し、70℃にて10分間保持した後、流量300cc/minのGas-2(5%Ar、2%H2O、0.007%トルエン(500ppmCトルエン)、残部He)に切り替えて70℃から600℃まで10℃/minで昇温しながら、トルエンの吸着脱離測定を行ったところ、トルエン脱離温度は192℃であった。
【0067】
(比較例1)K-H型MSE型ゼオライト
調製例1の焼成済MSE型ゼオライトを、そのまま比較例1として用いた。比較例1のK-H型MSE型ゼオライトを、ICP発光分析装置(株式会社 島津製作所、ICPS-8100)を用いてICP法により元素分析測定を行ったところ、モル比でK/Al=0.35であった。また、実施例1と同様にトルエン吸脱着試験を行ったところ、トルエン脱離温度は178℃であった。
【0068】
(比較例2)K型MSE型ゼオライト
調製例1の焼成済MSE型ゼオライト5.0gを、酢酸カリウム(富士フイルム和光純薬社製)2.5gを水100gに溶解した水溶液に加えて加熱撹拌し、80℃で3時間保持した。冷却後、ろ過し、その後もう一度同様の操作を繰り返した。その後、水で洗浄し、105℃で16時間乾燥して、比較例2のK型MSE型ゼオライトを得た。比較例2のK型MSE型ゼオライトを、ICP発光分析装置(株式会社 島津製作所、ICPS-8100、及びサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 iCAP6500)を用いてICP法により元素分析測定を行ったところ、モル比でK/Al=0.73であった。また、実施例1と同様にトルエン吸脱着試験を行ったところ、トルエン脱離温度は168℃であった。
【0069】
(比較例3)H+型MSE型ゼオライト
調製例1の焼成済MSE型ゼオライト10.0gを、硝酸アンモニウム(富士フイルム和光純薬社製)15.0gを水115gに溶解した水溶液に加えて加熱撹拌し、80℃で3時間保持した。冷却後、ろ過し、その後にもう一度同様の操作を繰り返した。その後、水で洗浄し、105℃で16時間乾燥して、NH4 +型MSE型ゼオライトを得た。得られたNH4 +型MSE型ゼオライトを500℃で5時間焼成して、比較例3のH+型MSE型ゼオライトを得た。比較例3のH+型MSE型ゼオライトを、ICP発光分析装置(株式会社 島津製作所、ICPS-8100)を用いてICP法により元素分析測定を行ったところ、モル比でK/Al=0.07であった。また、実施例1と同様にトルエン吸脱着試験を行ったところ、トルエン脱離温度は141℃であった。
【0070】
(比較例4)Cs-K担持MSE型ゼオライト
比較例3のH+型MSE型ゼオライト5.0gを、酢酸セシウム(富士フイルム和光純薬社製)5.0gを水100gに溶解した水溶液に加えて加熱撹拌し、80℃で3時間保持した。冷却後、ろ過し、その後にもう一度同様の操作を繰り返した。その後、水で洗浄し、105℃で16時間乾燥して、比較例4のCs-K担持MSE型ゼオライトを得た。比較例4のCs-K担持MSE型ゼオライトを、ICP発光分析装置(株式会社 島津製作所、ICPS-8100、及びサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 iCAP6500)を用いてICP法により元素分析測定を行ったところ、モル比でK/Al=0.03、Cs/Al=0.75、Cs/K=26.5であった。また、実施例1と同様にトルエン吸脱着試験を行ったところ、トルエン脱離温度は180℃であった。
【0071】
(比較例5)Cs型FAU型ゼオライト
FAU型ゼオライト(HSZ-350HUA,SAR:11、東ソー社製)400gを、60重量%硝酸(関東化学社製)147gを水4000gに溶解した水溶液に加えて加熱撹拌し、80℃で3時間保持した。冷却後、ろ過し、水で洗浄後、105℃で乾燥し、FAU型ゼオライト(SAR:19)を得た。得られたFAU型ゼオライト20.0gを、酢酸セシウム20.0g(富士フイルム和光純薬社製)を水550gに溶かした水溶液に加えて加熱撹拌し、80℃で3時間保持した。冷却後、ろ過し、その後にもう一度同様の操作を繰り返した。その後、水で洗浄し、105℃で16時間乾燥して、比較例5のCs型FAU型ゼオライトを得た。また、実施例1と同様にトルエン吸脱着試験を行ったところ、トルエン脱離温度は161℃であった。
