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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-11
(45)【発行日】2024-12-19
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/25 20220101AFI20241212BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20241212BHJP
   B62D 49/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B60R1/25
H04N7/18 J
B62D49/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021036241
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136564
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】鶴原 優太
(72)【発明者】
【氏名】足立 周一
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/017367(WO,A1)
【文献】特開2021-000900(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014108684(DE,A1)
【文献】特開2014-016962(JP,A)
【文献】特開平07-117562(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0210443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/20 - 1/31
H04N 7/18
B62D 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転部を覆うキャビンと、
車両の周囲を撮像するカメラと、を備える作業車両であって、
前記キャビンは、
平面視で四隅に立設される4本の支柱と、
4本の前記支柱で支持される屋根部と、
キャビンの左右方向側面に設けられる乗降口と、を備え、
前記カメラは、4本の前記支柱にそれぞれ取り付けられる前側カメラ、後側カメラであって、
キャビンの左右方向一側面側に設けられ、前後方向に並ぶ前側カメラ、後側カメラを、互いに向き合う状態で前後方向下方に俯角を存する状態で支柱に設けることで、
前側カメラが、キャビンの左右方向一側面の前部部位から後部部位を越えて後側カメラの死角となる後方に至る撮像をし、
後側カメラが、キャビンの左右方向一側面の後部部位から前部部位を越えて前側カメラの死角となる前方に至る撮像をして、
キャビンの左右方向一側面の乗降口部位の重複撮像と、該重複撮像部位から続く状態で、前側カメラの前方側死角部位の撮像および後側カメラの後方側死角部位の撮像とができるように構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記カメラは、カメラケースに収容された状態で前記支柱に取り付けられ、
前記カメラケース内には、前記カメラの撮像を画像処理する画像処理部が配置されることを特徴とする請求項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタなどの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運転部を覆うキャビンに複数のカメラを設置し、車両周辺を複数のカメラで撮像する作業車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-66401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の作業車両では、各カメラを車両外方に向けて配置しているので、複数のカメラで撮像しても車両近傍下方に大きな死角が生じるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、運転部を覆うキャビンと、車両の周囲を撮像するカメラと、を備える作業車両であって、前記キャビンは、平面視で四隅に立設される4本の支柱と、4本の前記支柱で支持される屋根部と、