【0072】
(比較例6)Cs型MFI型ゼオライト
IZA SYNTHESIS COMMISIONに記載の High-Al ZSM-5を参照してMFI型ゼオライトを合成し、Cs型へのイオン交換を、以下のとおり実施した。40質量%テトラプロピルアンモニウム水酸化物溶液(セイケムイ社製)1.5g、4.8質量%水酸化ナトリウム溶液7.2g、及び水12.8gを、SUSビーカー内で混合して撹拌した。これにアモルファスシリカNipsil ER(東ソーシリカ社製)3.8gを少しずつ加えた。1時間撹拌した後、得られた混合物を100ccPTFE製耐圧容器内に入れ、100℃で16時間保持し、シーディングゲルを25.3g得た。得られたシーディングゲルのうち9.1gに、水酸化アルミニウムゲル(キョーワードKW200S、協和化学社製)1.3g、4.8質量%水酸化ナトリウム73.1g、水87.7g、及びアモルファスシリカ(Nipsil ER、東ソー社製)19.2gを加えて1時間撹拌した。混合物の組成は次のとおりであった。下記組成における数値は、SiO2の物質量を1としたときの物質量比を表す。
SiO2
0.025 Al23
0.017 OSDA
0.145 Na2
29.66 H2
【0073】
次いで、この原料組成物(混合物)を300ccPTFE製耐圧密閉容器2つに分けて投入し、175℃で48時間静置保持した。この水熱処理後の生成物を固液分離し、得られた固相を水で洗浄し、105℃で乾燥して生成物を得た。得られた生成物の全量を、空気を流通させながら600℃で5時間焼成した。この様にして得られた生成物について粉末蛍光X線分析装置(ブルカージャパン株式会社、D8 Advance)を用いて、粉末蛍光X線分析(XRD:X-ray diffraction)を行ったところ、単相のMFI型ゼオライト(SAR:40)であることが確認された。得られた焼成済MFI型ゼオライト10.0gを、硝酸アンモニウム(富士フイルム和光純薬社製)15.0gを水115gに溶解した水溶液に加えて加熱撹拌し、80℃で3時間保持した。冷却後、ろ過し、その後にもう一度同様の操作を繰り返した。その後、水で洗浄し、105℃で16時間乾燥して、NH4 +型MFI型ゼオライトを得た。これを500℃で5時間焼成して、H+型MFI型ゼオライトを得た。得られたH+型MFI型ゼオライト5.0gを、酢酸セシウム(富士フイルム和光純薬社製)5.0gを水100gに溶解した水溶液に加えて加熱撹拌し、80℃で3時間保持した。冷却後、ろ過し、その後にもう一度同様の操作を繰り返し、水で洗浄後、105℃で16時間乾燥して、比較例6のCs型MFI型ゼオライトを得た。また、実施例1と同様にトルエン吸脱着試験を行ったところ、トルエン脱離温度は172℃であった。
【0074】
(比較例7)Cs型MFI型ゼオライト
シーディングゲルの量を8.7g、水酸化アルミニウムゲル(キョーワードKW200S、協和化学社製)の量を2.6g、4.8重量%水酸化ナトリウムの量を71.1g、水の量を84.9g、アモルファスシリカ(Nipsil ER、東ソー社製)の量を18.7gとし、混合物の組成を次のとおり変更する以外は、比較例6と同様にして、MFI型ゼオライト(SAR:20)を合成した。混合物の組成は次のとおりであった。下記組成における数値は、SiO2の物質量を1としたときの物質量比を表す。
SiO2
0.050 Al23
0.017 OSDA
0.145 Na2
29.66 H2
XRDの結果から、少量のMORが副生していた。その後、熱処理、焼成処理、及びイオン交換処理を比較例6と同様に行って、比較例7のCs型MFI型ゼオライトを得た。また、実施例1と同様にトルエン吸脱着試験を行ったところ、トルエン脱離温度は172℃であった。
【0075】
評価結果を、表1に示す。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のK-X担持MSE型ゼオライトは、パラフィンを接触分解する固体酸触媒、炭化水素(HC)の炭化水素吸着材ないしは炭化水素吸着触媒として広く且つ有効に利用可能であり、とりわけ、ガソリンエンジン及びディーゼルエンジン等の各種内燃機関の排ガス浄化用HCトラップないしは排ガス浄化HCトラップ触媒、排ガス浄化システムにおいて殊に有効に利用可能である。