キャビンの左右方向側面に設けられる乗降口と、を備え、前記カメラは、4本の前記支柱にそれぞれ取り付けられる前側カメラ、後側カメラであって、キャビンの左右方向一側面側に設けられ、前後方向に並ぶ前側カメラ、後側カメラを、互いに向き合う状態で前後方向下方に俯角を存する状態で支柱に設けることで、前側カメラが、キャビンの左右方向一側面の前部部位から後部部位を越えて後側カメラの死角となる後方に至る撮像をし、後側カメラが、キャビンの左右方向一側面の後部部位から前部部位を越えて前側カメラの死角となる前方に至る撮像をして、キャビンの左右方向一側面の乗降口部位の重複撮像と、該重複撮像部位から続く状態で、前側カメラの前方側死角部位の撮像および後側カメラの後方側死角部位の撮像とができるように構成したことを特徴とする作業車両である。
請求項2の発明は、前記カメラは、カメラケースに収容された状態で前記支柱に取り付けられ、前記カメラケース内には、前記カメラの撮像を画像処理する画像処理部が配置されることを特徴とする請求項に記載の作業車両である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、キャビンの支柱を利用して複数のカメラを設置することができる。また、前後方向に並ぶカメラは、互いに向き合うように配置され、互いの死角を撮像するので、死角を減らして監視エリアを広げることができる。また、互いに向き合うことで撮像範囲が重なる領域では、画像の視差により距離検出も可能になるので、距離に応じた障害物の報知なども行うことができ、安全性の向上が図れる。
しかもカメラは、俯角を付けて支柱に取り付けられるので、車両近傍下方の死角をさらに減らすことができるだけでなく、直射日光、雨、ほこりなどからカメラを保護できる。
また、請求項の発明によれば、カメラを収容するカメラケース内には、カメラの撮像を画像処理する画像処理部が配置されるので、作業車両側のメイン制御部で画像処理を行う場合に比べ、メイン制御部の処理負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタの側面図である。
図2】カメラの取付状態を示すトラクタの要部斜視図である。
図3】カメラの取付構造を示すトラクタの要部分解斜視図である。
図4】カメラの撮像範囲を示す平面図である。
図5】カメラユニットの断面図である。
図6】カメラユニットを正面側から見た分解斜視図である。
図7】カメラユニットを背面側から見た分解斜視図である。
図8】トラクタの制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[トラクタ]
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はトラクタ(作業車両)であって、該トラクタ1は、エンジン(図示せず)が搭載されるエンジン搭載部2と、エンジン動力を変速するミッションケース3と、ミッションケース3から出力される動力で回転駆動する前輪4及び後輪5と、各種の作業機を連結可能な作業機連結部6と、エンジン搭載部2の後方に設けられ、運転部(図示せず)を覆うキャビン7と、を備える。
【0009】
図1及び図2に示すように、キャビン7は、平面視で四隅に立設される4本の支柱8と、4本の支柱8で支持される屋根部9と、キャビン7の前面を覆うフロントガラス10と、キャビン7の後面を覆うリヤガラス11と、キャビン7の側面に設けられる乗降口12を開閉可能に覆うドア13と、キャビン7の側面後部を覆うサイドガラス14と、を備える。
【0010】
支柱8は、左右一対の前支柱8Fと、左右一対の後支柱8Rと、を含む。左右一対の前支柱8Fには、それぞれ、右左折時などに点滅される方向指示灯15と、サイドミラー16を支持するサイドミラーステー17と、が取り付けられている。また、左右一対の後支柱8Rには、それぞれ、右左折時などに点滅される方向指示灯19と、夜間作業時などに点灯される作業灯20と、遠隔操作時や自動走行時に車両の状態を表示する表示灯21と、が取り付けられている。また、左右一対の後支柱8Rの上端部間には、GPSアンテナ22などが取り付けられるアンテナステー23が架設されている。
【0011】
[カメラの配置]
図1図8に示すように、トラクタ1には、車両の周囲を撮像するカメラ24がカメラケース25に収容されたカメラユニット26の形態で複数設けられている。カメラユニット26は、キャビン7の4本の支柱8F、8Rにそれぞれ取り付けられる。図4に示すように、前後方向に並ぶカメラユニット26は、互いに向き合うように配置され、互いの死角を撮像する。
【0012】
キャビン7の左前支柱8Fに取り付けられるカメラユニット26を左前カメラユニット26、キャビン7の左後支柱8Rに取り付けられるカメラユニット26を左後カメラユニット26、キャビン7の右前支柱8Fに取り付けられるカメラユニット26を右前カメラユニット26、キャビン7の右後支柱8Rに取り付けられるカメラユニット26を右後カメラユニット26とすると、左前カメラユニット26は、後左側方を向き、左後カメラユニット26の死角である左後カメラユニット26の下方領域から、図4から明らかなように該下方領域を越えて左後カメラユニット26の後方に至る範囲を撮像範囲に含み、左後カメラユニット26は、前左側方を向き、左前カメラユニット26の死角である左前カメラユニット26の下方領域から、図4から明らかなように該下方領域を越えて左前カメラユニット26の前方に至る範囲を撮像範囲に含み、右前カメラユニット26は、後右側方を向き、右後カメラユニット26の死角である右後カメラユニット26の下方領域を撮像範囲に含み、右後カメラユニット26は、前右側方を向き、右前カメラユニット26の死角である右前カメラユニット26の下方領域を撮像範囲に含む。
そしてこのように構成することにより、図4から明らかなように、キャビン7の左右方向一側面の乗降口部位の重複撮像と、該重複撮像部位から続く状態で、前側カメラの前方側死角部位の撮像および後側カメラの後方側死角部位の撮像とができるように構成
【0013】
このようなカメラユニット26の配置構成によれば、キャビン7の支柱8F、を利用して複数のカメラユニット26を設置することができる。また、前後方向に並ぶカメラユニット26は、互いに向き合うように配置され、互いの死角を撮像するので、死角を減らして監視エリアを広げることができる。
【0014】
また、各カメラユニット26に収容されるカメラ24は、俯角を付けて配置されている。これにより、車両近傍下方の死角をさらに減らすことができるだけでなく、直射日光の影響を低減できる。また、障害物検出などにおいて無駄な画像領域(例えば、水平よりも上方の画像領域)を減らすことができるので、画像処理の負担を軽減できる。
【0015】
[カメラユニットの取付構造]
左前カメラユニット26及び右前カメラユニット26は、サイドミラーステー17を介して前支柱8Fに取り付けられ、左後カメラユニット26及び右後カメラユニット26は、アンテナステー23を介して後支柱8Rに取り付けられている。
【0016】
図2及び図3に示すように、サイドミラーステー17は、前支柱8Fに突設されるサイドミラーブラケット27と、基端部がサイドミラーブラケット27に前後回動可能に支持され、前端部にサイドミラー16が角度調節可能に取り付けられる逆U字状のステー部材28と、を備える。ステー部材28上部には、カメラユニット26の背面をボルト固定可能な前カメラ取付プレート29が設けられている。前カメラ取付プレート29は、ステー部材28に溶着されるベース部材30に図示しない支軸を介して左右回動自在に支持される。これにより、サイドミラーステー17を利用してカメラユニット26を取り付けられるだけでなく、カメラユニット26の左右の向きを調節することが可能になる。
【0017】
図2及び図3に示すように、アンテナステー23は、左右の後支柱8Rに突設される一対のアンテナブラケット31と、各アンテナブラケット31にボルト固定され、アンテナブラケット31から上方に延出する左右一対の縦ステー部材32と、左右の縦ステー部材32にボルト固定され、左右の縦ステー部材32間に架設される横ステー部材33と、を備え、横ステー部材33にGPSアンテナ22などが取り付けられる。カメラユニット26の背面をボルト固定可能な後カメラ取付プレート34は、側面視コ字形状を有し、縦ステー部材32の上下を固定する一対のボルト35に共締めされている。これにより、アンテナステー23を利用してカメラユニット26を取り付けられるだけでなく、ボルト35を支点とする回動でカメラユニット26の左右の向きを調節することが可能になる。
【0018】
[カメラユニットの構成]
図5図7に示すように、カメラユニット26は、カメラ24が設けられるカメラ基板36と、カメラ24の撮像を画像処理する画像処理基板37(画像処理部)と、カメラ基板36及び画像処理基板37を収容するカメラケース25と、を備える。
【0019】
カメラケース25は、カメラ基板36及び画像処理基板37が取り付けられるケース本体38と、カメラ基板36及び画像処理基板37を覆うようにケース本体38に固定されるケースカバー39と、を備える。
【0020】
ケース本体38は、カメラ基板36が取り付けられるカメラ基板取付部38aと、画像処理基板37が取り付けられる画像処理基板取付部38bと、を備える。カメラ基板取付部38aは、ケース本体38から前方に突出する一対の基板支持部38cを備え、一対の基板支持部38cの先端対向部には、カメラ基板36を上方からスライド状に取り付ける取付溝38dが形成されている。取付溝38dは、上側ほど前方に張り出す傾斜を有し、この傾斜によってカメラ24に俯角が付与される。画像処理基板取付部38bは、ケース本体38から前方に突出する複数のネジ固定部38eを備え、これらのネジ固定部38eの先端部間に、図示しないネジを介して画像処理基板37が取り付けられる。
【0021】
画像処理基板37は、ケーブル40を介してカメラ基板36と接続されており、カメラ基板36から入力される撮像を画像処理する。画像処理は、例えば、人、障害物などの認識処理、画像トリミング処理、画像圧縮処理などを含む。このようなカメラユニット26によれば、トラクタ1側の制御部50(図8参照)で画像処理を行う場合に比べ、トラクタ1側の制御部50の処理負担を軽減できる。
【0022】
ケースカバー39は、カメラ24と対向する撮像窓39aと、撮像窓39aの外面側の上部に形成され、撮像窓39aの雨の流れ込みを防ぐ庇部39bと、撮像窓39aを覆うガラス42と、図示しないパッキンを介してガラス42を押さえる押さえ板43と、を備える。ケースカバー39は、パッキン44を挟んだ状態でケース本体38に嵌合され、複数のネジ45を介してケース本体38に固定される。
【0023】
[トラクタの制御構成]
図8に示すように、トラクタ1は、各種の制御を行う制御部50を備える。制御部50の入力側には、前述したカメラユニット26の他に、GPS信号に基づいてトラクタ1の位置を検出するGPS51と、車両周辺の障害物を検出する障害物センサ52と、リモコン53aからの遠隔操作信号を受信するリモコン受信部53と、車速を検出する車速センサ54と、自動走行制御を入切する自動操作入切スイッチ55と、が接続されている。
【0024】
また、制御部50の出力側には、前述した表示灯21の他に、自動走行制御や遠隔操作制御においてメインクラッチを操作するためのクラッチバルブ56と、自動走行制御や遠隔操作制御において作業動力を入切するためのPTOクラッチバルブ57と、警報音を出力するホーン58と、自動走行制御や遠隔操作制御において変速スイッチを操作するための変速油圧バルブ59と、自動走行制御や遠隔操作制御においてエンジン回転数を変更するためのインジェクションポンプ60と、自動走行制御や遠隔操作制御においてエンジンを緊急停止させるためのエンジン停止リレー61と、が接続されている。
【0025】
制御部50は、自動走行制御や遠隔操作制御を実行するにあたり、カメラ24の撮像に基づいて障害物の有無などを判断し、緊急停止などの対応動作を行わせる。また、カメラ24の撮像は、キャビン7内に配置される図示しないモニタに表示させてもよい。モニタは、フロントガラス10の内側上部、図示しないステアリングハンドル、図示しないメータパネル内などに設置することができる。フロントガラス10の内側上部に設置する場合は、前方視界を遮る可能性があるため、不要なときは折り畳んで格納したり、取り外してオーディオユニット(図示せず)内に収納できるようにすることが好ましい。また、サイドミラー16の代わりにカメラ24を設け、カメラ24の撮像をキャビン7内のモニタに表示させるようにしてもよい。
【0026】
また、カメラ24の撮像データを無線送信する送信部(図示せず)を設け、監視者のパソコン、スマートフォン、タブレットなど視聴できるようにしてもよい。この場合、画像処理後の撮像データを送信すれば、監視者の負担を軽減できる
【0027】
[実施形態の効果]
叙述の如く構成された本実施形態によれば、運転部を覆うキャビン7と、車両の周囲を撮像するカメラ24と、を備えるトラクタ1であって、キャビン7は、平面視で四隅に立設される4本の支柱8F、8Rと、4本の支柱8F、8Rで支持される屋根部9と、を備え、カメラ24は、4本の支柱8F、8Rにそれぞれ取り付けられ、前後方向に並ぶカメラ24は、互いに向き合うように配置され、互いの死角を撮像するので、キャビン7の支柱8F、8Rを利用して複数のカメラ24を設置できるだけでなく、死角を減らして監視エリアを広げることができる。また、互いに向き合うことで撮像範囲が重なる領域では、画像の視差により距離検出も可能になるので、距離に応じた障害物の報知なども行うことができ、安全性の向上が図れる。
【0028】
また、カメラ24は、俯角を付けて支柱8F、8Rに取り付けられるので、車両近傍下方の死角をさらに減らすことができるだけでなく、直射日光、雨、ほこりなどの影響を低減できる。
【0029】
また、カメラ24は、カメラケース25に収容された状態で支柱8F、8Rに取り付けられ、カメラケース25内には、カメラ24の撮像を画像処理する画像処理基板37が配置されるので、トラクタ1側の制御部50で画像処理を行う場合に比べ、制御部50の処理負担を軽減できる。
【符号の説明】
【0030】
1 トラクタ
7 キャビン
8 支柱
8F 前支柱
8R 後支柱
9 屋根部
16 サイドミラー
17 サイドミラーステー
23 アンテナステー
24 カメラ
25 カメラケース
26 カメラユニット
27 サイドミラーブラケット
36 カメラ基板
37 画像処理基板
50 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8